次に、本願に好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、5.1chのサラウンドシステム(以下、単に、サラウンドシステムという。)に対して本願の残響調整装置または音場補正システムを適用した場合の実施形態である。
〔第1実施形態〕
始めに、図1〜図8を用いて本願に係るサラウンドシステムの第1実施形態について説明する。
まず、図1を用いて本実施形態におけるサラウンドシステムの構成について説明する。なお、図1は、本実施形態のサラウンドシステムの構成を示すブロック図である。
本実施形態のサラウンドシステム100は、図1に示すように、リスニングルーム10、すなわち、聴取者に対して再生される音を提供する音場空間に設置されるようになっており、音源の再生または取得を行うとともに、当該再生された音または取得された音に対して所定の信号処理を行うようになっている。そして、このサラウンドシステム100は、5.1chのスピーカシステム130によって、信号処理された音を各スピーカ毎に拡声し、聴取者に対して臨場感(サラウンド感)のある音場空間を提供するようになっている。
このサラウンドシステム100は、記録メディアなどの音源を再生することにより、または、テレビジョン信号などの外部から音源を取得することにより、各スピーカに対応するチャンネル(チャネルとも言う。)成分を有する一定の形式のビットストリームデータを出力する音源出力装置110と、当該音源出力装置110から出力されたビットストリームを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードし、各チャンネルのオーディオ信号毎に信号処理を行うとともに、リスニングルーム10の残響特性その他の空間特性を解析する信号処理装置120と、各チャンネルに対応する各種のスピーカからなるスピーカシステム130と、リスニングルーム10の空間特性を解析する際に用いられるマイクロホン140と、から構成される。
なお、チャンネルとは、各スピーカに出力されるオーディオ信号の信号伝送路をいい、各チャンネルは、他のチャンネルと基本的には異なるオーディオ信号を伝送するようになっている。
また、例えば、本実施形態の信号処理装置120は、本発明の残響調整装置を構成するとともに、スピーカシステム130は、本発明のスピーカを構成し、マイクロホン140は、本発明の集音手段を構成する。
音源出力装置110は、例えば、CD(Compact disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などのメディア再生装置またはデジタルテレビジョン放送を受信する受信装置から構成される。この音源出力装置110は、CDなどの音源を再生することにより、または、放送された音源を取得し、5.1chに対応する各チャンネル成分を有するビットストリームデータを信号処理装置120に出力するようになっている。
信号処理装置120には、音源出力装置110から出力された各チャンネル成分を有するビットストリームデータが入力されるようになっており、この信号処理装置120は、入力されたビットストリームデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするようになっている。
また、この信号処理装置120は、
(1)デコードされた各オーディオ信号に対して周波数特性の調整、
(2)デコードされた各オーディオ信号に対して予め設定された周波数帯域毎に残響成分の付加、
(3)デコードされた各オーディオ信号における信号レベルおよび遅延量の調整、
(4)リスニングルーム10の聴取位置における周波数特性、残響特性などの空間特性の解析を行うようになっており、当該信号処理された各オーディオ信号をアナログ信号に変換して音量レベルを調整するようになっている。そして、この信号処理装置120は、音量レベルが調整された各オーディオ信号をスピーカシステム130の各スピーカに出力するようになっている。
なお、本実施形態における信号処理装置120の構成およびその動作の詳細については、後述する。
スピーカシステム130は、聴取者の前方正面に配置されるセンタースピーカ131と、聴取者の前方に配置されるとともにセンタースピーカ131の右側または左側に配置されるフロント左スピーカ(以下、FLスピーカという。)132FLおよびフロント右スピーカ(以下、FRスピーカという。)132FRと、聴取者の後方に配置されるとともに、FLスピーカ132FLおよびFRスピーカ132FRのそれぞれの右側または左側に配置されるサラウンド左スピーカ(以下、SLスピーカという。)133SLおよびサラウンド右スピーカ(以下、SRスピーカという。)133SRと、任意の位置に配置される低域再生用スピーカ(以下、サブウーハという。)134と、を有している。
具体的には、センタースピーカ131、FLスピーカ132FLおよびFRスピーカ132FR、SLスピーカ133SLおよびSRスピーカ133SRは、オーディオ信号を拡声する際の周波数帯域のほぼ全域にわたって再生可能な周波数特性を有する全帯域型のスピーカにより構成されるとともに、その放射軸を聴取位置に向けて各信号を拡声するようになっている。また、サブウーハ134は、所定の低域の周波数帯域を拡声する際に用いられるようになっている。
マイクロホン140は、無指向性の特徴を有するとともに、信号処理装置120と接続され、聴取者が聴取する位置である聴取位置に配置されるようになっており、後述するリスニングルーム10の空間特性を解析する際に用いるようになっている。特に、本実施形態のマイクロホン140は、スピーカシステム130から出力されたテスト信号に基づく拡声音を集音するようになっており、当該集音された拡声音を電気信号に変換して集音信号(以下、拡声音信号ともいう。)として信号処理装置120に出力するようになっている。
次に、本実施形態の信号処理装置120の構成およびその動作について説明する。
本実施形態の信号処理装置120は、図1に示すように、各チャンネル成分を有する所定の形式のビットストリームデータが入力され、各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードする際に用いる信号形式のオーディオデータに変換する入力処理部121と、変換されたオーディオデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするとともに、各チャンネル毎に信号処理を行う信号処理部200と、各チャンネルのオーディオ信号に対してデジタル/アナログ(以下、D/Aという。)変換を行うD/A変換器122と、各チャンネル毎に各チャンネルの信号の再生レベルを増幅する電力増幅器123と、を有している。
また、この信号処理装置120は、リスニングルーム10の空間特性、特に、本実施形態では残響特性を解析する際に用いるテスト信号を発生させるテスト信号発生部124と、マイクロホン140によって集音された信号を予め設定された信号レベルまで増幅するマイク増幅器125と、増幅された集音信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル(以下、A/Dという。)変換を行うA/D変換器126と、デジタル信号に変換された集音信号に基づいてリスニングルーム10の空間特性を解析する空間特性解析部127と、各部を操作するための操作部128と、操作部128の操作に基づいて各部を制御するシステム制御部129と、を有している。
なお、例えば、本実施形態の入力処理部121は、本発明の第1取得手段を構成し、信号処理部200は、本発明の調整手段、第1調整手段および第2調整手段を構成する。また、例えば、本実施形態の電力増幅器123は、本発明の出力制御手段を構成し、テスト信号発生部124は、本発明の発生手段を構成する。さらに、例えば、本実施形態の空間特性解析部127は、本発明の第2取得手段、認識手段および算出手段を構成し、操作部128は、本発明の操作手段を構成する。
入力処理部121には、各チャンネル成分を有する所定の形式のビットストリームデータが入力されるようになっており、この入力処理部121は、入力されたビットストリームデータを所定形式のオーディオデータに変換し、当該変換されたオーディオデータを信号処理部200に出力するようになっている。
信号処理部200には、入力処理部121から出力されたオーディオデータおよびテスト信号発生部124において発生されたテスト信号が入力されるようになっており、この信号処理部200は、入力されたオーディオデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするとともに、各チャンネル毎に所定の信号処理を行い、各チャンネル毎にオーディオ信号をそれぞれ各D/A変換器122に出力するようになっている。また、この信号処理部200は、システム制御部129の制御の下、入力されたテスト信号を各スピーカ毎に拡声させるための所定の処理を行い、テスト信号をオーディオ信号として各チャンネル毎に各D/A変換器122に出力するようになっている。
具体的には、信号処理部200は、後述するように、空間特性解析部127から出力された各パラメータのデータに基づいて、入力された信号に対して、周波数特性の調整、遅延時間制御、信号レベル制御および残響制御などの各信号処理を行う際に必要となる係数を決定し、当該決定された各係数に基づいて各信号処理を行い、各D/A変換器122に出力するようになっている。
なお、本実施形態における信号処理部200の構成およびその動作の詳細については、後述する。
D/A変換器122には、各チャンネル毎にそれぞれ信号処理が行われた各オーディオ信号が入力されるようになっており、このD/A変換器122は、入力されたデジタル信号である各オーディオ信号およびテスト信号をアナログ信号に変換して各電力増幅器123にそれぞれ出力するようになっている。
電力増幅器123には、各チャンネル毎に信号処理されたオーディオ信号が入力されるようになっており、この電力増幅器123は、システム制御部129の制御の下、操作部128によって指定された音量の指示に基づいて各チャンネル毎のオーディオ信号の再生レベルを増幅し、増幅された各オーディオ信号を各チャンネルに対応する各スピーカに出力するようになっている。
テスト信号発生部124は、リスニングルーム10の残響特性などの空間特性を解析する際に用いるテスト信号を発生させ、当該発生させたテスト信号を信号処理部200に出力するようになっている。具体的には、テスト信号発生部124は、システム制御部129の下、例えば、ホワイトノイズ、ピンクノイズまたは一定の周波数範囲において周波数をスイープさせるスイープ信号などのテスト信号を発生させ、当該発生させたテスト信号を信号処理部200に出力するようになっている。
なお、本実施形態のテスト信号発生部124は、システム制御部129の下、信号処理部200および空間特性解析部127と連動してテスト信号を発生するようになっており、後述する、信号処理部200において残響成分を生成する際に用いる係数(以下、残響制御係数という)を設定する際に用いられるようになっている。
