JPWO2004072158A1 - 高分子複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

熱可塑性樹脂中に層状無機化合物がサブミクロンからナノメートルオーダーで分散してなる機械的性質や耐熱性などに優れる高分子複合材料である。熱可塑性樹脂と、水及び/又は有機溶媒からなる分散媒で膨潤させた層状無機化合物とを、せん断混錬装置を用いて、前記熱可塑性樹脂の溶融温度未満であって、かつ前記分散媒の沸点を超えない温度範囲で混錬したのち、前記分散媒の沸点以上の温度まで昇温しながら混錬する製造方法であり、かかる製造方法により所望特性を備えた層状無機化合物を含有する高分子複合材料が得られる。

Description

技術の分野
本発明は、層状無機化合物を含有する熱可塑性樹脂からなる高分子複合材料を製造する方法及び該方法により製造される高分子複合材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂中に層状無機化合物がサブミクロンからナノメートルオーダーで分散してなる高分子複合材料を製造する方法、及びその高分子複合材料に関する。
従来から、熱可塑性樹脂をはじめとする高分子化合物の諸特性、特に機械的特性を改良するために、ガラス繊維、タルク、マイカ、クレーなどの無機フィラーを配合することが行われている。そのなかで、近年、熱可塑性樹脂に層状無機化合物をサブミクロンからナノメートルオーダーで微分散させてなる高分子複合材料が注目されている。例えば、層状無機化合物の代表例として、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物を挙げることができる。これらは、厚さ1nm程度の単位層が数百から数千程度積層凝集した構造を持ち、水和性を有しているため、水分子の進入によって無限に膨潤し、特に希薄水溶液中では大部分が単位層にまで分離することが知られている。
このように、層状構造の層間が剥がれ、数層単位または単位層に分離すれば、アスペクト比(その最長軸と最短軸の長さの比)および比表面積が著しく大きくなり、よって、このような状態で層状無機化合物を樹脂中に微分散させることができれば、顕著な補強効果を付与することができる。このような高分子複合材料は、従来の無機フィラーを充填した複合材料に比べ、少量でも高い弾性率や耐熱性を発現できるばかりでなく、熱可塑性樹脂の種類によっては、ガスバリヤ性、制震性、耐疲労性、耐薬品性、難燃性などの性能も付与されることが報告されている。また、ガラス繊維の代替も可能であってリサイクルも容易になることから、環境問題の見地からも注目されている。しかしながら、これらの層状無機化合物は凝集力が強く、また多くの場合、熱可塑性樹脂との親和性が弱いために、実際上、熱可塑性樹脂中に該層状無機化合物を微分散させることは困難である。例えば、単に層状無機化合物と樹脂とを溶融混練するだけでは多数の単位層が積層凝集したブロック状粒子として分散するに過ぎず、少量の配合割合では機械的強度や耐熱性などの改善効果は充分に得られない。
層状無機化合物の分散性を改良するために、これまでにも層間重合法や溶融混練法などの種々の技術が提案されている。例えば、特開昭63−215775号公報は、層状無機化合物を4級アンモニウム塩などで代表される有機カチオンで有機化処理したのち、層間にモノマーを導入し層間で重合反応させる方法を開示し、また、特開平8−302062号公報は、有機化処理した層状無機化合物を有機溶媒中に無限膨潤分散させ、これと熱可塑性樹脂とを溶融混練する方法を開示している。また、特開平9−217012号公報は、有機化処理した層状無機化合物と熱可塑性樹脂とを高せん断力の下で溶融混練する方法を開示し、さらに特開平9−183910号公報は、層状無機化合物を水及び/又は有機溶媒で膨潤させたものもしくは有機化処理した層状無機化合物を有機溶媒で膨潤させたものを、特定の条件で溶融混練する方法を開示し、特開2000−239397号公報は、熱可塑性樹脂、多量の水又はプロトン供与体を含む溶媒、層状無機化合物及びその分散剤とを、密閉状態下でその熱可塑性樹脂の融点温度以上の温度で接触させ混練する方法を開示している。また、特開2002−155208号公報及び特開2002−234948号公報は、層状無機化合物を水又はプロトン供与体を含む分散媒に分散させ、これに有機化剤を添加してなる有機化層状無機化合物の分散液を調整したのち、さらに、脱分散媒処理によりある特定量の分散媒を保持したケーキ状有機化層状無機化合物とし、これと熱可塑性樹脂とを溶融混練する方法を開示している。しかしながら、一般に重合法においては、設備コストが莫大になるばがりか多品種の製造対応には不向きであり、しかも、重合反応及び制御に長時間を要して効率的かつ経済的に製造することが困難であり、特に層状無機化合物の含有量が多くなると、製造効率はますます低くなり、分散性も不均一化する傾向があった。また、溶融混練法においては、汎用の押出機等を使用するため多品種生産が可能であり設備コストも低減できるものの、樹脂との親和性を高めるために予め層状無機化合物に対し有機化処理、精製乾燥処理、粉砕処理などを行う必要があり、結果として製造プロセスが煩雑となり、コストおよび時間がかかるという問題があった。さらに、水や有機溶媒で膨潤化処理した場合には、溶融混練時に層状無機化合物の二次凝集が起こることがあり、また吐出量が低減するなどの生産性の問題も抱えていた。一方、特開2002−347020号公報では、粒径が0.1μm未満の超微粉体と熱可塑性樹脂とを、シリンダとこのシリンダに同心で内装される複数の回転円盤及び固定円盤より構成される筒状の石臼式混練装置を用いて、原料樹脂の半固体状態から溶融状態の領域で混練することにより、超微粉体の二次粒子を解砕しナノメートルオーダーの一次粒子として樹脂中に分散する方法が提案されている。この装置を使用すれば、原料樹脂が半固体状態であっても回転円盤と固定円盤の間隙でのずりせん断作用による石臼効果によって混練できるため、汎用の二軸押出機よりも超微粉体の解砕効率は向上するが、超微粉体が層状無機化合物のような一次粒子がアスペクト比の高い超薄層体の場合には、層状無機化合物の層内破壊を少なくかつ均一に解砕することは困難であり、しかるに、層状無機化合物の樹脂中への分散性を向上させようとするには、混練を複数回繰返すマルチパス方式やシリンダ及び円盤枚数を増設するなどの工夫が必要であり、生産性が大幅に低下するという問題がある。加えて、層状無機化合物の層内破壊によりアスペクト比が小さくなり、補強効果が低減するという問題もある。
本発明の課題は、層状無機化合物がサブミクロンからナノメートルオーダーで分散してなる機械的性質や耐熱性などに優れる高分子複合材料を、汎用性のある簡便な工程で生産性よく、工業的に有利に製造する方法及び上記特性を有する高分子複合材料を提供することにある。
