JPWO2004026457A1 - マイクロカプセルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
多数の細孔(マイクロチャネル)を形成したプレートによって仕切られる一方の室に高分子電解質溶液を分散相として供給し、他方の室に連続相を供給し、分散相に圧力をかけてエマルションを調製し、このエマルションを解乳化し、分散相を分散相とは逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液と接触せしめ、高分子電解質反応により球状分散相の周囲にゲルを形成し、外側が不溶性のゲルで、内部が細胞などを添加した高分子電解質溶液となった二重構造のカプセルを得る。
Description
本発明は、DDS(ドラッグデリバリーシステム)、食品工業或いは化粧品製造等に利用されるマイクロカプセルの製造方法に関する。
生体内に移植するカプセルとして、1〜2個の細胞(ランゲルハンス島)を500〜800μmのマイクロカプセルに封入したものが知られている。(文献「蛋白質、核酸、酵素Vol.45 No.13(2000)」)。
このカプセルは外側のヒドロゲルが生態の免疫機構からの攻撃(拒絶反応)に対するバリヤとして機能し、内部のランゲルハンス島が体内で長期に亘ってインスリンを分泌するのを可能とするものである。
このようなカプセルについての最初の提案は既に、米国特許第4352883号(1979)になされている。この先行技術には、アルギン酸カルシウムゲルに細胞を固定化することが記載されている。
またこの他にも、免疫機構からの攻撃に耐える殻内に細胞を固定化して体内に移植する技術として、特表平10−500889号公報、特開平11−130698号公報或いは特表2002−507473号公報などが提案されている。
特表平10−500889号公報には、外殻がアルギン酸とスペルミンとの反応性生物で、内部が水性コアとなったマイクロカプセル内に、ロタウィルスを封入した内容が開示されている。
特開平11−130698号公報には、アルギン酸水溶液(W)を脂肪酸エステル(O)に乳化分散させてW/Oエマルションを作製し、このエマルションに多価金属(Ca2+やBa2+)を加えてアルギン酸多価金属塩(ゲル)からなる粒径0.01〜5μmの1次粒子を作り、この1次粒子の集合体に難溶性薬剤を担持せしめる内容が開示されている。
特表2002−507473号公報には、アルギン酸水溶液の微粒子を噴霧によって作製し、この噴霧によって作製したアルギン酸水溶液の微粒子をフィルム状に流下するCa2+水溶液に衝突させることで、100〜400μmのマイクロカプセルが開示されている。
また特表平9−500132号公報には、経口デリバリのためのヒドロゲルマイクロカプセル化ワクチンとして、15μm以下のものが提案されている。
上述したマイクロカプセルの外殻(ゲル)は、高分子電解質反応を利用して形成されている。具体的には「Biotechnology Progress 13562−568 1997」に開示されるようにノズルを用いて、アルギン酸溶液などのポリアニオン溶液をポリカチオン溶液に滴下するのが一般的である。
また、カプセルの径を小さくするために二重ノズルを用いる方法が、「AIChE J、40、1026−1031 1994」に提案されている。この方法は内側ノズルから高分子電解質溶液を流し、外側のノズルから空気を流すことで、2mm〜200μm程度のカプセルを調製している。
上述した従来の方法によれば、0.01μmから数百μmの範囲のマイクロカプセルを得ることができる。しかしながら、従来法によると粒径の分布が広く、均一な粒径のマイクロカプセルを得ることが困難である。
例えば、特表平10−500889号公報や特表2002−507473号公報にあっては、アルギン酸溶液を空中に噴霧することで微細な粒子とし、これをCa2+水溶液に接触せしめるようにしているが、均一な粒径のカプセルを得ることができない。
また、特開平11−130698号公報に開示されるように、従来方法でW/Oエマルションとし、これをCa2+水溶液等に接触せしめる場合には、W/Oエマルションを構成する分散相の液滴径を所定の範囲に揃えることが難しく、極めて細かな粒子を作成することはできるが、内部を水溶液とし、外殻をゲルとした二重構造のカプセルを作製できない。
上述した文献は、細胞を固定したマイクロカプセルを体内に移植し、体内において「ミクロの薬品工場」として機能せしめることを示唆するものである。そして、細胞固定化マイクロカプセルが「ミクロの薬品工場」として機能するには、単にインスリンや抗がん剤などの有効物質を分泌するだけでなく、長期に亘ってカプセル内で生存することが必要になる。
