JPWO2003091233A1 - アミノエポキシドの製造方法 - Google Patents

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JPWO2003091233A1
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康之 大竹
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Abstract

本発明は、N−カルバメート型保護−3−アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−(ベンジロキシ置換フェニル)ブタンを金属触媒存在下で水素化し、N−カルバメート型保護−3−アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシ置換フェニル)ブタンを得、これを塩基で処理することにより、高い光学純度で高収率にN−カルバメート型保護−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(ヒドロキシ置換フェニル)ブタンを製造する方法に関する。

Description

技術分野
本発明はHIVプロテアーゼ阻害剤などの医薬品の中間体化合物として有用な、下記一般式(1)で表される光学活性なアミノエポキシドの製造方法に関する。
背景技術
一般式(1)
Figure 2003091233
[式中、Rはアルキル基またはフルオレニルメチル基を示し、nは1又は2の整数を示し、*は不斉炭素原子であり、独立にR又はS配置であることを示す。]で表されるアミノエポキシド化合物はHIVプロテアーゼ阻害剤の中間体化合物として有用であることが知られている(例えばP.Chenら、ジャーナルオブメディシナルケミストリー、39巻、10号、1991頁、1996年(J.Med.Chem.,1996,39,1991))。
一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物の製造方法としては、例えば、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、61巻、11号、3635頁、1996年(J.Org.Chem.,1996,61,1996.)及び国際出願WO99/10373に下記スキーム1で示される製造方法が開示されている。
スキーム1
Figure 2003091233
[式中、Phはフェニル基を示し、Bnはベンジル基を示し、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を示す。]
本方法は化合物(c)のアミノ基の保護基であるジベンジル基を、ヒドロキシル基を保護しているベンジル基と同時に脱保護した後、アミノ基をカルバメート型保護基で再度保護するプロセスを含む方法である。本方法のように(2S,3S)又は(2R,3R)の立体配置を有する化合物(c)を立体選択的に得るために、アミノ基をジベンジル基で保護し、アルデヒド化合物(a)を出発原料としているが、アルデヒド化合物(a)は比較的ラセミ化しやすい化合物であり、製造条件、工程操作の厳格なコントロールが必要となるため工業的製造方法として必ずしも好ましい方法とは言えない。また前述したようにアミノ基の保護基を変換する工程を必要とする。さらに、前記文献J.Med.Chem.,1996、39,1991では化合物(c)の脱保護反応以降の反応でアミノエポキシド化合物(f)の収率が93%とされているものの、国際出願WO99/10373においては同方法で収率が50%以下とされている。
因みに化合物(c)のジベンジル基に変えてtert−ブトキシカルボニル基でアミノ基が保護された化合物を使用し、ヒドロキシル基の脱ベンジル化反応を本文献に記載されている条件にて行った場合でも、酸性条件であるためアミノ基の脱保護(脱カルバメート化)が進行してしまい、再度アミノ基を保護する工程が必要となる。
アミノエポキシド化合物(f)の他の製造方法としては、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、39巻、10号、1991頁、1996年(J.Med.Chem.,1996,39,1991.)にスキーム2で示される製造方法が開示されている。
スキーム2
Figure 2003091233
[式中、Phはフェニル基を示し、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を示す。]
上記文献においてはエポキシド化合物(h)を2度にわたって単離、精製している。実際、化合物(h)の単離、精製を行わずに脱ベンジル化反応を行うと、系中に生成する不純物のために副反応が進行し、大幅な品質、収率の低下が確認された。またこの種のエポキシドには変異原性が認められることから、エポキシド化合物(h)の単離、精製のために特殊な設備が余分に必要となる。このように、この方法も工業化に適した方法とは言い難い。
更に国際出願WO99/10373にスキーム3で示される製造方法が開示されている。
スキーム3
Figure 2003091233
[Phはフェニル基を示し、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を示し、Msはメシル基を示す。]
上記の製造方法も、前述したアルデヒド化合物(a)より更に光学的に不安定なアルデヒド化合物(i)を経由すること、さらに工業化するのに困難なオゾン酸化の工程を含むことから、工業化に適した方法であるとはいい難い。