本発明者らは、すでに特願2001−390058号において、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)製廃棄ボトルの粉砕品の再生方法として、PETの溶融温度未満の温度でせん断混練処理することが効果的であることを提案している。これは、廃棄PETボトル粉砕品が、溶融温度よりも低い温度でも、従来の二軸押出機等の汎用の混練装置を用いて十分に混練可能なことを見出したことによる。ここで得た知見の一つとして、原料樹脂の形状及び性状が混練の可能性の幅を広げる重要な因子になっているということ、具体的には、同じPETでもバージンPETのようにペレット状で結晶状態にある場合には、このような融点未満の温度で混練すること(以下、低温混練ということがある)は困難であるが、廃棄PETボトル粉砕品のようにフレーク状で非晶状態にあるような場合には、汎用の混練装置を用いても容易に混練が可能であったことが挙げられる。このことは、他の樹脂での低温混練の可能性を示唆するものとなった。さらに、本発明者らは、この知見をPETと類似の熱的挙動を示すポリ乳酸系樹脂に応用展開し、ポリ乳酸系樹脂に層状無機化合物を微分散させる技術として、水又は水系溶媒で膨潤させた層状無機化合物とポリ乳酸とを低温混練する方法(特願2002−189066号)を提案した。ここで得られた知見としては、PET同様にポリ乳酸系樹脂においても、その形状及び性状を変更すれば低温混練が容易になること、そして、層状無機化合物を分散させるには溶融混練よりも低温混練のほうが効果的であり、かつ、層状無機化合物を水または水系溶媒で膨潤処理させた状態で添加すると層状無機化合物の分散性がさらに向上することなどであった。本発明者らは、これらの知見をさらに発展させ、広範な熱可塑性樹脂に適用可能で層状無機化合物がサブミクロンからナノメートルオーダーで分散してなる高分子複合材料を簡便な工程で廉価に製造する方法について鋭意研究を重ね、ついに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂と、水及び/又は有機溶媒からなる分散媒で膨潤させた層状無機化合物とを、せん断混練装置を用いて、前記熱可塑性樹脂の溶融温度未満、かつ前記分散媒の沸点を超えない温度範囲で混練して、層状無機化合物を剥離・分散させ(層間剥離・分散工程)、次に該分散媒の沸点以上の温度まで昇温しながら混練して、分散媒を蒸散除去させつつ層状無機化合物の分散性を均一化させる(脱分散媒・分散均一化工程)ことを特徴とする高分子複合材料の製造方法を提供するものである。また、本発明は、熱可塑性樹脂と、その100重量部当り、層状無機化合物0.01〜100重量部を含む高分子複合材料において、その層状無機化合物が平均厚さ約0.5μ以下、最大厚さが約1μ以下で微分散している高分子複合材料をも提供するものである。かかる高分子複合材料は、優れた機械的物性、耐熱性及び成形性などを具備する。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、常温で固体である熱可塑性の高分子化合物であれば特に限定はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。さらに、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム類や、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、ポリプロピレンとエチレン−プロピレンランダム共重合体とのブレンド、ポリアミドエラストマー等のハードセグメント及びソフトセグメントよりなる各種熱可塑性エラストマーを挙げることができる。これらは各種官能基が導入されたものであってもよく、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、非相溶性の樹脂を2種以上組み合わせる場合には、従来公知の相溶化剤を配合することができる。
また本発明においては、前記熱可塑性樹脂の形状は粉体状、粒子状、ペレット状、チップ状、フレーク状、シート状、フィルム状、繊維状、短冊状、不定形状など特に制限はないが、常温でも硬質な樹脂の場合には、低せん断力でも効率よく変形を受け易い薄肉で高アスペクト比を有する形状、例えば、フレーク状、チップ状、シート状、フィルム状、繊維状、短冊状などのような形態のものが好ましい。ここでアスペクト比とは、その形状の最長軸と最短軸の長さの比(アスペクト比=最長長さ/最短長さ)を意味し、好ましくは3以上、より好ましくは5以上である。このような形状に加工する方法に特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂の原体がペレット状態にある場合、予め押出機等で一旦溶融させたのち、吐出した溶融ストランドを冷却水中においてローラー等で押し潰しながら冷却し、これを通常のペレタイザーでカッティングすることによって、あるいは、ダイ孔形状がスリット状や長方形または長楕円形状の扁平形状を有する押出機等で溶融押出し、水冷及びペレタイズすることによって、扁平形状に容易に変えることができる。また、プレス成形やロール成形によってシート状やフィルム状に加工してもよい。なお、これらの大きさは、混練装置の種類、大きさなどによって適宜サイズに切断して使用すればよい。
本発明に用いられる層状無機化合物は、主として粘土鉱物、具体的には層状構造を有する珪酸塩鉱物などで、多数のシート(例えば、酸化ケイ素の四面体シートや金属水酸化物の八面体シート)が積層された構造からなり、水及び/又は有機溶媒中で膨潤する性質を有するものであれば、特に限定されない。このようなものとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、バーミキュライト、カオリナイト、ディッカイト、ハロサイト、パイロフィロライトなどが挙げられる。また、膨潤性マイカ、タルク、リン酸ジルコニウムなども用いることができる。これらの層状無機化合物はその置換体や誘導体であってもよく、また、天然、合成品、加工処理品のいずれでもよい。さらに、これらを単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも、膨潤しやすい点から、モンモリロナイト、バーミキュライト、膨潤性マイカが好ましい。
本発明においては、層状無機化合物の層間を膨潤させ層間剥離を助長し熱可塑性樹脂への分散性を向上させるため、予め水及び/又は有機溶媒からなる分散媒で膨潤させた層状無機化合物が使用される。ここで層状無機化合物の膨潤に用いることができる水以外の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、芳香族化合物またはプロトン供与体を含む溶媒が好ましい。例えば、芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、あるいは同族体として、アルキルベンゼン、ピリジン、キノリン等が挙げられる。また、プロトン供与体を含む溶媒としては、脂肪族アルコール及び又はそのエーテルが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルエチルエーテル等が挙げられる。その他、エチレングリコールモノアセチレート、エチレングリコールジアセチレート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン等も用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの分散媒は、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により該分散媒以外の溶媒、添加剤を含んでもよい。
