JPWO2006016687A1 - 破裂性腹部大動脈瘤の判定方法及び判定用試薬 - Google Patents
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Abstract
ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知して、検知された濃度を破裂性腹部大動脈瘤患者及び/又はその類症患者の血液中D−ダイマー濃度と比較することにより、又は、破裂性腹部大動脈瘤とその類症との間で設定されたカットオフ値と比較することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法、並びに上記方法を実施するために使用される判定用試薬等を提供する。
Description
本発明は、血液中のD−ダイマー(D−dimer)濃度を検知することによる破裂性腹部大動脈瘤(RAAA:ruptured abdominal aortic aneurysm)の判定方法、及び前記方法を実施するために使用される判定用試薬等、並びに該判定用試薬等を含む商業パッケージに関する。
D−ダイマーは二次線溶系亢進のマーカーとして、血液凝固・線溶系亢進の病態を詳細に把握するために利用されている生体内蛋白である。具体的には、播種性血管内凝固症候群(DIC)や各種の血栓性疾患の診断、病態把握、治療効果判定のマーカーとして使用されている。
また、急性心筋梗塞患者の血液中D−ダイマー濃度が健常人に比べて上昇していることが知られている(例えば、“The American Journal of Medicine”、(米国)、1992年12月、第93巻、p.651−657)。
しかしながら、D−ダイマーを破裂性腹部大動脈瘤を判定するための生化学的マーカーとして使用することはこれまでに報告されていない。
例えば、“Journal of Vascular Surgery”、(米国)、1999年10月、第30巻、第4号、p.641−650、および“Journal of Vascular Surgery”、(米国)、2002年4月、第35巻、第4号、p.661−665において、腎臓下部に生じた腹部大動脈瘤の破裂症例患者及び非破裂症例患者の手術前の血液中D−ダイマー濃度が測定され、それぞれの患者における測定値が記載されている。
しかし、これらの文献においては、血液凝固・線溶系の異常を判定するマーカーの一つとしてD−ダイマーが測定されたに過ぎず、血液中のD−ダイマー濃度を指標にして、破裂性腹部大動脈瘤を判定する方法に関しては記載されていない。まして、これらの文献には、検知された血液中のD−ダイマー濃度と、後述する急性心筋梗塞等の破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中D−ダイマー濃度とを比較して破裂性腹部大動脈瘤を判定する方法に関しては記載されていない。
また、急性心筋梗塞患者の血液中D−ダイマー濃度が健常人に比べて上昇していることが知られている(例えば、“The American Journal of Medicine”、(米国)、1992年12月、第93巻、p.651−657)。
しかしながら、D−ダイマーを破裂性腹部大動脈瘤を判定するための生化学的マーカーとして使用することはこれまでに報告されていない。
例えば、“Journal of Vascular Surgery”、(米国)、1999年10月、第30巻、第4号、p.641−650、および“Journal of Vascular Surgery”、(米国)、2002年4月、第35巻、第4号、p.661−665において、腎臓下部に生じた腹部大動脈瘤の破裂症例患者及び非破裂症例患者の手術前の血液中D−ダイマー濃度が測定され、それぞれの患者における測定値が記載されている。
しかし、これらの文献においては、血液凝固・線溶系の異常を判定するマーカーの一つとしてD−ダイマーが測定されたに過ぎず、血液中のD−ダイマー濃度を指標にして、破裂性腹部大動脈瘤を判定する方法に関しては記載されていない。まして、これらの文献には、検知された血液中のD−ダイマー濃度と、後述する急性心筋梗塞等の破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中D−ダイマー濃度とを比較して破裂性腹部大動脈瘤を判定する方法に関しては記載されていない。
激しい腹部痛を伴う破裂性腹部大動脈瘤は、急性腹症に属する疾患の一つであり、致死率が高く、緊急を要する疾患である。そのため、発症早期に迅速かつ的確な本疾患の診断と適切な治療を行うことは、救命医療の分野では非常に重要である。
急性腹症は、急激な腹部痛を主訴とし、早期の治療を必要とする疾患の総称である。前記急性腹症の中には、破裂性腹部大動脈瘤の症状とは見分けのつかない腹部痛を有する疾患、すなわち、破裂性腹部大動脈瘤の類症が多数存在する。そのため、救命医療の現場では、破裂性腹部大動脈瘤を発症しているか否かを判断する場合、破裂性腹部大動脈瘤とその類症との鑑別が困難な場合がある。
例えば、破裂性腹部大動脈瘤の類症の一つである急性心筋梗塞は、破裂性腹部大動脈瘤と同様に致死率が高く、発症早期の迅速な診断と治療が必要な疾患であり、破裂性腹部大動脈瘤の症状と見分けのつかない上腹部付近の痛み(心窩部痛)を主訴として発症することがある。そのため、医師、特に非専門医がその臨床症状から破裂性腹部大動脈瘤と急性心筋梗塞とを明確に鑑別することが困難な場合がある。
もし誤って、出血性疾患である破裂性腹部大動脈瘤患者に対して、血栓性疾患の急性心筋梗塞に対する治療方法である血栓溶解療法を施すと、大量の出血により患者を死に至らしめる可能性がある。
従って、破裂性腹部大動脈瘤を、急性心筋梗塞等の破裂性腹部大動脈瘤の類症と区別して判定し、破裂性腹部大動脈瘤に対する適切な治療を施すことは、救命医療の分野において非常に重要である。
現在の医療現場において、破裂性腹部大動脈瘤の診断には、腹部疾患患者に対する一般的な診断方法、例えば、腹部の単純X線撮影法、超音波断層法、コンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)等の画像診断法が使用されている。これらの方法により、医師は臓器や血管の病巣部位を直接、視覚的に観察し、病巣の形状や大きさ等の詳細な情報を把握している。
しかし、これらの診断方法の多くは、[1]測定時間が長い、[2]患者を長時間一定の体位で保持する必要がある、[3]絶食が必要な場合がある、[4]装置自体が大きく特殊であるため持ち運びが困難であり、患者自身をその装置のある施設まで移動させる必要がある、[5]血管造影剤の投与が必要な場合がある、[6]特殊技術を要する専門家が必要である、などの点で迅速性、簡便性に欠ける面がある。
従って、救命医療の分野においては、従来の上記一般的な腹部疾患の診断方法に加えて、血液中の生化学的マーカーを用いた、迅速かつ患者への負担が軽減された、破裂性腹部大動脈瘤の判定方法の提供が望まれている。
このような状況に鑑み、本発明は生化学的マーカーとして血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を判定する方法、及び前記判定方法を実施するために使用される判定用試薬等、並びに該判定用試薬等を含む商業パッケージを提供することを目的とする。
本発明者らは破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者14名の血液、及び破裂性腹部大動脈瘤の類症例として、急性心筋梗塞患者34名、尿管結石患者3名(うち1名は水腎症を併発)、穿孔性胃潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)の併発患者3名、穿孔性十二指腸潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)の併発患者1名、大腸憩室炎と腹膜炎の併発患者1名及び癒着性イレウス患者1名の血液を採取し、その中に含まれるD−ダイマー濃度を測定した。その結果、破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者の血液中D−ダイマー濃度が、破裂性腹部大動脈瘤の類症を発症している患者のそれと比較して著しく高いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法。
(2)破裂性腹部大動脈瘤が疑われる症状を有するヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法。
(3)検知された血液中のD−ダイマー濃度を、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中のD−ダイマー濃度及び/又は予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中のD−ダイマー濃度と比較して、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する上記(1)又は(2)に記載の判定方法。
(4)検知された血液中のD−ダイマー濃度を、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との間で設定されたD−ダイマーのカットオフ値と比較して、前記濃度が前記カットオフ値以上の場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いと判断し、前記カットオフ値未満の場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いと判断する上記(1)又は(2)に記載の判定方法。
(5)D−ダイマー濃度をD−ダイマーを認識する抗体を使用した免疫化学的方法によって検知する上記(1)〜(4)の何れかに記載の判定方法。
