JPWO2005100951A1 - 硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法、動作中心周波数選択装置及び硬さ測定システム - Google Patents

硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法、動作中心周波数選択装置及び硬さ測定システム Download PDF

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Abstract

位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することをより容易とすることである。動作中心周波数選択装置に硬さセンサを接続し、自由端状態で、周波数−振幅特性等を取得し、各ピークの周波数、位相等を測定取得し、これを自由端特性とする(S10−S20)。次に硬さセンサを第1テストピースに接触させ、各ピークについて変化した周波数、位相等を測定取得し、第1特性とする。(S22−S28)。第1テストピースより硬い第2テストピースについても同様にして第2特性を取得する(S30−S36)。これらに基づき、所定の選択基準に基づいて硬さ測定に適するピーク選択が行われ、そのピークの周波数から動作中心周波数の設定が行われる(S38−S40)。

Description

本発明は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサを用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムの動作中心周波数選択に係り、特に硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法及び硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置に関する。
生体の組織物質等の硬さを測定する方法として、プローブを被測定物質に押し当てつつ振動を与えて、その入力振動に対する生体組織物質の機械振動応答をセンサで検出して周波数、位相の変化等から硬さに対応する特性値を得る方法がある。特に、本願の発明者は、特許文献1に開示されるように、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路とを用い、対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムを考案している。
位相シフト回路を用いる硬さ測定システムの例を図8に示す。図8において、硬さ測定システム10は、対象物8である生体組織等に押し当てられる硬さセンサ12と、硬さ検出部20とを含んで構成される。硬さセンサ12は、対象物8に振動を入射する振動子14と対象物8から反射される信号を検出する振動検出センサ16とを有する。このような硬さセンサ12としては、圧電素子を2つ積み重ね、一方を振動子14とし、他方を振動検出センサ16とするものを用いることができる。硬さ検出部20は、振動検出センサ16からの出力端子と、振動子14への入力端子との間に、適当な直流カット容量、増幅器22及び位相シフト回路24を直列に接続し、位相シフト回路24によって位相差を補償するために生ずる周波数偏差を検出する周波数偏差検出器26と、検出された周波数偏差を硬さに換算して出力する硬さ換算器28を含む。周波数偏差検出器26は一般的な周波数測定器を用いることができ、硬さ換算器28は、予め較正されたルックアップテーブルを用いて換算を行い、あるいは予め与えられる換算式に従い換算演算を行うマイクロコンピュータ等を用いることができる。
位相シフト回路24は、上記のように、振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループ内に直列接続により設けられて、振動子14への入力波形と振動検出センサ16からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする機能を有する回路である。位相シフト回路24の周波数に対する振幅及び位相の特性を示す基準伝達特性曲線は、図9に示すように、動作中心数周波数ffをおいて振幅が最大となり、位相が反転するものが好ましい。このような特性の回路は、動作中心数周波数ffを共振周波数として、そこで振幅ゲインが最大となるバンドパスフィルタを設計することで得ることができる。具体的に電子部品を配置してハードウエアで構成することも、またソフトウエアによりディジタルフィルタ特性を実現することでもよい。
位相シフト回路24の機能を説明するには、位相シフト回路を含まない振動系ループと比較することがよい。すなわち、振動検出センサ−直流カット容量−増幅器−振動子−対象物−振動検出センサのループは、いわゆる自励発振回路を構成する。対象物8に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触していないときにも、振動子14と振動検出センサ16の間の空間を対象物とする形で自励発振回路が構成され、ある共振周波数において系全体が発振し安定する。つぎに、対象物に硬さセンサ(=振動子+振動検出センサ)が接触すると、対象物の機械的な振動系の影響により、系全体の発振状態が変化する。すなわち、対象物の振動系の内容である硬さを表すバネ定数の大きさにより、位相差が生じ、また周波数の変化が生ずる。ここで周波数変化を検出し、対象物の硬さを測定しようとする試みは、すでに数多くの先行技術が知られている。しかし、通常の共振周波数の変化は極めて少なく、その精度よい検出は困難を伴うことが多く、また、位相差の検出はよい測定手段が少ない。位相シフト回路24は、図9に説明したような周波数に対する振幅及び位相の特性を示す基準伝達特性曲線を用い、位相の変化を周波数の変化に換算し、測定しにくい位相差の検出を測定しやすい周波数の測定に変換しようとするものである。
そこで、位相シフト回路24が、振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループ内に直列接続により設けられるときの作用について説明する。このように機械的な振動系で構成される対象物と、電気的な発振回路とを含む自励発振ループの中に位相シフト回路24が接続されるときは、全体の系がいわゆる速度共振によって自励発振が持続するように動作する。速度共振とは、共振周波数において振幅最大で位相がゼロとなるものである。すなわち、対象物8に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触していないときには、振動子14と振動検出センサ16の間の空間を対象物とする形で、振動子14への入力波形と振動検出センサ16からの出力波形との位相差がゼロとなる周波数で安定するように位相シフト回路24の動作点が定まる。この状態を、図9において、周波数f1、位相θ1で示すとする。
つぎに、対象物8に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触すると、対象物8の機械的な振動系、すなわち硬さを表すバネ定数の大きさにより、振動子14への入力波形と振動検出センサ16からの出力波形に位相差が生ずる。いま、対象物8の硬さによって、位相差がΔθだけ生ずるものとすると、速度共振による自励発振を持続するように、すなわち、この位相差Δθを補償して系全体の位相差をゼロにするように、位相シフト回路24の動作点がシフトする。図9で説明すると、位相θ1、周波数f1の動作点が、位相θ1+Δθ、周波数f1+Δfの動作点にシフトし、ここで系全体の位相差をゼロとして、速度共振が持続し、安定する。
すなわち、位相シフト回路24を振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループ内に直列接続により設けることで、速度共振を持続するために必要な位相差補償を行い、同時に、その補償を行った位相差Δθの大きさを周波数偏差Δfに変換できる。ここで得られる速度偏差Δfは、従来技術のように、共振周波数の変化分ではなく、位相変化分を位相シフト回路24の基準伝達特性曲線により周波数変化分に変換したもので、その変換係数Δf/Δθは、位相シフト回路24の基準伝達特性曲線の設計により、任意の大きさにすることができる。すなわち、小さな位相差を大きな周波数偏差にすることもでき、大きすぎる位相差を適当な周波数偏差の大きさにすることもできる。
このようにして得られる周波数偏差を、適当な周波数測定装置により測定し、これを予め求めておいた周波数偏差−硬さの較正関係に基づいて硬さに変換することができる。
特開平9−145691号公報
硬さセンサ12は、その周波数−振幅特性、あるいは周波数−位相特性において、さまざまなピークを有する。したがって、上記のように、振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−位相シフト回路24−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループを形成するときは、位相シフト回路24の動作中心周波数の設定ffをどのように選択するかにより、さまざまな周波数で応答させることが可能である。位相シフト回路24の動作中心周波数ffは、硬さセンサ12が対象物8に接触するときに生ずる位相差Δθを適当な変換係数Δf/Δθで周波数偏差Δfに変換するため、基準伝達特性曲線の形と、硬さセンサ12が対象物8に接触していないときの動作中心周波数f1とから設定されるものである。したがって、対象物8の硬さを精度よく測定するためには、硬さセンサ12の有するさまざまなピークの中から、どれを硬さ測定に用いるか選択し、その動作中心周波数f1に合わせ、位相シフト回路24の基準伝達特性曲線の形と、その動作中心周波数ffを設定する必要がある。
いままで、硬さセンサの有するさまざまなピークの中から、どれを硬さ測定に用いるか選択は、ノウハウに委ねられている。したがって、位相シフト回路を用いる硬さ測定において、対象物8の硬さを精度よく測定するための条件設定等に多大の負荷と時間を要している。
本発明の目的は、位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することをより容易に可能とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法及び硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置を提供することである。他の目的は、硬さ測定に用いるための動作中心周波数を選定し、硬さ測定を行う硬さ測定システムを提供することである。以下の手段は、かかる目的の少なくとも1つを実現するために貢献するものである。
本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出工程と、区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得工程と、区別された各ピークにつき、硬さセンサをテストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する接触特性取得工程と、区別された各ピークにつき、自由端特性と接触特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択工程と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定工程と、を備えることを特徴とする。
上記構成により、硬さセンサの周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出し、その各ピークについて、硬さセンサがテストピースに接触していないときと接触するときの周波数変化、位相変化、振幅変化を求め、それに基づいて硬さ測定に用いるためのピークを選択する。ピークの選択の基準は、測定の目的に合わせ設定することができる。周波数変化、位相変化、振幅変化については、いずれか1つについて求めてもよく、その中の2つ、例えば周波数変化、位相変化について求めてこれを選択の基準にしてもよく、また、周波数変化、位相変化、振幅変化の3つを総合した選択の基準としてもよい。例えば、位相変化の適当な大きさを定めてもよく、位相変化の最も大きなピークを選択するようにしてもよく、また、測定に都合のよい周波数範囲の中で選択を行うようにしてもよい。このようにして、硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出工程と、区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得工程と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを柔らかい硬さの第1テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第1特性取得工程と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを第1テストピースより硬い第2テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第2特性取得工程と、区別された各ピークにつき、自由端特性と第1特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つと、自由端特性と第2特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択工程と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定工程と、を備えることを特徴とする。
上記構成により、硬さセンサの周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出する。そして、テストピースを柔らかいものと硬いものと用意し、硬さセンサがテストピースに接触していないときと接触するときの周波数変化、位相変化、振幅特性が2種類のテストピースについてどのように異なるかを各ピークについて求める。そして、その結果に基づいて硬さ測定に用いるためのピークを選択する。したがって、2種類のテストピースの硬さ、柔らかさの範囲内で対応のよいピークを選択することができ、硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。周波数変化、位相変化、振幅変化については、いずれか1つについて求めてもよく、その中の2つ、例えば周波数変化、位相変化について求めてこれを選択の基準にしてもよく、また、周波数変化、位相変化、振幅変化の3つを総合した選択の基準としてもよい。
また、ピーク選択工程は、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向とを比較し、相互に逆方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
上記構成により、2種類のテストピースの硬さ、柔らかさの範囲内で位相の変化をより大きく検出できるピークを選択することができ、硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、ピーク選択工程は、自由端特性に比べ第1特性が周波数及び位相のいずれも減少方向に変化し、自由端特性に比べ第2特性が周波数及び位相のいずれも増加方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
一般的な物質は、柔らかくなるにつれ周波数が低周波側にずれ、位相は減少し、硬くなるにつれ周波数が高周波側にずれ、位相は増加する。上記構成により、一般的な物質に対する応答特性に沿ったピークを選択することができる。もちろん、位相シフト回路の機能は、位相と周波数の変換にあり、選択されるピークがこのようでなくても、他の理由、例えば感度がより良好であるとか、発振の安定性がより良好である等の理由の選択基準で選択することは可能である。
また、ピーク選択工程は、候補ピークの中から、変化幅の大きいピークを選択することが好ましい。上記構成により、硬さに対する感度を大きくするピークを選択できる。
また、ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から任意の周波数範囲の中にあるピークに絞り込む周波数絞込み工程を備えることが好ましい。硬さセンサの形状や材質等が同じであれば、そのテストピースに対する応答特性もほぼ同じである。例えば、硬さセンサの仕様が決まっていて、硬さ測定に適するピークがどの周波数範囲にあるかわかっていることがある。上記構成により、ピーク検出工程において周波数範囲を定めて行うことで、硬さ測定システムの動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から任意のQ値以下にあるピークに絞り込むQ値絞込み工程を備えることが好ましい。
ここでQ値とは、ピークの鋭さを示す特性値で、例えば、周波数−振幅特性で、そのピークの半値幅、すなわちピークの最大振幅に対する半分の振幅における周波数幅で代表させることができる。一般的に、Q値の大きいピークはその振動が安定で、例えば、対象物に接触したとしてもその振動状態の変化が少ない。いわゆる振動体の1次固有振動数などは、そのQ値が高い代表である。位相シフト回路を用いる振動ループ系では、対象物に接触するときの位相のずれが大きいほどよく、また、その位相のずれを位相シフト回路で補償するので、振動の安定性は高くないほうが望ましい。上記構成により、適当な振動の安定性を有するピークを選択するので、硬さ測定システムの動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から、そのピーク位置における位相変化率が任意の値以下にあるピークに絞り込む位相変化率絞込み工程を備えることが好ましい。
ピークにおける位相が急変するようなものは、感度を高くとることができるが、反面振動が不安定になりがちである。上記構成により、適当な振動の安定性を確保できるピークを選択できる。
また、動作中心周波数設定工程は、位相シフト回路のQ値に応じて任意の周波数幅を設定することが好ましい。
図9に関連して説明したように、位相シフト回路24における位相差Δθを周波数偏差Δfに変換する変換係数Δf/Δθは、位相シフト回路24の基準伝達特性曲線の形、すなわちそのQ値と、位相シフト回路24の動作中心周波数ffと、硬さセンサ12が対象物8に接触していないときの動作中心周波数f1との間の周波数幅で決まる。上記構成により、位相シフト回路のQ値に応じてffとf1との間の周波数幅を設定するので、適当な変換係数Δf/Δθを得ることができる。
また、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する装置であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出手段と、区別された各ピークについてその周波数と位相とを測定し記憶する自由端特性取得手段と、区別された各ピークにつき、硬さセンサをテストピースに接触させるときに変化する周波数と位相とを測定し記憶する接触特性取得手段と、区別された各ピークにつき、自由端特性と接触特性との間の周波数変化及び位相変化とに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択手段と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する装置であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で、周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出手段と、区別された各ピークについてその周波数と位相とを測定し記憶する自由端特性取得手段と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを柔らかい硬さの第1テストピースに接触させるときに変化する周波数と位相とを測定し記憶する第1特性取得手段と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを第1テストピースより硬い第2テストピースに接触させるときに変化する周波数と位相とを測定し記憶する第2特性取得手段と、区別された各ピークにつき、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化とに基づいて硬さ測定に用いるピークを選択するピーク選択手段と、を備え、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作中心周波数とすることを特徴とする。
また、ピーク選択手段は、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向とを比較し、相互に逆方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
また、ピーク選択手段は、自由端特性に比べ第1特性が周波数及び位相のいずれも減少方向に変化し、自由端特性に比べ第2特性が周波数及び位相のいずれも増加方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
また、ピーク選択手段は、候補ピークの中から、変化幅の大きいピークを選択することが好ましい。
また、ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から任意の周波数範囲の中にあるピークに絞り込む周波数絞込み手段を備えることが好ましい。
また、ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から任意のQ値以下にあるピークに絞り込むQ値絞込み手段を備えることが好ましい。
