JPWO2003026017A1 - シリコンクラスタ超格子、シリコンクラスタ超格子の製造方法、シリコンクラスタの製造方法、シリコンクラスタ超格子構造物、シリコンクラスタ超格子構造物の製造方法、半導体デバイスおよび量子デバイス - Google Patents
シリコンクラスタ超格子、シリコンクラスタ超格子の製造方法、シリコンクラスタの製造方法、シリコンクラスタ超格子構造物、シリコンクラスタ超格子構造物の製造方法、半導体デバイスおよび量子デバイス Download PDFInfo
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Abstract
シリコンを含んでなるシリコンクラスタ(3a・3b)を水(2)に分散することにより、サイズが同一であるシリコンクラスタ(3a)を水中で凝集・自己組織化させて立方晶を形成させる。これにより、シリコンクラスタ(3a)により周期的かつ規則的な構造が形成されてなるシリコンクラスタ超格子(10)とする。
Description
技術分野
本発明は、単結晶シリコン等のバルクシリコンとは大きく異なる物理的・化学的性質を有するシリコンクラスタが二次元的もしくは三次元的に周期的に規則正しく配列されてなるシリコンクラスタ超格子、シリコンクラスタ超格子の製造方法、シリコンクラスタの製造方法、シリコンクラスタ超格子が疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上に形成されてなるシリコンクラスタ超格子構造物、シリコンクラスタ超格子構造物の製造方法、半導体デバイス、および量子デバイスに関するものである。
背景技術
ナノメータ(nm)以下のオーダーの粒径を有するシリコンは、バルクシリコンとは大きく異なる物理的・化学的性質を有するため、近年、新機能性材料として大きな関心を集めている。たとえば、ナノメータオーダーの粒径を有するシリコンナノ結晶には、シリコン単結晶とは異なるバンド構造と表面準位効果とに基づいた発光が観測されることが知られている。
ナノメータオーダー以下の粒径を有するシリコンとしては、上記シリコンナノ結晶以外に、その内部構造がダイヤモンド型構造ではないという点で上記シリコンナノ結晶と異なるシリコンクラスタが挙げられる。このシリコンクラスタを新機能性材料として利用するためには、シリコンクラスタを大量に作製する方法、特定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す方法、およびシリコンクラスタを二次元的または三次元的に周期的に配列させる方法が必要である。シリコンクラスタを作製する従来の方法としては、超高真空中でシリコンを蒸発させる方法が挙げられ、特定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す従来の方法としては、質量分析器を用いた方法が挙げられる(例えば、文献:L.A.Bloomfield,R.R.Freeman,W.L.Brown,“Photofragmentation of mass−resolved Si+ 2−12 clusters”,Phys.Rev.Lett.,54,p.2246−2249(1985)など。)。
しかし、上記シリコンクラスタの作製方法は、超高真空装置が必要であること、およびシリコンクラスタの収量が極めて少ないということから、生産性、経済性の面で工業的応用に向かないという問題点がある。また、上記質量分析器を用いて特定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す方法も、上記シリコンクラスタの作製方法と同様、生産性、経済性の面で工業的応用に向かないという問題点がある。
また、シリコンクラスタを新機能性材料として利用するためには、シリコンクラスタを、無秩序に並んだものではなく、二次元的または三次元的に周期的に配列させてなる超格子とすることが有効である。しかし、シリコンクラスタを周期的に配列させる方法は未だ開発されていないため、シリコンクラスタが周期的に配列されてなるシリコンクラスタ超格子は未だに作製されておらず、その化学的性質ならびに物理的性質については未だ調べられていない。
このシリコンクラスタ超格子は、上記したように、バルクシリコンとは大きく異なる物理的・化学的性質を有するため、種々の分野において、新機能性材料として用いることができる可能性がある。具体的な適用分野としては、たとえば、量子効果を利用した電子デバイスや超高密度メモリー、光デバイス、量子半導体デバイス、3次元高集積半導体、量子細線、フォトダイオード、半導体レーザ、光集積回路光源、光共振回路光源、記憶素子などが挙げられる。このように、シリコンクラスタ超格子は新機能性材料として有用であるため、大量のシリコンクラスタを製造する方法、一定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す方法、およびシリコンクラスタを周期的に配列させる方法、すなわちシリコンクラスタ超格子を作製する方法が嘱望されている。
本発明は、たとえば、量子効果を利用した電子デバイス等の新機能性材料として用いられるシリコンクラスタ超格子、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上にシリコンクラスタが形成されてなるシリコンクラスタ超格子構造物、半導体デバイス、および量子デバイスを提供すること、ならびに生産性、経済性の面で工業的応用に適したシリコンクラスタ超格子の製造方法、シリコンクラスタの製造方法、およびシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を提供することを目的としている。
発明の開示
