JPWO2005040361A1 - 幹細胞の簡易調製法およびそれに使用するフィーダー細胞 - Google Patents

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Abstract

本発明は、従来技術では達成し得ない程度の効率で幹細胞(特に、霊長類のES細胞)を樹立することができる技術を提供することを課題とする。本発明は、正常細胞と、細胞株とを含む、幹細胞を調製するためのフィーダー細胞調製物を提供する。本発明はまた、正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞調製物の上で、幹細胞を培養する工程を包含する、幹細胞を調製するための方法を提供する。本発明はまた、臓器、組織または細胞を再生するための移植物を調製するための方法であって:A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;B)該幹細胞を、正常細胞と、細胞株とを含む、幹細胞を調製するためのフィーダー細胞調製物の上で培養する工程;およびC)該幹細胞を所望の臓器、組織または細胞を再生するための移植物へと分化させる工程、を包含する、方法をも提供する。

Description

本発明は、幹細胞の分野にある。より詳細には、本発明は、幹細胞(特に、霊長類の胚性幹細胞(本明細書において以下ES細胞ともいう))の簡易な調製および保存のための方法に関する。
再生医療による疾患治療が最近注目を浴びている。再生医療は、臓器移植のほか、医療機器での補助システムの利用などに代わる治療法としての役割が期待されている。しかし、これを臓器または組織機能不全を呈する多くの患者に対して日常的に適応するまでには至っていない。
再生医療の中心にある幹細胞、特にES細胞は、その医療応用面での可能性から近年その重要性を増している(非特許文献1)。ヒトES細胞はその中でも特に重要であるがその樹立または安定した継代維持が難しく効率的な利用を阻害している。ヒトを含めた霊長類ES細胞は、その樹立必要とされる胚盤胞の供給がきわめて少なく、少数の胚盤胞から効率よくES細胞株の樹立を行う必要がある。従来の方法では胚盤胞からの樹立の効率は多くてもせいぜい10から30%程度であるといわれている。
トランスジェニック動物の作出が、ES細胞を使用することで可能となっている。ES細胞とは、通常胚盤胞と呼ばれる発生段階の胚に存在する将来動物個体となる未分化な細胞群である内部細胞塊(Inner cell mass,ICM)の細胞を培養することによって得られた細胞株である。ES細胞は1981年にM.J.Evans とM.H.Kaufman(非特許文献2)に続いて、G.R.Martin(非特許文献3)によりマウスで多分化能を有する細胞株として樹立された。
ES細胞が、霊長類で樹立され、その応用に対する期待がますます高まる中、これらの問題を克服するために幹細胞治療とその応用を中心とした再生医学に対する期待がますます高まっている。
非特許文献4は、ヒトの皮膚の繊維芽細胞をフィーダーに利用する論文で樹立は1つの内部細胞塊から1株樹立しているが、その効率はまったく低いものである。非特許文献5は、ヒトES細胞の最初の論文であるが、その樹立効率は、5株/14内部細胞塊である。非特許文献6ではSTO細胞を用いてヒトES細胞の樹立を行っているが、その樹立効率は、3株/14内部細胞塊と、まったく低いものにとどまっているのが現状である。このように、樹立効率において、50%はおろか、30%を達成するのも覚束ないというのが現状の技術水準であるといえる。
本発明者らは、特許文献1において、培地の最適条件を検討した。しかし、培地を最適化するだけでは、樹立効率を上げるには限界があり、樹立されたES細胞には分化細胞が有意に存在する。
他のグループもまた、幹細胞の維持のための方法を開発している(例えば、特許文献2、非特許文献5および7)。しかし、これらの方法では、フィーダー細胞は単種類使用されるのみであり、常に分化細胞が混入する。特に、非特許文献7では、50%ほどが部分的に分化した細胞集団となっている。
従って、より分化細胞の混入が低減し、未分化状態の維持がより亢進するために使用される技術に対する要望が強まっている。
(先行技術文献)
特開2003−116527号 米国特許第6200806号 幹細胞・クローン 研究プロトコール 中辻編、羊土社(2001) M. J. Evans & M. H. Kaufman: Nature, 292, 154, 1981 G. R. Martin: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 7634, 1981 Hovatta O., et al. , Human Reproduction Vol.18, No.7 pp. 1404−1409, 2003 Thomson J.A., et al. , Science. 282:1145−1147, 1998. Park J.H. et al., Biology of Reproduction, 2003 online Aug. 20. Reubinoff BE, Pera MF, Fong CY, Trounson A, Bongso A, Nat Biotechnol. 2000 Apr;18(4):399−404
本発明は、従来技術では達成し得ない程度の効率(特に、分化細胞の混入を低減する)で幹細胞(特に、ヒトを含む霊長類のES細胞)を樹立することができる技術を提供することを課題とする。
本発明は、従来使用されている、フィーダー細胞を複数(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞、繊維芽細胞株など)を混合してフィーダー細胞として用いると、予想外に効率よく幹細胞を樹立することができることを見出したことによって上記課題を解決した。
従って、本発明は、以下を提供する。
一つの局面において、本発明は、正常細胞と、細胞株とを含む、幹細胞を調製するためのフィーダー細胞調製物を提供する。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、初代培養細胞を含む。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、不死化していない細胞である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、繊維芽細胞を含む。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、繊維芽細胞初代培養細胞である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、マウス由来である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、胎児由来である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、継代数が5回以下である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、マウス11〜16日齢胎児から酵素処理により得られた繊維芽細胞である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、継代数が5回以下の初代培養細胞である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、不死化している。
一つの実施形態において、上記細胞株は、繊維芽細胞株である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、継代された期間が2ヶ月以下である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、継代された期間が1ヶ月以下である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、マウス由来である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、胎児由来である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、STO株である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、neo抵抗性である。
一つの実施形態において、上記細胞株は、SL10株である。
一つの実施形態において、上記正常細胞と、上記細胞株とは、約1:10〜10:1である。
一つの実施形態において、上記正常細胞と、上記細胞株とは、約1:3〜3:1である。
一つの実施形態において、上記正常細胞と、上記細胞株とは、ほぼ等量で存在する。
一つの実施形態において、上記幹細胞は、胚性幹細胞である。
一つの実施形態において、上記幹細胞は、ヒト胚性幹細胞である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、マウス繊維芽細胞初代培養細胞であり、上記細胞株は、SL10株である。
一つの局面において、本発明は、正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞調製物の上で、幹細胞を培養する工程を包含する、幹細胞を調製するための方法を提供する。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、上記記載の実施形態の任意の形態を採り得る。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物が配置される培養ディッシュはゼラチンコーティングされている。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、約1×10細胞/cm〜約1×10細胞/cmで播種される。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、混合して播種された後5日以内に使用される。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物中の上記正常細胞は、マウス繊維芽細胞初代培養細胞であり、上記細胞株は、SL10株である。
一つの実施形態において、上記幹細胞は、ノックアウト血清代替添加物(KSR)を含む培地中で培養される。
一つの実施形態において、上記方法は、さらに、継代する工程を包含し、上記継代工程において、コラゲナーゼが使用される。
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって調製される、幹細胞調製物を提供する。
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって調製される、ES細胞調製物を提供する。
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって調製される、霊長類ES細胞調製物を提供する。
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって調製される、ヒトES細胞調製物を提供する。
別の局面において、本発明は、臓器、組織または細胞を再生するための移植物を調製するための方法であって:A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;B)該幹細胞を、正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞の上で培養する工程;およびC)該幹細胞を所望の臓器、組織または細胞を再生するための移植物へと分化させる工程、を包含する、方法を提供する。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、上記フィーダー細胞調製物記載の実施形態の任意の形態を採り得る。
一つの実施形態において、前記所望の臓器、組織または細胞は、神経、血球、骨、軟骨、心臓、心膜、血管、筋肉、眼、肝臓、膵臓、腸、胃、肺、気管、毛および皮膚からなる群より選択される。
一つの実施形態において、上記所望の臓器、組織または細胞と上記フィーダー細胞とは、同じ種である。
一つの実施形態において、上記所望の臓器、組織または細胞は霊長類のものであり、上記フィーダー細胞はマウス由来である。
一つの実施形態において、上記培養は、エキソビボで行われる。
一つの実施形態において、上記幹細胞は、被検体から摘出されてすぐのものであるか、または凍結保存されたものである。
一つの実施形態において、上記培養は、37℃、飽和湿度中で5%CO下で行われる。
一つの実施形態において、上記分化は、DNA脱メチル化剤、ヒストン脱アセチル化剤、核内レセプターリガンド、細胞増殖因子、サイトカイン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラビノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレンおよびセレンからなる群より選択される少なくとも1つの分化因子を含む培養液において行われる。
他の局面において、本発明は、本発明の臓器、組織または細胞を再生するための移植物を調製するための方法によって調製される、臓器、組織または細胞を提供する。
一つの局面において、本発明は、臓器、組織または細胞を再生するためのシステムであって:A)容器;およびB)上記容器上に播種される、正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞、を備える、システムを提供する。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、上記フィーダー細胞調製物記載の実施形態の任意の形態を採り得る。
一つの局面において、本発明は、正常細胞と細胞株との混合物を提供する。
一つの実施形態において、この混合物は、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを含む。
一つの実施形態において、上記初代培養細胞は、マウス胎児初代培養繊維芽細胞である。
一つの実施形態において、上記繊維芽細胞株は、STO株である。
一つの実施形態において、上記正常細胞は、マウス繊維芽細胞初代培養細胞であり、上記細胞株は、SL10株である。
一つの局面において、本発明は、臓器、組織または細胞を再生するための方法であって: A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;B)上記幹細胞を、正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞上で培養する工程;およびC)上記培養された上記幹細胞を上記被検体の処置されるべき部位に移植する工程、を包含する、方法を提供する。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、上記フィーダー細胞調製物記載の実施形態の任意の形態を採り得る。
一つの実施形態において、本発明は、D)上記幹細胞を分化させる工程をさらに包含する。
一つの局面において、本発明は、フィーダー細胞としての、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを含む細胞混合物の使用を提供する。
一つの局面において、本発明は、フィーダー細胞を含む医薬を製造するための、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを含む細胞混合物の使用を提供する。
別の局面において、本発明は、フィーダー細胞調製物としての、正常細胞と、細胞株とを含む細胞混合物の使用を提供する。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、上記フィーダー細胞調製物記載の実施形態の任意の形態を採り得る。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、増殖しないように処理されている。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、マイトマイシンCにより処理されている。
