JPWO2003052103A1 - 膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンe合成酵素 - Google Patents
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Abstract
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質並びに該タンパク質をコードする遺伝子、該酵素活性を有するタンパク質を高濃度で取得する方法、該タンパク質に対する抗体を用いて本酵素の定量解析を行う方法、本酵素活性を阻害又は促進する化合物のスクリーニングを行う方法、並びに該スクリーニング方法によって得られる化合物を有効成分とする疾患の診断乃至治療薬。
Description
技 術 分 野
本発明は、ヒト、サル及びマウス等の哺乳類に存在すると考えられる膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質に主に関する。また該タンパク質をコードする遺伝子に主に関する。
本発明は、プロスタグランジンE又はグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に関連する疾患の診断又は治療のための有効な手段を提供するものである。
背 景 技 術
特許文献、一般文献及び書籍を含む、明細書に記載の全ての参考文献が、参照として、この出願に援用される(incorporated by references)。先行技術を構成するどの参考文献も含まれない(no admission)。参考文献の中で述べられている議論は、その著者の考えを述べるものであり、本願出願人は、該文献の正確さと適切さについて意見を述べる権利を有する。明細書中で多くの先行文献が参照されているが、この参照はこれらの文献が一般技術を形成することを認めるものではない。
プロスタグランジンEは、平滑筋の収縮、弛緩、体温調節、胃酸分泌、免疫反応の阻害などの生理作用を惹起する生理活性物質であって、多様な生理活性を持ち、痛覚過敏反応の誘引(KR Bley,JC Hunter,RM Eeglen,JAM Smith,Trends Pharmacol.Sci.(1998)19,141−147)、慢性間接リウマチ等での骨吸収亢進(T Akatsu,N Takahashi,U Udagawa,K Imamura,A Yamaguchi,K Sato,N Nagata,T Suda,J.Bone Miner.Res.(1991)6,183−190)などの病態に関与する。
プロスタグランジンEは、プロスタグランジンE合成酵素により、プロスタグランジンHが異性化されて合成される。
プロスタグランジンE合成酵素には、細胞質型グルタチオン特異的酵素、膜結合型グルタチオン非特異的酵素、及び膜結合型グルタチオン特異的酵素の3つのタイプが存在する。
細胞質型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、大脳の細胞質画分から発見され、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)ファミリーに属するタンパクである(T Tanioka,Y Nakatani,N Semmyo,M Murakami,I Kudo,J.Biol.Chem.(2000),275,32775−32782)。
膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、生殖器に多く存在する(K Watanabe,K Kurihara,Y Tokunaga,O Hayaishi,Biochem.Biophys.Res.Commun.(1997),1439,406−414.)。この酵素は、ジーンバンクより推定された膜結合型GSTを大腸菌内で発現させることによって、見出されている(PJ Jakobsson,S Thoren,R Moregenstern,B Samuelsson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999),96,7220−7225)。
一方、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、心臓、子宮、脾臓に多く存在する(K Watanabe,K Kurihara,Y Tokunaga,O Hayaishi,Biochem.Biophys.Res.Commun.(1997),1439,406−414.)。本酵素はジチオトレイトール、グルタチオン、β−メルカプトエタノールなどSH剤を要求するが、グルタチオン特異的ではない(K Watanabe,K Kurihara,T Suzuki,Biochim.Biophys,Acta(1999),1439,406−414)。
つまり、この酵素はグルタチオン非特異的である点で、他の2者のプロスタグランジンE合成酵素と異なった性質を有している。本酵素は未だクローニングされておらず、構造と機能との関係も未だ明らかとなっていなかった。
発 明 の 開 示
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、哺乳類のcDNAライブラリーに、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に該当する遺伝子情報が存在することを見出し、この情報をもとに、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質の構造を同定することに成功した。また、該遺伝子がコードするタンパク質を発現させて、その機能の解析を行い、該タンパク質が、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有することを、明らかにした。
さらに、該タンパク質を抗原とする抗体や、該遺伝子から取得されるプローブが、疾患、特に心疾患の診断に有用に用い得ることを見出し、更なる検討を重ねて、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は次の事項に関する。
1.以下(1)〜(4)のいずれかに記載されるタンパク質。
(1)配列番号2記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(2)配列番号2記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(3)配列番号2記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表され、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(4)配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
2.以下(5)〜(8)のいずれかに記載されるタンパク質。
(5)配列番号5記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(6)配列番号5記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(7)配列番号5記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表され、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(8)配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
3.以下(9)〜(12)のいずれかに記載されるタンパク質。
(9)配列番号7記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(10)配列番号7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列より表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(11)配列番号7記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表される、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(12)配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
4.配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
5.配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
6.配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
7.配列番号2、5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列のN末端より87個のアミノ酸残基が削除され、N末端に、ヒスチジン残基6つを有する、アフィニティカラムに親和性のあるアミノ酸配列が付加された、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する融合タンパク質。
8.以下、(13)〜(14)のいずれかに記載されるタンパク質。
(13)配列番号3記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(14)配列番号3記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、かつ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
9.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子をベクターに導入し、該ベクターを用いて形質転換させた形質転換体を培養し、培養液から得られるタンパク質を精製することによって、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を生産する方法。
10.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体。
11.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を免疫学的に検出する工程を有する酵素の検出方法。
12.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を含有する疾患の検出乃至診断薬。
13.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を含有する心疾患の検出乃至診断薬。
14.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、検体から調製した試料における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の逸脱、有無又は量を調べる工程を有する疾患の検出乃至判定方法。
15.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、検体の心臓から調製した試料における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の逸脱、有無又は量を調べる工程を有する心疾患の検出乃至判定方法。
16.配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列又はその相補配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連プローブ
17.配列番号8記載の塩基配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドからなる、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連プローブ。
18.検体試料から調製した試料に、項16又は17のいずれかに記載のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定する工程を有する疾患の検出乃至判定方法。
19.検体試料の心組織から調製した試料に、項16又は17のいずれかに記載のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定する工程を有する心疾患の検出乃至判定方法。
20.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
21.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子を欠損させたノックアウト非ヒト哺乳動物。
22.下記(a)〜(c)の工程を有する、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニング方法。
(a)候補化合物の存在下、項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(b)候補化合物の非存在下、項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(c)(a)及び(b)における変換率を比較する工程。
23.配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA。
24.(a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子を含んでなる組み換え体DNA。
25.(a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含んでなる組み換え体DNA。
26.項24又は25に記載の組み換え体DNAを宿主細胞のゲノム遺伝子中に導入してなる形質転換体。
27.項24又は25に記載の組み換え体DNAを宿主細胞のゲノム遺伝子中に導入してなる形質転換体を培地に培養し、該形質転換体が産生する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質を採取する工程を含む蛋白質の製造法。
28.(a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)該プロモーターにより発現され得るよう連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを含む系に、被検物質を添加し、レポーター遺伝子の発現を指標として、被検物質が膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質の発現の促進又は抑制に与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
29.配列番号1,4又は6に記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有する遺伝子を発現可能に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物または形質転換体に被検物質を投与し、該動物又は形質転換体に対して被検物質が与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
30.配列番号1,4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有する遺伝子を欠損させたノックアウト非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、該ノックアウト非ヒト動物に対して被検物質が与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
31.項1,2,3,7又は8のいずれかに記載のタンパク質を有効成分として含有する疾患の診断乃至治療薬。
32.項28〜30のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする疾患の診断乃至治療薬。
33.項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物またはその誘導体を有効成分とする心疾患の診断乃至治療薬。
34.項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤。
35.項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性促進剤。
以下、本発明を詳細に説明する.
プロスタグランジンEは血管拡張剤として有名で、プロスタグランジンHを異性化することによって生成される。プロスタグランジンE合成酵素は、この際、異性化酵素として作用する。
プロスタグランジンE合成酵素の1種である、グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、プロスタグランジンE合成に際し、グルタチオンを要求する。グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、GSTファミリーに属し、GST活性を有している。
これに対し、本発明の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、グルタチオン非特異的にプロスタグランジンEを合成する。
この、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、構造的にも、グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素と大きく異なっていることが明らかとなった。
本発明で構造が明らかにされた、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、チオレドキシンファミリーに特徴的な配列である、Cys−X−X−Cysからなるアミノ酸の部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有している。Cys−X−X−Cysからなるアミノ酸の部分配列としては、例えば、Cys−Pro−Phe−Cysからなるアミノ酸配列が例示される。この配列の一部、例えば、一番目のCys残基をSer残基に変えるとプロスタグランジンE合成酵素活性がなくなる。
このことは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、ストレス応答タンパクであるチオレドキシンのファミリーに属することを表している。このような構造は、従来のGSTファミリーに属するプロスタグランジンE合成酵素にはない特徴である。
但し、このCys−X−X−Cysという配列を有するチオレドキシンが、プロスタグランジンE合成酵素活性を有するというわけではなく、Cys−X−X−Cysという配列を有するタンパク質であれば、必ずしもプロスタグランジンE合成酵素活性を有するわけではない。
本発明者は、上記、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を含むアミノ配列を有し、且つ、プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質の構造を明らかにした。
タンパク質
本発明のタンパク質には、次のものが包含される。
・配列番号2、5又は7に記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
・配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
・配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を有するアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
・配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
ここで、配列番号2記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、サル由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素である。
配列番号5記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、ヒト由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素である。
配列番号7記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、マウス由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素である。
これらの配列番号2、5及び7に記載の配列によって表されるタンパク質のアミノ酸配列の相同性(BLAST法)は82%程度であって、これらの配列番号2、5及び7に記載の配列によって表されるタンパク質は、共通して、アミノ酸配列Cys−X−X−Cysで表される構造を有している。
この配列の一部、例えば、配列番号2に記載のタンパク質の110番目のCys残基をSer残基に変えると、プロスタグランジンE合成酵素活性がなくなる。従って、この部位は、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性における主要な構造と考えられる。
本発明のタンパク質には、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であって、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するものであれば、全てのタンパク質が包含される。その由来は特に限定されることはなく、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ラットなどの哺乳類由来のもの等が包含される。
また、本発明のタンパク質には、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表わされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
ここで、1若しくは複数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加とは、プロスタグランジンE合成酵素活性を失わない程度の変異の導入を意味する。この変異には、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列におけるCys−X−X−Cysという部分配列における変異は含まれない。
このような変異は、自然界において生じるほかに、人為的な変異も含む。人為的変異を生じさせる手段としては、部位特異的変異誘導法(Nucleic Acids Res.10,6487−6500,1982)などを挙げることができるが、これに限定されるわけではない。変異したアミノ酸の数は、プロスタグランジンE合成酵素活性を失わない限り、その個数は制限されないが、通常は20アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、更に好ましくは10アミノ酸以内であり、最も好ましくは5アミノ酸以内である。変異を導入したタンパク質がプロスタグランジンE合成酵素活性を維持しているかは、そのタンパク質が、プロスタグランジンHをプロスタグランジンEに異性化し得るか否かを調べることによって判定できる。
