JPWO2005047330A1 - Tlr4−md−2複合体を標的としたエンドトキシンショック治療剤 - Google Patents

Tlr4−md−2複合体を標的としたエンドトキシンショック治療剤

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Abstract

TLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体や、TLR4−MD−2複合体を標的とした、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体からなるエンドトキシンショック治療剤や、TLR4−MD−2複合体を標的とした、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショック治療方法を提供するものである。インビトロでのLPS刺激による、B細胞の増殖抑制効果及びマクロファージにおけるTNF産生抑制効果を示さず、かつ、エンドトキシンショックに対してTNF産生を亢進して、エンドトキシンショックに対して抑制効果を有する抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体を作製する。

Description

本発明は、TLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体や、TLR4−MD−2複合体を標的とした、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体からなるエンドトキシンショックの治療剤や、TLR4−MD−2複合体を標的とした、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショックの治療方法に関する。
リポポリサッカライド(LPS;lipopolysaccharide)はグラム陰性菌細胞壁外葉の主たる構成成分で、免疫担当細胞ばかりでなく、血管内皮細胞、線維芽細胞など様々な細胞の活性化を誘導する。つまり、生体は分子或いは細胞レベルでLPSを認識することによって、グラム陰性菌の侵入を察知している。LPSを認識しシグナルを伝達する分子は、長い間検索されてきた結果、最近になってようやく明らかにされた。30年程前に見つかったC3H/HeJマウスはLPS低応答性を示すミュータントマウスである。同様なLPS低応答性を示すマウスとしてC57BL/10ScCrも報告されていたが、これらのマウスの原因遺伝子がポジショナルクローニングによってTLR4(Toll−like receptor 4)であると同定された(例えば、Poltrak,A.et al.,Science,282,2085−2088,1998、Qureshi,S.et al.,J.Exp.Med.,189,615−625,1999参照)。
TLR4は、ショウジョウバエにおいて真菌を認識し感染防御を誘導する分子Tollのヒト及びマウスホモローグである(例えば、Medzhitov R,et al.,Nature,388,394−397,1997参照)。長い間探し求められてきたLPS認識分子は、ハエからヒトにまで保存されている病原体認識分子の1つであることが確認された。しかしながら、LPS認識は多くの分子が関与するプロセスで、TLR4単独では説明できないことが明らかにされている。本発明者はTLR4のLPS認識を制御する分子として、RP105、MD−1、MD−2などを報告してきた。
LPS認識機構とTLRs(Toll−like receptors)の関係についても解明されてきた。LPSの活性中心はリピドAと呼ばれ、Nアセチルグルコサミン2分子に脂肪酸が結合したものである。リピドAにコア抗原、さらにO抗原とよばれる糖類がつながったものがLPSである。LPSは低い濃度でもマクロファージ、B細胞、樹状細胞、好中球、血管内皮細胞、線維芽細胞など実に様々な細胞の活性化を誘導する。つまりこれらの細胞はLPSを認識することができる。LPS認識機構は多くの分子が関わる複雑なプロセスである(例えば、実験医学Vol.19(2001)No.5,P81参照)。菌体上にあるLPSはまず、血清中のLPS結合タンパク質(LBP)によって外膜から遊離され、もう一つのLPS結合タンパク質であるCD14へ単体の形で転送される。(例えば、Wright,S.D.et al.,Science,249,1431−1433,1990、Pugen,J.et al.,Immunity,1,509−516,1994参照)。
CD14は血清タンパク質として血中に、或いは細胞表面タンパク質として単球、マクロファージ上に存在している。CD14/LPS複合体はLPS単独の場合に比べて、100〜10,000分の1の低い濃度で細胞の活性化を誘導する(例えば、Wright,S.D.,J.Immunol.,155,6−8,1995参照)。しかし、CD14は細胞質内ドメインをもたないためにLPSシグナルを細胞内へそれ自身では伝達することができない。そこでLPSシグナルを細胞内へ伝達するための新たなレセプター分子の存在が指摘され、検索が続けられていた。最近ようやくそのLPSレセプターの実体がTLR4であると同定された。
ハエのTollレセプターは、個体発生の際に腹側への分化誘導シグナルを伝達するレセプター分子として発見されたが、その後真菌感染を察知して感染防御反応を誘導する役割をもっていることが報告された(例えば、Lemaitre,B.et al.,Cell,86,973−983,1996参照)。更に、Tollによく似た分子TLR(Toll−like receptor)をマウスやヒトももっていることが1997年に明らかにされ、その1つであるTLR4が長い間謎であったLPS/エンドトキシン認識分子であった。ところが、細胞株を用いた実験で、TLR4単独ではLPSを認識できないという結果が報告された。