別の局面において、本発明は、幹細胞の使用が適切である疾患、障害または状態の処置または予防のための、幹細胞を含む医薬の製造における、正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞調製物の使用を提供する。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、上記フィーダー細胞調製物記載の実施形態の任意の形態を採り得る。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、増殖しないように処理されている。
一つの実施形態において、上記フィーダー細胞調製物は、マイトマイシンCにより処理されている。
従って、本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解される。
本発明によって、特に幹細胞を効率よく樹立する技術が提供される。特に、霊長類細胞では、本発明50%以上(好ましくは80%以上)という従来達成不可能であった高い効率で細胞株の樹立が可能となった。特に、本発明のフィーダー細胞を用いて調製された幹細胞調製物に含まれる分化細胞が50%未満であり、10%未満、あるいは約1%未満という低率も達成し得ることが明らかになった。従って、本発明は、従来達成できなかった高純度の多能性細胞の調製物が提供される。
図1Aは、本発明の方法により樹立したサルES細胞株の解説写真である。バーは100μmを示す。 図1Bは、この方法により樹立したサルES細胞株の解説写真である。バーは50μmを示す。 図2Aは、ヒトES細胞の写真である。バーは、275μmを示す。 図2Bは、ヒトES細胞の写真である。バーは、70μmを示す。 図3は、未分化状態特異的マーカー発現である。 図4は、神経細胞への分化である。 図5は、テラトーマ形成による多分化能の証明である。 図6は、ES細胞樹立スキーム例を示す。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙し、必要な技術の説明を行い、本発明を説明する。
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本発明においては、どのような細胞でも対象とされ得る。本発明で使用される「細胞」の数は、光学顕微鏡を通じて計数することができる。光学顕微鏡を通じて計数する場合は、核の数を数えることにより計数を行う。当該組織を組織切片スライスとし、ヘマトキシリン−エオシン(HE)染色を行うことにより細胞外マトリクス(例えば、エラスチンまたはコラーゲン)および細胞に由来する核を色素によって染め分ける。この組織切片を光学顕微鏡にて検鏡し、特定の面積(例えば、200μm×200μm)あたりの核の数を細胞数と見積って計数することができる。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
本発明において使用されるフィーダー細胞として使用される細胞は、正常細胞と細胞株とが存在し、好ましくは、繊維芽細胞またはその対応物がある限り、どの生物由来の細胞(例えば、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞)が用いられてもよい。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。別の実施形態では、好ましくは、フィーダー細胞としては、げっ歯類細胞が用いられ、より好ましくは、マウス細胞がフィーダー細胞として用いられる。
本発明で用いられる幹細胞として使用される細胞は、幹細胞またはその対応物がある限り、どの生物由来の細胞(例えば、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞)が用いられてもよい。さらに好ましくは、幹細胞としては、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくは、幹細胞としてはヒト由来の細胞が用いられる。
本明細書において「対応物」とは、例えば、細胞について用いられる場合、ある種の生物中の細胞に関し、同様の性質および/または機能を有する別の種の細胞をいう。そのような同様の性質は、分泌するサイトカイン、増殖因子、発現する細胞マーカーなどによって同定することができる。
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、ES細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。
本明細書において「胚性幹細胞」および「ES細胞」は、交換可能に用いられ、初期胚に由来する任意の多能性幹細胞をいう。通常ES細胞は、全能性またはほぼ全能性を有するとされる。このES細胞を正常な宿主胚盤胞へ導入し仮親子宮へ戻すことによってキメラ作製を行ったところ、高いキメラ形成能を持つ、生殖系列キメラ(ES細胞由来の機能的生殖細胞を持つキメラマウス)が得られた(A.Bradley et al.:Nature,309,255,1984)。ES細胞株は、培養下で、種々の遺伝子導入法(例えばリン酸カルシウム法、レトロウイルスベクター法、リポゾーム法、エレクトロポレーション法等)の適用が可能である。また、遺伝子が組込まれた細胞を選別する方法を工夫し、相同遺伝子組換え(homologous recombination)を利用し、特定の遺伝子を狙って改変(置換、欠失、挿入)させた細胞のクローンを得ることもできる。インビトロでこのような処理をしたES細胞株は生殖系列への分化能を保持することから、ある特定の遺伝子の機能を個体レベルで調べる研究が現在盛んに行われている(M.R.Capecchi:Science,244,1288,1989)。ES細胞を利用したトランスジェニックマウス作出法は、ある特定の遺伝子のみを任意に改変させた個体を得ることを可能にした点でマイクロインジェクション法によるトランスジェニック動物作出法にはない多くの利点が考えられる。特に、特定の遺伝子を不活化させたノックアウト動物を作出できるようになり、遺伝子の機能を解明したり、外来性の遺伝子のみを発現させることができる。従って、ES細胞の樹立が容易になれば、その効果は図り知れない。
本明細書において「組織幹細胞」とは、ES細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞をいう。通常、組織幹細胞は、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書において使用される場合は、幹細胞としては、好ましくはES細胞が使用され得るが組織幹細胞もまた維持の対象であり得る。
ES細胞株は、キメラマウス、ノックアウトマウスなどの作製において非常に重要であり、これらの技術により遺伝子機能の解析が飛躍的に進歩した。ES細胞から特定の組織を分化誘導する系の開発が進んでおり、移植医療への応用の現実味を帯びている。また、ヒトES細胞を利用した臨床応用を考えた場合、サルなどの適切なモデル動物のES細胞を利用して前臨床研究をすることは必須に近い程度に重要であると考えられ、その樹立もまた重要である。
ES細胞株の樹立は、フィーダー細胞を用いて行われる。通常、ES細胞は、胚盤胞から分離した内部細胞塊(ICM)をフィーダー細胞上で培養することによって樹立される。ここで従来は、マウス胎仔繊維芽細胞あるいはそれ由来の細胞株STOが単独で用いられてきた。しかし、これらの細胞では、樹立効率が低く、特に霊長類幹細胞では、10%−30%程度と顕著に低く、分化細胞が混入することが報告されている。また、この効率は、使用する胚盤胞のステージ、ICMの分離法などによっても変動する。従って、樹立効率が低い現在の系では、樹立に成功するまでには何回も試行錯誤が必要であった。本発明を用いると、効率は80%以上となり、分化細胞の混入も激減し、そのような試行錯誤の必要はなくなる。
次に、本発明において用いることが可能なES細胞の一般的な樹立法を解説する。マウスで説明すると、通常、受精後3.5日で胚は胚盤胞に発生する。胚盤胞から胚本体を形成する未分化幹細胞である内部細胞塊を免疫手術により分離する。このICMは、胎盤などが作る細胞である栄養外胚葉への分化能を有する。このため、3.5日胚から直接ICMを分離するとICMが栄養外胚葉へと分化することから未分化細胞が喪失することがよくあるとされる。3.5日胚をさらに1日培養し、4.0〜4.5日胚とすると、胚盤胞は透明帯を脱出する。このステージではICMはもはや栄養外胚葉には分化しない。このような状態から、ICMを分離し、培養を開始すると、未分化細胞の割合を高めることができる。従って、本発明における幹細胞の樹立の際も、このような日数の未分化細胞を用いることができる。また、ヒトES細胞の場合は、この日数を参考にして、適宜変更して用いることができる。ヒトの場合は、受精後5〜8日のもの(凍結期間を除く)を使用することが多いが、それに限定されない。
ES細胞を樹立する際には、胚盤胞は、フィーダー細胞上に直接培養することもできるが、直接の場合は、胚盤胞が接着し栄養外胚葉が伸展してICMが露出することからあまり好ましくない。これを分離し培養したものを用いてもよいが、好ましくは免疫手術が用いられる。模式的なES細胞株樹立スキームを図6に示す。簡単に言うと、免疫手術で分離したICMをフィーダー細胞上で培養し、継代を続けると分化した細胞に混じって、未分化幹細胞のコロニーが現れる。これを分離し、継代を行うことで、安定して維持することができるES細胞株を樹立することができる。本発明を用いると、樹立率が80%を超えることから、安定して維持することができるES細胞を得る効率も格段に上がる。
ES細胞を樹立するためには、本発明のフィーダー細胞のほか、PBS(Ca、Mg不含)、0.25%トリプシン・1mM EDTA in PBS、ES細胞用培地(DMEM(ハイグルコース)400ml、ウシ胎仔血清 100ml、非必須アミノ酸溶液(Gibco)4ml、ヌクレオシド溶液(ヌクレオシド、グアノシン、シチジン、ウリジン各3mM、チミジン1mM水溶液、40℃に加熱して溶解し、濾過滅菌し、−20℃で保存する)4ml、2−メルカプトエタノール4μl(0.1mM)、LIF 100μl(2000U/ml))、M2培地(Sigmaなどから入手可能)、M16培地(Sigmaなどから入手可能)、酸性タイロード液(Sigmaなどから入手可能)、抗マウス血清(マウス脾臓細胞またはリンパ球5×10細胞をウサギに2週間おきに3回静脈免疫し、最終免疫から2週間後に採血する。これを抗血清として非働化し−80℃で保存する)、モルモット補体、流動パラフィン(軽質;ナカライテスクなどから入手可能)を用意することが必要である。実験器具としては、COインキュベータ、実体顕微鏡、キャピラリー、マルチウェルプレート(例えば、4ウェル、12ウェル、NUNCなどから入手可能)を用意するとよい。
以下にES細胞の樹立の例示的なプロトコール記載する。このプロトコールは、京都大学再生医科学研究所においてまとめられたヒトES細胞株樹立計画書に準じて記載されるが、本明細書では、この特定のプロトコールに限定されず、いずれのプロトコールであっても用いることができる。
(1)凍結胚の解凍と胚盤胞期までの培養
凍結保存されたヒト受精卵または胚盤胞期までの初期胚を順次解凍して培養を行う。個々の凍結胚容器からは提供者を同定できるものは除去されているため、各回の解凍・培養実験に使用されたヒト受精胚の出自は同定され得ない。しかしながら、各々のヒト受精胚の取扱がおろそかにならないように、凍結胚として受け入れた時点からひとつの凍結容器内に納められたヒト受精胚を樹立研究の過程で個々の存在として尊重し、どのような経過をたどったかを記録する。
(2)内部細胞塊の分離と細胞株の樹立
胚盤胞期まで到達した胚(受精後の発生期間が約14日以内のもの)について、抗ヒト血清による免疫手術などの方法によって内部細胞塊を分離したのち、フィーダー細胞層の上で培養する。フィーダー細胞としては、本発明のフィーダー細胞を用いる。内部細胞塊を採取した後の残部についても、礼節をもって取扱う。フィーダー細胞の上で増殖した細胞を適時に解離して分割継代し、幹細胞と思われる細胞コロニーの選別培養などを行ないながら、ES 細胞と思われる細胞株を樹立する。この間に、培養維持方法や細胞凍結保存方法などの改良を目指した研究を行う。
(3)幹細胞マーカー発現の有無および染色体検定
ES 細胞であることを確認するために、幹細胞マーカー(アルカリ性フォスファターゼ活性や特異的抗原)の検出を行なう。また核型解析を行なって染色体数や形態が正常かどうかを検定する。
(4)分化能の検定
培養下での分化能を検定するために、培養条件の変更や細胞凝集塊作成による細胞分化の誘導と各種機能細胞への分化能の解析を行なう。また免疫不全マウスなどへの移植を行なってテラトーマ形成による組織分化能の解析を行なう。
(5)安全性確保と事故防止
ヒト凍結胚の一時的保存は専用の液体窒素タンクを用いることによって、樹立計画に用いる以外の細胞や動物胚などに由来するウイルスと微生物による汚染を防ぐ。また細胞培養実験には専用の炭酸ガスインキュベーターを用いることによって、他種類の細胞との混合を防ぎ、ウイルスや微生物による汚染の可能性を小さくする。細胞培養に用いた培養液や培養器具は、実験室内で加圧高温滅菌処理を行なったのちに廃棄する。ヒト受精胚の保存および細胞株樹立を行なう実験室への入室者の管理を厳重に行う。
本明細書において「多能性」または「多分化能」とは、互換可能に用いられ、細胞の性質をいい、1以上、好ましくは2以上の種々の組織または臓器に分化し得る能力をいう。従って、「多能性」および「多分化能」は、本明細書においては特に言及しない限り「未分化」と互換可能に用いられる。通常、細胞の多能性は発生が進むにつれて制限され、成体では一つの組織または器官の構成細胞が別のものの細胞に変化することは少ない。従って多能性は通常失われている。とくに上皮性の細胞は他の上皮性細胞に変化しにくい。これが起きる場合通常病的な状態であり、化生(metaplasia)と呼ばれる。しかし間葉系細胞では比較的単純な刺激で他の間葉性細胞にかわり化生を起こしやすいので多能性の程度は高い。ES細胞は、多能性を有する。組織幹細胞は、多能性を有する。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は全能性といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ある細胞が多能性を有するかどうかは、たとえば、体外培養系における、胚様体(Embryoid Body)の形成、分化誘導条件下での培養等が挙げられるがそれらに限定されない。また、生体を用いた多能性の有無についてのアッセイ法としては、免疫不全マウスへの移植による奇形種(テラトーマ)の形成、胚盤胞への注入によるキメラ胚の形成、生体組織への移植、腹水への注入による増殖等が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は「全能性」といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ただし、明確に区別する場合は、全能性と多能性とは区別され得、前者はどのような細胞へも分化し得る能力をいい、後者は、複数の方向を有するが、生物が可能なすべての方向には分化できない能力を有することをいう。また、1つの方向にのみ分化する能力は、単能性ともいう。
