JPWO2005019146A1 - 第3級ブチルアルコールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
イソブチレンの水和反応の速度が高い第3級ブチルアルコールの製造方法を提供する。また、低濃度イソブチレンを原料として用いイソブチレンの水和反応の速度が高い第3級ブチルアルコールの製造方法を提供する。この第3級ブチルアルコールの製造方法は、反応蒸留装置を用いて、スルホン類、有機カルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒と、陽イオン交換樹脂触媒の存在下、イソブチレンと水から第3級ブチルアルコールを製造する。この際に使用する溶媒としては、スルホラン、ジメチルスルホン、酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒が好ましい。
Description
本発明は、第3級ブチルアルコールを製造する方法に関する。
本願は、2003年8月21日に出願された特願2003−297323号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本願は、2003年8月21日に出願された特願2003−297323号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
陽イオン交換樹脂を触媒として使用し、イソブチレンと水との水和反応で第3級ブチルアルコールを製造する方法は従来から知られている。例えば、特許文献1には反応蒸留塔で第3級ブチルアルコールを製造する方法が記載されている。また、特許文献2には水和反応の溶媒としてスルホランを使用して第3級ブチルアルコールを製造する方法が記載されている。
[特許文献1]特開平3−106840号公報
[特許文献2]特開平8−53381号公報
特許文献1の方法では、水相と、イソブチレン含有炭化水素からなる油相、および陽イオン交換樹脂との接触が十分でなく水和反応の速度が低いため工業的に実施するには触媒を多量に必要とするという問題があった。また特許文献2の方法では、水和反応が平衡反応であり、イソブチレンの転化率が制限されるため、イソブチレン濃度が低い原料を使用すると生産性が低い(収量が少ない)という問題があった。
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的はイソブチレンの水和反応の速度が高い第3級ブチルアルコールの製造方法、特に低濃度のイソブチレンを原料として用いた場合に水和反応の速度が高い第3級ブチルアルコールの製造方法を提供することにある。
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的はイソブチレンの水和反応の速度が高い第3級ブチルアルコールの製造方法、特に低濃度のイソブチレンを原料として用いた場合に水和反応の速度が高い第3級ブチルアルコールの製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために、イソブチレンの水和反応について鋭意検討した結果、反応蒸留装置を用いて、特定の溶媒を存在させることで、低濃度イソブチレンを原料としても反応速度を飛躍的に向上させ、従来の方法に比べ触媒量を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、反応蒸留装置を用いて、スルホン類、有機カルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒と、陽イオン交換樹脂触媒の存在下、イソブチレンと水から第3級ブチルアルコールを製造する方法である。
前記溶媒としてはスルホラン、ジメチルスルホン、酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、溶媒の量が、イソブチレン1モルに対して、0.01モル以上であることが好ましい。
また、前記陽イオン交換樹脂は、ポリスチロールスルホン酸型樹脂、フェノールスルホン酸型樹脂、または、パーフルオロスルホン酸樹脂であり、多孔性型陽イオン交換樹脂であることが好ましい。
