JPWO2005023301A1 - 胆管癌治療剤および検出薬 - Google Patents
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Abstract
抗グリピカン3抗体を有効成分として含む胆管癌細胞増殖抑制剤が開示される。好ましくは、抗グリピカン3抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性または補体依存性細胞傷害(CDC)活性等の細胞傷害活性を有する。また、抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断薬も開示される。
Description
本発明は、抗グリピカン3抗体を含有する胆管癌細胞増殖抑制剤および診断薬に関する。
細胞表面上に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカンの新しいファミリーとしてグリピカンファミリーの存在が報告されている。現在までのところ、グリピカンファミリーのメンバーとして、5種類のグリピカン(グリピカン1、グリピカン2、グリピカン3、グリピカン4およびグリピカン5)が存在することが報告されている。このファミリーのメンバーは、均一なサイズ(約60kDa)のコアタンパク質を持ち、特異的でよく保持されたシステインの配列を共有しており、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより細胞膜に結合している。
中枢神経の発達における細胞分裂パターンが異常なショウジョウバエメラノガスター(Drosophila melanogaster)変異体の遺伝子スクリーニングにより、Dally(division abnormally delayed)遺伝子が同定されており、DallyのcDNAは、グリピカンの全ての特徴を含んでいる脊椎動物の膜型プロテオグリカン(GRIPs)と相同配列(24〜26%相同)を示す産物をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を表していることがわかっている。その後、dallyがdpp(decapentaplegia)レセプター機構を調節する役割を持つことが示唆されており、このことから哺乳動物のグリピカンがTGFとBMPのシグナル伝達を調節している可能性を示唆している。すなわち、グリピカンがヘパリン結合性増殖因子(EGF、PDGF、BMP2、FGF等)のいくつかの共同レセプターとして機能している可能性が示唆されていた。
グリピカン3は、ラットの小腸から発生的に調節されている転写物として分離され(Filmus,J.,Church,J.G.,and Buick,R.n.(1988)Mol.Cell Biol.8,4243−4249)、後にグリピカンファミリーの、分子量69kDaのコアタンパク質を持った、GPI−結合型のヘパラン硫酸プロテオグリカン、OCT−5として同定された(Filmus,J.,Shi,W.,Wong,Z.−M.,and Wong,M.J.(1995)Biochem.J.311,561−565)。ヒトにおいても、ヒト胃癌細胞株よりグリピカン3をコードする遺伝子が、MXR−7として単離されている(Hermann Lage et al.,Gene 188(1997)151−156)。グリピカン3はインスリン様増殖因子−2とタンパク・タンパク複合体を形成し、この増殖因子の活動を調節することが報告されている(Pilia,G.et al,(1996)Nat.Genet.12,241−247)。この報告は、グリピカン3が必ずしもヘパラン硫酸鎖によって増殖因子と相互作用しているのではないことを示唆している。
グリピカン3について肝細胞癌マーカーとして利用できる可能性の示唆は報告されており(Hey−Chi Hsu et al.,CANCER RESEARCH 57,5179−5184(1997))、また、グリピカンが血管新生阻害剤として作用する可能性があるエンドスタチンの受容体として機能している可能性も示唆されている(Molecular Cell(2001),7,811−822)。さらに、抗グリピカン3抗体が肝癌細胞などの癌細胞に対して細胞障害活性を有していることが報告されている(WO03/00883、WO04/22739)。しかしながら、グリピカン3の胆管癌細胞での発現については、全く報告されていない。
本発明は、抗グリピカン3抗体を含有する胆管癌細胞増殖抑制剤および診断薬を提供することを目的とする。
中枢神経の発達における細胞分裂パターンが異常なショウジョウバエメラノガスター(Drosophila melanogaster)変異体の遺伝子スクリーニングにより、Dally(division abnormally delayed)遺伝子が同定されており、DallyのcDNAは、グリピカンの全ての特徴を含んでいる脊椎動物の膜型プロテオグリカン(GRIPs)と相同配列(24〜26%相同)を示す産物をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を表していることがわかっている。その後、dallyがdpp(decapentaplegia)レセプター機構を調節する役割を持つことが示唆されており、このことから哺乳動物のグリピカンがTGFとBMPのシグナル伝達を調節している可能性を示唆している。すなわち、グリピカンがヘパリン結合性増殖因子(EGF、PDGF、BMP2、FGF等)のいくつかの共同レセプターとして機能している可能性が示唆されていた。
グリピカン3は、ラットの小腸から発生的に調節されている転写物として分離され(Filmus,J.,Church,J.G.,and Buick,R.n.(1988)Mol.Cell Biol.8,4243−4249)、後にグリピカンファミリーの、分子量69kDaのコアタンパク質を持った、GPI−結合型のヘパラン硫酸プロテオグリカン、OCT−5として同定された(Filmus,J.,Shi,W.,Wong,Z.−M.,and Wong,M.J.(1995)Biochem.J.311,561−565)。ヒトにおいても、ヒト胃癌細胞株よりグリピカン3をコードする遺伝子が、MXR−7として単離されている(Hermann Lage et al.,Gene 188(1997)151−156)。グリピカン3はインスリン様増殖因子−2とタンパク・タンパク複合体を形成し、この増殖因子の活動を調節することが報告されている(Pilia,G.et al,(1996)Nat.Genet.12,241−247)。この報告は、グリピカン3が必ずしもヘパラン硫酸鎖によって増殖因子と相互作用しているのではないことを示唆している。
グリピカン3について肝細胞癌マーカーとして利用できる可能性の示唆は報告されており(Hey−Chi Hsu et al.,CANCER RESEARCH 57,5179−5184(1997))、また、グリピカンが血管新生阻害剤として作用する可能性があるエンドスタチンの受容体として機能している可能性も示唆されている(Molecular Cell(2001),7,811−822)。さらに、抗グリピカン3抗体が肝癌細胞などの癌細胞に対して細胞障害活性を有していることが報告されている(WO03/00883、WO04/22739)。しかしながら、グリピカン3の胆管癌細胞での発現については、全く報告されていない。
本発明は、抗グリピカン3抗体を含有する胆管癌細胞増殖抑制剤および診断薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、グリピカン3が胆管癌細胞で高発現していることを見出し、さらに、抗グリピカン3抗体が細胞障害活性を有することから、抗グリピカン3抗体が胆管癌細胞増殖抑制剤および診断薬として有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、抗グリピカン3抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞傷害性物質を結合することによっても、細胞増殖抑制活性を発揮し得る。
さらに、本発明者らは、正常胆管では内腔側に局在しているグリピカン3が、胆管癌ではその分布が崩れ、細胞膜の全周に認められることを見出した。このことは、抗グリピカン3抗体が、胆管癌細胞へは容易に到達することが可能であるが、胆管内腔に発現する正常胆管細胞へは到達が困難であることを示している。従って、抗グリピカン3抗体は胆管癌の治療に特に有効であると考えられる。
すなわち、本発明は、
(1) 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌細胞増殖抑制剤、