(6)免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法又は免疫クロマト法の何れかである上記(5)に記載の判定方法。
(7)上記(5)又は(6)に記載の判定方法を実施するために使用され、D−ダイマーを認識する抗体を含有してなる破裂性腹部大動脈瘤の判定用試薬又は判定用キット。
(8)抗体がモノクローナル抗体である上記(7)に記載の判定用試薬又は判定用キット。
(9)上記(7)に記載の判定用試薬及び該試薬に関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物及び/又は該パッケージに、該試薬は破裂性腹部大動脈瘤の判定の用途に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
(10)上記(7)に記載の判定用キット及び該キットに関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物及び/又は該パッケージに、該キットは破裂性腹部大動脈瘤の判定の用途に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
上記本発明の判定方法及び判定用試薬等を使用することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性の判断を、血液中のD−ダイマー濃度を指標にして行うことができ、医師はこの判定結果を考慮した上で、患者に対して適切な処置を施すことができる。
急性腹症は、急激な腹部痛を主訴とし、早期の治療を必要とする疾患の総称である。前記急性腹症の中には、破裂性腹部大動脈瘤の症状とは見分けのつかない腹部痛を有する疾患、すなわち、破裂性腹部大動脈瘤の類症が多数存在する。そのため、救命医療の現場では、破裂性腹部大動脈瘤を発症しているか否かを判断する場合、破裂性腹部大動脈瘤とその類症との鑑別が困難な場合がある。
例えば、破裂性腹部大動脈瘤の類症の一つである急性心筋梗塞は、破裂性腹部大動脈瘤と同様に致死率が高く、発症早期の迅速な診断と治療が必要な疾患であり、破裂性腹部大動脈瘤の症状と見分けのつかない上腹部付近の痛み(心窩部痛)を主訴として発症することがある。そのため、医師、特に非専門医がその臨床症状から破裂性腹部大動脈瘤と急性心筋梗塞とを明確に鑑別することが困難な場合がある。
もし誤って、出血性疾患である破裂性腹部大動脈瘤患者に対して、血栓性疾患の急性心筋梗塞に対する治療方法である血栓溶解療法を施すと、大量の出血により患者を死に至らしめる可能性がある。
従って、破裂性腹部大動脈瘤を、急性心筋梗塞等の破裂性腹部大動脈瘤の類症と区別して判定し、破裂性腹部大動脈瘤に対する適切な治療を施すことは、救命医療の分野において非常に重要である。
現在の医療現場において、破裂性腹部大動脈瘤の診断には、腹部疾患患者に対する一般的な診断方法、例えば、腹部の単純X線撮影法、超音波断層法、コンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)等の画像診断法が使用されている。これらの方法により、医師は臓器や血管の病巣部位を直接、視覚的に観察し、病巣の形状や大きさ等の詳細な情報を把握している。
しかし、これらの診断方法の多くは、[1]測定時間が長い、[2]患者を長時間一定の体位で保持する必要がある、[3]絶食が必要な場合がある、[4]装置自体が大きく特殊であるため持ち運びが困難であり、患者自身をその装置のある施設まで移動させる必要がある、[5]血管造影剤の投与が必要な場合がある、[6]特殊技術を要する専門家が必要である、などの点で迅速性、簡便性に欠ける面がある。
従って、救命医療の分野においては、従来の上記一般的な腹部疾患の診断方法に加えて、血液中の生化学的マーカーを用いた、迅速かつ患者への負担が軽減された、破裂性腹部大動脈瘤の判定方法の提供が望まれている。
このような状況に鑑み、本発明は生化学的マーカーとして血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を判定する方法、及び前記判定方法を実施するために使用される判定用試薬等、並びに該判定用試薬等を含む商業パッケージを提供することを目的とする。
本発明者らは破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者14名の血液、及び破裂性腹部大動脈瘤の類症例として、急性心筋梗塞患者34名、尿管結石患者3名(うち1名は水腎症を併発)、穿孔性胃潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)の併発患者3名、穿孔性十二指腸潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)の併発患者1名、大腸憩室炎と腹膜炎の併発患者1名及び癒着性イレウス患者1名の血液を採取し、その中に含まれるD−ダイマー濃度を測定した。その結果、破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者の血液中D−ダイマー濃度が、破裂性腹部大動脈瘤の類症を発症している患者のそれと比較して著しく高いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法。
(2)破裂性腹部大動脈瘤が疑われる症状を有するヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法。
(3)検知された血液中のD−ダイマー濃度を、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中のD−ダイマー濃度及び/又は予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中のD−ダイマー濃度と比較して、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する上記(1)又は(2)に記載の判定方法。
(4)検知された血液中のD−ダイマー濃度を、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との間で設定されたD−ダイマーのカットオフ値と比較して、前記濃度が前記カットオフ値以上の場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いと判断し、前記カットオフ値未満の場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いと判断する上記(1)又は(2)に記載の判定方法。
(5)D−ダイマー濃度をD−ダイマーを認識する抗体を使用した免疫化学的方法によって検知する上記(1)〜(4)の何れかに記載の判定方法。
(6)免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法又は免疫クロマト法の何れかである上記(5)に記載の判定方法。
(7)上記(5)又は(6)に記載の判定方法を実施するために使用され、D−ダイマーを認識する抗体を含有してなる破裂性腹部大動脈瘤の判定用試薬又は判定用キット。
(8)抗体がモノクローナル抗体である上記(7)に記載の判定用試薬又は判定用キット。
(9)上記(7)に記載の判定用試薬及び該試薬に関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物及び/又は該パッケージに、該試薬は破裂性腹部大動脈瘤の判定の用途に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
(10)上記(7)に記載の判定用キット及び該キットに関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物及び/又は該パッケージに、該キットは破裂性腹部大動脈瘤の判定の用途に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
上記本発明の判定方法及び判定用試薬等を使用することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性の判断を、血液中のD−ダイマー濃度を指標にして行うことができ、医師はこの判定結果を考慮した上で、患者に対して適切な処置を施すことができる。
図1は、実施例1において測定した各患者の血液中のD−ダイマー濃度の分布図である。
図2は、実施例2において作成したD−ダイマー濃度のROC曲線である。
図2は、実施例2において作成したD−ダイマー濃度のROC曲線である。
本発明は、ヒト、例えば、破裂性腹部大動脈瘤が疑われる症状を有するヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法に関する。
破裂性腹部大動脈瘤は、増大した腹部の大動脈瘤が、後腹膜腔内又は腹腔内に破裂した病態を有する疾患である。患者の自覚症状がないまま大動脈瘤が増大することも少なくないため、本疾患の発症を早期に予測することは困難である。なお、大動脈瘤とは、動脈硬化や炎症等の要因により脆弱化した大動脈壁が血圧に耐えられなくなり、動脈内腔が限局的に拡張した病態をいう。
本疾患の典型的な臨床症状は、激烈な腹部痛であり、その病巣の部位や大きさによっては、その痛みは腹部に限局せず腰部や背部にまでおよぶことがある。
従って、本発明において「破裂性腹部大動脈瘤が疑われる症状」とは、前述のような破裂性腹部大動脈瘤の臨床症状を意味する。
本発明において「破裂性腹部大動脈瘤の判定」とは、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断することのみならず、本疾患を発症している可能性が高いと判断された場合には、検知されたD−ダイマー濃度に基づいて、本疾患の病態の重篤度を推定することも意味する。