すなわち本発明は、反応蒸留装置を用いて、スルホン類、有機カルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒と、陽イオン交換樹脂触媒の存在下、イソブチレンと水から第3級ブチルアルコールを製造する方法である。
前記溶媒としてはスルホラン、ジメチルスルホン、酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、溶媒の量が、イソブチレン1モルに対して、0.01モル以上であることが好ましい。
また、前記陽イオン交換樹脂は、ポリスチロールスルホン酸型樹脂、フェノールスルホン酸型樹脂、または、パーフルオロスルホン酸樹脂であり、多孔性型陽イオン交換樹脂であることが好ましい。
図1は反応蒸留装置の概略図である。
原料のイソブチレンとして、イソブチレンを単独で用いてもよいが、通常はイソブチレン含有炭化水素からなる液化ガス(以下、単に液化ガスという)を使用する。イソブチレン含有炭化水素としては、イソブチレンを含むブテン類、ブタン類等の混合物等が挙げられる。工業的には石油類の熱分解、水蒸気分解、接触分解等により得られるC4炭化水素混合物、好ましくはこれらからブタジエンを除去したものが用いられる。C4炭化水素混合物中のイソブチレン濃度は特に限定されないが、工業的に入手できるものは通常80質量%以下である。液化ガス中のイソブチレン濃度は原料入手及び反応速度向上の点で5〜60質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
また、原料のイソブチレンとして、水和反応を行った後の未反応イソブチレンを含有する液化ガスを原料として用いることができる。この場合、イソブチレンは消費されC4炭化水素混合物中のイソブチレン濃度が通常5〜15質量%程度とかなり低濃度になっているが、本発明の方法では充分反応に供することが可能である。未反応イソブチレンを含有する液化ガスは、第3級ブチルアルコール水溶液との混合物となっていることが多いが、本発明では、このような混合物を分離することなくイソブチレン原料として使用できる。
原料の水は特に限定されないが、例えば蒸留水、脱イオン水、飲料水等が使用できる。水の量は、イソブチレンの二量体、三量体の抑制および反応速度向上の観点でイソブチレン1モルに対して1.0〜10モルが好ましく、1.05〜8モルがより好ましい。
本発明で使用する溶媒は、スルホン類、有機カルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種である。溶媒はこれらの群に含まれる2種類以上の溶媒の混合溶媒であってもよく、また前記の群に含まれない溶媒を含む混合溶媒であってもよい。
スルホン類の溶媒としては、例えば、スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、3−プロピルスルホラン、3−ブチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジプロピルスルホン、スルホナール、トリオナール等が挙げられる。
有機カルボン酸類の溶媒としては、カルボン酸無水物を含み、例えば、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられる。
中でも、本発明で使用する溶媒としては、スルホラン、ジメチルスルホン、酢酸が好ましい。
溶媒の量は、反応速度および経済性の観点から、反応蒸留装置に供給されるイソブチレン1モルに対して、下限は0.01モル以上が好ましく、0.05モル以上がより好ましい。一方、上限は1.0モル以下が好ましく、0.8モル以下がより好ましい。
本発明で使用する陽イオン交換樹脂としては、反応速度向上の点で強酸性型陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性型陽イオン交換樹脂としては、例えばスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を母核として、これにスルホン酸基の入ったポリスチロールスルホン酸型樹脂、フェノールとホルムアルデヒドを縮合したものにスルホン酸基の入ったフェノールスルホン酸型樹脂、フッ化ビニルエーテルとフルオロカーボンとの共重合体にスルホン酸基の入ったパーフルオロスルホン酸樹脂等が挙げられる。
