JPWO2005038080A1 - ナノサイズヒータ付きノズルおよびその製造方法ならびに微小薄膜の製造方法 - Google Patents

ナノサイズヒータ付きノズルおよびその製造方法ならびに微小薄膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

ナノサイズヒータ付きノズルは、原料ガスを基板Wに向けて局所的に供給するためのノズルと、ノズルの側面に設けられた一対の電極と、カーボンナノチューブ等からなるナノサイズヒータなどで構成され、ナノサイズヒータは、ノズルの開口部を横切るように各電極にそれぞれ接続され、通電によって原料ガスを加熱する。こうした構成によって、基板上の限定された領域において、局所的な成膜を容易に実現できる。

Description

本発明は、カーボンナノチューブ等のナノサイズ導電性材料を利用したナノサイズヒータ付きノズルおよびその製造方法ならびに微小薄膜の製造方法に関する。
集積回路等の電子デバイスや光デバイスを製造する際、基板上に種々の材料からなる薄膜を形成する手法として、蒸着やスパッタリング等の物理的成膜法またはCVD(化学気相成長)や熱分解法等の化学的成膜法などが利用されている。
こうした手法では、a)基板の表面全体に薄膜を成膜する工程、b)薄膜上に微細パターンを有するマスク(レジスト)を形成する工程、c)マスク開口を介して露出した薄膜の一部をエッチングで除去する工程、d)使用したマスクを除去する工程、などを繰返し実施することによって、所望の薄膜デバイスを得ている。
なお、関連する先行技術(例えば特許文献1〜5)には、カーボンナノチューブに関する製造プロセスが開示されているが、いずれも本発明の技術分野と相違する。
特開2002−255524号公報 特開2001−254897号公報 特開2000−203820号公報 特開2000−164112号公報 特開平6−283129号公報
上述したように、従来のプロセスでは、基板全体で加熱、成膜あるいは除去等を実施しているため、基板上に形成された各種デバイスへ与えるダメージが極めて大きくなり、処理内容がある程度制約されることが多い。
また、局所的な領域に処理を施す場合でも、基板全体として工程設計を追加する必要があり、処理プロセスの増加によって製造コストも上昇してしまう。
本発明の目的は、基板上の限定された領域において、局所的な成膜を容易に実現できるナノサイズヒータ付きノズルおよびその製造方法ならびに微小薄膜の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係るナノサイズヒータ付きノズルは、原料ガスを基板に向けて局所的に供給するためのノズルと、
ノズルの開口部付近に設けられ、原料ガスを加熱するためのナノサイズヒータとを備えることを特徴とする。
本発明において、ナノサイズヒータは、カーボンナノチューブで形成されることが好ましい。
また本発明において、ノズルは、電気絶縁性材料で形成され、
ノズルの側面には、一対の電極が設けられ、
ナノサイズヒータは、ノズルの開口部を横切るように、各電極にそれぞれ接続されることが好ましい。
また本発明において、ノズルは、石英または耐熱ガラスで形成されることが好ましい。
また本発明において、電極は、1700℃以上の融点を持つ材料で形成されることが好ましい。
また本発明に係る微小薄膜の製造方法は、上記ナノサイズヒータ付きノズルを、基板の表面付近に位置決めする工程と、
ナノサイズヒータ付きノズルを経由して、原料ガスを基板に向けて局所的に供給する工程と、
ナノサイズヒータを通電し、ノズル開口部付近で原料ガスを加熱する工程とを含むことを特徴とする。
また本発明に係るナノサイズヒータ付きノズルの製造方法は、電気絶縁性材料からなるチューブを部分加熱し、延伸によってテーパー状のノズルを形成する工程と、
該ノズルの側面に、一対の電極を形成する工程と、
ノズルの開口部を横切るように、各電極にナノサイズヒータを接続する工程とを含むことを特徴とする。
本発明において、ノズル側面に電極を形成した後、電極間に電流を流して、電極間の導通部分を蒸発させる工程を含むことが好ましい。
また本発明において、各電極にナノサイズヒータを接続した後、電極とナノサイズヒータの接続部分に電子線を照射する工程を含むことが好ましい。