本発明において、ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度の検知は、特に制限されず何れの方法によっても行うことができる。なお、本明細書において「D−ダイマー濃度の検知」には、D−ダイマー濃度を定量的に測定すること、一定範囲内のD−ダイマー濃度を半定量的に測定すること、及び一定濃度以上のD−ダイマーの有無を定性的に判定することの何れもが含まれる。
血液中のD−ダイマー濃度を検知する方法として、例えば、免疫化学的方法やHPLC法等の各種クロマトグラフィー法等が挙げられ、その中でも特に、D−ダイマーを認識する抗体(以下「抗D−ダイマー抗体」ということもある)を利用する免疫化学的方法により検知するのが好ましい。また、破裂性腹部大動脈瘤の病態の重篤度や経過を判定したい場合には、定量的にD−ダイマー濃度を測定することができる方法が好ましい。
血液中のD−ダイマー濃度の検知に使用される免疫化学的方法としては、特に制限はなく、従来公知の例えば、酵素免疫測定法(EIA法)、ラテックス凝集法、免疫クロマト法、放射免疫測定法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、抗原抗体複合体形成に伴う濁度を測定する比濁法、抗体固相膜電極を利用し抗原との結合による電位変化を測定する酵素センサー電極法、免疫電気泳動法、ウエスタンブロット法等が挙げられる。これらの中でも、EIA法、ラテックス凝集法又は免疫クロマト法によってD−ダイマー濃度を検知するのが好ましい。
EIA法には、酵素標識抗原と検体中の抗原とを競合させる競合法と、競合させることのない非競合法があるが、これらの方法の中でも、2種類の抗体、特にモノクローナル抗体を用いた、非競合法の一種であるサンドイッチ酵素結合免疫固相測定法(サンドイッチELISA法)が抗原(D−ダイマー)に対する特異性及び測定操作の容易性において特に好ましい。
サンドイッチELISA法によれば、D−ダイマーに存在する異なったエピトープを認識する2種類の抗体、すなわち固相化抗D−ダイマー抗体と酵素標識抗D−ダイマー抗体との間に、D−ダイマーを挟み込む(サンドイッチ)ことによってD−ダイマー濃度を検知することができる。すなわち、固相化抗体によって捕捉されたD−ダイマーと結合した標識抗体の酵素量を測ることにより、D−ダイマー濃度を検知することができる。
また、サンドイッチELISA法の一種としてアビジン−ビオチン反応を利用する方法もある。本法によれば、血液中のD−ダイマーを固相化抗D−ダイマー抗体でもって捕捉し、捕捉されたD−ダイマーとビオチンで標識した抗D−ダイマー抗体との間で抗原抗体反応を行わせ、次に、酵素標識ストレプトアビジンを加えることによって、前記と同様にしてD−ダイマー濃度を検知することができる。
ラテックス凝集法は、抗体感作ラテックス粒子と抗原との凝集反応を利用した免疫化学的方法である。この方法によるD−ダイマー濃度の検知は、抗D−ダイマー抗体感作ラテックス粒子と検体血液中のD−ダイマーとを免疫反応せしめ、その結果生じたラテックス粒子の凝集の程度を測定することにより実施できる。
また、免疫クロマト法は全ての免疫化学反応系がシート状のキャリア上に保持されており、血液の添加のみで操作が完了する方法である。本法によるD−ダイマー濃度の検知の要領は、次のとおりである。まず、検体たる血液がキャリアに滴下されると、血液中のD−ダイマーと標識物(金コロイド等)で標識されたキャリア上の抗D−ダイマー抗体とが免疫反応し、その結果、免疫複合体が生成される。この複合体がキャリア上を展開し、その特定箇所に固相化された別のエピトープを認識する抗D−ダイマー抗体に捕捉されると標識物が集積し、その集積度合いを肉眼で観察することによって、D−ダイマー濃度を検知することができる。
免疫クロマト法の実施には特別な測定機器は不要であり、病院外での判定や、救急などの迅速な判定が求められる場合には有利な方法である。本方法は、一定範囲内のD−ダイマー濃度を半定量的に測定する場合や一定濃度以上のD−ダイマーの有無を定性的に判定する場合に適しており、後述するカットオフ値を予め定めた場合には、カットオフ値以上のD−ダイマー濃度を検知すれば陽性の結果が、また、カットオフ値未満であれば陰性の結果が出るように容易に設定することができる。
なお、血液中のD−ダイマー濃度の検知を目的とする上記サンドイッチELISA法やラテックス凝集法等の免疫化学的方法は既に公知であり、これらの方法に基づくD−ダイマーの測定試薬や測定キットは後述のとおり市販されている。これらの試薬やキットを使用すれば、ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度の検知は容易に実施することができる。
本発明において、検体であるヒトの血液としては、全血、血清、血漿の何れであってもよく、これらは、ヒトから採取した血液を常法に従って処理することで、適宜、得ることができる。
破裂性腹部大動脈瘤の判定方法は、このようにして検知された血液中のD−ダイマー濃度を、例えば、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中D−ダイマー濃度の平均値や分布と比較することによって、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断して実施することができる。
具体的には、検知された血液中のD−ダイマー濃度が予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者のD−ダイマー濃度の平均値付近である場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いとの判断をすることができる。
本発明者らによれば、後記実施例に示すように、破裂性腹部大動脈瘤の患者14名の血液中D−ダイマー濃度の平均値は16.5μg/mLであった。
また、検知された血液中のD−ダイマー濃度を、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中D−ダイマー濃度の平均値や分布と比較することによって、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断することができる。
具体的には、検知された血液中のD−ダイマー濃度が予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者のD−ダイマー濃度の平均値付近である場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いとの判断をすることができる。
本発明者らによれば、後記実施例1に示すように、破裂性腹部大動脈瘤の類症患者43名の血液中D−ダイマー濃度の平均値は0.57μg/mLであり、破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中のD−ダイマー濃度とは大きく相違している(図1参照)。
本発明において「破裂性腹部大動脈瘤の類症」とは、急性腹症に属する疾患であって、破裂性腹部大動脈瘤の症状と見分けの付かない腹部痛を有する疾患を意味する。例えば、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウス等が破裂性腹部大動脈瘤の類症として挙げられる。これら類症の病態の概要は以下のとおりである。
「急性心筋梗塞(AMI:acute myocardial infarction)」は、冠状動脈が閉塞し、心筋に栄養や酸素が届かないために心筋細胞が壊死する疾患である。世界保健機構(WHO)は、A.胸痛、B.心電図異常、及びC.クレアチンキナーゼ−MBやアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ等の血液中の心筋逸脱酵素の上昇、の中の2つ以上の要件を満たす者が本疾患を発症しているとする診断基準を示している。
本疾患は、近年の食生活の欧米化により、日本において急激に増加している。また、本疾患は、主な症状である激しい胸痛及び呼吸困難を伴い突然に発症し、心筋の梗塞巣の大きさによっては、発症と同時に心停止に至ることもある極めて経過の早い疾患である。このため発症後1〜2時間で患者が死亡することも多く、迅速かつ的確な本疾患の診断とそれに対応した適切な処置を施すことが救命のためには重要である。上記のように急性心筋梗塞の典型的な症状は激しい胸痛であるが、破裂性腹部大動脈瘤の症状と見分けのつかない上腹部の痛み、すなわち心窩部痛を主訴として発症する場合もある。
「尿管結石症(ureter olithiasis)」は、腎結石が尿管に下降して尿管を閉塞することにより発症する疾患である。尿管が閉塞すると、尿流障害が起こり、尿が腎臓に逆流し腎臓の内圧が上昇する。そのため腹部や腰部、又は背部に破裂性腹部大動脈瘤と類似する激痛を伴うことが多い。
「穿孔性胃潰瘍(perforated gastric ulcer)」や「穿孔性十二指腸潰瘍(perforated duodenal ulcer)」は、胃や十二指腸の粘膜表面の潰瘍が深部にまで達し、胃や十二指腸の壁に穴があくことにより発症する疾患である。本疾患は突然の上腹部痛、特に心窩部の激痛で始まり、その痛みは持続する。
「大腸憩室炎(diverticulitis of the colon)」は、大腸憩室(腸管の内圧が上昇し、大腸粘膜が壁外に突出してできる窪み)が細菌感染等により炎症を起こし、下腹部の限局性圧痛を伴う疾患である。
「腹膜炎(peritonitis)」は、消化管の腹腔内への穿孔等が原因で、細菌性の内容物が腹腔内に漏出し、腹膜が細菌感染して炎症を起こすために発症する疾患である。本疾患の症状は、持続的な腹部全体に広がる激痛である。なお、炎症が腹膜全体に及ぶ場合を汎発性腹膜炎という。
「癒着性イレウス(adhesive intestinal obstruction)」は、開腹手術や腸管の炎症等が原因で、腸管どうし又は腸管と腸間膜、腹壁、及び他の臓器が癒着し、腸管内腔の閉塞や腸の機能低下が生じるために起こる腸管内容物の通過障害である。腸管の蠕動運動の亢進により、腹部に間欠的な仙痛発作を伴うことが多い。
