JPWO2004046383A1 - Dna増幅法 - Google Patents

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崇男 安藤
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Abstract

下記の酵素(A)と(B):(A)ニッキング活性を有する酵素;(B)5’→3’エクソヌクレアーゼ活性が認められないDNAポリメラーゼI等;を用いた、下記の増幅工程を、液相中で反復して行うことにより、DNAを増幅する、DNA増幅法である。増幅工程:増幅の対象となる二本鎖DNAに対して作用させて、(1)当該二本鎖DNAのいずれか一方のDNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAと、(2)置き換えられた一本鎖DNA同士により形成される二本鎖DNA、を新たに形成させ、これらの二本鎖DNAを、新たな増幅対象DNAとして、前記の酵素(A)と(B)によるDNA増幅反応を、連続して行う工程。この方法により、簡便に、かつ、効率的に、遺伝子DNAを増幅することができる。

Description

本発明は、遺伝子、特に、DNAの増幅方法に関する発明である。
遺伝子の解析には、質的に良好な状態のDNAが必要であることは勿論であるが、それと同時に、解析に十分な量のDNAを確保することも、大変重要である。例えば、(1)少量の細胞より、遺伝子DNAを増幅し、複数の遺伝子領域の変異等を解析する場合や、(2)培養が困難で、サンプル中に少量しか存在しない細菌の、多数のDNAの解析を行う場合や、(3)少量の未知の塩基配列からなるDNAの解析を行う場合等においては、サンプルとなるDNAの全遺伝子領域を、均等に増幅する技術が必要となることが多い。
この技術は、全遺伝子増幅(whole genome amplification:WGA)と呼ばれ、現在までに、いくつかの手法が提供されている。
例えば、PEP(Primer Extension Preamplification)法(Zhang,L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.89,pp.847−5851,1992)、DOP−PCR(Degenerate Oligonucleotide Primed PCR)法(Cheung,V.G.and S.F.Nelson,Proc.Natl.acad.Sci.USA.,Vol.93,pp.14676−14679,1996)、MDA(Multiple Displacement Amplification)法(Dean,F.B.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.99,pp5261−5266,2002)等が知られている。
上記の従来技術のうち、
(1)PEP法は、PCR法を応用した方法であり、ランダムな塩基配列の15塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドの混合物をプライマーとして用いるDNA増幅法である。すなわち、PEP法は、このプライマーを、例えば、適切な条件下で増幅対象とするヒト遺伝子DNA等と共存させ、塩基配列が一致する遺伝子DNAの塩基配列位置にプライマーをアニールさせた後、30〜40℃程度の温度で、TaqDNAポリメラーゼにより、プライマーからDNA伸長反応(DNA合成反応)を行い、まず、遺伝子DNA全体を増幅させ、さらに、この増幅反応により得られた増幅産物を対象として、配列特異的プライマーを用いた通常のPCR反応を行い、目的の遺伝子DNAを増幅する方法である。
(2)POP−PCR法は、オリゴヌクレオチドの5’側と3’側に、特定の塩基配列を有し、中央に、6塩基程度の長さのランダムな塩基配列のプライマーを用いて行う、DNA増幅法である。すなわち、POP−PCR法では、PCR法により、対象のDNAの増幅を行うが、はじめのPCRサイクルは、低温で、長時間のDNA伸長反応を行い、PCRサイクルを重ねるに従い、DNA伸長反応の温度を上げ、しかも、伸長反応時間を短くして、DNA伸長反応を行う方法である。
上述した、(1)PEP法も、(2)POP−PCR法も、非特異的なDNAの増幅が起こること、遺伝子DNAが均一に増幅されないこと、また、増幅されたDNAのほとんどが1Kb以下であり、以降の遺伝子解析に適さないことがあるといわれている。
(3)MDA法は、ランダムな6塩基配列程度のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるDNA増幅法である。すなわち、MDA法は、枯草菌のバクテリオファージである、優れたDNA鎖置換活性(strand displacement activity)を有することが知られているφ29ファージ由来のDNAポリメラーゼを、熱変性させた増幅対象のDNAと上記のランダムプライマーとを、30℃程度でアニールさせた複合体に作用させ、DNA鎖の伸長反応を同温度において行い(φ29ファージ由来のDNAポリメラーゼの至適温度である)、DNAの増幅を行う方法である。
このMDA法においては、増幅温度を比較的低く設定する必要があり、所望のDNA増幅を行うために、18時間程度の長時間を要するという問題が認められる。
そこで、本発明が解決すべき課題は、これらの従来技術の問題点を鑑み、さらに、簡便に、かつ、効率的に、遺伝子DNAを増幅する手段を提供することにある。
本発明者は、この課題の解決に向けて、鋭意検討を重ねた。その結果、エンドヌクレアーゼのうち、二本鎖DNAに、ニックを入れることのできる活性が認められ得るものを利用することにより、所望する遺伝子DNAの増幅を行うことができることに想到した。すなわち、本発明者は、二本鎖DNAに、ニックを入れることのできる活性を有する酵素と、DNAの修復にかかわるDNAポリメラーゼを組み合わせて用いることにより、非常に、簡便、かつ、効率的な、全遺伝子増幅手段を提供することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、2種類の酵素(A)と(B):
