JPWO2006001381A1 - ジペプチドまたはジペプチド誘導体の製造法 - Google Patents

ジペプチドまたはジペプチド誘導体の製造法 Download PDF

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    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione

Abstract

本発明によれば、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質または該蛋白質を生産する能力を有する細胞の培養物もしくは該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体の製造法を提供することができる。

Description

本発明は、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質または該蛋白質をコードするDNAを保有する細胞の培養物もしくは該培養物の処理物を用いたジペプチドまたはジペプチド誘導体の製造法に関する。
ペプチドの大量合成法については、化学合成法(液相法、固相法)、酵素的合成法およびDNA組換え法を用いた生物学的合成法が知られている。現在、50残基以上の長鎖のペプチドに関しては酵素的合成法あるいは生物学的合成法が用いられ、ジペプチドに関しては化学合成法と酵素的合成法が主に用いられている。
化学合成法によるジペプチドの合成では、官能基の保護・脱保護などの操作が必要であり、またラセミ体も合成されることから、化学合成法は経済的、効率的な方法とはいえない。また、化学合成法は大量の有機溶媒等を使うため環境衛生上も好ましい方法ではない。
酵素法によるジペプチドの合成に関しては、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の逆反応を利用した方法(非特許文献1参照)、耐熱性アミノアシルt−RNA合成酵素を利用する方法(特許文献1〜4参照)、非リボゾームペプチドシンセターゼ(以下、NRPSと称す)を利用する方法(非特許文献2、3および特許文献5、6参照)が知られている。
しかし、タンパク質分解酵素の逆反応を利用した方法では、基質となるアミノ酸の官能基の保護・脱保護が必要であり、ペプチド形成反応の効率化およびペプチド分解反応の阻止が困難といった問題点がある。耐熱性アミノアシルt−RNA合成酵素を利用する方法には、酵素の発現、目的産物以外の副生反応の阻止が困難という問題点がある。NRPSを利用する方法に関しては、酵素分子が巨大なためにDNA組換え法を用いて該酵素を発現することが困難であること、補酵素である4’−ホスフォパンテテイン(4’−phosphopantetheine)の供給が必要であり、効率的な製造法とはいえない。
一方、酵素分子量がNRPSより小さく、補酵素である4’−phosphopantetheineを必要としないγ−グルタミルシステインシンセターゼ(γ−glutamylcysteine synthetase)、グルタチオンシンセターゼ(glutathione synthetase)、D−アラニル−D−アラニン(D−Ala−D−Ala)リガーゼ(D−Ala−D−Ala ligase)、ポリ−γ−グルタミン酸シンセターゼ(poly−γ−glutamate synthetase)等の一群のペプチドシンセターゼも知られている。これらの酵素の殆どはD−アミノ酸を基質に用いる、またはγ位のカルボキシル基でのペプチド結合の形成を触媒する等の特徴を有するため、L−アミノ酸のα位カルボキシル基でペプチド結合するジペプチドの合成に用いることはできない。
L−アミノ酸のα位カルボキシル基でのペプチド結合形成活性によるジペプチド生成が知られているのはバチルス属に属する微生物由来のジペプチド抗生物質であるバシリシン合成酵素のみである。バシリシン合成酵素は、バシリシン(L−アラニル−L−アンチカプシン、L−Ala−L−anticapsin)及びL−アラニル−L−アラニン(L−Ala−L−Ala)を合成する活性を有することは知られているが、その他のジペプチドの合成活性については知られていない(非特許文献4および5参照)。
一方、全ゲノム情報の解明されたバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)168株(非特許文献6参照)におけるバシリシン生合成酵素遺伝子群に関しては、ywfAのORFを含むバシリシンオペロンを増幅するとバシリシンの生産性が増加することが知られている(特許文献7参照)。しかしこれらのORFの中に2種以上のアミノ酸をペプチド結合で連結する活性を有する蛋白質をコードするORFが含まれているか、含まれているとすれば、どのORFが該蛋白質をコードするかについては知られていない。
ある種の微生物は2つのアミノ酸が環状につながった環状ジペプチド(ジケトピペラジン)構造を持つ化合物を生成することも知られている(非特許文献7、8および9参照)。ジケトピペラジンの生合成については、Streptomyces acidiscabiesのThaxtomin生合成過程ではNRPSによってcyclo−(L−4−nitrotryptophyl−L−phenylalanine)構造が合成される(非特許文献10参照)こと、およびバチルス属細菌のNRPSの一部のモジュールの作用によってフェニルアラニンとプロリンからcyclo(phenylalanyl−proline)が生成すること(
非特許文献11参照)が報告されている。
一方、抗生物質であるアルボノルシン(albonoursin)の生産株として知られているストレプトマイセス・ノウルセイ(Streptomycesnoursei)ATCC11455株ではNRPS酵素とは全く類似性のない蛋白質(albC遺伝子産物)がシクロ(L−フェニルアラニル−L−ロイシン)[cyclo(L−phenylalanyl−L−leucine)]構造の合成を担っていること、albC遺伝子を導入したEscherichia coliおよびStreptomyces lividansの培養液にcyclo dipeptide oxidaseを作用させるとアルボノルシンが検出されたとの報告はある(非特許文献12参照)が、albC遺伝子産物が直鎖状のジペプチドを生成するとの報告はない。
以上のように、バシリシン合成酵素群に含まれる酵素等が、アミノ酸およびアミノ酸誘導体から様々なジペプチド誘導体を生成する活性があることは知られていない。
特開昭58−146539号公報 特開昭58−209991号公報 特開昭58−209992号公報 特開昭59−106298号公報 米国特許第5795738号 米国特許第5652116号 国際公開特許第00−03009号パンフレット J.Biol.Chem.,119,707−720(1937) Chem.Biol.,7,373−384(2000) FEBS Lett.,498,42−45(2001) J.Ind.Microbiol.,2,201−208(1987) Enzyme.Microbial.Technol.,29,400−406(2001) Nature,390,249−256(1997) J.Nat.Prod.,59,293−296(1996) Tetrahedron,28,2999(1972) J.Appl.Microbiol.,86,29−53(1999) Mol.Microbiol.,38,794−804(2000) J.Biol.Chem.,273,22773−22781(1998) Chemistry & Biol.,9,1355−1364(2002)
本発明の目的は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチド誘導体を製造する方法を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(26)に関する。
(1)以下の[1]〜[7]のいずれかに記載の蛋白質、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体[以下、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)という]を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)の製造法[但し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)は、下記アミノ酸群Aから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物ではない(アミノ酸群A:L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリン、L−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシン、グリシンおよびβ−アラニン)]。
[1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
(2)以下の[1]〜[7]のいずれかに記載の蛋白質、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、そのまま、または該媒体から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取した後、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を修飾し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体[以下、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)という]を生成させ、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)の製造法[但し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)は、前記アミノ酸群Aから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物ではない]。
[1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
[7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
(3)以下の[1]〜[5]から選ばれるDNAを保持する細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)の製造法[但し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)は、前記アミノ酸群Aから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物ではない]。
[1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[3]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
[5]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
(4)以下の[1]〜[5]から選ばれるDNAを保持する細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、そのまま、または該媒体から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取した後、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を修飾し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を生成させ、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)の製造法。
[1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[3]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
[5]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
(5)アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(I)
Figure 2006001381
(式中、nは1〜3の整数を表し、
1aおよびR1bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR1aおよびR1bのいずれか一方が、隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR2aおよびR2bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
2aおよびR2bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR1a1bNに隣接する炭素原子上のR2aおよびR2bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子ならびにR1a及びR1bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、nが2または3である場合、2つまたは3つのR2aおよび2つまたは3つのR2bはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)または式(II)
Figure 2006001381
[式中、nは前記nと同義であり、
3aおよびR3bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはRHNに隣接する炭素原子上のR3aおよびR3bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子およびRと一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、nが2または3である場合、2つまたは3つのR3aおよび2つまたは3つのR3bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはRが隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR3aおよびR3bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
はアミノ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、モノ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ、ジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノまたは脂環式複素環基を表す]で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体[但し、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(I)のみであるとき、R1a及びR1bの少なくとも一方は水素原子であり、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(II)のみであるとき、Rはヒドロキシである]である、上記(1)〜(4)のいずれか1つの製造法。
(6)アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(III)
Figure 2006001381
(式中、R1cおよびR1dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表し、
2cおよびR2dは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)または式(IV)
Figure 2006001381
(式中、R3cおよびR3dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、
は前記と同義である)で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体[但し、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(III)のみであるとき、R1c及びR1dの少なくとも一方は水素原子であり、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(IV)のみであるとき、Rはヒドロキシである]である、上記(1)〜(4)のいずれか1つの製造法。
(7)アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(V)
Figure 2006001381
(式中、R2eは置換もしくは非置換のメチルを表す)または式(VI)
Figure 2006001381
(式中、R3eは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体である上記(1)〜(4)のいずれか1つの製造法。
(8)アミノ酸またはアミノ酸誘導体がL−アミノ酸、グリシンおよびβ−アラニンからなる群より選ばれるアミノ酸またはその誘導体である、上記(1)〜(4)のいずれか1つの製造法。
(9)L−アミノ酸がL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリンおよびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシンから選ばれるL−アミノ酸である、上記(8)の製造法。
(10)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)が式(VIIa)
Figure 2006001381
[式中、n3aおよびn4aはそれぞれ前記nと同義であり、
6aおよびR6bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR6aおよびR6bのいずれか一方が、隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR7aおよびR7bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
7aおよびR7bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR6a6bNに隣接する炭素原子上のR7aおよびR7bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子ならびにR6aおよびR6bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n3aが2または3である場合、2つまたは3つのR7aおよび2つまたは3つのR7bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
8aは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR8aが隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接し、かつR9aおよびR9bと結合する炭素原子ならびに該炭素原子上のR9aおよびR9bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
9aおよびR9bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR8aNに隣接する炭素原子上のR9aおよびR9bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子およびR8aと一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n4aが2または3である場合、2つまたは3つのR9aおよび2つまたは3つのR9bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
10aはアミノ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、モノ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ、ジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノまたは脂環式複素環基を表す]で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造法。
(11)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が式(VIIb)
Figure 2006001381
[式中、n3Aおよびn4Aはそれぞれ前記nと同義であり、
6AおよびR6Bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR6AおよびR6Bのいずれか一方が、隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR7AおよびR7Bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
7AおよびR7Bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR6A6BNに隣接する炭素原子上のR7AよびR7Bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子ならびにR6AおよびR6Bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n3Aが2または3である場合、2つまたは3つのR7Aおよび2つまたは3つのR7Bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
8Aは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR8Aが隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接し、かつR9AおよびR9Bと結合する炭素原子ならびに該炭素原子上のR9AおよびR9Bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
9AおよびR9Bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR8ANに隣接する炭素原子上のR9AおよびR9Bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子およびR8Aと一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n4A層が2または3である場合、2つまたは3つのR9Aおよび2つまたは3つのR9Bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
10Aは前記R10aと同義である]で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である上記(1)〜(5)のいずれか1つの製造法。
(12)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)が式(VIIIa)
Figure 2006001381
(式中、R6cおよびR6dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表し、
7cおよびR7dは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、
9cおよびR9dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、
10aは前記と同義である)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である上記(1)〜(6)のいずれか1つの製造法。
(13)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が式(VIIIb)
Figure 2006001381
(式中、R6C、R6D、R7C、R7D、R9CおよびR9Dはそれぞれ前記R6c、R6d,R7c、R7d、R9cおよびR9dと同義であり、
10Aは前記と同義である)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である上記(1)〜(6)のいずれか1つの製造法。
(14)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)が式(IXa)
Figure 2006001381
(式中、R7eは置換もしくは非置換のメチルを表し、
9eは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の製造法。
(15)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が式(IXb)
Figure 2006001381
(式中、R7EおよびR9Eはそれぞれ前記R7eおよびR9eと同義である)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である上記(1)〜(7)のいずれか1つの製造法。
(16)ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)あるいはジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)がL−アミノ酸、グリシン、およびβ−アラニン、ならびにそれらの誘導体から選ばれる同一または異なるアミノ酸またはアミノ酸誘導体がペプチド結合したジペプチドまたはジペプチド誘導体である、上記(1)〜(8)のいずれか1つの製造法。
(17)L−アミノ酸がL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリンおよびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシンから選ばれるL−アミノ酸である、上記(16)の製造法。
(18)細胞が微生物の細胞である、上記(3)〜(17)のいずれか1つの製造法。
(19)微生物が原核生物である、上記(18)の製造法。
(20)原核生物が1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質(以下、ペプチド取込み蛋白質ともいう)の活性が低下または喪失した微生物である上記(19)の製造法。