(2) 抗グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する(1)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(3) 細胞傷害活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性または補体依存性細胞傷害(CDC)活性である(2)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(4) 抗グリピカン3抗体が細胞障害性物質が結合した抗体である(1)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(5) 抗体がモノクローナル抗体である(1)〜(4)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(6) 抗体がヒト化またはキメラ化されたものである(1)〜(4)のいずれかの胆管癌細胞増殖抑制剤、
(7) 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断薬、
(8) 支持体に固定した抗グリピカン3抗体と、標識物質で標識された抗体を含むことを特徴とする(7)の胆管癌診断薬、
(9) 抗体がモノクローナル抗体である(7)または(8)の胆管癌診断薬、
(10) 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断キット、
(11) 支持体に固定した抗グリピカン3抗体と、標識物質で標識された抗体を含むことを特徴とする(10)の胆管癌診断キット、
(12) 胆管癌細胞の増殖を抑制する方法であって、胆管癌患者に抗グリピカン3抗体を投与することを含む方法、ならびに
(13) 胆管癌を診断する方法であって、被験試料中のグリピカン3タンパク質を検出することを含む方法、
である。
本発明により、抗グリピカン3抗体を有効成分とする胆管癌治療剤が提供される。実施例に示すように、GPC3は高率に胆管癌細胞に発現していることから、同蛋白に対する抗体には胆管癌細胞に対する抗がん効果を期待し得る。また細胞膜に均一に同蛋白を発現する腫瘍細胞へは容易に抗体が到達するのに対し、胆管内腔に発現する正常胆管細胞への抗体到達は困難であるものと考えられる。よって、同蛋白に対する抗体は正常胆管細胞を障害しない特異的胆管癌治療薬となり得るものと考えられる。
また、抗グリピカン3抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞傷害性物質を結合することによっても、細胞増殖抑制活性を発揮し得る。
さらに、本発明者らは、正常胆管では内腔側に局在しているグリピカン3が、胆管癌ではその分布が崩れ、細胞膜の全周に認められることを見出した。このことは、抗グリピカン3抗体が、胆管癌細胞へは容易に到達することが可能であるが、胆管内腔に発現する正常胆管細胞へは到達が困難であることを示している。従って、抗グリピカン3抗体は胆管癌の治療に特に有効であると考えられる。
すなわち、本発明は、
(1) 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌細胞増殖抑制剤、
(2) 抗グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する(1)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(3) 細胞傷害活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性または補体依存性細胞傷害(CDC)活性である(2)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(4) 抗グリピカン3抗体が細胞障害性物質が結合した抗体である(1)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(5) 抗体がモノクローナル抗体である(1)〜(4)の胆管癌細胞増殖抑制剤、
(6) 抗体がヒト化またはキメラ化されたものである(1)〜(4)のいずれかの胆管癌細胞増殖抑制剤、
(7) 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断薬、
(8) 支持体に固定した抗グリピカン3抗体と、標識物質で標識された抗体を含むことを特徴とする(7)の胆管癌診断薬、
(9) 抗体がモノクローナル抗体である(7)または(8)の胆管癌診断薬、
(10) 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断キット、
(11) 支持体に固定した抗グリピカン3抗体と、標識物質で標識された抗体を含むことを特徴とする(10)の胆管癌診断キット、
(12) 胆管癌細胞の増殖を抑制する方法であって、胆管癌患者に抗グリピカン3抗体を投与することを含む方法、ならびに
(13) 胆管癌を診断する方法であって、被験試料中のグリピカン3タンパク質を検出することを含む方法、
である。
本発明により、抗グリピカン3抗体を有効成分とする胆管癌治療剤が提供される。実施例に示すように、GPC3は高率に胆管癌細胞に発現していることから、同蛋白に対する抗体には胆管癌細胞に対する抗がん効果を期待し得る。また細胞膜に均一に同蛋白を発現する腫瘍細胞へは容易に抗体が到達するのに対し、胆管内腔に発現する正常胆管細胞への抗体到達は困難であるものと考えられる。よって、同蛋白に対する抗体は正常胆管細胞を障害しない特異的胆管癌治療薬となり得るものと考えられる。
図1は、抗GPC3抗体を用いた胆管癌細胞の免疫染色の結果を示す写真である。
図2は、抗GPC3抗体を用いた正常細胞の免疫染色の結果を示す写真である。
発明の詳細な説明
本発明は、抗グリピカン3抗体を含む胆管癌細胞増殖抑制剤および診断薬である。
本発明の抗グリピカン3抗体としては、例えばヒト化抗体、ヒト抗体(WO96/33735号公報)又はキメラ抗体(特開平4−228089号公報)、マウス抗体などの公知の抗体などが挙げられる。なお、抗体はポリクローナル抗体でもよいがモノクローナル抗体であることが好ましい。
本発明で使用される抗グリピカン3抗体は、グリピカン3に対する結合能を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。
本発明の胆管癌細胞増殖抑制剤においては、抗グリピカン3抗体を含んでいれば特に制限されないが、抗グリピカン3抗体を有効成分として含むことが好ましい。
なお、抗グリピカン3抗体がグリピカン3を発現している細胞に対して細胞障害活性を有しており、抗癌剤として有用であることは既に報告されている(WO03/00883、WO04/22739)。
1.抗グリピカン3抗体
本発明で使用される抗グリピカン3抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗グリピカン3抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。この抗体はグリピカン3と結合して、細胞増殖を抑制する抗体である。
このような抗体は、当業者に公知の方法によって得ることが可能である。
2.抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、グリピカン3を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトグリピカン3を、Lage,H.et al.,Gene 188(1997),151−156に開示されたグリピカン3(MXR7)遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、グリピカン3をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトグリピカン3タンパク質を公知の方法で精製する。
次に、この精製グリピカン3タンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、グリピカン3の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒトグリピカン3のアミノ酸配列より化学合成により得ることも可能である。
