JPWO2004095624A1 - 高周波回路 - Google Patents
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Abstract
Description
携帯電話等の無線通信機器に搭載される高周波回路内では、フィルタやアンテナなどの回路を構成するために、共振器が構成要素として必要となる。
たとえば、共振器として、両端が開放された伝送線路からなる二分の一波長共振器が利用される。図25Aは、従来の二分の一波長共振器の上面図である。図25Bは、図25Aに示す従来の二分の一波長共振器の断面図である。
図25Aに示すような両端開放伝送線路900から構成される二分の一波長共振器は、例えば2GHzを共振周波数とする場合、7.5cmもの長さを必要とする。したがって、回路サイズを小型化するには、何らかの方法で、共振器長を低減する必要がある。一般に、高誘電率材料を回路基板901に用いれば、両端開放伝送線路900の長さを伝送線路からなる共振器のサイズを低減できることが知られている。
一方、伝送線路からなる複数の共振器を電磁気的に結合させれば、最低次の共振周波数が低下することが一般的に知られている。図26Aは、二つの共振器を電磁気的に結合させた従来の共振器の上面図である。図26Bは、図26Aに示す二つの共振器を電磁的に結合させた従来の共振器の断面図である。文献1(Microwave Solid State Circuit Design 2nd Edition pp.275 Wiley−Interscience2003)に示されているように、二つの共振器に含まれる二本の平行結合線路902,903間の距離を近接させて結合させれば、共振器が一つ存在した場合に共振周波数f0において生じた共振現象は起こらなくなる。その代わり、共振周波数f1(<f0)における偶モードの共振現象と、共振周波数f2(>f0)における奇モードの共振現象とが起こる。二つの共振器が強く結合するほど、f1およびf2が、それぞれf0から離れた値へシフトする。したがって、共振周波数がf0である二つの共振器をより強く結合させることによって、より低い共振周波数f1(より長い波長)で共振する共振器を提供することができるので、所望の共振周波数に対して、一つの共振器を用いるよりも共振器長が短い共振器が提供されることとなる。
しかし、低誘電率特性を有する樹脂などの基板材料は、高誘電率特性を有する基板材料よりも安価であるので、高誘電率材料を回路基板に用いて共振器のサイズを低減することは、回路全体を高誘電率材料の基板を用いて形成する方法、または共振器の個所のみを高誘電率材料を用いて形成する方法のいずれを用いても、コスト高につながるという課題を有する。
また、二つの共振器に含まれる二本の平行結合線路間の結合度を向上させて、共振周波数をシフトさせるためには、平行配置される線路間距離を極端に短縮しなければならない。したがって、配線の形成精度を飛躍的に向上させなければならない。しかし、製造プロセスの低コスト化が要求されている現状において、共振器において平行配置された線路間距離だけを極端に短縮することは現実的ではない。したがって、平行結合線路間隔を短縮することによって共振器長が短い共振器を提供することは、現実的ではない。
ゆえに、半導体プロセスや低温焼結セラミック基板の製造プロセス、樹脂基板の多層回路プロセスなどに適用可能な回路構造で共振器の小型化を図ることが、実用上好ましい解決手段である。
二つの伝送線路を多層配線し、厚さ方向に交差させることによって、平行結合線路間において、高い結合度が得られると考えられる。図27は、二つの伝送線路904,905を多層配線し、厚さ方向に交差させることによって結合度を高くした従来の共振器の断面図である。しかし、図27に示すように、二つの伝送線路を多層配線し、厚さ方向に交差させる方法にも、以下の二つの課題が存在する。
第一の課題は、二本の伝送線路904,905を平行に交差させることによって得られる容量が原因で低下する共振周波数の値には、限界があるというものである。上記方法によって電磁的な結合を強めることとしても、新たな共振周波数f1は、基本周波数f0の値を大きく下回ることはない。この方法は、結合線路の長さが電磁波の波長の二分の一である場合のみ共振を生じさせるものでしかなく、結合線路の線路長は、波長の二分の一と同程度を必要とすることに変わりがない。したがって、小型化には、限界があることとなる。
第二の課題は、平行結合線路において得られる共振現象では、良好なスプリアス阻止特性を得ることが困難であるというものである。実際の通信装置において、例えば帯域通過フィルタは、所望帯域の通過特性および所望帯域のごく近傍の周波数での阻止特性だけでなく、前段ブロックのさまざまな能動素子において発生した高調波成分の除去を目的としたスプリアス阻止特性が必要である。平行結合線路を基にした共振器は、基本周波数の二倍の周波数で生じる共振を抑制できないため、通信モジュールにおける使用には不適な点があった。
それゆえ、本発明の目的は、単純な構造で、特殊な材料を新たに用いることなく、基本共振周波数の二倍付近の周波数において共振せず、構造の大きさが伝送帯域の電磁波の波長に対して飛躍的に短い小型共振器を提供することである。また、さらなる本発明の目的は、伝送周波数の二倍波に対して阻止機能を有する小型フィルタ回路を提供することである。
本発明は、少なくとも二以上の導体配線層を有する多層誘電体基板に形成された高周波回路であって、第1の導体配線層上に形成された少なくとも一回以上の巻き数を有する第1の螺旋導体配線と、第1の螺旋導体配線と導通することなく第1の導体配線層とは異なる第2の導体配線層上に形成された少なくとも一回以上の巻き数を有する第2の螺旋導体配線とを備え、第1の螺旋導体配線と第2の螺旋導体配線とは、高さを違えて重なっており、第1の螺旋導体配線の巻き方向と第2の螺旋導体配線の巻き方向とは、反対向きであることを特徴とする。
本発明の高周波回路において、第1の螺旋導体配線と第2の螺旋導体配線とが高さを違えて立体交差する部分付近では、第1の螺旋導体配線と第2の螺旋導体配線とを結合させる交差結合容量が発生している。したがって、第1の螺旋導体配線を流れる第1の高周波電流が、交差結合容量を介して第2の螺旋導体配線に移動することによって、第2の螺旋導体配線に第2の高周波電流が流れる。第1の高周波電流の流れる方向と第2の高周波電流の流れる方向とが同じ方向になるような結合が起こった場合、第1の螺旋導体配線と第2の螺旋導体配線との交差部分は、同じ向きに電流が流れる偶モードが誘起された状態の平行結合線路とみなすことができる。第2の螺旋導体配線に沿って流れる第2の高周波電流は、交差結合容量を介して更に第1の螺旋導体配線に移動することも可能である。よって、本発明の高周波回路は、物理的なサイズを超えた長い波長の電磁波に対して共振現象を生じさせる共振器として機能する。容量回路は高域通過フィルタとしての機能があるので、本発明の高周波回路がより低い共振周波数で共振現象を発生させるためには、本発明の高周波回路を流れる高周波電流が交差結合容量を介する回数を少なくして、第1もしくは第2の螺旋導体配線を有効に用いて共振器長を実効的に増大せしめる配置が有効である。したがって、第1の螺旋導体配線の巻き方向と第2の螺旋導体配線の巻き方向とを反対方向にすることによって、より低い共振周波数で共振現象を発生させるという効果を得ることができる。
また、本発明の高周波回路において、基本周波数での共振現象を捉えた場合、両螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放端がそれぞれ全体構造の開放端に相当するものとみなせる。したがって、当該開放端での電流分布は零となる。一方、本発明の高周波回路では、螺旋導体配線間の交差結合容量を介して、両螺旋導体配線を流れる電流が相互に移動しているので、両螺旋導体配線の交差個所付近では電流分布密度は零となりえない。同様に、基本モードの共振が起こる周波数に対する二倍の周波数の波長の信号が共振現象を起こすためには、両螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放端がそれぞれ全体構造の開放端に相当し、且つ、両螺旋導体配線の交差個所付近において電流分布密度が零となる必要がある。しかし、両螺旋導体配線は既に個別の螺旋導体配線としては機能せず、両螺旋導体配線間の結合を利用した共振現象のみしか発現できなので、両螺旋導体配線の交差個所付近で電流分布密度が零となる条件を満たすことができない。両螺旋導体配線の最外郭の開放端で分布電流密度が零となり、かつ両螺旋導体配線の交差個所付近でも電流密度が零とならずに共振が起こる条件を満たすのは、基本周波数の3倍の周波数である。なお、両螺旋導体配線間を貫通導体等を用いて機械的に接続したら、この効果を得ることはできない。
よって、特殊な材料を用いることなく、単純な構造により、従来よりも小型で、基本共振周波数の二倍の周波数で共振現象を起こさず、かつ構造の大きさが伝送帯域の電磁波の波長に対して飛躍的に短い高機能な共振器が低コストで提供されることとなる。
好ましくは、多層誘電体基板は、三以上の導体配線層を有しており、第1および第2の螺旋導体配線と導通することなく第1および第2の導体配線層とは異なる少なくとも一以上の第3の導体配線層上に形成された少なくとも一回以上の巻き数を有する少なくとも一以上の第3の螺旋導体配線をさらに備え、少なくとも一以上の第3の螺旋導体配線は、第1および第2の螺旋導体配線と高さを違えて重なっており、第1〜第3の螺旋導体配線の内、互いに隣接する螺旋導体配線同士は、互いに反対向きの巻き方向を有するとよい。
上記構成において、第1の螺旋導体配線に流れた電流によって第1の螺旋導体配線の中心を垂直に貫通する方向に磁場が発生する。発生した磁場は、近接交差する第2の螺旋導体配線の中心も垂直に貫通する。第1の螺旋導体配線と第2の螺旋導体配線との間には、交差個所において両者を結合させる容量が発生しているので、第1の螺旋導体配線と同じ方向に第2の螺旋導体配線にも電流が流れる。第2の螺旋導体配線が形成される導体配線層を垂直に横切る磁場は、近接交差する第3の螺旋導体配線も横切る。第2の螺旋導体配線と第3の螺旋導体配線との間には、交差個所において両者を結合させる容量が発生しているので、第2の螺旋導体配線と同じ方向に第3の螺旋導体配線にも電流が流れる。したがって、第1の螺旋導体配線と同じ方向に、第3の螺旋導体にも電流が流れる。この現象は、近接交差する螺旋導体配線の数が4以上であっても成立する。
複数の近接交差螺旋導体対の組み合わせ構造が更に長い共振器長の共振器として機能するためには、近接交差する螺旋導体配線対が最も長い共振器長の共振器として機能するための条件を、複数の近接交差螺旋導体配線対において満足することが必要である。このため、互いに隣接する螺旋導体配線の全ての組み合わせにおいて、巻き方向がそれぞれ逆向きに設定されることが、最も長い共振器長を実現するための条件になる。
よって、本発明の構成により、特殊な材料を用いることなく、単純な構造によって、従来よりも小型な共振器を低コストに提供することができる。
