JPWO2003028476A1 - 新規の家禽用酵素組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、新規の家禽用酵素組成物に関する。
背景技術
近年、鶏、豚、及び牛等の畜産分野において、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、又はイソマルトオリゴ糖の少なくとも1つを配合した飼料が既に提供されている。これらのオリゴ糖を飼料に配合することにより、畜産動物の飼養成績又は生産性を向上させる方法が提案されている。例えば、特公平3−27186号公報には、フラクトオリゴ糖を繁殖用雌豚飼料に0.1〜5重量部配合することにより、雌豚の発情再帰日数を短縮させることができることが開示されている。特開平6−276960号公報には、ガラクトオリゴ糖を飼料に0.1〜5重量%配合することにより、産卵鶏の産卵率及び卵殻強度を向上させることができることが開示されている。特許第2629006号明細書には、キシロオリゴ糖を0.1〜10重量部配合することにより、幼畜の下痢、軟便症状の発生低下、及び体重の増加促進をさせることが開示されている。特公平6−16680号公報には、分岐オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖)を1〜5重量部配合することにより、豚の下痢症状を低下させ、成長を促進することが開示されている。
また、近年の研究により、オリゴ糖がカルシウム、マグネシウム、及び鉄等のミネラルの吸収を促進することが明らかにされ(J.Nutrition.,125,2417−2424,1995;Scand.J.Gastroenterol.,33,1062−1068,1998)、胃切除後のミネラル補給用組成物(特開平10−108647号公報)、骨粗しょう症予防治療剤(特開平7−252156号公報)、マグネシウム補給剤(特開平7−69902号公報)、貧血改善剤(特許第3024896号明細書)、ミネラル吸収促進組成物(特開平7−67575号公報)、及びカルシウム吸収促進剤(特開平4−134031号公報)等が開示されている。
しかしながら、前記の方法は、いずれも、その効果を発現させるために必要なオリゴ糖の配合量が多いこと、そして、前記オリゴ糖自体が高価なことからコスト高であることが課題であった。更には、前記オリゴ糖は、いずれも、単糖類と二糖類との混合物、あるいは、三糖類〜五糖類の混合物であることから結晶化しにくく、液状製品の形で流通している。前記液状製品を噴霧乾燥して粉末化した製品も一部散見されるが、オリゴ糖が結晶化していないため、吸湿性が高く、取り扱いに注意を要する等の難点があった。特開平3−27255号公報には、イソマルトオリゴ糖液をケイ酸化合物に添加して吸湿性の少ない粉末を得る方法が開示されているが、ケイ酸化合物を用いているためにコストアップの要因となっていた。
また、生体内において酵素の作用によりオリゴ糖を生成させる方法については、特開2000−325045号公報に、グルコシルトランスフェラーゼ、フルクトシルトランスフェラーゼ、及びレバンシュークラーゼより選ばれる酵素組成物を用いて生体内で生理活性を有するオリゴ糖を生成させて、肥満防止及び糖尿病患者の血糖値上昇防止の効果を得る方法が開示されている。しかしながら、前記公報は、糖転移酵素を用いてグルコース又はシュークロース等の低分子糖類からオリゴ糖を得る方法を開示したものである。
一方、セルラーゼ又はヘミセルラーゼ等の繊維質分解酵素を畜産動物用飼料に配合して前記動物の増体量及び飼料要求率等の飼養成績を向上させる方法については、セルラーゼを添加した家畜の飼料(特許2948471号明細書)、家禽用飼料添加物、家禽飼料、及び家禽の給餌方法(特表平5−500807号公報)、真菌類由来のアラビナン分解酵素をコードするDNA分子のクローニング及び発現(特表平6−500022号公報)、家畜用配合飼料(特公平2−54062号公報)、あるいは、トリコデルマ属由来セルラーゼのブロイラーへの応用(Poultry Science,64(8),1536−1540,1985)が開示されているが、いずれも飼料中に含まれるセルロース又はヘミセルロース等の繊維質を酵素で分解することにより畜産動物の増体量及び飼料要求率等を改善させる方法であって、家禽の産卵率又は卵殻強度改善の向上、産卵期間の延長、あるいは、骨密度強化に関する知見は述べられていない。
また、セルラーゼ又はヘミセルラーゼ等の繊維質分解酵素を家禽用の飼料に添加することによって産卵率又は卵殻強度を改善させる方法については、鶏の飼料(特公昭41−4374号公報)、養鶏飼料、給餌方法、及び養鶏飼料の消化性を改善する方法(特開昭63−291543号公報)、各種穀物を産卵鶏飼料に配合させた場合の酵素剤添加の効果(Archiv.Fuer Gefluegelkunde,64(6),255−263,2000)、コムギ及びライムギ主体の産卵鶏飼料への酵素剤添加の効果(Poultry Science,77,83−89,1998)、あるいは、コムギ配合産卵鶏飼料への酵素添加効果(Poultry Science,78,841−847,1999)等が開示されている。
しかしながら、特公昭41−4374号公報では、オオムギを主体とする飼料にセルラーゼ0.001%〜0.01%配合することにより産卵率が向上すると開示しているだけで、日本の産卵鶏飼料の主配合成分であるトウモロコシ又はダイズ油カスに関する知見はなく、また、卵殻強度向上及び産卵期間の延長に関する知見もない。また、Poultry Scienceに掲載の前記文献2件では、産卵鶏飼料にキシラナーゼ又はエンド−β−グルカナーゼを添加することにより産卵量が増大すると記載されているが、その要因は、飼料中に含まれる繊維質成分を酵素で分解することにより産卵鶏の消化管内の粘性が低下し、消化吸収が促進したためであるとされている。また、Archiv.Fuer Gefluegelkundeの文献では、産卵鶏の或る特定の週齢においての産卵率向上については報告しているが、卵殻強度に関する明確な効果はなく、しかも、産卵期間の延長に関する知見も報告されていない。すなわち、後述する本発明のように、産卵鶏が産卵を始めてから淘汰されるまでの期間にわたる恒常的な効果に関する知見は報告されていない。
発明の開示
本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、粉末状で吸湿しにくく取り扱いが容易で、かつ安価な酵素組成物であって、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化を可能にする前記酵素組成物を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、セルラーゼ又はヘミセルラーゼ等の酵素を、家禽にそのまま摂取させるか、あるいは、家禽用飼料に配合して摂取させることにより、前記家禽の消化管内において飼料の繊維質成分から難消化性オリゴ糖を生成させ、前記オリゴ糖の作用によってカルシウム等のミネラル成分の吸収を促進し、その結果、家禽の産卵率及び卵殻強度を向上させることができ、しかも、家禽の産卵期間を延長させることができ、更には、大腿骨及び脛骨の骨密度を強化することができることを見出した。本発明は、このような知見によるものである。
前記課題は、本発明による、家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素を含むことを特徴とする、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化用の酵素組成物によって解決することができる。
また、本発明は、前記酵素組成物を含む、飼料調製物に関する。