また、本発明のタンパク質には、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表わされるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような条件とは、通常、「1xSSC、0.1%SDS、37℃」程度であり、好ましくは「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度であり、更に好ましくは、「0.2xSSC、0.1%SDS、65℃」程度である。ハイブリダイゼーションによって得られるDNAは、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表わされるDNAと通常高い相同性を有する。ここで、高い相同性とは、60%以上の相同性、好ましくは75%以上の相同性、更に好ましくは90%以上の相同性を指す。
本発明のタンパク質は、例えば、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表わされるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリタイズするDNA配列を有する遺伝子をベクターに組み込み、適当な宿主細胞内で発現させる方法などによって得ることができる。ベクターとしては、適宜公知のものを選定して用いることができ、例えば、pTrc−HisAなどを用いることができる。宿主細胞も、公知のものを適宜選定して用いることができ、例えば、大腸菌BL21株などを用いることができる。
遺伝子
本発明の遺伝子は、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列は、サル由来の遺伝子である。
配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列は、ヒト由来の遺伝子である。
そして、配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列は、マウス由来の遺伝子である。
配列番号1、4及び6に記載の塩基配列は、全体でも高い相同性を有するが、活性部位周辺、つまりアミノ酸配列Cys−X−X−Cysに相当する部分では100%の相同性(BLAST法)を有しており、活性部位前部100塩基及び活性部位後部100塩基の双方で86%の相同性を有している。つまり、活性部位は塩基レベルで保存されていることになる。一方、N末端側100塩基では58%程度の相同性であった。また、イントロン及びエクソンの領域も共通していた。
本発明の遺伝子は、例えば、配列番号1、4及び6に記載の塩基配列を基に、DNAプライマーを作成し、ポリメラーゼ連鎖反応を利用して、クローン化することにより、得ることができる。これらの一連の操作は、市販のキットを用いて行うことができる。
融合タンパク質
膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を大量に発現させて取得することは、研究を効率よく行うために、必要とされる技術である。しかし、発現物の精製の困難性などから、上記活性を有する酵素を十分取得できない場合がある。また、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を多くのステップで精製した場合にも、活性は急激に減少する。よって短時間に、且つ少ないステップで精製する必要がある。
本発明者は、ヒスチジンタグドメインを有する融合タンパク質を作成し、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を効率よく取得することに成功した。
本発明の融合タンパク質には、以下のタンパク質が包含される。
・配列番号2、5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列のN末端より87個のアミノ酸残基が削除され、N末端に、ヒスチジン残基6つを有する、アフィニティカラムに親和性のあるアミノ酸配列が付加された、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する融合タンパク質。
・配列番号3記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
・配列番号3記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、かつ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
本発明の融合タンパク質を用いて、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を生産する方法としては、例えば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAをベクターに導入し、該ベクターを用いて形質転換させた大腸菌を培養して、培養後の大腸菌を集菌・破砕し、遠心した後、上清液をアフィニティクロマトカラムにより精製する方法などが挙げられる。
本発明の融合タンパク質を用いれば、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を、効率よく大量に取得することができる。また、アフィニティカラムにより精製を一段階で行うことができる。
ヒスチジンタグドメインを有する融合タンパク質を作成した場合、タグ部分により酵素活性が阻害され減少することがあるが、本発明の融合タンパク質においては、Km値が天然のものと同程度のものが取得でき、しかも、融合化による酵素としての損失がなく、天然物と近いフォームのものが得られる。
抗体
本発明の抗体とは、本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られるものである。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない。このことは、ウェスタンブロット法などを用いて、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応するが、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しないことを調べることによって、確認することができる。
本発明の抗体には、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と特異的に反応する抗体であれば、ポリクローナル抗体も、モノクローナル抗体も包含される。
モノクローナル抗体は、例えば、次のように製造される。本発明の蛋白質又はその部分ペプチドを抗原として免疫された温血動物、例えばマウスから、抗体価の認められる個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させ、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製する。該ハイブリドーマを培養して、抗体を産生し、適宜分離精製を行うことによって、モノクローナル抗体を得ることができる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法(Nature,256,495,1975)やその変法に従い、実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルス等が用いられる。また、本発明のモノクローナル抗体をヒト化抗体として用いてもよい。
ポリクローナル抗体は、例えば、次のように作成できる。蛋白質抗原自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、モノクローナル抗体の製造方法と同様に温血動物に免疫を行う。該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより、得ることができる。
上記抗体の製造に用いる温血動物の種類は特に限定されないが、例えば、ウサギ、マウス、ラットなどを用いることができる。
本発明の抗体を利用すれば、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を、免疫学的に検出することができる。検出方法としては、例えば、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法(ELISA)、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法等)、ウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、酵素免疫測定法、サンドイッチELISA法などが挙げられる。
例えば、本発明の抗体を用いてELIZA法を行い、試料中の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の量を決定することなどができる。また、本発明の抗体を用いて免疫染色法を行い、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を免疫学的に検出することなどができる。
また、本発明の抗体を、適宜製剤化し、診断薬又は疾患マーカーとして用いることもできる。例えば、健常者および被験者の細胞または組織に存在する膜結合型グルチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を、本発明の抗体を用いて検出し、該酵素の機能の解析を行うことや、該酵素の逸脱を調べ、疾患の病理解析、診断又は判定などを有効に行うことなどができる。具体的には、本発明の抗体を用いて、心臓組織における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現、逸脱、有無又は量を調べることによって、心筋梗塞などの心疾患の診断や判定、死因の解明などを有効に行うことができる。
心筋梗塞部位においては、ミオグロビンが心筋梗塞発症後最も早期に逸脱すると考えられており、心筋梗塞部位の診断には、通常、抗ミオグロビン抗体が用いられてきた。心筋梗塞の診断ガイドライン(J Am Coll Cardiol 2000;36:959−969)によると、ミオグロビンの逸脱が生じるのは心筋梗塞発症後1−4時間程度で、5時間位にピークに達する。
しかし、本発明者が、本発明の抗体を用いて調べた結果、ミオグロビンよりも、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の方が、心筋梗塞における逸脱又は消失が早期に起こることが明らかとなった。また、酵素の減少が顕著であることが明らかとなった。
従って、ミオグロビン抗体を用いるよりも、本発明の抗体を用いて検出を行う方が、心筋梗塞部位の判定などをより正確に且つ適切に行うことができる。
また、死後の検体の心臓組織を調べて死因の解明、例えば死因が心筋梗塞であったかどうかの判断を行う際は、抗ミオグロビン抗体を用いるよりも、本発明の抗体を用いて調べる方が、死因の解明をより正確にかつ適切に行うことができる。
プローブ
本発明の配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列又はその相補配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを用い、プローブとすることもできる。該プローブは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素検出用、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素特定用、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連疾患診断用などとして用いることができる。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連疾患としては、心筋梗塞などの心疾患や胃疾患などの各種疾患が挙げられる。
例えば、ヒト等の検体から、遺伝子試料(RNAまたはDNA)を調製し、前記プローブと遺伝子試料とのハイブリダイゼーションの程度を測定することによって疾患の診断などを行うことができる。ハイブリダイゼーションの程度を測定する方法としては、例えば、ノーザンブロット法、FISH法などが挙げられる。
また、該ポリヌクレオチドに、検出可能な標識を付して、該標識を検出してもよい。検出可能な標識は、当業者に周知のものから選択できる。例えば、アビジンおよびビオチン、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素(例えば、32Pおよび35S等)、蛍光標識等を用いることができる。
プローブとして用いるポリヌクレオチドとしては、特に配列番号8で表されるDNA配列を有するものが好ましい。該配列には、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の特徴的な配列を選択した。この配列は、データベースを検索し他の各種タンパク質との相同性が最も低い領域である。この領域を用いることによって、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を特異的に検出することが可能となる。
プローブの長さは特に限定されないが、通常15〜1200塩基、好ましくは25〜1000塩基、更に好ましくは40〜800塩基程度の長さである。
本発明のプローブは、疾患の検出乃至判定、予後の解析などに有効に用いることができる。
例えば、検体試料から調製したDNA又はRNAなどの遺伝子試料に、本発明のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定することにより、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が関与する疾患、例えば心疾患などの判定乃至診断などを行うことができる。プローブに結合する遺伝子を調べる方法としては、例えば、ノーザンブロット法やin siteハイブリダイゼーション法が挙げられる。結合やハイブリダイゼーションの条件は、適宜設定できるが、ストリンジェントな条件下で行うことが好ましい。
トランスジェニック非ヒト哺乳動物
本発明におけるトランスジェニック非ヒト動物とは、配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子を導入させて、遺伝子組換えにより作成されたヒト以外の哺乳動物のことをいう。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ウサギ、ラットなどが挙げられる。
トランスジェニック非ヒト動物を作成する方法としては、例えば、位相差顕微鏡下で前核期卵子の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法、レトロウィルスベクターまたはアデノウイルスベクターに遺伝子を挿入し、卵子に感染させる方法、または、精子を介して遺伝子を卵子に導入する精子ベクター法などが挙げられる。
受精卵細胞段階における遺伝子の導入は、対象動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように行うとよい。遺伝子導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明遺伝子が存在することは、作出動物の子孫が、その胚芽細胞及び体細胞の全てに、該遺伝子を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに該本発明の遺伝子を有する。
上記のように作成したトランスジェニック非ヒト動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該遺伝子保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することができる。さらに、目的遺伝子を保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つ雌雄の動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該外遺伝子を有するように繁殖継代することができる。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の機能解析などに利用することができる。また、安全性試験に用いる疾患モデル動物の開発などに利用することもできる。また、トランスジェニック非ヒト動物に被検物質を投与し、被検物質が、該トランスジェニック動物に対して与える影響を測定することにより、疾患の診断至治療に有効な物質のスクリーニングなどを行うこともできる。
ノックアウト非ヒト哺乳動物
本発明のノックアウト非ヒト哺乳動物とは、配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列を有するグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の機能が失われるように処理されたものである。非ヒト哺乳動物には、マウス、ウサギ、ラットなどのヒト以外の哺乳動物が含まれる。
該遺伝子の機能が失われたものであれば、全身の該遺伝子の機能が破壊された全身ノックアウト非ヒト哺乳動物でも、組織特異的に該遺伝子の機能が破壊された組織特異的ノックアウト非ヒト哺乳動物でもいずれでもよい。ノックアウト非ヒト哺乳動物には、例えば、ES細胞を用いて相同組換えを行い、一方の対立遺伝子を改変・破壊した胚性幹細胞を選別することにより、作製することができる。具体的に、例えば、非ヒト哺乳動物としてマウスを用いた場合には、受精卵の胚盤胞や桑実胚期に遺伝子を操作した胚性幹細胞を注入して、胚性幹細胞由来の細胞と胚由来の細胞が混ざったキメラマウスを得る。このキメラマウス(キメラとは、2個以上の受精卵に基づいた体細胞で形成される単一個体をいう)と正常マウスを交配すると、一方の対立遺伝子の全てが改変・破壊されたヘテロ接合体マウスを作製することができる。さらに、ヘテロ接合体マウス同士を交配することで、ホモ接合体マウス(ノックアウトマウス)を作製することができる。
本発明のノックアウト非ヒト哺乳動物は、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質の作用機序の予測、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質又は膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が関与すると予想される疾患の解明、並びに該蛋白質又は酵素が関与する疾患の予防乃至治療のための医薬品のスクリーニングや安全性試験に用いる疾患モデル動物の開発などのために、有効に用いることができる。
プロモーター
本発明のプロモーター活性を有するDNAは、配列番号9又は配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部で表れるDNA配列を有し、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の遺伝子発現を制御するDNAである。本発明には、該プロモーター活性を有するDNA、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAが含まれる。また、該プロモーター活性を有するDNA、レポーター酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAも含まれる。
該プロモーター、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを、宿主動物細胞のゲノム遺伝子中に導入することによって、選択した配列のプロモーター活性に応じて膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を生産することができる。また、該プロモーター、レポーター酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを、宿主動物細胞に導入すれば、宿主動物細胞内における該プロモーターの転写活性を測定することができる。
該プロモーター領域は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素翻訳領域の上流を探索し、上流と下流の塩基配列をもとにPCR法によってクローン化することによって得られる。
本発明者が、上記膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子の一部をプローブとして、鋭意探索を行った結果、配列番号9乃至10の配列を有する領域が、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子の発現を制御していること、即ち、プロモーター活性を有することが明らかとなった。特に、配列番号10に記載の塩基配列で表される領域は、配列番号9で表される領域を上流方向より順次削除し、プロモーター活性を測定することによって決定したプロモーター活性の高い領域である。
本発明のプロモーター活性を有するDNAには、配列番号9乃至10に記載の配列で表されるもののほか、配列番号9乃至10に示した塩基配列と一部分の塩基配列が異なるDNA、上記の塩基配列の一部からなるDNAまたは上記の塩基配列を少なくとも含んでいるDNAであって、上記プロモーターと同等の機能を有するもの、例えば、配列番号9乃至10に記載の配列において1乃至数個の塩基が欠失、付加又は置換した配列であって、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子のプロモーター活性を有するものが含まれる。
本発明には、上記プロモーター活性を有するDNA、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子及び/又はレポータータンパク質をコードする遺伝子、また必要によりターミネーター、シグナル配列、エンハンサー遺伝子などをベクターDNAに挿入した組み換え体DNAが含まれる。組み換え体DNAの構築は、適宜公知の方法に従って行うことができる。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子としては、上記本発明の遺伝子が好適に用いられる。
宿主動物に、該プロモーター、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを導入すれば、例えば遺伝子治療において、該プロモーターを制御することで、任意の組織や細胞において、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現を制御することができる。例えば、配列番号10に記載の塩基配列を有するプロモーター遺伝子は高い転写活性レベルを有することから、配列番号10の塩基配列を有するプロモーターに膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを宿主動物内に導入すれば、より高い転写活性により、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を通常レベルより効率よく生産することが可能となる。