ここで分散媒は、使用する熱可塑性樹脂の種類によって適宜選択されるが、目安として、使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の沸点を有する分散媒を選択するのが好ましい。より好ましくは熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上で溶融温度以下の範囲に沸点を有する分散媒である。例えば、前記熱可塑性樹脂のなかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリアミド、ポリアセタール、各種ゴム類及び熱可塑性エラストマー等のガラス転移温度が100℃以下の熱可塑性樹脂、または、ガラス転移温度が100℃を超える熱可塑性樹脂であっても、2種類以上の組み合わせで、そのうちの少なくとも1種のガラス転移温度が100℃を超えない熱可塑性樹脂組成物の場合には、自然界に多量に存在し、かつ安全衛生上無害である水(沸点100℃)がもっとも好適に使用できる。また、使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃を超える場合には、例えば、トルエン(沸点111℃)、キシレン(沸点140℃)、ブタノール(沸点117℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、エチレングリコール(沸点198℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)などの沸点が100℃を超える溶媒の中から適宜選択すればよい。
層状無機化合物を分散媒で膨潤調整する方法に特に制限はなく、例えば、層状無機化合物をミキサーやすり鉢で攪拌しながら、所定量の分散媒を少量ずつ滴下添加したり、噴霧器等を用いて霧状にして添加したり、蒸気で蒸らす方法を用いてもよい。逆に、分散媒の方に層状無機化合物を添加攪拌する方法であってもよい。この場合も加熱攪拌する方法、超音波攪拌する方法、震とう攪拌する方法など任意の方法を用いることができる。また、分散媒に層状無機化合物を少量添加して分散させたのち、これを脱溶媒濃縮処理によって所望の濃度に調整してもよい。ここで、最終的に調整された本発明に係る分散媒で膨潤させた層状無機化合物の層状無機化合物と分散媒の割合は、重量比で層状無機化合物:分散溶媒が、1:0.2〜1:100、好ましくは1:0.3〜1:50、より好ましくは、1:0.5〜1:20である。1:0.2未満では層状無機化合物の膨潤が不十分で樹脂中への分散効果が小さく、1:100を超えると、脱分散媒工程に時間がかかり生産性が低下する。
さらに、本発明においては、層状無機化合物と熱可塑性樹脂との親和性向上を図る目的で、公知の有機化剤を含有した層状無機化合物を用いることができる。有機化剤としては、例えば(1)層状無機化合物表面と親和性のある官能基を有する化合物、(2)スルホン酸の金属塩、ホスホン酸の金属塩、カルボン酸の金属塩、(3)オニウム塩、(4)水溶性高分子、などの中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。なお、(4)の水溶性高分子は有機化剤としてのみではなく、本発明にかかる高分子複合材料を構成する熱可塑性樹脂として用いることができるのは言うまでもない。また、この水溶性高分子は、水膨潤性層状無機化合物との親和性に優れるため、層状無機化合物を高濃度で微分散させることが可能で、マスターバッチとして任意量の層状無機化合物を含ませる場合にも便利である。
前記(1)にかかる化合物の官能基としては、例えば、酸無水物基、カルボン酸基、水酸基、エポキシ基、チオール基、エステル基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ニトロ基、アミノ基、オキサゾリン基、イミド基、シアノ基、イソシアネート基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、ベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環などの芳香環が挙げられる。これらの官能基を有する化合物であれば特に限定なく使用することができる。前記(2)の化合物としては、例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアリールスルホン酸塩、ドデシルホスホン酸ナトリウム等のアルキルホスホン酸塩、アルキルベンゼンホスホン酸ナトリウム等のアルキルアリールホスホン酸塩、ベンゼンホスホン酸ナトリウム等のアリールホスホン酸塩等が挙げられる。また、金属塩における金属としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどが好ましい。前記(3)のオニウム塩としては、例えば、オクチルアンモニウムクロライド、オクチルアンモニウムブロマイド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、オクタデシルアンモニウムクロライド、オクタデシルアンモニウムブロマイド、アミノドデカン酸塩等のアンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。前記(4)の水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリビニルアルコール、またメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸等のリグニン誘導体、キトサン塩酸塩等のキトサン誘導体、さらにはポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンジルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルベンジルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリ(4−ビニルピリジン)等が挙げられる。また、これら以外の物質であっても、層状無機化合物表面に吸着または結合可能な機能を有する物質であれば、有機化剤として用いることができる。例えば、無機フィラーに通常一般に用いられるシラン系カップリング処理剤、チタネート系カップリング処理剤、アルミナ系カップリング処理剤などの表面処理剤を挙げることができる。なかでもシラン系カップリング処理剤が好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機化剤としては、分子量が10〜1,000,000の範囲の有機化合物を用いることができる。分子量が10より小さい化合物では、層状無機化合物と樹脂との混練時に揮発するおそれがあり、1,000,000より大きい化合物では、該混練時の粘性が高くなりすぎ、均質な混合ができなくなるおそれがある。
有機化層状無機化合物を作成する方法に特に限定はないが、一般に、分散媒に原料の層状無機化合物を攪拌分散させたのち、有機化剤を加えることによって、インターカレーションにより、該層状無機化合物を有機化することができる。この操作により、層状無機化合物の層間に有機化剤が入り込み、層状無機化合物全体として膨潤する。ここで、インターカレーションとは、層状物質の層間に電子供与体あるいは電子受容体が電荷移動力によって挿入される現象を言う。この際、分散溶液中の層状無機化合物の濃度は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の範囲で選定される。層状無機化合物の濃度が0.01重量%未満では、後工程での分散媒の除去に時間がかかるばかりか、分散溶液を調整する容器が大きくなって設備面でのコストが高くなり、好ましくない。また、層状無機化合物の添加量が20重量%を超えると、溶液の粘度が上がり攪拌が困難になり、有機化も不充分になるおそれがある。一方、有機化剤の添加量としては、層状無機化合物100重量部に対し、通常0.1〜5000重量部、好ましくは0.3〜1000重量部である。有機化剤の添加量が0.1重量部未満では、熱可塑性樹脂と層状化合物との親和性向上効果が得られないおそれがある。また、5000重量部を超えると、層状無機化合物に吸着、結合していないものが存在し、高分子複合材料の物性低下を招くおそれがある。