また、ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から、そのピーク位置における位相変化率が任意の値以下にあるピークに絞り込む位相変化率絞込み手段を備えることが好ましい。
また、本発明に係る硬さ測定システムは、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサを用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムであって、硬さセンサと増幅器とが直列接続されたセンサ増幅回路部について、外部より周波数を変化させて掃引する信号を入力し、周波数に対する振幅特性又は位相特性において現れる複数のピークを予め定めた基準と比較して硬さ測定に用いるためのピークを選定し、選定されたピークに対応する選定周波数をセンサ増幅回路部に入力して選定周波数に対応する選定位相差が出力される状態で動作させるオープンループの第1回路ループと、センサ増幅回路部の入力端と出力端の間に位相シフト回路を接続しループを閉じて自励発振ループを構成し、センサ増幅回路部への入力波形とその出力波形との間に位相差が生じるときは、位相シフト回路によって周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトさせて自励発振を持続させるクローズドループの第2回路ループと、センサ増幅回路部を含む回路ループを、第1回路ループにおける選定周波数及び選定位相差の下の動作状態から、第2の回路ループにおいてセンサ増幅回路部の両端の選定位相差を位相シフト回路で補償して選定周波数の下で自励発振を持続させる動作状態に切り替える切り替え手段と、切り替え後において、対象物に硬さセンサを接触させ、対象物の硬さに応じてセンサ増幅回路部の両端の位相差が選定位相差からさらに変化する硬さによる位相差成分を、位相シフト回路によって選定周波数から周波数を変化させて補償してセンサ増幅回路の両端を選定位相差のままに維持し、変化させた周波数偏差を出力する周波数偏差出力部と、を備え、出力された周波数偏差から対象物の硬さを測定することを特徴とする。
上記構成により、第1回路ループにおいて硬さ測定に用いるためのピークを選定し、その状態で切り替え手段によって第2回路ループに切り替えて、第1回路ループにおける選定周波数及び選定位相差の下の動作状態の下で自励発振を持続させる動作状態とする。したがって、選定された硬さ測定用のピークについてそのまま自励発振を持続できるので、硬さ測定用のピークについて自励発振を持続するように位相シフト回路の定数の設定を改めて行う必要がなく、その後の硬さ測定が容易となる。
また、本発明に係る硬さ測定システムにおいて、位相シフト回路は、位相検出器と電圧制御発振器と分周器とがループ状に接続されるフェーズロック回路であって、センサ増幅回路部の出力と分周器の出力とが位相検出器に入力されてそれらの間の位相差をゼロにするように発振状態をロックするフェーズロック回路と、時々刻々の分周器のデータについて選定位相差に相当するデータを補償演算し、これに基づき、センサ増幅回路部の出力信号の1周期について選定位相差分の位相差を補償した位相差補償信号を出力する補償信号出力部と、を含み、補償信号出力部から出力される位相差補償信号をセンサ増幅回路部の入力信号として供給することが好ましい。
位相シフト回路は、フェーズロック回路を含み、これによりロックされた発振状態の時々刻々のデータは分周器に現れる。その分周器のデータに、選定位相差に相当するデータを減算等で補償したデータを生成し、それに基づき位相差補償信号を生成する。したがって、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の複雑な回路素子定数の変更等によることなく、位相差補償信号を生成することができる。
また、本発明に係る硬さ測定システムにおいて、センサ増幅器回路部の出力をデジタル信号に変換して位相シフト回路に供給する変換器を含み、デジタル信号で動作する位相シフト回路の補償信号出力部は、電圧制御発振器の信号のデータをカウントする分周カウンタと、分周カウンタと同じビット数を有する選定位相差を補償するデータを分周カウンタのデータに加算するフルアダー回路と、フルアダー回路のデータから正弦波信号を生成する波形生成器と、を有し、生成された正弦波信号を位相差補償信号としてセンサ増幅回路部に供給することが好ましい。
位相差補償信号を生成する回路部分は、デジタル信号処理を行うこととしたので、回路構成が簡単になる。
上記のように、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法及び硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置によれば、位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に行うことができる。また、本発明に係る硬さ測定システムによれば、硬さ測定に用いるためのピークにおいて自励発振を持続させて硬さ測定を行うことが容易となる。
本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置のブロック図である。 本発明に係る実施の形態における動作中心周波数選択の手順を示すフローチャートである。 硬さセンサについて取得される周波数−振幅特性、周波数−位相特性の例を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、ピーク選択の内容を説明するため、あるピークについての自由端特性、第1特性、第2特性を並べて示す図である。 本発明に係る実施の形態において、硬さセンサの周波数の変化と位相の変化のタイプを分類し、タイプ1からタイプ4として並べた図である。 本発明に係る実施の形態において、ピークを選択する基準の1例を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、硬さセンサと位相シフト回路の動作中心周波数の設定が行われる様子を説明する図である。 従来技術における位相シフト回路を用いる硬さ測定システムの例を示す図である。 従来技術における位相シフト回路基準伝達特性曲線の例を示す図である。 従来技術における基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路を用いた場合の硬さ測定の様子を説明する図である。 本発明の実施の形態の硬さ測定システムにおいて、位相シフト回路の位相曲線106の様子を示す図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの構成を示すブロック図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの第1回路ループに関する構成を示すブロック図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの第2回路ループに関する構成を示すブロック図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの対象物の硬さを測定する手順を示すフローチャートである。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムにおいて、第1回路ループのときの位相差を説明する図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムにおいて、第2回路ループのときの位相差補償を説明する図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムにおいて、硬さセンサを対象物に接触させたときの周波数偏差を説明する図である。
符号の説明
4,6 テストピース、8 対象物、10 硬さ測定システム、12 硬さセンサ、14 振動子、16 振動検出センサ、20 硬さ検出部、22 増幅器、24 位相シフト回路、26 周波数偏差検出器、28 硬さ換算器、50 動作中心周波数選択装置、52 CPU、54 入力部、56 出力部、58 記憶装置、60 ネットワークアナライザ、62 PG部、64 ANA部、70 ピーク検出部、72 絞込み部、74 自由端特性取得部、76 第1特性取得部、78 第2特性取得部、80 ピーク選択部、82 動作中心周波数設定部、100,106 位相曲線、102 硬さセンサの特性、104 (硬さセンサ+対象物)の特性、120 硬さ測定システム、122 第1回路ループ、124 第2回路ループ、130 硬さ測定コンピュータ、132 制御部、134 モニタ部、136 発振周波数設定部、138 補償位相差出力部、140 切替部、142 周波数偏差出力部、144 硬さ換算部、146 水晶発振器、150 PLD、152 発振周波数設定回路、154 26ビットフルアダー回路、156,164 正弦波発生器、158 位相差検出器、160 256分周カウンタ、162 8ビットフルアダー回路、166 周波数カウンタ、170,172 切り替え回路、180 変換回路、182 D/A変換器、184 ローパスフィルタ、186 バッファ回路、188 コンパレータ、190 PLL回路、192 位相検出器、194 電圧制御発振器、200 センサ増幅回路部、210 位相シフト回路。
以下に本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。ここで適用される硬さ測定システムは、位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定するシステムで、図8、図9で説明したような硬さ測定システムである。対象物は、振動を入射できその反射信号を検出できるものであればよい。例えば、生体の組織、例えば皮膚組織、開腹した部所の肝臓等の内臓組織であってもよく、またそれ以外の材料物質、例えば柔らかいゾル状の物や硬い固体であってもよい。
また、以下では、硬さ測定システムの動作中心周波数選択の対象となる硬さセンサとして、圧電素子を2つ積み重ね、一方を振動子とし、他方を振動検出センサとするものを説明するが、振動を対象物に入力でき、対象物からの応答信号を検出できるものであれば、それ以外の構成であってもよい。例えば、1つの圧電素子を用い、その両側の圧電面のうち片方の面を接地し、もう片方の面に設けられる電極パターンを外側リング電極と、中心側円電極とする構成の硬さセンサでもよい。この場合は、外側リング電極に入力される交流信号に応じ、圧電素子の外周部分が振動するので振動子として働き、圧電素子の中央部分が検出する振動に応じた交流信号が中心側円電極に現れて振動検出センサとして働く。また、振動子と振動検出センサとを別々に用意し、その集合を硬さセンサと呼ぶものとしてもよい。また、硬さセンサと対象物との間に適当な接触用ボールや、接触用突出棒等を設けてもよい。
図1は硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置50のブロック図である。硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置50(以後、特に断らない限り、動作中心周波数選択装置50とする)は、CPU52と、キーボード等の入力部54、ディスプレイやプロッタ等の出力部56、プログラムや特性データ等を記憶する記憶装置58と、硬さセンサ12の周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定して取得するネットワークアナライザ60を含み、これらは内部バスで相互に接続される。かかる動作中心周波数選択装置50は、ネットワークアナライザ機能を内蔵する専用コンピュータ等で構成することができる。また、一般的なコンピュータと、一般的なネットワークアナライザとを組み合わせて構成することもできる。
図1において、硬さセンサ12は、図示されていない対象物に振動を入射する振動子14と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサ16とを有する。硬さセンサ12は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の圧電素子を2つ積み重ね、一方を振動子14とし、他方を振動検出センサ16としたものである。動作中心周波数選択装置50の動作においては、硬さセンサ12は、予め用意された2種類のテストピース4,6に接触し、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性が測定される。
テストピースの一方は、柔らかい硬さの第1テストピース4で、例えばシリコンゴムのような弾性体を板材に貼り付けたものを用いることができる。テストピースの他方は、第1テストピースより硬い第2テストピース6で、例えば、木材や、硬質プラスチックを板材に貼り付けたものを用いることができる。第1テストピース4及び第2テストピース6は、硬さ測定システムの扱う対象物の硬さ範囲の上限と下限を代表する物質をそれぞれ貼り付けたものが望ましい。第1テストピース4及び第2テストピース6を硬さセンサ12に接触させるのは、搬送装置等を用いてCPU52の指示の下で自動的に行ってもよく、オペレータが動作中心周波数選択装置50と対話的に交信しつつ、手動で行ってもよい。簡易的には、オペレータの手の平や指先等を第1テストピース4とし、測定机の表面部等を第2テストピース6とし、オペレータが硬さセンサ12を手の平や測定机の表面部に接触させることでもよい。
ネットワークアナライザ60は、硬さセンサの周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する機能を有する測定器であって、周波数を変化させてパルス信号を掃引出力できるPG部62と、信号を受け取ってその周波数−振幅特性、周波数−位相特性を解析測定するANA部64とを含む。PG部62からの出力端子は硬さセンサ12の振動子14に接続され、ANA部64への入力端子は硬さセンサ12の振動検出センサ16に接続される。具体的には、ネットワークアナライザ60は、CPU52の指示を受けて、所定の周波数範囲でパルスを掃引して振動子14に供給し、振動検出センサ16から受け取った信号を解析してその周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定し、測定取得されたデータを、内部バスを介しCPU52に送る機能を有する。
CPU52は、ネットワークアナライザ60に指示を与え、ネットワークアナライザ60から送られてくるデータを処理し、硬さ測定システムの動作中心周波数を選択する機能を有する。具体的には、硬さセンサ12がテストピースに接触していない自由状態において周波数−振幅特性を受け取り、その複数のピークをそれぞれ検出するピーク検出部70と、各ピークについてその周波数及び位相を取得する自由端特性取得部74と、硬さセンサ12が第1テストピース4に接触したときの各ピークの周波数及び位相を取得する第1特性取得部76と、第2テストピース6に接触したときの各ピークの周波数及び位相を取得する第2特性取得部78と、これらに基づき硬さ測定に用いるピークを選択するピーク選択部80と、選択されたピークに基づいて硬さ測定システムの動作中心周波数を設定する動作中心周波数設定部82を含む。ピーク検出部70には、複数のピークのうち、ある範囲のピークに絞り込み、以後の処理をより容易にする絞込み部72を含む。これらの機能はソフトウエアによって実現することができ、具体的には対応する動作中心周波数選択プログラムを実行することで実現できる。また、各機能の一部をハードウエアで実現するように構成してもよい。
上記構成の動作中心周波数選択装置50の作用、特にCPU52の各機能について、動作中心周波数選択の手順を示す図2のフローチャートを用いて説明する。
動作中心周波数選択の手順を行うには、まず動作中心周波数選択の対象となる硬さセンサ12をネットワークアナライザ60に上記の接続法により接続する。ついで対応する動作中心周波数選択プログラムを起動する。そして、その指示に従いまず硬さセンサ12を自由端状態にセットする(S10)。具体的には、硬さセンサ12を何物にも接触させていない自由端状態とする。上記のように、搬送装置等を用いて自動的に硬さセンサ12をテストピースに対し離隔する方向に移動させてもよく、オペレータが動作中心周波数選択装置50と対話して、「自由端にセットして下さい」の指示に従い、硬さセンサ12をフリーの状態にするものとしてもよい。
そして、周波数−振幅特性、周波数−位相特性を取得する(S12)。具体的には、CPU52のピーク検出部70の機能の一部により、ネットワークアナライザ60に指示を与え、所定の周波数範囲のパルス信号を掃引しつつ振動子14に与え、振動検出センサ16からの信号を受け取り、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する。取得された周波数−振幅特性、周波数−位相特性は、一旦記憶装置58に記憶される。
図3に取得される周波数−振幅特性、周波数−位相特性の例を示す。図3は、周波数−振幅特性、周波数−位相特性をわかりやすいように1つの表示画面に表したときの様子を示すもので、横軸に周波数、縦軸に振幅及び位相をとり、周波数−振幅特性を実線で、周波数−位相特性を破線で示してある。掃引する周波数範囲は、例えば1kHzから10MHz等と広い範囲にすることができ、振幅もその周波数範囲における振幅範囲をカバーするように広くとり、位相も同様にその周波数範囲における振幅範囲をカバーするように広くとってある。
図3において、周波数−振幅特性に注目すると、この周波数範囲ではかなり多くのピークが存在する。同様に、周波数−位相特性に注目しても、この周波数範囲ではかなり多くのピークが存在することがわかる。この複数のピークの中で、硬さ測定に適するピークを1つ選択するのが動作中心周波数選択装置50の目的であり、機能である。この多数のピークのそれぞれを検出し、それらについて以後の処理を行ってもよい。まったくの最初のときは、周波数−振幅特性におけるすべてのピーク、及び周波数−位相特性におけるすべてのピークを検出し、それらについて以後の処理を行うのが望ましい。データや経験が積み重なってくると、対象とするピークを絞り込むことができる。
そこで、ピーク絞込みを行う(S14)。具体的には、CPU52のピーク検出部70に含まれる絞込み部72の機能により、予め定めてある絞込み基準に従って、多数のピークの中で、以後の処理に適するピークを絞り込む。
絞込み基準の1つは、周波数−振幅特性、周波数−位相特性のいずれかに絞るものである。いずれに絞り込んでもよい。例えば周波数−振幅特性に絞込み、その特性における各ピークを対象ピークとしてもよい。
また、絞込み基準の1つは、周波数範囲を所定の範囲に絞り、絞り込まれた周波数範囲の中のピークに絞り込むものである。例えば、ある形状、ある材質の硬さセンサを扱っているうちに、そのタイプの硬さセンサは、経験上、ある範囲の周波数近辺に硬さ測定に適するピークがあることがわかってくることがある。具体的に10mm直径で厚さ1mmの圧電素子を積層して構成する硬さセンサが数10kHz近辺に硬さ測定に適するピークがあることがわかっているとすれば、周波数範囲を10−100kHzの範囲に絞ることが可能である。
また、絞込み基準の1つは、ピークのQ値の範囲を制限するものである。ここでピークのQ値とは、ピークの鋭さを示す特性値で、例えばピークの半値幅等を用いることができる。ピークの半値幅が狭いときは、そのピークが代表する振動は安定したものであることが多く、テストピースに接触したときに、周波数や位相の変化が少なく、硬さ測定に十分な感度を得られないことがある。そこで、ピークの半値幅が所定の値以上あるピークに絞り込むことがよい。例えばQ値=半値幅/周波数として、Q値が1%以上のものに絞り込むものとすることができる。
また、絞込み基準の1つは、ピーク位置における位相の変化率の大きさを制限するものである。ピークの周波数において位相が急激に変化するピークを用いると、Δθ/Δfを大きくできるが、一方でその振動が不安定となり、硬さ測定値の精度がかえって低下することがある。そこで、ピークの周波数における位相の変化率が所定の値以下に絞り込むことがよい。例えば、そのピークの半値幅の間における位相の変化が、45度以下のものに絞ることができる。
また、絞込み基準の1つは、ピークが混み合って現れる範囲のピークを除外するものである。ピークが混み合っているところは、振動の多重モードが現れていることが多く、その振動が不安定等のため、硬さ測定に適さないことがある。そこで、ピークが混み合っていないところのピークに絞り込むことがよい。例えば、ピーク数/周波数幅が所定以下であるときのピークに絞り込む。あるいは、周波数−振幅特性、周波数−位相特性の画面上でオペレータがピークの混み合っている範囲を除外して対象範囲を特定してもよい。
これらの絞込み基準を用いる際に、硬さセンサに適当な材料を付加し、ピークのQ値や、ピーク位置における位相の変化率の大きさを適当な値に改善させて用いてもよい。例えば、測定がしやすい周波数のピークであるがQ値が鋭すぎるときは、粘性物質を硬さセンサの接触面側に付加し、適当なQ値及び適当な位相変化とすることができる。位相の変化率が大き過ぎるときも同様に適当な材料物質を付加して適当な位相変化率とすることができる。
これらの絞込み基準は、単独で用いてもよく、複数を適宜組み合わせてもよい。例えば、周波数範囲を10kHz−100kHzとし、周波数−振幅特性において、振幅特性のピークのQ値=半値幅/周波数が1%以上というように絞り込むことができる。
再び図2に戻り、絞り込まれた範囲について、ピーク検出を行う(S16)。具体的には、CPU52のピーク検出部70の機能の一部により、周知のピーク検出の手法により、絞り込まれた範囲のすべてのピークを検出する(S16)。周知のピーク検出の手法としては、最大値検出、微分係数の変曲点検出等を用いることができる。
そして、検出された各ピークについて、そのピーク位置の周波数と位相を取得する(S18)。取得された各ピーク位置の周波数と位相は自由端特性として記憶される(S20)。具体的には、自由端特性取得部74の機能により、ピーク検出されたピークをラベル付け等の識別キーを付し、S12の工程で記憶装置58に記憶された周波数−振幅特性、周波数−位相特性と照合し、各ピークについてそのピーク位置の周波数と位相を取得し、各ピークを区別する識別キーとともに記憶装置58に記憶される。自由端特性とは、各ピークのピーク位置の周波数と位相のデータの集合である。
