JPWO2003055840A1 - 炭酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

炭酸エステルの製造方法であって、(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして(3)該残留液をアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、ことを特徴とする方法が開示される。

Description

技術分野
本発明は、有機金属化合物と二酸化炭素を用いる炭酸エステルの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、炭酸エステルの製造方法であって、(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして(3)該残留液をアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、ことを特徴とする方法に関する。本発明の方法によると、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素から高い収率で炭酸エステルを製造することができる。二酸化炭素は、毒性や腐食性がなく廉価であり、また、本発明の方法では該有機金属化合物を再生・リサイクルして繰り返し使用できるので、該有機金属化合物由来の廃棄物が生じることがなく、更に、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もないため、本発明の製造方法は産業上に大いに有用であり、商業的価値が高い。
従来技術
炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料添加剤等の添加剤として使われるほか、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等、あるいはリチウム電池の電解質、潤滑油原料、ボイラー配管の防錆用の脱酸素剤の原料として使われるなど、有用な化合物である。
従来の炭酸エステルの製造方法としては、ホスゲンをカルボニルソースとしてアルコールと反応させる方法が挙げられる。この方法は、極めて有害で、腐食性の高いホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵等の取り扱いに細心の注意が必要であり、製造設備の維持管理及び安全性の確保のために多大なコストがかかっていた。更にこの方法では、副生する塩酸により、廃棄物処理等の問題もあった。
この他に、一酸化炭素をカルボニルソースとして、塩化銅などの触媒を用いてアルコール及び酸素と反応させる酸化的カルボニル化法も知られている。この方法も、極めて有害な一酸化炭素を高圧で用いるために、製造設備の維持管理及び安全性の確保のため、多大なコストがかかっていた。更に、一酸化炭素が酸化されて二酸化炭素を生成するなどの副反応が起こる問題があった。このため、より安全に炭酸エステルを製造する方法の開発が望まれていた。
上記したホスゲンや一酸化炭素を原料として用いる場合、原料そのもの、あるいは触媒中に塩素などのハロゲンが含まれており、得られる炭酸エステル中には、精製工程で除くことのできない微量のハロゲンが含まれる。ガソリン添加剤、軽油添加剤、電子材料などの用途にあっては、ハロゲンの混入は腐食の原因となる懸念も存在する。含まれるハロゲンを極微量にするためには徹底的な精製工程が必須となり、この点からも原料や触媒にハロゲンを含まない製造方法が望まれている。
二酸化炭素をエチレンオキシドなどと反応させて環状炭酸エステルを合成し、更にメタノールと反応させて炭酸ジメチルを得る方法が実用化されている。この方法は、原料である二酸化炭素に有害性がなく、塩酸などの腐食性物質を使用したり発生することがほとんどないので、優れた方法であるが、副生するエチレングリコールなどの有効利用が課せられており、またエチレンオキシドの原料であるエチレンや、エチレンオキシドの安全な輸送は困難であるため、これら製造工程用プラントに隣接して炭酸エステル製造工程用プラントを立地しなければならないといった制限もある。
また、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物からなる触媒の存在下に、二酸化炭素をカルボニルソースとしてアルコールと平衡反応させて炭酸エステルと水を形成することによる炭酸エステルの製造方法が知られている。この平衡反応は下記の式(3)で表される。
Figure 2003055840
この方法は、原料である二酸化炭素とアルコールが無害であるという点では理想的プロセスと言えるが、この方法は、生成物として炭酸エステルと水が同時に生成するという平衡反応を利用するものである。一酸化炭素を利用する酸化的カルボニル化法でも水が生成するが、平衡反応ではない該酸化的カルボニル化法で生成する水と、平衡反応で生成する水とでは意味が全く異なる。二酸化炭素を原料とする反応の平衡は、熱力学的に原料系に偏っているため、高収率で炭酸エステルを得ようとすれば、生成物の炭酸エステル、水を反応系外へ除去しなければならないという課題がある。更に、この水が触媒を分解して反応を阻害するなどの問題があり、触媒のターンオーバー数(再生・再利用回数)が2、3程度にとどまっていた。この問題を解決するために、生成物のひとつである水を除去するために種々の脱水剤の添加、使用方法が試みられてきた。
例えば、金属アルコキシドを触媒とし、アルコールと二酸化炭素を反応させる際に、脱水剤として高価な有機脱水剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等を大量に使用する方法[Collect.Czech.Chem.Commun.Vol.60,687−692(1995)]が提案されているが、この脱水剤は、再生されず、多量の廃棄物となる問題点がある。
有機脱水剤として、カルボン酸オルトエステルを用いて炭酸エステルを製造する方法がある(日本国特開平11−35521号公報)。(この公報においては、「カルボン酸オルトエステルと二酸化炭素を反応させる」という記載や、「アセタールを二酸化炭素と反応させる」という記載があるが、最近の研究によると、実際の反応経路は、「アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を得て、更に、水とカルボン酸オルトエステルを反応させ、また水とアセタールを反応させる」というものと理解されている。)この方法も、脱水剤が高価なカルボン酸オルトエステルであり、また、酢酸メチルが副生成物として発生することが知られており[化学装置 Vol.41,No.2、52−54(1999)]、上記と同様の問題点がある。
更に、有機脱水剤として、大量のアセタール化合物を使用する方法も提案されている(独国特許第4310109号明細書)し、金属アルコキシドまたはジブチル酸化スズを触媒としてアセタールと二酸化炭素を反応させていると記載された例もある(日本国特開2001−31629号公報)。(後者の公報における反応については、最近の研究によると、実際の反応経路は、「アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を得て、水とアセタールを反応させる」というものと理解されている。)しかし、これらの公報にはこのアセタール化合物を収率よく、廃棄物を出さずに合成する方法は示されておらず、また、アセタール化合物を脱水剤として使用すると、副生物としてケトン、アルデヒドなど、多量の廃棄物を発生させるという問題点がある。
これら有機脱水剤を使う方法は、触媒のターンオーバー数の向上を効果としているが、有機脱水剤は、炭酸エステルの生成(及び水の副生)に伴って、炭酸エステルと化学量論量消費されるので、大量の有機脱水剤を消費している。したがって、脱水反応に伴って変性した大量の有機脱水剤の処理及び再生を別途行なわなければならない。更に大量の有機脱水剤を使うにも関わらず、触媒の失活の懸念も存在する。すなわち、上記の式(3)で表される平衡反応を用いる従来の炭酸エステル製造方法では、二酸化炭素が超臨界状態となるので、超臨界二酸化炭素中で反応を行なっているため、一般に触媒の溶解度が低いので触媒分子が集合しやすく、この際、殊に、多量化しやすい有機スズを触媒として用いた場合には、多量化によって触媒の失活を引き起こす問題点がある。
固体脱水剤を使用した方法(Applied Catalysis Vol.142,L1−L3(1996))も提案されているが、この脱水剤は再生ができず、多量の廃棄物となる問題点がある。
また、金属酸化物(ジブチル酸化スズ)の存在下にアルコール(メタノール)及び二酸化炭素を反応させて得られた反応液を、固体脱水剤を詰めた充填塔へ冷却循環させ、脱水しながら徐々に平衡を炭酸エステル側にずらして炭酸エステルを得る方法を採用した例(日本国特開2001−247519号公報)も知られている。これは公知の脱水剤(例えばMolecular sieves)の水吸着性能の公知の温度依存性と脱水剤を使用する公知技術を組み合わせた方法である。Molecular sieves等の固体脱水剤への水の吸着性能は高温では低いため、溶媒として使用される大過剰の低分子量アルコール中に含まれる平衡によって生成した微量水分を吸着除去するために、高温高圧条件で平衡状態となった反応液を冷却した後に、固体脱水剤を詰めた充填塔に循環させて脱水することが必要であり、原料アルコールの転化率を高めるためには、冷却された脱水反応液を再度高温高圧に戻して反応させる必要があり、極めてエネルギー消費が大きく、また大量の固体脱水剤を必要とするという問題点がある。この方法は、平衡常数の比較的大きな脂肪族エステル合成には極めて一般的に用いられる方法であるが、二酸化炭素とアルコールを原料とした炭酸エステルの製造においては、反応の平衡は大きく原料系に偏っており、上記したような極めてエネルギー消費の大きな工程を繰り返さなければならないといった問題点は重大である。また、水を吸着飽和した脱水剤を再度使用するためには通常、数百度で焼成することが必要であって、この点からも工業的に有利なプロセスとは言えない。また、この方法は、平衡関係にある生成物のうち水のみを除去する方法であるため、原料アルコールの消費が進み、炭酸エステル濃度が高まれば、反応は進みにくくなるといった平衡反応の規制を依然として受けるといった問題点もある。更に、触媒として記載されているジブチル酸化スズのメタノールへの溶解性は極めて低く、ほとんどが固体状態で存在する。従って、冷却工程で室温まで冷却された反応液は白色スラリー状となって、次いで行なわれる脱水工程においては、脱水剤を詰めた脱水塔の閉塞を引き起こしてしまうなどの問題点がある。
一般に、有機合成反応において、脱水方法として蒸留によって水を除去する方法は広く知られているが、二酸化炭素とアルコールを用いる炭酸エステルの合成においては、旭硝子工業技術奨励会研究報告Vol.33,31−45(1978)の中に検討中と書かれているのみで、これまでに蒸留による脱水方法を完成した記載及び報告は一切ない。なお、蒸留による水の除去が行なわれていない理由としては、加熱蒸留を行なうと、逆反応が起こり、生成した炭酸エステルが失われることが知られている(日本化学会誌 No.10,1789−1794(1975))ことが挙げられる。蒸留のための加熱温度を低くするために、減圧蒸留を行なうことが考えられる。しかし、アルコールのような親水性基を持った溶媒から微量の水を単純な蒸留で完全に除去することが困難であることは、蒸留工学の常識である。)したがって、脱水のためには大量の有機脱水剤や大量の固体脱水剤を用いる方法が知られているのみで、脱水には大量の廃棄物やエネルギーを消費するという問題があった。
更に、二酸化炭素とアルコールを金属アルコキシド触媒の存在下に反応させることによって得られる、金属アルコキシドを含んだ反応液からの、炭酸エステルの分離方法について、蒸留による分離を記載した例はあるが、金属アルコキシドを触媒として用いた場合、蒸留分離の際に逆反応が起こり、生成した炭酸エステルを反応液から容易には蒸留分離できないことが知られており(日本化学会誌 No.10,1789−1794(1975))、殊に、高い沸点の炭酸エステルを金属アルコキシドを含んだ反応液から高い収率で分離する方法は知られていない。
更に、金属アルコキシドは空気中の水分にさえ不安定であり、その取り扱いには厳密な注意をする必要があったため、金属アルコキシドを触媒として使用した従来技術は、炭酸エステルの工業的な製造方法として利用されていない。ひとたび失活した触媒から高価な金属アルコキシドを容易に再生する技術がなかったからである。
水分に安定なジブチル酸化スズを触媒原料として、反応系中でジブチルスズジアルコキシドを生成させた例もある(日本国特許第3128576号)が、最初の反応の仕込み時は安定な状態であっても、ひとたび反応を開始すれば、不安定なジブチルスズジアルコキシドになるため、上記した問題は解決されていない。また、該反応条件でジブチル酸化スズをジブチルスズジアルコキシドにするためには、高温高圧にしなければ生成しえない。なぜならば、ジブチル酸化スズからアルコキシドが生成する際に発生する水を、アセタールの加水分解反応で吸収しなければならないが、該加水分解反応を触媒するには、スズの酸性度が極めて弱いからである。
以上、金属アルコキシドと二酸化炭素とアルコールを用いた従来の炭酸エステル製造法では、高価な金属アルコキシドが加水分解等で触媒能を失ってしまうと、容易、かつ、効果的に再生して再度使用する方法がなかったために、少量の金属アルコキシドと多量の有機脱水剤又は固体脱水剤の組み合わせで炭酸エステルを得ることしかできないという問題点があった。
このように、炭酸エステル製造のための従来技術には、これら解決すべき課題が多く残されており、未だ実用に供されていないのが現状である。
発明の概要
このような状況下、本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、意外にも、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を、触媒としてではなく、炭酸エステルの前駆体として大量に使用し、該有機金属化合物を二酸化炭素と付加反応させて、形成される付加物を熱分解させることを含む反応経路による反応によって、炭酸エステルを高収率で製造できることを見出した。更に本発明者らは、上記の反応で得られた反応混合物から炭酸エステルを分離し、得られた残留液をアルコールと反応させることによって、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水が形成され、その水を蒸留等の方法によって容易に除去することができることを見出した。得られた有機金属化合物は、回収して、炭酸エステル形成のための上記反応にリサイクルして再利用できる。このような知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
従って、本発明の主要な目的は、触媒由来の廃棄物が生じることなく、また、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もなく、高収率で炭酸エステルを工業的に製造するプロセスを連続して何度でも繰り返して行なうことのできる方法を提供することである。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら行う以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
発明の詳細な説明
本発明によると、炭酸エステルの製造方法であって、
(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして
(3)該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、
ことを特徴とする方法が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.炭酸エステルの製造方法であって、
(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして
(3)該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、
ことを特徴とする方法。
2.工程(1)における該有機金属化合物の使用量が、該二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることを特徴とする前項1に記載の方法。
3.工程(1)の該反応を20℃以上で行なうことを特徴とする前項2に記載の方法。
4.工程(1)で用いる該有機金属化合物が、下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含することを特徴とする前項1に記載の方法。
Figure 2003055840
(式中:
は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
Figure 2003055840
(式中:
及びMは各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
、R、R及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR10は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々独立に1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
5.工程(1)の該反応を、工程(3)で用いる該第1のアルコールと同じかまたは異なる第2のアルコールの存在下で行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
6.工程(2)の該炭酸エステルの該分離を、工程(3)で用いる該第1のアルコールと同じかまたは異なる第3のアルコールの存在下で行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
7.工程(2)の該炭酸エステルの該分離を、蒸留、抽出及び濾過よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分離方法によって行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
8.工程(3)の該水の該分離を、膜分離によって行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
9.該膜分離がパーベーパレーションであることを特徴とする前項8に記載の方法。
10.工程(3)の該水の該分離を、蒸留によって行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
11.工程(3)で用いる該第1のアルコールが、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする前項1に記載の方法。
12.該アルキルアルコール、該シクロアルキルアルコール、該アルケニルアルコール、及び該アラルキルアルコールの各々が水よりも沸点が高いことを特徴とする前項11に記載の方法。
13.該アルキルアルコールが、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール及び直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基を有するアルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を包含し、該アルケニルアルコールが直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を有することを特徴とする前項12に記載の方法。
14.式(1)のRとR及び式(2)のRとR10が各々独立に、n−ブチル基、iso−ブチル基、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基、または直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を表すことを特徴とする前項4に記載の方法。
15.工程(1)において、該有機金属化合物を、単量体、オリゴマー、ポリマー及び会合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の形態で用いることを特徴とする前項4又は14に記載の方法。
16.式(1)のM及び式(2)のMとMがスズ原子を表すことを特徴とする前項4又は14に記載の方法。
17.工程(3)の後に、工程(3)で回収された該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルする工程(4)を更に包含し、工程(1)から工程(4)までを1回以上繰り返して行なうことを特徴とする前項1から16のいずれかに記載の方法。
18.工程(1)で用いる該有機金属化合物が、有機スズオキサイドとアルコールから製造されることを特徴とする前項17に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
上記のように、従来技術では下記式(3)の平衡反応を利用している。
Figure 2003055840
即ち、従来技術の方法は、炭酸エステルと水からなる生成物系を含む平衡反応系(上記式(3)で表される)を含有する反応液中に脱水剤を用いる方法や、上記の平衡反応系を含有する反応液をそのまま冷却して、固体脱水剤を充填塔に詰めた脱水工程に循環させて該平衡反応系の水を徐々に除去して、触媒分解反応を抑制しながら極微量生成する炭酸エステルを反応液中に蓄積する方法である。
一方、本発明の方法は、このような従来技術の方法と技術発想を全く異にする新規な方法である。
本発明の特徴は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を、触媒としてではなく、炭酸エステルの前駆体として大量に使用し、該有機金属化合物を二酸化炭素と付加反応させて、形成される付加物を熱分解させることを含む反応経路による反応によって炭酸エステルを合成し(工程(1))、次に、上記の反応で得られた反応混合物から炭酸エステルを分離し(工程(2))、得られた残留液をアルコールと反応させることによって、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水が形成され、その水を蒸留等の方法によって容易に除去し、得られた該有機金属化合物を回収して(工程(3))、炭酸エステル形成のための上記反応にリサイクルして再利用することにある。本発明の方法の工程(1)における反応は、下記式(4)で表される。本発明の方法の工程(3)における反応は、下記式(5)で表される。
Figure 2003055840
Figure 2003055840
すなわち、本発明の方法は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を炭酸エステルの前駆体として主に使用し、二酸化炭素との付加反応生成物を形成し、それを熱分解させて炭酸エステルを得た後に、反応混合物から炭酸エステルを分離し、次いで、残留液中の有機金属化合物変性物(該熱分解により形成されたもの)をアルコールと反応させて金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を再生した後に、それを炭酸エステル形成反応工程に戻すといったプロセスを繰り返して炭酸エステルを製造する方法である。
本発明の方法の工程(1)の終了後においては、工程(1)に用いた金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を含まない反応液となる場合もあり、あるいは工程(2)の終了後には、工程(1)に用いた金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を含まない反応液となる場合もあるが、工程(3)の終了までに、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物が再生(再合成)される。
本発明の方法によれば、反応全体が平衡状態で支配される従来技術の方法とは異なり、式(3)で表される平衡反応を効果的に分割できるものであり、これによって、逐次反応を制御し、生成する炭酸エステルと水を反応系から除去しながら効率よく炭酸エステルを得ることができる。すなわち、本発明の方法の工程(1)では、水のない状態で反応を行なうことができ、工程(2)においては、反応混合物から炭酸エステルを分離することによって、炭酸エステルとそれ以外の熱分解物との逆反応を抑止でき、工程(3)においては、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を再生した後、水を除去することによって該有機金属化合物が回収できる。更に、各工程において冷却、加熱、撹拌、加圧、減圧など公知の化学合成技術を適宜用いるによって、操作条件の最適化を容易に図ることができる。
本発明の方法の工程(1)で用いる金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の例としては、例えば、アルコキシキ基を有する有機金属化合物を挙げることができる。工程(1)で用いる該有機金属化合物は、下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含することが好ましい。
Figure 2003055840
(式中:
は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
Figure 2003055840
(式中:
及びMは各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
、R、R及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR10は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々独立に1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
本発明でいう周期律表とは国際純正及び応用化学連合無機化学命名法(1989年)で定められた周期律表である。
これら有機金属化合物は単量体であっても、オリゴマー、ポリマー、または会合体であってもよい。
本発明に用いられる有機金属化合物おいて、式(1)のM及び式(2)のM、Mは、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子であり、中でも、チタン、スズ及びジルコニアが好ましい。アルコールへの溶解性やアルコールとの反応性を考慮すれば、スズがより好ましい。
本発明に用いられる式(1)の有機金属化合物のRとR、及び式(2)の有機金属化合物のR、R、R、Rの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、2−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基や炭素数5から12の脂環式炭化水素基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基、フェニル、トリル、ナフチル等の炭素数6から20のアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、低級アルキル基であり、より好ましくは炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。以上に記した炭素数以上のものも使用することができるが、流動性が悪くなったり、生産性を損なったりする場合がある。式(1)の有機金属化合物のRとR、及び式(2)の有機金属化合物のRとR10の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、2−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシエチル、エトキシメチル等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基や炭素数5から12の脂環式炭化水素基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