(21)原核生物が3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失した微生物である、上記(20)の製造法。
(22)ペプチダーゼが配列番号43〜46のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号43〜46のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質である、上記(20)または(21)の製造法。
(23)ペプチド取込み蛋白質が配列番号47〜51のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号47〜51のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有する蛋白質であり、かつペプチド取り込み活性を有する蛋白質である、上記(20)または(22)の製造法。
(24)原核生物がエシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物である、上記(19)〜(23)のいずれか1つの製造法。
(25)エシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物がエシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテイルム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルスまたはバチルス・メガテリウムである上記(24)の製造法。
(26)培養物の処理物が培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品であり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する処理物であることを特徴とする、上記(3)〜(25)のいずれか1つの製造法。
本発明により、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチド誘導体を効率的に製造することができる。
図1はプラスミドpPE43の構築過程を示す図である。 図2はプラスミドpQE60ywfEの構築過程を示す図である。 図3は、直鎖ジペプチドの合成活性を有する蛋白質の発現プラスミドベクターであるpAL−nouおよびpAL−albの構築過程を示す図である。 図4は、ywfE遺伝子発現強化型ベクターであるpPE56の構築過程を示す図である。
符号の説明
ywfE:バチルス・サチリス168株由来のywfE遺伝子
trp:トリプトファンプロモーター遺伝子
T5:T5プロモーター
Amp:アンピシリン耐性遺伝子
lacI :ラクトースリプレッサー遺伝子
albCalbC遺伝子またはalbC類似遺伝子
1.本発明の方法で用いられる蛋白質
本発明の方法で用いられる蛋白質としては、
[1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質、
[3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質、
[4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質、
[5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質、および
[7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質、
などをあげることができる。
上記において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ式(I)で表されるジペプチドの合成活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Thrid Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、配列番号1〜8、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換または付加できる程度の数であり、1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
配列番号1〜8、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1または複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されていてもよい。
アミノ酸の置換が可能なアミノ酸としては、例えば配列番号1〜8、または配列番号37および38で表されるアミノ酸配列を公知のアライメントソフトウェアを用いてそれぞれの間で比較したときに、すべてのアミノ酸配列において保存されていないアミノ酸をあげることができる。公知のアライメントソフトウェアとしては、例えば遺伝子解析ソフトウェアGenetyx(ソフトウェア開発株式会社)に含まれるアライメント解析ソフトをあげることができる。該解析ソフトの解析パラメータとしては、デフォルト値を用いることができる。
また、アミノ酸の欠失または付加が可能なアミノ酸の位置としては、例えば配列番号1〜8、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列のN末端側およびC末端側をあげることができる。
欠失、置換または付加は同時に生じてもよく、置換または付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
また、本発明で用いられる蛋白質がジペプチドまたはジペプチド誘導体の合成活性を有するためには、配列番号1〜8、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号1または37で表されるアミノ酸配列との相同性が65%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有していることが望ましい。
アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183,63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLAST Gapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
また、配列番号1〜8、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号1または37で表されるアミノ酸配列と65%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつジペプチドまたはジペプチド誘導体の合成活性を有する蛋白質もまた本発明で用いられる蛋白質である。アミノ酸配列の相同性は、上記したようにBLASTやFASTAを用いて決定することができる。
配列番号17で表されるアミノ酸配列は、配列番号1〜7で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質の間で保存されている領域であり、かつ各種微生物のAla−Alaリガーゼ活性を有する蛋白質のコンセンサス配列に対応する領域である。
配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質であり、かつジペプチドまたはジペプチド誘導体の合成活性を有する蛋白質もまた本発明の蛋白質である。
配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質が、ジペプチドまたはジペプチド誘導体の合成活性を有する蛋白質であるためには、該蛋白質のアミノ酸配列と配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列との相同性が、少なくとも80%以上、通常は90%以上、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。
アミノ酸配列の相同性は、上記したようにBLASTやFASTAを用いて決定することができる。
本発明で用いられる蛋白質が、ジペプチドまたはジペプチド誘導体の合成活性を有する蛋白質であることを確認する手段としては、例えばDNA組換え法を用いて本発明の蛋白質を発現する形質転換体を作製し、該形質転換体を用いて本発明で用いられる蛋白質を製造した後、該蛋白質、1種以上のL−アミノ酸およびアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体が生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法をあげることができる。
2.本発明で用いられるDNA
本発明で用いられるDNAとしては、
[1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA、
[2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[3]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[4]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA、および
[5]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、などをあげることができる。
上記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとは、配列番号9〜16、18、36、39または40のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAの一部、または全部をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/l、好ましくは0.9mol/lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度、好ましくは0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第3版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、上記したBLASTおよびFASTA等を用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号9〜16、18、36、39および40のいずれかで表される塩基配列と少なくとも75%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
配列番号9〜16、18、36、39および40のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、ジペプチドまたはジペプチド誘導体の合成活性を有する蛋白質をコードするDNAであることは、例えば上記したように、組換えDNA法を用いて該DNAにコードされる蛋白質を製造し、該蛋白質の活性を測定することにより確認することができる。
4.本発明で用いられるDNAの調製
本発明に用いられるDNAは、例えば、配列番号9〜16、18、36、39または40で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブを用いた、バチルス属またはストレプトマイセス属に属する微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または配列番号9〜16、18、36、39または40で表される塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、バチルス属に属する微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols,Academic Press(1990)]により取得することができる。
また、各種の遺伝子配列データベースに対して配列番号1〜8、17、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列と75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有する配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列に基づき、該塩基配列を有する生物の染色体DNA、cDNAライブラリー等から上記した方法により本発明に用いられるDNAを取得することもできる。
取得したDNAをそのまま、あるいは適当な制限酵素などで切断し、常法によりベクターに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細胞に導入した後、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,74,5463(1977)]あるいは373A・DNAシークエンサー(パーキン・エルマー社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより目的とするDNAを調製することもできる。
上記のようにして取得されるDNAとして、例えば、配列番号9〜16、36、39または40で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
本発明のDNAおよび本発明の製造法に用いられるDNAを組み込むベクターとしては、pBluescriptII KS(+)(ストラタジーン社製)、pDIRECT[Nucleic Acids Res.,18,6069(1990)]、pCR−Script Amp SK(+)(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCRII(インビトロジェン社製)およびpCR−TRAP(ジーンハンター社製)などをあげることができる。
宿主細胞としては、エシェリヒア属に属する微生物などをあげることができる。エシェリヒア属に属する微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)XL1−Blue、エシェリヒア・コリXL2−Blue、エシェリヒア・コリDH1、エシェリヒア・コリMC1000、エシェリヒア・コリKY3276、エシェリヒア・コリW1485、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリNo.49、エシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリNY49、エシェリヒア・コリMP347、エシェリヒア・コリNM522、エシェリヒア・コリME8415等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
上記方法によって得られる本発明の製造法に用いられるDNAを保有する微生物としては、例えば配列番号1で表される配列を有するDNAを含有する組換え体DNAを保有する微生物であるエシェリヒア・コリNM522/pPE43をあげることができる。
4.本発明に用いられる細胞の調製
(1)本発明に用いられる細胞としては、i)上記3のDNAを染色体DNA上に有するバチルス属に属する細菌、好ましくはバシリシン合成活性を有するバチルス属に属する細菌、より好ましくはバチルス・サチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウムおよびバチルス・プミルスからなる群より選ばれる種に属する細菌、さらに好ましくは、バチルス・サチリスATCC15245、バチルス・サチリスATCC6633、バチルス・サチリスIAM1213、バチルス・サチリスIAM1107、バチルス・サチリスIAM1214、バチルス・サチリスATCC9466、バチルス・サチリスIAM1033、バチルス・サチリスATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022およびバチルス・プミルスNRRL B−12025からなる群より選ばれる株である細菌、ii)上記3のDNAを染色体DNA上に有するストレプトマイセス属に属する細菌、好ましくはアルボノルシン合成活性を有するストレプトマイセス属に属する細菌、より好ましくはストレプトマイセス・アルボラスまたはストレプトマイセス・ノウルセイより選ばれる種に属する細菌、さらに好ましくは、ストレプトマイセス・アルボラスIFO14147、ストレプトマイセス・ノウルセイATCC11455またはIFO15452、iii)モレキュラー・クローニング第3版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、上記3の方法により取得したDNAを宿主細胞に導入することにより調製することができる形質転換体、をあげることができる。
本発明に用いられるDNAをもとにして、必要に応じて、本発明で用いられる蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該蛋白質の生産率が向上した細胞を取得することができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。
該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、本発明の蛋白質を生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、原核生物および酵母等の微生物の細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができ、好ましくは微生物、より好ましくは原核生物、さらに好ましくは細菌をあげることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明に用いられるDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社製)、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233−2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pET−3(ノバジェン社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200[Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,4306(1985)]、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(−)(ストラタジーン社製)、pTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrS32[エシェリヒア・コリJM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pPAC31(WO98/12343)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(宝酒造社製)、pUC118(宝酒造社製)、pPA1(特開昭63−233798)、pWH1520(MoBiTec社製)、pCS299P(WO 00/63388)、pVLT31[Gene,123,17(1993)]およびpIJ702(Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual:John Innes Foundation)等を例示することができる
プロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(P trp )、lacプロモーター(P lac )、Pプロモーター、Pプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
さらにバチルス属に属する微生物中で発現させるためのxylAプロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,35,594−599(1991)]やコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物中で発現させるためのP54−6プロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,53,674−679(2000)]、シュードモナス属に属する微生物中で発現させるためのtacプロモーター[Gene,123,17−24(1993)]、ストレプトマイセス属に属する微生物中で発現させるためのxylAプロモーター(Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual:John Innes Foundation)なども用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
本発明に用いられるDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えばpPE43をあげることができる。
原核生物としては、エシェリヒア属、セラチア(Serratia)属、バチルス属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、アナベナ(Anabena)属、アナシスティス(Anacystis)属、アスロバクター(Arthrobacter)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、クロマチウム(Chromatium)属、エルビニア(Erwinia)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、フォルミディウム(Phormidium)属、ロドバクター(Rhodobacter)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、ロドスピリウム(Rhodospirillum)属、セネデスムス(Scenedesmus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シネコッカス(Synechoccus)属、ザイモモナス(Zymomonas)属等に属する微生物、例えば、エシェリヒア・コリXL1−Blue、エシェリヒア・コリXL2−Blue、エシェリヒア・コリDH1、エシェリヒア・コリDH5α、エシェリヒア・コリMC1000
、エシェリヒア・コリKY3276、エシェリヒア・コリW1485、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリNo.49、エシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリNY49、エシェリヒア・コリMP347、エシェリヒア・コリNM522、バチルス・サチリスATCC33712、バチルス・メガテリウム、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)FERM BP−6030、バチルス・アミロリケファスエンス、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・イマリオフィルム(Brevibacterium immariophilum)ATCC14068、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)ATCC14066、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)ATCC14067、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14297、コリネバクテリウム・アセトアシドフィルム(Corynebacterium acetoacidophilum)ATCC13870、ミクロバクテリウム・アンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum)ATCC15354、セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)、セラチア・フォンチコラ(Serratia fonticola)、セラチア・リケファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)D−0110、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・リゾジーンズ(Agrobacterium rhizogenes)、アグロバクテリウム・ルビ(Agrobacterium rubi)、アナベナ・シリンドリカ(Anabaena cylindrica)、アナベナ・ドリオルム(Anabaena doliolum)、アナベナ・フロスアクア(Anabaena flos−aquae)、アースロバクター・オーレッセンス(Arthrobacter aurescens)、アースロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus)、アースロバクター・グロブフォルミス(Arthrobacter globformis)、アースロバクター・ヒドロカーボグルタミカス(Arthrobacter hydrocarboglutamicus)、アースロバクター・ミソレンス(Arthrobacter mysorens)、アースロバクター・ニコチアナ(Arthrobacter nicotianae)、アースロバクター・パラフィネウス(Arthrobacter paraffineus)、アースロバクター・プロトフォルミエ(Arthrobacter protophormiae)、アースロバクター・ロセオパラフィナス(Arthrobacter roseoparaffinus)、アース