また、本発明は、家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素を、繊維質材料を含む飼料原料と共に、家禽に摂取させることを特徴とする、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化のための方法に関する。
更に、本発明は、家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素の、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化用の酵素組成物又は飼料調製物を製造するための使用に関する。
発明の実施するための最良の形態
本発明の酵素組成物は、有効成分としての「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」と、酵素組成物に通常用いることのできる担体又は希釈剤[例えば、賦形剤(例えば、乳糖、塩化ナトリウム、又はソルビトール等)、界面活性剤、又は防腐剤等]とを含む。
本発明における「家禽」とは、卵を食用とする鳥類を意味し、例えば、鶏(産卵鶏)、ウズラ、アヒル、又はカモ等が含まれる。
本明細書における前記「繊維質材料」とは、家禽の飼料原料として一般に用いることのできる植物に含まれる不溶性多糖類を意味する。具体的には、飼料原料として一般に用いられる、例えば、ダイズ、トウモロコシ、マイロ、コムギ、エンバク、又はライムギ等由来の多糖類、例えば、ガラクタン類(すなわち、主鎖がガラクトースで構成される多糖類)、キシラン類(すなわち、主鎖がキシロースで構成される多糖類)、アラビナン類(すなわち、主鎖がアラビノースで構成される多糖類)、ペクチン(すなわち、主鎖がポリガラクツロン酸及び/又はペクチニン酸で構成される多糖類)、β−グルカン(すなわち、グルコースがβ−結合で重合した多糖類)、又はマンナン類(すなわち、主鎖がマンノースで構成される多糖類)を挙げることができる。好ましくは、ダイズ、トウモロコシ、コムギ、又はライムギ由来のガラクタン類、キシラン類、又はβ−グルカンであり、より好ましくは、ダイズ由来のガラクタン類であり、更に好ましくは、ダイズ油カス由来のガラクタン類である。
前記の各種飼料原料から熱水又は尿素溶液等を用いて不溶性多糖類を調製し、前記不溶性多糖類にアクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)由来の酵素組成物を作用させた場合、難消化性オリゴ糖の生成量が最も多い不溶性多糖類は、ダイズ油カス由来のものであり、このダイズ油カス由来の不溶性多糖類から生成される難消化性オリゴ糖は、ガラクタン類の加水分解により生成するガラクトオリゴ糖が主体である。
本明細書における「難消化性オリゴ糖」とは、前記の繊維質材料(例えば、ガラクタン類、キシラン類、アラビナン類、ペクチン、β−グルカン、又はマンナン等)にセルラーゼ又はヘミセルラーゼが作用することにより生成する、2糖以上のオリゴ糖であって、家禽の消化器官内において単糖にまで消化されないオリゴ糖を意味する。具体的には、例えば、ガラクタン類からガラクタナーゼの作用により生成するガラクトオリゴ糖、キシラン類からキシラナーゼの作用により生成するキシロオリゴ糖、アラビナン類からアラビナーゼの作用により生成するアラビノオリゴ糖、ペクチン(例えば、ペクチニン酸等)からポリガラクツロナーゼの作用により生成するペクチニン酸オリゴ糖、β−グルカンからβ−グルカナーゼ又はセロビオハイドロラーゼの作用により生成するセロオリゴ糖、あるいは、マンナン類からマンナナーゼの作用により生成するマンノオリゴ糖を挙げることができる。
本発明において有効成分として用いる「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」としては、セルラーゼ又はヘミセルラーゼを挙げることができる。本発明においては、「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」として、セルラーゼ又はヘミセルラーゼのいずれか一方のみを用いることもできるし、あるいは、両者を組み合わせて用いることもできる。
前記セルラーゼとしては、例えば、β−グルカナーゼ又はセロビオハイドロラーゼを挙げることができる。本発明においては、セルラーゼとして、これらの酵素のいずれか1つを用いることもできるし、あるいは、2つ以上を組み合わせて使用することもできる。
β−グルカナーゼは、β−結合したグルカンを加水分解する酵素(E.C.3.2.1.4)であり、セロビオハイドロラーゼは、β−結合したグルカンをセロビオース単位でエキソ型に加水分解する酵素(E.C.3.2.1.91)である。
前記ヘミセルラーゼとしては、例えば、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、アラビナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、又はマンナナーゼを挙げることができ、好ましくはガラクタナーゼである。本発明においては、ヘミセルラーゼとして、これらの酵素のいずれか1つを用いることもできるし、あるいは、2つ以上を組み合わせて使用することもできる。
ガラクタナーゼは、ガラクタン類を加水分解する酵素(E.C.3.2.1.89)であり、キシラナーゼは、キシラン類を加水分解する酵素(E.C.3.2.1.32)であり、アラビナーゼは、アラビナン類を加水分解する酵素(E.C.3.2.1.99)であり、ポリガラクツロナーゼは、ポリガラクツロン酸又はペクチニン酸等のペクチンを加水分解する酵素(E.C.3.2.1.15)であり、マンナナーゼは、マンナン類を加水分解する酵素(E.C.3.2.1.78)である。
一般に、家禽に対するタンパク質供給源としては、飼料原料の1つであるダイズ、特にダイズ油カスが広く用いられている。前記飼料原料は、タンパク質の含有量、消化性、及び価格の面から、日米を中心とした諸国において最適の飼料原料と考えられる(飼料原料図鑑編集委員会編著,「飼料原料図鑑」,芝光社,1997,第52頁)。前記飼料原料中には、タンパク質の他にガラクタン類を主成分とした繊維質材料が含まれており、前記繊維質材料をガラクタナーゼ等の酵素の作用によって加水分解することにより、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖が生成するとともに、タンパク質の消化性も向上する。以上の理由から、本発明でヘミセルラーゼとして用いる酵素としては、ガラクタナーゼが好ましい。
本発明の酵素組成物がガラクタナーゼを含む場合には、本発明の酵素組成物は、更に、セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ガラクトシダーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、マンナナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンリアーゼ、又はポリガラクツロン酸リアーゼの少なくとも1つを含むことが好ましい。
プロテアーゼは、タンパク質又はペプチドを加水分解する酵素(E.C.3.4.21.14)であり、ガラクトシダーゼは、ガラクトシル残基を加水分解する酵素(E.C.3.2.1.22又はE.C.3.2.1.23)であり、アラビノフラノシダーゼは、アラビノフラノシル残基を加水分解する酵素(E.C.3.2.1.55)であり、ラムノガラクツロナーゼは、ラムノガラクツロナンを加水分解する酵素であり、ペクチンメチルエステラーゼは、ペクチン中のメチルエステルを加水分解する酵素(E.C.3.1.1.11)であり、ペクチンリアーゼは、メチルエステル化したガラクツロナン(ペクチン)を脱離反応で分解する酵素(E.C.4.2.2.10)であり、ポリガラクツロン酸リアーゼは、ガラクツロナン(ペクチン酸)を脱離反応で分解する酵素(E.C.4.2.2.2)である。