本明細書において全能性と多能性とは、例えば、受精後の日数により判定することができ、例えば、マウスであれば、受精後約8日を基準として区別され得る。理論に束縛されないが、マウスでは、受精後、以下のような経過をたどることが通常である。受精後6.5日(E6.5とも表記する)では、原始線条(原条ともいう)がエピブラストの片側に出現し、胚の将来の前後軸が明らかになる。原条は、胚の将来の後方端を示し、外胚葉を横切って円筒の遠位端まで達する。原条は、細胞運動が行われる領域であり、その結果、将来の内胚葉と中胚葉とが形成されることになる。E7.5までに結節の前方に頭部突起が出現し、この部分には脊索と、それを取り囲んで下層には将来の内胚葉、上層には神経板が形成されることになる。結節は、E6.5日ごろから現れ、後方へと移動し、軸構造が前から後ろへと形成される。E8.5日までに胚は幾分丈が長くなり、その前端には大部分前方神経板からなる大きな頭部ヒダが形成される。体節はE8日から1.5時間に1個の割合で前方から後方へと形成され始める。この時期を越えた細胞は、仮に胎盤に戻したとしても、脱分化をしない限りもはや全能性を示さず、個体を形成しない。これより前では特別の処理をしなくても全能性を示し得ることから、この点が全能性の分岐点であるといえる。このことは、ES細胞がこれ以降の胚から樹立することが困難であり、これ以降の胚からは通常EG(生殖細胞由来)細胞と呼ばれる細胞が樹立されることから、そのような意味でも分岐点であるといえる。
本明細書において「胎児」または「胎仔」とは、交換可能に用いられ、哺乳動物の子が各器官原基の分化を完了し,成長期に入ったときから出産までの期間にある生物体をいう。
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。樹立された分化細胞は、特定の確定した機能を有する。樹立された分化細胞は癌化していることが多いが、それに限定されない。
本明細書において本明細書において「分化」とは、一般的には、1つの系が2つ以上の質的に異なる系に分離することをいい、細胞、組織または臓器について用いられるとき、機能および/または形態が特殊化することをいう。分化に伴い、通常、多能性は減少または消失する。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。本発明において用いられる場合、分化細胞は、集団または組織の形態であってもよい。分化細胞の幹細胞調製物への混入は、幹細胞の利用において有害であることが多く、そのような分化細胞の混入を減少させることは従来技術では困難であった。
本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
本明細書において「正常細胞」とは、病理状態にない任意の細胞をいう。従って、そのような正常細胞は、分裂回数が有限であることが多い。そのような有限の分裂回数は、通常50〜80回であることが多い。
本明細書において「不死化」とは、有限の分裂回数(例えば、50〜80回)を超えても細胞が死滅しないことをいう。
本明細書において「細胞株」または「株化細胞」とは、上記有限の分裂回数を超えても生存する細胞をいう。そのような細胞株は、初代培養細胞などから得られた継代細胞を順次継代し、正常細胞が通常死滅する継代数を超えて細胞を継代した後も生存する細胞を選択することによって樹立することができる。そのような樹立方法は、当該分野において公知である。
本明細書において「繊維芽細胞」とは、支持組織の繊維成分を供給し,繊維性結合組織の重要な成分をなす細胞をいう。組織切片図では、扁平で長目の外形をもち、不規則な突起を示すことが多い。細胞質は、ミトコンドリア、ゴルジ体、中心体、小脂肪球などを含むが、そのほかに特殊な分化は示さない。核は楕円形をしており、しばしば膠原繊維に密接して存在する。
本明細書において「フィーダー層」または「フィーダー細胞」(feeder layerまたはfeeder cell)とは、互換可能に用いられ、培養基質に設けられる、単独では培養維持することのできない細胞種の増殖および/または分化形質発現を可能にするような、他の細胞種による支持細胞層をいう。組織細胞には、通常の細胞培養条件下では,分化形質発現はもとより増殖すらできない細胞種も多いといわれており、そのような細胞としては、例えば、幹細胞(特に、ES細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞など)、胚性生殖細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)などが挙げられるがそれらに限定されない。これらの細胞種は一般に、栄養要求性が高く特異的な増殖因子、分化誘導因子を必要とする。このような細胞種でも生体内でのその細胞種の支持細胞あるいはそれと類似の細胞が形成する特定の細胞の層を培養基質に活用することで、培養される細胞種が要求する因子および/または栄養源が供給されることによって、増殖および分化をするようになる。フィーダー細胞として用いる細胞種は、対象となる細胞種によって選択されるが、UV照射などの方法で細胞増殖を抑制して用いることが多い。生殖細胞、ES細胞、造血幹細胞などの培養が可能になったのは,フィーダー層の活用に負うところが大きい。従来は、フィーダー細胞として、マウス繊維芽細胞(初代培養細胞または細胞株)が使用されており、幹細胞樹立効率は10%程度であるとされている。本明細書において、このようなフィーダー細胞を含む調製物は、「フィーダー細胞調製物」という。また、本発明において、二種以上の細胞を混合した細胞であって、フィーダー細胞として使用される場合は、「フィーダー細胞混合物」または「細胞混合物」ということがある。
本明細書において「STO細胞」とは、樹立されたマウス繊維芽細胞株であって、ATCCにおいてCRL−1503として寄託されている細胞を含む。STO細胞は、SIM繊維芽細胞株に由来し、6−チオグアニンおよびウアバインに対して抵抗性を示し、HGPRT−(HPRT−)であり、HATに感受性を有するとされる。従来より、STO細胞は、フィーダー細胞として用いられており、その対象には、ES細胞のほか、テラトカルシノーマ、ハイブリドーマなどが含まれている。STO細胞の維持には、適切である限り任意の培養条件を用いることができるが、例えば、DMEMに4mM L−グルタミンを加え、1.5g/L重炭酸ナトリウムおよび4.5g/Lグルコース、およびウシ胎仔血清(FCS)10%を加えたものを用いて培養することができる。STO細胞の継代には、培地を取り除き、0.25%トリプシン、0.03% EDTA溶液を用いてリンスし、その溶液を除いて、さらに1−2mlのトリプシン−EDTA溶液を加える。その後、容器を室温(または37℃)中に移動させて細胞を剥離させる。その後新鮮な培地を入れて、吸引し、その後新たな培養容器へと分配して継代を完成する。培養容器は、ゼラチンコーティングされていてもよい。継代は、1:3〜1:10で行うことが推奨されるがそれに限定されない。STO細胞としては、上記ATCCに寄託されたものを用いてもよいし、あるいは、照射されたSTO細胞(例えば、ATCCでは、56−Xとして寄託されている)を用いてもよい。
本明細書において「SL10細胞」とは、STO細胞株からサブ樹立した細胞株であり、その樹立方法は、Kawase E.,et al.,Int.J.Dev.Biol.38:385−390(1994)、フィーダー細胞の調製などについては、川瀬らの方法[川瀬ら、実験医学,Vol.10.No.13 (増刊),1575−1580,1992]に準じて実施できる。Robertson E.J. (ed)Teratocarsinomas and Emryonic Stem Cells,IRL Press,New York(1987)に記載されており、本明細書においてその記載を参考として援用する。手短に述べると、STO細胞をneo遺伝子を含むベクターでトランスフェクトする。その後、ネオマイシン抵抗性になったコロニーを増幅し、そしてフィーダー細胞としての適切性を確認する。この場合ES細胞株CCEを試験用に用いることができるがそれに限定されない。SL10細胞は、CCEの未分化幹細胞コロニーをよく維持するものとして選択される。SL10細胞は、ゼラチンへの接着性の良さからフィーダーとして適しているとされる。
本明細書において「初代培養細胞」とは、体から分離した細胞、組織、器官などを植え込み,第1回目の継代を行うまでの培養の状態にある細胞をいうが、本明細書では、継代を5回程度まで行うものは本明細書において初代培養細胞の定義内に入ることが理解される。初代培養細胞は、通常何も改変を施されていない細胞を用いることが好ましいが、マイトマイシンCまたはX線で不活化したものを用いることもできる。
本明細書において継代された後の細胞は、「継代細胞」ともいう。
本発明の細胞は、細胞の維持または所望の分化細胞へ分化する限り、任意の培養液を用いることができる。そのような培養液としては、例えば、DMEM、M2、M16、P199、MEM、HBSS、Ham’s F12、BME、RPMI1640、MCDB104、MCDB153(KGM)、M199、MEMα、DMEM/F12=1:1、L−15などが挙げられるがそれらに限定されない。このような培養液には、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド、インスリン、グルコース、インドメタシン、イソブチル−メチルキサンチン(IBMX)、アスコルベート−2−ホスフェート、アスコルビン酸およびその誘導体、グリセロホスフェート、エストロゲンおよびその誘導体、プロゲステロンおよびその誘導体、アンドロゲンおよびその誘導体、aFGF、bFGF、EGF、IGF、TGFβ、ECGF、BMP、PDGFなどの増殖因子、下垂体エキス、松果体エキス、レチノイン酸、ビタミンD、甲状腺ホルモン、子牛血清、馬血清、ヒト血清、ヘパリン、炭酸水素ナトリウム、HEPES、アルブミン、トランスフェリン、セレン酸(亜セレン酸ナトリウムなど)、リノレン酸、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、5−アザンシチジンなどの脱メチル化剤、トリコスタチンなどのヒストン脱アセチル化剤、アクチビン、LIF・IL−2・IL−6などのサイトカイン、ヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジブチルcAMP(dbcAMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヨードデオキシウリジン(IdU)、ヒドロキシウレア(HU)、シトシンアラビノシド(AraC)、マイトマイシンC(MMC)、酪酸ナトリウム(NaBu)、ポリブレン、セレニウムなどを1つまたはその組み合わせとして含ませておいてもよい。
本明細書において「分化因子」とは、「分化促進因子」ともいい、分化細胞への分化を促進することが知られている因子(例えば、化学物質、温度など)であれば、どのような因子であってもよい。そのような因子としては、例えば、種々の環境要因を挙げることができ、そのような因子としては、例えば、温度、湿度、pH、塩濃度、栄養、金属、ガス、有機溶媒、圧力、化学物質(例えば、ステロイド、抗生物質など)などまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。そのような因子のうち代表的なものとしては、DNA脱メチル化剤(5−アザシチジンなど)、ヒストン脱アセチル化剤(トリコスタチンなど)、核内レセプターリガンド(例えば、レチノイン酸(ATRA)、ビタミンD、T3など)、細胞増殖因子(アクチビン、IGF−1、FGF,PDGF、TGF−β、BMP2/4など)、サイトカイン(LIF、IL−2、IL−6など)、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラビノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレン、セレンなどが挙げられるがそれらに限定されない。
具体的な分化因子としては、以下が挙げられる。
A)神経:NGF、CNTF,EGF、FGF;
B)血液細胞:VEGF、EPO、インターロイキン類およびインターフェロン類(例えば、インターロイキン2など);
C)肝臓:HGF
D)骨・軟骨:BMP。
本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位置をいう。
本明細書において「インビトロ」(in vitro)とは、種々の研究目的のために生体の一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。インビボと対照をなす用語である。
本明細書において「エキソビボ」(ex vivo)とは、遺伝子導入を行うための標的細胞を被験体より抽出し、インビトロで治療遺伝子を導入した後に、再び同一被験体に戻す場合、一連の動作をエキソビボという。
本明細書において自己または自家とは、ある個体についていうとき、その個体に由来する個体またはその一部(例えば、細胞、組織、臓器など)をいう。本明細書において自己というときは、広義には遺伝的に同じ他個体(例えば一卵性双生児)からの移植片をも含み得る。
本明細書において同種(同種異系)とは、同種であっても遺伝的には異なる他個体から移植される個体またはその一部(例えば、細胞、組織、臓器など)をいう。遺伝的に異なることから、同種異系のものは、移植された個体(レシピエント)において免疫反応を惹起し得る。そのような細胞などの例としては、親由来の細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において異種とは、異種個体から移植されるものをいう。従って、例えば、ヒトがレシピエントである場合、ブタからの移植物は異種移植物という。
本明細書において「レシピエント」(受容者)とは、移植される細胞などを受け取る個体といい、「宿主」とも呼ばれる。これに対し、移植される細胞などを提供する個体は、「ドナー」(供与者)という。レシピエントとドナーとは同じであっても異なっていてもよい。
本発明で使用される細胞は、同系由来(自己(自家)由来)でも、同種異系由来(他個体(他家)由来)でも、異種由来でもよい。拒絶反応が考えられることから、自己由来の細胞が好ましいが、拒絶反応が問題でない場合同種異系由来であってもよい。
本明細書において「移植」とは、本発明の細胞、組成物、医薬などを、単独で、または他の治療剤と組み合わせて体内に移入することを意味する。本発明は、以下のような治療部位(例えば、骨などなど)への導入方法,導入形態および導入量が使用され得る:本発明の医薬などの障害部位への直接注入し、貼付後に縫合し、挿入する等の方法があげられる。本発明の脂肪幹細胞と、分化細胞との組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、分化促進因子)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与または移植は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる細胞、医薬、化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
本明細書において「維持」とは、細胞、組織または臓器について用いられるとき、その機能および/または形態を実質的に保持させることをいう。例えば、角膜の維持とは、被検体が通常有するべき角膜の機能および/または形態を実質的に損傷しないで有することをいい、機能としては、視力の維持、形態としては、外観の保持が挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において使用される「再生」(regeneration)とは,個体の組織または臓器の一部が失われた際に、欠如した組織が補填されて復元される現象をいう。動物種間または同一個体における組織種に応じて、再生のその程度および様式は変動する。ヒト組織の多くはその再生能が限られており、大きく失われると完全再生は望めない。大きな傷害では、失われた組織とは異なる増殖力の強い組織が増殖し,不完全に組織が再生され機能が回復できない状態で終わる不完全再生が起こり得る。この場合には,生体内吸収性材料からなる構造物を用いて、組織欠損部への増殖力の強い組織の侵入を阻止することで本来の組織が増殖できる空間を確保し,さらに細胞増殖因子を補充することで本来の組織の再生能力を高める再生医療が行われている。この例として、軟骨、骨および末梢神経の再生医療がある。あるいは、本発明の方法で樹立された幹細胞を用いれば、どのような組織の再生も原理的には行うことができ、そのようにして調製された本発明の臓器、組織および細胞が再生のための移植物として提供される。細胞は、由来により、外胚葉、中胚葉および内胚葉に由来する幹細胞に分類され得る。外胚葉由来の細胞は、主に脳に存在し、神経幹細胞およびその分化細胞などが含まれる。中胚葉由来の細胞は、主に骨髄に存在し、血管幹細胞およびその分化細胞、造血幹細胞およびその分化細胞ならびに間葉系幹細胞およびその分化細胞などが含まれる。内胚葉由来の細胞は主に臓器に存在し、肝幹細胞およびその分化細胞、膵幹細胞およびその分化細胞などが含まれる。本明細書では、細胞はどのような胚葉由来でもよい。