マイク増幅器125には、マイクロホン140から出力された集音信号が入力されるようになっており、このマイク増幅器125は、入力された集音信号を予め設定された信号レベルまで増幅し、当該増幅された集音信号をA/D変換器126に出力するようになっている。
A/D変換器126には、マイク増幅器125から出力された集音信号が入力されるようになっており、このA/D変換器126は、入力された集音信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、当該デジタル信号に変換された集音信号を空間特性解析部127に出力するようになっている。
空間特性解析部127には、デジタル信号に変換された集音信号が入力されるようになっており、この空間特性解析部127は、入力された集音信号に基づいて、各チャンネル毎に出力された拡声音の周波数特性の解析、その音圧レベルの解析、および、その残響特性の解析を行い、各解析結果に基づいてシステム制御部129を介して信号処理部200を制御するようになっている。特に、本実施形態の空間特性解析部127は、スピーカシステム130から出力されたテスト信号に基づく集音信号に基づいて各解析を行うようになっている。
なお、本実施形態における空間特性解析部127の構成およびその動作の詳細については、後述する。
操作部128は、各種確認ボタン、選択ボタン及び数字キー等の多数のキーを含むリモートコントロール装置または各種キーボタンにより構成されており、リスニングルーム10の空間特性を解析する際の指示を入力するために用いられるようになっている。特に、本実施形態では、操作部128は、拡声するためのオーディオ信号に対して残響時間の設定を行う処理に関する操作を行うために用いられるようになっている。
システム制御部129は、各スピーカよりオーディオ信号を拡声してオーディオ信号の拡声を行うための全般的な機能を総括的に制御するようになっている。特に、このシステム制御部129は、各処理に使用するカウンタを有し、リスニングルーム10の残響特性を解析する際に、テスト信号を拡声させるスピーカの選択、および、残響制御係数を設定するためのパラメータ(以下、残響パラメータという。)を算出する処理(以下、残響パラメータ算出処理という)を行う際の各部を制御するとともに、ユーザの操作に基づいてオーディオ信号を拡声する際の残響制御係数を設定する処理、すなわち、オーディオ信号を拡声する際の残響制御を行うための係数を設定する処理(以下、残響制御係数設定処理という。)を行うようになっている。
なお、本実施形態におけるシステム制御部129の残響パラメータ算出処理を含む残響制御係数設定処理の動作の詳細については、後述する。
また、この残響特性とは、リスニングルーム10における任意の聴取位置において聴取する拡声音の振幅レベル(強度)の時間的な減衰を示す特性をいい、具体的には、入力されたテスト信号における集音信号に基づいて、各周波数帯域毎に、任意のスピーカから聴取位置において定常音の再生を停止させた時間を基準としてその振幅レベルの減衰比とその際の時間を示す残響時間の特性をいう。そして、本実施形態では、振幅レベルの減衰比を対数換算した場合の当該振幅レベルの減衰比と残響時間を近似直線の傾きとしてリスニングルームの残響特性を算出するとともに、当該算出された近似直線の傾きに基づいて、残響時間、すなわち、残響付加量に比例し、一対一に対応するパラメータ.を残響パラメータ(後述するα)として算出するようになっており、後述するように、当該残響パラメータに基づいて残響制御係数を算出するようになっている。したがって、本実施形態では、この残響パラメータを介して算出された残響特性の近似直線に基づいて残響成分の調整を行うことができるようになっている。
次に、図2を用いて本実施形態の信号処理部200の構成およびその動作について説明する。なお、図2は、本実施形態における信号処理部200の構成を示すブロック図である。
信号処理部200は、上述のように、入力されたオーディオデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするとともに、デコードされた各チャンネル毎のオーディオ信号とテスト信号発生部124から出力されたテスト信号との入力を切り替えるようになっている。そして、この信号処理部200は、入力された信号に対して各チャンネル毎に所定の信号処理を行うとともに、システム制御部129の制御の下、入力されたテスト信号を各スピーカ毎に拡声させるための所定の処理を行うようになっている。
具体的には、この信号処理部200は、入力されたオーディオデータに基づいて各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするデコーダ210と、データから出力された各チャンネルのオーディオ信号と入力されたテスト信号を切り換える入力切換部220と、各チャンネル毎のオーディオ信号またはテスト信号の周波数特性を調整する周波数特性調整回路230と、他のチャンネルとのチャンネル間における信号レベルを調整するとともに、各チャンネル毎に入力された信号を遅延させる信号レベル/遅延調整部240と、後述するように設定された残響制御係数に基づいて各チャンネル毎のオーディオ信号またはテスト信号の残響成分を生成し、当該オーディオ信号またはテスト信号に加算する残響制御回路250と、システム制御部129の制御の下、信号処理部200内の各部を制御する信号処理制御部260と、を有している。
なお、この信号処理部200は、各チャンネル毎に、周波数特性調整回路230、信号レベル/遅延調整部240および残響制御回路250を有しており、信号処理制御部260と各部は、バスBにより接続されている。
デコーダ210には、オーディオデータが入力されるようになっており、このデコーダ210は、入力されたオーディオデータを、各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードし、各チャンネル毎に入力切換部220に出力するようになっている。
入力切換部220には、各チャンネル毎にデコードされたオーディオ信号およびテスト信号発生部124から出力されたテスト信号が入力されるようになっており、この入力切換部220は、信号処理制御部260の制御の下、デコーダ210から出力されたオーディオ信号とテスト信号発生部124にて発生されたテスト信号の入力を切り換えて各周波数特性調整部に出力するようになっている。また、入力切換部220は、テスト信号を出力する際に、各チャンネルに、または、信号処理制御部260にて選択された一のチャンネルに当該テスト信号を出力するようになっている。
各周波数特性調整回路230には、信号処理制御部260の制御の下、各周波数帯域毎に、信号成分の利得(ゲイン)を調整するためのフィルタ係数が設定されるようになっている。また、この各周波数特性調整回路230には、入力された各チャンネル毎のオーディオ信号またはテスト信号が入力されるようになっており、設定された各フィルタ係数に基づいて入力された信号に対して周波数特性の調整を行い、各信号レベル/遅延調整部240に出力するようになっている。
各信号レベル/遅延調整部240には、信号処理制御部260の制御の下、各チャンネル毎に、チャンネル間における減衰率を調整するための係数(以下、減衰係数という。)と、各チャンネルに該当するオーディオ信号またはテスト信号における遅延量(遅延時間)を調整するための係数(以下、遅延制御係数という。)と、が設定されるようになっている。また、この各信号レベル/遅延調整部240には、各周波数帯域毎に周波数特性が調整されたオーディオ信号またはテスト信号が入力されるようになっており、この各信号レベル/遅延調整部240は、設定された減衰係数および遅延制御係数に基づいて、入力された信号に対してチャンネル間における減衰率および遅延量を調整し、当該減衰率および遅延量が調整されたオーディオ信号またはテスト信号を各残響制御回路250に出力するようになっている。
各残響制御回路250には、信号処理制御部260によって後述するように決定された残響制御係数がそれぞれ設定されるようになっており、当該各残響制御回路250は、信号レベルが調整されたオーディオ信号またはテスト信号に対して残響制御を実行して各D/A変換器122に出力するようになっている。
具体的には、各残響制御回路250には、信号レベルおよび遅延量が調整されたオーディオ信号またはテスト信号が入力されるようになっており、この各残響制御回路250は、各チャンネル毎に入力されたオーディオ信号またはテスト信号を複数の周波数帯域毎に分割するようになっている。また、この各残響制御回路250は、後述する残響制御係数に基づいて入力されたオーディオ信号またはテスト信号に各周波数帯域毎の残響成分を生成し、当該生成された残響成分を入力されたオーディオ信号またはテスト信号に加算することによって残響制御を行い、当該残響制御された信号を各D/A変換器122に出力するようになっている。
なお、本実施形態における残響制御回路250の構成およびその動作の詳細は、後述する。また、例えば、本実施形態の残響制御回路250は、本発明の調整手段、生成手段および残響調整手段を構成する。
信号処理制御部260は、システム制御部129の指示の下、各周波数特性調整回路230、各信号レベル/遅延調整部240および各残響制御回路250の各係数の決定およびその設定を行うようになっている。特に、この信号処理制御部260は、空間特性解析部127によって解析された各パラメータのデータに基づいて、フィルタ係数、減衰係数、および、遅延制御係数の他に、残響パラメータに基づいて各残響制御回路250における各残響成分の生成制御を行うための残響制御係数を算出し、当該算出された残響制御係数を、それぞれ、各残響制御回路250に設定するようになっている。
具体的には、この信号処理制御部260は、残響制御係数設定処理が実行される際に、後述するように、空間特性解析部127において算出された各チャンネルおよび各周波数帯域に残響パラメータを取得するようになっている。また、この信号処理制御部260は、当該取得された各残響パラメータ基づいて、各残響制御回路250における各周波数帯域毎にそれぞれ残響制御係数を算出するようになっており、当該算出された残響制御係数を各残響制御回路250に設定するようになっている。
例えば、本実施形態の信号処理制御部260は、残響時間を示す残響付加量と一対一に対応する残響パラメータに基づいて残響制御係数g1およびg2を各残響制御回路250毎に、かつ、各周波数帯域毎に算出するようになっている。
なお、パラメータg1は、残響パラメータをαとすると、g1=α(m1)にて算出されるものである。また、パラメータg1は、g1<1を満足させる値であるとともに、パラメータ(m1)は、予め定められた自然数を示す。ただし、(m1)は各残響制御回路250毎および各周波数帯域毎に異なる値を用いることが望ましいが、各残響制御回路250毎または各周波数帯域毎に同一の値を示すようにしてもよい。一方、パラメータg2は、パラメータg1と同様に、残響パラメータをαとすると、g2=α(m2)にて算出されるものである。また、パラメータg2は、g2<1を満足させる値であるとともに、パラメータ(m2)は、予め定められた自然数を示す。ただし、(m2)は各残響制御回路250毎および各周波数帯域毎に異なる値を示すことが望ましいが、各残響制御回路250毎または各周波数帯域毎に同一の値を示すようにしてもよい。