好ましくは、各螺旋導体配線は、それぞれの螺旋の中心が一致するようにお互いを重ね合わせたときにそれぞれの外縁が一致するように配置されているとよい。
より好ましくは、隣接する二つの螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所は、螺旋の中心から見て逆方向に位置するように、配置されているとよい。
好ましい実施形態では、第1〜第3の螺旋導体配線のいずれかの最外郭導体配線の一部に直接接続された入出力線路をさらに備えるとよい。
これにより、小型共振器と外部回路との強い結合を、単純且つ小型な回路で実現することができる。
なお、螺旋導体配線と入出力線路とが同一導体配線層上に形成されていることが、回路構造単純化のためには好ましい。しかし、螺旋導体配線と入出力線路とを異なる導体配線層上に配置し、螺旋導体配線と入出力線路とを貫通導体によって電気的に接続しても、同様の効果が得られる。
好ましくは、多層誘電体基板に形成されており、第1〜第3の螺旋導体配線によって構成される積層螺旋導体配線共振器と同様の構成を有する少なくとも1以上の積層螺旋導体配線共振器をさらに備え、各積層螺旋導体配線共振器は、隣接して配置されているとよい。
上記構成において、隣接して配置される二つの積層螺旋導体配線共振器は、共に積層構造を有しているので、積層された各螺旋導体配線間で空間的な容量が生じる。加えて、一方の積層螺旋導体配線共振器に電流が流れた場合、当該積層螺旋導体配線共振器の内側を貫いて発生する磁界は、当該積層螺旋導体配線共振器の外側においても磁束を閉じる。したがって、当該磁界は、多層誘電体基板に対して垂直な方向に向く。よって、この周辺に発生する磁界が十分な強さで他方の積層螺旋導体配線共振器を貫くように、他方の積層螺旋導体配線共振器を配置すれば、他方の積層螺旋導体配線共振器にも電流が流れる。ゆえに、二つの積層螺旋導体配線共振器を隣接して配置するだけで、所望の共振器間結合を得ることができる。また、積層螺旋導体配線共振器間の結合を配置間隔によって調整することができるという有利な効果は、高誘電率材料の使用など、追加プロセスを必要とせず得られるので、上記構成の高周波回路は、低コストに製造することができる。
好ましい実施形態では、積層螺旋導体配線共振器の内、少なくとも一つは、第1の導体配線層上に第1の螺旋導体配線に隣接して形成されており、第1の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第4の螺旋導体配線と、第2の導体配線層上に第2の螺旋導体配線に隣接して形成されており、第2の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第5の螺旋導体配線と、第3の導体配線層上に第3の螺旋導体配線に隣接して形成されており、第3の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する少なくとも一以上の第6の螺旋導体配線とを含み、第4〜第6の螺旋導体配線は、互いに高さを違えて重なっている。
好ましくは、各積層螺旋導体配線共振器にそれぞれ結合する複数の入出力線路をさらに備えるとよい。
上記構成は、各螺旋導体配線の共振器長よりも長い共振器長を有する積層螺旋導体配線共振器を複数用いて帯域通過フィルタ回路を実現する。各積層螺旋導体配線共振器自体は従来の平面共振器よりも省占有面積であるので、従来の平面共振器構造を用いる帯域通過フィルタ回路よりも省占有面積となる。単層平面回路で形成された従来の二分の一波長共振器は基本波の二倍の周波数でも共振現象を発現するので、二分の一波長共振器により構成される従来の帯域通過フィルタは基本周波数の二倍の周波数の帯域でも不要な通過特性を有してしまう。しかし、上記構成の高周波回路は、フィルタ回路を構成する積層螺旋導体配線共振器自体が基本波の二倍の周波数での共振現象を抑制する特性を有しているので、基本波の二倍の周波数帯域で不要な通過特性を示さないという有利な効果を有する。また、上記構成の高周波回路は、回路面積低減や、基本通過帯域の二倍の周波数での不要通過特性の抑制などの有利な効果を、高誘電率材料の使用など追加プロセスを必要とせず得るので、低コストに製造できる。
なお、螺旋導体配線の一部と入出力線路の一部とが直接接続されて結合されることが、外部回路と積層螺旋導体配線共振器との間に強い結合を得るためには好ましい。
これにより、外部回路から積層螺旋導体配線共振器へ、または積層螺旋導体配線共振器から外部回路へ伝達するエネルギー効率を向上することができるだけでなく、帯域が広いフィルタ特性を得ることができる。
好ましくは、第1および第2の螺旋導体配線は、それぞれの螺旋の中心が一致するようにお互いを重ね合わせたときにそれぞれの外縁が一致するように配置されているとよい。
これにより、第一の螺旋導体配線と第二の螺旋導体配線との間の交差部分付近において両者を結合させるべく発生している容量が増大する。したがって、両螺旋導体配線間の交差結合容量を介した電流の移動がより低周波でも発現できることとなる。よって、共振周波数の更なる低下、すなわち更なる小型共振器の提供が可能となる。
より好ましくは、第1の螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所と第2の螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所とが第1の螺旋導体配線における螺旋の中心から見て逆方向に位置するように、第1および第2の螺旋導体配線は、配置されているとよい。
これにより、螺旋導体配線の螺旋の中心を中心点とした場合の単位回転あたりの距離が最も長くなっている最外郭導体配線において、両螺旋導体配線間の効果的な交差状態が実現できることとなる。したがって、両螺旋導体配線間の交差結合容量を介した電流の移動がより低周波でも発現できる。よって、共振周波数の更なる低下、すなわち更なる小型共振器の提供が可能となる。
好ましい実施形態では、第1または第2の螺旋導体配線の最外郭導体配線の一部に直接接続された入出力線路をさらに備えるとよい。
これにより、小型共振器と外部回路との強い結合を、単純且つ小型な回路で実現することができる。
なお、螺旋導体配線と入出力線路とが同一導体配線層上に形成されていることが、回路構造単純化のためには、好ましい。しかし、螺旋導体配線と入出力線路とを異なる導体配線層上に配置し、螺旋導体配線と入出力線路とを貫通導体によって電気的に接続しても、同様の効果が得られる。
好ましくは、多層誘電体基板に形成されており、第1および第2の螺旋導体配線によって構成される積層螺旋導体配線共振器と同様の構成を有する少なくとも1以上の積層螺旋導体配線共振器をさらに備え、各積層螺旋導体配線共振器は、隣接して配置されているとよい。
上記構成において、隣接して配置される二つの積層螺旋導体配線共振器は、共に積層構造を有しているので、積層された各螺旋導体配線間で空間的な容量が生じる。加えて、一方の積層螺旋導体配線共振器に電流が流れた場合、当該積層螺旋導体配線共振器の内側を貫いて発生する磁界は、当該積層螺旋導体配線共振器の外側においても磁束を閉じる。したがって、当該磁界は、多層誘電体基板に対して垂直な方向に向く。よって、この周辺に発生する磁界が十分な強さで他方の積層螺旋導体配線共振器を貫くように、他方の積層螺旋導体配線共振器を配置すれば、他方の積層螺旋導体配線共振器にも電流が流れる。ゆえに、二つの積層螺旋導体配線共振器を隣接して配置するだけで、所望の共振器間結合を得ることができる。また、積層螺旋導体配線共振器間の結合を配置間隔によって調整することができるという有利な効果は、高誘電率材料の使用など、追加プロセスを必要とせず得られるので、上記構成の高周波回路は、低コストに製造することができる。
好ましい実施形態では、積層螺旋導体配線共振器の内、少なくとも一つは、第1の導体配線層上に第1の螺旋導体配線に隣接して形成されており、第1の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第7の螺旋導体配線と、第2の導体配線層上に第2の螺旋導体配線に隣接して形成されており、第2の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第8の螺旋導体配線とを備え、第7の螺旋導体配線と第8の螺旋導体配線とは、高さを違えて重なっている。
好ましくは、各積層螺旋導体配線共振器にそれぞれ結合する複数の入出力線路をさらに備えるとよい。
上記構成は、各螺旋導体配線の共振器長よりも長い共振器長を有する積層螺旋導体配線共振器を複数用いて帯域通過フィルター回路を実現する。各積層螺旋導体配線共振器自体は従来の平面共振器よりも省占有面積であるので、従来の平面共振器構造を用いる帯域通過フィルタ回路よりも省占有面積となる。単層平面回路で形成された従来の二分の一波長共振器は基本波の二倍の周波数でも共振現象を発現するので、二分の一波長共振器により構成される従来の帯域通過フィルタは基本周波数の二倍の周波数の帯域でも不要な通過特性を有してしまう。しかし、上記構成の高周波回路は、フィルタ回路を構成する積層螺旋導体配線共振器自体が基本波の二倍の周波数での共振現象を抑制する特性を有しているので、基本波の二倍の周波数帯域で不要な通過特性を示さないという有利な効果を有する。また、上記構成の高周波回路は、回路面積低減や、基本通過帯域の二倍の周波数での不要通過特性の抑制などの有利な効果を、高誘電率材料の使用など追加プロセスを必要とせず得るので、低コストに製造できる。
以上のように、本発明は、単純な構造で、特殊な材料を新たに用いることなく、基本共振周波数の二倍付近の周波数において共振しない小型共振器を提供し、さらには伝送周波数の二倍波に対して阻止機能を有する小型帯域通過フィルタ回路を提供することができる。
図1Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。
図1Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
図2Aは、第1の実施形態に係る高周波回路の動作原理を説明するために偶モードを示す図である。
図2Bは、第1の実施形態に係る高周波回路の動作原理を説明するために希モードを示す図である。
図3Aは、平行結合線路における線路間の結合度の構造依存性を説明するために伝送線路を完全に平行に配置した場合を示す図である。
図3Bは、平行結合線路における線路間の結合度の構造依存性を説明するために伝送線路を長さ方向に半分ずらして、両者を平行に配置した場合を示す図である。
図3Cは、平行結合線路における線路間の結合度の構造依存性を説明するために、図3Bの構造を円状に曲げることによって、内側の信号導体配線と外側の信号導体配線とが二個所において結合ような配置とした場合を示す図である。
図4は、電流の流れを説明するために、螺旋導体配線4,5における点を示した図である。
図5は、本発明の高周波回路において、基本周波数での共振現象が起こる原理を説明するための図である。