抗グリピカン3抗体がADCCの作用、CDCによる作用、増殖因子活性の阻害等により細胞増殖抑制活性を阻害することから、また抗グリピカン3抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞傷害性物質を結合させることにより、細胞増殖を抑制し得ることから、本発明の抗グリピカン3抗体の認識するグリピカン3分子上のエピトープは特定のものに限定されず、グリピカン3分子上に存在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよい。従って、本発明の抗グリピカン3抗体を作製するための抗原は、グリピカン3分子上に存在するエピトープを含む断片ならば、如何なる断片も用いることが可能である。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、FO(deSt.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。次いで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでグリピカン3に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、グリピカン3への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるグリピカン3を投与して抗グリピカン3抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からグリピカン3に対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO92/03918号公報、WO 94/02602号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
3.組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775,1990参照)。
具体的には、抗グリピカン3抗体を産生するハイブリドーマから、抗グリピカン3抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002、Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗グリピカン3抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗グリピカン3抗体を製造するには、通常、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギ▲s▼カゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
4.改変抗体
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,CancerRes.(1993)53,851−856)。
キメラ抗体及びヒト化化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、CY1、CY2、CY3、CY4を、L鎖ではCΚ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
5.抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られずグリピカン3に結合し、細胞の増殖を抑制する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、diabodyなどが挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976、Better,M.&Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Plueckthun,A.&Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1989)121,652−663、Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1989)121,663−669、Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、細胞傷害性物質やポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗グリピカン抗体を使用することもできる。細胞障害性物質としては、例えば、放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等を挙げることができる。本発明における「抗体」には、このような他の物質と結合している抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
さらに、本発明で使用される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体はグリピカン3分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がグリピカン3を認識し、他方の抗原結合部位が化学療法剤、細胞由来トキシン、放射性物質等の細胞傷害性物質等を認識してもよい。この場合、グリピカン3を発現している細胞に直接細胞傷害性物質を作用させ腫瘍細胞に特異的に傷害を与え、腫瘍細胞の増殖を抑えることが可能である。二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。
また、抗体の細胞障害活性を増強させる目的で、抗体の糖鎖を改変してもよい。抗体の糖鎖改変技術は既に知られている(例えば、WO/0061739、WO02/31140など)。
6.組換え型抗体または改変抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic AcidsRes.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240,1041−1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
7.抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
8.抗体の活性の確認
本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada,A.et al.,International Immunology(1993)5,681−690)の測定には公知の手段を使用することができる。
本発明で使用される抗グリピカン3抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、グリピカン3をコーティングしたプレートに、抗グリピカン3抗体を含む試料、例えば、抗グリピカン3抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
9.細胞傷害活性
本発明に使用する抗体は、細胞傷害活性として、ADCC活性またはCDC活性を有することができる。
ADCC活性は、エフェクター細胞と標的細胞と抗グリピカン3抗体を混合し、ADCCの程度を調べることにより測定することができる。エフェクター細胞として例えば、マウス脾細胞やヒト末梢血や骨髄から分離した単核球等を利用することができ、標的細胞としてはヒト肝癌細胞株HuH−7等のヒト株化細胞を用いることができる。標的細胞をあらかじめ51Crにより標識し、これに抗グリピカン3抗体を加えインキュベーションを行い、その後、標的細胞に対し適切な比のエフェクター細胞を加えインキュベーションを行う。インキュベーション後上清を採取し、上清中の放射活性をカウントすることによりADCC活性を測定することができる。
また、CDC活性は、上述の標識標的細胞と抗グリピカン3抗体を混合し、その後補体を添加してインキュベーションを行い、培養後に上清中の放射活性をカウントすることにより測定することができる。
抗体が細胞傷害活性を発揮するには、Fc部分が必要であるので、本発明の細胞増殖阻害剤が、抗体の細胞傷害活性を利用したものである場合には、本発明に使用する抗グリピカン3抗体はFc部分を含んでいることが必要である。
10.その他のグリピカン3阻害物質
本発明の胆管癌細胞増殖抑制剤においては、抗グリピカン3抗体の代わりにグリピカン3に結合する物質を用いることも可能である。例えば、グリピカン3に結合する物質に細胞傷害性物質を結合させた化合物などを用いることが可能である。
11.投与方法および製剤
本発明の胆管癌細胞増殖抑制剤は、胆管癌細胞の異常増殖に基づく疾患、特に胆管癌に対する治療又は改善を目的として使用される。
有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mg〜1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗グリピカン3抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