(A)二本鎖DNAに、ニックを入れることのできる活性(以下、この活性を、ニッキング活性ともいう)を有する酵素;
(B)ニックが入った二本鎖DNAに対して、ニックが入っていない、いずれか一方のDNA鎖を鋳型として、ニックの位置から、ニックの入った側のDNA鎖に置き換えて、この鋳型DNA鎖に対して相補的な塩基配列の新たなDNA鎖を形成して、この鋳型DNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAを形成する活性を有し、かつ、前記の新たなDNA鎖に置き換えられて一本鎖DNAとして存在する、ニックの入った側のDNA鎖の分解は行わない酵素;
を用いた、下記の増幅工程を、液相中で反復して行うことにより、DNAを増幅する、DNA増幅法(以下、本DNA増幅法ともいう)を提供する発明である。
増幅工程:増幅の対象となる二本鎖DNAに対して作用させて、(1)当該二本鎖DNAのいずれか一方のDNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAと、(2)置き換えられた一本鎖DNA同士により形成される二本鎖DNA、を新たに形成させ、これらの二本鎖DNAを、新たな増幅対象DNAとして、前記の酵素(A)と(B)によるDNA増幅反応を、連続して行う工程。
第1図は、本DNA増幅法による、DNA増幅過程を示した概略図である。
第2図は、Thermotoga maritimaのエンドヌクレアーゼVの部分精製物についての電気泳動像を示す写真である。
第3図は、得られたエンドヌクレアーゼVのランダムニッキング活性について検討した結果を示す、アガロースゲル電気泳動像を示す写真である。
第4図は、Thermus thermophilusの遺伝子DNAの、本DNA増幅法による増幅反応物を示す、アガロースゲル電気泳動像を示す写真である。
第5図は、HeLa細胞の遺伝子DNAの、本DNA増幅法による増幅反応産物の量の経時的な変化を示した図面である。
第6図は、Vent(exo)DNAポリメラーゼを用いた、本DNA増幅法による増幅反応産物を示す、アガロースゲル電気泳動像を示す写真である。
第7図は、特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼN.BstNBIを用いた、本DNA増幅法による増幅反応産物を示す、アガロースゲル電気泳動像を示す写真である。
以下、本発明の実施の態様を説明する。
本DNA増幅法は、ニッキング活性を有する酵素(A)と、上記のポリメラーゼ活性を有する酵素(B)を用いるDNA増幅法である。
1.酵素(A)について
上述のように、酵素(A)は、ニッキング活性を有する酵素であるが、このニッキング活性には、二本鎖DNAの任意の位置にニックを入れることができる活性と、二本鎖DNAの特定の位置にニックを入れることのできる活性の、双方が含まれる。
(1) 酵素(A)としては、まず、二本鎖DNAの任意の位置に、ニックを入れることができる活性(以下、この活性をランダムニッキング活性ともいう)を有する、エンドヌクレアーゼ(endonuclease)Vを挙げることができる。
エンドヌクレアーゼVは、生体内において、DNAの修復に関わっている酵素であると考えられている。
通常、エンドヌクレアーゼVは、DNA上のデオキシアデニン(dA)の、脱アミノ化によって生じる、デオキシイノシン(dI)を認識し、その一本鎖DNAにおけるその1塩基後ろに、切断(ニック:nick)を入れ、3’OH末端と5’P末端を生じさせることが、Kow,Y.Wグループの、大腸菌を用いた研究により、明らかにされている(Yao,M.et al.,J.Biol.Chem.,1994,269,16260−16268)。さらに、後の研究により、エンドヌクレアーゼVには、デオキシウリジン(dU)や、二本鎖DNAのミスマッチ部位、さらには、フラップ(flap)についても、これを認識してニックを入れる活性が認められることが突き止められた。
耐熱菌や好熱菌(以下、耐熱菌等ともいう)においても、エンドヌクレアーゼVが存在することが突き止められている(例えば、Thermotoga maritimaについて:Huang,J.et al.,Biochemistry,2001,40,8738−8748)。この耐熱菌等に由来するエンドヌクレアーゼVは、大腸菌由来のエンドヌクレアーゼVと同様に、マグネシウムイオンの存在下で、dI、dU、ミスマッチ部位等において、ニックを入れる活性が認められ、さらに、前述したランダムニッキング活性を有し、かつ、一本鎖DNAに対しては、DNAヌクレアーゼ活性が、殆ど認められないことが明らかにされている(Huang,J.et al.,Biochemistry,2001,40,738−8748)。
本DNA増幅法に用いられ得る、エンドヌクレアーゼVの由来は、特に限定されず、大腸菌、枯草菌、酵母等、各種の生物由来のものを用いることができるが、耐熱菌等由来のエンドヌクレアーゼVを用い、高温(50〜65℃程度)で、本DNA増幅法を行うことは、エンドヌクレアーゼVの酵素活性の半減期が長く、好適である。
このような耐熱菌等由来のエンドヌクレアーゼVの供給源となる耐熱菌等は、特に限定されないが、例えば、Archaeoglobus fulgidus(Liu,J.et al.,Mutation Res.,Vol.461,pp169−177,2000)、Thermoplasma acidphilum(GenBank accession no.AL445064)、Pyrococcus abyssi(GenBank accession no.AJ248287)、Sulfolobus solfataricus(GenBank accession no.NC 002754)、Aeropyrus pernix(GenBank accession no.AP000059)、等を挙げることができる。
各種の生物からの、エンドヌクレアーゼVの分離・精製方法は、特に限定されず、既存の分離・精製方法に準じて行うことができる。