以上から、本発明は下記一般式(1)で表されるアミノエポキシドを高い光学純度で高収率に製造する方法を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、N−カルバメート型保護−3−アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−(ベンジロキシ置換フェニル)ブタン(下記一般式(2)で表される化合物)を金属触媒存在下において水素化することにより、N−カルバメート型保護−3−アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシ置換フェニル)ブタン(下記一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物)が得られることを見いだし、還元反応による塩素の脱離も確認されなかった。さらに得られたN−カルバメート型保護−3−アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシ置換フェニル)ブタンを塩基で処理することにより光学純度の高いN−カルバメート型保護−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(ヒドロキシ置換フェニル)ブタン(下記一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物)を高収率で得られることを見いだした。本発明者らはこれらの知見に基づき本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の内容を含むものである。
[1] 一般式(2)
Figure 2003091233
[式中、式中、Rはアルキル基またはフルオレニルメチル基を示し、nは1又は2の整数を示し、*は不斉炭素原子であり、独立にR又はS配置であることを示し、Pは置換基を有していてもよいベンジル基を示す。]
で表される化合物を金属触媒存在下において水素化を行い、一般式(3)
Figure 2003091233
[式中、R、n及び*は前記と同じ意味を示す。]
で表されるクロロヒドリン化合物とした後、該クロロヒドリン化合物を塩基で処理することを特徴とする、一般式(1)
Figure 2003091233
[式中、R、n及び*は前記と同じ意味を示す。]
で表されるアミノエポキシド化合物の製造方法。
[2] 一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物の2位と3位の立体配置がそれぞれS配置、又はそれぞれR配置である[1]の製造方法。
[3] Rがtert−ブトキシカルボニル基であり、nが1であり、芳香環上の置換位置が4位である[1]または[2]いずれか記載の製造方法。
なお、一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物の2位と3位の立体配置が(2S,3S)、(2R,3R)、(2R,3S)又は(2S,3R)の時、一般式(2)で表される化合物の2位と3位の立体配置は順に(2S,3S)、(2R,3R)、(2R,3S)又は(2S,3R)であり、一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物の2位と3位の立体配置は順に(2S,3S)、(2R,3R)、(2R,3S)又は(2S,3R)である。
また本発明の製造方法は、一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物の2位と3位の立体配置がそれぞれS配置(すなわち(2S,3S))、又はそれぞれR配置(すなわち(2R,3R)である場合に特に好ましく適用される。
発明の実施の形態
以下に、本発明を詳細に説明する。
一般式(1)または一般式(3)中、nは1又は2の整数を示す。すなわち一般式(1または一般式(2)で表される化合物はフェニル基上に1つ又は2つのヒドロキシル基を有する化合物である。本発明に特に好適に用いられる一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物は4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物(すなわちn=1であり芳香環の置換位置が4位の化合物)の場合に特に好適に用いられる。
一般式(2)中、nは1又は2の整数を表し、Pは置換基を有していてもよいベンジル基を示す。すなわち一般式(2)で表される化合物はフェニル基上に、1つ又は2つのベンジロキシ基(該ベンジルロキシ基の芳香環は置換基を有していてもよい)を有する化合物である。
Pが置換基を有する場合の置換基としては、本発明の反応に悪影響を与えない基であれば特に限定されず、例えばアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜7)、アルキル基(好ましくは1〜7)、ニトロ基、ハロゲン基等が挙げられる。通常、Pがベンジル基である化合物が好適に用いられる。本発明に特に好適に用いられる一般式(2)で表される化合物は4−ベンジロキシフェニル基を有する化合物(すなわちn=1、P=ベンジル基であり芳香環の置換位置が4位の化合物)である。
本発明中における一般式1〜3において、Rはアルキル基またはフルオレニルメチル基を示す。アルキル基は炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。例えばメチル基、エチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
本発明において原料として用いられる一般式(2)で表される化合物は公知化合物であり、例えば一般式(4)で表されるクロロケトン化合物を還元する等、既知の方法によって製造することができる。(例えば国際出願WO00/44706、欧州特許EP1081133参照)。