マウスIL−3依存性細胞株Ba/F3やヒト腎臓由来293細胞株はそれ自身LPSに応答しないし、これらの細胞にヒトTLR4を発現させたトランスフェクタントもLPSに対する応答性は認められない。その理由としてLPS応答にはTLR4に加えて他の分子が必要である可能性が考えられた。本発明者は,Radioprotective 105(RP105)の細胞外ドメインのLRR(leucine−rich repeat)がTLR4のそれとよく似ていることに注目し、v−myb regulated geneの1つであるMD−1がRP105と会合するところから、TLR4もMD−1と会合するのではないかと考えた。しかしながら両方の遺伝子を細胞株に発現させ、免疫沈降で共沈降できるかどうかを調べたが有意な会合は検出できなかった。そこで、TLR4に会合するMD−1類似分子の存在を想定し、データベースで検索を行い、ヒト妊娠子宮由来の遺伝子を得ることに成功した(例えば、Shimazu,R.et al.,J.Exo.Med.,189,1777−1782,1999及び特開2000−262290号公報参照)。
この分子はアミノ酸160個からなり、MD−1とアミノ酸で約23%一致していることから、MD−2という名前をつけた。ヒトMD−2をマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3に単独で発現させても細胞表面には検出されないが、TLR4と共発現させると細胞表面で検出されるようになり、しかもその分布を共焦点レーザー顕微鏡で比較したところほぼ一致していた。さらに、抗ヒトTLR4モノクローナル抗体(HTA125)でTLR4を免疫沈降すると、MD−2が共沈された。これらの実験結果から、RP105−MD−1と同様にTLR4−MD−2複合体も細胞表面上に発現していることが確認された。
TLR4−MD−2複合体によるLPS認識、シグナル伝達の機構を明らかにするために、TLR4のLPS認識におけるMD−2会合の役割が検討された。
マウスIL−3依存性細胞株Ba/F3にヒトTLR4単独、或いはTLR4−MD−2複合体を発現させ、LPS刺激によるNF−κB活性化を、予めBa/F3細胞株に導入しておいたNF−κBレポーター遺伝子を用いたルシフェラーゼアッセイで調べた結果、TLR4単独ではLPS刺激によるNF−κBの活性化は検出されなかったが、TLR4−MD−2複合体を発現した細胞株はLPS応答性を示した。そこで、MD−2を共発現させることによって、獲得されたLPS応答がTLR4を介しているかどうかを確認するために、TLR4に対するモノクローナル抗体(HTA125)を加えたところ、LPS刺激によるNF−κB活性化が特異的に阻害された。(例えば、実験医学Vol.19(2001)、No.5、P83参照)。したがって、TLR4−MD−2複合体がLPSを認識し、シグナルを伝達していることが明らかになった。
上記するようなこれまでの結果は、全て細胞株を用いた実験であり、正常細胞においてTLR4−MD−2の発現やそのLPS認識について検討する必要があった。本発明者は新たに、マウスTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体(MTS510)の確立に成功した(例えば、Akashi,S.et al.,J.Immunol.,164,3471−3475,2000参照)。この抗体を用いて腹腔マクロファージを染色したところ、TLR4−MD−2複合体の発現が確認された。また、LPS刺激で誘導される腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)の産生をこの抗体は特異的に抑制した。更に、LPSで腹腔マクロファージを刺激すると、細胞表面上のTLR4−MD−2複合体の発現が低下した。この発現低下はng/mlという低濃度のLPS刺激でもみられるが、ペプチドグリカンなど他の病原体由来の物質による刺激では認められなかった。またCD14など他の細胞表面分子では同様な発現低下は認められず、TLR4−MD−2に特異的な現象であった(例えば、Nomura,F.et al.,J.Immunol.,164,3476−3479,2000参照)。
これらの結果から、TLR4−MD−2は正常マクロファージ表面上にも発現しており、LPSの認識やシグナル伝達を司っていることが明らかとなった。TLR4やMD−2はともに広範に発現されており、マクロファージばかりでなく、線維芽細胞や血管内皮細胞など、非免疫担当細胞においてもTLR4−MD−2複合体がLPS認識にかかわっている可能性がある。
以上のとおり、近年、グラム陰性菌細胞壁外葉の構成成分であるLPSを認識してグラム陰性菌の進入を察知し、応答する機構における、TLR4及びその会合分子であるMD−2の役割については、徐々にその解明が進んできた。しかし、これまでの結果は、遺伝子や細胞レベルの実験を主とするものであり、今後は解析の方向として、TLR4の病原体認識機構を更に分子レベルで明らかにするとともに、生体レベルの更なる解明が期待されていた。本発明者は、MD−2遺伝子を欠損したマウスを構築し、そのマウスがLPSに全く応答しないことからMD−2が生体レベルでもLPS応答に必須の分子であることを確認した(例えば、特開2003−319734号公報参照)。
抗生物質を中心とした今日までの感染症治療は、感染の現場である宿主自身の侵入細菌に対する免疫防御反応や、加えられた抗生物質および死滅した細菌に対する宿主の反応性に関しては全く考慮されていなかった。このような宿主自身の免疫力を考慮しない一律的な投与は多くの耐性菌や菌交代現象を生み出し、病院内での敗血症による死亡へとつながっていった。このことから宿主の免疫監視機能に基づいた治療法への変換が求められてきている。