式(1)で示される有機金属化合物の例としては、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロピルオキシスズ、テトラブトキシスズ、テトラペンチルオキシスズ、テトラヘキシルオキシスズ、テトラ−2−エチル−1−ヘキシルオキシスズ、ジ−メトキシ−ジエトキシスズ、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロピルオキシチタン、テトラ−イソ−プロピルオキシ−チタン、テトラ−2−エチル−1−ヘキシルオキシスズ、ジメチルスズ−ジ−メトキシド、ジメチルスズ−ジ−エトキシド、ジメチルスズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジメチルスズ−ジ−プロポキシド、ジメチルスズ−ジ−ブトキシド、ジメチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ジメチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジメチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジメチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジメチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジメチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジメチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−メトキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−エトキシド、メチル,ブチルスズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,ブチルスズ−ジ−プロポキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−ブトキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、メチル,ブチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,ブチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−メトキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−エトキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロポキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ブトキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ペンチルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ヘキシルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロペニルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ベンジルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−メトキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−エトキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロポキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ブトキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ペンチルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ヘキシルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロペニルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ベンジルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−メトキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−エトキシド、ジ−n−ブチルスズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジ−n−ブチルスズ−ジ−プロポキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ブトキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジ−n−ブチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−メトキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−エトキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−プロポキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−ブトキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−メトキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−エトキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−プロポキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−ブトキシド、ジ−n−フェニルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ジ−フェニルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジ−フェニルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−ベンジルオキシド等が挙げられる。
式(2)で示される有機金属化合物の例としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−メトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1−(メトキシ)−3−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−エトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ブトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ブトキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−プロポキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ペンチルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−シクロヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ベンジルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−メトキシ−ジ−スタノキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−エトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−ブトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ブトキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−プロポキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−ペンチルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−シクロヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンのようなアルコキシジスタンオキサン、アラルキルオキシジスタンオキサン等が挙げられる。
これらの有機金属化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよいし、他の有機金属化合物を加えてもよい。これらの有機金属化合物は市販されているものを使用してもよく、公知の方法(例えば、オランダ国特許第6612421号)に記載の方法によって、ジブチル酸化スズと炭素数4以上のアルコールと共沸溶媒とを反応させた後、蒸留成分として式(1)で示される有機金属化合物を得て使用してもよい。該方法によれば、炭素数4より小さいアルコキシ基を有する有機金属化合物を得るためには該方法は適用できず、二塩化ジブチルスズとナトリウムアルコラートから得ると記載されている。本発明者らが鋭意検討した結果、日本国特許特願2001−396537号又は日本国特願2001−396545号に記載の方法によって、金属酸化物とアルコールから合成された式(1)で示される有機金属化合物や式(2)で示される有機金属化合物を使用してもよい。本方法によれば炭素数3以下の、例えばメトキシ基を有する有機金属化合物を得ることができる。例えば、メトキシ基を有する有機金属化合物を得るには、ジブチル酸化スズとメタノールとヘキサンから得ることができる。この場合、メタノール−ヘキサンが最低共沸となることが知られているが、驚くべきことに有機金属化合物を得られることを見いだすにいたり、水よりも沸点の低いアルコールからも有機金属化合物を得る方法を開発するにいたった。水よりも沸点の低いアルコールとジブチル酸化スズから得られる有機金属化合物は式(2)で表される成分が主となる場合が多いが、式(1)で示される有機金属化合物を多量に得たい場合は、得られた反応物を蒸留することによって、蒸留成分として式(1)で示される有機金属化合物を得ることもできる。
本発明の方法の工程(3)で用いる脱水方法としては、一般的に用いられる公知の脱水方法を任意に用いることができる。Molecular sievesのような固体脱水剤によって除去してもよく、蒸留や膜分離によって除去してもよいが、短時間で大量に有機金属化合物を得ようとすれば、蒸留によって脱水する方法が好ましい。蒸留方法は、公知の方法が使用できる。例えば常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留、抽出蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から工程(3)で用いる第1のアルコールの沸点の間で実施でき、好ましくは50℃から第1のアルコールの沸点の間である。この際、他の成分を加えてもよい。
本発明の工程(1)の実施の際には、第2のアルコールを用いても、用いなくてもよい。第2のアルコールの使用目的については後述する。第2のアルコールを用いる場合は、式(1)の有機金属化合物及式(2)の有機金属化合物の少なくとも1種を合成する際にアルコールを使用し、発生する水を蒸留によって除去すると共に、アルコールを一部残して蒸留を停止すると、残ったアルコールを第2のアルコールの少なくとも一部として利用できるので、第2のアルコールを使用して本発明の工程(1)を実施する際にアルコールの添加が不要になる場合がある。
本発明の方法においては、工程(3)で第1のアルコールを使用するほか、所望により工程(1)で第2のアルコールが使用でき、また、所望により工程(2)で第3のアルコールが使用できる。これらの第1のアルコール、第2のアルコール、第3のアルコールとしては、同じアルコールを使用してもよいし、異なるアルコールを使用してもよい。これらのアルコールの例としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ヘキセノール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキセノール等の炭素数1から12の脂肪族アルコールや炭素数5から12の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアラルキルアルコールが挙げられる。多価アルコールも使用できる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール等の炭素数1から12の脂肪族多価アルコールや炭素数5から12の脂環式多価アルコール等、ベンゼンジメタノール等のアラルキルアルコール等が挙げられる。
これらのアルコールの中で、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘキセノール等の炭素数1から8の1級または2級一価アルコール、ベンジルアルコール等の炭素数7か8の1級又は2級のアラルキルアルコールが好ましい。
式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物の分析方法は119Sn−NMRによる方法が知られている(例えば、米国特許第5,545,600号)。ただし、式(1)の有機金属化合物に相当する構造の119Sn−NMRのシフト値は、サンプル中での式(1)の有機金属化合物の濃度やアルコールの存在などによって大きく変化するのでH−NMR、13C−NMRを併用して決定するのが好ましい。例として2−エチル−1−ヘキサノールとジブチル酸化スズを使用して合成した有機金属化合物の式(1)の有機金属化合物の構造に相当する119Sn−NMRのシフト値を表1に示した。
Figure 2003055840
工程(1)において、他の成分が共存していてもよい。有効に用いられる他の成分としては、反応系内で脱水剤として機能する成分が挙げられる。添加することによって、工程(1)の反応系を非水系の状態に保てるからである。脱水剤として、公知の有機脱水剤を使用することができる。脱水剤の例としては、アセタール化合物、オルト酢酸トリメチル等のオルトエステル等が挙げられる。この他、ジシクロヘキシルカルボジイミドのような有機脱水剤も使用できる。脱水剤成分として、Molecular sieves等の固体脱水剤を使用してもよい。固体脱水剤を用いる場合には、工程(3)を実施する前に固体脱水剤を除去することが好ましい。
工程(1)では、第2のアルコールの使用は任意である。第2のアルコールを使用する場合には、得られる炭酸エステルの純度を高くするために、有機金属化合物のアルコキシドやアラルキルオキシドと同種の有機基を有する第2のアルコールの場合、第2のアルコールの量は有機金属化合物の量に対して、化学量論量で1以上100000以下が好ましいが、有機金属化合物とは異なる有機基を有するアルコールを使用する場合や、有機金属化合物が式(2)のものみである場合には、第2のアルコールの量は有機金属化合物の量に対して、化学量論量で2倍以上1000倍以下が好ましく、より好ましくは10倍以上1000倍以下の範囲である。有機金属化合物とは異なる有機基を有する第2のアルコールを使用すると、非対称炭酸エステルが得られる。なお、後述するように、第2のアルコールを使用すると炭酸エステルの収率が向上するが、その効果は、有機金属化合物が式(2)のものである場合に特に顕著である。有機金属化合物が式(2)のものみである場合の第2のアルコールの上記の好ましい量は、その観点から設定されている。
工程(4)に引き続き、工程(1)を行なう場合には、上記範囲となるように第2のアルコールを添加してもよく、場合によってはアルコールを除去して実施してもよい。
以下、各工程について詳しく説明する。
本発明の方法で行なう工程(1)は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の二酸化炭素付加体を生成させて、該付加体を分解して炭酸エステルを得ることを主反応とする工程である。即ち、工程(1)の反応が進行する反応経路は、二酸化炭素が有機金属化合物に付加結合して付加物を形成し、該付加物が熱分解するものである。本発明の方法の工程(1)では、従来の技術とは異なり、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を低い化学量論量の二酸化炭素と反応させることを特徴とする。従来の方法では、少量の金属触媒と高圧の二酸化炭素とを反応させていた。例えば、メタノールと二酸化炭素をジブチルスズジメトキシドの存在下で反応させた例(Polyhedron,19,p573−576(2000))では、180℃で数mmolのジブチルスズジメトキシドに対して約30MPaの二酸化炭素反応条件で反応させている。該条件での二酸化炭素の正確な数値は記載されていないが、メタノールの分圧を差し引いたとしても、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して100倍以上の化学量論比で二酸化炭素を反応させている。このような条件で強引に平衡をずらすことによって炭酸エステルの収量は触媒に対して多く得ることができているが、共に生成する水が遊離水として発生する。よって、この遊離水による触媒の加水分解が重大な問題となり、系内での脱水方法を構築する必要があった。このような条件においては、ジブチルスズジメトキシドの加水分解構造であるジブチルスズオキサイドが反応で生成し、更に、該ジブチルスズオキサイドは室温では溶媒に溶解しえないにも関わらず、上記反応条件においては透明溶液でジブチルスズオキサイドが存在していると記されている。本発明においては、工程(1)終了後の反応液を室温まで冷却しても、多くの場合液状であるので、上記した大量の二酸化炭素と反応させた既存技術とは異なった反応状態であるといえる。高濃度で二酸化炭素を用いた場合は、必然的に高圧反応となり、リアクターからの反応液の取り出しの際に、多くの二酸化炭素をパージしなければ炭酸エステルを分離することができず、二酸化炭素の無駄、およびパージ後再利用するのであれば、再加圧しなければならないといったエネルギーの無駄が発生する問題があった。別の観点では、高濃度の二酸化炭素を用いれば、二酸化炭素ガス層の密度が上昇し、溶媒や触媒、生成した炭酸エステルをも溶解して均一層を形成することが知られている。更に冷却すれば液体炭酸となって液状であるから、このような観点からも生成した炭酸エステルを反応液から容易に分離することは極めて困難であるといった課題があった。
本発明の方法の工程(1)では、二酸化炭素を、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して化学量論比で1から50の範囲で反応させることが好ましい。更に好ましくは1から20の範囲である。二酸化炭素の量が多くなれば、高圧反応となり、耐圧性の高いリアクター構造が必要であり、また工程(1)終了後に二酸化炭素をパージする際に多くの二酸化炭素をロスするために、1から10の範囲が更に好ましい。言い換えれば、工程(1)における有機金属化合物の使用量が、二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることが好ましく、1/20〜1倍の範囲であることがより好ましく、1/10〜1倍の範囲であることが更に好ましい。本発明では、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の二酸化炭素付加体は、該有機金属化合物を二酸化炭素に接触させれば容易に得ることができる。室温(20℃)では、常圧の二酸化炭素気流を接触させることで発熱的に二酸化炭素付加体が生成し、ほぼ100%二酸化炭素付加体を得ることができる。反応温度の上昇に伴って、該二酸化炭素付加体の生成量は減少するが、この際には接触させる二酸化炭素を高圧で接触させればよい。高圧で二酸化炭素を接触して工程(1)を行なった場合、該二酸化炭素付加体の生成量の定量は困難であるが、炭酸エステルの生成速度、生成量によって所望の圧力で実施することが好ましい。この圧力範囲は常圧から200MPaの範囲である。工程(1)での反応で得る炭酸エステル生成量は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して化学量論比で100%以下である範囲で実施することが好ましい。更に好ましくは50%以下の範囲である。本発明の方法で使用する金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物は、得られる炭酸エステルよりも加水分解性が高く、該有機金属化合物に対して100%以下、好ましくは50%以下の化学量論比で炭酸エステルを得れば、炭酸エステルを加水分解するような水は反応液中に発生しないからである。従来技術では、該化学量論比が100%を超えるように反応させたために、遊離水が著しく問題となって系内に有機金属化合物よりも加水分解性の高い脱水剤や、吸着力の強い固体脱水剤を添加するか、その存在下で反応させていた。そのために複雑な工程や高価な脱水剤を使用しなければならず、工業的な製造法として採用されなかった。本発明の工程(1)での主反応である分解反応は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の二酸化炭素付加体の熱分解によって炭酸エステルを得る分解反応である。熱分解温度は20℃から300℃の範囲で実施できる。本発明の方法の工程(1)では、上記分解と共にアルコール交換反応、エステル交換反応を実施してよい。即ち、第2のアルコールを工程(1)で用いれば、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の酸素−炭素結合部分とアルコール交換が起こり、添加したアルコールに対応する炭酸エステルを得ることができる。また、炭酸エステルが生成した後に第2のアルコールを添加してエステル交換反応で第2のアルコールに対応する炭酸エステルを得てもよい。
以下、更に詳細に工程(1)について説明する。
本発明者らの研究結果によると、工程(1)では、有機金属化合物と二酸化炭素から炭酸エステルが得られる。従って、第2のアルコールの使用は任意である。しかし、第2のアルコールを加えた方が、高い収率で炭酸エステルを得る観点から好ましい。これは工程(1)で行なう反応の逆反応が存在するためであって、第2のアルコールを加えることによって、炭酸エステル以外の熱分解生成物と第2のアルコールとの間に新たな平衡反応が生じて、炭酸エステルの収率が高くなる場合があるからである。炭酸エステルの収率向上のために第2のアルコールを加えることは、有機金属化合物の主成分が式(2)で示される有機金属化合物である場合に特に有効である。有機金属化合物の主成分が式(1)で示されるものである場合は、工程(1)での熱分解反応の平衡が生成物系に偏り、炭酸エステルの収率がかなり高いので、更なる向上が得られない場合がある。第2のアルコールに水分が大量に含まれると、得られる炭酸エステルの収量を悪化させるため、反応液中に加える第2のアルコール中に含まれる水分が、有機金属化合物の量に対して、化学量論量比で、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.01以下にすることが好ましい。工程(1)で式(1)の有機金属化合物を使用して行なう反応においては、式(1)の有機金属化合物と二酸化炭素の付加物から熱分解して炭酸エステルが生成するわけであるが、式(1)の有機金属化合物の2量体から炭酸エステルが生成することは公知である(ECO INDUSTRY,vol.6,No.6,p11−18(2001))。公知技術では、該2量体から2分子の炭酸エステルが生成してジブチル酸化スズを生成させていた。本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに、式(1)の有機金属化合物の二量体と二酸化炭素の付加物からは、1分子の炭酸エステルが素早く熱分解脱離され、式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物を主に得ることができることを見いだした。この際にアルコールの添加は必要ない。こうして炭酸エステルと式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物が得られた後、直ぐに工程(2)を行なってもよいし、得られた式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物から更に炭酸エステルを得た後に工程(2)を行なってもかまわない。工程(1)で使用する有機金属化合物は、好ましくは、式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種類であるが、工程(1)で使用する有機金属化合物の少なくとも一部が式(1)の有機金属化合物であることが好ましい。更に好ましくは、工程(1)で使用する有機金属化合物が、式(1)の有機金属化合物を金属原子に換算して5モル%以上含む場合である。
工程(1)で添加する成分として、溶媒を用いてもよい。本発明で使用する有機金属化合物は多くの場合液体であるが、一部固体状の有機金属化合物もある。または、有機金属化合物がジブチルスズジメトキシドを用いた場合など、有機金属化合物が工程(1)において、二酸化炭素付加体となった場合に固体状となる場合もある。固体状となった場合であっても工程(1)で炭酸エステルを生成することができるが、連続して炭酸エステルを製造する場合には、流動性が重要な場合がある。または二酸化炭素との反応速度を向上させるために液状とすることが好ましい場合もある。このような場合に、溶媒を添加して工程(1)を実施してよい。用いる溶媒は製造する炭酸エステルの有機基に対応するアルコールであってよい。また他の不活性溶媒であってもよい。不活性溶媒の例として、炭化水素類やエーテル類があげられる。このような例としてペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの炭素数5から炭素数20の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭素数1から炭素数14の飽和アルキル基や炭素数5から炭素数14の環状アルキル基を有してよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどの炭素数6から炭素数20の飽和アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの炭素数4から炭素数20の環状アルキルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、イソプロピルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、4−メチルアニソールなどの炭素数0から8までの置換基を有するフェニル基と炭素数1から14のアルキル基または炭素数5から14のシクロアルキル基からなる炭素数7から28のフェニルエーテル類が使用できる。
工程(1)の反応温度は、通常、室温(20℃)から300℃であり、反応をはやく完結させる場合には、好ましくは80から200℃で、10分から500時間の範囲でおこなう。金属化合物の金属原子としてスズを使用する場合、工程(1)を行った後の反応液に含まれるスズ成分の119Sn−NMR分析において、反応前のスズ(図4)と反応後のスズ(図5)の状態は大きく異なっていて、有機金属化合物が炭酸エステルの前駆体として機能していることがわかる。図5では、反応前にみられた有機金属化合物のうち、式(1)で示される有機金属化合物が消費され、式(2)で示される有機金属化合物と、同定はされていないが、その二酸化炭素付加体らしきピークが観測された。
工程(1)の反応を高温(例えば200℃以上)で実施した場合、119Sn−NMR分析において、テトラメチルスズ基準で100ppm近辺に生成する成分が検出される場合があるが、この成分の生成が少ない条件あるいは抑制する添加剤の存在下で実施することが繰り返し反応においては好ましい。
二酸化炭素は、工程(1)で使用される有機金属化合物に対して、室温(20℃)であれば、化学量論量で充分である。室温(20℃)を越える温度で反応させる場合には、有機金属化合物への二酸化炭素の付加反応が起こりにくくなり、炭酸エステルの生成が著しく遅くなる場合がある。工程(1)の反応圧力は、常圧から200MPa、好ましくは常圧から100MPaとし、必要により、二酸化炭素を充填しながら、または一部抜き出して反応をおこなう。二酸化炭素の充填は断続的に充填しても、連続的に充填してもよい。
反応液を分析し、所望の炭酸エステルが得られていれば工程(1)を終了する。例えば、有機金属化合物の量に対して化学量論比で5%以上の炭酸エステルが得られれば、常圧に戻して反応液を取り出してもよいし、反応液をリアクターから直接抜き出してもよい。例えば、工程(1)、工程(2)、工程(3)を別のリアクターで実施する場合、工程(3)終了液を工程(1)のリアクターへ注入し、工程(1)のリアクターから工程(2)のリアクターへ、工程(2)のリアクターから工程(3)のリアクターへ連続して液を循環させる方法を行なってもよい。反応液を循環させる方法は、二酸化炭素を充填した工程(1)のリアクターからの二酸化炭素パージ量を少なくすることができるので好ましい形態である。各工程終了後の反応液は強制冷却してもよいし、自然冷却してもよいし、加熱してもよい。また、後述するように、場合によっては、炭酸エステル合成反応である工程(1)と炭酸エステル分離工程である工程(2)を同時に行なうこともできる。
本発明の方法の工程(2)は、工程(1)で得られた反応液混合物から炭酸エステルを分離する工程である。先に述べたように、式(3)で示した反応による従来の方法による二酸化炭素とアルコールからの炭酸エステルの製造の際には、炭酸エステルと共に水の発生が起こり、従来の方法では水を吸着剤あるいは脱水剤と接触させることによって反応系から除去し、平衡反応を生成物側へずらすものであった。該平衡は炭酸エステルを反応系外へ除去し続けても生成物側へ平衡をずらし、炭酸エステルの生成量を多くすることができるはずである。しかし、従来の方法では炭酸エステルを除けば、反応系内に水が蓄積し、周知のように水が蓄積すれば触媒が加水分解して触媒性能を失ってしまい、加水分解した触媒は溶媒への溶解性が極めて低いために、循環脱水の際の吸着塔を詰まらせてしまうなどの問題があるからである。また、触媒が水との反応で失活してしまえば、その再生方法が知られていなかったた。このような理由で、従来の方法では炭酸エステルを効率よく分離することはできなかった。
本発明の方法の工程(2)は、公知の炭酸エステルの分離方法が適用でき、一般に行なわれる溶媒抽出方法や蒸留や膜分離などの方法によって行なうことができる。抽出溶媒は、炭酸エステルと反応しない溶媒、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメチレン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族、エーテル、アニソール等のエーテルが好ましく使用できる。
工程(1)において、第2のアルコールとして炭素数4以下のアルコールを用いた場合や、第2のアルコールを使用しないで工程(1)を行ない、かつ、使用する有機金属化合物の有機基が炭素数4以下である場合は、工程(1)で得られた反応液から直接、蒸留によって炭酸エステルを分離することができる。好ましくは、生成する炭酸エステルの沸点が100℃以下の、例えば、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルの場合である。蒸留方法は、公知の方法が使用できる。このような方法として、一般に知られている常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から200℃の間で実施でき、好ましくは、マイナス20℃から150℃の間である。この際、他の溶媒を加えて蒸留したり、抽出蒸留してもよい。
工程(2)においては、所望により、第3のアルコールを用いることができる。第3のアルコールを加えることにより、工程(1)で得た炭酸エステルと第3のアルコールの間でエステル交換させて、工程(1)で得られた炭酸、エステルとは異なった炭素数を有する炭酸エステルとすることにより、炭酸エステルの分離を容易にすることができる。この方法は、工程(1)で第2のアルコールを加えないで反応させ、工程(1)で得た炭酸エステルが炭素数9以上の場合であって、工程(2)で分離する炭酸エステルが炭素数7以下の際に好ましく使用できる。更に好ましいのは、工程(2)で分離する炭酸エステルが炭酸ジメチルの場合である。加える第3のアルコールの量は、工程(1)で使用する有機金属化合物に対して化学量論量で等量以上1000倍以下の範囲で実施できる。エステル交換反応温度は室温(約20℃)から200℃の範囲が好ましい。エステル交換反応の速度や、高温での炭酸エステルの分解反応を考えれば、50℃から150℃の範囲が更に好ましい。この際、公知のエステル交換触媒を加えてもよい。エステル交換と炭酸エステルの分離はバッチ式に行なってもよいし、同時に行なってもよい。エステル交換した後の炭酸エステルの分離は、前記した分離方法(溶媒抽出、蒸留、膜分離など)が使用できる。もっとも好ましい方法は、エステル交換と分離を同時におこなう反応蒸留である。