本発明で用いる酵素の由来は、食品製造用酵素の生産菌として古くより用いられ、しかも、安全性が高い糸状菌であることが好ましい。より好ましくは、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フミコーラ(Humicola)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、又はリゾプス(Rhizo pus)属に属する微生物であり、更に好ましくは、アクレモニウム・セルロリティカス、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、フザリウム・オキシスポーラス(Fusarium oxysporus)、又はリゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)であり、特に好ましくは、繊維質材料の分解性が高い点で、アクレモニウム・セルロリティカスである。本発明で複数の酵素を用いる場合には、1種類の菌に由来する酵素のみを用いることもできるし、あるいは、異なる菌に由来する酵素を組み合わせることもできる。
なお、本発明で用いる酵素が家禽に摂取された場合、前記酵素が家禽の胃内又は筋胃内の酸性環境下において有効に作用するためには、前記酵素は胃内又は筋胃内の酸性環境下において安定で有効に作用することが好ましい。その観点からも、アクレモニウム・セルロリティカス由来の酵素が好ましい。
本発明の酵素組成物は、その有効成分として、糸状菌の培養物(broth)、その培養上清、あるいは、それらの乾燥物を含むことができる。
前記培養物とは、糸状菌を適当な培地で培養して得られる、菌体と培地との混合物である。培養物の培養上清は、前記培養物から適当な分離手段(例えば、濾過又は遠心分離)により得ることができる。培養物の乾燥物、あるいは、培養上清の乾燥物は、培養物又は培養上清から、適当な乾燥手段(例えば、噴霧乾燥又は凍結乾燥)により水分を除去することにより得ることができる。
前記糸状菌としては、アクレモニウム属、アスペルギルス属、フミコーラ属、トリコデルマ属、フザリウム属、又はリゾプス属に属する微生物が好ましく、アクレモニウム・セルロリティカス、アスペルギルス・ニガー、フミコーラ・インソレンス、トリコデルマ・ビリデ、フザリウム・オキシスポーラス、又はリゾプス・オリゼがより好ましく、アクレモニウム・セルロリティカスが特に好ましい。
本発明の酵素組成物は、ガラクタナーゼを、ガラクタナーゼ活性として10,000〜18,000,000単位/t・飼料(より好ましくは50,000〜18,000,000単位/t・飼料)の量で、飼料原料と共に、家禽に摂取させることが好ましい。同様に、キシラナーゼを、キシラナーゼ活性として10,000〜4,000,000単位/t・飼料(より好ましくは50,000〜500,000単位/t・飼料)の量で;β−グルカナーゼを、β−グルカナーゼ活性として50,000〜35,000,000単位/t・飼料(より好ましくは370,000〜3,700,000単位/t・飼料)の量で;アラビナーゼを、アラビナーゼ活性として1.000〜700,000単位/t・飼料(より好ましくは8,000〜80,000単位/t・飼料)の量で;あるいは、ポリガラクツロナーゼを、ポリガラクツロナーゼ活性として20,000〜15,000,000単位/t・飼料(より好ましくは170,000〜1,700,000単位/t・飼料)の量で、いずれか1つ又は2つ以上を、飼料原料と共に、家禽に摂取させることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順に従って調製することができる。
まず、微生物の培養を、それ自体公知の培養方法により実施する。例えば、アクレモニウム・セルロリティカスを用いる場合には、例えば、特公昭60−43954号公報又は特開平7−264994号公報に記載の方法に従って、それぞれ、培養を行なうことができる。
具体的には、微生物、例えば、アクレモニウム・セルロリティカス、アスペルギルス・ニガー、フミコーラ・インソレンス、トリコデルマ・ビリデ、フザリウム・オキシスポーラス、又はリゾプス・オリゼ等を、セルロース及び綿実粕等を炭素源として培養する。
前記培養が終了した後、得られた培養物を固液分離操作(例えば、遠心分離等)により除菌して得られた上清液を、必要に応じて限外濾過法等により濃縮し、得られた濃縮物から、噴霧乾燥法等により水分を除去することにより、粉末体(粉末化製剤)とすることができる。また、噴霧乾燥時の上清液に、乳糖、ブドウ糖、澱粉、又は澱粉の部分分解物等を単独で、あるいは、適宜組合せて添加することにより、得られた粉末体の物性(例えば、溶解性、吸湿性、又は安定性)の改善を図ることができる。
あるいは、酵素(例えば、市販品又は精製品)を混合して調製することもできる。
本発明の酵素組成物の形状は任意であり、適当な形状(例えば、粉末又は液体状)に調製することができる。例えば、前記調製工程における、培養物、上清液、濃縮物、又は粉末体を、それぞれ、本発明の酵素組成物として用いることができる。
また、本発明の酵素組成物を飼料原料等に配合する場合の剤形についても、特に限定されるものではなく、例えば、前記の粉末体又は液体の形状でそのまま用いることもできるし、あるいは、賦形剤を用いて飼料原料と混合しやすい剤形とすることもできる。前記賦形剤としては、例えば、コムギ粉、ダイズ粉、コーンミール、澱粉、澱粉の部分分解物、グルコース、乳糖、米糠、又はコムギふすま等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは、2種類以上を組合せて用いることができる。
本発明の飼料調製物は、本発明の酵素組成物の有効成分である「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」を含む限り、特に限定されるものではないが、本発明の飼料調製物では、配合する飼料原料の種類に基づいて、本発明の酵素組成物に含まれる各種酵素の活性が、飼料調製物中において適当になるように適宜調整することが好ましい。例えば、ガラクタナーゼ活性、キシラナーゼ活性、β−グルカナーゼ活性、アラビナーゼ活性、又はポリガラクツロナーゼ活性の少なくとも1つが、ガラクタナーゼ活性として好ましくは10,000〜18,000,000単位/t・飼料、より好ましくは50,000〜18,000,000単位/t・飼料;キシラナーゼ活性として好ましくは10,000〜4,000,000単位/t・飼料、より好ましくは50,000〜500,000単位/t・飼料;β−グルカナーゼ活性として好ましくは50,000〜35,000,000単位/t・飼料、より好ましくは370,000〜3,700,000単位/t・飼料;アラビナーゼ活性として好ましくは1,000〜700,000単位/t・飼料、より好ましくは8,000〜80,000単位/t・飼料;又はポリガラクツロナーゼ活性として好ましくは20,000〜15,000,000単位/t・飼料、より好ましくは170,000〜1,700,000単位/t・飼料であることができる。
前記活性の中でも、例えば、飼料原料としてダイズ油カスを用いる場合には、繊維質材料の主成分がガラクタンであるため、ガラクタナーゼ活性が重要であり、ガラクタナーゼ活性として50,000〜18,000,000単位/t・飼料であることが好ましい。