近年ハエのTollのヒトホモログであるTLRが発見されてから、Tollは種を越えて存在する病原体監視システムであることがわかってきた。この免疫システムは生体にとって最大の危険であるLPS(エンドトキシン)をはじめとする病原体由来の糖脂質をいち早く察知し排除するために専門化された自然免疫システムであるだけでなく、さらに獲得免疫発動へとつなげていく掛け橋の役目も果たすというまったく新しい認識分子群であった。病原体侵入により体内に入り込んできたLPSをどうやって生体が認識し危険であるというシグナルを伝えるのかに関してこれまでほとんど分かっていなかったが、本発明者らはTLR4の会合分子MD−2を発見し、TLR4−MD−2複合体となって初めてLPS応答性が獲得されることを、独自に作製したモノクローナル抗体を用いた研究にて明らかにしてきた。
本発明の課題は、TLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体や、TLR4−MD−2複合体を標的とした、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体からなるエンドトキシンショック治療剤や、TLR4−MD−2複合体を標的とした、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショック治療方法を提供することにある。
本発明者らは、マウスTLR4−MD−2に対する2種類のモノクローナル抗体、MTS510とSa15−21を作製した。これらのモノクローナル抗体は互いに異なるエピトープを認識する。LPS刺激によるB細胞増殖、マクロファージのサイトカイン産生を抑制する効果は、両方のモノクローナル抗体を同時に加えたときがもっとも強く、次にMTS510が強く、Sa15−21による抑制効果は最も弱かった。次に、エンドトキシンショックのマウスモデルを用いて、この2つのモノクローナル抗体、CD14に対するモノクローナル抗体の効果を調べた。モノクローナル抗体投与2時間後にLPSとガラクトサミンを加えて、マウスの生存を調べたところ、モノクローナル抗体無投与、抗CD14モノクローナル抗体、MTS510では全部24時間以内に死亡したのに対して、Sa15−21を投与したマウスは、全く死ななかった。LPSで誘導される血中の腫瘍壊死因子(TNF,Tumor necrosis factor)やIL−12を測定したが、Sa15−21では抑制効果は全く認められなかった。インビトロでのLPS応答で、最も抑制効果を示したMTS510とSa15−21との同時投与も、MTS510単独と同様にほとんどエンドトキシンショック抑制効果はなかった。これらの結果は、TLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体Sa15−21によるエンドトキシンショック抑制効果は、LPSの作用を単独に遮断しているわけではなく、まったく新たな作用機構でエンドトキシンショックを防いでいる可能性が考えられた。本発明は以上の知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、(1)インビトロでのLPS刺激による、B細胞の増殖抑制効果及びマクロファージにおけるTNF産生抑制効果を示さず、かつ、エンドトキシンショックに対して抑制効果を有することを特徴とするTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体や、(2)エンドトキシンショックに対して、TNF産生を亢進することを特徴とする(1)記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体に関する。
また本発明は、(3)(1)又は(2)記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を含有することを特徴とするTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療剤や、(4)(1)又は(2)記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いることを特徴とするTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療方法に関する。
さらに本発明は、(5)マウスTLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21や、(6)マウスにエンドトキシンショックを生起させる前後に、マウスTLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21と被検物質とをマウスに投与し、マウスのエンドトキシンショックの程度を評価することを特徴とするエンドトキシンショック抑制作用の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法や、(7)(1)〜(5)のいずれか記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を含有することを特徴とするTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療剤や、(8)(1)〜(5)のいずれか記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いることを特徴とするTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療方法や、(9)マウスにエンドトキシンショックを生起させる前後に、マウスTLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21と被検物質とをマウスに投与し、マウスのエンドトキシンショックの程度を評価することを特徴とするエンドトキシンショック抑制作用の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法に関する。