また、本発明の治療剤の投与時期としては、疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず投与することができる。
本発明の治療剤は1日1〜3回、一週間に1日〜7日投与することが可能である。
本発明の治療剤は、通常、非経口投与で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)で投与されるが、特に限定されず、経皮、経粘膜、経鼻、経肺、経口などで投与してもよい。しかしながら、本発明の治療剤は上記投与量、投与方法などに限定されるものではない。
本発明の抗グリピカン3抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latest edition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗グリピカン3抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えば
Tween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
12.胆管癌の診断
本発明は、被検試料中のグリピカン3を検出することにより癌を診断(検出)する方法である。
検出とは、定量的又は非定量的な検出を含み、例えば、非定量的な検出としては、単にGPC3タンパク質が存在するか否かの測定、GPC3タンパク質が一定の量以上存在するか否かの測定、GPC3タンパク質の量を他の試料(例えば、コントロール試料など)と比較する測定などを挙げることができ、定量的な検出としては、GPC3タンパク質の濃度の測定、GPC3タンパク質の量の測定などを挙げることができる。
被検試料とは、GPC3タンパク質が含まれる可能性のある試料であれば特に制限されないが、哺乳類などの生物の体から採取された試料が好ましく、さらに好ましくはヒトから採取された試料である。被検試料の具体的な例としては、例えば、血液、間質液、血漿、血管外液、脳脊髄液、滑液、胸膜液、血清、リンパ液、唾液、尿などを挙げることができるが、好ましいのは血液、血清、血漿である。又、生物の体から採取された細胞の培養液などの、被検試料から得られる試料も本発明の被検試料に含まれる。
診断される癌は、胆管癌である。
本発明の胆管癌の診断に用いられる抗体としては上記に記載の抗体が挙げられる。被検体の試料中のグリピカン3をサンドイッチ法により検出する場合、支持体に固定される抗GPC3抗体と標識物質で標識される抗GPC抗体はGPC3分子の同じエピトープを認識してもよいが、異なるエピトープを認識することが好ましい。
本発明において検出するGPC3は、特に限定されず、全長GPC3でも、その断片でもよい。GPC3断片を検出する場合には、N端断片でもC端断片でもよいが、好ましくはN端断片である(WO04/22739)。又、ヘパラン硫酸などが付加されたGPC3タンパク質でも、GPC3コアタンパク質でもよい。
被検試料に含まれるGPC3タンパク質の検出方法は特に限定されないが、抗GPC3抗体を用いた免疫学的方法により検出することが好ましい。免疫学的方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウエスタンブロット、免疫染色、免疫拡散法などを挙げることができるが、好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいのは酵素結合免疫吸着定量法(enzyme−linked immunosorbent assay:ELISA)(例えば、sandwich ELISA)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。
抗GPC3抗体を用いた一般的な検出方法としては、例えば、抗GPC3抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い抗GPC3抗体とGPC3タンパク質を結合させた後に洗浄して、抗GPC3抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質を検出することにより、被検試料中のGPC3タンパク質の検出を行う方法を挙げることができる。
本発明において用いられる支持体としては、例えば、アガロース、セルロースなどの不溶性の多糖類、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、ビーズやプレートなどの形状で用いることが可能である。ビーズの場合、これらが充填されたカラムなどを用いることができる。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)、やバイオセンサーチップなどを用いることができる。抗GPC3抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができる。
抗GPC3抗体とGPC3タンパク質との結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、などが使用される。また、インキュベーションの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば、4℃〜室温にて1時間〜24時間のインキュベーションが行われる。インキュベート後の洗浄は、GPC3タンパク質と抗GPC3抗体の結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば、Tween20等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。
本発明のGPC3タンパク質検出方法においては、GPC3タンパク質を検出したい被検試料の他に、コントロール試料を設置してもよい。コントロール試料としては、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料やGPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料などがある。この場合、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料で得られた結果、GPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料で得られた結果と比較することにより、被検試料中のGPC3タンパク質を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検試料の数値から標準曲線に基づいて、被検試料に含まれるGPC3タンパク質を定量的に検出することも可能である。
抗GPC3抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された抗GPC3抗体を用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、GPC3タンパク質を特異的に認識する標識抗体を用いて検出する。
抗GPC3抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、▲s▼−ガラクトシダーゼ、▲s▼−グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。標識物質と抗GPC3抗体との結合には、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法、などの公知の方法を用いることができる。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を支持体に固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSA、ゼラチン、アルブミンなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、プレートに残った標識抗GPC3抗体を検出する。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性物質による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法により検出することができる。酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。基質の具体的な例としては、2,2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2−フェニレンジアミン(オルソ−フェニレンジアミン)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TME)などを挙げることができる。蛍光物質の場合には蛍光光度計により検出することができる。