ロバクター・スルフレウス(Arthrobacter sulfureus)、アースロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)、クロマチウム・ブデリ(Chromatium buderi)、クロマチウム・テピダム(Chromatium tepidum)、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)、クロマチウム・ワーミンギ(Chromatium warmingii)、クロマチウム・フルビアタティレ(Chromatium fluviatile)、エルビニア・ウレドバラ(Erwiniauredovora)、エルビニア・カロトバラ(Erwinia carotovora)、エルビニア・アナス(Erwinia ananas)、エルビニア・ヘリコラ(Erwinia herbicola)、エルビニア・パンクタタ(Erwinia punctata)、エルビニア・テレウス(Erwinia terreus)、メチロバクテリウム・ロデシアナム(Methylobacterium rhodesianum)、メチロバクテリウム・エクソトルクエンス(Methylobacterium extorquens)、フォルミディウム・エスピー(Phormidium sp.)ATCC29409、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドシュードモナス・ブラスチカ(Rhodopseudomonas blastica)、ロドシュードモナス・マリナ(Rhod opseudomonas marina)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドスピリウム・リブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドスピリウム・サレキシゲンス(Rhodospirillum salexigens)、ロドスピリウム・サリナラム(Rhodospirillum alinarum)、ストレプトマイセス・アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)、ストレプトマイセス・アウレウス(Streptomyces aureus)、ストレプトマイセス・フンジシディカス(Streptomyces fungicidicus)、ストレプトマイセス・グリセオクロモゲナス(Streptomyces griseochromogenes)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans、ストレプトマイセス・オリボグリセウス(Streptomyces olivogriseus)、ストレプトマイセス・ラメウス(Streptomyces rameus)、ストレプトマイセス・タナシエンシス(Streptomyces tanashiensis)、ストレプトマイセス・ビナセウス(Streptomyces vinaceus)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)等をあげることがでる。好ましい原核生物としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属等に属する細菌、例えば上記したエシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属等に属する種をあげることができ、より好ましい細菌としてはエシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテイルム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルス、バチルス・メガテリウム、セラチア・マルセッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・エルギノーサ、ストレプトマイセス・セリカラーまたはストレプトミセス・リビダンスをあげることができ、特に好ましくはエシェリヒア・コリをあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
酵母菌株を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を用いることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で機能するものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターをあげることができる。
宿主細胞としては、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シワニオマイミセス(Schwanniomyces)属、ピチア(Pichia)属、またはキャンディダ(Candida)属等に属する酵母菌株をあげることができ、具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomy cespombe)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、シワニオマイセス・アルビウス(Schwanniomyces alluvius)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、キャンディダ・ウティリス(Candida utilis)等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Methods Enzymol.,194,182(1990)]、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,4889(1984)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]等をあげることができる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107(特開平3−22979)、pAS3−3(特開平2−227075)、pCDM8[Nature,329,840(1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J.Biochem,101,1307(1987)]、pAGE210、pAMo、pAMoA等を用いることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーターあるいはメタロチオネインのプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞またはナマルバKJM−1細胞、ヒト胎児腎臓細胞、ヒト白血病細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)等をあげることができる。
マウス・ミエローマ細胞としては、SP2/0、NSO等、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0等、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC CRL−1573)、ヒト白血病細胞としてはBALL−1等、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,,133(1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84,7413(1987)]、Virology,52,456(1973)に記載の方法等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばBaculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Molecular Biology,A Laboratory Manual、Bio/Technology,,47(1988)等に記載された方法によって、蛋白質を生産することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、蛋白質を生産させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(いずれもインビトロジェン社製)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)の卵巣細胞、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)の卵巣細胞、カイコ卵巣由来の培養細胞等を用いることができる。
スポドプテラ・フルギペルダの卵巣細胞としてはSf9、Sf21(バキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ ア・ラボラトリー・マニュアル)等、トリコプルシア・ニの卵巣細胞としてはHigh5、BTI−TN−5B1−4(インビトロジェン社製)等、カイコ卵巣由来の培養細胞としてはボンビクス・モリ(Bombyx mori)N4等をあげることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84,7413(1987)]等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
プロモーターとしては、植物細胞中で機能するものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等をあげることができる。
酵母、動物細胞、昆虫細胞または植物細胞により発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加された蛋白質を生産する細胞を得ることができる。
(2)本発明の製造法に用いられる微生物としては、上記(1)の方法により調製される微生物において、1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質(以下、ペプチド取込み蛋白質と略す)の活性が低下または喪失している微生物、または3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物が好適に用いられる。
該微生物は、例えば(a)1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質の機能が低下または喪失した微生物、または3種以上のペプチダーゼの機能が低下または喪失した微生物に、上記(1)の方法によりジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力またはポリリン酸キナーゼ活性を有する蛋白質を生産する能力を付与する方法、または(b)上記(1)の方法により調製することができるジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力またはポリリン酸キナーゼ活性を有する蛋白質を生産する能力を有する微生物の、a)1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み蛋白質、またはb)3種以上のペプチダーゼ、の機能を低下または喪失させる方法等のいずれの方法によっても取得することができる。
1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取込み蛋白質の活性が低下または喪失している微生物としては、該微生物が正常に生育できる限りにおいて、任意の1種以上のペプチダーゼおよび任意の1種以上のペプチド取込み蛋白質の活性が低下または喪失している微生物をあげることができ、好ましくは1種以上9種以下、より好ましくは1種以上7種以下、さらに好ましくは1種以上4種以下のペプチダーゼの活性が低下または喪失しており、かつ好ましくは1種以上5種以下、より好ましくは1種以上3種以下、さらに好ましくは1種以上2種以下、特に好ましくは1種のペプチド取込み蛋白質の活性が低下または喪失している微生物をあげることができる。
該微生物としては、より具体的には、該微生物のゲノムDNA上に存在するペプチダーゼをコードする遺伝子(以下、ペプチダーゼ遺伝子と略す)およびペプチド取込み蛋白質をコードする遺伝子(以下、ペプチド取込み蛋白質遺伝子)のうち、1種以上のペプチダーゼ遺伝子の塩基配列および1種以上のペプチド取込み蛋白質遺伝子の塩基配列において、該塩基配列の全部または一部が欠失しているため、または該塩基配列中に塩基の置換または付加があるために該ペプチダーゼおよび該ペプチド取込み蛋白質の活性が低下または喪失している微生物をあげることができる。
ペプチダーゼの活性が低下しているとは、上記した塩基の欠失、置換または付加がない遺伝子がコードするペプチダーゼに比べ、ペプチド分解活性が低くなっており、通常は80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下に低下していることを意味する。
微生物のペプチド分解活性は、基質となるペプチドと微生物菌体とを水性媒体中に共存せしめ、ペプチド分解反応を行った後、残存しているペプチド量を公知の方法、例えばHPLCなどを用いた分析法によって定量することにより測定することができる。
上記ペプチダーゼとしては、ペプチド分解活性を有する蛋白質であればいずれでもよく、好ましくはジペプチド分解活性が高い蛋白質、より好ましくはジペプチダーゼをあげることができる。
より具体的なペプチダーゼとしては、例えばエシェリヒア・コリに存在する、配列番号43で表されるアミノ酸配列を有するPepA、配列番号44で表されるアミノ酸配列を有するPepB、配列番号45で表されるアミノ酸配列を有するPepD、配列番号46で表されるアミノ酸配列を有するPepN、PepP[GenBank accession no.(以下、GenBankと略す)AAC75946]、PepQ(GenBank AAC76850)、PepE(GenBank AAC76991)、PepT(GenBank AAC74211)、Dcp(GenBank AAC74611)およびIadA(GenBank AAC77284)など、バチルス・サチリスに存在すをAmpS(GenBank AF012285)、PepT(GenBank X99339)、YbaC(GenBank Z99104)、YcdD(GenBank Z99105)、YjbG(GenBank Z99110)、YkvY(GenBank Z99111)、YqjE(GenBank Z99116)、YwaD(GenBank Z9123)など、コリネバクテリウム・グルタミカムに存在するBAB97732、BAB97858、BAB98080、BAB98880、BAB98892、BAB99013、BAB99598およびBAB99819(いずれも日本DNAデータバンクの登録番号)で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質などをあげることができ、ジペプチダーゼとしては、配列番号43〜46で表されるアミノ酸配列を有するPepA、PepB、PepDおよびPepN、並びにPepQ、PepE、IadAをあげることができる。また、配列番号43〜46のいずれかのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質もジペプチド分解活性が高い蛋白質としてあげることができる。アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、上記したBLASTおよびFASTA等を用いて決定することができる。
また、ペプチド取込み蛋白質の活性が低下しているとは、上記した塩基の欠失、置換または挿入がない遺伝子がコードするペプチド取込み蛋白質に比べ、ペプチド取り込み活性が低くなっており、通常は80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下に低下していることを意味する。
微生物のペプチド取り込み活性は、基質となるペプチドと微生物菌体とを水性媒体中に共存せしめ、ペプチド取り込み反応を行った後、水性媒体中に残存しているペプチド量を公知の方法、例えばHPLCなどを用いた分析法によって定量することにより測定することができる。
上記ペプチド取り込み蛋白質としては、染色体DNA上でオペロンを形成する遺伝子にコードされている蛋白質であり、細胞膜上で複合体を形成してペプチド取り込み活性を発現する蛋白質、および単独の蛋白質としてペプチド取り込み活性を有する蛋白質など、微生物のペプチド取り込みに関与している蛋白質であればいずれでもよく、好ましくはペプチド取り込み活性が高い蛋白質をあげることができる。
より具体的なペプチド取り込み蛋白質としては、例えばエシェリヒア・コリに存在する配列番号47で表されるアミノ酸配列を有するDppA、配列番号48で表されるアミノ酸配列を有するDppB、配列番号49で表されるアミノ酸配列を有するDppC、配列番号50で表されるアミノ酸配列を有するDppD、配列番号51で表されるアミノ酸配列を有するDppF、OppA(GenBank AAC76569)、OppB(GenBank AAC76568)、OppC(GenBank AAC76567)、OppD(GenBank AAC76566)、OppF(GenBank AAC76565)、YddO(GenBank AAC74556)、YddP(GenBank AAC74557)、YddQ(GenBank AAC74558)、YddR(GenBank AAC74559)、YddS(GenBank AAC74560)、YbiK(GenBank AAC73915)、MppA(GenBank AAC74411)、SapA(GenBank AAC74376)、SapB(GenBank AAC74375)、SapC(GenBank AAC74374)、SapD(GenBank AAC74373)、およびSapF(GenBank AAC74372)など、バチルス・サチリスに存在するDppA(GenBank CAA40002)、DppB(GenBank CAA40003)、DppC(GenBank CAA40004)、DppD(GenBank CAA40005)、DppE(GenBank CAA40006)、OppA(GenBank CAA39787)、OppB(GenBank CAA39788)、OppC(GenBank CAA39789)、OppD(GenBank CAA39790)、OppF(GenBank CAA39791)、AppA(GenBank CAA62358)、AppB(GenBank CAA62359)、AppC(GenBank CAA62360)、AppD(GenBank CAA62356)、AppF(GenBank CAA62357)、YclF(GenBank CAB12175)およびYkfD(GenBank CAB13157)など、コリネバクテリウム・グルタミカムに存在するBAB99048、BAB99383、BAB99384、BAB99385、BAB99713、BAB99714、BAB99715、BAB99830、BAB99831、BAB99832(いずれも日本DNAデータバンクの登録番号)で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質などをあげることができ、また、ペプチド取り込み活性が高い蛋白質としては、配列番号47〜51で表されるアミノ酸配列を有するDppA、DppB、DppC、DppD、DppFおよびそれらいずれかのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する蛋白質もペプチド取り込み活性が高いペプチド取り込み蛋白質としてあげることができる。
上記アミノ酸配列の相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物としては、該微生物が正常に生育できる限りにおいて、任意の3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物をあげることができ、好ましくは3種以上9種以下、より好ましくは3種以上6種以下、さらに好ましくは3種または4種のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物をあげることができる。
具体的なペプチダーゼとしては、上記したエシェリヒア・コリ、バチルス・サチリスおよびコリネバクテリウム・グルタミカムに存在するペプチダーゼおよびジペプチダーゼをあげることができる。また、配列番号43〜46のいずれかのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質もジペプチド分解活性が高い蛋白質としてあげることができる。
上記アミノ酸配列の相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質の活性が低下または喪失した微生物は、該微生物を取得できる方法であれば、その取得方法に制限はないが、例えば以下に示す微生物の染色体DNAのペプチダーゼ遺伝子やペプチド取り込み蛋白質遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入する方法により取得することができる。
微生物の染色体DNAの遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入する方法としては、相同組換えを利用した方法をあげることができる。一般的な相同組換えを利用した方法としては、塩基の欠失、置換または付加が導入された変異遺伝子を、塩基の欠失等を導入したい宿主細胞内では自立複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができる。
該相同組換え用プラスミドを常法により宿主細胞に導入した後、薬剤耐性を指標にして相同組換えによって染色体DNA上に該相同組換え用プラスミドが組込まれた形質転換株を選択する。得られた形質転換株を該薬剤を含有しない培地で数時間〜1日間培養した後、該薬剤含有寒天培地、および該薬剤非含有寒天培地に塗布し、前者の培地で生育せず、後者の培地で生育できる株を選択することで、染色体DNA上において2回目の相同組換えが生じた株を取得することができる。染色体DNA上の欠失等を導入した遺伝子が存在する領域の塩基配列を決定することで、染色体DNA上の目的遺伝子に塩基の欠失、置換または付加が導入されたことを確認することができる。
上記方法により、染色体DNA上の目的遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入することができる微生物としては、エシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物をあげることができる。
また、複数の遺伝子に効率よく塩基の欠失、置換または付加を導入する相同組換えを利用した方法としては、直鎖DNAを用いた方法をあげることができる。
具体的には、塩基の欠失、置換または付加を導入したい遺伝子を含有する直鎖DNAを細胞内に取り込ませ、染色体DNAと導入した直鎖DNAとの間で相同組換えを起こさせる方法である。本方法は、直鎖DNAを効率よく取り込む微生物であれば、いずれの微生物にも適用でき、好ましい微生物としてはエシェリヒア属またはバチルス属に属する微生物、より好ましくはエシェリヒア・コリ、さらに好ましくはλファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を発現しているシェリヒア・コリをあげることができる。
λRed組換え系を発現しているエシェリヒア・コリとしては、λRed組換え系遺伝子を有するプラスミドDNAであるpKD46[エシェリヒア・コリ ジェネティック ストック センター(米国エール大学)より入手可能]を保有するエシェリヒア・コリJM101株等をあげることができる。
相同組換えに用いられるDNAとしては、
(a)塩基の欠失、置換または付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを、薬剤耐性遺伝子の両端に有する直鎖DNA、
(b)塩基の欠失、置換または付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを直接連結したDNAを有する直鎖DNA、
(c)薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子の両端に、塩基の欠失、置換または付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを有する直鎖DNA、
(d)上記(a)の直鎖DNAにおいて、薬剤耐性遺伝子と染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAの間に、さらに酵母由来のFlp recombinase〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,82,5875(1985)〕が認識する塩基配列を有するDNA、
をあげることができる。
薬剤耐性遺伝子としては、宿主微生物が感受性を示す薬剤に対し、薬剤耐性を付与する薬剤耐性遺伝子であれば、いずれの薬剤耐性遺伝子も使用することができる。宿主微生物にエシェリヒア・コリを用いた場合は、薬剤耐性遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子等をあげることができる。
ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子とは、宿主微生物で該遺伝子を発現させたとき、一定培養条件下においては、該微生物に致死的である遺伝子のことをいい、該遺伝子としては例えば、バチルス属に属する微生物由来のsacB遺伝子〔Appl.Environ.Microbiol.,59,1361−1366(1993)〕、およびエシェリヒア属に属する微生物由来のrpsL遺伝子〔Genomics,72,99−104(2001)〕等をあげることができる。
上記の直鎖DNAの両末端に存在する、染色体DNA上の置換または欠失の導入対象となる領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAは、直鎖DNAにおいて、染色体DNA上の方向と同じ方向に配置され、その長さは10bp〜100bp程度が好ましく、20bp〜50bp程度がより好ましく、30〜40bp程度がさらに好ましい。
酵母由来のFlp recombinaseが認識する塩基配列とは、該蛋白質が認識し、相同組換えを触媒する塩基配列であれば、特に限定されないが、好ましくは配列番号52で表される塩基配列を有するDNA、および該DNAにおいて1個〜数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列を有し、かつ酵母由来のFlp recombinaseが認識し、相同組換えを触媒する塩基配列を有するDNAをあげることができる。
相同性を有するとは、上記直鎖DNAが、染色体DNA上の目的とする領域において、相同組換えが起こる程度の相同性を有することであり、具体的な相同性としては、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%の相同性をあげることができる。
上記塩基配列の相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
上記直鎖DNA断片は、PCRにより作製することができる。また上記直鎖DNAを含むDNAをプラスミド上にて構築した後、制限酵素処理にて目的の直鎖DNAを得ることもできる。
微生物の染色体DNAに塩基の欠失、置換または付加を導入する方法としては、以下の方法1〜4があげられる。
方法1:上記(a)または(d)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する方法。
方法2:上記方法1により取得された形質転換株に、上記(b)の直鎖DNAを導入し、該方法により染色体DNA上に挿入された薬剤遺伝子を削除することにより、微生物の染色体DNA上の領域を置換または欠失させる方法。
方法3:
[1]上記(c)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する、