こうして自由端特性特性が取得され記憶されると、次に硬さセンサ12を第1テストピース4に接触させる(S22)。接触は、S10で説明したと同様に、自動で行ってもよく、「第1テストピースに接触させて下さい」等の対話式でオペレータが手動で行ってもよい。手動のときに、簡易的にオペレータの手の平等に接触し、これを第1テストピース4と扱ってもよい。
そして、周波数−振幅特性、周波数−位相特性を取得する(S24)。具体的には、第1特性取得部76の機能の一部により、S12の工程で説明したと同様に、ネットワークアナライザ60に指示を与え、所定の周波数範囲のパルス信号を掃引しつつ振動子14に与え、振動検出センサ16からの信号を受け取り、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する。取得された周波数−振幅特性、周波数−位相特性は、一旦記憶装置58に記憶される。
ついで、S16で検出された各ピークにつき、そのピーク位置の周波数と位相を取得する(S26)。取得された各ピーク位置の周波数と位相は第1特性特性として記憶される(S28)。具体的には、第1特性取得部76の機能の一部により、すでにラベル付け等の識別キーが付されている各ピークについて、S24の工程で記憶装置58に記憶された周波数−振幅特性、周波数−位相特性と照合し、それらのピーク位置の周波数と位相を取得し、各ピークを区別する識別キーとともに記憶装置58に記憶される。第1特性とは、各ピークのピーク位置の周波数と位相のデータの集合である。
こうして第1特性特性が取得され記憶されると、次に硬さセンサ12を第2テストピース6に接触させる(S30)。接触は、S10、S22で説明したと同様に、自動で行ってもよく、「第2テストピースに接触させて下さい」等の対話式でオペレータが手動で行ってもよい。手動のときに、簡易的に測定机の表面部に接触し、これを第2テストピース6と扱ってもよい。
そして、周波数−振幅特性、周波数−位相特性を取得する(S32)。具体的には、第2特性取得部78の機能の一部により、S12、S24の工程で説明したと同様に、ネットワークアナライザ60に指示を与え、所定の周波数範囲のパルス信号を掃引しつつ振動子14に与え、振動検出センサ16からの信号を受け取り、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する。取得された周波数−振幅特性、周波数−位相特性は、一旦記憶装置58に記憶される。
ついで、S16で検出された各ピークにつき、そのピーク位置の周波数と位相を取得する(S34)。取得された各ピーク位置の周波数と位相は第2特性特性として記憶される(S36)。具体的には、第2特性取得部78の機能の一部により、すでにラベル付け等の識別キーが付されている各ピークについて、S32の工程で記憶装置58に記憶された周波数−振幅特性、周波数−位相特性と照合し、それらのピーク位置の周波数と位相を取得し、各ピークを区別する識別キーとともに記憶装置58に記憶される。第2特性とは、各ピークのピーク位置の周波数と位相のデータの集合である。
こうして自由端特性、第1特性、第2特性が取得され記憶されると、これらに基づき、硬さ測定に適するピーク選択が行われる(S38)。具体的には、ピーク選択部80の機能により、自由端特性、第1特性、第2特性の各ピークのデータを所定の基準の選択処理を行い、硬さ測定に適する1つのピークが選択される。
図4に、ピーク選択の内容を説明するため、あるピークについての自由端特性、第1特性、第2特性を並べて示す。図4では、(b)に自由端状態における周波数−振幅特性、周波数−位相特性を拡大して示し、その左側の(a)に第1テストピース4に接触したときの周波数−振幅特性、周波数−位相特性を示し、(b)の右側の(c)に第2テストピース6に接触したときの周波数−振幅特性、周波数−位相特性を示してある。いずれも横軸に周波数、縦軸に振幅と位相を取り、周波数−振幅特性を実線で、周波数−位相特性を破線で示してある。
図4の例では、自由端状態におけるピーク位置における周波数f0、位相θ0が、第1テストピース4に接触すると、周波数が低周波側にシフトしてfsとなり、位相も小さな値のθsとなるのに対し、第2テストピース6に接触すると、周波数が高周波側にシフトしてfhとなり、位相は大きな値のθhとなっている。ここで、周波数の変化と位相の変化に注目すると、自由端状態から第1テストピース4に接触すると、周波数も位相も減少するのに対し、自由端状態から第2テストピース6に接触すると、周波数も位相も増加する。
図5は、周波数の変化と位相の変化のタイプを分類し、タイプ1からタイプ4として並べたものである。なお、一般的な振動体では、周波数の変化と振幅の変化は逆方向になることが多いので、このような場合には、周波数の変化と位相の変化のタイプに代えて、振幅と位相の変化のタイプに分類してもよい。このように、現れる可能性のある組み合わせは4つあり、各ピークは、これら4つのタイプにいずれかに分類されるが、どのようなメカニズムで特定のピークが特定のタイプに属するかは、現在のところまだ解明されていない。したがって、硬さセンサが硬さ測定に適するかどうかを判断するときは、硬さセンサをテストピースに接触させ、そのときの位相の変化に着目するだけでなく、周波数の変化、振幅の変化を合わせて検討することが望ましい。以下では、周波数変化と、位相変化の2つに着目する場合について説明する。
周波数変化と、位相変化とに着目すると、ピーク選択の基準はこの4つのタイプを用いて定めることができる。通常は、図6に示すような特性を有するピークを選択する基準として用いることができる。すなわち、自由端状態から柔らかい第1テストピース4に接触したときの変化がタイプ4で、自由端状態から硬い第2テストピース6に接触したときの変化がタイプ1であるピークを、硬さ測定に適するピークとして選択する基準である。図6の選択基準を満たすピークは、柔らかいものに接触すると、周波数も位相も低下し、硬いものに接触すると周波数も位相も上昇するという特性をもつものである。このように、変化の方向が逆方向であるので、位相差の変化を拡大して捉えることができる。
また、このようなピークを有する振動系は、単自由度系の振動と同じような傾向を有するものである。したがって、このようなピークを用いて、対象物の硬さを測定することは、単自由度系振動のモデルに合わせることになり、通常の物理現象に近い測定を行っていることにもなる。ちなみに、図4の例は、図6の選択基準に合うピークであるので、そのまま、硬さ測定に適するピークとして選択することができる。
また、別のピーク選択の基準は、図6のタイプの中で、その位相差の変化がより大きなピークを選択するというものである。この基準によれば、硬さ検出の感度をさらに向上させることができる。
また、別のピーク選択の基準として、自由端状態から柔らかい第1テストピース4に接触したときの変化がタイプ2で、自由端状態から硬い第2テストピース6に接触したときの変化がタイプ3であるピークを、硬さ測定に適するピークとして選択するものとしてもよい。あるいは、自由端状態から柔らかい第1テストピース4に接触したときの変化がタイプ3で、自由端状態から硬い第2テストピース6に接触したときの変化がタイプ2であるピークを、硬さ測定に適するピークとして選択するものとしてもよい。この場合には、単自由度振動のモデルとは異なるが、やはり変化の方向が逆方向であるので、位相差の変化を拡大して捉えることができる。
また、別のピーク選択の基準として、他の基準、例えば感度がより良好であるとか、発振の安定性がより良好である等の理由の選択基準で選択し、図5のタイプ分類にはこだわらないことも可能である。
これらピーク選択の基準は、相互にその内容が矛盾しない限り、複数の選択基準を組み合わせてもよい。例えば、図6の選択基準でもなお複数のピークが選択されるときは、その位相差の最大のものを1つ選択するというようにできる。このように、予め定めたピーク選択の基準に各ピークの特性変化を当てはめ、ピーク選択の基準に合うピークを1つ選択することでピーク選択が行われる。
硬さ測定に適するものとしてピークが1つ選択されると、動作中心周波数設定部82の機能により、動作中心周波数の設定が行われる(S40)。まず選択された1つのピークの自由端状態における周波数が、その硬さセンサの動作中心周波数f1とされる。そして、位相シフト回路24の動作中心周波数ffは、図7に示すように、f1と所定の周波数幅ΔWだけ隔てるものとして設定される。所定の周波数幅ΔWは、位相シフト回路24のQ値、すなわち周波数−振幅特性のピークの鋭さに応じて設定することができる。すなわち、位相シフト回路24のQ値が大きくて、ピークが鋭く、Δθ/Δfの変化が大きいときは、ΔWを大きく設定してもよく、逆にピークがなだらかで、Δθ/Δfの変化が小さいときは、ΔWを小さくし、ff近傍のΔθ/Δfが大きいところで位相差補償を行うようにすることがよい。
上記において、動作中心周波数選択の各手順は、コンピュータを含む動作中心周波数選択装置50において、動作中心周波数選択プログラムを実行することで行われるものとして説明した。この他に、コンピュータを用いず、ネットワークアナライザの機能を中心として、ハードウエアで構成する専用機で上記手順を実行するものとしてもよい。また、一般的なネットワークアナライザ等の解析装置をオペレータが操作し、図2の各工程を順次手動で行うことでも動作中心周波数選択を行うこともできる。
次に、上記のようにして硬さ測定に用いられるピークが選定されたあとの処理について、好適な硬さ測定システムについて説明する。硬さ測定システムとしては図8に関連して説明したように、対象物8に振動を入射する振動子14と対象物8から反射される信号を検出する振動検出センサ16とを有する硬さセンサ12を用い、硬さセンサ12と増幅器22と位相シフト回路24とを直列に接続する回路ループを用いることができる。この回路ループはクローズドループ(閉ループ)であるので、硬さセンサ12、増幅器22、位相シフト回路24の特性に応じた自励発振を起こすことが可能である。その場合に、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で、正確にはその近傍で自励発振を生ずるように回路ループの特性、特に位相シフト回路24の特性を設定する必要がある。以下で説明する硬さ測定システムは、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で自励発振を生ずる設定を容易にすることを目的とするものである。
位相シフト回路としては、図9に示すような周波数ffにおいて振幅ピークを有する基準伝達特性曲線を有するものを用いることができる。ここで位相シフト回路の動作中心周波数ffは、図7に関連して説明したように、硬さセンサ12の動作中心周波数f1、すなわち硬さの測定に用いられる選定周波数に基づいて設定される。このような基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路は、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の回路素子を組み合わせ、それらの定数を適切に設定することで得ることができる。図10は、このような基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路を用いた場合の硬さ測定の様子を説明する図である。
図10において、縦軸は位相、横軸は周波数で、図9における位相シフト回路の基準伝達特性曲線の位相曲線100が示される。また、硬さセンサ12を対象物8に接触しないときの硬さセンサ12の周波数−位相特性を実線102で、硬さセンサ12を対象物8に接触させたときの(硬さセンサ12+対象物8)の周波数−位相特性を破線104で示してある。そして、上記のように、所定の基準に従って硬さ測定のためのピークが選定され、そのピークの近傍で実際に硬さ測定に用いる選定周波数fs、選定位相差θsが指定されると、実線102の選定周波数fs、選定位相差θsの位置を通るように位相シフト回路の特性が設定される。このようにして位相シフト回路の特性が設定されることで、硬さセンサ−増幅器−位相シフト回路の閉ループは、選定周波数fs、選定位相差θsの条件で自励発振を行うことができる。この状態で、硬さセンサ12が対象物8に接触すると、閉ループの発振状態が変化し、図10に示すように位相シフト回路の位相曲線100と破線104の交点に移動する。すなわち、硬さに応じた位相差Δθ、周波数偏差Δfが生ずる。この変化は対象物8の硬さに依存するので、検出された周波数偏差Δfから対象物の硬さを求めることができる。
このように、図9で説明した基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路を用いて、対象物の硬さを求めることができるが、硬さ測定に用いる選定周波数fs、選定位相差θsが選定されても、その点をちょうど通るように位相シフト回路を設定するには、多くの回路素子の定数を様々に変更しながら正確に行うことを要する。この定数設定を正確に行わないと、閉ループの自励発振がせっかく選定した選定周波数fs、選定位相差θsの下で生じず、硬さ測定の精度が低下する。
以下に説明する硬さ測定システムは、予め選定した選定周波数fs、選定位相差θsの下で閉ループの自励発振を維持することを容易にするものであるが、最初にその原理を説明する。この新しい硬さ測定システムは、位相シフト回路の特性が、図9に説明したものと異なる。図11は、その新しい位相シフト回路の位相曲線106の様子を示す図である。すなわち、この位相シフト回路は、閉ループにおいて、選定位相差θsを常に維持する特性を有し、硬さセンサ12が対象物8に接触しないときの硬さセンサ12の特性である実線102、接触するときの(硬さセンサ12+対象物8)の特性である破線104との交点における周波数の変化である周波数偏差Δfでもって、対象物8の硬さを検出する。図11の作用の位相シフト回路は、硬さセンサの入力側と出力側との間の位相差を選定位相差θsに常に維持するようにする構成が必要であるが、このような機能を有する構成は、図9に示す基準伝達特性曲線を望ましい特性に設定するのに比較して、以下に詳述するように、回路技術によって容易に実現することができる。
そしてこのような位相シフト回路を用いることで、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で自励発振を行わせ、その下で硬さ測定を行うことが容易に実現できる。すなわち、オープンループで(硬さセンサ+増幅器)に外部から信号を入力し、その信号を硬さ測定用の選定周波数fsに選んでそのまま動作させると、(硬さセンサ+増幅器)の入力側と出力側に位相差が出るがこれが選定位相差θsに相当する。この状態で動作を継続させ、ついで、これに位相シフト回路を接続してループを閉じてクローズドループにする。オープンループからクローズドループへの切り替えは、電子スイッチで行えば、オープンループが有する振動持続力によって、その振動が減衰する前にクローズドループに切り替えられ、選定周波数fs、選定位相差θsの振動状態がそのままクローズドループに持続される。その際に、位相シフト回路を、(硬さセンサ+増幅器)の出力側の信号について選定位相差分を補償する信号を生成する回路構成とし、その生成した信号を(硬さセンサ+増幅器)の入力側に供給するようにループを閉じる。このようにすることで、硬さセンサの入力側と出力側との間の位相差を選定位相差θsに常に維持するようにして自励振動を持続させることができる。
以下に、かかる新しい位相シフト回路を用い、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で自励発振を生ずる設定を容易にする硬さ測定システムの詳細を説明する。図12は、かかる硬さ測定システム120の構成を示すブロック図である。この硬さ測定システム120は、システム全体の動作を制御する硬さ測定コンピュータ130と、水晶発振器146と、デジタル回路を集積化したPLA(Programable Logic Array)150と、PLA(150)からのデータを正弦波波形に変換する変換回路180と、硬さセンサ12と増幅器22とを直列接続され変換回路180からの正弦波波形が入力されるセンサ増幅回路部200と、センサ増幅回路部200の出力信号をデジタル化するコンパレータ188と、PLL(Phased Lock Loop)回路190を含んで構成される。
ここでPLA150は、オープンループの回路ループのデジタル回路部分C1と、クローズドループの回路部分C2と、オープンループの回路ループとクローズドループの回路ループとの切り替えを行う切り替え回路170,172を含む。
PLA(150)のデジタル回路部分C1は、水晶発振器146からの源振からデジタル処理により所定の周波数の信号を合成するための周波数設定回路152、26ビットフルアダー回路154、正弦波発生器156を含み、さらに、硬さ測定に用いるために選定された選定周波数fsの下でのセンサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差である選定位相差θsを検出する位相差検出器158を含む。周波数設定回路152の設定は、硬さ測定コンピュータ130の制御の下で行われ、位相差検出器158で検出された選定位相差θsのデータは硬さ測定コンピュータ130に記憶される。
PLA(150)のデジタル回路部分C2は、PLL回路190に接続される256分周カウンタ160と、256分周カウンタ160のデータと選定位相差θsを補償するデータを加算する8ビットフルアダー回路162と、それに基づいて正弦波データを生成する正弦波発生器164を含む。また、クローズドループの回路ループにおける周波数を計測する周波数カウンタ166を含む。周波数カウンタ166のデータは、硬さセンサ12が対象部8に接触していないときのデータと、接触したときのデータとがそれぞれ硬さ測定コンピュータ130にとりこまれ、その周波数偏差から硬さが変換される。
硬さ測定コンピュータ130は、制御部132と、モニタ部134を備える。制御部132は、CPUとメモリとを含み、デジタル回路部分C1の周波数設定回路152に対する周波数設定を行う発振周波数設定部136、デジタル回路部分C1で検出された選定位相差θsをとりこんで記憶し、デジタル回路部分C2の8ビットフルアダー回路160に出力する補償位相差出力部138、切り替え回路170,172を切り替える切替部140、周波数偏差を求める周波数偏差出力部142、予め定められた換算方式に従って周波数偏差を硬さに変換する硬さ換算部144を含む。
かかる硬さ測定システム120は、硬さ測定コンピュータ130の制御部132における切替部140の機能により切り替え回路170,172を動作させ、オープンループの回路ループ又はクローズドループの回路ループに切り替えて用いられる。以下では、オープンループの回路ループを第1回路ループ、クローズドループの回路ループを第2回路ループと呼ぶことにして、それらの構成を順次説明する。
図13は、第1回路ループ122に関する構成を示すブロック図である。第1回路ループ122は、制御部132の切替部140からの信号Aにより、切り替え回路170,172が図13において紙面の上方側に接続を切り替えることで構成が行われる。第1回路ループ122は、硬さ測定に用いられるピークを選定し、選定された選定周波数をセンサ増幅回路部200に入力し、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差を選定位相差θsとして記憶する機能を実行するために用いられるものである。
かかる第1回路ループ122は、水晶発振器146−発振周波数設定回路152−26ビットフルアダー回路154−正弦波発生器156−(切り替え回路170)−D/A変換回路182−ローパスフィルタ184−バッファ回路186−振動子14−(開放空間)−振動検出センサ16−増幅器22−コンパレータ188−(切り替え回路172)からなるオープンループで構成される。
第1回路ループ122において、水晶発振器146−発振周波数設定回路152−26ビットフルアダー回路154−正弦波発生器156の部分は、水晶発振器146の原振動を用いて、発振周波数設定回路152で設定される周波数の信号を合成し、26ビットの分解能の正弦波データとして出力する機能を有する。かかる機能は、DDS(Direct Digital Synthesizer)と呼ばれる周知のデジタル回路技術によって構成することができる。例えば、制御部132の発振周波数設定部136において、100kHzと設定されると、発振周波数設定回路152において源振動から100kHzの正弦波信号を生成する処理がなされ、100kHzの一周期である10μsecの期間を26ビットで区分し、それぞれに対し、正弦波の波高値のデータが出力される。このようにして、設定された周波数の正弦波信号のデジタルデータは切り替え回路170を介し、変換回路180に出力される。
切り替え回路170は、変換回路180へのデータ出力を、デジタル回路部分C1の正弦波発生回路156からのものとするか、デジタル回路部分C2の正弦波発生回路164からのものにするか、制御部132における切替部140の制御の下で切り替える機能を有する回路である。かかる切り替え回路170は、正弦波発生回路156,164のデータをラッチするラッチ回路と、複数ビットのデータ線の接続を切り替えるマルチプレクサ回路等で構成できる。
変換回路180は、出力された正弦波のデジタルデータをアナログ信号波形に変換し、ノイズを除去してセンサ増幅回路部200に供給する機能を有し、具体的には上記のようにD/A変換器182、ローパスフィルタ184、バッファ回路186で構成される。
センサ増幅回路部200は、上記のように硬さセンサ12と増幅器22を直列に接続したもので、それぞれの構成は、図8で説明したものと同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