本発明のGPC3タンパク質検出方法の特に好ましい態様として、ビオチンで標識された抗GPC3抗体及びアビジンを用いる方法を挙げることができる。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、ビオチン標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合したアビジンを加える。インキュベーション後、プレートを洗浄し、アビジンに結合している酵素に対応した基質を加え、基質の酵素的変化などを指標にGPC3タンパク質を検出する。
本発明のGPC3タンパク質検出方法の他の態様として、GPC3タンパク質を特異的に認識する一次抗体、及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、インキュベーションした後、洗浄し、洗浄後に結合しているGPC3タンパク質を、一次抗GPC3抗体及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出する。この場合、二次抗体は好ましくは標識物質により標識されている。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、一次抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、プレートに残った二次抗体を検出する。二次抗体の検出は前述の方法により行うことができる。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、凝集反応を利用した検出方法を挙げることができる。該方法においては、抗GPC3抗体を感作した担体を用いてGPC3を検出することができる。抗体を感作する担体としては、不溶性で、非特異的な反応を起こさず、かつ安定である限り、いかなる担体を使用してもよい。例えば、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。感作した粒子を試料を混合し、一定時間攪拌した後に、試料中にGPC3抗体が高濃度で含まれるほど粒子の凝集度が大きくなるので、凝集を肉眼でみることによりGPC3を検出することができる。また、凝集による濁度を分光光度計等により測定することによっても検出することが可能である。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法を挙げることができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーはタンパク質−タンパク質間の相互作用を微量のタンパク質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である。例えば、BIAcore(Pharmacia製)等のバイオセンサーを用いることによりGPC3タンパク質と抗GPC3抗体の結合を検出することが可能である。具体的には、抗GPC3抗体を固定化したセンサーチップに、被検試料を接触させ、抗GPC3抗体に結合するGPC3タンパク質を共鳴シグナルの変化として検出することができる。
本発明の検出方法は、種々の自動検査装置を用いて自動化することもでき、一度に大量の試料について検査を行うことも可能である。
本発明は、癌の診断のための被検試料中のGPC3タンパク質を検出するための診断薬またはキットの提供をも目的とするが、該診断薬またはキットは少なくとも抗GPC3抗体を含む。該診断薬またはキットがELISA法に基づく場合は、抗体を固相化する担体を含んでいてもよく、抗体があらかじめ担体に結合していてもよい。該診断薬またはキットがラテックス等の担体を用いた凝集法に基づく場合は抗体が吸着した担体を含んでいてもよい。また、該キットは、適宜、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等を含んでいてもよい。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また,本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2003−313187号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
図2は、抗GPC3抗体を用いた正常細胞の免疫染色の結果を示す写真である。
発明の詳細な説明
本発明は、抗グリピカン3抗体を含む胆管癌細胞増殖抑制剤および診断薬である。
本発明の抗グリピカン3抗体としては、例えばヒト化抗体、ヒト抗体(WO96/33735号公報)又はキメラ抗体(特開平4−228089号公報)、マウス抗体などの公知の抗体などが挙げられる。なお、抗体はポリクローナル抗体でもよいがモノクローナル抗体であることが好ましい。
本発明で使用される抗グリピカン3抗体は、グリピカン3に対する結合能を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。
本発明の胆管癌細胞増殖抑制剤においては、抗グリピカン3抗体を含んでいれば特に制限されないが、抗グリピカン3抗体を有効成分として含むことが好ましい。
なお、抗グリピカン3抗体がグリピカン3を発現している細胞に対して細胞障害活性を有しており、抗癌剤として有用であることは既に報告されている(WO03/00883、WO04/22739)。
1.抗グリピカン3抗体
本発明で使用される抗グリピカン3抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗グリピカン3抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。この抗体はグリピカン3と結合して、細胞増殖を抑制する抗体である。
このような抗体は、当業者に公知の方法によって得ることが可能である。
2.抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、グリピカン3を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトグリピカン3を、Lage,H.et al.,Gene 188(1997),151−156に開示されたグリピカン3(MXR7)遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、グリピカン3をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトグリピカン3タンパク質を公知の方法で精製する。
次に、この精製グリピカン3タンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、グリピカン3の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒトグリピカン3のアミノ酸配列より化学合成により得ることも可能である。
抗グリピカン3抗体がADCCの作用、CDCによる作用、増殖因子活性の阻害等により細胞増殖抑制活性を阻害することから、また抗グリピカン3抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞傷害性物質を結合させることにより、細胞増殖を抑制し得ることから、本発明の抗グリピカン3抗体の認識するグリピカン3分子上のエピトープは特定のものに限定されず、グリピカン3分子上に存在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよい。従って、本発明の抗グリピカン3抗体を作製するための抗原は、グリピカン3分子上に存在するエピトープを含む断片ならば、如何なる断片も用いることが可能である。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、FO(deSt.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。次いで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでグリピカン3に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、グリピカン3への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるグリピカン3を投与して抗グリピカン3抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からグリピカン3に対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO92/03918号公報、WO 94/02602号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