第1図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21が、マウスTLR4−MD−2複合体に特異的な抗体であることを示す図である。 第2図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21と、抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体MTS510とが異なる抗原決定基を認識することを示す、クロスブロッキングの結果を示す図である。 第3図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21が、LPS刺激によるマウス脾臓細胞における増殖抑制効果を示さない結果を示す図である。 第4図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21が、LPS刺激によるマウスマクロファージにおけるTNF産生抑制効果を示さない結果を示す図である。 第5図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21が、マウスエンドトキシンショックに対して、レスキュー効果を示す図である。 第6図は、マウスエンドトキシンショックに対して、抗CD14モノクローナル抗体が全くレスキュー効果を示さない結果の図である。 第7図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21が、LPSとガラクトサミン投与後1時間において、TNFの産生量を10倍近く亢進していることを示す図である。 第8図は、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21が、マウスTLR4−MD−2複合体におけるマウスTLR4のN末端側の抗原決定基を認識すること、及び本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体TF904が、ヒトTLR4−MD−2複合体におけるヒトTLR4のN末端側の抗原決定基を認識することを示す図である。
本発明のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体としては、インビトロでのLPS刺激による、B細胞の増殖抑制効果及びマクロファージにおけるTNF産生抑制効果を示さず、かつ、エンドトキシンショックに対して抑制効果を有するモノクローナル抗体、好ましくはエンドトキシンショックに対して、TNF産生を亢進するモノクローナル抗体、より好ましくはTLR4−MD−2複合体におけるTLR4のN末端側の抗原決定基を認識するモノクローナル抗体であれば特に制限されるものではなく、かかるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Nature 256,495−497,1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4,72,1983)、EBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,pp.77−96,Alan R.Liss,Inc.,1985)など任意の方法を用いて作製することができる。
また、一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号)を用いることができ、ヒト化抗体をつくるために、ヒト化抗体の調製法(米国特許第5,585,089号、Nature,321,522−525,1986、Protein Engineering,4,773−783,1991)を用いることができ、キメラ抗体をつくるために、キメラ抗体の調製法(米国特許第4,816,567号、Science,229,1202−1207,1985、BioTechniques,4,214,1986、Nature,312,643−646,1984、Nature,314,268.270,1985)を用いることができる。
例えば、ハイブリドーマ法により本発明のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を作製するには、ヒト、マウス等に由来するTLR4−MD−2を細胞表面に発現する細胞又はその細胞膜断片を感作抗原とし、かかる抗原を用いて、由来抗原とは異種のマウス、ラット等の哺乳動物に公知の免疫法により免疫し、免疫した動物から得られる脾細胞等の免疫細胞とマウス等のミエローマ細胞とを公知の細胞融合法により細胞融合させ、公知のクローニング技術により目的とするモノクローナル抗体産生ハイブリドーマをクローニングし、このハイブリドーマを培養することにより作製することができる。上記ヒト、マウス等に由来するTLR4−MD−2を細胞表面に発現する細胞又はその細胞膜断片としては、例えば、LPS刺激あるいは遺伝子導入により、ヒト、マウス等に由来するTLR4及びMD−2を共発現させた細胞株やその細胞膜断片を例示することができ、また、上記マウスのミエローマ細胞としては、8−アザグアニン耐性株を用いるのが有利であり、公知のものとしては、BALB/CマウスのP3×65Ag8株、P3−NS1/1−Ag4−1株、P3×63AgU1株、SP2/OAg14株、P3×63Ag8.6.5.3株、MPC11−45.6.TG1.7株、SP−1株等を例示することができる。
