JPWO2003084571A1 - 骨感染症治療用組成物 - Google Patents
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Abstract
手術に於ける感染治療のための、抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の組成物を提供する。安全性及び生体適合性に優れ、また適切な抗菌性物質や生理活性物質の徐放性を有するため抗菌と骨再生の効果に優れた組成物を提供する。手術に於ける人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症の治療に優れた組成物として提供する。(1)抗菌性物質と多糖を含有して成る骨感染症治療用組成物を構成とする。
Description
技術分野
本発明は、骨感染症の治療のための、抗菌性物質と多糖と、好ましくは更に生理活性物質とを含有して成る組成物、すなわち、骨感染症治療用組成物に関する。詳しくは、整形外科手術後に発生した骨感染症、或いは非手術的に発生した急性/慢性の骨髄炎などの骨感染症を治療するための、例えば、ゲンタマイシンなどの抗菌性物質と、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸ゲルなどで例示される生分解性の多糖と、好ましくは更に生理活性物質とを含有して成る組成物に関する。
背景技術
人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症、或いは非手術的に発生した急性又は慢性の骨感染症は、患者と医療機関への時間及び経済的な負担が大きく重大な問題となっている。
人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の感染は、化膿菌による骨感染症である骨髄炎を発症させる。骨髄炎は、全身症状として高熱、悪寒、嘔吐、脱水などの菌血症症状を引き起こしたり、局所症状として疼痛、圧痛、熱感、そして局所に腐骨を形成し、擬関節の発症や瘻孔の原因となる場合もある。
この骨感染症の予防を目的に感染病巣の根治、術前/術中の抗生物質の投与、器具/手術着の滅菌が行われている。更にバイオ・クリーンルームなど等の無菌手術が活用されてはいるが完全に予防することは難しい。
このような手術を行っているにもかかわらず、特に人工関節手術の患者は、免疫能の低減した高齢者、関節リウマチ罹患者が多いことから、感染症の発症を完全に抑えることは困難で、その感染率は全手術症例の約1%に達している。
治療法としては現行では確立されたものはなく、多くは人工関節の抜去を行ったうえで、感染部を掻爬/洗浄し、抗生物質による洗浄が行われている。これらは一般的に治療が困難な場合が多くあり、抜去しても根治が困難なときには、場合によっては切断など、患者に多大な苦悩を強いる場合がある。更にこれら治療には長期の入院と高額な治療費が必要であり、患者のみならず医療機関及び医療財政などにも大きな負担となり社会問題となっている。
同様に非手術的に発生した外傷性の急性/慢性の骨髄炎に於いても難治性であり、複数回の洗浄、掻爬手術を行っても感染巣を根治できない場合があることが知られている。
血行性の非手術的に発生した慢性の骨髄炎も知られており、時として骨の壊死を誘発し擬関節や骨頭壊死の原因となり予後の悪いものとされる。
このような患者の治療法としては、切断または関節の固定術が現在でも、なお行われており、社会的に問題とされている。
これらの何れの原因によって発生した骨感染症の治療に於いても、現行では特効的なものは無く、姑息的で結果が不満足な治療が行われているに過ぎない。
これらの治療には抗生物質の投与が行われる。全身投与では感染局部に於ける有効濃度を維持するには多量の抗生物質を投与しなければならず、そのため大きな副作用や耐性菌の出現などの問題を引き起こしやすい。
また、人工関節置換後の骨感染症の局所治療用にポリメチルメタアクリレート(骨セメント)に抗生物質を添加混合し感染部に埋め込み治療することも行われてきた。
これは、骨セメントと抗生物質の添加混合物を連鎖状のビーズに成形し、関節及び骨髄感染部に長期にわたり充填するものであり、局所的抗生物質化学療法として特に適している。
しかし、骨セメントは異物であり生体に吸収されないため、再び取り除かねばならない必要がある上に、抗生物質の徐放性も決して満足するには至らないと考えられる。セメントビーズの具体的な方法としては、連鎖状のビーズの末端を皮膚縫合部から突出させておき、感染治療の終了する約2週間後にこのビーズ末端を引っ張り、全部を引き出すことにより行われる。
このビーズの挿入から引き出しの約2週間、患者は患部の固定や安静、入院が必要になるため、苦痛や経済的な負担が大きい問題があった。
骨セメントの再び取り除かねばならない欠点を改良する手段として、生分解性の担体を用い投与剤形を工夫し、抗菌性物質の効果をより発揮させる試みがなされてきた。
この生体吸収性の材料としては、生体吸収性が制御でき、生体適合性が高いものが望ましく、例えば、生体由来のタンパク質であるフィブリン糊、コラーゲン、ゼラチン等が挙げられる。また有機酸である乳酸を高分子化したポリ乳酸などが挙げられる。
例えば、フィブリン糊は、フィブリノーゲン溶液にスロンビンを加え固化させる血液凝固の原理を用いた生体接着糊である。骨欠損の充填の際、骨移植部位にフィブリン糊を用いることは公知であり、外科手術に於ける接着剤として用いられている。そして、このフィブリン糊に、ゲンタマイシンを混合し、感染部位に充填する処置法の試みが、骨感染症の治療用としてのフィブリン/抗生物質ゲルおよびその製造方法として開示されている(特公昭56−501129号、特表平9−502161号)。
しかし、フィブリン糊は、血液凝固の原理を用いているため、ゲル化させる時間を制御できても、生体内で分解される時間を必要に応じて制御することは基本的に難しく、薬物を対照部位に適切な濃度かつ時間で、作用させることは難しかった。
また、フィブリン糊はそれ自身が硬く固化するため、ゲル表面からの薬物の溶出の面からは有効であるが、ゲル内部からの徐放性はあまり期待できないなどの問題点があった。更に、フィブリン糊は、ヒト血液が原料の血液製剤であるため、C型肝炎、エイズ、その他、未知ウイルスの感染源としての危険性が否定できなかった。
生体の主要なタンパク質の構成成分であるコラーゲンやゼラチンは近年、再生医療で骨や軟骨の再生の基質として用いられるなど生体吸収性の材料としては特に適している。そして、このゼラチンを架橋したゲルに、抗生物質を混合し、骨感染症の局部に充填する処置法の試みが、骨髄炎の治療方法として開示されている(米国特許第4,587,268号)。
しかし、原料がウシなど動物起源であるため、狂牛病その他、未知ウイルスの感染源としての危険性が否定できない。またアテロコラーゲンなど、どんなに抗原性の無効化の処理がなされていても、異種由来のタンパクであるため抗原性の問題は否定できなかった。
有機酸である乳酸を高分子化したポリ乳酸も近年、生体吸収性の骨接合用インプラントのネジなどに用いられるなど生体吸収性の材料として開発されている。そして、このポリ乳酸のマイクロカプセルに、抗生物質などを混合し、感染部位に充填する処置法の試みが、骨髄炎の治療方法として開示されている(米国特許第6,309,669号)。
しかし、基本的な物性は堅くて脆く適応が限定され、さらに生分解されると乳酸が産生するためpHが酸性側に傾き、創傷治癒に影響を及ぼす危険性が否定できなかった。
抗菌性物質と多糖を含有して成ることを特徴とする組成物は、各種のものが知られている。例えば、眼科領域に於いてヒアルロン酸などに抗生物質であるストレプトマイシンやペニシリンなどを配合した点眼剤(特開昭60−84225号)、整形外科領域ではヒアルロン酸やその誘導体に抗生物質などを配合した欠損した骨の置換剤(WO93/20858号)が知られている。また腹腔内の感染防止や治療にヒアルロン酸に抗菌性物質を配合すること(特開平09−208476号)や、角膜の貯蔵用溶液にヒアルロン酸に抗菌性物質を配合すること(特表2000−508637号)や、関節炎治療材にヒアルロン酸やその誘導体に抗生物質などを配合すること(特表2000−512650号)が知られている。
これまで、多糖、特に生分解性の多糖を用いて抗菌性物質の放出を制御する骨感染症、特に人工関節の感染症治療を目的とした組成物は、開発されていなかった。我々は、多糖、特に生分解性の多糖の整形外科手術に於ける感染症治療への適用の可能性を鋭意検討した結果、ヒアルロン酸やカルボキシメチルセルロースなどの生分解性の多糖が、極めて高い有用性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
発明の開示
本発明は、(1)抗菌性物質と多糖を含有して成ることを特徴とする骨感染症治療用組成物、(2)骨感染症が、外傷性の骨感染症であることを特徴とする(1)記載の組成物、(3)骨感染症が、血行性の骨感染症であることを特徴とする(1)記載の組成物、(4)骨感染症が、人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症であることを特徴とする(1)記載の組成物、(5)多糖が、生分解性の多糖及び/又は多糖ゲルであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物、(6)多糖が、酸性多糖であることを特徴とする(5)記載の組成物、(7)酸性多糖が、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸ゲルであることを特徴とする(6)記載の組成物、(8)酸性多糖が、カルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロースゲルであることを特徴とする(6)記載の組成物、(9)ヒアルロン酸ゲルが、重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成されている架橋ヒアルロン酸であることを特徴とする(7)記載の組成物、(10)架橋ヒアルロン酸の架橋点が加水分解性であることを特徴とする(9)記載の組成物、(11)架橋ヒアルロン酸の架橋構造がエステル結合であることを特徴とする(9)又は(10)記載の組成物、(12)架橋ヒアルロン酸の架橋構造が自己架橋エステル結合であることを特徴とする(11)記載の組成物、(13)抗菌性物質が、ゲンタマイシン、バンコマイシン、及びミノマイシンからなる群から選ばれた1種であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の組成物、(14)シート状、フィルム状、ロッド状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状、及びチューブ状からなる群から選択した1種であることを特徴とする(13)記載の組成物である。
発明の実施の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる多糖は、動物/植物組織から抽出したものでも、また発酵法で製造したものでも、その起源を問うことなく使用できる。さらに生体内に適用し分解され、本質的に抗原性が無く、優れた生体適合性を有することが望ましい。なお、本発明にいう多糖は、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、又はリチウムの塩をも包含する概念で使用される。
本発明に用いられる多糖の例としては、グリコサミノグリカン類(ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等)、コンドロイチン硫酸塩(コンドロイチン−6−硫酸等)、ケラチン硫酸塩、ヘパリン、ヘパラン硫酸塩、アルギン酸又はその生物学的に受容な塩、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、澱粉、アミロース、カラギーナン等が挙げられる。また、合成的誘導体の多糖類としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、種々のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシキセルロース又は酸化再生セルロース等が挙げられる。