長期に亘ってカプセル内で細胞が生存するには、マイクロカプセルの粒径が重要なファクターになる。
即ち、細胞固定用のマイクロカプセルにあっては、外殻(ゲル)は免疫機構からの攻撃に耐えるだけでなく、細胞からの分泌物を外部に放出し且つ外部から細胞が生存するための栄養を取り入れ、更にはカプセル内で生じた老廃物を外部に排出する必要がある。
そして、マイクロカプセルの中心部までの距離が150μm(直径300μm)を超えると、中心部に固定されている細胞まで栄養分が届かず、また中心部の細胞の老廃物を排出できず、細胞が死滅してしまうことを本発明者らは知見した。また、マイクロカプセルの径が小さいと内部に細胞を固定化することができない。
したがって、細胞固定用のマイクロカプセルについては、極めて限られた粒径範囲内に殆んどのマイクロカプセルが収まっていなければならない。
このように、細胞固定化用のマイクロカプセルについては、粒径分布が50〜300μmと狭いことが重要であるが、滴下などの従来法によるとこの範囲のマイクロカプセルを製造できるが、均一な粒径のマイクロカプセルを製造することができない。また従来の単に攪拌によって得られたエマルションを用いる場合も均一で一定粒径のマイクロカプセルを製造することができない。
また、均一な粒径のマイクロカプセルは、食品や化粧品の分野においても要求されている。
このカプセルは外側のヒドロゲルが生態の免疫機構からの攻撃(拒絶反応)に対するバリヤとして機能し、内部のランゲルハンス島が体内で長期に亘ってインスリンを分泌するのを可能とするものである。
このようなカプセルについての最初の提案は既に、米国特許第4352883号(1979)になされている。この先行技術には、アルギン酸カルシウムゲルに細胞を固定化することが記載されている。
またこの他にも、免疫機構からの攻撃に耐える殻内に細胞を固定化して体内に移植する技術として、特表平10−500889号公報、特開平11−130698号公報或いは特表2002−507473号公報などが提案されている。
特表平10−500889号公報には、外殻がアルギン酸とスペルミンとの反応性生物で、内部が水性コアとなったマイクロカプセル内に、ロタウィルスを封入した内容が開示されている。
特開平11−130698号公報には、アルギン酸水溶液(W)を脂肪酸エステル(O)に乳化分散させてW/Oエマルションを作製し、このエマルションに多価金属(Ca2+やBa2+)を加えてアルギン酸多価金属塩(ゲル)からなる粒径0.01〜5μmの1次粒子を作り、この1次粒子の集合体に難溶性薬剤を担持せしめる内容が開示されている。
特表2002−507473号公報には、アルギン酸水溶液の微粒子を噴霧によって作製し、この噴霧によって作製したアルギン酸水溶液の微粒子をフィルム状に流下するCa2+水溶液に衝突させることで、100〜400μmのマイクロカプセルが開示されている。
また特表平9−500132号公報には、経口デリバリのためのヒドロゲルマイクロカプセル化ワクチンとして、15μm以下のものが提案されている。
上述したマイクロカプセルの外殻(ゲル)は、高分子電解質反応を利用して形成されている。具体的には「Biotechnology Progress 13562−568 1997」に開示されるようにノズルを用いて、アルギン酸溶液などのポリアニオン溶液をポリカチオン溶液に滴下するのが一般的である。
また、カプセルの径を小さくするために二重ノズルを用いる方法が、「AIChE J、40、1026−1031 1994」に提案されている。この方法は内側ノズルから高分子電解質溶液を流し、外側のノズルから空気を流すことで、2mm〜200μm程度のカプセルを調製している。
上述した従来の方法によれば、0.01μmから数百μmの範囲のマイクロカプセルを得ることができる。しかしながら、従来法によると粒径の分布が広く、均一な粒径のマイクロカプセルを得ることが困難である。
例えば、特表平10−500889号公報や特表2002−507473号公報にあっては、アルギン酸溶液を空中に噴霧することで微細な粒子とし、これをCa2+水溶液に接触せしめるようにしているが、均一な粒径のカプセルを得ることができない。
また、特開平11−130698号公報に開示されるように、従来方法でW/Oエマルションとし、これをCa2+水溶液等に接触せしめる場合には、W/Oエマルションを構成する分散相の液滴径を所定の範囲に揃えることが難しく、極めて細かな粒子を作成することはできるが、内部を水溶液とし、外殻をゲルとした二重構造のカプセルを作製できない。
上述した文献は、細胞を固定したマイクロカプセルを体内に移植し、体内において「ミクロの薬品工場」として機能せしめることを示唆するものである。そして、細胞固定化マイクロカプセルが「ミクロの薬品工場」として機能するには、単にインスリンや抗がん剤などの有効物質を分泌するだけでなく、長期に亘ってカプセル内で生存することが必要になる。