炭酸エステルの分離前に、未反応の有機金属化合物及び、有機金属化合物の熱分解物を除去した後に抽出や蒸留を行ってもよい。水又は水を含んだ溶媒を反応液に加え、白色スラリーとした後に固形分を濾過分離し、その濾液を使用すれば、沸点が100℃を越える炭酸エステルも高い回収率で蒸留分離することができる。水はいかなる水であってもよいが、好ましくは蒸留水及び脱イオン水である。
工程(2)において、水を加える場合の水の量は、工程(1)で使用した有機金属化合物に対して化学量論量で1から100の範囲である。金属化合物を反応液から相分離させるための水は、工程(1)で使用した有機金属化合物に対して化学量論量で1あれば十分である。しかし、工程(1)で生成した炭酸エステルが疎水性であるため、工程(1)で使用した有機金属化合物に対して化学量論量の数倍以上の水を加えることは、炭酸エステルをも相分離させて分離することができるので、好ましい方法である。
工程(2)において、水を加える場合の水の温度は、添加する水が反応液中で固化しないような温度、例えば、マイナス20℃から100℃、好ましくは0℃から100℃の範囲である。更に好ましくは10から80℃に温度を調節してもよい。炭酸エステルの加水分解が起きるのを防止する観点からは、10から50℃がより好ましい。水のみを用いてもよいが、水と溶媒を用いる場合は、炭酸エステルと反応しない溶媒を用いることが好ましい。工程(1)で第2のアルコールを使用した場合には、使用した第2のアルコールと同じアルコールに水を溶解して使用すると、溶媒の分離が容易になる。工程(2)で第3のアルコールを加えてエステル交換した場合には、エステル交換後に、反応液中にあるアルコールと同じアルコールに水を溶解して使用することが好ましい。
蒸留方法は、一般に知られている常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から炭酸エステル及び/又はアルコールの沸点の間で実施でき、好ましくは50℃から炭酸エステル及び/又はアルコールの沸点の間である。この際、他の溶媒を加えて蒸留したり、抽出蒸留してもよい。
工程(1)終了後の反応液に、水及び/又は抽出溶媒を加えた後に、分液して油層部分の炭酸エステルを分離してもよい。
本発明の方法によると、対称の炭酸エステルだけでなく、非対称の炭酸エステルをも製造することができる。従来、対称炭酸エステルを製造した後に別途エステル交換を行って非対称炭酸エステルを得る方法が提案されていたが、本発明では、非対称炭酸エステルを直接に製造できる方法であり、エネルギーコストおよび設備建設コスト上、好ましい製造方法である。非対称の炭酸エステルは以下のようにして製造できる。有機金属化合物がアルコキシ基含有有機金属化合物である場合を例にとる。工程(1)と工程(2)のいずれにおいてもアルコール(第2のアルコールと第3のアルコール)を用いない場合は、工程(1)で用いる有機金属化合物が異なる2種類のアルコキシ基を有する場合に、非対称炭酸エステルを得ることができる。また、工程(1)で用いる有機金属化合物が1種類のアルコキシ基のみを有する場合には、該アルコキシ基とは異なる有機基を有するアルコール(第2のアルコール)の存在下で工程(1)を行なうか、または、該アルコキシ基とは異なる有機基を有すアルコール(第3のアルコール)の存在下で工程(2)を行なうことによって非対称炭酸エステルを得ることができる。また、工程(1)で用いる有機金属化合物が1種類のアルコキシ基のみを有する場合か異なる2種類のアルコキシ基を有する場合には、異なる2種類のアルコール(第2のアルコール)の存在下で工程(1)を行なうか、または、異なる2種類のアルコール(第3のアルコール)の存在下で工程(2)を行なうことによって非対称炭酸エステルを得ることができる。異なる2種類のアルコールを使用する際の比率は、アルコール種の組み合わせによって異なるが、化学量論比で2:8〜8:2の範囲である。非対称炭酸エステルを大きな割合で製造する場合には、異なる2種のアルコールの比率は近いことが好ましい。このような好ましい範囲は、化学量論比で3:7〜7:3、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。異なる2種類のアルコールを使用して非対称炭酸エステルを製造する場合には、有機金属化合物に対して過剰量の、例えば化学量論量10倍以上の量のアルコールを使用すれば、有機金属化合物のアルコキシ基の種類に関わらず、加えた異なる2種類のアルコールに対応する異なる2種類アルコキシ基を有する非対称炭酸エステルを得ることができる。非対称炭酸エステルの分離は、工程(2)に関連して前記したのと同様の方法(溶媒抽出、蒸留、膜分離など)で分離できる。非対称炭酸エステルと共に対称炭酸エステルが生成する場合が多いが、その場合には、非対称炭酸エステルを分離後、対称炭酸エステルを残留液と併せてを工程(3)に付すか、対称炭酸エステルを工程(1)または工程(2)に戻してもよい。
工程(3)は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を合成(再生)する工程である。工程(2)で炭酸エステルを分離後の残留液中の化合物は、多くの場合は透明な液体、場合によっては固体であるが、いずれの場合も工程(3)で有機金属化合物の合成に利用できる。工程(2)で炭酸エステルを分離した後の残留液中の化合物は多くの場合液状であり、例えば、固体状のジブチル酸化スズ(これは室温(20℃)でほとんどの有機溶媒に溶解性を持たず固体状となる)の存在は見られず、残留液中の化合物がどのような構造であるか特定されていない。しかし、驚くべきことに、本発明の方法の工程(3)によって、式(1)で示される有機金属化合物および/または式(2)で示される有機金属化合物などの、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を得られることを見い出した。
工程(3)は、工程(2)で得られた該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する工程である。
ここで使用される第1のアルコールの例は前記の通りである。即ち、第1のアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ヘキセノール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキセノール等の炭素数1から12の脂肪族アルコールや炭素数5から12の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアラルキルアルコールが挙げられる。また、多価アルコールも使用できる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール等の炭素数1から12の脂肪族多価アルコールや炭素数5から12の脂環式多価アルコール等、ベンゼンジメタノール等のアラルキルアルコール等が挙げられる。これらのアルコールを使用する際に、必要に応じて、精製、濃度調整のために蒸留操作等をおこなうことがある。その観点から好ましいアルコールは、常圧における沸点が300℃以下のアルコールである。工程(3)での水の除去のしやすさを考慮すれば、n−ブタノール、iso−ブタノールまたは炭素数5以上のアルキルアルコール、アラルキルアルコールが更に好ましい。
多価アルコールを第1のアルコールとして工程(3)で使用した場合に得られる有機金属化合物の構造は、特に限定されず、例えば、式(1)の有機金属化合物及び/又は式(2)の有機金属化合物の架橋体であっても、本発明に使用することができる。
工程(3)で使用される第1のアルコールの量は、工程(1)で使用した有機金属化合物の量に対して、好ましくは化学量論量の1から10000倍の範囲、より好ましくは2から100倍である。繰り返し反応方式で工程(1)から工程(4)を実施する場合には、工程(2)終了後の残留液にアルコールが存在している場合がある。その際には、工程(3)で使用される第1のアルコールの上記の量範囲となるようにアルコールを添加してもよいし、除いてもよい。
工程(3)での水の除去は、公知のいかなる方法も使用できる。例えば、蒸留による方法や、固体脱水剤を充填した脱水塔、膜分離を利用したパーベーパレーションなどの方法等が使用できる。このうち、蒸留やパーベーパレーションなどの膜分離による方法が好ましい。アルコール中からの水分の除去にパーベーパレーションを用いる方法は公知であり、本発明においても好適に利用できる。水の沸点よりも高い沸点を持つアルコールの場合には、加熱蒸留することによっても水を容易に留去することができる。また、水よりも沸点の低いアルコールの場合にも、水と共沸混合物を生成する共沸溶媒を添加することで、蒸留によって水を除くこともできる。
工程(3)の反応温度は、用いる第1のアルコールの種類によって異なるが、反応液の温度が、室温(20℃)から300℃の範囲で実施できる。蒸留によって工程(3)の脱水を行なう場合には、水が蒸気圧をもつ範囲であれば、どのような温度であってもよい。常圧で反応を速く完結させる場合には、蒸留液の蒸気温度が、水と第1のアルコールの共沸温度となるようにして実施することが好ましく、水と第1のアルコールが共沸混合物を生成しない場合には水の沸点で実施することが好ましい。更に反応を早く進行させたい場合には、オートクレーブなどを用いて第1のアルコールや水の沸点よりも高い温度で反応させて、気相部の水を徐々に抜き出してもよい。反応液の温度が極めて高くなる場合には、有機金属化合物の分解が起こる場合があるので、減圧蒸留などの方法で水を含んだ液を留去してもよい。
第1のアルコールが水と共沸混合物を生成しない場合であっても、水と共沸する溶媒を加えて、共沸蒸留によって水を除去することができ、この方法は、低温で水を留去できることから好ましい。このような溶媒の例としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アニソール、1,4−ジオキサン、クロロホルム等の、一般に水と共沸混合物を生成するような飽和及び不飽和炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素等が使用できる。
共沸蒸留後の共沸混合物からの水の分離を考えれば、水の溶解度の低い飽和及び不飽和炭化水素を溶媒として使用することが好ましい。このような溶媒を使用する場合には、共沸によって水を充分除去できる量以上を使うことが必要である。蒸留塔等を用いて共沸蒸留をおこなう場合には、共沸混合物を蒸留塔で分離して、溶媒を反応系内に戻せるので、比較的少量の溶媒溶媒量でよいので好ましい方法である。
工程(3)における反応によって、例えば、式(1)の有機金属化合物と式(2)の有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物を得ることができる。
工程(3)における反応からの水の生成が殆どなくなれば、工程(3)を終了することができる。水の除去量によって、繰り返し行なう工程(1)で得られる炭酸エステルの収量が決まるために、なるべく多くの水を除去しておくことが好ましい。
通常、工程(3)で除去する水の量は、例えば、式(1)で表される有機金属化合物のみが生成したとして求めた理論量の0.01から1倍の範囲内であるが、通常、理論量の1よりも少ない水の量が除去される。本発明者らの検討によれば、ジブチル酸化スズとアルコールから有機金属化合物を得て工程(1)から工程(4)を繰り返した際の工程(3)で除去される水の量は、最初のジブチル酸化スズとアルコールから有機金属化合物を得る際に発生する水の量よりも少なかった。工程(2)で炭酸エステルの分離のために水を加えた場合は、得られる白色固体が含水していて、工程(3)で除去される水の量は理論量の1倍を超える場合もある。繰り返し反応を実施した場合については、工程(2)終了後の有機金属化合物の構造は未だ特定されていないために、理論量を求めることは難しい。この場合には、経時的に水の除去量を測定して、水の留出がほとんどなくなってから終了すればよい。
工程(3)の終了後、必要に応じて、過剰量のアルコールを除去してもよい。繰り返し行なう工程(1)で得られる炭酸エステルの純度を考えれば、除去することが好ましい。繰り返し行なう工程(1)で、工程(3)と同じアルコールを使用する場合には、工程(3)の終了後にアルコールを除去しなくてもよいし、また、工程(1)の実施時に不足分を追加してもよい。
過剰量のアルコールの除去は、得られる有機金属化合物が固体の場合には、濾過によって濾液として除くことができるが、有機金属化合物が液体の場合は減圧蒸留による除去、窒素等の不活性ガスを送り込んで蒸気圧分のアルコールの除去を行なうことができる。この際、充分に乾燥させた不活性ガスを使用しなければ、得られた有機金属化合物が、金属酸化物とアルコールに加水分解し、繰り返し行なう工程(1)で得られる炭酸エステルの収量が極めて低くなる場合がある。工程(1)から工程(3)は連続的におこなってもよいし、バッチ式に行なってもよい。
前記のように、場合によっては、工程(1)と工程(2)は同時に行なうことができる。また、場合によっては、工程(2)と工程(3)は同時に行なうことができる。また、場合によっては、工程(1)から工程(3)は同時に行なうことができる。これについて、以下説明する。
(工程(1)と(2)を同時に行なう場合)
工程(1)の反応の実施時に、液相と気相部が存在する場合と、高温高圧で二酸化炭素が超臨界状態となって、反応液が均一状態となる場合があるが、工程(1)と工程(2)を同時に行なうことのできる場合は、液相と気相に分離している場合である。このような温度圧力は、有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、アルコールを使用する場合にはアルコールの種類によって異なるが、200℃以下、8MPa以下の場合である。すなわち、炭酸エステルは二酸化炭素への溶解度が高いので、気相部分へ一部溶解している。従って、工程(1)実施時に気相部分を一部抜き出しながら反応させれば、炭酸エステルを反応液から分離することができる。
(工程(2)と工程(3)を同時に行なう場合)
有機金属化合物が、水よりも沸点の高いアルコールから得られた有機金属化合物の場合であって、更に工程(1)あるいは工程(2)で炭素数1から3のアルキルアルコールを使用する場合に実施できる。工程(1)で得られた反応液を不活性気体、たとえば二酸化炭素気流下で、得られた炭酸エステルおよび水を不活性気体の気流と共に除くことで炭酸エステルと水を分離できる。また、公知の膜分離などの方法を使用してもよい。水と炭酸エステルを反応液から膜によって除去することで連続して炭酸エステルを分離することができる。
(工程(1)から工程(3)を同時に行なう場合)
工程(1)の反応の実施時に、液相と気相部が存在する場合と、高温高圧で二酸化炭素が超臨界状態となって、反応液が均一状態となる場合があるが、工程(1)から工程(3)を同時に行なえる場合は、液相と気相に分離している場合であり、かつ、有機金属化合物が、水よりも沸点の高いアルコールから得られた有機金属化合物の場合であって、更に炭素数1から3のアルキルアルコールを使用した場合に実施できる。更に好ましいアルキルアルコールはメタノール、エタノールである。また、このような温度圧力は、有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、アルコールを使用する場合にはアルコールの種類によって異なるが、150℃以下、5MPa以下の場合である。水および炭酸エステルは二酸化炭素への溶解度が高いので、気相部分へ一部溶解しており、従って、気相部分を一部抜き出しながら反応させることによって、有機金属化合物を再生させながら炭酸エステルをも分離することができる。また、上記の方法以外に、有機金属化合物を担体に固定し、あるいは固体状の有機金属化合物を使用して、固定床の反応を行なってもよい。二酸化炭素と炭素数1から3のアルコールを固定化された有機金属化合物へ流通させて、二酸化炭素気流と共に水および炭酸エステルを得ることができる。有機金属化合物を固定化する担体としては公知の担体が使用できる。
工程(4)は、工程(3)で回収された該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルする工程である。その後、工程(1)から工程(4)までを1回以上繰り返して行なうことができる。リサイクルする際、該有機金属化合物を冷却してもよく、加熱した後にリサイクルしてもよい。この工程(4)を連続的に実施しても、バッチ式に実施してもよい。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例と比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例と比較例で行なった測定や分析の方法は以下の通りである。>
1)有機金属化合物のNMR分析方法
装置:日本国、日本電子(株)社製JNM−A400 FTNMRシステム(400MHz)
(1)H、13C−NMR分析サンプル溶液の作成
有機金属化合物を0.1gから0.5gの範囲で計り取り、重クロロホルムを約0.9g加えてNMR分析サンプル溶液とする。
(2)119Sn−NMR分析サンプル溶液の作成
反応溶液を0.1gから1gの範囲で計り取り、更に0.05gのテトラメチルスズ、約0.85gの重クロロホルムを加えてサンプル溶液とする。
2)炭酸エステルのガスクロマトグラフィー分析法
装置:(株)島津製作所製GC−2010システム
(1)分析サンプル溶液の作成
反応溶液を0.06g計り取り、脱水されたジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを約2.5ml加える。さらに内部標準としてジフェニルエーテル約0.06gを加えて、ガスクロマトグラフィー分析サンプル溶液とする。
(2)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(米国、J&W Scientific)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
(3)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施する。
3)炭酸エステルの収率計算方法
炭酸エステルの収率は、下式(6)によって求めた。
Figure 2003055840
ここでいう「有機金属化合物の化学量論量」とは、有機金属化合物の構成に関与している金属原子数をアボガドロ数で割った値を示している。
実施例1
(2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)にジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)29g(116mmol)及び2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)75g(576mmol)を入れて、内部を窒素置換した後、撹拌を開始し、192℃まで加熱した。パージラインを開けて、常圧で水及び2−エチル−1−ヘキサノールを3.5時間留去した。留出分がほとんどなくなったので、窒素置換しながらオートクレーブを約30℃まで冷却して、2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を含んだ液を得た。この間にパージラインから留去した液量は約50gであり、この液中に含まれる水分をカールフィッシャー法によって測定したところ、約1.7gの水が検出された。得られた液体の119Sn−NMRを図1に示した。−45ppmに式(1)の有機金属化合物のピークが検出され、−172ppm、−184ppmに式(2)の有機金属化合物のピークが検出された。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
上記オートクレーブにメタノール75.5g(2.4mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で1時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージした。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記オートクレーブの蒸留液抜き出しラインを用いて、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこなって炭酸ジメチルとメタノールを蒸留分離して、炭酸ジメチルを収率17%で得た。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)でオートクレーブに残った系に2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)75g(576mmol)を入れて、内部を窒素置換した後、撹拌を開始し、192℃まで加熱した。パージラインを開けて、常圧で水及び2−エチル−1−ヘキサノールを3.5時間留去した。留出分がほとんどなくなったので、窒素置換しながらオートクレーブを約30℃まで冷却して、2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を含んだ液を得た。
工程(4):工程(3)のあと連続して工程(1)を行う。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
上記オートクレーブにメタノール75.5g(2.4mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で1時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージした。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記オートクレーブの蒸留液抜き出しラインを用いて、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこなって炭酸ジメチルとメタノールを蒸留分離して、炭酸ジメチルを収率16%で得た。
実施例2
繰り返し連続して工程(1)から工程(4)のサイクルを26回おこなって炭酸ジメチルを得る。
(ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
液化炭酸及び炭酸ガス投入ライン、蒸留液抜き出しライン、サンプリング管、ボトムから窒素を吹き込むラインを接続した200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)15.0g(60mmol)及びヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)30.7g(300mmol)を入れてオートクレーブの蓋をしめ、全てのバルブを閉じた。オートクレーブ内を窒素で3回置換したのち攪拌を開始し、160℃まで昇温させた。昇温後、30分攪拌を続けた後、蒸留液抜きだしラインのバルブを開け、ボトムから200ml/分で窒素を吹き込みながら蒸留液の回収をはじめた。約2時間後、蒸留液の留出がとまった後、オートクレーブを約50℃まで冷却し、透明な液体を得た。少量をサンプリングし、119Sn−NMR分析をおこなって、式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物が生成したことを確認した。留去された液は2層分離していて、水層は約0.9mlであった。
以下の工程(1)から工程(4)を繰り返す。
工程(1):メタノールと二酸化炭素を加えて炭酸ジメチルを得る。
上記オートクレーブにメタノール48.1g(1.5mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入する。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温する。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を22MPaとなるように調整した状態で16時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージする。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記オートクレーブの蒸留液抜き出しラインを用いて、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこなって炭酸ジメチルとメタノールを蒸留分離して、炭酸ジメチルを得る。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)終了後のオートクレーブにヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)約20gを注入し、全てのバルブを閉じる。オートクレーブ内を窒素で3回置換した後、攪拌を開始し、160℃まで昇温させる。昇温後、30分攪拌を続けて、蒸留液抜きだしラインのバルブを開け、ボトムから200ml/分で窒素を吹き込みながら蒸留液の回収をはじめる。約2時間後にオートクレーブを約50℃まで冷却し、透明な液体を得る。
工程(4):工程(3)終了後、上記工程(1)から工程(3)を繰り返して実施する。
各サイクル毎の工程(2)で得られた炭酸ジメチルの収率を表2に示す。
Figure 2003055840
26回目の工程(2)終了後液の119Sn−NMRをおこなったところ、少量の式(2)の有機金属化合物のピークと−170ppmから−500ppmの間に数種のピークが検出された(図2)。次いで工程(3)をおこなった液の119Sn−NMRをおこなったところ、式(2)の有機金属化合物のピークが検出され、前記した−170ppmから−500ppm間の数種のピークは検出されなくなった(図3)。
工程(3)で留去された水分量は、1回目0.27ml、2回目0.24ml、3回目0.22ml、4回目0.24mlであった。
実施例3
(2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
500mlナスフラスコにジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)105g(422mmol)及び2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)277g(2.1mol)を入れて、ロータリーエバポーレーター(日本国、EYELA社製)に取り付け、内部を窒素置換した後、回転を開始し、オイルバスを180℃まで加熱した。加熱中に白色スラリー液は透明な溶液に変化した。約30分後、真空ポンプ(日本国、佐藤真空社製)およびバキュームコントローラー(日本国、岡野製作所製)で80.7KPaから68.7KPaまで3時間かけて徐々に減圧して、水及び少量の2−エチル−1−ヘキサノールを留去した。留出分がほとんどなくなったので、オートクレーブを約30℃まで冷却して、窒素で常圧に戻して2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の2−エチル−1−ヘキサノール溶液を310g得た。得られた透明液体の119Sn−NMRを図4に示した。−14ppmに式(1)の有機金属化合物のピークが検出され、−172ppm、−184ppmに式(2)の有機金属化合物のピークが検出された(図4)。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
500mlオートクレーブ(日本国、旭硝工社製)に上記で得られた2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の2−エチル−1−ヘキサノール溶液を148.8g(Sn原子を202mmol含有)と2−エチル−1−ヘキサノールを86.4gを入れて蓋をした。全てのバルブを閉じた後、減圧弁で3MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を120℃まで昇温し、内圧を3.5MPaとなるように調整した状態で4時間反応させた後、30℃になるまで自然冷却し、二酸化炭素をパージした。反応終了後液の119Sn−NMRを図5に示した。式(1)の有機金属化合物のピークは消失し、−170ppmから−230ppmにピークが検出された(図5)。GC分析から、反応液の中には炭酸ジ(2−エチルヘキシル)が25%検出された。
実施例4
(2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)を使用して、実施例1と同様に有機金属化合物を合成した。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物と二酸化炭素とから炭酸ジ(2−エチルヘキシル)を得る。
上記オートクレーブの全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で2時間反応させた後、二酸化炭素をパージした。
工程(2):メタノールを加えてエステル交換し、上記炭酸エステルを炭酸ジメチルにして分離する。
工程(1)終了後、窒素置換した上記オートクレーブにメタノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)75.5g(2.4mol)を加えた。全てのバルブを閉じた後、攪拌を開始し、オートクレーブの温度を120℃にした。2時間撹拌を続けた後にパージラインからメタノールと炭酸ジメチルを徐々に抜き出した。留出液がほとんどなくなったら冷却し、窒素置換したのち反応を停止した。留出液から得られた炭酸ジメチルは約20%であった。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)でオートクレーブに残った系に2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)75g(576mmol)を入れて、内部を窒素置換した後、撹拌を開始し、192℃まで加熱した。パージラインを開けて、常圧で水及び2−エチル−1−ヘキサノールを3.5時間留去した。留出分がほとんどなくなったので、窒素置換しながらオートクレーブを約160℃まで冷却して、2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を含んだ液を得た。
工程(4):工程(3)のあと連続して工程(1)をおこなう。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物と二酸化炭素とから炭酸ジ(2−エチルヘキシル)を得る。
上記オートクレーブの全てのバルブを閉じた後、撹拌を開始し、液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で1時間反応させた後、二酸化炭素をパージした。