[2]染色体DNA上の置換または欠失の対象領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを、染色体DNA上における方向と同一の方向で連結したDNAを合成し、上記[1]で得られた形質転換株に導入する、
[3]ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が発現する条件下において、上記[2]の操作を行った形質転換株を培養し、該培養において生育可能な株を、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が染色体DNA上から削除された株として選択する方法。
方法4:
[1]上記(d)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する、
[2]上記[1]で得られた形質転換株にFlp recombinase遺伝子発現プラスミドを導入し、該遺伝子を発現させた後、上記[1]で用いた薬剤に感受性である株を取得する方法。
上記方法で用いられる、直鎖DNAを宿主微生物に導入する方法としては、該微生物へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)〕等をあげることができる。
方法2または方法3[2]で用いられる直鎖DNAにおいて、該DNAの中央部付近に、染色体DNA上に挿入したい任意の遺伝子を組み込んだ直鎖DNAを用いることにより、薬剤耐性遺伝子等を削除するのと同時に、任意の遺伝子を染色体DNA上に挿入することができる。
上記方法2〜4では、最終的に得られる形質転換株の染色体DNA上には薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子等の外来遺伝子を残さない方法であるため、該方法を用いることにより、同一の薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いて、該方法の操作を繰り返すことにより、容易に染色体DNA上の位置の異なる2以上の領域に塩基の欠失、置換または付加を有する微生物を製造することができる。
5.本発明に用いられる蛋白質の製造法
上記4の方法で得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明に用いられる蛋白質を生成、蓄積させ、該培養物から該蛋白質を採取することにより、該蛋白質を製造することができる。
本発明に用いられる蛋白質を製造するための上記形質転換体の宿主としては、原核生物および酵母等の微生物、動物細胞、昆虫細胞等または植物細胞等いずれであってもよく、好ましくは微生物、より好ましくは原核生物、さらに好ましくは細菌、特に好ましくはエシェリヒア属に属する細菌、最も好ましくはエシェリヒア・コリをあげることができる。
上記形質転換体を培地に培養する方法は、宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
エシェリヒア・コリ等の原核生物および酵母等の真核生物を宿主細胞として得られた微生物の形質転換体を培養する培地としては、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体、およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[J.Am.Med.Assoc.,199,519(1967)]、イーグル(Eagle)のMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,,396(1959)]、199培地[Proc.Soc.Biol.Med.,73,1(1950)]またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(ファーミンジェン社製)、Sf−900 II SFM培地(ライフ・テクノロジーズ社製)、EXCell400、ExCell405[いずれもJRHバイオサイエンシーズ社製]、Grace’s Insect Medium[Nature,195,788(1962)]等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記のとおり、本発明に用いられるDNAを発現ベクターに連結した組換え体DNAを保有する微生物、昆虫細胞、動物細胞あるいは植物細胞由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明で用いられる蛋白質を生成、蓄積させ、該培養物より該蛋白質を採取することにより、該蛋白質を製造することができる。
本発明で用いられる蛋白質の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞、および生産させる蛋白質の構造を変えることにより上記方法を選択することができる。
本発明で用いられる蛋白質が宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.,264,17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,,1288(1990)]、または特開平05−336963、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該蛋白質を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、本発明の蛋白質の活性部位を含む蛋白質の手前にシグナルペプチドを付加した形で生産させることにより、該蛋白質を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、特開平2−227075に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
さらに、遺伝子導入した動物または植物の細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された動物個体(トランスジェニック非ヒト動物)または植物個体(トランスジェニック植物)を造成し、これらの個体を用いて本発明の蛋白質を製造することもできる。
本発明で用いられる蛋白質を生産する形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、該蛋白質を生成、蓄積させ、該動物個体または植物個体より該蛋白質を採取することにより、該蛋白質を製造することができる。
動物個体を用いて本発明で用いられる蛋白質を製造する方法としては、例えば公知の方法[Am.J.Clin.Nutr.,63,639S(1996),Am.J.Clin.Nutr.,63,627S(1996)、Bio/Technology,,830(1991)]に準じて遺伝子を導入して造成した動物中に該蛋白質を生産する方法があげられる。
動物個体の場合は、例えば、本発明に用いられるDNAを導入したトランスジェニック非ヒト動物を飼育し、本発明に用いられる蛋白質を該動物中に生成、蓄積させ、該動物中より該蛋白質を採取することにより、該蛋白質を製造することができる。該動物中の該蛋白質を生成、蓄積させる場所としては、例えば、該動物のミルク(特開昭63−309192)、卵等をあげることができる。この際に用いられるプロモーターとしては、動物で機能するものであればいずれも用いることができるが、例えば、乳腺細胞特異的なプロモーターであるαカゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、ホエー酸性プロテインプロモーター等が好適に用いられる。
植物個体を用いて本発明の蛋白質を製造する方法としては、例えば本発明で用いられる蛋白質をコードするDNAを導入したトランスジェニック植物を公知の方法[組織培養,20(1994)、組織培養,21(1995)、Trends Biotechnol.,15,45(1997)]に準じて栽培し、該蛋白質を該植物中に生成、蓄積させ、該植物中より該蛋白質を採取することにより、該蛋白質を生産する方法があげられる。
本発明で用いられる蛋白質を生産する形質転換体を用いて製造された該蛋白質を単離・精製する方法としては、通常の酵素の単離、精製法を用いることができる。
例えば、本発明に用いられる蛋白質が、細胞内に溶解状態で生産された場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
また、該蛋白質が細胞内に不溶体を形成して生産された場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該蛋白質を回収後、該蛋白質の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を、蛋白質変性剤を含まないあるいは蛋白質変性剤の濃度が蛋白質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該蛋白質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
本発明に用いられる蛋白質またはその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該蛋白質またはその糖付加体等の誘導体を回収することができる。
即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
このようにして取得される蛋白質として、例えば、配列番号1〜8、37および38のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をあげることができる。
また、本発明に用いられる蛋白質を他の蛋白質との融合蛋白質として生産し、融合した蛋白質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる。
融合させる蛋白質としては、β−ガラクトシダーゼ、プロテインA、プロテインAのイムノグロブリンG結合領域、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ポリ(Arg)、ポリ(Glu)、プロテインG、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン鎖(His−tag)、Sペプチド、DNA結合タンパク質ドメイン、Tac抗原、チオレドキシン、グリーン・フルオレッセント・プロテイン、FLAGペプチド、および任意の抗体のエピトープなどがあげられる〔山川彰夫,実験医学,13,469−474(1995)〕。
上記した融合させる蛋白質に親和性をもつ物質としては、β−ガラクトシダーゼ、プロテインA、プロテインAのイムノグロブリンG結合領域、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ポリ(Arg)、ポリ(Glu)、プロテインG、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン鎖(His−tag)、Sペプチド、DNA結合タンパク質ドメイン、Tac抗原、チオレドキシン、グリーン・フルオレッセント・プロテイン、FLAGペプチドまたは任意の抗体のエピトープを認識する抗体、例えばイムノグロブリンGなどをあげることができる。
具体的には、本発明に用いられる蛋白質をプロテインAとの融合タンパク質として生産した場合には、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,,1288(1990)]、特開平5−336963、WO94/23021に記載の方法など、Flagペプチドとの融合蛋白質として生産した場合は、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,,1288(1990)などに記載の方法に準じて融合蛋白質を精製することができる。更に、該蛋白質自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。
上記で取得された蛋白質のアミノ酸配列情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法により、本発明の蛋白質を製造することができる。また、Advanced ChemTech社、パーキン・エルマー社、Pharmacia社、Protein Technology Instrument社、Synthecell−Vega社、PerSeptive社、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
6.本発明のジペプチド誘導体の製造法
(1)酵素的製造法
ジペプチド誘導体の酵素的製造法としては、i)上記1の蛋白質、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)の製造法、およびii)上記1の蛋白質、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、そのまま、または該媒体から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取した後、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を修飾し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を生成させ、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)の製造法をあげることができる。
ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を公知の有機合成の手法等を用いて修飾することによりジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を製造することができる。
上記製造法において、基質に用いられる1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体は、上記1の蛋白質の基質になるアミノ酸またはアミノ酸誘導体であればいずれのアミノ酸およびアミノ酸誘導体を用いてもよい。
上記アミノ酸またはアミノ酸誘導体としては、式(I)
Figure 2006001381
(式中、n、R1a、R1b、R2aおよびR2bはそれぞれ前記と同義である)または式(II)
Figure 2006001381
[式中、n、R3a、R3b、R及びRはそれぞれ前記と同義である]で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体[但し、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(I)のみであるとき、R1a及びR1bの少なくとも一方は水素原子であり、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(II)のみであるとき、Rはヒドロキシである]をあげることができ、好ましくは式(III)
Figure 2006001381
(式中、R1c、R1d、R2cおよびR2dはそれぞれ前記と同義である)または式(IV)
Figure 2006001381
(式中、R3c、R3d及びRはそれぞれ前記と同義である)で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体[但し、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(III)のみであるとき、R1c及びR1dの少なくとも一方は水素原子であり、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(IV)のみであるとき、Rはヒドロキシである]をあげることができ、より好ましくは式(V)
Figure 2006001381
(式中、R2eは前記と同義である)または式(VI)
Figure 2006001381
(式中、R3eは前記と同義である)で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体をあげることができる。
上記製造法で製造されるジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)としては式(VIIa)
Figure 2006001381
(式中、n3a、n4a、R6a、R6b、R7a、R7b、R8a、R9a、R9bおよびR10aはそれぞれ前記と同義である)で表されるジペプチド誘導体をあげることができ、好ましくは式(VIIIa)
Figure 2006001381
(式中、R6c、R6d、R7c、R7d、R9c、R9dおよびR10aはそれぞれ前記と同義である)で表されるジペプチド誘導体をあげることができ、より好ましくは式(IXa)
Figure 2006001381
(式中、R7eおよびR9eはそれぞれ前記と同義である)で表されるジペプチド誘導体をあげることができる。
上記製造法で製造されるジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)としては式(VIIb)
Figure 2006001381
(式中、n3A、n4A、R6A、R6B、R7A、R7B、R8A、R9A、R9BおよびR10Aはそれぞれ前記と同義である)で表されるジペプチド誘導体をあげることができ、好ましくは式(VIIIb)
Figure 2006001381
(式中、R6C、R6D、R7C、R7D、R9C、R9DおよびR10Aはそれぞれ前記と同義である)で表されるジペプチド誘導体をあげることができ、より好ましくは式(IXb)
Figure 2006001381
(式中、R7EおよびR9Eはそれぞれ前記と同義である)で表されるジペプチド誘導体をあげることができる。但し、L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリン、L−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシン、グリシンおよびβ−アラニンから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合した化合物はジペプチド誘導体から除く。
式(I)〜(VI)、(VIIa)、(VIIb)、(VIIIa)、(VIIIb)、(IXa)及び(IXb)の各基の定義において、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、モノ(低級アルキル)アミノ及びジ(低級アルキル)アミノの低級アルキル部分としては例えば炭素原子数1から10の直鎖状、分枝鎖状、環状またはこれらの組み合わせからなるアルキルがあげられ、より具体的には、直鎖または分枝鎖状のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられ、環状のアルキルとしては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、ノルアダマンチル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル等があげられ、直鎖または分枝鎖状と環状との組み合わせからなるアルキルとしては、例えばシクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロオクチルエチル等があげられる。なお、ジ(低級アルキル)アミノにおける2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
低級アルケニルとしては、例えば炭素原子数2から10の直鎖または分枝鎖状のアルケニルが挙げられ、より具体的にはビニル、アリル、1−プロペニル、1−ブテニル、3−ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニル、2−デセニル、9−デセニル等があげられる。
低級アルキニルとしては、例えば炭素原子数2から10の直鎖または分枝鎖状のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、2−プロピニル、3−ブチニル、4−ペンチニル、5−ヘキシニル、9−デシニル等があげられる。
アリール、アラルキル及びアロイルのアリール部分としては、例えば単環性または2つ以上の環が縮合した縮環性のアリール、より具体的には、環構成炭素原子数が6から14のアリール、例えばフェニル、ナフチル、インデニル、アントラニル等があげられる。
脂環式複素環基としては、例えば単環性または2つ以上の環が縮合した縮環性の脂環式複素環基があげられ、脂環式複素環基に含まれるヘテロ原子の種類及び個数は特に限定されないが、例えば窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1または2個以上含んでいてもよく、より具体的には、例えばピロリジニル、2,5−ジオキソピロリジニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジル、1,2−ジヒドロピリジル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラゾリニル、オキサゾリニル、ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノキサリニル、オクタヒドロキノリル、ジヒドロインドリル、1,3−ジオキソイソインドリニル等があげられる。
複素環アルキルの複素環基部分としては、例えば芳香族複素環基、脂環式複素環基等があげられ、芳香族複素環基としては、例えば単環性または2つ以上の環が縮合した縮環性の芳香族複素環基があげられ、芳香族複素環基に含まれるヘテロ原子の種類及び個数は特に限定されないが、例えば窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1または2個以上含んでいてもよく、より具体的には、環構成原子数5から14の芳香族複素環基、例えばフリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プリニル、クマリニル等があげられる。また、脂環式複素環基は前記と同義である。
アラルキル及び複素環アルキルのアルキレン部分は、前記低級アルキルのうち、直鎖または分枝鎖状のアルキルから水素原子を一つ除いたものと同義である。
隣接する窒素原子および該窒素原子に隣接する炭素原子と一緒になって形成される複素環基、ならびに隣接する炭素原子および該炭素原子に隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えば少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環基(該単環性脂環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で少なくとも1個の窒素原子を含む縮環性複素環基(該縮環性複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)等があげられ、より具体的にはピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモピペリジニル、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル等があげられる。
置換低級アルキル、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、置換低級アルコキシ、置換低級アルカノイル、置換低級アルコキシカルボニル、置換アラルキル、置換アリール、置換アロイル、置換複素環アルキル、モノ(置換低級アルキル)アミノ、低級アルキル(置換低級アルキル)アミノ、ジ(置換低級アルキル)アミノならびに隣接する窒素原子および該窒素原子に隣接する炭素原子と一緒になって形成される置換複素環基、ならびに隣接する炭素原子および該炭素原子に隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基としては、同一または異なって置換数1から置換可能な数の、好ましくは置換数1〜3の、例えばハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、グアニジノ、ウレイド、シアノ、ホルミル、カルボキシ、アミノカルボニル、ジアゾアセチル、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、モノもしくはジ(低級アルキル)アミノカルボニル、低級アルキルチオ、アリール、アラルキル、アロイル、複素環カルボニル等があげられる。ここで低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分、アリール、アラルキル及びアロイルのアリール部分ならびにアラルキルのアルキレン部分はそれぞれ前記と同義であり、モノもしくはジ(低級アルキル)アミノカルボニル及び低級アルキルチオにおける低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義であり、複素環カルボニルにおける複素環基部分は、前記複素環アルキルにおける複素環基部分と同義であり、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を表す。なお、ジ(低級アルキル)アミノカルボニルにおける2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
上記アミノ酸またはアミノ酸誘導体として、好ましくはL−アミノ酸、グリシン(Gly)およびβ−アラニン(βAla)およびそれらの誘導体からなる群より選ばれるアミノ酸またはアミノ酸誘導体をあげることができる。L−アミノ酸としては、例えばL−アラニン(L−Ala)、L−グルタミン(L−Gln)、L−グルタミン酸(L−Glu)、L−バリン(L−Val)、L−ロイシン(L−Leu)、L−イソロイシン(L−Ile)、L−プロリン(L−Pro)、L−フェニルアラニン(L−Phe)、L−トリプトファン(L−Trp)、L−メチオニン(L−Met)、L−セリン(L−Ser)、L−スレオニン(L−Thr)、L−システイン(L−Cys)、L−アスパラギン(L−Asn)、L−チロシン(L−Tyr)、L−リジン(L−Lys)、L−アルギニン(L−Arg)、L−ヒスチジン(L−His)、L−アスパラギン酸(L−Asp)、L−α−アミノ酪酸(L−α−AB)、L−アザセリン(L−Azaserine)、L−テアニン(L−theanine)、L−4−ヒドロキシプロリン(L−4−HYP)、L−3−ヒドロキシプロリン(L−3−HYP)、L−オルニチン(L−Orn)、L−シトルリン(L−Cit)およびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシン(L−6−diazo−5−oxo−norleucine)などをあげることができる。