本実施形態では、このように残響パラメータに基づいて各残響制御回路250の各周波数帯域毎の残響制御係数を設定することができるようになっている。したがって、本実施形態では、当該残響パラメータがリスニングルーム10の残響特性を示す近似直線の傾きであるため、当該近似直線の傾きに基づいて各残響制御係数を算出して設定することができるようになっている。
次に、図3乃至図6を用いて本実施形態における空間特性解析部127の構成およびその動作について説明する。なお、図3は、本実施形態における空間特性解析部127の構成を示すブロック図であり、図4乃至図6は、本実施形態の残響特性解析部127Cにおける残響時間の算出を説明するための図である。
空間特性解析部127には、テスト信号に基づき拡声された拡声音を集音することによって生成された集音信号が入力されるようになっており、この空間特性解析部127は、上述のように、入力された集音信号に基づいて、各チャンネル毎に出力された拡声音の周波数特性の解析、その音圧レベルの解析、遅延時間解析、および、その残響成分の解析を行い、各解析結果に基づいてシステム制御部129を介して信号処理部200に各データを出力するようになっている。
この空間特性解析部127は、リスニングルーム10の周波数特性を解析する周波数特性解析部127Aと、当該リスニングルーム10における各スピーカから拡声された音圧レベルおよび遅延時間を解析する音圧レベル/遅延時間解析部127Bと、残響制御係数設定処理が実行される際に、当該リスニングルーム10の残響特性を解析し、残響パラメータを算出する残響特性解析部127Cと、から構成される。
周波数特性解析部127Aは、入力されたテスト信号における集音信号に基づいて、当該リスニングルーム10のマイクロホン140の設置位置(聴取位置)における周波数特性を解析するようになっており、システム制御部129を介して、解析結果を所定のパラメータのデータとして信号処理制御部260に出力するようになっている。また、音圧レベル/遅延時間解析部127Bは、入力されたテスト信号における集音信号に基づいて、当該リスニングルーム10のマイクロホン140の設置位置における各スピーカから拡声された音圧レベルおよび遅延時間を解析するようになっており、システム制御部129を介して、解析結果を所定のパラメータのデータとして信号処理制御部260に出力するようになっている。
残響特性解析部127Cは、残響制御係数設定処理が実行される際に、入力されたテスト信号における集音信号に基づいて、リスニングルーム10における残響特性を解析するようになっており、解析結果に基づいて、信号処理制御部260によって決定される残響制御係数を決定する際に用いられる残響パラメータを決定し、当該決定された残響パラメータをデータとして信号処理制御部260に出力するようになっている。
通常、リスニングルーム10における残響特性を解析すると、リスニングルーム10の形状、壁面の材質、リスニングルーム10に存在する家具など当該リスニングルーム10の構造上の特性および空間上の環境が影響するため、集音位置、すなわち、マイクロホン140の設置位置において、各周波数毎の残響時間が不均一になることが多い。例えば、図4に示すように、横軸を周波数、縦軸を残響時間とすると、各周波数毎に残響時間が異なる。このように各周波数毎に残響時間が異なる特性では、聴取者(ユーザ)において、聴感上、違和感が生じる。
そこで、本実施形態では、残響特性解析部127Cは、信号処理制御部260において残響制御回路250にて残響時間を生成する際に用いる残響制御係数を決定させるため、解析結果に基づいて算出された残響時間(以下、算出残響時間ともいう。)と予め操作部128を介して設定されたユーザが所望する残響時間(以下、ターゲット残響時間という。)とに基づいて残響パラメータを決定して信号処理制御部260に出力するようになっている。
具体的には、まず、残響特性解析部127Cは、入力されたテスト信号における集音信号に基づいて、各周波数帯域毎に、任意のスピーカから聴取位置において定常音の再生が中止された時間を基準としてその振幅レベルの減衰比とその際の時間を示す残響時間を算出するようになっている。
例えば、テスト信号としてインパルス信号を用いた場合には、本実施形態の残響特性解析部127Cは、入力されたテスト信号における集音信号に基づいて図5(a)に示すような振幅レベルの減衰比と残響時間の関係を示す減衰曲線を算出するとともに、当該振幅レベルが所定のレベルになるときの時間を残響時間として算出するようになっている。
なお、一般的に、残響時間とは、定常音の再生が中止された時間の音圧レベルから60dB減衰するまでの時間を示すので、本実施形態の残響特性解析部127Cは、その残響時間を算出するようになっている。また、本実施形態の残響特性解析部127Cは、当該減衰曲線を各周波数帯域毎に得られた振幅レベルの減衰比の時間特性を当該各周波数帯域内において平均化して算出するようになっている。さらに、本実施形態では、残響特性解析部127Cは、その減衰曲線の振幅レベルを対数表示([dB])し、直線近似することで60dB減衰する時間を算出するようになっている。ただし、本実施形態では、対数表示された減衰曲線の振幅レベルを直線近似することで算出された60dB減衰する時間を残響時間とする。
次いで、本実施形態の残響特性解析部127Cは、集音信号に基づいて算出された算出残響時間とターゲット残響時間を比較し、当該比較した結果、残響制御回路250にて残響時間を生成する際に用いる残響時間を決定するようになっている。そして、この残響特性解析部127Cは、決定された残響時間(以下、決定残響時間ともいう。)に基づいて、残響パラメータとして信号処理制御部260に出力するようになっている。すなわち、本実施形態の残響特性解析部127Cは、決定残響時間に一対一対応する残響パラメータ(後述するα)を算出して出力するようになっている。
より詳細には、本実施形態の残響特性解析部127Cには、ターゲット残響時間として設定されることが予想される残響時間の範囲(以下、残響時間範囲という。)が予め内部に設定されている。また、この残響特性解析部127Cは、後述するように、信号処理制御部260および各残響制御回路250と連動して、一度の残響制御係数設定処理において当該設定されている残響時間範囲内における残響時間を決定残響時間として複数回決定し、各決定残響時間に対応する残響パラメータを、それぞれ、順次信号処理制御部260に出力するようになっている。すなわち、この残響特性解析部127Cは、残響制御回路250における残響制御係数が新たに設定される際に、解析されたリスニングルーム10の残響特性に基づいて残響時間を算出するようになっており、当該算出された算出残響時間とターゲット残響時間とが異なる場合に、残響制御回路250における残響制御係数を変化させるための残響パラメータを出力するようになっている。そして、この残響特性解析部127Cは、最終的に、解析されたリスニングルーム10の残響特性に基づいて算出された残響時間とターゲット残響時間が充分近くなった場合に、例えば、算出された残響時間がターゲット時間の予め設定された範囲に属した場合に、当該リスニングルーム10の残響特性の解析を終了するようになっている。
例えば、本実施形態では、残響特性解析部127Cは、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260および各残響制御回路250と連動して、以下のように、残響パラメータ算出を実行するようになっている。
(残響パラメータ算出処理)
(1)まず、残響制御係数設定処理が開始されると、残響特性解析部127Cは、初期値に基づいて各残響パラメータを決定し、当該決定された残響パラメータを信号処理制御部260に出力する。
例えば、予め残響時間範囲が0ms〜500msと設定されている場合には、残響特性解析部127Cは、初期値として当該中間の残響時間となる残響時間250msに対応する残響パラメータを算出し、当該算出された各残響パラメータをデータとして信号処理制御部260に出力するようになっている。
なお、このとき、システム制御部129は、信号処理制御部260を制御して当該出力された残響パラメータにおける残響制御係数を決定させ、当該決定させた残響制御係数を各残響制御回路250に設定させるようになっている。
(2)次いで、残響特性解析部127Cは、システム制御部129の制御の下、テスト信号における集音信号、すなわち、予め定められた周波数帯域毎に設定された残響制御係数に基づいて拡声されると、マイクロホンによって140によって集音された集音信号を取得するとともに、当該取得された集音信号に基づいて各周波数帯域の残響特性を解析するようになっている。
(3)次いで、残響特性解析部127Cは、解析された残響特性に基づいて残響時間を算出するようになっている。具体的には、残響特性解析部127Cは、各周波数帯域毎に、定常音の再生が中止された時間の音圧レベルから60dB減衰するまでの時間を算出残響時間として算出するようになっている。
(4)次いで、残響特性解析部127Cは、当該算出された各算出残響時間から操作部128などにより予め設定されたターゲット残響時間を比較し、各誤差時間を算出するようになっている。
例えば、残響特性解析部127Cは、各ターゲット残響時間から対応する各算出残響時間をそれぞれ減算し、各信号成分毎に誤差時間を算出するようになっている。
(5)次いで、残響特性解析部127Cは、算出された各誤差時間に基づいて、各残響制御回路250において残響成分が付加される際に用いられる残響時間を新たに決定するようになっている。
例えば、本実施形態の残響特性解析部127Cは、図6に示すように、誤差時間「0」を基準に判断するようになっており、当該算出された誤差時間が「0」以下である判断した場合には、当該残響特性解析部127Cは、残響時間範囲において最小の残響時間(以下、最小残響時間という。)を(式1)に基づいて算出するとともに、当該算出された最小残響時間および残響時間範囲において最大の残響時間(以下、最大残響時間という。)を用いて(式2)に基づいて一の残響時間(以下、特定残響時間という。)を算出するようになっている。
最小残響時間=(算出前の特定残響時間) ・・・(式1)
特定残響時間=(最大残響時間+最小残響時間)/2 ・・・(式2)
一方、残響特性解析部127Cが算出された誤差時間が「0」より大きいと判断した場合には、当該残響特性解析部127Cは、残響時間範囲において最大残響時間を(式3)に基づいて算出するとともに、当該算出された最大残響時間および最小残響時間を用いて(式2)に基づいて一の特定残響時間を算出するようになっている。
最大残響時間=(算出前の特定残響時間) ・・・(式3)
(6)次いで、残響特性解析部127Cは、新たに決定された残響時間とあらかじめ対応付けされている残響パラメータを信号処理制御部260に出力するようになっている。