図6は、二層の螺旋導体配線を同じ回転向きに形成する場合の螺旋導体配線のパターンを示す図である。
図7Aは、最外郭形状が円形である螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。
図7Bは、最外郭形状が円形である螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
図8Aは、両螺旋導体配線の開放終端個所が両螺旋導体配線の中心点から臨んで同一方向にある状態を示す図である。
図8Bは、図8Aで示した状態から、片方の螺旋導体配線を螺旋導体配線の中心点を中心として面内を90度回転した状態を示す図である。
図8Cは、図8Aで示した状態から、片方の螺旋導体配線を螺旋導体配線の中心点を中心として面内を180度回転した状態を示す図である。
図8Dは、図8Aで示した状態から、片方の螺旋導体配線を螺旋導体配線の中心点を中心として面内を270度回転した状態を示す図である。
図9Aは、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路のCD線に沿う概略断面図である。
図9Bは、多層誘電体基板1における最上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。
図9Cは、多層誘電体基板1における中位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
図9Dは、多層誘電体基板1における最下位の導体配線層の内部面8上に形成される螺旋導体配線8のパターンを示す上面図である。
図10Aは、本発明の第3の実施形態に係る高周波回路のEF線に沿う概略断面図である。
図10Bは、多層誘電体基板1における最上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。
図10Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す図である。
図11Aは、本発明の第4の実施形態に係る高周波回路のGH線に沿う概略断面図である。
図11Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4,14のパターンを示す上面図である。
図11Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5,15のパターンを示す上面図である。
図12Aは、本発明の第5の実施形態に係る高周波回路のIJ線に沿う概略断面図である。
図12Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4,14および入出力線路12,17のパターンを示す上面図である。
図12Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5,15のパターンを示す上面図である。
図13Aは、測定に用いた評価用高周波回路の概略断面図である。
図13Bは、測定に用いた評価用高周波回路の螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。
図13Cは、測定に用いた評価用高周波回路の螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
図14は、上下の螺旋導体配線の配置位置の相対的ずれ距離による基本共振周波数の変化を示す図である。
図15は、追加層表面に形成される螺旋導体配線の形成方向を45度ずつ回転させたいくつかの高周波回路の特性を測定した結果を示す図である。
図16は、各螺旋導体配線の巻き数が2.25回転である場合の測定結果を示す図である。
図17は、各螺旋導体配線の巻き数が2回転である場合の測定結果を示す図である。
図18は、螺旋導体配線と入出力線路とを直接接続した第3の実施形態の実施例に係る高周波回路に対して、入出力線路から給電をした場合の反射強度の周波数特性を示すグラフである。
図19Aは、線路間距離200ミクロンの平行結合線路として機能するように、入出力線路12の方向を螺旋導体配線4の最外郭配線に対して90度回転させたときの高周波回路の概略断面図である。
図19Bは、図19Aに示す高周波回路における螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。
図19Cは、図19Aに示す高周波回路における螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
図20は、両共振器の配置間隔を変化させた場合の結合度を示すグラフである。
図21は、第5の実施形態に係る実施例の第1の帯域通過フィルタの通過特性を示すグラフである。
図22は、第5の実施形態に係る実施例の第1の帯域通過フィルタの通過特性を示すグラフである。
図23は、第5の実施形態に係る実施例の第2の帯域通過フィルタの通過特性を示すグラフである。
図24は、第5の実施形態に係る実施例の第2の帯域通過フィルタの通過特性を示すグラフである。
図25Aは、従来の二分の一波長共振器の上面図である。
図25Bは、図25Aに示す従来の二分の一波長共振器の断面図である。
図26Aは、二つの共振器を電磁気的に結合させた従来の共振器の上面図である。
図26Bは、図26Aに示す二つの共振器を電磁的に結合させた従来の共振器の断面図である。
図27は、二つの伝送線路904,905を多層配線し、厚さ方向に交差させることによって結合度を高くした従来の共振器の断面図である。
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路のAB線に沿う概略断面図である。本発明の高周波回路は、二層の導体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図1Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。図1Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
第1の実施形態に係る高周波回路では、多層誘電体基板1の最上位の導体配線層の表面に螺旋導体配線4が形成され、下位の導体配線層上に螺旋導体配線5が形成されている。最表面2と内部面3とを重ねたときに、図1Bに記した螺旋導体配線4の螺旋の中心点O4と図1Cに記した螺旋導体配線5の螺旋の中心点O5とは、一致する。また、それぞれの螺旋の中心が一致するように最表面2と内部面3とを重ねたときに、螺旋導体配線4の外縁と螺旋導体配線5の外縁とは、一致する。螺旋導体配線4の回転方向と螺旋導体配線5の回転方向とは、互いに反対向きとなっている。螺旋導体配線4において、回路上面から見た巻き方向は、螺旋の外側から中心に向かって時計回りである。なお、以下の説明において、螺旋の巻き方向は、回路上面から見たときの螺旋の外側から中心に向かった巻き方向を示すものとする。多層誘電体基板1の内部に形成された螺旋導体配線5の巻き方向は、反時計回りである。螺旋導体配線4,5の巻き数は、それぞれ2.5回である。
以下、第1の実施形態に係る高周波回路の動作原理について説明する。
図2A〜Bは、第1の実施形態に係る高周波回路の動作原理を説明するための図である。螺旋導体配線4に高周波電流I4が流れた場合、螺旋導体配線5において螺旋導体配線4の一部と上下に高さを違えて交差する領域には交差結合容量を介して電荷の移動が生じるので、高周波電流I5が螺旋導体配線5を流れる。交差領域は、任意の長さを有する二本の平行結合線路とみなせる。螺旋導体配線4に高周波電流I4が流れた場合、図2Aに示すように、螺旋導体配線4に流れる高周波電流I4の方向と螺旋導体配線5に流れる高周波電流I5の方向とが同じ場合と、図2Bに示すように、螺旋導体配線4に流れる高周波電流I4の方向と螺旋導体配線5に流れる高周波電流I5の方向とが逆方向の場合との二種類のモードが誘起される。交差領域を平行結合線路とみなした場合、前者は偶モード、後者は奇モードに相当する。
図3A〜Cは、平行結合線路における線路間の結合度の構造依存性を説明するための図である。なお、図3A〜Cにおいて、伝送線路の接地導体は省略されており、信号導体配線のみを図示している。図3Aに示すように、伝送線路を完全に平行に配置した場合、高い結合度が得られない。なぜなら、両導体に同方向の電流が流れ、且つ両導体の両開放終端において開放条件が満足された場合、隣接する両導体における開放終端個所では、同符号の電荷が配置されることになり、結合せず反発しあうこととなるからである。
一方、図3Bに示すように、伝送線路を長さ方向に半分ずらして、両者を平行に配置した場合、結合度を高めることが可能になる。
さらに、図3Cに示すように、図3Bの構造を円状に曲げることによって、内側の信号導体配線と外側の信号導体配線とが二個所において結合ような配置とすれば、両者の結合度は最大となり、共振周波数は最も低い値をとる。この共振モードにおいて、両信号導体配線には同一方向に電流が流れており、電流は、外側の信号導体配線から内側の信号導体配線へ、さらには内側の信号導体配線から外側の信号導体配線へと両配線間の容量を介して流れ続ける。このため、図3Cの高周波回路は、回路構造が占有するサイズよりも遥かに長い電磁波に対して共振現象を生じさせることが可能となる。しかし、図3Cの構造をどこまで大きな波長の電磁波に対して機能させるかは、高周波電流が両線路間をどれだけ移動できるかのみに依存してしまう。本発明の高周波回路は、図3Cの構造において得られた電磁波の波長の制限を逃れた小型共振器の原理を、さらに拡張して、最も小型な共振器を得ることができるように、各線路構造内における配線構造形状について規定するものである。
図3Cで本発明の原理を示したように、本発明の高周波回路において、上下に形成される二つの螺旋導体配線の螺旋回転の向きを逆方向に設定することにより、共振器長の増大、すなわち共振器の小型化という有利な効果が効率的に得られる。
図4は、電流の流れを説明するために、螺旋導体配線4,5における点を示した図である。螺旋導体配線4上の点B4を流れる電流要素が、両螺旋導体配線間の交差個所に存在する分布的な容量によって、螺旋導体配線5上の点C5へと結合する。これにより、F4→E4→D4→C4→B4→C5→D5→E5→F5という順序で、電流が流れる。このときの共振器長Lcp−eveは、F4→E4→D4→C4→B4→A4という順序で一つの螺旋導体配線4内を電流が流れて共振する場合の単独の螺旋導体配線共振器の共振器長Lindに比べて、はるかに長い。したがって、二つの螺旋導体配線4,5を上下に設けることで起こる共振現象による共振周波数は、個々の螺旋導体配線4,5が起こす最も低い共振周波数よりも、低くなる。