Figure 2003091233
[式中、R、P及びnは前記と同じ意味を示し、*は不斉炭素原子であり、R又はS配置であることを示す。]
以下、一般式(2)の化合物を金属触媒存在下において水素化(脱ベンジル化)し、一般式(3)のクロロヒドリン化合物を製造する方法について説明する。
金属触媒としては、例えば水酸化パラジウム炭素、パラジウム炭素、リンドラーズ(Lindlar’s)触媒等が挙げられる。特に水酸化パラジウム炭素が好ましい。
金属触媒の使用量としては、特に限定されないが、0.0005〜0.2当量が好ましい。
反応系中に共存させる水素源としては、例えば水素ガス、シクロヘキサジエン、ギ酸アンモニウム塩など、通常の脱ベンジル化に用いられる水素源を用いることができる。水素ガス、シクロヘキサジエンが好ましく、特に水素ガスが好ましい。
水素ガスを水素源として用いられる場合の水素圧は1〜10気圧が好ましく、特に1〜1.5気圧が好ましい。
反応溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、水等のプロトン性溶媒、または酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン等の非プロトン性溶媒を好ましく用いることができる。水素化工程と次のエポキシ化反応を連続して行う場合、用いる溶媒は両工程で好ましく用いることができる2−プロパノール、又は2−プロパノールと水の混合溶媒を使用するのがよい。なお該混合溶媒を使用する場合、2−プロパノールと水の割合は、2−プロパノール:水=1:1〜100:1の範囲とするのが好ましく、更には1:1〜50:1の範囲とするのが好ましい。これらの反応溶媒は各々単独で、又は1種類以上を混合して用いてもよい。
水素化の際、反応速度を上げるため反応溶液に塩基を加えてもよい。このとき用いる塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が上げられる。特に炭酸水素ナトリウムが好ましい。これらの塩基は固体として反応溶液に加えてもよいし、水溶液として用いてもよい。塩基の使用量は用いる塩基にもよるが、塩基の量が多すぎると脱クロロ化反応が進行する傾向にあり、好ましくは一般式(2)で表される化合物の使用量に対し1当量以下、特に好ましくは0.3当量以下とするのがよい。
反応温度も用いる溶媒の種類や塩基の使用量によっても異なるが、通常20〜80℃であり、好ましくは40℃〜60℃である。反応温度は、反応の途中において変更してもよい。反応時間は特に限定されないが、好ましくは30分〜24時間程度である。
反応は通常攪拌下で行われる。反応終了後、反応溶液から金属触媒を濾過等により除去し、一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物を含む溶液を得る。この際、一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物は単離することなく連続して次工程のエポキシ化反応を行うことができる。
なお金属触媒を濾去する前に、反応溶液に塩基を加え反応溶液を塩基性にすることにより一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物の反応溶液に対する溶解性を高めることができるため、金属触媒を濾去する際、クロロヒドリン化合物が析出し同時に濾去されるのを防ぐことができる。この場合、一部又は全部のクロロヒドリン化合物が一般式(1)で表されるアミノエポキシドに変換されることになる。使用する塩基としては水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液等が上げられる。特に水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。使用する塩基の量としては、水素化工程で使用した一般式(2)で表される化合物の使用量に対し0.1〜5.0当量が好ましく、特に0.1〜3.0当量が好ましい。なお既に水素化工程で塩基を使用している場合には、上記塩基の量から既に使用している塩基の量を差し引いた量を添加すればよい。
また収率を上げるため濾去した金属触媒を有機溶媒と塩基の混合溶媒で洗浄し、洗浄液を上記溶液に加えてもよい。
金属触媒を洗浄する際に使用する有機溶媒としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、水等のプロトン性溶媒、または酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン等の非プロトン性溶媒を好ましく用いることができる。特に2−プロパノールが好ましい。
金属触媒を洗浄する際に有機溶媒と混合する塩基としては水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液等が上げられる。特に水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。なお使用する塩基の量は既に使用している塩基の量と併せて一般式(2)で表される化合物の使用量に対し好ましくは5.0当量、特に好ましくは3.0当量を越えない範囲で用いるのがよい。
一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物は単離することなく連続して次工程のエポキシ化反応を行うことができる。この場合、反応溶媒としては水素化工程でも好ましく用いることができる溶媒である2−プロパノール、又は2−プロパノールと水の混合溶媒を使用するのがよい。