長期に亘ってカプセル内で細胞が生存するには、マイクロカプセルの粒径が重要なファクターになる。
即ち、細胞固定用のマイクロカプセルにあっては、外殻(ゲル)は免疫機構からの攻撃に耐えるだけでなく、細胞からの分泌物を外部に放出し且つ外部から細胞が生存するための栄養を取り入れ、更にはカプセル内で生じた老廃物を外部に排出する必要がある。
そして、マイクロカプセルの中心部までの距離が150μm(直径300μm)を超えると、中心部に固定されている細胞まで栄養分が届かず、また中心部の細胞の老廃物を排出できず、細胞が死滅してしまうことを本発明者らは知見した。また、マイクロカプセルの径が小さいと内部に細胞を固定化することができない。
したがって、細胞固定用のマイクロカプセルについては、極めて限られた粒径範囲内に殆んどのマイクロカプセルが収まっていなければならない。
このように、細胞固定化用のマイクロカプセルについては、粒径分布が50〜300μmと狭いことが重要であるが、滴下などの従来法によるとこの範囲のマイクロカプセルを製造できるが、均一な粒径のマイクロカプセルを製造することができない。また従来の単に攪拌によって得られたエマルションを用いる場合も均一で一定粒径のマイクロカプセルを製造することができない。
また、均一な粒径のマイクロカプセルは、食品や化粧品の分野においても要求されている。
上記問題を解決するため、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法は、先ず高分子電解質溶液を分散相に含むエマルションを調製し、次いで、このエマルションの解乳化と同時に前記高分子電解質溶液とは逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液と接触せしめ、高分子電解質反応により分散相を構成していた微小な高分子電解質溶液の周囲に電解質複合体からなるゲル層を形成するようにした。
本発明にあっては、高分子電解質溶液を逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液に直接接触させずに、一旦均一な粒径の分散相を含むエマルションとし、このエマルションを逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液に接触せしめるようにしたので、エマルションを構成する分散相とほぼ等しい径のマイクロカプセルが得られる。
均一な径のマイクロカプセルを得るには分散相が均一な径のエマルションを得ることが必要である。このためには、貫通孔を形成したプレートを介して分散相と連続相を分離し、分散相に対し連続相にかかる圧力よりも大きな圧力をかけることで分散相を連続相中にマイクロスフィアとして押し出す手段をとることが好ましい。
また、効率よく分散相と逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液とを接触せしめるには、解乳化させることが必要である。解乳化の手段としては2つ考えられる。1つはエマルションの状態を維持するため通常は界面活性剤を連続相に添加しているので、連続相を構成する物質(例えばヘキサン)と同一の物質若しくは連続相に可溶化する物質を添加して界面活性剤の濃度を低下せしめる方法で、他の1つは、エマルションの調製の際にはじめから界面活性剤を添加しない方法である。後者の場合はエマルションが短時間のうちに解乳化するため、直ちに逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液とを接触せしめる。
また、前記エマルションを構成する分散相としては、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、カラギーナン、硫酸セルロース、コンドロイチン硫酸などが挙げられ、前記エマルションを構成する分散相と反応する高分子電解質は、ポリアミノ酸(例えば、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリオルニチンなど)、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基またはピリジニル窒素を含むポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルイミン、ポリエーテルアミン、ポリビニルピリジン)またはアミノ化多糖類(例えばキトサン)などが挙げられ、前記エマルションを構成する分散相と反応する多価イオンはCa2+、Ba2+、Pb2+、Cu2+、Cd2+、Sr2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、またはMn2+どが挙げられる。