3.組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775,1990参照)。
具体的には、抗グリピカン3抗体を産生するハイブリドーマから、抗グリピカン3抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002、Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗グリピカン3抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗グリピカン3抗体を製造するには、通常、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギ▲s▼カゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
4.改変抗体
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,CancerRes.(1993)53,851−856)。
キメラ抗体及びヒト化化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、CY1、CY2、CY3、CY4を、L鎖ではCΚ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
5.抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られずグリピカン3に結合し、細胞の増殖を抑制する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、diabodyなどが挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976、Better,M.&Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Plueckthun,A.&Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1989)121,652−663、Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1989)121,663−669、Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、細胞傷害性物質やポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗グリピカン抗体を使用することもできる。細胞障害性物質としては、例えば、放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等を挙げることができる。本発明における「抗体」には、このような他の物質と結合している抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
さらに、本発明で使用される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体はグリピカン3分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がグリピカン3を認識し、他方の抗原結合部位が化学療法剤、細胞由来トキシン、放射性物質等の細胞傷害性物質等を認識してもよい。この場合、グリピカン3を発現している細胞に直接細胞傷害性物質を作用させ腫瘍細胞に特異的に傷害を与え、腫瘍細胞の増殖を抑えることが可能である。二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。
また、抗体の細胞障害活性を増強させる目的で、抗体の糖鎖を改変してもよい。抗体の糖鎖改変技術は既に知られている(例えば、WO/0061739、WO02/31140など)。
6.組換え型抗体または改変抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic AcidsRes.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240,1041−1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
7.抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
8.抗体の活性の確認
本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada,A.et al.,International Immunology(1993)5,681−690)の測定には公知の手段を使用することができる。
本発明で使用される抗グリピカン3抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、グリピカン3をコーティングしたプレートに、抗グリピカン3抗体を含む試料、例えば、抗グリピカン3抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
9.細胞傷害活性
本発明に使用する抗体は、細胞傷害活性として、ADCC活性またはCDC活性を有することができる。
ADCC活性は、エフェクター細胞と標的細胞と抗グリピカン3抗体を混合し、ADCCの程度を調べることにより測定することができる。エフェクター細胞として例えば、マウス脾細胞やヒト末梢血や骨髄から分離した単核球等を利用することができ、標的細胞としてはヒト肝癌細胞株HuH−7等のヒト株化細胞を用いることができる。標的細胞をあらかじめ51Crにより標識し、これに抗グリピカン3抗体を加えインキュベーションを行い、その後、標的細胞に対し適切な比のエフェクター細胞を加えインキュベーションを行う。インキュベーション後上清を採取し、上清中の放射活性をカウントすることによりADCC活性を測定することができる。
また、CDC活性は、上述の標識標的細胞と抗グリピカン3抗体を混合し、その後補体を添加してインキュベーションを行い、培養後に上清中の放射活性をカウントすることにより測定することができる。
抗体が細胞傷害活性を発揮するには、Fc部分が必要であるので、本発明の細胞増殖阻害剤が、抗体の細胞傷害活性を利用したものである場合には、本発明に使用する抗グリピカン3抗体はFc部分を含んでいることが必要である。
10.その他のグリピカン3阻害物質
本発明の胆管癌細胞増殖抑制剤においては、抗グリピカン3抗体の代わりにグリピカン3に結合する物質を用いることも可能である。例えば、グリピカン3に結合する物質に細胞傷害性物質を結合させた化合物などを用いることが可能である。
11.投与方法および製剤
本発明の胆管癌細胞増殖抑制剤は、胆管癌細胞の異常増殖に基づく疾患、特に胆管癌に対する治療又は改善を目的として使用される。
有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mg〜1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗グリピカン3抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
また、本発明の治療剤の投与時期としては、疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず投与することができる。
本発明の治療剤は1日1〜3回、一週間に1日〜7日投与することが可能である。
本発明の治療剤は、通常、非経口投与で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)で投与されるが、特に限定されず、経皮、経粘膜、経鼻、経肺、経口などで投与してもよい。しかしながら、本発明の治療剤は上記投与量、投与方法などに限定されるものではない。
本発明の抗グリピカン3抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latest edition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗グリピカン3抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えば
Tween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