上記有機化層状無機化合物含有分散溶液は、遠心分離機やフィルタープレスにかけて脱溶媒処理を行い、重量比で層状無機化合物原体:溶媒が、1:0.2〜1:100になるように調整すれば、そのまま使用することができる。また、運搬、保管などのために精製乾燥処理を行い粉体状の有機化層状無機化合物としたのち、これに分散媒を加え、同様に、重量比で層状無機化合物原体:溶媒が、1:0.2〜1:100になるように調整して用いることもできる。さらに、市販の粉体状有機化層状無機化合物も同様な分散媒添加処理・調整を行い好適に使用することができる。このような粉体状の有機化層状無機化合物の市販品を例示すると、モンモリロナイトを第4級アンモニウムイオンで変性させた(株)ホージュン製の「エスベン」、「オルガナイト」(商品名)、同様に合成スメクタイトを第4級アンモニウムイオンで変性させたコープケミカル(株)製「ルーセント」(商品名)などがある。
層状無機化合物の熱可塑性樹脂との親和性向上を図る手段としては、前述の様に層状無機化合物側を有機化剤で化学修飾するばかりでなく、逆に熱可塑性樹脂側を化学修飾する方法であっても差し支えない。層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒の種類に応じて、該分散媒と親和性のある官能基を熱可塑性樹脂に導入することによって層状無機化合物との親和性向上を図ることができる。あるいは、熱可塑性樹脂に、これと同種の又はこれと相溶性のある他種の熱可塑性樹脂に膨潤層状無機化合物の分散媒と親和性のある官能基を導入した官能基変性熱可塑性樹脂を一部添加する方法でもよい。例えば有機化処理されていない水膨潤層状無機化合物を使用した場合、そしてその対象とする熱可塑性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体などのガラス転移点温度が100℃以下の疎水性熱可塑性樹脂とした場合、かかる熱可塑性樹脂に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、スルホ基、エポキシ基、イミノ基、酸無水物基などの各種親水基から選ばれた少なくとも一つの官能基を導入することによって、あるいは、疎水性熱可塑性樹脂に、これと同種の又はこれと相溶性のある他種の熱可塑性樹脂にかかる親水基から選ばれた少なくとも一つの官能基を導入した官能基変性熱可塑性樹脂を一部添加することによって、水膨潤層状無機化合物との親和性を図ることができる。
層状無機化合物の熱可塑性樹脂への配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、層状無機化合物原体として0.01〜300重量部、好ましくは0.05〜100重量部、より好ましくは0.1〜50重量部になるように選ぶのがよい。配合量が0.01重量部より少ないと、高分子複合材料の機械的物性および耐熱性などの向上効果が十分ではなく、配合量が300重量部より多くなると、高分子複合材料の流動性が著しく低下し成形加工性が損なわれるばかりでなく、混練時の装置にかかる負荷が過大となり装置が停止してしまう恐れがあるので好ましくない。
次に、本発明にかかる高分子複合材料の製造方法を説明する。本発明で用いられる混練装置は、上記原材料をせん断混練りできるものであって、かつ加熱及び冷却の温度調節手段を有するものであれば特に限定はなく、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー、ローラー式混練機、石臼式混練機等を挙げることができる。これらは1種類の装置を単独で使用してもよく、2種類以上の装置を組み合わせて使用することもできるが、どの混練装置を使用するかは、熱可塑性樹脂の種類・性質、組み合わせ、形状などによって適宜選択すればよく、なかでも、工業的に広く用いられている二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ローラー式混練機を好適に使用することができる。通常、二軸押出機やバンバリーミキサーのような外殻を有する混練装置の温度調節はシリンダやチャンバーなどの外殻部のみで制御されるが、本発明においては、せん断発熱による樹脂の温度上昇を制御する目的で、スクリューやローター等の内部の回転軸側にも冷却手段を有する混練装置も使用することができる。さらに、混練中に排出される分散媒を排気及び/又は排液する目的で、ベント、スリットバレル、排液口、排液ポンプなどの排気・排液手段を有するものが好ましく使用できる。
本発明は、かかる混練装置を用いて、まず、第一混練工程として、熱可塑性樹脂と水及び/又は有機溶媒からなる分散媒で膨潤させた層状無機化合物(以下、分散媒を含有した膨潤層状無機化合物ということがある)とを、その熱可塑性樹脂の溶融温度未満であって、かつその分散媒の沸点を超えない温度範囲で混練を行う。すなわち、熱可塑性樹脂と分散媒を含有した膨潤層状無機化合物とを、その分散媒の沸点未満の温度で接触させ、該層状無機化合物が分散媒を保有した状態で、熱可塑性樹脂の溶融温度未満の低温で混練することを特徴とする。換言すれば、第一混練工程は熱可塑性樹脂と層状無機化合物及び分散媒(溶媒)とが共存する状態を保持しながらせん断混練する工程である。この工程では、マトリックスとなる熱可塑性樹脂相が固体から半溶融状態で混練されるため、溶融混練状態よりも高いせん断力が作用し、しかも層状無機化合物は分散媒によって柔軟かつ剥離し易い状態になっているため、層状無機化合物の層内破壊が緩和されつつ層間剥離が効率的になされ、層状無機化合物の樹脂中への剥離分散が促される(層間剥離・分散工程)。このとき、同時に搾り出し効果およびせん断発熱によって分散媒が層状無機化合物から除去されていく。この層間剥離・分散工程における混練温度の下限については、特に制限はないが、通常は、室温以上、好ましくは熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上である。熱可塑性樹脂相がガラス転移温度以上のゴム状粘弾性領域にあるほうが、混練装置への負荷が少なく、分散媒も搾り出し易い。また、熱可塑性樹脂と分散媒を含有した膨潤層状無機化合物の接触方法としては、両者が分散媒の沸点未満の温度で接触できればよく、熱可塑性樹脂と分散媒を含有した膨潤層状無機化合物とを室温で予め一括混合してもよいし、別供給で、予め熱可塑性樹脂を分散媒の沸点未満の温度で先練りして、そこに分散媒を含有した膨潤層状無機化合物を加えてもよい。また、熱可塑性樹脂と層状無機化合物の膨潤調整に使用した分散媒との親和性が良好な場合、熱可塑性樹脂にもこの分散媒と同じ溶媒を予め含有させてもよい。熱可塑性樹脂にかかる溶媒を含有させる方法に特に限定はなく、例えば、熱可塑性樹脂を該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ溶媒の沸点未満の温度で該溶媒中に浸漬させる方法、熱可塑性樹脂を溶媒の蒸気を含有する雰囲気に放置する方法などが挙げられる。熱可塑性樹脂側にも膨潤層状無機化合物と同じ分散媒を保有させて混練することにより、層状無機化合物の熱可塑性樹脂への分散効率の向上を図ることができる。次に、本発明にかかる方法では、第二混練工程として、第一混練工程を経た混練物を該分散媒の沸点以上の温度まで昇温しながら混練を行う。