本発明にあっては、高分子電解質溶液を逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液に直接接触させずに、一旦均一な粒径の分散相を含むエマルションとし、このエマルションを逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液に接触せしめるようにしたので、エマルションを構成する分散相とほぼ等しい径のマイクロカプセルが得られる。
均一な径のマイクロカプセルを得るには分散相が均一な径のエマルションを得ることが必要である。このためには、貫通孔を形成したプレートを介して分散相と連続相を分離し、分散相に対し連続相にかかる圧力よりも大きな圧力をかけることで分散相を連続相中にマイクロスフィアとして押し出す手段をとることが好ましい。
また、効率よく分散相と逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液とを接触せしめるには、解乳化させることが必要である。解乳化の手段としては2つ考えられる。1つはエマルションの状態を維持するため通常は界面活性剤を連続相に添加しているので、連続相を構成する物質(例えばヘキサン)と同一の物質若しくは連続相に可溶化する物質を添加して界面活性剤の濃度を低下せしめる方法で、他の1つは、エマルションの調製の際にはじめから界面活性剤を添加しない方法である。後者の場合はエマルションが短時間のうちに解乳化するため、直ちに逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液とを接触せしめる。
また、前記エマルションを構成する分散相としては、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、カラギーナン、硫酸セルロース、コンドロイチン硫酸などが挙げられ、前記エマルションを構成する分散相と反応する高分子電解質は、ポリアミノ酸(例えば、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリオルニチンなど)、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基またはピリジニル窒素を含むポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルイミン、ポリエーテルアミン、ポリビニルピリジン)またはアミノ化多糖類(例えばキトサン)などが挙げられ、前記エマルションを構成する分散相と反応する多価イオンはCa2+、Ba2+、Pb2+、Cu2+、Cd2+、Sr2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、またはMn2+どが挙げられる。
第1図(a)乃至(c)は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法のうち、エマルションの調製工程を説明した図である。
第2図(a)および(b)は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法のうち、マイクロカプセルの製造工程を説明した図である。
第3図は、本発明方法によって得られたマイクロカプセルの拡大断面図である。
第4図は、(実施例1)および(実施例2)に用いたエマルションの調製装置の断面図である。
第5図は、(実施例1)のエマルションの調製状態を示す顕微鏡写真である。
第6図は、(実施例1)によって得られたマイクロカプセルの顕微鏡写真である。
第7図は、(実施例2)のエマルションの調製状態を示す顕微鏡写真である。
第8図は、(実施例2)によって得られたマイクロカプセルの顕微鏡写真である。
第2図(a)および(b)は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法のうち、マイクロカプセルの製造工程を説明した図である。
第3図は、本発明方法によって得られたマイクロカプセルの拡大断面図である。
第4図は、(実施例1)および(実施例2)に用いたエマルションの調製装置の断面図である。
第5図は、(実施例1)のエマルションの調製状態を示す顕微鏡写真である。
第6図は、(実施例1)によって得られたマイクロカプセルの顕微鏡写真である。
第7図は、(実施例2)のエマルションの調製状態を示す顕微鏡写真である。
第8図は、(実施例2)によって得られたマイクロカプセルの顕微鏡写真である。