なお、システム制御部128は、残響パラメータに基づいて信号処理制御部260に各残響制御係数の決定および各残響制御回路250への当該各残響制御係数の設定を行わせ、その設定後に、テスト信号発生部124によってテスト信号の発生を発生させるようになっている。これにより、残響特性解析部127Cは、(2)〜(5)の処理を複数回繰り返すようになっており、最終的に誤差時間が「0」となる残響パラメータを信号処理制御部260に出力し、その旨をシステム制御部128に出力するようになっている。
例えば、この残響特性解析部127Cは、図6に示すように、(2)〜(4)の処理を複数回繰り返しつつ、最小残響時間、最大残響時間および特定残響時間を設定するようになっており、本実施形態では、10回繰り返した際の特性残響時間を最終的な残響時間として算出するようになっている。
なお、上述のように、残響特性解析部127Cが算出された残響制御係数を残響制御係数データとして信号処理制御部260に出力すると、当該信号処理制御部260は、該当する残響制御回路250に該当する周波数帯域の残響制御係数として当該残響制御係数データを設定するようになっている。そして、システム制御部129および信号処理制御部260による新たな残響制御係数の設定後に、当該システム制御部129は、同じチャンネルのテスト信号を拡声させ、残響特性解析部127Cに残響パラメータ算出処理を実行させるようになっており、各周波数帯域における誤差時間が充分小さくなるまで、例えば所定の値より小さくなるまで当該残響制御係数の算出を行う処理を繰り返させるようになっている。
次に、図7を用いて本実施形態における各残響制御回路250の構成およびその動作について説明する。なお、図7は、本実施形態における信号処理部200の残響制御回路250の構成を示すブロック図である。また、本実施形態における各残響制御回路250は同様の構成を有している。
各残響制御回路250には、信号レベルおよび遅延量が調整された各チャンネルのオーディオ信号またはテスト信号が入力されるようになっている。この各残響制御回路250は、オーディオ信号またはテスト信号が入力されると、当該入力されたオーディオ信号またはテスト信号を複数の周波数帯域毎に分割するようになっており、信号処理制御部260によって設定された残響制御係数に基づいて入力されたオーディオ信号またはテスト信号に対して各周波数帯域毎に残響成分を生成するようになっている。そして、各残響制御回路250は、当該生成された残響成分を入力されたオーディオ信号またはテスト信号に加算することによって残響制御を行い、当該残響制御が行われた信号を各D/A変換器122に出力するようになっている。
また、各残響制御回路250には、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260の制御の下、信号処理制御部260によって上述のように算出された残響制御係数が設定されるようになっている。
具体的には、この各残響制御回路250は、図6に示すように、入力されたオーディオ信号またはテスト信号を予め定められた周波数帯域毎に分割するフィルタ処理部251と、残響制御係数設定処理の際に信号処理制御部260によって残響制御係数が設定されるとともに、当該設定された残響制御係数に基づいて分割された各周波数帯域毎に残響成分を生成し、当該生成された残響成分を入力された元のオーディオ信号またはテスト信号に付加するする残響成分生成部252と、各周波数帯域毎に残響成分が付加されたオーディオ信号またはテスト信号を合成する周波数合成部253と、を有している。
なお、この残響成分生成部252に設定される残響制御係数は、各チャンネル毎および各周波数帯域毎にそれぞれ設定されるようになっている。
フィルタ処理部251には、当該フィルタ処理部251に接続された信号レベル/遅延調整部240から出力された一のチャンネルにおけるオーディオ信号またはテスト信号が入力されるようになっている。また、このフィルタ処理部251は、一のチャンネルにおけるオーディオ信号またはテスト信号が入力されると、入力されたオーディオ信号またはテスト信号を予め定められた周波数帯域毎の信号成分に分割し、当該分割された各信号成分をそれぞれ各残響成分生成部252に出力するようになっている。
具体的には、本実施形態のフィルタ処理部251は、上述の残響特性解析部127Cと同様に、入力されたオーディオ信号またはテスト信号を算出された残響制御係数の周波数帯域度同様の周波数帯域毎に分割するようになっており、例えば、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHzおよび16kHzの各周波数を中心周波数とする周波数帯域に分割するようになっており、分割された各信号成分をそれぞれ各残響成分生成部252に出力するようになっている。
各残響成分生成部252は、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260によって当該各残響成分生成部252に対応する残響制御係数が設定されるようになっている。また、各残響成分生成部252は、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、当該一の信号成分に対して、設定された残響制御係数に基づいて残響成分を生成するようになっており、生成された残響成分を元の信号成分に加算して周波数合成部253に出力するようになっている。
具体的には、各残響成分生成部252は、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に各周波数帯域毎に予め定められた周波数帯域の成分を複数に分配する分配器254と、残響制御係数設定処理の際に残響制御係数が設定され、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に当該設定された残響制御係数に基づいて分配された一の成分に対して第1の残響成分(以下、第1残響成分という。)を生成する第1生成部255と、残響制御係数設定処理の際に残響制御係数が設定され、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に当該設定された残響制御係数に基づいて分配された一の成分に対して第2の残響成分(以下、第2残響成分という。)を生成する第2生成部256と、を有している。そして、この各残響成分生成部252は、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に、第1残響成分と第2残響成分を加算する第1加算部257と、第1残響成分と第2残響成分に基づいて第1生成部255及び第2生成部256に帰還させる残響成分(以下、帰還残響成分という。)を生成する成分混合調整部258と、第1加算部257の出力と分配器254から直接出力された信号成分(以下、主成分という。)とを加算する第2加算部259と、を有している。
なお、図6には、各残響成分生成部252が周波数帯域毎に第1残響成分生成部252から第n残響成分生成部252までの各残響成分生成部252が示されているが、例えば、本実施形態では、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHzおよび16kHzの各周波数を中心周波数とする周波数帯域毎に低域の周波数帯域から順に第1残響成分生成部252から第6残響成分生成部252まで設けられている。
また、例えば、本実施形態の残響成分生成部252は、本発明の調整手段を構成し、第1生成部255、第2生成部256および成分混合調整部258は、本発明の生成手段および残響調整手段を構成する。
各分配器254には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、フィルタ処理部251から出力された該当する一の信号成分が入力されるようになっており、この各分配器254は、入力された信号成分を、第1生成部255、第2生成部256および第2加算部259にそれぞれ分配するようになっている。
具体的には、この各分配器254は、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、入力された信号成分に対してそれぞれ異なる係数を乗算することによって、第1の信号成分(以下、第1信号成分という。)および第2の信号成分(以下、第2信号成分という。)を生成し、当該生成された第1信号成分および第2信号成分を第1生成部255または第2生成部256にそれぞれ出力するようになっている。一方、この各分配器254は、第2加算部259に対しては、そのままの信号成分を直接出力するようになっている。
なお、この各分配器254は、第1生成部255および第2生成部256において残響成分を生成する際の帰還補償を行うために分配する信号成分に、それぞれ、予め設定された係数b1またはb2(以下、初期係数という。)を乗算するようになっている。
第1生成部255には、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260によって当該残響制御回路250でかつ当該周波数帯域に該当する残響制御係数が設定されるようになっており、例えば、本実施形態では、第1生成部255の内部に設けられたメモリ(図示せず)に設定されるようになっている。
また、この第1生成部255には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、分配器254から出力され、初期係数が乗算された第1信号成分と、後述するように、成分混合調整部258から出力され、予め定められた遅延時間を有する帰還残響成分と、が入力されるようになっている。そして、この第1生成部255は、入力された第1信号成分に予め定められた遅延時間を有する帰還残響成分を加算するとともに、設定された残響制御係数に基づいて、加算された第1信号成分における予め定められた遅延時間を有する残響成分を生成し、生成された残響成分を第1残響成分として第1加算部257および成分混合調整部258に出力するようになっている。
例えば、この第1生成部255は、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、内部のメモリに設定された残響制御係数に基づいて第1信号成分に対して(式4)に示す演算を行い、第1残響成分を生成するようになっており、生成された第1残響成分を第1加算部257および成分混合調整部258に出力するようになっている。
第1残響成分 = (第1信号成分)×Z(−m1)×g1 ・・・・(式4)
ただし、パラメータg1は、上述したように、信号処理制御部260にて算出され、設定された残響制御係数の一つである。また、(m1)は各残響制御回路250毎および各第1生成部255毎に異なる値を示すことが望ましいが、各残響制御回路250毎または各第1生成部255毎に同一の値を示すようにしてもよい。