また、陽イオン交換樹脂は、幾何学的構造によりゲル型、物理的な細孔を有する多孔性型等に分類されるが、反応速度向上の点で多孔性型陽イオン交換樹脂が好ましい。多孔性型陽イオン交換樹脂としては、例えば、バイエル社製 商品名「レバチット」やロームアンドハース社製 商品名「アンバーリスト」等が挙げられる。
本発明で使用する反応蒸留装置は、触媒が存在する反応部を有しており、前記反応部において反応と蒸留が同時に行えるものである。このような反応蒸留装置としては、例えば図1に示すような陽イオン交換樹脂を充填した反応部1を有し、前記反応部において反応と蒸留が同時に行える形式のものが挙げられる。反応蒸留装置は、反応部より上段には濃縮部2、下段には回収部3を有し、リボイラおよびコンデンサを備えたものが好ましい(図1ではリボイラ、コンデンサは省略してある)。また、コンデンサの下流に水分離のためのデカンタを必要に応じて配置してもよい。
陽イオン交換樹脂の充填方法は特に制限されないが、陽イオン交換樹脂は通常0.3〜1.2mm程度の粒径の粒子であるため、そのまま塔内に充填すると圧力損失が大きくなってしまう。このため、例えば、ステンレス、ナイロン、ガラス繊維、ポリエステル、綿等で編んだ円筒形、球形、ドーナツ形、立方形、チューブ形を成した袋状の入れ物に陽イオン交換樹脂を入れて保持する方法、金網に編んだコルゲート板などに陽イオン交換樹脂をサンドイッチ状に挟んで保持する方法、トレイ上に金網製のコンテナを設置し陽イオン交換樹脂を保持する方法、陽イオン交換樹脂と、ラシヒリング、ベルルサドル等の充填材と混ぜて充填する方法等により空隙率を高めることが好ましい。また、空隙率は60〜95%とすることが好ましい。
例えば図1の反応蒸留装置では、反応部1で原料および陽イオン交換樹脂が有効に接触できるよう原料イソブチレンは反応部より下の箇所4から、原料水は反応部より上の箇所5から供給することが好ましい。一方、溶媒の供給方法は特に限定されないが、その沸点が水より高い場合には反応部より上の箇所から供給するのが好ましく、水より低い場合には、その沸点に応じた反応部の適切な箇所から供給することが好ましい。
水和反応を行う際の反応部の温度(反応温度)は、高すぎると副反応を引き起こし、低すぎると反応速度が低下するため25〜100℃が好ましく、45〜90℃がより好ましい。反応圧力については、反応温度に対応したイソブチレン含有炭化水素からなる液化ガスの蒸気圧に相当し、0.2〜2MPaが好ましく、0.4〜1.6MPaがより好ましい。
反応に際しては、塔頂のベーパー6をコンデンサで凝縮させて得られる液の一部を留出液として抜出し、それ以外は塔内に還流させることが好ましい。
また、第3級ブチルアルコールを含む塔底液7は連続的に抜出すことが好ましい。抜出された液は、アルコール分離塔等により必要に応じて第3級ブチルアルコールと溶媒とに分離することができる。ここで得られた第3級ブチルアルコールは製品となる。また、分離された溶媒は反応蒸留装置に返送して繰り返し用いてもよい。
溶媒を反応蒸留装置内に存在させる方法としては、例えば、溶媒を単独で塔内に供給する方法、溶媒と原料イソブチレンまたは原料水との混合液の形態で塔中に供給する方法等が挙げられる。
また、原料のイソブチレンとして、水和反応を行った後の未反応イソブチレンを含有する液化ガスを原料として用いることができる。この場合、イソブチレンは消費されC4炭化水素混合物中のイソブチレン濃度が通常5〜15質量%程度とかなり低濃度になっているが、本発明の方法では充分反応に供することが可能である。未反応イソブチレンを含有する液化ガスは、第3級ブチルアルコール水溶液との混合物となっていることが多いが、本発明では、このような混合物を分離することなくイソブチレン原料として使用できる。
原料の水は特に限定されないが、例えば蒸留水、脱イオン水、飲料水等が使用できる。水の量は、イソブチレンの二量体、三量体の抑制および反応速度向上の観点でイソブチレン1モルに対して1.0〜10モルが好ましく、1.05〜8モルがより好ましい。
本発明で使用する溶媒は、スルホン類、有機カルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種である。溶媒はこれらの群に含まれる2種類以上の溶媒の混合溶媒であってもよく、また前記の群に含まれない溶媒を含む混合溶媒であってもよい。