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。第1図(a)乃至(c)は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法のうち、エマルションの調製工程を説明した図、第2図(a)および(b)は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法のうち、マイクロカプセルの製造工程を説明した図、第3図は本発明方法によって得られたマイクロカプセルの拡大断面図である。
先ず第1図(a)に示すように、多数の細孔を形成したプレートによって仕切られる一方の室に高分子電解質溶液を分散相として供給し、他方の室に連続相(ヘキサン)を供給する。
次いで、一方の室の高分子電解質溶液に圧力を加える。すると、(b)に示すように、高分子電解質溶液が分散相となって連続相中に進入し、(c)に示すエマルションが調製される。
ここで、進入した分散相は球状をなす。尚、連続相中に進入する球状分散相の径は細孔の大きさに依存し、細孔の寸法が等しい場合には全て等しい径の球状分散相が得られる。細孔は集積回路を作製する際に利用するプラズマエッチングにて形成され、その開口部の形状を非円形とすることで、より均質な球状分散相が得られる。
以上の操作により、エマルションが調製されたならば、第2図(a)に示すように、分散相とは逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液の上に、前記エマルションを相分離した状態で同一容器内に入れ、エマルションに解乳化を起こさせる。
解乳化は連続相と同一物質(ヘキサン)若しくは連続相に可溶化する物質(大豆油、トリオレイン、オクタンなど)をエマルションに添加することで連続相中の界面活性剤の濃度を低下せしめるか、はじめから連続相に界面活性剤を添加しないようにする。
以上の如くして、解乳化が起こると、エマルションを構成していた分散相と、この分散相とは逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液とが接触して反応を起こし、球状分散相の周囲にゲルが形成され、第3図に示すように、外側が不溶性のゲルで、内部が細胞などを添加した高分子電解質溶液となった二重構造のカプセルが得られる。
このようにして内部に細胞などを添加したマイクロカプセルを用いて、人体の治療や病気予防を行うには、注射器、カテーテル或いは手術によって人体の目的とする部位にマイクロカプセルを注入する。
次に、具体的な実施例を説明する。先ず、第4図は以下の(実施例1)および(実施例2)に用いたエマルション調製装置の断面図であり、調製装置は、環状をなすケース1内に複数のプレート2、3、4およびスペーサを組み付けて構成される。11は分散相が流れる液密な第1流路、12は連続相とエマルションが流れる液密な第2流路で、これら第1流路11と第2流路12は中間のプレート3に形成した細孔(マイクロチャネル)にて連通している。また、P1は分散相供給ポンプ、P2は連続相供給ポンプ、P3はエマルション取り出しポンプ、13は透明窓、14はCCDカメラである。
先ず第1図(a)に示すように、多数の細孔を形成したプレートによって仕切られる一方の室に高分子電解質溶液を分散相として供給し、他方の室に連続相(ヘキサン)を供給する。
次いで、一方の室の高分子電解質溶液に圧力を加える。すると、(b)に示すように、高分子電解質溶液が分散相となって連続相中に進入し、(c)に示すエマルションが調製される。
ここで、進入した分散相は球状をなす。尚、連続相中に進入する球状分散相の径は細孔の大きさに依存し、細孔の寸法が等しい場合には全て等しい径の球状分散相が得られる。細孔は集積回路を作製する際に利用するプラズマエッチングにて形成され、その開口部の形状を非円形とすることで、より均質な球状分散相が得られる。
以上の操作により、エマルションが調製されたならば、第2図(a)に示すように、分散相とは逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液の上に、前記エマルションを相分離した状態で同一容器内に入れ、エマルションに解乳化を起こさせる。
解乳化は連続相と同一物質(ヘキサン)若しくは連続相に可溶化する物質(大豆油、トリオレイン、オクタンなど)をエマルションに添加することで連続相中の界面活性剤の濃度を低下せしめるか、はじめから連続相に界面活性剤を添加しないようにする。
以上の如くして、解乳化が起こると、エマルションを構成していた分散相と、この分散相とは逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液とが接触して反応を起こし、球状分散相の周囲にゲルが形成され、第3図に示すように、外側が不溶性のゲルで、内部が細胞などを添加した高分子電解質溶液となった二重構造のカプセルが得られる。