図5は、本発明の高周波回路において、基本周波数での共振現象が起こる原理を説明するための図である。以下、図5を参照しながら、本発明の高周波回路において、基本周波数での共振現象が起こる原理を説明する。両螺旋導体配線4,5の最外郭導体配線の開放終端個所4o,5oがそれぞれ全体構造の開放端に相当するとみなした場合、開放終端個所4o,5oでの電流分布密度は零となる。また、最も低い周波数での基本共振条件は、螺旋導体配線4,5の交差個所6において発生する交差結合容量7によって両螺旋導体配線間を相互に移動する電流分布密度が高くなる、という条件に他ならない。一方、本発明の高周波回路において、螺旋導体配線4,5が交差個所での交差結合容量7により結合しているので、両螺旋導体配線の交差個所6付近では電流分布密度は零となりえない。しかし、基本共振周波数の二倍の周波数において共振現象を起こさせるためには、両螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放終端個所4o,5oが共振構造の開放終端に相当し、且つ、両螺旋導体配線の交差個所6付近において電流分布密度が零となる必要がある。しかし、この条件は成立し得ない。すなわち、本発明の高周波回路は、原理的に、基本共振周波数の約二倍の周波数において共振現象の発現を抑制することが可能な共振構造を有していることとなる。なお、上記効果を得るために、本発明の高周波回路において、両螺旋導体配線間は、貫通導体のような機械的な手段によって導通させてはいけない。
なお、両螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放終端個所で分布電流密度が零となり、かつ両螺旋導体配線の交差個所付近でも電流密度が零とならずに共振が起こる条件を満たせるのは、基本周波数の3倍の周波数の場合についてである。
なお、本発明の高周波回路と類似する構成の高周波回路として、二層の螺旋導体配線を同じ回転向きに形成する高周波回路が考えられる。図6は、二層の螺旋導体配線を同じ回転向きに形成する場合の螺旋導体配線のパターンを示す図である。しかし、両螺旋導体配線内の電流の流れを考えると、図6の構成では回路サイズの効率的な小型化が実現できないことが分かる。螺旋導体配線5に、螺旋導体配線4と同じ方向の、時計回りの方向に電流を流れる条件を考えた場合、螺旋導体配線5上の点A5を流れる電流要素が、両螺旋導体配線間に存在する分布的な容量によって、螺旋導体配線4上の点A4へと結合したと想定する。互いに向きが等しい両螺旋導体配線4、5はほとんど重なっているため、F4→E4→D4→C4→B4→C5→B5→A5という順序で、電流が流れる。このときの共振器長Lcp−oddは、A4→B4→C4→D4と螺旋導体配線4内を電流が流れて共振する場合の単独の螺旋導体配線共振器の共振器長Lindと、大きく変わらない。したがって、両螺旋導体配線の巻き方向を同じにした場合、螺旋導体配線の積層による共振器長の増大、すなわち共振周波数の低下という効果を発現できない。すなわち、本発明の効果を得るためには、上下に交差する両螺旋導体配線の巻き方向が、互いに反対向きでなければならない。
なお、本発明の高周波回路において、上側の螺旋導体配線の最外郭形状と、下側の螺旋導体配線の最外郭形状とが、高さを違えて重なるようにパターンされているのが好ましい。図3における正方形状の螺旋導体配線を例にあげると、最外郭の形状は正方形である。この正方形が重なるように、両螺旋導体配線がパターンされることが好ましい。同様に、最外郭形状が円形や正方形以外の多角形である場合にも同様の条件が好ましい。図7A,Bは、最外郭形状が円形である螺旋導体配線4,5のパターンを示す上面図である。両螺旋導体配線間で高さを違えて重なっている個所の面積が増加するほど、両螺旋導体配線間の高周波電流の相互移動が円滑に行われる。したがって、積層配置される両螺旋導体配線の最外郭形状が最も広い面積で交差するよう配置されることが、共振周波数低下のために好ましい。
なお、本発明の高周波回路において、上側の螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所と、下側の螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所とが、上側の螺旋導体配線の螺旋の中心点から臨んで逆方向に配置されることが好ましい。図1において説明した第1の実施形態での正方形状の螺旋導体配線を例にあげると、両螺旋導体配線の最外郭形状が一致するような配置としては、図8A〜Dに示すように、全部で4種類の組み合わせが考えられる。これらの4種類の組み合わせは、図8Aで示したように、両螺旋導体配線の開放終端個所が両螺旋導体配線の中心点から臨んで同一方向にある状態を0度とする。図8Bで示した状態は、図8Aで示した状態から、片方の螺旋導体配線を螺旋導体配線の中心点を中心として面内を90度回転して形成される組み合わせである。図8Cで示した状態は、図8Aで示した状態から、片方の螺旋導体配線を螺旋導体配線の中心点を中心として面内を180度回転して形成される組み合わせである。図8Dで示した状態は、図8Aで示した状態から、片方の螺旋導体配線を螺旋導体配線の中心点を中心として面内を270度回転して形成される組み合わせである。図8A〜Dにおいて、十字パターンで示される個所は、上面に配置される螺旋導体配線において最外郭導体配線の開放終端個所から0.5巻き部分に相当する個所に、下面に形成される螺旋導体配線中で交差する個所を示したものである。十字パターンで示す領域では、両螺旋導体配線の間に生じる交差結合容量が得られるため、両螺旋導体配線間の電流の移動がより低い周波数でも得られ、共振周波数の低減に寄与しうる。一方、図8A,B,Dにおいて、白く示した個所は、下面に形成する螺旋導体配線の最外郭導体配線の中でも、上面の最外郭導体配線の開放終端個所から0.5巻きまでの個所と交差し得なかった個所を示す。白く示した領域は、効果的な交差結合容量を生じさせることができず、効果的な基本共振周波数の低減に貢献できない領域である。白く示した領域は、上面の螺旋導体配線における最外郭導体配線の終端個所に近くない個所と結合することや、内郭の導体配線と結合することは、可能である。しかし、最外郭導体配線の開放終端個所付近が最も一辺の長さが長いことを考慮すると、白く示した領域が少なくなる構成が、最も基本共振周波数を低減しうることは明らかである。以上の理由により、両螺旋導体配線の開放終端個所付近で、最外郭導体配線が最も高い確率で交差している状態である、図8Cに相当する状態が、本発明の高周波回路の実施形態の4種類の選択肢の中では最も好ましい例となる。次が、図8Dに示す状態である。その次が、図8Bに示す状態である。最も好ましくないのが、図8Aに示す状態である。各螺旋導体配線の最外郭形状が円形(図7A,B参照)や正方形以外の多角形である場合にも、上記の条件を満たすことが好ましい。
なお、図1では、上面の螺旋導体配線4が多層誘電体基板1の最表面に形成される実施形態を示したが、螺旋導体配線4は多層誘電体基板1の内部面に形成されてもよいし、螺旋導体配線4が形成される導体配線層が被覆されていても、本発明の有利な効果を同様に得ることが可能である。また、多層誘電体基板1が三層以上である場合、螺旋導体配線4と螺旋導体配線5との間に、二層以上の導体配線層が形成されていてもよい。
なお、本発明の高周波回路において、構成螺旋導体配線の巻き数を一回以上としているのは、二つの積層される螺旋導体配線間の近接交差領域を大きく設定することが可能となるからである。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、単純な構造で、特殊な材料を新たに用いることなく、基本波の二倍付近の周波数で共振現象を発現せず、波長よりも遥かに小型な共振器を提供することができる。
(第2の実施形態)
図9Aは、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路のCD線に沿う概略断面図である。本発明の高周波回路は、三層の誘電体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図9Bは、多層誘電体基板1における最上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。図9Cは、多層誘電体基板1における中位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。図9Dは、多層誘電体基板1における最下位の導体配線層の内部面8上に形成される螺旋導体配線9のパターンを示す上面図である。
図9Bに記した螺旋導体配線4の中心点O4と、図9Cに記した螺旋導体配線5の中心点O5と、図9Dに記した螺旋導体配線9の中心点O9とは、最表面2と内部面3と内部面8とを重ねた場合、一致する。また、螺旋導体配線4,5,9の螺旋の中心点O4,O5,O9が一致するように最表面2と内部面3と内部面8とを重ねた場合、三つの螺旋導体配線4,5,9の外縁は一致する。
螺旋導体配線4の巻き方向は、時計回りである。螺旋導体配線5の巻き方向は、反時計回りである。螺旋導体配線5の巻き方向は、時計回りである。したがって、三つの積層された螺旋導体配線の巻き方向は、最上位から順番に逆向きになっている。すなわち、互いに隣接する螺旋導体配線同士は、互いに反対向きの巻き方向を有している。各螺旋導体配線の巻き数は、それぞれ2.5回である。
以下、第2の実施形態に係る高周波回路の動作原理について説明する。
螺旋導体配線4と螺旋導体配線5との交差領域間に存在する交差結合容量によって、螺旋導体配線4を流れた高周波電流は、螺旋導体配線5に移動する。このときに、当該交差領域を平行結合線路とみなした場合、螺旋導体配線4に高周波電流が流れる方向と同じ方向に高周波電流が流れる螺旋導体配線5の部分は、平行結合線路の偶モード的な電流分布に相当する。当該部分では、実効誘電率の増大が発現するので、結合領域長の増大が見込める。さらに、螺旋導体配線5と螺旋導体配線9との交差領域間に存在する交差結合容量によって、螺旋導体配線5を流れた高周波電流は、螺旋導体配線9に移動する。このときに、当該交差領域を平行結合線路としてみなした場合、螺旋導体配線5に高周波電流が流れる方向と同じ方向に高周波電流が流れる螺旋導体配線9の部分は、平行結合線路の偶モード的な電流分布に相当する。当該部分では、近接する各螺旋導体配線間の高い結合度が得られる。これらの原理から、近接交差する螺旋導体配線数が3を超えても、各螺旋導体配線内を同じ方向に電流が流れるモードは、最も低い周波数で共振現象を発現する。このような電流分布が生じた場合に、近接交差する螺旋導体配線4,5の対、若しくは螺旋導体配線5,9の対がそれぞれ最も長い共振器長の積層螺旋導体配線共振器となるための条件は、三つの螺旋導体配線4,5,9からなる積層螺旋導体配線共振器の共振器長が最も長くなるための条件と一致する。したがって、全ての近接交差する螺旋導体配線の組み合わせを逆向きに設定することが、最も長い共振器長にし、最も低い周波数で基本共振周波数を発現する条件になる。
なお、例えば、3層以上の螺旋導体配線が交差して、その内の近接交差する螺旋導体配線の組み合わせが全て反対向きに配置されておらず、例えば一つの組み合わせが同じ回転方向の螺旋導体配線の積層構造により構成されていても、その他の組み合わせによって発現している本発明の有利な効果は消滅しない。