本発明に用いられる生分解性の多糖としては、多糖をゲル化させる際の反応性の観点で特に酸性多糖が好ましい。中性多糖は主に水酸基が占めるのに対し、酸性多糖はウロン酸や硫酸基やカルボキシル基などを多く含み、これらは水酸基に比較し反応性に富むため多糖をゲル化させる際の化学反応に好適である。
本発明に用いられる生分解性の酸性の多糖としては、例えばヒアルロン酸やカルボキシメチルセルロースなどが例示される。ヒアルロン酸は、ヒトなど動物の細胞間の潤滑や接着、足場である細胞外マトリクスの主要で共通な成分であり、関節液、目の硝子体、鶏冠に多量に含まれており、β−D−N−アセチルグルコサミンとβ−D−グルクロン酸が交互に結合した直鎖状の高分子である。ヒアルロン酸はヒトの生体の構成成分そのものであるため本質的に抗原性が無く生体適合性の観点からは理想的である。このため変形性膝関節症の治療薬や眼科手術補助剤や癒着防止材等に用いられている。
本発明に用いられる多糖ゲルは特に限定されないが、生体適合性に優れた酸性の多糖ゲルが好適であり、例えばヒアルロン酸のゲルが例示される。
なおゲルとは、新版高分子辞典(朝倉書店 昭和63年)によれば、「あらゆる溶媒に不溶の三次元網目構造をもつ高分子及びその膨潤体」と定義、また理化学辞典(岩波書店 第4版 昭和62年)によれば、「ゾル(コロイド溶液)がジェリー状に固化したもの」と定義されている。
これらの代表的なものとしては、酸性の多糖であるヒアルロン酸をジビニルスルホン、ビスエポキシド類、ホルムアルデヒド等の二官能性試薬を用いて架橋した架橋ヒアルロン酸ゲル(米国特許第4,582,865号明細書、特公平6−37575号公報、特開平7−97401号公報、特開昭60−130601号公報参照)を挙げることができる。
本発明者は、ヒアルロン酸自体が本来有する生体材料としての理想的な特性を損なうことなく、ヒアルロン酸を架橋し、ゲル化する方法(WO99/10385など)を提案し、以下のような事実を見出した。
即ち、何ら架橋剤等を用いずにゲル化した難水溶性ヒアルロン酸ゲルや難水溶性カルボキシメチルセルロースゲル(PCT/JP00/05564号)は、特に、何ら架橋剤等を用いずにゲル化しているため生体適合性や安全性の観点から特に好ましい。
更に得られた架橋ヒアルロン酸の分子構造の精査と製造条件の検討を行い、その結果、ヒアルロン酸の優れた特性を損なうことなく重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成された架橋ヒアルロン酸(特願2002−314090号)を用いると抗菌性物質と生理活性物質の保持の制御の観点からから好ましい。
架橋ヒアルロン酸のヒドロゲルの表面は高分子量ヒアルロン酸の分子鎖を有しており、高分子量ヒアルロン酸の有する各種特徴、すなわち陰性高分子電解質であるヒアルロン酸が各種のサイトカイン、特に陽性荷電する生理活性物質と高いイオン的相互作用を持ち、高い担持能を有する。
すなわち、この方法で得た架橋ヒアルロン酸に抗生物質、生理活性物質を担持させた組成物は、高分子量のヒアルロン酸を有している架橋ヒアルロン酸のヒドロゲルが骨欠損部分に対して高い親和性を有しているので、高い骨組織の再生能を有する。
本発明の骨感染症治療用組成物は、上記の多糖と抗菌性物質と含有するが、両者の含有量は、多糖/抗菌性物質の比率が好ましくは、1:9〜9:1なるように選ばれる。
本発明の骨感染症治療用組成物は、上記の多糖及び多糖ゲルの分子量、濃度、架橋剤の種類や量、反応時間等の条件を変えることで、抗菌剤や生理活性物質の徐放性と生体吸収性の異なる種々の組成物を形成することができる。
例えば、難水溶性ヒアルロン酸ゲル(WO99/10385など)の場合、ヒアルロン酸の分子量、濃度、等の条件を変えることで、抗菌性物質や生理活性物質の徐放性と生体吸収性の異なる種々の難水溶性ヒアルロン酸ゲルを形成する。
本発明に係わる組成物は、イオン結合、水素結合、共有結合等により、抗菌性物質や生理活性物質の活性を損なうことなく保持することができる。
多糖及び/又は多糖ゲルと抗菌性物質や生理活性物質とのイオン結合や水素結合などの相互作用が比較的大きい場合、抗菌性物質や生理活性物質は、多糖及び/又は多糖ゲル自身の生分解により徐放される。
一方、多糖及び/又は多糖ゲルと抗菌性物質や生理活性物質とのイオン結合や水素結合などの相互作用が比較的小さい場合でも、抗菌性物質や生理活性物質は膨潤して水分を多量に含有したその中に保持される。従って、多糖及び/又は多糖ゲルの中と外との抗菌性物質や生理活性物質の濃度勾配に応じた拡散による放出や、多糖及び/又は多糖ゲル自身の生分解により徐放される。
本発明に係わる組成物の抗菌性物質や生理活性物質の保持時間は、多糖ゲルの生分解性を変えることで制御することができる。また抗菌性物質や生理活性物質との非共有結合の相互作用を、多糖の種類や濃度などで制御し、抗菌性物質や生理活性物質の保持時間を変えることができる。
本発明に用いられる抗菌性物質としては、特にグラムネガティブ細菌にもグラムポジティブ細菌にも有効な広域な抗菌スペクトラムを有するゲンタマイシンが挙げられる。ゲンタマイシンはアミノグリコシド系の抗生物質で、非経口の局所投与として外科手術でも一般的に用いられている。
その他、ベータラクタム抗生物質の例としては、ペニシリン系のものはアンピシリン、アモキシシリン、ベニシリンG、カルベニシリン、タカルシリン、及びメチシリンなどが挙げられる。またセファロスポリン系のものは、セファクロル、セファロドキシル、セファマンドール、セファゾリン、及びセフォペラゾンなどが挙げられる。その他ベータラクタム抗生物質の例としては、アズトレオナム、イミペネムなどが挙げられる。
また、マクロライド系の抗生物質としては、エリスロマイシンなどが挙げられる。またアミノグリコシド系の抗生物質の例としては、ストレプトマイシン、ネオマイシン、リンコマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、シソマイシンなどが挙げられる。
また、ポリペプチド系の抗生物質の例としては、バシトラシン、ノボビオシンなどが挙げられる。
本発明に係わる組成物は、その使用目的に応じて多糖及び/又は多糖ゲルを、抗生物質溶液又は抗生物質や生理活性物質を含有した多糖溶液に浸漬し、風乾、減圧乾燥あるいは凍結乾燥等の処理を経た乾燥状態に成形することができる。
または、抗生物質溶液や生理活性物質溶液または抗生物質や生理活性物質を含有した多糖溶液に浸漬したまま湿潤状態でも同様に成形することができる。
本発明に係わる組成物は、その適用部位によりシート状、フィルム状、ロッド状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状、又はチューブ状からなる群より選択できる。
本発明の組成物の生理活性物質としては、薬学的又は生理学的に活性な次のような物質が例示される。例えば、BMP、TGFなど骨形成を促進し治癒させる働きを有する生理活性物質等を混合、複合化させることができるものであり、何ら制限されないものである。
生理活性物質としては、骨細胞の成長を促進する因子が挙げられ、例えば、BMP、FGF、VEGF、HGF、TGF、CSF,EPO、IL及びIF等が挙げられる。これらの生理活性物質は、組み換え法により製造してもよく、あるいは蛋白組成物から精製してもよい。BMPはrhBMP−2、rhBMP−3、rhBMP−4、rhBMP−5、rhBMP−6、rhBMP−7(rhOP−1)、rhBMP−8、rhBMP−9、rhBMP−12、rhBMP−13、rhBMP−15、rhBMP−16、rhBMP−17、rhBMP−18、rhGDF−1、rhGDF−3、rhGDF−5、rhGDF−6、rhGDF−7、rhGDF−8、rhGDF−9、rhGDF−10、rhGDF−11、rhGDF−12、rhGDF−14を包含する。そしてこれらはBMPファミリーと言うことができる。さらに、これらのホモダイマー、ヘテロダイマー、修飾体、部分欠失生成物、あるいは2種またはそれ以上の混合物として使用できる。例えば、BMPとアクチビン、インヒビンおよびTGF−β1のごときTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーとのヘテロダイマーであってもよい。
本発明に係わる組成物は、様々な分野の骨感染症の治療に用いることができ、特に人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症に好適である。
例えば、人工股関節の場合は、人工臼蓋コンポーネント側の適用には、シート状、フィルム状、スポンジ状が局所への貼付に好適である。また大腿骨側コンポーネント側の適用には、コンポーネントへのシート状、フィルム状の貼付が好適である。または例えば、骨髄腔には、シート状、フィルム状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状の充填が好適である。
本発明で言う重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成された架橋ヒアルロン酸とは、架橋ヒアルロン酸の架橋点を切断したとき、重量平均分子量が80万より大きい直鎖状のヒアルロン酸が生成することを意味する。架橋点を切断することによって生成するヒアルロン酸の重量平均分子量と分岐度はGPC−MALLSによって容易に測定することができる。
なおこれまで架橋ヒアルロン酸の合成目的は、生体内の貯留性の向上にあったため、得られた架橋ヒアルロン酸を構成するヒアルロン酸分子の分子量が考慮された例、及び実際にその分子量が測定された例はない。
本発明で言う架橋ヒアルロン酸の架橋点が加水分解性であるとは、生理的な条件下、例えば37℃、pH7.4、生理的食塩水中で、ヒアルロン酸の主鎖分解に優先して架橋点が分解する性質を意味する。
ヒアルロン酸の主鎖分解よりも加水分解性の優れている架橋構造は、カルバメート結合、ヒドラゾン結合、ヒドラジド結合やリン酸エステル結合などが挙げられるが、最も代表的な構造はエステル結合である。
架橋構造がエステル結合である架橋ヒアルロン酸としては、多価アルコールとヒアルロン酸のカルボキシル基のエステル、多価カルボン酸とヒアルロン酸の水酸基とのエステル、多価エポキシ化合物とヒアルロン酸のカルボキシル基のエステルなどが挙げられる。
架橋構造が自己架橋エステル結合である架橋ヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸のカルボキシル基と水酸基間が直接エステル結合した架橋ヒアルロン酸である。
自己架橋エステル結合ヒアルロン酸の製造方法は、一部またはすべてのカルボキシ基が同一の多糖鎖または他の多糖鎖のアルコール基でエステル化された、自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がEP0341745B1に、HAの水溶液を酸性に調整し、該水溶液を凍結し、次いで解凍することを少なくとも1回行うことによって生成する自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がWO99/10385に開示されている。
自己架橋エステル結合ヒアルロン酸の安全性は、加水分解により放出される天然のヒアルロン酸が生理学的代謝経路により代謝されるので、別の架橋反応により製造された架橋ヒアルロン酸より良好である可能性がある。
以下、本発明を実施例により具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
