JPWO2003077891A1 - 吸入用粉末医薬組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、結晶状態の生理活性物質および生体適合性の静電凝集抑制物質からなり、安全性、安定性に優れ、優れた肺内送達性を達成した吸入用粉末医薬組成物を簡便な方法により提供することを可能とした点において顕著な効果を奏するものである。また更に疎水性物質を選択することにより、生理活性物質の特性に合わせた徐放性の付与も可能となった。
Description
技術分野
本発明は、肺内送達性が改善された吸入用粉末医薬組成物およびその製造方法に関する。特に本発明は、結晶状態の微小な生理活性物質に特定の静電凝集抑制物質を被覆してなる優れた肺内送達性を示す吸入用粉末医薬組成物およびその製造方法に関する。
背景技術
粉末吸入剤は、微細化した生理活性物質粒子を直接肺に送達することが可能なため、従来より喘息などの肺局所疾患の治療剤形として広く利用されてきた。吸入剤の分野で扱う粉末粒子は、肺内(気管支、細気管支、肺胞)への送達を目的とするため、一般に経口剤の分野で扱う粉末や製剤(数十μm−数百μm)に比べて非常に微小(10μm以下)である。しかしながら、このような微小な粉末粒子は、粒子同士の付着凝集を惹起し、気相中における分散性に劣るため、十分な肺内送達が達成されないことが懸念される。また仮に良好な肺内送達性が得られた場合でも、品質保持の観点から、保存下において経時的に付着凝集を起こさないことが望まれる。
近年においては、全身性すなわち血中への吸収を目的としたペプチドやタンパクの吸入剤による肺内送達製剤化の検討も盛んに行われている。しかしながら、吸入投与は吸収性が優れている反面、その粉末粒子が非常に微小であるため生理活性物質の溶出が早く、それに続く優れた肺粘膜吸収により、生理活性物質の薬効の作用時間が短く、頻回投与を余儀なくされる場合がある。更にその優れた吸収性のため、強い作用を示す生理活性物質の場合には全身性の副作用発現が懸念される。
従って、粉末吸入剤の開発においては、生理活性物質を含有する吸入用粉末医薬組成物の肺内送達性を改善するだけでなく、安全性が高く、経時的な安定性に優れ,また場合により,適用する生理活性物質に応じて作用時間を延長するための徐放性の付与が可能な製剤の開発が切望されている。
従来より肺内送達性改善を目的とした検討が種々試みられており、Mokhtarらは、生体内分解性基剤であるポリ乳酸を用いた徐放性の吸入用マイクロスフェアーを調製し、その肺内送達性などについて報告している(【非特許文献1】Int.J.Pharm.175,135−145(1998))。また、タッピング充填した時のかさ密度を示すタップ密度が0.4g/cm3未満の生分解性粒子を含む肺への送達のための粒子系であって、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する系に関する発明が報告されている(【特許文献1】国際公開パンフレットWO98/31346(対応日本特許出願、特表2001−526634号公報))。特に、特定の空気力学的直径を有する粒子とするために特定のタップ密度および特定の平均直径を有する粒子に設計することにより十分に軽い粒子となし、粒子凝集を回避して肺への送達性を改善したことが開示されている。また、生理活性物質の肺内での放出が制御可能であること、およびコレステロールを配合することにより、その徐放能が高められる旨の記載もされている。
しかしながら、これら吸入用マイクロスフェアーは、良好な肺内送達性を示すものの、生理活性物質を溶解する工程が採用されているために、生理活性物質によっては、その安定性が確保されず、経時的に微粒子の凝集等を惹起し、肺内送達性の低下が懸念される。さらに、後者の明細書、特にFig.6に示されたin vitroの溶出試験結果によれば、該技術の組成物は、試験開始後初期に40%以上もの生理活性物質の一挙放出を示すため、十分な溶出制御を達成するには至っておらず、徐放性付与の点においても改善の余地がある。
他の技術として、生理活性物質と生体内分解性物質を含有し、生体適合粒子からなるタップ密度が0.4g/cm3未満で、幾何学的粒子径が5−30μm、空力学的粒子径が1−5μmの特性を有する肺内送達用微粒子組成物が開示されている(【特許文献2】国際公開WO97/44103号パンフレット(対応日本特許特表2000−511189号公報))。該発明も前記発明と同様、生理活性物質を溶解させる工程を採用しているために、その安定性向上が望まれる。
また、肺送達のための医薬の製造における界面活性剤の使用であって、該医薬は、生理活性剤を含むエアロゾル化医薬を提供するための吸入デバイスを使用してエアロゾル化された複数の多孔性微細構造を含み、該エアロゾル化医薬は、少なくとも該エアロゾル化医薬を必要とする患者の鼻または肺の気道の一部分への投与形態である使用に関する発明が開示されている(【特許文献3】国際公開WO99/16419号パンフレット(対応日本特許特表2001−517691号公報))。該発明によれば、標準的な粒子径で、低かさ密度で、中空あるいは多孔性微細構造物とすることにより、安定な分散性を有し、粒子間の引力を低減し、粉末吸入剤の使用について適合する比較的低い凝集力を示す粉末の提供を可能にしたことが開示されている。しかしながら、該エアロゾル化医薬のごとく多孔性の微細構造を成すためには、揮発性の物質を加える等、特殊な製造方法および製造条件が必要である。加えて、医薬を溶解する製造法ゆえ、薬物が非晶質化する恐れがあり、過酷条件下における保存時に薬物自身の安定性だけでなく、粒子間凝集を引き起こすことが懸念される。
上記の如く、粉末吸入剤分野において、粉末粒子の肺内送達性を改善する試みは種々行われているが、安全性が高く、経時的な安定性に優れ、優れた肺内送達性を示し、また場合により,生理活性物質に応じた徐放性の付与が可能で、簡便な方法により調製可能な吸入用粉末医薬組成物については、改善の余地がある。
発明の開示
このような状況下において、本発明者らは前記課題の克服を目的として鋭意研究した結果、コレステロール、水素添加レシチン等の静電凝集を抑制し、相転移温度および/または融点が40℃以上である、特定の物質を選択し、微小な結晶状態の生理活性物質粉末に前記特定物質を被覆した際には、その被覆を施していない結晶生理活性物質、あるいは結晶状態にない生理活性物質を含む前記特定物質により被覆した粉末粒子よりも粉末同士の凝集性が改善され、良好な肺内送達性を示すこと、高温条件下に経時的に保存した後においても優れた肺内送達性を示すことを知った。さらに該特定物質の中でも疎水性物質を用いた場合、被覆粒子は、後述の溶出試験法において試験開始初期の溶出を十分に抑制した徐放性の溶出を示すことを知見して、本発明を完成するに至った。
本発明によって肺内送達性が著しく改善される機構は、未だ明らかとはなっていないが、微小な結晶状態の生理活性物質に前記特定物質を被覆したことによって、粉末粒子同士が接触する部位に生理活性物質が顕在しておらず、粒子同士の付着性が低下した結果によるものと推察される。また徐放性に関しては、非晶質の生理活性物質が顕在している技術(非晶質の生理活性物質を含むマトリックス技術)に比較して、溶出液に晒される生理活性物質の部分が少ないため、より疎水的な環境がつくられ、溶出液の浸透の遅延等が起こった結果、徐放性を達成したものと推察される。溶出試験開始初期の生理活性物質の溶出が抑制されたのも、非晶質状態の生理活性物質が顕在していないことによるものと推察される。
粒子を微小とする場合、表面積の増大により、通常は溶出が速くなるところ、微小な結晶状態の生理活性物質を用いた上においても、徐放性が達成され、かつ安定性、肺内送達性も達成できたことは、予想し得ない結果であった。
なお薬物を滑沢剤とともに高分子水溶液中に懸濁させた状態で微細化し、続いて噴霧乾燥することにより得た粉末吸入剤の開示がされている(【特許文献3】特開平11−79985号公報)。当該技術は、滑沢剤を薬物上に高分子で接着し、滑沢剤を薬物の表面上に点在させることで粉末分散装置への付着量を減じ、気相中での分散性を改善しようとしたものであり、その滑沢剤の添加量が1−3%重量であることから、生理活性物質の被覆を目的とする本発明の技術的手段と相違するものである。またこの技術においては接着基剤としての高分子物質の使用が必須であり、使用されているヒドロキシプロピルセルロースなどは生体内で分解されないので肺内蓄積も懸念される。
すなわち、本発明は、
1.粒子径が0.5μm−8μmである結晶状態の生理活性物質を、融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなる、粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする吸入用粉末医薬組成物、
2.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、L−シスチンからなる群より選択される1種または2種以上である上記1に記載の吸入用粉末医薬組成物、
3.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロール、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール4000からなる群より選択される1種または2種以上である上記2に記載の吸入用粉末医薬組成物、
4.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロールのうち、1種または2種である上記3に記載の吸入用粉末医薬組成物、
5.生理活性物質0.05−95重量%と融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質5−99.95重量%とを含有し、前記生理活性物質に該物質を被覆してなる幾何学的粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする上記2に記載の吸入用粉末医薬組成物、
6.粒子径が0.5μm−8μmである結晶状態の生理活性物質を、融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなる、粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
7.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、L−シスチンからなる群より選択される1種または2種以上である上記6に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
8.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロール、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール4000からなる群より選択される1種または2種以上である上記7に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
9.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロールのうち、1種または2種である上記8に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
10.生理活性物質0.05−95重量%と融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質5−99.95重量%とを含有し、前記生理活性物質に該物質を被覆してなる幾何学的粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする上記7に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
に関する。
本発明に用いる生理活性物質について、「微小」であるとはその幾何学的粒子径が0.5μm−8μm、好ましくは0.5μm−5μm、更に好ましくは0.5μm−3μmである、微小化された生理活性物質を意味する。
ここで「幾何学的粒子径」とは、粉末の一次粒子の平均粒子径を示し、例えば、粒子が三次元的にランダムに配向しているものとして,一定の方向に粒子の寸法を測ることで得られる粒子径である定方向径の一つであるフェレー径を測定することにより求めることができる。フェレー径は、一定の方向に粒子の最大寸法を測ることで測定することができ、本発明においては、例えば電子顕微鏡(JSM−5400日本電子社製)の2000倍の倍率の画像中にある粒子100個のフェレー径を測定し、その平均値より求めた値を意味する。
「結晶状態」とは、本発明の生理活性物質が結晶として存在していることを意味し、一部非晶質(アモルファス)の状態として存在している形態も含むことができる。「一部」とは全体の重量に対して、約0%−約30%、好ましくは約0%−約15%、さらに好ましくは約0%−約10%の重量割合を意味する。
また本発明における「融点」とは特に固相状態の物質が液相状態と平衡を保つ時の温度を、「相転移温度」とは、物質が異なる相に移る温度を意味し、例えば固体相から液体相に移る温度,あるいはガラス転移温度をいう。「融点および/または相転移温度」との記載は、融点、または相転移温度のいずれをも有する物質が存在するためである。例えばホスファチジルコリン(融点:約235℃、相転移温度:−15〜−17℃)は排除される。融点および/または相転移温度が40℃以下の場合,該物質は排除される。
本発明における「生体適合性」とは、生体内に存在する物質、あるいは製薬学的に許容される生体内において溶解、分解する物質を意味する。例えば、日本薬局方(第十四改正、広川書店)、医薬品添加物辞典(厚生省薬務局審査課推薦、日本医薬品添加剤協会編集)、USP、EPおよびINACTIVE INGREDIENT GUID(by Drug Information Resources)に掲載されているもの等を示し、特に吸入剤および注射剤用の賦形剤として用いられるものが好適な例である。
本発明における「静電凝集抑制物質」とは、例えば該物質を用いて結晶状態の微小な生理活性物質を被覆することにより得られた粉末の静電電荷量を、後記試験例に示すファラデーゲージ法により測定するとき、0以上3x10−9Q以下を示す物質を意味する。