なお、図9Aでは、螺旋導体配線4が多層誘電体基板1の最表面2に形成された場合について示したが、螺旋導体配線4は多層誘電体基板1の内部面に形成されていてもよいし、螺旋導体配線4が形成される導体配線層が被覆されていても、本発明の有利な効果を同様に得ることが可能である。また、多層誘電体基板が四層以上であって、四層以上の螺旋導体配線が形成されていても、同様の効果を得ることができる。また、各螺旋導体配線間に、二層以上の誘電体配線層が形成されていてもよい。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、単純な構造で、特殊な材料を新たに用いることなく、基本波の二倍付近の周波数で共振現象を発現せず、波長よりも遥かに小型な共振器を提供することができる。
(第3の実施形態)
図10Aは、本発明の第3の実施形態に係る高周波回路のEF線に沿う概略断面図である。第3の実施形態に係る高周波回路は、二層の誘電体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図10Bは、多層誘電体基板1における最上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。図10Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す図である。
図10Bに記した点O4と図10Cに記した点O5は、第1の実施形態と同様、面内位置がそれぞれ等しい。積層された螺旋導体配線4,5は、積層螺旋導体配線共振器11を構成する。積層螺旋導体配線共振器11に結合する入出力線路12は、多層誘電体基板1の最表面2に形成されている。すなわち、螺旋導体配線4と入出力線路12とは、同一平面内に配置され、その一部が接続点13において直接接続されている。
外部回路から共振器へ、または共振器から外部回路へ伝達するエネルギー効率を低下させないため、もしくは、帯域の広いフィルタ回路を構成するために、共振器と外部回路との強い結合が不可欠である。例えば、二本の伝送線路を結合させるためには、両者を平行に配置すればよく、その結合度は配置間隔を変化させることにより調整できる。例えば、伝送線路間の距離を減じれば、両伝送線路間の交差結合容量が増大し、結合度は増加する。また、結合する線路長が4分の1波長や2分の1波長などに設定できれば、結合伝送線路構造が共振現象を示し、一方の伝送線路から片方の伝送線路へ効率よくエネルギーの伝達が可能となる。しかし、複数積層された螺旋導体配線からなる積層螺旋導体配線共振器は回路占有面積が小さくなっているため、入出力線路を隣接配置したとしても強い結合を得ることが困難である。結合距離を長くするために、螺旋導体配線の最外郭導体配線の周辺を間隙を介して、折り曲げながら配置することによって結合度を得ることも可能であるが、不要な回路の占有面積が必要となってしまう。そこで、第3の実施形態に係る高周波回路においては、積層螺旋導体配線共振器を構成する螺旋導体配線4の一部に入出力線路12を直接接続することによって、両者の結合を強めることとした。
なお、一般に、二分の一波長共振器と入出力線路とを直接接続すると、直流的にも両者が接続されてしまうことになることから、あまりにも広帯域に強い結合を得てしまうという問題がある。そのため、両者を直接接続することなく、短い結合領域長で高い容量を得る必要があるので、高誘電率材料を用いたキャパシタによる接続や、配線間距離を極端に狭くする結合、層間距離が極端に薄い多層誘電体基板を使用しての結合などの解決策が考えられる。しかし、いずれも低コスト性を維持することが困難である。第3の実施形態に係る高周波回路では、積層螺旋導体配線共振器が二つ以上の空間的に分離された螺旋導体配線構造の組み合わせから構成されるので、空間的に分離された螺旋導体配線間を円滑に移動可能な電流が有する周波数帯域は限定される。そのため、直流的な結合は起こらず、極端に強い結合が不要に広帯域に起こってしまうこともない。さらには、直接接続する個所の接続幅を変えれば、結合度を変化させることも可能である。
なお、図10Aには、入出力線路12およびそれに直接結合する螺旋導体配線4は、同一導体層に形成されることとしたが、入出力線路12と直接接続される螺旋導体配線は多層誘電体基板1内の異なる導体層に形成されていてもかまわない。この構成の場合、両者の直接接続は、多層誘電体基板1の少なくとも一部を貫通する貫通接続導体を用いて実現されることとなる。
なお、図10Aでは、上面の螺旋導体配線4が多層誘電体基板1の最表面2に形成されることとしたが、螺旋導体配線4は多層誘電体基板1の内部面に形成されていても、螺旋導体配線4が形成される導体配線層が被覆されていても、本発明の有利な効果を同様に得ることが可能である。
なお、図10Aでは、入出力線路12が多層誘電体基板1の最表面2に形成されることとしたが、入出力線路12が多層誘電体基板1内の内部導体層に形成されていてもよい。
なお、図10Aでは、二層の導体配線層上に二つの螺旋導体配線を形成することとしたが、第2の実施形態に示したように、三層以上の導体配線層上に三以上の螺旋導体配線を形成してもよい。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、単純且つ小型な回路で積層螺旋導体配線共振器と入出力線路との間の強い結合を得ることができる。
(第4の実施形態)
図11Aは、本発明の第4の実施形態に係る高周波回路のGH線に沿う概略断面図である。第4の実施形態に係る高周波回路は、二層の導体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図11Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4,14のパターンを示す上面図である。図11Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5,15のパターンを示す上面図である。
図11Bに記した点O4と図11Cに記した点O5とは、第1の実施形態と同様、面内一が等しい。さらに、図11Bに記した点O14と図11Cに記した点O15とは、面内位置が等しい。積層された螺旋導体配線4,5によって、積層螺旋導体配線共振器11が構成される。積層された螺旋導体配線14,15によって、積層螺旋導体配線共振器16が構成される。積層螺旋導体配線共振器11,16において、上下に形成される螺旋導体配線4,5および14,15は、それぞれ、互いに逆向きの巻き方向を有している。積層螺旋導体配線共振器11と積層螺旋導体配線共振器16とは、隣接して配置されている。
複数の共振器間を結合する方法として、結合させる共振器間の容量によって結合させる方法と、片方の共振器から生じる磁界をもう片方の共振器に結合させる方法とがある。第4の実施形態に係る高周波回路では、螺旋の回転方向が逆向きの螺旋導体配線を積層して形成される積層螺旋導体配線共振器間に結合を生じさせるために、二つの積層螺旋導体配線共振器を空間を介して面的に隣接して配置している。各積層螺旋導体配線共振器は、それを構成している螺旋導体配線が発現する共振周波数よりもはるかに低い基本共振周波数を実現した小型共振器である。したがって、隣接する伝送線路との間に発生する空間的な容量によって外部回路と適度な結合を得ることが困難になる。これは、積層螺旋導体配線共振器は、共振器長が長いにもかかわらず占有する面積が少ないため、基本共振周波数の波長に比べて、螺旋導体配線と伝送線路とが隣接して配置できる距離が短いことに起因している。しかし、第4の実施形態に係る高周波回路において、隣接して配置される二つの積層螺旋導体配線共振器は、共に積層構造を有しているので、積層された各配線間で多重の空間的な容量が生じる。さらに、片方の積層螺旋導体配線共振器に沿って電流が流れた場合に積層螺旋導体配線共振器の内側を貫いて発生する磁界が、積層螺旋導体配線共振器の外側においては、もう一方の積層螺旋導体配線共振器の中央を貫くように、配置位置を調整することによって、もう一方の積層螺旋導体配線共振器にも誘導電流を流すことが可能となる。よって、二つの積層螺旋導体配線共振器を隣接して配置するのみで、所望の共振器間結合を得ることが可能となる。
また、積層螺旋導体配線共振器間の結合の実現、という有利な効果は、高誘電率材料の使用などの追加プロセスを必要とせず得られるので、第4の実施形態に係る高周波回路は、低コストで製造可能な利点を有する。
なお、図11Aには、螺旋導体配線4と14、あるいは5と15、がそれぞれ同一導体層に形成された場合の本発明の実施の形態について示したが、それぞれが異なる導体層に形成されても本発明の有利な効果を得ることは同様に可能である。
なお、図11Aにおいては、積層螺旋導体配線共振器11、16の上面の螺旋導体配線4,14が多層誘電体基板1の最表面に形成された場合の本発明の実施の形態について示したが、螺旋導体配線4,14は多層誘電体基板1の内部面に形成されていても、螺旋導体配線4,14が形成される導体配線層が被覆されていても、本発明の有利な効果を同様に得ることが可能である。
なお、上記では、二つの積層螺旋導体配線共振器が結合することとしたが、三以上の積層螺旋導体配線共振器が結合するように構成されていてもよい。
以上説明したように、第4の実施形態によれば、特殊な材料を用いることなく、単純な構造によって、従来よりも小型な共振器である積層螺旋導体配線共振器間の結合を実現することができる。
(第5の実施形態)
図12Aは、本発明の第5の実施形態に係る高周波回路のIJ線に沿う概略断面図である。なお、IJ線に沿う断面図上では、入出力線路12,17は、見えないが、図12Aでは、断面図に入出力線路12,17を投影させて表記している。図12Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4,14および入出力線路12,17のパターンを示す上面図である。図12Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5,15のパターンを示す上面図である。
図12Bに記した点O4Aと図12Cに記した点O5Aとは、第1の実施形態と同様、面内位置が一致する。図12Bに記した点O4Bと図12C中に記した点O5Bとは、面内位置が一致する。積層された螺旋導体配線4,5によって、積層螺旋導体配線共振器11が構成される。積層された螺旋導体配線14,15によって、積層螺旋導体配線共振器16が構成される。螺旋導体配線4,5のそれぞれの巻き方向は、互いに逆向きである。螺旋導体配線14,15のそれぞれの巻き方向は、互いに逆向きである。両積層螺旋導体配線共振器の上面に形成された螺旋導体配線4,14の巻き方向は、同じである。積層螺旋導体配線共振器11と積層螺旋導体配線共振器16とは、隣接して配置され結合されている。螺旋導体配線4に隣接して入出力線路12が配置され、外部回路と積層螺旋導体配線共振器11との結合が実現している。螺旋導体配線14に隣接して入出力線路17が配置され、外部回路と積層螺旋導体配線共振器16との結合が実現している。