工程(2):メタノールを加えてエステル交換し、炭酸ジメチルを分離する。
工程(1)終了後、窒素置換した上記オートクレーブにメタノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)75.5g(2.4mol)を加えた。全てのバルブを閉じた後、攪拌を開始し、オートクレーブの温度を120℃にした。1時間撹拌を続けた後にパージラインからメタノールと炭酸ジメチルを徐々に抜き出した。留出液がほとんどなくなったら冷却し、窒素置換したのち反応を停止した。留出液から得られた炭酸ジメチルは約18%であった。
実施例5
(ジブチル酸化スズとヘキサノールからヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を得る。)
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)にジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)24.9g(100mmol)及びヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)51.1g(500mmol)を入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、160℃まで加熱した。約30分後、オートクレーブのパージラインを開け、オートクレーブのボトムから窒素を少量流しながら、水及びヘキサノールをパージラインから2時間かけて留去した。留出分がほとんどなくなったらオートクレーブを約30℃まで冷却して、119Sn−NMR分析をおこなった。1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンを約47mmol、ジブチルスズジヘキシルオキシドを約6mmol得た。
工程(1):ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物と二酸化炭素とヘキサノールから炭酸ジヘキシルを得る。
上記で得られたヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の入った200mlオートクレーブに、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)61.5g(602mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を180℃まで昇温した。このときの圧力は約7.5MPaであり、この状態のまま6時間反応させた。その後、約30℃まで冷却したのち、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻し、透明な反応液の中に炭酸ジヘキシルを収率14%で得た。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過後、蒸留によって炭酸ジヘキシルを蒸留する。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌した後、攪拌を止めた。オートクレーブをあけると白色のスラリー液になっていた。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。得られた濾液を1Lなす形フラスコに移し、バス温度150℃、1kPaで加熱蒸留した。ヘキサノールと炭酸ジヘキシルが蒸留され、炭酸ジヘキシルを収率13%で得られた。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)で得られた白色固形物と、炭酸ジヘキシルを蒸留後にフラスコに残った粘稠な液体をあわせて200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に入れた。更に、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)51.1g(500mmol)を入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、160℃まで加熱した。約30分後、オートクレーブのパージラインを開け、オートクレーブのボトムから窒素を少量流しながら、水及びヘキサノールをパージラインから2時間かけて留去した。留出分がほとんどなくなった後、オートクレーブを約30℃まで冷却した。119Sn−NMR分析した結果、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンを約47mmol、ジブチルスズジヘキシルオキシドを約6mmolが生成していた。
工程(4):工程(3)を終了し、引き続き工程(1)をおこなう。
工程(1):工程(3)で得られた有機金属化合物を使用して再度工程(1)をおこなう。
工程(3)まで終了したオートクレーブに、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)61.5g(602mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を180℃まで昇温した。このときの圧力は約7.5MPaであった。この状態のまま6時間反応させ、その後、約30℃まで冷却し、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が生成しており、炭酸ジヘキシルを収率14%で得た。
工程(2):再度おこなった工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過後、蒸留によって炭酸ジヘキシルを蒸留する。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌した後、攪拌を止め、オートクレーブをあけて白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。得られる濾液を1Lなす形フラスコに移し、加熱蒸留した。ヘキサノールと炭酸ジヘキシルを蒸留し、炭酸ジヘキシルを収率13%で得た。
実施例6
炭酸ジヘキシルの製造
(ジブチルスズジヘキシルオキシドの合成)
冷却管とディーンスターク管を備えた200mlなす形フラスコにジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)12.5g(50mmol)とヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)50ml及びキシレン100mlと攪拌のための攪拌子を入れた。攪拌下、キシレンが環流する温度までオイルバスで加温し、約4時間加熱環流を続け、ディーンスターク管に約0.8mlの水を留去した。ディーンスターク管を取り外し、通常の蒸留によってキシレンとヘキサノールを留去し、更に減圧蒸留によって、過剰のヘキサノールを留去し、粘稠な透明な液体を得た。窒素パージ後、冷却し、119Sn−NMR分析した。−134ppmにジブチルスズジヘキシルオキシドのシグナル、−177及び−187ppmに少量の1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンのシグナルが認められた。
工程(1):ジブチルスズジヘキシルオキシドから炭酸ジヘキシルを得る。
100mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、上で得られたジブチルスズジヘキシルオキシドを含む有機金属化合物約2.2g(ジブチルスズジヘキシルオキシドを約5mmol含む)とヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)25.5g(250mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を4MPaに設定し、バルブを開けて、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温した。パージラインから二酸化炭素を徐々に抜きながら、オートクレーブ内の圧力を4MPaとし、この状態のまま100時間反応させた。その後、約30℃まで冷却して、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が得られ、炭酸ジヘキシルを収率18%で得た。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過後、蒸留によって炭酸ジヘキシルを蒸留する。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌した後、攪拌を止め、オートクレーブをあけて白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。濾液を1Lなす形フラスコに移し、加熱蒸留した。ヘキサノールと炭酸ジヘキシルを蒸留して、炭酸ジヘキシルを収率17%で得た。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
冷却管とディーンスターク管を備えた100mlなす形フラスコに、工程(2)で得た白色固形物と、炭酸ジヘキシルを蒸留後にフラスコに残る粘稠な液体をあわせ、更にヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)20ml及びキシレン30mlと攪拌のための攪拌子を入れた。攪拌下、キシレンが環流する温度までオイルバスで加温し、約4時間加熱環流を続け、ディーンスターク管には約0.1mlの水を留去した。ディーンスターク管を取り外し、通常の蒸留によってキシレンとヘキサノールを留去し、更に減圧蒸留によって、過剰のヘキサノールを留去し、粘稠な透明な液体を得た。窒素パージ後、冷却した。119Sn−NMR分析により、−134ppmにジブチルスズジヘキシルオキシドのシグナル、−177及び−187ppmに少量の1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンのシグナルが認められた。
工程(4):工程(3)で合成した有機金属化合物をフラスコから取り出して、工程(1)を実施する。
工程(1):工程(3)で得られた有機金属化合物を用いて、再度、工程(1)をおこなう。
100mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、工程(3)で得られたジブチルスズジヘキシルオキシドを含む有機金属化合物約2.2gジブチルスズジヘキシルオキシドを5mmol含有)とヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)25.5g(250mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を4MPaに設定し、バルブを開けてオートクレーブへ二酸化炭素を導入し、10分間攪拌して、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温し、パージラインから二酸化炭素を徐々に抜きながら、オートクレーブ内の圧力を4MPaとした。この状態のまま100時間反応させ、その後、約30℃まで冷却して、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が得られ、炭酸ジヘキシルの収率は17%であった。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過し、蒸留によって炭酸ジヘキシルを得る。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌し、攪拌を止めてオートクレーブをあけ、白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。この濾液を1Lなす形フラスコに移し、加熱蒸留し、ヘキサノールと炭酸ジヘキシルを蒸留して、炭酸ジヘキシルを収率16%で得た。
実施例7 (炭酸ジメチルの合成)
工程(1):ジブチルスズジメトキシドとメタノールから炭酸ジメチルを得る。
ジブチルスズジメトキシド(米国、Aldrich社製)1.48g(5mmol)、メタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)1.6g(50mmol)及び振とう攪拌のためのSUS製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、SUS配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに注入した。二酸化炭素を2.0g注入し、リアクターを150℃オイルバスに浸漬して15時間振とうさせた。振とう後、リアクターを約20℃に冷却し、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、反応液を得た。この液中の炭酸ジメチルの収率は30%であった。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に水を含んだメタノールを加えて固形分を析出させ、固形分のある状態で蒸留する。
上記で得られる反応液に10重量%の水を含むメタノールを2ml加え、リアクターを室温(約20℃)で約5分間振とうした。リアクターを開け、白色スラリーの反応液を得た。白色スラリー液を50mlなす形フラスコを用いて加熱蒸留をおこない、メタノールと炭酸ジメチルを蒸留し、炭酸ジメチルを収率29%で得た。
実施例8
(ジブチル酸化スズとメタノールから共沸蒸留脱水によって金属メトキシドを得る。)
トラップに接続されたリービッヒ冷却管と送液ポンプを備えた200ml三つ口形フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)2.5gとメタノール(日本国、和光純薬工業(株)社製、特級)32.0g及びヘキサン(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)100mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら80℃に保温されたオイルバスで4時間加熱蒸留した。蒸留中に留去されるヘキサンとメタノールを定量し、留去されるヘキサンとメタノールに相当するそれぞれの量を送液ポンプでフラスコ内に送液して液量が一定になるようにした。加熱蒸留を終了した後、フラスコを30℃に冷却し、減圧蒸留法によってヘキサンと過剰のメタノールを蒸留除去して、透明粘稠な液体を得た。119Sn−NMR分析で、−174ppm,−180ppmにピークが見られた。
工程(1):メタノールを加えて高圧の二酸化炭素存在下でおこなう。
上記で得られた有機金属化合物の溶液を0.66g、メタノール1.6g及び振とう攪拌のためのSUS316製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに2.8g注入した。リアクターを160℃オイルバスに浸漬して15時間振とうさせ、振とう後、リアクターを約20℃に冷却し、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、白色スラリー状の反応液を得た。炭酸ジメチルの収率は6%であった。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記で得られた白色スラリー液にメタノール10mlを加えて、50mlなす型フラスコを用いてバス温度90℃で加熱蒸留をおこなった。メタノールと炭酸ジメチルが蒸留され、炭酸ジメチルを収率6%で得た。
工程(3):有機金属化合物を合成(再生)する。
工程(2)で炭酸ジメチルを蒸留した後の残留液を、トラップに接続されたリービッヒ冷却管と送液ポンプを備えた100ml三つ口形フラスコに移し、攪拌のための攪拌子と、ヘキサン30ml及びメタノール30mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら80℃に保温されたオイルバスで4時間加熱蒸留した。蒸留中に、留去されるヘキサンとメタノールを定量し、留去されるヘキサンとメタノールに相当するそれぞれの量を送液ポンプでフラスコ内に送液して液量が一定になるようにした。加熱蒸留を終了した後、フラスコを30℃に冷却し、減圧蒸留法によってヘキサンと過剰のメタノールを蒸留除去して、透明粘稠な液体を得た。 19Sn−NMR分析で−174ppm,−180ppmにピークが見られた。実施例9
工程(1):ジブチルスズジブトキシドとアルコールから炭酸エステルを得る。
ジブチルスズジブトキシド(米国、Aldrich社製)1.48g(4mmol)、ブタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)2.22g(30mmol)、エタノール(日本国、和光純薬社製 脱水グレード)1.38g(30mmol)および振とう攪拌のためのSUS製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、SUS配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに二酸化炭素を約2.0g注入した。リアクターを150℃オイルバスに浸漬して22時間振とうさせた。振とう後、リアクターを約20℃に冷却し、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、透明液状の反応液を得た。この液中に、炭酸エチルブチルを収率25%、炭酸ジブチルを収率10%、炭酸ジエチルを収率6%で得た。
工程(2):炭酸エステルを蒸留する。
工程(1)で得られた反応液を50mlなす形フラスコを用いて減圧蒸留をおこなった。エタノール、ブタノールおよび炭酸エステルを蒸留した。炭酸エステルの収率は、炭酸エチルブチルが収率23%、炭酸ジブチルが収率は8%、炭酸ジエチルが収率5%であった。
実施例10 (ヘキサンを使用しない以外は実施例8の工程(1)と同様の操作を行なう。)
工程(1):メタノールを加えて高圧の二酸化炭素存在下でおこなう。実施例8と同様にして得られた有機金属化合物の溶液を1.1g、メタノール2.6g、および振とう攪拌のためのSUS316製のボールを、配管(SUS316製)とバルブを装着したチューブリアクター(容積8ml、外径12.7mm、肉厚2.1mmのSUS316製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに注入した。注入された二酸化炭素は2.8gであった。リアクターを150℃オイルバスに浸漬して12時間振とうさせる。振とう後、リアクターを20℃に冷却したのち、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、白色スラリー状の反応液を得た。分析した結果、炭酸ジメチルの収率は約5%であった。
実施例11
(ジブチル酸化スズとn−ヘキサノールからヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を得る。)
冷却管とディーンスターク型水分受器を備えた300mlなす形フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)24.9gとn−ヘキサノール(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)40.9gおよびトルエン(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)150mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら120℃に保温されたオイルバスで12時間加熱環流した。フラスコを80℃に冷却後、減圧蒸留法によって過剰のn−ヘキサノールを蒸留除去した。75.1gの有機金属化合物を含む液を得た。119Sn−NMR分析で−130ppm(式(1)の有機金属化合物),−177ppm,−186ppm(式(2)の有機金属化合物)にピークが見られた。
工程(1):常圧の二酸化炭素を吹き込んで有機金属化合物とヘキサノールとから炭酸ジヘキシルを得る。
2つ口フラスコに冷却管を備え、更にガラスボールフィルターの付いた吹き込み管(日本国、VIDREX社製)をフラスコ内に挿入した。反応液を攪拌できるように攪拌子を入れた。上記工程(1)で得られた有機金属化合物を含む液を0.75gおよびn−ヘキサノール41gを入れた。G2ガラスフィルターを通して高純度二酸化炭素を100ml/分の流量で吹き込みを開始した。130℃オイルバスに浸漬し加熱攪拌した。288時間後の炭酸ジヘキシルエステルの収率は40%であった。
実施例12
(ジブチル酸化スズとシクロヘキサノールから共沸蒸留脱水によって金属シクロヘキシルオキシドを得る。)
冷却管とディーンスターク型水分受器を備えた500mlなす形フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)5.1gとシクロヘキサノール(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)80.1gおよびトルエン(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)300mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら130℃に保温されたオイルバスで12時間加熱環流した。フラスコを80℃に冷却後、減圧蒸留法によって過剰のシクロヘキサノールを蒸留除去した。15.2gの有機金属化合物を含む液を得た。119Sn−NMR分析で−176ppm,−190ppm(式(2)の有機金属化合物)にピークが見られた。
工程(1):シクロヘキサノールを加えて高圧の二酸化炭素存在下で炭酸ジシクロヘキシルを得る。
上記で得られた有機金属化合物を含む液を0.86g、シクロヘキサノール1.0gおよび振とう攪拌のためのSUS316製のボールを、配管(SUS316製)とバルブを装着したチューブリアクター(容積8mL外径12.7mm、肉厚2.1mmのSUS316製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに注入した。注入された二酸化炭素は2.0gであった。リアクターを130℃オイルバスに浸漬して14時間振とうさせた。振とう後、リアクターを20℃に冷却したのち、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、透明液状の反応液を得た。分析結果、炭酸ジシクロヘキシルエステルの収率は40%であった。
実施例13
炭酸メチルエチルの製造
工程(1):チタンテトラメトキシドと二酸化炭素とメタノールとエタノールから炭酸メチルエチルを得る。
チタンテトラメトキシド(日本国、アヅマックス社製)0.9g(5mmol)、メタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)約0.9g(30mmol)、エタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)約1.4g(30mmol)及び振とう攪拌のためのSUS製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。
リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、SUS配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに二酸化炭素を2.0g注入した。リアクターを150℃オイルバスに浸漬して15時間振とうさせ、その後、リアクターを約20℃に冷却したのち、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、白色スラリー状の反応液を得た。この液中に、炭酸メチルエチルを収率25%、炭酸ジメチルを収率3%、炭酸ジエチルを収率4%で得た。
工程(2):炭酸エステルを分離する。
上記スラリー液を50mlナスフラスコに移し、30℃に温調した条件で減圧蒸留おこない、炭酸エステルを蒸留した。炭酸メチルエチルを収率23%、炭酸ジメチルを収率2%、炭酸ジエチルを収率3%で得た。
比較例
以下のようにして、ジブチル酸化スズとメタノールと二酸化炭素から炭酸ジメチルの製造を試みた。(ジブチル酸化スズは金属−酸素−炭素結合を有さない。)
液化炭酸及び炭酸ガス投入ライン、蒸留液抜き出しライン、サンプリング管、ボトムから窒素を吹き込むラインを接続した200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)15.0g(60mmol)及びメタノール48.1g(1.5mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入する。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を22MPaとなるように調整した状態で16時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージした。反応液は白色スラリー状で、GC分析したところ、炭酸ジメチルは検出されなかった。
産業上の利用可能性
本発明の方法によると、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素から高い収率で炭酸エステルを製造することができる。二酸化炭素は、毒性や腐食性がなく廉価であり、また、本発明の方法では該有機金属化合物を再生・リサイクルして繰り返し使用できるので、該有機金属化合物由来の廃棄物が生じることがなく、更に、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もないため、本発明の製造方法は産業上に大いに有用であり、商業的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1の工程(1)で使用した2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の119Sn−NMRチャートであり;
図2は、実施例2の26回目の工程(2)終了後の有機金属化合物の119Sn−NMRチャートであり;
図3は、実施例2の26回目の工程(3)終了後の有機金属化合物の119Sn−NMRチャートであり;
図4は、実施例3の工程(1)で使用した2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の119Sn−NMRチャートであり;そして
図5は、実施例3の工程(1)終了後の有機金属化合物の119Sn−NMRチャートである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物と二酸化炭素を用いる炭酸エステルの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、炭酸エステルの製造方法であって、(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして(3)該残留液をアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、ことを特徴とする方法に関する。本発明の方法によると、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素から高い収率で炭酸エステルを製造することができる。二酸化炭素は、毒性や腐食性がなく廉価であり、また、本発明の方法では該有機金属化合物を再生・リサイクルして繰り返し使用できるので、該有機金属化合物由来の廃棄物が生じることがなく、更に、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もないため、本発明の製造方法は産業上に大いに有用であり、商業的価値が高い。
【背景技術】
【0002】
炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料添加剤等の添加剤として使われるほか、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等、あるいはリチウム電池の電解質、潤滑油原料、ボイラー配管の防錆用の脱酸素剤の原料として使われるなど、有用な化合物である。
【0003】
従来の炭酸エステルの製造方法としては、ホスゲンをカルボニルソースとしてアルコールと反応させる方法が挙げられる。この方法は、極めて有害で、腐食性の高いホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵等の取り扱いに細心の注意が必要であり、製造設備の維持管理及び安全性の確保のために多大なコストがかかっていた。更にこの方法では、副生する塩酸により、廃棄物処理等の問題もあった。
【0004】
この他に、一酸化炭素をカルボニルソースとして、塩化銅などの触媒を用いてアルコール及び酸素と反応させる酸化的カルボニル化法も知られている。この方法も、極めて有害な一酸化炭素を高圧で用いるために、製造設備の維持管理及び安全性の確保のため、多大なコストがかかっていた。更に、一酸化炭素が酸化されて二酸化炭素を生成するなどの副反応が起こる問題があった。このため、より安全に炭酸エステルを製造する方法の開発が望まれていた。
【0005】
上記したホスゲンや一酸化炭素を原料として用いる場合、原料そのもの、あるいは触媒中に塩素などのハロゲンが含まれており、得られる炭酸エステル中には、精製工程で除くことのできない微量のハロゲンが含まれる。ガソリン添加剤、軽油添加剤、電子材料などの用途にあっては、ハロゲンの混入は腐食の原因となる懸念も存在する。含まれるハロゲンを極微量にするためには徹底的な精製工程が必須となり、この点からも原料や触媒にハロゲンを含まない製造方法が望まれている。
【0006】
二酸化炭素をエチレンオキシドなどと反応させて環状炭酸エステルを合成し、更にメタノールと反応させて炭酸ジメチルを得る方法が実用化されている。この方法は、原料である二酸化炭素に有害性がなく、塩酸などの腐食性物質を使用したり発生することがほとんどないので、優れた方法であるが、副生するエチレングリコールなどの有効利用が課せられており、またエチレンオキシドの原料であるエチレンや、エチレンオキシドの安全な輸送は困難であるため、これら製造工程用プラントに隣接して炭酸エステル製造工程用プラントを立地しなければならないといった制限もある。
また、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物からなる触媒の存在下に、二酸化炭素をカルボニルソースとしてアルコールと平衡反応させて炭酸エステルと水を形成することによる炭酸エステルの製造方法が知られている。この平衡反応は下記の式(3)で表される。
【0007】
【数1】
Figure 2003055840