また本発明における「被覆」とは、微小な生理活性物質に静電凝集抑制物質を被覆することを意味する。すなわち本発明においては、生理活性物質全体を前記物質で覆う態様、或いは一部を覆う態様の両者を「被覆」と定義する。また本発明における「被覆」には、前記物質中に結晶状態の生理活性物質が分散、保持される態様(いわゆるマトリックス)も含むことができる。しかしながら、非晶質の生理活性物質を含むマトリックスの態様は含まない。用いる結晶状態の生理活性物質の粒子径により、得られる上記記載の態様が異なるため、得られた組成物には、結晶状態の生理活性物質を含有する上記各態様をすべて含むことも可能である。
本発明記載の「肺内送達率」とは空気力学的に肺内に送達可能とされる粉末の全粉末に対する割合を意味する。「空気力学的に」とは空気中における粒子の特性を意味する。具体的には、カスケードインパクター法(第24版米国薬局方)に従い「肺内送達率」を測定した場合、カットオフ径が0.43−5.80μmの範囲の各プレート上に補足された粉末の割合を意味する。また、Twin Impinger法(第23版米国薬局方)に従い測定した場合には、Stage2に送達した粉末の割合を意味する。特に本発明に記載の「優れた肺内送達性」とは、以下に定義する改善率が30%以上であることを意味する。
本発明に記載の「安定性に優れる」とは、特定の条件下、例えば40°等で本発明の吸入用医薬粉末を保存した際にも粒子の凝集が認められないこと、または肺内送達率が低下しないことを意味する。
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における組成物の製造の際に供する生理活性物質の幾何学的粒子径としては、約0.5μm−約8μm、好ましくは約0.5μm−約5μm、更に好ましくは約0.5μm―約3μmである。
また本発明粉末医薬組成物の幾何学的粒子径としては、約0.5−約8μmであることが好ましく、約0.5−約5μmであることがさらに好ましい。加えて、最適な幾何学粒子径は約0.5−約3μmである。生理活性物質の幾何学的粒子径と粉末医薬組成物の幾何学的粒子径に差がないのは、生理活性物質が非常に薄い静電凝集抑制物質の皮膜によって覆われている態様、あるいは生理活性物質の一部のみが覆われている態様、双方を含み得る等の態様があることによる。
本発明の組成物は、生体適合性の静電凝集抑制物質で結晶状態の微小な生理活性物質を被覆した態様である。例えば、1種以上の生体適合性の静電凝集抑制物質で結晶状態の微小な生理活性物質を被覆した構造、結晶状態の微小な生理活性物質を複数の生体適合性の静電凝集抑制物質で多層に被覆した構造、あるいは複数の結晶状態の微小な生理活性物質を生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆した構造などが挙げられる。さらに、所望の肺内送達性を達成するために、構造の異なる上記組成物を適切な割合で複数配合し、供することも可能である。
また、吸入剤の領域で一般に利用される幾何学的粒子径が20μm以上の乳糖に代表される大きな粒子(以下キャリアーと記載する)と1種以上の生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆した結晶状態の生理活性物質とを混合して供することも可能である。吸入剤の領域で一般に利用されるキャリアーには、具体的にはDMV社製の乳糖微粒子Pharmatose 325M(幾何学的平均粒子径、約60μm)等が挙げられる。
本発明に用いられる生体適合性の静電凝集抑制物質としては、生体内に存在する物質、あるいは製薬学的に許容される生体内において溶解、分解するもので、粉末の生体適合性の静電凝集抑制物質であり、脂質、脂肪酸及びそのエステル、界面活性剤、ポリエチレングリコール、アミノ酸等が挙げられる。具体的にはリン脂質、テルペノイド、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アミノ酸等を挙げることができ、融点および/または相転移温度が40℃以上のものである。40度より低い場合、製造上取扱い難く、また本発明吸入用医薬組成物の経時的な安定化に寄与しない。
リン脂質としてはグリセロリン脂質およびスフィンゴリン脂質、あるいはこれらの混合物が好ましく、水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリンが特に好ましい。水素添加レシチンには水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等が含まれる。
テルペノイドとしてはステロールが好ましく、コレステロールが特に好ましい。
脂肪酸エステルとしては、コレステロールの脂肪酸エステルが好ましく、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、これらの混合物が挙げられる。
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)−ポリオキシプロピレン(30)グリコール(商品名:プルロニックF68、旭電化工業社製)が好適である。
ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000が好ましい。
アミノ酸としてはL−シスチンが好適である。
上記生体適合性の静電凝集抑制物質の1種又は2種以上を適宜組み合わせ用いることも可能である。
徐放性の性質を付与させる場合には、生体適合性の静電凝集抑制物質として疎水性物質を選択する。ここで「疎水性」とは、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合いのうち、溶質1gを溶かすのに1000mL以上の水あるいは崩壊試験液第2液(日本薬局方(第十四改正、広川書店))を要する性質を意味し、日本薬局方通則記載の溶解性を示す用語である、「極めて溶けにくい」もしくは「ほとんど溶けない」、を意味する。
「徐放性」とは、肺内体液量等を想定した少量の溶出液を用いたin vitro溶出試験方法で該組成物の溶出を測定するとき、2時間、好ましくは6時間、さらに好ましくは12時間持続的な溶出を示すことを意味する。さらにまた好ましくは、試験開始30分後の溶出率が0−30%、かつ試験開始120分後の溶出率が0−50%であることを意味する。
疎水性物質としては、例えば、テルペノイド、リン脂質、脂肪酸エステル、アミノ酸等が挙げられる。具体的な疎水性物質としては、コレステロール、水素添加レシチン、コレステロールの脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、L−シスチン等を挙げることができる。もちろん、上記生体適合性の疎水性物質の1種または2種以上を適宜組み合わせ用いることも可能である。
さらに生体適合性の静電凝集抑制物質の配合量は、通常結晶状態の生理活性物質あるいは医薬用途(適応症)に合わせ適宜選定されるが、好ましくは組成物全体の3−99.95重量%、また好ましくは5から99.95重量%、さらに好ましくは7.5−99.5重量%、さらにまた好ましくは10−95重量%である。
本発明の粉末に適応できる生理活性物質としては、局所適用あるいはあるいは全身適用の吸入薬として有用な生理活性物質であって、結晶状態となりうるものであれば、特に限定されない。また、1種又は2種以上の生理活性物質を適宜組み合わせて用いることも可能である。
例えば、局所適用として、特に喘息、慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)、感染症に有用であり、副腎皮質ホルモン類、β2アドレノ受容体アゴニスト、抗コリン作動性気管支拡張剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、ロイコトリエン拮抗薬/阻害薬、トロンボキサン拮抗薬/阻害薬、ロイコトリエン・トロンボキサン拮抗薬/阻害薬、5−リポキシオキシゲナーゼ阻害薬、ホスホジエステラーゼIV阻害薬、ホスホリパーゼA2阻害剤、Ca2+release−activated Ca2+チャンネル阻害薬、アデノシンA2アゴニスト、エンドセリンA拮抗薬、抗ウイルス薬、嚢胞性肺疾患治療薬、去痰剤、肺サーファクタント等が挙げられる。
副腎皮質ホルモン類としては、フルチカゾン、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、フルニソリド、ブデソニド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオシノロンロフレポニド、モメタゾン等およびこれらの塩が挙げられる。
β2アドレノ受容体アゴニストとしては、ホルモテロール、サルブタモール、テルブタリン、イソプロテレノール、フェノテロール、アドレナリン、ピルブテロール、サルメテロール、プロカテロール、プロキサテロール等およびこれらの塩が挙げられる。
抗コリン作動性気管支拡張剤としては、(+)−(1S,3’R)−quinuclidin−3’−yl1−phenyl−1,2,3,4−tetrahydroisoquinoline−2−carboxylate、イプラトロピウム、チオトロピウム等およびこれらの塩が挙げられる。
抗アレルギー剤としては、クロモグリク酸、ネドクロミル等およびこれらの塩が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、ケトチフェン、アゼラスチン、テルフェナジン等およびこれらの塩が挙げられる。
ロイコトリエン拮抗薬/阻害薬としては、プランルカスト、ザフィルカスト、モンテルカスト等およびこれらの塩が挙げられる。
トロンボキサン拮抗薬/阻害薬としては、セラトロダスト、オザグレル等およびこれらの塩が挙げられる。
ロイコトリエン・トロンボキサン拮抗薬/阻害薬としては、N−[5−[3−[(4−chlorophenyl)sulfonyl]propyl]−2−(1H−tetrazol−5−ylmethoxy)phenyl]−3−[[4−(1,1−dimethylethyl)−2−thiazolyl]methoxy]benzamide等およびその塩が挙げられる。
5−リポキシオキシゲナーゼ阻害薬としては、ザイリュートン等およびその塩が挙げられる。
ホスホジエステラーゼIV阻害薬としては、3−[4−(3−chlorophenyl)−1−ethyl−7−methyl−2−oxo−1,2−dihydro−1,8−naphthyridin−3−yl]propanoic acid、ロフルミラスト、シロミラスト等およびこれらの塩が挙げられる。
Ca2+release−activated Ca2+チャンネル阻害薬としては、4−methyl−4’−[3,5−bis(trifluoromethyl)−1H−pyrazol−1−yl]−1,2,3−thiadiazole−5−carboxanilide等およびその塩が挙げられる。
エンドセリンA拮抗薬としては、
N−6−methoxy−5−(2−methoxyphenoxy)−2−(pyrimidin−2−yl)pyrimidin−4−yl]−2−phenylethenesulfonamidate)等およびその塩が挙げられる。
抗ウイルス薬としては、ザナミビル、Oseltamivir等およびこれらの塩が挙げられる。
嚢胞性肺疾患治療薬として、recombinant human deoxyribonuclease I(rhDNAase I)等が挙げられる。
去痰剤として、アンブロキソール等およびその塩が挙げられる。
肺サーファクタントとしては、天然(抽出物)、及び人工肺サーファクタント等が挙げられる。
また、全身適用としては、各種の疾患に有用と考えられるが、糖尿病薬(インスリン及びその誘導体等)、鎮痛薬(モルヒネ、アセトアミノフェン等)、抗パーキンソン薬(レボドパ等)、抗関節炎薬(セレコキシブ、バルデコキシブ等)、抗菌剤(アムフォテリシンB、ファロペネムナトリウム)、肺高血圧症薬(プロスタグランジンE1、プロスタグランジンI2(ベラプロストナトリウム等)、およびその誘導体等)、化学療法剤(インターフェロン、シスプラチン、ドキソルビシン、メソトレキセート、塩酸ダウノルビシン、フルオロウラシル等)、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス等)、鎮咳薬(コデイン、ジヒドロコデイン、エフェドリン、メチルエフェドリン等)、ワクチン剤(肺炎球菌ワクチン等)等が挙げられる。
さらにこれらに、ペプチド・タンパク類(インスリン、LHRH、グルカゴン、ヒト成長ホルモン等)、サイトカイン類(インターフェロン、インターロイキン等)、遺伝子薬類(Plasmid DNA等)、ベクター類(ウイルスベクター、非ウイルス性ベクター、リポソーム)、アンチセンス類(アデノシンA1受容体のアンチセンス等)等も含まれる。
なお、生理活性物質成分は、生理活性物質の合剤でもあり得る。
また好ましい化合物として、以下の化合物A、B、C、D、Eをあげることができる。化合物Aは、N−[5−[3−[(4−chlorophenyl)sulfonyl]propyl]−2−(1H−tetrazol−5−ylmethoxy)phenyl]−3−[[4−(1,1−dimethylethyl)−2−thiazolyl]methoxy]benzamide、化合物Bは、4−methyl−4’−[3,5−bis(trifluoromethyl)−1H−pyrazol−1−yl]−1,2,3−thiadiazole−5−carboxanilide、化合物Cは、3−[4−(3−chlorophenyl)−1−ethyl−7−methyl−2−oxo−1,2−dihydro−1,8−naphthyridin−3−yl]propanoic acid、化合物Dは、(+)−(1S,3’R)−quinuclidin−3’−yl1−phenyl−1,2,3,4−tetrahydroisoquinoline−2−carboxylate monosuccinate、化合物Eは、potassium(E)−N−[6−methoxy−5−(2−methoxyphenoxy)−2−(pyrimidine−2−yl)pyrimidine−4−yl]−2−phenylethenesul fonamidateである。