オープンループの基本構成は以上であるが、センサ増幅回路部200の入力端と出力端の位相差を検出するために、増幅器22の出力をコンパレータ188でデジタルデータ化し、切り替え回路172を介し、デジタル回路部分C1の位相差検出器158の一方側信号として入力される。位相差検出器158の他方側信号としては、26ビットフルアダー回路154のデータが入力される。この2つの信号の比較からセンサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差が検出される。かかる位相差検出器158は、パルスの進み遅れを検出する周知のデジタル回路等を用いて構成することができる。なお、切り替え回路172の内容は上記の切り替え回路170と同様である。
第1回路ループ122において、硬さ測定に用いるピークを選定するには、制御部132の発振周波数設定部136において、任意の周波数掃引範囲を設定する。例えば、硬さ測定コンピュータ130の図示されていないキーボード等の入力部から、操作者が任意の周波数掃引範囲として、40kHzから170kHzを入力し、そのデータを制御部132が取得して発振周波数設定部136において、掃引モードとして設定する。このように掃引モードで40kHzから170kHzの範囲設定が行われると、PLA(150)のデジタル回路部分C1の発振周波数設定回路152では、予め定められた刻み周期と周波数刻みに従い、逐時的に40kHzから170kHzの正弦波の生成処理を行う。刻み周期を10msec、周波数刻みを50Hzとすれば、40.00kHzの正弦波生成を行った後、10msec後に40.05kHzの正弦波生成を行い、これを10msecごとに50Hzずつ周波数を上げて、170kHzまで行う。170kHzまでくれば再び40kHzに戻り、これを繰り返す。したがって、センサ増幅回路部200には、40kHzから170kHzの正弦波信号が繰り返し掃引されて入力される。
そして、位相差検出器158は、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差が検出されるので、その位相差と、センサ増幅回路部200に入力される周波数とを、モニタ134に出力すれば、操作者は、センサ増幅回路部200の周波数に対する位相特性を観察することができる。また、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の信号振幅ゲインを取得し、これもモニタ134に出力すれば、図3に関連して説明した周波数に対する振幅特性及び位相特性を観察することができる。この特性をモニタ134で観察し、例えば、テストピースを硬さセンサ12に接触させ、そのときのピークの変化から、既に説明してきた絞込み基準を用いて絞り込み、それを硬さ測定に用いる選定ピークとし、その近傍の周波数、位相差をそれぞれ選定周波数fs、選定位相差θsとすることができる。
一例として、選定周波数fsについて100kHz、選定位相差θsについて入力側を基準として−25°、つまり入力側に対し出力側の位相が遅れているものが選定されたものとすることができる。このようにして、選定周波数fs、選定位相差θsが定まると、センサ増幅回路部200に入力する信号を選定周波数fs、上記の例で100kHzに固定してそのまま入力を続ける。このとき、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差は、選定位相差θs、すなわち上記の例で−25°となり、選定周波数fs=100kHzの信号が入力されつづける間、その位相差は維持される。そして、選定位相差θs、すなわち上記の例で−25°のデータは、デジタルデータに換算され、制御部132の選定位相差出力部138に記憶される。例えば、360°を8ビット表示するものとして、−25°は、−00001010として記憶される。そして、このデータを用いて次の第2回路ループ124において、その位相差を補償するデータとして選定位相差θsの符号を反転し、−θsのデータを補償位相差として出力する。上記の例では−00001010を補償位相差として出力する。
次に、図14は、第2回路ループ124に関する構成を示すブロック図である。第2回路ループ124は、制御部132の切替部140からの信号Aにより、切り替え回路170,172が図14において紙面の下方側に接続を切り替えることで構成が行われる。ここで、切り替え回路170,172は上記のように、マルチプレクサ回路によって電子的に切り替えられ、例えば数十nsec程度の時間で第1回路ループの構成から第2回路ループの構成に切り替えることができる。この程度の時間では第1回路ループの動作、つまり選定周波数fsで振動子12が振動する動作はあまり減衰しない。したがって、切り替えの後でも、第2回路ループ124には、選定周波数fsの振動がそのまま引き継がれる。第2回路ループ124は、このように切り替え後に引き継がれた振動状態、すなわちセンサ増幅回路部200に選定周波数fsの信号が入力され、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間に選定位相差θsが生じている状態のまま、自励発振を維持させる機能を実行するために用いられるものである。
かかる第2回路ループ124は、振動子14−(開放空間)−振動検出センサ16−増幅器22−コンパレータ188−位相検出器192−電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)194−256分周カウンタ160−8ビットフルアダー回路162−正弦波発生器164−(切り替え回路170)−D/A変換回路182−ローパスフィルタ184−バッファ回路186−振動子14のクローズドループで構成される。ここで、位相検出器192から正弦波発生器164までが、位相シフト回路としての機能を有する部分に相当する。
第2回路ループ124において、位相検出器192−電圧制御発振器194−256分周器160の部分は、いわゆるPLL動作を行う回路部分であり、位相検出器192の一方側の入力信号にはセンサ増幅回路部200の出力が用いられ、他方側の入力信号には256分周カウンタ160の出力が用いられる。この構成において、位相検出器192により2つの信号の位相のずれに対応する電圧を出力し、その出力の大きさに応じた周波数の信号を電圧制御発振器194が出力し、その出力を今の場合256分周カウンタ160によって1/256に分周して再び位相検出器192に戻す。したがって、このフィードバック動作により、この回路部分の全体の動作としては、位相検出器192における2信号の位相差をなくすように働き、いわゆる位相差をゼロとする周波数の信号にロックされるPLL動作が行われる。
例えば、上記の例で選定周波数fs=100kHzとすれば、は256分周カウンタ160においては、(1/256)分周された信号が100kHzとなるようにロックされるので、25.6MHzのパルスが256分周カウンタ160に入力される。したがって、256分周カウンタ160のデータは、フルスケールでfs=100kHzの信号を表すことになり、換言すれば、選定周波数fs=100kHzの一周期が8ビットのデータとして時々刻々表されていることになる。
8ビットフルアダー回路162は、256分周カウンタ160の時々刻々のデータに、選定位相差出力部138から出力される選定位相差θsを補償するデータを加算する機能を有する回路である。例えば、ある時刻における256分周カウンタ160のデータが01000000とすると、上記の例で選定位相差θsのデータは−00001010であり、これを補償するデータは+00001010であるので、同じ8ビット同士のフル桁加算ができ、その結果は01001010となる。ここで、加算する前のデータと比較すると、加算後のデータは、加算前に比べ、位相が進んでいることになる。
正弦波発生器164は、上記の正弦波発生器156と同様の機能を有し、8ビットフルアダー回路162の出力に従って位相を進めた状態で正弦波の波高値のデータが出力される。この選定位相差θsが補償された正弦波信号のデジタルデータは、切り替え回路170、変換回路180を介し、センサ増幅回路部200に入力される。したがって、センサ増幅回路部200においては、入力端と出力端との間の位相差は選定位相差θsのままであるが、第2回路ループ124全体としては、この選定位相差θsを、上記の位相検出器192から正弦波発生器164までの位相シフト回路としての機能により補償するので、自励発振を持続させることができる。
かかる構成の硬さ測定システム120を用いて対象物8の硬さを測定する手順を図15のフローチャートを用いて説明する。かかる手順は、硬さ測定コンピュータ130の制御部132の発振周波数設定部136、補償位相差出力部138、切替部140、周波数偏差出力部142、硬さ換算部144の機能によって実現される。これらの機能はソフトウエアによって実現することができ、具体的には対応する硬さ測定プログラムを実行することで実現できる。また、各機能の一部をハードウエアで実現するように構成してもよい。
まず、システムを立ち上げ、硬さ測定プログラムを始動させる。このとき、切替部140は、第1回路ループ122を選択するように切り替え回路170,172に指令を与える。そして、硬さ測定に使用しようとする硬さセンサ12および増幅器22をセットする(S110)。セットは、図12で説明したように、変換回路180とコンパレータ188の間に硬さセンサ12および増幅器22を直列に接続して行われる。硬さ測定システム120としては、このように硬さセンサ12および増幅器22を直列接続したセンサ増幅回路部200と一組としてこれを交換可能として扱ってもよく、増幅器22は固定として、硬さセンサ12のみで交換可能としてもよい。
つぎに、掃引周波数範囲を入力し、その値を取得する(S112)。具体的には制御部132の発振周波数設定部136の機能により、上記のように操作者のキーボード等からの入力を取得し、それを発振周波数の設定値とする。上記の例では、40kHzから120kHzが掃引周波数範囲として取得される。この掃引周波数範囲は、硬さセンサ12が与えられれば、経験あるいは事前の実験等で適当に定めることができる。
ついで取得された掃引周波数範囲で、センサ増幅回路部200への入力信号をくりかえし掃引する(S114)。具体的には、水晶発信器146から正弦波発生器156等の機能による。そして上記のように、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差を位相差検出器158で検出し、モニタ部134に周波数に対する振幅特性及び位相特性させる。操作者は、この画面を見ながら、予め定められた基準に従って、硬さ測定に用いるピークを絞り込んで選定する(S116)。この手順は、図2で説明した内容で行うことができる。この処理においては、操作者が硬さ測定用コンピュータ130と対話型で処理することができるので、図15ではこの手順を破線で示した。もちろん、テストピースへの接触や、予め定めた絞込み基準との比較を自動化してもよい。
硬さ測定用のピークが選定されると、その選定位相差θsのデータは補償位相差出力部138に入力され、記憶される(S118)。上記の例では、−00001010のデータが記憶される。また、掃引周波数が選定周波数fsに固定され、その状態でセンサ増幅回路部200に入力が続けられ、振動子14はその周波数で振動動作を続ける(S120)。この動作において、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差は選定位相差θsのままである。
その様子を図16に示す。この図は、硬さセンサ12と増幅器22とで構成されるセンサ増幅回路部200を取り出して示すもので、硬さセンサ12の入力側である振動子14に選定周波数fsの信号が入力される。そして、硬さセンサ12の出力側である振動検出センサ16に直列に接続された増幅器22を介し、センサ増幅回路部200の出力端に現れる信号は、振動子14への入力信号を基準として、選定位相差−θsだけ位相がずれる。この位相ずれは、主に硬さセンサ12の特性によるものである。そして、この選定周波数fs、選定位相差θsは、この条件の下で、対象物の硬さを測定するのがこの硬さセンサの場合には好適であるとして選定されたものであり、硬さ測定システムの動作中心条件に相当するものである。
つぎに、切替部140の指令により、位相シフト回路を含むクローズドループに切り替えられる(S122)。すなわち、第1回路ループ122の構成から、第2回路ループ124の構成に切り替えが行われる。この切り替えは、上記のように、第1回路ループの振動の減衰に比べ短時間で行うことができる。そして、補償位相差出力部138の機能により、選定位相差θsを補償する補償位相差データが出力される(S124)。上記の例では、上記の例では、+00001010のデータが8ビットフルアダー回路172に出力される。S122とS124の手順の順序は、逆にしてもよい。
これにより、切り替えによって第1回路ループ122の動作していた条件、すなわち、選定周波数fsで振動子14が振動し、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差が選定位相差θsである動作状態でループが閉じられ、その際に、8ビットフルアダー回路172及び正弦波発生器164の作用によって、センサ増幅回路200の出力端を基準にして選定位相差θsを補償する位相を有する正弦波信号が生成され、これがセンサ増幅回路200の入力端に供給される。上記の例では、選定位相差−θsに対し、+θsの位相を有する正弦波が生成されてセンサ増幅回路200の入力端に供給され、クローズドループの第2回路ループ124全体としてはセンサ増幅回路200に生じた位相差を補償する。したがって、第2回路ループ124は自励発振を持続することができる(S126)。
その様子を図17に示す。ここでは、PLL回路190から正弦波発生器164を含む選定位相差θsを補償する機能を有する回路部分を位相シフト回路210として概括的に示してある。上記のように位相シフト回路210は、選定位相差−θsに対し、+θsの位相を有する正弦波を生成して振動子14に供給する機能を有するので、センサ増幅回路部200に位相シフト回路210を接続してループを閉じれば、全体として位相差が補償され、自励発振が持続する。
このようにして、硬さ測定に用いる振動条件の下においてクローズドループ内で自励発振が持続するようにできると、この状態で硬さセンサ12に対象物8を接触させる(S128)。そうすると、図11の関連で説明したように、対象物8の硬さ特性に応じ、(硬さセンサ12+対象物8)の周波数−位相特性が変化し、その硬さに応じた位相変化Δθを補償するように、周波数を変化させる。その周波数変化は高精度の周波数カウンタ166を介し検出されて周波数偏差出力部142の機能により出力される(S130)。そして、硬さ換算部144の機能により、予め定められた換算方式に従って、周波数偏差が硬さに変換される(S132)。
その様子を図18に示す。ここでは、図17の状態において、さらに対象物8に硬さセンサ12が接触されている。そして、硬さによる位相差Δθが、位相シフト回路210の機能により周波数をΔf変化させることで補償されるので、クローズドループの自励発振周波数がΔf変化する。このΔfが対象物8の硬さに応じた周波数偏差に相当する。
このように、硬さセンサの両端の位相差について周波数を変化させることで維持するような位相シフト回路を用いることで、オープンループにおいて硬さ測定に用いる周波数、位相差を選定し、その振動状態から短時間で位相シフト回路を含んでループを閉じてその振動状態で自励振動を持続させることができる。したがって、硬さ測定に用いるのに適した振動条件で、対象物の硬さを測定することができる。

本発明は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサを用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムの動作中心周波数選択に係り、特に硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法及び硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置に関する。
生体の組織物質等の硬さを測定する方法として、プローブを被測定物質に押し当てつつ振動を与えて、その入力振動に対する生体組織物質の機械振動応答をセンサで検出して周波数、位相の変化等から硬さに対応する特性値を得る方法がある。特に、本願の発明者は、特許文献1に開示されるように、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路とを用い、対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムを考案している。
位相シフト回路を用いる硬さ測定システムの例を図8に示す。図8において、硬さ測定システム10は、対象物8である生体組織等に押し当てられる硬さセンサ12と、硬さ検出部20とを含んで構成される。硬さセンサ12は、対象物8に振動を入射する振動子14と対象物8から反射される信号を検出する振動検出センサ16とを有する。このような硬さセンサ12としては、圧電素子を2つ積み重ね、一方を振動子14とし、他方を振動検出センサ16とするものを用いることができる。硬さ検出部20は、振動検出センサ16からの出力端子と、振動子14への入力端子との間に、適当な直流カット容量、増幅器22及び位相シフト回路24を直列に接続し、位相シフト回路24によって位相差を補償するために生ずる周波数偏差を検出する周波数偏差検出器26と、検出された周波数偏差を硬さに換算して出力する硬さ換算器28を含む。周波数偏差検出器26は一般的な周波数測定器を用いることができ、硬さ換算器28は、予め較正されたルックアップテーブルを用いて換算を行い、あるいは予め与えられる換算式に従い換算演算を行うマイクロコンピュータ等を用いることができる。
位相シフト回路24は、上記のように、振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループ内に直列接続により設けられて、振動子14への入力波形と振動検出センサ16からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする機能を有する回路である。位相シフト回路24の周波数に対する振幅及び位相の特性を示す基準伝達特性曲線は、図9に示すように、動作中心数周波数ffをおいて振幅が最大となり、位相が反転するものが好ましい。このような特性の回路は、動作中心数周波数ffを共振周波数として、そこで振幅ゲインが最大となるバンドパスフィルタを設計することで得ることができる。具体的に電子部品を配置してハードウエアで構成することも、またソフトウエアによりディジタルフィルタ特性を実現することでもよい。
位相シフト回路24の機能を説明するには、位相シフト回路を含まない振動系ループと比較することがよい。すなわち、振動検出センサ−直流カット容量−増幅器−振動子−対象物−振動検出センサのループは、いわゆる自励発振回路を構成する。対象物8に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触していないときにも、振動子14と振動検出センサ16の間の空間を対象物とする形で自励発振回路が構成され、ある共振周波数において系全体が発振し安定する。つぎに、対象物に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触すると、対象物の機械的な振動系の影響により、系全体の発振状態が変化する。すなわち、対象物の振動系の内容である硬さを表すバネ定数の大きさにより、位相差が生じ、また周波数の変化が生ずる。ここで周波数変化を検出し、対象物の硬さを測定しようとする試みは、すでに数多くの先行技術が知られている。しかし、通常の共振周波数の変化は極めて少なく、その精度よい検出は困難を伴うことが多く、また、位相差の検出はよい測定手段が少ない。位相シフト回路24は、図9に説明したような周波数に対する振幅及び位相の特性を示す基準伝達特性曲線を用い、位相の変化を周波数の変化に換算し、測定しにくい位相差の検出を測定しやすい周波数の測定に変換しようとするものである。
そこで、位相シフト回路24が、振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループ内に直列接続により設けられるときの作用について説明する。このように機械的な振動系で構成される対象物と、電気的な発振回路とを含む自励発振ループの中に位相シフト回路24が接続されるときは、全体の系がいわゆる速度共振によって自励発振が持続するように動作する。速度共振とは、共振周波数において振幅最大で位相がゼロとなるものである。すなわち、対象物8に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触していないときには、振動子14と振動検出センサ16の間の空間を対象物とする形で、振動子14への入力波形と振動検出センサ16からの出力波形との位相差がゼロとなる周波数で、発振が安定するように位相シフト回路24の動作点が定まる。この状態を、図9において、周波数f1、位相θ1で示すとする。
つぎに、対象物8に硬さセンサ12(=振動子14+振動検出センサ16)が接触すると、対象物8の機械的な振動系、すなわち硬さを表すバネ定数の大きさにより、振動子14への入力波形と振動検出センサ16からの出力波形に位相差が生ずる。いま、対象物8の硬さによって、位相差がΔθだけ生ずるものとすると、速度共振による自励発振を持続するように、すなわち、この位相差Δθを補償して系全体の位相差をゼロにするように、位相シフト回路24の動作点がシフトする。図9で説明すると、位相θ1、周波数f1の動作点が、位相θ1+Δθ、周波数f1+Δfの動作点にシフトし、ここで系全体の位相差をゼロとして、速度共振が持続し、安定する。