すなわち、層状無機化合物の剥離および熱可塑性樹脂中への拡散が進んだ状態で、分散媒の沸点以上の高温に温度勾配をかけて混練することを特徴とする。この工程では、分散媒が搾り出し作用および温度上昇による蒸散作用によって混練系内から次第に除去されていくため、剥離した層状無機化合物がマトリックス内に取り残され、分散性の均一化が促される(脱分散媒・分散均一化工程)。温度勾配の掛け方に特に制限はなく、連続的であっても不連続的であってもよく、その勾配は使用する分散媒の種類や含有量、混練時間などを加昧して任意に設定することができる。但し、分散媒が急激に蒸発するような温度勾配は、層状無機化合物の凝集を招くおそれがあるので、避けるようにしたほうがよい。ここで、到達混練温度は分散媒の沸点以上の温度であって、熱可塑性樹脂の熱分解温度未満の温度範囲であればよく、熱可塑性樹脂の溶融温度未満であっても溶融温度以上であってもよい。また、第一混練工程および第二混練工程にかかる混練装置は、同一の混練装置であってもそれぞれ別の混練装置であってもよく、また、2種類以上の混練装置を組み合わせて用いてもよい。なお、低温混練にあっては、前記混練条件を適宜操作することによって、熱可塑性樹脂が未溶融から半溶融の状態で混練することができるが、せん断発熱を利用することによって混練物を一時的に溶融状態にすることも可能であり、また、その溶融状態にある時間を制御することも可能である。このような低温混練によって、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の加水分解や熱分解などの劣化・変質を抑制できるというメリットもある。
本発明によれば、例えば一軸押出機、二軸押出機などの連続式混連装置を用いる場合、シリンダの温度設定、スクリューのデザイン設計及び回転数、それにベントや廃液口などの位置関係を適宜配置することによって、上記層間剥離・分散工程から脱分散媒・分散均一化工程までを、押出機の上流から下流方向に沿って、連続的かつ効果的に行うことができる。例えば、熱可塑性樹脂と分散媒を含有した膨潤層状無機化合物からなる原材料を上流ホッパーからの一括供給として、上流部と下流部それぞれにニーディングゾーン(混練領域)を設け、さらに、上流部と下流部の間および下流ニーディングゾーンとダイヘッドの間の2箇所に脱分散媒用のベントを設置し、温度設定を、上流ニーディングゾーンを熱可塑性樹脂の溶融温度未満かつ分散媒の沸点未満の温度に、それ以降下流ニーディングゾーンまでの間を該分散媒の沸点未満から沸点以上の温度に温度勾配をかけて設定し、そして、ダイヘッド部を熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に設定して押出混練することにより、上流部で前記層間剥離・分散工程が、下流部で前記脱分散媒・分散均一化工程が連続的になされ、しかも、混練物は溶融ストランドとしてダイヘッドから引き取り公知の方法でペレタイズすることができる。脱分散媒量が多い場合には、押出機シリンダ部に適宜排水溝やスリットバレルなどの排液用の孔を設けることによって排液効率を高めることができる。場合によっては、真空ポンプによる減圧を併用し、強制排気を行ってもよい。
バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーなどの密閉型バッチ式混練装置を用いて混練する場合は、例えば、混練装置の温度を使用する熱可塑性樹脂の溶融温度未満かつ分散媒の沸点未満の温度に設定したのち、熱可塑性樹脂と分散媒を含有した膨潤層状無機化合物を一括または別投入して混練を行い、引き続き、該分散媒の沸点以上の温度まで適宜昇温しながら混練することによって、該分散媒を原材料投入口などから蒸散させつつ層状無機化合物をマトリックス中に均一微分散させることができる。なお、各工程の混練時間や温度勾配のかけ方は、使用する熱可塑性樹脂の種類、分散媒の種類および含有量、使用する混練装置の容量、回転数、温度調節能力などによって適宜設定される。
また、熱可塑性樹脂がポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、各種ゴム類や熱可塑性エラストマーなどの軟質系熱可塑性樹脂の場合、ローラー式混練装置も好適に使用することができる。例えば、一般の前後2ロールからなるオープンローラーを用いた場合、まず、ローラーの温度を使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上であって、溶融温度未満かつ分散媒の沸点未満の温度に設定したのち、熱可塑性樹脂と分散媒を含有した膨潤層状無機化合物を一括または別投入してロールミキシングを行い、しかるのち、ロールの温度を使用した分散媒の沸点以上の温度まで適宜昇温しながら混練を続けることによって、該分散媒を蒸散除去しつつ層状無機化合物をマトリックス中に均一微分散させることができる。また、ローラー式混練装置を用いた場合も、各工程の混練時間や温度勾配のかけ方は、使用する熱可塑性樹脂の種類、分散媒の種類および含有量、使用する混練装置の容量、回転数、温度調節能力などによって適宜設定されるが、オープンローラーでは混練状態が目視確認できるため、混練条件の調整が容易であるというメリットがある。なお、ローラー式混練装置を用いる場合には、特に使用する熱可塑性樹脂の形状は、ロール間隙に入り易い形状、すなわち、フレーク状、短冊状、シート状、フィルム状などのアスペクト比の高い形状かまたは粉体であるのが好ましいが、ゴム類や熱可塑性エラストマーのような常温でも柔軟性を有する熱可塑性樹脂の場合はこの限りではない。
本発明はまた、前記の熱可塑性樹脂と、その100重量部当り、層状無機化合物原体として0.01〜100重量部を含有し、かつその層状無機化合物が平均厚さ約0.5μ以下、最大厚さが約1μ以下で微分散してなる高分子複合材料をも提供する。このように、層状無機化合物がサブミクロンオーダー以下で分散してなる高分子複合材料は、前述の本発明の方法により、生産性よく簡便に製造することができる。
本発明における高分子複合材料には、その目的に応じて、原材料の混合時または混練時に、もしくは成形時に、従来公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、顔料、着色剤、天然繊維、各種無機粒子、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、香料、滑剤、架橋(加硫)剤、架橋(加硫)促進剤、結晶核剤、結晶化促進剤、難燃剤、発泡剤、軟化剤、防腐剤、抗菌・抗カビ剤等の各種添加剤を配合しても良い。
以下、本発明の理解を容易にするため実施例及び比較例を開示するが、本発明の精神と技術範囲を越えない限り、これら実施例によってその技術的範囲が限定されるものではない。
まず、使用した混練装置および原材料は次の通りである。
〔I〕混練装置
(a)二軸押出機:(株)日本製鋼所製TEX30α
この装置のシリンダ部は温調ブロックごとにC1〜C12の12ブロックから成り、C1部に原材料供給口を、C6及びC11部にベントを設置し、C11のベントには真空ポンプを接続した。また、スクリューのニーディングゾーンをC4〜C5及びC9〜C10の位置になるように配置した。
(b)密閉型バッチ式混練装置:東洋精機(株)製ラボプラストミル
(c)ロール式混練装置:関西ロール(株)製6インチロール
〔II〕原材料
(1)熱可塑性樹脂
ポリアミド6(PA6):宇部興産(株)製1015B、
ポリプロピレン(PP):出光石油化学(株)製J−700GP、