本発明の飼料調製物において、ガラクタナーゼ活性が50,000単位/t・飼料未満の場合は、家禽に対する産卵率向上又は卵殻強度向上、産卵期間の延長、あるいは、骨密度強化の効果が充分に得られないことがある。一方、ガラクタナーゼ活性を18,000,000単位/t・飼料より高くしても、更なる効果が得られないことがあり、また、家禽の消化管内において過剰に生成したオリゴ糖等の作用により、下痢症状が認められることがある。また、キシラナーゼ活性、β−グルカナーゼ活性、アラビナーゼ活性、及びポリガラクツロナーゼ活性についても、ガラクタナーゼ活性と同様に、前記の各好適範囲より活性が低い場合には、充分な効果が得られないことがあり、前記の好適範囲より活性が高い場合には、下痢症状が認められることがある。
本発明の飼料調製物において使用することのできる飼料原料は、家禽用の飼料原料として通常用いることのできる飼料原料である限り、特に限定されるものではなく、例えば、ガラクタン類、キシラン類、アラビナン類、ペクチン、又はβ−グルカンを含む飼料原料、より具体的には、例えば、ダイズ、トウモロコシ、マイロ、コムギ、エンバク、又はライムギを用いることができる。
本発明の飼料調製物を家禽に与える場合、飼料調製物の給与方法は特に限定されるものではなく、通常の不断給与で充分であり、制限給与をする必要はない。飲水についても同様である。すなわち、本発明によれば、通常の飼育システムを変えることなく、単に、通常の飼料を本発明の飼料調製物に換えるだけで、所望の効果を得ることが可能である。
本発明における有効成分である「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」、あるいは、糸状菌の培養物若しくはその培養上清、又はそれらの乾燥物を、繊維質材料を含む飼料原料と共に、家禽に摂取させると、家禽の産卵率及び/又は卵殻強度を向上させることができ、更には、産卵期間を延長させ、骨密度を強化することができる。従って、「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」、あるいは、糸状菌の培養物若しくはその培養上清、又はそれらの乾燥物を有効成分として含む、本発明の酵素組成物又は飼料調製物は、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化の目的のために使用することができる。また、「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」、あるいは、糸状菌の培養物若しくはその培養上清、又はそれらの乾燥物を、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化用の酵素組成物又は飼料調製物を製造するために、使用することができる。
本明細書において「産卵率」とは、家禽(例えば、産卵鶏等)が1日当たりに卵を産む比率(%)である。一般に、産卵鶏は一日に1個弱の卵を産むことから、産卵率100%とは、1日に1個の卵を規則正しく生んだ場合であり、生産現場においては、産卵率を100%に可能な限り近づけることが理想である。通常、生産現場(養鶏家)では一度に数万羽の鶏を飼育しており、産卵率が1%向上することにより、それだけで多大なる経済的効果を期待することができる。
本明細書において「卵殻強度」とは、家禽(例えば、産卵鶏等)の卵を卵殻強度計にて測定した際の数値である。一般に、産卵鶏の卵は生産者から小売店までの流通段階にてその1〜2割程度は破卵すると言われている。従って、本発明により卵殻強度が向上すれば、破卵率を低下させることができることから多大なる経済的効果を期待することができる。
本明細書において「産卵期間の延長」とは、加齢により本来低下する産卵率を向上させることによって、産卵可能な期間を延長させることを意味する。一般に、産卵鶏、例えば、白色レグホーン種の場合、20〜22週齢(140〜154日齢)で産卵を開始し、32〜36週齢(224〜252日齢)で最も多く産卵し、その後徐々に産卵率が低下して80〜85週齢(560〜595日齢)まで生産に供される(田先威和夫著,「養鶏ハンドブック」,養賢堂,1993,第244頁)。従って、産卵期間は58〜65週間となる。また、32〜36週齢における産卵率は80〜90%であるが、80〜85週齢における産卵率は55%程度までに低下する。そこで、鶏卵の生産性を向上させるため、養鶏家では55週齢前後を過ぎたあたりから「強制換羽」という措置を行なう。この措置は、産卵率が低下した産卵鶏を2〜3週間絶食させてリフレッシュさせることにより、産卵機能を回復させるものである(田先威和夫著,「養鶏ハンドブック」,養賢堂,1993,第515頁)。近年では動物愛護の観点から前記措置が問題視されつつあるが、他に有効な回復手段は見出されていない。しかし、本発明によれば、「強制換羽」という措置をとることなく、産卵率が低下した産卵鶏の産卵率を向上させ、産卵期間を延長させることができる。
本明細書において「骨密度」とは、骨の単位表面積当りのミネラル(例えば、カルシウム又はリン等)量である骨塩量を意味し、単に「骨量」とも呼ばれているものである。家禽の大腿骨及び脛骨等の骨密度は、骨密度測定器にて測定することができる。一般に、ブロイラー、レイヤー、豚、牛、又は馬等の畜産動物、特にブロイラー(肉用種鶏)の増体速度は、他の動物と比較して著しく大きいため、骨の成長と体の成長とのバランスが崩れて、脚弱となるケースが多い。脚弱とは、骨密度で代表される骨の成長が充分でないことに起因する、脚の骨が弱くなる病態である。その結果、自らの体重を支えきれないために起立が困難となり、結果的に淘汰される。従って、本発明により骨密度が強化されれば、多大なる経済的効果を期待することができる。また、骨密度が強化されることにより、骨粗鬆症の予防若しくは治療、又は骨折の予防が可能となる。
本発明による、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化のための方法では、本発明における有効成分である「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」を、繊維質材料を含む飼料原料と共に、家禽に摂取させる。本発明方法では、「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」として、例えば、糸状菌の培養物若しくはその培養上清、又はそれらの乾燥物、あるいは、市販品又は精製品の酵素を、飼料原料と共に、家禽に摂取させることができる。
作用
本発明の酵素組成物又は飼料調製物が、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化の効果を示す理由は、以下の作用機序に基づくものであると、本発明者は考えている。なお、以下の作用機序は、現時点での推論であって、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明における有効成分である、「家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素」、あるいは、糸状菌の培養物若しくはその培養上清、又はそれらの乾燥物を、繊維質材料を含む飼料原料と共に、家禽に摂取させると、前記家禽の消化管内において、飼料原料の繊維質成分からオリゴ糖が生成する。前記オリゴ糖の作用によってミネラル(例えば、カルシウム、マグネシウム、又は鉄等)の吸収が促進され、その結果、家禽の産卵率及び卵殻強度が向上すると共に、家禽の産卵期間が延長され、更には、骨密度が強化されるものと考えられる。すなわち、本発明の酵素組成物及び飼料調製物は、ミネラル吸収促進用の酵素組成物及び飼料調製物でもある。
実施例
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:アクレモニウム・セルロリティカス由来の本発明酵素組成物の調製
アクレモニウム属由来の本発明酵素組成物を得るために、以下の手順に従って微生物の培養を行なった。