また、上記製造法に用いられる、より好ましいアミノ酸またはアミノ酸誘導体としては、L−Ala、Gly、L−Met、L−Ser、L−Thrおよびβ−Alaから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体とL−Ala、L−Gln、L−Glu、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−Asp、L−α−AB、β−Ala、L−Azaserine、L−theanine、L−4−HYP、L−3−HYP、L−Orn、L−CitおよびL−6−diazo−5−oxo−norleucineから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、L−Glnまたはその誘導体とL−Pheまたはその誘導体との組み合わせ、およびL−α−ABまたはその誘導体とL−Gln、L−ArgおよびL−α−ABから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、さらに好ましくはL−Alaまたはその誘導体とL−Gln、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−α−AB、L−Azaserine、L−CitおよびL−theanineから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、Glyまたはその誘導体とL−Gln、Gly、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−α−ABおよびL−Citから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、L−Metまたはその誘導体とL−Phe、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Tyr、L−LysおよびL−Hisから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、L−Serまたはその誘導体とL−Gln、L−Phe、L−Ser、L−Thr、L−Tyr、L−HisおよびL−α−ABから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、L−Thrまたはその誘導体とL−Gln、L−Phe、L−Leu、L−ThrおよびL−α−ABから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、L−Glnまたはその誘導体とL−Pheまたはその誘導体との組み合わせ、β−Alaまたはその誘導体とL−Phe、L−Met、L−HisおよびL−Citから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせ、およびL−α−ABまたはその誘導体とL−Gln、L−ArgおよびL−α−ABから選ばれる1種のアミノ酸またはその誘導体との組み合わせをあげることができる。
上記製造法において、本発明に用いられる蛋白質は、基質として用いるアミノ酸またはアミノ酸誘導体1mgあたり0.01〜100mg、好ましくは0.1mg〜10mg添加する。
上記製造法において、基質として用いるアミノ酸またはアミノ酸誘導体は、0.1〜500g/L、好ましくは0.2〜200g/Lの濃度になるように水性媒体中に初発または反応途中に添加する。
上記製造法において、エネルギー源として用いるATPは、0.5mmol〜10mol/Lの濃度で用いる。
上記製造法で用いられる水性媒体としては、ジペプチド誘導体の生成反応を阻害しない限り、いかなる成分、組成の水性媒体であってもよく、例えば、水、りん酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液などをあげることができる。また、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類を含有していてもよい。
ジペプチドの生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜50℃、好ましくは25〜45℃の条件で2〜150時間、好ましくは6〜120時間行う。
(2)細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源として用いる製造法
細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源として用いるジペプチドの製造法としては、i)上記4で得られる細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)の製造法、およびii)細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、そのまま、または該媒体から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取した後、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を修飾し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を生成させ、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)の製造法をあげることができる。
ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を公知の有機合成の手法等を用いて修飾することによりジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)生成することができる。
上記製造法において、基質として用いるアミノ酸およびアミノ酸誘導体の種類、使用濃度および添加時期、並びに生産されるジペプチドは、上記6の(1)の酵素的製造法のものと同様である。
培養物の処理物としては、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品であり、かつ1以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する処理物などをあげることができる。
また、微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源とした製造法において用いられる水性媒体としては、上記6の(1)の酵素的製造法に用いられる水性媒体に加え、酵素源として用いた細胞の培養液も水性媒体として用いることができる。
また上記製造法においては、必要に応じて、ATPの供給源として、ATPまたは細胞が代謝してATPを生産し得る化合物、例えばグルコースのような糖類、エタノールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などを水性媒体中に加えることができる。
さらに必要に応じて、水性媒体中に界面活性剤あるいは有機溶媒を添加してもよい。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・オクタデシルアミン(例えばナイミーンS−215、日本油脂社製)などの非イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウム・ブロマイドやアルキルジメチル・ベンジルアンモニウムクロライド(例えばカチオンF2−40E、日本油脂社製)などのカチオン系界面活性剤、ラウロイル・ザルコシネートなどのアニオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミン(例えば三級アミンFB、日本油脂社製)などの三級アミン類など、有機溶剤としては、キシレン、トルエン、脂肪族アルコール、アセトン、酢酸エチルなどをあげることができ、本発明の製造法に用いる細胞が、アミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する限りにおいていずれを用いてもよく、1種または数種を混合して使用することもできる。界面活性剤および有機溶媒の種類および濃度は、本発明に用いられる細胞が上記活性を有する範囲において任意に選ぶことができ、例えば界面活性剤は、通常0.1〜50g/lの濃度で用いられ、有機溶剤は、通常0.1〜50ml/lの濃度で用いられる。
細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源として用いる場合、該酵素源の量は、当該酵素源の比活性等により異なるが、例えば、基質として用いるアミノ酸またはアミノ酸誘導体1mgあたり湿細胞重量として5〜1000mg、好ましくは10〜400mg添加する。
ジペプチドまたはジペプチド誘導体の生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜65℃、好ましくは25〜55℃、より好ましくは30〜45℃の条件で通常1分間〜150時間、好ましくは3分間〜120時間、より好ましくは30分間〜100時間行う。
上記6の(1)または(2)の製造法において、水性媒体中に生成、蓄積したジペプチドまたはジペプチド誘導体の採取は、活性炭やイオン交換樹脂などを用いる通常の方法あるいは、有機溶媒による抽出、結晶化、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により行うことができる。
(3)ジペプチドまたはジペプチド誘導体を修飾することによるジペプチド誘導体の製造法
上記6の(1)または(2)の製造法において得られたジペプチドまたはジペプチド誘導体を、公知の有機合成反応[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations)、R.C.ラロック(Larock)著、(1989年)等参照]またはそれらに準じた方法に付すことによって種々のジペプチド誘導体を得ることができる。
上記製造法における生成物の単離、精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことができる。
以下に実験例を示し、本発明に用いられるDNA、蛋白質および細胞の調製方法を説明するが、該調製方法は下記実験例に制限されるものではない。
実験例1 データベースを利用したジペプチド合成活性を有する蛋白質の検索
バチルス・サチリス168株由来のD−Ala−D−Alaリガーゼ遺伝子のアミノ酸配列[Nature,390,249−256(1997)]をクエリーとして、バチルス・サチリス168株のゲノムDNAのデータベースであるSubtilist(http://genolist.pasteur.fr/SubtiList/)のホモロジー検索機能を用いて、バチルス・サチリス168株のゲノムDNA配列中に存在する相同性を有する蛋白質をコードする遺伝子を検索した。
その結果抽出された配列のうち、D−Ala−D−Alaリガーゼモチーフ[Biochemistry,30,1673(1991)]である配列番号33、34または35で表されるアミノ酸配列をコードし、かつ既にその機能が同定されている蛋白質をコードする遺伝子を排除したもののうち、D−Ala−D−Alaリガーゼモチーフと最も高い相同性(29.1%)を示すものとして機能未知遺伝子ywfEを選択した。
ywfEの塩基配列を配列番号9、該塩基配列にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号1に示した。
実験例2 ywfE遺伝子発現株の造成
実験例1で得られた塩基配列情報に従い、バチルス・サチリスのywfE遺伝子断片を以下のようにして取得した。
まず、バチルス・サチリス168株(ATCC 23857)をLB培地[10g/lバクトトリプトン(ディフコ社製)、5g/lイーストエキス(ディフコ社製)、5g/l塩化ナトリウム]に植菌し30℃で一晩静置培養した。培養後、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の飽和フェノールを用いる方法により、該微生物の染色体DNAを単離精製した。
パーセプティブ・バイオシステムズ(Perseptive Biosystems)社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号19〜22で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーA、プライマーB、プライマーCおよびプライマーDと呼ぶ)を合成した。プライマーAは、バチルス・サチリスの染色体DNAのywfEの開始コドンを含む領域の5’末端にXhoI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。プライマーBは、ywfEの終止コドンを含む配列と相補的な塩基配列の5’末端にBamHI認識配列を含む塩基配列を付加したも
のである。またプライマーCは、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]のtrpプロモーター領域の塩基配列の5’末端にEcoRI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。プライマーDは、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30のtrpプロモーター領域の配列と相補的な配列の5’末端にXhoI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。
ywfE遺伝子断片の増幅には上記のプライマーAおよびプライマーB、鋳型としてバチルス・サチリスの染色体DNAを用い、trpプロモーター領域の断片の増幅にはプライマーCおよびプライマーD、鋳型としてpTrS30を用いてPCRを行った。PCRは、鋳型として0.1μgの染色体DNAまたは10ngのpTrS30、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ(ストラタジーン社製)、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液(ストラタジーン社製)、各200μmol/LのdNTP(dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)を含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、プライマーAおよびプライマーBを用いたPCRではywfE遺伝子断片に相当する約1.4kb、プライマーCおよびプライマーDを用いた反応ではtrpプロモーター領域のDNA断片に相当する約0.3kbのDNA断片がそれぞれ増幅していることを確認した後、残りの反応液と等量のTE[10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)、1mmol/L EDTA]飽和フェノール/クロロホルム(1vol/1vol)溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAを20μLのTEに溶解した。
該溶解液それぞれ5μLを用い、プライマーAおよびプライマーBで増幅したDNAを制限酵素XhoIおよびBamHIで、またプライマーCおよびプライマーDで増幅したDNAを制限酵素EcoRIおよびXhoIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキット(GENECLEAN II kit、BIO 101社製)を用いて、ywfEを含む1.4kbおよびtrpプロモーター領域を含む0.3kbのDNA断片をそれぞれ回収した。
trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]0.2μgを制限酵素EcoRIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により4.5kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfEを含む1.4kb断片、trpプロモーター領域を含む0.3kb断片および4.5kbの断片をライゲーションキット(タカラバイオ社製)を用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株(ストラタジーン社製)を、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、trpプロモーター下流にywfEが連結された発現ベクターであるpPE43が取得されていることを確認した(図1)。
実験例3 ジペプチドの生産
実験例2で得られたpPE43を保有するエシェリヒア・コリNM522(エシェリヒア・コリNM522/pPE43株)を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入った太型試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。
終濃度60mg/mlの該湿菌体、120mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.4)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Ala、30mmol/LのL−Gln、0.4%のナイミーンS−215からなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で3分間反応を行った。
反応終了後、反応生成物をジニトロフェノール化法で誘導体化した後にHPLC法により分析した。HPLC法による分析は、分離カラムに関東化学社製のLichrosorb−RP−18カラムを用い、溶離液として1%(v/v)リン酸、25%(v/v)アセトニトリルを用い、0.7ml/分の流動速度で行った。その結果反応液中に120mg/LのL−アラニル−L−グルタミン(L−Ala−L−Gln)が生成蓄積していることを確認した。
対照菌株であるベクターのみを含むエシェリヒア・コリNM522/pTrS31株の菌体ではL−Ala−L−Glnの生成は認められなかった。
実験例4 C末端Hisタグ付加型組換え型ジペプチド合成酵素の精製
上記DNA合成機を用いて、配列番号23および24で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーE、プライマーFと呼ぶ)を合成した。プライマーEは、ywfEの開始コドン(atg)をNcoI認識配列(ccatgg)に置換した領域を含む塩基配列である。プライマーFは、ywfEの終止コドンをBamHI認識配列(ggatcc)に置換した領域を含む塩基配列である。
バチルス・サチリス168株(ATCC 23857)の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーEおよびプライマーFをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE断片に相当する約1.4kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、ywfEを含む1.4kbのDNA断片を回収した。
C末端Hisタグ付加型組換え体発現ベクターpQE60(キアゲン社製)0.2gを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfEを含む1.4kbのDNA断片と3.4kbのDNA断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該連結反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、C末Hisタグ付加型ywfE発現ベクターであるpQE60ywfEが取得されていることを確認した(図2)。
pQE60ywfEを保有するエシェリヒア・コリNM522(エシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE株)を、50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/Lになるようにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離して湿菌体を取得し、該湿菌体から、His Trap(Hisタグ付加タンパク精製キット、Amersham Pharmasia Biotech社製)を用いて、説明書に従いHisタグ付加組換え型酵素を精製した。
実験例5 Hisタグ付加組換え型酵素を用いたジペプチドの生産(1)
(i)実験例4で取得した精製したHisタグ付加組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Ala、30mmol/LのL−Glnからなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で16時間反応を行った。
反応終了後、上記実験例3と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中に3.7g/LのL−Ala−L−Glnと0.3g/LのL−アラニル−L−アラニン(L−Ala−L−Ala)が生成蓄積していることを確認した。
(ii)酵素を0.01mg、L−Glnの代わりにL−Phe、L−Met、L−LeuまたはL−Valを含有する以外は、上記(i)の反応液の組成と同じ反応液を調製し、上記(i)の反応条件で反応させた。
反応終了後、上記実験例3と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中にそれぞれ、7.0g/LのL−アラニル−L−フェニルアラニン(L−Ala−L−Phe)のみ、7.0g/LのL−アラニル−L−メチオニン(L−Ala−L−Met)および0.03g/LのL−Ala−L−Ala、5.0g/LのL−アラニル−L−ロイシン(L−Ala−L−Leu)および0.2g/LのL−Ala−L−Ala、または1.6g/LのL−アラニル−L−バリン(L−Ala−L−Val)および0.3g/LのL−Na−L−Alaが生成蓄積していることを確認した。
(iii)酵素を0.01mg、L−Alaの代わりにGly、L−Glnの代わりにL−PheまたはL−Metを含有する以外は、上記(1)の反応液の組成と同じ反応液を調製し、上記(1)の反応条件で反応させた。
反応終了後、上記実験例3と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中にそれぞれ5.2g/Lのグリシル−L−フェニルアラニン(Gly−L−Phe)または1.1g/Lのグリシル−L−メチオニン(Gly−L−Met)が生成蓄積していることを確認した。
上記反応液組成からATPを除くとジペプチドは全く生成されなかった。
以上の結果から、ywfE遺伝子産物は、ATP存在下において、L−AlaとL−Gln、L−Phe、L−Met、L−LeuまたはL−Valとから、L−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Ala、L−Ala−L−Phe、L−Ala−L−MetおよびL−Ala−L−Ala、L−Ala−L−LeuおよびL−Ala−L−Ala、またはL−Ala−L−ValおよびL−Ala−L−Alaを生成する活性、GlyとL−PheまたはL−MetとからGly−L−PheまたはGly−L−Metを生成する活性を有することが明らかになった。
実験例6 Hisタグ付加組換え型酵素を用いたジペプチドの生産(2)
実験例4で得られた精製したHisタグ付加組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATPからなる0.1mlの反応液を調製し、表1の第1行目と最左列のアミノ酸の組み合わせからなる各種L−アミノ酸、Glyまたはβ−Alaをそれぞれ30mmol/Lずつになるように反応液に添加し、37℃で16時間反応を行った。反応終了後、反応生成物をHPLC分析したところ、表1に示すジペプチドが生成していることが確認された。
Figure 2006001381
Figure 2006001381
Figure 2006001381
表1の第1行目と最左列に記載の2種類(もしくは1種類)のL−アミノ酸、Glyまたはβ−Alaを基質として反応した場合に生成したジペプチドを枠内に記載した。○は配列は未確定だがジペプチドが生成したこと、×はジペプチドの生成が確認されなかったこと、および空欄は未実施を示す。
実験例7 Hisタグ付加組換え型酵素発現株を用いたジペプチドの生産
実験例4で得られたエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/LになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離し湿菌体を取得した。
200g/Lの湿菌体、50g/Lのグルコース、5g/Lのフィチン酸(33%の濃水酸化ナトリウム溶液を用いて中性になるよう希釈)、15g/Lのリン酸二水素カリウム、5g/Lの硫酸マグネシウム・7水和物、4g/LのナイミーンS−215、10ml/Lのキシレン、200mmol/LのL−Ala、200mmol/LのL−Glnからなる20mlの反応液(pH7.2)を50ml容量のビーカーに入れ、32℃、900rpmの条件下で2時間反応を行った。反応中は2mol/Lの水酸化カリウムを用いて反応液のpHを7.2に保った。
反応生成物を実験例3記載の方法と同様の方法で分析したところ、25mg/LのL−Ala−L−Glnの蓄積が確認された。
実験例8 バチルス属に属する各種微生物からのywfE遺伝子に相当する遺伝子のクローニングとその解析
配列番号9で表される塩基配列に基づき、バチルス・サチリスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022、およびバチルス・プミルスNRRL B−12025に存在するywfE遺伝子に相当する遺伝子を以下のようにして取得した。
まず、バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022、およびバチルス・プミルスNRRL B−12025をそれぞれLB培地に植菌し30℃で一晩静置培養した。培養後、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の飽和フェノールを用いる方法により、該微生物の染色体DNAをそれぞれ単離精製した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号25および26で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーG、プライマーHと呼ぶ)を合成した。プライマーGは、バチルス・サチリス168株の染色体DNAのywfEの開始コドンより上流を含む領域の配列である。プライマーHは、ywfEの終始コドンより下流を含む配列と相補的な配列である。
バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、またはバチルス・アミロリケファシエンスIFO3022の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーGおよびプライマーHをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰
り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE断片に相当する約1.4kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた各菌株染色体DNA由来の1.4kb断片とpCR−blunt(インビトロジェン社製)を、ライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行い連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてそれぞれの構造を解析することにより、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含むプラスミドであるpYWFE1(ATCC15245株由来、配列番号36で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE2(ATCC6633株由来、配列番号10で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE3(IAM1213株由来、配列番号11で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE4(IAM1107株由来、配列番号12で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE5(IAM1214株由来、配列番号13で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE6(ATCC9466株由来、配列番号9で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE7(IAM1033株由来、配列番号36で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE8(ATCC21555株由来、配列番号14で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE9(IFO3022株由来、配列番号15で表される塩基配列を有するDNA)が取得されていることを確認した。
一方、バチルス・プミルスNRRL B−12025由来のywfEに相当する遺伝子(配列番号16で表される塩基配列を有するDNA)は以下のように取得した。
上記で調製したNRRL B−12025株の染色体DNAを鋳型にし、配列番号27および28で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、PCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのZ−taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのZ−taqポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液50μLを調製し、98℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約0.8kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた各菌株染色体DNA由来の0.8kb断片とpGEM T−easy(プロメガ社製)を、ライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行い連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリDH5α株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
上記で得られた形質転換体からプラスミドを抽出して、約0.8kbの挿入DNA断片の塩基配列を決定したところ、配列番号16で表される塩基配列中の塩基番号358〜1160番からなる塩基配列が確認された。
次に該プラスミドをEcoRIで切断した後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した。該DNA断片をジーンクリーンIIキットを用いて精製した。約0.5μgの該精製DNA断片を、DIG−ハイプライムDNAラベリング&デテクション スターターキットI(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて、DIGラベル化した。DIGラベル化は、該キット添付の説明書に従って行った。
上記で得られたDIGラベル化DNAを用いて、NRRL B−12025株の染色体DNAのサザン解析を行った。
NRRL B−12025株の染色体DNAをBamHI、EcoRI、HindIII、KpnI、PstI、SacI、SalIおよびSphIを用いてそれぞれ完全消化し、アガロース電気泳動によりDNA断片を分離した後、常法に従いナイロンメンブレンプラスチャージ(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)に転移させた。
UVを照射することにより、該ナイロン膜にDNA断片を固定した後、上記プローブDNAおよび該ナイロン膜を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションは、該プローブDNAと該ナイロン膜を65℃で16時間接触させ、その後該ナイロン膜を、0.1%SDSおよび2×SSCからなる溶液を用い、室温で5分間、2回洗浄し、さらに0.1%SDSおよび0.5×SSCからなる溶液を用い、65℃で15分間、2回洗浄することで行い、その他の操作、条件およびハイブリダイズしたDNAの検出は、上記したDIG−ハイプライムDNAラベリング&デテクション スターターキットIに添付されている説明書に準じて行った。
その結果、HindIIIおよびPstIの完全消化断片の3.5kbp付近に発色が見られた。
次に、NRRL B−12025株の染色体DNAをHindIIIおよびPstIを用いてそれぞれ完全消化し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した。それぞれの制限酵素消化DNAから3−4kbpの断片をジーンクリーンIIキットを用いて精製し、ライゲーションキットを用いて自己環化させた。
上記で決定した0.8kbのDNA断片の塩基配列に基づき、配列番号29および30で表される塩基配列を設計、合成し、上記で取得した環化DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、10ngの環化DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのpyrobestポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのpyrobestポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液50μLを調製し、98℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で3分30秒間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約3.0kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られたDNA断片とZero Blunt PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)とをライゲーションキットを用いて連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含むプラスミドであるpYWFE10(NRRL B−12025株由来、配列番号16で表される塩基配列を有するDNA)が得られていることを確認した。
上記で得られたpYWFE1〜pYWFE10に含まれるywfE遺伝子に相当する各遺伝子の塩基配列を塩基配列分析装置373A・DNAシークエンサーを用いて決定した。
pYWFE1、pYWFE6およびpYWFE7に含まれる遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は、ywfE遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列と同一であったが、pYWFE2、pYWFE3、pYWFE4、pYWFE5、pYWFE8、pYWFE9およびpYWFE10に含まれる遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は、ywfE遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列と異なっていた。
pYWFE2、pYWFE3、pYWFE4、pYWFE5、pYWFE8、pYWFE9、pYWFE10およびpYWFE1とpYWFE7に含まれるywfE遺伝子に相当する遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号2〜8および1に、該遺伝子の塩基配列を配列番号10〜16および36にそれぞれ示した。
実験例9 C末端Hisタグ付加型組換え型ジペプチド合成酵素の精製
バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、またはバチルス・アミロリケファシエンスIFO3022の染色体DNAを鋳型とし、実験例2記載のプライマーAおよびプライマーBをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
バチルス・プミルスNRRL B−12025の染色体DNAを鋳型とした場合は、配列番号31および32で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、上記と同様の条件でPCRを行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE断片に相当する約1.4kbのDNA断片がそれぞれ増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液のそれぞれ5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含む1.4kbのDNA断片を回収した。
次にC末端Hisタグ付加型組換え体発現ベクターpQE60 0.2μgを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたバチルス・サチルス168株のywfE遺伝子に相当する遺伝子を含む1.4kbのDNA断片、および3.4kbのDNA断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行いそれぞれ連結した。
該反応液を用いて大腸菌NM522株をカルシウムイオンを用いる方法により形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてそれらの構造を解析することにより、C末Hisタグ付加型遺伝子発現ベクターであるpQE60ywfE1(ATCC15245由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE2(ATCC6633由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE3(IAM1213由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE4(IAM1107由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE5(IAM1214由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE6(ATCC9466由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE7(IAM1033由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE8(ATCC21555由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE9(IFO3022由来の遺伝子を含有するベクター)、およびpQE60ywfE10(NRRL B−12025由来の遺伝子を含有するベクター)が取得されていることを確認した。
上記で得られたエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE1〜NM522/pQE60ywfE10株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容の三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/LになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離して得られた湿菌体から、HisTrapをその使用説明書に従って用いて、Hisタグ付加組換え型酵素を精製した。
実験例10 精製酵素を用いたジペプチドの生産
実験例9で得られた組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Alaおよび30mmol/LのL−Glnからなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で16時間反応を行った。
反応終了後、実験例3記載の方法により反応液を分析した結果、それぞれ、3.0〜3.5g/LのL−Ala−L−Glnおよび0.25〜0.3g/LのL−Ala−L−Alaが生成、蓄積していることが確認された。
また、上記反応液組成からATPを除くとL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaは全く生成されなかった。
以上の結果から、実験例8で得られた遺伝子の産物は、いずれもATP存在下でL−AlaとL−GlnとからL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaを生成する活性を有することが明らかになった。
実験例11 albC遺伝子およびその類縁遺伝子の取得
ストレプトマイセス・ノウルセイのalbC遺伝子の塩基配列[Chemistry & Biol.,,1355(2002)]に基づき、ストレプトマイセス・ノウルセイおよびストレプトマイセス・アルボラスよりalbC遺伝子およびその類縁遺伝子を、以下の方法で取得した。
まず、ストレプトマイセス・ノウルセイIFO15452株とストレプトマイセス・アルボラスIFO14147株を、それぞれ、1%グリシン添加したKM73培地[2g/lイーストエキス(ディフコ社製)、10g/l可溶性デンプン(和光純薬工業社製)]、KP培地[15g/lグルコース、10g/lグリセロール、10g/lポリペプトン(日本製薬株式会社製)、10g/l肉エキス(極東製薬工業株式会社製)、4g/l炭酸カルシウム]に植菌し28℃で一晩振とう培養した。なお、ストレプトマイセス・ノウルセイIFO15452株およびストレプトマイセス・アルボラスIFO14147株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 生物資源部門[National Institute of Technology and Evaluation(NITE)Biological Resource Center(BRC)](〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)より分譲を受けた。
培養後、Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual:John Innes Foundationに記載の方法に従って該微生物の染色体DNAを単離精製した。
albC遺伝子の塩基配列に基づき、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号41および42で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーJ、プライマーKと呼ぶ)を合成した。プライマーJは、ストレプトマイセス・ノウルセイの染色体DNAのalbC遺伝子の開始コドンを含む領域の5’末端にNcoI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。プライマーKは、albC遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な塩基配列の5’末端にBglII認識配列を含む塩基配列を付加したものである。
上記のプライマーJおよびプライマーKをプライマーセットに、鋳型としてストレプトマイセス・ノウルセイまたはストレプトマイセス・アルボラスの染色体DNAを用いてPCRを行った。PCRは、鋳型として0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのEx Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのExTaqDNAポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、各200μmol/LのdNTP、5μLのジメチルスルホキシドを含む反応液50μLを調製し、94℃で1分間、55℃で30秒間、72℃で1分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約0.7kbのDNA断片が増幅していることを確認した後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAをそれぞれ20μLのTEに溶解した。
該溶解液それぞれ5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBglIIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、700bpのDNA断片をそれぞれ回収した。
ファージT5プロモーターを含む発現ベクターpQE60 0.2μgを制限酵素NcoIおよびBglIIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られた各放線菌由来の0.7kb断片およびpQE60由来の3.4kbの断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株を、カルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、ファージT5プロモーター下流にストレプトマイセス・ノウルセイ由来のDNAが連結された発現ベクターであるpAL−nou、およびストレプトマイセス・アルブラス由来のDNAが連結された発現ベクターであるpAL−albが取得されていることを確認した(図3)。
それぞれのプラスミドに挿入された放線菌由来のDNA部分の塩基配列を塩基配列決定装置373A・DNAシークエンサーを使って決定したところ、pAL−albには配列番号37で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、すなわち配列番号39で表される塩基配列を有するDNAが含有され、pAL−nouには配列番号38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、すなわち配列番号40で表される塩基配列を有するDNAが含有されていることを確認した。
実験例12 菌体を酵素源に用いたジペプチドの製造
実験例11で得られたpAL−nouまたはpAL−albを保有するエシェリヒア・コリNM522(エシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株またはNM522/pAL−alb株)およびプラスミドを保有しないNM522株を50μg/mlのアンピシリンを含む10mlのLB培地が入った試験管(プラスミドを持たない株の場合にはアンピシリンは無添加、以下同様)に接種し、30℃で17時間培養した。この培養液0.5mlを50mlのLB培地が入った250ml容の三角フラスコにそれぞれ植菌し、30℃で1時間振とう培養した後、IPTGを終濃度1mmol/Lになるように添加し、さらに4時間培養を継続した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。
終濃度100mg/mlの該湿菌体、60mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)、10mmol/Lの塩化マグネシウム、10mmol/LのATP、1g/LのL−Leu、1g/LのL−Pheからなる3.0mlの反応液を調製し、30℃で反応を行った。反応1時間後にサンプリングし、アセトニトリルを20%(v/v)になるように加えた後、反応生成物をHPLCを用いて分析した。HPLCによる分析は、分離カラムにODS−HAカラム(YMC社製)、溶離液として30%(v/v)アセトニトリルを用い、流速0.6ml/min、215nmの紫外吸収を測定する条件で行った。
その結果、エシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株の反応液中には36.7mg/lのシクロ(L−ロイシル−L−フェニルアラニン)[cyclo(L−Leu−L−Phe)]の蓄積が確認されたが、エシェリヒア・コリNM522株の反応液中にはcyclo(L−Leu−L−Phe)はまったく検出されなかった。同じ反応液を以下の条件でHPLCによって分析し、直鎖ジペプチド(以下、単にジペプチドと称す)であるL−ロイシル−L−フェニルアラニン(L−Leu−L−Phe)およびL−フェニルアラニル−L−ロイシン(L−Phe−L−Leu)を測定した。
両ジペプチドはF−moc化法で誘導体化した後にHPLCを用いて分析した。HPLCによる分析は、分離カラムにODS−HG5(野村化学社製)、溶離液としてA液(酢酸6ml/l、20%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8に調整)およびB液(酢酸6ml/l、70%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8に調整)を用い、分析開始後5分まではA液:B液=8:2、5分〜20分までは、20分経過したときにA液:B液=1:1になるようにリニアーグラジエントをかけ、流動速度0.6ml/分、励起波長254nm、蛍光波長630nmでジペプチドを検出する条件で行った。
その結果、エシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株の反応液中には21.9mg/LのL−Leu−L−Pheと12.0mg/LのL−Phe−L−Leuが蓄積していることが確認された。また対照株として用いたエシェリヒア・コリNM522株の反応液中にはいずれのジペプチドも検出されなかった。
このことから、実験例11で取得されたシクロジペプチド合成酵素はジペプチドを合成する能力をもつことが明らかになった。
実験例13 精製酵素を用いたジペプチドの製造(1)
実験例12と同様にエシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株を培養した。培養終了後、遠心分離によって湿菌体を取得し、60mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)で洗浄後、10mmol/Lイミダゾール含有20mmol/Lリン酸カリウムバッファーに懸濁した。この懸濁を4℃で超音波処理して菌体破砕液を取得した。この菌体破砕液(10ml、蛋白質0.863mgを含む)をアマシャム社製Hisタグ精製カラムに通塔し、10mmol/Lのイミダゾールを含有する20mmol/Lのリン酸カリウムバッファー15mlを通塔することによる洗浄を行い、HisタグつきalbC蛋白質をカラム内にて精製した。次にこのHisタグ付きのalbC蛋白質を保持するカラムに、実施例2と同組成の反応液(反応液組成:60mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)、10mmol/Lの塩化マグネシウム、10mmol/LのATP、1g/LのL−Leu、1g/LのL−Pheからなる反応液)2mlを通塔し、カラム内に基質を保持した状態で、30℃にて、インキュベートした。24時間後、同組成の反応液3mlでカラム内の反応液を溶出し、実験例12と同様の方法により反応液中のシクロジペプチドおよびジペプチドを定量した。
その結果、cyclo(L−Leu−L−Phe)6.8mg/L、L−Leu−L−Phe28.7mg/LおよびL−Phe−L−Leu18.5mg/Lが生成していることが分かった。ATPを含まない反応液で同様にインキュベートした場合は、シクロジペプチド、ジペプチドともに検出されなかった。
実験例14 精製酵素を用いたジペプチドの製造(2)
基質のアミノ酸を他のアミノ酸に換える以外は実験例13と同様の方法で酵素反応を行い、生成物を分析した。反応液は、基質のアミノ酸を、1g/LのL−Ala、L−LeuまたはL−Pheに置き換えた以外は実験例13と同じ組成の溶液を用いた。
その結果、反応開始後24時間で、それぞれ9.41mg/LのL−Ala−L−Ala、7.85mg/LのL−Leu−L−Leu、または5.20mg/LのL−Phe−L−Pheが生成していることが分かった。
実験例15 ywfE遺伝子の発現を強化した大腸菌の造成
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号82〜85に記載の配列をそれぞれ有するDNA(以下、それぞれプライマーL、プライマーM、プライマーN、プライマーO)を合成した。配列番号82の配列は、プラスミドpQE60ywfEのywfE遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ配列を含む領域について5’側にXhoI認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号83の配列は、ywfE遺伝子の終始コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にBamHI認識配列を含む配列を付加したものである。また配列番号84の配列は、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30のtrpプロモーター領域の配列について5’側にEcoRI認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号85の配列は、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30のtrpプロモーター領域の配列と相補的な配列の5’側にXhoI認識配列を含む配列を付加したものである。