上記細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等の融合促進剤の存在下に行われるが、融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を使用することもできる。免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して、免疫細胞を1〜10倍程度とするのが好ましい。また、細胞融合に用いる培地としては、例えば、ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI−1640培地、MEM培地等のこの種の細胞培養に使用される通常の培地が使用することができる。細胞融合は、免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培地内でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1,000〜6,000程度のPEGを、通常、培地に約30〜60%(W/V)の濃度で添加し、混合することによって行われる。続いて、適当な培地を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことにより目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作出することができる。
クローン化されたハイブリドーマから、本発明のモノクローナル抗体を採取するには、当該ハイブリドーマを常法に従って培養し、その培養上清から得る方法や、あるいはハイブリドーマをこれと適合性のある哺乳動物に投与して増殖させその腹水から得る方法などを例示することができる。こうして得られたモノクローナル抗体は、アフィニティークロマトグラフィー、塩析、ゲル濾過等の通常の精製手段を用いることにより高純度に精製することができる。
本発明のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体には、本発明の抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体のほか、便宜上当該抗体のFab断片やF(ab’)断片等も含まれ、例えば、Fab断片は抗体をパパイン等で処理することにより、またF(ab’)断片はペプシン等で処理することにより調製することができる。
また上記抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又はH等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、上記TLR4−MD−2複合体の機能解析を行うことができる。また免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
本発明のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体として、具体的には、マウスTLR4−MD−2複合体におけるマウスTLR4のN末端側の抗原決定基を特異的に認識する抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21や、ヒトTLR4のN末端側の抗原決定基を特異的に認識する抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を挙げることができる。モノクローナル抗体Sa15−21は、LPS(リピドA)であらかじめ刺激しておいたマウスのTLR4−MD−2複合体を発現する正常ラット腎臓細胞を用いて、ラットの脚パッドにおいて免疫し、1週間後、リンパ節から得た免疫細胞とSP2/0ミエローマ細胞とを融合させ、その培養上清が、マウスのTLR4−MD−2を発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3と特異的に反応するハイブリドーマを選択し、例えば、この選択したハイブリドーマをヌードマウスの腹腔に投与し、得られた腹水からカプリル酸を用いて精製することにより、モノクローナル抗体Sa15−21を得ることができる。またモノクローナル抗体TF904は、LPS(リピドA)であらかじめ刺激しておいたヒトTLR4−MD−2複合体を発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3を用いてマウス腹腔に3回免疫したのち脾臓から得た免疫細胞とSP2/0ミエローマ細胞とを融合させ、その培養上清が、ヒトのTLR4−MD−2を発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3と特異的に反応するハイブリドーマを選択し、例えば、この選択したハイブリドーマをヌードマウスの腹腔に投与し、得られた腹水からカプリル酸を用いて精製することにより、モノクローナル抗体TF904を得ることができる。なお、モノクローナル抗体TF904産生ハイブリドーマ(Mouse anti−human hybridoma TF904)は、2004年9月7日に受領番号FERM ABP−10118として、国際寄託当局である独立行政法人産業技術総合研究所 特許性物寄託センターに受託されている。
上記抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21と同様なエピトープ、すなわちTLR4−MD−2複合体におけるTLR4のN末端側の抗原決定基を特異的に認識するヒト型モノクローナル抗体、例えば抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を用いると、全く新しいタイプのエンドトキシンショックの予防・治療方法が可能となる。
すなわち、本発明のTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療剤は、かかる本発明のヒト型抗ヒトTLR4モノクローナル抗体、例えば抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を含有するものであり、本発明のTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療方法は、かかる本発明のヒト型抗ヒトTLR4モノクローナル抗体、例えば抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を用いることを特徴とする。