【0008】
この方法は、原料である二酸化炭素とアルコールが無害であるという点では理想的プロセスと言えるが、この方法は、生成物として炭酸エステルと水が同時に生成するという平衡反応を利用するものである。一酸化炭素を利用する酸化的カルボニル化法でも水が生成するが、平衡反応ではない該酸化的カルボニル化法で生成する水と、平衡反応で生成する水とでは意味が全く異なる。二酸化炭素を原料とする反応の平衡は、熱力学的に原料系に偏っているため、高収率で炭酸エステルを得ようとすれば、生成物の炭酸エステル、水を反応系外へ除去しなければならないという課題がある。更に、この水が触媒を分解して反応を阻害するなどの問題があり、触媒のターンオーバー数(再生・再利用回数)が2、3程度にとどまっていた。この問題を解決するために、生成物のひとつである水を除去するために種々の脱水剤の添加、使用方法が試みられてきた。
例えば、金属アルコキシドを触媒とし、アルコールと二酸化炭素を反応させる際に、脱水剤として高価な有機脱水剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等を大量に使用する方法[Collect.Czech.Chem.Commun.Vol.60,687−692(1995)]が提案されているが、この脱水剤は、再生されず、多量の廃棄物となる問題点がある。
【0009】
有機脱水剤として、カルボン酸オルトエステルを用いて炭酸エステルを製造する方法がある(日本国特開平11−35521号公報)。(この公報においては、「カルボン酸オルトエステルと二酸化炭素を反応させる」という記載や、「アセタールを二酸化炭素と反応させる」という記載があるが、最近の研究によると、実際の反応経路は、「アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を得て、更に、水とカルボン酸オルトエステルを反応させ、また水とアセタールを反応させる」というものと理解されている。)この方法も、脱水剤が高価なカルボン酸オルトエステルであり、また、酢酸メチルが副生成物として発生することが知られており[化学装置 Vol.41,No.2、52−54(1999)]、上記と同様の問題点がある。
【0010】
更に、有機脱水剤として、大量のアセタール化合物を使用する方法も提案されている(独国特許第4310109号明細書)し、金属アルコキシドまたはジブチル酸化スズを触媒としてアセタールと二酸化炭素を反応させていると記載された例もある(日本国特開2001−31629号公報)。(後者の公報における反応については、最近の研究によると、実際の反応経路は、「アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を得て、水とアセタールを反応させる」というものと理解されている。)しかし、これらの公報にはこのアセタール化合物を収率よく、廃棄物を出さずに合成する方法は示されておらず、また、アセタール化合物を脱水剤として使用すると、副生物としてケトン、アルデヒドなど、多量の廃棄物を発生させるという問題点がある。
【0011】
これら有機脱水剤を使う方法は、触媒のターンオーバー数の向上を効果としているが、有機脱水剤は、炭酸エステルの生成(及び水の副生)に伴って、炭酸エステルと化学量論量消費されるので、大量の有機脱水剤を消費している。したがって、脱水反応に伴って変性した大量の有機脱水剤の処理及び再生を別途行なわなければならない。更に大量の有機脱水剤を使うにも関わらず、触媒の失活の懸念も存在する。すなわち、上記の式(3)で表される平衡反応を用いる従来の炭酸エステル製造方法では、二酸化炭素が超臨界状態となるので、超臨界二酸化炭素中で反応を行なっているため、一般に触媒の溶解度が低いので触媒分子が集合しやすく、この際、殊に、多量化しやすい有機スズを触媒として用いた場合には、多量化によって触媒の失活を引き起こす問題点がある。
固体脱水剤を使用した方法(Applied Catalysis Vol.142,L1−L3(1996))も提案されているが、この脱水剤は再生ができず、多量の廃棄物となる問題点がある。
【0012】
また、金属酸化物(ジブチル酸化スズ)の存在下にアルコール(メタノール)及び二酸化炭素を反応させて得られた反応液を、固体脱水剤を詰めた充填塔へ冷却循環させ、脱水しながら徐々に平衡を炭酸エステル側にずらして炭酸エステルを得る方法を採用した例(日本国特開2001−247519号公報)も知られている。これは公知の脱水剤(例えばMolecular sieves)の水吸着性能の公知の温度依存性と脱水剤を使用する公知技術を組み合わせた方法である。Molecular sieves等の固体脱水剤への水の吸着性能は高温では低いため、溶媒として使用される大過剰の低分子量アルコール中に含まれる平衡によって生成した微量水分を吸着除去するために、高温高圧条件で平衡状態となった反応液を冷却した後に、固体脱水剤を詰めた充填塔に循環させて脱水することが必要であり、原料アルコールの転化率を高めるためには、冷却された脱水反応液を再度高温高圧に戻して反応させる必要があり、極めてエネルギー消費が大きく、また大量の固体脱水剤を必要とするという問題点がある。
【0013】
この方法は、平衡常数の比較的大きな脂肪族エステル合成には極めて一般的に用いられる方法であるが、二酸化炭素とアルコールを原料とした炭酸エステルの製造においては、反応の平衡は大きく原料系に偏っており、上記したような極めてエネルギー消費の大きな工程を繰り返さなければならないといった問題点は重大である。また、水を吸着飽和した脱水剤を再度使用するためには通常、数百度で焼成することが必要であって、この点からも工業的に有利なプロセスとは言えない。また、この方法は、平衡関係にある生成物のうち水のみを除去する方法であるため、原料アルコールと二酸化炭素の消費が進み、炭酸エステル濃度が高まれば、反応は進みにくくなるといった平衡反応の規制を依然として受けるといった問題点もある。更に、触媒として記載されているジブチル酸化スズのメタノールへの溶解性は極めて低く、ほとんどが固体状態で存在する。従って、冷却工程で室温まで冷却された反応液は白色スラリー状となって、次いで行なわれる脱水工程においては、脱水剤を詰めた脱水塔の閉塞を引き起こしてしまうなどの問題点がある。
【0014】
一般に、有機合成反応において、脱水方法として蒸留によって水を除去する方法は広く知られているが、二酸化炭素とアルコールを用いる炭酸エステルの合成においては、旭硝子工業技術奨励会研究報告Vol.33,31−45(1978)の中に検討中と書かれているのみで、これまでに蒸留による脱水方法を完成した記載及び報告は一切ない。なお、蒸留による水の除去が行なわれていない理由としては、加熱蒸留を行なうと、逆反応が起こり、生成した炭酸エステルが失われることが知られている(日本化学会誌 No.10,1789−1794(1975))ことが挙げられる。蒸留のための加熱温度を低くするために、減圧蒸留を行なうことが考えられる。しかし、アルコールのような親水性基を持った溶媒から微量の水を単純な蒸留で完全に除去することが困難であることは、蒸留工学の常識である。)したがって、脱水のためには大量の有機脱水剤や大量の固体脱水剤を用いる方法が知られているのみで、脱水には大量の廃棄物やエネルギーを消費するという問題があった。
【0015】
更に、二酸化炭素とアルコールを金属アルコキシド触媒の存在下に反応させることによって得られる、金属アルコキシドを含んだ反応液からの、炭酸エステルの分離方法について、蒸留による分離を記載した例はあるが、金属アルコキシドを触媒として用いた場合、蒸留分離の際に逆反応が起こり、生成した炭酸エステルを反応液から容易には蒸留分離できないことが知られており(日本化学会誌 No.10,1789−1794(1975))、殊に、高い沸点の炭酸エステルを金属アルコキシドを含んだ反応液から高い収率で分離する方法は知られていない。
【0016】
更に、金属アルコキシドは空気中の水分にさえ不安定であり、その取り扱いには厳密な注意をする必要があったため、金属アルコキシドを触媒として使用した従来技術は、炭酸エステルの工業的な製造方法として利用されていない。ひとたび失活した触媒から高価な金属アルコキシドを容易に再生する技術がなかったからである。
水分に安定なジブチル酸化スズを触媒原料として、反応系中でジブチルスズジアルコキシドを生成させた例もある(日本国特許第3128576号)が、最初の反応の仕込み時は安定な状態であっても、ひとたび反応を開始すれば、不安定なジブチルスズジアルコキシドになるため、上記した問題は解決されていない。また、該反応条件でジブチル酸化スズをジブチルスズジアルコキシドにするためには、高温高圧にしなければ生成しえない。なぜならば、ジブチル酸化スズからアルコキシドが生成する際に発生する水を、アセタールの加水分解反応で吸収しなければならないが、該加水分解反応を触媒するには、スズの酸性度が極めて弱いからである。
【0017】
以上、金属アルコキシドと二酸化炭素とアルコールを用いた従来の炭酸エステル製造法では、高価な金属アルコキシドが加水分解等で触媒能を失ってしまうと、容易、かつ、効果的に再生して再度使用する方法がなかったために、少量の金属アルコキシドと多量の有機脱水剤又は固体脱水剤の組み合わせで炭酸エステルを得ることしかできないという問題点があった。
このように、炭酸エステル製造のための従来技術には、これら解決すべき課題が多く残されており、未だ実用に供されていないのが現状である。
発明が解決しようとする課題
【0018】
このような状況下、本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、意外にも、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を、触媒としてではなく、炭酸エステルの前駆体として大量に使用し、該有機金属化合物を二酸化炭素と付加反応させて、形成される付加物を熱分解させることを含む反応経路による反応によって、炭酸エステルを高収率で製造できることを見出した。更に本発明者らは、上記の反応で得られた反応混合物から炭酸エステルを分離し、得られた残留液をアルコールと反応させることによって、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水が形成され、その水を蒸留等の方法によって容易に除去することができることを見出した。得られた有機金属化合物は、回収して、炭酸エステル形成のための上記反応にリサイクルして再利用できる。このような知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
従って、本発明の主要な目的は、触媒由来の廃棄物が生じることなく、また、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もなく、高収率で炭酸エステルを工業的に製造するプロセスを連続して何度でも繰り返して行なうことのできる方法を提供することである。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら行う以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
課題を解決するための手段
【0019】
本発明によると、炭酸エステルの製造方法であって、
(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして
(3)該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、
ことを特徴とする方法が提供される。
【0020】
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.炭酸エステルの製造方法であって、
(1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして
(3)該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、
ことを特徴とする方法。
2.工程(1)における該有機金属化合物の使用量が、該二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることを特徴とする前項1に記載の方法。
3.工程(1)の該反応を20℃以上で行なうことを特徴とする前項2に記載の方法。
4.工程(1)で用いる該有機金属化合物が、下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含することを特徴とする前項1に記載の方法。
【0021】
【化1】
Figure 2003055840
【0022】
(式中:
は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
【0023】
【化2】
Figure 2003055840
【0024】
(式中:
及びMは各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
、R、R及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR10は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々独立に1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
【0025】
5.工程(1)の該反応を、工程(3)で用いる該第1のアルコールと同じかまたは異なる第2のアルコールの存在下で行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
6.工程(2)の該炭酸エステルの該分離を、工程(3)で用いる該第1のアルコールと同じかまたは異なる第3のアルコールの存在下で行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
7.工程(2)の該炭酸エステルの該分離を、蒸留、抽出及び濾過よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分離方法によって行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
8.工程(3)の該水の該分離を、膜分離によって行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
9.該膜分離がパーベーパレーションであることを特徴とする前項8に記載の方法。
10.工程(3)の該水の該分離を、蒸留によって行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
11.工程(3)で用いる該第1のアルコールが、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする前項1に記載の方法。
12.該アルキルアルコール、該シクロアルキルアルコール、該アルケニルアルコール、及び該アラルキルアルコールの各々が水よりも沸点が高いことを特徴とする前項11に記載の方法。
13.該アルキルアルコールが、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール及び直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基を有するアルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を包含し、該アルケニルアルコールが直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を有することを特徴とする前項12に記載の方法。
14.式(1)のRとR及び式(2)のRとR10が各々独立に、n−ブチル基、iso−ブチル基、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基、または直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を表すことを特徴とする前項4に記載の方法。
15.工程(1)において、該有機金属化合物を、単量体、オリゴマー、ポリマー及び会合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の形態で用いることを特徴とする前項4又は14に記載の方法。
16.式(1)のM及び式(2)のMとMがスズ原子を表すことを特徴とする前項4又は14に記載の方法。
17.工程(3)の後に、工程(3)で回収された該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルする工程(4)を更に包含し、工程(1)から工程(4)までを1回以上繰り返して行なうことを特徴とする前項1から16のいずれかに記載の方法。
18.工程(1)で用いる該有機金属化合物が、有機スズオキサイドとアルコールから製造されることを特徴とする前項17に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記のように、従来技術では下記式(3)の平衡反応を利用している。
【0027】
【数2】
Figure 2003055840
【0028】
即ち、従来技術の方法は、炭酸エステルと水からなる生成物系を含む平衡反応系(上記式(3)で表される)を含有する反応液中に脱水剤を用いる方法や、上記の平衡反応系を含有する反応液をそのまま冷却して、固体脱水剤を充填塔に詰めた脱水工程に循環させて該平衡反応系の水を徐々に除去して、触媒分解反応を抑制しながら極微量生成する炭酸エステルを反応液中に蓄積する方法である。
一方、本発明の方法は、このような従来技術の方法と技術発想を全く異にする新規な方法である。
本発明の特徴は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を、触媒としてではなく、炭酸エステルの前駆体として大量に使用し、該有機金属化合物を二酸化炭素と付加反応させて、形成される付加物を熱分解させることを含む反応経路による反応によって炭酸エステルを合成し(工程(1))、次に、上記の反応で得られた反応混合物から炭酸エステルを分離し(工程(2))、得られた残留液をアルコールと反応させることによって、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水が形成され、その水を蒸留等の方法によって容易に除去し、得られた該有機金属化合物を回収して(工程(3))、炭酸エステル形成のための上記反応にリサイクルして再利用することにある。本発明の方法の工程(1)における反応は、下記式(4)で表される。本発明の方法の工程(3)における反応は、下記式(5)で表される。
【0029】
【数3】
Figure 2003055840
【0030】
すなわち、本発明の方法は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を炭酸エステルの前駆体として主に使用し、二酸化炭素との付加反応生成物を形成し、それを熱分解させて炭酸エステルを得た後に、反応混合物から炭酸エステルを分離し、次いで、残留液中の有機金属化合物変性物(該熱分解により形成されたもの)をアルコールと反応させて金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を再生した後に、それを炭酸エステル形成反応工程に戻すといったプロセスを繰り返して炭酸エステルを製造する方法である。
本発明の方法の工程(1)の終了後においては、工程(1)に用いた金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を含まない反応液となる場合もあり、あるいは工程(2)の終了後には、工程(1)に用いた金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を含まない反応液となる場合もあるが、工程(3)の終了までに、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物が再生(再合成)される。
【0031】
本発明の方法によれば、反応全体が平衡状態で支配される従来技術の方法とは異なり、式(3)で表される平衡反応を効果的に分割できるものであり、これによって、逐次反応を制御し、生成する炭酸エステルと水を反応系から除去しながら効率よく炭酸エステルを得ることができる。すなわち、本発明の方法の工程(1)では、水のない状態で反応を行なうことができ、工程(2)においては、反応混合物から炭酸エステルを分離することによって、炭酸エステルとそれ以外の熱分解物との逆反応を抑止でき、工程(3)においては、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を再生した後、水を除去することによって該有機金属化合物が回収できる。更に、各工程において冷却、加熱、撹拌、加圧、減圧など公知の化学合成技術を適宜用いるによって、操作条件の最適化を容易に図ることができる。
本発明の方法の工程(1)で用いる金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の例としては、例えば、アルコキシ基を有する有機金属化合物を挙げることができる。工程(1)で用いる該有機金属化合物は、下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含することが好ましい。
【0032】
【化3】
Figure 2003055840
【0033】
(式中:
は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
【0034】
【化4】
Figure 2003055840
【0035】
(式中:
及びMは各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
、R、R及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR10は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々独立に1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
【0036】
本発明でいう周期律表とは国際純正及び応用化学連合無機化学命名法(1989年)で定められた周期律表である。
これら有機金属化合物は単量体であっても、オリゴマー、ポリマー、または会合体であってもよい。
本発明に用いられる有機金属化合物おいて、式(1)のM及び式(2)のM、Mは、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子であり、中でも、チタン、スズ及びジルコニウムが好ましい。アルコールへの溶解性やアルコールとの反応性を考慮すれば、スズがより好ましい。
【0037】
本発明に用いられる式(1)の有機金属化合物のRとR、及び式(2)の有機金属化合物のR、R、R、Rの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、2−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基や炭素数5から12の脂環式炭化水素基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基、フェニル、トリル、ナフチル等の炭素数6から20のアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、低級アルキル基であり、より好ましくは炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。以上に記した炭素数以上のものも使用することができるが、流動性が悪くなったり、生産性を損なったりする場合がある。
【0038】
式(1)の有機金属化合物のRとR、及び式(2)の有機金属化合物のRとR10の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、2−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシエチル、エトキシメチル等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基や炭素数5から12の脂環式炭化水素基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
式(1)で示される有機金属化合物の例としては、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロピルオキシスズ、テトラブトキシスズ、テトラペンチルオキシスズ、テトラヘキシルオキシスズ、テトラ−2−エチル−1−ヘキシルオキシスズ、ジ−メトキシ−ジエトキシスズ、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロピルオキシチタン、テトラ−イソ−プロピルオキシ−チタンジメチルスズ−ジ−メトキシド、ジメチルスズ−ジ−エトキシド、ジメチルスズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジメチルスズ−ジ−プロポキシド、ジメチルスズ−ジ−ブトキシド、ジメチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ジメチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジメチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジメチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジメチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジメチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジメチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−メトキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−エトキシド、メチル,ブチルスズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,ブチルスズ−ジ−プロポキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−ブトキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、メチル,ブチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,ブチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、メチル,ブチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−メトキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−エトキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロポキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ブトキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ペンチルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ヘキシルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロペニルオキシド、メチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ベンジルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−メトキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−エトキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロポキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ブトキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ペンチルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ヘキシルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−プロペニルオキシド、ブチル,(2−エチル−ヘキシル)スズ−ジ−ベンジルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−メトキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−エトキシド、ジ−n−ブチルスズ−メトキシド−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジ−n−ブチルスズ−ジ−プロポキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ブトキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジ−n−ブチルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジ−n−ブチルスズ−ジ−ベンジルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−メトキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−エトキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−プロポキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−ブトキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジ−t−ブチルスズ−ジ−プロペニルオキシドジ−フェニルスズ−ジ−メトキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−エトキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−プロポキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−ブトキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−(2−エチル−1−ブトキシド)、ジ−フェニルスズ−ジ−ペンチルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−ヘキシルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシド)、ジ−フェニルスズ−ジ−シクロヘキシルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−プロペニルオキシド、ジ−フェニルスズ−ジ−ベンジルオキシド等が挙げられる。