結晶状態の生理活性物質の配合量は、通常生理活性物質あるいは医薬用途(適応症)に合わせ、治療学的に有効な量あるいは予防学的に有効な量が適宜選定され、一概には規定することはできないが、例えば、組成物全体の0.05から99.95重量%、好ましくは0.05から99.5重量%、より好ましくは、0.05から99重量%、さらに好ましくは、0.05から95重量%を選択することができる。
本発明の組成物を吸入投与する方法については、特に限定されないが、通常の吸入剤と同様に、本発明の組成物を適当なカプセルあるいはブリスターに充填し、適当な吸入デバイスにより吸入することができる。あるいは本発明の組成物を適当な溶剤に分散し、ネブライザーにより吸入することもできる。また、加圧下に液化可能な塩素フリーのフルオロ炭化水素HFA等の噴射剤ガスに分散し、汎用されている定量噴霧式吸入器MDI(Meter Dose Inhaler)として吸入することも可能である。
さらに、本発明の組成物の製剤形態としては、吸入デバイス等で分散後、肺内に到達可能な粉末となるものが選択できる。すなわち、適切な手段により、投与時に粉末あるいは1次粒子として存在し得る微粒子となる製剤の態様をとればよい。例えば、本発明の組成物は、カプセル充填すべく粉末の流動性をさらに改善するため、固形剤の分野で一般的な造粒物の態様をとることもできる。また、キャリアーに本発明の組成物を適当量混合した態様をとることも可能である。
本発明の組成物の製剤化に際しては、その肺内送達特性に影響を及ぼさない範囲で、固形製剤化の公知の方法が利用でき、従来から使用されている添加剤の1種及び/または2種以上を適宜組み合わせて使用できる。このような添加剤としては、結合剤、増量剤、賦形剤、滑沢剤、やく味剤、香料などを挙げることができる。具体的には、結合剤としては例えば乳糖、マンニトール、果糖、ブドウ糖、フマル酸、デンプン、ゼラチンが挙げられ、賦形剤としては、例えば乳糖、マルトース、マンニトール、キシリトール、グリシン、アスパラギン酸、デンプン、ゼラチン、デキストラン、クエン酸が挙げられる。滑沢剤としては、乳糖、デンプン、ゼラチン、フマル酸、リン酸、やく味剤としては、乳糖、マルトース、マンニトール、果糖、キシリトール、クエン酸を具体的な例として挙げることができる。
「肺内送達特性に影響を及ぼさない範囲で」とは、吸入時に、当初の組成物の肺内送達性を損なわないことを意味する。
なお本発明において使用することができる結合剤は、本発明の静電凝集抑制物質を生理活性物質に付着する目的で使用することはない。
本発明の組成物は、簡便な製造方法で調製しうる。例えばコレステロール等の生体適合性の静電凝集抑制物質を溶解した適当な溶剤に、幾何学的粒子径が5μm以下に製した結晶状態の生理活性物質を懸濁した懸濁液をスプレードライヤーによる噴霧乾燥法等により溶媒を留去し、結晶状態の生理活性物質を生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆した組成物を製することも可能である。幾何学的粒子径が5μm以下の粒子の製造法としては、公知の方法が利用でき、ジェットミル、マイクロフルイダイザー等による微粉砕法、あるいはスプレードライヤー、二酸化炭素等の超臨界流体を用いた手法(超臨界流体法)等による微粒子製造法を用いることが出来る。
生体適合性の静電凝集抑制物質を溶解する適当な溶剤として、エタノール,メタノール等の有機溶媒,また水,CO2等の超臨界流体等をあげることができる。これら溶剤の中から、生理活性物質に応じて、生理活性物質を溶解せず、静電凝集抑制物質を溶解するものが選択される。また生理活性物質および静電凝集抑制物質の双方を溶解する溶剤であっても、異なる溶剤の混合,超臨界流体と溶剤の混合,またその条件等を調整することによって静電凝集抑制物質のみを溶解することも可能となる。本発明の製造方法は、これらの製造方法により限定的に解釈されるものではない。
次に本発明吸入用粉末医薬組成物の製造方法を説明する。
結晶状態の生理活性物質をジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力5.0b、供給エアー圧力5.5bで粉砕し、幾何学的粒子径が5μm以下の微粒子を調製する。次に例えばコレステロール(日油リポソーム社製)をエタノール及び精製水の混液に溶解させた後、該ジェットミル粉砕微粒子を加え、超音波処理を5分間行い、懸濁液を調製する。この懸濁液を例えばスプレードライヤー(例えばヤマト社製、DL−41)にて、適切な条件により、本発明吸入用粉末医薬組成物を得る。
生理活性物質が結晶状態にあるか否かは、X線回折、示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)等の方法を採用し確認することができる。
本発明は、結晶状態の生理活性物質および生体適合性の静電凝集抑制物質からなり、安全性、安定性に優れ、優れた肺内送達性を達成した吸入用粉末医薬組成物を簡便な方法により提供することを可能とした点において顕著な効果を奏するものである。
また更に疎水性物質を選択することにより、生理活性物質の特性に合わせた徐放性の付与も可能となった。
発明を実施するための最良の形態
下記に、本発明の内容を例を挙げて説明するが、これにより本発明が限定的に解釈されるものではない。
実施例1.化合物A(フリー体)微粉末にコレステロールを25重量%被覆した吸入用粉末医薬組成物の調製
コレステロール(日油リポソーム社製)0.6g、エタノール400g及び精製水197gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例2.化合物A(フリー体)微粉末にコレステロールを11.5重量%コーチングした吸入用粉末医薬組成物の調製
コレステロール(日油リポソーム社製)0.3g、エタノール200g及び精製水100gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.7gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度1.0w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量2g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度67℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例3.化合物A(フリー体)微粉末にコレステロールを5.3重量%コーチングした吸入用組成物の調製
コレステロール(日油リポソーム社製)0.15g、エタノール200g及び精製水100gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.85gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度1.0w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量2g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度65℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例4.化合物A(フリー体)微粉末に水素添加レシチンを25重量%コーチングした吸入用組成物の調製
水素添加大豆レシチン(日油リポソーム社製)0.6gをエタノール400gに溶解し、精製水197gを混合後、約50℃に加温する。比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.4gを加え、約50℃に加温しながら、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。約50℃のこの懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例5.化合物A(フリー体)微粉末にポリエチレングリコール4000を25%コーティングした吸入用組成物の調製
ポリエチレングリコール4000(関東化学社製)0.6g、エタノール200g及び精製水397gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例6.化合物A(フリー体)微粉末にプルロニックF68を25%コーティングした吸入用組成物の調製
プルロニックF68(旭電化工業社製)0.4g、エタノール267g及び精製水131gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を1.6gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例7.化合物A(フリー体)微粉末にL−シスチンを11.5重量%コーチングした吸入用粉末医薬組成物の調製
L−シスチン(日本理化学社製)0.2gを0.01N−NaOH溶液250gに溶解し、エタノール135gを加え混合した。0.1N−HClを約15ml加え、弱アルカリに中和させた。化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を1.8gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製し、スプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例8.化合物A(フリー体)微粉末にジステアロイルホスファチジルコリンを25重量%被覆した吸入用粉末医薬組成物の調製
ジステアロイルホスファチジルコリン(日油リポソーム社製)0.6g、エタノール420g及び精製水197gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品2.4gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量8g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度80℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例9.化合物B微粉末にポリエチレングリコール4000を25%コーティングした吸入用粉末医薬組成物の調製
ポリエチレングリコール4000(関東化学社製)0.6g、エタノール200g及び精製水397gを混合した溶液に、比較例2で製した化合物Bジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例10.化合物A(フリー体)微粉末に水素添加レシチンを25重量%コーチングした組成物(実施例4)を乳糖キャリアーに混合して製した吸入用粉末医薬組成物の調製
実施例4で製した組成物50mgと吸入剤用乳糖微粒子Pharmatose 325M(DMV社製)200mgを共栓付きガラス製遠沈管内で5分間混合し、吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例11
水素添加レシチン(日油リポソーム社製)0.4g、コレステロール(日油リポソーム社製)0.2g、エタノール400g及び精製水197gを混合し約50℃に加温する。化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品(幾何学的粒子径2.2μm)2.4gを加え、約50℃に加温しながら、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。約50℃のこの懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量8g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度80℃にて噴霧乾燥し、本発明徐放性吸入用医薬組成物を得た。
実施例12.化合物C微粉末にポリエチレングリコール4000を25%コーティングした吸入用粉末医薬組成物の調製
ポリエチレングリコール4000(関東化学社製)0.6g、エタノール100g及び精製水497gを混合した溶液に、比較例6で製した化合物Cジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量8g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.7m3/min、吸気温度85℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
比較例1.化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕してなる吸入用粉末の調製
化合物A(フリー体)80gをジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力5.0b、供給エアー圧力5.5bで粉砕し、吸入用粉末を得た。
比較例2.化合物Bジェットミル粉砕してなる吸入用粉末の調製
化合物B80gをジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力5.0b、供給エアー圧力5.5bで粉砕し、吸入用粉末を得た。
比較例3.化合物A(フリー体)微粉末に相転移温度が40℃より低い卵黄レシチンを5%コーティングした吸入用粉末の調製
卵黄レシチン(日油リポソーム社製)0.15g、エタノール400g及び精製水197gを混合した溶液に、化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品(粒子径2.7μm)を2.85gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4.5g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度60℃にて噴霧乾燥し、吸入用粉末を得た。
比較例4.化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品と乳糖キャリアーを混合して製してなる吸入用粉末の調製
比較例1で製した化合物A(フリー体)微粉末50mgと乳糖微粒子(DMV社製、Pharmatose 325M)200mgを共栓付きガラス製遠沈管内で5分間混合し、吸入用粉末を得た。
比較例5.化合物A(フリー体)/コレステロール(8/2)からなる非晶質の化合物Aを含むマトリックス状吸入用粉末の調製