次に一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物に塩基を作用させることにより、一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物を得る方法について説明する。
反応に用いる有機溶媒としては、反応に悪影響を与えない有機溶媒であれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、水等を好ましく用いることができる。特に2−プロパノール、又は2−プロパノールと水の混合溶媒を使用するのがよい。これらの反応溶媒は各々単独で、又は1種類以上を混合して用いてもよい。
使用する塩基としては使用する塩基としては水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液等が上げられる。特に水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
塩基の使用量は通常2.0〜5.0当量であり、好ましくは2.0〜3.0当量である。なお水素化工程及び金属触媒を濾過する工程等で既に塩基を加えている場合は、これらの量から既に使用している塩基の量を差し引いた量で使用すればよい。
反応終了後、過剰の塩基を酸により中和する。このとき使用する酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸等が上げられる。特にクエン酸が好ましい。
酸の使用量は、用いる塩基の使用量にもよるが、例えば塩基の使用量が2.0〜3.0当量の場合には1.0〜3.0当量が好ましい。
反応は通常攪拌下で行われ、反応温度は通常−10〜40℃が好ましく、特に0〜25℃が好ましい。反応温度は、反応の途中において変更してもよい。反応時間は特に限定されないが、好ましくは30分から24時間程度である。
さらに、反応溶液を必要により濃縮して晶析することにより、あるいは必要により反応溶液から溶媒を完全に留去し他の溶媒と置換して晶析することにより、一般式(1)で表されるアミノエポキシドの結晶を得ることができる。
晶析に用いる溶媒は、2位と3位の立体配置がそれぞれS配置(すなわち(2S,3S))、又はそれぞれR配置(すなわち(2R,3R)である場合、特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のプロトン性溶媒と水との混合溶媒が好ましく、特に2−プロパノールと水との混合溶媒が好ましい。結晶化の温度としては−10〜20℃が好ましい。例えば、エポキシ化反応の反応溶媒としてこれらの溶媒を用いている場合は、そのまま(あるいは必要により濃縮し)晶析を行うことができる。
このようにして得られた一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物は必要により芳香環上のヒドロキシル基を適当な保護基で保護することもできる。
以上説明した、一連の反応は立体選択的に進行するため、目的とする化合物を高い光学純度で高収率に得ることが可能である。本発明の製造方法の好ましい態様の1例として(2S,3S)−N−カルバメート型保護−3−アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−(4−ベンジロキシフェニル)ブタンを用いて(2S,3S)−N−カルバメート型保護−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンを製造するための一連の反応スキームを下記に示す。
スキーム4
Figure 2003091233
[式中、Rは前記と同じ意味を示す。好ましい態様の1例としてtert−ブチル基を挙げることができる。]
実施例
以下に実例により本発明を更に詳細に説明するが、本実施例は本発明を何ら限定するものではない。
<参考例1>
2R−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルの塩酸塩の製造
2R−アミノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(4.75g)に1規定水酸化ナトリウム水溶液(26.2ml)、硫酸銅(2.09g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にメタノール(158ml)、2規定水酸化ナトリウム水溶液(13.1ml)を加えた後、ベンジルブロミド(3.3ml)をゆっくり加え、室温において3時間攪拌した。生成物を濾取し、メタノール(12.5ml)と水(12.5ml)の混合溶媒を用いて、結晶を洗浄した。得られた結晶に1規定塩酸水溶液(30ml)を加えて、50℃において30分間攪拌した。結晶を濾取し、さらに得られた結晶に1規定塩酸水溶液(30ml)を加えて、50℃において30分間攪拌し、結晶を濾取した。得られた結晶を水(25ml)を用いて洗浄した後、水(30ml)を加え、水酸化ナトリウムを用いてpHを6.3に調製し、結晶を濾取した。得られた結晶を乾燥し、2R−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸の結晶3.24g(収率46%)を得た。0℃において、メタノール(32.4ml)に塩化チオニル(0.959ml)を加え、この溶液に得られた2R−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸の結晶(3.24g)を加え、60℃において15時間攪拌した。この反応溶液を減圧下において濃縮した後、酢酸エチル(65ml)を加え、結晶化を行った。得られた結晶を濾取した後、減圧下において乾燥を行い、目的物の2R−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルの塩酸塩を3.30g(晶析工程の収率97%、2R−アミノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸に対する収率44%)で得た。