本発明の一態様によれば、ノズルを用いて原料ガスを局所的に供給しながら、ノズルの開口部付近に設けられたナノサイズヒータを用いて原料ガスを加熱することによって、原料ガスの熱分解反応や化学反応が局部的に生じて、基板上の極めて小さい領域に薄膜を形成することができる。
また、ノズルに供給する原料ガスの種類を適宜変えることによって、所望の材料からなる薄膜を形成することができる。また、成膜時間を適宜変えることによって、所望の層厚を有する薄膜を形成することができる。さらに、ノズルの位置を適宜変えることによって、所望のパターンで薄膜を形成することができる。
従って、所望の層数や層材料、層厚を有する微小薄膜を所望のパターンで局所的に形成できることから、従来と比べて処理プロセスに伴う基板全体へのダメージを大幅に低減できるとともに、処理プロセスに必要な原料ガスやエネルギーを節約できる。
また、カーボンナノチューブは、金などの触媒反応がない限り、約10−5Paの真空中で2400K程度の温度で動作可能であり、不活性ガス中では大気圧下でのグラファイトの昇華温度3400Kより以上の温度でも動作可能であり、空気中でも酸化を開始する約700℃の温度までは安定している。また、カーボンナノチューブは、約10A/cmという極めて大きな許容電流密度を有する。
従って、原料ガスを加熱するヒータとして、カーボンナノチューブを利用することによって、高温の局所加熱を容易に実現できる。
また、ノズルを、石英やガラスなどの電気絶縁性材料で形成し、ノズルの側面に一対の電極を設けて、ナノサイズヒータを各電極にそれぞれ接続することによって、簡単な構造でノズルとナノサイズヒータとを一体化できる。さらに、ナノサイズヒータをノズルの開口部を横切るように配置することによって、ノズルを通過した原料ガスを効率的に加熱できるため、原料ガスの利用効率が向上する。
特に、ノズルを石英や耐熱ガラスで形成することが好ましく、これにより耐熱性、強度、化学安定性に優れたノズルを実現できる。また、加工性も優れているため、所望の開口径、形状を有するノズルが容易に得られる。
また、電極は1700℃以上の融点を持つ材料、例えば、白金Pt(融点1770℃)、タンタルTa(融点2990℃)、モリブデンMo(融点2620℃)などで形成することが好ましく、これにより耐熱性、強度、化学安定性に優れたノズルを実現できる。
また本発明の他の態様によれば、こうしたナノサイズヒータ付きノズルを基板の表面付近に位置決めした後、ナノサイズヒータ付きノズルを経由して原料ガスを基板に向けて局所的に供給しながら、ナノサイズヒータの通電によってノズル開口部付近で原料ガスを加熱することによって、原料ガスの熱分解反応や化学反応が局部的に生じて、基板上の極めて小さい領域に薄膜を形成することができる。
さらに、原料ガスの種類、成膜時間、ノズルの位置を制御することによって、所望の層数や層材料、層厚を有する微小薄膜を所望のパターンで局所的に形成できることから、従来と比べて処理プロセスに伴う基板全体へのダメージを大幅に低減できるとともに、処理プロセスに必要な原料ガスやエネルギーを節約できる。
また本発明に係るナノサイズヒータ付きノズルの製造方法によれば、電気絶縁性材料からなるチューブを部分加熱し、延伸によってテーパー状のノズルを形成することによって、所望の開口径、形状を有するノズルが容易に得られる。
また、ノズル側面に電極を形成した後、電極間に電流を流して、電極間の導通部分を蒸発させることによって、電極間の絶縁抵抗を高くなって、リーク電流が格段に低減される。その結果、ヒータ通電のエネルギー効率を改善できる。
また、各電極にナノサイズヒータを接続した後、電極とナノサイズヒータの接続部分に電子線を照射することによって、ナノサイズヒータに電流が流れて、この接続部分に存在する不純物を蒸発させることができる。その結果、電極とナノサイズヒータの接触抵抗が格段に小さくなり、ヒータ通電のエネルギー効率を改善できる。
本発明に係る多層カーボンナノチューブの一例を示す構成図である。 本発明の第1実施形態を示す説明図であり、図2Aは概略的な斜視図、図2Bは底面図である。 本発明の第2実施形態を示す説明図であり、図3Aは概略的な斜視図、図3Bは底面図である。 本発明の第3実施形態を示す説明図であり、図4Aは概略的な斜視図、図4B,Cは底面図である。 本発明の第4実施形態を示す説明図である。
符号の説明