スルホン類の溶媒としては、例えば、スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、3−プロピルスルホラン、3−ブチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジプロピルスルホン、スルホナール、トリオナール等が挙げられる。
有機カルボン酸類の溶媒としては、カルボン酸無水物を含み、例えば、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられる。
中でも、本発明で使用する溶媒としては、スルホラン、ジメチルスルホン、酢酸が好ましい。
溶媒の量は、反応速度および経済性の観点から、反応蒸留装置に供給されるイソブチレン1モルに対して、下限は0.01モル以上が好ましく、0.05モル以上がより好ましい。一方、上限は1.0モル以下が好ましく、0.8モル以下がより好ましい。
本発明で使用する陽イオン交換樹脂としては、反応速度向上の点で強酸性型陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性型陽イオン交換樹脂としては、例えばスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を母核として、これにスルホン酸基の入ったポリスチロールスルホン酸型樹脂、フェノールとホルムアルデヒドを縮合したものにスルホン酸基の入ったフェノールスルホン酸型樹脂、フッ化ビニルエーテルとフルオロカーボンとの共重合体にスルホン酸基の入ったパーフルオロスルホン酸樹脂等が挙げられる。
また、陽イオン交換樹脂は、幾何学的構造によりゲル型、物理的な細孔を有する多孔性型等に分類されるが、反応速度向上の点で多孔性型陽イオン交換樹脂が好ましい。多孔性型陽イオン交換樹脂としては、例えば、バイエル社製 商品名「レバチット」やロームアンドハース社製 商品名「アンバーリスト」等が挙げられる。
本発明で使用する反応蒸留装置は、触媒が存在する反応部を有しており、前記反応部において反応と蒸留が同時に行えるものである。このような反応蒸留装置としては、例えば図1に示すような陽イオン交換樹脂を充填した反応部1を有し、前記反応部において反応と蒸留が同時に行える形式のものが挙げられる。反応蒸留装置は、反応部より上段には濃縮部2、下段には回収部3を有し、リボイラおよびコンデンサを備えたものが好ましい(図1ではリボイラ、コンデンサは省略してある)。また、コンデンサの下流に水分離のためのデカンタを必要に応じて配置してもよい。
陽イオン交換樹脂の充填方法は特に制限されないが、陽イオン交換樹脂は通常0.3〜1.2mm程度の粒径の粒子であるため、そのまま塔内に充填すると圧力損失が大きくなってしまう。このため、例えば、ステンレス、ナイロン、ガラス繊維、ポリエステル、綿等で編んだ円筒形、球形、ドーナツ形、立方形、チューブ形を成した袋状の入れ物に陽イオン交換樹脂を入れて保持する方法、金網に編んだコルゲート板などに陽イオン交換樹脂をサンドイッチ状に挟んで保持する方法、トレイ上に金網製のコンテナを設置し陽イオン交換樹脂を保持する方法、陽イオン交換樹脂と、ラシヒリング、ベルルサドル等の充填材と混ぜて充填する方法等により空隙率を高めることが好ましい。また、空隙率は60〜95%とすることが好ましい。
例えば図1の反応蒸留装置では、反応部1で原料および陽イオン交換樹脂が有効に接触できるよう原料イソブチレンは反応部より下の箇所4から、原料水は反応部より上の箇所5から供給することが好ましい。一方、溶媒の供給方法は特に限定されないが、その沸点が水より高い場合には反応部より上の箇所から供給するのが好ましく、水より低い場合には、その沸点に応じた反応部の適切な箇所から供給することが好ましい。
水和反応を行う際の反応部の温度(反応温度)は、高すぎると副反応を引き起こし、低すぎると反応速度が低下するため25〜100℃が好ましく、45〜90℃がより好ましい。反応圧力については、反応温度に対応したイソブチレン含有炭化水素からなる液化ガスの蒸気圧に相当し、0.2〜2MPaが好ましく、0.4〜1.6MPaがより好ましい。