なお、第1生成部255において生成される第1残響成分は、(式4)に示すように、パラメータαが大きくなれば残響時間が増加し、パラメータαが減少すれば残響時間が減少するようになっている。また、成分混合調整部258から出力され、予め定められた遅延時間を有する帰還残響成分は、後述するように、第1残響成分および第2残響成分が混合されている残響成分である。
第2生成部256には、第1生成部255と同様に、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260によって当該残響制御回路250でかつ当該周波数帯域に該当する残響制御係数が設定されるようになっており、例えば、本実施形態では、第2生成部256の内部に設けられたメモリ(図示せず)に設定されるようになっている。
また、この第2生成部256には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、分配器254から出力され、初期係数が乗算された第2信号成分と、後述するように、成分混合調整部258から出力され、予め定められた遅延時間を有する帰還残響成分と、が入力されるようになっている。そして、この第2生成部256は、入力された第2信号成分に予め定められた遅延時間を有する帰還残響成分を加算するとともに、設定された残響制御係数に基づいて、加算された第1信号成分における予め定められた遅延時間を有する残響成分を生成し、生成された残響成分を第2残響成分として第1加算部257および成分混合調整部258に出力するようになっている。
例えば、この第2生成部256は、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、内部のメモリに設定された残響制御係数に基づいて第2信号成分に対して(式5)に示す演算を行い、第2残響成分を生成するようになっており、生成された第2残響成分を第1加算部257および成分混合調整部258に出力するようになっている。
第2残響成分 = (第2信号成分)×Z(−m2)×g2 ・・・・(式5)
ただし、パラメータg2は、上述したように、パラメータg1と同様に、信号処理制御部260にて算出され、設定された残響制御係数の一つである。また、(m2)は各残響制御回路250毎および各第2生成部256毎に異なる値を示すことが望ましいが、各残響制御回路250毎または各第2生成部256毎に同一の値を示すようにしてもよい。
なお、第1生成部255と同様に、第2生成部256において生成される第2残響成分は、(式5)に示すように、パラメータαが大きくなれば残響時間が増加し、パラメータαが減少すれば残響時間が減少するようになっている。また、成分混合調整部258から出力され、予め定められた遅延時間を有する帰還残響成分は、後述するように、第1残響成分および第2残響成分が混合されている残響成分である。
成分混合調整部258には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、第1生成部255から出力された第1残響成分と第2生成部256から出力された第2残響成分とが入力されるようになっており、この成分混合調整部258は、入力された第1残響成分および第2残響成分に基づいて帰還残響成分を生成し、生成された帰還残響成分を第1生成部255および第2生成部256に出力、すなわち、帰還させるようになっている。
例えば、成分混合調整部258は、入力された第1残響成分と第2残響成分を用いて(式6)に示す演算し、第1残響成分と第2残響成分を混合するようになっており、(式6)の行列式を用いて生成された残響成分を帰還残響成分として第1生成部255および第2生成部256に出力するようになっている。
ただし、B1およびB2は帰還残響成分を示し、成分混合調整部258は、第1帰還残響成分B1は第1生成部255に帰還させ、第2帰還残響成分B2は第2生成部256に帰還させる。また、(式6)に示す行列Aは、(式7)によって示され、当該行列Aはユニタリ行列である。
なお、行列Aがユニタリ行列(A−1=AT)であると、上述のg1<1およびg2<1の条件とともに、当該残響成分生成部252の帰還回路は安定することとなる。
第1加算部257には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、第1生成部255から出力された第1残響成分と第2生成部256から出力された第2残響成分が入力されるようになっており、この第1加算部257は、入力された第1残響成分と第2残響成分を加算して一の残響成分を生成し、当該生成された残響成分を第2加算部259に出力するようになっている。
第2加算部259には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、第1加算部から出力された残響成分と分配器254から直接出力された信号成分とが入力されるようになっており、この第2加算部259は、入力された残響成分を信号成分に加算することによって残響成分が付加された信号成分を生成するようになっており、当該生成された残響成分が付加された信号成分を周波数合成部253に出力するようになっている。
なお、この第2加算部259は、生成された残響成分が付加された信号成分に、予め定められた係数を乗算、すなわち、利得(ゲイン)を調整するようになっており、当該周波数帯域のエネルギー制御を行うようになっている。
周波数合成部253には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路250に入力されると、各残響成分生成部252において生成された残響成分が付加された信号成分が入力されるようになっており、この周波数合成部253は、入力された各残響成分が付加された信号成分を合成し、当該チャンネルのオーディオ信号またはテスト信号を再生成し、各D/A変換器122に出力するようになっている。
本実施形態の残響成分生成部252は、このような構成を有することにより、各周波数帯域毎に残響成分の生成およびその付加を行うようになっている。例えば、当該残響成分生成部252にオーディオ信号またはテスト信号が入力されると、第1生成部255および第2生成部256において異なる遅延時間および異なる減衰率を有する残響成分が生成され、各残響成分が成分混合調整部258において混合される。さらに、第1生成部255および第2生成部256において異なる遅延時間および異なる減衰率を有する残響成分が生成され、徐々に減衰される残響成分を生成するようになっている。そして、当該生成された各残響成分を順次元の信号成分に加算することによって、信号成分の残響成分を調整することができるようになっている。
なお、本実施形態の残響成分生成部252では、第1生成部255、第2生成部256および成分混合調整部258によって、フィードバックディレイネットワーク(FDN:Feedback Delay Network)を構成するようになっており、本実施形態の残響成分生成部252は、当該フィードバックディレイネットワークを用いて残響成分を生成するようになっている。
次に、図8を用いて本実施形態のシステム制御部129における残響パラメータ算出処理を含む残響制御係数設定処理の動作について説明する。なお、図8は、本実施形態のシステム制御部129における残響制御係数設定処理の動作を示すフローチャートである。
なお、予めマイクロホン140が既にユーザの聴取位置に設定され、信号処理装置120と接続されているものとする。また、本動作では、ユーザによって設定された残響時間、すなわち、ターゲット残響時間に基づいて、残響制御係数設定処理を行うようになっており、当該残響パラメータ算出処理に用いる残響時間範囲が予め0ms〜500msと設定されているものとする。
まず、ユーザによって残響時間を設定する残響制御係数設定処理を開始する旨の指示とともに、当該ユーザが所望する残響時間がターゲット残響時間として操作部128を介してシステム制御部129に入力され、システム制御部129が当該指示および入力されたターゲット残響時間を検出すると(ステップS11)、当該システム制御部129は、未だ残響時間を設定していない一のスピーカを選択し、残響制御係数設定処理における各パラメータαやその他のパラメータと、当該残響制御係数設定処理における残響パラメータ算出処理を行う際のループカウンタと、の初期設定を行う(ステップS12)。
このとき、システム制御部129は、残響特性解析部127Cに初期値としての残響時間に基づく残響パラメータを決定するとともに、信号処理制御部260を制御し、当該残響パラメータに基づいて残響制御係数を算出させる。そして、システム制御部129は、信号処理制御部260に当該算出させた各残響制御係数を各残響制御回路250に設定させ、テスト信号発生部124にテスト信号を発生させる。
例えば、本実施形態では、システム制御部129は、信号処理制御部260に残響パラメータに基づいて各残響制御回路250に残響時間範囲の中心の残響時間、例えば、250msを発生させるための各残響制御係数g1およびg2を算出させ、当該算出された各残響制御係数g1およびg2を各残響制御回路250に設定させる。
次いで、システム制御部129は、初期設定に基づいてテスト信号発生部124にテスト信号を発生させるとともに、信号処理制御部260を制御して選択されたスピーカ、例えば、システム制御部129は、センタースピーカ131からテスト信号の拡声を開始する(ステップS13)。
具体的には、システム制御部129は、信号処理制御を制御して電力増幅器123における信号レベルの出力の停止または信号処理部200における入力の禁止など選択されていない他のスピーカの出力を停止させ、選択されたスピーカからテスト信号の拡声を開始させる。
次いで、テスト信号が選択されたセンタースピーカ131から拡声させると、マイクロホン140がセンタースピーカ131から拡声された拡声音を集音し、当該集音された拡声音を集音信号してマイク増幅部およびA/D変換器126を介して空間特性解析部127に出力する(ステップS14)。
次いで、空間特性解析部127に集音信号が入力されると、システム制御部129は、上述のように、予め定められた周波数帯域毎に、空間特性解析部127にて残響時間を算出し、これとユーザが設定したターゲット残響時間から、当該各周波数帯域毎に、残響パラメータを算出させ、算出された各残響パラメータをデータとして信号処理制御部260に出力させる(残響パラメータ算出処理(ステップS15))。
次いで、システム制御部129は、信号処理制御部260に入力された各周波数帯域毎の残響パラメータに基づいて各チャンネルに該当する、すなわち、テスト信号を拡声させたチャンネルの残響制御回路250における各第1生成部255および第2生成部256の残響制御係数を各周波数帯域毎に算出し、当該算出された各残響制御係数を当該各第1生成部255および第2生成部256に設定させる(ステップS16)。
次いで、システム制御部129は、ループカウンタに「1」を加算して当該ループカウンタを更新させるとともに(ステップS17)、当該ループカウンタが予め設定された値、例えば「10」より大きいか否かを判断する(ステップS18)。このとき、システム制御部129が、ループカウンタが「10」以下の場合には、当該システム制御部129は、ステップS14の処理に移行し、ループカウンタが「10」より大きい場合には、ステップS19の処理に移行する。