本発明において、幹細胞は遺伝子改変することができる。幹細胞は培養細胞であるので、他の培養細胞と全く同様に種々の遺伝子導入法(例えばリン酸カルシウム法、リポゾーム法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法等)が利用できる。また、導入できる遺伝子も何ら制限されるものではなく、細菌、動物またはヒトの染色体に由来する遺伝子などを挙げることができるがそれに限定されない。同様に、ES細胞株を利用するジーンターゲッティングの方法として使用されるターゲッティングベクターを用いた内在遺伝子の相同遺伝子組換えによる改変も可能である。
本発明の方法が対象とし得る疾患、障害、状態は、臓器または組織の再生が所望される任意の疾患、障害、状態を含む。本発明は特に、フィーダー細胞がなければ再生し得ない幹細胞などを必要とする臓器、組織または細胞に関連する疾患、障害、状態が対象として特に有利である。
そのような本発明が対象とし得る疾患および障害としては、循環器系(血液細胞など)の疾患または障害;神経系の疾患または障害;免疫系の疾患または障害;運動器・骨格系の疾患または障害;皮膚系の疾患または障害;内分泌系の疾患または障害;呼吸器系の疾患または障害;消化器系の疾患または障害;泌尿器系の疾患または障害;生殖器系の疾患または障害などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明が対象とする動物は、幹細胞を有する動物であれば、どのような動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であってもよい。好ましくは、そのような動物は、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、カニクイサル、ニホンザル、ヒト)が用いられる。最も好ましくはヒトが対象である。
本発明が医薬として使用される場合、そのような医薬は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、本発明の細胞を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。
必要に応じて本発明の医薬は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
本発明の処置方法において使用される医薬の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間〜1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。投与する量は、処置されるべき部位が必要とする量を見積もることによって確定することができる。
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査の結果または上記疾患(例えば、神経疾患、心臓疾患など)に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、上記疾患(例えば、神経疾患、心臓疾患など)の再発により再開することができる。
本発明はまた、本発明の医薬の1つ以上の成分(例えば、ES細胞のような幹細胞)を満たした1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
本発明が研究用試薬として使用される場合、本発明の幹細胞は、当局の定める倫理規定に従って分配されることが望ましい。そのような規定としては、例えば、日本政府が定めるものが挙げられるがそれに限定されない。以下にその規定の例を記載する。
樹立機関の業務および義務として政府指針などに定められているもの従い、ヒトES細胞の樹立および使用に関する指針に従って承認された研究計画をもつ使用機関からの要請を受けて、樹立後特性解析を行った細胞株を分配する。分配の開始の時期としては、多分化能と正常核型の検定と確認を行った細胞株を増殖させて、細胞株保存のために必要な数の凍結細胞サンプルが得られた時点から分配を始めることが企図される。
樹立と分配を開始する時点では、分配機関が分配に責任を持って担当する。分配機関には細胞培養に必要なクリーンルームと機器および細胞凍結保存用液体窒素タンクが整備されるべきである。ヒトES細胞株の樹立チームが使用し、その人員構成は、例えば、研究者5名(内2名は医師免許保持者が好ましい)からなる。細胞の分配を開始する時点では、さらに実験補佐員2名程度と事務補佐員1名程度が実務を分担してもよい。細胞分配および研修の要請の増加に応じて、あらたに人員および施設を増加させることが好ましい。
分配の方法および条件は例えば以下のようなものを挙げることができる:ES細胞株の維持および増殖の継続に必要な樹立機関における細胞ストックの確保が優先されるべきである。
幹細胞の提供者がヒトである場合、通常インフォームド・コンセントを得る必要がある。
ヒト受精胚の提供候補者については、ES細胞研究に凍結胚を提供依頼にあたってのインフォームド・コンセントによる同意が与えられるかどうかを、次のような手順に従って確認する。不妊治療の開始から凍結胚の廃棄決定に至る手続き、および関連文書、その後に始まるES細胞研究への提供に関するプロセスの例示的概要を示す。
(1) 不妊治療の結果作られて凍結保存されているヒト受精胚が、子宮へ移植されることなく廃棄させることが決定するまでは、ES細胞研究とは全く無関係な不妊治療プロセスとして患者と不妊治療担当医師による臨床的問題である。
(2) 廃棄させることが決定した凍結胚について、不妊治療担当医師が中立的立場を保ちながら、ES細胞の研究について説明を受けるかどうか提供候補者に質問する。
(3) 説明を受けたいとの意思を示した提供候補者に対して、樹立機関の説明者(樹立責任者以外)がES細胞とはなにか、将来の医療への応用の可能性、研究内容の概要、ES細胞株樹立によって提供者は利益も不利益も受けないこと、提供者のプライバシーは保護されること、などについて十分に説明する。これらの説明は、全く中立の立場で行われる。
(4) 提供候補者は説明を受けた後に、提供医療機関の長に対して提供に同意するかどうかを回答する。同意はインフォームド・コンセントの書類への署名を必要とし、その書類は提供医療機関が厳重に保管する。特定の提供候補者による同意あるいは不同意に関する結果は樹立関係者には伝えない。
(5) 提供候補者による同意の署名から一ヶ月間以上の猶予期間をおいて、提供候補者の意思に変更がない場合は、凍結胚を樹立機関に移送する。その際、複数の提供者からの凍結胚を同時に引渡すとともに、凍結胚容器からは提供者を同定できるラベルなどを完全に除去しておく。従って、樹立機関の説明担当者が複数の提供候補者と面会はするが、その氏名などの個人情報は知ることがなく、またそれらの候補のうち誰が同意して提供者となったかも知ることがないので、提供者の匿名性は保証され得る。さらに、複数の提供者からの凍結胚を使ってその一部のみから細胞株が樹立されるので、どの提供者の胚から実際にES細胞株が樹立されたかは樹立機関と提供医療機関の両者ともに知ることができないようにする。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。このような説明書は、どのような媒体であってもよく、例えば、そのような媒体としては、紙媒体、伝送媒体、記録媒体などが挙げられるがそれらに限定されない。伝送媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LANなどが挙げられるがそれらに限定されない。記録媒体としては、CD−ROM、CD−R、フレキシブルディスク、DVD−ROM、MD、ミニディスク、MO、メモリースティックなどが挙げられるがそれらに限定されない。
(トランスジェニック生物)
本発明の幹細胞は、トランスジェニックマウスを作製するのに使用することができる。トランスジェニックマウスを作製するための一般的な技術は、国際公開WO0l/13150(Ludwig Inst.Cancer Res.)に記載されている。米国特許第4,873,19l号(Wagner et a1.)は、哺乳動物接合体へのDNAのマイクロインジェクションによって得られた、外因性DNAを有する哺乳動物を教示しており、これらの説明内容を本明細書において援用する。。
このほかにもまた、トランスジェニック生物を作り出すための様々な方法は、例えば、M.Markkulaら、Rev.Reprod.,1,97−106(1996);R.T.WallらJ.Dairy Sci.,80,2213−2224(1997);J.C.Dalton、ら、Adv.Exp.Med.Biol.,411,419−428(1997);およびH.Lubonら、Transfus.Med.Rev.,10,131−143(1996)などが挙げられるがそれらに限定されない。これらの文献の各々は、本明細書において参考として援用される。
そのような中、最近10年間ほどで、遺伝子機能の解析を目的として、胚性幹(ES)細胞の相同組換えを介したトランスジェニック(ノックアウト、ノックインを含む)動物の解析が重要な手段となってきている。
高等生物では、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を用いる陽性選択およびHSVのチミジンキナーゼ遺伝子またはジフテリア毒素遺伝子を用いる陰性選択により組換え体の効率的な選別が行われている。PCRまたはサザンブロット法により相同組換え体の選択が行われる。すなわち、標的遺伝子の一部を陽性選択用のネオマイシン耐性遺伝子等で置換し、その末端に陰性選択用のHSVTK遺伝子等を連結したターゲティングベクターを作成し、エレクトロポレーションによりES細胞に導入し、G418およびガンシクロビルの存在下で選択して、生じたコロニーを単離し、さらにPCRまたはサザンブロットにより相同組換え体を選択する。
このように、内在する標的遺伝子を置換または破壊して、機能が喪失したかまたは変更された変異を有するトランスジェニック(標的遺伝子組換え)マウスを作製する方法は、標的とした遺伝子だけに変異が導入されるので、その遺伝子機能の解析に有用である。
所望の相同組換え体を選択した後、得られた組換えES細胞を胚盤注入法または集合キメラ法により正常な胚と混合してES細胞と宿主胚とのキメラマウスを作製する。胚盤注入法では、ES細胞を胚盤胞にガラスピペットで注入する。集合キメラ法では、ES細胞の塊と透明帯を除去した8細胞期の胚とを接着させる。ES細胞を導入した胚盤胞を偽妊娠させた代理母の子宮に移植してキメラマウスを得る。ES細胞は、全能性を有するので、生体内では、生殖細胞を含め、あらゆる種類の細胞に分化することができる。ES細胞由来の生殖細胞を有するキメラマウスと正常マウスを交配させるとES細胞の染色体をヘテロに有するマウスが得られ、このマウス同士を交配するとES細胞の改変染色体をホモに有するトランスジェニックマウスが得られる。得られたキメラマウスから改変染色体をホモに有するトランスジェニックマウスを得るには、雄性キメラマウスと雌性野生型マウスとを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させ、生まれた雄性および雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代のホモ接合体マウスを選択する。F1およびF2の各世代において所望の遺伝子変異が導入されているか否かは、組換えES細胞のアッセイと同様に、サザンブロッティング、PCR、塩基配列の解読など当該分野において慣用される方法を用いて分析され得る。
多様な遺伝子機能を選択的に解析することができないという問題を克服する次世代技術として、Creレコンビナーゼの細胞種特異的発現とCre−loxPの部位特異的組み換えを併用する技術が注目されている。Cre−loxPを用いるトランスジェニックマウスは、標的遺伝子の発現を阻害しない位置にネオマイシン耐性遺伝子を導入し、後に削除するエキソンをはさむようにしてloxP配列を挿入したターゲティングベクターをES細胞に導入し、その後相同組換え体を単離する。この単離したクローンからキメラマウスを得、遺伝子改変マウスが作製される。次に、大腸菌のP1ファージ由来の部位特異的組換え酵素Creを組織特異的に発現するトランスジェニックマウスとこのマウスを交配させると、Creを発現する組織中でのみ遺伝子が破壊される(ここでは、Creは、loxP配列(34bp)を特異的に認識して、2つのloxP配列にはさまれた配列で組換えを起こさせ、これが破壊される)。臓器特異的なプロモータに連結したCre遺伝子を有するトランスジェニックマウスと交配させるか、またはCre遺伝子を有するウイルスベクターを使用して、成体でCreを発現させることができる。
特定の遺伝子を解析する方法としてジーントラップ(遺伝子トラップ)法が注目されている。ジーントラップ法では、プロモータを有しないレポーター遺伝子が細胞に導入され、その遺伝子が偶発的にゲノム上に挿入されると、レポーター遺伝子が発現することを利用して、新規な遺伝子を単離(トラップ)される。ジーントラップ法は、マウス初期胚操作法,ES細胞培養法,相同組換えによる遺伝子ターゲティング法に基づく、効率的な挿入変異と未知遺伝子同定のための方法である(Stanford WL.,et al.,Nature Genetics 2:756−768(2001))。ジーントラップ法では、遺伝子の導入ならびに挿入変異体の選択およびその表現型解析が比較的に容易である。
ジーントラップ法では、例えば、スプライシング/アクセプター配列とポリA付加シグナルとの間にlacZとneoとの融合遺伝子であるβ−geoを連結したジーントラップベクターをES細胞に導入し、G418で選択すると、ES細胞で発現している遺伝子を偶然にトラップしたクローンだけが選択される。
このようにして得られたクローンからキメラ胚を作製すると、トラップした遺伝子の発現パターンにより、さまざまなX−galの染色パターンを示す。このようにして、ジーントラップ法では、未知の遺伝子が単離され、その遺伝子発現パターンが解析され、またその遺伝子が破壊される。