プラスミドpQE60ywfEを鋳型とし、ywfE遺伝子断片の増幅には上記のプライマーLおよびプライマーMを、trpプロモーター領域の断片の増幅にはプライマーNおよびプライマーOをそれぞれプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRは、10ngのpQE60ywfE、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfuDNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む40μLの反応液を調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、プライマーLおよびプライマーMを用いたPCRではywfE遺伝子断片に相当する約1.4kb、プライマーNおよびプライマーOを用いた反応ではtrpプロモーター領域の断片に相当する約0.3kbの断片がそれぞれ増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAを20μlのTEに溶解した。
上記で得られたそれぞれのDNA溶液5μlを用い、プライマーLおよびプライマーMで増幅したDNAを制限酵素XhoIおよびBamHIで、またプライマーNおよびプライマーOで増幅したDNAを制限酵素EcoRIおよびXhoIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、それぞれywfE遺伝子を含む1.4kbおよびtrpプロモーター領域を含む0.3kbのDNA断片を回収した。
0.2μgのtrpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30を制限酵素EcoRIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、同様に4.5kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfE遺伝子を含む1.4kb断片、trpプロモーター領域を含む0.3kb断片および4.5kbの断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間、連結反応を行った。
該反応液を用いて大腸菌NM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、trpプロモーター下流にywfE遺伝子を含む発現ベクターであるpPE56を得た。該ベクターの構造を制限酵素消化により確認した(図4)。
実験例16 pepD遺伝子、pepN遺伝子、pepB遺伝子、pepA遺伝子およびdppオペロン欠損株の作製
エシェリヒア・コリ染色体DNA上の特定遺伝子が欠損した菌株は、ラムダファージの相同組換え系を利用した方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6641−6645(2000)]に従って作製した。
以下に記載のプラスミドpKD46、pKD3およびpCP20は、エシェリヒア・コリジェネティックストックセンター(米国エール大学)から該プラスミドを保持するエシェリヒア・コリ株を入手し、当該株から公知の方法により抽出して用いた。
(1)遺伝子欠損用DNA断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株の染色体DNA上に存在する配列番号53で表される塩基配列を有するpepD遺伝子、配列番号54で表される塩基配列を有するpepN遺伝子、配列番号55で表される塩基配列を有するpepB遺伝子、配列番号56で表される塩基配列を有するpepA遺伝子および配列番号57で表される塩基配列を有するdppA遺伝子、配列番号58で表される塩基配列を有するdppB、配列番号59で表される塩基配列を有するdppC遺伝子、配列番号60で表される塩基配列を有するdppD遺伝子および配列番号61で表される塩基配列を有するdppF遺伝子を欠損させることを目的に、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用い、エシェリヒア・コリK12株の染色体DNA上における各々の欠損標的遺伝子の上流および下流に位置する36bpからなる塩基配列と相同な塩基配列、および配列番号52で表される酵母由来Flp recombinaseが認識する塩基配列を有するDNAを合成した。ただし、dppA遺伝子、dppB遺伝子、dppC遺伝子、dppD遺伝子およびdppF遺伝子は、オペロンを形成しているので、該オペロンの上流および下流に位置する塩基配列と相同な塩基配列を有するDNAを合成した。
すなわち、pepD遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号62および63、pepN遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号64および65、pepA遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号66および67、pepB遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号68および69、dppオペロン欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号70および71で表される塩基配列からなるDNAをそれぞれ合成した。
次に、上記合成DNAをプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは10ngのプラスミドDNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfuDNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各deoxyNTPを含む40μLの反応液を用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
それぞれの反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃で30分間放置した。該溶液を遠心分離し、pepD遺伝子、pepN遺伝子、pepB遺伝子、pepA遺伝子およびdppオペロン欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を取得した。
(2)pepD遺伝子欠損エシェリヒア・コリJM101の作製
エシェリヒア・コリJM101株をpKD46で形質転換した後、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で培養することでpKD46を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pKD46と称す)を選択した。
プラスミドpKD46は、λ Red recombinase遺伝子を有し、該遺伝子の発現はL−アラビノースにより誘導することができる。よって、L−アラビノース存在下で生育させたpKD46を保有する大腸菌を、直鎖DNAを用いて形質転換すると、高頻度で相同組換えが起こる。またpKD46は温度感受性の複製起点を有するために、42℃で生育させることにより、プラスミドを容易に脱落させることができる。
10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリンの存在下で培養して得られたエシェリヒア・コリJM101/pKD46に、電気パルス法により上記で取得したpepD遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を導入し、大腸菌JM101の染色体DNA上にpepD遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片が相同組換えにより組込まれた形質転換株を25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地(バクトトリプトン10g/L、バクトイーストエキストラクト5g/L、塩化ナトリウム5g/L、寒天15g/L)に塗布し、30℃で培養することで選択した。
選択したクロラムフェニコール耐性株を、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地、及び100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカし、37℃で培養し、クロラムフェニコール耐性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択することにより、pKD46脱落株を取得した。
次に上記で得られたpKD46脱落株をpCP20を用いて形質転換し、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地上で選択することにより、pCP20を保持するpKD46脱落株を取得した。
プラスミドpCP20は、酵母由来Flp recombinase遺伝子を有し、該遺伝子の発現は42℃で誘導することができる。
また、上記で作製したpepD遺伝子、pepN遺伝子、pepB遺伝子、pepA遺伝子及び ppオペロン欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片の、クロラムフェニコール耐性遺伝子の両端にはFlp recombinaseが認識する塩基配列が存在するため、Flp recombinaseが触媒する相同組換えにより容易に該耐性遺伝子を脱落させることができる。
さらに、pCP20は温度感受性の複製起点を有しているため、pCP20保持株を42℃で生育させることにより、Flp recombinaseの発現とpCP20の脱落を同時に誘導することができる。
上記で取得したpCP20保有pKD46脱落株を薬剤無添加のLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを薬剤無添加LB寒天培地、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカして、30℃で培養し、クロラムフェニコール感受性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択した。
上記で選択した各株からそれぞれ染色体DNAを常法(生物工学実験書、日本生物工学会編97〜98ページ、培風館、1992年)に従って調製した。欠損の標的遺伝子であるpepD遺伝子の内部塩基配列に基づいて設計した配列番号72および73で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、染色体DNAを鋳型にしたPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各deoxyNTPを含む40μLの反応液を用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
上記PCRにおいて、増幅DNA断片が検出されなかった株をpepD遺伝子欠損株とし、エシェリヒア・コリJPD1株と名づけた。
(3)エシェリヒア・コリJM101の染色体DNA上のpepD遺伝子およびpepN遺伝子が欠損した株の作製
上記(2)で得られたエシェリヒア・コリJPD1株をpKD46で形質転換した後、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で培養することによりpKD46を保持するエシェリヒア・コリJPD1(以下、エシェリヒア・コリJPD1/pKD46と称す)を選択した。エシェリヒア・コリJPD1/pKD46に、電気パルス法によりpepN遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を導入し、エシェリヒア・コリJPD1/pKD46の染色体DNA上にpepN遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片が相同組換えに
より組込まれた形質転換株を取得した。
次に、上記(2)と同様の操作を行うことにより、染色体DNA上からクロラムフェニコール耐性遺伝子が欠落した株を取得し、該株をエシェリヒア・コリJPDN2と名づけた。
(4)エシェリヒア・コリJM101の染色体DNA上のpepN遺伝子、pepA遺伝子、pepB遺伝子またはdppオペロンが欠損した株、および多重遺伝子欠損株の作製
pepN遺伝子、pepA遺伝子、pepB遺伝子またはdppオペロンの欠損株は、上記(1)で作製した各遺伝子またはオペロン欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を用い、上記(2)と同様の方法により作製した。
上記方法により各々の遺伝子欠損株が取得されたことは、各々の欠損遺伝子の内部塩基配列に基づき設計、合成した配列番号74〜81で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、上記(2)と同様のPCRにより確認した。ここで、配列番号74および75で表される塩基配列からなるDNAはpepN欠損確認用、配列番号76および77で表される塩基配列からなるDNAはpepA欠損確認用、配列番号78および79で表される塩基配列からなるDNAはpepB欠損確認用、配列番号80および81で表される塩基配列からなるDNAはdppオペロン欠損確認用プライマーセットである。
上記方法で取得されたdppオペロン欠損株をエシェリヒア・コリJDPP1株、pepN遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPN1株、pepA遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPA1株、pepB遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPB7株と名付けた。
また、上記(3)の方法に準じて、pepD遺伝子、pepN遺伝子、pepA遺伝子、pepB遺伝子およびdppオペロンからなる群より選ばれる2以上の遺伝子またはオペロンの多重欠損株を作製した。多重欠損株が取得できたことの確認は、上記(2)と同様のPCRにより確認した。前記方法で取得されたpepD遺伝子およびdppオペロンが欠損した二重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPDP49株、pepB遺伝子、pepD遺伝子およびpepN遺伝子が欠損した三重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPDNB43株、pepD遺伝子、pepN遺伝子およびdppオペロンが欠損した三重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPNDDP36株、pepA遺伝子、pepD遺伝子、pepN遺伝子およびdppオペロンが欠損した四重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPNDAP5株、pepB遺伝子、pepD遺伝子、pepN遺伝子およびdppオペロンが欠損した四重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPNDBP7株と名づけた。表2は、各遺伝子欠損株における欠損遺伝子名を示す。
Figure 2006001381
実験例17 ペプチダーゼおよびジペプチド取り込み活性が喪失したエシェリヒア・コリを用いたL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaの生産性の評価
実験例16で得られた各種ペプチダーゼおよびジペプチド取り込み蛋白質をコードする遺伝子の欠損株を、実験例15で造成したプラスミドpPE56を用いて形質転換し、アンピシリン耐性を示す形質転換株を取得した。
得られた形質転換株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよびアミノ酸を含む8mlの水性媒体(リン酸水素二カリウム16g/L、リン酸二水素カリウム14g/L、硫酸アンモニウム5g/L、クエン酸(無水)1g/L、カザミノ酸(Difco社製)0.5g/L、L−Pro1g/L、L−Ala2.5g/L、L−Gln2.5g/L、グルコース10g/l、ビタミンB10mg/L、硫酸マグネシウム・7水和物25mg/l、硫酸鉄7水和物50mg/l、10mol/lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7.2に調整。L−Glnは10倍濃縮液をフィルターろ過滅菌後、グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後添加)を試験管に1%添加し、30℃で24時間反応させた。該水性媒体を遠心分離し上清を取得した。
該上清中の生産物をF−moc化法で誘導体化した後にHPLC法により分析した。HPLC法による分析は、分離カラムにODS−HG5(野村化学社製)を用い、溶離液としてA液(酢酸6ml/l、20%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8に調整)およびB液(酢酸6ml/l、70%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8調整)を用い、分析開始後5分まではA液:B液=8:2、5分〜20分までは、20分でA液:B液=1:1になるようにリニアーグラジエントをかける条件で分析を行った。分析結果を表3に示す。
Figure 2006001381
表3から、2種以下のペプチダーゼが欠損した微生物、1種のペプチド取り込み蛋白質のみが欠損した微生物では、ジペプチドの生成、蓄積量は低いが、1種以上のペプチダーゼおよび1種のペプチド取り込み蛋白質が欠損した微生物、または3種以上のペプチダーゼの活性が喪失した微生物では、ジペプチドの生成、蓄積量が大幅に増加していることがわかった。
実験例18 ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質の活性が喪失した大腸菌株を用いたL−アラニル−L−バリン(以下、L−Ala−L−Valと称す)の生産性の評価
実験例17と同様に、各種ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質をコードする遺伝子の欠損大腸菌株を、pPE56を用いて形質転換した。得られた形質転換株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよびアミノ酸を含む8mlの水性媒体(リン酸水素二カリウム16g/l、リン酸二水素カリウム14g/l、硫酸アンモニウム5g/l、クエン酸(無水)1g/l、カザミノ酸(Difco社製)0.5g/l、L−Pro1g/l、L−Ala2.5g/l、L−Val2.5g/l、グルコース10g/l、ビタミンB10mg/l、硫酸マグネシウム・7水和物25mg/l、硫酸鉄・7水和物50mg/l、10mol/lの水酸化ナトリウム溶液でpH7.2に調整。グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後に添加)が入った試験管に1%添加し、30℃で24時間反応させた。該水性媒体を遠心分離し上清を取得した。
該上清中の生成物を、実験例17記載の方法により分析した。結果を表4に示す。
Figure 2006001381
表4から、2種以下のペプチダーゼが欠損した微生物、および1種のペプチド取り込み蛋白質のみが欠損した微生物はジペプチドを生産しないが、3種以上のペプチダーゼ遺伝子が欠損した微生物、または1種以上のペプチダーゼ遺伝子および1種のペプチド取り込み蛋白質が欠損した微生物は、ジペプチドを生産することがわかった。
実験例19 ペプチダーゼおよびジペプチド取り込み系蛋白質の活性が喪失した大腸菌株を用いたグリシル−L−グルタミン(以下、Gly−L−Glnと称す)の生産性の評価
実験例17と同様に各種ペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損株を、pPE56を用いて形質転換した。得られた形質転換株を、50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。
該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよびアミノ酸を含む8mlの水性媒体(リン酸水素二カリウム16g/l、リン酸二水素カリウム14g/l、硫酸アンモニウム5g/L、クエン酸(無水)1g/L、カザミノ酸(ディフコ社製)0.5g/L、L−Pro1g/L、Gly2.5g/L、L−Gln2.5g/L、グルコース10g/L、ビタミンB10mg/L、硫酸マグネシウム・7水和物25mg/L、硫酸鉄7水和物50mg/L、10mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7.2に調整。L−Glnは10倍濃縮液をフィルターろ過滅菌後、グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後添加)が入った試験管に1%添加し、30℃で24時間反応させた。該水性媒体を遠心分離し上清を取得した。
該上清中の生成物を、実験例17記載の方法より分析した。結果を表5に示す。
Figure 2006001381
表5から、2種以下のペプチダーゼ遺伝子が欠損した微生物、および1種のペプチド取り込み蛋白質のみが欠損した微生物は、ジペプチドを生産しなかったが、3種以上のペプチダーゼが欠損した微生物、および2種以上のペプチダーゼ遺伝子および1種のペプチド取り込み蛋白質が欠損した微生物は、ジペプチドを生産することがわかった。
以下に、実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
アミノ酸およびアミノ酸誘導体を基質に用いたジペプチド誘導体の酵素的製造法
実験例4で取得した精製したHisタグ付加組換え型酵素40mg/L、100mmol/LのTris−HCl(pH9.0)、30mmol/Lの塩化マグネシウム、10mmol/LのATP、各10mmol/Lの表6記載のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で2時間反応を行った。
反応終了後、反応液の100倍量の停止緩衝液(4mol/L尿素、100mmol/L EDTA・2ナトリウム塩)を反応液に加えて反応を停止し、酵素反応によりATPが消費される際に生じるADP量をHPLCを用いて分析することにより、反応が進行していることを確認した。HPLCによる分析は、カラムにDevelosil C30−UG−5(150×4.6mm、野村化学社製)、移動相に200mmol/Lの酢酸および200mmol/Lのトリエチルアミンからなる溶液(pH6.6)を用い、流速1.0ml/
分、室温、254nmの紫外吸収を測定する条件で行った。結果を表6に示す。
Figure 2006001381
Figure 2006001381
Figure 2006001381
Figure 2006001381
Figure 2006001381
表6−1はL−AlaとL−Ala誘導体、表6−2はL−AlaとL−Phe誘導体、表6−3はL−AlaとL−Glu誘導体、表6−4はL−AlaとL−Asp誘導体、表6−5はL−AlaとL−Lys誘導体を基質に用いた実験結果であり、基質として用いたアミノ酸およびアミノ酸誘導体の略称は以下のとおりである。
Ala:L−アラニン
Phe:L−フェニルアラニン
Glu:L−グルタミン酸
Asp:L−アスパラギン酸
Lys:L−リジン
Cl−Ala:β−クロロ−L−アラニン
CN−Ala:β−シアノ−L−アラニン
cyc(5)Ala:β−シクロペンチル−DL−アラニン
cyc(3)Ala:β−シクロプロピルアラニン
cyc(6)Ala:β−シクロヘキシルアラニン
Cl−Phe:4−クロロフェニルアラニン
F−Phe:4−フルオロフェニルアラニン
Ni−Phe:p−ニトロフェニルアラニン
NH−Phe:p−アミノフェニルアラニン
Phe−NH:フェニルアラニンアミド
Kynurenin:L−キヌレニン
Glu(OMe):グルタミン酸−γ−メチルエステル
Glu(OEt):グルタミン酸−γ−エチルエステル
Glu(OtBu):グルタミン酸−γ−tブチルエステル
Glu(OBzl):グルタミン酸−γ−ベンジルエステル
Asp(OMe):アスパラギン酸−β−メチルエステル
Asp(OtBu):アスパラギン酸−β−tブチルエステル
Asp(OBzl):アスパラギン酸−β−ベンジルエステル
Lys(Ac):アセチルリジン
Lys(Boc):Boc−リジン
表6に示すように、コントロールである基質無添加区、およびL−Ala、L−Phe、L−Glu、L−Asp、L−Lysをそれぞれ単独の基質に用いた試験区でのADP生成量は0.02〜0.16mmol/Lであったのに対し、表1に示すアミノ酸およびアミノ酸誘導体の組み合わせでは、0.54〜6.43mmol/LものADPが生成していた。
また、プロトンNMR分析により上記と同様の反応条件で反応させた反応液中に存在する化合物の構造解析を行った。ただし、反応に用いた基質アミノ酸およびアミノ酸誘導体は、反応液1、4、10および11は20mmol/L、その他の反応液は10mmol/Lの濃度で用いた。
プロトンNMR分析は、Bruker社製のDMX500を用い、以下の条件下で行った。
温度:303K
標準物質:1mmol/Lの3−(Trimethylsilyl)−Propionic acid−D4 sodium salt(TSP)
媒体:反応液4、10および11は軽水、その他の反応液は重水
反応液中の化合物の構造は、α位のプロトンのケミカルシフトに基づき同定した。各化合物の濃度はTSPの面積を内部標準とし、α位のプロトンのシグナル面積を元に算出した(表7)。ただし、L−Ala−L−Alaは濃度が低く、α位のプロトンのシグナルが重なり合うため、β位のプロトンのシグナル面積を元に算出した。なお、括弧内は、各化合物のα位プロトンのケミカルシフト(単位はppm)を表す。
Cl−AlaおよびPheを基質に用いた反応液(反応液1)
Cl−Ala(4.20)、Phe(4.02)、Cl−Ala−Phe(3.93,4.50)、Aziridine−2−carboxylic acid[Azc](2.73)、Azc−Phe(2.59,4.47)
CN−AlaおよびPheを基質に用いた反応液(反応液2)
CN−Ala(3.87)、Phe(4.00)、Cl−Ala−Phe(3.71,4.48)
AlaおよびCl−Pheを基質に用いた反応液(反応液3)
Ala(3.79)、Cl−Phe(3.97)、Ala−Cl−Phe(3.90,4.43)
AlaおよびNH−Pheを基質に用いた反応液(反応液4)
Ala(3.78)、NH−Phe(3.93)、Ala−NH−Phe(3.95,4.39)、Ala−Ala(β;1.55,1.36)
AlaおよびKinurenineを基質に用いた反応液(反応液5)
Ala(3.79)、Kinurenine(4.16)、Ala−Kinurenine(3.96,4.64)