以上のとおり、破裂性腹部大動脈瘤と、上記のような破裂性腹部大動脈瘤の類症は、激烈な腹部痛を有する点で共通しているため、破裂性腹部大動脈瘤とその類症との鑑別が困難な場合がある。
また、本発明の別の実施形態においては、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との間でD−ダイマーのカットオフ値を予め設定しておき、検知されたD−ダイマー濃度が前記カットオフ値以上(陽性)の場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高く、また、検知された濃度が前記カットオフ値未満(陰性)の場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いとの判断をすることができる。
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有病正診率)及び高い診断特異度(無病正診率)の両方を満足できる値である。例えば、本発明の場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者で高い陽性(カットオフ値以上)率を示し、かつ、破裂性腹部大動脈瘤の類症を発症している患者で高い陰性(カットオフ値未満)率を示すD−ダイマー濃度をカットオフ値として設定することができる。
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、多数の破裂性腹部大動脈瘤患者、及び破裂性腹部大動脈瘤の類症患者において血液中のD−ダイマー濃度を測定し、任意の濃度における、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との診断感度及び診断特異度を求め、これらの値に基づいて、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。なお、ROC曲線は、市販の解析ソフトを使用して作成することもできる(図2参照)。そして、診断感度及び診断特異度が可能な限り100%に近いときのD−ダイマー濃度を求め、その値をカットオフ値とすることができる。また、例えば、任意の濃度における診断効率(全症例数に対する、有病正診症例と無病正診症例の合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される濃度をカットオフ値とすることもできる。
例えば、破裂性腹部大動脈瘤の類症が、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウスからなる群である場合に、破裂性腹部大動脈瘤と、上記の類症群との間で設定された血液中のD−ダイマーのカットオフ値は、1.7μg/mLであった(実施例2)。このようなカットオフ値は、特定の値をとるものではなく、カットオフ値の設定の際に使用される患者母集団に依存して変動する。
なお、同一の検体を対象とした場合でも、D−ダイマー濃度の測定値は使用する測定方法や試薬によって異なることもあるため、カットオフ値は使用する測定方法や試薬ごとに設定する必要がある。
また、検知されたD−ダイマー濃度に基づいて、破裂性腹部大動脈瘤の病態の重篤度を推定することもできる。例えば、D−ダイマーの濃度は破裂性腹部大動脈瘤の病態の重篤度と正に相関し得る。
本発明の判定方法を実施する場合には、公知の一般的な検査法である他の方法、例えば、腹部の単純X線撮影法、超音波断層法、コンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)等と組み合わせることにより、破裂性腹部大動脈瘤の判定精度はより高くなる。
また、本発明は、免疫化学的方法により血液中のD−ダイマー濃度を検知して上記本発明の判定方法を実施するために使用され、抗D−ダイマー抗体を含有してなる破裂性腹部大動脈瘤の判定用試薬又は判定用キットに関する。
前記判定用試薬又は判定用キットに含まれる抗D−ダイマー抗体は、ヒトから分離された血液中に存在するD−ダイマーを認識し、D−ダイマーとの特異的な免疫反応性を有するものであれば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れでも良い。両者のうち、抗体の安定供給の点において、また、D−ダイマーに対する高い特異性及び均一性の点においてモノクローナル抗体が好ましい。
このような抗D−ダイマー抗体は公知の手段により製造することができ、遊離の状態、標識された状態又は固相化された状態で当該試薬又はキットに含まれる。
ポリクローナル抗体は、常法によりヒトの血液から分離・精製されたD−ダイマーを適当なアジュバントとともにマウス、ラット、ウサギ等の動物に免疫し、血液を採取して公知の処理をなすことにより製造することができる。なお、免疫抗原として、上記D−ダイマーの代わりに、遺伝子工学的手法により得られる組換え型D−ダイマーやそれらの同効物(断片)を使用することもできる。
また、モノクローナル抗体は、このように免疫された動物の脾臓細胞を採取し、ミルシュタインらの方法によりミエローマ細胞との細胞融合、抗体産生細胞スクリーニング及びクローニング等を行い、抗D−ダイマー抗体を産生する細胞株を樹立し、これを培養することにより製造することができる。
本発明の判定用試薬がサンドイッチELISA法に基づく場合、かくして得られた抗D−ダイマー抗体は、固相化抗D−ダイマー抗体及び酵素標識抗D−ダイマー抗体の形態で当該試薬に含まれる。
固相化抗D−ダイマー抗体は、前述のようにして得られた抗体を固相(例えば、マイクロプレートウェルやプラスチックビーズ)に結合させることにより製造することができる。固相への結合は、通常、抗体をクエン酸緩衝液等の適当な緩衝液に溶解し、固相表面と抗体溶液を適当な時間(1〜2日)接触させることにより行うことができる。
さらに、非特異的吸着や非特異的反応を抑制するために、牛血清アルブミン(BSA)や牛ミルク蛋白等を溶解したリン酸緩衝溶液を固相と接触させ、抗体によってコートされなかった固相表面部分を前記BSAや牛ミルク蛋白等でブロッキングすることが一般に行われる。
酵素標識抗D−ダイマー抗体は、上記固相化された抗体とは異なるエピトープを認識する抗D−ダイマー抗体と、酵素とを結合(標識)させることにより製造することができる。該抗体を標識する酵素としては、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、パーオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。これらの酵素と抗D−ダイマー抗体との結合はそれ自体公知の方法、例えば、グルタルアルデヒド法、マレイミド法等により行うことができる。
また、ELISA法においてアビジン−ビオチン反応を利用した場合、本発明の判定用試薬に含まれるビオチン標識抗D−ダイマー抗体は、例えば、市販のビオチン標識化キットを使用することにより製造できる。
サンドイッチELISA法を実施する場合、前記抗D−ダイマー抗体以外に必要に応じて、標準物質、洗浄液、酵素活性測定用試薬(基質剤、基質溶解液、反応停止液等)、酵素標識ストレプトアビジン(アビジン−ビオチン反応を利用した場合)等が使用される。従って、本発明は、抗D−ダイマー抗体以外にこれらを構成試薬として含む判定用キットの形態であってもよい。
前記基質剤としては、選択した標識酵素に応じて適当なものが選ばれる。例えば、酵素としてパーオキシダーゼを選択した場合にはo−フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンチジン(TMB)等が使用され、アルカリフォスファターゼを選択した場合にはp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)等が使用される。また、反応停止液、基質溶解液についても、選択した酵素に応じて、従来公知のものを特に制限なく適宜使用することができる。
なお、サンドイッチELISA法によるD−ダイマーの測定試薬や測定キットが多数販売されており(例えば、ベーリンガーマンハイム社製の「アセラクロムDダイマー」(商品名)、富士レビオ社製の「ダイマーテストEIA」(商品名)等)、これらの試薬等を本発明の判定用試薬又は判定用キットとして使用することもできる。
本発明の判定用試薬がラテックス凝集法に基づく場合、抗D−ダイマー抗体は、ラテックス感作抗D−ダイマー抗体の形態で該試薬又は該キットに含まれる。ラテックス感作抗D−ダイマー抗体の製造、すなわち、ラテックス粒子と抗D−ダイマー抗体との感作(結合)は、この分野で公知の方法、例えば、化学結合法(架橋剤としてカルボジイミドやグルタルアルデヒド等を用いる方法)や物理的吸着法によりなすことができる。
ラテックス凝集法の実施には、上記ラテックス感作抗体以外に必要に応じて、希釈安定化緩衝液、標準抗原等が使用される。従って、本発明は、ラテックス感作抗体以外に、これらを構成試薬として含む判定用キットの形態であってもよい。
なお、ラテックス凝集法によるD−ダイマーの測定試薬や測定キットが多数販売されており(例えば、ダイアヤトロン社製の「エルピアエースD−Dダイマー」(商品名)、日本ロッシュ社製の「コアグソルD−ダイマー」(商品名)等)、本発明の判定用試薬又は判定用キットとしてこれらの試薬等を使用することもできる。
本発明の判定用試薬が免疫クロマト法に基づく場合、抗D−ダイマー抗体は、固相化抗D−ダイマー抗体及び標識抗D−ダイマー抗体の形態で該試薬に含まれる。標識抗D−ダイマー抗体における標識物として、この分野において公知のものを適宜使用することができるが、その中でも金コロイドを使用するのが好ましい。このような免疫クロマト法による本発明の判定用試薬は、“Clinical Biochemistry”2001年、第34巻、p.257−263に記載の方法に準じて製造することができる。