リサイクルPETフレーク(R−PET):市販の飲料用PETボトルを粉砕、洗浄処理した大きさ2〜5mmのクリアフレーク、
ポリ乳酸(PLA):三井化学(株)製LACEA H−100、
天然ゴム(NR):タイ国産リブドスモークドシート(RSS#4)、
スチレン−ブタジエンゴム(SBR):日本ゼオン(株)製Nipol1502、
水素添加ニトリルゴム(H−NBR):日本ゼオン(株)製Zetpol2020、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):日本ポリケム(株)製ノバテックLV540、
塩素化ポリエチレン(CPE):ダイソー(株)製MR−104、
(2)層状無機化合物
モンモリロナイト(粉体):クニミネ工業(株)製クニピアF、
水膨潤モンモリロナイト:モンモリロナイトと水とを重量比で1:1の割合で混合したもの。
有機化水膨潤モンモリロナイト:モンモリロナイト3重量部を水97重量部に攪拌分散させた後、ジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド3重量部を加えて有機化したものを脱水処理して、水分含有量を約50重量%に調整したもの。
有機化モンモリロナイト(粉体):前記有機化水膨潤モンモリロナイトを乾燥・粉砕処理したもの。
表面処理水膨潤モンモリロナイト:モンモリロナイト4重量部を水96重量部に攪拌分散させたのち、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン0.4重量部を加えて攪拌・混合したものを脱水処理して、水分含有量を約50重量%に調整したもの。
表面処理モンモリロナイト(粉体):前記表面処理水膨潤モンモリロナイトを濾過したのち、乾燥・粉砕処理したもの。
なお、各例で得られた高分子複合材料の層状無機化合物の含有率測定および分散性の評価を次に示す方法で行った。
(1)層状無機化合物の含有率
得られた高分子複合材料の層状無機化合物に由来する無機灰分率をJIS−K7052に準拠して測定し、これを層状無機化合物の含有率とした。
(2)層状無機化合物の分散性
得られた高分子複合材料の試験片の表面および割断面(液体窒素中で割断)の目視観察および電界放出型走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4500)観察から、下記判断基準にて評価を行った。
◎:電子顕微鏡を用いても積層凝集物の存在が殆ど確認できない。
○:平均的な層厚さが0.5μm以下の凝集物が若干確認できる。
×:100μm以上の目視レベルで確認できる凝集物が散在している。
まず、ポリアミド6(PA6)ペレットを孔形状がスリット状のダイヘッドを用いた二軸押出機で溶融押出(240℃)して帯状のストランドとしたのち、これをローリング、水槽冷却してカッティングすることによって、大きさが約0.5mm×6mm×8mmのフレーク状PA6(アスペクト比約16)を得た。このフレーク状PA6を大気中で室内放置後(水分率で約3%であった)、該フレーク状PA6の100重量部(水分除く)とPA6の100重量部に対しモンモリロナイト原体で3重量部となるように計量した水膨潤モンモリロナイトを混合し、これらをシリンダ温度:C2〜C5/C6〜C8/C9/C10/C11〜12/DH=60/80/100/150/220/240℃、スクリュー回転数:200min−1に設定した二軸押出機に投入して、下流ベント(C11)真空減圧下、押出混練を行った。吐出した溶融ストランドを水槽冷却したのちペレタイズしてPA6/モンモリロナイトのペレットを作製した。このペレットを用いて射出成形試験片(10×120×4mm)を作製し、JIS K7171に準拠して曲げ弾性率および曲げ強度を、JIS K7191に準拠して荷重たわみ温度(HDT)を測定した。結果を表1に示す。なお、混練の最中には、上流ベント(C6)から水蒸気が発生しているのが観察された。
ポリプロピレン(PP)ペレットを実施例1と同様の方法で溶融押出(180℃)してフレーク化したのち、このフレーク状PP100重量部とPP100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した有機化水膨潤モンモリロナイトを混合し、これらをシリンダ温度:C2〜C5/C6〜C8/C9/C10/C11〜12/DH=60/80/90/100/150/180℃、スクリュー回転数:160min−1に設定した二軸押出機に投入して、下流ベント(C11)真空減圧下、押出混練を行い、実施例1と同様にしてPP/モンモリロナイトのペレットを作製した。得られたペレットを用いて射出成形試験片を作製し、実施例1と同じ試験方法で曲げ特性および荷重たわみ温度を測定した。結果を表1に示す。この場合も、実施例1と同様に、混練の最中には、上流ベント(C6)から水蒸気が発生しているのが観察された。
リサイクルPETフレーク(R−PET)100重量部とR−PET100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した表面処理水膨潤モンモリロナイトを混合し、これらを、ダイヘッドを開放状態にして、シリンダ温度:C2〜C5/C6〜C7/C8〜C12=60/80/100℃、スクリュー回転数:200min−1に設定した二軸押出機に投入して押出混練を行い、R−PET/モンモリロナイトの混練物を作製した。混練吐出物は大きさ10〜30mmほどの不定形固形物で、これを粉砕機にかけて大きさ2〜3mm程度の細片としたのち、射出成形試験片を作製し、実施例1と同じ試験方法で曲げ特性および荷重たわみ温度を測定した。結果を表1に示す。なお、この場合は、混練の最中、上流ベント(C6)、下流ベント(C11)および吐出口からの水蒸気発生が観察された。
ポリ乳酸(PLA)ペレットをプレス機で溶融加圧、急冷処理して厚さ約0.5mmの透明シートにしたのち、これを10mm×100mm程度の短冊状に切り分け、混練前の樹脂原料とした。この短冊状PLA100重量部とPLA100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した有機化処理水膨潤モンモリロナイトを混合し、チャンバー温度:70℃、ローター回転数:80min−1に設定したラボプラストミルに投入して、トルクが安定域から上昇域に達するまで混練を続けた。その後、トルクの立ち上がりに合わせて80℃に昇温しながら2分間、さらに90℃に昇温しながら1分間混練を行い、最後に原材料供給口から蒸気が発生しなくなるまで、100℃に昇温しながら1分間混練を行った。このようにして得られたPLA/モンモリロナイトの混練物を熱プレス(200℃)にかけて、10×120×4mmの試験片を作製し、実施例1と同じ試験方法で曲げ特性および荷重たわみ温度を測定した。結果を表1に示す。
比較例1
ポリアミド6(PA6)100重量部とモンモリロナイト粉体3重量部とを二軸押出機に投入し、シリンダ温度:240℃、スクリュー回転数:200min−1の設定で溶融混練を行い、PA6/モンモリロナイトのペレットを得た。混練物の試験片作製および物性測定は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
比較例2
ポリプロピレン(PP)100重量部とPP100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した有機化モンモリロナイト粉体5重量部とを二軸押出機に投入して、シリンダ温度:180℃、スクリュー回転数:160min−1の設定で溶融混練を行い、PP/モンモリロナイトのペレットを得た。混練物の試験片作製および物性測定は実施例2と同様にして行った。結果を表1に示す。