AlaおよびPhe−NHを基質に用いた反応液(反応液6)
Ala(3.79)、Phe−NH(4.02)、Ala−Phe−NH(3.90,4.60)
AlaおよびGlu(OMe)を基質に用いた反応液(反応液7)
Ala(3.79)、Glu(OMe)(3.76)、Ala−Glu(OMe)(4.05,4.18)、Ala−Ala(β;1.55,1.36)
AlaおよびGlu(OtBu)を基質に用いた反応液(反応液8)
Ala(3.79)、Glu(OtBu)(3.76)、Ala−Glu(OtBu)(4.04,4.18)
AlaおよびAsp(OtBu)を基質に用いた反応液(反応液9)
Ala(3.81)、Asp(OtBu)(3.98)、Ala−Asp(OtBu)(4.04,4.46)
AlaおよびLys(Boc)を基質に用いた反応液(反応液10)
Ala(3.78)、Lys(Boc)(3.73)、Ala−Lys(Boc)(4.02,4.14)
Alaおよびcyc(3)Alaを基質に用いた反応液(反応液11)
Ala(3.78)、cyc(3)Ala(3.82)、Ala−cyc(3)Ala(4.08,4.24)
Alaおよびcyc(6)Alaを基質に用いた反応液(反応液12)
Ala(3.79)、cyc(6)Ala(3.76)、Ala−cyc(6)Ala(4.02,4.22)
Figure 2006001381
表中の「overlap」はシグナルの重なりによって正確な定量ができなかったことを示す。
上記結果から、本発明の製造法により、アミノ酸およびアミノ酸誘導体を基質として、直接アミノ酸とアミノ酸誘導体がペプチド結合したジペプチド誘導体が製造できることが明らかとなった。
N−[2−(アセチルアミノ)プロピオニル]フェニルアラニンの製造
実験例6で得られたL−Ala−L−phe(100mg,0.423mmol)を塩化メチレン(10mL)に懸濁し、室温でピリジン(10mL)及び無水酢酸(1mL,11mmol)を加える。室温で24時間撹拌した後、水を加えクロロホルムで3回抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去することにより、N−[2−(アセチルアミノ)プロピオニル]フェニルアラニンを得る。
1−{2−[N−((アセチルアミノ)アセチル)アミノ]−3−フェニルプロピオニル}ピペリジンの製造
実施例2で得られるN−[2−(アセチルアミノ)プロピオニル]フェニルアラニン(10mg,0.036mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)に懸濁し、室温で1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(14mg,0.073mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(15mg,0.11mmol)及びピペリジン(40μL,0.40mmol)を加え50℃で24時間撹拌する。反応混合物に水を加え、クロロホルムで3回抽出する。有機層を10%塩酸及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去する。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、1−{2−[N−((アセチルアミノ)アセチル)アミノ]−3−フェニルプロピオニル}ピペリジンを得る。
配列番号19−人工配列の説明:合成DNA
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Claims (26)

  1. 以下の[1]〜[7]のいずれかに記載の蛋白質、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体[以下、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)という]を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)の製造法[但し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)は、下記アミノ酸群Aから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物ではない(アミノ酸群A:L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリン、L−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシン、グリシンおよびβ−アラニン)]。
    [1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
    [2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
    [6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
  2. 以下の[1]〜[7]のいずれかに記載の蛋白質、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、そのまま、または該媒体から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取した後、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を修飾し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体[以下、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)という]を生成させ、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)の製造法[但し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)は、前記アミノ酸群Aから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物ではない]。
    [1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
    [2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
    [6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
    [7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質
  3. 以下の[1]〜[5]から選ばれるDNAを保持する細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、該媒体中から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)の製造法[但し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)は、前記アミノ酸群Aから選ばれる同一のまたは異なるアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物ではない]。
    [1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
    [2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [3]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [4]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
    [5]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
  4. 以下の[1]〜[5]から選ばれるDNAを保持する細胞の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成、蓄積させ、そのまま、または該媒体から該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を採取した後、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を修飾し、ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を生成させ、該ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)を採取することを特徴とするジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)の製造法。
    [1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
    [2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [3]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [4]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
    [5]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)を生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
  5. アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(I)
    Figure 2006001381
    (式中、nは1〜3の整数を表し、
    1aおよびR1bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR1aおよびR1bのいずれか一方が、隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR2aおよびR2bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
    2aおよびR2bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR1a1bNに隣接する炭素原子上のR2aおよびR2bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子ならびにR1a及びR1bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、nが2または3である場合、2つまたは3つのR2aおよび2つまたは3つのR2bはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)または式(II)
    Figure 2006001381
    [式中、nは前記nと同義であり、
    3aおよびR3bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはRHNに隣接する炭素原子上のR3aおよびR3bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子およびRと一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、nが2または3である場合、2つまたは3つのR3aおよび2つまたは3つのR3bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
    は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはRが隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR3aおよびR3bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
    はアミノ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、モノ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ、ジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノまたは脂環式複素環基を表す]で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体[但し、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(I)のみであるとき、R1a及びR1bの少なくとも一方は水素原子であり、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(II)のみであるとき、Rはヒドロキシである]である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
  6. アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(III)
    Figure 2006001381
    (式中、R1cおよびR1dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表し、
    2cおよびR2dは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)または式(IV)
    Figure 2006001381
    (式中、R3cおよびR3dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、
    は前記と同義である)で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体[但し、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(III)のみであるとき、R1c及びR1dの少なくとも一方は水素原子であり、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(IV)のみであるとき、Rはヒドロキシである]である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
  7. アミノ酸またはアミノ酸誘導体が式(V)
    Figure 2006001381
    (式中、R2eは置換もしくは非置換のメチルを表す)または式(VI)
    Figure 2006001381
    (式中、R3eは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)で表されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
  8. アミノ酸またはアミノ酸誘導体がL−アミノ酸、グリシンおよびβ−アラニンからなる群より選ばれるアミノ酸またはその誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
  9. L−アミノ酸がL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリンおよびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシンから選ばれるL−アミノ酸である、請求項8記載の製造法。
  10. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)が式(VIIa)
    Figure 2006001381
    [式中、n3aおよびn4aはそれぞれ前記nと同義であり、
    6aおよびR6bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR6aおよびR6bのいずれか一方が、隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR7aおよびR7bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
    7aおよびR7bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR6a6bNに隣接する炭素原子上のR7aおよびR7bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子ならびにR6aおよびR6bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n3aが2または3である場合、2つまたは3つのR7aおよび2つまたは3つのR7bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
    8aは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR8aが隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接し、かつR9aおよびR9bと結合する炭素原子ならびに該炭素原子上のR9aおよびR9bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
    9aおよびR9bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、または−R8aN−に隣接する炭素原子上のR9aおよびR9bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子およびR8aと一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n4aが2または3である場合、2つまたは3つのR9aおよび2つまたは3つのR9bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
    10aはアミノ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、モノ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ、ジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノまたは脂環式複素環基を表す]で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法。
  11. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が式(VIIb)
    Figure 2006001381
    [式中、n3Aおよびn4Aはそれぞれ前記nと同義であり、
    6AおよびR6Bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR6AおよびR6Bのいずれか一方が、隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接する炭素原子ならびに該炭素原子上のR7AおよびR7Bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
    7AおよびR7Bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、またはR6A6BNに隣接する炭素原子上のR7AおよびR7Bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子ならびにR6AおよびR6Bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n3Aが2または3である場合、2つまたは3つのR7Aおよび2つまたは3つのR7Bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
    8Aは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表すか、またはR8Aが隣接する窒素原子、該窒素原子に隣接し、かつR9AおよびR9Bと結合する炭素原子ならびに該炭素原子上のR9AおよびR9Bのいずれか一方と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、
    9AおよびR9Bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表すか、または−R8AN−に隣接する炭素原子上のR9AおよびR9Bのいずれか一方が、隣接する炭素原子、該炭素原子に隣接する窒素原子およびR8Aと一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成してもよく、n4Aが2または3である場合、2つまたは3つのR9Aおよび2つまたは3つのR9Bはそれぞれ同一でも異なっていてもよく
    10Aは前記R10aと同義である]で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法。
  12. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)が式(VIIIa)
    Figure 2006001381
    (式中、R6cおよびR6dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアロイルを表し、
    7cおよびR7dは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、
    9cおよびR9dは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、
    10aは前記と同義である)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造法。
  13. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が式(VIIIb)
    Figure 2006001381
    (式中、R6C、R6D、R7C、R7D、R9CおよびR9Dはそれぞれ前記R6c、R6d、R7c、R7d、R9cおよびR9dと同義であり、
    10Aは前記と同義である)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造法。
  14. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)が式(IXa)
    Figure 2006001381
    (式中、R7eは置換もしくは非置換のメチルを表し、
    9eは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造法。
  15. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が式(IXb)
    Figure 2006001381
    (式中、R7EおよびR9Eはそれぞれ前記R7eおよびR9eと同義である)で表されるジペプチドまたはジペプチド誘導体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造法。
  16. ジペプチドまたはジペプチド誘導体(PI)あるいはジペプチドまたはジペプチド誘導体(PII)が、L−アミノ酸、グリシン、およびβ−アラニン、ならびにそれらの誘導体から選ばれる同一または異なるアミノ酸またはアミノ酸誘導体がペプチド結合したジペプチドまたはジペプチド誘導体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造法。
  17. L−アミノ酸がL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリンおよびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシンから選ばれるL−アミノ酸である、請求項16記載の製造法。
  18. 細胞が微生物の細胞である、請求項3〜17のいずれか1項に記載の製造法。
  19. 微生物が原核生物である、請求項18記載の製造法。
  20. 原核生物が1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質(以下、ペプチド取り込み蛋白質ともいう)の活性が低下または喪失した微生物である、請求項19記載の製造法。
  21. 原核生物が3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失した微生物である、請求項19記載の製造法。
  22. ペプチダーゼが配列番号43〜46のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号43〜46のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質である、請求項20または21記載の製造法。
  23. ペプチド取込み蛋白質が配列番号47〜51のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号47〜51のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有する蛋白質であり、かつペプチド取り込み活性を有する蛋白質である、請求項20または22記載の製造法。
  24. 原核生物がエシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物である、請求項19〜23のいずれか1項に記載の製造法。
  25. エシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物が、エシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテイルム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルスまたはバチルス・メガテリウムである、請求項24記載の製造法。
  26. 培養物の処理物が培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品であり、かつ1種以上のアミノ酸またはアミノ酸誘導体からジペプチドまたはジペプチド誘導体を生成する活性を有する処理物であることを特徴とする、請求項3〜25のいずれか1項に記載の製造法。
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