綿実油粕2%、セルロース2%、リン酸水素二カリウム1.2%、バクトペプトン1%、硝酸カリウム0.6%、尿素0.2%、塩化カリウム0.16%、硫酸マグネシウム・七水塩0.001%、及び硫酸銅・五水塩0.001%を含む培地(pH4.0)500mLに、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)を接種し、30℃で48時間攪拌しながら培養した。なお、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)は、昭和58年(1983年)1月12日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター[(旧)工業技術院生命工学工業技術研究所(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)]に国内寄託されたものであり、平成9年(1997年)2月19日から国際寄託に移管されている。国際受託番号(国際受託番号に続く[]内は国内受託番号)は、FERM BP−5826[FERM P−6867]である。
次に、前記培養液をシードとして15Lにスケールアップし、更にスケールアップを続け、最終的に600L容タンク中の培養液量を300Lとし、通気撹拌培養を7日間行なった。
得られた培養液をフィルタープレスで濾過した後、限外濾過により15Lまで濃縮し、乳糖2kgを添加してスプレードライにより粉末化した。この方法で得られた酵素原末Aは5.0kgであった。
次いで、前記酵素原末Aを、倍散剤であるコムギ粉にて適宜希釈し、本発明の酵素組成物Aを調製した。酵素組成物Aのガラクタナーゼ活性は5,000単位/gであり、以下、同様に、キシラナーゼ活性は5,000単位/g、β−グルカナーゼ活性は12,500単位/g、アラビナーゼ活性800単位/g、そして、ポリガラクツロナーゼ活性は17,000単位/gであった。
なお、各種活性の測定方法は以下の通りである。活性測定用の基質としては、ガラクタナーゼ活性はガラクタン(ルピン由来;メガザイム社製)を、キシラナーゼ活性はキシラン(カラマツ由来;シグマ社製)を、β−グルカナーゼ活性はβ−グルカン(オオムギ由来;メガザイム社製)を、アラビナーゼ活性はアラビナン(ビート由来;メガザイム社製)を、そして、ポリガラクツロナーゼ活性はポリガラクツロン酸(オレンジ由来;シグマ社製)を用いた。酵素反応条件は、基質濃度1%で、37℃及びpH4.5にて、30分間とした。いずれも1分間に1μmolのグルコースと同等の還元力を有する糖を生成する酵素量を1単位とした。
実施例2:ガラクタナーゼ遺伝子で形質転換したアクレモニウム・セルロリティカス由来の本発明酵素組成物の調製
アクレモニウム・セルロリティカス由来のガラクタナーゼを大量に含有する本発明酵素組成物を得るために、特開2001−17180号公報に記載のベクター及び形質転換方法に準じて、以下の手順に従って、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)において最も高発現しているCBH1遺伝子のプロモーターの下流に、アクレモニウム・セルロリティカス由来のガラクタナーゼ遺伝子を連結した遺伝子発現用の組換えベクターを作製し、このベクターをアクレモニウム・セルロリティカスY−94株に導入することにより、ガラクタナーゼ遺伝子で形質転換したアクレモニウム・セルロリティカス形質転換体を作製した。
なお、アクレモニウム・セルロリティカス由来のガラクタナーゼは、本発明者の一部とその共同研究者とにより、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株から見出された、配列番号4で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなる新規の酵素(特願2001−275005号)であり、以下の性質を示す:
(a)作用及び基質特異性:β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖のβ−1,4−ガラクトシド結合をエンド型に加水分解する。
(b)安定pH範囲:pH2〜10の範囲で安定である。
(c)分子量:40,000(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(d)等電点:4.5(等電点ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(e)至適pH:5〜6である。
(f)作用最適温度:50℃である。
アクレモニウム・セルロリティカスY−94株から見出された前記新規酵素は、「配列番号4で表されるアミノ酸配列(すなわち、配列番号4で表されるアミノ酸配列の1番目〜354番目のアミノ酸配列)からなるポリペプチド」として翻訳された前駆体から、N末端側のシグナルペプチド(すなわち、配列番号4で表されるアミノ酸配列の1番目〜20番目のアミノ酸からなるペプチド)が切断除去された成熟体であると考えられる。
また、この新規酵素は、それ以前に知られていたガラクタナーゼと比較して、低pHでの安定性が優れている。例えば、低pHで安定であることが知られている、特表平6−505154号公報に記載のガラクタナーゼ(Aspergillus aculeatus由来)でも、pH2.0では60%以下に、pH1.5では20%まで酵素活性が低下するのに対して、アクレモニウム・セルロリティカス由来のガラクタナーゼは、pH2〜10の範囲で安定であり、pH1.5〜2の範囲においても高い活性を保持する。
アクレモニウム・セルロリティカス由来のガラクタナーゼをコードする、配列番号3で表される塩基配列からなるcDNAも、本発明者の一部とその共同研究者とにより単離されており(特願2001−275005号)、このガラクタナーゼcDNAを含むプラスミドベクターpgalで形質転換された大腸菌(JM109)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成13年(2001年)3月5日から国内寄託されており、平成14年(2002年)7月18日から国際寄託に移管されている。国際受託番号(国際受託番号に続く[]内は国内受託番号)は、FERM BP−8120[FERM P−18242]である。
ガラクタナーゼ遺伝子で形質転換したアクレモニウム・セルロリティカス形質転換体は、以下の手順で作製した。
すなわち、前記プラスミドpgalを鋳型とし、配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーとを用いて、PCRを行なった。PCRは、50μLの反応液中、1.25ユニットTaq DNAポリメラーゼ(LA Taq DNAポリメラーゼ;宝酒造社製)、添付のバッファー、dNTP混合物、20ngプラスミドDNA、及び1μmol/Lの前記プライマーを用いて、94℃(3分間)で反応させた後、94℃(30秒間)、52℃(30秒間)、及び72℃(75秒間)からなるサイクルを30回繰り返し、更に72℃(3分間)で反応させることにより実施した。
こうして得られたPCR反応液をエタノール沈殿し、PCR産物を回収した後、制限酵素HpaI及びSphIで切断し、これを、デストマイシン耐性カセット(DtR)を含むプラスミドpCBHEX/DtR2(特開2001−17180号公報)のHpaI部位とSphI部位との間に挿入し、プラスミドpGAL−Dtを作製した。