分子量が2×106ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、1質量%のヒアルロン酸の水溶液を調整した。調整されたヒアルロン酸の水溶液のpHは、6.0であった。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整した。ヒアルロン酸の酸性水溶液2mlを2.5×4.0cm(10cm2)のシャーレに入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。6日間放置した後、25℃で解凍した。その結果、シート状のヒアルロン酸ゲル(「HAゲル」という)が得られた。次にこれを生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整したpH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃で24時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄した。
そして、これを2枚の板に挟んで圧延し、ゲンタマイシン(「GM」という)を0.1mgを含有した蒸留水2mlを加え5℃で1時間、膨潤させた後、凍結乾燥した。その結果、GMを0.1mgを含有した2.5×4.0cmのシート状のHAゲルを得た。
実施例2
GMを1.0mg含有した蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのGMを1.0mgを含有したHAゲルを得た。
実施例3
GMを10.0mg含有した蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのGMを10.0mg含有したHAゲルを得た。
実施例4
GMを100.0mgを含有した蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのGMを100.0mgを含有したHAゲルを得た。
比較例1
蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのHAゲルを得た。
比較例2
GMを含有したフィブリンゲルは、「ティシール」(日本臓器(株)輸入販売、イムノ社(オーストリア)製、生物学的組織接着剤)を用いて作成した。「ティシール」のキット構成のうちティシール用フィブリノーゲン溶液0.2mlにGM10mgを無菌条件下に混合し、次にティシール用トロンビンL溶液0.2mlを加えゲル化させる。可塑加工性が維持できる約1〜3分間の間に、このGMを含有したフィブリンゲルを直径2mmの大腿骨セメントレスステム(日本Zimmer社製)の表面に均一になるように塗布した。なお大腿骨セメントレスステムは、実際にヒトの人工関節置換手術に用いられているのと同様にポーラスコートしたものを新たに作成し用いた。
その結果、GMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布した大腿骨セメントレスステムを得た。
実施例5
GMを含有したHAゲルのマウス骨折モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その1
8週令雄のBalb/cマウスをペントバルビタール(20mg/kg)で麻酔し、膝関節を外科的に展開して大腿骨を露出した。展開した大腿骨にクーパーで横骨折を加え、骨折部から23Gの注射針でMSSA(黄色ブドウ球菌、菌株名S.aureus FDA209P)を105個/0.1mlのを骨髄腔内に注入した。そして実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた0.8mmのKirshner wire(K−wire)と、巻きつけないK−wireのみの2種類を、膝関節に挿入し、骨折を整復した。
実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート投与群と、非投与の2群の各群5匹、合計10匹のマウスを処置4週後にCO2で安楽死させ、大腿骨を摘出してソフテックスレントゲン(FUJI 100)撮影を行い骨折の治癒具合を比較検討した。撮影条件は50KVp、12mA、3秒のレントゲン照射で行った。
図1の処置4週後のマウス大腿骨のレントゲン撮影結果に示すように、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート投与群は、5匹全例で骨折が治癒していた。しかし、図2のGMを含有したHAゲルシート非投与群は、5匹全例で骨折治癒過程が阻害され偽関節となっていた。
実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートは骨の感染病巣に対して有効であることから、感染による人工関節再置換術の組成物として有益なものであると考えられる。
実施例6
GMを含有したHAゲルのマウス骨折モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その2
実施例1〜4のGMを含有したHAゲルシートを用いる以外は、実施例5と同様な操作を行った。実施例1,2,3,4の各々0.1mg,1mg,10mg,100mgのGMを含有したHAゲルシート4群の各群5匹、合計20匹のマウスを処置1週間後にCO2で安楽死させ、大腿骨を摘出して骨折部周囲の軟部組織を採取して化学天秤を用いて組織の重量を測定した。その後、標本に1mlのリン酸バッファー(pH7.0)を加え、ポリトロンにてホモジネートした。乳濁液を生理食塩水で1×103まで希釈した。この希釈溶液100μlを5%羊血液寒天培地(BBL)で35℃、24時間培養してコロニーをカウントした。最後に標本の重量をグラム換算して1mgあたりの標本に含まれる菌数を定量化した。
図3に示すように、GM濃度に依存して抗菌力が強まり、十分な抗菌効果には10mg以上GM濃度が必要なことが明らかとなった。GMを含有したHAゲルシートは骨の感染病巣に対して有効であることから、感染による人工関節再置換術の組成物として有益なものであると考えられる。
実施例7
GMを含有したHAゲルのマウス骨折モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その3
比較例1のGMを含有しないHAゲルシート及び実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを用いる以外は、実施例6と同様な操作を行った。実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート群は処置0,1,2,7,14日後、各5匹を実施例6と同様の方法により骨折部周囲の軟部組織の菌数を数えた。比較例1のGMを含有しないHAゲルシート群は処置1,2,7,14日後、各5匹を実施例6と同様の方法により骨折部周囲の軟部組織の菌数を数えた。
図4に示すように、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート群は7日目で統計学的に有意な菌数の減少が確認された。一方、比較例1のGMを含有しない群でも14日目で菌数が減少するが、これはマウス本来が持つ菌に対する生体の抵抗性が出現したためではないかと推察された。しかし14日目でも実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート群の方が比較例1のGMを含有しない群より有意に菌数が少ないことが明らかとなった。
実施例8
GMを含有したHAゲルのウサギ骨髄炎モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その1
9ヶ月齢、平均体重3.5kgのリタイアー家兎(チャールズリバージャパン)をペントバルピタール(20mg/kg)で麻酔し、膝関節を外科的に展開して大腿骨を露出した。そしてドリルバーを用いて展開した膝関節に直径2mmの穴を開けた。ここに105個/0.1mlのMSSA溶液を注入するものと、注入しないもの2種類を作成した。
そして、実際にヒトの人工関節置換手術に用いられているのと同じポーラスコートした直径2mmの大腿骨セメントレスステム(日本Zimmer社製)を作成し以下の試験に用いた。
MSSA溶液を注入するものには、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた大腿骨セメントレスステムと、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけた大腿骨セメントレスステムの2種類を、膝関節に挿入し、整復した。またMSSA溶液を注入しないものには、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた大腿骨セメントレスステムと、巻きつけない大腿骨セメントレスステムのみの2種類を、膝関節に挿入し、整復した。
MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群、MSSAを注入し比較例1のGMを含有しないHAゲルシートのステム挿入群、MSSAを注入せず実施例3の10mgGM HAゲルシートを巻きつけたステム挿入した群、MSSAを注入せずHAゲルシートを巻きつけないステム挿入群の4群の各群6匹、合計24匹を、処置8週間後CO2で安楽死させ、挿入したステムを含む大腿骨を取り出し、摘出した大腿骨のレントゲン学的検討を加えた。
レントゲン撮影にはソフテックス(Fuji 100)を用い、撮影条件は52KVp、12mA、3秒で行った。レントゲン撮影後、検体を70%エタノールで室温下に1日固定した。その後80%エタノールで12時間、95%エタノールで12時間、100%エタノールで1日の固定を続けた。検体の包埋は、99%メチルメタクリレートモノマー(MMA)で3日間行った。最後にMMA/Perkadox16に標本を10分間つけて硬性組織標本とした。この棒状となった検体をdiamond wire saw(DDK,Delaware,USA)で0.5mmの厚さに切り病理組織標本とした。染色はメチレンブルーで60℃、8分間行った。
MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを挿入した群では6匹中2匹が死亡した。また残った4匹も他の群と比較して有意な体重減少(実験終了時平均2.2kg)と全身の島状の脱毛ならびに毛の逆立ちが認められ骨髄炎から敗血症を併発した事ものと考えられた。しかし、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートにより局所的にGMが投与された他の3群では実験終了時まで全ての家兎が生存し、体重は実験開始時よりも低下したものの統計学的に有意な体重減少は見られず(平均体重:コントロール3.1kg,MSSA非投与群3.2kg,GMを10mg含有したHAゲルシート挿入群2.9kg)、また家兎の体毛の変化も観察されなかった。
レントゲン変化では、図5の上面図及び図6の側面図に示すように、MSSA非投与の状態でステムを挿入した群では、骨萎縮や骨融解像などの骨髄炎の所見は観察されなかった。
一方、図7の上面図及び図8の側面図に示すように、MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステムを挿入した群ではMSSAが注入されたと考えられる部位を中心に明らかな骨萎縮や骨融解像が観察され骨髄炎を併発していると考えられた。またこの群では大腿骨摘出時に骨髄腔からの明らかな膿の流出も確認された。
しかし、図9の上面図及び図10の側面図に示すように、MSSAを注入していても実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート巻きつけたステムを挿入した群ではレントゲン上骨髄炎の所見は明らかに抑制されていた。また大腿骨摘出時の肉眼的な膿の流出も確認されなかった。
ステムを入れた大腿骨の病理組織を観察したところ、図11に示すように、コントロール群であるMSSA非投与の状態でステムを挿入した群では骨からステムに伸びる明らかな骨の進入が観察された。