上記本発明のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体、例えば抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21や抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を用いると、エンドトキシンショック抑制作用の促進物質や抑制物質を有利にスクリーニングすることが可能になる。例えば、マウスに、モノクローナル抗体Sa15−21を腹腔内投与し、2時間後にガラクトサミンとLPSを腹腔内投与してエンドトキシンショックを誘導し、マウスの生存数をモノクローナル抗体Sa15−21未投与の対照と比較することにより、あるいは、マウスに、モノクローナル抗体Sa15−21を腹腔内投与し、2時間後にガラクトサミンとLPSを腹腔内投与し、LPSとガラクトサミン投与後1時間の血中のTNFをELISAで測定し、血中TNF濃度をSa15−21未投与の対照と比較することにより、エンドトキシンショック抑制作用の促進物質や抑制物質を有利にスクリーニングすることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(試薬、マウス)
大腸菌由来のリポ多糖(LPS)、サルモネラ・ミネソタ由来のリピドA、D−ガラクトサミンはSigma(St.Louis,MO)から購入した。マウスは日本SLCからBALB/cマウス(5−10週齢で使用)を購入した。ハイブリドーマ増殖用のICRヌードマウス(CD−1(ICR)−nu)は、日本チャールズリバーより購入した。
(モノクローナル抗体の構築)
マウスTLR4−MD−2、ヒトTLR4−MD−2及びCD14に対するモノクローナル抗体を構築した。免疫源として用いる、マウスTLR4とマウスMD−2、並びにマウスCD14を共発現する正常ラット腎臓細胞と、ヒトTLR4とヒトMD−2を共発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3とを文献(Current Protocols in Molecular Biology,9.3.1)記載の方法に準じてそれぞれ作製した。1μg/mlのリピドAであらかじめ刺激しておいた、マウスCD14及びマウスTLR4−MD−2を発現する正常ラット腎臓細胞ラットの脚パッドにおいて免疫し、1週間後、リンパ節から得た免疫細胞とSP2/0ミエローマ細胞とを融合させ、その培養上清が、マウスのTLR4−MD−2又はCD14を発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3と特異的に反応するハイブリドーマを選択し、抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21及び抗マウスCD14モノクローナル抗体Sa2−8(ラットIgG2a/k)を得た。またモノクローナル抗体TF904は、LPS(リピドA)であらかじめ刺激しておいたヒトTLR4−MD−2複合体を発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3を用いてマウス腹腔に3回免疫したのち脾臓から得た免疫細胞とSP2/0ミエローマ細胞とを融合させ、その培養上清が、ヒトのTLR4−MD−2を発現するマウスIL−3依存性細胞株Ba/F3と特異的に反応するハイブリドーマ(Mouse anti−human hybridoma TF904;FERM ABP−10118)を選択し、抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を得た。また、これらモノクローナル抗体は、選択したハイブリドーマをICRヌードマウス(CD−1(ICR)−nu、日本チャールズリバーより購入)の腹腔に投与し、得られた腹水からカプリル酸を用いて精製した。
(エンドトキシンショックの誘導)
マウスにD−ガラクトサミン25mgとLPS500ngを腹腔に投与し、その生存を経時的にモニターした。各モノクローナル抗体はD−ガラクトサミンとLPSの併投与の2時間前に腹腔に投与した。
(B細胞精製、活性化)
マウス脾臓B細胞はDynaビーズ(DYNAL)に抗CD43抗体S7をつけたものを用いてT細胞を除去することで精製した。精製したB細胞は96穴プレートに2×10/ウェルで蒔き、LPSで刺激した。培養3日目にトリチウム標識のサイミヂンを加え、6時間皿に培養した後にそのDNAをグラスフィルターに回収し、取り込まれたトリチウムのカウントを測定することで、増殖反応を測定した。
(サイトカイン産生)
サイトカイン産生を、ELISA(Enzyme−linked immunoadsorbent assay)はBiosource Internationalのキットを用いて測定した。
(細胞の染色)
細胞は抗体で染色した後にフローサイトメーター(ベクトンディッキンソン、FACScan)を用いて解析した。
(Sa15−21はマウスTLR4−MD−2複合体に特異的な抗体である)
マウスTLR4−MD−2に対する新たに確立した抗体Sa15−21抗原特異性を調べた。TLR4−MD−2及びTLR4−MD−2をそれぞれ発現した細胞株Ba/F3を、モノクローナル抗体Sa15−21を用いて染色した後、フローサイトメーターを用いて解析した。結果を図1aに示す。図1aにおいて、白抜きのヒストグラムはSa15−21を加えていないサンプルの結果を示す。TLR4(上段)及びMD−2(中段)を発現する細胞においては、Sa15−21抗体による染色は認められなかったが、TLR4−MD−2(下段)を発現させた細胞株の表面のみがSa15−21抗体で染色され、モノクローナル抗体Sa15−21がTLR4−MD−2複合体に特異的な抗体であることを確認した。