プラスミドpUC118(宝酒造社製)のBamHI部位を切断し、この切断部位を平滑化した後に再度連結して、BamHI部位を欠失したプラスミドpUC118を作製した。このプラスミドのXbaI部位に、プラスミドpDHBAR(Watanabe,M.ら,Appl.Environ.Microbiol.,65,1036−1044,1999)から制限酵素XbaIにより切り出したビアラホス耐性カセットを挿入した。このプラスミドを制限酵素BamHIで切断し、切断部位を平滑化した後に再度連結し、BamHI部位を欠失したビアラホス耐性カセットを含むプラスミドを作製した。このプラスミドから、制限酵素XbaIによりビアラホス耐性カセットを切り出し、これを、先に作成したプラスミドpGAL−DtのXbaI部位のデストマイシン耐性カセットと置き換え、タンパク質発現用プラスミドpGAL−barを作製した。
アクレモニウム・セルロリティカスY−94株を(S)培地(2%ブイヨン、0.5%イーストエキス、及び2%グルコース)において30℃で16時間培養し、3500rpmで10分間遠心することにより集菌した。得られた菌体を0.5mol/Lシュークロースで洗浄し、0.45μmのフィルターで濾過したプロトプラスト化酵素溶液(10mg/mLキチナーゼ、10mg/mLザイモリアーゼ、30mg/mLβ−グルクロニダーゼ、及び0.5mol/Lシュークロース)に懸濁した。30℃で60分〜90分間振盪し、菌糸をプロトプラスト化させた。脱脂綿によりこの懸濁液を濾過した後、2500rpmで10分間遠心してプロトプラストを回収し、SUTCバッファー[0.5mol/Lシュークロース、10mmol/L塩化カルシウム、及び10mmol/Lトリス−塩酸(pH7.5)]で洗浄した。
以上のようにして調製したプロトプラストをSUTCバッファー100μLに懸濁し、これに、先に作成したプラスミドpGAL−bar溶液10μg(10μL)を加え、氷上に5分間静置した。次に、PEG(ポリエチレングリコール)溶液[60%PEG4000、10mmol/L塩化カルシウム、及び10mmol/Lトリス−塩酸(pH7.5)]400μLを加え、氷中に20分間静置した後、SUTCバッファー10mLを加え、2500rpmで10分間遠心した。遠心分離したプロトプラストをSUTCバッファー1mLに懸濁した後、4000rpmで5分間遠心して、最終的にSUTCバッファー100μLに懸濁した。
以上の処理をしたプロトプラストを、ビアラホス(1000μg/mL)添加(A)寒天培地[3.9%ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬社製)、及び17.1%シュークロース]上に、(A)軟寒天培地[1.3%ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬社製)、及び17.1%シュークロース]と共に重層し、30℃で5〜9日間培養した後、形成したコロニーを形質転換体とした。
ビアラホスに対する耐性度の高い形質転換株をセルラーゼ誘導培地で培養し、ガラクタナーゼ活性の高い形質転換株を選抜した。この形質転換株を実施例1に記載の方法と同様に培養し、ガラクタナーゼ増強酵素原末5.0kgを得た。次いで、前記酵素原末を倍散剤であるコムギ粉にて適宜希釈し、本発明の酵素組成物Dを調製した。
実施例3:飼料調製物の調製
産卵鶏飼料として一般に用いられている配合飼料I[カネニ飼料(株)製]及び配合飼料II(日本配合飼料製)を購入し、飼料原料として使用した。配合飼料Iの原材料及び配合割合を表1に示し、配合飼料IIの原材料及び配合割合を表2に示す。また、配合飼料I及び配合飼料IIの成分量を、それぞれ、表3に示した。
続いて、これらの配合飼料I及び配合飼料IIに、実施例1で調製した本発明の酵素組成物A、あるいは、実施例2で調製した本発明の酵素組成物Dを、表4に示した添加割合で添加し、各飼料調製物A1、A2、A3、A4、A5、及びA6、並びにDを調製した。飼料調製物A1〜A4に含まれる主要酵素活性を表5に、飼料調製物A5、A6、及びDに含まれる主要酵素活性を表6に示す。
評価例1:レイヤー試験1(30週齢)
実施例3にて調製した本発明の飼料調製物が、産卵鶏の産卵率、卵殻強度、卵殻厚、及び糞便性状に及ぼす影響について調べた。試験には、産卵率及び卵殻強度が最大となる30週齢前後のジュリア産卵鶏を用いた。実施例3の配合飼料Iを摂取させた区を対照区(本発明酵素組成物無添加区)とし、実施例3にて調製した飼料調製物A1、A2、A4、A5、及びA6を摂取させた区を、それぞれ、試験区A1、A2、A4、A5、及びA6とした。1区当たり5羽の産卵鶏を個別ケージにて飼育し、飼料及び飲水は自由摂取とした。産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚は、試験開始日から毎日測定し、体重及び飼料摂取量は、試験開始日及び試験終了日のみ測定した。試験期間は5週間とした。なお、卵殻強度は、卵殻強度計[富士工業(株)]にて測定した。
試験結果を表7に示す。表7には、試験開始から5週間目までの平均の産卵率、卵殻強度、卵殻厚、及び糞便性状を示した。
飼料調製物A1、A2、及びA4を摂取させた試験区A1、A2、及びA4の産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚はいずれも対照区と比較して高かった。また、表4及び表7から明らかなように、本発明酵素組成物Aの配合量と、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚との間には、ほぼ正の相関があった。なお、本発明酵素組成物Aの配合量が最も少ない試験区A5の産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚は、いずれも対照区とほぼ同等であった。これに対し、本発明酵素組成物Aの配合量が最も多い試験区A6の産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚は、いずれも試験区A1とほぼ同等であり、配合量を増やしても更なる効果は得られなかったことに加え、試験区A6における被検産卵鶏の糞便性状は、一部軟便であった。以上の結果から、本発明酵素組成物Aの配合量には適正値があり、すなわち、配合量が少ないと、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚に及ぼす影響はほとんどなく、逆に配合量が多いと、その配合量増加に対応する効果の上昇が、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚には認められないばかりか、糞便性状が悪化することがわかった。従って、本発明における酵素組成物を適正な量で配合した飼料調製物は、30〜35週齢前後における産卵鶏の産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚を向上させる効果があることがわかった。
評価例2:レイヤー試験2(40週齢)
評価例1と比較して、約10週齢加齢した40週齢前後の鶏を用い、試験を実施した。また、本試験では1試験区当たりの被検鶏数を40羽とした。被検鶏を産卵率の分布がほぼ均等となるように10羽ずつ個別ケージに割付けたものを1群とし、1区あたり4群を設定した。
実施例3の配合飼料Iを摂取させた区を対照区(本発明酵素組成物無添加区)とし、実施例3にて調製した飼料調製物A3を摂取させた区を試験区A3とし、実施例3にて作製した飼料調製物Dを摂取させた区を試験区Dとした。飼料及び飲水は自由摂取とした。産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚みは、試験開始日から毎日測定した。試験期間は4週間とした。