反応に際しては、塔頂のベーパー6をコンデンサで凝縮させて得られる液の一部を留出液として抜出し、それ以外は塔内に還流させることが好ましい。
また、第3級ブチルアルコールを含む塔底液7は連続的に抜出すことが好ましい。抜出された液は、アルコール分離塔等により必要に応じて第3級ブチルアルコールと溶媒とに分離することができる。ここで得られた第3級ブチルアルコールは製品となる。また、分離された溶媒は反応蒸留装置に返送して繰り返し用いてもよい。
溶媒を反応蒸留装置内に存在させる方法としては、例えば、溶媒を単独で塔内に供給する方法、溶媒と原料イソブチレンまたは原料水との混合液の形態で塔中に供給する方法等が挙げられる。
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一例を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<イソブチレンの分析方法>
本体:HEWLETT PACKRD社製 商品名「HP6850 Series」、カラム:ジーエルサイエンス社製 商品名「AL2O3/KCL PLOT」内径0.32mm、長さ50m、DF5.0、100℃×5分、20℃/分、150℃×5分、検出器:TCD 200℃、注入口:200℃、スプリット比 1/20、Total flow 22mL/m、入口圧力82kPa、注入量100μL。検量線は、イソブチレンとイソブタンの任意の混合物を圧力容器にとり、定温下で気液を充分平衡にした後、気相部の少量をガスバックに採取し、これをGCによりイソブチレンとイソブタンの分析を行い、イソブチレンとイソブタンの混合物の組成を変え同様に操作し、イソブチレン/イソブタン質量比とイソブチレン/イソブタン面積比との関係を求めることで作成した。
<第3級ブチルアルコール及びイソブチレンダイマーの分析方法>
GC法にて分析を行った。本体:島津製作所社製 商品名「GC−14B」、カラム:J&W社製 商品名「DB−WAX」、内径0.25mm、長さ30m、DF 0.25μm、50℃×5分、20℃/分、150℃×5分、検出器:FID 200℃、スプレットレス、入口圧:100kPa、注入量:1μL。
[実施例1]
反応蒸留装置は、下部から順に、リボイラー部、反応部、コンデンサー部より構成されており、これらは導管によりそれぞれ接続されている。リボイラー部は、撹拌機、温度計、圧力計および加熱用ヒーターを備えた1Lガラス製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)社製 商品名「ハイパーグラスターTEM−V型」)を、反応部は、塔頂および塔底に温度センサーを備えた内径28mm、長さ240mmのステンレス製管型反応器を、またコンデンサー部は、内径28mm、長さ200mmのステンレス製二重管式コンデンサーをそれぞれ用いた。
触媒の陽イオン交換樹脂としては、バイエル社製の強酸性のマクロポーラス型イオン交換樹脂レバチット キャトリスト K2621を使用した。触媒は80メッシュの金網製小袋(内径8mm、長さ40mm)に入れたものを反応部に充填して使用した。
溶媒には和光純薬社製 商品名「スルホラン」を使用した。これの添加方法は、500cm3容器に40質量%スルホラン水溶液を約200g調製した後、これに50℃の熱風乾燥機により一昼夜乾燥させたイオン交換樹脂を入れた小袋を30分間浸漬させ、イオン交換樹脂をスルホラン水溶液で膨潤させた。その後、小袋を引き上げ、圧縮空気の吹付けにより余分なスルホラン水溶液を取り除いた。膨潤前後の重量変化から、イオン交換樹脂(乾燥品48cm3)にスルホラン10.3g(0.086モル)、水15.5g(0.860モル)が含まれていた。上記イオン交換樹脂(wet)を管型反応器に充填した。この時、反応部充填容積130cm3より反応部の乾燥品基準の空隙率は63%であった。
液化イソブチレン20.5g(0.365モル)、液化ブタン170gをガラス製オートクレーブに仕込んだ後(この時、C4混合物中のイソブチレン濃度は12.1質量%であった。)、撹拌および加熱を行い、反応を開始した。リボイラー部で気化されたガスは、上部に位置する反応部に供され、続いてコンデンサー部に導かれ、ここで凝縮された液化ガスは反応部へ全還流され、更にリボイラー部へと戻される。反応部にはイオン交換樹脂が充填されているため反応は気液混相の状態で行われる。また、反応部で生成した第3級ブチルアルコールは、蒸留の効果により、速やかにリボイラー部へと移動する。