本発明者らは、シリコンクラスタを大量に製造する方法、およびシリコンクラスタにより周期的な構造を形成しシリコンクラスタ超格子を製造する方法について、鋭意検討した結果、酸素を微量含む不活性ガス雰囲気中でシリコンを蒸発させることにより、その内部にシリコンクラスタが存在しているシリコンリッチなシリコン酸化物(アモルファスシリコン酸化物)の微粒子が作製されることを見出した。すなわち、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中でシリコンを蒸発させることにより、シリコン酸化物に内包された状態のシリコンクラスタを大量に製造できることを見出した。
そして、シリコンクラスタを水あるいは水溶液に分散し、凝集させることにより、水中でシリコンクラスタのサイズ分別を行い、同一のシリコンクラスタを水中で自己集合させて超格子を成長させることができること見出した。すなわち、シリコンクラスタを水に分散すると、疎水性効果により、特定のサイズのシリコンクラスタのみが、空気/水界面や固体基板の疎水性表面に集まるため、シリコンクラスタをサイズにより分別することができる。また、このように空気/水界面や固体基板の疎水性表面に集まった同一サイズのシリコンクラスタは、水あるいは水溶液中で凝集して周期的な構造を形成し、超格子を成長させる。すなわち、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより、水中で特定のサイズのシリコンクラスタを自己整合的に整列、自己組織化させて、シリコンクラスタ超格子を製造することができることを確認して本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のシリコンクラスタ超格子は、シリコンを含んでなるシリコンクラスタにより超格子構造が形成されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、シリコン単結晶等のバルクシリコンとは異なる性質を示すシリコンクラスタを、例えば、シリコンを用いてなるデバイスを形成するための新規材料として用いることができる。すなわち、シリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタが周期的かつ規則的に配列したものであるため、新機能性材料として非常に有用である。
なお、本発明において「シリコンクラスタ」とは、複数のシリコン原子が凝集することにより形成されたシリコン原子の集団であって、その内部構造がダイヤモンド型構造ではないものをいう。また、「超格子」とは、基本的な結晶構造に重なった形で形成される秩序構造をいう。上記シリコンクラスタは、主にシリコン原子により構成されてなるものであればよく、その表面あるいは内部にシリコン以外の原子や官能基等を含むものであってもよい。また、その表面に、水素等のシリコン以外の原子が結合している場合には、表面に結合している原子をも含めたものをシリコンクラスタというものとする。
また、シリコンクラスタの内部構造はダイヤモンド型構造ではなく、シリコンクラスタを形成するシリコン原子の数やその大きさにより異なるものである。このため、シリコンクラスタ超格子を形成するシリコンクラスタの種類を選択することにより、特有の性質をシリコンクラスタ超格子に付与することも可能である。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子の製造方法は、シリコンクラスタにより超格子が形成されてなるシリコンクラスタ超格子を製造する方法であって、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることを特徴としている。
上記の発明によれば、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより、疎水性であるシリコンクラスタは、疎水性効果により疎水性物質と接しようとする。たとえば、シリコンクラスタを分散する水の表面が空気と接している場合には、疎水性効果によりシリコンクラスタは空気/水界面に集合しようとする。この際に、サイズの大きなシリコンクラスタは、重力の影響により空気/水界面に移動することができず、サイズの小さなシリコンクラスタのみが空気/水界面に移動する。
したがって、シリコンクラスタを水に分散することにより、疎水性効果により水中を移動できるサイズの小さなシリコンクラスタのみを、空気/水界面に移動させて凝集させることが可能となる。一方、大きなサイズのシリコンクラスタまたは粒子は、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させる際に重力により底に沈む。すなわち、シリコンクラスタを水に分散することは、大きなサイズのシリコンクラスタまたは粒子の振るい落としに相当し、これにより、シリコンクラスタのサイズの大まかな分別を行うことができる。このため、疎水性効果により、空気/水界面に移動したシリコンクラスタのサイズはある程度揃ったものとなる。
ここで、一般に、ある程度サイズの揃った粒子が溶液内で自己集合し、格子状に配列する場合は同一サイズの粒子同士が集まる傾向にあるが、本発明者らは、シリコンクラスタも同様の傾向を示すことを見出した。すなわち、シリコンクラスタを水に分散させることにより、ある程度サイズの揃ったシリコンクラスタが空気/水界面に移動し、空気/水界面において同一サイズのシリコンクラスタが凝集し、自己組織化して超格子を形成することを見出した。したがって、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより、新機能性材料として有用なシリコンクラスタ超格子を容易に製造することができる。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物は、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上に、上記シリコンクラスタ超格子が形成されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、シリコンクラスタ超格子構造物により、例えば、シリコンを用いてなるデバイスを作製することができる。