化合物A(フリー体)2.4g、コレステロール(日油リポソーム社製)0.6g、エタノール507g及び精製水90gを混合し、固形物濃度0.5重量%なる溶液を調製した。この溶液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量6g/min、atomizing air 1.5kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、吸入用粉末を得た。
比較例6 化合物Cをジェットミル粉砕してなる吸入用粉末の調製
化合物C80gをジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力4.5b、供給エアー圧力6.2bで粉砕し、吸入用粉末を得た。
比較例7ジパルミトイルフォスファチジルコリンDPPC(日本精化社製)
0.6g、エタノール400g及び精製水197gを混合した溶液に、化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品(幾何学的粒子径2.2μm)を2.4gを加え、加温、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度65℃にて噴霧乾燥し、吸入用粉末を得た。
比較例8
化合物A(フリー体)10.0g、メタノール495g及びジクロロメタン495gを混合し、固形物濃度1.0w/w%なる溶液を調製した。この溶液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量10g/min、atomizing air 1.0kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥して、吸入用粉末を得た。
試験例1.走査型顕微鏡による吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の観察
実施例1−5、7、8、9、12の吸入用粉末医薬組成物および比較例1−3、5、6で調製した吸入用粉末を、走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM−5400)にて観察をした。いずれの組成物および粉末も粒子径は約0.5−5μmであり、吸入用として適する粒子径であった。
試験例2.吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の静電電荷量および肺内送達率
実施例1、3、4、5、7、8、9、12で調製した吸入用粉末医薬組成物および比較例1、2、6で調製した吸入用粉末の静電電荷量はファラデーケージ法により測定した。組成物および粉末をIWAKIポリプロピレン製遠沈管(旭テクノグラス社製)内で激しく振とうした後、1gの静電電荷量を静電電荷量計(春日電機社製;KQ−431B)にて測定した。
さらに、肺内送達率を、カスケードインパクター法(第24版米国薬局方)に則り測定した。吸入用粉末をHPMC2号カプセルに適量充填し、吸入デバイス(ユニシアジェックス社製JethalerTM)に装填した。デバイスをカスケードインパクターに装着し吸入(28.3ml/min、10sec.)させた場合に、カットオフ径が0.43−5.80μmの範囲の各プレート上に補足された粒子の重量を測定した。カプセル充填量に対する上記カットオフ径の各プレート上の粒子総重量を肺内送達率とした。
静電凝集抑制物質で被覆された吸入用粉末医薬組成物の静電電荷量は、比較例に示す被覆されていない吸入用粉末に比べ著しく減少し、その肺内送達性は有意に改善された(表2)。また静電電荷量が0以上3x10−9Q以下の時、20%以上の良好な肺内送達率を示した。
試験例3.乳糖キャリアーを用い製した吸入用粉末医薬組成物の肺内送達率
実施例10の吸入用粉末医薬組成物および比較例4で調製した吸入用粉末の肺内送達率を、Twin Impinger法(第23版米国薬局方)に則り測定した。吸入用粉末医薬組成物をHPMC2号カプセルに適量充填し、吸入デバイス(ユニシアジェックス社製JethalerTM)に装填した。デバイスをTwin Impingerにて、吸入(60ml/min、4sec.)させた場合のStage2に送達した化合物A量をHPLC法にて測定した。カプセル充填量に対するStage2送達量を肺内送達率とした。
表3に示すように、表面改質された粉末はキャリアーを用い製した吸入用粉末においても、表面改質を施さない生理活性物質微粒子に比し、高い肺内送達率を示した。比較例4においては、生理活性物質微粒子のキャリアー表面への付着力が非常に強く、吸入デバイスでの粉末分散時に生理活性物質粒子がキャリアー表面から脱着できず、低い肺送達率を示したと考えられた。一方、実施例10の組成物においては生理活性物質微粒子が表面改質されたことにより、キャリアーへの付着力が低減し、その分離分散性が高まったためと考えられた。
試験例4.過酷条件化保存時の安定性試験結果(実施例4vs比較例3)
相転移温度が55℃の水素添加レシチンを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例4)と相転移温度が−15℃の卵黄レシチンを被覆した吸入用粉末(比較例3)をそれぞれHPMC2号カプセルに適量充填し、40℃にて1週間保存後の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JSM−5400)にて観察した。図1に示すように相転移温度が55℃の水素添加レシチンをコーチングした吸入用粉末医薬組成物では、保管前と保管後の微粒子の状態に変化は認められなかった。しかしながら、図2に示すように相転移温度が40℃より低い卵黄レシチンをコーチングした吸入用粉末では40℃保存後に微粒子の凝集が発生していた。
試験例5.吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の結晶状態(実施例1vs比較例1、5)
粉末X線回折法により、吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の結晶状態を試験した。ジェットミル粉砕により製した化合物A(フリー体)吸入用粉末(比較例1)を適量、粉末X線回折装置(理学電機(株)製RINT−1400)に装填し、測定条件(管球:Cu、管電圧:40KV、管電流:40mA、走査速度:3.0°/min、波長:1.54056Å)で測定した。図3に示すように、化合物A(フリー体)の結晶に基づくpeakが認められ、結晶状態であることが確認された。
同様に、化合物Aジェットミル粉砕組成物にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)について試験したところ、図4に示すように、比較例1同様のpeakが確認され、コレステロールの被覆によっても結晶状態が変化していないことが確認された。さらに、化合物Aとコレステロールからなる吸入用粉末(比較例5)についても試験したところ、図5に示すように、化合物A結晶由来のpeakは認められず、化合物Aは組成物中に非晶質状態で存在していた。
試験例6.過酷条件化保存時の安定性試験結果(実施例1vs比較例5)
結晶性の化合物Aにコレステロールをコーチングした吸入用粉末医薬組成物(実施例1)と非晶質の化合物Aがコレステロール中に分散した吸入用粉末(比較例5)をそれぞれ40℃、75%条件下にて7日間保存した。保存前後の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JSM−5400)にて観察した。図6に示すように結晶性の生理活性物質にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)では、保管前と保管後の微粒子の形態に変化は認められず、その粒子径もほとんど変化しなかった。一方、非晶質の生理活性物質からなる吸入用粉末(比較例5)は、図7に示すように、過酷条件下に保存後、粒子間に凝集が生じ、粒子径が著しく増大した。
さらに、各々の組成物をHPMC2号カプセルに適量充填し、その肺内送達率を、試験例2同様、カスケードインパクター法(第24版米国薬局方)に則り測定した。
表4に示すように、結晶性の生理活性物質にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)では過酷条件下に保存後もその肺内送達率の減少は低く、良好な肺内送達性を示した。一方、非晶質の生理活性物質からなる吸入用粉末(比較例5)では、過酷条件下に保存後、粒子径増大を反映しその肺内送達率は著しく低下しており、吸入剤として適していなかった。
試験例7.in vitro溶出試験方法と徐放性吸入用組成物および吸入用粉末の溶出試験結果
実施例1−5、7、比較例1、7、8で調製された徐放性吸入用組成物および吸入用粉末からの化合物Aの溶出挙動は、村西式坐剤放出試験器ディソリーズTDS−30P(富山産業社製)を用い評価した。試験条件は下記の通り。
溶出試験液:0.2%Tween80含有pH7リン酸緩衝液 250ml
ドナー側液量:2ml
攪拌速度:100rpm
人工膜:ろ紙No.1(アドバンテック東洋社製)
実施例1−5、7、比較例1、7、8で調製された吸入用組成物の溶出試験を実施した。結晶状態の化合物A微粉末を疎水性基剤でコーチングした吸入用組成物の溶出試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、実施例1でそれぞれ13%、28%、実施例2で、9%、29%、実施例3で、18%、46%、実施例4で、16%、42%、実施例7で20%、39%であり、持続的な溶出を示した。一方、コーチングを施さない結晶状態の組成物(比較例1、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ32%、66%)および非晶質の組成物(比較例8、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ41%、75%)では、速やかな溶出を示した。また、親水性物質ポリエチレングリコール4000でコーチングした吸入用組成物(実施例5、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、26%、57%)では、溶出を十分に制御することは出来なかった。さらに、リン脂質の中でも水素添加レシチンを被覆した吸入用組成物(実施例4)では、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ16%、42%であり、持続的な溶出が達成されたが、DPPCで被覆した吸入用組成物(比較例7)では試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ40%、65%であり、溶出を充分に制御することが出来なかった。これらの結果はまったくの意外な結果であった。
産業上の利用可能性
本発明は、結晶状態の生理活性物質をファラデーゲージにより測定した組成物の静電電荷が0以上3×10−9Q以下である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなり、安全性、肺内送達性の経時的安定性に優れた、吸入用粉末医薬組成物を簡便な方法により提供することを可能にした点において有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、実施例4で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図2は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、比較例3で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図3は、ジェットミルにより製した吸入用粉末(比較例1)の粉末X線回折結果である。
図4は、化合物Aジェットミル粉砕組成物にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)の粉末X線回折結果である。
図5は、化合物Aおよびコレステロールをともに溶解し製した吸入用粉末(比較例5)の粉末X線回折結果である。
図6は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、実施例1で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図7は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、比較例5で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図8は、実施例1および比較例1の溶出試験結果を示すグラフである。
本発明は、肺内送達性が改善された吸入用粉末医薬組成物およびその製造方法に関する。特に本発明は、結晶状態の微小な生理活性物質に特定の静電凝集抑制物質を被覆してなる優れた肺内送達性を示す吸入用粉末医薬組成物およびその製造方法に関する。
背景技術
粉末吸入剤は、微細化した生理活性物質粒子を直接肺に送達することが可能なため、従来より喘息などの肺局所疾患の治療剤形として広く利用されてきた。吸入剤の分野で扱う粉末粒子は、肺内(気管支、細気管支、肺胞)への送達を目的とするため、一般に経口剤の分野で扱う粉末や製剤(数十μm−数百μm)に比べて非常に微小(10μm以下)である。しかしながら、このような微小な粉末粒子は、粒子同士の付着凝集を惹起し、気相中における分散性に劣るため、十分な肺内送達が達成されないことが懸念される。また仮に良好な肺内送達性が得られた場合でも、品質保持の観点から、保存下において経時的に付着凝集を起こさないことが望まれる。
近年においては、全身性すなわち血中への吸収を目的としたペプチドやタンパクの吸入剤による肺内送達製剤化の検討も盛んに行われている。しかしながら、吸入投与は吸収性が優れている反面、その粉末粒子が非常に微小であるため生理活性物質の溶出が早く、それに続く優れた肺粘膜吸収により、生理活性物質の薬効の作用時間が短く、頻回投与を余儀なくされる場合がある。更にその優れた吸収性のため、強い作用を示す生理活性物質の場合には全身性の副作用発現が懸念される。
従って、粉末吸入剤の開発においては、生理活性物質を含有する吸入用粉末医薬組成物の肺内送達性を改善するだけでなく、安全性が高く、経時的な安定性に優れ,また場合により,適用する生理活性物質に応じて作用時間を延長するための徐放性の付与が可能な製剤の開発が切望されている。