免疫クロマト法に基づく本発明の判定用試薬は、予め定められたカットオフ値以上のD−ダイマー濃度を検知すれば陽性の結果が、また、カットオフ値未満であれば陰性の結果が出るように設定する場合に好適に使用される。例えば、前記判定用試薬を使用して、陽性の結果が出た場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いと判断し、また、陰性の結果が出た場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いと判断することができる。
免疫クロマト法の実施には、上記抗D−ダイマー抗体以外に必要に応じて、標準物質、緩衝液等が使用される。従って、本発明は、抗D−ダイマー抗体以外に、これらを構成試薬として含む判定用キットの形態であってもよい。
本発明の判定用試薬は、実際の医療現場において、商業パッケージの形態で提供される。かかる商業パッケージは本発明の判定用試薬と該試薬に関する記載物(いわゆる「添付文書」)を含むものである。そして、前記記載物及び/又は前記商業パッケージには、本発明の判定用試薬が破裂性腹部大動脈瘤の判定に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている。
また、本発明の判定用キットも、実際の医療現場においては、上記判定用試薬の場合と同様な商業パッケージの形態で提供される。
破裂性腹部大動脈瘤は、増大した腹部の大動脈瘤が、後腹膜腔内又は腹腔内に破裂した病態を有する疾患である。患者の自覚症状がないまま大動脈瘤が増大することも少なくないため、本疾患の発症を早期に予測することは困難である。なお、大動脈瘤とは、動脈硬化や炎症等の要因により脆弱化した大動脈壁が血圧に耐えられなくなり、動脈内腔が限局的に拡張した病態をいう。
本疾患の典型的な臨床症状は、激烈な腹部痛であり、その病巣の部位や大きさによっては、その痛みは腹部に限局せず腰部や背部にまでおよぶことがある。
従って、本発明において「破裂性腹部大動脈瘤が疑われる症状」とは、前述のような破裂性腹部大動脈瘤の臨床症状を意味する。
本発明において「破裂性腹部大動脈瘤の判定」とは、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断することのみならず、本疾患を発症している可能性が高いと判断された場合には、検知されたD−ダイマー濃度に基づいて、本疾患の病態の重篤度を推定することも意味する。
本発明において、ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度の検知は、特に制限されず何れの方法によっても行うことができる。なお、本明細書において「D−ダイマー濃度の検知」には、D−ダイマー濃度を定量的に測定すること、一定範囲内のD−ダイマー濃度を半定量的に測定すること、及び一定濃度以上のD−ダイマーの有無を定性的に判定することの何れもが含まれる。
血液中のD−ダイマー濃度を検知する方法として、例えば、免疫化学的方法やHPLC法等の各種クロマトグラフィー法等が挙げられ、その中でも特に、D−ダイマーを認識する抗体(以下「抗D−ダイマー抗体」ということもある)を利用する免疫化学的方法により検知するのが好ましい。また、破裂性腹部大動脈瘤の病態の重篤度や経過を判定したい場合には、定量的にD−ダイマー濃度を測定することができる方法が好ましい。
血液中のD−ダイマー濃度の検知に使用される免疫化学的方法としては、特に制限はなく、従来公知の例えば、酵素免疫測定法(EIA法)、ラテックス凝集法、免疫クロマト法、放射免疫測定法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、抗原抗体複合体形成に伴う濁度を測定する比濁法、抗体固相膜電極を利用し抗原との結合による電位変化を測定する酵素センサー電極法、免疫電気泳動法、ウエスタンブロット法等が挙げられる。これらの中でも、EIA法、ラテックス凝集法又は免疫クロマト法によってD−ダイマー濃度を検知するのが好ましい。
EIA法には、酵素標識抗原と検体中の抗原とを競合させる競合法と、競合させることのない非競合法があるが、これらの方法の中でも、2種類の抗体、特にモノクローナル抗体を用いた、非競合法の一種であるサンドイッチ酵素結合免疫固相測定法(サンドイッチELISA法)が抗原(D−ダイマー)に対する特異性及び測定操作の容易性において特に好ましい。
サンドイッチELISA法によれば、D−ダイマーに存在する異なったエピトープを認識する2種類の抗体、すなわち固相化抗D−ダイマー抗体と酵素標識抗D−ダイマー抗体との間に、D−ダイマーを挟み込む(サンドイッチ)ことによってD−ダイマー濃度を検知することができる。すなわち、固相化抗体によって捕捉されたD−ダイマーと結合した標識抗体の酵素量を測ることにより、D−ダイマー濃度を検知することができる。
また、サンドイッチELISA法の一種としてアビジン−ビオチン反応を利用する方法もある。本法によれば、血液中のD−ダイマーを固相化抗D−ダイマー抗体でもって捕捉し、捕捉されたD−ダイマーとビオチンで標識した抗D−ダイマー抗体との間で抗原抗体反応を行わせ、次に、酵素標識ストレプトアビジンを加えることによって、前記と同様にしてD−ダイマー濃度を検知することができる。
ラテックス凝集法は、抗体感作ラテックス粒子と抗原との凝集反応を利用した免疫化学的方法である。この方法によるD−ダイマー濃度の検知は、抗D−ダイマー抗体感作ラテックス粒子と検体血液中のD−ダイマーとを免疫反応せしめ、その結果生じたラテックス粒子の凝集の程度を測定することにより実施できる。
また、免疫クロマト法は全ての免疫化学反応系がシート状のキャリア上に保持されており、血液の添加のみで操作が完了する方法である。本法によるD−ダイマー濃度の検知の要領は、次のとおりである。まず、検体たる血液がキャリアに滴下されると、血液中のD−ダイマーと標識物(金コロイド等)で標識されたキャリア上の抗D−ダイマー抗体とが免疫反応し、その結果、免疫複合体が生成される。この複合体がキャリア上を展開し、その特定箇所に固相化された別のエピトープを認識する抗D−ダイマー抗体に捕捉されると標識物が集積し、その集積度合いを肉眼で観察することによって、D−ダイマー濃度を検知することができる。
免疫クロマト法の実施には特別な測定機器は不要であり、病院外での判定や、救急などの迅速な判定が求められる場合には有利な方法である。本方法は、一定範囲内のD−ダイマー濃度を半定量的に測定する場合や一定濃度以上のD−ダイマーの有無を定性的に判定する場合に適しており、後述するカットオフ値を予め定めた場合には、カットオフ値以上のD−ダイマー濃度を検知すれば陽性の結果が、また、カットオフ値未満であれば陰性の結果が出るように容易に設定することができる。
なお、血液中のD−ダイマー濃度の検知を目的とする上記サンドイッチELISA法やラテックス凝集法等の免疫化学的方法は既に公知であり、これらの方法に基づくD−ダイマーの測定試薬や測定キットは後述のとおり市販されている。これらの試薬やキットを使用すれば、ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度の検知は容易に実施することができる。
本発明において、検体であるヒトの血液としては、全血、血清、血漿の何れであってもよく、これらは、ヒトから採取した血液を常法に従って処理することで、適宜、得ることができる。
破裂性腹部大動脈瘤の判定方法は、このようにして検知された血液中のD−ダイマー濃度を、例えば、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中D−ダイマー濃度の平均値や分布と比較することによって、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断して実施することができる。
具体的には、検知された血液中のD−ダイマー濃度が予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者のD−ダイマー濃度の平均値付近である場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いとの判断をすることができる。
本発明者らによれば、後記実施例に示すように、破裂性腹部大動脈瘤の患者14名の血液中D−ダイマー濃度の平均値は16.5μg/mLであった。
また、検知された血液中のD−ダイマー濃度を、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中D−ダイマー濃度の平均値や分布と比較することによって、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断することができる。
具体的には、検知された血液中のD−ダイマー濃度が予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者のD−ダイマー濃度の平均値付近である場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いとの判断をすることができる。
本発明者らによれば、後記実施例1に示すように、破裂性腹部大動脈瘤の類症患者43名の血液中D−ダイマー濃度の平均値は0.57μg/mLであり、破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中のD−ダイマー濃度とは大きく相違している(図1参照)。
本発明において「破裂性腹部大動脈瘤の類症」とは、急性腹症に属する疾患であって、破裂性腹部大動脈瘤の症状と見分けの付かない腹部痛を有する疾患を意味する。例えば、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウス等が破裂性腹部大動脈瘤の類症として挙げられる。これら類症の病態の概要は以下のとおりである。