すなわち、位相シフト回路24を振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループ内に直列接続により設けることで、速度共振を持続するために必要な位相差補償を行い、同時に、その補償を行った位相差Δθの大きさを周波数偏差Δfに変換できる。ここで得られる周波数偏差Δfは、従来技術のように、共振周波数の変化分ではなく、位相変化分を位相シフト回路24の基準伝達特性曲線により周波数変化分に変換したもので、その変換係数Δf/Δθは、位相シフト回路24の基準伝達特性曲線の設計により、任意の大きさにすることができる。すなわち、小さな位相差を大きな周波数偏差にすることもでき、大きすぎる位相差を適当な周波数偏差の大きさにすることもできる。
このようにして得られる周波数偏差を、適当な周波数測定装置により測定し、これを予め求めておいた周波数偏差−硬さの較正関係に基づいて硬さに変換することができる。
特開平9−145691号公報
硬さセンサ12は、その周波数−振幅特性、あるいは周波数−位相特性において、さまざまなピークを有する。したがって、上記のように、振動検出センサ16−直流カット容量−増幅器22−位相シフト回路24−振動子14−対象物8−振動検出センサ16のループを形成するときは、位相シフト回路24の動作中心周波数の設定ffをどのように選択するかにより、さまざまな周波数で応答させることが可能である。位相シフト回路24の動作中心周波数ffは、硬さセンサ12が対象物8に接触するときに生ずる位相差Δθを適当な変換係数Δf/Δθで周波数偏差Δfに変換するため、基準伝達特性曲線の形と、硬さセンサ12が対象物8に接触していないときの動作中心周波数f1とから設定されるものである。したがって、対象物8の硬さを精度よく測定するためには、硬さセンサ12の有するさまざまなピークの中から、どれを硬さ測定に用いるか選択し、その動作中心周波数f1に合わせ、位相シフト回路24の基準伝達特性曲線の形と、その動作中心周波数ffを設定する必要がある。
いままで、硬さセンサの有するさまざまなピークの中から、どれを硬さ測定に用いるか選択は、ノウハウに委ねられている。したがって、位相シフト回路を用いる硬さ測定において、対象物8の硬さを精度よく測定するための条件設定等に多大の負荷と時間を要している。
本発明の目的は、位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することをより容易に可能とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法及び硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置を提供することである。他の目的は、硬さ測定に用いるための動作中心周波数を選定し、硬さ測定を行う硬さ測定システムを提供することである。以下の手段は、かかる目的の少なくとも1つを実現するために貢献するものである。
本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出工程と、区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得工程と、区別された各ピークにつき、硬さセンサをテストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する接触特性取得工程と、区別された各ピークにつき、自由端特性と接触特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択工程と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定工程と、を備えることを特徴とする。
上記構成により、硬さセンサの周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出し、その各ピークについて、硬さセンサがテストピースに接触していないときと接触するときの周波数変化、位相変化、振幅変化を求め、それに基づいて硬さ測定に用いるためのピークを選択する。ピークの選択の基準は、測定の目的に合わせ設定することができる。周波数変化、位相変化、振幅変化については、いずれか1つについて求めてもよく、その中の2つ、例えば周波数変化、位相変化について求めてこれを選択の基準にしてもよく、また、周波数変化、位相変化、振幅変化の3つを総合した選択の基準としてもよい。例えば、位相変化の適当な大きさを定めてもよく、位相変化の最も大きなピークを選択するようにしてもよく、また、測定に都合のよい周波数範囲の中で選択を行うようにしてもよい。このようにして、硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出工程と、区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得工程と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを柔らかい硬さの第1テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第1特性取得工程と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを第1テストピースより硬い第2テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第2特性取得工程と、区別された各ピークにつき、自由端特性と第1特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つと、自由端特性と第2特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択工程と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定工程と、を備えることを特徴とする。
上記構成により、硬さセンサの周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出する。そして、テストピースを柔らかいものと硬いものと用意し、硬さセンサがテストピースに接触していないときと接触するときの周波数変化、位相変化、振幅特性が2種類のテストピースについてどのように異なるかを各ピークについて求める。そして、その結果に基づいて硬さ測定に用いるためのピークを選択する。したがって、2種類のテストピースの硬さ、柔らかさの範囲内で対応のよいピークを選択することができ、硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。周波数変化、位相変化、振幅変化については、いずれか1つについて求めてもよく、その中の2つ、例えば周波数変化、位相変化について求めてこれを選択の基準にしてもよく、また、周波数変化、位相変化、振幅変化の3つを総合した選択の基準としてもよい。
また、ピーク選択工程は、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向とを比較し、相互に逆方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
上記構成により、2種類のテストピースの硬さ、柔らかさの範囲内で位相の変化をより大きく検出できるピークを選択することができ、硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、ピーク選択工程は、自由端特性に比べ第1特性が周波数及び位相のいずれも減少方向に変化し、自由端特性に比べ第2特性が周波数及び位相のいずれも増加方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
一般的な物質は、柔らかくなるにつれ周波数が低周波側にずれ、位相は減少し、硬くなるにつれ周波数が高周波側にずれ、位相は増加する。上記構成により、一般的な物質に対する応答特性に沿ったピークを選択することができる。もちろん、位相シフト回路の機能は、位相と周波数の変換にあるのでピークの選択がこのようでなくても、他の理由、例えば感度がより良好であるとか、発振の安定性がより良好である等の理由の選択基準で選択することは可能である。
また、ピーク選択工程は、候補ピークの中から、変化幅の大きいピークを選択することが好ましい。上記構成により、硬さに対する感度を大きくするピークを選択できる。
また、ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から任意の周波数範囲の中にあるピークに絞り込む周波数絞込み工程を備えることが好ましい。硬さセンサの形状や材質等が同じであれば、そのテストピースに対する応答特性もほぼ同じである。例えば、硬さセンサの仕様が決まっていて、硬さ測定に適するピークがどの周波数範囲にあるかわかっていることがある。上記構成により、ピーク検出工程において周波数範囲を定めて行うことで、硬さ測定システムの動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から任意のQ値以下にあるピークに絞り込むQ値絞込み工程を備えることが好ましい。
ここでQ値とは、ピークの鋭さを示す特性値で、例えば、周波数−振幅特性で、そのピークの半値幅、すなわちピークの最大振幅に対する半分の振幅における周波数幅で代表させることができる。一般的に、Q値の大きいピークはその振動が安定で、例えば、対象物に接触したとしてもその振動状態の変化が少ない。いわゆる振動体の1次固有振動数などは、そのQ値が高い代表である。位相シフト回路を用いる振動ループ系では、対象物に接触するときの位相のずれが大きいほどよく、また、その位相のずれを位相シフト回路で補償するので、振動の安定性は高くないほうが望ましい。上記構成により、適当な振動の安定性を有するピークを選択するので、硬さ測定システムの動作中心周波数を選択することがより容易に可能となる。
また、ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から、そのピーク位置における位相変化率が任意の値以下にあるピークに絞り込む位相変化率絞込み工程を備えることが好ましい。
ピークにおける位相が急変するようなものは、感度を高くとることができるが、反面振動が不安定になりがちである。上記構成により、適当な振動の安定性を確保できるピークを選択できる。
また、動作中心周波数設定工程は、位相シフト回路のQ値に応じて任意の周波数幅を設定することが好ましい。
図9に関連して説明したように、位相シフト回路24における位相差Δθを周波数偏差Δfに変換する変換係数Δf/Δθは、位相シフト回路24の基準伝達特性曲線の形、すなわちそのQ値と、位相シフト回路24の動作中心周波数ffと、硬さセンサ12が対象物8に接触していないときの動作中心周波数f1との間の周波数幅で決まる。上記構成により、位相シフト回路のQ値に応じてffとf1との間の周波数幅を設定するので、適当な変換係数Δf/Δθを得ることができる。
また、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する装置であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出手段と、区別された各ピークについてその周波数と位相とを測定し記憶する自由端特性取得手段と、区別された各ピークにつき、硬さセンサをテストピースに接触させるときに変化する周波数と位相とを測定し記憶する接触特性取得手段と、区別された各ピークにつき、自由端特性と接触特性との間の周波数変化及び位相変化とに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択手段と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置は、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する装置であって、硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で、周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出手段と、区別された各ピークについてその周波数と位相とを測定し記憶する自由端特性取得手段と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを柔らかい硬さの第1テストピースに接触させるときに変化する周波数と位相とを測定し記憶する第1特性取得手段と、区別された各ピークにつき、硬さセンサを第1テストピースより硬い第2テストピースに接触させるときに変化する周波数と位相とを測定し記憶する第2特性取得手段と、区別された各ピークにつき、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化とに基づいて硬さ測定に用いるピークを選択するピーク選択手段と、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定手段と、を備えることを特徴とする。
また、ピーク選択手段は、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向とを比較し、相互に逆方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
また、ピーク選択手段は、自由端特性に比べ第1特性が周波数及び位相のいずれも減少方向に変化し、自由端特性に比べ第2特性が周波数及び位相のいずれも増加方向に変化する候補ピークの中から選択することが好ましい。
また、ピーク選択手段は、候補ピークの中から、変化幅の大きいピークを選択することが好ましい。
また、ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から任意の周波数範囲の中にあるピークに絞り込む周波数絞込み手段を備えることが好ましい。
また、ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から任意のQ値以下にあるピークに絞り込むQ値絞込み手段を備えることが好ましい。
また、ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から、そのピーク位置における位相変化率が任意の値以下にあるピークに絞り込む位相変化率絞込み手段を備えることが好ましい。
また、本発明に係る硬さ測定システムは、対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサを用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムであって、硬さセンサと増幅器とが直列接続されたセンサ増幅回路部について、外部より周波数を変化させて掃引する信号を入力し、周波数に対する振幅特性又は位相特性において現れる複数のピークを予め定めた基準と比較して硬さ測定に用いるためのピークを選定し、選定されたピークに対応する選定周波数をセンサ増幅回路部に入力して選定周波数に対応する選定位相差が出力される状態で動作させるオープンループの第1回路ループと、センサ増幅回路部の入力端と出力端の間に位相シフト回路を接続しループを閉じて自励発振ループを構成し、センサ増幅回路部への入力波形とその出力波形との間に位相差が生じるときは、位相シフト回路によって周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトさせて自励発振を持続させるクローズドループの第2回路ループと、センサ増幅回路部を含む回路ループを、第1回路ループにおける選定周波数及び選定位相差の下の動作状態から、第2の回路ループにおいてセンサ増幅回路部の両端の選定位相差を位相シフト回路で補償して選定周波数の下で自励発振を持続させる動作状態に切り替える切り替え手段と、切り替え後において、対象物に硬さセンサを接触させ、対象物の硬さに応じてセンサ増幅回路部の両端の位相差が選定位相差からさらに変化する硬さによる位相差成分を、位相シフト回路によって選定周波数から周波数を変化させて補償してセンサ増幅回路の両端を選定位相差のままに維持し、変化させた周波数偏差を出力する周波数偏差出力部と、を備え、出力された周波数偏差から対象物の硬さを測定することを特徴とする。
上記構成により、第1回路ループにおいて硬さ測定に用いるためのピークを選定し、その状態で切り替え手段によって第2回路ループに切り替えて、第1回路ループにおける選定周波数及び選定位相差の下の動作状態の下で自励発振を持続させる動作状態とする。したがって、選定された硬さ測定用のピークについてそのまま自励発振を持続できるので、硬さ測定用のピークについて自励発振を持続するように位相シフト回路の定数の設定を改めて行う必要がなく、その後の硬さ測定が容易となる。
また、本発明に係る硬さ測定システムにおいて、位相シフト回路は、位相検出器と電圧制御発振器と分周器とがループ状に接続されるフェーズロック回路であって、センサ増幅回路部の出力と分周器の出力とが位相検出器に入力されてそれらの間の位相差をゼロにするように発振状態をロックするフェーズロック回路と、時々刻々の分周器のデータについて選定位相差に相当するデータを補償演算し、これに基づき、センサ増幅回路部の出力信号の1周期について選定位相差分の位相差を補償した位相差補償信号を出力する補償信号出力部と、を含み、補償信号出力部から出力される位相差補償信号をセンサ増幅回路部の入力信号として供給することが好ましい。
位相シフト回路は、フェーズロック回路を含み、これによりロックされた発振状態を示すデータは時々刻々、分周器に現れる。その分周器のデータに、選定位相差に相当するデータを減算等で補償したデータを生成し、それに基づき位相差補償信号を生成する。したがって、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の複雑な回路素子定数の変更等によることなく、位相差補償信号を生成することができる。
また、本発明に係る硬さ測定システムにおいて、センサ増幅器回路部の出力をデジタル信号に変換して位相シフト回路に供給する変換器を含み、デジタル信号で動作する位相シフト回路の補償信号出力部は、電圧制御発振器の信号のデータをカウントする分周カウンタと、分周カウンタと同じビット数を有する選定位相差を補償するデータを分周カウンタのデータに加算するフルアダー回路と、フルアダー回路のデータから正弦波信号を生成する波形生成器と、を有し、生成された正弦波信号を位相差補償信号としてセンサ増幅回路部に供給することが好ましい。
位相差補償信号を生成する回路部分は、デジタル信号処理を行うこととしたので、回路構成が簡単になる。
上記のように、本発明に係る硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法及び硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置によれば、位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、その動作中心周波数を選択することがより容易に行うことができる。また、本発明に係る硬さ測定システムによれば、硬さ測定に用いるためのピークにおいて自励発振を持続させて硬さ測定を行うことが容易となる。
以下に本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。ここで適用される硬さ測定システムは、位相シフト回路を用いて対象物の硬さを測定するシステムで、図8、図9で説明したような硬さ測定システムである。対象物は、振動を入射できその反射信号を検出できるものであればよい。例えば、生体の組織、例えば皮膚組織、開腹した部所の肝臓等の内臓組織であってもよく、またそれ以外の材料物質、例えば柔らかいゾル状の物や硬い固体であってもよい。
また、以下では、硬さ測定システムの動作中心周波数選択の対象となる硬さセンサとして、圧電素子を2つ積み重ね、一方を振動子とし、他方を振動検出センサとするものを説明するが、振動を対象物に入力でき、対象物からの応答信号を検出できるものであれば、それ以外の構成であってもよい。例えば、1つの圧電素子を用い、その両側の圧電面のうち片方の面を接地し、もう片方の面に設けられる電極パターンを外側リング電極と、中心側円電極とする構成の硬さセンサでもよい。この場合は、外側リング電極に入力される交流信号に応じ、圧電素子の外周部分が振動するので振動子として働き、圧電素子の中央部分が検出する振動に応じた交流信号が中心側円電極に現れて振動検出センサとして働く。また、振動子と振動検出センサとを別々に用意し、その集合を硬さセンサと呼ぶものとしてもよい。また、硬さセンサと対象物との間に適当な接触用ボールや、接触用突出棒等を設けてもよい。
図1は硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置50のブロック図である。硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置50(以後、特に断らない限り、動作中心周波数選択装置50とする)は、CPU52と、キーボード等の入力部54、ディスプレイやプロッタ等の出力部56、プログラムや特性データ等を記憶する記憶装置58と、硬さセンサ12の周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定して取得するネットワークアナライザ60を含み、これらは内部バスで相互に接続される。かかる動作中心周波数選択装置50は、ネットワークアナライザ機能を内蔵する専用コンピュータ等で構成することができる。また、一般的なコンピュータと、一般的なネットワークアナライザとを組み合わせて構成することもできる。
図1において、硬さセンサ12は、図示されていない対象物に振動を入射する振動子14と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサ16とを有する。硬さセンサ12は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の圧電素子を2つ積み重ね、一方を振動子14とし、他方を振動検出センサ16としたものである。動作中心周波数選択装置50の動作においては、硬さセンサ12は、予め用意された2種類のテストピース4,6に接触し、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性が測定される。