H−NMR(CDOD,400MHz)δppm:3.12(dd,1H,J=14.4,7.3Hz).3.19(dd,1H,J=14.4,6.0Hz),3.79(s,3H),4.27(dd,1H,J=7.4,6.0Hz),4.85(s,3H),5.08(s,2H),6.98−7.01(m,2H),7.16−7.23(m,2H),7.26−7.45(m,5H)
13C−NMR(CDOD,400MHz)δppm:37.0,54.0,55.7,71.4,117.0,127.7,129.0,129.3,129.9,132.0,139.0,160.3,170.9
マススペクトル m/e:286(M−Cl)
<参考例2>
2S−N−フェニルメチレン−2−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製造
2S−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルの塩酸塩(5.15g、国産化学株式会社製)にアルゴン雰囲気下において、ジクロロメタン(25.8ml)を加え、0℃において攪拌した。さらに硫酸ナトリウム(4.55g)、ベンズアルデヒド(1.63ml)、トリエチルアミン(2.23ml)を加え、0℃において23時間攪拌し、硫酸ナトリウムを濾去した。得られた溶液を減圧下において濃縮した。これにt−ブチルメチルエーテル(50ml)を加え、不溶物を濾去した後、得られた溶液を減圧下において濃縮することによって、目的の2S−N−フェニルメチレン−2−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルを5.16g(収率86%)得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm:3.08(dd,1H,J=13.6,8.0Hz),3.30(dd,1H,J=13.6,5.2Hz),3.74(s,3H),4.13(dd,1H,J=8.8,5.2Hz),4.99(s,2H),6.83−7.72(m,14H),7.92(s,1H)
13C−NMR(CDCl,400MHz)δppm:39.4,52.6,70.4,75.7,115.1,115.4,127.9,128.3,128.9,128.9,130.1,131.2,131.5,136.0,137.5,157.9,164.1,172.6
マススペクトル m/e:374(M+H)
<参考例3>
2R−N−フェニルメチレン−2−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製造
参考例1で得られた2R−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル、塩酸塩(3.20g)にアルゴン雰囲気下において、ジクロロメタン(8.64ml)を加え、5℃において攪拌した。さらに硫酸ナトリウム(2.83g)、ベンズアルデヒド(1.01ml)、トリエチルアミン(1.39ml)を加え、5℃において18時間攪拌した。硫酸ナトリウムを濾去し、得られた溶液を減圧下において濃縮した。t−ブチルメチルエーテル(31ml)を加え、不溶物を濾去した。さらにt−ブチルメチルエーテル(31ml)を加え、不溶物を濾去した。得られた溶液を減圧下において濃縮することによって、目的の2S−N−フェニルメチレン−2−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステルを3.01g(収率82%)得た。
<参考例4>
3S−アミノ−1−クロロ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−2−ブタノンの塩酸塩の製造
参考例2と同様の操作で得られた2S−N−フェニルメチレン−2−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル(4.0g)にブロモクロロメタン(0.905ml)、テトラヒドロフラン(15ml)、トルエン(15ml)を加え、アルゴン雰囲気下において、−78℃にて攪拌した。ノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(2.66M、5.23ml)を1時間30分かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、さらに30分間攪拌し、36%塩酸水溶液(2.39ml)とメタノール(5.40ml)の混合溶液中に反応液を一気に加え、反応を停止した。この溶液を25℃において1時間攪拌した後、生成した結晶を濾取した。得られた結晶をヘキサン(10ml)を用いて洗浄した。結晶を減圧下において乾燥し、3S−アミノ−1−クロロ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−2−ブタノンの塩酸塩を2.65g(収率73%)得た。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:2.84−3.14(m,2H),4.43−4.50(m,1H),4.52(d,1H,J=17.4Hz),4.74(d,1H,J=17.4Hz),5.08(s,2H),6.94−7.00(m,2H),7.21−7.25(m,2H),7.30−7.53(m,5H),8.73(bs,3H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:34.5,48.3,57.7,69.5,115.0,126.8,128.0,128.2,128.8,131.0,137.4,158.0,198.6