例えば、既に、エンドヌクレアーゼVの遺伝子DNAの塩基配列が特定されている場合には、そのDNAを増幅するためのPCRプライマーを用いて、対象生物のDNAにおいて、PCR法等のDNAの増幅方法を行い、そのDNA増幅産物を適当な発現ベクターに組み込んだ後、宿主細胞(大腸菌株等)に導入し、この形質転換株において、エンドヌクレアーゼV遺伝子を発現させて産生させることにより、エンドヌクレアーゼVの分離を行うことができる。そして、この粗酵素に対して、通常公知の方法、すなわち、例えば、タンパク質沈澱剤による処理、限外濾過、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー、遠心分離、電気泳動、特異抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィー、透析法等の、常法による精製を行うことにより、本DNA増幅法に用いるのに好適な程度に精製されたエンドヌクレアーゼVを得ることができる。
また、エンドヌクレアーゼVの供給源とすべき生物の、エンドヌクレアーゼVの遺伝子DNAの塩基配列が特定されていない場合には、例えば、エンドヌクレアーゼVの遺伝子DNAの塩基配列が特定されている、好適には複数の近縁生物種由来のエンドヌクレアーゼVの遺伝子DNAの塩基配列の比較を行い、エンドヌクレアーゼV遺伝子DNAの特徴的な塩基配列(好適には、種に特異的であり、かつ、種の相違にかかわらず保存されている塩基配列)を選んで、これを基にしたDNA増幅用プライマーを調製する。そして、このDNA増幅用プライマーを用いた、対象生物のDNAを鋳型とした、PCR法等のDNA増幅方法により得られるDNA増幅産物をプローブとして用い、常法により調製した対象生物のDNAライブラリーから、対象となるエンドヌクレアーゼVをクローニングすることができる。また、クローニングした対象生物のエンドヌクレアーゼVの遺伝子DNAの塩基配列は、常法を用いて決定することができる。
この決定された遺伝子DNAの塩基配列を基にして、上記の既知の遺伝子DNAを用いたエンドヌクレアーゼVの製造方法に従い、未だ、エンドヌクレアーゼVの遺伝子DNAの塩基配列が特定されていない生物の、エンドヌクレアーゼVを得ることができる。
(2) 本DNA増幅法においては、酵素(A)として、上述したランダムニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼVのようなエンドヌクレアーゼのみならず、二本鎖DNAの特定の位置にニックを入れることができる活性(以下、この活性を、特定ニッキング活性ともいう)を有するエンドヌクレアーゼを用いることもできる。
本DNA増幅法において用いることのできる特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼは、特に限定されない。
すなわち、例えば、認識する塩基配列とDNA切断を行う部位が離れているタイプのエンドヌクレアーゼである、IIs型制限酵素のうち、特定ニッキング活性を有するものを、本発明において用いることができる。この種の特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼの中でも、Bacillus stearothearthermophilusから得られるエンドヌクレアーゼ(N.BstNBI)を、好適なエンドヌクレアーゼとして挙げることができる。
このN.BstNBIは、二本鎖DNAの塩基配列GAGTCを認識し、その4塩基下流にニックを入れる活性を有するエンドヌクレアーゼである(Morgan,R.D.,et al.,Biol.Chem.,Vol.381,pp.1123−1125,2000)。
また、N.BstNBIと同一の塩基配列を認識して、ニックを入れる活性を有するエンドヌクレアーゼである、BstSEI(Abdurashitov,M.A.et al.,ol.Biol.,Vol.30,pp1261−1267,1996)も、本DNA増幅法に用いる特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼとして好適なものの一つである。
特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼの、細菌等からの分離、精製方法は、特に限定されず、二本鎖DNAに対するニッキング活性を指標として、通常、用いられている方法(上記のランダムニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼの分離、精製に準ずる)を行うことができる。
本DNA増幅法では、酵素(A)が、ニッキング活性を発揮することが要件であるから、本DNA増幅法は、これを満足する条件において行うことが必要である。この条件としては、例えば、酵素(A)を用いる際の、マグネシウムイオンの存在を挙げることができる。
このマグネシウムイオンのイオン濃度は、通常、好適には、1〜10mMである。また、マグネシウムイオンの基となる物質は、特に限定されず、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等を用いることができる。
2.酵素(B)について
酵素(B)としては、代表的には、5’→3’エクソヌクレアーゼ活性が認められないDNAポリメラーゼIが挙げられる。
このようなDNAポリメラーゼIは、鋳型DNAに基づくDNAポリメラーゼ活性と、3’→5’エクソヌクレアーゼ活性を有している。
さらに、本DNA増幅法に用いられる酵素(B)には、DNA鎖置換活性(strand displacement activity)が備わっていることが好適である。このDNA鎖置換活性とは、DNAポリメラーゼによるDNA合成の進行上に、鋳型DNA鎖に結合したDNA鎖が存在すると、この既存のDNA鎖を、新たに合成されたDNA鎖に置き換える活性である(Fujimura,R.K.et al.,J.Biol.Chem.,1976,251,2168−2174)。