従来より肺内送達性改善を目的とした検討が種々試みられており、Mokhtarらは、生体内分解性基剤であるポリ乳酸を用いた徐放性の吸入用マイクロスフェアーを調製し、その肺内送達性などについて報告している(【非特許文献1】Int.J.Pharm.175,135−145(1998))。また、タッピング充填した時のかさ密度を示すタップ密度が0.4g/cm3未満の生分解性粒子を含む肺への送達のための粒子系であって、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する系に関する発明が報告されている(【特許文献1】国際公開パンフレットWO98/31346(対応日本特許出願、特表2001−526634号公報))。特に、特定の空気力学的直径を有する粒子とするために特定のタップ密度および特定の平均直径を有する粒子に設計することにより十分に軽い粒子となし、粒子凝集を回避して肺への送達性を改善したことが開示されている。また、生理活性物質の肺内での放出が制御可能であること、およびコレステロールを配合することにより、その徐放能が高められる旨の記載もされている。
しかしながら、これら吸入用マイクロスフェアーは、良好な肺内送達性を示すものの、生理活性物質を溶解する工程が採用されているために、生理活性物質によっては、その安定性が確保されず、経時的に微粒子の凝集等を惹起し、肺内送達性の低下が懸念される。さらに、後者の明細書、特にFig.6に示されたin vitroの溶出試験結果によれば、該技術の組成物は、試験開始後初期に40%以上もの生理活性物質の一挙放出を示すため、十分な溶出制御を達成するには至っておらず、徐放性付与の点においても改善の余地がある。
他の技術として、生理活性物質と生体内分解性物質を含有し、生体適合粒子からなるタップ密度が0.4g/cm3未満で、幾何学的粒子径が5−30μm、空力学的粒子径が1−5μmの特性を有する肺内送達用微粒子組成物が開示されている(【特許文献2】国際公開WO97/44103号パンフレット(対応日本特許特表2000−511189号公報))。該発明も前記発明と同様、生理活性物質を溶解させる工程を採用しているために、その安定性向上が望まれる。
また、肺送達のための医薬の製造における界面活性剤の使用であって、該医薬は、生理活性剤を含むエアロゾル化医薬を提供するための吸入デバイスを使用してエアロゾル化された複数の多孔性微細構造を含み、該エアロゾル化医薬は、少なくとも該エアロゾル化医薬を必要とする患者の鼻または肺の気道の一部分への投与形態である使用に関する発明が開示されている(【特許文献3】国際公開WO99/16419号パンフレット(対応日本特許特表2001−517691号公報))。該発明によれば、標準的な粒子径で、低かさ密度で、中空あるいは多孔性微細構造物とすることにより、安定な分散性を有し、粒子間の引力を低減し、粉末吸入剤の使用について適合する比較的低い凝集力を示す粉末の提供を可能にしたことが開示されている。しかしながら、該エアロゾル化医薬のごとく多孔性の微細構造を成すためには、揮発性の物質を加える等、特殊な製造方法および製造条件が必要である。加えて、医薬を溶解する製造法ゆえ、薬物が非晶質化する恐れがあり、過酷条件下における保存時に薬物自身の安定性だけでなく、粒子間凝集を引き起こすことが懸念される。
上記の如く、粉末吸入剤分野において、粉末粒子の肺内送達性を改善する試みは種々行われているが、安全性が高く、経時的な安定性に優れ、優れた肺内送達性を示し、また場合により,生理活性物質に応じた徐放性の付与が可能で、簡便な方法により調製可能な吸入用粉末医薬組成物については、改善の余地がある。
発明の開示
このような状況下において、本発明者らは前記課題の克服を目的として鋭意研究した結果、コレステロール、水素添加レシチン等の静電凝集を抑制し、相転移温度および/または融点が40℃以上である、特定の物質を選択し、微小な結晶状態の生理活性物質粉末に前記特定物質を被覆した際には、その被覆を施していない結晶生理活性物質、あるいは結晶状態にない生理活性物質を含む前記特定物質により被覆した粉末粒子よりも粉末同士の凝集性が改善され、良好な肺内送達性を示すこと、高温条件下に経時的に保存した後においても優れた肺内送達性を示すことを知った。さらに該特定物質の中でも疎水性物質を用いた場合、被覆粒子は、後述の溶出試験法において試験開始初期の溶出を十分に抑制した徐放性の溶出を示すことを知見して、本発明を完成するに至った。
本発明によって肺内送達性が著しく改善される機構は、未だ明らかとはなっていないが、微小な結晶状態の生理活性物質に前記特定物質を被覆したことによって、粉末粒子同士が接触する部位に生理活性物質が顕在しておらず、粒子同士の付着性が低下した結果によるものと推察される。また徐放性に関しては、非晶質の生理活性物質が顕在している技術(非晶質の生理活性物質を含むマトリックス技術)に比較して、溶出液に晒される生理活性物質の部分が少ないため、より疎水的な環境がつくられ、溶出液の浸透の遅延等が起こった結果、徐放性を達成したものと推察される。溶出試験開始初期の生理活性物質の溶出が抑制されたのも、非晶質状態の生理活性物質が顕在していないことによるものと推察される。
粒子を微小とする場合、表面積の増大により、通常は溶出が速くなるところ、微小な結晶状態の生理活性物質を用いた上においても、徐放性が達成され、かつ安定性、肺内送達性も達成できたことは、予想し得ない結果であった。
なお薬物を滑沢剤とともに高分子水溶液中に懸濁させた状態で微細化し、続いて噴霧乾燥することにより得た粉末吸入剤の開示がされている(【特許文献3】特開平11−79985号公報)。当該技術は、滑沢剤を薬物上に高分子で接着し、滑沢剤を薬物の表面上に点在させることで粉末分散装置への付着量を減じ、気相中での分散性を改善しようとしたものであり、その滑沢剤の添加量が1−3%重量であることから、生理活性物質の被覆を目的とする本発明の技術的手段と相違するものである。またこの技術においては接着基剤としての高分子物質の使用が必須であり、使用されているヒドロキシプロピルセルロースなどは生体内で分解されないので肺内蓄積も懸念される。
すなわち、本発明は、
1.粒子径が0.5μm−8μmである結晶状態の生理活性物質を、融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなる、粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする吸入用粉末医薬組成物、
2.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、L−シスチンからなる群より選択される1種または2種以上である上記1に記載の吸入用粉末医薬組成物、
3.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロール、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール4000からなる群より選択される1種または2種以上である上記2に記載の吸入用粉末医薬組成物、
4.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロールのうち、1種または2種である上記3に記載の吸入用粉末医薬組成物、
5.生理活性物質0.05−95重量%と融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質5−99.95重量%とを含有し、前記生理活性物質に該物質を被覆してなる幾何学的粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする上記2に記載の吸入用粉末医薬組成物、
6.粒子径が0.5μm−8μmである結晶状態の生理活性物質を、融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなる、粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
7.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、L−シスチンからなる群より選択される1種または2種以上である上記6に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
8.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロール、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール4000からなる群より選択される1種または2種以上である上記7に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
9.融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロールのうち、1種または2種である上記8に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
10.生理活性物質0.05−95重量%と融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質5−99.95重量%とを含有し、前記生理活性物質に該物質を被覆してなる幾何学的粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする上記7に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法、
に関する。
本発明に用いる生理活性物質について、「微小」であるとはその幾何学的粒子径が0.5μm−8μm、好ましくは0.5μm−5μm、更に好ましくは0.5μm−3μmである、微小化された生理活性物質を意味する。
ここで「幾何学的粒子径」とは、粉末の一次粒子の平均粒子径を示し、例えば、粒子が三次元的にランダムに配向しているものとして,一定の方向に粒子の寸法を測ることで得られる粒子径である定方向径の一つであるフェレー径を測定することにより求めることができる。フェレー径は、一定の方向に粒子の最大寸法を測ることで測定することができ、本発明においては、例えば電子顕微鏡(JSM−5400日本電子社製)の2000倍の倍率の画像中にある粒子100個のフェレー径を測定し、その平均値より求めた値を意味する。
「結晶状態」とは、本発明の生理活性物質が結晶として存在していることを意味し、一部非晶質(アモルファス)の状態として存在している形態も含むことができる。「一部」とは全体の重量に対して、約0%−約30%、好ましくは約0%−約15%、さらに好ましくは約0%−約10%の重量割合を意味する。
また本発明における「融点」とは特に固相状態の物質が液相状態と平衡を保つ時の温度を、「相転移温度」とは、物質が異なる相に移る温度を意味し、例えば固体相から液体相に移る温度,あるいはガラス転移温度をいう。「融点および/または相転移温度」との記載は、融点、または相転移温度のいずれをも有する物質が存在するためである。例えばホスファチジルコリン(融点:約235℃、相転移温度:−15〜−17℃)は排除される。融点および/または相転移温度が40℃以下の場合,該物質は排除される。
本発明における「生体適合性」とは、生体内に存在する物質、あるいは製薬学的に許容される生体内において溶解、分解する物質を意味する。例えば、日本薬局方(第十四改正、広川書店)、医薬品添加物辞典(厚生省薬務局審査課推薦、日本医薬品添加剤協会編集)、USP、EPおよびINACTIVE INGREDIENT GUID(by Drug Information Resources)に掲載されているもの等を示し、特に吸入剤および注射剤用の賦形剤として用いられるものが好適な例である。
本発明における「静電凝集抑制物質」とは、例えば該物質を用いて結晶状態の微小な生理活性物質を被覆することにより得られた粉末の静電電荷量を、後記試験例に示すファラデーゲージ法により測定するとき、0以上3x10−9Q以下を示す物質を意味する。
また本発明における「被覆」とは、微小な生理活性物質に静電凝集抑制物質を被覆することを意味する。すなわち本発明においては、生理活性物質全体を前記物質で覆う態様、或いは一部を覆う態様の両者を「被覆」と定義する。また本発明における「被覆」には、前記物質中に結晶状態の生理活性物質が分散、保持される態様(いわゆるマトリックス)も含むことができる。しかしながら、非晶質の生理活性物質を含むマトリックスの態様は含まない。用いる結晶状態の生理活性物質の粒子径により、得られる上記記載の態様が異なるため、得られた組成物には、結晶状態の生理活性物質を含有する上記各態様をすべて含むことも可能である。
本発明記載の「肺内送達率」とは空気力学的に肺内に送達可能とされる粉末の全粉末に対する割合を意味する。「空気力学的に」とは空気中における粒子の特性を意味する。具体的には、カスケードインパクター法(第24版米国薬局方)に従い「肺内送達率」を測定した場合、カットオフ径が0.43−5.80μmの範囲の各プレート上に補足された粉末の割合を意味する。また、Twin Impinger法(第23版米国薬局方)に従い測定した場合には、Stage2に送達した粉末の割合を意味する。特に本発明に記載の「優れた肺内送達性」とは、以下に定義する改善率が30%以上であることを意味する。
本発明に記載の「安定性に優れる」とは、特定の条件下、例えば40°等で本発明の吸入用医薬粉末を保存した際にも粒子の凝集が認められないこと、または肺内送達率が低下しないことを意味する。
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における組成物の製造の際に供する生理活性物質の幾何学的粒子径としては、約0.5μm−約8μm、好ましくは約0.5μm−約5μm、更に好ましくは約0.5μm―約3μmである。
また本発明粉末医薬組成物の幾何学的粒子径としては、約0.5−約8μmであることが好ましく、約0.5−約5μmであることがさらに好ましい。加えて、最適な幾何学粒子径は約0.5−約3μmである。生理活性物質の幾何学的粒子径と粉末医薬組成物の幾何学的粒子径に差がないのは、生理活性物質が非常に薄い静電凝集抑制物質の皮膜によって覆われている態様、あるいは生理活性物質の一部のみが覆われている態様、双方を含み得る等の態様があることによる。