本発明は、このように、種々のトランスジェニック生物の作製に利用することができる。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed. (2001); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocolsin Molecular Biology, Greene Pub. AssociatES and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M. (1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience;Innis, M. A. (1990). PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press; Ausubel, F. M. (1992). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub.Associates; Ausubel, F. M. (1995). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub.Associates; Innis, M. A. et al. (1995). PCR Strategies, Academic Press;Ausubel, F. M. (1999). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates;Sninsky, J. J. et al. (1999). PCR Applications: Protocols for FunctionalGenomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M. J. (1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press; Gait, M. J. (1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press; Eckstein, F. (1991). Oligonucleotides and Analogues: A PracticalApproach, IRL Press; Adams, R. L. et al. (1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al. (1994). AdvancedOrganic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G. M. et al. (1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T. (I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(フィーダー細胞調製物)
1つの局面において、本発明は、正常細胞と、細胞株とを含む、幹細胞を調製するためのフィーダー細胞調製物を提供する。このような複数の性質を有するフィーダー細胞の混合物をフィーダー細胞調製物として利用した例はこれまでなく、また、従来は、フィーダー細胞として使用可能な細胞種はいくつか知られていたが、それらの間に本質的な差違の存在は想定されておらず、従って細胞を組み合わせることによってフィーダー細胞機能が著しく向上することは予想されていなかった。本発明にあるような細胞の組み合わせにより幹細胞株の樹立 維持の効率が非常に向上する機作についてはフィーダー細胞の機能が分子レベルで解明されていないため明らかでないが、上に挙げたような因子の供給が単独の細胞の使用では完全に行われない為では無いかと思われる。よってフィーダー細胞を複数種組み合わせることにより予想外の効果が得られたと考えられる。従って、ある局面では、本発明は、任意の複数のフィーダー細胞の混合物を用いることができることが理解される。本明細書において使用されるフィーダー細胞は、従来フィーダー細胞として使用される細胞であれば、どのような細胞であっても使用され得ることが理解される。
本明細書において使用される正常細胞は、フィーダー細胞として適切に使用されている細胞であれば、使用され得ることが理解される。そのような正常細胞としては、例えば、マウス初代培養繊維芽細胞、ラット初代培養繊維芽細胞、サル初代培養繊維芽細胞、ヒト初代培養繊維芽細胞などを挙げることができるがそれらに限定されない。
そのような初代培養繊維芽細胞の調製方法としては、例えば、11−16日令胎児から、頭部、内臓等を取り除いたものを細断、酵素処理で主として繊維芽細胞を取り出すという方法を用いて行うことができる。
具体的には、
1.受精後12日目(11〜16日目が好ましい。)のマウスを準備する。
2.胎児を摘出し胎仔を傷つけないように羊膜・胎盤を取り除き、新しいペトリディッシュへ移す。
3.実体顕微鏡下で胎仔の頭部および腹部の肝臓、腸などの内臓をできるだけピンセットで取り除く。PBS(−)で胎仔についた余分な臓器を洗い流し、新しいペトリディッシュへ移す。
4.クリーンベンチ内で100 mm細胞培養ディッシュに培地を10 mlずつ分注する。21G針とシリンジを準備する。シリンジの中に胎仔を1つ入れ、ディッシュ中の培地をゆっくりと吸い上げ、そのまま同じディッシュ中へゆっくりと培地をもどす。この操作を2〜3回繰り返す。
5.胎仔が細片になっていることを確認する。
6.37℃、COインキュベータで一晩培養する。
という方法によって、繊維芽細胞を調製することができる。
好ましくは、上記正常細胞は不死化していないことが有利である。理論に束縛されることは望まないが、不死化していないことによって、分化させずに幹細胞を維持するために必要な因子の一部が供給されると考えられるからである。
本発明において使用される正常細胞は、繊維芽細胞であってもよいが、そうでなくてもよい。好ましくは、繊維芽細胞が使用される。理論に束縛されることを望まないが、繊維芽細胞は、フィーダー細胞としての適性を付与することが多く、分化させずに幹細胞を維持するために必要な因子の一部が供給されると考えられるからである。
より好ましい実施形態では、本発明において用いられる正常細胞は、繊維芽細胞初代培養細胞である。より好ましくは、本発明において用いられる正常細胞は、マウス由来である。理論に束縛されることを望まないが、マウスであることが好ましい理由は、調製の容易さにある。従って、任意の哺乳動物が使用され、簡易な調製法が別の存在する場合は、他の哺乳動物の細胞を用いることによって好ましく使用され得る。理論に束縛されることは望まないが、経験的には、ウシおよびウサギのES樹立研究で同種の繊維芽細胞を使用しても、マウスより良い効果は見られないようであり、一般的にはマウスの細胞が良いと考えられている。
好ましい実施形態では、本発明において用いられる正常細胞は、胎児(胎仔)由来であり得る。理論に束縛されることを望まないが、胎児由来の細胞は、分化させずに幹細胞を維持するために必要な因子の一部を提供し、フィーダー細胞としてより適切であると考えられるからである。また、本発明において使用される細胞株とは、細胞学的にみて、最も異なる性質を有すると考えられ、従って、細胞株が提供できない幹細胞の維持に必要な因子を供給する能力を有すると考えられるからである。
従って、本発明では、フィーダー細胞としての能力を提供することができる限り、どのような継代数の細胞でも用いることができるが、好ましくは、初代培養細胞については継代数の少ないもの(4,5回程度)が推奨され、継代数が5回以下、4回以下、3回以下、2回以下、1回または継代なしの細胞が用いられる。
ある好ましい実施形態では、本発明において使用される正常細胞は、マウス11〜16日齢胎児から酵素処理により得られた繊維芽細胞である。
本明細書において使用される細胞株は、フィーダー細胞としての能力を有する限り、どのような細胞であっても使用することができることが理解される。そのような細胞株は、代表的には、不死化している。理論に束縛されることを望まないが、不死化した細胞を用いることによって、初代細胞株などの正常細胞では供給されないが、分化させずに幹細胞を維持するために必要な因子の他の一部が供給されると考えられるからである。
好ましくは、本発明において使用される細胞株は、繊維芽細胞株である。
本発明において使用される細胞株は、継代期間は、どのような期間であっても良いが、好ましくは、継代された期間が2ヶ月以下であり、より好ましくは、継代された期間が1ヶ月以下である細胞を用いることが有利であり得る。理論に束縛されることを望まないが、そのような継代期間が短い細胞株を用いることによって、初期の目的の因子を分泌する細胞を安定して供給することができ、分化させずに幹細胞を維持するために必要な因子の他の一部が十分に供給されると考えられるからであるが、必ずしも継代期間が短くある必要はない。
本発明において使用される細胞株は、マウス由来であり得るが、それに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、マウスであることが好ましい理由は、調製の容易さにある。従って、任意の哺乳動物が使用され、簡易な調製法が別の存在する場合は、他の哺乳動物の細胞を用いることによって好ましく使用され得る。理論に束縛されることは望まないが、経験的には、ウシおよびウサギのES樹立研究で同種の繊維芽細胞株を使用しても、マウスより良い効果は見られないようであり、一般的にはマウスの細胞が良いと考えられている。
好ましい実施形態では、本発明において用いられる細胞株は、胎児(胎仔)由来であり得る。理論に束縛されることを望まないが、胎児由来の細胞は、分化させずに幹細胞を維持するために必要な因子の一部を提供し、フィーダー細胞としてより適切であると考えられるからである。また、本発明において使用される正常細胞とは、細胞学的にみて、最も異なる性質を有すると考えられ、従って、正常細胞が提供できない幹細胞の維持に必要な因子を供給する能力を有すると考えられるからである。
好ましい実施形態では、使用される細胞株は、STO株である。この細胞株はネオマイシン耐性(neo抵抗性)の性質を持っていることが好ましい。最も好ましい実施形態では、本発明において使用される細胞株は、SL10株である。
本発明のフィーダー細胞調製物において含まれる正常細胞(たとえば、繊維芽細胞初代培養細胞)と細胞株(たとえば、繊維芽細胞株)とは、代表的に、約1:10〜10:1で存在し得る。理論に束縛されることを望まないが、1:10〜10:1の範囲外では、フィーダー細胞を複数種使用する効果がほとんど見られないが、1:10〜10:1の範囲内では、幹細胞の維持において効果が有意に見られているからである。
好ましい実施形態では、正常細胞(たとえば、繊維芽細胞初代培養細胞)と細胞株(たとえば、繊維芽細胞株)との比率は、約1:4〜4:1であり得る。理論に束縛されることを望まないが、複数種の細胞を含むフィーダー細胞調製物を利用することによって、幹細胞の維持および多分化能の維持の効果が顕著に改善されるからである。より好ましい細胞比率は、正常細胞(たとえば、繊維芽細胞初代培養細胞)と細胞株(たとえば、繊維芽細胞株)との比率が約1:3〜約3:1であり得る。
最も好ましい実施形態では、正常細胞(たとえば、繊維芽細胞初代培養細胞)と細胞株(たとえば、繊維芽細胞株)との比率は、ほぼ等量である。理論に束縛されることを望まないが、ほぼ等量の複数種の細胞を用いることによって、相互に補完すべき幹細胞を維持するための成分が互いに十分含まれることになるからである。従って、当業者は、本明細書においてほぼ等量というとき、等量に近いがフィーダー細胞として最適な任意の比率を意味することを理解する。
1つの実施形態では、本発明のフィーダー細胞調製物が目的とする細胞は、胚性幹細胞であり、より好ましくは、ヒト胚性幹細胞である。ヒト胚性幹細胞のような細胞が多能性を維持しながら増殖させることができ、しかも50%未満の分化細胞混入率(好ましくは、30%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは1%未満)は、これまでの技術では達成できなかった格別の効果であるといえる。
(幹細胞調製法)
1つの局面において、本発明は、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含むフィーダー細胞調製物の上で、幹細胞を培養する工程を包含する、幹細胞を調製するための方法を提供する。正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)および細胞株(例えば、繊維芽細胞株)は、おのおの正常細胞(例えば、初代培養細胞)であり、株化したものである限り、任意のものを使用することができる。フィーダー細胞としては、これらの2種の細胞を含んでいる限りどのような含まれ方であっても使用することができるが、好ましくは、均一に混合していることが有利である。そのような混合比率としては、好ましくは、約10:1〜1:10、約9:1〜1:9、約8:1〜1:8、約7:1〜1:7、約6:1〜1:6、約5:1〜1:5、約4:1〜1:4、約3:1〜1:3、約2:1〜1:2、約1:1(ほぼ等量を意味する)などが挙げられる。好ましくは、ほぼ等量混合されることが有利である。理論に束縛されないが、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とは、相互に相乗的な効果を有する因子(例えば、幹細胞維持に必要なもの)を相補的に分泌することによって、本発明の予想外の効果を達成しているものと考えられる。
1つの実施形態において、本発明のフィーダー細胞において用いられる正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)は、マウス由来であることが有利であるがそれに限定されない。従って、本発明では、任意の動物を用いることができる。マウスは、技術的に充分に確立した実験動物であり、初代培養細胞などの正常細胞の入手方法もまた、当業者によく知られるところとなっているからである。
好ましい実施形態において、本発明において使用される正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)は、胎児由来であることが有利であるがそれに限定されない。従来、例えば、繊維芽細胞初代培養細胞は、フィーダー細胞として用いられているが、胎児由来のものが主に用いられている。胎児由来の繊維芽細胞初代培養細胞を単独で用いた場合でも、幹細胞の樹立効率は、それほど高いものではなく、せいぜい10−30%程度であった。翻って、本発明のフィーダー細胞調製物および細胞混合物では、その樹立効率は、50%をはるかに超え、80%程度の場合もある。従って、このような高率の樹立高率は、従来技術からは想像を超えるものであったといえる。ここで、正常細胞は、厳密な意味での初代培養細胞であることが好ましいが、継代培養した細胞であっても、継代数が少ないものであれば、初代培養細胞とほぼ類似する性質を有し得ることから、本発明において有利に使用することができる。そのような継代数としては、例えば、約5継代以下、4継代以下、3継代以下、2継代以下、1継代などが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態において、本発明のフィーダー細胞に含まれる細胞株(例えば、繊維芽細胞株)は、STO株であることが有利である。従来STO株は、幹細胞のフィーダー細胞として用いられているが、幹細胞の樹立効率は、やはり30%以下と低率にとどまっており、本発明の細胞混合物および細胞調製物をフィーダー細胞調製物として使用した場合では、幹細胞の樹立効率は、50%をはるかに超え、80%程度の場合もある。従って、このような高率の樹立高率は、従来技術からは想像を超えるものであったといえる。
より好ましい実施形態では、STO細胞からのES細胞未分化状態支持能の高い細胞の分離法を用いてより好ましい細胞株を樹立することができる。そのような方法を簡単に説明すると、以下のようになる。
1.定法に従いSTO細胞を細胞一つ一つになるまで解離する。
2.培養皿に100−500個程度の解離したSTO細胞を播種する。
3.数日間培養すると播種した細胞一つ一つの細胞それぞれからコロニーが形成されるので十分な大きさのコロニーが形成されるまで培養を続ける。
4.それぞれのコロニーから細胞を回収し、別々に培養して十分な量にまで増殖させ100クローン程度のサブラインを確立する。
5.それぞれのサブクローンの細胞を用いてフィーダー細胞とし、それを用いてES細胞の培養を行い、未分化状態の支持能の高いサブラインを選別する。
ひとつの好ましい実施形態では、本発明において使用されるSTO株は、neo抵抗性であることが有利である。理論に束縛されないが、そのようなneo抵抗性にして細胞株を選択すると、フィーダー効果の高いものが選択されやすくなるからである。neo抵抗性にするには、neo遺伝子を当該分野において公知の任意の遺伝子導入手法(例えば、形質転換、トランスフェクションなど)を用いて導入することによって達成することができる。
1つの好ましい実施形態において、本発明において使用される細胞株は、SL10株であることが有利である。SL10株は、上記のような方法に基づいて分離された細胞株である。SL10株は、明治乳業から入手可能であり、京都大学再生医科学研究所において分配されるものであり、第三者は容易に入手することができるものであることが理解される。