このようにして内部に細胞などを添加したマイクロカプセルを用いて、人体の治療や病気予防を行うには、注射器、カテーテル或いは手術によって人体の目的とする部位にマイクロカプセルを注入する。
次に、具体的な実施例を説明する。先ず、第4図は以下の(実施例1)および(実施例2)に用いたエマルション調製装置の断面図であり、調製装置は、環状をなすケース1内に複数のプレート2、3、4およびスペーサを組み付けて構成される。11は分散相が流れる液密な第1流路、12は連続相とエマルションが流れる液密な第2流路で、これら第1流路11と第2流路12は中間のプレート3に形成した細孔(マイクロチャネル)にて連通している。また、P1は分散相供給ポンプ、P2は連続相供給ポンプ、P3はエマルション取り出しポンプ、13は透明窓、14はCCDカメラである。
カプセルの原料として、キトサン(キミカ(株)製)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本理化学薬品(株)製)を用いた。また、エマルションの連続相成分としてヘキサン、界面活性剤としてTGCR−310(阪本薬品工業(株)製)を用いた。
先ず、0.8wt%カルボキシメチルセルロースを調製し、これを分散相として第1流路11にポンプP1を用いて供給し、中間プレート3の細孔を介して第2流路12内の連続相(ヘキサン)に押出し、単分散W/Oエマルションを調整した。第5図はこのW/Oエマルションを拡大して示す顕微鏡写真である。
そして、上記のエマルションと0.5wt%キトサン溶液(溶媒:酢酸)を相分離した状態で同一の容器内に存在させ、エマルションの部分にヘキサンを加えていった。
ヘキサンを加えることによって、界面活性剤濃度低下による解乳化が起こり、瞬時に分散相のカルボキシメチルセルロースとキトサン溶液が接触し、高分子電解質複合体ゲルがカルボキシメチルセルロース液滴の周りに形成され、これによりキトサン/カルボキシメチルセルロースマイクロカプセルが得られた。
以上の如く、プレート(隔壁)に形成した細孔(マイクロチャネル)を用いることで、粒子径が約50μmの極めて単分散なエマルションが調製できた。またそのエマルションを材料として作製したカプセルもほぼ同一の粒径で、極めて単分散であった。
また、作製されたマイクロカプセルをプレパラートに採取して顕微鏡観察を行ったところ、第6図に示すように、無数のゲル繊維でカプセル表面膜が形成されている様子が観察された。
先ず、0.8wt%カルボキシメチルセルロースを調製し、これを分散相として第1流路11にポンプP1を用いて供給し、中間プレート3の細孔を介して第2流路12内の連続相(ヘキサン)に押出し、単分散W/Oエマルションを調整した。第5図はこのW/Oエマルションを拡大して示す顕微鏡写真である。
そして、上記のエマルションと0.5wt%キトサン溶液(溶媒:酢酸)を相分離した状態で同一の容器内に存在させ、エマルションの部分にヘキサンを加えていった。
ヘキサンを加えることによって、界面活性剤濃度低下による解乳化が起こり、瞬時に分散相のカルボキシメチルセルロースとキトサン溶液が接触し、高分子電解質複合体ゲルがカルボキシメチルセルロース液滴の周りに形成され、これによりキトサン/カルボキシメチルセルロースマイクロカプセルが得られた。
以上の如く、プレート(隔壁)に形成した細孔(マイクロチャネル)を用いることで、粒子径が約50μmの極めて単分散なエマルションが調製できた。またそのエマルションを材料として作製したカプセルもほぼ同一の粒径で、極めて単分散であった。
また、作製されたマイクロカプセルをプレパラートに採取して顕微鏡観察を行ったところ、第6図に示すように、無数のゲル繊維でカプセル表面膜が形成されている様子が観察された。
カプセルの原料には、アルギン酸(キミカ(株)製)を用いた。油相には大豆油を用いた。反応液には塩化カルシウム溶液0.1M水溶液を用いた。
1.5%アルギン酸水溶液(分散相)を、第4図に示した装置の第1流路11に、界面活性剤を添加していない大豆油(連続相)を第2流路12に供給し、細孔(マイクロチャネル)を介して大豆油中に1.5%アルギン酸水溶液を押し出し、エマルションを調製した。
上記のエマルションを塩化カルシウム水溶液(多価イオン)と接触させた。その結果、アルギン酸カルシウムカプセルを得た。
実施例2によれば、第7図に示すように、分散相(液滴径)が約80μmの均質なエマルションを調製できた。そしてこれを塩化カルシウム水溶液中に接触(滴下)することで、第8図に示すように、粒径が約100μmのカプセルを得ることができた。