本発明の組成物は、生体適合性の静電凝集抑制物質で結晶状態の微小な生理活性物質を被覆した態様である。例えば、1種以上の生体適合性の静電凝集抑制物質で結晶状態の微小な生理活性物質を被覆した構造、結晶状態の微小な生理活性物質を複数の生体適合性の静電凝集抑制物質で多層に被覆した構造、あるいは複数の結晶状態の微小な生理活性物質を生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆した構造などが挙げられる。さらに、所望の肺内送達性を達成するために、構造の異なる上記組成物を適切な割合で複数配合し、供することも可能である。
また、吸入剤の領域で一般に利用される幾何学的粒子径が20μm以上の乳糖に代表される大きな粒子(以下キャリアーと記載する)と1種以上の生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆した結晶状態の生理活性物質とを混合して供することも可能である。吸入剤の領域で一般に利用されるキャリアーには、具体的にはDMV社製の乳糖微粒子Pharmatose 325M(幾何学的平均粒子径、約60μm)等が挙げられる。
本発明に用いられる生体適合性の静電凝集抑制物質としては、生体内に存在する物質、あるいは製薬学的に許容される生体内において溶解、分解するもので、粉末の生体適合性の静電凝集抑制物質であり、脂質、脂肪酸及びそのエステル、界面活性剤、ポリエチレングリコール、アミノ酸等が挙げられる。具体的にはリン脂質、テルペノイド、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アミノ酸等を挙げることができ、融点および/または相転移温度が40℃以上のものである。40度より低い場合、製造上取扱い難く、また本発明吸入用医薬組成物の経時的な安定化に寄与しない。
リン脂質としてはグリセロリン脂質およびスフィンゴリン脂質、あるいはこれらの混合物が好ましく、水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリンが特に好ましい。水素添加レシチンには水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等が含まれる。
テルペノイドとしてはステロールが好ましく、コレステロールが特に好ましい。
脂肪酸エステルとしては、コレステロールの脂肪酸エステルが好ましく、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、これらの混合物が挙げられる。
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)−ポリオキシプロピレン(30)グリコール(商品名:プルロニックF68、旭電化工業社製)が好適である。
ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000が好ましい。
アミノ酸としてはL−シスチンが好適である。
上記生体適合性の静電凝集抑制物質の1種又は2種以上を適宜組み合わせ用いることも可能である。
徐放性の性質を付与させる場合には、生体適合性の静電凝集抑制物質として疎水性物質を選択する。ここで「疎水性」とは、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合いのうち、溶質1gを溶かすのに1000mL以上の水あるいは崩壊試験液第2液(日本薬局方(第十四改正、広川書店))を要する性質を意味し、日本薬局方通則記載の溶解性を示す用語である、「極めて溶けにくい」もしくは「ほとんど溶けない」、を意味する。
「徐放性」とは、肺内体液量等を想定した少量の溶出液を用いたin vitro溶出試験方法で該組成物の溶出を測定するとき、2時間、好ましくは6時間、さらに好ましくは12時間持続的な溶出を示すことを意味する。さらにまた好ましくは、試験開始30分後の溶出率が0−30%、かつ試験開始120分後の溶出率が0−50%であることを意味する。
疎水性物質としては、例えば、テルペノイド、リン脂質、脂肪酸エステル、アミノ酸等が挙げられる。具体的な疎水性物質としては、コレステロール、水素添加レシチン、コレステロールの脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、L−シスチン等を挙げることができる。もちろん、上記生体適合性の疎水性物質の1種または2種以上を適宜組み合わせ用いることも可能である。
さらに生体適合性の静電凝集抑制物質の配合量は、通常結晶状態の生理活性物質あるいは医薬用途(適応症)に合わせ適宜選定されるが、好ましくは組成物全体の3−99.95重量%、また好ましくは5から99.95重量%、さらに好ましくは7.5−99.5重量%、さらにまた好ましくは10−95重量%である。
本発明の粉末に適応できる生理活性物質としては、局所適用あるいはあるいは全身適用の吸入薬として有用な生理活性物質であって、結晶状態となりうるものであれば、特に限定されない。また、1種又は2種以上の生理活性物質を適宜組み合わせて用いることも可能である。
例えば、局所適用として、特に喘息、慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)、感染症に有用であり、副腎皮質ホルモン類、β2アドレノ受容体アゴニスト、抗コリン作動性気管支拡張剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、ロイコトリエン拮抗薬/阻害薬、トロンボキサン拮抗薬/阻害薬、ロイコトリエン・トロンボキサン拮抗薬/阻害薬、5−リポキシオキシゲナーゼ阻害薬、ホスホジエステラーゼIV阻害薬、ホスホリパーゼA2阻害剤、Ca2+release−activated Ca2+チャンネル阻害薬、アデノシンA2アゴニスト、エンドセリンA拮抗薬、抗ウイルス薬、嚢胞性肺疾患治療薬、去痰剤、肺サーファクタント等が挙げられる。
副腎皮質ホルモン類としては、フルチカゾン、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、フルニソリド、ブデソニド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオシノロンロフレポニド、モメタゾン等およびこれらの塩が挙げられる。
β2アドレノ受容体アゴニストとしては、ホルモテロール、サルブタモール、テルブタリン、イソプロテレノール、フェノテロール、アドレナリン、ピルブテロール、サルメテロール、プロカテロール、プロキサテロール等およびこれらの塩が挙げられる。
抗コリン作動性気管支拡張剤としては、(+)−(1S,3’R)−quinuclidin−3’−yl1−phenyl−1,2,3,4−tetrahydroisoquinoline−2−carboxylate、イプラトロピウム、チオトロピウム等およびこれらの塩が挙げられる。
抗アレルギー剤としては、クロモグリク酸、ネドクロミル等およびこれらの塩が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、ケトチフェン、アゼラスチン、テルフェナジン等およびこれらの塩が挙げられる。
ロイコトリエン拮抗薬/阻害薬としては、プランルカスト、ザフィルカスト、モンテルカスト等およびこれらの塩が挙げられる。
トロンボキサン拮抗薬/阻害薬としては、セラトロダスト、オザグレル等およびこれらの塩が挙げられる。
ロイコトリエン・トロンボキサン拮抗薬/阻害薬としては、N−[5−[3−[(4−chlorophenyl)sulfonyl]propyl]−2−(1H−tetrazol−5−ylmethoxy)phenyl]−3−[[4−(1,1−dimethylethyl)−2−thiazolyl]methoxy]benzamide等およびその塩が挙げられる。
5−リポキシオキシゲナーゼ阻害薬としては、ザイリュートン等およびその塩が挙げられる。
ホスホジエステラーゼIV阻害薬としては、3−[4−(3−chlorophenyl)−1−ethyl−7−methyl−2−oxo−1,2−dihydro−1,8−naphthyridin−3−yl]propanoic acid、ロフルミラスト、シロミラスト等およびこれらの塩が挙げられる。
Ca2+release−activated Ca2+チャンネル阻害薬としては、4−methyl−4’−[3,5−bis(trifluoromethyl)−1H−pyrazol−1−yl]−1,2,3−thiadiazole−5−carboxanilide等およびその塩が挙げられる。
エンドセリンA拮抗薬としては、
N−6−methoxy−5−(2−methoxyphenoxy)−2−(pyrimidin−2−yl)pyrimidin−4−yl]−2−phenylethenesulfonamidate)等およびその塩が挙げられる。
抗ウイルス薬としては、ザナミビル、Oseltamivir等およびこれらの塩が挙げられる。
嚢胞性肺疾患治療薬として、recombinant human deoxyribonuclease I(rhDNAase I)等が挙げられる。
去痰剤として、アンブロキソール等およびその塩が挙げられる。
肺サーファクタントとしては、天然(抽出物)、及び人工肺サーファクタント等が挙げられる。
また、全身適用としては、各種の疾患に有用と考えられるが、糖尿病薬(インスリン及びその誘導体等)、鎮痛薬(モルヒネ、アセトアミノフェン等)、抗パーキンソン薬(レボドパ等)、抗関節炎薬(セレコキシブ、バルデコキシブ等)、抗菌剤(アムフォテリシンB、ファロペネムナトリウム)、肺高血圧症薬(プロスタグランジンE1、プロスタグランジンI2(ベラプロストナトリウム等)、およびその誘導体等)、化学療法剤(インターフェロン、シスプラチン、ドキソルビシン、メソトレキセート、塩酸ダウノルビシン、フルオロウラシル等)、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス等)、鎮咳薬(コデイン、ジヒドロコデイン、エフェドリン、メチルエフェドリン等)、ワクチン剤(肺炎球菌ワクチン等)等が挙げられる。
さらにこれらに、ペプチド・タンパク類(インスリン、LHRH、グルカゴン、ヒト成長ホルモン等)、サイトカイン類(インターフェロン、インターロイキン等)、遺伝子薬類(Plasmid DNA等)、ベクター類(ウイルスベクター、非ウイルス性ベクター、リポソーム)、アンチセンス類(アデノシンA1受容体のアンチセンス等)等も含まれる。
なお、生理活性物質成分は、生理活性物質の合剤でもあり得る。
また好ましい化合物として、以下の化合物A、B、C、D、Eをあげることができる。化合物Aは、N−[5−[3−[(4−chlorophenyl)sulfonyl]propyl]−2−(1H−tetrazol−5−ylmethoxy)phenyl]−3−[[4−(1,1−dimethylethyl)−2−thiazolyl]methoxy]benzamide、化合物Bは、4−methyl−4’−[3,5−bis(trifluoromethyl)−1H−pyrazol−1−yl]−1,2,3−thiadiazole−5−carboxanilide、化合物Cは、3−[4−(3−chlorophenyl)−1−ethyl−7−methyl−2−oxo−1,2−dihydro−1,8−naphthyridin−3−yl]propanoic acid、化合物Dは、(+)−(1S,3’R)−quinuclidin−3’−yl1−phenyl−1,2,3,4−tetrahydroisoquinoline−2−carboxylate monosuccinate、化合物Eは、potassium(E)−N−[6−methoxy−5−(2−methoxyphenoxy)−2−(pyrimidine−2−yl)pyrimidine−4−yl]−2−phenylethenesul fonamidateである。
結晶状態の生理活性物質の配合量は、通常生理活性物質あるいは医薬用途(適応症)に合わせ、治療学的に有効な量あるいは予防学的に有効な量が適宜選定され、一概には規定することはできないが、例えば、組成物全体の0.05から99.95重量%、好ましくは0.05から99.5重量%、より好ましくは、0.05から99重量%、さらに好ましくは、0.05から95重量%を選択することができる。
本発明の組成物を吸入投与する方法については、特に限定されないが、通常の吸入剤と同様に、本発明の組成物を適当なカプセルあるいはブリスターに充填し、適当な吸入デバイスにより吸入することができる。あるいは本発明の組成物を適当な溶剤に分散し、ネブライザーにより吸入することもできる。また、加圧下に液化可能な塩素フリーのフルオロ炭化水素HFA等の噴射剤ガスに分散し、汎用されている定量噴霧式吸入器MDI(Meter Dose Inhaler)として吸入することも可能である。
さらに、本発明の組成物の製剤形態としては、吸入デバイス等で分散後、肺内に到達可能な粉末となるものが選択できる。すなわち、適切な手段により、投与時に粉末あるいは1次粒子として存在し得る微粒子となる製剤の態様をとればよい。例えば、本発明の組成物は、カプセル充填すべく粉末の流動性をさらに改善するため、固形剤の分野で一般的な造粒物の態様をとることもできる。また、キャリアーに本発明の組成物を適当量混合した態様をとることも可能である。
本発明の組成物の製剤化に際しては、その肺内送達特性に影響を及ぼさない範囲で、固形製剤化の公知の方法が利用でき、従来から使用されている添加剤の1種及び/または2種以上を適宜組み合わせて使用できる。このような添加剤としては、結合剤、増量剤、賦形剤、滑沢剤、やく味剤、香料などを挙げることができる。具体的には、結合剤としては例えば乳糖、マンニトール、果糖、ブドウ糖、フマル酸、デンプン、ゼラチンが挙げられ、賦形剤としては、例えば乳糖、マルトース、マンニトール、キシリトール、グリシン、アスパラギン酸、デンプン、ゼラチン、デキストラン、クエン酸が挙げられる。滑沢剤としては、乳糖、デンプン、ゼラチン、フマル酸、リン酸、やく味剤としては、乳糖、マルトース、マンニトール、果糖、キシリトール、クエン酸を具体的な例として挙げることができる。
「肺内送達特性に影響を及ぼさない範囲で」とは、吸入時に、当初の組成物の肺内送達性を損なわないことを意味する。