さらにまた、酵素(B)には、鋳型DNA交換活性(template switching activity)が備わっていることが好適である。
この鋳型DNA交換活性とは、鋳型DNAと同じ配列か、あるいは、よく似た配列のDNA鎖が存在すると、そのDNA鎖を、今までの鋳型に代えて鋳型DNAとして、DNA合成を行う活性である(Odelberg,S.J.et al.,Nucleic Acids Res.,Vol.25,pp2049−2057,1995、Guieysee,A−L.et al.,Biochemistry,Vol.34,pp.9193−9199,1995)。
酵素(B)において、DNAポリメラーゼ活性に加えて、上述したDNA鎖置換活性と鋳型DNA交換活性が備わっていることにより、本DNA増幅法において、DNAの増幅と増幅産物の分子量を大きくすることが可能であり、全遺伝子の増幅を行う上で、極めて重要な要素である。
上記のような活性を保持するDNAポリメラーゼIは、すでに公知で、市販品もあり、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIから得られる、いわゆるクレノウ酵素が挙げられる。
本DNA増幅法において用いる酵素(B)として、さらに好適な酵素は、例えば、BstDNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)(Milla,M.A.et al.,Biotechniques,Vol.24,pp.392−396,1998)、Vent(exo)DNAポリメラーゼ(Kong,H.et al.,J.Biol.Chem.,Vol.268,pp.1965−1975,1993)、KODDNAポリメラーゼ(Takagi,M.et al.,Appl.Environ.Microbiol.,Vol.63,pp4504−4510,1997)、BcaBESTDNAポリメラーゼ(Spargo,C.A.,Mol.Cell.Probes,Vol.10,pp247−256,1996)、φ29DNAポリメラーゼ(Blanco,L.et al.,J.Biol.Chem.,Vol.264,pp.8935−8940,1989)等を挙げることができる。
さらに、酵素(B)の製造方法は、通常公知の製造方法に従って行うことができる。すなわち、上記の酵素(A)の製造方法に準じた製造方法で、DNAポリメラーゼIの酵素由来生物からの抽出・精製を行い。これに、例えば、適当なポロテアーゼ処理を行い、5’→3’エクソヌクレアーゼ活性を失わせることで、所望する酵素(B)の製造を行うことができる。また、5’→3’エクソヌクレアーゼ活性を担っている遺伝子領域を予め除いた、DNAポリメラーゼI遺伝子を用いて、この遺伝子DNAを組み込んだ発現ベクターを保持した宿主に、直接酵素(B)を生成させ、これの抽出・精製を行うことにより、酵素(B)の製造を行うことができる。
3.本DNA増幅法の態様
本DNA増幅法は、増幅対象となる二本鎖DNAと、上記の酵素(A)および(B)を、対象となる二本鎖DNAに対して作用させて、(1)前記のいずれか一方のDNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAと、(2)置き換えられた一本鎖DNA同士により形成される二本鎖DNAに対して、前記の酵素(A)と(B)による反応を、連続的に行うことにより、対象となるDNAを増幅する、DNA増幅法である。
すなわち、第1図(本DNA増幅法の概略を示す)(1)の、増幅対象となる二本鎖DNA10に対して、まず、酵素(A)が作用して、任意の位置に、ニック(111,112,113)を入れる〔第1図(2)〕。上述したように、このニックが入る過程において、マグネシウムイオンが必要である。
なお、二本鎖DNA10は、二本鎖DNAであれば、特に対象は限定されず、線状DNAであっても、環状DNAであってもよいが、原核生物または真核生物の遺伝子DNA等の、大きな分子量を有する二本鎖DNAが好適である。
次いで、これらのニックを、酵素(B)(121,122,123)が認識し、ニックの3’OHから、DNA鎖の合成を、3’方向に進め〔第1図(3)〕、この際、合成の進行上に存在するDNA鎖(131,132,133)は、酵素(B)のDNA鎖置換活性(strand displacement activity)により、新たな合成鎖(141,142,143)に置換され〔第1図(4)〕、合成の進行上に存在したDNA鎖(131,132,133)は、置換が進むにつれて、一本鎖DNAとして伸長し〔第1図(5)〕、ニックが存在する場所で、これらの一本鎖DNAは、相補鎖から離れる。
第1図に示したように、二本鎖DNA10の両側から、DNA鎖の置換が行われながら、DNAの合成反応が進行する。そして、新たな合成鎖同士が交叉する時点で、酵素(B)の、鋳型DNA交換活性(template switching activity)により、鋳型DNAを、合成進行上にあるDNA鎖に換える、鋳型DNA交換が起こり〔例えば、酵素(B)121は、鋳型をDNA鎖133から、新たな合成鎖143に換えて、合成鎖141の合成を継続し、酵素(B)123は、鋳型をDNA鎖131から、新たな合成鎖141に換えて、合成鎖143の合成を継続する:第1図(4)〕、新たな合成鎖の合成が継続し、新たな二本鎖DNAが形成される〔例えば、新たな合成鎖141と143からなる二本鎖DNA:第1図(5)〕。
そして、新たに合成された二本鎖DNAに対して、酵素(A)による、ランダムニッキングが行われ、上と同様の行程により、さらに、新たな二本鎖DNAが合成される。
一方、DNA鎖の置換により生じた一本鎖DNA(第1図における、一本鎖DNA131,132,133が該当する)は、同一の液相反応系において、相補的塩基配列を有する、他の一本鎖DNAとアニールする。このように、アニールしたDNAの5’末端が突出している場合は、酵素(B)により、3’末端からDNA合成が進行し、その領域も二本鎖DNAとなる。そして、このようにして形成される二本鎖DNAにも、酵素(A)が作用して、ランダムニッキングを行い、上と同様の行程により、ここでもさらに、新たな二本鎖DNAが合成される。