10 ナノサイズヒータ付きノズル
11 ノズル
21,22 電極
30 ナノサイズヒータ
31 連結部材
図1は、本発明に係る多層カーボンナノチューブの一例を示す構成図である。ここでは、理解容易のために一部破断した外層チューブと内層チューブの2層で構成された2層カーボンナノチューブを示しているが、本発明は単層カーボンナノチューブや3層以上の層で構成される多層カーボンナノチューブも適用可能である。
多層カーボンナノチューブ1は、最外層の外層チューブ1aと、外層チューブ1aより内側にある内層チューブ1bとを備える。一般に、多層カーボンナノチューブ1の直径は約1〜約20nmであり、その長さは約0.1〜約10μmであり、製造条件によって層数、直径および長さを制御することができる
外層チューブ10および内層チューブ20は、6つの炭素原子からなる六員環が周期的に配列して円筒面を形成し、5つの炭素原子からなる五員環が部分的に配置することによって湾曲した面を形成している。
図2A,Bは本発明の第1実施形態を示す説明図であり、図2Aは概略的な斜視図、図2Bは底面図である。このナノサイズヒータ付きノズル10は、ノズル11と、一対の電極21,22と、ナノサイズヒータ30などで構成される。
ノズル11は、石英やガラスなどの電気絶縁性材料を用いて、円筒や角筒などのパイプ状に形成される。ノズル11の内径は、微小薄膜を成膜する際の空間分解能に応じて適宜設定され、例えば100nm程度〜2μm程度の直径に形成される。原料ガスが、ガス供給源からガス配送路(不図示)を通じてノズル11の後端に供給されると、ノズル11先端の開口部から基板Wに向けて局所的に供給される。
ノズル11の側面には、一対の電極21,22が設けられる。電極21,22には、外部電源から送電路(不図示)を通じて直流または交流の電力が供給される。
ナノサイズヒータ30は、高い融点および比較的高い体積抵抗率を有する材料で形成され、ヒータ材料として一般的なタングステンやグラファイト等でも形成可能であるが、上述したように、大きな許容電流密度および高温でも高い強度を有するカーボンナノチューブを用いることが好ましい。
ナノサイズヒータ30の各端部は、融着や圧着などで電極21,22にそれぞれ固定される。ナノサイズヒータ30は、ノズル11の開口部を横切るようにU字状に湾曲して配置され、ノズル11を通過した原料ガスを効率的に加熱する。カーボンナノチューブは曲げ許容度が高いため、ナノサイズヒータ30を湾曲させる場合に特に好ましい。
次に、微小薄膜の製造方法について説明する。まず、こうしたナノサイズヒータ付きノズル10を基板Wの表面付近に位置決めする。次に、ナノサイズヒータ付きノズル10を経由して、原料ガスを基板Wに向けて局所的に供給しながら、ナノサイズヒータ30を通電し、ノズル11の開口部付近で原料ガスを加熱する。
すると、原料ガスの熱分解反応や化学反応が局部的に生じて、原子、分子、イオン、ラジカルなどの化学種Mが生成され、これが基板W上に堆積すると、微小薄膜をピンポイントで形成することができる。薄膜の成膜面積は、ノズル11の開口部面積、ナノサイズヒータ30のサイズや形状、ノズル11またはナノサイズヒータ30と基板Wとの距離などの各種パラメータを調整することによって、制御可能である。
さらに、原料ガスの種類、成膜時間、ノズルの位置を制御することによって、所望の層数や層材料、層厚を有する微小薄膜を所望のパターンで局所的に形成できる。
図3A,Bは本発明の第2実施形態を示す説明図であり、図3Aは概略的な斜視図、図3Bは底面図である。このナノサイズヒータ付きノズル10は、図2Aのものと同様に、ノズル11と、一対の電極21,22と、ナノサイズヒータ30などで構成され、ナノサイズヒータ30を複数(ここでは3本)配置している。
ノズル11は、石英やガラスなどの電気絶縁性材料を用いて、円筒や角筒などのパイプ状に形成される。ノズル11の内径は、微小薄膜を成膜する際の空間分解能に応じて適宜設定され、例えば100nm程度〜2μm程度の直径に形成される。原料ガスが、ガス供給源からガス配送路(不図示)を通じてノズル11の後端に供給されると、ノズル11先端の開口部から基板Wに向けて局所的に供給される。
ノズル11の側面には、一対の電極21,22が設けられる。電極21,22には、外部電源から送電路(不図示)を通じて直流または交流の電力が供給される。