マススペクトル m/e:304(M−Cl)
<参考例5>
3R−アミノ−1−クロロ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−2−ブタノンの塩酸塩の製造
参考例3と同様の操作で得られた2R−N−フェニルメチレン−2−アミノ−3−(4−ベンジロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル(3.0g)にブロモクロロメタン(0.680ml)、テトラヒドロフラン(11.3ml)、トルエン(11.3ml)を加え、アルゴン雰囲気下において、−78℃にて攪拌した。ノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(2.66M、3.92ml)を2時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、さらに30分間攪拌し、36%塩酸水溶液(1.79ml)とメタノール(4.05ml)の混合溶液中に反応液を一気に加え、反応を停止した。この溶液を25℃において1時間攪拌した後、さらに0℃において1時間攪拌した。生成した結晶を濾取し、ヘキサン(7.5ml)を用いて洗浄した。結晶を減圧下において乾燥し、3R−アミノ−1−クロロ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−2−ブタノンの塩酸塩を2.65g(収率97%)得た。
<参考例6>
(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンの製造
ジ−tert−ブトキシカルボナート(10.4g)、炭酸カリウム(6.58g)、ジクロロメタン(135ml)、水(67.5ml)を35℃にて攪拌し、参考例4と同様の操作にて得られた3S−アミノ−1−クロロ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−2−ブタノンの塩酸塩(13.5g)を加えた。この反応溶液を35℃において、2時間攪拌した。有機層と水層を分液し、有機層を1規定塩酸水溶液(54ml)、水(54ml)を用いて洗浄した。得られた有機層を減圧下において濃縮した後、エタノール(30ml)を加え、再び減圧下において濃縮した。エタノール(144ml)を加え、室温においてナトリウムボロハイドライド(0.647g)を数回に分けて加えた。室温において2時間攪拌後、さらにナトリウムボロハイドライド(0.065g)を加え、室温において1時間攪拌した。酢酸(1.12ml)を用いて反応を停止した後、反応溶液を70℃に昇温した。この溶液を5時間かけて20℃に冷却し、20℃において10時間攪拌した。得られた結晶を濾取し、エタノール(22ml)を用いて結晶を洗浄した。さらに水(45ml、45ml)を用いて、結晶を2度洗浄した。得られた結晶を減圧下において乾燥し、目的の(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンを9.50g(収率59%)得た。このときのジアステレオ選択性は(2S,3S)/(2R,3S)=98.9/1.1であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:1.28(s,9H),2.88−2.47(m,1H),3.35−3.70(m,5H),5.05(s,2H),5.41(d,1H,J=6.0Hz),6.65(d,1H,J=8.4Hz),6.89(d,2H,J=8.8Hz),7.08(d,2H,J=8.8Hz),7.30−7.45(m,5H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:28.5,35.0,48.4,54.9,69.5,73.1,77.9,114.7,127.9,128.1,128.7,130.5,131.6,137.7,155.5,157.0
マススペクトル m/e:406(M+H)
[α]20 =7.0°(c=1.0,CHCl
融点:161〜162℃
<参考例7>
(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンの製造
ジ−tert−ブトキシカルボナート(1.92g)、炭酸カリウム(1.22g)、ジクロロメタン(25ml)、水(12.5ml)を35℃にて攪拌し、参考例5と同様の操作にて得られた3R−アミノ−1−クロロ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−2−ブタノン、塩酸塩(2.50g)を加えた。この反応溶液を35℃において、1時間30分攪拌した。有機層と水層を分液し、有機層を1規定塩酸水溶液(10ml)、水(10ml)を用いて洗浄した。得られた有機層を減圧下において濃縮した後、エタノール(5.5ml)を加え、再び減圧下において濃縮した。エタノール(27.2ml)を加え、室温においてナトリウムボロハイドライド(0.128g)を数回に分けて加えた。25℃において1時間攪拌後、酢酸(0.193ml)を用いて反応を停止したのち、反応溶液を70℃に昇温した。この溶液を5時間かけて20℃に冷却し、20℃において12時間攪拌した。得られた結晶を濾取し、エタノール(4.1ml)を用いて結晶を洗浄した。さらに水(8.2ml、8.2ml)を用いて、結晶を2度洗浄した。得られた結晶を減圧下において乾燥し、目的の(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンを1.80g(収率60%)得た。このときのジアステレオ選択性は(2R,3R)/(2S,3R)=99.0/1.0であった。