以上述べたように、酵素(A)によるランダムニッキングと、酵素(B)によるDNA置き換え合成の連続的な繰り返しにより、所望する全DNA増幅が効率的に行われる。
上述の一連の行程は、酵素(A)が、ランダムニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼである場合の実施態様を示したものであるが、他の態様として、特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼ、例えば、N.BstNBIを用いても、対象とするDNAの増幅を行うことができる。この場合には、ニックが入るDNA上の位置が特定の塩基配列であるため、当該塩基配列が複数箇所存在することが必要となる。このため、特に、この特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼを酵素(A)として用いる、本DNA増幅法の態様においては、増幅対象となるDNAは、原核生物や真核生物の遺伝子DNA等、大きな分子量を有し、しかも、用いるエンドヌクレアーゼが認識する塩基配列が数多く存在する二本鎖DNAが好適である。
このDNAの増幅反応は、液相反応であり、反応液中には、増幅対象となる二本鎖DNAと、酵素(A)と酵素(B)は、必須である。ここで酵素(A)と酵素(B)の反応液中における量比は、特に限定されないが、酵素(A)によるランダムニッキングの進行と、酵素(B)によるDNA合成の開始、および、進行が、バランス良く行われるように設定することが好適である。
反応温度は、用いる酵素(A)と(B)の至適温度に応じて設定される。すなわち、酵素(A)と(B)が、大腸菌等の、哺乳動物の体温(37℃程度)で生育する生物由来の場合には、反応温度も、37℃程度とすることが好適であり、耐熱菌等のように、高温(50〜100℃位)で生育する生物由来の場合には、対象となる耐熱性菌等の生育環境と同程度の高温とすることが、一般的には好適である。また、酵素(A)と(B)の至適温度は、同じ位の温度のものを組み合わせて選択することが好適である。例えば、酵素(A)が耐熱菌等由来である場合には、酵素(B)も耐熱菌由来であることが好適である。
また、反応pHも、用いる酵素(A)と(B)の至適pHに応じて設定される。すなわち、酵素(A)と(B)の至適pHも、一致させることが好適である。
本DNA増幅反応を行う上で、他に反応液中に添加する要素として、例えば、DNA合成に十分な量のdNTPs(deoxynucleotide triphosphates)、NaCl等の塩類、酵素(A)がニッキングを行うことができる量のマグネシウムイオン供給物質が挙げられ、これらを、増幅反応を行う上で好適な緩衝液、例えば、Tris−HCl緩衝液中に共存させることにより、本DNA増幅反応を行うことができる。
このように、DNA増幅反応を終了後、DNA増幅産物を、既知のPCR増幅反応産物の精製法に準じた精製法で、精製を行うことにより、本DNA増幅法による遺伝子増幅産物を、遺伝子解析等の試料として用いることが可能となる。
なお、本DNA増幅法を行う際に留意すべき点の一つとして、副反応が挙げられる。
すなわち、DNAポリメラーゼI等によるDNA合成反応は、ある特定条件下では、鋳型となるDNAとプライマーを反応液に加えることなしに、DNA合成が行われる可能性が報告されている(Ogata,N.and Morino,H.,Nucleic Acids Res.,Vol.28,pp.3999−4004,2000、Ogata,N.and Miura,T.,Biochemistry,Vol.39,pp.13993−14001,2000)。このような偶発的なDNA合成反応は、本DNA増幅法においては、副反応であり、これを、可能な限り抑止することが好適である。
この副反応は、反応液組成中の試薬、例えば、DNAポリメラーゼIにおいて混在している、極微量の短いDNA断片やオリゴヌクレオチドが原因となって起こるものと考えられる。
よって、本DNA増幅法を行うに際しては、酵素(A)も酵素(B)も、夾雑物としてのDNA等の混入が排除されている精製品を用いることが好適である。
4.DNA増幅用キット
本発明は、上述した本DNA増幅法を行うためのキットをも提供する発明である。
すなわち、本発明は、上記の(A)と(B)を、構成要素として含む、本DNA増幅法を行うための、DNA増幅用キット(以下、本DNA増幅用キットともいう)を提供する発明である。
本DNA増幅用キットは、必須の要素として、酵素(A)と酵素(B)を含有するが、その他、dNTP、反応液の基となる緩衝液を調製するための成分、マグネシウムイオンの供給物質等を、必要に応じて、構成要素として含めることができる。さらに具体的には、後述する実施例において、本DNA増幅法を行うために用いているものを、本DNA増幅用キットの構成要素として例示することができる。
本DNA増幅用キットを用いることにより、上述した本DNA増幅法を効率的に行うことができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本実施例により、本発明が限定されるものではない。
1.エンドヌクレアーゼVのクローニングと部分精製
(1)クローニング
下記の配列番号1,2で表される、Thermotoga maritimaエンドヌクレアーゼV遺伝子全長のクローニング用プライマーの合成を、常法に従い行った。
Figure 2004046383
および
Figure 2004046383
これらの各々1μMと、鋳型DNAとして、Thermotoga maritime(ATCC43589D)の遺伝子DNA0.1μgを用いて、TbrEXT DNAポリメラーゼ用PCRキット(第1化学薬品)で、熱サイクル(94℃1分、62℃1分、72℃1分)を40サイクル繰り返した。その結果、約700塩基対の単一バンドのPCR産物を得た。このPCR産物の塩基配列を確認したところ、公表されているThermotoga maritimaエンドヌクレアーゼV遺伝子(GenBank accession no.A001823)の塩基配列と同一であった。