試験結果を表8に示す。表8には、試験開始2週間目〜4週間目までの産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚の平均値を示す。試験区A3及び試験区Dの産卵率及び卵殻強度は、いずれも対照区と比較して高かった。また、ガラクタナーゼを増強した酵素組成物Dを配合した飼料調製物Dの方が、飼料調製物A3よりも産卵率が若干良好であったことから、ガラクタナーゼの有効性が示唆された。以上の結果から、本発明における酵素組成物を配合した飼料調製物は、40〜44週齢前後の産卵鶏の産卵率及び卵殻強度を向上させる効果があることがわかった。
評価例3:レイヤー試験3(60週齢、夏季)
本試験では、評価例2にて使用した鶏よりも更に週齢が約20週進んだ60週齢前後の鶏を使用し、しかも、試験実施時期を夏季(7月〜8月)に設定した。産卵鶏等の家禽は、前述したように、32〜36週齢前後から週齢が進むと、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚が低下する。一方、気温の高い夏季においては、他の季節と比較して産卵率が低下すると共に、体重も減少すると言われている。試験区は、飼料調製物A3を飼料として用いた試験区A3とした。その他の条件は、評価例2に記載の方法と同様の方法で実施した。
試験結果を表9に示す。被検鶏の週齢が60週齢前後であったこと、そして、試験実施時期が夏季(7月〜8月)であったことから、本試験における対照区の産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚は、いずれも評価例2の対照区と比較して低かった。しかしながら、実施例1にて調製した本発明酵素組成物Aを含有する飼料調製物A3を摂取させることにより、試験区の産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚は、いずれも前記酵素組成物を配合していない飼料配合物を摂取させた対照区と比較して高かった。しかも、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚の値は、被検鶏の週齢が小さい評価例2の対照区とほぼ同等まで向上した。また、対照区の平均体重は、試験開始前と比較して試験終了時には減少したのに対し、試験区A3の平均体重の減少量は、極めて僅かであった。
以上の結果から、産卵率のピークを過ぎた60〜64週齢前後の鶏においても、本発明における酵素組成物を配合した飼料調製物は、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚を向上させる効果があることがわかった。更に、産卵率が低下する夏季においても、本発明における酵素組成物を配合した飼料調製物は、産卵率、卵殻強度、及び卵殻厚を向上させる効果があり、しかも、夏季における体重減少を防止させる効果があることがわかった。
評価例4:レイヤー試験4(老齢鶏、70週齢)
本試験は、評価例3にて使用した鶏よりも更に週齢が進んだ70週齢前後の鶏を使用し、評価例1記載の方法と同様の方法で行った。但し、試験期間は6週間とした。70週齢前後の産卵鶏は前述した通り、「強制換羽」の措置がとられるのが一般的である。そこで、本試験においては、比較区として試験開始から3週間強制換羽の措置を行った区(強制換羽区)を設けた。
本試験の結果を表10に示す。表10において「強換」は、強制換羽を意味する。本試験における対照区の産卵率及び卵殻強度は、いずれも評価例2(40週齢)又は評価例3(60週齢、夏季)の対照区と比較して著しく低かった。しかしながら、実施例1にて調製した本発明酵素組成物Aを含有する飼料調製物A2を摂取させることにより、試験区A2の産卵率及び卵殻強度は、いずれも対照区と比較して高く、その値は、評価例2における対照区と近い値に回復した。一方、強制換羽区については、試験開始0〜3週間の強制換羽期間において、産卵率及び卵殻強度が著しく低下したが、強制換羽後の4週間目においては、産卵率及び卵殻強度ともに対照区より高かった。
以上の結果から、産卵率のピークを過ぎ、著しく産卵率の低下した70〜76齢前後の鶏においても、本発明における酵素組成物を配合した飼料調製物A2は、産卵率及び卵殻強度を向上させる効果があることがわかった。従って、本発明の酵素組成物により、強制換羽の代替法として産卵期間を延長させることができた。
評価例5:ブロイラー試験(骨密度強化及び脚弱防止)
実施例1にて調製した酵素組成物Aが、ブロイラー(肉用種鶏)の骨密度、増体、及び飼料要求率に及ぼす影響を調べた。試験には、21日齢のブロイラー専用種(チャンキー)雄雛を80羽供試した。供試雛は、初生で200羽導入し、市販のブロイラー前期用飼料[ジョイスタースクランブル;日本農産工業(株)製]を給与して21日齢まで育成した後、体重の近似した個体を120羽選抜した。
表11に示した基礎飼料を給与する対照区と、前記基礎飼料に酵素組成物Aを0.005%添加した飼料調製物A7を給与する試験区A7との2区を設けた。供試雛を1群40羽とする2群に区分し、各区に1群ずつ割付けて50日間飼育した。雛は、電熱床面給温及び強制換気式の無窓平飼鶏舎で群飼した。各群の飼育面積は、給餌器及び給水器を除き、約3.3m2とした。照明は終日点灯とした。敷料にはオガクズを用い、試験終了時まで糞尿を堆積させた。また、飼料及び飲水は不断給与した。
試験開始時(21日齢)、31日齢、51日齢、及び71日齢時に個体別体重を測定し、増体量を算出した。また、各体重測定日間の飼料摂取量を群毎に測定し、飼料要求率(飼料要求率=飼料摂取量/増体量)を算出した。一方、前記日齢の計4時点において、各区の平均体重に近似した個体を5羽ずつ抽出して放血屠殺し、大腿骨及び脛骨を採材した。採材した両骨の骨密度を骨密度測定器(デキサ、QDR−2000;ホロジック社製)にて測定した。
結果を表12に示す。なお、表12における記号「*」は、対照区に比較して、p<0.05の危険率で有意差があることを意味する。
表12に示すように、大腿骨及び脛骨の骨密度は、31日齢以降いずれも試験区A7の方が対照区よりも高い傾向を示した。特に31日齢の脛骨は、統計的に有意に試験区A7が高かった。また、期間増体量については、試験区A7は対照区よりも多く、飼料要求率については、試験区A7が対照区よりも低かった。
以上の結果から、本発明における酵素組成物を配合した飼料をブロイラーに給与することにより、大腿骨及び脛骨の骨密度が強化され、更には期間増体量が向上し、かつ飼料要求率が改善されることがわかった。本結果は、ブロイラーのみならず、豚、牛、馬、又はレイヤー等の他の畜産動物においても本発明の酵素組成物を配合した飼料を給与することにより、骨密度を強化させ、ひいては現在畜産業界で問題となっている脚弱を防止することができる可能性を示唆するものである。
参考例1
実施例1と同じ方法で、トリコデルマ・ビリデMC300−1株(FERM BP−6047)由来の酵素原末Bを6.6kg得た。なお、前記トリコデルマ・ビリデMC300−1株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成8年(1996)年9月9日から国内寄託されており、平成9年(1997年)8月11日から国際寄託に移管されている。国際受託番号(国際受託番号に続く[]内は国内受託番号)は、FERM BP−6047[FERM P−15842]である。次いで、前記酵素原末Bを、培散剤であるコムギ粉にて適宜希釈し、本発明酵素組成物Bを調製した。
実施例1にて調製した本発明酵素組成物A及び前記の本発明酵素組成物Bの各種飼料原料の分解性を確認するため、以下の試験を実施した。ダイズ油カス、オオムギ、トウモロコシ、マイロ、ライムギ、ナタネ油カス、米糠、及びコプラフレークの各飼料原料を粉砕し、得られた各粉砕物に本発明酵素組成物A又は本発明酵素組成物Bを作用させて、生成する還元糖量を定法に従って測定した。酵素反応条件は、産卵鶏消化管内のモデルとなるよう、基質濃度1%、37℃、pH4.5、及び30分間とした。また、いずれも1分間に1μmolのグルコースと同等の還元力を有する糖を生成する酵素量を1単位とした。