反応中、反応圧力1.0MPa、塔底温度70℃になるようにコンデンサー冷却水の温度をコントロールした。安定時の冷却水温度は33〜35℃の範囲であった。また、ヒーターの電圧をコントロールし、ベーパー量が40cm3/分になるよう調節した。
反応開始から、所定時間毎にガスサンプルを採取し、GC分析によりイソブチレン量を求め、リボイラー内のC4炭化水素混合物中のイソブチレンモル分率及びイソブチレン量の経時変化曲線を作成した。これを基に、イソブチレンモル分率に対する単位触媒当たりのイソブチレン消費速度を算出した。結果を表1に示した。
反応開始から5.5時間経過したところで加熱を止め反応を終了した。その後、冷却し、C4炭化水素混合物をブローアウトし、オートクレーブ内に残存した反応物を分析した結果、イソブチレンダイマーが0.16質量%検出されたが、これ以外のイソブチレンは第3級ブチルアルコールに変換されていた。
[比較例]
スルホランを添加しないこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。溶媒を添加していないため単位触媒当たりのイソブチレン消費速度は小さい結果となった。
[実施例2]
和光純薬社製 商品名「ジメチルスルホン」5.2gおよび水量を17.8gとしたこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。
[実施例3]
和光純薬社製 商品名「酢酸」6.4gおよび水量を13.3gとしたこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。
産業上の利用の可能性
本発明では、高いイソブチレンの水和反応速度で第3級ブチルアルコールを製造することができる。また、低濃度イソブチレンを原料として用いても高いイソブチレンの水和反応速度で第3級ブチルアルコールを製造することができる。
<イソブチレンの分析方法>
本体:HEWLETT PACKRD社製 商品名「HP6850 Series」、カラム:ジーエルサイエンス社製 商品名「AL2O3/KCL PLOT」内径0.32mm、長さ50m、DF5.0、100℃×5分、20℃/分、150℃×5分、検出器:TCD 200℃、注入口:200℃、スプリット比 1/20、Total flow 22mL/m、入口圧力82kPa、注入量100μL。検量線は、イソブチレンとイソブタンの任意の混合物を圧力容器にとり、定温下で気液を充分平衡にした後、気相部の少量をガスバックに採取し、これをGCによりイソブチレンとイソブタンの分析を行い、イソブチレンとイソブタンの混合物の組成を変え同様に操作し、イソブチレン/イソブタン質量比とイソブチレン/イソブタン面積比との関係を求めることで作成した。
<第3級ブチルアルコール及びイソブチレンダイマーの分析方法>
GC法にて分析を行った。本体:島津製作所社製 商品名「GC−14B」、カラム:J&W社製 商品名「DB−WAX」、内径0.25mm、長さ30m、DF 0.25μm、50℃×5分、20℃/分、150℃×5分、検出器:FID 200℃、スプレットレス、入口圧:100kPa、注入量:1μL。
[実施例1]
反応蒸留装置は、下部から順に、リボイラー部、反応部、コンデンサー部より構成されており、これらは導管によりそれぞれ接続されている。リボイラー部は、撹拌機、温度計、圧力計および加熱用ヒーターを備えた1Lガラス製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)社製 商品名「ハイパーグラスターTEM−V型」)を、反応部は、塔頂および塔底に温度センサーを備えた内径28mm、長さ240mmのステンレス製管型反応器を、またコンデンサー部は、内径28mm、長さ200mmのステンレス製二重管式コンデンサーをそれぞれ用いた。
触媒の陽イオン交換樹脂としては、バイエル社製の強酸性のマクロポーラス型イオン交換樹脂レバチット キャトリスト K2621を使用した。触媒は80メッシュの金網製小袋(内径8mm、長さ40mm)に入れたものを反応部に充填して使用した。