【0040】
式(2)で示される有機金属化合物の例としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−メトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1−(メトキシ)−3−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−エトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ブトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ブトキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−プロポキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ペンチルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−シクロヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ベンジルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−メトキシ−ジ−スタノキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−エトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−ブトキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ブトキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−プロポキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−ペンチルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ−シクロヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンのようなアルコキシジスタンオキサン、アラルキルオキシジスタンオキサン等が挙げられる。
【0041】
これらの有機金属化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよいし、他の有機金属化合物を加えてもよい。これらの有機金属化合物は市販されているものを使用してもよく、公知の方法(例えば、オランダ国特許第6612421号)に記載の方法によって、ジブチル酸化スズと炭素数4以上のアルコールと、水との共沸性溶媒とを反応させた後、蒸留成分として式(1)で示される有機金属化合物を得て使用してもよい。該方法によれば、炭素数4より小さいアルコキシ基を有する有機金属化合物を得るためには該方法は適用できず、二塩化ジブチルスズとナトリウムアルコラートから得ると記載されている。本発明者らが鋭意検討した結果、日本国特願2001−396537号又は日本国特願2001−396545号に記載の方法によって、金属酸化物とアルコールから合成された式(1)で示される有機金属化合物や式(2)で示される有機金属化合物を使用してもよい。
【0042】
本方法によれば炭素数3以下の、例えばメトキシ基を有する有機金属化合物を得ることができる。例えば、メトキシ基を有する有機金属化合物を得るには、ジブチル酸化スズとメタノールとヘキサンから得ることができる。この場合、メタノール−ヘキサンが最低共沸となることが知られているが、驚くべきことに有機金属化合物を得られることを見いだすにいたり、水よりも沸点の低いアルコールからも有機金属化合物を得る方法を開発するにいたった。水よりも沸点の低いアルコールとジブチル酸化スズから得られる有機金属化合物は式(2)で表される成分が主となる場合が多いが、式(1)で示される有機金属化合物を多量に得たい場合は、得られた反応物を蒸留することによって、蒸留成分として式(1)で示される有機金属化合物を得ることもできる。
【0043】
本発明の方法の工程(3)で用いる脱水方法としては、一般的に用いられる公知の脱水方法を任意に用いることができる。Molecular sievesのような固体脱水剤によって除去してもよく、蒸留や膜分離によって除去してもよいが、短時間で大量に有機金属化合物を得ようとすれば、蒸留によって脱水する方法が好ましい。蒸留方法は、公知の方法が使用できる。例えば常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留、抽出蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から工程(3)で用いる第1のアルコールの沸点の間で実施でき、好ましくは50℃から第1のアルコールの沸点の間である。この際、他の成分を加えてもよい。
【0044】
本発明の工程(1)の実施の際には、第2のアルコールを用いても、用いなくてもよい。第2のアルコールの使用目的については後述する。第2のアルコールを用いる場合は、式(1)の有機金属化合物及式(2)の有機金属化合物の少なくとも1種を合成する際にアルコールを使用し、発生する水を蒸留によって除去すると共に、アルコールを一部残して蒸留を停止すると、残ったアルコールを第2のアルコールの少なくとも一部として利用できるので、第2のアルコールを使用して本発明の工程(1)を実施する際にアルコールの添加が不要になる場合がある。
【0045】
本発明の方法においては、工程(3)で第1のアルコールを使用するほか、所望により工程(1)で第2のアルコールが使用でき、また、所望により工程(2)で第3のアルコールが使用できる。これらの第1のアルコール、第2のアルコール、第3のアルコールとしては、同じアルコールを使用してもよいし、異なるアルコールを使用してもよい。これらのアルコールの例としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ヘキセノール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキセノール等の炭素数1から12の脂肪族アルコールや炭素数5から12の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアラルキルアルコールが挙げられる。多価アルコールも使用できる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール等の炭素数1から12の脂肪族多価アルコールや炭素数5から12の脂環式多価アルコール等、ベンゼンジメタノール等のアラルキルアルコール等が挙げられる。
【0046】
これらのアルコールの中で、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘキセノール等の炭素数1から8の1級または2級一価アルコール、ベンジルアルコール等の炭素数7か8の1級又は2級のアラルキルアルコールが好ましい。
【0047】
式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物の分析方法は119Sn−NMRによる方法が知られている(例えば、米国特許第5,545,600号)。ただし、式(1)の有機金属化合物に相当する構造の119Sn−NMRのシフト値は、サンプル中での式(1)の有機金属化合物の濃度やアルコールの存在などによって大きく変化するのでH−NMR、13C−NMRを併用して決定するのが好ましい。例として2−エチル−1−ヘキサノールとジブチル酸化スズを使用して合成した有機金属化合物の式(1)の有機金属化合物の構造に相当する119Sn−NMRのシフト値を表1に示した。
【0048】
【表1】
Figure 2003055840
【0049】
工程(1)において、他の成分が共存していてもよい。有効に用いられる他の成分としては、反応系内で脱水剤として機能する成分が挙げられる。添加することによって、工程(1)の反応系を非水系の状態に保てるからである。脱水剤として、公知の有機脱水剤を使用することができる。脱水剤の例としては、アセタール化合物、オルト酢酸トリメチル等のオルトエステル等が挙げられる。この他、ジシクロヘキシルカルボジイミドのような有機脱水剤も使用できる。脱水剤成分として、Molecular sieves等の固体脱水剤を使用してもよい。固体脱水剤を用いる場合には、工程(3)を実施する前に固体脱水剤を除去することが好ましい。
【0050】
工程(1)では、第2のアルコールの使用は任意である。第2のアルコールを使用する場合には、得られる炭酸エステルの純度を高くするために、有機金属化合物のアルコキシドやアラルキルオキシドと同種の有機基を有する第2のアルコールの場合、第2のアルコールの量は有機金属化合物の量に対して、化学量論量で1以上100000以下が好ましいが、有機金属化合物とは異なる有機基を有するアルコールを使用する場合や、有機金属化合物が式(2)のもののみである場合には、第2のアルコールの量は有機金属化合物の量に対して、化学量論量で2倍以上1000倍以下が好ましく、より好ましくは10倍以上1000倍以下の範囲である。有機金属化合物とは異なる有機基を有する第2のアルコールを使用すると、非対称炭酸エステルが得られる。なお、後述するように、第2のアルコールを使用すると炭酸エステルの収率が向上するが、その効果は、有機金属化合物が式(2)のものである場合に特に顕著である。有機金属化合物が式(2)のもののみである場合の第2のアルコールの上記の好ましい量は、その観点から設定されている。
工程(4)に引き続き、工程(1)を行なう場合には、上記範囲となるように第2のアルコールを添加してもよく、場合によってはアルコールを除去して実施してもよい。
【0051】
以下、各工程について詳しく説明する。
本発明の方法で行なう工程(1)は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の二酸化炭素付加体を生成させて、該付加体を分解して炭酸エステルを得ることを主反応とする工程である。即ち、工程(1)の反応が進行する反応経路は、二酸化炭素が有機金属化合物に付加結合して付加物を形成し、該付加物が熱分解するものである。本発明の方法の工程(1)では、従来の技術とは異なり、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を低い化学量論量の二酸化炭素と反応させることを特徴とする。
【0052】
従来の方法では、少量の金属触媒と高圧の二酸化炭素とを反応させていた。例えば、メタノールと二酸化炭素をジブチルスズジメトキシドの存在下で反応させた例(Polyhedron, 19, p573−576(2000))では、180℃で数mmolのジブチルスズジメトキシドに対して約30MPaの二酸化炭素反応条件で反応させている。該条件での二酸化炭素の正確な数値は記載されていないが、メタノールの分圧を差し引いたとしても、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して100倍以上の化学量論比で二酸化炭素を反応させている。このような条件で強引に平衡をずらすことによって炭酸エステルの収量は触媒に対して多く得ることができているが、共に生成する水が遊離水として発生する。よって、この遊離水による触媒の加水分解が重大な問題となり、系内での脱水方法を構築する必要があった。このような条件においては、ジブチルスズジメトキシドの加水分解構造であるジブチルスズオキサイドが反応で生成し、更に、該ジブチルスズオキサイドは室温では溶媒に溶解しえないにも関わらず、上記反応条件においては透明溶液でジブチルスズオキサイドが存在していると記されている。
【0053】
本発明においては、工程(1)終了後の反応液を室温まで冷却しても、多くの場合液状であるので、上記した大量の二酸化炭素と反応させた既存技術とは異なった反応状態であるといえる。高濃度で二酸化炭素を用いた場合は、必然的に高圧反応となり、リアクターからの反応液の取り出しの際に、多くの二酸化炭素をパージしなければ炭酸エステルを分離することができず、二酸化炭素の無駄、およびパージ後再利用するのであれば、再加圧しなければならないといったエネルギーの無駄が発生する問題があった。別の観点では、高濃度の二酸化炭素を用いれば、二酸化炭素ガス層の密度が上昇し、溶媒や触媒、生成した炭酸エステルをも溶解して均一層を形成することが知られている。更に冷却すれば液体炭酸となって液状であるから、このような観点からも生成した炭酸エステルを反応液から容易に分離することは極めて困難であるといった課題があった。
【0054】
本発明の方法の工程(1)では、二酸化炭素を、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して化学量論比で1から50の範囲で反応させることが好ましい。更に好ましくは1から20の範囲である。二酸化炭素の量が多くなれば、高圧反応となり、耐圧性の高いリアクター構造が必要であり、また工程(1)終了後に二酸化炭素をパージする際に多くの二酸化炭素をロスするために、1から10の範囲が更に好ましい。言い換えれば、工程(1)における有機金属化合物の使用量が、二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることが好ましく、1/20〜1倍の範囲であることがより好ましく、1/10〜1倍の範囲であることが更に好ましい。
【0055】
本発明では、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の二酸化炭素付加体は、該有機金属化合物を二酸化炭素に接触させれば容易に得ることができる。室温(20℃)では、常圧の二酸化炭素気流を接触させることで発熱的に二酸化炭素付加体が生成し、ほぼ100%二酸化炭素付加体を得ることができる。反応温度の上昇に伴って、該二酸化炭素付加体の生成量は減少するが、この際には接触させる二酸化炭素を高圧で接触させればよい。高圧で二酸化炭素を接触して工程(1)を行なった場合、該二酸化炭素付加体の生成量の定量は困難であるが、炭酸エステルの生成速度、生成量によって所望の圧力で実施することが好ましい。この圧力範囲は常圧から200MPaの範囲である。工程(1)での反応で得る炭酸エステル生成量は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して化学量論比で100%以下である範囲で実施することが好ましい。更に好ましくは50%以下の範囲である。
【0056】
本発明の方法で使用する金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物は、得られる炭酸エステルよりも加水分解性が高く、該有機金属化合物に対して100%以下、好ましくは50%以下の化学量論比で炭酸エステルを得れば、炭酸エステルを加水分解するような水は反応液中に発生しないからである。従来技術では、該化学量論比が100%を超えるように反応させたために、遊離水が著しく問題となって系内に有機金属化合物よりも加水分解性の高い脱水剤や、吸着力の強い固体脱水剤を添加するか、その存在下で反応させていた。そのために複雑な工程や高価な脱水剤を使用しなければならず、工業的な製造法として採用されなかった。
【0057】
本発明の工程(1)での主反応である分解反応は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の二酸化炭素付加体の熱分解によって炭酸エステルを得る分解反応である。熱分解温度は20℃から300℃の範囲で実施できる。本発明の方法の工程(1)では、上記分解と共にアルコール交換反応、エステル交換反応を実施してよい。即ち、第2のアルコールを工程(1)で用いれば、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の酸素−炭素結合部分とアルコール交換が起こり、添加したアルコールに対応する炭酸エステルを得ることができる。また、炭酸エステルが生成した後に第2のアルコールを添加してエステル交換反応で第2のアルコールに対応する炭酸エステルを得てもよい。
【0058】
以下、更に詳細に工程(1)について説明する。
本発明者らの研究結果によると、工程(1)では、有機金属化合物と二酸化炭素から炭酸エステルが得られる。従って、第2のアルコールの使用は任意である。しかし、第2のアルコールを加えた方が、高い収率で炭酸エステルを得る観点から好ましい。これは工程(1)で行なう反応の逆反応が存在するためであって、第2のアルコールを加えることによって、炭酸エステル以外の熱分解生成物と第2のアルコールとの間に新たな平衡反応が生じて、炭酸エステルの収率が高くなる場合があるからである。炭酸エステルの収率向上のために第2のアルコールを加えることは、有機金属化合物の主成分が式(2)で示される有機金属化合物である場合に特に有効である。有機金属化合物の主成分が式(1)で示されるものである場合は、工程(1)での熱分解反応の平衡が生成物系に偏り、炭酸エステルの収率がかなり高いので、更なる向上が得られない場合がある。第2のアルコールに水分が大量に含まれると、得られる炭酸エステルの収量を悪化させるため、反応液中に加える第2のアルコール中に含まれる水分が、有機金属化合物の量に対して、化学量論量比で、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.01以下にすることが好ましい。工程(1)で式(1)の有機金属化合物を使用して行なう反応においては、式(1)の有機金属化合物と二酸化炭素の付加物から熱分解して炭酸エステルが生成するわけであるが、式(1)の有機金属化合物の2量体から炭酸エステルが生成することは公知である(ECO INDUSTRY,vol.6,No.6,p11−18(2001))。公知技術では、該2量体から2分子の炭酸エステルが生成してジブチル酸化スズを生成させていた。
【0059】
本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに、式(1)の有機金属化合物の二量体と二酸化炭素の付加物からは、1分子の炭酸エステルが素早く熱分解脱離され、式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物を主に得ることができることを見いだした。この際にアルコールの添加は必要ない。こうして炭酸エステルと式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物が得られた後、直ぐに工程(2)を行なってもよいし、得られた式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物から更に炭酸エステルを得た後に工程(2)を行なってもかまわない。工程(1)で使用する有機金属化合物は、好ましくは、式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種類であるが、工程(1)で使用する有機金属化合物の少なくとも一部が式(1)の有機金属化合物であることが好ましい。更に好ましくは、工程(1)で使用する有機金属化合物が、式(1)の有機金属化合物を金属原子に換算して5モル%以上含む場合である。
【0060】
工程(1)で添加する成分として、溶媒を用いてもよい。本発明で使用する有機金属化合物は多くの場合液体であるが、一部固体状の有機金属化合物もある。または、有機金属化合物がジブチルスズジメトキシドを用いた場合など、有機金属化合物が工程(1)において、二酸化炭素付加体となった場合に固体状となる場合もある。固体状となった場合であっても工程(1)で炭酸エステルを生成することができるが、連続して炭酸エステルを製造する場合には、流動性が重要な場合がある。または二酸化炭素との反応速度を向上させるために液状とすることが好ましい場合もある。このような場合に、溶媒を添加して工程(1)を実施してよい。用いる溶媒は製造する炭酸エステルの有機基に対応するアルコールであってよい。また他の不活性溶媒であってもよい。不活性溶媒の例として、炭化水素類やエーテル類があげられる。このような例としてペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの炭素数5から炭素数20の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭素数1から炭素数14の飽和アルキル基や炭素数5から炭素数14の環状アルキル基を有してよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどの炭素数6から炭素数20の飽和アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの炭素数4から炭素数20の環状アルキルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、イソプロピルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、4−メチルアニソールなどの炭素数0から8までの置換基を有するフェニル基と炭素数1から14のアルキル基または炭素数5から14のシクロアルキル基からなる炭素数7から28のフェニルエーテル類が使用できる。
【0061】
工程(1)の反応温度は、通常、室温(20℃)から300℃であり、反応をはやく完結させる場合には、好ましくは80から200℃で、10分から500時間の範囲でおこなう。金属化合物の金属原子としてスズを使用する場合、工程(1)を行った後の反応液に含まれるスズ成分の119Sn−NMR分析において、反応前のスズ(図4)と反応後のスズ(図5)の状態は大きく異なっていて、有機金属化合物が炭酸エステルの前駆体として機能していることがわかる。図5では、反応前にみられた有機金属化合物のうち、式(1)で示される有機金属化合物が消費され、式(2)で示される有機金属化合物と、同定はされていないが、その二酸化炭素付加体らしきピークが観測された。
工程(1)の反応を高温(例えば200℃以上)で実施した場合、119Sn−NMR分析において、テトラメチルスズ基準で100ppm近辺に生成する成分が検出される場合があるが、この成分の生成が少ない条件あるいは抑制する添加剤の存在下で実施することが繰り返し反応においては好ましい。
【0062】
二酸化炭素は、工程(1)で使用される有機金属化合物に対して、室温(20℃)であれば、化学量論量で充分である。室温(20℃)を越える温度で反応させる場合には、有機金属化合物への二酸化炭素の付加反応が起こりにくくなり、炭酸エステルの生成が著しく遅くなる場合がある。工程(1)の反応圧力は、常圧から200MPa、好ましくは常圧から100MPaとし、必要により、二酸化炭素を充填しながら、または一部抜き出して反応をおこなう。二酸化炭素の充填は断続的に充填しても、連続的に充填してもよい。
反応液を分析し、所望の炭酸エステルが得られていれば工程(1)を終了する。例えば、有機金属化合物の量に対して化学量論比で5%以上の炭酸エステルが得られれば、常圧に戻して反応液を取り出してもよいし、反応液をリアクターから直接抜き出してもよい。例えば、工程(1)、工程(2)、工程(3)を別のリアクターで実施する場合、工程(3)終了液を工程(1)のリアクターへ注入し、工程(1)のリアクターから工程(2)のリアクターへ、工程(2)のリアクターから工程(3)のリアクターへ連続して液を循環させる方法を行なってもよい。反応液を循環させる方法は、二酸化炭素を充填した工程(1)のリアクターからの二酸化炭素パージ量を少なくすることができるので好ましい形態である。各工程終了後の反応液は強制冷却してもよいし、自然冷却してもよいし、加熱してもよい。また、後述するように、場合によっては、炭酸エステル合成反応である工程(1)と炭酸エステル分離工程である工程(2)を同時に行なうこともできる。
【0063】
本発明の方法の工程(2)は、工程(1)で得られた反応液混合物から炭酸エステルを分離する工程である。先に述べたように、式(3)で示した反応による従来の方法による二酸化炭素とアルコールからの炭酸エステルの製造の際には、炭酸エステルと共に水の発生が起こり、従来の方法では水を吸着剤あるいは脱水剤と接触させることによって反応系から除去し、平衡反応を生成物側へずらすものであった。該平衡は炭酸エステルを反応系外へ除去し続けても生成物側へ平衡をずらし、炭酸エステルの生成量を多くすることができるはずである。しかし、従来の方法では炭酸エステルを除けば、反応系内に水が蓄積し、周知のように水が蓄積すれば触媒が加水分解して触媒性能を失ってしまい、加水分解した触媒は溶媒への溶解性が極めて低いために、循環脱水の際の吸着塔を詰まらせてしまうなどの問題があるからである。また、触媒が水との反応で失活してしまえば、その再生方法が知られていなかった。このような理由で、従来の方法では炭酸エステルを効率よく分離することはできなかった。
【0064】
本発明の方法の工程(2)は、公知の炭酸エステルの分離方法が適用でき、一般に行なわれる溶媒抽出方法や蒸留や膜分離などの方法によって行なうことができる。抽出溶媒は、炭酸エステルと反応しない溶媒、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメチレン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族、エーテル、アニソール等のエーテルが好ましく使用できる。
工程(1)において、第2のアルコールとして炭素数4以下のアルコールを用いた場合や、第2のアルコールを使用しないで工程(1)を行ない、かつ、使用する有機金属化合物の有機基が炭素数4以下である場合は、工程(1)で得られた反応液から直接、蒸留によって炭酸エステルを分離することができる。好ましくは、生成する炭酸エステルの沸点が100℃以下の、例えば、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルの場合である。蒸留方法は、公知の方法が使用できる。このような方法として、一般に知られている常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から200℃の間で実施でき、好ましくは、マイナス20℃から150℃の間である。この際、他の溶媒を加えて蒸留したり、抽出蒸留してもよい。
【0065】
工程(2)においては、所望により、第3のアルコールを用いることができる。第3のアルコールを加えることにより、工程(1)で得た炭酸エステルと第3のアルコールの間でエステル交換させて、工程(1)で得られた炭酸エステルとは異なった炭素数を有する炭酸エステルとすることにより、炭酸エステルの分離を容易にすることができる。この方法は、工程(1)で第2のアルコールを加えないで反応させ、工程(1)で得た炭酸エステルが炭素数9以上の場合であって、工程(2)で分離する炭酸エステルが炭素数7以下の際に好ましく使用できる。更に好ましいのは、工程(2)で分離する炭酸エステルが炭酸ジメチルの場合である。加える第3のアルコールの量は、工程(1)で使用する有機金属化合物に対して化学量論量で等量以上1000倍以下の範囲で実施できる。エステル交換反応温度は室温(約20℃)から200℃の範囲が好ましい。エステル交換反応の速度や、高温での炭酸エステルの分解反応を考えれば、50℃から150℃の範囲が更に好ましい。この際、公知のエステル交換触媒を加えてもよい。エステル交換と炭酸エステルの分離はバッチ式に行なってもよいし、同時に行なってもよい。エステル交換した後の炭酸エステルの分離は、前記した分離方法(溶媒抽出、蒸留、膜分離など)が使用できる。もっとも好ましい方法は、エステル交換と分離を同時におこなう反応蒸留である。
炭酸エステルの分離前に、未反応の有機金属化合物及び、有機金属化合物の熱分解物を除去した後に抽出や蒸留を行ってもよい。水又は水を含んだ溶媒を反応液に加え、白色スラリーとした後に固形分を濾過分離し、その濾液を使用すれば、沸点が100℃を越える炭酸エステルも高い回収率で蒸留分離することができる。水はいかなる水であってもよいが、好ましくは蒸留水及び脱イオン水である。
【0066】
工程(2)において、水を加える場合の水の量は、工程(1)で使用した有機金属化合物に対して化学量論量で1から100の範囲である。金属化合物を反応液から相分離させるための水は、工程(1)で使用した有機金属化合物に対して化学量論量で1あれば十分である。しかし、工程(1)で生成した炭酸エステルが疎水性であるため、工程(1)で使用した有機金属化合物に対して化学量論量の数倍以上の水を加えることは、炭酸エステルをも相分離させて分離することができるので、好ましい方法である。
工程(2)において、水を加える場合の水の温度は、添加する水が反応液中で固化しないような温度、例えば、マイナス20℃から100℃、好ましくは0℃から100℃の範囲である。更に好ましくは10から80℃に温度を調節してもよい。炭酸エステルの加水分解が起きるのを防止する観点からは、10から50℃がより好ましい。水のみを用いてもよいが、水と溶媒を用いる場合は、炭酸エステルと反応しない溶媒を用いることが好ましい。工程(1)で第2のアルコールを使用した場合には、使用した第2のアルコールと同じアルコールに水を溶解して使用すると、溶媒の分離が容易になる。工程(2)で第3のアルコールを加えてエステル交換した場合には、エステル交換後に、反応液中にあるアルコールと同じアルコールに水を溶解して使用することが好ましい。
【0067】
蒸留方法は、一般に知られている常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から炭酸エステル及び/又はアルコールの沸点の間で実施でき、好ましくは50℃から炭酸エステル及び/又はアルコールの沸点の間である。この際、他の溶媒を加えて蒸留したり、抽出蒸留してもよい。
工程(1)終了後の反応液に、水及び/又は抽出溶媒を加えた後に、分液して油層部分の炭酸エステルを分離してもよい。
【0068】