12.胆管癌の診断
本発明は、被検試料中のグリピカン3を検出することにより癌を診断(検出)する方法である。
検出とは、定量的又は非定量的な検出を含み、例えば、非定量的な検出としては、単にGPC3タンパク質が存在するか否かの測定、GPC3タンパク質が一定の量以上存在するか否かの測定、GPC3タンパク質の量を他の試料(例えば、コントロール試料など)と比較する測定などを挙げることができ、定量的な検出としては、GPC3タンパク質の濃度の測定、GPC3タンパク質の量の測定などを挙げることができる。
被検試料とは、GPC3タンパク質が含まれる可能性のある試料であれば特に制限されないが、哺乳類などの生物の体から採取された試料が好ましく、さらに好ましくはヒトから採取された試料である。被検試料の具体的な例としては、例えば、血液、間質液、血漿、血管外液、脳脊髄液、滑液、胸膜液、血清、リンパ液、唾液、尿などを挙げることができるが、好ましいのは血液、血清、血漿である。又、生物の体から採取された細胞の培養液などの、被検試料から得られる試料も本発明の被検試料に含まれる。
診断される癌は、胆管癌である。
本発明の胆管癌の診断に用いられる抗体としては上記に記載の抗体が挙げられる。被検体の試料中のグリピカン3をサンドイッチ法により検出する場合、支持体に固定される抗GPC3抗体と標識物質で標識される抗GPC抗体はGPC3分子の同じエピトープを認識してもよいが、異なるエピトープを認識することが好ましい。
本発明において検出するGPC3は、特に限定されず、全長GPC3でも、その断片でもよい。GPC3断片を検出する場合には、N端断片でもC端断片でもよいが、好ましくはN端断片である(WO04/22739)。又、ヘパラン硫酸などが付加されたGPC3タンパク質でも、GPC3コアタンパク質でもよい。
被検試料に含まれるGPC3タンパク質の検出方法は特に限定されないが、抗GPC3抗体を用いた免疫学的方法により検出することが好ましい。免疫学的方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウエスタンブロット、免疫染色、免疫拡散法などを挙げることができるが、好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいのは酵素結合免疫吸着定量法(enzyme−linked immunosorbent assay:ELISA)(例えば、sandwich ELISA)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。
抗GPC3抗体を用いた一般的な検出方法としては、例えば、抗GPC3抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い抗GPC3抗体とGPC3タンパク質を結合させた後に洗浄して、抗GPC3抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質を検出することにより、被検試料中のGPC3タンパク質の検出を行う方法を挙げることができる。
本発明において用いられる支持体としては、例えば、アガロース、セルロースなどの不溶性の多糖類、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、ビーズやプレートなどの形状で用いることが可能である。ビーズの場合、これらが充填されたカラムなどを用いることができる。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)、やバイオセンサーチップなどを用いることができる。抗GPC3抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができる。
抗GPC3抗体とGPC3タンパク質との結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、などが使用される。また、インキュベーションの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば、4℃〜室温にて1時間〜24時間のインキュベーションが行われる。インキュベート後の洗浄は、GPC3タンパク質と抗GPC3抗体の結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば、Tween20等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。
本発明のGPC3タンパク質検出方法においては、GPC3タンパク質を検出したい被検試料の他に、コントロール試料を設置してもよい。コントロール試料としては、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料やGPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料などがある。この場合、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料で得られた結果、GPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料で得られた結果と比較することにより、被検試料中のGPC3タンパク質を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検試料の数値から標準曲線に基づいて、被検試料に含まれるGPC3タンパク質を定量的に検出することも可能である。
抗GPC3抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された抗GPC3抗体を用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、GPC3タンパク質を特異的に認識する標識抗体を用いて検出する。
抗GPC3抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、▲s▼−ガラクトシダーゼ、▲s▼−グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。標識物質と抗GPC3抗体との結合には、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法、などの公知の方法を用いることができる。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を支持体に固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSA、ゼラチン、アルブミンなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、プレートに残った標識抗GPC3抗体を検出する。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性物質による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法により検出することができる。酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。基質の具体的な例としては、2,2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2−フェニレンジアミン(オルソ−フェニレンジアミン)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TME)などを挙げることができる。蛍光物質の場合には蛍光光度計により検出することができる。
本発明のGPC3タンパク質検出方法の特に好ましい態様として、ビオチンで標識された抗GPC3抗体及びアビジンを用いる方法を挙げることができる。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、ビオチン標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合したアビジンを加える。インキュベーション後、プレートを洗浄し、アビジンに結合している酵素に対応した基質を加え、基質の酵素的変化などを指標にGPC3タンパク質を検出する。