また、図12に示すように、MSSAを注入せず実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた群でもコントール群と同様に骨のステムへの進入が観察された。これよりHAゲルシートはポーラスコーテッドステムの骨の進入を妨げないことが証明された。
一方、図13に示すように、MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけた群ではステム周囲の骨は融解しており骨の進入の像は確認されなかったばかりか、ステム周囲の菌体と膿瘍の形成が観察された。
しかし、図14に示すように、MSSAを注入していても実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを挿入した群では組織学的にも骨のステムへの進入が確認され、ステム周囲の菌体や膿瘍も観察されなかった。
実施例9
GMを含有したHAゲルのウサギ骨髄炎モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その2
比較例2のGMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布したステムを用いることと、MSSAを注入しないこと以外は、実施例8と同様な操作を行った。
MSSAを注入せず実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステムを挿入した群と、MSSAを注入せず比較例2のGMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布したステムを挿入した群の2群の各群6匹、合計12匹を、処置8週間後CO2で安楽死させ、挿入したステムを含む大腿骨を取り出し、摘出した大腿骨のレントゲン学的検討を加えた。
実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステムを挿入した大腿骨の病理組織を観察したところ、骨からステムに伸びる明らかな骨の進入が観察された。
しかし、GMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布したステムを挿入した群では同様な骨のステムへの進入が観察されはしたが弱かった。これよりHAゲルシートはフィブリンゲルよりもポーラスコーテッドステムの骨の進入に良好であることが証明された。
GMを含有したHAゲルシートは骨の感染病巣に対して有効であることが示されたばかりでなく、セメントレス人工関節の骨誘導に対しても骨誘導を妨げないことから、感染による人工関節再置換術の組成物として有益なものであると考えられる。
実施例10
人工関節挿入モデルにおける抗生物質残存性試験(HAゲルスポンジ)
前述の方法で調製したHAゲルスポンジを4mm×φ4mmとなるように、生検トレパンで切り出し、これに3mgの抗生物質(バンコマイシン(VM)、ミノサイクリン(MC))を水溶液として含浸させたあと、凍結乾燥を行った。また、比較のためにGM含有コラーゲンスポンジ(Biomet社製)も同じ大きさに切りだし、以下の動物試験系で抗生物質残存性を評価した。
日本白色家兎3.3〜3.8kgをケタラール(三共)の筋肉投与で麻酔し(10ml/匹)、剃毛・イソジン消毒を行った後、適量のキシラジンで後肢膝関節周辺を局所麻酔した。皮膚をメスで切開し、関節軟骨を露出させ、手動ドリルによりφ2mm弱の細孔を大腿骨に沿って作成した。作成した孔にHAゲルスポンジサンプル(3mg抗生物質/4mm×φ4mmスポンジ)を充填した。その上から金槌により金属棒(4cm×φ2mm)を、めり込むまで挿入した。最後に、軟骨外膜と皮膚をナイロン糸で縫合した。この操作は、両膝に対して行い、それぞれの抗生物質についてn=4以上で試験を行った。適当な時間の後、ウサギを炭酸ガスにより殺害し、大腿骨を切りだした。周囲の肉をそぎ落とした後、金属棒を抜き取り、内容物を1mlの生理食塩水で洗い流して回収した。更に同様の操作を再度行い、回収液に加えた。この回収液について、以下の方法で抗菌活性(阻止円の直径で評価)を行った。
寒天培地に生育させたS.aureus FDA209を白金耳で取り出し、10mlのHeart infusion broth(DIFCO)で前培養した。これをMueller−Hinton agar培地のシャーレにスプレッダーを用いて、均一に塗り広げた。ここに抗菌活性を評価するサンプル50μlを添加して一晩培養した後、抗生物質により菌が生育しない領域の直径を得た。
試験の結果、ゲルスポンジに抗生物質を含浸させることで、骨髄内の抗生物質残存性が向上した。図15に示すようにゲルを用いない抗生物質水溶液(3mg/500μl)とゲル化していないHAスポンジを用いた場合、骨髄内で1週間以内に消失するのに対して、図16に示すようにいずれのHAゲルスポンジサンプルも50%程度の抗生物質活性の残存が確認できた。また、GM含有コラーゲンスポンジ(Biomet社製)比較しても、同程度の抗生物質残存性が確認できた。
実施例11
人工関節挿入モデルにおける抗生物質残存性試験(金属棒巻き付けHAゲルフィルム)
前述の方法でチューブ状のHAゲルスポンジ(5cm×φ5mm、内腔φ2mm)を調製し、これに3mgの抗生物質(バンコマイシン(VM))を水溶液として含浸させたあと、金属棒(4cm×φ2mm)にかぶせて、乾燥を行った。こうして得られたHAゲルフィルム巻き付け金属棒を用いて、以下の動物試験系で抗生物質残存性を評価した。
日本白色家兎3.3〜3.8kgをケタラール(三共)の筋肉投与で麻酔し(10ml/匹)、剃毛・イソジン消毒を行った後、適量のキシラジンで後肢膝関節周辺を局所麻酔した。皮膚をメスで切開し、関節軟骨を露出させ、手動ドリルによりφ2mm弱の細孔を大腿骨に沿って作成した。作成した孔にHAゲルフィルムを巻き付けた金属棒(4cm×φ2mm)を金槌により、めり込むまで挿入した。最後に、軟骨外膜と皮膚をナイロン糸で縫合した。この操作は、両膝に対して行い、それぞれの抗生物質についてn=7以上で試験を行った。適当な時間の後、ウサギを炭酸ガスにより殺害し、大腿骨を切りだした。周囲の肉をそぎ落とした後、金属棒を抜き取り、内容物を1mlの生理食塩水で洗い流して回収した。更に同様の操作を再度行い、回収液に加えた。この回収液について、以下の方法で抗菌活性(阻止円の直径で評価)を行った。
寒天培地に生育させたS.aureus FDA209を白金耳で取り出し、10mlのHeart infusion broth(DIFCO)で前培養した。これをMueller−Hinton agar培地のシャーレにスプレッダーを用いて、均一に塗り広げた。ここに抗菌活性を評価するサンプル50μlを添加して一晩培養した後、抗生物質により菌が生育しない領域の直径を得た。
試験の結果、ゲルスポンジに抗生物質を含浸させることで、骨髄内の抗生物質残存性が向上した。図15に示すようにゲルを用いない抗生物質水溶液(3mg/500μl)とゲル化していないHAスポンジを用いた場合、骨髄内で1週間以内に消失するのに対して、図17に示すように金属棒に巻き付けたHAゲルフィルムを用いることで、70〜80%程度の抗生物質活性の残存が確認できた。
産業上の利用可能性
本発明により、手術に於ける感染治療のための、抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の組成物を提供することができる。かかる本発明の抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の組成物は、安全性及び生体適合性に優れ、また適切な抗菌性物質や生理活性物質の徐放性を有するため抗菌と骨再生の効果に優れている。より詳しくは、本発明の抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の多糖及び/又は多糖ゲルは、整形外科手術に於ける人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症の治療に優れた組成物として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたK−wire挿入群の処置4週間後のマウス大腿骨のレントゲン撮影結果を示す。
図2: MSSAを注入し、K−wireのみの挿入群の処置4週間後のマウス大腿骨のレントゲン撮影結果を示す。
図3: 処置1週間後のマウス大腿骨の骨折周囲部標本1mg中の菌数を示す。
図4: マウス大腿骨の骨折周囲部標本1mg中の菌数の経日変化を示す。
図5: MSSAを注入せず、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の上面図を示す。
図6: MSSAを注入せず、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の側面図を示す。
図7: MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の上面図を示す。
図8: MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の側面図を示す。
図9: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の上面図を示す。
図10: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の側面図を示す。
図11: MSSAを注入せず、ステムのみの挿入群の処置8週後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図12: MSSAを注入せず、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群の処置8週間後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図13: MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群の処置8週間後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図14: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群の処置8週間後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図15: ウサギ人工関節モデルにおける、バンコマイシン溶液(3mg/500μl)とHA溶液を凍結乾燥させたゲルスポンジに含浸させたバンコマイシン(3mgバンコマイシン/4mm×φ4mm)の骨髄内残存性を示す。
図16: ウサギ人工関節モデルにおいて、HAゲルスポンジに含浸させたVM、MC、GM含有コラーゲンスポンジの骨髄内残存性を示す。
図17: ウサギ人工関節モデルにおける、金属棒に付着させたHAゲルフィルムに含浸させたVMの骨髄内残存性を示す。
符号の説明
(A)骨折治癒
(B)擬関節
(C)K−wire
(D)ステム
(E)骨髄炎
(F)骨の進入
(G)膿瘍の形成
本発明は、骨感染症の治療のための、抗菌性物質と多糖と、好ましくは更に生理活性物質とを含有して成る組成物、すなわち、骨感染症治療用組成物に関する。詳しくは、整形外科手術後に発生した骨感染症、或いは非手術的に発生した急性/慢性の骨髄炎などの骨感染症を治療するための、例えば、ゲンタマイシンなどの抗菌性物質と、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸ゲルなどで例示される生分解性の多糖と、好ましくは更に生理活性物質とを含有して成る組成物に関する。
背景技術
人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症、或いは非手術的に発生した急性又は慢性の骨感染症は、患者と医療機関への時間及び経済的な負担が大きく重大な問題となっている。