なお本発明において使用することができる結合剤は、本発明の静電凝集抑制物質を生理活性物質に付着する目的で使用することはない。
本発明の組成物は、簡便な製造方法で調製しうる。例えばコレステロール等の生体適合性の静電凝集抑制物質を溶解した適当な溶剤に、幾何学的粒子径が5μm以下に製した結晶状態の生理活性物質を懸濁した懸濁液をスプレードライヤーによる噴霧乾燥法等により溶媒を留去し、結晶状態の生理活性物質を生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆した組成物を製することも可能である。幾何学的粒子径が5μm以下の粒子の製造法としては、公知の方法が利用でき、ジェットミル、マイクロフルイダイザー等による微粉砕法、あるいはスプレードライヤー、二酸化炭素等の超臨界流体を用いた手法(超臨界流体法)等による微粒子製造法を用いることが出来る。
生体適合性の静電凝集抑制物質を溶解する適当な溶剤として、エタノール,メタノール等の有機溶媒,また水,CO2等の超臨界流体等をあげることができる。これら溶剤の中から、生理活性物質に応じて、生理活性物質を溶解せず、静電凝集抑制物質を溶解するものが選択される。また生理活性物質および静電凝集抑制物質の双方を溶解する溶剤であっても、異なる溶剤の混合,超臨界流体と溶剤の混合,またその条件等を調整することによって静電凝集抑制物質のみを溶解することも可能となる。本発明の製造方法は、これらの製造方法により限定的に解釈されるものではない。
次に本発明吸入用粉末医薬組成物の製造方法を説明する。
結晶状態の生理活性物質をジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力5.0b、供給エアー圧力5.5bで粉砕し、幾何学的粒子径が5μm以下の微粒子を調製する。次に例えばコレステロール(日油リポソーム社製)をエタノール及び精製水の混液に溶解させた後、該ジェットミル粉砕微粒子を加え、超音波処理を5分間行い、懸濁液を調製する。この懸濁液を例えばスプレードライヤー(例えばヤマト社製、DL−41)にて、適切な条件により、本発明吸入用粉末医薬組成物を得る。
生理活性物質が結晶状態にあるか否かは、X線回折、示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)等の方法を採用し確認することができる。
本発明は、結晶状態の生理活性物質および生体適合性の静電凝集抑制物質からなり、安全性、安定性に優れ、優れた肺内送達性を達成した吸入用粉末医薬組成物を簡便な方法により提供することを可能とした点において顕著な効果を奏するものである。
また更に疎水性物質を選択することにより、生理活性物質の特性に合わせた徐放性の付与も可能となった。
発明を実施するための最良の形態
下記に、本発明の内容を例を挙げて説明するが、これにより本発明が限定的に解釈されるものではない。
実施例1.化合物A(フリー体)微粉末にコレステロールを25重量%被覆した吸入用粉末医薬組成物の調製
コレステロール(日油リポソーム社製)0.6g、エタノール400g及び精製水197gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例2.化合物A(フリー体)微粉末にコレステロールを11.5重量%コーチングした吸入用粉末医薬組成物の調製
コレステロール(日油リポソーム社製)0.3g、エタノール200g及び精製水100gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.7gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度1.0w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量2g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度67℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例3.化合物A(フリー体)微粉末にコレステロールを5.3重量%コーチングした吸入用組成物の調製
コレステロール(日油リポソーム社製)0.15g、エタノール200g及び精製水100gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.85gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度1.0w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量2g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度65℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例4.化合物A(フリー体)微粉末に水素添加レシチンを25重量%コーチングした吸入用組成物の調製
水素添加大豆レシチン(日油リポソーム社製)0.6gをエタノール400gに溶解し、精製水197gを混合後、約50℃に加温する。比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.4gを加え、約50℃に加温しながら、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。約50℃のこの懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例5.化合物A(フリー体)微粉末にポリエチレングリコール4000を25%コーティングした吸入用組成物の調製
ポリエチレングリコール4000(関東化学社製)0.6g、エタノール200g及び精製水397gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例6.化合物A(フリー体)微粉末にプルロニックF68を25%コーティングした吸入用組成物の調製
プルロニックF68(旭電化工業社製)0.4g、エタノール267g及び精製水131gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を1.6gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例7.化合物A(フリー体)微粉末にL−シスチンを11.5重量%コーチングした吸入用粉末医薬組成物の調製
L−シスチン(日本理化学社製)0.2gを0.01N−NaOH溶液250gに溶解し、エタノール135gを加え混合した。0.1N−HClを約15ml加え、弱アルカリに中和させた。化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品を1.8gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製し、スプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例8.化合物A(フリー体)微粉末にジステアロイルホスファチジルコリンを25重量%被覆した吸入用粉末医薬組成物の調製
ジステアロイルホスファチジルコリン(日油リポソーム社製)0.6g、エタノール420g及び精製水197gを混合した溶液に、比較例1で製した化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品2.4gを加え、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量8g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度80℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例9.化合物B微粉末にポリエチレングリコール4000を25%コーティングした吸入用粉末医薬組成物の調製
ポリエチレングリコール4000(関東化学社製)0.6g、エタノール200g及び精製水397gを混合した溶液に、比較例2で製した化合物Bジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例10.化合物A(フリー体)微粉末に水素添加レシチンを25重量%コーチングした組成物(実施例4)を乳糖キャリアーに混合して製した吸入用粉末医薬組成物の調製
実施例4で製した組成物50mgと吸入剤用乳糖微粒子Pharmatose 325M(DMV社製)200mgを共栓付きガラス製遠沈管内で5分間混合し、吸入用粉末医薬組成物を得た。
実施例11
水素添加レシチン(日油リポソーム社製)0.4g、コレステロール(日油リポソーム社製)0.2g、エタノール400g及び精製水197gを混合し約50℃に加温する。化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品(幾何学的粒子径2.2μm)2.4gを加え、約50℃に加温しながら、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。約50℃のこの懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量8g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度80℃にて噴霧乾燥し、本発明徐放性吸入用医薬組成物を得た。
実施例12.化合物C微粉末にポリエチレングリコール4000を25%コーティングした吸入用粉末医薬組成物の調製
ポリエチレングリコール4000(関東化学社製)0.6g、エタノール100g及び精製水497gを混合した溶液に、比較例6で製した化合物Cジェットミル粉砕品を2.4gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量8g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.7m3/min、吸気温度85℃にて噴霧乾燥し、本発明吸入用粉末医薬組成物を得た。
比較例1.化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕してなる吸入用粉末の調製
化合物A(フリー体)80gをジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力5.0b、供給エアー圧力5.5bで粉砕し、吸入用粉末を得た。
比較例2.化合物Bジェットミル粉砕してなる吸入用粉末の調製
化合物B80gをジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力5.0b、供給エアー圧力5.5bで粉砕し、吸入用粉末を得た。
比較例3.化合物A(フリー体)微粉末に相転移温度が40℃より低い卵黄レシチンを5%コーティングした吸入用粉末の調製
卵黄レシチン(日油リポソーム社製)0.15g、エタノール400g及び精製水197gを混合した溶液に、化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品(粒子径2.7μm)を2.85gを加え、超音波処理5minを行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4.5g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度60℃にて噴霧乾燥し、吸入用粉末を得た。
比較例4.化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品と乳糖キャリアーを混合して製してなる吸入用粉末の調製
比較例1で製した化合物A(フリー体)微粉末50mgと乳糖微粒子(DMV社製、Pharmatose 325M)200mgを共栓付きガラス製遠沈管内で5分間混合し、吸入用粉末を得た。
比較例5.化合物A(フリー体)/コレステロール(8/2)からなる非晶質の化合物Aを含むマトリックス状吸入用粉末の調製
化合物A(フリー体)2.4g、コレステロール(日油リポソーム社製)0.6g、エタノール507g及び精製水90gを混合し、固形物濃度0.5重量%なる溶液を調製した。この溶液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量6g/min、atomizing air 1.5kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥し、吸入用粉末を得た。
比較例6 化合物Cをジェットミル粉砕してなる吸入用粉末の調製
化合物C80gをジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン社製スパイラルジェットミル50AS)にて、粉砕エアー圧力4.5b、供給エアー圧力6.2bで粉砕し、吸入用粉末を得た。
比較例7ジパルミトイルフォスファチジルコリンDPPC(日本精化社製)
0.6g、エタノール400g及び精製水197gを混合した溶液に、化合物A(フリー体)ジェットミル粉砕品(幾何学的粒子径2.2μm)を2.4gを加え、加温、超音波処理を5分間行い、固形物濃度0.5w/w%なる懸濁液を調製した。この懸濁液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量4g/min、atomizing air 3kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度65℃にて噴霧乾燥し、吸入用粉末を得た。
比較例8
化合物A(フリー体)10.0g、メタノール495g及びジクロロメタン495gを混合し、固形物濃度1.0w/w%なる溶液を調製した。この溶液をスプレードライヤー(ヤマト社製、DL−41)にて、噴霧液量10g/min、atomizing air 1.0kgf/cm2、Drying air 0.8m3/min、吸気温度70℃にて噴霧乾燥して、吸入用粉末を得た。
試験例1.走査型顕微鏡による吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の観察