次いで、このようにして得られたPCR産物を常法に従って精製し、Gateway expression cloning用ベクター、pDONR20にキットマニュアルに従って導入した(ライフテクノロジー社)。
次に、大腸菌で、Thermotoga maritimaエンドヌクレアーゼV遺伝子を発現させるために、遺伝子発現用ベクターpDEST14に、上記キットマニュアルに従ってエンドヌクレアーゼV遺伝子を組み込み、これを用いて、発現用大腸菌BL21 S1株の形質転換を行った。
得られたクローンを、L培地の組成から、NaClを除き、pH7.5にNaOHで調整した培地で、37℃で培養し、中期対数増殖期に、0.3M NaClになるように5M NaClを加え、さらに3時間の培養を行い、エンドヌクレアーゼVの発現誘導を行なった。発現誘導を行った菌体を、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄して、マイナス70℃で保存した。
(2)部分精製
下記のエンドヌクレアーゼVの部分精製の行程は、処理温度を記載している処理以外の行程は0〜4℃で行った。
保存した菌体を、lysis buffer(50mM Tris−HCl pH7.5,10% sucrose,50mM NaCl,5mM EDTA,5mM 2ME(2−Mercaptoethanol))で洗浄した後、菌湿重量約3gを、20mlのlysis bufferに懸濁した。これにプロテアーゼの作用を抑えるためにProtease inhibitor cocktail(ロッシュ社)を加えた。これにリゾチームを終濃度1mg/mlを加え0.5〜1.0時間の反応を行なった。次に、終濃度0.1%になるように、5% Sodium deoxycholateを加え、10〜30分間処理し、溶菌した。溶菌液を、20000×gで遠心し、上精を得た。この上精に、lysis bufferを加え20mlとし、さらに、0.6mlの10%polymin P(Polyethylenimine)(シグマ社)を加え、核酸および酸性蛋白質を沈澱させ、遠心により除去した。この遠心上精に、5.4gの硫酸アンモニウムを加えて溶解し、硫酸アンモニウム沈澱蛋白質を遠心により集め、沈澱した蛋白質に、4mlのstorage buffer(50mM Tris−HCl pH7.5,50mM NaCl,1mM EDTA,1mM DTT(Dithiothreitol),50% glycerol(W/V))を加え、蛋白質を溶解した。次いで、この蛋白質溶解物を透析チューブに入れ、500mlのstorage bufferにおいて、18時間の透析を2回行なった。透析を行った蛋白質液に対して、70℃20分の熱処理を行ない、エンドヌクレアーゼV以外の蛋白質を熱変性させ、15000×gの遠心により、熱変性蛋白質を除去し、得られた上精を、Thermotoga maritimaのエンドヌクレアーゼVの部分精製品とした。
なお、Thermotoga maritimaエンドヌクレアーゼVの精製については、Huang,H.ら(Huang,J.et al.,Biochemistry,Vol.40,pp.8738−8748,2001)が報告している。
上記の行程を経て、部分精製したエンドヌクレアーゼVのSDS−PAGEの図を示す(第2図)。レーンMは分子量マーカーで上より分子量は、それぞれ、97400、66000、45000、31000、21000と14500である。レーン1およびレーン2は、それぞれ別のクローン株から部分精製したthermotoga maritimaエンドヌクレアーゼVに対応するレーンであり、共に分子量は29000であった。
これにより、Themotoga maritimaのエンドヌクレアーゼVの部分精製品が得られたことが確認された。
2.エンドヌクレアーゼVのニッキング活性の確認
共有結合により閉環している2本鎖の環状プラスミドDNAは、ニックが入ると、開環状DNAとなり、さらに閉環状プラスミドDNAの2本鎖とも同一位置に、ニックが入ると直線状DNAとなる。これらの、閉環状、開環状、直線状DNAは同じ分子量にかかわらず、それぞれ、アガロース電気泳動における泳動位置が異なることが知られている。
この性質を利用して、上記の行程により得られた、エンドヌクレアーゼVの部分精製品のDNAニッキング活性を検討した。
すなわち、プラスミドDNAとして、pT7blue由来の約4KbのプラスミドDNAを約1μgと、上記1において得た、Themotoga maritimaのエンドヌクレアーゼVのうち、約100ngを、ニッキング活性測定用反応液(20mM Tris−HCl(pH7.5),20mM NaCl,5mM MgCl、1mM DTT)20μl中で、反応させた。
第3図はこの反応による結果物を、1.2%アガロースゲルに載せ、電気泳動を行なって、得られた泳動像である。
レーンMは、分子量マーカーに対応するレーンであり(λDNAを制限酵素HindIIIで切断したもの)、レーン1は、エンドヌクレアーゼVを入れないコントロールに対応するレーンであり、上から開環状プラスミドDNA、直線状プラスミドDNA、および、閉環状プラスミドDNAのバンドが存在していた。
レーン2は、反応温度を0℃として、60分間反応させた結果を示すレーンであり、各々のバンドの濃度はコントロールと同じであった。レーン3は、反応温度を65℃として、60分間反応させた結果を示すレーンである。
第3図において、レーン1のコントロールに認められる閉環状プラスミドDNAの存在を示すバンド(最も下のバンド)は、レーン3では消失しており、レーン3では開環状プラスミドDNAを示す一番上のバンドが濃くなっていることが認められた。直線状プラスミドDNAの存在を示す真中のバンドはレーン1、レーン3ともに同じ様な濃度を示した。
この結果により、上記1で得られたエンドヌクレアーゼVは、65℃で、DNAにランダムにニックを入れる活性が存在することが明らかになった。
3.DNAの増幅