ナノサイズヒータ30は、高い融点および比較的高い体積抵抗率を有する材料で形成され、ヒータ材料として一般的なタングステンやグラファイト等でも形成可能であるが、上述したように、大きな許容電流密度および高温でも高い強度を有するカーボンナノチューブを用いることが好ましい。
ナノサイズヒータ30の各端部は、融着や圧着などで電極21,22にそれぞれ固定される。複数のナノサイズヒータ30は、ノズル11の開口部を横切るようにU字状に湾曲して配置され、ノズル11を通過した原料ガスをより効率的に加熱できる。カーボンナノチューブは曲げ許容度が高いため、ナノサイズヒータ30を湾曲させる場合に特に好ましい。
次に、微小薄膜の製造方法について説明する。まず、こうしたナノサイズヒータ付きノズル10を基板Wの表面付近に位置決めする。次に、ナノサイズヒータ付きノズル10を経由して、原料ガスを基板Wに向けて局所的に供給しながら、ナノサイズヒータ30を通電し、ノズル11の開口部付近で原料ガスを加熱する。
すると、原料ガスの熱分解反応や化学反応が局部的に生じて、原子、分子、イオン、ラジカルなどの化学種Mが生成され、これが基板W上に堆積すると、微小薄膜をピンポイントで形成することができる。薄膜の成膜面積は、ノズル11の開口部面積、ナノサイズヒータ30のサイズや形状、ノズル11またはナノサイズヒータ30と基板Wとの距離などの各種パラメータを調整することによって、制御可能である。
さらに、原料ガスの種類、成膜時間、ノズルの位置を制御することによって、所望の層数や層材料、層厚を有する微小薄膜を所望のパターンで局所的に形成できる。
図4A〜Cは本発明の第3実施形態を示す説明図であり、図4Aは概略的な斜視図、図4B,Cは底面図である。このナノサイズヒータ付きノズル10は、図2Aのものと同様に、ノズル11と、一対の電極21,22と、ナノサイズヒータ30などで構成され、ナノサイズヒータ30を複数(ここでは5本)配置し、ノズル11を角筒状に形成している。
ノズル11は、石英やガラスなどの電気絶縁性材料を用いてパイプ状に形成される。ノズル11の内径は、微小薄膜を成膜する際の空間分解能に応じて適宜設定され、例えば100nm程度〜2μm程度の直径に形成される。原料ガスが、ガス供給源からガス配送路(不図示)を通じてノズル11の後端に供給されると、ノズル11先端の開口部から基板Wに向けて局所的に供給される。
ノズル11の側面には、一対の電極21,22が設けられる。電極21,22には、外部電源から送電路(不図示)を通じて直流または交流の電力が供給される。
ナノサイズヒータ30は、高い融点および比較的高い体積抵抗率を有する材料で形成され、ヒータ材料として一般的なタングステンやグラファイト等でも形成可能であるが、上述したように、大きな許容電流密度および高温でも高い強度を有するカーボンナノチューブを用いることが好ましい。
ナノサイズヒータ30の各端部は、融着や圧着などで電極21,22にそれぞれ固定される。複数のナノサイズヒータ30は、ノズル11の開口部を横切るようにU字状に湾曲して配置され、ノズル11を通過した原料ガスをより効率的に加熱できる。カーボンナノチューブは曲げ許容度が高いため、ナノサイズヒータ30を湾曲させる場合に特に好ましい。
図4Cに示す例では、複数のナノサイズヒータ30に対してメッシュ状に交差するように、連結部材31を設けている。連結部材31は、ナノサイズヒータ30と同じ材料でも異なる材料でもよい。連結部材31をナノサイズヒータ30と連結させることによって、ナノサイズヒータ30を補強することができる。
次に、微小薄膜の製造方法について説明する。まず、こうしたナノサイズヒータ付きノズル10を基板Wの表面付近に位置決めする。次に、ナノサイズヒータ付きノズル10を経由して、原料ガスを基板Wに向けて局所的に供給しながら、ナノサイズヒータ30を通電し、ノズル11の開口部付近で原料ガスを加熱する。
すると、原料ガスの熱分解反応や化学反応が局部的に生じて、原子、分子、イオン、ラジカルなどの化学種Mが生成され、これが基板W上に堆積すると、微小薄膜をピンポイントで形成することができる。薄膜の成膜面積は、ノズル11の開口部面積、ナノサイズヒータ30のサイズや形状、ノズル11またはナノサイズヒータ30と基板Wとの距離などの各種パラメータを調整することによって、制御可能である。