また、本発明のプロモーター活性を有するDNAに、レポーター遺伝子、例えば、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を接合させて、プラスミド又は組み換え体DNAを作成し、該プラスミド又は組み換え体DNAを用いて、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素転写活性の測定や、各種化合物が転写活性に与える影響の測定などを行うことができる。
具体的には、次のように行う。まず、ホタルルシフェラーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子の上流に、配列番号9乃至10で表される塩基配列の全部又は一部を有し、かつプロモーター活性を有するDNA配列を有するDNAを挿入してプラスミドを作成する。このプラスミドを、遺伝子導入薬を用いて、哺乳類培養細胞に導入する。プラスミド導入後、1日乃至2日培養した細胞を破砕し、その発光活性を測定することにより、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子転写活性を測定することができる。
また、レポーター遺伝子とプロモーター活性を有するDNAを有するプラスミドを導入して作成した形質転換体の培養液中に、種々の化合物を添加して、それぞれの化合物を添加した場合の転写活性を測定することで、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子転写活性に及ぼす化合物の影響を評価することもできる。該方法を用いることにより、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤又は促進剤、或いは、心疾患の予防乃至治療薬の候補となる物質のスクリーニングを効率よく行うこともできる。
スクリーニング方法
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物は、該酵素が関与する疾患の予防乃至治療薬における有効成分となると考えられる。
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害或いは促進する化合物のスクリーニングは、例えば、以下のような(a)〜(c)の工程を有する方法によって行うことができる。
(a)候補化合物の存在下、本発明のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(b)候補化合物の非存在下、本発明のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(c)(a)及び(b)における変換率を比較する工程。
プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率は、以下の式から算出できる。
変換率=
([プロスタグランジンEの量(試料)]/[プロスタグランジンE以外のプロスタグランジン類の量(試料)+プロスタグランジンEの量(試料)])− ([プロスタグランジンEの量(コントロール)]/[プロスタグランジンE以外のプロスタグランジン類の量(コントロール)+プロスタグランジンの量(コントロール)])
=酵素反応後の[14C]PGE2部分の放射量/全体の[14C]放射量
また他のスクリーニング方法としては、次のような方法が挙げられる。
例えば、本発明の遺伝子、プロモーター、及び、該プロモーターにより発現され得るよう連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを含む系に、被検物質を添加し、レポーター遺伝子の発現を指標として、被検物質が膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子の発現の促進又は抑制に与える影響を測定する工程を含む、スクリーニング方法等が挙げられる。プロモーターとしては、上記に記載した、配列番号9又は10の塩基配列を有するプロモーター活性を有するDNAなどが好適に用いられる。
また、本発明の遺伝子を発現させたトランスジェニック非ヒト哺乳動物又は形質転換体、或いは本発明のノックアウト非ヒト動物に被検物質を投与し、該動物又は形質転換体に対して被検物質が与える影響を測定する工程を含むスクリーニング方法等も挙げられる。上記のようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物やノックアウト非ヒト哺乳動物を用いた場合には、被検物質の薬理作用や作用部位なども測定することができる。
診断乃至治療薬
プロスタグランジンEは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素により、プロスタグランジンHの異性化反応によって合成される。また、プロスタグランジンHは、COX−1酵素又はCOX−2酵素により、プロスタグランジンGから合成される。つまり、COX−1酵素、COX−2酵素は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の上位酵素にあたる。このCOX−2酵素の阻害薬が、関節炎治療薬として市販されている。しかしながら、この薬剤は、副作用として、心臓発作や動悸が起こり易いことが報告されている(Dowjones Newswires,Oct 30,2001)。このことから、COX−2酵素により合成されるプロスタグランジンH、或いはプロスタグランジンHを経て合成されるプロスタグランジンE、D、又はFが、心臓において重要な働きを有していることが示唆される。しかし、これまで、どのプロスタグランジンが、心臓の働きに重要であるかは明らかになっていなかった。
本発明者がノーザンブロットにより解析したところ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、他のプロスタグランジンE合成酵素に比べて、心臓での発現が顕著に多いことが明らかとなった。
また、本発明者が、本発明の抗体を用いて、ウエスタンブロット及び組織免疫染色を行ったところ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、心室心筋が最も収縮する左心室部位の上部外側により多く存在することが明らかとなった。
これらの結果は、プロスタグランジンEが心臓の機能に関し重要な役割を果たし、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が心臓の機能に重要な役割を有する酵素であることを示唆するものである。特に、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心筋の収縮弛緩を制御する酵素である可能性を示唆する。
このことから、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素又は膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を有する蛋白質は、適宜製剤化して用いることにより、心筋の収縮弛緩と関連する疾患又は心疾患に対する有効な診断乃至治療薬となることが示唆される。
また、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害乃至促進する化合物は、心疾患、心筋の収縮弛緩と関連する疾患の診断乃至治療薬、或いは心筋の運動を制御する薬剤などとして用い得ることが示唆される。
心疾患としては、例えば、心筋梗塞、心不全、不整脈、動悸、心筋症などが挙げられる。
また、プロスタグランジンEは、平滑筋の収縮や胃酸分泌の生理作用を惹起する生理活性物質である。本発明の抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体を用いて、胃組織の免疫学的な測定を行ったところ、胃では、特に前胃の組織表層の平滑筋や、後胃の固有腺などに、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が存在することが確認された。このことは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、胃の運動や消化機能に関与している可能性を示唆するものである。
このことから、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素又は膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を有する蛋白質は、適宜製剤化して用いることにより、胃の運動や消化機能に関与する疾患又は平滑筋が関与する疾患に対する有効な診断乃至治療薬となることが示唆される。
また、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害乃至促進する化合物も、胃の運動や消化機能に関与する疾患又は平滑筋が関与する疾患の診断乃至治療薬、或いは胃の筋肉組織の収縮弛緩を制御する薬剤等として用い得ることが示唆される。
本発明の診断乃至治療薬は、上記本発明の遺伝子、蛋白質、抗体、プローブ、または本発明のスクリーニング方法によって得られたプロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物又はその誘導体や構造類似化合物を、そのまま又は適宜製剤化することによって得ることができる。
本発明の診断乃至治療薬の対象となる疾患としては、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の存在や関与が示唆される部位、例えば、心臓、胃、腎臓、脾臓、肝臓、膵臓、精巣、卵巣、胎盤などの疾患が挙げられる。
本発明者が、上記のようなスクリーニング方法を行って、複数の化合物を調べた結果、エタクリン酸、及び、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンが、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害する効果を有することが明らかとなった。このことは、上記スクリーニング方法によって得られる化合物、例えば、エタクリン酸又は1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンなどは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤の有効成分の候補物質となることが示唆される。同様のスクリーニング方法により、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を促進する化合物、即ち膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素促進剤の有効成分の候補物質も探索できる。更に、上記スクリーニング方法によって得られた化合物、例えば、エタクリン酸又は1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンなどの誘導体や構造類似化合物を検討することによって、より強力な作用を有する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤、促進剤、或いは、疾患予防乃至治療薬が開発されることも示唆される。
また、プロモーター活性を有するDNA及びレポーター遺伝子を用いたスクリーニング方法を行って、複数の化合物について検討した結果、インターフェロンγが、転写活性を低下させることが明らかとなった。このことから、本発明のプロモーターを用いたスクリーニング方法によって得られた化合物、例えばインターフェロンγなどは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤の有効成分の候補物質となることが示唆される。同様のスクリーニング方法により、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を促進する化合物、即ち膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素促進剤の有効成分の候補物質も探索できる。さらに、上記スクリーニング方法によって得られた化合物、例えばインターフェロンγなどの類縁体や類似化合物を検討することによって、より強力に転写活性作用を有する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤、促進剤、或いは、疾患予防乃至治療薬を開発することも可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されることはない。
実施例1
ウシ心臓から膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を精製し、アミノ酸シークエンサによって、そのアミノ酸残基を、N−末端よりGlu− Arg− Ser− Ala− Thr− Asn− Leu− Ser− Leu− Ser− Ser− Arg− Leu− Asn− Leu− Thr− Leu− Tyr− Asn− Tyr− Lys− Thrと配列決定した。この配列をもとにGenebankのデータベースを検索し、ヒト由来遺伝子AK024100を発見した。更に、サル、マウスのcDNAライブラリーについても検索を行い、AK024100と相同性の高いサル由来の遺伝子、並びにマウス由来の遺伝子を発見した。
サル由来の遺伝子がコードするタンパク質を、pTrc−HisAベクター(インビトロジェン社製)を用い、大腸菌BL21に導入して、発現させた。
発現したタンパク質のプロスタグランジンE合成酵素活性を調べるために、次のような実験を行った。
40μM(マイクロモル)[1−14C]プロスタグランジンH 0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)、0.5mM DTT並びに得られたタンパク質を含んだ酵素活性測定系50μl(マイクロリットル)を24℃で1分間反応させた。次いで、ジエチルエーテルメタノール/1Mクエン酸(30/4/1)0.25ml(ミリリットル)を加え、反応を止めると同時にプロスタグランジン類を有機溶媒層に抽出し、薄層クロマトグラフィーを用いてベンゼン/ジオキサン/酢酸(20/20/0.1)溶媒によって展開した。プロスタグランジンEのスポット点とそれ以外のプロスタグランジン類のスポット点をラジオアイソトープで測定することにより、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換が行われるかを測定した。また、ネガティブコントロールとして、本発明のタンパク質を含まない系で同様の測定を行った。
さらにプロスタグランジンHの含量及びプロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を積算し、1分間あたりに換算することで、プロスタグランジンE合成酵素活性(1分間1mg(ミリグラム)あたりのプロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換量(nmol))を算出した。
その結果、得られたタンパク質のプロスタグランジンE合成酵素活性は、SH剤非存在下500nmole/min・mgであって、0.5mM(ミリモル)DTT存在下で2800nmole/min・mgであることが確認された。
図1に、ヒト、サル、マウス由来のタンパク質のアミノ酸配列の解析結果を表わす。これらの、ヒト、サル、マウス由来タンパクのアミノ酸配列の相同性をBLAST法で解析したところ、82%であった。また、これらの3つのタンパク質は、Cys−Pro−Phe−Cysに示される共通のアミノ酸配列部位を有していることが明らかとなった。
更に、サル由来のタンパク質(配列番号2に記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質)が有する、110番目からの、Cys−Pro−Phe−Cysという配列において、110番目のCys残基をSer残基に変え、上述と同様の方法でプロスタグランジンE合成活性を調べたところ、プロスタグランジンEが合成されなかった。この結果、Cys−Pro−Phe−Cysという配列の変化によって、プロスタグランジンE合成酵素活性が影響を受けることが確認された。
実施例2
AK024100遺伝子と相同な配列を有するサル由来の遺伝子を含むQccE−16688クローンをEcoRI/BamHIサイトで切り出し、pTrc−HisAベクターに挿入し、pT−PGESを作成した。次に、HindIII/BamHIサイトで切り出し、pcDNA3.1/HisCに挿入し、pcD−PGESを作成した。PCR法でPGES(プロスタグランジンE合成酵素)部分を切り出し、pCR2.1−TOP0ベクターに挿入し、pCR−PGESを作成した。最後にBamHI/EcoRIサイトで切り出し、pTrc−HisAベクターに挿入し、サル由来膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素全長を大腸菌で発現させるベクターpTH−PGESを作成した(図2に表す。)。
一方、QccE−16688クローンより、PCR法を用いて、N末端の87個のアミノ酸残基を削除したグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素部分を増幅し、次いで、pcDNA3.1/HisCに挿入し、pcD−PGESΔSを作成した。最後にBamHI/EcoRIサイトで切り出しpTrc−HisAベクターに挿入し、サル由来膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を大腸菌で発現させるベクターpTH−PGESΔSを作成した(図2に表す)。
作成された2つのベクター(pTH−PGESとpTH−PGESΔS)を、大腸菌BL21に導入して、形質転換体を作成し、組換え蛋白質を生産した。蛋白質の発現条件は、まず少量のLB培地において37℃で一昼夜培養後、150ml(ミリリットル)のLB培地に移し、37℃でOD(600nm)が0.1になるまで培養し、更に、IPTGを1mMとなるように加え、14時間培養を行った。(図3に表す)。
培養後、3000xgで20分間遠心、沈殿を回収した。沈殿は溶液(30mM(ミリモル)KPB,1M NaCl,0.5mM(ミリモル)DTT、1mM(ミリモル)peptatinA,1μg(マイクログラム)/ml(ミリリットル)PMSF、50μg(マイクログラム)/ml(ミリリットル)DNAse、50μg(マイクログラム)/ml(ミリリットル)RNase.pH7.0)に懸濁し、15秒間10回の超音波処理を施した。15000xgで30分間遠心し、上澄み液を回収した(図3に表す)。
上澄み液が10mM(ミリモル)イミダゾールとなるようにした後、Niアフィニティカラムに加え、カラムとの親和性の低いタンパクを10−140mM(ミリモル)イミダゾールで洗い流し、150mM(ミリモル)イミダゾールで膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素タンパク質を溶出させた(溶出曲線を図4に表す)。溶出タンパクが電気泳動上シングルバンドであることを確認した。
PTH−PGESΔSを用いたものは、pTH−PGESを用いたものと比較してタンパク質の収率が高く、150ml(ミリリットル)LB培地の培養液より精製タンパクが250−300μg(マイクログラム)得ることが出来た。
大腸菌での発現を比べると、pTH−PGESΔSを用いたものは、pTH−PGESを用いたものと比較して5.5倍程度、蛋白質の発現量が高かった。
また、得られた蛋白質の精製の様子を比較したところ、pTH−PGESΔSを用いて得られたタンパクは水に可溶化し、クロマトグラフィー等による精製が容易であったが、pTH−PGESを用いて得られたタンパクは水に不溶で、精製できなかった。
次いで、pTH−PGESΔS由来の精製膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素量とプロスタグランジンE合成酵素活性との相関を調べた。
プロスタグランジンE合成酵素活性は、実施例1に記載の方法と同様の方法で測定し、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率から酵素活性値を求めた(酵素活性値の単位nmol(ナノモル)/min・mgは、1分間1mgタンパク質あたりの変換量(PGE生成量)を示す。)その結果、得られた蛋白質はプロスタグランジンE合成酵素活性を有し、活性と蛋白質量は、直線関係にあった(図5▲に表す)。
実施例3
実施例2のpTH−PGESΔS由来の精製膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素蛋白質を熱処理すると、蛋白量0.1ng(ナノグラム)における該酵素活性は、5分の1以下に減少した(図5◆に表す)。
一方、プロスタグランジンE合成酵素活性の測定においてDTTを除くと、該酵素活性は約4分の1となった(図5■に表す)。このタンパク質についての酵素特性を解析したところ、最適pHは7付近(図6に表す)、km値はおよそ28μM(マイクロモル)であった。これは、精製されたウシ由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と同程度であった。
また、この蛋白質のプロスタグランジンE合成酵素活性が、グルタチオン非特異的であることを確認するために、DTT、グルタチオン、メルカプトエタノールの存在下、それらの量とプロスタグランジンE合成酵素活性の相関を調べた。その結果、グルタチオンより、DTT存在下で活性が高く,本酵素がグルタチオン非特異的であることが確認された。
また、0.5mM(ミリモル)DTT存在下において、最も高いプロスタグランジンE合成酵素活性を示すことがわかった(図7に表す)。
還元力の強いDTTがより効果的であることから、活性部位であるCys−X−X−CysにおけるS−S結合の開裂が活性発現に必須の要件であることが示唆される。
SH剤の濃度が必ずしもプロスタグランジンE合成酵素活性と比例関係にならないのは、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの異性化反応において、高濃度のDTTが、活性部位以外にも還元力を持つためと推測される。
実施例4
実施例2のpTH−PGESΔS由来の精製膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を抗原として、ウサギに免疫し、該免疫したウサギが産生する抗体を取得した。
該抗体の特異性を確認するために、ウエスタンブロットによる解析を行った。
まず、プロスタグランジンE合成活性があり、グルタチオン特異的酵素が発現しているCOS7細胞を調べたところ、該抗体が認識するバンドは見られなかった。一方、ポジティブコントロールとして用いた、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素(PGES)発現大腸菌及びPGES精製品ではバンドが検出された(図8)。これにより、本抗体が、グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は認識せず、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を認識することが明らかになった。
更に、実際に、この抗体で、細胞内のグルタチオン非特異的プロスタグランジンE酵素が認識できるかを確認するために、遺伝子レベルでの膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現をノーザンブロットで確認したHeLa細胞を用いて、ウエスタンブロットを行ったところ、該抗体が認識するバンドが検出された(図9)。これから、本発明の抗体が、細胞内の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の認識に有用であることが確認できた。