本発明の方法によると、対称の炭酸エステルだけでなく、非対称の炭酸エステルをも製造することができる。従来、対称炭酸エステルを製造した後に別途エステル交換を行って非対称炭酸エステルを得る方法が提案されていたが、本発明では、非対称炭酸エステルを直接に製造できる方法であり、エネルギーコストおよび設備建設コスト上、好ましい製造方法である。非対称の炭酸エステルは以下のようにして製造できる。有機金属化合物がアルコキシ基含有有機金属化合物である場合を例にとる。工程(1)と工程(2)のいずれにおいてもアルコール(第2のアルコールと第3のアルコール)を用いない場合は、工程(1)で用いる有機金属化合物が異なる2種類のアルコキシ基を有する場合に、非対称炭酸エステルを得ることができる。また、工程(1)で用いる有機金属化合物が1種類のアルコキシ基のみを有する場合には、該アルコキシ基とは異なる有機基を有するアルコール(第2のアルコール)の存在下で工程(1)を行なうか、または、該アルコキシ基とは異なる有機基を有すアルコール(第3のアルコール)の存在下で工程(2)を行なうことによって非対称炭酸エステルを得ることができる。また、工程(1)で用いる有機金属化合物が1種類のアルコキシ基のみを有する場合か異なる2種類のアルコキシ基を有する場合には、異なる2種類のアルコール(第2のアルコール)の存在下で工程(1)を行なうか、または、異なる2種類のアルコール(第3のアルコール)の存在下で工程(2)を行なうことによって非対称炭酸エステルを得ることができる。異なる2種類のアルコールを使用する際の比率は、アルコール種の組み合わせによって異なるが、化学量論比で2:8〜8:2の範囲である。非対称炭酸エステルを大きな割合で製造する場合には、異なる2種のアルコールの比率は近いことが好ましい。このような好ましい範囲は、化学量論比で3:7〜7:3、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。異なる2種類のアルコールを使用して非対称炭酸エステルを製造する場合には、有機金属化合物に対して過剰量の、例えば化学量論量10倍以上の量のアルコールを使用すれば、有機金属化合物のアルコキシ基の種類に関わらず、加えた異なる2種類のアルコールに対応する異なる2種類アルコキシ基を有する非対称炭酸エステルを得ることができる。非対称炭酸エステルの分離は、工程(2)に関連して前記したのと同様の方法(溶媒抽出、蒸留、膜分離など)で分離できる。非対称炭酸エステルと共に対称炭酸エステルが生成する場合が多いが、その場合には、非対称炭酸エステルを分離後、対称炭酸エステルを残留液と併せ工程(3)に付すか、対称炭酸エステルを工程(1)または工程(2)に戻してもよい。
【0069】
工程(3)は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を合成(再生)する工程である。工程(2)で炭酸エステルを分離後の残留液中の化合物は、多くの場合は透明な液体、場合によっては固体であるが、いずれの場合も工程(3)で有機金属化合物の合成に利用できる。工程(2)で炭酸エステルを分離した後の残留液中の化合物は多くの場合液状であり、例えば、固体状のジブチル酸化スズ(これは室温(20℃)でほとんどの有機溶媒に溶解性を持たず固体状となる)の存在は見られず、残留液中の化合物がどのような構造であるか特定されていない。しかし、驚くべきことに、本発明の方法の工程(3)によって、式(1)で示される有機金属化合物および/または式(2)で示される有機金属化合物などの、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を得られることを見い出した。
【0070】
工程(3)は、工程(2)で得られた該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する工程である。
ここで使用される第1のアルコールの例は前記の通りである。即ち、第1のアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ヘキセノール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキセノール等の炭素数1から12の脂肪族アルコールや炭素数5から12の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアラルキルアルコールが挙げられる。また、多価アルコールも使用できる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール等の炭素数1から12の脂肪族多価アルコールや炭素数5から12の脂環式多価アルコール等、ベンゼンジメタノール等のアラルキルアルコール等が挙げられる。これらのアルコールを使用する際に、必要に応じて、精製、濃度調整のために蒸留操作等をおこなうことがある。その観点から好ましいアルコールは、常圧における沸点が300℃以下のアルコールである。工程(3)での水の除去のしやすさを考慮すれば、n−ブタノール、iso−ブタノールまたは炭素数5以上のアルキルアルコール、アラルキルアルコールが更に好ましい。
多価アルコールを第1のアルコールとして工程(3)で使用した場合に得られる有機金属化合物の構造は、特に限定されず、例えば、式(1)の有機金属化合物及び/又は式(2)の有機金属化合物の架橋体であっても、本発明に使用することができる。
【0071】
工程(3)で使用される第1のアルコールの量は、工程(1)で使用した有機金属化合物の量に対して、好ましくは化学量論量の1から10000倍の範囲、より好ましくは2から100倍である。繰り返し反応方式で工程(1)から工程(4)を実施する場合には、工程(2)終了後の残留液にアルコールが存在している場合がある。その際には、工程(3)で使用される第1のアルコールの上記の量範囲となるようにアルコールを添加してもよいし、除いてもよい。
工程(3)での水の除去は、公知のいかなる方法も使用できる。例えば、蒸留による方法や、固体脱水剤を充填した脱水塔、膜分離を利用したパーベーパレーションなどの方法等が使用できる。このうち、蒸留やパーベーパレーションなどの膜分離による方法が好ましい。アルコール中からの水分の除去にパーベーパレーションを用いる方法は公知であり、本発明においても好適に利用できる。水の沸点よりも高い沸点を持つアルコールの場合には、加熱蒸留することによっても水を容易に留去することができる。また、水よりも沸点の低いアルコールの場合にも、水と共沸混合物を生成する共沸溶媒を添加することで、蒸留によって水を除くこともできる。
【0072】
工程(3)の反応温度は、用いる第1のアルコールの種類によって異なるが、反応液の温度が、室温(20℃)から300℃の範囲で実施できる。蒸留によって工程(3)の脱水を行なう場合には、水が蒸気圧をもつ範囲であれば、どのような温度であってもよい。常圧で反応を速く完結させる場合には、蒸留液の蒸気温度が、水と第1のアルコールの共沸温度となるようにして実施することが好ましく、水と第1のアルコールが共沸混合物を生成しない場合には水の沸点で実施することが好ましい。更に反応を早く進行させたい場合には、オートクレーブなどを用いて第1のアルコールや水の沸点よりも高い温度で反応させて、気相部の水を徐々に抜き出してもよい。反応液の温度が極めて高くなる場合には、有機金属化合物の分解が起こる場合があるので、減圧蒸留などの方法で水を含んだ液を留去してもよい。
【0073】
第1のアルコールが水と共沸混合物を生成しない場合であっても、水と共沸する溶媒を加えて、共沸蒸留によって水を除去することができ、この方法は、低温で水を留去できることから好ましい。このような溶媒の例としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アニソール、1,4−ジオキサン、クロロホルム等の、一般に水と共沸混合物を生成するような飽和及び不飽和炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素等が使用できる。
共沸蒸留後の共沸混合物からの水の分離を考えれば、水の溶解度の低い飽和及び不飽和炭化水素を溶媒として使用することが好ましい。このような溶媒を使用する場合には、共沸によって水を充分除去できる量以上を使うことが必要である。蒸留塔等を用いて共沸蒸留をおこなう場合には、共沸混合物を蒸留塔で分離して、溶媒を反応系内に戻せるので、比較的少量の溶媒量でよいので好ましい方法である。
工程(3)における反応によって、例えば、式(1)の有機金属化合物と式(2)の有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物を得ることができる。
【0074】
工程(3)における反応からの水の生成が殆どなくなれば、工程(3)を終了することができる。水の除去量によって、繰り返し行なう工程(1)で得られる炭酸エステルの収量が決まるために、なるべく多くの水を除去しておくことが好ましい。
通常、工程(3)で除去する水の量は、例えば、式(1)で表される有機金属化合物のみが生成したとして求めた理論量の0.01から1倍の範囲内であるが、通常、理論量の1よりも少ない水の量が除去される。本発明者らの検討によれば、ジブチル酸化スズとアルコールから有機金属化合物を得て工程(1)から工程(4)を繰り返した際の工程(3)で除去される水の量は、最初のジブチル酸化スズとアルコールから有機金属化合物を得る際に発生する水の量よりも少なかった。工程(2)で炭酸エステルの分離のために水を加えた場合は、得られる白色固体が含水していて、工程(3)で除去される水の量は理論量の1倍を超える場合もある。繰り返し反応を実施した場合については、工程(2)終了後の有機金属化合物の構造は未だ特定されていないために、理論量を求めることは難しい。この場合には、経時的に水の除去量を測定して、水の留出がほとんどなくなってから終了すればよい。
【0075】
工程(3)の終了後、必要に応じて、過剰量のアルコールを除去してもよい。繰り返し行なう工程(1)で得られる炭酸エステルの純度を考えれば、除去することが好ましい。繰り返し行なう工程(1)で、工程(3)と同じアルコールを使用する場合には、工程(3)の終了後にアルコールを除去しなくてもよいし、また、工程(1)の実施時に不足分を追加してもよい。
過剰量のアルコールの除去は、得られる有機金属化合物が固体の場合には、濾過によって濾液として除くことができるが、有機金属化合物が液体の場合は減圧蒸留による除去、窒素等の不活性ガスを送り込んで蒸気圧分のアルコールの除去を行なうことができる。この際、充分に乾燥させた不活性ガスを使用しなければ、得られた有機金属化合物が、金属酸化物とアルコールに加水分解し、繰り返し行なう工程(1)で得られる炭酸エステルの収量が極めて低くなる場合がある。工程(1)から工程(3)は連続的におこなってもよいし、バッチ式に行なってもよい。
前記のように、場合によっては、工程(1)と工程(2)は同時に行なうことができる。また、場合によっては、工程(2)と工程(3)は同時に行なうことができる。また、場合によっては、工程(1)から工程(3)は同時に行なうことができる。これについて、以下説明する。
【0076】
(工程(1)と(2)を同時に行なう場合)
工程(1)の反応の実施時に、液相と気相部が存在する場合と、高温高圧で二酸化炭素が超臨界状態となって、反応液が均一状態となる場合があるが、工程(1)と工程(2)を同時に行なうことのできる場合は、液相と気相に分離している場合である。このような温度圧力は、有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、アルコールを使用する場合にはアルコールの種類によって異なるが、200℃以下、8MPa以下の場合である。すなわち、炭酸エステルは二酸化炭素への溶解度が高いので、気相部分へ一部溶解している。従って、工程(1)実施時に気相部分を一部抜き出しながら反応させれば、炭酸エステルを反応液から分離することができる。
【0077】
(工程(2)と工程(3)を同時に行なう場合)
有機金属化合物が、水よりも沸点の高いアルコールから得られた有機金属化合物の場合であって、更に工程(1)あるいは工程(2)で炭素数1から3のアルキルアルコールを使用する場合に実施できる。工程(1)で得られた反応液を不活性気体、たとえば二酸化炭素気流下で、得られた炭酸エステルおよび水を不活性気体の気流と共に除くことで炭酸エステルと水を分離できる。また、公知の膜分離などの方法を使用してもよい。水と炭酸エステルを反応液から膜によって除去することで連続して炭酸エステルを分離することができる。
【0078】
(工程(1)から工程(3)を同時に行なう場合)
工程(1)の反応の実施時に、液相と気相部が存在する場合と、高温高圧で二酸化炭素が超臨界状態となって、反応液が均一状態となる場合があるが、工程(1)から工程(3)を同時に行なえる場合は、液相と気相に分離している場合であり、かつ、有機金属化合物が、水よりも沸点の高いアルコールから得られた有機金属化合物の場合であって、更に炭素数1から3のアルキルアルコールを使用した場合に実施できる。更に好ましいアルキルアルコールはメタノールである。また、このような温度圧力は、有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、アルコールを使用する場合にはアルコールの種類によって異なるが、150℃以下、5MPa以下の場合である。水および炭酸エステルは二酸化炭素への溶解度が高いので、気相部分へ一部溶解しており、従って、気相部分を一部抜き出しながら反応させることによって、有機金属化合物を再生させながら炭酸エステルをも分離することができる。また、上記の方法以外に、有機金属化合物を担体に固定し、あるいは固体状の有機金属化合物を使用して、固定床の反応を行なってもよい。二酸化炭素と炭素数1から3のアルコールを固定化された有機金属化合物へ流通させて、二酸化炭素気流と共に水および炭酸エステルを得ることができる。有機金属化合物を固定化する担体としては公知の担体が使用できる。
【0079】
工程(4)は、工程(3)で回収された該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルする工程である。その後、工程(1)から工程(4)までを1回以上繰り返して行なうことができる。リサイクルする際、該有機金属化合物を冷却してもよく、加熱した後にリサイクルしてもよい。この工程(4)を連続的に実施しても、バッチ式に実施してもよい。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例と比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
<実施例と比較例で行なった測定や分析の方法は以下の通りである。>
1)有機金属化合物のNMR分析方法
装置:日本国、日本電子(株)社製JNM−A400 FTNMRシステム(400MHz)
(1)1H、13C−NMR分析サンプル溶液の作成
有機金属化合物を0.1gから0.5gの範囲で計り取り、重クロロホルムを約0.9g加えてNMR分析サンプル溶液とする。
(2)119Sn−NMR分析サンプル溶液の作成
有機金属化合物を含有する液体を0.1gから1gの範囲で計り取り、更に0.05gのテトラメチルスズ、約0.85gの重クロロホルムを加えてサンプル溶液とする。
【0081】
2)炭酸エステルのガスクロマトグラフィー分析法
装置:(株)島津製作所製GC−2010システム
(1)分析サンプル溶液の作成
炭酸エステルの含量を測定すべき液体を0.06g計り取り、脱水されたジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを約2.5ml加える。さらに内部標準としてジフェニルエーテル約0.06gを加えて、ガスクロマトグラフィー分析サンプル溶液とする。
(2)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(米国、J&W Scientific)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
(3)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施する。
【0082】
3)炭酸エステルの収率計算方法
炭酸エステルの収率は、下式(6)によって求めた。
炭酸エステルの収率(%)=((得られた炭酸エステルの化学量論量)/(工程(1)で使用する有機金属化合物の化学量論量))×100 ・・・・・・・(6)
ここでいう「有機金属化合物の化学量論量」とは、有機金属化合物の構成に関与している金属原子数をアボガドロ数で割った値を示している。
【実施例1】
【0083】
(2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)にジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)29g(116mmol)及び2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)75g(576mmol)を入れて、内部を窒素置換した後、撹拌を開始し、192℃まで加熱した。パージラインを開けて、常圧で水及び2−エチル−1−ヘキサノールを3.5時間留去した。留出分がほとんどなくなったので、窒素置換しながらオートクレーブを約30℃まで冷却して、2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を含んだ液を得た。この間にパージラインから留去した液量は約50gであり、この液中に含まれる水分をカールフィッシャー法によって測定したところ、約1.7gの水が検出された。得られた液体の119Sn−NMRを図1に示した。−45ppmに式(1)の有機金属化合物のピークが検出され、−172ppm、−184ppmに式(2)の有機金属化合物のピークが検出された。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
上記オートクレーブにメタノール75.5g(2.4mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で1時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージした。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記オートクレーブの蒸留液抜き出しラインを用いて、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこなって炭酸ジメチルとメタノールを蒸留分離して、炭酸ジメチルを収率17%で得た。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)でオートクレーブに残った系に2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)75g(576mmol)を入れて、内部を窒素置換した後、撹拌を開始し、192℃まで加熱した。パージラインを開けて、常圧で水及び2−エチル−1−ヘキサノールを3.5時間留去した。留出分がほとんどなくなったので、窒素置換しながらオートクレーブを約30℃まで冷却して、2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を含んだ液を得た。
工程(4):工程(3)のあと連続して工程(1)を行う。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
上記オートクレーブにメタノール75.5g(2.4mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で1時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージした。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記オートクレーブの蒸留液抜き出しラインを用いて、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこなって炭酸ジメチルとメタノールを蒸留分離して、炭酸ジメチルを収率16%で得た。
【実施例2】
【0084】
繰り返し連続して工程(1)から工程(4)のサイクルを26回おこなって炭酸ジメチルを得る。
(ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
液化炭酸及び炭酸ガス投入ライン、蒸留液抜き出しライン、サンプリング管、ボトムから窒素を吹き込むラインを接続した200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)15.0g(60mmol)及びヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)30.7g(300mmol)を入れてオートクレーブの蓋をしめ、全てのバルブを閉じた。オートクレーブ内を窒素で3回置換したのち攪拌を開始し、160℃まで昇温させた。昇温後、30分攪拌を続けた後、蒸留液抜きだしラインのバルブを開け、ボトムから200ml/分で窒素を吹き込みながら蒸留液の回収をはじめた。約2時間後、蒸留液の留出がとまった後、オートクレーブを約50℃まで冷却し、透明な液体を得た。少量をサンプリングし、119Sn−NMR分析をおこなって、式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物が生成したことを確認した。留去された液は2層分離していて、水層は約0.9mlであった。
以下の工程(1)から工程(4)を繰り返す。
工程(1):ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
上記オートクレーブにメタノール48.1g(1.5mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入する。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温する。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を22MPaとなるように調整した状態で16時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージする。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記オートクレーブの蒸留液抜き出しラインを用いて、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこなって炭酸ジメチルとメタノールを蒸留分離して、炭酸ジメチルを得る。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)終了後のオートクレーブにヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)約20gを注入し、全てのバルブを閉じる。オートクレーブ内を窒素で3回置換した後、攪拌を開始し、160℃まで昇温させる。昇温後、30分攪拌を続けて、蒸留液抜きだしラインのバルブを開け、ボトムから200ml/分で窒素を吹き込みながら蒸留液の回収をはじめる。約2時間後にオートクレーブを約50℃まで冷却し、透明な液体を得る。
工程(4):工程(3)終了後、上記工程(1)から工程(3)を繰り返して実施する。
各サイクル毎の工程(2)で得られた炭酸ジメチルの収率を表2に示す。
【0085】
【表2】
Figure 2003055840
【0086】
26回目の工程(2)終了後液の119Sn−NMRをおこなったところ、少量の式(2)の有機金属化合物のピークと−170ppmから−500ppmの間に数種のピークが検出された(図2)。次いで工程(3)をおこなった液の119Sn−NMRをおこなったところ、式(2)の有機金属化合物のピークが検出され、前記した−170ppmから−500ppm間の数種のピークは検出されなくなった(図3)。
工程(3)で留去された水分量は、1回目0.27ml、2回目0.24ml、3回目0.22ml、4回目0.24mlであった。
【実施例3】
【0087】
(2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
500mlナスフラスコにジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)105g(422mmol)及び2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)277g(2.1mol)を入れて、ロータリーエバポーレーター(日本国、EYELA社製)に取り付け、内部を窒素置換した後、回転を開始し、オイルバスを180℃まで加熱した。加熱中に白色スラリー液は透明な溶液に変化した。約30分後、真空ポンプ(日本国、佐藤真空社製)およびバキュームコントローラー(日本国、岡野製作所製)で80.7KPaから68.7KPaまで3時間かけて徐々に減圧して、水及び少量の2−エチル−1−ヘキサノールを留去した。留出分がほとんどなくなったので、エバポレーターを約30℃まで冷却して、窒素で常圧に戻して2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の2−エチル−1−ヘキサノール溶液を310g得た。得られた透明液体の119Sn−NMRを図4に示した。−14ppmに式(1)の有機金属化合物のピークが検出され、−172ppm、−184ppmに式(2)の有機金属化合物のピークが検出された(図4)。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物とメタノールと二酸化炭素とから炭酸ジメチルを得る。
500mlオートクレーブ(日本国、旭硝工社製)に上記で得られた2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の2−エチル−1−ヘキサノール溶液を148.8g(Sn原子を202mmol含有)と2−エチル−1−ヘキサノールを86.4gを入れて蓋をした。全てのバルブを閉じた後、減圧弁で3MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を120℃まで昇温し、内圧を3.5MPaとなるように調整した状態で4時間反応させた後、30℃になるまで自然冷却し、二酸化炭素をパージした。反応終了後液の119Sn−NMRを図5に示した。式(1)の有機金属化合物のピークは消失し、−170ppmから−230ppmにピークが検出された(図5)。GC分析から、反応液中の炭酸ジ(2−エチルヘキシル)の収率は25%であった
【実施例4】
【0088】
(2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の合成)
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)を使用して、実施例1と同様に有機金属化合物を合成した。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物と二酸化炭素とから炭酸ジ(2−エチルヘキシル)を得る。
上記オートクレーブの全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入した。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で2時間反応させた後、二酸化炭素をパージした。
工程(2):メタノールを加えてエステル交換し、上記炭酸エステルを炭酸ジメチルにして分離する。
工程(1)終了後、窒素置換した上記オートクレーブにメタノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)75.5g(2.4mol)を加えた。全てのバルブを閉じた後、攪拌を開始し、オートクレーブの温度を120℃にした。2時間撹拌を続けた後にパージラインからメタノールと炭酸ジメチルを徐々に抜き出した。留出液がほとんどなくなったら冷却し、窒素置換したのち反応を停止した。留出液から得られた炭酸ジメチルは収率が約20%であった。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)でオートクレーブに残った系に2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製)75g(576mmol)を入れて、内部を窒素置換した後、撹拌を開始し、192℃まで加熱した。パージラインを開けて、常圧で水及び2−エチル−1−ヘキサノールを3.5時間留去した。留出分がほとんどなくなったので、窒素置換しながらオートクレーブを約160℃まで冷却して、2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を含んだ液を得た。
工程(4):工程(3)のあと連続して工程(1)をおこなう。
工程(1):2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物と二酸化炭素とから炭酸ジ(2−エチルヘキシル)を得る。
上記オートクレーブの全てのバルブを閉じた後、撹拌を開始し、液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を19.6MPaとなるように調整した状態で1時間反応させた後、二酸化炭素をパージした。
工程(2):メタノールを加えてエステル交換し、炭酸ジメチルを分離する。
工程(1)終了後、窒素置換した上記オートクレーブにメタノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)75.5g(2.4mol)を加えた。全てのバルブを閉じた後、攪拌を開始し、オートクレーブの温度を120℃にした。1時間撹拌を続けた後にパージラインからメタノールと炭酸ジメチルを徐々に抜き出した。留出液がほとんどなくなったら冷却し、窒素置換したのち反応を停止した。留出液から得られた炭酸ジメチルは収率が約18%であった。
【実施例5】
【0089】
(ジブチル酸化スズとヘキサノールからヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を得る。)
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)にジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)24.9g(100mmol)及びヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)51.1g(500mmol)を入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、160℃まで加熱した。約30分後、オートクレーブのパージラインを開け、オートクレーブのボトムから窒素を少量流しながら、水及びヘキサノールをパージラインから2時間かけて留去した。留出分がほとんどなくなったらオートクレーブを約30℃まで冷却して、119Sn−NMR分析をおこなった。1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンを約47mmol、ジブチルスズジヘキシルオキシドを約6mmol得た。