さらに、原料ガスの種類、成膜時間、ノズルの位置を制御することによって、所望の層数や層材料、層厚を有する微小薄膜を所望のパターンで局所的に形成できる。
本発明は、基板全体で処理を行う従来のプロセスと併用することも可能であり、部分的な成膜の補修、追加などにも適用可能である。
図5A〜Dは、本発明の第4実施形態を示す説明図である。ここでは、ナノサイズヒータ付きノズルの製造方法について説明する。なお、図2Aに示したナノサイズヒータ付きノズル10を例示するが、図3Aや図4Aに示したもの、あるいはその他のナノサイズヒータ付きノズルについても同様に適用可能である。
まず図5Aに示すように、高い耐熱性を有する石英製またはガラス製のチューブP(例えば、外径1mm、内径0.5mm)を用意する。次に図5Bに示すように、COレーザなどの高出力レーザ光源を用いて、レーザ光をチューブPの側面から照射することによって部分的に加熱する。すると、チューブPが部分的に溶融し、この状態でチューブPを延伸することにより、チューブPの外径と内径が細くなる。冷却後、細い部分を切断することにより、図5Cに示すように、テーパー状のノズル11(例えば、外径500nm、内径300nm)が得られる。
ノズル11の最終的な外径および内径は、使用するチューブPの外径および内径、加熱条件、延伸条件などを制御することによって、数μmから数百nmの範囲で調整可能である。特に、ノズル11は石英やガラスで形成することが好ましく、これにより耐熱性、強度、化学安定性に優れたノズルを実現できる。また、加工性も優れているため、所望の開口径、形状を有するノズルが容易に得られる。
次に、蒸着やスパッタを用いて、図5Dに示すように、ノズル11の側面に一対の電極21,22(例えば、厚さ30nm〜50nm)を形成する。電極21,22の間にはノズル11の長手方向に沿ってギャップを設けて、短絡を防止している。
電極21,22は、1700℃以上の融点を持つ材料、例えば、白金Pt(融点1770℃)、タンタルTa(融点2990℃)、モリブデンMo(融点2620℃)で形成することが好ましく、これにより耐熱性、強度、化学安定性に優れたノズルを実現できる。
電極21,22の間の絶縁抵抗が不十分である場合、電極間のギャップに微細な導通部分が存在する可能性がある。その対策として、ノズル側面に電極を形成した後、真空中で電極間に過剰な電流を流して、電極間の導通部分を蒸発させる。この処理によりリーク電流を格段に低減でき、電極間の絶縁抵抗を、例えば、数キロオームから数10メガオームに向上させることができる。この処理の際、発熱温度がかなり高くなることから、ノズル11の材料として高耐熱のガラスもしくは石英が好ましい。なお、こうした通電処理の代わりに、FIB(フォーカスイオンビーム)を用いて、電極間の導通部分を除去することも可能である。
次に、ノズル11の開口部を横切るように、カーボンナノチューブからなるナノサイズヒータ30を各電極21,22に接続する。この作業は高い精度が要求されることから、SEM(走査型電子顕微鏡)の直接観察下におけるマニピュレーションを用いる。電極22にナノサイズヒータ30の一端を固定した後、別の針等で支持しながら全体をループ状に湾曲させた後、ナノサイズヒータ30の他端を電極21に固定する。カーボンナノチューブの固定手法として、電子線誘起堆積による薄膜が用いられる。
次に、電極21,22とナノサイズヒータ30の接続部分にSEMの電子線をスポット照射しながら、ナノサイズヒータ30に電流(例えば、数μA〜数10μA)を流す。すると、接触抵抗の高い部分で発熱が誘起されるため、この部分のナノサイズヒータ30と電極21,22の間に存在する不純物が蒸発して、接続部分での接触抵抗を低減させることができる。このとき接続部分の温度がかなり高くなるため、電極21,22として、Pt,Ta,Moなどの高融点材料を用いることが好ましい。
上述のような工程を経て、図5Dに示すようなナノサイズヒータ付きノズル10が得られる。
次に、ナノサイズヒータ付きノズルの評価について説明する。カーボンナノチューブからなるナノサイズヒータに電流を流して、その発光スペクトルをプランクの黒体放射式を適用して解析することにより、ナノサイズヒータの温度を測定することができる。カーボンナノチューブの個体差にも依存するが、数十μAから数百μAの電流の通電が可能であり、このとき真空中(約10−5Pa)で約3000Kの温度まで到達可能である。ここで、グラファイトの昇華温度は、同等の真空度で2000K程度であることから、この温度を上限としてナノサイズヒータの電流量を設定することが好ましい。また、ナノサイズヒータの電流上限は、ナノチューブの直径や長さにあまり依存せず、ナノチューブの個体差に大きく依存する。