テストピースの一方は、柔らかい硬さの第1テストピース4で、例えばシリコンゴムのような弾性体を板材に貼り付けたものを用いることができる。テストピースの他方は、第1テストピースより硬い第2テストピース6で、例えば、木材や、硬質プラスチックを板材に貼り付けたものを用いることができる。第1テストピース4及び第2テストピース6は、硬さ測定システムの扱う対象物の硬さ範囲の上限と下限を代表する物質をそれぞれ貼り付けたものが望ましい。第1テストピース4及び第2テストピース6を硬さセンサ12に接触させるのは、搬送装置等を用いてCPU52の指示の下で自動的に行ってもよく、オペレータが動作中心周波数選択装置50と対話的に交信しつつ、手動で行ってもよい。簡易的には、オペレータの手の平や指先等を第1テストピース4とし、測定机の表面部等を第2テストピース6とし、オペレータが硬さセンサ12を手の平や測定机の表面部に接触させることでもよい。
ネットワークアナライザ60は、硬さセンサの周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する機能を有する測定器であって、周波数を変化させてパルス信号を掃引出力できるPG部62と、信号を受け取ってその周波数−振幅特性、周波数−位相特性を解析測定するANA部64とを含む。PG部62からの出力端子は硬さセンサ12の振動子14に接続され、ANA部64への入力端子は硬さセンサ12の振動検出センサ16に接続される。具体的には、ネットワークアナライザ60は、CPU52の指示を受けて、所定の周波数範囲でパルスを掃引して振動子14に供給し、振動検出センサ16から受け取った信号を解析してその周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定し、測定取得されたデータを、内部バスを介しCPU52に送る機能を有する。
CPU52は、ネットワークアナライザ60に指示を与え、ネットワークアナライザ60から送られてくるデータを処理し、硬さ測定システムの動作中心周波数を選択する機能を有する。具体的には、硬さセンサ12がテストピースに接触していない自由状態において周波数−振幅特性を受け取り、その複数のピークをそれぞれ検出するピーク検出部70と、各ピークについてその周波数及び位相を取得する自由端特性取得部74と、硬さセンサ12が第1テストピース4に接触したときの各ピークの周波数及び位相を取得する第1特性取得部76と、第2テストピース6に接触したときの各ピークの周波数及び位相を取得する第2特性取得部78と、これらに基づき硬さ測定に用いるピークを選択するピーク選択部80と、選択されたピークに基づいて硬さ測定システムの動作中心周波数を設定する動作中心周波数設定部82を含む。ピーク検出部70には、複数のピークのうち、ある範囲のピークに絞り込み、以後の処理をより容易にする絞込み部72を含む。これらの機能はソフトウエアによって実現することができ、具体的には対応する動作中心周波数選択プログラムを実行することで実現できる。また、各機能の一部をハードウエアで実現するように構成してもよい。
上記構成の動作中心周波数選択装置50の作用、特にCPU52の各機能について、動作中心周波数選択の手順を示す図2のフローチャートを用いて説明する。
動作中心周波数選択の手順を行うには、まず動作中心周波数選択の対象となる硬さセンサ12をネットワークアナライザ60に上記の接続法により接続する。ついで対応する動作中心周波数選択プログラムを起動する。そして、その指示に従いまず硬さセンサ12を自由端状態にセットする(S10)。具体的には、硬さセンサ12を何物にも接触させていない自由端状態とする。上記のように、搬送装置等を用いて自動的に硬さセンサ12をテストピースに対し離隔する方向に移動させてもよく、オペレータが動作中心周波数選択装置50と対話して、「自由端にセットして下さい」の指示に従い、硬さセンサ12をフリーの状態にするものとしてもよい。
そして、周波数−振幅特性、周波数−位相特性を取得する(S12)。具体的には、CPU52のピーク検出部70の機能の一部により、ネットワークアナライザ60に指示を与え、所定の周波数範囲のパルス信号を掃引しつつ振動子14に与え、振動検出センサ16からの信号を受け取り、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する。取得された周波数−振幅特性、周波数−位相特性は、一旦記憶装置58に記憶される。
図3に取得される周波数−振幅特性、周波数−位相特性の例を示す。図3は、周波数−振幅特性、周波数−位相特性をわかりやすいように1つの表示画面に表したときの様子を示すもので、横軸に周波数、縦軸に振幅及び位相をとり、周波数−振幅特性を実線で、周波数−位相特性を破線で示してある。掃引する周波数範囲は、例えば1kHzから10MHz等と広い範囲にすることができ、振幅もその周波数範囲における振幅範囲をカバーするように広くとり、位相も同様にその周波数範囲における振幅範囲をカバーするように広くとってある。
図3において、周波数−振幅特性に注目すると、この周波数範囲ではかなり多くのピークが存在する。同様に、周波数−位相特性に注目しても、この周波数範囲ではかなり多くのピークが存在することがわかる。この複数のピークの中で、硬さ測定に適するピークを1つ選択するのが動作中心周波数選択装置50の目的であり、機能である。この多数のピークのそれぞれを検出し、それらについて以後の処理を行ってもよい。まったくの最初のときは、周波数−振幅特性におけるすべてのピーク、及び周波数−位相特性におけるすべてのピークを検出し、それらについて以後の処理を行うのが望ましい。データや経験が積み重なってくると、対象とするピークを絞り込むことができる。
そこで、ピーク絞込みを行う(S14)。具体的には、CPU52のピーク検出部70に含まれる絞込み部72の機能により、予め定めてある絞込み基準に従って、多数のピークの中で、以後の処理に適するピークを絞り込む。
絞込み基準の1つは、周波数−振幅特性、周波数−位相特性のいずれかに絞るものである。いずれに絞り込んでもよい。例えば周波数−振幅特性に絞込み、その特性における各ピークを対象ピークとしてもよい。
また、絞込み基準の1つは、周波数範囲を所定の範囲に絞り、絞り込まれた周波数範囲の中のピークに絞り込むものである。例えば、ある形状、ある材質の硬さセンサを扱っているうちに、そのタイプの硬さセンサは、経験上、ある範囲の周波数近辺に硬さ測定に適するピークがあることがわかってくることがある。具体的に10mm直径で厚さ1mmの圧電素子を積層して構成する硬さセンサが数10kHz近辺に硬さ測定に適するピークがあることがわかっているとすれば、周波数範囲を10−100kHzの範囲に絞ることが可能である。
また、絞込み基準の1つは、ピークのQ値の範囲を制限するものである。ここでピークのQ値とは、ピークの鋭さを示す特性値で、例えばピークの半値幅等を用いることができる。ピークの半値幅が狭いときは、そのピークが代表する振動は安定したものであることが多く、テストピースに接触したときに、周波数や位相の変化が少なく、硬さ測定に十分な感度を得られないことがある。そこで、ピークの半値幅が所定の値以上あるピークに絞り込むことがよい。例えばQ値=半値幅/周波数として、Q値が1%以上のものに絞り込むものとすることができる。
また、絞込み基準の1つは、ピーク位置における位相の変化率の大きさを制限するものである。ピークの周波数において位相が急激に変化するピークを用いると、Δθ/Δfを大きくできるが、一方でその振動が不安定となり、硬さ測定値の精度がかえって低下することがある。そこで、ピークの周波数における位相の変化率が所定の値以下に絞り込むことがよい。例えば、そのピークの半値幅の間における位相の変化が、45度以下のものに絞ることができる。
また、絞込み基準の1つは、ピークが混み合って現れる範囲のピークを除外するものである。ピークが混み合っているところは、振動の多重モードが現れていることが多く、その振動が不安定等のため、硬さ測定に適さないことがある。そこで、ピークが混み合っていないところのピークに絞り込むことがよい。例えば、ピーク数/周波数幅が所定以下であるときのピークに絞り込む。あるいは、周波数−振幅特性、周波数−位相特性の画面上でオペレータがピークの混み合っている範囲を除外して対象範囲を特定してもよい。
これらの絞込み基準を用いる際に、硬さセンサに適当な材料を付加し、ピークのQ値や、ピーク位置における位相の変化率の大きさを適当な値に改善させて用いてもよい。例えば、測定がしやすい周波数のピークであるがQ値が鋭すぎるときは、粘性物質を硬さセンサの接触面側に付加し、適当なQ値及び適当な位相変化とすることができる。位相の変化率が大き過ぎるときも同様に適当な材料物質を付加して適当な位相変化率とすることができる。
これらの絞込み基準は、単独で用いてもよく、複数を適宜組み合わせてもよい。例えば、周波数範囲を10kHz−100kHzとし、周波数−振幅特性において、振幅特性のピークのQ値=半値幅/周波数が1%以上というように絞り込むことができる。
再び図2に戻り、絞り込まれた範囲について、ピーク検出を行う(S16)。具体的には、CPU52のピーク検出部70の機能の一部により、周知のピーク検出の手法により、絞り込まれた範囲のすべてのピークを検出する(S16)。周知のピーク検出の手法としては、最大値検出、微分係数の変曲点検出等を用いることができる。
そして、検出された各ピークについて、そのピーク位置の周波数と位相を取得する(S18)。取得された各ピーク位置の周波数と位相は自由端特性として記憶される(S20)。具体的には、自由端特性取得部74の機能により、ピーク検出されたピークをラベル付け等の識別キーを付し、S12の工程で記憶装置58に記憶された周波数−振幅特性、周波数−位相特性と照合し、各ピークについてそのピーク位置の周波数と位相を取得し、各ピークを区別する識別キーとともに記憶装置58に記憶される。自由端特性とは、各ピークのピーク位置の周波数と位相のデータの集合である。
こうして自由端特性が取得され記憶されると、次に硬さセンサ12を第1テストピース4に接触させる(S22)。接触は、S10で説明したと同様に、自動で行ってもよく、「第1テストピースに接触させて下さい」等の対話式でオペレータが手動で行ってもよい。手動のときに、簡易的にオペレータの手の平等に接触し、これを第1テストピース4と扱ってもよい。
そして、周波数−振幅特性、周波数−位相特性を取得する(S24)。具体的には、第1特性取得部76の機能の一部により、S12の工程で説明したと同様に、ネットワークアナライザ60に指示を与え、所定の周波数範囲のパルス信号を掃引しつつ振動子14に与え、振動検出センサ16からの信号を受け取り、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する。取得された周波数−振幅特性、周波数−位相特性は、一旦記憶装置58に記憶される。
ついで、S16で検出された各ピークにつき、そのピーク位置の周波数と位相を取得する(S26)。取得された各ピーク位置の周波数と位相は第1特性として記憶される(S28)。具体的には、第1特性取得部76の機能の一部により、すでにラベル付け等の識別キーが付されている各ピークについて、S24の工程で記憶装置58に記憶された周波数−振幅特性、周波数−位相特性と照合し、それらのピーク位置の周波数と位相を取得し、各ピークを区別する識別キーとともに記憶装置58に記憶される。第1特性とは、各ピークのピーク位置の周波数と位相のデータの集合である。
こうして第1特性が取得され記憶されると、次に硬さセンサ12を第2テストピース6に接触させる(S30)。接触は、S10、S22で説明したと同様に、自動で行ってもよく、「第2テストピースに接触させて下さい」等の対話式でオペレータが手動で行ってもよい。手動のときに、簡易的に測定机の表面部に接触し、これを第2テストピース6と扱ってもよい。
そして、周波数−振幅特性、周波数−位相特性を取得する(S32)。具体的には、第2特性取得部78の機能の一部により、S12、S24の工程で説明したと同様に、ネットワークアナライザ60に指示を与え、所定の周波数範囲のパルス信号を掃引しつつ振動子14に与え、振動検出センサ16からの信号を受け取り、その周波数−振幅特性、周波数−位相特性を測定取得する。取得された周波数−振幅特性、周波数−位相特性は、一旦記憶装置58に記憶される。
ついで、S16で検出された各ピークにつき、そのピーク位置の周波数と位相を取得する(S34)。取得された各ピーク位置の周波数と位相は第2特性として記憶される(S36)。具体的には、第2特性取得部78の機能の一部により、すでにラベル付け等の識別キーが付されている各ピークについて、S32の工程で記憶装置58に記憶された周波数−振幅特性、周波数−位相特性と照合し、それらのピーク位置の周波数と位相を取得し、各ピークを区別する識別キーとともに記憶装置58に記憶される。第2特性とは、各ピークのピーク位置の周波数と位相のデータの集合である。
こうして自由端特性、第1特性、第2特性が取得され記憶されると、これらに基づき、硬さ測定に適するピーク選択が行われる(S38)。具体的には、ピーク選択部80の機能により、自由端特性、第1特性、第2特性の各ピークのデータを所定の基準の選択処理を行い、硬さ測定に適する1つのピークが選択される。
図4に、ピーク選択の内容を説明するため、あるピークについての自由端特性、第1特性、第2特性を並べて示す。図4では、(b)に自由端状態における周波数−振幅特性、周波数−位相特性を拡大して示し、その左側の(a)に第1テストピース4に接触したときの周波数−振幅特性、周波数−位相特性を示し、(b)の右側の(c)に第2テストピース6に接触したときの周波数−振幅特性、周波数−位相特性を示してある。いずれも横軸に周波数、縦軸に振幅と位相を取り、周波数−振幅特性を実線で、周波数−位相特性を破線で示してある。
図4の例では、自由端状態におけるピーク位置における周波数f0、位相θ0が、第1テストピース4に接触すると、周波数が低周波側にシフトしてfsとなり、位相も小さな値のθsとなるのに対し、第2テストピース6に接触すると、周波数が高周波側にシフトしてfhとなり、位相は大きな値のθhとなっている。ここで、周波数の変化と位相の変化に注目すると、自由端状態から第1テストピース4に接触すると、周波数も位相も減少するのに対し、自由端状態から第2テストピース6に接触すると、周波数も位相も増加する。
図5は、周波数の変化と位相の変化のタイプを分類し、タイプ1からタイプ4として並べたものである。なお、一般的な振動体では、周波数の変化と振幅の変化は逆方向になることが多いので、このような場合には、周波数の変化と位相の変化のタイプに代えて、振幅と位相の変化のタイプに分類してもよい。このように、現れる可能性のある組み合わせは4つあり、各ピークは、これら4つのタイプにいずれかに分類されるが、どのようなメカニズムで特定のピークが特定のタイプに属するかは、現在のところまだ解明されていない。したがって、硬さセンサが硬さ測定に適するかどうかを判断するときは、硬さセンサをテストピースに接触させ、そのときの位相の変化に着目するだけでなく、周波数の変化、振幅の変化を合わせて検討することが望ましい。以下では、周波数変化と、位相変化の2つに着目する場合について説明する。
周波数変化と、位相変化とに着目すると、ピーク選択の基準はこの4つのタイプを用いて定めることができる。通常は、図6に示すような特性を有するピークを選択する基準として用いることができる。すなわち、自由端状態から柔らかい第1テストピース4に接触したときの変化がタイプ4で、自由端状態から硬い第2テストピース6に接触したときの変化がタイプ1であるピークを、硬さ測定に適するピークとして選択する基準である。図6の選択基準を満たすピークは、柔らかいものに接触すると、周波数も位相も低下し、硬いものに接触すると周波数も位相も上昇するという特性をもつものである。このように、変化の方向が逆方向であるので、位相差の変化を拡大して捉えることができる。
また、このようなピークを有する振動系は、単自由度系の振動と同じような傾向を有するものである。したがって、このようなピークを用いて、対象物の硬さを測定することは、単自由度系振動のモデルに合わせることになり、通常の物理現象に近い測定を行っていることにもなる。ちなみに、図4の例は、図6の選択基準に合うピークであるので、そのまま、硬さ測定に適するピークとして選択することができる。
また、別のピーク選択の基準は、図6のタイプの中で、その位相差の変化がより大きなピークを選択するというものである。この基準によれば、硬さ検出の感度をさらに向上させることができる。
また、別のピーク選択の基準として、自由端状態から柔らかい第1テストピース4に接触したときの変化がタイプ2で、自由端状態から硬い第2テストピース6に接触したときの変化がタイプ3であるピークを、硬さ測定に適するピークとして選択するものとしてもよい。あるいは、自由端状態から柔らかい第1テストピース4に接触したときの変化がタイプ3で、自由端状態から硬い第2テストピース6に接触したときの変化がタイプ2であるピークを、硬さ測定に適するピークとして選択するものとしてもよい。この場合には、単自由度振動のモデルとは異なるが、やはり変化の方向が逆方向であるので、位相差の変化を拡大して捉えることができる。
また、別のピーク選択の基準として、他の基準、例えば感度がより良好であるとか、発振の安定性がより良好である等の理由の選択基準で選択し、図5のタイプ分類にはこだわらないことも可能である。
これらピーク選択の基準は、相互にその内容が矛盾しない限り、複数の選択基準を組み合わせてもよい。例えば、図6の選択基準でもなお複数のピークが選択されるときは、その位相差の最大のものを1つ選択するというようにできる。このように、予め定めたピーク選択の基準に各ピークの特性変化を当てはめ、ピーク選択の基準に合うピークを1つ選択することでピーク選択が行われる。
硬さ測定に適するものとしてピークが1つ選択されると、動作中心周波数設定部82の機能により、動作中心周波数の設定が行われる(S40)。まず選択された1つのピークの自由端状態における周波数が、その硬さセンサの動作中心周波数f1とされる。そして、位相シフト回路24の動作中心周波数ffは、図7に示すように、f1と所定の周波数幅ΔWだけ隔てるものとして設定される。所定の周波数幅ΔWは、位相シフト回路24のQ値、すなわち周波数−振幅特性のピークの鋭さに応じて設定することができる。すなわち、位相シフト回路24のQ値が大きくて、ピークが鋭く、Δθ/Δfの変化が大きいときは、ΔWを大きく設定してもよく、逆にピークがなだらかで、Δθ/Δfの変化が小さいときは、ΔWを小さくし、ff近傍のΔθ/Δfが大きいところで位相差補償を行うようにすることがよい。
上記において、動作中心周波数選択の各手順は、コンピュータを含む動作中心周波数選択装置50において、動作中心周波数選択プログラムを実行することで行われるものとして説明した。この他に、コンピュータを用いず、ネットワークアナライザの機能を中心として、ハードウエアで構成する専用機で上記手順を実行するものとしてもよい。また、一般的なネットワークアナライザ等の解析装置をオペレータが操作し、図2の各工程を順次手動で行うことでも動作中心周波数選択を行うこともできる。
次に、上記のようにして硬さ測定に用いられるピークが選定されたあとの処理について、好適な硬さ測定システムについて説明する。硬さ測定システムとしては図8に関連して説明したように、対象物8に振動を入射する振動子14と対象物8から反射される信号を検出する振動検出センサ16とを有する硬さセンサ12を用い、硬さセンサ12と増幅器22と位相シフト回路24とを直列に接続する回路ループを用いることができる。この回路ループはクローズドループ(閉ループ)であるので、硬さセンサ12、増幅器22、位相シフト回路24の特性に応じた自励発振を起こすことが可能である。その場合に、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で、正確にはその近傍で自励発振を生ずるように回路ループの特性、特に位相シフト回路24の特性を設定する必要がある。以下で説明する硬さ測定システムは、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で自励発振を生ずる設定を容易にすることを目的とするものである。
位相シフト回路としては、図9に示すような周波数ffにおいて振幅ピークを有する基準伝達特性曲線を有するものを用いることができる。ここで位相シフト回路の動作中心周波数ffは、図7に関連して説明したように、硬さセンサ12の動作中心周波数f1、すなわち硬さの測定に用いられる選定周波数に基づいて設定される。このような基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路は、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の回路素子を組み合わせ、それらの定数を適切に設定することで得ることができる。図10は、このような基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路を用いた場合の硬さ測定の様子を説明する図である。
図10において、縦軸は位相、横軸は周波数で、図9における位相シフト回路の基準伝達特性曲線の位相曲線100が示される。また、硬さセンサ12を対象物8に接触しないときの硬さセンサ12の周波数−位相特性を実線102で、硬さセンサ12を対象物8に接触させたときの(硬さセンサ12+対象物8)の周波数−位相特性を破線104で示してある。そして、上記のように、所定の基準に従って硬さ測定のためのピークが選定され、そのピークの近傍で実際に硬さ測定に用いる選定周波数fs、選定位相差θsが指定されると、実線102の選定周波数fs、選定位相差θsの位置を通るように位相シフト回路の特性が設定される。このようにして位相シフト回路の特性が設定されることで、硬さセンサ−増幅器−位相シフト回路の閉ループは、選定周波数fs、選定位相差θsの条件で自励発振を行うことができる。この状態で、硬さセンサ12が対象物8に接触すると、閉ループの発振状態が変化し、図10に示すように位相シフト回路の位相曲線100と破線104の交点に移動する。すなわち、硬さに応じた位相差Δθ、周波数偏差Δfが生ずる。この変化は対象物8の硬さに依存するので、検出された周波数偏差Δfから対象物の硬さを求めることができる。