第5の実施形態に係る高周波回路において、積層螺旋導体配線共振器によって構成される帯域通過フィルタが実現する。構成要素である各螺旋導体配線の基本共振周波数より低い周波数で基本共振現象を示す小型共振器である積層螺旋導体配線共振器を使用することによって、第5の実施形態に係る高周波回路においても、回路の小型化が実現できる。単層平面回路で形成された従来の二分の一波長共振器は基本波の二倍の周波数でも共振現象を発現するので、二分の一波長共振器により構成される従来の帯域通過フィルタは基本周波数の二倍の周波数の帯域でも通過特性を有してしまう。それに比べて、積層螺旋導体配線共振器においては、二分の一波長共振器であるにもかかわらず、基本共振周波数の二倍の周波数で共振現象を示さない。したがって、第5の実施形態に係る高周波回路においても、通過帯域の二倍の周波数付近の帯域で通過特性を示さないという有利な効果が得られる。
なお、図12Aでは、積層螺旋導体配線共振器11と入出力線路12、および積層螺旋導体配線共振器16と入出力線路17との結合を得るために、空間的な容量を利用しているが、螺旋導体配線4と入出力線路12との間、螺旋導体配線14と入出力線路17との間を、キャパシタ部品を用いてそれぞれ接続することも可能である。この場合、所望の特性を得るために最適な結合度は、キャパシタの容量値を調整すれば得ることができる。また、螺旋導体配線4と入出力線路12、および螺旋導体配線14と入出力線路17とをそれぞれ直接接続して結合を得ることも可能であり、所望の特性を得るために最適な結合度は、接続幅を変化することにより調整可能である。
なお、図12Aでは、入出力線路12,17と結合する螺旋導体配線4,14は同一導体層に形成されることとしたが、それぞれが異なる導体層に形成されても本発明の有利な効果を得ることは可能である。
なお、図12Aにおいて、積層螺旋導体配線共振器11,16の上面の螺旋導体配線4、14は多層誘電体基板1の最表面2に形成されることとしたが、螺旋導体配線4,14は多層誘電体基板1の内部面に形成されていても、螺旋導体配線4,14が形成される導体配線層が被覆されていても、本発明の有利な効果を同様に得ることが可能である。
なお、図12Aにおいて、入出力線路12が多層誘電体基板1の最表面2に形成されることとしたが、入出力線路12が多層誘電体基板1内の内部導体層に形成されてもよい。
なお、上記では、二つの積層螺旋導体配線共振器が結合することとしたが、三以上の積層螺旋導体配線共振器が結合するように構成されていてもよい。
以上説明したように、第5の実施形態によれば、特殊な材料を用いることなく、単純な構造によって、通過帯域の二倍の周波数帯域に通過特性をもたない、通過帯域フィルタ特性を有する、従来よりも小型な高周波回路を提供することができる。
(第1の実施形態に係る実施例)
本発明者は、第1の実施形態に係る実施例となる高周波回路を作成して共振特性を測定した。図13A〜Cは、測定に用いた評価用高周波回路の構造概略を示す図である。図13Aは、評価用高周波回路のKL線に沿う断面概略図である。なお、図13Aでは、入出力線路12を投影させて表記している。図13Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。図13Cは、多層誘電体基板における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
評価用高周波回路において、積層螺旋導体配線共振器11に対する結合度を低くした状態で、プローブとなるマイクロストリップ構造の入出力線路12を近接させ、本発明者は、一端子の反射を測定した。本発明者は、共振周波数および反射帯域からQ値を見積もった。本発明者は、基本共振および二次の共振についての評価を行った。
表1は、本発明の高周波回路の実施例および比較実施例のパラメータおよび特性を示す。実施例および比較実施例において、評価基板材は、誘電率が10.2、誘電正接が0.003のRT/Duroid基板であるとした。多層基板構造は、厚さ640ミクロンの同材をベースとし、その両面に厚さ40ミクロンの銅配線を施した後、厚さ130ミクロンの同材を追加層として貼り付ける構造とした。追加層の上面に形成する銅配線は、厚さ40ミクロンと統一した。全ての配線の配線幅は、200ミクロンであるとした。面内の隣接配線間の間隙は、200ミクロンと統一した。形成した各螺旋導体配線の外形は、2500ミクロンの正方形と統一した。なお、多層誘電体基板の裏面には、全面に銅導体を貼り付け、高周波グラウンドとして機能させた。測定端子は、多層基板構造へ追加される追加層の有無にかかわらず、最上面に形成した。
第1の実施例および第1の比較実施例は、共に、2.5回巻きの螺旋導体配線が二層積層された構造を含んでいることとする。第1の実施例では、螺旋導体配線の巻き方向が上下で逆である。一方、第1の比較実施例では、螺旋導体配線の巻き方向が上下で同じである。第1の実施例では、1.42GHzで共振現象を示したのに対して、第1の比較実施例では、2.62GHzで共振現象を示した。
第2の比較実施例は、追加層の表面にのみ巻き方向が時計回りの一つの螺旋導体配線を形成した構成を有している。第2の比較実施例では、共振周波数は3.31GHzであり、Qは96.6であった。
第3の比較実施例は、追加層を設けずに、厚さ640ミクロンのベース基板の表面に巻き方向が時計回りの一つの螺旋導体配線を形成した構成を有している。第3の比較実施例では、共振周波数は3.35GHzであり、Q値は103.5であった。
第4の比較実施例は、厚さ640ミクロンのベース基板の表面に巻き方向が時計回りの一つの螺旋導体配線を形成した後、追加層を被覆し、追加層表面に螺旋導体配線の導体パターンを形成した構成を有している。第4の比較実施例では、共振周波数は2.66GHzであり、Q値は91.6であった。
これらの結果より、第1の実施例が示す共振周波数は、第1の比較実施例と比較して共振周波数が46%低下していることが明らかになった。また、第1の実施例が示す共振周波数は、多層基板条件を変化させた第2〜第4の比較実施例のいずれと比較しても、実効的な共振器長が2倍近く増加したといえる。したがって、第1の比較実施例が、小型化な共振器であることが確認された。
また、第1の実施例では、二次の共振周波数は基本周波数の3倍程度であって、基本共振周波数の二倍の周波数での共振現象を起こさなかった。
次に、第1の実施例と同様の螺旋導体配線構造において、上下の螺旋導体配線の配置位置が相対的にずれることによる基本共振周波数への影響を把握するために、計6個の高周波回路を作製した。図14は、上下の螺旋導体配線の配置位置の相対的ずれ距離による基本共振周波数の変化を示す図である。図14から明らかなように、積層する螺旋導体配線の外縁の形状が一致している条件で、最も低い基本共振周波数が得られた。これは、両螺旋導体配線間の高さを違えて重なっている交差個所の面積が増加するほど、両螺旋導体配線間の高周波電流の相互移動が円滑に行われるので、積層配置される両螺旋導体配線の外縁の形状が最も広い面積で交差するよう配置されることが共振周波数低下のために好ましいことを示している。
次に、両螺旋導体配線の交差の仕方が変化した場合の影響を把握するために、ベース基板表面に形成された螺旋導体配線を形状、方向共に固定し、追加層表面に形成される螺旋導体配線の形成方向を45度ずつ回転させたいくつかの高周波回路の特性を測定し、図15に示した。同様に、各螺旋導体配線の巻き数が2.25回転である場合の結果を測定し、図16に示した。さらに、各螺旋導体配線の巻き数が2回転である場合の結果を測定し、図17に示した。
図15〜17では、両螺旋導体配線の開放終端個所が螺旋導体配線の中心点から臨んで同一方向に存在する場合の状態を、角度0度と定義した。螺旋導体配線数がいずれの値においても、角度が180度の場合の高周波回路が最も低い基本共振周波数を示した。
すなわち、両螺旋導体配線の開放終端個所が、螺旋導体配線の中心点から臨んで逆方向に存在する場合、最も小型の共振器を提供することができることが分かった。また、いずれの配置角度においても、個別の螺旋導体配線が有する共振器長よりも、34%以上長い共振器長の共振器として機能することが分かった。
(第2の実施形態に係る実施例)
次に、本発明者は、第1の実施例に、更に厚さ130ミクロンのRT/Duroid基板を追加層として表面に張り合わせ三層の誘電体基板を回路基板として使用した第2の実施形態に係る実施例となる高周波回路を作製した。最表面を含む三層の導体配線層に、厚さ40ミクロンの銅配線からなる等価な螺旋導体配線をそれぞれ形成し、積層螺旋導体配線共振器構造を作製した。螺旋導体配線の形状は、第1の実施例と同様である。第1の実施例と同様に、最表面に形成したプローブ構造により、共振器の基本共振周波数とQ値、および二次の共振周波数とQ値を見積もった。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り、高周波グラウンドとして機能させた。
表2に、本発明の第2〜第4の実施例、第5の比較例のパラメータおよび特性を示す。第2の実施例は、3層の螺旋導体配線が全て逆の螺旋回転方向を有している構造である。第3の実施例は、一層目と二層目が逆向きで、二層目と三層目は同じ向きの螺旋回転方向を有している構造である。第4の実施例は、一層目と二層目が同じ向きで、二層目と三層目が逆向きの螺旋回転方向を有している構造である。第5の比較実施例は、三層全ての螺旋導体配線の螺旋回転方向が同じ向きである。
表2より明らかなように、全ての交差近接する螺旋導体配線間の螺旋回転方向が、逆向きに設定された第2の実施例が最も低い基本共振周波数を示している。一方、三層全てが同じ螺旋回転方向に設定された第5の比較実施例は、個別の螺旋導体配線が2分の1波長共振器として示す基本共振周波数とほとんど同じ基本共振周波数しか示さなかった。また、交差近接する螺旋導体配線の二つの組み合わせのうち、一つの組み合わせのみが螺旋回転方向を逆向きになるよう設定した第3および第4の実施例は、それぞれ第2の実施例2程ではないが、第5の比較実施例と比較すると基本共振周波数が低下している。また、第5の比較実施例では、基本共振周波数の2倍の周波数で共振現象を起こしたが、第2〜第4の実施例では、二次の共振周波数は基本周波数の3倍程度であって、基本共振周波数の二倍の周波数での共振現象を起こさなかった。
(第3の実施形態に係る実施例)
第3の実施形態に係る実施例の高周波回路のベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)である。当該高周波回路は、ベース基板と同材の厚さ130ミクロンの追加基板をベース基板に積層することによって、二層の多層誘電体基板として構成されている。表面と内部導体層とには、導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンによって一辺900ミクロンの正方形の最外郭形状を有する1.5回転の巻き数の螺旋導体配線が二層積層されている。これによって、積層螺旋導体配線共振器が構成される。多層誘電体基板の最上面には、幅400ミクロンの入出力線路が形成されている。図18は、螺旋導体配線と入出力線路とを直接接続した第3の実施形態の実施例に係る高周波回路に対して、入出力線路から給電をした場合の反射強度の周波数特性を示すグラフである。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り、高周波グラウンドとして機能させた。上面の螺旋導体配線に対する接続点13の相対位置は、図10Bに示した位置と同一とした。