本発明のGPC3タンパク質検出方法の他の態様として、GPC3タンパク質を特異的に認識する一次抗体、及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、インキュベーションした後、洗浄し、洗浄後に結合しているGPC3タンパク質を、一次抗GPC3抗体及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出する。この場合、二次抗体は好ましくは標識物質により標識されている。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、一次抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、プレートに残った二次抗体を検出する。二次抗体の検出は前述の方法により行うことができる。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、凝集反応を利用した検出方法を挙げることができる。該方法においては、抗GPC3抗体を感作した担体を用いてGPC3を検出することができる。抗体を感作する担体としては、不溶性で、非特異的な反応を起こさず、かつ安定である限り、いかなる担体を使用してもよい。例えば、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。感作した粒子を試料を混合し、一定時間攪拌した後に、試料中にGPC3抗体が高濃度で含まれるほど粒子の凝集度が大きくなるので、凝集を肉眼でみることによりGPC3を検出することができる。また、凝集による濁度を分光光度計等により測定することによっても検出することが可能である。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法を挙げることができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーはタンパク質−タンパク質間の相互作用を微量のタンパク質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である。例えば、BIAcore(Pharmacia製)等のバイオセンサーを用いることによりGPC3タンパク質と抗GPC3抗体の結合を検出することが可能である。具体的には、抗GPC3抗体を固定化したセンサーチップに、被検試料を接触させ、抗GPC3抗体に結合するGPC3タンパク質を共鳴シグナルの変化として検出することができる。
本発明の検出方法は、種々の自動検査装置を用いて自動化することもでき、一度に大量の試料について検査を行うことも可能である。
本発明は、癌の診断のための被検試料中のGPC3タンパク質を検出するための診断薬またはキットの提供をも目的とするが、該診断薬またはキットは少なくとも抗GPC3抗体を含む。該診断薬またはキットがELISA法に基づく場合は、抗体を固相化する担体を含んでいてもよく、抗体があらかじめ担体に結合していてもよい。該診断薬またはキットがラテックス等の担体を用いた凝集法に基づく場合は抗体が吸着した担体を含んでいてもよい。また、該キットは、適宜、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等を含んでいてもよい。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また,本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2003−313187号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例等にその技術的範囲が限定されるものではない。
[実施例1] 胆管癌組織における免疫組織化学染色によるGPC3の検出
胆管癌組織(5例;ホルマリン固定パラッフィン包埋標本)を対照に抗GPC3抗体を用いた免疫組織学的染色を実施した。染色は抗ヒトGPC3抗体(中外製薬、ゲノム抗体医薬研究部、クローン:M11F1、クラス:IgG2b)の1μl/mL液を1次抗体として、Biotinylated Anti−Mouse IgG(H+L)(Vector Laboratories Inc.,BA−2000)を2次抗体として実施した。なお、発色にはVectaatain ABC−AP kit(Vector Laboratories Inc.,AK−5000)およびRed Alkaline Phosphatase Substrate Kit I(Vector Laboratories Inc.,SK−5100)を使用した。
また、同染色と併せて、CD31およびvimentinに対する免疫染色を使用臓器すべてについて実施し、臓器の蛋白発現に問題のないことを確認した。さらに同染色の溶性反応特異性については、陰性対照抗体(IgG2b isoptype control mouse monoclonal antibody)を上記1次抗体に変えた免疫染色を隣接標本に施し確認した。
免疫染色を実施した5例の胆管癌組織腫瘍細胞はいずれも陽性を示した。5例中4例の腫瘍細胞での陽性反応は周囲の正常胆管上皮細胞のそれを上回り、他1例では同等であった。
また、陽性反応の細胞局在は,胆管癌細胞では細胞膜に均一に、周囲正常細胞では胆管内腔に局在する傾向を示した。図1に胆管癌細胞の免疫染色の結果を示す写真、図2に正常細胞の免疫染色の結果を示す写真を示す。図1においては細胞膜に均一に強度の陽性反応が認められ、図2においては、胆管内腔側に陽性反応が局在する。
[実施例1] 胆管癌組織における免疫組織化学染色によるGPC3の検出
胆管癌組織(5例;ホルマリン固定パラッフィン包埋標本)を対照に抗GPC3抗体を用いた免疫組織学的染色を実施した。染色は抗ヒトGPC3抗体(中外製薬、ゲノム抗体医薬研究部、クローン:M11F1、クラス:IgG2b)の1μl/mL液を1次抗体として、Biotinylated Anti−Mouse IgG(H+L)(Vector Laboratories Inc.,BA−2000)を2次抗体として実施した。なお、発色にはVectaatain ABC−AP kit(Vector Laboratories Inc.,AK−5000)およびRed Alkaline Phosphatase Substrate Kit I(Vector Laboratories Inc.,SK−5100)を使用した。
また、同染色と併せて、CD31およびvimentinに対する免疫染色を使用臓器すべてについて実施し、臓器の蛋白発現に問題のないことを確認した。さらに同染色の溶性反応特異性については、陰性対照抗体(IgG2b isoptype control mouse monoclonal antibody)を上記1次抗体に変えた免疫染色を隣接標本に施し確認した。
免疫染色を実施した5例の胆管癌組織腫瘍細胞はいずれも陽性を示した。5例中4例の腫瘍細胞での陽性反応は周囲の正常胆管上皮細胞のそれを上回り、他1例では同等であった。
また、陽性反応の細胞局在は,胆管癌細胞では細胞膜に均一に、周囲正常細胞では胆管内腔に局在する傾向を示した。図1に胆管癌細胞の免疫染色の結果を示す写真、図2に正常細胞の免疫染色の結果を示す写真を示す。図1においては細胞膜に均一に強度の陽性反応が認められ、図2においては、胆管内腔側に陽性反応が局在する。
Claims (13)
- 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌細胞増殖抑制剤。
- 抗グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する請求項1記載の胆管癌細胞増殖抑制剤。
- 細胞傷害活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性または補体依存性細胞傷害(CDC)活性である請求項2記載の胆管癌細胞増殖抑制剤。
- 抗グリピカン3抗体が細胞障害性物質が結合した抗体である請求項1記載の胆管癌細胞増殖抑制剤。
- 抗体がモノクローナル抗体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の胆管癌細胞増殖抑制剤。
- 抗体がヒト化またはキメラ化されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の胆管癌細胞増殖抑制剤。
- 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断薬。
- 支持体に固定した抗グリピカン3抗体と、標識物質で標識された抗体を含むことを特徴とする請求項7記載の胆管癌診断薬。
- 抗体がモノクローナル抗体である請求項7または8に記載の胆管癌診断薬。
- 抗グリピカン3抗体を含む胆管癌診断キット。
- 支持体に固定した抗グリピカン3抗体と、標識物質で標識された抗体を含むことを特徴とする請求項10記載の胆管癌診断キット。
- 胆管癌細胞の増殖を抑制する方法であって、胆管癌患者に抗グリピカン3抗体を投与することを含む方法。
- 胆管癌を診断する方法であって、被験試料中のグリピカン3タンパク質を検出することを含む方法。
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