このように、図9で説明した基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路を用いて、対象物の硬さを求めることができるが、硬さ測定に用いる選定周波数fs、選定位相差θsが選定されても、その点をちょうど通るように位相シフト回路を設定するには、多くの回路素子の定数を様々に変更しながら正確に行うことを要する。この定数設定を正確に行わないと、閉ループの自励発振がせっかく選定した選定周波数fs、選定位相差θsの下で生じず、硬さ測定の精度が低下する。
以下に説明する硬さ測定システムは、予め選定した選定周波数fs、選定位相差θsの下で閉ループの自励発振を維持することを容易にするものであるが、最初にその原理を説明する。この新しい硬さ測定システムは、位相シフト回路の特性が、図9に説明したものと異なる。図11は、その新しい位相シフト回路の位相曲線106の様子を示す図である。すなわち、この位相シフト回路は、閉ループにおいて、選定位相差θsを常に維持する特性を有し、硬さセンサ12が対象物8に接触しないときの硬さセンサ12の特性である実線102、接触するときの(硬さセンサ12+対象物8)の特性である破線104との交点における周波数の変化である周波数偏差Δfでもって、対象物8の硬さを検出する。図11の作用の位相シフト回路は、硬さセンサの入力側と出力側との間の位相差を選定位相差θsに常に維持するようにする構成が必要であるが、このような機能を有する構成は、図9に示す基準伝達特性曲線を望ましい特性に設定するのに比較して、以下に詳述するように、回路技術によって容易に実現することができる。
そしてこのような位相シフト回路を用いることで、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で自励発振を行わせ、その下で硬さ測定を行うことが容易に実現できる。すなわち、オープンループで(硬さセンサ+増幅器)に外部から信号を入力し、その信号を硬さ測定用の選定周波数fsに選んでそのまま動作させると、(硬さセンサ+増幅器)の入力側と出力側に位相差が出るがこれが選定位相差θsに相当する。この状態で動作を継続させ、ついで、これに位相シフト回路を接続してループを閉じてクローズドループにする。オープンループからクローズドループへの切り替えは、電子スイッチで行えば、オープンループが有する振動持続力によって、その振動が減衰する前にクローズドループに切り替えられ、選定周波数fs、選定位相差θsの振動状態がそのままクローズドループに持続される。その際に、位相シフト回路を、(硬さセンサ+増幅器)の出力側の信号について選定位相差分を補償する信号を生成する回路構成とし、その生成した信号を(硬さセンサ+増幅器)の入力側に供給するようにループを閉じる。このようにすることで、硬さセンサの入力側と出力側との間の位相差を選定位相差θsに常に維持するようにして自励振動を持続させることができる。
以下に、かかる新しい位相シフト回路を用い、硬さ測定に用いられるピークとして選定された選定周波数、選定位相差の下で自励発振を生ずる設定を容易にする硬さ測定システムの詳細を説明する。図12は、かかる硬さ測定システム120の構成を示すブロック図である。この硬さ測定システム120は、システム全体の動作を制御する硬さ測定コンピュータ130と、水晶発振器146と、デジタル回路を集積化したPLA(Programable Logic Array)150と、PLA(150)からのデータを正弦波波形に変換する変換回路180と、硬さセンサ12と増幅器22とを直列接続され変換回路180からの正弦波波形が入力されるセンサ増幅回路部200と、センサ増幅回路部200の出力信号をデジタル化するコンパレータ188と、PLL(Phase Locked Loop)回路190を含んで構成される。
ここでPLA150は、オープンループの回路ループのデジタル回路部分C1と、クローズドループの回路部分C2と、オープンループの回路ループとクローズドループの回路ループとの切り替えを行う切り替え回路170,172を含む。
PLA(150)のデジタル回路部分C1は、水晶発振器146からの源振からデジタル処理により所定の周波数の信号を合成するための発振周波数設定回路152、26ビットフルアダー回路154、正弦波発生器156を含み、さらに、硬さ測定に用いるために選定された選定周波数fsの下でのセンサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差である選定位相差θsを検出する位相差検出器158を含む。発振周波数設定回路152の設定は、硬さ測定コンピュータ130の制御の下で行われ、位相差検出器158で検出された選定位相差θsのデータは硬さ測定コンピュータ130に記憶される。
PLA(150)のデジタル回路部分C2は、PLL回路190に接続される256分周カウンタ160と、256分周カウンタ160のデータと選定位相差θsを補償するデータを加算する8ビットフルアダー回路162と、それに基づいて正弦波データを生成する正弦波発生器164を含む。また、クローズドループの回路ループにおける周波数を計測する周波数カウンタ166を含む。周波数カウンタ166のデータは、硬さセンサ12が対象部8に接触していないときのデータと、接触したときのデータとがそれぞれ硬さ測定コンピュータ130にとりこまれ、その周波数偏差から硬さが変換される。
硬さ測定コンピュータ130は、制御部132と、モニタ部134を備える。制御部132は、CPUとメモリとを含み、デジタル回路部分C1の周波数設定回路152に対する周波数設定を行う発振周波数設定部136、デジタル回路部分C1で検出された選定位相差θsをとりこんで記憶し、デジタル回路部分C2の8ビットフルアダー回路162に出力する補償位相差出力部138、切り替え回路170,172を切り替える切替部140、周波数偏差を求める周波数偏差出力部142、予め定められた換算方式に従って周波数偏差を硬さに変換する硬さ換算部144を含む。
かかる硬さ測定システム120は、硬さ測定コンピュータ130の制御部132における切替部140の機能により切り替え回路170,172を動作させ、オープンループの回路ループ又はクローズドループの回路ループに切り替えて用いられる。以下では、オープンループの回路ループを第1回路ループ、クローズドループの回路ループを第2回路ループと呼ぶことにして、それらの構成を順次説明する。
図13は、第1回路ループ122に関する構成を示すブロック図である。第1回路ループ122は、制御部132の切替部140からの信号Aにより、切り替え回路170,172が図13において紙面の上方側に接続を切り替えることで構成が行われる。第1回路ループ122は、硬さ測定に用いられるピークを選定し、選定された選定周波数をセンサ増幅回路部200に入力し、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差を選定位相差θsとして記憶する機能を実行するために用いられるものである。
かかる第1回路ループ122は、水晶発振器146−発振周波数設定回路152−26ビットフルアダー回路154−正弦波発生器156−(切り替え回路170)−D/A変換回路182−ローパスフィルタ184−バッファ回路186−振動子14−(開放空間)−振動検出センサ16−増幅器22−コンパレータ188−(切り替え回路172)からなるオープンループで構成される。
第1回路ループ122において、水晶発振器146−発振周波数設定回路152−26ビットフルアダー回路154−正弦波発生器156の部分は、水晶発振器146の原振動を用いて、発振周波数設定回路152で設定される周波数の信号を合成し、26ビットの分解能の正弦波データとして出力する機能を有する。かかる機能は、DDS(Direct Digital Synthesizer)と呼ばれる周知のデジタル回路技術によって構成することができる。例えば、制御部132の発振周波数設定部136において、100kHzと設定されると、発振周波数設定回路152において源振動から100kHzの正弦波信号を生成する処理がなされ、100kHzの一周期である10μsecの期間を26ビットで区分し、それぞれに対し、正弦波の波高値のデータが出力される。このようにして、設定された周波数の正弦波信号のデジタルデータは切り替え回路170を介し、変換回路180に出力される。
切り替え回路170は、変換回路180へのデータ出力を、デジタル回路部分C1の正弦波発生回路156からのものとするか、デジタル回路部分C2の正弦波発生回路164からのものにするか、制御部132における切替部140の制御の下で切り替える機能を有する回路である。かかる切り替え回路170は、正弦波発生回路156,164のデータをラッチするラッチ回路と、複数ビットのデータ線の接続を切り替えるマルチプレクサ回路等で構成できる。
変換回路180は、出力された正弦波のデジタルデータをアナログ信号波形に変換し、ノイズを除去してセンサ増幅回路部200に供給する機能を有し、具体的には上記のようにD/A変換器182、ローパスフィルタ184、バッファ回路186で構成される。
センサ増幅回路部200は、上記のように硬さセンサ12と増幅器22を直列に接続したもので、それぞれの構成は、図8で説明したものと同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
オープンループの基本構成は以上であるが、センサ増幅回路部200の入力端と出力端の位相差を検出するために、増幅器22の出力をコンパレータ188でデジタルデータ化し、切り替え回路172を介し、デジタル回路部分C1の位相差検出器158の一方側信号として入力される。位相差検出器158の他方側信号としては、26ビットフルアダー回路154のデータが入力される。この2つの信号の比較からセンサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差が検出される。かかる位相差検出器158は、パルスの進み遅れを検出する周知のデジタル回路等を用いて構成することができる。なお、切り替え回路172の内容は上記の切り替え回路170と同様である。
第1回路ループ122において、硬さ測定に用いるピークを選定するには、制御部132の発振周波数設定部136において、任意の周波数掃引範囲を設定する。例えば、硬さ測定コンピュータ130の図示されていないキーボード等の入力部から、操作者が任意の周波数掃引範囲として、40kHzから170kHzを入力し、そのデータを制御部132が取得して発振周波数設定部136において、掃引モードとして設定する。このように掃引モードで40kHzから170kHzの範囲設定が行われると、PLA(150)のデジタル回路部分C1の発振周波数設定回路152では、予め定められた刻み周期と周波数刻みに従い、逐時的に40kHzから170kHzの正弦波の生成処理を行う。刻み周期を10msec、周波数刻みを50Hzとすれば、40.00kHzの正弦波生成を行った後、10msec後に40.05kHzの正弦波生成を行い、これを10msecごとに50Hzずつ周波数を上げて、170kHzまで行う。170kHzまでくれば再び40kHzに戻り、これを繰り返す。したがって、センサ増幅回路部200には、40kHzから170kHzの正弦波信号が繰り返し掃引されて入力される。
そして、位相差検出器158は、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差が検出されるので、その位相差と、センサ増幅回路部200に入力される周波数とを、モニタ134に出力すれば、操作者は、センサ増幅回路部200の周波数に対する位相特性を観察することができる。また、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の信号振幅ゲインを取得し、これもモニタ134に出力すれば、図3に関連して説明した周波数に対する振幅特性及び位相特性を観察することができる。この特性をモニタ134で観察し、例えば、テストピースを硬さセンサ12に接触させ、そのときのピークの変化から、既に説明してきた絞込み基準を用いて絞り込み、それを硬さ測定に用いる選定ピークとし、その近傍の周波数、位相差をそれぞれ選定周波数fs、選定位相差θsとすることができる。
一例として、選定周波数fsについて100kHz、選定位相差θsについて入力側を基準として−25°、つまり入力側に対し出力側の位相が遅れているものが選定されたものとすることができる。このようにして、選定周波数fs、選定位相差θsが定まると、センサ増幅回路部200に入力する信号を選定周波数fs、上記の例で100kHzに固定してそのまま入力を続ける。このとき、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差は、選定位相差θs、すなわち上記の例で−25°となり、選定周波数fs=100kHzの信号が入力されつづける間、その位相差は維持される。そして、選定位相差θs、すなわち上記の例で−25°のデータは、デジタルデータに換算され、制御部132に記憶される。例えば、360°を8ビット表示するものとして、−25°は、−00001010として記憶される。そして、このデータを用いて次の第2回路ループ124において、その位相差を補償するデータとして選定位相差θsの符号を反転し、−θsのデータを補償位相差として出力する。上記の例では補償位相差出力部138から+00001010補償位相差として出力される。
次に、図14は、第2回路ループ124に関する構成を示すブロック図である。第2回路ループ124は、制御部132の切替部140からの信号Aにより、切り替え回路170,172が図14において紙面の下方側に接続を切り替えることで構成が行われる。ここで、切り替え回路170,172は上記のように、マルチプレクサ回路によって電子的に切り替えられ、例えば数十nsec程度の時間で第1回路ループの構成から第2回路ループの構成に切り替えることができる。この程度の時間では第1回路ループの動作、つまり選定周波数fsで振動子14が振動する動作はあまり減衰しない。したがって、切り替えの後でも、第2回路ループ124には、選定周波数fsの振動がそのまま引き継がれる。第2回路ループ124は、このように切り替え後に引き継がれた振動状態、すなわちセンサ増幅回路部200に選定周波数fsの信号が入力され、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間に選定位相差θsが生じている状態のまま、自励発振を維持させる機能を実行するために用いられるものである。
かかる第2回路ループ124は、振動子14−(開放空間)−振動検出センサ16−増幅器22−コンパレータ188−位相検出器192−電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)194−256分周カウンタ160−8ビットフルアダー回路162−正弦波発生器164−(切り替え回路170)−D/A変換回路182−ローパスフィルタ184−バッファ回路186−振動子14のクローズドループで構成される。ここで、位相検出器192から正弦波発生器164までが、位相シフト回路としての機能を有する部分に相当する。
第2回路ループ124において、位相検出器192−電圧制御発振器194−256分周器160の部分は、いわゆるPLL動作を行う回路部分であり、位相検出器192の一方側の入力信号にはセンサ増幅回路部200の出力が用いられ、他方側の入力信号には256分周カウンタ160の出力が用いられる。この構成において、位相検出器192により2つの信号の位相のずれに対応する電圧を出力し、その出力の大きさに応じた周波数の信号を電圧制御発振器194が出力し、その出力を今の場合256分周カウンタ160によって1/256に分周して再び位相検出器192に戻す。したがって、このフィードバック動作により、この回路部分の全体の動作としては、位相検出器192における2信号の位相差をなくすように働き、いわゆる位相差をゼロとする周波数の信号にロックされるPLL動作が行われる。
例えば、上記の例で選定周波数fs=100kHzとすれば、は256分周カウンタ160においては、(1/256)分周された信号が100kHzとなるようにロックされるので、25.6MHzのパルスが256分周カウンタ160に入力される。したがって、256分周カウンタ160のデータは、フルスケールでfs=100kHzの信号を表すことになり、換言すれば、選定周波数fs=100kHzの一周期が8ビットのデータとして時々刻々表されていることになる。
8ビットフルアダー回路162は、256分周カウンタ160の時々刻々のデータに、補償位相差出力部138から出力される選定位相差θsを補償するデータを加算する機能を有する回路である。例えば、ある時刻における256分周カウンタ160のデータが01000000とすると、上記の例で選定位相差θsのデータは−00001010であり、これを補償するデータは+00001010であるので、同じ8ビット同士のフル桁加算ができ、その結果は01001010となる。ここで、加算する前のデータと比較すると、加算後のデータは、加算前に比べ、位相が進んでいることになる。
正弦波発生器164は、上記の正弦波発生器156と同様の機能を有し、8ビットフルアダー回路162の出力に従って位相を進めた状態で正弦波の波高値のデータが出力される。この選定位相差θsが補償された正弦波信号のデジタルデータは、切り替え回路170、変換回路180を介し、センサ増幅回路部200に入力される。したがって、センサ増幅回路部200においては、入力端と出力端との間の位相差は選定位相差θsのままであるが、第2回路ループ124全体としては、この選定位相差θsを、上記の位相検出器192から正弦波発生器164までの位相シフト回路としての機能により補償するので、自励発振を持続させることができる。
かかる構成の硬さ測定システム120を用いて対象物8の硬さを測定する手順を図15のフローチャートを用いて説明する。かかる手順は、硬さ測定コンピュータ130の制御部132の発振周波数設定部136、補償位相差出力部138、切替部140、周波数偏差出力部142、硬さ換算部144の機能によって実現される。これらの機能はソフトウエアによって実現することができ、具体的には対応する硬さ測定プログラムを実行することで実現できる。また、各機能の一部をハードウエアで実現するように構成してもよい。
まず、システムを立ち上げ、硬さ測定プログラムを始動させる。このとき、切替部140は、第1回路ループ122を選択するように切り替え回路170,172に指令を与える。そして、硬さ測定に使用しようとする硬さセンサ12および増幅器22をセットする(S110)。セットは、図12で説明したように、変換回路180とコンパレータ188の間に硬さセンサ12および増幅器22を直列に接続して行われる。硬さ測定システム120としては、このように硬さセンサ12および増幅器22を直列接続したセンサ増幅回路部200と一組としてこれを交換可能として扱ってもよく、増幅器22は固定として、硬さセンサ12のみで交換可能としてもよい。
つぎに、掃引周波数範囲を入力し、その値を取得する(S112)。具体的には制御部132の発振周波数設定部136の機能により、上記のように操作者のキーボード等からの入力を取得し、それを発振周波数の設定値とする。上記の例では、40kHzから120kHzが掃引周波数範囲として取得される。この掃引周波数範囲は、硬さセンサ12が与えられれば、経験あるいは事前の実験等で適当に定めることができる。
ついで取得された掃引周波数範囲で、センサ増幅回路部200への入力信号をくりかえし掃引する(S114)。具体的には、水晶発信器146から正弦波発生器156等の機能による。そして上記のように、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差を位相差検出器158で検出し、モニタ部134に周波数に対する振幅特性及び位相特性を表示させる。操作者は、この画面を見ながら、予め定められた基準に従って、硬さ測定に用いるピークを絞り込んで選定する(S116)。この手順は、図2で説明した内容で行うことができる。この処理においては、操作者が硬さ測定用コンピュータ130と対話型で処理することができるので、図15ではこの手順を破線で示した。もちろん、テストピースへの接触や、予め定めた絞込み基準との比較を自動化してもよい。
硬さ測定用のピークが選定されると、その選定位相差θsのデータは補償位相差出力部138に入力され、記憶される(S118)。上記の例では、−00001010のデータが記憶される。また、掃引周波数が選定周波数fsに固定され、その状態でセンサ増幅回路部200に入力が続けられ、振動子14はその周波数で振動動作を続ける(S120)。この動作において、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差は選定位相差θsのままである。
その様子を図16に示す。この図は、硬さセンサ12と増幅器22とで構成されるセンサ増幅回路部200を取り出して示すもので、硬さセンサ12の入力側である振動子14に選定周波数fsの信号が入力される。そして、硬さセンサ12の出力側である振動検出センサ16に直列に接続された増幅器22を介し、センサ増幅回路部200の出力端に現れる信号は、振動子14への入力信号を基準として、選定位相差−θsだけ位相がずれる。この位相ずれは、主に硬さセンサ12の特性によるものである。そして、この選定周波数fs、選定位相差θsは、この条件の下で、対象物の硬さを測定するのがこの硬さセンサの場合には好適であるとして選定されたものであり、硬さ測定システムの動作中心条件に相当するものである。