溶媒には和光純薬社製 商品名「スルホラン」を使用した。これの添加方法は、500cm3容器に40質量%スルホラン水溶液を約200g調製した後、これに50℃の熱風乾燥機により一昼夜乾燥させたイオン交換樹脂を入れた小袋を30分間浸漬させ、イオン交換樹脂をスルホラン水溶液で膨潤させた。その後、小袋を引き上げ、圧縮空気の吹付けにより余分なスルホラン水溶液を取り除いた。膨潤前後の重量変化から、イオン交換樹脂(乾燥品48cm3)にスルホラン10.3g(0.086モル)、水15.5g(0.860モル)が含まれていた。上記イオン交換樹脂(wet)を管型反応器に充填した。この時、反応部充填容積130cm3より反応部の乾燥品基準の空隙率は63%であった。
液化イソブチレン20.5g(0.365モル)、液化ブタン170gをガラス製オートクレーブに仕込んだ後(この時、C4混合物中のイソブチレン濃度は12.1質量%であった。)、撹拌および加熱を行い、反応を開始した。リボイラー部で気化されたガスは、上部に位置する反応部に供され、続いてコンデンサー部に導かれ、ここで凝縮された液化ガスは反応部へ全還流され、更にリボイラー部へと戻される。反応部にはイオン交換樹脂が充填されているため反応は気液混相の状態で行われる。また、反応部で生成した第3級ブチルアルコールは、蒸留の効果により、速やかにリボイラー部へと移動する。
反応中、反応圧力1.0MPa、塔底温度70℃になるようにコンデンサー冷却水の温度をコントロールした。安定時の冷却水温度は33〜35℃の範囲であった。また、ヒーターの電圧をコントロールし、ベーパー量が40cm3/分になるよう調節した。
反応開始から、所定時間毎にガスサンプルを採取し、GC分析によりイソブチレン量を求め、リボイラー内のC4炭化水素混合物中のイソブチレンモル分率及びイソブチレン量の経時変化曲線を作成した。これを基に、イソブチレンモル分率に対する単位触媒当たりのイソブチレン消費速度を算出した。結果を表1に示した。
反応開始から5.5時間経過したところで加熱を止め反応を終了した。その後、冷却し、C4炭化水素混合物をブローアウトし、オートクレーブ内に残存した反応物を分析した結果、イソブチレンダイマーが0.16質量%検出されたが、これ以外のイソブチレンは第3級ブチルアルコールに変換されていた。
[比較例]
スルホランを添加しないこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。溶媒を添加していないため単位触媒当たりのイソブチレン消費速度は小さい結果となった。
[実施例2]
和光純薬社製 商品名「ジメチルスルホン」5.2gおよび水量を17.8gとしたこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。
[実施例3]
和光純薬社製 商品名「酢酸」6.4gおよび水量を13.3gとしたこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。
産業上の利用の可能性
本発明では、高いイソブチレンの水和反応速度で第3級ブチルアルコールを製造することができる。また、低濃度イソブチレンを原料として用いても高いイソブチレンの水和反応速度で第3級ブチルアルコールを製造することができる。
Claims (5)
- 反応蒸留装置を用いて、スルホン類、有機カルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒と、陽イオン交換樹脂触媒の存在下、イソブチレンと水から第3級ブチルアルコールを製造する方法。
- 請求項1記載の第3級ブチルアルコールの製造方法であって、前記溶媒がスルホラン、ジメチルスルホン、酢酸である。
- 請求項1記載の第3級ブチルアルコールの製造方法であって、前記溶媒の量が、イソブチレン1モルに対して、0.01モル以上である。
- 請求項1記載の第3級ブチルアルコールの製造方法であって、前記陽イオン交換樹脂が、ポリスチロールスルホン酸型樹脂、フェノールスルホン酸型樹脂、または、パーフルオロスルホン酸樹脂である。
- 請求項1記載の第3級ブチルアルコールの製造方法であって、前記陽イオン交換樹脂が、多孔性型陽イオン交換樹脂である。
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