以上の実施例に用いた装置は一旦エマルションを調製し、その後、このエマルションを構成する分散相と逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液とエマルションとを別の容器内で接触せしめてマイクロカプセルを作製しているが、1つの装置で連続してマイクロカプセルを作製することも出来る。
例えば、第4図に示した装置であれば、第1流路11を略中間箇所で隔壁により左右に分け、左側の流路には今まで通りポンプP1を介して分散相を供給し、右側の流路には当該分散相と逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液を別のポンプで供給する。このようにすると、第2流路12の上流側、即ちプレート3の細孔を介して分散相が供給される領域ではエマルションが作製され、その下流側(図の右側)、即ちプレート3の細孔を介して分散相と逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液が供給される領域ではマイクロカプセルが形成される。
上記のプレート3の厚み方向に貫通する細孔を介して、分散相を連続相に導入する方法では、エマルションの分散相粒子(マイクロカプセル)の粒径が細孔径に依存し、粒径のコントロールが困難となる。
そこで、細孔径に依存しないエマルションの作製法として、互いに合流するマイクロチャネルの一方に連続相を、他方に分散相を流し、連続相と分散相とを層流状態で合流せしめ、その直後に連続相と分散相の流速を急激に低下させることで、連続相中に分散相粒子を顕在化せしめてエマルションとする方法も考えられる。この場合は、連続相の剪断力によって分散相が1粒子づつ連続相中に取り込まれ、連続相と分散相の流量によって粒径が制御できる。
尚、マイクロチャネルはガラス基板やシリコン基板等に形成する。また合流の態様としては、分散相の流路となるマイクロチャネルを挟んで両側から連続相の流路が30〜80°の角度で合流し、この直後に流速を急激に低下させる手段として大容量のプールを設けることが考えられる。
以上に説明したように、本発明によれば、内部を高分子電解質溶液とし、外側をこの高分子電解質溶液と他の電解質溶液との反応によって形成されるゲルとした二重構造のカプセルを、粒径分布を揃えた状態で安定して大量に生産することができる。
したがって、食品、化粧品の分野のみならず、細胞固定用などの医療分野においても有効なカプセルを得ることができる。
1.5%アルギン酸水溶液(分散相)を、第4図に示した装置の第1流路11に、界面活性剤を添加していない大豆油(連続相)を第2流路12に供給し、細孔(マイクロチャネル)を介して大豆油中に1.5%アルギン酸水溶液を押し出し、エマルションを調製した。
上記のエマルションを塩化カルシウム水溶液(多価イオン)と接触させた。その結果、アルギン酸カルシウムカプセルを得た。
実施例2によれば、第7図に示すように、分散相(液滴径)が約80μmの均質なエマルションを調製できた。そしてこれを塩化カルシウム水溶液中に接触(滴下)することで、第8図に示すように、粒径が約100μmのカプセルを得ることができた。
以上の実施例に用いた装置は一旦エマルションを調製し、その後、このエマルションを構成する分散相と逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液とエマルションとを別の容器内で接触せしめてマイクロカプセルを作製しているが、1つの装置で連続してマイクロカプセルを作製することも出来る。
例えば、第4図に示した装置であれば、第1流路11を略中間箇所で隔壁により左右に分け、左側の流路には今まで通りポンプP1を介して分散相を供給し、右側の流路には当該分散相と逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液を別のポンプで供給する。このようにすると、第2流路12の上流側、即ちプレート3の細孔を介して分散相が供給される領域ではエマルションが作製され、その下流側(図の右側)、即ちプレート3の細孔を介して分散相と逆電荷の高分子電解質溶液または多価イオン溶液が供給される領域ではマイクロカプセルが形成される。
上記のプレート3の厚み方向に貫通する細孔を介して、分散相を連続相に導入する方法では、エマルションの分散相粒子(マイクロカプセル)の粒径が細孔径に依存し、粒径のコントロールが困難となる。
そこで、細孔径に依存しないエマルションの作製法として、互いに合流するマイクロチャネルの一方に連続相を、他方に分散相を流し、連続相と分散相とを層流状態で合流せしめ、その直後に連続相と分散相の流速を急激に低下させることで、連続相中に分散相粒子を顕在化せしめてエマルションとする方法も考えられる。この場合は、連続相の剪断力によって分散相が1粒子づつ連続相中に取り込まれ、連続相と分散相の流量によって粒径が制御できる。