実施例5
実施例2で取得したタンパク質を用いて、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニングを行った。
まず、候補化合物の存在下、実施例2で取得したタンパク質6μg(マイクログラム)、5mM(ミリモル)DTT、プロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンE合成酵素活性を測定した。プロスタグランジンE合成酵素活性は、実施例1と同様の方法で、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換を測定した。
次に、候補化合物の非存在下、同様に、タンパク質6μg(マイクログラム)、5mM(ミリモル)DTT、プロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定した。候補化合物の存在下及び非存在下における、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を比較した。
その結果、エタクリン酸と、CDNB(1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン)を共存させた場合に、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率が低下し、プロスタグランジンE合成酵素活性が阻害されることがわかった。また、プロスタグランジンE合成酵素活性の阻害は、濃度依存的であり、100μM(マイクロモル)のエタクリン酸によって約30%阻害される。エタクリン酸の結果を図10に示す。CDNBも阻害効果が、見られたが、エタクリン酸においてより顕著な濃度依存的な酵素活性低下の阻害効果が見られた。
実施例6
実施例4で取得した抗グルタチオン非特異的プログラスタジンE合成酵素抗体を用いて、DAB(ジアミドベンチジン)染色により組織免疫法を行い、ヒト心臓を調べた。ヒト心臓としては、心臓内の左心室、左心房、右心室、右心房、大動脈、肺動脈の各部位を、組織の内から外にかけて切片化して用いた。
その結果、特に強い染色像が左心室心筋細胞、中でも血液を全身に送り出す重要部位である左心室の上部外側の心筋細胞で強い染色像が確認された。しかし、大動脈、肺動脈及び毛管壁では染色されなかった(図11−1)。
心臓では左心室心筋が収縮して全身に血液を送り出すが、この結果から、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心室心筋が最も収縮する左心室部位の上部外側により多く存在することが明らかとなり、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心筋の収縮に強く関与することが明らかとなった。
プロスタグランジンEは、平滑筋の収縮、弛緩に関与するホルモンであり、このことからも、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心筋の収縮に重要な関連を有することが示唆された。
一方、グルタチオン非特異的プログラスタジンE合成酵素遺伝子をアイソトープで放射性漂識し、胎児及び成人の心臓の遺伝子試料(クローンテック社製:カタログ番号7776−1、7780−1、7755−1)のmRNAとのハイブリダイゼーションを行った。その結果、左心室で、グルタチオン非特異的プログラスタジンE合成酵素遺伝子が多いことを確認した(図11−2)。
この結果からも、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、血液を送り出すなど激しい収縮運動を行う心筋細胞で、重要な機能を果たしていることが推測された。
実施例7
心筋梗塞で死亡したヒト心臓について、実施例6と同様の組織免疫を行った(図12)。ヒト心臓としては、死後1時間21分のものを用いた。また、染色液としては、HE(ヘマトキシリン−エオジン)を用いた。ヘマトキシリンは核を、また、エオジンは細胞質の成分を染める。細胞が心筋梗塞等で壊死に至る過程においては、細胞内のpHが低下し染色性が増加する。細胞がダメージを受けた部位では、早い段階ではヘマトキシンは変化せず、エオジンの染色が強く見られる。壊死後は時間の経過と共に、核が消失、細胞が繊維化し形態が破壊され染色像が見られなくなる。よって、HE染色されるのは、心筋梗塞に伴う壊死後の早い段階をさす。
このHEで染色した心臓を、実施例4で取得した本発明の抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体を用いた組織免疫法で調べたところ、HEで染色が強く見られる部位では、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体による染色像が認められなかった。
比較のために、同組織を抗ミオグロビン抗体(DAKOPATTS社製)で染色した。その結果、HEで強く染色が見られる部位において、染色像がわずかに見られ、心筋梗塞部位において、ミオグロビンの逸脱は、起こりつつあるが、完全ではないことが確認された。
このことから、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素はミオグロビンと比較して、心筋梗塞部位における消失の程度が顕著であって、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体を用いた場合の方が、抗ミオグロビン抗体を用いた場合よりも、心筋梗塞部位を、より正確に判定できることが明らかになった。
さらに比較として同組織を抗COX−1酵素抗体、抗COX−2酵素抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)で染色し、同様の測定を行った。その結果、HEで強く染色が見られる部位において染色像がわずかに見られ、心筋梗塞部位において、COX−1酵素、COX−2酵素の消失がおこりつつあるが、完全には消失していないことが確認された。
心筋梗塞部位において、プロスタグランジンH合成酵素であるCOX−1酵素、COX−2酵素よりも、プロスタグランジンE合成酵素がより早く消失することは、プロスタグランジンE合成酵素が、心臓機能と、より密接に関連していることを示唆している。
実施例8
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子の一部(配列番号8)をプローブとして、ヒトゲノムDNAライブラリーであるBACライブラリーをスクリーニング、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子が含まれる3つ(BAC 82A17,BAC 198A3,BAC 395P17)のクローンを決定した。さらに、いずれのクローンにもグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子が存在することをPCR法によって確認した。
また、Genebankのデータベースを検索した結果、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の完全長cDNAがAK057049に含まれ、翻訳開始点上流の531bに転写開始点があることが明らかとなった。さらにその上流約4.1kbpを特定した(図13;配列番号9参照)。この4.5kbpをクローン化するため、プライマー,PF1(TCC ATT TCC TGG ACA CCC TAG GTT CA)PR1(CAG CCG GGT CCA TGT TCG CT)を用いて、BAC 82A17をテンプレートとしたPCR法によって、翻訳開始点上流4646bpをクローン化した。この配列の上流より4116番目が転写開始点と予想された。これを市販のレポーター解析用ホタルルシフェラーゼ遺伝子ベクターpGV−E2に挿入し、pGV−PGES2(−4115)を作成した。このpGV−PGES2(−4115)を3種の哺乳類培養細胞(ヒト肺腫瘍由来A549細胞、ヒト子宮腫瘍由来HeLa細胞、ヒト腎臓腫瘍由来Hek293細胞)に遺伝子導入した。その結果、腫瘍由来細胞で高い転写活性が示されることが明らかとなった(図14参照)。特にA549細胞で高い転写活性が示され、HeLa細胞に比べて約6倍の活性を示した。これから、肺腫瘍細胞においてグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が特に高い転写効率を示すことが明らかとなった。
さらに、プロモーター領域中で、最も転写活性に寄与する領域を見つけるため、プロモーター領域を、上流から約1000−500bpを削除し、pGV−PGES2(−3131)、pGV−PGES2(−1932)、pGV−PGES2(−792)、pGV−PGES2(−7)を作成した。これらをA549細胞に導入した結果、pGV−PGES2(−7)を導入した細胞において、最も高い転写活性を示した(図15)。これらのことから、翻訳開始点より上流側約500塩基の間に、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を最も効率良く転写促進する配列が含まれていることが明らかとなった。
次に転写活性に及ぼす薬剤の影響を検討した。まず、pGV−PGES2(−4115)をHeLa細胞に導入し、安定発現株細胞を作成した。該培養細胞に、薬剤としてインターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン1β(IL−1β)、リポポリサッカライド(LPS)を加えて、転写活性(プロモーター活性)に及ぼす影響を調べた。IL−1βやLPSではプロモーター活性に変化は見られなかったが、IFN−γではプロモーター活性が減少した(図16)。
実施例9
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子の翻訳開始付近点からポリA尾部まで付着する付近部分までの遺伝子を、制限酵素部位(SalIとXhoI)を付加させた2つのプライマー(acg cgt cga caa cat ggc ccc ggc tac gcg)(ccg ctc aag cag gcg cca caa acc ttt cc)を用いて、PCR法によって増幅した。得られたフラグメントは約1.5kbpであった。これをPCRフラグメント挿入用の市販ベクターpGEM T−easyに挿入し配列を確認した(pGEM−PGES)。心臓特異的にタンパク質が発現するミオシン重鎖タンパク質プロモーター領域が挿入されたpMHCベクターとpGEM−PGESのSalIとXhoIを切断し、ミオシン重鎖タンパク質プロモーターの下流にグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子を挿入したプラスミドpMHC−PGESを作成した(図17)。図中のNotIとXhoIで切断することでミオシン重鎖タンパク質プロモーターの下流にグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子を配置したDNAフラグメントを取り出した。DNAフラグメントはマイクロインジェクション法によりマウス(系統;C57BL/6J)の前核期卵に導入した。注入胚数241個のうち201個が正常な形態を示したので、仮腹マウス8匹に移植した。移植後、67匹のマウスが誕生した。尻尾からゲノムDNAを抽出、PCR法によって、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子がゲノム中に挿入されているかを確認した結果,メス3匹のトランスジェニックマウスが確認された。更に、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子を心臓特異的に高発現しているトランスジェニックマウスが、正常マウスと同様な行動をとり、繁殖能力も備わっていることもわかった。
産業上の利用の可能性
本発明によって、哺乳類生物全般の局所ホルモンとして重要な生理機能乃至作用を持つプロスタグランジンEをグルタチオン非特異的に合成する酵素の構造が明らかとなった。該酵素は、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と高い相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を有するアミノ酸配列を有する。これは、グルタチオン特異的なプラスタグランジンE合成酵素にはない構造であって、この構造から得られる知見は、プロスタグランジンE及び該酵素の機能の解明に有用に利用し得るものである。
膜結合型グルタチオン非特異的膜結合型プロスタグランジンE合成酵素は、心臓や胃など生体内の種々の部位に存在し、重要な機能を担っている。従って、本発明の遺伝子、蛋白質、抗体、トランスジェニック動物又はプロモーターなどを利用した検討を行うことによって、該酵素が関与する各種疾患の診断や治療のために有用な手段が提供される。本発明においては、更に、膜結合型グルタチオン非特異的膜結合型プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニング方法も提供される。該スクリーニング法によって得られた化合物又はその誘導体や構造類似化合物を中心に探索することによって、心疾患をはじめとする各種疾患の有効な診断乃至治療薬の開発が可能となる。
このように、本発明は、生体内で重要な機能を有しているプラスタグランジンE又は該プロスタグランジンE合成酵素が関連する疾患の診断乃至治療に、新規かつ有用な手段を提供するものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、ヒト、サル及びマウス由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素一次構造の比較を示すものである。相補的なアミノ酸配列をアスタリスクで表示する。
図2は、大腸菌発現用膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素ベクターpTH−PGES及びpTH−PGESΔSの構成を示す図である。
図3は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現及び精製法の概要を示す図である。
図4は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素のアフィニティクロマトグラフィーの溶出曲線を示すものである。フラクション50−58の間に精製品が溶出している。
図5は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素量とプロスタグランジンE合成量の相関を示す図である。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を熱処理することによって活性は低下、またDTTを除くことで酵素活性は減少する。
図6は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の酵素活性のpH依存性を示す図である。
図7は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の酵素活性に及ぼすSH剤(DTT、GSH、メルカプトエタノール)の影響を示す図である。
図8は、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体による抗原認識のウエスタンブロット像を示す図である。図8のBはネガティブコントロールで、COS7細胞を用いている。C及びDは、ポジティブコントロールである。
図9は、遺伝子レベルでの膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現をノーザンブロットで確認したHeLa細胞を用いて、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体によるウエスタンブロットを行った結果を示す図面である。
図10は、エタクリン酸が及ぼすグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性阻害効果を示す図である。
図11−1は、本発明の抗体を用いて、組織化学的手法による免疫染色により、心臓を調べた結果を示す図面である。図11−2は、本発明のプローブを用いて、ノーザンブロット法により心臓における本発明の遺伝子発現を解析した結果を示す図面である。
図12は、心筋梗塞で死亡したヒト心臓について、組織免疫法を行い、HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色、並びに、本発明の抗体、抗ミオグロビン抗体、抗COX−1酵素抗体及び抗COX−2酵素抗体による染色を行った結果を示す図面である。
図13は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子のゲノム構造、クローン化されたプロモーター領域上流約4.5kb及び、挿入したレポーター遺伝子の構造である。
図14は、プロモーター領域上流約4.5kbを挿入したレポーター遺伝子を哺乳類細胞A543,HeLa、Hek293に導入し、48時間後の、3つの培養細胞での転写活性効率を表わした図である。
図15は、哺乳類細胞A543における転写活性領域を上流方向より削除した場合の転写活性効率の変化を表わした図である。
図16は、プロモーター領域上流約4.5kbを挿入したレポーター遺伝子を用いて作成した安定発現株化細胞HeLaに、インターフェロンγを投与した際の転写活性の変化を表わした図面である。
図17は、トランスジェニックマウスの作成に用いた遺伝子ベクターの構造を表わした図面である。
本発明は、ヒト、サル及びマウス等の哺乳類に存在すると考えられる膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質に主に関する。また該タンパク質をコードする遺伝子に主に関する。
本発明は、プロスタグランジンE又はグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に関連する疾患の診断又は治療のための有効な手段を提供するものである。
背 景 技 術
特許文献、一般文献及び書籍を含む、明細書に記載の全ての参考文献が、参照として、この出願に援用される(incorporated by references)。先行技術を構成するどの参考文献も含まれない(no admission)。参考文献の中で述べられている議論は、その著者の考えを述べるものであり、本願出願人は、該文献の正確さと適切さについて意見を述べる権利を有する。明細書中で多くの先行文献が参照されているが、この参照はこれらの文献が一般技術を形成することを認めるものではない。
プロスタグランジンEは、平滑筋の収縮、弛緩、体温調節、胃酸分泌、免疫反応の阻害などの生理作用を惹起する生理活性物質であって、多様な生理活性を持ち、痛覚過敏反応の誘引(KR Bley,JC Hunter,RM Eeglen,JAM Smith,Trends Pharmacol.Sci.(1998)19,141−147)、慢性間接リウマチ等での骨吸収亢進(T Akatsu,N Takahashi,U Udagawa,K Imamura,A Yamaguchi,K Sato,N Nagata,T Suda,J.Bone Miner.Res.(1991)6,183−190)などの病態に関与する。
プロスタグランジンEは、プロスタグランジンE合成酵素により、プロスタグランジンHが異性化されて合成される。
プロスタグランジンE合成酵素には、細胞質型グルタチオン特異的酵素、膜結合型グルタチオン非特異的酵素、及び膜結合型グルタチオン特異的酵素の3つのタイプが存在する。
細胞質型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、大脳の細胞質画分から発見され、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)ファミリーに属するタンパクである(T Tanioka,Y Nakatani,N Semmyo,M Murakami,I Kudo,J.Biol.Chem.(2000),275,32775−32782)。
膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、生殖器に多く存在する(K Watanabe,K Kurihara,Y Tokunaga,O Hayaishi,Biochem.Biophys.Res.Commun.(1997),1439,406−414.)。この酵素は、ジーンバンクより推定された膜結合型GSTを大腸菌内で発現させることによって、見出されている(PJ Jakobsson,S Thoren,R Moregenstern,B Samuelsson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999),96,7220−7225)。
一方、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、心臓、子宮、脾臓に多く存在する(K Watanabe,K Kurihara,Y Tokunaga,O Hayaishi,Biochem.Biophys.Res.Commun.(1997),1439,406−414.)。本酵素はジチオトレイトール、グルタチオン、β−メルカプトエタノールなどSH剤を要求するが、グルタチオン特異的ではない(K Watanabe,K Kurihara,T Suzuki,Biochim.Biophys,Acta(1999),1439,406−414)。
つまり、この酵素はグルタチオン非特異的である点で、他の2者のプロスタグランジンE合成酵素と異なった性質を有している。本酵素は未だクローニングされておらず、構造と機能との関係も未だ明らかとなっていなかった。
発 明 の 開 示
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、哺乳類のcDNAライブラリーに、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に該当する遺伝子情報が存在することを見出し、この情報をもとに、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質の構造を同定することに成功した。また、該遺伝子がコードするタンパク質を発現させて、その機能の解析を行い、該タンパク質が、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有することを、明らかにした。
さらに、該タンパク質を抗原とする抗体や、該遺伝子から取得されるプローブが、疾患、特に心疾患の診断に有用に用い得ることを見出し、更なる検討を重ねて、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は次の事項に関する。
1.以下(1)〜(4)のいずれかに記載されるタンパク質。
(1)配列番号2記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(2)配列番号2記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(3)配列番号2記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表され、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(4)配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