「急性心筋梗塞(AMI:acute myocardial infarction)」は、冠状動脈が閉塞し、心筋に栄養や酸素が届かないために心筋細胞が壊死する疾患である。世界保健機構(WHO)は、A.胸痛、B.心電図異常、及びC.クレアチンキナーゼ−MBやアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ等の血液中の心筋逸脱酵素の上昇、の中の2つ以上の要件を満たす者が本疾患を発症しているとする診断基準を示している。
本疾患は、近年の食生活の欧米化により、日本において急激に増加している。また、本疾患は、主な症状である激しい胸痛及び呼吸困難を伴い突然に発症し、心筋の梗塞巣の大きさによっては、発症と同時に心停止に至ることもある極めて経過の早い疾患である。このため発症後1〜2時間で患者が死亡することも多く、迅速かつ的確な本疾患の診断とそれに対応した適切な処置を施すことが救命のためには重要である。上記のように急性心筋梗塞の典型的な症状は激しい胸痛であるが、破裂性腹部大動脈瘤の症状と見分けのつかない上腹部の痛み、すなわち心窩部痛を主訴として発症する場合もある。
「尿管結石症(ureter olithiasis)」は、腎結石が尿管に下降して尿管を閉塞することにより発症する疾患である。尿管が閉塞すると、尿流障害が起こり、尿が腎臓に逆流し腎臓の内圧が上昇する。そのため腹部や腰部、又は背部に破裂性腹部大動脈瘤と類似する激痛を伴うことが多い。
「穿孔性胃潰瘍(perforated gastric ulcer)」や「穿孔性十二指腸潰瘍(perforated duodenal ulcer)」は、胃や十二指腸の粘膜表面の潰瘍が深部にまで達し、胃や十二指腸の壁に穴があくことにより発症する疾患である。本疾患は突然の上腹部痛、特に心窩部の激痛で始まり、その痛みは持続する。
「大腸憩室炎(diverticulitis of the colon)」は、大腸憩室(腸管の内圧が上昇し、大腸粘膜が壁外に突出してできる窪み)が細菌感染等により炎症を起こし、下腹部の限局性圧痛を伴う疾患である。
「腹膜炎(peritonitis)」は、消化管の腹腔内への穿孔等が原因で、細菌性の内容物が腹腔内に漏出し、腹膜が細菌感染して炎症を起こすために発症する疾患である。本疾患の症状は、持続的な腹部全体に広がる激痛である。なお、炎症が腹膜全体に及ぶ場合を汎発性腹膜炎という。
「癒着性イレウス(adhesive intestinal obstruction)」は、開腹手術や腸管の炎症等が原因で、腸管どうし又は腸管と腸間膜、腹壁、及び他の臓器が癒着し、腸管内腔の閉塞や腸の機能低下が生じるために起こる腸管内容物の通過障害である。腸管の蠕動運動の亢進により、腹部に間欠的な仙痛発作を伴うことが多い。
以上のとおり、破裂性腹部大動脈瘤と、上記のような破裂性腹部大動脈瘤の類症は、激烈な腹部痛を有する点で共通しているため、破裂性腹部大動脈瘤とその類症との鑑別が困難な場合がある。
また、本発明の別の実施形態においては、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との間でD−ダイマーのカットオフ値を予め設定しておき、検知されたD−ダイマー濃度が前記カットオフ値以上(陽性)の場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高く、また、検知された濃度が前記カットオフ値未満(陰性)の場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いとの判断をすることができる。
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有病正診率)及び高い診断特異度(無病正診率)の両方を満足できる値である。例えば、本発明の場合には、破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者で高い陽性(カットオフ値以上)率を示し、かつ、破裂性腹部大動脈瘤の類症を発症している患者で高い陰性(カットオフ値未満)率を示すD−ダイマー濃度をカットオフ値として設定することができる。
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、多数の破裂性腹部大動脈瘤患者、及び破裂性腹部大動脈瘤の類症患者において血液中のD−ダイマー濃度を測定し、任意の濃度における、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との診断感度及び診断特異度を求め、これらの値に基づいて、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。なお、ROC曲線は、市販の解析ソフトを使用して作成することもできる(図2参照)。そして、診断感度及び診断特異度が可能な限り100%に近いときのD−ダイマー濃度を求め、その値をカットオフ値とすることができる。また、例えば、任意の濃度における診断効率(全症例数に対する、有病正診症例と無病正診症例の合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される濃度をカットオフ値とすることもできる。
例えば、破裂性腹部大動脈瘤の類症が、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウスからなる群である場合に、破裂性腹部大動脈瘤と、上記の類症群との間で設定された血液中のD−ダイマーのカットオフ値は、1.7μg/mLであった(実施例2)。このようなカットオフ値は、特定の値をとるものではなく、カットオフ値の設定の際に使用される患者母集団に依存して変動する。
なお、同一の検体を対象とした場合でも、D−ダイマー濃度の測定値は使用する測定方法や試薬によって異なることもあるため、カットオフ値は使用する測定方法や試薬ごとに設定する必要がある。
また、検知されたD−ダイマー濃度に基づいて、破裂性腹部大動脈瘤の病態の重篤度を推定することもできる。例えば、D−ダイマーの濃度は破裂性腹部大動脈瘤の病態の重篤度と正に相関し得る。
本発明の判定方法を実施する場合には、公知の一般的な検査法である他の方法、例えば、腹部の単純X線撮影法、超音波断層法、コンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)等と組み合わせることにより、破裂性腹部大動脈瘤の判定精度はより高くなる。
また、本発明は、免疫化学的方法により血液中のD−ダイマー濃度を検知して上記本発明の判定方法を実施するために使用され、抗D−ダイマー抗体を含有してなる破裂性腹部大動脈瘤の判定用試薬又は判定用キットに関する。
前記判定用試薬又は判定用キットに含まれる抗D−ダイマー抗体は、ヒトから分離された血液中に存在するD−ダイマーを認識し、D−ダイマーとの特異的な免疫反応性を有するものであれば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れでも良い。両者のうち、抗体の安定供給の点において、また、D−ダイマーに対する高い特異性及び均一性の点においてモノクローナル抗体が好ましい。
このような抗D−ダイマー抗体は公知の手段により製造することができ、遊離の状態、標識された状態又は固相化された状態で当該試薬又はキットに含まれる。
ポリクローナル抗体は、常法によりヒトの血液から分離・精製されたD−ダイマーを適当なアジュバントとともにマウス、ラット、ウサギ等の動物に免疫し、血液を採取して公知の処理をなすことにより製造することができる。なお、免疫抗原として、上記D−ダイマーの代わりに、遺伝子工学的手法により得られる組換え型D−ダイマーやそれらの同効物(断片)を使用することもできる。
また、モノクローナル抗体は、このように免疫された動物の脾臓細胞を採取し、ミルシュタインらの方法によりミエローマ細胞との細胞融合、抗体産生細胞スクリーニング及びクローニング等を行い、抗D−ダイマー抗体を産生する細胞株を樹立し、これを培養することにより製造することができる。
本発明の判定用試薬がサンドイッチELISA法に基づく場合、かくして得られた抗D−ダイマー抗体は、固相化抗D−ダイマー抗体及び酵素標識抗D−ダイマー抗体の形態で当該試薬に含まれる。
固相化抗D−ダイマー抗体は、前述のようにして得られた抗体を固相(例えば、マイクロプレートウェルやプラスチックビーズ)に結合させることにより製造することができる。固相への結合は、通常、抗体をクエン酸緩衝液等の適当な緩衝液に溶解し、固相表面と抗体溶液を適当な時間(1〜2日)接触させることにより行うことができる。
さらに、非特異的吸着や非特異的反応を抑制するために、牛血清アルブミン(BSA)や牛ミルク蛋白等を溶解したリン酸緩衝溶液を固相と接触させ、抗体によってコートされなかった固相表面部分を前記BSAや牛ミルク蛋白等でブロッキングすることが一般に行われる。
酵素標識抗D−ダイマー抗体は、上記固相化された抗体とは異なるエピトープを認識する抗D−ダイマー抗体と、酵素とを結合(標識)させることにより製造することができる。該抗体を標識する酵素としては、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、パーオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。これらの酵素と抗D−ダイマー抗体との結合はそれ自体公知の方法、例えば、グルタルアルデヒド法、マレイミド法等により行うことができる。
また、ELISA法においてアビジン−ビオチン反応を利用した場合、本発明の判定用試薬に含まれるビオチン標識抗D−ダイマー抗体は、例えば、市販のビオチン標識化キットを使用することにより製造できる。
サンドイッチELISA法を実施する場合、前記抗D−ダイマー抗体以外に必要に応じて、標準物質、洗浄液、酵素活性測定用試薬(基質剤、基質溶解液、反応停止液等)、酵素標識ストレプトアビジン(アビジン−ビオチン反応を利用した場合)等が使用される。従って、本発明は、抗D−ダイマー抗体以外にこれらを構成試薬として含む判定用キットの形態であってもよい。