人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の感染は、化膿菌による骨感染症である骨髄炎を発症させる。骨髄炎は、全身症状として高熱、悪寒、嘔吐、脱水などの菌血症症状を引き起こしたり、局所症状として疼痛、圧痛、熱感、そして局所に腐骨を形成し、擬関節の発症や瘻孔の原因となる場合もある。
この骨感染症の予防を目的に感染病巣の根治、術前/術中の抗生物質の投与、器具/手術着の滅菌が行われている。更にバイオ・クリーンルームなど等の無菌手術が活用されてはいるが完全に予防することは難しい。
このような手術を行っているにもかかわらず、特に人工関節手術の患者は、免疫能の低減した高齢者、関節リウマチ罹患者が多いことから、感染症の発症を完全に抑えることは困難で、その感染率は全手術症例の約1%に達している。
治療法としては現行では確立されたものはなく、多くは人工関節の抜去を行ったうえで、感染部を掻爬/洗浄し、抗生物質による洗浄が行われている。これらは一般的に治療が困難な場合が多くあり、抜去しても根治が困難なときには、場合によっては切断など、患者に多大な苦悩を強いる場合がある。更にこれら治療には長期の入院と高額な治療費が必要であり、患者のみならず医療機関及び医療財政などにも大きな負担となり社会問題となっている。
同様に非手術的に発生した外傷性の急性/慢性の骨髄炎に於いても難治性であり、複数回の洗浄、掻爬手術を行っても感染巣を根治できない場合があることが知られている。
血行性の非手術的に発生した慢性の骨髄炎も知られており、時として骨の壊死を誘発し擬関節や骨頭壊死の原因となり予後の悪いものとされる。
このような患者の治療法としては、切断または関節の固定術が現在でも、なお行われており、社会的に問題とされている。
これらの何れの原因によって発生した骨感染症の治療に於いても、現行では特効的なものは無く、姑息的で結果が不満足な治療が行われているに過ぎない。
これらの治療には抗生物質の投与が行われる。全身投与では感染局部に於ける有効濃度を維持するには多量の抗生物質を投与しなければならず、そのため大きな副作用や耐性菌の出現などの問題を引き起こしやすい。
また、人工関節置換後の骨感染症の局所治療用にポリメチルメタアクリレート(骨セメント)に抗生物質を添加混合し感染部に埋め込み治療することも行われてきた。
これは、骨セメントと抗生物質の添加混合物を連鎖状のビーズに成形し、関節及び骨髄感染部に長期にわたり充填するものであり、局所的抗生物質化学療法として特に適している。
しかし、骨セメントは異物であり生体に吸収されないため、再び取り除かねばならない必要がある上に、抗生物質の徐放性も決して満足するには至らないと考えられる。セメントビーズの具体的な方法としては、連鎖状のビーズの末端を皮膚縫合部から突出させておき、感染治療の終了する約2週間後にこのビーズ末端を引っ張り、全部を引き出すことにより行われる。
このビーズの挿入から引き出しの約2週間、患者は患部の固定や安静、入院が必要になるため、苦痛や経済的な負担が大きい問題があった。
骨セメントの再び取り除かねばならない欠点を改良する手段として、生分解性の担体を用い投与剤形を工夫し、抗菌性物質の効果をより発揮させる試みがなされてきた。
この生体吸収性の材料としては、生体吸収性が制御でき、生体適合性が高いものが望ましく、例えば、生体由来のタンパク質であるフィブリン糊、コラーゲン、ゼラチン等が挙げられる。また有機酸である乳酸を高分子化したポリ乳酸などが挙げられる。
例えば、フィブリン糊は、フィブリノーゲン溶液にスロンビンを加え固化させる血液凝固の原理を用いた生体接着糊である。骨欠損の充填の際、骨移植部位にフィブリン糊を用いることは公知であり、外科手術に於ける接着剤として用いられている。そして、このフィブリン糊に、ゲンタマイシンを混合し、感染部位に充填する処置法の試みが、骨感染症の治療用としてのフィブリン/抗生物質ゲルおよびその製造方法として開示されている(特公昭56−501129号、特表平9−502161号)。
しかし、フィブリン糊は、血液凝固の原理を用いているため、ゲル化させる時間を制御できても、生体内で分解される時間を必要に応じて制御することは基本的に難しく、薬物を対照部位に適切な濃度かつ時間で、作用させることは難しかった。
また、フィブリン糊はそれ自身が硬く固化するため、ゲル表面からの薬物の溶出の面からは有効であるが、ゲル内部からの徐放性はあまり期待できないなどの問題点があった。更に、フィブリン糊は、ヒト血液が原料の血液製剤であるため、C型肝炎、エイズ、その他、未知ウイルスの感染源としての危険性が否定できなかった。
生体の主要なタンパク質の構成成分であるコラーゲンやゼラチンは近年、再生医療で骨や軟骨の再生の基質として用いられるなど生体吸収性の材料としては特に適している。そして、このゼラチンを架橋したゲルに、抗生物質を混合し、骨感染症の局部に充填する処置法の試みが、骨髄炎の治療方法として開示されている(米国特許第4,587,268号)。
しかし、原料がウシなど動物起源であるため、狂牛病その他、未知ウイルスの感染源としての危険性が否定できない。またアテロコラーゲンなど、どんなに抗原性の無効化の処理がなされていても、異種由来のタンパクであるため抗原性の問題は否定できなかった。
有機酸である乳酸を高分子化したポリ乳酸も近年、生体吸収性の骨接合用インプラントのネジなどに用いられるなど生体吸収性の材料として開発されている。そして、このポリ乳酸のマイクロカプセルに、抗生物質などを混合し、感染部位に充填する処置法の試みが、骨髄炎の治療方法として開示されている(米国特許第6,309,669号)。
しかし、基本的な物性は堅くて脆く適応が限定され、さらに生分解されると乳酸が産生するためpHが酸性側に傾き、創傷治癒に影響を及ぼす危険性が否定できなかった。
抗菌性物質と多糖を含有して成ることを特徴とする組成物は、各種のものが知られている。例えば、眼科領域に於いてヒアルロン酸などに抗生物質であるストレプトマイシンやペニシリンなどを配合した点眼剤(特開昭60−84225号)、整形外科領域ではヒアルロン酸やその誘導体に抗生物質などを配合した欠損した骨の置換剤(WO93/20858号)が知られている。また腹腔内の感染防止や治療にヒアルロン酸に抗菌性物質を配合すること(特開平09−208476号)や、角膜の貯蔵用溶液にヒアルロン酸に抗菌性物質を配合すること(特表2000−508637号)や、関節炎治療材にヒアルロン酸やその誘導体に抗生物質などを配合すること(特表2000−512650号)が知られている。
これまで、多糖、特に生分解性の多糖を用いて抗菌性物質の放出を制御する骨感染症、特に人工関節の感染症治療を目的とした組成物は、開発されていなかった。我々は、多糖、特に生分解性の多糖の整形外科手術に於ける感染症治療への適用の可能性を鋭意検討した結果、ヒアルロン酸やカルボキシメチルセルロースなどの生分解性の多糖が、極めて高い有用性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
発明の開示
本発明は、(1)抗菌性物質と多糖を含有して成ることを特徴とする骨感染症治療用組成物、(2)骨感染症が、外傷性の骨感染症であることを特徴とする(1)記載の組成物、(3)骨感染症が、血行性の骨感染症であることを特徴とする(1)記載の組成物、(4)骨感染症が、人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症であることを特徴とする(1)記載の組成物、(5)多糖が、生分解性の多糖及び/又は多糖ゲルであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物、(6)多糖が、酸性多糖であることを特徴とする(5)記載の組成物、(7)酸性多糖が、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸ゲルであることを特徴とする(6)記載の組成物、(8)酸性多糖が、カルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロースゲルであることを特徴とする(6)記載の組成物、(9)ヒアルロン酸ゲルが、重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成されている架橋ヒアルロン酸であることを特徴とする(7)記載の組成物、(10)架橋ヒアルロン酸の架橋点が加水分解性であることを特徴とする(9)記載の組成物、(11)架橋ヒアルロン酸の架橋構造がエステル結合であることを特徴とする(9)又は(10)記載の組成物、(12)架橋ヒアルロン酸の架橋構造が自己架橋エステル結合であることを特徴とする(11)記載の組成物、(13)抗菌性物質が、ゲンタマイシン、バンコマイシン、及びミノマイシンからなる群から選ばれた1種であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の組成物、(14)シート状、フィルム状、ロッド状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状、及びチューブ状からなる群から選択した1種であることを特徴とする(13)記載の組成物である。
発明の実施の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる多糖は、動物/植物組織から抽出したものでも、また発酵法で製造したものでも、その起源を問うことなく使用できる。さらに生体内に適用し分解され、本質的に抗原性が無く、優れた生体適合性を有することが望ましい。なお、本発明にいう多糖は、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、又はリチウムの塩をも包含する概念で使用される。
本発明に用いられる多糖の例としては、グリコサミノグリカン類(ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等)、コンドロイチン硫酸塩(コンドロイチン−6−硫酸等)、ケラチン硫酸塩、ヘパリン、ヘパラン硫酸塩、アルギン酸又はその生物学的に受容な塩、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、澱粉、アミロース、カラギーナン等が挙げられる。また、合成的誘導体の多糖類としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、種々のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシキセルロース又は酸化再生セルロース等が挙げられる。
本発明に用いられる生分解性の多糖としては、多糖をゲル化させる際の反応性の観点で特に酸性多糖が好ましい。中性多糖は主に水酸基が占めるのに対し、酸性多糖はウロン酸や硫酸基やカルボキシル基などを多く含み、これらは水酸基に比較し反応性に富むため多糖をゲル化させる際の化学反応に好適である。
本発明に用いられる生分解性の酸性の多糖としては、例えばヒアルロン酸やカルボキシメチルセルロースなどが例示される。ヒアルロン酸は、ヒトなど動物の細胞間の潤滑や接着、足場である細胞外マトリクスの主要で共通な成分であり、関節液、目の硝子体、鶏冠に多量に含まれており、β−D−N−アセチルグルコサミンとβ−D−グルクロン酸が交互に結合した直鎖状の高分子である。ヒアルロン酸はヒトの生体の構成成分そのものであるため本質的に抗原性が無く生体適合性の観点からは理想的である。このため変形性膝関節症の治療薬や眼科手術補助剤や癒着防止材等に用いられている。
本発明に用いられる多糖ゲルは特に限定されないが、生体適合性に優れた酸性の多糖ゲルが好適であり、例えばヒアルロン酸のゲルが例示される。
なおゲルとは、新版高分子辞典(朝倉書店 昭和63年)によれば、「あらゆる溶媒に不溶の三次元網目構造をもつ高分子及びその膨潤体」と定義、また理化学辞典(岩波書店 第4版 昭和62年)によれば、「ゾル(コロイド溶液)がジェリー状に固化したもの」と定義されている。