工程(1):ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物と二酸化炭素とヘキサノールから炭酸ジヘキシルを得る。
上記で得られたヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の入った200mlオートクレーブに、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)61.5g(602mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を180℃まで昇温した。このときの圧力は約7.5MPaであり、この状態のまま6時間反応させた。その後、約30℃まで冷却したのち、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻し、透明な反応液の中に炭酸ジヘキシルを収率14%で得た。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過後、蒸留によって炭酸ジヘキシルを蒸留する。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌した後、攪拌を止めた。オートクレーブをあけると白色のスラリー液になっていた。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。得られた濾液を1Lなす形フラスコに移し、バス温度150℃、1Paで加熱蒸留した。ヘキサノールと炭酸ジヘキシルが蒸留され、炭酸ジヘキシルを収率13%で得られた。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
工程(2)で得られた白色固形物と、炭酸ジヘキシルを蒸留後にフラスコに残った粘稠な液体をあわせて200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に入れた。更に、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)51.1g(500mmol)を入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、160℃まで加熱した。約30分後、オートクレーブのパージラインを開け、オートクレーブのボトムから窒素を少量流しながら、水及びヘキサノールをパージラインから2時間かけて留去した。留出分がほとんどなくなった後、オートクレーブを約30℃まで冷却した。119Sn−NMR分析した結果、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンを約47mmol、ジブチルスズジヘキシルオキシドを約6mmolが生成していた。
工程(4):工程(3)を終了し、引き続き工程(1)をおこなう。
工程(1):工程(3)で得られた有機金属化合物を使用して再度工程(1)をおこなう。
工程(3)まで終了したオートクレーブに、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)61.5g(602mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を180℃まで昇温した。このときの圧力は約7.5MPaであった。この状態のまま6時間反応させ、その後、約30℃まで冷却し、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が生成しており、炭酸ジヘキシルを収率14%で得た。
工程(2):再度おこなった工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過後、蒸留によって炭酸ジヘキシルを蒸留する。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌した後、攪拌を止め、オートクレーブをあけて白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。得られる濾液を1Lなす形フラスコに移し、加熱蒸留した。ヘキサノールと炭酸ジヘキシルを蒸留し、炭酸ジヘキシルを収率13%で得た。
【実施例6】
【0090】
炭酸ジヘキシルの製造
(ジブチルスズジヘキシルオキシドの合成)
冷却管とディーンスターク管を備えた200mlなす形フラスコにジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)12.5g(50mmol)とヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)50ml及びキシレン100mlと攪拌のための攪拌子を入れた。攪拌下、キシレンが環流する温度までオイルバスで加温し、約4時間加熱環流を続け、ディーンスターク管に約0.8mlの水を留去した。ディーンスターク管を取り外し、通常の蒸留によってキシレンとヘキサノールを留去し、更に減圧蒸留によって、過剰のヘキサノールを留去し、粘稠な透明な液体を得た。窒素パージ後、冷却し、119Sn−NMR分析した。−134ppmにジブチルスズジヘキシルオキシドのシグナル、−177及び−187ppmに少量の1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンのシグナルが認められた。
工程(1):ジブチルスズジヘキシルオキシドから炭酸ジヘキシルを得る。
100mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、上で得られたジブチルスズジヘキシルオキシドを含む有機金属化合物約2.2g(ジブチルスズジヘキシルオキシドを約5mmol含む)とヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)25.5g(250mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を4MPaに設定し、バルブを開けて、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温した。パージラインから二酸化炭素を徐々に抜きながら、オートクレーブ内の圧力を4MPaとし、この状態のまま100時間反応させた。その後、約30℃まで冷却して、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が得られ、炭酸ジヘキシルを収率18%で得た。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過後、蒸留によって炭酸ジヘキシルを蒸留する。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌した後、攪拌を止め、オートクレーブをあけて白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。濾液を1Lなす形フラスコに移し、加熱蒸留した。ヘキサノールと炭酸ジヘキシルを蒸留して、炭酸ジヘキシルを収率17%で得た。
工程(3):有機金属化合物の合成(再生)
冷却管とディーンスターク管を備えた100mlなす形フラスコに、工程(2)で得た白色固形物と、炭酸ジヘキシルを蒸留後にフラスコに残る粘稠な液体をあわせ、更にヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)20ml及びキシレン30mlと攪拌のための攪拌子を入れた。攪拌下、キシレンが環流する温度までオイルバスで加温し、約4時間加熱環流を続け、ディーンスターク管には約0.1mlの水を留去した。ディーンスターク管を取り外し、通常の蒸留によってキシレンとヘキサノールを留去し、更に減圧蒸留によって、過剰のヘキサノールを留去し、粘稠な透明な液体を得た。窒素パージ後、冷却した。119Sn−NMR分析により、−134ppmにジブチルスズジヘキシルオキシドのシグナル、−177及び−187ppmに少量の1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンのシグナルが認められた。
工程(4):工程(3)で合成した有機金属化合物をフラスコから取り出して、工程(1)を実施する。
工程(1):工程(3)で得られた有機金属化合物を用いて、再度、工程(1)をおこなう。
100mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、工程(3)で得られたジブチルスズジヘキシルオキシドを含む有機金属化合物約2.2g(ジブチルスズジヘキシルオキシドを5mmol含有)とヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)25.5g(250mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を4MPaに設定し、バルブを開けてオートクレーブへ二酸化炭素を導入し、10分間攪拌して、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温し、パージラインから二酸化炭素を徐々に抜きながら、オートクレーブ内の圧力を4MPaとした。この状態のまま100時間反応させ、その後、約30℃まで冷却して、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が得られ、炭酸ジヘキシルの収率は17%であった。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に1%の水を含んだヘキサノールを加えて固形分を濾過し、蒸留によって炭酸ジヘキシルを得る。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約30分攪拌し、攪拌を止めてオートクレーブをあけ、白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC東洋社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。この濾液を1Lなす形フラスコに移し、加熱蒸留し、ヘキサノールと炭酸ジヘキシルを蒸留して、炭酸ジヘキシルを収率16%で得た。
【実施例7】
【0091】
(炭酸ジメチルの合成)
工程(1):ジブチルスズジメトキシドとメタノールから炭酸ジメチルを得る。
ジブチルスズジメトキシド(米国、Aldrich社製)1.48g(5mmol)、メタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)1.6g(50mmol)及び振とう攪拌のためのSUS製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、SUS配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに注入した。二酸化炭素を2.0g注入し、リアクターを150℃オイルバスに浸漬して15時間振とうさせた。振とう後、リアクターを約20℃に冷却し、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、反応液を得た。この液中の炭酸ジメチルの収率は30%であった。
工程(2):工程(1)で得られた反応液に水を含んだメタノールを加えて固形分を析出させ、固形分のある状態で蒸留する。
上記で得られる反応液に10重量%の水を含むメタノールを2ml加え、リアクターを室温(約20℃)で約5分間振とうした。リアクターを開け、白色スラリーの反応液を得た。白色スラリー液を50mlなす形フラスコを用いて加熱蒸留をおこない、メタノールと炭酸ジメチルを蒸留し、炭酸ジメチルを収率29%で得た。
【実施例8】
【0092】
(ジブチル酸化スズとメタノールから共沸蒸留脱水によって金属メトキシドを得る。)
トラップに接続されたリービッヒ冷却管と送液ポンプを備えた200ml三つ口形フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)2.5gとメタノール(日本国、和光純薬工業(株)社製、特級)32.0g及びヘキサン(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)100mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら80℃に保温されたオイルバスで4時間加熱蒸留した。蒸留中に留去されるヘキサンとメタノールを定量し、留去されるヘキサンとメタノールに相当するそれぞれの量を送液ポンプでフラスコ内に送液して液量が一定になるようにした。加熱蒸留を終了した後、フラスコを30℃に冷却し、減圧蒸留法によってヘキサンと過剰のメタノールを蒸留除去して、透明粘稠な液体を得た。119Sn−NMR分析で、−174ppm,−180ppmにピークが見られた。
工程(1):メタノールを加えて高圧の二酸化炭素存在下でおこなう。
上記で得られた有機金属化合物の溶液を0.66g、メタノール1.6g及び振とう攪拌のためのSUS316製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに2.8g注入した。リアクターを160℃オイルバスに浸漬して15時間振とうさせ、振とう後、リアクターを約20℃に冷却し、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、白色スラリー状の反応液を得た。炭酸ジメチルの収率は6%であった。
工程(2):炭酸ジメチルを分離する。
上記で得られた白色スラリー液にメタノール10mlを加えて、50mlなす型フラスコを用いてバス温度90℃で加熱蒸留をおこなった。メタノールと炭酸ジメチルが蒸留され、炭酸ジメチルを収率6%で得た。
工程(3):有機金属化合物を合成(再生)する。
工程(2)で炭酸ジメチルを蒸留した後の残留液を、トラップに接続されたリービッヒ冷却管と送液ポンプを備えた100ml三つ口形フラスコに移し、攪拌のための攪拌子と、ヘキサン30ml及びメタノール30mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら80℃に保温されたオイルバスで4時間加熱蒸留した。蒸留中に、留去されるヘキサンとメタノールを定量し、留去されるヘキサンとメタノールに相当するそれぞれの量を送液ポンプでフラスコ内に送液して液量が一定になるようにした。加熱蒸留を終了した後、フラスコを30℃に冷却し、減圧蒸留法によってヘキサンと過剰のメタノールを蒸留除去して、透明粘稠な液体を得た。119Sn−NMR分析で−174ppm,−180ppmにピークが見られた。
【実施例9】
【0093】
工程(1):ジブチルスズジブトキシドとアルコールから炭酸エステルを得る。
ジブチルスズジブトキシド(米国、Aldrich社製)1.48g(4mmol)、ブタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)2.22g(30mmol)、エタノール(日本国、和光純薬社製 脱水グレード)1.38g(30mmol)および振とう攪拌のためのSUS製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、SUS配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに二酸化炭素を約2.0g注入した。リアクターを150℃オイルバスに浸漬して22時間振とうさせた。振とう後、リアクターを約20℃に冷却し、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、透明液状の反応液を得た。この液中に、炭酸エチルブチルを収率25%、炭酸ジブチルを収率10%、炭酸ジエチルを収率6%で得た。
工程(2):炭酸エステルを蒸留する。
工程(1)で得られた反応液を50mlなす形フラスコを用いて減圧蒸留をおこなった。エタノール、ブタノールおよび炭酸エステルを蒸留した。炭酸エステルの収率は、炭酸エチルブチルが収率23%、炭酸ジブチルが収率は8%、炭酸ジエチルが収率5%であった。
【実施例10】
【0094】
工程(1):メタノールを加えて高圧の二酸化炭素存在下でおこなう。実施例8と同様にして得られた有機金属化合物の溶液を1.1g、メタノール2.6g、および振とう攪拌のためのSUS316製のボールを、配管(SUS316製)とバルブを装着したチューブリアクター(容積8ml、外径12.7mm、肉厚2.1mmのSUS316製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに注入した。注入された二酸化炭素は2.8gであった。リアクターを150℃オイルバスに浸漬して12時間振とうさせる。振とう後、リアクターを20℃に冷却したのち、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、白色スラリー状の反応液を得た。分析した結果、炭酸ジメチルの収率は約5%であった。
【実施例11】
【0095】
(ジブチル酸化スズとn−ヘキサノールからヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を得る。)
冷却管とディーンスターク型水分受器を備えた300mlなす形フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)24.9gとn−ヘキサノール(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)40.9gおよびトルエン(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)150mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら120℃に保温されたオイルバスで12時間加熱環流した。フラスコを80℃に冷却後、減圧蒸留法によって過剰のn−ヘキサノールを蒸留除去した。75.1gの有機金属化合物を含む液を得た。119Sn−NMR分析で−130ppm(式(1)の有機金属化合物),−177ppm,−186ppm(式(2)の有機金属化合物)にピークが見られた。
工程(1):常圧の二酸化炭素を吹き込んで有機金属化合物とヘキサノールとから炭酸ジヘキシルを得る。
2つ口フラスコに冷却管を備え、更にガラスボールフィルターの付いた吹き込み管(日本国、VIDREX社製)をフラスコ内に挿入した。反応液を攪拌できるように攪拌子を入れた。上記で得られた有機金属化合物を含む液を0.75gおよびn−ヘキサノール41gを入れた。G2ガラスフィルターを通して高純度二酸化炭素を100ml/分の流量で吹き込みを開始した。130℃オイルバスに浸漬し加熱攪拌した。288時間後の炭酸ジヘキシルエステルの収率は40%であった。
【実施例12】
【0096】
(ジブチル酸化スズとシクロヘキサノールから共沸蒸留脱水によって金属シクロヘキシルオキシドを得る。)
冷却管とディーンスターク型水分受器を備えた500mlなす形フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)5.1gとシクロヘキサノール(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)80.1gおよびトルエン(日本国、和光純薬工業(株)社製 特級)300mlを加えた。攪拌子で攪拌しながら130℃に保温されたオイルバスで12時間加熱環流した。フラスコを80℃に冷却後、減圧蒸留法によって過剰のシクロヘキサノールを蒸留除去した。15.2gの有機金属化合物を含む液を得た。119Sn−NMR分析で−176ppm,−190ppm(式(2)の有機金属化合物)にピークが見られた。
工程(1):シクロヘキサノールを加えて高圧の二酸化炭素存在下で炭酸ジシクロヘキシルを得る。
上記で得られた有機金属化合物を含む液を0.86g、シクロヘキサノール1.0gおよび振とう攪拌のためのSUS316製のボールを、配管(SUS316製)とバルブを装着したチューブリアクター(容積8ml、外径12.7mm、肉厚2.1mmのSUS316製)に入れた。リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに注入した。注入された二酸化炭素は2.0gであった。リアクターを130℃オイルバスに浸漬して14時間振とうさせた。振とう後、リアクターを20℃に冷却したのち、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、透明液状の反応液を得た。分析結果、炭酸ジシクロヘキシルエステルの収率は40%であった。
【実施例13】
【0097】
炭酸メチルエチルの製造
工程(1):チタンテトラメトキシドと二酸化炭素とメタノールとエタノールから炭酸メチルエチルを得る。
チタンテトラメトキシド(日本国、アヅマックス社製)0.9g(5mmol)、メタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)約0.9g(30mmol)、エタノール(日本国、和光純薬社製、脱水グレード)約1.4g(30mmol)及び振とう攪拌のためのSUS製のボールを、バルブを装着した10mlの高圧リアクター(米国、Thardesigns社製)に入れた。
リアクターをドライアイス−エタノールで約マイナス68℃に冷却し、SUS配管とバルブを通して、減圧弁で約2MPaとした高純度二酸化炭素をボンベから静かに二酸化炭素を2.0g注入した。リアクターを150℃オイルバスに浸漬して15時間振とうさせ、その後、リアクターを約20℃に冷却したのち、過剰の二酸化炭素をパージして常圧に戻し、白色スラリー状の反応液を得た。この液中に、炭酸メチルエチルを収率25%、炭酸ジメチルを収率3%、炭酸ジエチルを収率4%で得た。
工程(2):炭酸エステルを分離する。
上記スラリー液を50mlナスフラスコに移し、30℃に温調した条件で減圧蒸留おこない、炭酸エステルを蒸留した。炭酸メチルエチルを収率23%、炭酸ジメチルを収率2%、炭酸ジエチルを収率3%で得た。
【0098】
比較例
以下のようにして、ジブチル酸化スズとメタノールと二酸化炭素から炭酸ジメチルの製造を試みた。(ジブチル酸化スズは金属−酸素−炭素結合を有さない。)
液化炭酸及び炭酸ガス投入ライン、蒸留液抜き出しライン、サンプリング管、ボトムから窒素を吹き込むラインを接続した200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)15.0g(60mmol)及びメタノール48.1g(1.5mol)を注入して全てのバルブを閉じた後、減圧弁で5MPaとした二酸化炭素をボンベから導入する。攪拌を開始し、オートクレーブの温度を160℃まで昇温した。液化炭酸を注入ラインから徐々に導入して内圧を22MPaとなるように調整した状態で16時間反応させた後、約30℃まで冷却し、二酸化炭素をパージした。反応液は白色スラリー状で、GC分析したところ、炭酸ジメチルは検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の方法によると、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素から高い収率で炭酸エステルを製造することができる。二酸化炭素は、毒性や腐食性がなく廉価であり、また、本発明の方法では該有機金属化合物を再生・リサイクルして繰り返し使用できるので、該有機金属化合物由来の廃棄物が生じることがなく、更に、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もないため、本発明の製造方法は産業上に大いに有用であり、商業的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の工程(1)で使用した2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の119Sn−NMRチャートである。
【図2】実施例2の26回目の工程(2)終了後の有機金属化合物の119Sn−NMRチャートである。
【図3】実施例2の26回目の工程(3)終了後の有機金属化合物の119Sn−NMRチャートである。
【図4】実施例3の工程(1)で使用した2−エチル−1−ヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の119Sn−NMRチャートである。
【図5】実施例3の工程(1)終了後の有機金属化合物の119Sn−NMRチャートである。

Claims (18)

  1. 炭酸エステルの製造方法であって、
    (1)金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルを含有する反応混合物を得、
    (2)該反応混合物から該炭酸エステルを分離して残留液を得、そして
    (3)該残留液を第1のアルコールと反応させて、金属−酸素−炭素結合を有する少なくとも1種の有機金属化合物と水を形成し、そして該水を該少なくとも1種の有機金属化合物から除去し、工程(3)で得られた該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルするために回収する、
    ことを特徴とする方法。
  2. 工程(1)における該有機金属化合物の使用量が、該二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 工程(1)の該反応を20℃以上で行なうことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 工程(1)で用いる該有機金属化合物が、下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
    Figure 2003055840
    (式中:
    は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
    及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
    及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
    a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
    Figure 2003055840
    (式中:
    及びMは各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
    、R、R及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
    及びR10は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
    e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々独立に1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
  5. 工程(1)の該反応を、工程(3)で用いる該第1のアルコールと同じかまたは異なる第2のアルコールの存在下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 工程(2)の該炭酸エステルの該分離を、工程(3)で用いる該第1のアルコールと同じかまたは異なる第3のアルコールの存在下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 工程(2)の該炭酸エステルの該分離を、蒸留、抽出及び濾過よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分離方法によって行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 工程(3)の該水の該分離を、膜分離によって行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. 該膜分離がパーベーパレーションであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 工程(3)の該水の該分離を、蒸留によって行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. 工程(3)で用いる該第1のアルコールが、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 該アルキルアルコール、該シクロアルキルアルコール、該アルケニルアルコール、及び該アラルキルアルコールの各々が水よりも沸点が高いことを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 該アルキルアルコールが、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール及び直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基を有するアルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を包含し、該アルケニルアルコールが直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 式(1)のRとR及び式(2)のRとR10が各々独立に、n−ブチル基、iso−ブチル基、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基、または直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を表すことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  15. 工程(1)において、該有機金属化合物を、単量体、オリゴマー、ポリマー及び会合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の形態で用いることを特徴とする請求項4又は14に記載の方法。
  16. 式(1)のM及び式(2)のMとMがスズ原子を表すことを特徴とする請求項4又は14に記載の方法。
  17. 工程(3)の後に、工程(3)で回収された該少なくとも1種の有機金属化合物を工程(1)へリサイクルする工程(4)を更に包含し、工程(1)から工程(4)までを1回以上繰り返して行なうことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の方法。
  18. 工程(1)で用いる該有機金属化合物が、有機スズオキサイドとアルコールから製造されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
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