前記基質剤としては、選択した標識酵素に応じて適当なものが選ばれる。例えば、酵素としてパーオキシダーゼを選択した場合にはo−フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンチジン(TMB)等が使用され、アルカリフォスファターゼを選択した場合にはp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)等が使用される。また、反応停止液、基質溶解液についても、選択した酵素に応じて、従来公知のものを特に制限なく適宜使用することができる。
なお、サンドイッチELISA法によるD−ダイマーの測定試薬や測定キットが多数販売されており(例えば、ベーリンガーマンハイム社製の「アセラクロムDダイマー」(商品名)、富士レビオ社製の「ダイマーテストEIA」(商品名)等)、これらの試薬等を本発明の判定用試薬又は判定用キットとして使用することもできる。
本発明の判定用試薬がラテックス凝集法に基づく場合、抗D−ダイマー抗体は、ラテックス感作抗D−ダイマー抗体の形態で該試薬又は該キットに含まれる。ラテックス感作抗D−ダイマー抗体の製造、すなわち、ラテックス粒子と抗D−ダイマー抗体との感作(結合)は、この分野で公知の方法、例えば、化学結合法(架橋剤としてカルボジイミドやグルタルアルデヒド等を用いる方法)や物理的吸着法によりなすことができる。
ラテックス凝集法の実施には、上記ラテックス感作抗体以外に必要に応じて、希釈安定化緩衝液、標準抗原等が使用される。従って、本発明は、ラテックス感作抗体以外に、これらを構成試薬として含む判定用キットの形態であってもよい。
なお、ラテックス凝集法によるD−ダイマーの測定試薬や測定キットが多数販売されており(例えば、ダイアヤトロン社製の「エルピアエースD−Dダイマー」(商品名)、日本ロッシュ社製の「コアグソルD−ダイマー」(商品名)等)、本発明の判定用試薬又は判定用キットとしてこれらの試薬等を使用することもできる。
本発明の判定用試薬が免疫クロマト法に基づく場合、抗D−ダイマー抗体は、固相化抗D−ダイマー抗体及び標識抗D−ダイマー抗体の形態で該試薬に含まれる。標識抗D−ダイマー抗体における標識物として、この分野において公知のものを適宜使用することができるが、その中でも金コロイドを使用するのが好ましい。このような免疫クロマト法による本発明の判定用試薬は、“Clinical Biochemistry”2001年、第34巻、p.257−263に記載の方法に準じて製造することができる。
免疫クロマト法に基づく本発明の判定用試薬は、予め定められたカットオフ値以上のD−ダイマー濃度を検知すれば陽性の結果が、また、カットオフ値未満であれば陰性の結果が出るように設定する場合に好適に使用される。例えば、前記判定用試薬を使用して、陽性の結果が出た場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いと判断し、また、陰性の結果が出た場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いと判断することができる。
免疫クロマト法の実施には、上記抗D−ダイマー抗体以外に必要に応じて、標準物質、緩衝液等が使用される。従って、本発明は、抗D−ダイマー抗体以外に、これらを構成試薬として含む判定用キットの形態であってもよい。
本発明の判定用試薬は、実際の医療現場において、商業パッケージの形態で提供される。かかる商業パッケージは本発明の判定用試薬と該試薬に関する記載物(いわゆる「添付文書」)を含むものである。そして、前記記載物及び/又は前記商業パッケージには、本発明の判定用試薬が破裂性腹部大動脈瘤の判定に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている。
また、本発明の判定用キットも、実際の医療現場においては、上記判定用試薬の場合と同様な商業パッケージの形態で提供される。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1;破裂性腹部大動脈瘤患者、及び破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中D−ダイマー濃度の測定
救急外来患者のうち、破裂性腹部大動脈瘤と確定診断された患者(14名)、急性心筋梗塞と確定診断された患者(34名)、尿管結石と確定診断された患者(3名、うち1名は水腎症を併発)、穿孔性胃潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)を併発していると確定診断された患者(3名)、穿孔性十二指腸潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)を併発していると確定診断された患者(1名)、大腸憩室炎と腹膜炎を併発していると確定診断された患者(1名)、癒着性イレウスと確定診断された患者(1名)の来院時に採血された血液中のD−ダイマー濃度を以下のように測定してその結果を得た。
なお、これらの患者からはインフォームドコンセントを取得した。
(1)D−ダイマーの測定
ラテックス凝集法を測定原理とするロッシュダイアグノステイックス社製のD−ダイマー測定試薬「STAライアテストD−ダイマー」(商品名)(基準値:0.4μg/mL)を使用して次のとおり測定した。患者の静脈から市販のクエン酸ナトリウム採血管(インセパック−C凝固検査用(積水化学工業)、3.13%クエン酸ナトリウム0.2mL含有)に1.8mLの全血を採取した。その後、採血管を緩やかに転倒混和し、3000rpmで5分間、室温で遠心分離した。遠心分離後の採血管をそのままD−ダイマー測定自動装置であるロシュダイアグノステイックス社製のSTAにセットし、分析した。分析条件は、検体血液量50μL、緩衝液(上記D−ダイマー測定試薬に添付の試薬1;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン11.5mg/mL、アジ化ナトリウム1mg/mL、NaCl 23.5mg/mL、メチルパラオキシ安息香酸[防腐剤]0.95mg/mL)100μL、上記D−ダイマー測定試薬用のSTA機器用希釈液50μL、ラテックス感作抗D−ダイマー抗体液(上記D−ダイマー測定試薬に添付の試薬2;抗ヒトD−ダイマーマウスモノクローナル抗体55μg/mL、ラテックス0.65mg/mL、ウシ血清アルブミン3mg/mL、メチルパラオキシ安息香酸[防腐剤]0.95mg/mL、アジ化ナトリウム1mg/mL)150μLを自動的に添加し、分析時間240秒、反応温度37℃で測定した。この測定試薬の検量線範囲はD−ダイマー濃度0.2〜4.0μg/mLであり、この濃度範囲を超える高値検体は再検査の対象とした。高値検体は前記STA機器用希釈液で予め所定の希釈倍数で希釈し、再度STA装置に掛けて検体中のD−ダイマー濃度を測定した。D−ダイマー濃度の測定値はオンラインでコンピューター処理及び管理された。
(2)測定結果
測定結果は下記[表1]に示すとおりである。また、図1に各患者の測定値の分布を示す。このように破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者の血液中のD−ダイマー濃度は、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウスの各疾患を発症している患者に比べてはるかに高かった。
実施例2;カットオフ値による破裂性腹部大動脈瘤の判定
(1)カットオフ値の設定
上記実施例1で得られた測定値についてROC曲線分析を、ROC解析ソフトMed Calc Software社(ベルギー)製の「MedCalc」(商品名)を使用して行い、破裂性腹部大動脈瘤と、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウスからなる破裂性腹部大動脈瘤の類症群との間でD−ダイマーのカットオフ値を算出した。算出された値は1.7μg/mLであった。図2はそのときのROC曲線であり、その曲線下面積(AUC;area under curve)は0.992という1に非常に近い値であった。このことは血液中のD−ダイマーが、破裂性腹部大動脈瘤を、破裂性腹部大動脈瘤の類症群と区別して判定するのに有用なマーカーであることを意味する。
(2)カットオフ値の適用
上記(1)項で設定したカットオフ値(1.7μg/mL)により、実施例1の破裂性腹部大動脈瘤症例を、破裂性腹部大動脈瘤の類症群(急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウス)と区別して判定することを試みた。その時の診断精度(診断感度、診断特異度及び診断効率)を下記[表2]に示す。ここにおいて診断感度は破裂性腹部大動脈瘤患者における陽性症例(有病正診症例)の割合を意味し、診断特異度は破裂性腹部大動脈瘤の類症群患者における陰性症例(無病正診症例)の割合を意味する。診断効率は全症例数に対する、破裂性腹部大動脈瘤患者における陽性症例と破裂性腹部大動脈瘤の類症群における陰性症例の合計数の割合を意味し、この診断効率の値が高いほど、疾患を診断するために定められた診断基準が、その疾患をより正確に診断できることを表している。
上記表2に示すように、前項(1)で求めたカットオフ値を破裂性腹部大動脈瘤の判定基準とした場合の診断精度は非常に高かった。このことは、前記カットオフ値を使用すれば精度良く破裂性腹部大動脈瘤を判定できることを意味している。
実施例1;破裂性腹部大動脈瘤患者、及び破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中D−ダイマー濃度の測定