図18に示すように、2.37GHzの基本共振周波数の周波数を変化させることなく、反射損失14dBという強い強度の反射ピークを得ることができた。したがって、積層螺旋導体配線共振器と外部回路との間に、強い結合が得られたことがわかった。
上記高周波回路と同様の設定で、幅400ミクロンの入出力線路と積層螺旋導体配線との間に200ミクロンの間隙を介した比較例を用いて、給電を行った。この場合、反射強度測定限界内では反射特性にピークを確認することはできなかった。したがって、結合距離を短くしただけでは積層螺旋導体配線共振器に対する強い結合が得られないことがわかった。また、図19A〜Cに示すように、線路間距離200ミクロンの平行結合線路として機能するように、入出力線路12の方向を螺旋導体配線4の最外郭配線に対して90度回転させた。このとき、接続点13の付近を開放終端とし給電したところ、共振周波数での反射損失は0.55dBにしか達しなかった。したがって、結合距離を短くしただけでは積層螺旋導体配線共振器に対する強い結合が得られないことがわかった。
(第4の実施形態に係る実施例)
第4の実施形態に係る実施例の高周波回路のベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)である。当該高周波回路は、ベース基板と同材の厚さ130ミクロンの追加基板をベース基板に積層することによって、二層の多層誘電体基板として構成されている。表面と内部導体層とには、導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンによって一辺2500ミクロンの正方形の最外郭形状を備えた2.5回転の巻き数の螺旋導体配線を二層積層した積層螺旋導体配線共振器が二つ構成されている。本発明者は、距離を介して二つの積層螺旋導体配線共振器を配置した場合の、積層螺旋導体配線共振器の基本共振周波数の分離による両共振器間の結合度を見積もった。なお、多層誘電体基板の裏面には、全面に銅導体貼り、高周波グラウンドとして機能させた。結合した共振器間の結合度は、基本共振周波数の偶モードおよび奇モードへの分離量より計算することが可能である。図20は、両共振器の配置間隔を変化させた場合の結合度を示すグラフである。図20には、基本共振周波数が結合により分離した偶モードおよび奇モードの二つの共振周波数の変化も示した。
例えば、比帯域5%、帯域内通過損失偏差0.2dBのチェビシェフ特性の帯域通過フィルタを3段の共振器から構成する場合、共振器間の結合度は0.0424である。また、比帯域を10%とすれば、帯域内通過損失偏差0.2dBの場合には、結合度に0.0848といった値が理論的に必要になる。しかし、図20から明らかなように、二つの積層螺旋導体配線共振器間の配置間隔を調整することによって、第4の実施形態に係る実施例において、現実的なフィルタ設計において要求される程度の結合度が、小型共振器である積層螺旋導体配線共振器間において実現可能であることが確認された。
(第5の実施形態に係る実施例)
第5の実施形態に係る実施例として、二つの積層螺旋導体配線共振器を用いた第1の帯域通過フィルタを作製した。ベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)であるとした。追加基板は、ベース基板と同材の厚さ130ミクロンであるとした。これによって、二層の多層誘電体基板を構成した。表面と内部導体層とに導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンによって一辺1800ミクロンの正方形の最外郭形状を備えた1.5回転の巻き数の螺旋導体配線を二層積層した積層螺旋導体配線共振器を二つ構成した。両積層螺旋導体配線共振器間の間隔は、比帯域6%を得るために必要な0.07の結合度に相当する300ミクロンに設定した。両積層螺旋導体配線共振器を構成する上面の螺旋導体配線同士、また下面の螺旋導体配線同士の螺旋回転方向は同一とした。両積層螺旋導体配線共振器の上面の螺旋導体配線の最外郭導体配線には、同一平面状に形成された幅400ミクロンの入出力線路を直接接続して、外部回路と共振器構造との間の結合を得た。接続点は、螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放終端個所から正方形一辺分移動した個所とした。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り付け、高周波グラウンドとして機能させた。
図21および図22は、上記第1の帯域通過フィルタの通過特性を示すグラフである。図21は、通過帯域付近での狭帯域な特性を示す。図22は、通過帯域の4倍の周波数に相当する12GHzまでの広帯域な特性を示す。図21に示すように、中心周波数2.95GHz、比帯域5.9%のフィルタが実現された。通過帯域内での挿入損失の最小値は1.8dBであった。図22より明らかなように、中心周波数の二倍に相当する6GHz付近の周波数帯域には不要な通過帯域の存在は確認されなかった。
また、同様にして、二つの積層螺旋導体配線共振器を用いた第2の帯域通過フィルタを作製した。ベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)であるとした。二層の追加基板は、ベース基板と同材のそれぞれ厚さ130ミクロンとした。これによって、三層の多層誘電体基板を構成した。表面と内部導体層とに導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンにより一辺1700ミクロンの正方形の最外郭形状を備えた2回転の巻き数の螺旋導体配線を三層積層した積層螺旋導体配線共振器を二つ構成した。すなわち、第2の帯域通過フィルタは、前述の第1の帯域通過フィルタでは積層螺旋導体配線共振器の積層数が2であったのを、3に増加させた構造である。両積層螺旋導体配線共振器間の間隔は、比帯域5%を得るために必要な0.06の結合度に相当する650ミクロンに設定した。両積層螺旋導体配線共振器を構成する上面の螺旋導体配線同士、また下面の螺旋導体配線同士の螺旋回転方向は同一とした。両積層螺旋導体配線共振器の上面の螺旋導体配線の最外郭導体配線に、同一平面状に形成された幅400ミクロンの入出力線路を直接接続して、外部回路と共振器構造との間の結合を得た。接続点は、螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放終端個所から正方形一辺分移動した個所とした。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り付け、高周波グラウンドとして機能させた。
図23および図24は、上記第2の帯域通過フィルタの通過特性を示すグラフである。図23は、通過帯域付近での狭帯域な特性を示す。図24は、通過帯域の5倍の周波数に相当する12GHzまでの広帯域な特性を示す。図23に示すように、中心周波数2.38GHz、比帯域3.1%のフィルタが実現された。通過帯域内での挿入損失の最小値は5.0dBであった。また中心周波数の二倍に相当する4.8GHz付近の周波数帯域には不要な通過帯域の存在は確認されなかった。
以上、従来技術構成の高周波回路、比較実施例、本発明の高周波回路の実施例の特性比較よって、本発明の有意な効果について証明がなされた。
Microwave Solid State Circuit Design 2nd Edition pp.275 Wiley−Interscience2003
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路のAB線に沿う概略断面図である。本発明の高周波回路は、二層の導体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図1Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。図1Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
図9Aは、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路のCD線に沿う概略断面図である。本発明の高周波回路は、三層の誘電体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図9Bは、多層誘電体基板1における最上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4のパターンを示す上面図である。図9Cは、多層誘電体基板1における中位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。図9Dは、多層誘電体基板1における最下位の導体配線層の内部面8上に形成される螺旋導体配線9のパターンを示す上面図である。
図10Aは、本発明の第3の実施形態に係る高周波回路のEF線に沿う概略断面図である。第3の実施形態に係る高周波回路は、二層の誘電体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図10Bは、多層誘電体基板1における最上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。図10Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す図である。
図11Aは、本発明の第4の実施形態に係る高周波回路のGH線に沿う概略断面図である。第4の実施形態に係る高周波回路は、二層の導体配線層を有する多層誘電体基板1に形成される。図11Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4,14のパターンを示す上面図である。図11Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5,15のパターンを示す上面図である。
図12Aは、本発明の第5の実施形態に係る高周波回路のIJ線に沿う概略断面図である。なお、IJ線に沿う断面図上では、入出力線路12,17は、見えないが、図12Aでは、断面図に入出力線路12,17を投影させて表記している。図12Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4,14および入出力線路12,17のパターンを示す上面図である。図12Cは、多層誘電体基板1における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5,15のパターンを示す上面図である。