次いで、システム制御部129は、未だ残響時間を設定していない、すなわち、未だ残響制御係数が設定されていないスピーカの有無を判断し(ステップS19)、未だ残響制御係数が設定されていないスピーカが有る場合には、ステップS12の処理に移行し、未だ残響制御係数が設定されていないスピーカが無い場合には、すなわち、全てのスピーカにおいて残響時間の設定が為された場合には、本動作を終了させる。
次に、図9を用いて本実施形態のシステム制御部129における残響時間設定係数算出処理の動作について説明する。なお、図9は、本実施形態のシステム制御部129における残響パラメータ算出処理の動作を示すフローチャートである。また、本動作では、予め定められた周波数帯域の数(バンド数)を「6」とし、低周波数帯域から順に残響制御係数を算出するものとして説明する。
まず、システム制御部129は、当該残響パラメータ算出処理において用いる各パラメータを初期化する(ステップS21)。具体的には、システム制御部129は、残響制御係数を算出した周波数帯域を判定するためのバンド数カウンタを初期化する。
次いで、システム制御部129は、残響特性解析部127Cにテスト信号における集音信号を周波数帯域毎に複数の信号成分に分割させ(ステップS22)、残響特性解析部127Cに低周波数帯域(低周波数バンド)から順に以下の処理を実行させる。
まず、システム制御部129は、残響特性解析部127Cにテスト信号における集音信号に基づいて各周波数帯域毎の残響時間を算出させ、該当する周波数帯域における算出された算出残響時間とユーザによって入力された残響時間であるターゲット残響時間とを比較して誤差時間を算出させる(ステップS23)。具体的には、システム制御部129は、上述のように、残響特性解析部127Cに残響時間を算出させるとともに、ターゲット残響時間から算出残響時間を減算させ、誤差時間を算出する。
次いで、システム制御部129は、当該残響特性解析部127Cに、算出された誤差時間に基づいて残響パラメータを算出させる(ステップS24〜ステップS27)。具体的には、システム制御部129は、残響特性解析部127Cに算出された誤差時間が「0」より大きいか否かを判断させる(ステップS24)。このとき、残響特性解析部127Cが、算出された誤差時間が「0」以下であると判断した場合には、システム制御部129は、上述のように、残響特性解析部127Cに残響時間範囲における最小残響時間を(式1)に基づいて変更させ(ステップS25)、算出された誤差時間が「0」より大きいと判断した場合には、システム制御部129は、上述のように、残響特性解析部127Cに残響時間範囲における最大残響時間を(式3)に基づいて変更させる(ステップS26)。そして、システム制御部129は、上述のように、残響特性解析部127Cに残響時間範囲における最小残響時間および最大残響時間に基づいて、(式2)を用いて特定残響時間を算出させるとともに、当該算出された特定残響時間に基づいて残響パラメータを算出する(ステップS27)。
次いで、システム制御部129は、残響特性解析部127Cに未だ残響パラメータが算出されていない周波数帯域があるか否かを判断させる(ステップS28)。具体的には、システム制御部129は、バンド数カウンタに「1」加算するとともに、当該加算されたバンド数カウンタが分割された複数の周波数帯域の数、すなわち、バンド数と同じであるか否かを判断し、バンド数カウンタがバンド数より小さい場合には、ステップS23の処理に移行し、バンド数カウンタがバンド数と同じ場合には、ステップS29の処理に移行する。
最後に、システム制御部129は、残響特性解析部127Cに算出された各周波数帯域毎の残響パラメータをデータとして信号処理部200に出力させ(ステップS29)、本動作を終了させる。
以上のように、本実施形態のサラウンドシステム100は、リスニングルーム10に設置され、音源を拡声するスピーカシステム130と、リスニングルーム10の残響特性に基づいて当該音源の残響成分を調整して音源をスピーカシステム130によって拡声させる信号処理装置120と、スピーカシステム130からリスニングルーム10に拡声された際の当該リスニングルーム10の特定の聴取位置における拡声音を集音するマイクロホン140と、を備え、信号処理装置120が、音源としてオーディオ信号を取得する入力処理部121と、音源としてリスニングルーム10の残響特性を解析するためのテスト信号を発生させるテスト信号発生部124と、オーディオ信号またはテスト信号の少なくとも何れか一方の信号をスピーカシステム130から拡声させる電力増幅器123と、マイクロホン140によって集音された拡声音を示す拡声音を取得するとともに、取得された拡声音に基づいて当該拡声音の聴取位置における音の強度に関するリスニングルーム10の時間的な残響特性を認識し、認識された残響特性に基づいて拡声音の聴取位置における減衰時間とその強度レベルの変化の度合いを示す変化率を算出する空間特性解析部127と、算出された変化率に基づいて、スピーカシステム130に拡声すべきテスト信号の残響特性を調整するとともに、テスト信号に対して調整された残響特性に基づいて、音源として取得され、スピーカシステム130から拡声すべきオーディオ信号の残響特性を調整することを特徴とする信号処理部200と、を有する構成をしている。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、取得された集音信号に基づいて当該集音信号の聴取位置における音の強度に関する時間的な残響特性を認識し、認識された残響特性に基づいて拡声音の聴取位置における減衰時間とその強度レベルの変化の度合いを示す変化率を算出する。そして、このサラウンドシステム100は、算出された変化率に基づいて取得されたオーディオ信号または発生されたテスト信号に対して当該信号の残響特性を調整する。
したがって、本実施形態のサラウンドシステム100は聴取位置における残響時間とその強度レベルに基づいて残響特性を調整することができるので、容易にかつ的確にオーディオ信号に対して残響成分の調整を行うことができる。
すなわち、オーディオ信号に対して残響成分を調整する場合には、専門的な知識が必要であり、かつ、FIRフィルタを用いる場合にはフィルタ係数などの多くのパラメータを設定する必要がある。特に、上述のように、ユーザが所望する残響時間を操作部128の操作により設定する場合には、各周波数帯域毎の残響時間を均一にするためには、多くのパラメータを設定する必要があり、各パラメータの設定操作が煩わしくなる。しかしながら、本実施形態のサラウンドシステム100は、残響パラメータαのみによって残響時間を調整することができる。
この結果、本実施形態のサラウンドシステム100は、ユーザの操作性が向上するとともに、的確に残響時間、すなわち、拡声音の残響特性を設定させることができるとともに、残響時間を調整する際に生ずる違和感が生ずることなく、自然にオーディオ信号を拡声することのできる音場を提供することがきる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、信号処理部200によって発生されたテスト信号の残響特性が調整され、当該調整されたテスト信号が順次スピーカシステム130に出力される場合に、空間特性解析部127が、取得された拡声音に基づいて順次残響時間を算出するとともに、信号処理部200が、当該残響パラメータが算出される毎に、スピーカシステム130に拡声すべきテスト信号の残響特性の調整を行う構成を有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、取得された拡声音に基づいて順次変化率を算出するとともに、当該残響時間が算出される毎に、スピーカシステム130に拡声すべきテスト信号の残響特性の調整を行う。
したがって、本実施形態のサラウンドシステム100は、テスト信号による残響特性の測定、および、残響パラメータの算出を繰り返すことによって、音場空間の残響特性の測定と評価を繰り返し行うことができるので、オーディオ信号を拡声する際の残響特性の調整、すなわち、残響時間の設定を的確に行うことができる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、目標となる拡声音における減衰時間を設定するために用いられる操作部128を更に備え、信号処理部200が、認識された減衰時間と設定された減衰時間に基づいてテスト信号発生部124によって発生されたテスト信号に対して残響特性を調整する構成を有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、認識された減衰時間と設定された減衰時間に基づいてテスト信号発生部124によって発生されたテスト信号に対して残響特性を調整するので、ユーザの所望する減衰時間に基づいてオーディオ信号を拡声する際の残響特性の調整、すなわち、残響時間の設定を的確に行うことができる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、空間特性解析部127が、取得された拡声音に基づいて聴取位置における音の強度レベルが初期値から予め定められた値に減衰するまでの減衰時間を示す残響時間を残響特性として認識する構成を有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、残響特性を簡潔に表す残響時間に基づいて音場空間の残響特性を認識することができるので、リスニングルーム10の残響特性を調整する際に、当該残響時間を用いれば、的確に、かつ、容易にリスニングルーム10の残響特性を調整することができる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、空間特性解析部127が、拡声音の減衰時間とその強度レベルにおける変化率を、対数関数を用いて算出する構成を有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、拡声音の減衰時間とその強度レベルにおける変化率を、対数関数を用いて算出するので、容易にかつ的確に残響時間を算出することができ、サラウンドシステム100の負担を軽減させることができる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、信号処理部200が、得られた残響パラメータに基づいて、取得されたオーディオ信号または発生されたテスト信号の少なくとも何れか一方の信号における残響成分を生成するとともに、生成された残響成分を当該残響成分の生成の基の信号に付加することによってオーディオ信号またはテスト信号の少なくとも何れか一方の信号の残響特性を調整する第1生成部255、第2生成部256および成分混合調整部258と、を有する構成をしている。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、算出された変化率に基づいて取得されたオーディオ信号または発生されたテスト信号の残響成分を生成するとともに、生成された残響成分を当該残響成分の生成の基の信号に付加することによってオーディオ信号またはテスト信号の残響特性を調整する。