救急外来患者のうち、破裂性腹部大動脈瘤と確定診断された患者(14名)、急性心筋梗塞と確定診断された患者(34名)、尿管結石と確定診断された患者(3名、うち1名は水腎症を併発)、穿孔性胃潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)を併発していると確定診断された患者(3名)、穿孔性十二指腸潰瘍と腹膜炎(汎発性腹膜炎)を併発していると確定診断された患者(1名)、大腸憩室炎と腹膜炎を併発していると確定診断された患者(1名)、癒着性イレウスと確定診断された患者(1名)の来院時に採血された血液中のD−ダイマー濃度を以下のように測定してその結果を得た。
なお、これらの患者からはインフォームドコンセントを取得した。
(1)D−ダイマーの測定
ラテックス凝集法を測定原理とするロッシュダイアグノステイックス社製のD−ダイマー測定試薬「STAライアテストD−ダイマー」(商品名)(基準値:0.4μg/mL)を使用して次のとおり測定した。患者の静脈から市販のクエン酸ナトリウム採血管(インセパック−C凝固検査用(積水化学工業)、3.13%クエン酸ナトリウム0.2mL含有)に1.8mLの全血を採取した。その後、採血管を緩やかに転倒混和し、3000rpmで5分間、室温で遠心分離した。遠心分離後の採血管をそのままD−ダイマー測定自動装置であるロシュダイアグノステイックス社製のSTAにセットし、分析した。分析条件は、検体血液量50μL、緩衝液(上記D−ダイマー測定試薬に添付の試薬1;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン11.5mg/mL、アジ化ナトリウム1mg/mL、NaCl 23.5mg/mL、メチルパラオキシ安息香酸[防腐剤]0.95mg/mL)100μL、上記D−ダイマー測定試薬用のSTA機器用希釈液50μL、ラテックス感作抗D−ダイマー抗体液(上記D−ダイマー測定試薬に添付の試薬2;抗ヒトD−ダイマーマウスモノクローナル抗体55μg/mL、ラテックス0.65mg/mL、ウシ血清アルブミン3mg/mL、メチルパラオキシ安息香酸[防腐剤]0.95mg/mL、アジ化ナトリウム1mg/mL)150μLを自動的に添加し、分析時間240秒、反応温度37℃で測定した。この測定試薬の検量線範囲はD−ダイマー濃度0.2〜4.0μg/mLであり、この濃度範囲を超える高値検体は再検査の対象とした。高値検体は前記STA機器用希釈液で予め所定の希釈倍数で希釈し、再度STA装置に掛けて検体中のD−ダイマー濃度を測定した。D−ダイマー濃度の測定値はオンラインでコンピューター処理及び管理された。
(2)測定結果
測定結果は下記[表1]に示すとおりである。また、図1に各患者の測定値の分布を示す。このように破裂性腹部大動脈瘤を発症している患者の血液中のD−ダイマー濃度は、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウスの各疾患を発症している患者に比べてはるかに高かった。
(1)カットオフ値の設定
上記実施例1で得られた測定値についてROC曲線分析を、ROC解析ソフトMed Calc Software社(ベルギー)製の「MedCalc」(商品名)を使用して行い、破裂性腹部大動脈瘤と、急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウスからなる破裂性腹部大動脈瘤の類症群との間でD−ダイマーのカットオフ値を算出した。算出された値は1.7μg/mLであった。図2はそのときのROC曲線であり、その曲線下面積(AUC;area under curve)は0.992という1に非常に近い値であった。このことは血液中のD−ダイマーが、破裂性腹部大動脈瘤を、破裂性腹部大動脈瘤の類症群と区別して判定するのに有用なマーカーであることを意味する。
(2)カットオフ値の適用
上記(1)項で設定したカットオフ値(1.7μg/mL)により、実施例1の破裂性腹部大動脈瘤症例を、破裂性腹部大動脈瘤の類症群(急性心筋梗塞、尿管結石、穿孔性胃潰瘍、穿孔性十二指腸潰瘍、大腸憩室炎、腹膜炎、及び癒着性イレウス)と区別して判定することを試みた。その時の診断精度(診断感度、診断特異度及び診断効率)を下記[表2]に示す。ここにおいて診断感度は破裂性腹部大動脈瘤患者における陽性症例(有病正診症例)の割合を意味し、診断特異度は破裂性腹部大動脈瘤の類症群患者における陰性症例(無病正診症例)の割合を意味する。診断効率は全症例数に対する、破裂性腹部大動脈瘤患者における陽性症例と破裂性腹部大動脈瘤の類症群における陰性症例の合計数の割合を意味し、この診断効率の値が高いほど、疾患を診断するために定められた診断基準が、その疾患をより正確に診断できることを表している。
本発明の破裂性腹部大動脈瘤の判定方法によれば、血液中のD−ダイマー濃度を指標にして破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断することができ、医師はこの判定結果を考慮した上で、患者に対して適切な処置を施すことができる。また、本発明の判定用試薬等は、上記D−ダイマー濃度を検知して上記判定方法を実施するのに有用である。
本出願は、日本で出願された特願2004−232861(出願日:2004年8月10日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
本出願は、日本で出願された特願2004−232861(出願日:2004年8月10日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
Claims (10)
- ヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法。
- 破裂性腹部大動脈瘤が疑われる症状を有するヒトから分離された血液中のD−ダイマー濃度を検知することにより、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する破裂性腹部大動脈瘤の判定方法。
- 検知された血液中のD−ダイマー濃度を、予め測定された破裂性腹部大動脈瘤患者の血液中のD−ダイマー濃度及び/又は予め測定された破裂性腹部大動脈瘤の類症患者の血液中のD−ダイマー濃度と比較して、破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性を判断する請求の範囲1又は2に記載の判定方法。
- 検知された血液中のD−ダイマー濃度を、破裂性腹部大動脈瘤と、破裂性腹部大動脈瘤の類症との間で設定されたD−ダイマーのカットオフ値と比較して、前記濃度が前記カットオフ値以上の場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が高いと判断し、前記カットオフ値未満の場合には破裂性腹部大動脈瘤を発症している可能性が低いと判断する請求の範囲1又は2に記載の判定方法。
- D−ダイマー濃度をD−ダイマーを認識する抗体を使用した免疫化学的方法によって検知する請求の範囲1〜4の何れか一項に記載の判定方法。
- 免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法又は免疫クロマト法の何れかである請求の範囲5に記載の判定方法。
- 請求の範囲5又は6に記載の判定方法を実施するために使用され、D−ダイマーを認識する抗体を含有してなる破裂性腹部大動脈瘤の判定用試薬又は判定用キット。
- 抗体がモノクローナル抗体である請求の範囲7に記載の判定用試薬又は判定用キット。
- 請求の範囲7に記載の判定用試薬及び該試薬に関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物及び/又は該パッケージに、該試薬は破裂性腹部大動脈瘤の判定の用途に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
- 請求の範囲7に記載の判定用キット及び該キットに関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物及び/又は該パッケージに、該キットは破裂性腹部大動脈瘤の判定の用途に使用できる、又は使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
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---|---|---|---|
JP2004232861 | 2004-08-10 | ||
JP2004232861 | 2004-08-10 | ||
PCT/JP2005/014872 WO2006016687A1 (ja) | 2004-08-10 | 2005-08-09 | 破裂性腹部大動脈瘤の判定方法及び判定用試薬 |
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---|---|---|---|
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JPH0940700A (ja) * | 1995-07-28 | 1997-02-10 | Nippon Chem Res Kk | モノクロナール抗体 |
ATE349703T1 (de) * | 2002-08-09 | 2007-01-15 | Dade Behring Marburg Gmbh | Kombination von crp und d-dimer zur diagnose von tiefer venenthrombose |
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2005
- 2005-08-09 JP JP2006531777A patent/JPWO2006016687A1/ja active Pending
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