比較例3
リサイクルPETフレーク(R−PET)100重量部とR−PET100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した表面処理モンモリロナイト粉体5重量部とを二軸押出機に投入して、シリンダ温度:280℃、スクリュー回転数:200min−1の設定で溶融混練を行い、R−PET/モンモリロナイトのペレットを得た。混練物の試験片作製および物性測定は実施例3と同様にして行った。結果を表1に示す。
比較例4
ポリ乳酸(PLA)100重量部とモンモリロナイト粉体5重量部とをラポプラストミルに投入し、チャンバー温度:200℃、ローター回転数:80min−1の設定で5分間溶融混練を行い、PLA/モンモリロナイトの混練物を得た。混練物の試験片作製および物性測定は実施例4と同様にして行った。結果を表1に示す。
天然ゴム(NR)100重量部とNR100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した水膨潤モンモリロナイトとを、チャンバー温度:50℃、ローター回転数:60min−1に設定したラボプラストミルに投入して、トルクが安定域から上昇域に達するまで混練を続けた。その後、トルクの立ち上がりに合わせて70℃に昇温しながら2分間、さらに80℃に昇温しながら1分間混練を行い、最後に原材料供給口から蒸気が発生しなくなるまで、100℃に昇温しながら1分間混練を行った。このようにして得られたNR/モンモリロナイトの混練物はモンモリロナイトの凝集物が見られない透明感のあるものであった。この混練物を6インチロールに通してシート状にしたのち、プレス機で厚さ2mmのシートを調整し、このシートについてダンベル状3号形試験片を打ち抜き引張試験を行った。なお、引張試験はJISK6251に準拠し、伸び100%、200%および300%における応力値を求めた。また、応力−歪曲線の立ち上がり接線の傾きから引張弾性率も求めた。結果を表2に示す。
熱可塑性樹脂としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を、層状無機化合物として有機化水膨潤モンモリロナイトを用いた以外は、実施例5と同様にして混練および引張試験を行った。結果を表2に示す。なお、ここで得られたSBR/モンモリロナイト混練物の外観もモンモリロナイトの凝集物が見られない透明感のあるものであった。
比較例5
天然ゴム(NR)のみを、チャンバー温度:60℃、ローター回転数:60min−1に設定したラボプラストミルに投入して5分間素練りしたのち、6インチロールを用いてシート状にした。このシートから実施例5と同じ方法で引張試験片を調整し、引張試験を行った。結果を表2に示す。
比較例6
熱可塑性樹脂としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を用いた以外は、比較例5と同じである。結果を表2に示す。
実施例5で得られたNR/モンモリロナイト混練物に、NR100重量部に対し加硫剤として硫黄を3重量部、加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P)を1重量部添加して、6インチロール(ロール温度60℃)で混練したのち、シート状に分出して、150℃で40分間プレスして厚さ2mmのシートを調整し、この加硫シートについて実施例5と同様の引張試験を行った。結果を表2に示す。
実施例6で得られたSBR/モンモリロナイト混練物に、SBR100重量部に対し硫黄2重量部、加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P)1.5重量部の割合で加えて、6インチロール(ロール温度60℃)で混練したのち、シート状に分出して、160℃で40分間プレスして厚さ2mmのシートを調整し、この加硫シートについて実施例6と同様の引張試験を行った。結果を表2に示す。
熱可塑性樹脂として水素添加ニトリルゴム(H−NBR)を用いた以外、実施例5と同じ条件で混練してH−NBR/モンモリロナイト混練物を得た。この混練物にH−NBR100重量部に対し加硫剤として有機過酸化物(日本油脂(株)製ペロキシモンF−40)を8重量部添加して、6インチロール(ロール温度60℃)で混練したのち、シート状に分出して、170℃で15分間プレスして厚さ2mmのシートを調整し、この加硫シートについて実施例5と同様の引張試験を行った。結果を表2に示す。
比較例7
天然ゴム(NR)100重量部とモンモリロナイト粉体5重量部とを、チャンバー温度:60℃、ローター回転数:60min−1に設定したラボプラストミルで5分間混練したのち、このNR/モンモリロナイト混練物に対して実施例7と同様の加硫処理および引張試験を行った。結果を表2に示す。なお、ここで得られたNR/モンモリロナイト混練物は透明感がなく、目視レベルで確認できるモンモリロナイトの凝集物が多数見られた。
比較例8
加硫前の混練物として比較例5のNR素練り物を用いた以外、実施例7と同じである。結果を表2に示す。
比較例9
加硫前の混練物として比較例6のSBR素練り物を用いた以外、実施例8と同じである。結果を表2に示す。
比較例10
水素添加ニトリルゴム(H−NBR)のみを、チャンバー温度:60℃、ローター回転数:60min−1に設定したラボプラストミルで5分間混練したのち、このH−NBR素練り物に対して実施例9と同様の加硫処理および引張試験を行った。結果を表2に示す。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ペレットをプレス機で溶融加圧して厚さ約1mmの透明シートにした後、これを10mm×100mm程度の短冊状に切り分け、混練前の樹脂原料とした。この短冊状EVA100重量部とEVA100重量部に対しモンモリロナイト原体で5重量部となるように計量した水膨潤モンモリロナイトを用意し、まず、全短冊状EVAの半分程度の量をロール温度90℃、前/後ロール回転数30/25min−1に設定したローラーに投入して、EVAを前ロールに巻きつかせたのち、一旦ロール温度を70℃に下げ、水膨潤モンモリロナイトと残りの短冊状PLAを投入しながら2分間混練を行った。次に、前ロールに巻きついた混練物が次第に透明感を帯びてくるのを目視で確認しつつ、蒸気の発生がなくなるまで、約2分おきに10℃ずつ100℃まで昇温しながら混練を行った。この混練物をシート状に分出したのち、プレス機で溶融加圧して厚さ1mmのシートを作製し、このシートからJIS K7113に準じたダンベル状2号形試験片を打ち抜き、試験速度50mm/minで引張試験を行った。なお、ここで引張試験は引張弾性率と伸び100%、300%および500%における応力値を求めた。結果を表3に示す。
混練前の樹脂原料として塩素化ポリエチレン(CPE)粉体を用いた以外、実施例10と同じである。結果を表3に示す。
比較例11
層状無機化合物としてモンモリロナイト粉体を用いた以外は、実施例10と同じである。結果を表3に示す。なお、ここで得られた混練物には目視で確認できるモンモリロナイトの凝集物が多数見られた。
比較例12
層状無機化合物としてモンモリロナイト粉体を用いた以外は、実施例11と同じである。結果を表3に示す。なお、ここで得られた混練物にも目視で確認できるモンモリロナイトの疑集物が多数見られた。