したがって、本実施形態のサラウンドシステム100は、残響パラメータに基づいて容易に残響成分を生成することができ、残響時間を調整する際に生ずる違和感が生ずることなく、自然にオーディオ信号を拡声することのできる音場を提供することがきる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、第1生成部255、第2生成部256および成分混合調整部258が、予め定められた係数に基づいて生成される残響成分の時間密度を調整しつつ、当該音源の残響成分を生成する構成有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、システムの安定性を図ることができるとともに、容易にかつ的確に残響成分を付加することができる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、第1生成部255、第2生成部256および成分混合調整部258が、FDN(Feedback Delay Network)を用いて音源の残響成分を生成する構成を有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、システムの安定性を図ることができるとともに、容易にかつ的確に残響成分を付加することができる。
また、本実施形態のサラウンドシステム100は、空間特性解析部127、および、信号処理部200が、予め定められた周波数帯域毎に、残響特性の認識、残響パラメータの算出およびリスニングルーム10の残響特性の調整を行う構成を有している。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、的確に残響成分を付加させることができるので、残響時間を調整する際に生ずる違和感が生ずることなく、自然にオーディオ信号を拡声することのできる音場を提供することがきる。
なお、本実施形態では、各チャンネル毎および予め設定された周波数帯域毎に残響パラメータ算出処理を行い、残響制御回路250に各周波数帯域毎に残響時間係数を設定するようになっているが、予め設定された周波数帯域毎に分割せずに、各チャンネル毎に全周波数帯域における残響パラメータを算出するとともに、当該算出された残響パラメータに基づいて残響制御係数を算出し、当該算出された残響制御係数を各チャンネル毎の残響制御回路250に設定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、各チャンネル毎に残響パラメータ算出処理を行い、残響制御回路250に各周波数帯域毎に残響時間係数を設定するようになっているが、全チャンネル一度に残響パラメータを算出するようにしてもよいし、全チャンネル唯一の残響パラメータを算出するようにしてもよい。
また、本実施形態では、各残響制御回路250は、2系統のパスにおける各残響成分を混合し、残響制御係数データに基づいて残響成分を生成するようになっているが、1系統または3系統以上のパスよって残響成分を生成してもよい。
また、本実施形態では、各残響制御回路250は、予め定められた周波数帯域毎に残響成分を生成するようになっているが、入力されたオーディオ信号またはテスト信号を複数の周波数帯域毎に分割せずに、当該残響成分を生成してもよい。
この場合に、各残響制御回路250において、オーディオ信号およびテスト信号の全周波数帯域に対して残響成分の生成および付加を行う残響成分生成部252を設けることによって、または、予め定められた各周波数帯域毎に残響成分を生成する残響成分生成部252を縦列に設けることによって、当該残響成分を生成してもよい。
また、本実施形態では、各残響制御回路250は、2系統のパスにおける各残響成分を混合し、残響制御係数データに基づいて残響成分を生成するようになっているが、残響制御係数データを用いて生成すべき残響成分の遅延時間を生成すればよく、上述以外の方法によって残響成分を生成することも可能である。
また、本実施形態では、5.1chのサラウンドシステム100を用いて残響時間の設定処理について説明しているが、勿論、7.1chのサラウンドシステム、AVアンプなどのステレオ用音響再生装置などの他の音響再生装置についても適用することができる。
また、本実施形態では、信号処理装置120において、音源出力装置110において出力されたデジタル信号に基づいて残響成分の付加その他の信号処理を行うようになっているが、勿論、当該信号処理装置120において、音源出力装置110から出力されたアナログ信号またはその他の外部から入力されたアナログ信号に基づいて信号処理を行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、各残響制御回路250において、オーディオ信号またはテスト信号を予め設定された周波数帯域毎に複数に分割し、当該分割された各信号成分毎に、残響成分の生成および付加を行うようになっているが、オーディオ信号またはテスト信号を周波数帯域毎に複数に分割せずに各チャンネルの信号毎に残響成分の生成および付加を行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、上述の信号処理装置120によって、残響パラメータ算出処理を含む残響制御係数設定処理を行うようになっているが、信号処理装置120にコンピュータおよび記録媒体を備え、この記録媒体に上述の残響パラメータ算出処理を含む残響制御係数設定処理を実行するためのプログラムを格納し、このコンピュータで当該プログラムを読み込むことによって上述と同様の残響パラメータ算出処理を含む残響制御係数設定処理を行うようにしてもよい。
〔第2実施形態〕
始めに、図10〜図12を用いて本願に係るサラウンドシステムの第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、第1実施形態における各残響制御回路において、算出された残響制御係数(減衰時間とその強度レベルの変化の度合いを示す変化率)に基づいて予め定められた演算を行うことによって残響成分の生成および付加を行う点に代えて、残響制御係数に対応する各値を保持するテーブルを用いて残響成分の生成および付加を行う点に特徴があり、その他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一の部材には同一の番号を付してその説明を省略する。
具体的には、本実施形態の信号処理制御部は、空間特性解析部によって算出されたリスニングルーム10の残響特性を示す近似直線の傾きまたはその傾きによって示される残響時間に対応する各残響制御係数を係数データとして保持するとともに、システム制御部を介して入力された近似直線の傾きまたは残響時間のデータ(以下、残響時間データという)RTに基づいて各係数データを読み出し、各残響成分生成部に読み出された係数データを各残響制御回路に設定するようになっている。
また、本実施形態の各残響制御回路は、信号処理制御部によって設定された係数データに基づいて、入力されたオーディオ信号またはテスト信号において該当する信号成分に対して残響成分の生成および付加を行うようになっている。
まず、図10および図11を用いて本実施形態の各残響制御回路の構成およびその動作について説明する。なお、図10は、第2実施形態における信号処理部の残響制御回路の構成を示すブロック図であり、図11は、残響制御回路において生成される残響成分を説明するための図である。
本実施形態の残響制御回路350は、図10に示すように、フィルタ処理部251と、残響制御係数設定処理の際に信号処理制御部260によって係数データが設定され、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に当該設定された係数データに基づいて分割された各周波数帯域毎に残響成分を生成し、生成された残響成分を入力された元のオーディオ信号またはテスト信号に付加する残響成分生成部352と、周波数合成部253と、を有している。
なお、第1実施形態と同様に、この残響成分生成部352に設定される係数データは、各チャンネル毎および各周波数帯域毎にそれぞれ設定されるようになっている。
また、本実施形態の各残響成分生成部352は、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に各周波数帯域毎に予め定められた周波数帯域の成分を複数に分配する分配器354と、分配された一の信号成分について設定された係数データに基づいて利得(ゲイン)を調整する第1利得調整部355と、残響制御係数設定処理の際に係数データが設定され、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に当該設定された係数データに基づいて分配された一の成分に対して残響成分を生成する生成部356と、オーディオ信号またはテスト信号が入力された場合に、生成された残響成分と利得が調整された信号成分を加算する加算部358と、残響成分が加算された信号成分に対して設定された係数データに基づいて利得(ゲイン)を調整し、生成部356に帰還させる第2利得調整部357と、を有している。
分配器354には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路350に入力されると、フィルタ処理部から出力された該当する一の信号成分が入力されるようになっており、この各分配器354は、入力された信号成分を、第1利得調整部355および生成部356にそれぞれ分配するようになっている。
具体的には、この各分配器354は、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路350に入力されると、入力された信号成分を分配し、生成部356および第1利得調整部355にそれぞれ出力するようになっている。
第1利得調整部355には、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260によって当該残響制御回路350でかつ当該周波数帯域に該当する係数データが設定されるようになっており、例えば、本実施形態では、生成部356の内部に設けられたメモリ(図示せず)に係数データによって示される係数(以下、利得係数という。)Gが設定されるようになっている。
また、第1利得調整部355には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路350に入力されると、一の信号成分が入力されるようになっており、この第1利得調整部355は、設定された利得係数Gに基づいて入力された一の信号成分の利得(ゲイン)を調整し、当該利得が調整された信号成分を加算部358に出力するようになっている。
生成部356は、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260によって当該残響制御回路350でかつ当該周波数帯域に該当する係数データが設定されるようになっており、例えば、本実施形態では、生成部356の内部に設けられたメモリ(図示せず)に係数データによって示される係数(以下、遅延係数という。)Mが設定されるようになっている。