2.以下(5)〜(8)のいずれかに記載されるタンパク質。
(5)配列番号5記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(6)配列番号5記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(7)配列番号5記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表され、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(8)配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
3.以下(9)〜(12)のいずれかに記載されるタンパク質。
(9)配列番号7記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(10)配列番号7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列より表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(11)配列番号7記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表される、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(12)配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
4.配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
5.配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
6.配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
7.配列番号2、5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列のN末端より87個のアミノ酸残基が削除され、N末端に、ヒスチジン残基6つを有する、アフィニティカラムに親和性のあるアミノ酸配列が付加された、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する融合タンパク質。
8.以下、(13)〜(14)のいずれかに記載されるタンパク質。
(13)配列番号3記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(14)配列番号3記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、かつ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
9.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子をベクターに導入し、該ベクターを用いて形質転換させた形質転換体を培養し、培養液から得られるタンパク質を精製することによって、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を生産する方法。
10.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体。
11.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を免疫学的に検出する工程を有する酵素の検出方法。
12.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を含有する疾患の検出乃至診断薬。
13.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を含有する心疾患の検出乃至診断薬。
14.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、検体から調製した試料における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の逸脱、有無又は量を調べる工程を有する疾患の検出乃至判定方法。
15.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、検体の心臓から調製した試料における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の逸脱、有無又は量を調べる工程を有する心疾患の検出乃至判定方法。
16.配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列又はその相補配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連プローブ
17.配列番号8記載の塩基配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドからなる、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連プローブ。
18.検体試料から調製した試料に、項16又は17のいずれかに記載のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定する工程を有する疾患の検出乃至判定方法。
19.検体試料の心組織から調製した試料に、項16又は17のいずれかに記載のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定する工程を有する心疾患の検出乃至判定方法。
20.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
21.項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子を欠損させたノックアウト非ヒト哺乳動物。
22.下記(a)〜(c)の工程を有する、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニング方法。
(a)候補化合物の存在下、項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(b)候補化合物の非存在下、項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(c)(a)及び(b)における変換率を比較する工程。
23.配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA。
24.(a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子を含んでなる組み換え体DNA。
25.(a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含んでなる組み換え体DNA。
26.項24又は25に記載の組み換え体DNAを宿主細胞のゲノム遺伝子中に導入してなる形質転換体。
27.項24又は25に記載の組み換え体DNAを宿主細胞のゲノム遺伝子中に導入してなる形質転換体を培地に培養し、該形質転換体が産生する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質を採取する工程を含む蛋白質の製造法。
28.(a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)該プロモーターにより発現され得るよう連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを含む系に、被検物質を添加し、レポーター遺伝子の発現を指標として、被検物質が膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質の発現の促進又は抑制に与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
29.配列番号1,4又は6に記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有する遺伝子を発現可能に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物または形質転換体に被検物質を投与し、該動物又は形質転換体に対して被検物質が与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
30.配列番号1,4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有する遺伝子を欠損させたノックアウト非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、該ノックアウト非ヒト動物に対して被検物質が与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
31.項1,2,3,7又は8のいずれかに記載のタンパク質を有効成分として含有する疾患の診断乃至治療薬。
32.項28〜30のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする疾患の診断乃至治療薬。
33.項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物またはその誘導体を有効成分とする心疾患の診断乃至治療薬。
34.項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤。
35.項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性促進剤。
以下、本発明を詳細に説明する.
プロスタグランジンEは血管拡張剤として有名で、プロスタグランジンHを異性化することによって生成される。プロスタグランジンE合成酵素は、この際、異性化酵素として作用する。
プロスタグランジンE合成酵素の1種である、グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、プロスタグランジンE合成に際し、グルタチオンを要求する。グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は、GSTファミリーに属し、GST活性を有している。
これに対し、本発明の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、グルタチオン非特異的にプロスタグランジンEを合成する。
この、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、構造的にも、グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素と大きく異なっていることが明らかとなった。
本発明で構造が明らかにされた、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、チオレドキシンファミリーに特徴的な配列である、Cys−X−X−Cysからなるアミノ酸の部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有している。Cys−X−X−Cysからなるアミノ酸の部分配列としては、例えば、Cys−Pro−Phe−Cysからなるアミノ酸配列が例示される。この配列の一部、例えば、一番目のCys残基をSer残基に変えるとプロスタグランジンE合成酵素活性がなくなる。
このことは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、ストレス応答タンパクであるチオレドキシンのファミリーに属することを表している。このような構造は、従来のGSTファミリーに属するプロスタグランジンE合成酵素にはない特徴である。
但し、このCys−X−X−Cysという配列を有するチオレドキシンが、プロスタグランジンE合成酵素活性を有するというわけではなく、Cys−X−X−Cysという配列を有するタンパク質であれば、必ずしもプロスタグランジンE合成酵素活性を有するわけではない。
本発明者は、上記、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を含むアミノ配列を有し、且つ、プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質の構造を明らかにした。
タンパク質
本発明のタンパク質には、次のものが包含される。
・配列番号2、5又は7に記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
・配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
・配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を有するアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
・配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
ここで、配列番号2記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、サル由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素である。
配列番号5記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、ヒト由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素である。
配列番号7記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質は、マウス由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素である。
これらの配列番号2、5及び7に記載の配列によって表されるタンパク質のアミノ酸配列の相同性(BLAST法)は82%程度であって、これらの配列番号2、5及び7に記載の配列によって表されるタンパク質は、共通して、アミノ酸配列Cys−X−X−Cysで表される構造を有している。
この配列の一部、例えば、配列番号2に記載のタンパク質の110番目のCys残基をSer残基に変えると、プロスタグランジンE合成酵素活性がなくなる。従って、この部位は、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性における主要な構造と考えられる。
本発明のタンパク質には、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であって、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するものであれば、全てのタンパク質が包含される。その由来は特に限定されることはなく、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ラットなどの哺乳類由来のもの等が包含される。
また、本発明のタンパク質には、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表わされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
ここで、1若しくは複数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加とは、プロスタグランジンE合成酵素活性を失わない程度の変異の導入を意味する。この変異には、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列におけるCys−X−X−Cysという部分配列における変異は含まれない。
このような変異は、自然界において生じるほかに、人為的な変異も含む。人為的変異を生じさせる手段としては、部位特異的変異誘導法(Nucleic Acids Res.10,6487−6500,1982)などを挙げることができるが、これに限定されるわけではない。変異したアミノ酸の数は、プロスタグランジンE合成酵素活性を失わない限り、その個数は制限されないが、通常は20アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、更に好ましくは10アミノ酸以内であり、最も好ましくは5アミノ酸以内である。変異を導入したタンパク質がプロスタグランジンE合成酵素活性を維持しているかは、そのタンパク質が、プロスタグランジンHをプロスタグランジンEに異性化し得るか否かを調べることによって判定できる。
また、本発明のタンパク質には、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表わされるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような条件とは、通常、「1xSSC、0.1%SDS、37℃」程度であり、好ましくは「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度であり、更に好ましくは、「0.2xSSC、0.1%SDS、65℃」程度である。ハイブリダイゼーションによって得られるDNAは、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表わされるDNAと通常高い相同性を有する。ここで、高い相同性とは、60%以上の相同性、好ましくは75%以上の相同性、更に好ましくは90%以上の相同性を指す。
本発明のタンパク質は、例えば、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表わされるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリタイズするDNA配列を有する遺伝子をベクターに組み込み、適当な宿主細胞内で発現させる方法などによって得ることができる。ベクターとしては、適宜公知のものを選定して用いることができ、例えば、pTrc−HisAなどを用いることができる。宿主細胞も、公知のものを適宜選定して用いることができ、例えば、大腸菌BL21株などを用いることができる。
遺伝子
本発明の遺伝子は、配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列は、サル由来の遺伝子である。
配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列は、ヒト由来の遺伝子である。
そして、配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列は、マウス由来の遺伝子である。
配列番号1、4及び6に記載の塩基配列は、全体でも高い相同性を有するが、活性部位周辺、つまりアミノ酸配列Cys−X−X−Cysに相当する部分では100%の相同性(BLAST法)を有しており、活性部位前部100塩基及び活性部位後部100塩基の双方で86%の相同性を有している。つまり、活性部位は塩基レベルで保存されていることになる。一方、N末端側100塩基では58%程度の相同性であった。また、イントロン及びエクソンの領域も共通していた。
本発明の遺伝子は、例えば、配列番号1、4及び6に記載の塩基配列を基に、DNAプライマーを作成し、ポリメラーゼ連鎖反応を利用して、クローン化することにより、得ることができる。これらの一連の操作は、市販のキットを用いて行うことができる。
融合タンパク質
膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を大量に発現させて取得することは、研究を効率よく行うために、必要とされる技術である。しかし、発現物の精製の困難性などから、上記活性を有する酵素を十分取得できない場合がある。また、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を多くのステップで精製した場合にも、活性は急激に減少する。よって短時間に、且つ少ないステップで精製する必要がある。
本発明者は、ヒスチジンタグドメインを有する融合タンパク質を作成し、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を効率よく取得することに成功した。
本発明の融合タンパク質には、以下のタンパク質が包含される。
・配列番号2、5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列のN末端より87個のアミノ酸残基が削除され、N末端に、ヒスチジン残基6つを有する、アフィニティカラムに親和性のあるアミノ酸配列が付加された、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する融合タンパク質。
・配列番号3記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
・配列番号3記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、かつ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
本発明の融合タンパク質を用いて、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を生産する方法としては、例えば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAをベクターに導入し、該ベクターを用いて形質転換させた大腸菌を培養して、培養後の大腸菌を集菌・破砕し、遠心した後、上清液をアフィニティクロマトカラムにより精製する方法などが挙げられる。
本発明の融合タンパク質を用いれば、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を、効率よく大量に取得することができる。また、アフィニティカラムにより精製を一段階で行うことができる。
ヒスチジンタグドメインを有する融合タンパク質を作成した場合、タグ部分により酵素活性が阻害され減少することがあるが、本発明の融合タンパク質においては、Km値が天然のものと同程度のものが取得でき、しかも、融合化による酵素としての損失がなく、天然物と近いフォームのものが得られる。
抗体
本発明の抗体とは、本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られるものである。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない。このことは、ウェスタンブロット法などを用いて、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応するが、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しないことを調べることによって、確認することができる。