本発明者は、第1の実施形態に係る実施例となる高周波回路を作成して共振特性を測定した。図13A〜Cは、測定に用いた評価用高周波回路の構造概略を示す図である。図13Aは、評価用高周波回路のKL線に沿う断面概略図である。なお、図13Aでは、入出力線路12を投影させて表記している。図13Bは、多層誘電体基板1における上位の導体配線層の最表面2上に形成される螺旋導体配線4および入出力線路12のパターンを示す上面図である。図13Cは、多層誘電体基板における下位の導体配線層の内部面3上に形成される螺旋導体配線5のパターンを示す上面図である。
次に、本発明者は、第1の実施例に、更に厚さ130ミクロンのRT/Duroid基板を追加層として表面に張り合わせ三層の誘電体基板を回路基板として使用した第2の実施形態に係る実施例となる高周波回路を作製した。最表面を含む三層の導体配線層に、厚さ40ミクロンの銅配線からなる等価な螺旋導体配線をそれぞれ形成し、積層螺旋導体配線共振器構造を作製した。螺旋導体配線の形状は、第1の実施例と同様である。第1の実施例と同様に、最表面に形成したプローブ構造により、共振器の基本共振周波数とQ値、および二次の共振周波数とQ値を見積もった。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り、高周波グラウンドとして機能させた。
第3の実施形態に係る実施例の高周波回路のベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)である。当該高周波回路は、ベース基板と同材の厚さ130ミクロンの追加基板をベース基板に積層することによって、二層の多層誘電体基板として構成されている。表面と内部導体層とには、導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンによって一辺900ミクロンの正方形の最外郭形状を有する1.5回転の巻き数の螺旋導体配線が二層積層されている。これによって、積層螺旋導体配線共振器が構成される。多層誘電体基板の最上面には、幅400ミクロンの入出力線路が形成されている。図18は、螺旋導体配線と入出力線路とを直接接続した第3の実施形態の実施例に係る高周波回路に対して、入出力線路から給電をした場合の反射強度の周波数特性を示すグラフである。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り、高周波グラウンドとして機能させた。上面の螺旋導体配線に対する接続点13の相対位置は、図10Bに示した位置と同一とした。
第4の実施形態に係る実施例の高周波回路のベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)である。当該高周波回路は、ベース基板と同材の厚さ130ミクロンの追加基板をベース基板に積層することによって、二層の多層誘電体基板として構成されている。表面と内部導体層とには、導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンによって一辺2500ミクロンの正方形の最外郭形状を備えた2.5回転の巻き数の螺旋導体配線を二層積層した積層螺旋導体配線共振器が二つ構成されている。本発明者は、距離を介して二つの積層螺旋導体配線共振器を配置した場合の、積層螺旋導体配線共振器の基本共振周波数の分離による両共振器間の結合度を見積もった。なお、多層誘電体基板の裏面には、全面に銅導体貼り、高周波グラウンドとして機能させた。結合した共振器間の結合度は、基本共振周波数の偶モードおよび奇モードへの分離量より計算することが可能である。図20は、両共振器の配置間隔を変化させた場合の結合度を示すグラフである。図20には、基本共振周波数が結合により分離した偶モードおよび奇モードの二つの共振周波数の変化も示した。
第5の実施形態に係る実施例として、二つの積層螺旋導体配線共振器を用いた第1の帯域通過フィルタを作製した。ベース基板は、厚さ640ミクロンのRT/Duroid基板(誘電率10.2、誘電正接0.003)であるとした。追加基板は、ベース基板と同材の厚さ130ミクロンであるとした。これによって、二層の多層誘電体基板を構成した。表面と内部導体層とに導体幅200ミクロン、面内配線間距離200ミクロン、導体厚40ミクロンの銅パターンによって一辺1800ミクロンの正方形の最外郭形状を備えた1.5回転の巻き数の螺旋導体配線を二層積層した積層螺旋導体配線共振器を二つ構成した。両積層螺旋導体配線共振器間の間隔は、比帯域6%を得るために必要な0.07の結合度に相当する300ミクロンに設定した。両積層螺旋導体配線共振器を構成する上面の螺旋導体配線同士、また下面の螺旋導体配線同士の螺旋回転方向は同一とした。両積層螺旋導体配線共振器の上面の螺旋導体配線の最外郭導体配線には、同一平面状に形成された幅400ミクロンの入出力線路を直接接続して、外部回路と共振器構造との間の結合を得た。接続点は、螺旋導体配線の最外郭導体配線の開放終端個所から正方形一辺分移動した個所とした。なお、多層誘電体基板の裏面には全面に銅導体を貼り付け、高周波グラウンドとして機能させた。
4,5,9,14,15 螺旋導体配線
12,17 入出力線路
Claims (14)
- 少なくとも二以上の導体配線層を有する多層誘電体基板に形成された高周波回路であって、
第1の導体配線層上に形成された少なくとも一回以上の巻き数を有する第1の螺旋導体配線と、
前記第1の螺旋導体配線と導通することなく前記第1の導体配線層とは異なる第2の導体配線層上に形成された少なくとも一回以上の巻き数を有する第2の螺旋導体配線とを備え、
前記第1の螺旋導体配線と前記第2の螺旋導体配線とは、高さを違えて重なっており、
前記第1の螺旋導体配線の巻き方向と前記第2の螺旋導体配線の巻き方向とは、反対向きであることを特徴とする、高周波回路。 - 前記多層誘電体基板は、三以上の導体配線層を有しており、
前記第1および第2の螺旋導体配線と導通することなく前記第1および第2の導体配線層とは異なる少なくとも一以上の第3の導体配線層上に形成された少なくとも一回以上の巻き数を有する少なくとも一以上の第3の螺旋導体配線をさらに備え、
前記少なくとも一以上の第3の螺旋導体配線は、前記第1および第2の螺旋導体配線と高さを違えて重なっており
前記第1〜第3の螺旋導体配線の内、互いに隣接する螺旋導体配線同士は、互いに反対向きの巻き方向を有することを特徴とする、請求項1に記載の高周波回路。 - 各螺旋導体配線は、それぞれの螺旋の中心が一致するようにお互いを重ね合わせたときにそれぞれの外縁が一致するように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の高周波回路。
- 隣接する二つの螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所は、螺旋の中心から見て逆方向に位置するように、配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の高周波回路。
- 前記第1〜第3の螺旋導体配線のいずれかの最外郭導体配線の一部に直接接続された入出力線路をさらに備える、請求項2に記載の高周波回路。
- 前記多層誘電体基板に形成されており、前記第1〜第3の螺旋導体配線によって構成される積層螺旋導体配線共振器と同様の構成を有する少なくとも1以上の積層螺旋導体配線共振器をさらに備え、
各積層螺旋導体配線共振器は、隣接して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の高周波回路。 - 前記積層螺旋導体配線共振器の内、少なくとも一つは
前記第1の導体配線層上に前記第1の螺旋導体配線に隣接して形成されており、前記第1の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第4の螺旋導体配線と、
前記第2の導体配線層上に前記第2の螺旋導体配線に隣接して形成されており、前記第2の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第5の螺旋導体配線と、
前記第3の導体配線層上に前記第3の螺旋導体配線に隣接して形成されており、前記第3の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する少なくとも一以上の第6の螺旋導体配線とを含み、
前記第4〜第6の螺旋導体配線は、互いに高さを違えて重なっている、請求項6に記載の高周波回路。 - 各積層螺旋導体配線共振器にそれぞれ結合する複数の入出力線路をさらに備える、請求項6に記載の高周波回路。
- 前記第1および第2の螺旋導体配線は、それぞれの螺旋の中心が一致するようにお互いを重ね合わせたときにそれぞれの外縁が一致するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の高周波回路。
- 前記第1の螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所と前記第2の螺旋導体配線における最外郭導体配線の開放終端個所とが前記第1の螺旋導体配線における螺旋の中心から見て逆方向に位置するように、前記第1および第2の螺旋導体配線は、配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の高周波回路。
- 前記第1または第2の螺旋導体配線の最外郭導体配線の一部に直接接続された入出力線路をさらに備える、請求項1に記載の高周波回路。
- 前記多層誘電体基板に形成されており、前記第1および第2の螺旋導体配線によって構成される積層螺旋導体配線共振器と同様の構成を有する少なくとも1以上の積層螺旋導体配線共振器をさらに備え、
各積層螺旋導体配線共振器は、隣接して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の高周波回路。 - 前記積層螺旋導体配線共振器の内、少なくとも一つは、
前記第1の導体配線層上に前記第1の螺旋導体配線に隣接して形成されており、前記第1の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第7の螺旋導体配線と、
前記第2の導体配線層上に前記第2の螺旋導体配線に隣接して形成されており、前記第2の螺旋導体配線と同じ巻き方向を有し、かつ少なくとも一回以上の巻き数を有する第8の螺旋導体配線とを備え、
前記第7の螺旋導体配線と前記第8の螺旋導体配線とは、高さを違えて重なっている、請求項12に記載の高周波回路。 - 各積層螺旋導体配線共振器にそれぞれ結合する複数の入出力線路をさらに備える、請求項12に記載の高周波回路。
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