これらの代表的なものとしては、酸性の多糖であるヒアルロン酸をジビニルスルホン、ビスエポキシド類、ホルムアルデヒド等の二官能性試薬を用いて架橋した架橋ヒアルロン酸ゲル(米国特許第4,582,865号明細書、特公平6−37575号公報、特開平7−97401号公報、特開昭60−130601号公報参照)を挙げることができる。
本発明者は、ヒアルロン酸自体が本来有する生体材料としての理想的な特性を損なうことなく、ヒアルロン酸を架橋し、ゲル化する方法(WO99/10385など)を提案し、以下のような事実を見出した。
即ち、何ら架橋剤等を用いずにゲル化した難水溶性ヒアルロン酸ゲルや難水溶性カルボキシメチルセルロースゲル(PCT/JP00/05564号)は、特に、何ら架橋剤等を用いずにゲル化しているため生体適合性や安全性の観点から特に好ましい。
更に得られた架橋ヒアルロン酸の分子構造の精査と製造条件の検討を行い、その結果、ヒアルロン酸の優れた特性を損なうことなく重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成された架橋ヒアルロン酸(特願2002−314090号)を用いると抗菌性物質と生理活性物質の保持の制御の観点からから好ましい。
架橋ヒアルロン酸のヒドロゲルの表面は高分子量ヒアルロン酸の分子鎖を有しており、高分子量ヒアルロン酸の有する各種特徴、すなわち陰性高分子電解質であるヒアルロン酸が各種のサイトカイン、特に陽性荷電する生理活性物質と高いイオン的相互作用を持ち、高い担持能を有する。
すなわち、この方法で得た架橋ヒアルロン酸に抗生物質、生理活性物質を担持させた組成物は、高分子量のヒアルロン酸を有している架橋ヒアルロン酸のヒドロゲルが骨欠損部分に対して高い親和性を有しているので、高い骨組織の再生能を有する。
本発明の骨感染症治療用組成物は、上記の多糖と抗菌性物質と含有するが、両者の含有量は、多糖/抗菌性物質の比率が好ましくは、1:9〜9:1なるように選ばれる。
本発明の骨感染症治療用組成物は、上記の多糖及び多糖ゲルの分子量、濃度、架橋剤の種類や量、反応時間等の条件を変えることで、抗菌剤や生理活性物質の徐放性と生体吸収性の異なる種々の組成物を形成することができる。
例えば、難水溶性ヒアルロン酸ゲル(WO99/10385など)の場合、ヒアルロン酸の分子量、濃度、等の条件を変えることで、抗菌性物質や生理活性物質の徐放性と生体吸収性の異なる種々の難水溶性ヒアルロン酸ゲルを形成する。
本発明に係わる組成物は、イオン結合、水素結合、共有結合等により、抗菌性物質や生理活性物質の活性を損なうことなく保持することができる。
多糖及び/又は多糖ゲルと抗菌性物質や生理活性物質とのイオン結合や水素結合などの相互作用が比較的大きい場合、抗菌性物質や生理活性物質は、多糖及び/又は多糖ゲル自身の生分解により徐放される。
一方、多糖及び/又は多糖ゲルと抗菌性物質や生理活性物質とのイオン結合や水素結合などの相互作用が比較的小さい場合でも、抗菌性物質や生理活性物質は膨潤して水分を多量に含有したその中に保持される。従って、多糖及び/又は多糖ゲルの中と外との抗菌性物質や生理活性物質の濃度勾配に応じた拡散による放出や、多糖及び/又は多糖ゲル自身の生分解により徐放される。
本発明に係わる組成物の抗菌性物質や生理活性物質の保持時間は、多糖ゲルの生分解性を変えることで制御することができる。また抗菌性物質や生理活性物質との非共有結合の相互作用を、多糖の種類や濃度などで制御し、抗菌性物質や生理活性物質の保持時間を変えることができる。
本発明に用いられる抗菌性物質としては、特にグラムネガティブ細菌にもグラムポジティブ細菌にも有効な広域な抗菌スペクトラムを有するゲンタマイシンが挙げられる。ゲンタマイシンはアミノグリコシド系の抗生物質で、非経口の局所投与として外科手術でも一般的に用いられている。
その他、ベータラクタム抗生物質の例としては、ペニシリン系のものはアンピシリン、アモキシシリン、ベニシリンG、カルベニシリン、タカルシリン、及びメチシリンなどが挙げられる。またセファロスポリン系のものは、セファクロル、セファロドキシル、セファマンドール、セファゾリン、及びセフォペラゾンなどが挙げられる。その他ベータラクタム抗生物質の例としては、アズトレオナム、イミペネムなどが挙げられる。
また、マクロライド系の抗生物質としては、エリスロマイシンなどが挙げられる。またアミノグリコシド系の抗生物質の例としては、ストレプトマイシン、ネオマイシン、リンコマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、シソマイシンなどが挙げられる。
また、ポリペプチド系の抗生物質の例としては、バシトラシン、ノボビオシンなどが挙げられる。
本発明に係わる組成物は、その使用目的に応じて多糖及び/又は多糖ゲルを、抗生物質溶液又は抗生物質や生理活性物質を含有した多糖溶液に浸漬し、風乾、減圧乾燥あるいは凍結乾燥等の処理を経た乾燥状態に成形することができる。
または、抗生物質溶液や生理活性物質溶液または抗生物質や生理活性物質を含有した多糖溶液に浸漬したまま湿潤状態でも同様に成形することができる。
本発明に係わる組成物は、その適用部位によりシート状、フィルム状、ロッド状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状、又はチューブ状からなる群より選択できる。
本発明の組成物の生理活性物質としては、薬学的又は生理学的に活性な次のような物質が例示される。例えば、BMP、TGFなど骨形成を促進し治癒させる働きを有する生理活性物質等を混合、複合化させることができるものであり、何ら制限されないものである。
生理活性物質としては、骨細胞の成長を促進する因子が挙げられ、例えば、BMP、FGF、VEGF、HGF、TGF、CSF,EPO、IL及びIF等が挙げられる。これらの生理活性物質は、組み換え法により製造してもよく、あるいは蛋白組成物から精製してもよい。BMPはrhBMP−2、rhBMP−3、rhBMP−4、rhBMP−5、rhBMP−6、rhBMP−7(rhOP−1)、rhBMP−8、rhBMP−9、rhBMP−12、rhBMP−13、rhBMP−15、rhBMP−16、rhBMP−17、rhBMP−18、rhGDF−1、rhGDF−3、rhGDF−5、rhGDF−6、rhGDF−7、rhGDF−8、rhGDF−9、rhGDF−10、rhGDF−11、rhGDF−12、rhGDF−14を包含する。そしてこれらはBMPファミリーと言うことができる。さらに、これらのホモダイマー、ヘテロダイマー、修飾体、部分欠失生成物、あるいは2種またはそれ以上の混合物として使用できる。例えば、BMPとアクチビン、インヒビンおよびTGF−β1のごときTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーとのヘテロダイマーであってもよい。
本発明に係わる組成物は、様々な分野の骨感染症の治療に用いることができ、特に人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症に好適である。
例えば、人工股関節の場合は、人工臼蓋コンポーネント側の適用には、シート状、フィルム状、スポンジ状が局所への貼付に好適である。また大腿骨側コンポーネント側の適用には、コンポーネントへのシート状、フィルム状の貼付が好適である。または例えば、骨髄腔には、シート状、フィルム状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状の充填が好適である。
本発明で言う重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成された架橋ヒアルロン酸とは、架橋ヒアルロン酸の架橋点を切断したとき、重量平均分子量が80万より大きい直鎖状のヒアルロン酸が生成することを意味する。架橋点を切断することによって生成するヒアルロン酸の重量平均分子量と分岐度はGPC−MALLSによって容易に測定することができる。
なおこれまで架橋ヒアルロン酸の合成目的は、生体内の貯留性の向上にあったため、得られた架橋ヒアルロン酸を構成するヒアルロン酸分子の分子量が考慮された例、及び実際にその分子量が測定された例はない。
本発明で言う架橋ヒアルロン酸の架橋点が加水分解性であるとは、生理的な条件下、例えば37℃、pH7.4、生理的食塩水中で、ヒアルロン酸の主鎖分解に優先して架橋点が分解する性質を意味する。
ヒアルロン酸の主鎖分解よりも加水分解性の優れている架橋構造は、カルバメート結合、ヒドラゾン結合、ヒドラジド結合やリン酸エステル結合などが挙げられるが、最も代表的な構造はエステル結合である。
架橋構造がエステル結合である架橋ヒアルロン酸としては、多価アルコールとヒアルロン酸のカルボキシル基のエステル、多価カルボン酸とヒアルロン酸の水酸基とのエステル、多価エポキシ化合物とヒアルロン酸のカルボキシル基のエステルなどが挙げられる。
架橋構造が自己架橋エステル結合である架橋ヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸のカルボキシル基と水酸基間が直接エステル結合した架橋ヒアルロン酸である。
自己架橋エステル結合ヒアルロン酸の製造方法は、一部またはすべてのカルボキシ基が同一の多糖鎖または他の多糖鎖のアルコール基でエステル化された、自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がEP0341745B1に、HAの水溶液を酸性に調整し、該水溶液を凍結し、次いで解凍することを少なくとも1回行うことによって生成する自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がWO99/10385に開示されている。
自己架橋エステル結合ヒアルロン酸の安全性は、加水分解により放出される天然のヒアルロン酸が生理学的代謝経路により代謝されるので、別の架橋反応により製造された架橋ヒアルロン酸より良好である可能性がある。
以下、本発明を実施例により具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
分子量が2×106ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、1質量%のヒアルロン酸の水溶液を調整した。調整されたヒアルロン酸の水溶液のpHは、6.0であった。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整した。ヒアルロン酸の酸性水溶液2mlを2.5×4.0cm(10cm2)のシャーレに入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。6日間放置した後、25℃で解凍した。その結果、シート状のヒアルロン酸ゲル(「HAゲル」という)が得られた。次にこれを生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整したpH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃で24時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄した。
そして、これを2枚の板に挟んで圧延し、ゲンタマイシン(「GM」という)を0.1mgを含有した蒸留水2mlを加え5℃で1時間、膨潤させた後、凍結乾燥した。その結果、GMを0.1mgを含有した2.5×4.0cmのシート状のHAゲルを得た。
実施例2
GMを1.0mg含有した蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのGMを1.0mgを含有したHAゲルを得た。
実施例3
GMを10.0mg含有した蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのGMを10.0mg含有したHAゲルを得た。