次に、TLR4、TLR4−MD−2、CD14とTLR4、CD14とTLR4−MD−2をそれぞれ発現する細胞株Ba/F3をフラッグに対する抗体(上段)、あるいはSa15−21(下段)で免疫沈降し、電気泳動後、沈降したTLR4をTLR4に対するポリクローナル抗体で検出した。結果を図1bに示す。これら免疫沈降の結果は、モノクローナル抗体Sa15−21がTLR4−MD−2複合体に特異的な抗体であることを示している。
(抗マウスTLR4−MD−2抗体、MTS510とSa15−21はそれぞれ異なる抗原決定基に結合する)
本発明者らが、すでに確立している抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体MTS510と、今回新しく確立した抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21とが、認識する抗原決定基の異同を、TLR4−MD−2を発現する細胞表面でのクロスブロッキング(cross−blocking)により調べた。前処理なし(上段)、あるいはMTS510(中段)かSa15−21(下段)で前処理した、TLR4−MD−2を発現する細胞株Ba/F3を、ビオチン化したMTS510(左)又はSa15−21(右)で染色した。結果を図2に示す。図2において、白抜きのヒストグラムはビオチン化抗体を加えていないサンプルの結果を示す。どちらのモノクローナル抗体も互いの結合を前処理でブロックできないことから、互いに異なる抗原決定基を認識していることがわかった。
(LPS刺激によるマウス脾臓細胞増殖に対する抗体の効果)
インビトロでのLPS応答に対するSa15−21の影響を調べるために、LPS刺激によるB細胞の増殖を調べた。B細胞をリピドA(100ng/ml)存在下又は非存在下で培養し、B細胞に取り込まれたトリチウムのカウントを測定することで、その増殖を測定した。結果を図3に示す。リピドA非存在下で培養した場合、脾臓B細胞の増殖は誘導されなかった。LPS刺激によるB細胞増殖の抑制は、Sa15−21単独では認められなかったが、MTS510単独では弱い抑制効果が認められた。また、MTS510とSa15−21の併用で最も強い抑制効果が認められた。
(LPS刺激による、マウスマクロファージ細胞のTNF産生に及ぼすモノクローナル抗体の効果)
インビトロでのLPS応答に対するSa15−21の影響を調べるために、LPS刺激によるマウスマクロファージ細胞(RAW264.7)におけるTNF産生量を調べた。リピドA(1ng/ml)でマクロファージ細胞を刺激し、又は刺激せず、その上清中のTNFをELISAで測定した。結果を図4に示す。リピドAで刺激しなかった場合、マウスマクロファージによるTNF産生はほとんど認められなかった。LPSでマウスマクロファージを刺激した場合、Sa15−21やMTS510それぞれ単独ではそれほどのTNF産生抑制効果は認められなかったが、MTS510とSa15−21の併用やMTS510と抗CD14抗体の併用で、マウスマクロファージによるTNF産生抑制効果が認められた。
(マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果1)
インビボにおける抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体の効果を明らかにするために、エンドトキシンショックをガラクトサミンとLPSで誘導し、抗体の効果を調べた。マウス一匹あたり抗体100μgずつ腹腔内投与し、2時間後にガラクトサミン25mgとLPS500ngを腹腔内投与してエンドトキシンショックを誘導し、マウスの生存数の経時変化により、マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果を調べた。結果を図5に示す。MTS510、MTS510とSa15−21の併用など、LPS抑制効果がインビトロで認められた抗体ではわずかなレスキュー効果しか認められなかった。しかしながらLPS抑制効果のないSa15−21単独投与で、すべてのマウスがエンドトキシンショックから救われることがわかった。
(マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果2)
CD14に対する抑制効果もエンドトキシンショックを抑制する効果があることが報告されている。そこでインビボにおける抗CD14モノクローナル抗体の効果を明らかにするために、エンドトキシンショックをガラクトサミンとLPSで誘導し、抗体の効果を調べた。マウス一匹あたり抗体100μgずつ腹腔内投与し、2時間後にガラクトサミン25mgとLPS500ngを腹腔内投与してエンドトキシンショックを誘導し、マウスの生存数の経時変化により、マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果を調べた。結果を図6に示す。その結果、抗CD14モノクローナル抗体は、全くレスキュー効果を認めなかった。
(ガラクトサミンとLPS投与一時間後のマウス血清中のTNF産生)
抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショック抑制効果の作用機序を明らかにするために、LPSとガラクトサミン投与後1時間の血中のTNFを測定した。マウスに、Sa15−21を腹腔内投与し、2時間後にガラクトサミンとLPSを腹腔内投与し、LPSとガラクトサミン投与後1時間の血中のTNFをELISAで測定した結果を図7に示す。インビトロでのLPS刺激によるマウスマクロファージ細胞におけるTNF産生の抑制はSa15−21でもほかの抗体でもほとんど認められなかった(図4)が、インビボにおいてはSa15−21のみがTNFの産生量を10倍近く亢進していることがわかった。