また、この生成部356には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路350に入力されると、分配器354から出力された信号成分と、後述するように、第2利得調整部357を介して帰還される残響成分と、が入力されるようになっている。そして、この生成部356は、入力された信号成分に帰還された残響成分を加算するとともに、設定された遅延係数Mに基づいて、加算された信号成分における遅延時間「M」を有する残響成分を生成し、生成された残響成分を加算部358に出力するようになっている。
加算部358には、利得が調整された信号成分と残響成分とが入力されるようになっており、この加算部358は、入力された信号成分に残響成分を加算し、当該残響成分が加算された信号成分を周波数合成部に出力するとともに、第2利得調整部357に出力するようになっている。
第2利得調整部357には、残響制御係数設定処理が実行される際に、信号処理制御部260によって当該残響制御回路350でかつ当該周波数帯域に該当する係数データが設定されるようになっており、例えば、本実施形態では、生成部356の内部に設けられたメモリ(図示せず)に当該係数データによって示される利得係数−Gが設定されるようになっている。ただし、この第2利得調整部357には、第1利得係数Gにおいて正負が異なる係数−Gの利得係数が設定されるようになっている。
また、第2利得調整部357には、オーディオ信号またはテスト信号の一の信号成分が残響制御回路350に入力されると、一の信号成分が入力されるようになっており、この第2利得調整部357は、設定された係数データによって示される係数に基づいて入力された一の信号成分の利得(ゲイン)を調整し、当該利得が調整された信号成分を生成部356に帰還させるようになっている。
なお、本実施形態の残響成分生成部352は、このような構成を有することにより、各周波数帯域毎に残響成分の生成およびその付加を行うようになっている。例えば、当該残響成分生成部352に「1」なる単位信号が入力されると、図10に示すように、遅延時間「M」毎に、徐々に減衰される残響成分を生成することができるようになっており、当該生成された残響成分を順次信号成分に加算することができるようになっている。ただし、図10において、T0は、単位信号が入力された時刻、TM、T2MおよびT3Mは、遅延時間「M」毎の時刻を示し、図に示された値は入力信号に対して出力される残響成分の信号レベルを示す。
まず、図12を用いて本実施形態の信号処理制御部260の構成およびその動作について説明する。なお、図12は、第2実施形態における信号処理制御部260に設けられたテーブルに保持されているデータ構成を示す図である。
本実施形態の信号処理制御部260には、残響特性解析部127Cにて算出された残響特性の近似直線またはその近似直線によって示される残響時間が残響時間データ(RT)として入力されるとともに、内部に残響時間データ(RT)に対応する係数データを保持するテーブルが設けられている。そして、信号処理制御部260は、入力された残響時間データ(RT)に基づいて設定するべき係数データを読み出すようになっており、読み出された係数データを各残響制御回路350毎に各残響成分生成部352に設定するようになっている。
具体的には、本実施形態の信号処理制御部260には、残響時間データ(RT)によって対応付けされる各周波数帯域に対する利得係数および遅延係数が保持されており、信号処理制御部260は、システム制御部129の制御の下、入力された残響時間データ(RT)に基づいて対応する各周波数帯域の利得係数および遅延係数を読み出し、読み出された各利得係数および各遅延係数を各残響制御回路350における各周波数毎に設けられた生成部356、第1利得調整部355および第2利得調整部357に設定するようになっている。
例えば、本実施形態の信号処理制御部260には、図11に示すように、当該各残響制御係数α毎に6バンド、すなわち、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHzおよび16kHzの各周波数を中心周波数とする周波数帯域に利得係数Gおよび遅延係数Mが保持されている。
なお、本実施形態の残響時間の設定処理において、第1実施形態の残響時間の設定処理におけるステップS16の動作に代えて、入力された残響時間データ(RT)に基づいて各周波数毎に設けられた生成部356、第1利得調整部355および第2利得調整部357に設定するようになっており、その他の処理は第1実施形態と同様である(図8参照)。
具体的には、信号処理制御部260は、システム制御部129の制御により、入力された残響時間データ(RT)に基づいて対応する各周波数帯域の利得係数および遅延係数を読み出し、読み出された各利得係数および各遅延係数を各残響制御回路350における各周波数毎に設けられた生成部356、第1利得調整部355および第2利得調整部357に設定する。
以上のように、本実施形態のサラウンドシステム100は、リスニングルーム10に設置され、音源を拡声するスピーカシステム130と、リスニングルーム10の残響特性に基づいて当該音源の残響成分を調整して音源をスピーカシステム130によって拡声させる信号処理装置120と、スピーカシステム130からリスニングルーム10に拡声された際の当該リスニングルーム10の特定の聴取位置における拡声音を集音するマイクロホン140と、を備え、信号処理装置120が、音源としてオーディオ信号を取得する入力処理部121と、音源としてリスニングルーム10の残響特性を解析するためのテスト信号を発生させるテスト信号発生部124と、オーディオ信号またはテスト信号の少なくとも何れか一方の信号をスピーカシステム130から拡声させる電力増幅器123と、マイクロホン140によって集音された拡声音を示す拡声音を取得するとともに、取得された拡声音に基づいて当該拡声音の聴取位置における音の強度に関するリスニングルーム10の時間的な残響特性を認識し、認識された残響特性に基づいて拡声音の聴取位置における減衰時間とその強度レベルの変化の度合いを示す変化率を算出する空間特性解析部127と、算出された変化率に基づいて、スピーカシステム130に拡声すべきテスト信号の残響特性を調整するとともに、テスト信号に対して調整された残響特性に基づいて、音源として取得され、スピーカシステム130から拡声すべきオーディオ信号の残響特性を調整することを特徴とする信号処理部200と、を有する構成をしている。
この構成により、本実施形態のサラウンドシステム100は、取得された集音信号に基づいて当該集音信号の聴取位置における音の強度に関する時間的な残響特性を認識し、認識された残響特性に基づいて拡声音の聴取位置における減衰時間とその強度レベルの変化の度合いを示す変化率を算出する。そして、このサラウンドシステム100は、算出された変化率に基づいて取得されたオーディオ信号または発生されたテスト信号に対して当該信号の残響特性を調整する。
したがって、本実施形態のサラウンドシステム100は聴取位置における残響時間とその強度レベルに基づいて残響特性を調整することができるので、容易にかつ的確にオーディオ信号に対して残響成分の調整を行うことができる。
すなわち、オーディオ信号に対して残響成分を調整する場合には、専門的な知識が必要であり、かつ、FIRフィルタを用いる場合にはフィルタ係数などの多くのパラメータを設定する必要がある。特に、上述のように、ユーザが所望する残響時間を操作部128の操作により設定する場合には、各周波数帯域毎の残響時間を均一にするためには、多くのパラメータを設定する必要があり、各パラメータの設定操作が煩わしくなる。しかしながら、本実施形態のサラウンドシステム100は、残響時間データ(RT)のみによって残響時間を調整することができる。
この結果、本実施形態のサラウンドシステム100は、ユーザの操作性が向上するとともに、的確に残響時間、すなわち、拡声音の残響特性を設定させることができるとともに、残響時間を調整する際に生ずる違和感が生ずることなく、自然にオーディオ信号を拡声することのできる音場を提供することがきる。
なお、本実施形態では、各チャンネル毎および予め設定された周波数帯域毎に残響制御係数算出処理を行い、残響制御回路350に各周波数帯域毎に残響制御係数を設定するようになっているが、予め設定された周波数帯域毎に分割せずに、各チャンネル毎に全周波数帯域における残響制御係数を算出し、当該算出された残響制御係数を各チャンネル毎の残響制御回路350の残響制御係数に設定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、各チャンネル毎に残響制御係数算出処理を行い、残響制御回路350に各周波数帯域毎に残響制御係数を設定するようになっているが、全チャンネル一度に残響制御係数を算出するようにしてもよいし、全チャンネル唯一の残響制御係数を算出するようにしてもよい。
また、本実施形態では、各残響制御回路350は、2系統のパスにおける各残響成分を混合し、残響制御係数データに基づいて残響成分を生成するようになっているが、1系統または3系統以上のパスよって残響成分を生成してもよい。
また、本実施形態では、各残響制御回路350は、予め定められた周波数帯域毎に残響成分を生成するようになっているが、入力されたオーディオ信号またはテスト信号を複数の周波数帯域毎に分割せずに、当該残響成分を生成してもよい。
この場合に、各残響制御回路350において、オーディオ信号およびテスト信号の全周波数帯域に対して残響成分の生成および付加を行う残響成分生成部352を設けることによって、または、予め定められた各周波数帯域毎に残響成分を生成する残響成分生成部352を縦列に設けることによって、当該残響成分を生成してもよい。
また、本実施形態では、5.1chのサラウンドシステム100を用いて残響時間の設定処理について説明しているが、勿論、7.1chのサラウンドシステム、AVアンプなどのステレオ用音響再生装置などの他の音響再生装置についても適用することができる。
また、本実施形態では、信号処理装置120において、音源出力装置110において出力されたデジタル信号に基づいて残響成分の付加その他の信号処理を行うようになっているが、勿論、当該信号処理装置120において、音源出力装置110から出力されたアナログ信号またはその他の外部から入力されたアナログ信号に基づいて信号処理を行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、上述の信号処理装置によって、残響制御係数算出処理を含む残響制御係数設定処理を行うようになっているが、信号処理装置にコンピュータおよび記録媒体を備え、この記録媒体に上述の残響制御係数算出処理を含む残響制御係数設定処理を実行するためのプログラムを格納し、このコンピュータで当該プログラムを読み込むことによって上述と同様の残響制御係数算出処理を含む残響制御係数設定処理を行うようにしてもよい。