実施例4
GMを100.0mgを含有した蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのGMを100.0mgを含有したHAゲルを得た。
比較例1
蒸留水2mlを用いて膨潤させ、凍結乾燥する以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、シート状の2.5×4.0cmのHAゲルを得た。
比較例2
GMを含有したフィブリンゲルは、「ティシール」(日本臓器(株)輸入販売、イムノ社(オーストリア)製、生物学的組織接着剤)を用いて作成した。「ティシール」のキット構成のうちティシール用フィブリノーゲン溶液0.2mlにGM10mgを無菌条件下に混合し、次にティシール用トロンビンL溶液0.2mlを加えゲル化させる。可塑加工性が維持できる約1〜3分間の間に、このGMを含有したフィブリンゲルを直径2mmの大腿骨セメントレスステム(日本Zimmer社製)の表面に均一になるように塗布した。なお大腿骨セメントレスステムは、実際にヒトの人工関節置換手術に用いられているのと同様にポーラスコートしたものを新たに作成し用いた。
その結果、GMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布した大腿骨セメントレスステムを得た。
実施例5
GMを含有したHAゲルのマウス骨折モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その1
8週令雄のBalb/cマウスをペントバルビタール(20mg/kg)で麻酔し、膝関節を外科的に展開して大腿骨を露出した。展開した大腿骨にクーパーで横骨折を加え、骨折部から23Gの注射針でMSSA(黄色ブドウ球菌、菌株名S.aureus FDA209P)を105個/0.1mlのを骨髄腔内に注入した。そして実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた0.8mmのKirshner wire(K−wire)と、巻きつけないK−wireのみの2種類を、膝関節に挿入し、骨折を整復した。
実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート投与群と、非投与の2群の各群5匹、合計10匹のマウスを処置4週後にCO2で安楽死させ、大腿骨を摘出してソフテックスレントゲン(FUJI 100)撮影を行い骨折の治癒具合を比較検討した。撮影条件は50KVp、12mA、3秒のレントゲン照射で行った。
図1の処置4週後のマウス大腿骨のレントゲン撮影結果に示すように、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート投与群は、5匹全例で骨折が治癒していた。しかし、図2のGMを含有したHAゲルシート非投与群は、5匹全例で骨折治癒過程が阻害され偽関節となっていた。
実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートは骨の感染病巣に対して有効であることから、感染による人工関節再置換術の組成物として有益なものであると考えられる。
実施例6
GMを含有したHAゲルのマウス骨折モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その2
実施例1〜4のGMを含有したHAゲルシートを用いる以外は、実施例5と同様な操作を行った。実施例1,2,3,4の各々0.1mg,1mg,10mg,100mgのGMを含有したHAゲルシート4群の各群5匹、合計20匹のマウスを処置1週間後にCO2で安楽死させ、大腿骨を摘出して骨折部周囲の軟部組織を採取して化学天秤を用いて組織の重量を測定した。その後、標本に1mlのリン酸バッファー(pH7.0)を加え、ポリトロンにてホモジネートした。乳濁液を生理食塩水で1×103まで希釈した。この希釈溶液100μlを5%羊血液寒天培地(BBL)で35℃、24時間培養してコロニーをカウントした。最後に標本の重量をグラム換算して1mgあたりの標本に含まれる菌数を定量化した。
図3に示すように、GM濃度に依存して抗菌力が強まり、十分な抗菌効果には10mg以上GM濃度が必要なことが明らかとなった。GMを含有したHAゲルシートは骨の感染病巣に対して有効であることから、感染による人工関節再置換術の組成物として有益なものであると考えられる。
実施例7
GMを含有したHAゲルのマウス骨折モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その3
比較例1のGMを含有しないHAゲルシート及び実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを用いる以外は、実施例6と同様な操作を行った。実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート群は処置0,1,2,7,14日後、各5匹を実施例6と同様の方法により骨折部周囲の軟部組織の菌数を数えた。比較例1のGMを含有しないHAゲルシート群は処置1,2,7,14日後、各5匹を実施例6と同様の方法により骨折部周囲の軟部組織の菌数を数えた。
図4に示すように、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート群は7日目で統計学的に有意な菌数の減少が確認された。一方、比較例1のGMを含有しない群でも14日目で菌数が減少するが、これはマウス本来が持つ菌に対する生体の抵抗性が出現したためではないかと推察された。しかし14日目でも実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート群の方が比較例1のGMを含有しない群より有意に菌数が少ないことが明らかとなった。
実施例8
GMを含有したHAゲルのウサギ骨髄炎モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その1
9ヶ月齢、平均体重3.5kgのリタイアー家兎(チャールズリバージャパン)をペントバルピタール(20mg/kg)で麻酔し、膝関節を外科的に展開して大腿骨を露出した。そしてドリルバーを用いて展開した膝関節に直径2mmの穴を開けた。ここに105個/0.1mlのMSSA溶液を注入するものと、注入しないもの2種類を作成した。
そして、実際にヒトの人工関節置換手術に用いられているのと同じポーラスコートした直径2mmの大腿骨セメントレスステム(日本Zimmer社製)を作成し以下の試験に用いた。
MSSA溶液を注入するものには、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた大腿骨セメントレスステムと、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけた大腿骨セメントレスステムの2種類を、膝関節に挿入し、整復した。またMSSA溶液を注入しないものには、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた大腿骨セメントレスステムと、巻きつけない大腿骨セメントレスステムのみの2種類を、膝関節に挿入し、整復した。
MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群、MSSAを注入し比較例1のGMを含有しないHAゲルシートのステム挿入群、MSSAを注入せず実施例3の10mgGM HAゲルシートを巻きつけたステム挿入した群、MSSAを注入せずHAゲルシートを巻きつけないステム挿入群の4群の各群6匹、合計24匹を、処置8週間後CO2で安楽死させ、挿入したステムを含む大腿骨を取り出し、摘出した大腿骨のレントゲン学的検討を加えた。
レントゲン撮影にはソフテックス(Fuji 100)を用い、撮影条件は52KVp、12mA、3秒で行った。レントゲン撮影後、検体を70%エタノールで室温下に1日固定した。その後80%エタノールで12時間、95%エタノールで12時間、100%エタノールで1日の固定を続けた。検体の包埋は、99%メチルメタクリレートモノマー(MMA)で3日間行った。最後にMMA/Perkadox16に標本を10分間つけて硬性組織標本とした。この棒状となった検体をdiamond wire saw(DDK,Delaware,USA)で0.5mmの厚さに切り病理組織標本とした。染色はメチレンブルーで60℃、8分間行った。
MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを挿入した群では6匹中2匹が死亡した。また残った4匹も他の群と比較して有意な体重減少(実験終了時平均2.2kg)と全身の島状の脱毛ならびに毛の逆立ちが認められ骨髄炎から敗血症を併発した事ものと考えられた。しかし、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートにより局所的にGMが投与された他の3群では実験終了時まで全ての家兎が生存し、体重は実験開始時よりも低下したものの統計学的に有意な体重減少は見られず(平均体重:コントロール3.1kg,MSSA非投与群3.2kg,GMを10mg含有したHAゲルシート挿入群2.9kg)、また家兎の体毛の変化も観察されなかった。
レントゲン変化では、図5の上面図及び図6の側面図に示すように、MSSA非投与の状態でステムを挿入した群では、骨萎縮や骨融解像などの骨髄炎の所見は観察されなかった。
一方、図7の上面図及び図8の側面図に示すように、MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステムを挿入した群ではMSSAが注入されたと考えられる部位を中心に明らかな骨萎縮や骨融解像が観察され骨髄炎を併発していると考えられた。またこの群では大腿骨摘出時に骨髄腔からの明らかな膿の流出も確認された。
しかし、図9の上面図及び図10の側面図に示すように、MSSAを注入していても実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシート巻きつけたステムを挿入した群ではレントゲン上骨髄炎の所見は明らかに抑制されていた。また大腿骨摘出時の肉眼的な膿の流出も確認されなかった。
ステムを入れた大腿骨の病理組織を観察したところ、図11に示すように、コントロール群であるMSSA非投与の状態でステムを挿入した群では骨からステムに伸びる明らかな骨の進入が観察された。
また、図12に示すように、MSSAを注入せず実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけた群でもコントール群と同様に骨のステムへの進入が観察された。これよりHAゲルシートはポーラスコーテッドステムの骨の進入を妨げないことが証明された。
一方、図13に示すように、MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけた群ではステム周囲の骨は融解しており骨の進入の像は確認されなかったばかりか、ステム周囲の菌体と膿瘍の形成が観察された。
しかし、図14に示すように、MSSAを注入していても実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを挿入した群では組織学的にも骨のステムへの進入が確認され、ステム周囲の菌体や膿瘍も観察されなかった。
実施例9
GMを含有したHAゲルのウサギ骨髄炎モデルを用いた骨髄炎治療効果試験その2
比較例2のGMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布したステムを用いることと、MSSAを注入しないこと以外は、実施例8と同様な操作を行った。