<実施例1>
(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンの製造
参考例6と同様の操作で得られた(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタン(0.250g)にエタノール(2.5ml)を加えた。さらにアルゴン雰囲気下において20%水酸化パラジウム炭素(0.0025g、川研ファインケミカル株式会社製、水分49.1%含有)を加えた後、水素雰囲気下(1気圧)、25℃において3時間攪拌した。さらに40℃において3時間攪拌した後に水酸化パラジウム炭素を濾去した。得られた溶液を減圧下において濃縮し、目的の(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンを0.191g(収率98%)得た。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:1.29(s,9H),2.46(dd,1H,J=14.0,9.6Hz),2.83−2.92(m,1H),3.30−3.65(m,5H),6.62−6.68(m,3H),6.94(d,2H,J=8.4Hz)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:28.6,34.9,48.4,54.9,73.1,77.8,115.1,129.3,130.3,155.5,155.9
マススペクトル m/e:314(M−H)
<実施例2>
(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンの製造
参考例6と同様の操作で得られた(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタン(3.83g)に2−プロパノール(38ml)を加えた。さらにアルゴン雰囲気下において20%水酸化パラジウム炭素(0.192g、川研ファインケミカル株式会社製、水分49.1%含有)を加えた後、水素雰囲気下(1気圧)、60℃において1時間30分攪拌した。この反応溶液を20℃に冷却し、6規定水酸化ナトリウム水溶液(2.93ml)加えた後、水酸化パラジウム炭素を濾去した。濾去した水酸化パラジウム炭素を2−プロパノール(7.6ml)と6規定水酸化ナトリウム水溶液(1.47ml)の混合液を用いて洗浄した。水酸化パラジウム炭素を濾去して得られた母液と洗浄液を20℃において2時間攪拌した。さらに6規定水酸化ナトリウム水溶液(0.146ml)を加え、1時間攪拌した。反応溶液に水(41.4ml)とクエン酸(1.77g)を加え反応を停止した。この溶液を3時間かけて0℃に冷却し、さらに0℃において7時間攪拌した。得られた結晶を濾取し、2−プロパノール(3.8ml)と水(11.5ml)の混合液を用いて洗浄した。さらに水(38ml、38ml)を用いて2度洗浄した。得られた結晶を減圧下において乾燥し、目的の(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンを2.39g(収率91%)得た。HPLCによるキラル分析の結果、光学純度が99.5%以上であることを確認した。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:1.30(s,9H),2.54−2.68(m,3H),2.73(dd,1H,J=14.0,4.4Hz),2.85−2.89(m,1H),3.37−3.45(m,1H),6.64(d,2H,J=8.4Hz),6.78(d,1H,J=8.8Hz),6.98(d,2H,J=8.4Hz),9.14(s,1H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:28.5,36.6,44.9,53.4,53.6,78.0,115.2,128.7,130.3,155.6,155.9
マススペクトル m/e:280(M+H)
[α]20 =−3.8°(c=1.0,MeOH)
融点:160〜161℃
<実施例3>
(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンの製造
参考例7と同様の操作で得られた(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタン(1.70g)に2−プロパノール(17ml)を加えた。さらにアルゴン雰囲気下において20%水酸化パラジウム炭素(0.085g、川研ファインケミカル株式会社製、水分49.1%含有)を加えた後、水素雰囲気下(1気圧)、60℃において2時間攪拌した。この反応溶液を20℃に冷却し、6規定水酸化ナトリウム水溶液(1.40ml)加えた後、水酸化パラジウム炭素を濾去した。濾去した水酸化パラジウム炭素を2−プロパノール(3.4ml)と6規定水酸化ナトリウム水溶液(0.698ml)の混合液を用いて洗浄した。水酸化パラジウム炭素を濾去して得られた母液と洗浄液を20℃において1時間30分攪拌した。反応溶液に水(18.3ml)とクエン酸(0.805g)を加え反応を停止した。この溶液を3時間かけて0℃に冷却し、さらに0℃において12時間攪拌した。得られた結晶を濾取し、2−プロパノール(1.7ml)と水(5.1ml)の混合液を用いて洗浄した。さらに水(17ml、17ml)を用いて2度洗浄した。得られた結晶を減圧下において乾燥し、目的の(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンを1.07g(収率91%)得た。
<参考例8>
(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンの製造