本発明の抗体には、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と特異的に反応する抗体であれば、ポリクローナル抗体も、モノクローナル抗体も包含される。
モノクローナル抗体は、例えば、次のように製造される。本発明の蛋白質又はその部分ペプチドを抗原として免疫された温血動物、例えばマウスから、抗体価の認められる個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させ、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製する。該ハイブリドーマを培養して、抗体を産生し、適宜分離精製を行うことによって、モノクローナル抗体を得ることができる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法(Nature,256,495,1975)やその変法に従い、実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルス等が用いられる。また、本発明のモノクローナル抗体をヒト化抗体として用いてもよい。
ポリクローナル抗体は、例えば、次のように作成できる。蛋白質抗原自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、モノクローナル抗体の製造方法と同様に温血動物に免疫を行う。該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより、得ることができる。
上記抗体の製造に用いる温血動物の種類は特に限定されないが、例えば、ウサギ、マウス、ラットなどを用いることができる。
本発明の抗体を利用すれば、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を、免疫学的に検出することができる。検出方法としては、例えば、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法(ELISA)、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法等)、ウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、酵素免疫測定法、サンドイッチELISA法などが挙げられる。
例えば、本発明の抗体を用いてELIZA法を行い、試料中の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の量を決定することなどができる。また、本発明の抗体を用いて免疫染色法を行い、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を免疫学的に検出することなどができる。
また、本発明の抗体を、適宜製剤化し、診断薬又は疾患マーカーとして用いることもできる。例えば、健常者および被験者の細胞または組織に存在する膜結合型グルチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を、本発明の抗体を用いて検出し、該酵素の機能の解析を行うことや、該酵素の逸脱を調べ、疾患の病理解析、診断又は判定などを有効に行うことなどができる。具体的には、本発明の抗体を用いて、心臓組織における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現、逸脱、有無又は量を調べることによって、心筋梗塞などの心疾患の診断や判定、死因の解明などを有効に行うことができる。
心筋梗塞部位においては、ミオグロビンが心筋梗塞発症後最も早期に逸脱すると考えられており、心筋梗塞部位の診断には、通常、抗ミオグロビン抗体が用いられてきた。心筋梗塞の診断ガイドライン(J Am Coll Cardiol 2000;36:959−969)によると、ミオグロビンの逸脱が生じるのは心筋梗塞発症後1−4時間程度で、5時間位にピークに達する。
しかし、本発明者が、本発明の抗体を用いて調べた結果、ミオグロビンよりも、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の方が、心筋梗塞における逸脱又は消失が早期に起こることが明らかとなった。また、酵素の減少が顕著であることが明らかとなった。
従って、ミオグロビン抗体を用いるよりも、本発明の抗体を用いて検出を行う方が、心筋梗塞部位の判定などをより正確に且つ適切に行うことができる。
また、死後の検体の心臓組織を調べて死因の解明、例えば死因が心筋梗塞であったかどうかの判断を行う際は、抗ミオグロビン抗体を用いるよりも、本発明の抗体を用いて調べる方が、死因の解明をより正確にかつ適切に行うことができる。
プローブ
本発明の配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列又はその相補配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを用い、プローブとすることもできる。該プローブは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素検出用、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素特定用、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連疾患診断用などとして用いることができる。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連疾患としては、心筋梗塞などの心疾患や胃疾患などの各種疾患が挙げられる。
例えば、ヒト等の検体から、遺伝子試料(RNAまたはDNA)を調製し、前記プローブと遺伝子試料とのハイブリダイゼーションの程度を測定することによって疾患の診断などを行うことができる。ハイブリダイゼーションの程度を測定する方法としては、例えば、ノーザンブロット法、FISH法などが挙げられる。
また、該ポリヌクレオチドに、検出可能な標識を付して、該標識を検出してもよい。検出可能な標識は、当業者に周知のものから選択できる。例えば、アビジンおよびビオチン、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素(例えば、32Pおよび35S等)、蛍光標識等を用いることができる。
プローブとして用いるポリヌクレオチドとしては、特に配列番号8で表されるDNA配列を有するものが好ましい。該配列には、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の特徴的な配列を選択した。この配列は、データベースを検索し他の各種タンパク質との相同性が最も低い領域である。この領域を用いることによって、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を特異的に検出することが可能となる。
プローブの長さは特に限定されないが、通常15〜1200塩基、好ましくは25〜1000塩基、更に好ましくは40〜800塩基程度の長さである。
本発明のプローブは、疾患の検出乃至判定、予後の解析などに有効に用いることができる。
例えば、検体試料から調製したDNA又はRNAなどの遺伝子試料に、本発明のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定することにより、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が関与する疾患、例えば心疾患などの判定乃至診断などを行うことができる。プローブに結合する遺伝子を調べる方法としては、例えば、ノーザンブロット法やin siteハイブリダイゼーション法が挙げられる。結合やハイブリダイゼーションの条件は、適宜設定できるが、ストリンジェントな条件下で行うことが好ましい。
トランスジェニック非ヒト哺乳動物
本発明におけるトランスジェニック非ヒト動物とは、配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子を導入させて、遺伝子組換えにより作成されたヒト以外の哺乳動物のことをいう。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ウサギ、ラットなどが挙げられる。
トランスジェニック非ヒト動物を作成する方法としては、例えば、位相差顕微鏡下で前核期卵子の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法、レトロウィルスベクターまたはアデノウイルスベクターに遺伝子を挿入し、卵子に感染させる方法、または、精子を介して遺伝子を卵子に導入する精子ベクター法などが挙げられる。
受精卵細胞段階における遺伝子の導入は、対象動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように行うとよい。遺伝子導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明遺伝子が存在することは、作出動物の子孫が、その胚芽細胞及び体細胞の全てに、該遺伝子を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに該本発明の遺伝子を有する。
上記のように作成したトランスジェニック非ヒト動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該遺伝子保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することができる。さらに、目的遺伝子を保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つ雌雄の動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該外遺伝子を有するように繁殖継代することができる。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の機能解析などに利用することができる。また、安全性試験に用いる疾患モデル動物の開発などに利用することもできる。また、トランスジェニック非ヒト動物に被検物質を投与し、被検物質が、該トランスジェニック動物に対して与える影響を測定することにより、疾患の診断至治療に有効な物質のスクリーニングなどを行うこともできる。
ノックアウト非ヒト哺乳動物
本発明のノックアウト非ヒト哺乳動物とは、配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列を有するグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の機能が失われるように処理されたものである。非ヒト哺乳動物には、マウス、ウサギ、ラットなどのヒト以外の哺乳動物が含まれる。
該遺伝子の機能が失われたものであれば、全身の該遺伝子の機能が破壊された全身ノックアウト非ヒト哺乳動物でも、組織特異的に該遺伝子の機能が破壊された組織特異的ノックアウト非ヒト哺乳動物でもいずれでもよい。ノックアウト非ヒト哺乳動物には、例えば、ES細胞を用いて相同組換えを行い、一方の対立遺伝子を改変・破壊した胚性幹細胞を選別することにより、作製することができる。具体的に、例えば、非ヒト哺乳動物としてマウスを用いた場合には、受精卵の胚盤胞や桑実胚期に遺伝子を操作した胚性幹細胞を注入して、胚性幹細胞由来の細胞と胚由来の細胞が混ざったキメラマウスを得る。このキメラマウス(キメラとは、2個以上の受精卵に基づいた体細胞で形成される単一個体をいう)と正常マウスを交配すると、一方の対立遺伝子の全てが改変・破壊されたヘテロ接合体マウスを作製することができる。さらに、ヘテロ接合体マウス同士を交配することで、ホモ接合体マウス(ノックアウトマウス)を作製することができる。
本発明のノックアウト非ヒト哺乳動物は、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質の作用機序の予測、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質又は膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が関与すると予想される疾患の解明、並びに該蛋白質又は酵素が関与する疾患の予防乃至治療のための医薬品のスクリーニングや安全性試験に用いる疾患モデル動物の開発などのために、有効に用いることができる。
プロモーター
本発明のプロモーター活性を有するDNAは、配列番号9又は配列番号10に記載の塩基配列の全部又は一部で表れるDNA配列を有し、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の遺伝子発現を制御するDNAである。本発明には、該プロモーター活性を有するDNA、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAが含まれる。また、該プロモーター活性を有するDNA、レポーター酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAも含まれる。
該プロモーター、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを、宿主動物細胞のゲノム遺伝子中に導入することによって、選択した配列のプロモーター活性に応じて膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を生産することができる。また、該プロモーター、レポーター酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを、宿主動物細胞に導入すれば、宿主動物細胞内における該プロモーターの転写活性を測定することができる。
該プロモーター領域は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素翻訳領域の上流を探索し、上流と下流の塩基配列をもとにPCR法によってクローン化することによって得られる。
本発明者が、上記膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子の一部をプローブとして、鋭意探索を行った結果、配列番号9乃至10の配列を有する領域が、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子の発現を制御していること、即ち、プロモーター活性を有することが明らかとなった。特に、配列番号10に記載の塩基配列で表される領域は、配列番号9で表される領域を上流方向より順次削除し、プロモーター活性を測定することによって決定したプロモーター活性の高い領域である。
本発明のプロモーター活性を有するDNAには、配列番号9乃至10に記載の配列で表されるもののほか、配列番号9乃至10に示した塩基配列と一部分の塩基配列が異なるDNA、上記の塩基配列の一部からなるDNAまたは上記の塩基配列を少なくとも含んでいるDNAであって、上記プロモーターと同等の機能を有するもの、例えば、配列番号9乃至10に記載の配列において1乃至数個の塩基が欠失、付加又は置換した配列であって、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子のプロモーター活性を有するものが含まれる。
本発明には、上記プロモーター活性を有するDNA、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子及び/又はレポータータンパク質をコードする遺伝子、また必要によりターミネーター、シグナル配列、エンハンサー遺伝子などをベクターDNAに挿入した組み換え体DNAが含まれる。組み換え体DNAの構築は、適宜公知の方法に従って行うことができる。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子としては、上記本発明の遺伝子が好適に用いられる。
宿主動物に、該プロモーター、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを導入すれば、例えば遺伝子治療において、該プロモーターを制御することで、任意の組織や細胞において、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現を制御することができる。例えば、配列番号10に記載の塩基配列を有するプロモーター遺伝子は高い転写活性レベルを有することから、配列番号10の塩基配列を有するプロモーターに膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを宿主動物内に導入すれば、より高い転写活性により、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を通常レベルより効率よく生産することが可能となる。
また、本発明のプロモーター活性を有するDNAに、レポーター遺伝子、例えば、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を接合させて、プラスミド又は組み換え体DNAを作成し、該プラスミド又は組み換え体DNAを用いて、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素転写活性の測定や、各種化合物が転写活性に与える影響の測定などを行うことができる。
具体的には、次のように行う。まず、ホタルルシフェラーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子の上流に、配列番号9乃至10で表される塩基配列の全部又は一部を有し、かつプロモーター活性を有するDNA配列を有するDNAを挿入してプラスミドを作成する。このプラスミドを、遺伝子導入薬を用いて、哺乳類培養細胞に導入する。プラスミド導入後、1日乃至2日培養した細胞を破砕し、その発光活性を測定することにより、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子転写活性を測定することができる。
また、レポーター遺伝子とプロモーター活性を有するDNAを有するプラスミドを導入して作成した形質転換体の培養液中に、種々の化合物を添加して、それぞれの化合物を添加した場合の転写活性を測定することで、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子転写活性に及ぼす化合物の影響を評価することもできる。該方法を用いることにより、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤又は促進剤、或いは、心疾患の予防乃至治療薬の候補となる物質のスクリーニングを効率よく行うこともできる。
スクリーニング方法
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物は、該酵素が関与する疾患の予防乃至治療薬における有効成分となると考えられる。
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害或いは促進する化合物のスクリーニングは、例えば、以下のような(a)〜(c)の工程を有する方法によって行うことができる。
(a)候補化合物の存在下、本発明のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(b)候補化合物の非存在下、本発明のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(c)(a)及び(b)における変換率を比較する工程。
プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率は、以下の式から算出できる。
変換率=
([プロスタグランジンEの量(試料)]/[プロスタグランジンE以外のプロスタグランジン類の量(試料)+プロスタグランジンEの量(試料)])− ([プロスタグランジンEの量(コントロール)]/[プロスタグランジンE以外のプロスタグランジン類の量(コントロール)+プロスタグランジンの量(コントロール)])
=酵素反応後の[14C]PGE2部分の放射量/全体の[14C]放射量
また他のスクリーニング方法としては、次のような方法が挙げられる。
例えば、本発明の遺伝子、プロモーター、及び、該プロモーターにより発現され得るよう連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを含む系に、被検物質を添加し、レポーター遺伝子の発現を指標として、被検物質が膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子の発現の促進又は抑制に与える影響を測定する工程を含む、スクリーニング方法等が挙げられる。プロモーターとしては、上記に記載した、配列番号9又は10の塩基配列を有するプロモーター活性を有するDNAなどが好適に用いられる。
また、本発明の遺伝子を発現させたトランスジェニック非ヒト哺乳動物又は形質転換体、或いは本発明のノックアウト非ヒト動物に被検物質を投与し、該動物又は形質転換体に対して被検物質が与える影響を測定する工程を含むスクリーニング方法等も挙げられる。上記のようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物やノックアウト非ヒト哺乳動物を用いた場合には、被検物質の薬理作用や作用部位なども測定することができる。
診断乃至治療薬
プロスタグランジンEは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素により、プロスタグランジンHの異性化反応によって合成される。また、プロスタグランジンHは、COX−1酵素又はCOX−2酵素により、プロスタグランジンGから合成される。つまり、COX−1酵素、COX−2酵素は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の上位酵素にあたる。このCOX−2酵素の阻害薬が、関節炎治療薬として市販されている。しかしながら、この薬剤は、副作用として、心臓発作や動悸が起こり易いことが報告されている(Dowjones Newswires,Oct 30,2001)。このことから、COX−2酵素により合成されるプロスタグランジンH、或いはプロスタグランジンHを経て合成されるプロスタグランジンE、D、又はFが、心臓において重要な働きを有していることが示唆される。しかし、これまで、どのプロスタグランジンが、心臓の働きに重要であるかは明らかになっていなかった。
本発明者がノーザンブロットにより解析したところ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、他のプロスタグランジンE合成酵素に比べて、心臓での発現が顕著に多いことが明らかとなった。
また、本発明者が、本発明の抗体を用いて、ウエスタンブロット及び組織免疫染色を行ったところ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素は、心室心筋が最も収縮する左心室部位の上部外側により多く存在することが明らかとなった。
これらの結果は、プロスタグランジンEが心臓の機能に関し重要な役割を果たし、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が心臓の機能に重要な役割を有する酵素であることを示唆するものである。特に、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心筋の収縮弛緩を制御する酵素である可能性を示唆する。