(1)Thermus thermophilusの遺伝子DNAの増幅
耐熱菌であるThermus thermophilusの遺伝子DNAを、常法により分離して、これを、1)上記1で得られたThermotoga maritimaのエンドヌクレアーゼVを0.5μl(1μg/μl)、2)BstDNAポリメラーゼを1μl(NEB社、8units/μl),100μM dNTPs(1mM)をMMバッファー(Tris−HCl(pH18.0),20mM NaCl,10mM MgCl,1mM DTT(Dithiothreitol))に混合し、全量が100μlとなるように反応液を調整した。DNA増幅反応は、このようにして調整した反応液を、60℃で14時間反応させることにより行った。
反応終了後、各反応液10μlを用い、1%アガロースゲルで電気泳動を行った。その泳動像を第4図に示す。
第4図において、レーンMは、分子量マーカーに対応するレーンであり、λDNAのHindIII切断産物を示している。レーン1は、エンドヌクレアーゼを加えていないコントロールに対応するレーン、レーン2は、標的DNAを加えていないコントロールに対応するレーンである。また、レーン3は、DNAを0.3ng、レーン4は、DNAを3.0ng、レーン5は、DNAを30.0ng、レーン6は、DNA300ngをそれぞれ加えた系に対応するレーンである。
エンドヌクレアーゼを加えていないレーン1、および、DNAを加えていないレーン2では、DNAの増幅は認められなかった。それに対して、DNAを加えたレーン3,4,5および6では、すべてのレーンにおいて、DNAが増幅しており、増幅されたDNAは、おおよそ、3〜0.5Kbの分子量であった。
次いで、キアゲンPCR産物精製キット(キアゲン社)を用いて、第4図の各レーンに泳動された増幅産物を精製し、OD260nmを測定し、DNA量を求めた。その結果を、第1表に示す。
Figure 2004046383
増幅したDNA量は、最初に加えた鋳型DNA量が異なるにもかかわらず、ほぼ一定の4〜9μg/100μl反応液となった。
このDNA増幅量の一定化の原因としては、例えば、dNTPsが4時間のDNA合成により消費され、DNA合成が停止した、等の律速要素が考えられるが、生物反応においては通常認められる現象でもあり、この実施例におけるDNA増幅反応の時間は、4時間程度が効率的であると考えられる。
また、この精製した増幅産物が、標的DNAであるThermus thermophilusの遺伝子DNAの増幅産物であるか否かが問題になる。これを確かめるために、特定の遺伝子に着目して、その増幅量を限界希釈PCR法(Sykes,P.J.et.al.,Biothechniques,Vol.13,pp.444−449,1992)を行った。
すなわち、まず、Thermus thermophilusのDNAポリメラーゼI遺伝子DNAの塩基配列(GeneBank accesion no.D28878)の、1088〜1178番目まで、および、1231〜1260番目までの塩基配列からなる2種のプライマーを設計し、これらのプライマーを、常法により、合成した。一方、既知濃度のThermus thermophilus遺伝子DNAの10倍の希釈段階と、増幅産物の10倍稀釈段階とを行った。
この段階希釈を行ったDNA液と上記の2種のプライマーを用いたPCR反応液の系列を作製し、PCR法を同一条件で行い、これらにより得られる増幅産物に対してアガロースゲル電気泳動を行い、泳動後のそれぞれのバンドの濃度を比較することにより、本DNA増幅法で増幅した産物中のDNAポリメラーゼI遺伝子の増幅の程度を求めた。その結果、第4図のレーン3はおおよそ1000倍、レーン4はおおよそ100倍、そして、レーン5およびレーン6はおおよそ数十倍増幅したことが認められた。
このことから、本DNA増幅法を用いることにより、確かに目的とするDNAを増幅することができることが確かめられた。
(2)HeLa細胞の遺伝子DNAの増幅
本DNA増幅法によるDNAの増幅の経時的挙動についての検討を、真核生物のDNAであるHeLa細胞の遺伝子DNAを用いて行った。
HeLa細胞の遺伝子DNA30ngを、(1)の増幅反応液に入れ、60℃で増幅反応を行った。反応開始から30分ごとに、270分にわたって、本DNA増幅法による増幅産物量を,前述のキアゲンPCR産物精製キットで反応液からDNAを精製し、そのOD260nmを計測することにより算出した。
その結果を、第5図に示す。第5図の縦軸に、得られたDNA量(μg/100μl)であり、横軸に時間(分)を示した。第5図により、本DNA増幅法では、DNA増幅産物は、経時的に増加して得られることが明らかとなった。また、真核生物由来遺伝子DNAでも、原核生物遺伝子DNAと同様に増幅可能であることも明らかになった。
(3)Vent(exo)DNAポリメラーゼを用いた場合の検討
上記(1)(2)のDNA増幅では、DNAポリメラーゼとして、Bst DNAポリメラーゼを用いたが、他のDNAポリメラーゼを用いた場合でも、本DNA増幅法によるDNA増幅が可能であるか、Vent(exo)DNAポリメラーゼについて検討した。
すなわち、Thermus maritimaのエンドヌクレアーゼVを1μl(0.1μg/μl)、Vent(exo)DNAポリメラーゼを2μl(NEB社、2units/μl)、100μM dNTPs(1mM)を、MMバッファー(Tris−HCl(pH8.0),20mM NaCl,10mM MgCl,1mM DTT(Dithiothreitol))に混合し、これに増幅しようとするDNAを加え、全量が100μlとなるように反応液を調整した。次いで、65℃で3時間の増幅反応を行い、その増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を示した図面が第6図である。
第6図のレーンMは、分子量マーカーでλDNAのHindIII切断産物のレーンである。レーン1と2は、増幅反応液にThermus thermophilus遺伝子DNAを15ng加えた系のレーンである。レーン3と4は、増幅反応液にHeLa細胞遺伝子DNAを30ng加えた系のレーンである。