参考例5において結晶を濾取する際に生じた母液を分析したところN−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンが2.97g((2S,3S)/(2R,3S)=42.0/58.0)含まれていた。この溶液を減圧下において濃縮した。得られた結晶に水(50ml)を加え、室温において1時間攪拌し、結晶を濾取した。さらにヘキサン(7.5ml)と酢酸エチル(7.5ml)の混合液を加え、室温において1時間攪拌した。結晶を濾取し、減圧下において乾燥を行い、(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタンを1.05g(回収率35.3%、(2S,3S)/(2R,3S)=84.5/15.5)得た。
<実施例4>
(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンの製造
参考例8の操作で得られた(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタン(0.915g、(2S,3S)/(2R,3S)=84.5/15.5)に2−プロパノール(9.2ml)と5%炭酸水素ナトリウム水溶液(0.379mg)を加えた。さらにアルゴン雰囲気下において20%水酸化パラジウム炭素(0.046g、川研ファインケミカル株式会社製、水分49.1%含有)を加えた後、水素雰囲気下、40℃において30分間攪拌した。水酸化パラジウム炭素を濾去し、濾去した水酸化パラジウム炭素を2−プロパノール(1.8ml)と6規定水酸化ナトリウム水溶液(1.08ml)の混合液を用いて洗浄した。得られた反応溶液を20℃において2時間攪拌した。この反応溶液に水(9.4ml)とクエン酸(0.433g)を加え反応を停止した。この反応溶液を0℃において1時間攪拌し、得られた結晶を濾取した。結晶を2−プロパノール(0.75ml)と水(2.3ml)の混合液を用いて洗浄し、さらに水(9.2ml、9.2ml)を用いて洗浄した。得られた結晶を減圧下において乾燥し目的の(2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンを0.466g(収率74%、(2S,3S)/(2R,3S)=97.7/2.3)得た。
<比較例1>
参考例7と同様の操作で得られた(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−4−(4−ベンジロキシフェニル)−1−クロロ−2−ヒドロキシブタン(93.4g)に2−プロパノール(1.86ml)、6規定水酸化ナトリウム水溶液(0.058ml)加え、20℃において1時間攪拌し、原料が消費されたのを確認し、クエン酸(7.4mg)を加えて反応を停止した。アルゴン雰囲気下において20%水酸化パラジウム炭素(4.7mg、川研ファインケミカル株式会社製、水分49.1%含有)と水(0.560ml)を加え、水素雰囲気下、60℃において攪拌した。1時間後、HPLCを用いて反応を分析したところ、中間体の(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ベンジロキシフェニル)ブタンの脱ベンジル化が進行し、目的の(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンが生成しているのを確認した(76.2エリア%)。さらに16時間攪拌した後、再びHPLCを用いて反応を分析したところ、目的の(2R,3R)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−1,2−エポキシ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタンは9.5エリア%となり多数の不純物が確認された。この結果はエポキシ化合物を合成した後に脱ベンジル化を行った場合、脱ベンジル化反応の制御が困難であることを示している。
産業上の利用可能性
本発明によれば上記一般式(1)で表されるアミノエポキシドを高い光学純度で高収率に製造することができる。
本出願は、日本で出願された特願2002−127579を基礎としており、その内容を本明細書中に全て包含する。

Claims (3)

  1. 一般式(2)
    Figure 2003091233
    [式中、Rはアルキル基またはフルオレニルメチル基を示し、nは1又は2の整数を示し、*は不斉炭素原子であり、独立にR又はS配置であることを示し、Pは置換基を有していてもよいベンジル基を示す。]
    で表される化合物を金属触媒存在下において水素化を行い、一般式(3)
    Figure 2003091233
    [式中、R、n及び*は前記と同じ意味を示す。]
    で表されるクロロヒドリン化合物とした後、該クロロヒドリン化合物を塩基で処理することを特徴とする、一般式(1)
    Figure 2003091233
    [式中、R、n及び*は前記と同じ意味を示す。]
    で表されるアミノエポキシド化合物の製造方法。
  2. 一般式(1)で表されるアミノエポキシド化合物、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表されるクロロヒドリン化合物の2位と3位の立体配置がそれぞれS配置、又はそれぞれR配置である請求項1記載の製造方法。
  3. 式中、Rがtert−ブトキシカルボニル基であり、nが1であり、芳香環上の置換位置が4位である請求項1または2いずれか記載の製造方法。
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