このことから、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素又は膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を有する蛋白質は、適宜製剤化して用いることにより、心筋の収縮弛緩と関連する疾患又は心疾患に対する有効な診断乃至治療薬となることが示唆される。
また、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害乃至促進する化合物は、心疾患、心筋の収縮弛緩と関連する疾患の診断乃至治療薬、或いは心筋の運動を制御する薬剤などとして用い得ることが示唆される。
心疾患としては、例えば、心筋梗塞、心不全、不整脈、動悸、心筋症などが挙げられる。
また、プロスタグランジンEは、平滑筋の収縮や胃酸分泌の生理作用を惹起する生理活性物質である。本発明の抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体を用いて、胃組織の免疫学的な測定を行ったところ、胃では、特に前胃の組織表層の平滑筋や、後胃の固有腺などに、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が存在することが確認された。このことは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、胃の運動や消化機能に関与している可能性を示唆するものである。
このことから、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素又は膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を有する蛋白質は、適宜製剤化して用いることにより、胃の運動や消化機能に関与する疾患又は平滑筋が関与する疾患に対する有効な診断乃至治療薬となることが示唆される。
また、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害乃至促進する化合物も、胃の運動や消化機能に関与する疾患又は平滑筋が関与する疾患の診断乃至治療薬、或いは胃の筋肉組織の収縮弛緩を制御する薬剤等として用い得ることが示唆される。
本発明の診断乃至治療薬は、上記本発明の遺伝子、蛋白質、抗体、プローブ、または本発明のスクリーニング方法によって得られたプロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物又はその誘導体や構造類似化合物を、そのまま又は適宜製剤化することによって得ることができる。
本発明の診断乃至治療薬の対象となる疾患としては、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の存在や関与が示唆される部位、例えば、心臓、胃、腎臓、脾臓、肝臓、膵臓、精巣、卵巣、胎盤などの疾患が挙げられる。
本発明者が、上記のようなスクリーニング方法を行って、複数の化合物を調べた結果、エタクリン酸、及び、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンが、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を阻害する効果を有することが明らかとなった。このことは、上記スクリーニング方法によって得られる化合物、例えば、エタクリン酸又は1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンなどは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤の有効成分の候補物質となることが示唆される。同様のスクリーニング方法により、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を促進する化合物、即ち膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素促進剤の有効成分の候補物質も探索できる。更に、上記スクリーニング方法によって得られた化合物、例えば、エタクリン酸又は1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンなどの誘導体や構造類似化合物を検討することによって、より強力な作用を有する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤、促進剤、或いは、疾患予防乃至治療薬が開発されることも示唆される。
また、プロモーター活性を有するDNA及びレポーター遺伝子を用いたスクリーニング方法を行って、複数の化合物について検討した結果、インターフェロンγが、転写活性を低下させることが明らかとなった。このことから、本発明のプロモーターを用いたスクリーニング方法によって得られた化合物、例えばインターフェロンγなどは、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤の有効成分の候補物質となることが示唆される。同様のスクリーニング方法により、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を促進する化合物、即ち膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素促進剤の有効成分の候補物質も探索できる。さらに、上記スクリーニング方法によって得られた化合物、例えばインターフェロンγなどの類縁体や類似化合物を検討することによって、より強力に転写活性作用を有する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤、促進剤、或いは、疾患予防乃至治療薬を開発することも可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されることはない。
実施例1
ウシ心臓から膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を精製し、アミノ酸シークエンサによって、そのアミノ酸残基を、N−末端よりGlu− Arg− Ser− Ala− Thr− Asn− Leu− Ser− Leu− Ser− Ser− Arg− Leu− Asn− Leu− Thr− Leu− Tyr− Asn− Tyr− Lys− Thrと配列決定した。この配列をもとにGenebankのデータベースを検索し、ヒト由来遺伝子AK024100を発見した。更に、サル、マウスのcDNAライブラリーについても検索を行い、AK024100と相同性の高いサル由来の遺伝子、並びにマウス由来の遺伝子を発見した。
サル由来の遺伝子がコードするタンパク質を、pTrc−HisAベクター(インビトロジェン社製)を用い、大腸菌BL21に導入して、発現させた。
発現したタンパク質のプロスタグランジンE合成酵素活性を調べるために、次のような実験を行った。
40μM(マイクロモル)[1−14C]プロスタグランジンH 0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)、0.5mM DTT並びに得られたタンパク質を含んだ酵素活性測定系50μl(マイクロリットル)を24℃で1分間反応させた。次いで、ジエチルエーテルメタノール/1Mクエン酸(30/4/1)0.25ml(ミリリットル)を加え、反応を止めると同時にプロスタグランジン類を有機溶媒層に抽出し、薄層クロマトグラフィーを用いてベンゼン/ジオキサン/酢酸(20/20/0.1)溶媒によって展開した。プロスタグランジンEのスポット点とそれ以外のプロスタグランジン類のスポット点をラジオアイソトープで測定することにより、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換が行われるかを測定した。また、ネガティブコントロールとして、本発明のタンパク質を含まない系で同様の測定を行った。
さらにプロスタグランジンHの含量及びプロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を積算し、1分間あたりに換算することで、プロスタグランジンE合成酵素活性(1分間1mg(ミリグラム)あたりのプロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換量(nmol))を算出した。
その結果、得られたタンパク質のプロスタグランジンE合成酵素活性は、SH剤非存在下500nmole/min・mgであって、0.5mM(ミリモル)DTT存在下で2800nmole/min・mgであることが確認された。
図1に、ヒト、サル、マウス由来のタンパク質のアミノ酸配列の解析結果を表わす。これらの、ヒト、サル、マウス由来タンパクのアミノ酸配列の相同性をBLAST法で解析したところ、82%であった。また、これらの3つのタンパク質は、Cys−Pro−Phe−Cysに示される共通のアミノ酸配列部位を有していることが明らかとなった。
更に、サル由来のタンパク質(配列番号2に記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質)が有する、110番目からの、Cys−Pro−Phe−Cysという配列において、110番目のCys残基をSer残基に変え、上述と同様の方法でプロスタグランジンE合成活性を調べたところ、プロスタグランジンEが合成されなかった。この結果、Cys−Pro−Phe−Cysという配列の変化によって、プロスタグランジンE合成酵素活性が影響を受けることが確認された。
実施例2
AK024100遺伝子と相同な配列を有するサル由来の遺伝子を含むQccE−16688クローンをEcoRI/BamHIサイトで切り出し、pTrc−HisAベクターに挿入し、pT−PGESを作成した。次に、HindIII/BamHIサイトで切り出し、pcDNA3.1/HisCに挿入し、pcD−PGESを作成した。PCR法でPGES(プロスタグランジンE合成酵素)部分を切り出し、pCR2.1−TOP0ベクターに挿入し、pCR−PGESを作成した。最後にBamHI/EcoRIサイトで切り出し、pTrc−HisAベクターに挿入し、サル由来膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素全長を大腸菌で発現させるベクターpTH−PGESを作成した(図2に表す。)。
一方、QccE−16688クローンより、PCR法を用いて、N末端の87個のアミノ酸残基を削除したグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素部分を増幅し、次いで、pcDNA3.1/HisCに挿入し、pcD−PGESΔSを作成した。最後にBamHI/EcoRIサイトで切り出しpTrc−HisAベクターに挿入し、サル由来膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を大腸菌で発現させるベクターpTH−PGESΔSを作成した(図2に表す)。
作成された2つのベクター(pTH−PGESとpTH−PGESΔS)を、大腸菌BL21に導入して、形質転換体を作成し、組換え蛋白質を生産した。蛋白質の発現条件は、まず少量のLB培地において37℃で一昼夜培養後、150ml(ミリリットル)のLB培地に移し、37℃でOD(600nm)が0.1になるまで培養し、更に、IPTGを1mMとなるように加え、14時間培養を行った。(図3に表す)。
培養後、3000xgで20分間遠心、沈殿を回収した。沈殿は溶液(30mM(ミリモル)KPB,1M NaCl,0.5mM(ミリモル)DTT、1mM(ミリモル)peptatinA,1μg(マイクログラム)/ml(ミリリットル)PMSF、50μg(マイクログラム)/ml(ミリリットル)DNAse、50μg(マイクログラム)/ml(ミリリットル)RNase.pH7.0)に懸濁し、15秒間10回の超音波処理を施した。15000xgで30分間遠心し、上澄み液を回収した(図3に表す)。
上澄み液が10mM(ミリモル)イミダゾールとなるようにした後、Niアフィニティカラムに加え、カラムとの親和性の低いタンパクを10−140mM(ミリモル)イミダゾールで洗い流し、150mM(ミリモル)イミダゾールで膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素タンパク質を溶出させた(溶出曲線を図4に表す)。溶出タンパクが電気泳動上シングルバンドであることを確認した。
PTH−PGESΔSを用いたものは、pTH−PGESを用いたものと比較してタンパク質の収率が高く、150ml(ミリリットル)LB培地の培養液より精製タンパクが250−300μg(マイクログラム)得ることが出来た。
大腸菌での発現を比べると、pTH−PGESΔSを用いたものは、pTH−PGESを用いたものと比較して5.5倍程度、蛋白質の発現量が高かった。
また、得られた蛋白質の精製の様子を比較したところ、pTH−PGESΔSを用いて得られたタンパクは水に可溶化し、クロマトグラフィー等による精製が容易であったが、pTH−PGESを用いて得られたタンパクは水に不溶で、精製できなかった。
次いで、pTH−PGESΔS由来の精製膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素量とプロスタグランジンE合成酵素活性との相関を調べた。
プロスタグランジンE合成酵素活性は、実施例1に記載の方法と同様の方法で測定し、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率から酵素活性値を求めた(酵素活性値の単位nmol(ナノモル)/min・mgは、1分間1mgタンパク質あたりの変換量(PGE生成量)を示す。)その結果、得られた蛋白質はプロスタグランジンE合成酵素活性を有し、活性と蛋白質量は、直線関係にあった(図5▲に表す)。
実施例3
実施例2のpTH−PGESΔS由来の精製膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素蛋白質を熱処理すると、蛋白量0.1ng(ナノグラム)における該酵素活性は、5分の1以下に減少した(図5◆に表す)。
一方、プロスタグランジンE合成酵素活性の測定においてDTTを除くと、該酵素活性は約4分の1となった(図5■に表す)。このタンパク質についての酵素特性を解析したところ、最適pHは7付近(図6に表す)、km値はおよそ28μM(マイクロモル)であった。これは、精製されたウシ由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と同程度であった。
また、この蛋白質のプロスタグランジンE合成酵素活性が、グルタチオン非特異的であることを確認するために、DTT、グルタチオン、メルカプトエタノールの存在下、それらの量とプロスタグランジンE合成酵素活性の相関を調べた。その結果、グルタチオンより、DTT存在下で活性が高く,本酵素がグルタチオン非特異的であることが確認された。
また、0.5mM(ミリモル)DTT存在下において、最も高いプロスタグランジンE合成酵素活性を示すことがわかった(図7に表す)。
還元力の強いDTTがより効果的であることから、活性部位であるCys−X−X−CysにおけるS−S結合の開裂が活性発現に必須の要件であることが示唆される。
SH剤の濃度が必ずしもプロスタグランジンE合成酵素活性と比例関係にならないのは、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの異性化反応において、高濃度のDTTが、活性部位以外にも還元力を持つためと推測される。
実施例4
実施例2のpTH−PGESΔS由来の精製膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を抗原として、ウサギに免疫し、該免疫したウサギが産生する抗体を取得した。
該抗体の特異性を確認するために、ウエスタンブロットによる解析を行った。
まず、プロスタグランジンE合成活性があり、グルタチオン特異的酵素が発現しているCOS7細胞を調べたところ、該抗体が認識するバンドは見られなかった。一方、ポジティブコントロールとして用いた、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素(PGES)発現大腸菌及びPGES精製品ではバンドが検出された(図8)。これにより、本抗体が、グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素は認識せず、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を認識することが明らかになった。
更に、実際に、この抗体で、細胞内のグルタチオン非特異的プロスタグランジンE酵素が認識できるかを確認するために、遺伝子レベルでの膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現をノーザンブロットで確認したHeLa細胞を用いて、ウエスタンブロットを行ったところ、該抗体が認識するバンドが検出された(図9)。これから、本発明の抗体が、細胞内の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の認識に有用であることが確認できた。
実施例5
実施例2で取得したタンパク質を用いて、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニングを行った。
まず、候補化合物の存在下、実施例2で取得したタンパク質6μg(マイクログラム)、5mM(ミリモル)DTT、プロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンE合成酵素活性を測定した。プロスタグランジンE合成酵素活性は、実施例1と同様の方法で、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換を測定した。
次に、候補化合物の非存在下、同様に、タンパク質6μg(マイクログラム)、5mM(ミリモル)DTT、プロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定した。候補化合物の存在下及び非存在下における、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を比較した。
その結果、エタクリン酸と、CDNB(1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン)を共存させた場合に、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率が低下し、プロスタグランジンE合成酵素活性が阻害されることがわかった。また、プロスタグランジンE合成酵素活性の阻害は、濃度依存的であり、100μM(マイクロモル)のエタクリン酸によって約30%阻害される。エタクリン酸の結果を図10に示す。CDNBも阻害効果が、見られたが、エタクリン酸においてより顕著な濃度依存的な酵素活性低下の阻害効果が見られた。
実施例6
実施例4で取得した抗グルタチオン非特異的プログラスタジンE合成酵素抗体を用いて、DAB(ジアミドベンチジン)染色により組織免疫法を行い、ヒト心臓を調べた。ヒト心臓としては、心臓内の左心室、左心房、右心室、右心房、大動脈、肺動脈の各部位を、組織の内から外にかけて切片化して用いた。
その結果、特に強い染色像が左心室心筋細胞、中でも血液を全身に送り出す重要部位である左心室の上部外側の心筋細胞で強い染色像が確認された。しかし、大動脈、肺動脈及び毛管壁では染色されなかった(図11−1)。
心臓では左心室心筋が収縮して全身に血液を送り出すが、この結果から、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心室心筋が最も収縮する左心室部位の上部外側により多く存在することが明らかとなり、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心筋の収縮に強く関与することが明らかとなった。
プロスタグランジンEは、平滑筋の収縮、弛緩に関与するホルモンであり、このことからも、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、心筋の収縮に重要な関連を有することが示唆された。
一方、グルタチオン非特異的プログラスタジンE合成酵素遺伝子をアイソトープで放射性漂識し、胎児及び成人の心臓の遺伝子試料(クローンテック社製:カタログ番号7776−1、7780−1、7755−1)のmRNAとのハイブリダイゼーションを行った。その結果、左心室で、グルタチオン非特異的プログラスタジンE合成酵素遺伝子が多いことを確認した(図11−2)。
この結果からも、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が、血液を送り出すなど激しい収縮運動を行う心筋細胞で、重要な機能を果たしていることが推測された。
実施例7
心筋梗塞で死亡したヒト心臓について、実施例6と同様の組織免疫を行った(図12)。ヒト心臓としては、死後1時間21分のものを用いた。また、染色液としては、HE(ヘマトキシリン−エオジン)を用いた。ヘマトキシリンは核を、また、エオジンは細胞質の成分を染める。細胞が心筋梗塞等で壊死に至る過程においては、細胞内のpHが低下し染色性が増加する。細胞がダメージを受けた部位では、早い段階ではヘマトキシンは変化せず、エオジンの染色が強く見られる。壊死後は時間の経過と共に、核が消失、細胞が繊維化し形態が破壊され染色像が見られなくなる。よって、HE染色されるのは、心筋梗塞に伴う壊死後の早い段階をさす。
このHEで染色した心臓を、実施例4で取得した本発明の抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体を用いた組織免疫法で調べたところ、HEで染色が強く見られる部位では、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体による染色像が認められなかった。
比較のために、同組織を抗ミオグロビン抗体(DAKOPATTS社製)で染色した。その結果、HEで強く染色が見られる部位において、染色像がわずかに見られ、心筋梗塞部位において、ミオグロビンの逸脱は、起こりつつあるが、完全ではないことが確認された。
このことから、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素はミオグロビンと比較して、心筋梗塞部位における消失の程度が顕著であって、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体を用いた場合の方が、抗ミオグロビン抗体を用いた場合よりも、心筋梗塞部位を、より正確に判定できることが明らかになった。
さらに比較として同組織を抗COX−1酵素抗体、抗COX−2酵素抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)で染色し、同様の測定を行った。その結果、HEで強く染色が見られる部位において染色像がわずかに見られ、心筋梗塞部位において、COX−1酵素、COX−2酵素の消失がおこりつつあるが、完全には消失していないことが確認された。
心筋梗塞部位において、プロスタグランジンH合成酵素であるCOX−1酵素、COX−2酵素よりも、プロスタグランジンE合成酵素がより早く消失することは、プロスタグランジンE合成酵素が、心臓機能と、より密接に関連していることを示唆している。
実施例8