本発明が支持する幹細胞は、任意の幹細胞が含まれ、例えば、ES細胞、組織幹細胞などが挙げられるがそれに限定されない。好ましい実施形態において、本発明が支持する幹細胞は、ES細胞である。ES細胞は、樹立効率の高いフィーダー細胞がなく、本発明は、ES細胞に関し従来達成可能であった上限である30%をはるかに超える80%もの樹立効率を達成した点で注目されるべきである。
別の実施形態では、本発明が支持する幹細胞は、組織幹細胞である。そのような組織幹細胞としては、例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。組織幹細胞もまた、フィーダー細胞を必要とするものが多く、従来技術では、それほど満足がいくほどに樹立効率を高く達成した技術は存在していない。従って、本発明は、組織幹細胞にも応用可能であることが理解される。
より好ましい実施形態では、本発明が支持する幹細胞は、霊長類の細胞であり、より好ましくはヒト幹細胞である。ヒトを含む霊長類の細胞は、ごく最近になってES細胞が樹立したばかりであるという事情もあり、そのフィーダー細胞に関する研究はまだまだ発展途上にある。特に、満足のいく樹立効率をもたらすフィーダー細胞は、霊長類幹細胞、より好ましくはヒト幹細胞に関してはまったく存在しないといっても過言ではないということにかんがみると、本発明における樹立効率の高さは、特に霊長類幹細胞、より好ましくはヒト幹細胞において意義は高い。
本発明のフィーダー細胞が配置される培養ディッシュはゼラチンコーティングされていることが好ましいが、それに限定されず、培養効率を高めるものであれば、どのようなコーティングがされていてもよい。そのようなコーティングとしては、例えば、任意の細胞外マトリクス(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチンなど)が挙げられるがそれらに限定されない。培養ディッシュは、どのような材質のものであってもよく、例えば、容器の材質は、生体適合性のものが使用されることが望ましいが、生体に毒性を与えるものが使用されていない限り、どのようなものであっても使用することができることが理解される。そのような容器の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料、あるいは、シラン、ポリLリジンコートなどでコーティングされたものが使用され得る。
1つの好ましい実施形態において、本発明のフィーダー細胞は、約1×10細胞/cm〜約1×10細胞/cmで播種され、好ましくは、2〜5×10細胞/cmで播種される。理論に束縛されないが、このような適度な細胞密度によって、分泌される細胞生理活性物質が最適な状態になるからであると考えられる。
本発明の方法において、本発明のフィーダー細胞は、通常、混合して播種された後5日以内に使用され、好ましくは、3日以内、より好ましくは2日以内、さらに好ましくは1日以内に使用される。ただし、混合後一定時間を置くことが好ましい。理論に束縛されないが、混合した後、一定時間(例えば、1時間)を置くことによって、幹細胞の維持に必要な成分が出てくるに十分な条件が成立するからである。
1つの実施形態において、本発明において使用される幹細胞は、ノックアウト血清代替添加物(KSR)を含む培地中で培養されることが有利である。KSRは、Invitrogenなどから入手可能である。KSRを用いた場合、全般に細胞の増殖が遅くなる傾向が見られるが、本発明の目的にかなう限り特に限定して用いることができる。あるいは、本発明において使用される幹細胞は、ウシ胎仔血清を含む液体培地中で樹立することが好ましい。ウシ胎仔血清に関しては、ES細胞を長期間安定に維持できるものであれば、通常問題なく樹立にも使用することができることが理解される。
本発明の方法では、継代する工程がさらに包含され、この継代工程において、コラゲナーゼが使用される。コラゲナーゼの使用により、細胞回収がスムーズに行われ、樹立効率を改善するのに寄与すると考えられる。
(幹細胞)
別の局面において、本発明は、本発明の幹細胞調製法によって調製された幹細胞調製物を提供する。このような幹細胞は、従来の方法で得られる幹細胞よりも、より未分化な状態を保っているとか考えられるという点で従来方法によって調製される幹細胞とは異なる有利な効果を有すると考えられる。この細胞は、好ましくは、ES細胞であり、より好ましくは、霊長類ES細胞であり、なおさらに好ましくは、ヒトES細胞である。このようES細胞(特に、ヒトのような霊長類)は、より発生段階の初期にある未分化な状態を保っているという点で従来方法によって調製される幹細胞とは異なる有利な効果を有すると考えられる。従って、本発明の幹細胞調製物は、1)従来の方法で得られる幹細胞よりも,より未分化な状態を保っている;2)より正常に近い組織を支持する幹細胞を樹立することができる;3)より正常な組織に近い性質を有しているなどの有利な点を持っていることがわかる。従来の方法(例えば、非特許文献5、7など)よりも、本発明の方法ではより簡便に安定して未分化状態を維持したまま培養できており、他の方法では常に分化細胞が混入するのに比較し、本発明の方法では分化細胞はほとんど現れないことが示されている。従来の報告では、具体的な数値での報告は少ないがPeraのグループ(NBt;非特許文献7)では50%ほどが部分的に分化した細胞集団であるとしているのに対して、本発明では、実施例においても例証されるように、50%未満どころか、1%程度以下という数値も達成できることが示されている。このような幹細胞調製物は、従来は調製できなかったことから、調製物自体が新規であることが理解される。
(再生移植物の調製)
別の局面において、本発明は、臓器、組織または細胞を再生するための移植物を調製するための方法を提供する。この方法は、A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;B)該幹細胞を、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含むフィーダー細胞調製物の上で培養する工程;およびC)該幹細胞を所望の臓器、組織または細胞を再生するための移植物へと分化させる工程、を包含する。ここで、フィーダー細胞としては、上記「幹細胞調製法」および「フィーダー細胞調製物」節で詳細に説明した任意の形態を用いることができる。幹細胞は、所望の臓器、組織または細胞に分化し得るものである限り、任意のものを使用することができる。所望の臓器、組織または細胞に分化し得るかどうかは、当該分野において公知の技術を用いて確認することができる。そのような手法としては、分化条件にその幹細胞を晒し、その後一定期間培養した後、所望の分化をしているかどうかを、例えば、肉眼でみたり、顕微鏡により観察したり、あるいは、分子生物学的に観察したり、細胞表面マーカーなどを同定することによるものなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明の再生移植物の調製において、分化工程は、当該分野において公知の任意の技術を用いることができる。一つの好ましい実施形態において、本発明の方法における培養のために、分化因子を加えることができる。そのような分化因子としては、例えば、DNA脱メチル化剤(5−アザシチジンなど)、ヒストン脱アセチル化剤(トリコスタチンなど)、核内レセプターリガンド(例えば、レチノイン酸(ATRA)、ビタミンD、T3など)、細胞増殖因子(アクチビン、IGF−1、FGF,PDGF、TGF−β、BMP2/4など)、サイトカイン(LIF、IL−2、IL−6など)、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラビノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレン、セレンなどが挙げられるがそれらに限定されない。神経への分化には、NGF、FGFという分化因子を加えることができる。血液細胞への分化には、インターロイキン、EPOという分化因子を加えることができる。
本発明の再生移植物の調製が目的とする所望の臓器、組織または細胞としては、神経、血球、骨、軟骨、心臓、心膜、血管、筋肉、眼、肝臓、膵臓、腸、胃、肺、気管、毛、皮膚などが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、上述の所望の臓器、組織または細胞と前記フィーダー細胞とは、同じ種である。同じ種であることによって、免疫反応を最低限に抑えることも可能であり、適合性という点で好ましい。
別の実施形態において、上述の所望の臓器、組織または細胞は霊長類のものであり、フィーダー細胞はマウス由来であることが好ましい。この組み合わせで幹細胞の樹立効率が80%以上であるという高率を達成することができることがわかったからである。しかし、この組み合わせ以外の種の組み合わせもまた、同様に本発明において好ましくあり得ることが理解されるべきである。従って、フィーダー細胞としてヒトなどの霊長類由来のものを使用してもよいことが理解される。
別の実施形態において、本発明の培養は、エキソビボ(すなわち、自己へもどすことを目的とする)で行われる。
1つの実施形態において、本発明の幹細胞は、被検体から摘出されてすぐのものであるか、または凍結保存されたものであり得る。摘出されてすぐ使用することが好ましい。樹立効率が高いからである。
別の実施形態において、本発明の方法における培養は、37℃、飽和湿度中で5%CO下であることが好ましく、分化のために加えられる分化因子としては、DNA脱メチル化剤(5−アザシチジンなど)、ヒストン脱アセチル化剤(トリコスタチンなど)、核内レセプターリガンド(例えば、レチノイン酸(ATRA)、ビタミンD、T3など)、細胞増殖因子(アクチビン、IGF−1、FGF,PDGF、TGF−β、BMP2/4など)、サイトカイン(LIF、IL−2、IL−6など)、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラビノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレン、セレンなどを1または複数を含んでいることが好ましい。
(臓器など)
別の局面において、本発明は、本発明の再生移植物の調製法によって調製される、臓器、組織または細胞を提供する。このような臓器、組織または細胞は、より正常な組織に近い性質を有しているという点で従来方法によって調製される再生臓器、組織または細胞とは異なる有利な効果を有すると考えられる。
(臓器等再生システム)
別の局面において、本発明は、臓器、組織または細胞を再生するためのシステムを提供する。このシステムは、A)容器;およびB)該容器上に播種される、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含むフィーダー細胞調製物、を備える。ここで、このフィーダー細胞調製物は、上記「フィーダー細胞調製物」および「幹細胞調製法」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。容器もまた、任意の物を利用することができ、例えば、「再生移植物の調製」節において説明される任意の形態をとることができることが理解される。
(細胞混合物)
本発明は、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含む混合物を提供する。この混合物は、本発明において実証されるように、幹細胞のフィーダー細胞として使用することができる。正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とは、「幹細胞調製法」および「フィーダー細胞調製物」において説明されるような任意の形態をとることができることが理解される。従って、実質的には、この細胞混合物は、フィーダー細胞調製物と同一のものであり得ることが理解され得る。
好ましい実施形態において、本発明の混合物中の初代培養細胞は、マウス胎児初代培養繊維芽細胞であることが有利である。この形態が有利なのは、STO細胞など、他の細胞から得られない因子などが供給され、従来にない効率で幹細胞を樹立することができること、より正常に近い組織を支持する幹細胞を樹立することができることなどいう効果が考えられるからである。
別の好ましい実施形態において、本発明の混合物中の繊維芽細胞株は、STO株であることが有利である。この形態が有利なのは、マウス胎仔繊維芽細胞から供給される因子が得られることにより、従来にない効率で幹細胞を樹立することができること、より正常に近い組織を支持する幹細胞を樹立することができることなどという効果が考えられるからである。
(臓器等再生方法)
別の局面において、本発明は、臓器、組織または細胞を再生するための方法を提供する。この方法は、A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;B)該幹細胞を、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含むフィーダー細胞調製物上で培養する工程;およびC)該培養された該幹細胞を被検体の処置されるべき部位に移植する工程、を包含する。ここで使用されるフィーダー細胞は、上記「フィーダー細胞調製物」および「幹細胞調製法」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。幹細胞もまた、上記「フィーダー細胞調製物」および「幹細胞調製法」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。移植技術もまた、当該分野において公知の任意の技術を用いて投与することができる。そのような技術としては、例えば、カテーテルを用いて心筋層への幹細胞移植などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、D)前記幹細胞を分化させる工程をさらに包含する。このような分化工程は、当該分野において公知の方法を適用することができる。このような分化条件は、分化の目的となる臓器、組織または細胞によって変動し得ることが理解される。そのような変動を考慮して、当業者は、適宜、適切な分化条件を決定し、選択することができることが理解される。
(混合物のフィーダー細胞としての使用)
別の局面において、本発明は、フィーダー細胞調製物としての、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含む細胞混合物の使用を提供する。あるいは、フィーダー細胞としての、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを含む細胞混合物の使用が提供される。あるいは、幹細胞の使用が適切である疾患、障害または状態の処置または予防のための、幹細胞を含む医薬の製造における、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを含むフィーダー細胞調製物の使用が提供される。
ここで使用されるフィーダー細胞は、上記「幹細胞調製法」および「フィーダー細胞調製物」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。フィーダー細胞は、任意の細胞を支持することができるが、好ましくは幹細胞を支持することを目的とする。ここで、幹細胞もまた、上記「フィーダー細胞調製物」および「幹細胞調製法」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。
他の局面において、本発明は、フィーダー細胞を含む医薬を製造するための、正常細胞(例えば、繊維芽細胞初代培養細胞)と、細胞株(例えば、繊維芽細胞株)とを含む細胞混合物の使用を提供する。ここで使用されるフィーダー細胞は、上記「幹細胞調製法」および「フィーダー細胞調製物」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。フィーダー細胞は、任意の細胞を支持することができるが、好ましくは幹細胞を支持することを目的とする。ここで、幹細胞もまた、上記「幹細胞調製法」および「フィーダー細胞調製物」において説明される任意の形態をとることができることが理解される。医薬を製造する技術は、当該分野において公知の技術を用いることができる。医薬には、適宜薬学的に受容可能なキャリアを加えることができる。