MSSAを注入せず実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステムを挿入した群と、MSSAを注入せず比較例2のGMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布したステムを挿入した群の2群の各群6匹、合計12匹を、処置8週間後CO2で安楽死させ、挿入したステムを含む大腿骨を取り出し、摘出した大腿骨のレントゲン学的検討を加えた。
実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステムを挿入した大腿骨の病理組織を観察したところ、骨からステムに伸びる明らかな骨の進入が観察された。
しかし、GMを10mg含有したフィブリンゲルを塗布したステムを挿入した群では同様な骨のステムへの進入が観察されはしたが弱かった。これよりHAゲルシートはフィブリンゲルよりもポーラスコーテッドステムの骨の進入に良好であることが証明された。
GMを含有したHAゲルシートは骨の感染病巣に対して有効であることが示されたばかりでなく、セメントレス人工関節の骨誘導に対しても骨誘導を妨げないことから、感染による人工関節再置換術の組成物として有益なものであると考えられる。
実施例10
人工関節挿入モデルにおける抗生物質残存性試験(HAゲルスポンジ)
前述の方法で調製したHAゲルスポンジを4mm×φ4mmとなるように、生検トレパンで切り出し、これに3mgの抗生物質(バンコマイシン(VM)、ミノサイクリン(MC))を水溶液として含浸させたあと、凍結乾燥を行った。また、比較のためにGM含有コラーゲンスポンジ(Biomet社製)も同じ大きさに切りだし、以下の動物試験系で抗生物質残存性を評価した。
日本白色家兎3.3〜3.8kgをケタラール(三共)の筋肉投与で麻酔し(10ml/匹)、剃毛・イソジン消毒を行った後、適量のキシラジンで後肢膝関節周辺を局所麻酔した。皮膚をメスで切開し、関節軟骨を露出させ、手動ドリルによりφ2mm弱の細孔を大腿骨に沿って作成した。作成した孔にHAゲルスポンジサンプル(3mg抗生物質/4mm×φ4mmスポンジ)を充填した。その上から金槌により金属棒(4cm×φ2mm)を、めり込むまで挿入した。最後に、軟骨外膜と皮膚をナイロン糸で縫合した。この操作は、両膝に対して行い、それぞれの抗生物質についてn=4以上で試験を行った。適当な時間の後、ウサギを炭酸ガスにより殺害し、大腿骨を切りだした。周囲の肉をそぎ落とした後、金属棒を抜き取り、内容物を1mlの生理食塩水で洗い流して回収した。更に同様の操作を再度行い、回収液に加えた。この回収液について、以下の方法で抗菌活性(阻止円の直径で評価)を行った。
寒天培地に生育させたS.aureus FDA209を白金耳で取り出し、10mlのHeart infusion broth(DIFCO)で前培養した。これをMueller−Hinton agar培地のシャーレにスプレッダーを用いて、均一に塗り広げた。ここに抗菌活性を評価するサンプル50μlを添加して一晩培養した後、抗生物質により菌が生育しない領域の直径を得た。
試験の結果、ゲルスポンジに抗生物質を含浸させることで、骨髄内の抗生物質残存性が向上した。図15に示すようにゲルを用いない抗生物質水溶液(3mg/500μl)とゲル化していないHAスポンジを用いた場合、骨髄内で1週間以内に消失するのに対して、図16に示すようにいずれのHAゲルスポンジサンプルも50%程度の抗生物質活性の残存が確認できた。また、GM含有コラーゲンスポンジ(Biomet社製)比較しても、同程度の抗生物質残存性が確認できた。
実施例11
人工関節挿入モデルにおける抗生物質残存性試験(金属棒巻き付けHAゲルフィルム)
前述の方法でチューブ状のHAゲルスポンジ(5cm×φ5mm、内腔φ2mm)を調製し、これに3mgの抗生物質(バンコマイシン(VM))を水溶液として含浸させたあと、金属棒(4cm×φ2mm)にかぶせて、乾燥を行った。こうして得られたHAゲルフィルム巻き付け金属棒を用いて、以下の動物試験系で抗生物質残存性を評価した。
日本白色家兎3.3〜3.8kgをケタラール(三共)の筋肉投与で麻酔し(10ml/匹)、剃毛・イソジン消毒を行った後、適量のキシラジンで後肢膝関節周辺を局所麻酔した。皮膚をメスで切開し、関節軟骨を露出させ、手動ドリルによりφ2mm弱の細孔を大腿骨に沿って作成した。作成した孔にHAゲルフィルムを巻き付けた金属棒(4cm×φ2mm)を金槌により、めり込むまで挿入した。最後に、軟骨外膜と皮膚をナイロン糸で縫合した。この操作は、両膝に対して行い、それぞれの抗生物質についてn=7以上で試験を行った。適当な時間の後、ウサギを炭酸ガスにより殺害し、大腿骨を切りだした。周囲の肉をそぎ落とした後、金属棒を抜き取り、内容物を1mlの生理食塩水で洗い流して回収した。更に同様の操作を再度行い、回収液に加えた。この回収液について、以下の方法で抗菌活性(阻止円の直径で評価)を行った。
寒天培地に生育させたS.aureus FDA209を白金耳で取り出し、10mlのHeart infusion broth(DIFCO)で前培養した。これをMueller−Hinton agar培地のシャーレにスプレッダーを用いて、均一に塗り広げた。ここに抗菌活性を評価するサンプル50μlを添加して一晩培養した後、抗生物質により菌が生育しない領域の直径を得た。
試験の結果、ゲルスポンジに抗生物質を含浸させることで、骨髄内の抗生物質残存性が向上した。図15に示すようにゲルを用いない抗生物質水溶液(3mg/500μl)とゲル化していないHAスポンジを用いた場合、骨髄内で1週間以内に消失するのに対して、図17に示すように金属棒に巻き付けたHAゲルフィルムを用いることで、70〜80%程度の抗生物質活性の残存が確認できた。
産業上の利用可能性
本発明により、手術に於ける感染治療のための、抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の組成物を提供することができる。かかる本発明の抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の組成物は、安全性及び生体適合性に優れ、また適切な抗菌性物質や生理活性物質の徐放性を有するため抗菌と骨再生の効果に優れている。より詳しくは、本発明の抗生物質や生理活性物質を含有する生分解性の多糖及び/又は多糖ゲルは、整形外科手術に於ける人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症の治療に優れた組成物として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたK−wire挿入群の処置4週間後のマウス大腿骨のレントゲン撮影結果を示す。
図2: MSSAを注入し、K−wireのみの挿入群の処置4週間後のマウス大腿骨のレントゲン撮影結果を示す。
図3: 処置1週間後のマウス大腿骨の骨折周囲部標本1mg中の菌数を示す。
図4: マウス大腿骨の骨折周囲部標本1mg中の菌数の経日変化を示す。
図5: MSSAを注入せず、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の上面図を示す。
図6: MSSAを注入せず、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の側面図を示す。
図7: MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の上面図を示す。
図8: MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週間後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の側面図を示す。
図9: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の上面図を示す。
図10: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群であり、処置8週後のウサギ大腿骨のレントゲン撮影結果の側面図を示す。
図11: MSSAを注入せず、ステムのみの挿入群の処置8週後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図12: MSSAを注入せず、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群の処置8週間後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図13: MSSAを注入し、比較例1のGMを含有しないHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群の処置8週間後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図14: MSSAを注入し、実施例3のGMを10mg含有したHAゲルシートを巻きつけたステム挿入群の処置8週間後のウサギ大腿骨の病理組織を示す。
図15: ウサギ人工関節モデルにおける、バンコマイシン溶液(3mg/500μl)とHA溶液を凍結乾燥させたゲルスポンジに含浸させたバンコマイシン(3mgバンコマイシン/4mm×φ4mm)の骨髄内残存性を示す。
図16: ウサギ人工関節モデルにおいて、HAゲルスポンジに含浸させたVM、MC、GM含有コラーゲンスポンジの骨髄内残存性を示す。
図17: ウサギ人工関節モデルにおける、金属棒に付着させたHAゲルフィルムに含浸させたVMの骨髄内残存性を示す。
符号の説明
(A)骨折治癒
(B)擬関節
(C)K−wire
(D)ステム
(E)骨髄炎
(F)骨の進入
(G)膿瘍の形成
Claims (14)
- 抗菌性物質と多糖を含有して成ることを特徴とする骨感染症治療用組成物。
- 骨感染症が、外傷性の骨感染症であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
- 骨感染症が、血行性の骨感染症であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
- 骨感染症が、人工関節置換術、及び/又は骨折手術後の骨感染症であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
- 多糖が、生分解性の多糖及び/又は多糖ゲルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 多糖が、酸性多糖であることを特徴とする請求項5記載の組成物。
- 酸性多糖が、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸ゲルであることを特徴とする請求項6記載の組成物。
- 酸性多糖が、カルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロースゲルであることを特徴とする請求項6記載の組成物。
- ヒアルロン酸ゲルが、重量平均一次分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成されている架橋ヒアルロン酸であることを特徴とする請求項7記載の組成物。
- 架橋ヒアルロン酸の架橋点が加水分解性であることを特徴とする請求項9記載の組成物。
- 架橋ヒアルロン酸の架橋構造がエステル結合であることを特徴とする請求項9又は10記載の組成物。
- 架橋ヒアルロン酸の架橋構造が自己架橋エステル結合であることを特徴とする請求項11記載の組成物。
- 抗菌性物質が、ゲンタマイシン、バンコマイシン、及びミノマイシンからなる群から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
- シート状、フィルム状、ロッド状、スポンジ状、塊状、繊維状、ペースト状、ゲルサスペンジョン状、及びチューブ状からなる群から選択した1種であることを特徴とする請求項13記載の組成物。
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