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子の一部(配列番号8)をプローブとして、ヒトゲノムDNAライブラリーであるBACライブラリーをスクリーニング、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子が含まれる3つ(BAC 82A17,BAC 198A3,BAC 395P17)のクローンを決定した。さらに、いずれのクローンにもグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子が存在することをPCR法によって確認した。
また、Genebankのデータベースを検索した結果、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の完全長cDNAがAK057049に含まれ、翻訳開始点上流の531bに転写開始点があることが明らかとなった。さらにその上流約4.1kbpを特定した(図13;配列番号9参照)。この4.5kbpをクローン化するため、プライマー,PF1(TCC ATT TCC TGG ACA CCC TAG GTT CA)PR1(CAG CCG GGT CCA TGT TCG CT)を用いて、BAC 82A17をテンプレートとしたPCR法によって、翻訳開始点上流4646bpをクローン化した。この配列の上流より4116番目が転写開始点と予想された。これを市販のレポーター解析用ホタルルシフェラーゼ遺伝子ベクターpGV−E2に挿入し、pGV−PGES2(−4115)を作成した。このpGV−PGES2(−4115)を3種の哺乳類培養細胞(ヒト肺腫瘍由来A549細胞、ヒト子宮腫瘍由来HeLa細胞、ヒト腎臓腫瘍由来Hek293細胞)に遺伝子導入した。その結果、腫瘍由来細胞で高い転写活性が示されることが明らかとなった(図14参照)。特にA549細胞で高い転写活性が示され、HeLa細胞に比べて約6倍の活性を示した。これから、肺腫瘍細胞においてグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素が特に高い転写効率を示すことが明らかとなった。
さらに、プロモーター領域中で、最も転写活性に寄与する領域を見つけるため、プロモーター領域を、上流から約1000−500bpを削除し、pGV−PGES2(−3131)、pGV−PGES2(−1932)、pGV−PGES2(−792)、pGV−PGES2(−7)を作成した。これらをA549細胞に導入した結果、pGV−PGES2(−7)を導入した細胞において、最も高い転写活性を示した(図15)。これらのことから、翻訳開始点より上流側約500塩基の間に、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を最も効率良く転写促進する配列が含まれていることが明らかとなった。
次に転写活性に及ぼす薬剤の影響を検討した。まず、pGV−PGES2(−4115)をHeLa細胞に導入し、安定発現株細胞を作成した。該培養細胞に、薬剤としてインターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン1β(IL−1β)、リポポリサッカライド(LPS)を加えて、転写活性(プロモーター活性)に及ぼす影響を調べた。IL−1βやLPSではプロモーター活性に変化は見られなかったが、IFN−γではプロモーター活性が減少した(図16)。
実施例9
グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子の翻訳開始付近点からポリA尾部まで付着する付近部分までの遺伝子を、制限酵素部位(SalIとXhoI)を付加させた2つのプライマー(acg cgt cga caa cat ggc ccc ggc tac gcg)(ccg ctc aag cag gcg cca caa acc ttt cc)を用いて、PCR法によって増幅した。得られたフラグメントは約1.5kbpであった。これをPCRフラグメント挿入用の市販ベクターpGEM T−easyに挿入し配列を確認した(pGEM−PGES)。心臓特異的にタンパク質が発現するミオシン重鎖タンパク質プロモーター領域が挿入されたpMHCベクターとpGEM−PGESのSalIとXhoIを切断し、ミオシン重鎖タンパク質プロモーターの下流にグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子を挿入したプラスミドpMHC−PGESを作成した(図17)。図中のNotIとXhoIで切断することでミオシン重鎖タンパク質プロモーターの下流にグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子を配置したDNAフラグメントを取り出した。DNAフラグメントはマイクロインジェクション法によりマウス(系統;C57BL/6J)の前核期卵に導入した。注入胚数241個のうち201個が正常な形態を示したので、仮腹マウス8匹に移植した。移植後、67匹のマウスが誕生した。尻尾からゲノムDNAを抽出、PCR法によって、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子がゲノム中に挿入されているかを確認した結果,メス3匹のトランスジェニックマウスが確認された。更に、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子を心臓特異的に高発現しているトランスジェニックマウスが、正常マウスと同様な行動をとり、繁殖能力も備わっていることもわかった。
産業上の利用の可能性
本発明によって、哺乳類生物全般の局所ホルモンとして重要な生理機能乃至作用を持つプロスタグランジンEをグルタチオン非特異的に合成する酵素の構造が明らかとなった。該酵素は、配列番号2、5又は7記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と高い相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列を有するアミノ酸配列を有する。これは、グルタチオン特異的なプラスタグランジンE合成酵素にはない構造であって、この構造から得られる知見は、プロスタグランジンE及び該酵素の機能の解明に有用に利用し得るものである。
膜結合型グルタチオン非特異的膜結合型プロスタグランジンE合成酵素は、心臓や胃など生体内の種々の部位に存在し、重要な機能を担っている。従って、本発明の遺伝子、蛋白質、抗体、トランスジェニック動物又はプロモーターなどを利用した検討を行うことによって、該酵素が関与する各種疾患の診断や治療のために有用な手段が提供される。本発明においては、更に、膜結合型グルタチオン非特異的膜結合型プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニング方法も提供される。該スクリーニング法によって得られた化合物又はその誘導体や構造類似化合物を中心に探索することによって、心疾患をはじめとする各種疾患の有効な診断乃至治療薬の開発が可能となる。
このように、本発明は、生体内で重要な機能を有しているプラスタグランジンE又は該プロスタグランジンE合成酵素が関連する疾患の診断乃至治療に、新規かつ有用な手段を提供するものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、ヒト、サル及びマウス由来の膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素一次構造の比較を示すものである。相補的なアミノ酸配列をアスタリスクで表示する。
図2は、大腸菌発現用膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素ベクターpTH−PGES及びpTH−PGESΔSの構成を示す図である。
図3は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現及び精製法の概要を示す図である。
図4は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素のアフィニティクロマトグラフィーの溶出曲線を示すものである。フラクション50−58の間に精製品が溶出している。
図5は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素量とプロスタグランジンE合成量の相関を示す図である。膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を熱処理することによって活性は低下、またDTTを除くことで酵素活性は減少する。
図6は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の酵素活性のpH依存性を示す図である。
図7は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の酵素活性に及ぼすSH剤(DTT、GSH、メルカプトエタノール)の影響を示す図である。
図8は、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体による抗原認識のウエスタンブロット像を示す図である。図8のBはネガティブコントロールで、COS7細胞を用いている。C及びDは、ポジティブコントロールである。
図9は、遺伝子レベルでの膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の発現をノーザンブロットで確認したHeLa細胞を用いて、抗膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素抗体によるウエスタンブロットを行った結果を示す図面である。
図10は、エタクリン酸が及ぼすグルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性阻害効果を示す図である。
図11−1は、本発明の抗体を用いて、組織化学的手法による免疫染色により、心臓を調べた結果を示す図面である。図11−2は、本発明のプローブを用いて、ノーザンブロット法により心臓における本発明の遺伝子発現を解析した結果を示す図面である。
図12は、心筋梗塞で死亡したヒト心臓について、組織免疫法を行い、HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色、並びに、本発明の抗体、抗ミオグロビン抗体、抗COX−1酵素抗体及び抗COX−2酵素抗体による染色を行った結果を示す図面である。
図13は、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素遺伝子のゲノム構造、クローン化されたプロモーター領域上流約4.5kb及び、挿入したレポーター遺伝子の構造である。
図14は、プロモーター領域上流約4.5kbを挿入したレポーター遺伝子を哺乳類細胞A543,HeLa、Hek293に導入し、48時間後の、3つの培養細胞での転写活性効率を表わした図である。
図15は、哺乳類細胞A543における転写活性領域を上流方向より削除した場合の転写活性効率の変化を表わした図である。
図16は、プロモーター領域上流約4.5kbを挿入したレポーター遺伝子を用いて作成した安定発現株化細胞HeLaに、インターフェロンγを投与した際の転写活性の変化を表わした図面である。
図17は、トランスジェニックマウスの作成に用いた遺伝子ベクターの構造を表わした図面である。
Claims (35)
- 以下(1)〜(4)のいずれかに記載されるタンパク質。
(1)配列番号2記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(2)配列番号2記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(3)配列番号2記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表され、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(4)配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。 - 以下(5)〜(8)のいずれかに記載されるタンパク質。
(5)配列番号5記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(6)配列番号5記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(7)配列番号5記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表され、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(8)配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。 - 以下(9)〜(12)のいずれかに記載されるタンパク質。
(9)配列番号7記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(10)配列番号7記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列より表され、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(11)配列番号7記載のアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有し、且つ、Cys−X−X−Cysからなる部分配列(ここでXは任意のアミノ酸残基を表す。)を有するアミノ酸配列により表される、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。
(12)配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされ、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。 - 配列番号1記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
- 配列番号4記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
- 配列番号6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
- 配列番号2、5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列のN末端より87個のアミノ酸残基が削除され、N末端に、ヒスチジン残基6つを有する、アフィニティカラムに親和性のあるアミノ酸配列が付加された、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する融合タンパク質。
- 以下、(13)〜(14)のいずれかに記載されるタンパク質。
(13)配列番号3記載のアミノ酸配列によって表されるタンパク質。
(14)配列番号3記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列により表され、かつ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質。 - 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は請求項4〜6のいずれかに記載の遺伝子をベクターに導入し、該ベクターを用いて形質転換させた形質転換体を培養し、培養液から得られるタンパク質を精製することによって、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質を生産する方法。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、細胞又は組織内に発現する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素を免疫学的に検出する工程を有する酵素の検出方法。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を含有する疾患の検出乃至診断薬。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を含有する心疾患の検出乃至診断薬。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、検体から調製した試料における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の逸脱、有無又は量を調べる工程を有する疾患の検出乃至判定方法。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質又はその部分ペプチドを抗原として得られ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素と反応し、膜結合型グルタチオン特異的プロスタグランジンE合成酵素とは反応しない、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素に特異的な抗体を用いて、検体の心臓から調製した試料における、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素の逸脱、有無又は量を調べる工程を有する心疾患の検出乃至判定方法。
- 配列番号1、4又は6のいずれかに記載の塩基配列又はその相補配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連プローブ。
- 配列番号8記載の塩基配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドからなる、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素関連プローブ。
- 検体試料から調製した試料に、請求項16又は17のいずれかに記載のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定する工程を有する疾患の検出乃至判定方法。
- 検体試料の心組織から調製した試料に、請求項16又は17のいずれかに記載のプローブを接触させて、プローブと結合する遺伝子の有無又は量を測定する工程を有する心疾患の検出乃至判定方法。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は請求項4〜6のいずれかに記載の遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
- 請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子又は請求項4〜6のいずれかに記載の遺伝子を欠損させたノックアウト非ヒト哺乳動物。
- 下記(a)〜(c)の工程を有する、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を増強又は阻害する化合物のスクリーニング方法。
(a)候補化合物の存在下、請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(b)候補化合物の非存在下、請求項1、2、3、7又は8のいずれかに記載のタンパク質及びプロスタグランジンHを共存させて、プロスタグランジンHからプロスタグランジンEへの変換率を測定する工程、
(c)(a)及び(b)における変換率を比較する工程。 - 配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA。
- (a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素をコードする遺伝子を含んでなる組み換え体DNA。
- (a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)配列番号1、4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有し、且つ、グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含んでなる組み換え体DNA。
- 請求項24又は25に記載の組み換え体DNAを宿主細胞のゲノム遺伝子中に導入してなる形質転換体。
- 請求項24又は25に記載の組み換え体DNAを宿主細胞のゲノム遺伝子中に導入してなる形質転換体を培地に培養し、該形質転換体が産生する膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質を採取する工程を含む蛋白質の製造法。
- (a)配列番号9又は10に記載の塩基配列の全部又は一部を有し、且つ、膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素プロモーター活性を有するDNA、及び(b)該プロモーターにより発現され得るよう連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを含む系に、被検物質を添加し、レポーター遺伝子の発現を指標として、被検物質が膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性を有する蛋白質の発現の促進又は抑制に与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
- 配列番号1,4又は6に記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有する遺伝子を発現可能に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物または形質転換体に被検物質を投与し、該動物又は形質転換体に対して被検物質が与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
- 配列番号1,4又は6記載の塩基配列により表されるDNA配列又はその相補配列又はこれらのDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列を有する遺伝子を欠損させたノックアウト非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、該ノックアウト非ヒト動物に対して被検物質が与える影響を測定することを含む、疾患の診断乃至治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
- 請求項1,2,3,7又は8のいずれかに記載のタンパク質を有効成分として含有する疾患の診断乃至治療薬。
- 請求項28〜30のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする疾患の診断乃至治療薬。
- 請求項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物またはその誘導体を有効成分とする心疾患の診断乃至治療薬。
- 請求項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素阻害剤。
- 請求項28〜30に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物又はその誘導体を有効成分とする膜結合型グルタチオン非特異的プロスタグランジンE合成酵素活性促進剤。
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