実施例1−5、7、8、9、12の吸入用粉末医薬組成物および比較例1−3、5、6で調製した吸入用粉末を、走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM−5400)にて観察をした。いずれの組成物および粉末も粒子径は約0.5−5μmであり、吸入用として適する粒子径であった。
試験例2.吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の静電電荷量および肺内送達率
実施例1、3、4、5、7、8、9、12で調製した吸入用粉末医薬組成物および比較例1、2、6で調製した吸入用粉末の静電電荷量はファラデーケージ法により測定した。組成物および粉末をIWAKIポリプロピレン製遠沈管(旭テクノグラス社製)内で激しく振とうした後、1gの静電電荷量を静電電荷量計(春日電機社製;KQ−431B)にて測定した。
さらに、肺内送達率を、カスケードインパクター法(第24版米国薬局方)に則り測定した。吸入用粉末をHPMC2号カプセルに適量充填し、吸入デバイス(ユニシアジェックス社製JethalerTM)に装填した。デバイスをカスケードインパクターに装着し吸入(28.3ml/min、10sec.)させた場合に、カットオフ径が0.43−5.80μmの範囲の各プレート上に補足された粒子の重量を測定した。カプセル充填量に対する上記カットオフ径の各プレート上の粒子総重量を肺内送達率とした。
静電凝集抑制物質で被覆された吸入用粉末医薬組成物の静電電荷量は、比較例に示す被覆されていない吸入用粉末に比べ著しく減少し、その肺内送達性は有意に改善された(表2)。また静電電荷量が0以上3x10−9Q以下の時、20%以上の良好な肺内送達率を示した。
試験例3.乳糖キャリアーを用い製した吸入用粉末医薬組成物の肺内送達率
実施例10の吸入用粉末医薬組成物および比較例4で調製した吸入用粉末の肺内送達率を、Twin Impinger法(第23版米国薬局方)に則り測定した。吸入用粉末医薬組成物をHPMC2号カプセルに適量充填し、吸入デバイス(ユニシアジェックス社製JethalerTM)に装填した。デバイスをTwin Impingerにて、吸入(60ml/min、4sec.)させた場合のStage2に送達した化合物A量をHPLC法にて測定した。カプセル充填量に対するStage2送達量を肺内送達率とした。
表3に示すように、表面改質された粉末はキャリアーを用い製した吸入用粉末においても、表面改質を施さない生理活性物質微粒子に比し、高い肺内送達率を示した。比較例4においては、生理活性物質微粒子のキャリアー表面への付着力が非常に強く、吸入デバイスでの粉末分散時に生理活性物質粒子がキャリアー表面から脱着できず、低い肺送達率を示したと考えられた。一方、実施例10の組成物においては生理活性物質微粒子が表面改質されたことにより、キャリアーへの付着力が低減し、その分離分散性が高まったためと考えられた。
試験例4.過酷条件化保存時の安定性試験結果(実施例4vs比較例3)
相転移温度が55℃の水素添加レシチンを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例4)と相転移温度が−15℃の卵黄レシチンを被覆した吸入用粉末(比較例3)をそれぞれHPMC2号カプセルに適量充填し、40℃にて1週間保存後の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JSM−5400)にて観察した。図1に示すように相転移温度が55℃の水素添加レシチンをコーチングした吸入用粉末医薬組成物では、保管前と保管後の微粒子の状態に変化は認められなかった。しかしながら、図2に示すように相転移温度が40℃より低い卵黄レシチンをコーチングした吸入用粉末では40℃保存後に微粒子の凝集が発生していた。
試験例5.吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の結晶状態(実施例1vs比較例1、5)
粉末X線回折法により、吸入用粉末医薬組成物および吸入用粉末の結晶状態を試験した。ジェットミル粉砕により製した化合物A(フリー体)吸入用粉末(比較例1)を適量、粉末X線回折装置(理学電機(株)製RINT−1400)に装填し、測定条件(管球:Cu、管電圧:40KV、管電流:40mA、走査速度:3.0°/min、波長:1.54056Å)で測定した。図3に示すように、化合物A(フリー体)の結晶に基づくpeakが認められ、結晶状態であることが確認された。
同様に、化合物Aジェットミル粉砕組成物にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)について試験したところ、図4に示すように、比較例1同様のpeakが確認され、コレステロールの被覆によっても結晶状態が変化していないことが確認された。さらに、化合物Aとコレステロールからなる吸入用粉末(比較例5)についても試験したところ、図5に示すように、化合物A結晶由来のpeakは認められず、化合物Aは組成物中に非晶質状態で存在していた。
試験例6.過酷条件化保存時の安定性試験結果(実施例1vs比較例5)
結晶性の化合物Aにコレステロールをコーチングした吸入用粉末医薬組成物(実施例1)と非晶質の化合物Aがコレステロール中に分散した吸入用粉末(比較例5)をそれぞれ40℃、75%条件下にて7日間保存した。保存前後の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JSM−5400)にて観察した。図6に示すように結晶性の生理活性物質にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)では、保管前と保管後の微粒子の形態に変化は認められず、その粒子径もほとんど変化しなかった。一方、非晶質の生理活性物質からなる吸入用粉末(比較例5)は、図7に示すように、過酷条件下に保存後、粒子間に凝集が生じ、粒子径が著しく増大した。
さらに、各々の組成物をHPMC2号カプセルに適量充填し、その肺内送達率を、試験例2同様、カスケードインパクター法(第24版米国薬局方)に則り測定した。
表4に示すように、結晶性の生理活性物質にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)では過酷条件下に保存後もその肺内送達率の減少は低く、良好な肺内送達性を示した。一方、非晶質の生理活性物質からなる吸入用粉末(比較例5)では、過酷条件下に保存後、粒子径増大を反映しその肺内送達率は著しく低下しており、吸入剤として適していなかった。
試験例7.in vitro溶出試験方法と徐放性吸入用組成物および吸入用粉末の溶出試験結果
実施例1−5、7、比較例1、7、8で調製された徐放性吸入用組成物および吸入用粉末からの化合物Aの溶出挙動は、村西式坐剤放出試験器ディソリーズTDS−30P(富山産業社製)を用い評価した。試験条件は下記の通り。
溶出試験液:0.2%Tween80含有pH7リン酸緩衝液 250ml
ドナー側液量:2ml
攪拌速度:100rpm
人工膜:ろ紙No.1(アドバンテック東洋社製)
実施例1−5、7、比較例1、7、8で調製された吸入用組成物の溶出試験を実施した。結晶状態の化合物A微粉末を疎水性基剤でコーチングした吸入用組成物の溶出試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、実施例1でそれぞれ13%、28%、実施例2で、9%、29%、実施例3で、18%、46%、実施例4で、16%、42%、実施例7で20%、39%であり、持続的な溶出を示した。一方、コーチングを施さない結晶状態の組成物(比較例1、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ32%、66%)および非晶質の組成物(比較例8、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ41%、75%)では、速やかな溶出を示した。また、親水性物質ポリエチレングリコール4000でコーチングした吸入用組成物(実施例5、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、26%、57%)では、溶出を十分に制御することは出来なかった。さらに、リン脂質の中でも水素添加レシチンを被覆した吸入用組成物(実施例4)では、試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ16%、42%であり、持続的な溶出が達成されたが、DPPCで被覆した吸入用組成物(比較例7)では試験開始後30分および120分における生理活性物質の溶出率は、それぞれ40%、65%であり、溶出を充分に制御することが出来なかった。これらの結果はまったくの意外な結果であった。
産業上の利用可能性
本発明は、結晶状態の生理活性物質をファラデーゲージにより測定した組成物の静電電荷が0以上3×10−9Q以下である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなり、安全性、肺内送達性の経時的安定性に優れた、吸入用粉末医薬組成物を簡便な方法により提供することを可能にした点において有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、実施例4で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図2は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、比較例3で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図3は、ジェットミルにより製した吸入用粉末(比較例1)の粉末X線回折結果である。
図4は、化合物Aジェットミル粉砕組成物にコレステロールを被覆した吸入用粉末医薬組成物(実施例1)の粉末X線回折結果である。
図5は、化合物Aおよびコレステロールをともに溶解し製した吸入用粉末(比較例5)の粉末X線回折結果である。
図6は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、実施例1で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図7は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した、比較例5で製した吸入用粉末医薬組成物の粒子の保存前後における状態である。
図8は、実施例1および比較例1の溶出試験結果を示すグラフである。
Claims (10)
- 粒子径が0.5μm−8μmである結晶状態の生理活性物質を、融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなる、粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする吸入用粉末医薬組成物。
- 融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、L−シスチンからなる群より選択される1種または2種以上である請求の範囲1に記載の吸入用粉末医薬組成物。
- 融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロール、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール4000からなる群より選択される1種または2種以上である請求の範囲2に記載の吸入用粉末医薬組成物。
- 融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロールのうち、1種または2種である請求の範囲3に記載の吸入用粉末医薬組成物。
- 生理活性物質0.05−95重量%と融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質5−99.95重量%とを含有し、前記生理活性物質に該物質を被覆してなる幾何学的粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする請求の範囲2に記載の吸入用粉末医薬組成物。
- 粒子径が0.5μm−8μmである結晶状態の生理活性物質を、融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質で被覆してなる、粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする吸入用粉末医薬組成物の製造方法。
- 融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、パルミチン酸コレステロールエステル、ステアリン酸コレステロールエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000,ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、L−シスチンからなる群より選択される1種または2種以上である請求の範囲6に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法。
- 融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロール、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール4000からなる群より選択される1種または2種以上である請求の範囲7に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法。
- 融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質が水素添加レシチン、コレステロールのうち、1種または2種である請求の範囲8に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法。
- 生理活性物質0.05−95重量%と融点および/または相転移温度が40℃以上である生体適合性の静電凝集抑制物質5−99.95重量%とを含有し、前記生理活性物質に該物質を被覆してなる幾何学的粒子径が0.5−8μmであることを特徴とする請求の範囲7に記載の吸入用粉末医薬組成物の製造方法。
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