本試験の結果を表13に示す。なお、表13に示す各数値の単位は、「単位/g」である。本発明酵素組成物Bは、いずれの飼料原料に対しても分解性を有し、本発明の酵素組成物として使用可能であることが確認された。また、本発明酵素組成物Aは、いずれの飼料原料に対しても、本発明酵素組成物Bよりも分解性が高かった。すなわち、本発明酵素組成物としては、アクレニウム・セルロリティカス由来のものがより好ましいことがわかった。
参考例2
実施例1で調製した本発明酵素組成物A、参考例1で調製した本発明酵素組成物B、及び本発明酵素組成物Aから定法により精製したガラクタナーゼを用いて、ダイズカス由来の不溶性多糖類に対する分解性を調べた。ダイズ油カス由来の不溶性多糖類は、ダイズカスを粉砕した後、8mol/L尿素液中で5分間煮沸し、水洗浄及びエタノール洗浄を行い、調製した。前記不溶性多糖類に、前記の酵素組成物2種類又は精製ガラクタナーゼを作用させた。作用条件は、基質濃度1%、37℃、pH4.5、及び1時間とした。作用生成物を薄層クロマトグラフィーにて分析した結果を図1に示す。図1では、標準品として、ガラクトース、ガラクトビオース、グルコース、及びセロビオースを使用した。
本発明酵素組成物A及び精製ガラクタナーゼをダイズ由来不溶性多糖類に作用させることにより、オリゴ糖であるガラクトビオースが生成したが、本発明酵素組成物Bからはガラクトビオースがほとんど生成しなかった。一方、本発明酵素組成物A及び本発明酵素組成物Bの両者からは、オリゴ糖であるセロビオースが生成した。以上の結果から、本発明酵素組成物A及び本発明酵素組成物Bのいずれも、ダイズ由来不溶性多糖類を分解してオリゴ糖を生成することが確認された。また、精製ガラクタナーゼも同様にオリゴ糖を精製することが確認された。
参考例1及び2の結果から、動物の消化管内において、本発明の酵素組成物が飼料原料中の繊維質材料に作用することによりオリゴ糖が生成することが示唆された。
産業上の利用可能性
本発明によれば、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化を可能にする。
配列表フリーテキスト
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号1又は2の配列で表される各塩基配列は、合成DNA配列である。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の酵素組成物A又はBによるダイズ由来不溶性多糖類の分解性を示す薄層クロマトグラフの結果を示す図面である。
Claims (18)
- 家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素と、酵素組成物用の担体とを含むことを特徴とする、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化用の酵素組成物。
- 繊維質材料を含む飼料原料と共に使用する、請求項1に記載の酵素組成物。
- 難消化性オリゴ糖が、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、ペクチニン酸オリゴ糖、及びマンノオリゴ糖からなる群から選んだ難消化性オリゴ糖1つ又はそれ以上である、請求項1又は2に記載の酵素組成物。
- 酵素が、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酵素組成物。
- ヘミセルラーゼが、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、アラビナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、及びマンナナーゼからなる群から選んだヘミセルラーゼ1つ又はそれ以上である、請求項4に記載の酵素組成物。
- セルラーゼが、β−グルカナーゼ及び/又はセロビオハイドロラーゼである、請求項4に記載の酵素組成物。
- (1)ガラクタナーゼと、(2)セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ガラクトシダーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、マンナナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンリアーゼ、及びポリガラクツロン酸リアーゼからなる群から選んだ酵素1つ又はそれ以上とを含む、請求項5に記載の酵素組成物。
- 酵素が、糸状菌由来である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酵素組成物。
- 糸状菌が、アクレモニウム属、アスペルギルス属、フミコーラ属、トリコデルマ属、フザリウム属、又はリゾプス属に属する微生物である、請求項8に記載の酵素組成物。
- 糸状菌が、アクレモニウム・セルロリティカス、アスペルギルス・ニガー、フミコーラ・インソレンス、トリコデルマ・ビリデ、フザリウム・オキシスポーラス、又はリゾプス・オリゼである、請求項9に記載の酵素組成物。
- 家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素として、糸状菌の培養物若しくはその培養上清、又はそれらの乾燥物を用いる、請求項1に記載の酵素組成物。
- 糸状菌が、アクレモニウム・セルロリティカス又はトリコデルマ・ビリデである、請求項11に記載の酵素組成物。
- 家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素を含むことを特徴とする、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化用の飼料調製物。
- ガラクタナーゼ活性として10,000〜18,000,000単位/t・飼料の活性を示すガラクタナーゼ、キシラナーゼ活性として10,000〜4,000,000単位/t・飼料の活性を示すキシラナーゼ、β−グルカナーゼ活性として50,000〜35,000,000単位/t・飼料の活性を示すβ−グルカナーゼ、アラビナーゼ活性として1,000〜700,000単位/t・飼料の活性を示すアラビナーゼ、及びポリガラクツロナーゼ活性として20,000〜15,000,000単位/t・飼料の活性を示すポリガラクツロナーゼからなる群から選んだ酵素1つ又はそれ以上を含む、請求項13に記載の飼料調製物。
- ガラクタン類、キシラン類、アラビナン類、ペクチン、及びβ−グルカンからなる群から選んだ飼料原料1つ又はそれ以上を含む、請求項13又は14のいずれか一項に記載の飼料調製物。
- ダイズ、トウモロコシ、マイロ、コムギ、エンバク、及びライムギからなる群から選んだ飼料原料1つ又はそれ以上を含む、請求項13又は14のいずれか一項に記載の飼料調製物。
- 家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素を、繊維質材料を含む飼料原料と共に、家禽に摂取させることを特徴とする、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化のための方法。
- 家禽の消化管内において繊維質材料から難消化性オリゴ糖を生成可能な酵素の、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、産卵期間延長、及び/又は骨密度強化用の酵素組成物又は飼料調製物を製造するための使用。
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