これらの結果は、TLR4−MD−2に対する抗体Sa15−21がエンドトキシンショックをはじめ、LPSが関与する疾患の治療に有効であることを示している。またその作用機序は単なるLPS応答の抑制ではなく、まったく新たな機序によることが予想される。
(抗TLR4−MD−2モノクローナル抗体の抗原決定基)
抗マウスTLR4−MD−2抗体Sa15−21及びMTS510の抗原決定基、並びに抗ヒトTLR4−MD−2モノクローナル抗体TF904の抗原決定基のロケーションについて調べた。293T細胞株(human kidney cell−line with T−antigen)に、リポフェクタミン(lipofectamine)によりTLR4及びMD−2を一過性にトランスフェクションした細胞を用いて各抗体で染色した結果を図8に示す。図8中、最上段は(1)マウスTLR4全長及びマウスMD−2を、2段目は(2)マウスTLR4N末端側・ヒトTLR4C末端側キメラcDNA(Cytoplasmic deleted)及びマウスMD−2を、3段目は(3)ヒトTLR4N末端側・マウスTLR4C末端側キメラcDNA(Cytoplasmic deleted)及びマウスMD−2を、4段目は(4)ヒトTLR4全長及びヒトMD−2を、それぞれトランスフェクトした結果を示している。Sa15−21及びMTS510はビオチン化抗体で、TF904はハイブリドーマ上清を用いて染色した。
図8において、白抜きのヒストグラムは、モノクローナル抗体Sa15−21、MTS510、TF904を加えていないサンプルの結果を示す。抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21は、上記(1)及び(2)と反応し、(3)及び(4)とは反応しないことから、マウスTLR4−MD−2複合体におけるマウスTLR4のN末端側の抗原決定基を認識することがわかる。これに対して、抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体MTS510は、上記(1)及び(3)と反応し、(2)及び(4)とは反応しないことから、マウスTLR4−MD−2複合体におけるマウスTLR4のC末端側の抗原決定基を認識することがわかる。また、抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904は、上記(3)及び(4)と反応し、(1)及び(2)とは反応しないことから、ヒトTLR4のN末端側の抗原決定基を認識することがわかる。
本発明によると、TLR4−MD−2に対するモノクローナル抗体をあらかじめ投与しておくと、LPSによるエンドトキシンショックを回避できる。LPSレセプターに対するモノクローナル抗体がエンドトキシンショックを回避できるという知見は抗体による治療法となるとともに、抗体によるエンドトキシンショック回避機構を解析することで、従来考慮されなかった新たなエンドトキシンショック治療の標的分子の同定につながることが期待される。さらには免疫賦活剤であるLPSの認識防御機構の解析が生体内免疫賦活機構の解明に直結することから、免疫監視の基盤とその維持・制御という当領域の研究に資することができる。

Claims (9)

  1. インビトロでのLPS刺激による、B細胞の増殖抑制効果及びマクロファージにおけるTNF産生抑制効果を示さず、かつ、エンドトキシンショックに対して抑制効果を有することを特徴とするTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体。
  2. エンドトキシンショックに対して、TNF産生を亢進することを特徴とする請求項1記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体。
  3. TLR4−MD−2複合体におけるTLR4のN末端側の抗原決定基を認識する請求項1又は2記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体。
  4. マウスTLR4−MD−2複合体におけるマウスTLR4のN末端側の抗原決定基を特異的に認識する抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21。
  5. ヒトTLR4のN末端側の抗原決定基を特異的に認識する抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904。
  6. ヒトTLR4のN末端側の抗原決定基を特異的に認識する抗ヒトTLR4モノクローナル抗体TF904を産生するハイブリドーマ(FERM ABP−10118)。
  7. 請求項1〜5のいずれか記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を含有することを特徴とするTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療剤。
  8. 請求項1〜5のいずれか記載のTLR4−MD−2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いることを特徴とするTLR4−MD−2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防・治療方法。
  9. マウスにエンドトキシンショックを生起させる前後に、マウスTLR4−MD−2複合体を特異的に認識する抗マウスTLR4−MD−2モノクローナル抗体Sa15−21と被検物質とをマウスに投与し、マウスのエンドトキシンショックの程度を評価することを特徴とするエンドトキシンショック抑制作用の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法。
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