また、電流が非常に良く流れるカーボンナノチューブを使用し、厚さ30nmのPt電極に接続した場合、300μA程度の電流を流すと、ナノチューブが発熱する前にPt電極の蒸発が始まる。このときナノチューブの温度は約1000K程度であった。また、ノズル材料として、石英等の高耐熱ガラスが好ましい。
次に、ナノサイズヒータを用いた加工例について説明する。実験は、約10−5Paの真空中で行った。電子ビーム誘起堆積法により成膜した非晶質カーボン膜(約30nm)にナノサイズヒータを数10nmまで接近させて、1〜2分間のヒータ通電によりカーボン膜を局所加熱した。ヒータ電流は100μA程度で、温度は2500〜3000Kである。その結果、ナノサイズヒータ付近の数百nm以下の領域で、非晶質カーボン膜が蒸発した。
次に、ナノサイズヒータ付きノズルを用いた加工例について説明する。図5Cに示すノズル11の中にエチルアルコールを注入した後、反対側開口をエポキシ接着剤で封止する。次に、エチルアルコールで充填されたノズル11をSEMのマニピュレータに取り付け、ワーク基板に対して1μm以下まで接近させた状態で保持する。次に、約10−5Paの真空中で、ナノサイズヒータ30を通電する。すると、ノズル11から飛び出したエチルアルコール分子がナノサイズヒータ30からの加熱によって分解し、ワーク基板上に、カーボンと推定される直径数μmの堆積物が生成された。
本発明によれば、原料ガスの局所的供給および局所的加熱が可能になり、基板上の極めて小さい領域に薄膜を形成することができる。その結果、従来と比べて処理プロセスに伴う基板全体へのダメージを大幅に低減できるとともに、処理プロセスに必要な原料ガスやエネルギーを節約できる。

Claims (9)

  1. 原料ガスを基板に向けて局所的に供給するためのノズルと、
    ノズルの開口部付近に設けられ、原料ガスを加熱するためのナノサイズヒータとを備えることを特徴とするナノサイズヒータ付きノズル。
  2. ナノサイズヒータは、カーボンナノチューブで形成されることを特徴とする請求項1記載のナノサイズヒータ付きノズル。
  3. ノズルは、電気絶縁性材料で形成され、
    ノズルの側面には、一対の電極が設けられ、
    ナノサイズヒータは、ノズルの開口部を横切るように、各電極にそれぞれ接続されることを特徴とする請求項1または2記載のナノサイズヒータ付きノズル。
  4. ノズルは、石英または耐熱ガラスで形成されることを特徴とする請求項3記載のナノサイズヒータ付きノズル。
  5. 電極は、1700℃以上の融点を持つ材料で形成されることを特徴とする請求項3記載のナノサイズヒータ付きノズル。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のナノサイズヒータ付きノズルを、基板の表面付近に位置決めする工程と、
    ナノサイズヒータ付きノズルを経由して、原料ガスを基板に向けて局所的に供給する工程と、
    ナノサイズヒータを通電し、ノズル開口部付近で原料ガスを加熱する工程とを含むことを特徴とする微小薄膜の製造方法。
  7. 電気絶縁性材料からなるチューブを部分加熱し、延伸によってテーパー状のノズルを形成する工程と、
    該ノズルの側面に、一対の電極を形成する工程と、
    ノズルの開口部を横切るように、各電極にナノサイズヒータを接続する工程とを含むことを特徴とするナノサイズヒータ付きノズルの製造方法。
  8. ノズル側面に電極を形成した後、電極間に電流を流して、電極間の導通部分を蒸発させる工程を含むことを特徴とする請求項7記載のナノサイズヒータ付きノズルの製造方法。
  9. 各電極にナノサイズヒータを接続した後、電極とナノサイズヒータの接続部分に電子線を照射する工程を含むことを特徴とする請求項7記載のナノサイズヒータ付きノズルの製造方法。
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