好ましくは、上記フィーダー細胞調製物は、増殖しないように処理されている(例えば、マイトマイシンCによる)。このことにより、フィーダー細胞調製物は、パッケージに入れて販売することが可能になる。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、Sigmaから得た。動物の飼育は、National Society for Medical Researchが作成した「Principles of Laboratory Animal Care」およびInstitute of Laboratory Animal Resourceが作成、National Institute of Healthが公表した「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH Publication, No. 86−23, 1985,改訂)に遵って、京都大学および日本政府が規定する基準に遵い、動物愛護精神に則って行った。ヒトを対象とする場合は、厚生労働省または等価の政府当局の基準に従い、事前に同意を得た上で実験を行う。その同意方法は、本明細書において記載されるとおりである。
(実施例1:マウス胎仔繊維芽細胞の初代培養細胞(MEF)の調製)
マウス胎仔から繊維芽細胞の初代培養細胞(MEFともいう)を調製した。具体的には、以下のとおりである。
妊娠したマウス(ICR、日本クレア)から、胎仔の部分を取り出し、細胞を分離して、DMEM+10%ウシ胎仔血清(FBS)という培地中に播種した。取り出した細胞は、DMEM+10%FBS中で維持した。
(実施例2:MEF細胞の前処理)
次に、フィーダー細胞としての効率を上げるために、実施例1で調製したMEF細胞を前処理した。前処理には、以下のものを使用した。
培養液:DMEM+10%FCS
PBS(Ca,Mg不含)
0.05%トリプシン+1mM EDTA
2mg/mlマイトマイシンC水溶液
0.1%ゼラチン水溶液。
前処理は以下のとおり行った。
(1)コンフルエントの細胞にマイトマイシンCを10μg/mlになるよう培地に加え、1.5〜2時間培養した。
(2)マイトマイシンC処理した培養皿から培地を除きPBSで3回洗った。培地を加え、数時間から一晩培養した。
(3)培地を除きPBSで3回洗い、トリプシン処理により細胞を解離し、培地を加え細胞をよく懸濁した後、遠心して上清を除いた。
(4)細胞を1x105/mlの濃度に懸濁させた。
このようにして調製したMEF細胞を、単独でまたは他の細胞と混合してフィーダー細胞として以下に実験に用いた。
(実施例3:STO細胞の前処理)
STO細胞として、STO細胞のサブクローンSL10細胞を使用した。SL10細胞は、明治乳業(東京、日本)から入手した。SL10の場合、2週間がフィーダー細胞としての利用限度であり、7〜10日で継代を行った。培地としてはDMEM+10%FCSを使用した。
このSTO細胞を、フィーダー細胞として使用するために前処理した。その手順は以下のとおりである。前処理には、以下のものを使用した。
培養液:DMEM+10%FCS
PBS(Ca,Mg 不含)
0.05%トリプシン+1mM EDTA
2mg/mlマイトマイシンC水溶液
0.1%ゼラチン水溶液。
前処理は以下のとおり行った。
(1)コンフルエントの細胞にマイトマイシンCを10μg/mlになるよう培地に加え、1.5〜2時間培養した。
(2)マイトマイシンC処理した培養皿から培地を除きPBSで3回洗った。培地を加え、数時間から一晩培養した。
(3)培地を除きPBSで3回洗い、トリプシン処理により細胞を解離し、培地を加え細胞をよく懸濁した後、遠心して上清を除いた。
(4)細胞を1.5×10/mlの濃度に懸濁した。
(実施例4:別のSTO細胞の調製)
別の実施例として、STO細胞から好適なクローンをサブクローニングする。その手順は以下のとおりである。
マウスにおいてES細胞株の樹立・継代維持に用いられるSTO細胞は株細胞であり均一な集団と考えられていたが、その中に特にES細胞株の樹立・維持に優れた性質を持つ細胞集団を含むことが示されている。
同様の性質を持つSTO細胞のサブラインは以下のように単離できる。
(1)定法に従いSTO細胞を細胞一つ一つになるまで解離する。
(2)培養皿に100−500個程度の解離したSTO細胞を播種する。
(3)数日間培養すると播種した細胞一つ一つの細胞それぞれからコロニーが形成されるので十分な大きさのコロニーが形成されるまで培養を続ける。
(4)それぞれのコロニーから細胞を回収し、別々に培養して十分な量にまで増殖させ100クローン程度のサブラインを確立する。
(5)それぞれのサブクローンの細胞を用いてフィーダー細胞とし、それを用いてES細胞の培養を行い、未分化状態の支持能の高いサブラインを選別する。
このようにしてサブクローニングした細胞株もまた、フィーダー細胞として使用できる。このようなサブクローンを実施例3に記載のように前処理した。
(実施例5:フィーダー細胞の調製)
本実施例では、フィーダー細胞を調製した。本発明のフィーダー細胞として、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを単独で使用した場合と、混合した場合とを調製した。フィーダー細胞の調製は、以下に示すように同様のプロトコールに従った。
(1)フィーダーを作る培養皿を予めゼラチンコートしておいた。ゼラチンコートは培養皿の表面をゼラチン溶液で覆い37℃で1時間以上インキュベートして行った。
(2)前処理したSTO細胞、前処理したMEF細胞を単独でまたは懸濁液を1:1に混合して用いた。
(3)ゼラチンコートした培養皿からゼラチン溶液を除き、細胞サンプルを加えた。35mmの培養皿に2mlの細胞懸濁液を加えると培養皿の表面をフィーダー細胞が隙間なく覆った。細胞密度はおよそ2.5×10/cmになった。
調製したフィーダー細胞は4日以内に使用した。
(実施例6:幹細胞の樹立)
次に、実施例5で調製したフィーダー細胞を用いて幹細胞を樹立した。使用した培養液は以下のとおりである。
(ES細胞用培養液)
(細胞解離液)
0.25% トリプシン(PBS)
1mM CaCl
20%KSR。
(ディッシュ)
フィーダーをつくる培養ディッシュは予めゼラチンコートしておく。0.1%ゼラチン溶液(swine skin、Type A:Sigma 社製)で覆い、37℃で1 時間以上インキュベートする。培養ディッシュのゼラチン溶液を除き、細胞の懸濁液を加える。数時間経てばフィーダー細胞として使用可能である。
フィーダー細胞を用いたES細胞の樹立は、以下のように行った。
1.フィーダー細胞の培養液をES細胞用の培養液に交換した。
2.免疫手術法もしくは機械的操作により胚盤胞から内部細胞塊を分離した。免疫手術法は、簡単に述べると、以下のとおりである。
酵素処理などにより透明帯を取り除き、マウス表面抗原に反応する抗体溶液内でインキュベートした。次に補体溶液内でインキュベートすることによって最外層の細胞である栄養外胚葉が取り除かれ、内部細胞塊が分離された。
ヒトES細胞の場合は、ヒトの細胞表面抗原に反応する抗体溶液を用いることに留意して上記手順を行った。カニクイサル((株)ケアリーから入手)の場合は、サルの細胞表面抗原に反応する抗体溶液を用いることに留意して上記手順を行った。
3.分離した内部細胞塊をフィーダー細胞上で培養した。
4.翌日内部細胞塊がフィーダー細胞に接着していることを確認して、培養液を交換した。以後毎日培地交換した。
5.5〜10日後に内部細胞塊から増殖してくるES細胞様の細胞が認められるようになった。細胞塊が100から200μmになったら継代を行った。
6.培養液をのぞき細胞解離液を入れた。
7.5から10分間処理するとES細胞様細胞が培養皿よりはがれてくるので、これを細く引いたガラス管で拾い上げ数回出し入れすることで細胞塊を数個に分けた。
8.培養液中で細胞解離液を洗浄して除き、新しいフィーダー上に細胞塊を移した。
9.翌日、培養液を交換した。以後毎日培地交換した。
10.フィーダー上で個々の細胞塊が100−200μm程度に増殖したら、同様の操作で継代を行った。
11.細胞が十分増殖するようになれば(35mm培養皿1枚に増えるぐらい)サルES細胞の通常の継代操作と同様に継代ができるようになった。この段階に達すれば以後安定した培養が可能であることが確認される。
この実施例で樹立された細胞を図1および2に示す(図1はサル、図2はヒトを示す)。
本実施例では、基本培地にDMEM/F12を使用したが、DMEMまたは他の基本培地でも問題なく使用できることが示される。
本実施例では、補填成分としてKSRを使用したが、KSRのかわりに通常使用されているウシ胎仔血清でもよいようである。ただし、KSRのほうがウシ胎仔血清よりも良い結果が出るようであった。
さらに必要に応じて1〜2mg/ml のコラゲナーゼを添加した。コラゲナーゼの添加により、若干樹立しやすくなるようである。
(実施例7:マーカーによる染色)
次に、実施例6で樹立した細胞の未分化状態を、特異的マーカーによる染色により調べた。胚性幹細胞を、4% PFAで固定し標準的な培養細胞の免疫染色法(Willingham,M.C.et.al., 1985.An Atlas of Immunofluorescence in Cultured Cell, Academic Press, Orlando, FL, pp.1−13.)に従い免疫染色を行った。ブロッキングは0.1% Triton X/PBS/2% skim milkを用い室温で一時間、洗いは0.1% TritonX/PBSを用い室温で5分を4回行った。一次抗体はSSEA-4、TRA-1-60のモノクローナル抗体をそれぞれ200 μg/ml(CLONTECH)を1/100希釈したものを、二次抗体はFITC標識goat 抗−mouse IgG (H+L)(ZYMED LABORATORIES,INC)を1/200希釈したものを使用した。二次抗体の反応後はrhodamine phalloidin(Molecular Probe)、DAPI(SIGMA)の順に染色を行いシグナルを検出した。
ALP(アルカリホスファターゼ)の組織化学的染色は、以下のように行った。培養ディッシュをダルベッコのPBS(−)で2回洗浄した後、4℃の95%冷エタノールで30分以上固定し、次いで4 ℃の無水エタノールで30分以脱水した。固定液を除き、ディッシュを室温で0.1M Tris−HCl(pH9.0〜9.5)にて5 分間3 回洗浄した後、1.5〜2mlの染色液(ナフトールAS−BIホスフェート(Sigma、カタログ番号N−2125)2.5mg と、ファースト赤TR塩(Sigma)15mg[またはファースト紫B 塩6mg(Sigma)、ファースト青BB塩12.5mg(Sigma)]とを0.1M Tris−HCl 緩衝液25mlに加え、遮光下で3 〜5 分間撹拌して溶解し、次いで濾過する)を各ディッシュに加え、遮光下で室温にてALP を15〜30分間染色した。PBS(−)で2 回洗浄した後グリセロールを加え位相差立体顕微鏡で赤褐色に染まったEG細胞コロニーを検鏡した。
結果を図3に示す。図3は、左からALP、SSEA-4、TRA-1-60を示す。
図3からも明らかなように、本発明のフィーダー細胞を用いて樹立した幹細胞は通常どおり多分化能を保持していることが確認された。
(実施例8:複数の細胞での再現性)
実施例6および7で行った実験を、カニクイザルES細胞、ヒトES細胞について行い、MEFフィーダー単独、STO株フィーダー単独、および混合フィーダー単独で試験した。
その結果を以下の表に表す。

この表からも明らかなように、それぞれのフィーダー細胞を単独で用いた場合は、25%以下の幹細胞樹立効率しか達成できなかったのに対して、混合フィーダー細胞では、80%以上で、場合によっては100%の幹細胞樹立効率を達成することができるという優れた効果が実証された。ヒトES細胞は、MEF単独でもSTO単独でも従来ほとんど樹立することができなかったことから、本発明の効率は驚くべきものと考えられる。
(実施例9:神経細胞への分化)
本発明の上記実施例において調製した上記ES細胞を、3回無血清培地にて洗浄し、血清を完全に取り除いた。KSR(Knockout Serum Replacement;GIBCO/Invitrogen Cat.No.10828−028)を含むES細胞培地を用いて、PA6フィーダー細胞上で未分化細胞を8−11日間培養した(Kawasaki et al.,2000,Neuron 28; 31−40、Tada et al.,2003; Dev.Dyn.,227; 504−510.参照)。これにより、神経細胞に分化させた。
その結果を図4に示す。
図4の結果からも明らかなように、本発明の方法で樹立したES細胞は、神経への分化能を保持していたことが明らかになった。
(実施例10:テラトーマ形成)
次に、本発明のES細胞のテラトーマ形成能を確認した。SCIDマウス(日本クレア、東京)の皮下および腹腔内に本発明のES細胞を約10個移植し、1〜3ヶ月様子を見た。
1〜3ヵ月後に得られるテラトーマを回収し、組織学的解析を行った。その一例を図5に示す。図5から明らかなように、本発明のES細胞は、外胚葉、内胚葉、中胚葉などに由来する種々の組織が観察された。したがって、本発明で樹立されたES細胞は、多分化能を保持していることが実証された。
(実施例11:造血系細胞への分化)
次に、本発明のES細胞の造血系細胞への分化を観察する。分化誘導培養液として、αMEM(Gibco BRL、Cat#11900−016)に10%ウシ胎仔血清を加え、5×10−5M メルカプトエタノールを加えた培養液を使用した。
まず、ES細胞は、中胚葉細胞へと分化させた。未分化ES細胞を、上述の分化誘導培養液で懸濁し、IV型コラーゲンコート6プレートに1×10/ウェルの密度で播種する。これを37℃、5% COで4日間培養する。
培養上清を回収し、ウェルをPBS(−)で一回洗う。次に細胞剥離液(Cell Dissociation Buffer(Gibco BRL,#13150−016)を入れて10分間静置(37℃、5%CO)し、細胞を剥離して回収する。細胞塊をほぐし、ほぐれないものはメッシュで除き、細胞数を計数する。1,200rpmで5分間遠心分離し、上清を除いた。
次に、10mlのHBSS/BSAで細胞を懸濁し、1,200rpmで5分間遠心分離して上清を除いた。1×10細胞あたり0.1mlの正常マウス血清に懸濁し、10分間静置した。適切な量のE−カドヘリン抗体および抗FLK1抗体を加え20分間氷水上に配置した。HBSS/BSAで2回細胞を洗浄した後、FLK1+E−カドヘリン−中胚葉細胞をFACSによりソートする。
ここで選択した中胚葉細胞を、分化誘導用培養液で懸濁し、IV型コラーゲンコートプレートに3×10の密度で播種する。培養液は1ウェルあたり3ml加え、37℃、5%COで3日間培養する。
細胞の回収およびブロッキングを行う。回収およびブロッキングは、上述のように行う。適切な量のVE−カドヘリン抗体を加え、20分間氷温に静置する。細胞をHBSS/BSAで洗浄した後、VE−カドヘリン血管内皮細胞をFACSによりソートして血管内皮細胞を調製する。
このようにして、本発明のES細胞が造血系細胞へも分化することが実証される。
(実施例12:心筋への分化誘導)
上述の実施例で調製されるES細胞を、KSRを含む基本培地(例えば、DMEM)中で浮遊培養することによって胚様体を形成させる。胚様体形成後、4〜7日経過後に胚様体を集めゼラチンコート下培養皿に播種する。KSRを含む基本培地中で1〜3週間培養することによって心筋細胞が分化する。
(実施例13:他の幹細胞(例えば組織幹細胞)での実験)
組織幹細胞(神経幹細胞、間葉系幹細胞など)を含む組織を取り出し、混合フィーダー細胞上で培養する。増殖する幹細胞の集団を分離し、本発明上記実施例5のように調製されるフィーダー細胞を用いて培養することによって安定して継代維持することができる細胞株が樹立される。