参考例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ペレットをプレス機で溶融加圧して厚さ1mmのシートを作製し、このシートについて実施例10と同様の引張試験を行った結果を表3に示す。
参考例2
塩素化ポリエチレン(CPE)粉体をプレス機で溶融加圧して厚さ1mmのシートを作製し、このシートについて実施例11と同様の引張試験を行った結果を表3に示す。
Figure 2004072158
Figure 2004072158
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表1は弾性率が1GPa以上を有する熱可塑性樹脂をマトリックスとした高分子複合材料に関する実施例である。また、表2および表3は弾性率の低い熱可塑性樹脂やゴム・エラストマー類をマトリックスとした場合の高分子複合材料に関する実施例である。表1において、実施例1〜4は本発明にかかる製造方法によって作製された層状無機化合物を含有する高分子複合材料で、比較例1〜4は通常の溶融混練法によって熱可塑性樹脂と層状無機化合物とを単純混練して作製された高分子複合材料である。この表1から明らかなように、通常の溶融混練法では熱可塑性樹脂中への層状無機化合物の剥離・分散は進まず、層状無機化合物が微分散した高分子複合材料は得られない。これに対し、実施例1〜4の試料は層状無機化合物の分散性に優れ、機械的強度および耐熱性の著しい向上が認められる。表2において、実施例5、6は本発明にかかる製造方法によって作製された層状無機化合物を含有する未加硫ゴム試料で、層状無機化合物を含まない試料(比較例5、6)に比較し、グリーン強度(未加硫ゴムの強度)が著しく向上しているのが分かる。また、加硫ゴムについても、本発明にかかる製造方法によって作製された試料(実施例7〜9)は、その弾性率および強度がブランク試料(比較例8〜10)に対し大きく向上しているのが分かる。比較例7は実施例5と同様の混練手順で混練した試料であるが、分散媒で膨潤させていない層状無機化合物を用いたため、層状無機化合物の分散性に劣り、物性向上効果が低い。表3において、実施例10、11は本発明にかかる製造方法によって作製された層状無機化合物を含有する軟質高分子複合材料で、分散媒を含まない層状無機化合物を用いた試料(比較例11、12)に比較し、層状無機化合物の分散性に優れ、弾性率および強度が高いことが分かる。参考例1、2はマトリックス単体の引張物性を参考として示したものである。以上、表1〜3より明らかなように、本発明にかかる製造方法で作製された高分子複合材料は、層状無機化合物の分散性に優れ、機械的強度および耐熱性にも優れる。
本発明に従えば、熱可塑性樹脂中に層状無機化合物がサブミクロンからナノメートルオーダーで分散してなる機械的性質や耐熱性などに優れる高分子複合材料を、特別な混練装置を必要とすることもなく、従来の混練装置を利用して、生産性よく、工業的に有利に製造することが可能である。しかも、本発明にかかる製造方法は、従来技術に比べ、広範な熱可塑性樹脂に適用することできる。

Claims (14)

  1. 熱可塑性樹脂と、水及び/又は有機溶媒からなる分散媒で膨潤させた層状無機化合物とを、せん断混練装置を用いて、前記熱可塑性樹脂の溶融温度未満であって、かつ前記分散媒の沸点を超えない温度範囲で混練したのち、前記分散媒の沸点以上の温度まで昇温しながら混練することを特徴とする高分子複合材料の製造方法。
  2. 前記分散媒で膨潤させた層状無機化合物の層状無機化合物と分散媒の重量比が1:0.2〜1:100の割合であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の高分子複合材料の製造方法。
  3. 前記層状無機化合物が有機化剤を含有していることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  4. 前記分散媒の沸点が前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上であることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂の形状がフレーク状、チップ状、シート状、フィルム状、繊維状、短冊状などの、その最長軸と最短軸の長さの比(アスペクト比)が3以上であることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  6. 前記せん断混練装置が少なくとも1つ以上のベント、スリットバレルなどの排気及び/又は排液手段を有するものであることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第5項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒と同種及び/又はそれと親和性のある溶媒を含有させたものであることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第6項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒と親和性のある官能基を含有していることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第7項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂がこれと相溶性のある他種の熱可塑性樹脂を含有し、かつ該他種の熱可塑性樹脂が層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒と親和性のある官能基を有していることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第7項のいずれかに記載の高分子複合材料の製造方法。
  10. 熱可塑性樹脂と、水及び/又は有機溶媒からなる分散媒で膨潤させた層状無機化合物とを、せん断混練装置を用いて、前記熱可塑性樹脂の溶融温度未満であって、かつ前記分散媒の沸点を超えない温度範囲で混練したのち、該分散媒の沸点以上の温度まで昇温しながら混練された高分子複合材料であって、その実質的な層状無機化合物の含有割合が熱可塑性樹脂100重量部当り0.01〜100重量部で、かつ、その層状無機化合物が平均厚さ約0.5μ以下、最大厚さが約1μ以下で微分散していることを特徴とする高分子複合材料。
  11. 前記層状無機化合物が有機化剤を含有した層状無機化合物であることを特徴とする請求の範囲第10項記載の高分子複合材料。
  12. 前記熱可塑性樹脂が、層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒と同種及び/又はそれと親和性のある溶媒を含有させたものであることを特徴とする請求の範囲第10項ないし第11項のいずれかに記載の高分子複合材料。
  13. 前記熱可塑性樹脂が、層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒と親和性のある官能基を含有していることを特徴とする請求の範囲第10項ないし第12項のいずれかに記載の高分子複合材料。
  14. 前記熱可塑性樹脂がこれと相溶性のある他種の熱可塑性樹脂を含有し、かつ該他種の熱可塑性樹脂が層状無機化合物の膨潤調整に用いた分散媒と親和性のある官能基を有していることを特徴とする請求の範囲第10項ないし第12項のいずれかに記載の高分子複合材料。
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