尚、マイクロチャネルはガラス基板やシリコン基板等に形成する。また合流の態様としては、分散相の流路となるマイクロチャネルを挟んで両側から連続相の流路が30〜80°の角度で合流し、この直後に流速を急激に低下させる手段として大容量のプールを設けることが考えられる。
以上に説明したように、本発明によれば、内部を高分子電解質溶液とし、外側をこの高分子電解質溶液と他の電解質溶液との反応によって形成されるゲルとした二重構造のカプセルを、粒径分布を揃えた状態で安定して大量に生産することができる。
したがって、食品、化粧品の分野のみならず、細胞固定用などの医療分野においても有効なカプセルを得ることができる。
本発明は、DDS(ドラッグデリバリーシステム)、人体の治療、食品工業或いは化粧品製造の分野において有効に利用することができる。
Claims (8)
- 高分子電解質溶液を均一な粒径の分散相として含むエマルションを調製し、このエマルションの解乳化と同時に前記高分子電解質溶液とは逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液と接触せしめ、高分子電解質反応により分散相を構成していた微小な高分子電解質溶液の周囲に電解質複合体からなるゲル層を形成することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項に記載のマイクロカプセルの製造方法において、前記エマルションの調製は、貫通孔を形成したプレートを介して分散相と連続相を分離し、分散相に対し連続相にかかる圧力よりも大きな圧力をかけることで分散相を連続相中に前記貫通孔を介してマイクロスフィアとして押し出すことで調製することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項または請求の範囲第2項に記載のマイクロカプセルの製造方法において、前記解乳化は、エマルションに連続相を構成する物質と同一物質若しくは連続相に可溶化する物質を添加して界面活性剤の濃度を低下せしめることで起こさせることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項または請求の範囲第2項に記載のマイクロカプセルの製造方法において、前記エマルションを構成する連続相には界面活性剤を添加せず、解乳化しやすい状態のエマルションを調製し、このエマルションを直ちに分散相を構成する高分子電解質溶液とは逆の電荷を持つ高分子電解質溶液または多価イオン溶液と接触せしめることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項乃至請求の範囲第4項に記載のマイクロカプセルの製造方法において、前記エマルションを構成する分散相は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、カラギーナン、硫酸セルロース、コンドロイチン硫酸の何れかであり、前記エマルションを構成する分散相と反応する高分子電解質は、ポリアミノ酸、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基またはピリジニル窒素を含むポリマー、またはアミノ化多糖類の何れかであり、前記エマルションを構成する分散相と反応する多価イオンはCa2+、Ba2+、Pb2+、Cu2+、Cd2+、Sr2+、Co2+、Ni2+、Zn2+またはMn2+の何れかであることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項乃至請求の範囲第5項に記載のマイクロカプセルの製造方法において、前記エマルションを構成する分散相となる高分子電解質溶液中には、予め所定の物質を生産する細胞を添加しておくことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項乃至請求の範囲第6項に記載のマイクロカプセルの製造方法において、前記エマルションを構成する分散相の粒径を50μm〜300μmとしたことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 請求の範囲第1項乃至請求の範囲第7項に記載のマイクロカプセルの製造方法によって得られたマイクロカプセルを、注射器、カテーテル或いは手術によって人体の目的とする部位に注入することを特徴とする人体の治療方法。
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