(実施例14:サルでの再生治療)
次に、カニクイサルから、ES細胞を採取し、実施例9と同様の処置を行い、神経細胞に分化させる。この神経細胞の移植物を神経疾患を有するカニクイサル被検体に移植すると、移植物が機能できることがわかる。
(実施例15:ヒトでの再生治療)
次に、ヒトから、実施例6に記載されるように、同意を得た患者からES細胞を採取し、実施例14に記載するように実施例9と同様の手順に基づいて処理する。この神経細胞の移植物を、神経疾患を有するヒト被検体に予め同意を得た後に移植すると、移植物が機能できることがわかる。
(実施例16:フィーダー効果の検討)
次に、実施例1で調製した初代培養細胞と、実施例3〜4で調製した細胞株とを適宜混合して、フィーダー細胞調製物を調製し、フィーダー効果に差異が現れるかどうか検証する。
使用する比率を以下に示す。
上記条件のうち、10:90〜90:10まででは、フィーダー細胞として単独で用いたときよりも改善された効果が示される。5:95および95:5では、単独使用と同じ程度の効果が観察される。特に、20:80〜80:20では、混入する分化細胞が30%未満程度に低減され、ほぼ等量で観察すると、混入する分化細胞が1%程度に低減することが観察される。
従って、好ましい比率としては、例えば、1:4〜4:1、あるいは1:3〜3:1を使用することが有利であり、より好ましくは、ほぼ等量(例えば、3:7〜7:3、6:4〜4:6など)を使用することが有利であり得る。
(実施例17:他の幹細胞での検討)
次に、実施例16と同様の実験を、幹細胞としてカニクイサルを用いて行う。
プロトコールは、実施例16に準じる。
その結果、実施例16と同様に、10:90〜90:10まででは、フィーダー細胞として単独で用いたときよりも改善された効果が示される。5:95および95:5では、単独使用と同じ程度の効果が観察される。特に、20:80〜80:20では、混入する分化細胞が30%未満程度に低減され、ほぼ等量で観察すると、混入する分化細胞が1%程度に低減することが観察される。
従って、好ましい比率としては、例えば、1:4〜4:1、あるいは1:3〜3:1を使用することが有利であり、より好ましくは、ほぼ等量(例えば、3:7〜7:3、6:4〜4:6など)を使用することが有利であり得る。
(実施例18:ヒト細胞での検証)
次に、実施例16と同様の実験を、幹細胞としてヒトの細胞を用いて行う。
プロトコールは、実施例16に準じる。ただし、ヒトのES細胞は、上記のように、提供者の同意の下で行う。
その結果、実施例16と同様に、10:90〜90:10まででは、フィーダー細胞として単独で用いたときよりも改善された効果が示される。5:95および95:5では、単独使用と同じ程度の効果が観察される。特に、20:80〜80:20では、混入する分化細胞が30%未満程度に低減され、ほぼ等量で観察すると、混入する分化細胞が1%程度に低減することが観察される。
従って、好ましい比率としては、例えば、1:4〜4:1、あるいは1:3〜3:1を使用することが有利であり、より好ましくは、ほぼ等量(例えば、3:7〜7:3、6:4〜4:6など)を使用することが有利であり得る。
(実施例19:他のフィーダー細胞での検証)
次に、実施例16と同様の実験を、幹細胞としてヒトの細胞を用いて行い、フィーダー細胞として、初代培養細胞として、マウス繊維芽初代培養細胞およびヒト表皮繊維芽細胞(Clonetics, a division of BioWhittaker、USA;Cambrex社、USA)を用い、細胞株として、SL10およびMRC5(ATCC number CCL−171)を用いて行う。
プロトコールは、実施例16に準じる。ただし、ヒトのES細胞は、上記のように、提供者の同意の下で行う。
その結果、実施例16と同様に、10:90〜90:10まででは、フィーダー細胞として単独で用いたときよりも改善された効果が示される。5:95および95:5では、単独使用と同じ程度の効果が観察される。特に、20:80〜80:20では、混入する分化細胞が30%未満程度に低減され、ほぼ等量で観察すると、混入する分化細胞が1%程度に低減することが観察される。
従って、好ましい比率としては、例えば、1:4〜4:1、あるいは1:3〜3:1を使用することが有利であり、より好ましくは、ほぼ等量(例えば、3:7〜7:3、6:4〜4:6など)を使用することが有利であり得る。
従って、フィーダー細胞として使用される他の正常細胞および他の細胞株を用いても、同様に混合した場合のフィーダー効果が顕著に増強されることが認められる。
(実施例20:フィーダー細胞調製物のパッケージング)
実施例5などで調製したフィーダー細胞調製物が販売可能なルートでも活性を保持することができるかどうかを以下に確認する。
フィーダー細胞として使用する調製物にマイトマイシンC処理を行う。マイトマイシンCは、Sigmaから入手可能である。マイトマイシンC処理をすることによって、フィーダー細胞が増殖しなくなり、長時間の保存が可能で、販売することが可能となる。このようなマイトマイシンC処理した細胞は、凍結保存して販売することができる。このような凍結保存は、従来の初代培養細胞で行われている方法と同じものを利用でき、例えば、そのような方法は、「ES細胞の遺伝子操作」分子生物学プロトコール(南江堂)p471−479に記載されている(このほかに、非特許文献1を参照。)。
具体的には以下のように処理することが可能である。
本実施例において調製されるフィーダー細胞の販売時のパッケージは、例えば、凍結チューブの形態で提供する。その処理は以下の通りである。
マイトマイシンC処理までは通常の調製時(実施例2および3を参照)と同様で、その後、以下の操作を行う。
マイトマイシンC処理した培養皿から培地を除きPBSで3回洗い、培地を加え、数時間から一晩培養する。
培地を除きPBSで3回洗い、トリプシン処理により細胞を解離し、培地を加え細胞をよく懸濁した後、遠心して上清を除く。
細胞を細胞凍結培地(90%FCS+10%DMSO)にたとえば5×10/mlに懸濁する。
細胞懸濁液をクライオチューブ(NUNC 377224)に1mlいれ、しっかりとふたをする。
凍結チューブを細胞凍結用容器(Nulgene 5100)へ入れ、容器を−80℃フリーザーへ入れる。
4時間から一晩したら、凍結チューブを液体窒素容器に移す。
このように調製した販売用フィーダー細胞調製物は、好ましくは凍結状態で、販売先で提供される。提供先では、通常の凍結細胞と同様に解凍作業を行い、フィーダー細胞として使用することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、再生医療において、多大な有用性を有する。好ましい実施形態では特に、従来達成不可能であった高い樹立効率で幹細胞(特に、ヒトを含む霊長類のES細胞)を樹立することができたことから、その有用性は高い。したがって、本発明は、再生医療およびその治療用医薬などを製造する業において利用可能性がある。

Claims (53)

  1. 正常細胞と、細胞株とを含む、幹細胞を調製するためのフィーダー細胞調製物。
  2. 前記正常細胞は、初代培養細胞を含む、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  3. 前記正常細胞は、不死化していない細胞である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  4. 前記正常細胞は、繊維芽細胞を含む、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  5. 前記正常細胞は、繊維芽細胞初代培養細胞である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  6. 前記正常細胞は、マウス由来である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  7. 前記正常細胞は、胎児由来である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  8. 前記正常細胞は、継代数が5回以下である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  9. 前記正常細胞は、マウス11〜16日齢胎児から酵素処理により得られた繊維芽細胞である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  10. 前記正常細胞は、継代数が5回以下の初代培養細胞である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  11. 前記細胞株は、不死化している、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  12. 前記細胞株は、繊維芽細胞株である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  13. 前記細胞株は、継代された期間が2ヶ月以下である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  14. 前記細胞株は、継代された期間が1ヶ月以下である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  15. 前記細胞株は、マウス由来である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  16. 前記細胞株は、胎児由来である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  17. 前記細胞株は、STO株である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  18. 前記細胞株は、neo抵抗性である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  19. 前記細胞株は、SL10株である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  20. 前記正常細胞と、前記細胞株とは、約1:10〜10:1である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  21. 前記正常細胞と、前記細胞株とは、約1:3〜3:1である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  22. 前記正常細胞と、前記細胞株とは、ほぼ等量で存在する、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  23. 前記幹細胞は、胚性幹細胞である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  24. 前記幹細胞は、ヒト胚性幹細胞である、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物。
  25. 正常細胞と、細胞株とを含むフィーダー細胞調製物の上で、幹細胞を培養する工程を包含する、
    幹細胞を調製するための方法。
  26. 前記フィーダー細胞調製物は、請求項1〜24のいずれか1項に記載のフィーダー細胞調製物である、請求項25に記載の方法。
  27. 前記フィーダー細胞が配置される培養ディッシュはゼラチンコーティングされている、請求項25に記載の方法。
  28. 前記フィーダー細胞調製物は、約1×10細胞/cm〜約1×10細胞/cmで播種される、請求項25に記載の方法。
  29. 前記フィーダー細胞調製物は、混合して播種された後5日以内に使用される、請求項25に記載の方法。
  30. 前記幹細胞は、ノックアウト血清代替添加物(KSR)を含む培地中で培養される、請求項25に記載の方法。
  31. 前記方法は、さらに、前記幹細胞を継代する工程を包含し、該継代工程において、コラゲナーゼが使用される、請求項25に記載の方法。
  32. 請求項25に記載の方法によって調製される、幹細胞調製物。
  33. 請求項25に記載の方法によって調製される、胚性幹細胞調製物。
  34. 請求項25に記載の方法によって調製される、霊長類胚性幹細胞調製物。
  35. 請求項25に記載の方法によって調製される、ヒト胚性幹細胞調製物。
  36. 臓器、組織または細胞を再生するための移植物を調製するための方法であって:
    A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;
    B)該幹細胞を、請求項1に記載のフィーダー細胞調製物とともに培養する工程;および
    C)該幹細胞を所望の臓器、組織または細胞を再生するための移植物へと分化させる工程、
    を包含する、方法。
  37. 前記所望の臓器、組織または細胞は、神経、血球、骨、軟骨、心臓、心膜、血管、筋肉、眼、肝臓、膵臓、腸、胃、肺、気管、毛および皮膚からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記所望の臓器、組織または細胞と前記フィーダー細胞調製物とは、同じ種である、請求項36に記載の方法。
  39. 前記所望の臓器、組織または細胞は霊長類のものであり、前記フィーダー細胞調製物はマウス由来である、請求項36に記載の方法。
  40. 前記培養は、エキソビボで行われる、請求項36に記載の方法。
  41. 前記幹細胞は、被検体から摘出されてすぐのものであるか、または凍結保存されたものである、請求項36に記載の方法。
  42. 前記培養は、37℃、飽和湿度中で5%CO下で行われる、請求項36に記載の方法。
  43. 前記分化は、DNA脱メチル化剤、ヒストン脱アセチル化剤、核内レセプターリガンド、細胞増殖因子、サイトカイン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラビノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレンおよびセレンからなる群より選択される少なくとも1つの分化因子を含む培養液において行われる、請求項36に記載の方法。
  44. 請求項36に記載の方法によって調製される、臓器、組織または細胞。
  45. 臓器、組織または細胞を再生するためのシステムであって:
    A)容器;および
    B)該容器上に播種される、繊維芽細胞初代培養細胞と、繊維芽細胞株とを含むフィーダー細胞調製物、
    を備える、システム。
  46. 臓器、組織または細胞を再生するための方法であって:
    A)所望の臓器、組織または細胞に分化し得る幹細胞を提供する工程;
    B)該幹細胞を、請求項1に記載されるフィーダー細胞調製物とともに培養する工程;および
    C)該培養された該幹細胞を被検体の処置されるべき部位に移植する工程、
    を包含する、方法。
  47. D)前記幹細胞を分化させる工程をさらに包含する、請求項46に記載の方法。
  48. フィーダー細胞調製物としての、正常細胞と、細胞株とを含む細胞調製物の使用。
  49. 前記フィーダー細胞調製物は、増殖しないように処理されている、請求項48に記載の使用。
  50. 前記フィーダー細胞調製物は、マイトマイシンCにより処理されている、請求項48に記載の使用。
  51. 幹細胞の使用が適切である疾患、障害または状態の処置または予防のための、幹細胞を含む医薬の製造における、請求項1に記載されるフィーダー細胞調製物の使用。
  52. 前記フィーダー細胞調製物は、増殖しないように処理されている、請求項51に記載の使用。
  53. 前記フィーダー細胞調製物は、マイトマイシンCにより処理されている、請求項51に記載の使用。
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