つぎに、切替部140の指令により、位相シフト回路を含むクローズドループに切り替えられる(S122)。すなわち、第1回路ループ122の構成から、第2回路ループ124の構成に切り替えが行われる。この切り替えは、上記のように、第1回路ループの振動の減衰に比べ短時間で行うことができる。そして、補償位相差出力部138の機能により、選定位相差θsを補償する補償位相差データが出力される(S124)。上記の例では、+00001010のデータが8ビットフルアダー回路162に出力される。S122とS124の手順の順序は、逆にしてもよい。
これにより、切り替えによって第1回路ループ122の動作していた条件、すなわち、選定周波数fsで振動子14が振動し、センサ増幅回路部200の入力端と出力端との間の位相差が選定位相差θsである動作状態でループが閉じられ、その際に、8ビットフルアダー回路162及び正弦波発生器164の作用によって、センサ増幅回路200の出力端を基準にして選定位相差θsを補償する位相を有する正弦波信号が生成され、これがセンサ増幅回路200の入力端に供給される。上記の例では、選定位相差−θsに対し、+θsの位相を有する正弦波が生成されてセンサ増幅回路200の入力端に供給され、クローズドループの第2回路ループ124全体としてはセンサ増幅回路200に生じた位相差を補償する。したがって、第2回路ループ124は自励発振を持続することができる(S126)。
その様子を図17に示す。ここでは、PLL回路190から正弦波発生器164を含む選定位相差θsを補償する機能を有する回路部分を位相シフト回路210として概括的に示してある。上記のように位相シフト回路210は、選定位相差−θsに対し、+θsの位相を有する正弦波を生成して振動子14に供給する機能を有するので、センサ増幅回路部200に位相シフト回路210を接続してループを閉じれば、全体として位相差が補償され、自励発振が持続する。
このようにして、硬さ測定に用いる振動条件の下においてクローズドループ内で自励発振が持続するようにできると、この状態で硬さセンサ12に対象物8を接触させる(S128)。そうすると、図11の関連で説明したように、対象物8の硬さ特性に応じ、(硬さセンサ12+対象物8)の周波数−位相特性が変化し、その硬さに応じた位相変化Δθを補償するように、周波数を変化させる。その周波数変化は高精度の周波数カウンタ166を介し検出されて周波数偏差出力部142の機能により出力される(S130)。そして、硬さ換算部144の機能により、予め定められた換算方式に従って、周波数偏差が硬さに変換される(S132)。
その様子を図18に示す。ここでは、図17の状態において、さらに対象物8に硬さセンサ12が接触されている。そして、硬さによる位相差Δθが、位相シフト回路210の機能により周波数をΔf変化させることで補償されるので、クローズドループの自励発振周波数がΔf変化する。このΔfが対象物8の硬さに応じた周波数偏差に相当する。
このように、硬さセンサの両端の位相差について周波数を変化させることで維持するような位相シフト回路を用いることで、オープンループにおいて硬さ測定に用いる周波数、位相差を選定し、その振動状態から短時間で位相シフト回路を含んでループを閉じてその振動状態で自励振動を持続させることができる。したがって、硬さ測定に用いるのに適した振動条件で、対象物の硬さを測定することができる。
本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置のブロック図である。 本発明に係る実施の形態における動作中心周波数選択の手順を示すフローチャートである。 硬さセンサについて取得される周波数−振幅特性、周波数−位相特性の例を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、ピーク選択の内容を説明するため、あるピークについての自由端特性、第1特性、第2特性を並べて示す図である。 本発明に係る実施の形態において、硬さセンサの周波数の変化と位相の変化のタイプを分類し、タイプ1からタイプ4として並べた図である。 本発明に係る実施の形態において、ピークを選択する基準の1例を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、硬さセンサと位相シフト回路の動作中心周波数の設定が行われる様子を説明する図である。 従来技術における位相シフト回路を用いる硬さ測定システムの例を示す図である。 従来技術における位相シフト回路基準伝達特性曲線の例を示す図である。 従来技術における基準伝達特性曲線を有する位相シフト回路を用いた場合の硬さ測定の様子を説明する図である。 本発明の実施の形態の硬さ測定システムにおいて、位相シフト回路の位相曲線106の様子を示す図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの構成を示すブロック図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの第1回路ループに関する構成を示すブロック図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの第2回路ループに関する構成を示すブロック図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムの対象物の硬さを測定する手順を示すフローチャートである。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムにおいて、第1回路ループのときの位相差を説明する図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムにおいて、第2回路ループのときの位相差補償を説明する図である。 本発明に係る実施の形態における硬さ測定システムにおいて、硬さセンサを対象物に接触させたときの周波数偏差を説明する図である。
符号の説明
4,6 テストピース、8 対象物、10 硬さ測定システム、12 硬さセンサ、14 振動子、16 振動検出センサ、20 硬さ検出部、22 増幅器、24 位相シフト回路、26 周波数偏差検出器、28 硬さ換算器、50 動作中心周波数選択装置、52 CPU、54 入力部、56 出力部、58 記憶装置、60 ネットワークアナライザ、62 PG部、64 ANA部、70 ピーク検出部、72 絞込み部、74 自由端特性取得部、76 第1特性取得部、78 第2特性取得部、80 ピーク選択部、82 動作中心周波数設定部、100,106 位相曲線、102 硬さセンサの特性、104 (硬さセンサ+対象物)の特性、120 硬さ測定システム、122 第1回路ループ、124 第2回路ループ、130 硬さ測定コンピュータ、132 制御部、134 モニタ部、136 発振周波数設定部、138 補償位相差出力部、140 切替部、142 周波数偏差出力部、144 硬さ換算部、146 水晶発振器、150 PLD、152 発振周波数設定回路、154 26ビットフルアダー回路、156,164 正弦波発生器、158 位相差検出器、160 256分周カウンタ、162 8ビットフルアダー回路、166 周波数カウンタ、170,172 切り替え回路、180 変換回路、182 D/A変換器、184 ローパスフィルタ、186 バッファ回路、188 コンパレータ、190 PLL回路、192 位相検出器、194 電圧制御発振器、200 センサ増幅回路部、210 位相シフト回路。

Claims (20)

  1. 対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法であって、
    硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出工程と、
    区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得工程と、
    区別された各ピークにつき、硬さセンサをテストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する接触特性取得工程と、
    区別された各ピークにつき、自由端特性と接触特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択工程と、
    選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定工程と、
    を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  2. 対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する方法であって、
    硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出工程と、
    区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得工程と、
    区別された各ピークにつき、硬さセンサを柔らかい硬さの第1テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第1特性取得工程と、
    区別された各ピークにつき、硬さセンサを第1テストピースより硬い第2テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第2特性取得工程と、
    区別された各ピークにつき、自由端特性と第1特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つと、自由端特性と第2特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択工程と、
    選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定工程と、
    を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  3. 2に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    ピーク選択工程は、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向とを比較し、相互に逆方向に変化する候補ピークの中から選択することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  4. 3に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    ピーク選択工程は、
    自由端特性に比べ第1特性が周波数及び位相のいずれも減少方向に変化し、
    自由端特性に比べ第2特性が周波数及び位相のいずれも増加方向に変化する候補ピークの中から選択することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  5. 3に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    ピーク選択工程は、候補ピークの中から、変化幅の大きいピークを選択することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  6. 2に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から任意の周波数範囲の中にあるピークに絞り込む周波数絞込み工程を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  7. 2に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から任意のQ値以下にあるピークに絞り込むQ値絞込み工程を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  8. 2に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    ピーク検出工程において、さらに、複数のピークの中から、そのピーク位置における位相変化率が任意の値以下にあるピークに絞り込む位相変化率絞込み工程を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  9. 2に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法において、
    動作中心周波数設定工程は、位相シフト回路のQ値に応じて任意の周波数幅を設定することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択方法。
  10. 対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する装置であって、
    硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出手段と、
    区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得手段と、
    区別された各ピークにつき、硬さセンサをテストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する接触特性取得手段と、
    区別された各ピークにつき、自由端特性と接触特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つに基づいて、硬さ測定に用いるためのピークを選択するピーク選択手段と、
    選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作周波数とし、硬さセンサの動作周波数から任意の周波数幅を隔てる周波数を位相シフト回路の動作周波数とする動作中心周波数設定手段と、
    を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  11. 対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサと、硬さセンサに増幅器とともに直列に接続され、振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトする位相シフト回路と、を含み対象物の硬さに応じて生ずる周波数変化より対象物の硬さを測定する硬さ測定システムについて、動作中心周波数を選択する装置であって、
    硬さセンサがテストピースに未接触の自由端状態で、周波数に対する振幅特性又は位相特性における複数のピークを検出して各ピークを区別するピーク検出手段と、
    区別された各ピークについて、そのピーク位置の周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する自由端特性取得手段と、
    区別された各ピークにつき、硬さセンサを柔らかい硬さの第1テストピースに接触するときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第1特性取得手段と、
    区別された各ピークにつき、硬さセンサを第1テストピースより硬い第2テストピースに接触させるときに変化する周波数又は位相又は振幅の中の少なくとも1つを測定し記憶する第2特性取得手段と、
    区別された各ピークにつき、自由端特性と第1特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つと、自由端特性と第2特性との間の周波数変化又は位相変化又は振幅変化の中の少なくとも1つとに基づいて硬さ測定に用いるピークを選択するピーク選択手段と、
    を備え、選択されたピークの自由端状態の周波数を硬さセンサの動作中心周波数とすることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  12. 11に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置において、
    ピーク選択手段は、自由端特性と第1特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向と、自由端特性と第2特性との間の周波数変化及び位相変化の変化方向とを比較し、相互に逆方向に変化する候補ピークの中から選択することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  13. 11に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置において、
    ピーク選択手段は、
    自由端特性に比べ第1特性が周波数及び位相のいずれも減少方向に変化し、
    自由端特性に比べ第2特性が周波数及び位相のいずれも増加方向に変化する候補ピークの中から選択することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  14. 11に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置において、
    ピーク選択手段は、候補ピークの中から、変化幅の大きいピークを選択することを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  15. 11に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置において、
    ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から任意の周波数範囲の中にあるピークに絞り込む周波数絞込み手段を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  16. 11に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置において、
    ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から任意のQ値以下にあるピークに絞り込むQ値絞込み手段を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  17. 11に記載の硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置において、
    ピーク検出手段において、さらに、複数のピークの中から、そのピーク位置における位相変化率が任意の値以下にあるピークに絞り込む位相変化率絞込み手段を備えることを特徴とする硬さ測定システムの動作中心周波数選択装置。
  18. 対象物に振動を入射する振動子と対象物から反射される信号を検出する振動検出センサとを有する硬さセンサを用いて対象物の硬さを測定する硬さ測定システムであって、
    硬さセンサと増幅器とが直列接続されたセンサ増幅回路部について、外部より周波数を変化させて掃引する信号を入力し、周波数に対する振幅特性又は位相特性において現れる複数のピークを予め定めた基準と比較して硬さ測定に用いるためのピークを選定し、選定されたピークに対応する選定周波数をセンサ増幅回路部に入力して選定周波数に対応する選定位相差が出力される状態で動作させるオープンループの第1回路ループと、
    センサ増幅回路部の入力端と出力端の間に位相シフト回路を接続しループを閉じて自励発振ループを構成し、センサ増幅回路部への入力波形とその出力波形との間に位相差が生じるときは、位相シフト回路によって周波数を変化させてその位相差をゼロにシフトさせて自励発振を持続させるクローズドループの第2回路ループと、
    センサ増幅回路部を含む回路ループを、第1回路ループにおける選定周波数及び選定位相差の下の動作状態から、第2の回路ループにおいてセンサ増幅回路部の両端の選定位相差を位相シフト回路で補償して選定周波数の下で自励発振を持続させる動作状態に切り替える切り替え手段と、
    切り替え後において、対象物に硬さセンサを接触させ、対象物の硬さに応じてセンサ増幅回路部の両端の位相差が選定位相差からさらに変化する硬さによる位相差成分を、位相シフト回路によって選定周波数から周波数を変化させて補償してセンサ増幅回路の両端を選定位相差のままに維持し、変化させた周波数偏差を出力する周波数偏差出力部と、
    を備え、出力された周波数偏差から対象物の硬さを測定することを特徴とする硬さ測定システム。
  19. 18に記載の硬さ測定システムにおいて、
    位相シフト回路は、
    位相検出器と電圧制御発振器と分周器とがループ状に接続されるフェーズロック回路であって、センサ増幅回路部の出力と分周器の出力とが位相検出器に入力されてそれらの間の位相差をゼロにするように発振状態をロックするフェーズロック回路と、
    時々刻々の分周器のデータについて選定位相差に相当するデータを補償演算し、これに基づき、センサ増幅回路部の出力信号の1周期について選定位相差分の位相差を補償した位相差補償信号を出力する補償信号出力部と、
    を含み、補償信号出力部から出力される位相差補償信号をセンサ増幅回路部の入力信号として供給することを特徴とする硬さ測定システム。
  20. 19に記載の硬さ測定システムにおいて、
    センサ増幅器回路部の出力をデジタル信号に変換して位相シフト回路に供給する変換器を含み、
    デジタル信号で動作する位相シフト回路の補償信号出力部は、
    電圧制御発振器の信号のデータをカウントする分周カウンタと、
    分周カウンタと同じビット数を有する選定位相差を補償するデータを分周カウンタのデータに加算するフルアダー回路と、
    フルアダー回路のデータから正弦波信号を生成する波形生成器と、
    を有し、生成された正弦波信号を位相差補償信号としてセンサ増幅回路部に供給することを特徴とする硬さ測定システム。

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