第6図に示されるように、DNAポリメラーゼを、Vent(exo)DNAポリメラーゼに換えても、本DNA増幅法でDNAの増幅が行えることが確かめられた。
(4)エンドヌクレアーゼN.BstNBIを用いた場合の検討
ランダムニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼVの換わりに、特定ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼである、N.BstNBIを用い、本DNA増幅法でDNAの増幅が可能であるか否かを検討した。
すなわち、20mM Tris−HCl(pH7.5),50mM KCl,10mM MgCl,1mM DTTおよび100μM dNTPsを含む反応液を用い、これに、1μlのN.BstNBI(NEB社、10units/μl)と1μlのBstDNAポリメラーゼ(NEB社、8units/μl)を加え、さらに増幅の標的となるDNAを加え、反応液全量を100μlとした。
増幅反応は60℃で3時間行った。得られた増幅産物を、アガロースゲル電気泳動した結果を第7図に示す。
第7図において、レーンMは、分子量マーカーでλDNAのHindIII切断産物の系のレーンである。レーン1は、増幅標的となるDNAを加えていないコントロールのレーンである。レーン2は、エンドヌクレアーゼN.BstNBIを加えていないコントロールのレーンである。レーン3は、thermus thermophilus遺伝子DNAを15ng加えた系のレーンである。そして、レーン4は、同じくthermus thermophilus遺伝子DNAを150ng加えた系のレーンである。
第7図に示されるように、ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼ、あるいは、増幅対象となるDNAを加えない場合は、増幅産物は認められないが、レーン3,4のように、DNAとニックを入れるエンドヌクレアーゼが共に存在する場合は、ニッキング活性が、特定ニッキング活性であっても、増幅産物が得られることが判明した。
本発明により、簡便に、かつ、効率的に、遺伝子DNAを増幅する全遺伝子増幅手段が提供される。
【配列表】
Figure 2004046383

Claims (9)

  1. 2種類の酵素(A)と(B):
    (A)二本鎖DNAに、ニックを入れることのできる活性を有する酵素;
    (B)ニックが入った二本鎖DNAに対して、ニックが入っていない、いずれか一方のDNA鎖を鋳型として、ニックの位置から、ニックの入った側のDNA鎖に置き換えて、この鋳型DNA鎖に対して相補的な塩基配列の新たなDNA鎖を形成して、この鋳型DNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAを形成する活性を有し、かつ、前記の新たなDNA鎖に置き換えられて一本鎖DNAとして存在する、ニックの入った側のDNA鎖の分解は行わない酵素;
    を用いた、下記の増幅工程を、液相中で反復して行うことにより、DNAを増幅する、DNA増幅法。
    増幅工程:増幅の対象となる二本鎖DNAに対して作用させて、(1)当該二本鎖DNAのいずれか一方のDNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAと、(2)置き換えられた一本鎖DNA同士により形成される二本鎖DNA、を新たに形成させ、これらの二本鎖DNAを、新たな増幅対象DNAとして、前記の酵素(A)と(B)によるDNA増幅反応を、連続して行う工程。
  2. 酵素(A)が、エンドヌクレアーゼVであり、かつ、マグネシウムイオンの存在下で、この酵素による反応を行う、請求項1記載のDNA増幅法。
  3. マグネシウムイオン濃度が、1〜10mMである、請求項1または2記載のDNA増幅法。
  4. 酵素(B)が、DNA鎖置換活性、および、鋳型DNA鎖交換活性を有し、かつ、5’→3’エクソヌクレアーゼ活性が認められない、DNAポリメラーゼIである、請求項1〜3のいずれかに記載のDNA増幅法。
  5. 酵素(A)および/または(B)が、好熱菌または耐熱菌由来の酵素である、請求項1〜4のいずれかにDNA増幅法。
  6. 酵素(A)が、Thermotoga maritima、Archaeoglobus fulgidus、Thermoplasma acidphilum、Pyrococcus abyssi、Sulfolobus solfataricus、または、Aeropyrus pernix由来のエンドヌクレアーゼVである、請求項1〜4のいずれかに記載のDNA増幅法。
  7. 酵素(A)が、N.BstNBI、または、BstSEIである、請求項1〜4のいずれかに記載のDNA増幅法。
  8. 酵素(B)が、BstDNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Vent(exo)DNAポリメラーゼ、KODDNAポリメラーゼ、φ29DNAポリメラーゼ、または、BcaBESTDNAポリメラーゼである、請求項1〜7のいずれかに記載のDNA増幅法。
  9. 下記の酵素(A)と(B):
    (A)二本鎖DNAに、ニックを入れることのできる活性を有する酵素
    (B)ニックが入った二本鎖DNAに対して、ニックが入っていない、いずれか一方のDNA鎖を鋳型として、ニックの位置から、ニックの入った側のDNA鎖に置き換えて、この鋳型DNA鎖に対して相補的な塩基配列の新たなDNA鎖を形成して、この鋳型DNA鎖と新たなDNA鎖との二本鎖DNAを形成する活性を有し、かつ、前記の新たなDNA鎖に置き換えられて一本鎖DNAとして存在する、ニックの入った側のDNA鎖の分解は行わない酵素
    を、構成要素として含む、請求項1〜8のいずれかのDNA増幅法を行うための、DNA増幅用キット。
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