すなわち、シリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタが周期的かつ規則的に配列したものであるため、例えば、シリコンクラスタ超格子構造物により、シリコンクラスタを用いた三次元高集積半導体等を作製することが可能である。なお、疎水性表面を有する固体基板としては、シリコン基板(シリコンウェハー)やグラファイト基板等が挙げられる。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物は、上記固体基板としてシリコン基板を用い、該シリコン基板の上記疎水性表面は、シリコン基板表面の酸化物を除去して水素を付加してなるものであることを特徴としている。
上記の発明によれば、水素が付加されたシリコン基板に、電子ビームやイオンビームを照射して描画を行うことにより、上記シリコン基板上に簡単に、任意の形状に疎水性表面を形成して、パターン化することができる。したがって、この疎水性表面に、シリコンクラスタ超格子を成長させれば、非常に簡略化した工程にて、容易に回路パターンを形成することが可能になる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施の形態および実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
本発明のシリコンクラスタ超格子の実施の一形態として、シリコンを含んでなるシリコンクラスタにより超格子が形成されてなるものについて以下に説明する。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子の構造の概略について、図1を用いて説明する。同図に示すように、本実施の形態のシリコンクラスタ超格子10は、同じサイズのシリコンクラスタ3aにより立方晶が形成されたものである。同図には、シリコンクラスタ3aが立方晶を形成したものを示しているが、超格子の構造としては、立方晶の他に、六方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶、三方晶等が挙げられる。また、シリコンクラスタ超格子の単位格子の構造としては、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子、底心格子等が挙げられる。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子を形成するシリコンクラスタは、複数のシリコン原子が凝集することにより形成されたシリコン原子の集団であって、その内部構造がダイヤモンド型構造ではないものをいう。シリコンクラスタの形状としては、たとえば、球形、多面体、紡錘形、平板形、およびそれらの歪んだ形状が挙げられる。上記例示したシリコンクラスタの形状の中では、球形もしくは多面体のものが水に分散した場合に、シリコンクラスタ超格子10を形成しやすいため好ましい。
また、シリコンクラスタ超格子10は、形状および大きさが同じシリコンクラスタ3aにより形成されたものであることが好ましい。シリコンクラスタ3aの大きさは特に限定されないが、粒径が0.5〜2nmの範囲内であることが好ましく、0.5〜1nmの範囲内であることがより好ましい。シリコンクラスタ3aの粒径を上記範囲内とすることにより、疎水性効果により水中を移動することが容易となるため、空気/水界面に集合してシリコンクラスタ超格子10を形成し易い。シリコンクラスタ3aを構成するシリコン原子の数は特に限定されないが、10〜200個の範囲内のものが好ましく、10〜20個の範囲内のものがより好ましい。
シリコンクラスタ3aは主にシリコンにより構成されてなるものであるが、シリコン以外の原子や官能基等を含んでいてもよい。シリコン以外の原子等はシリコンクラスタ3aの内部に含まれていてもよく、あるいはシリコンクラスタ3aの表面に結合したものであってもよい。シリコンクラスタ3aに含まれるシリコン以外の原子等としては、その表面に結合するものとして、水素や水酸基等が挙げられ、内包されるものとしては、鉄やルテニウム等の金属原子や、アルゴンやキセノン等の不活性ガス原子等が挙げられる。
シリコンクラスタを製造する方法は特に限定されないが、たとえば、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中でシリコンを蒸発させるガス蒸発法により製造することができる。ガス蒸発法を用いることにより、内部に大量のシリコンクラスタを含むシリコンリッチなシリコン酸化物を得ることができる。なお、シリコンクラスタを製造する方法としては、上記ガス蒸発法以外に、スパッター法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
また、ガス蒸発法は、シリコン蒸発時における雰囲気ガスの圧力、シリコンの蒸発速度、蒸発源としてのシリコンの温度、雰囲気ガスとして用いる不活性ガスの種類、雰囲気ガス中の酸素濃度、蒸発したシリコンを蒸着させる基板の設置位置等の条件を制御することにより、シリコン酸化物の大きさ、およびこのシリコン酸化物に含まれるシリコンクラスタのサイズ分布を制御することができる。
上記ガス蒸発法の条件は、製造されるシリコンクラスタのサイズ等に応じて適宜設定されればよいが、たとえば、雰囲気ガスの圧力を1.33×102〜1.33×103Pa(1〜10Torr)の範囲内とし、雰囲気ガスとして0.02体積%以下の酸素を含むヘリウムを用い、蒸発源としてのシリコンの温度を1500〜1600℃の範囲内としてシリコンを蒸発させることにより、大量のシリコンクラスタを内包したシリコン酸化物が得られる。
上記ガス蒸発法おいて、雰囲気ガスとして用いられる不活性ガスとしては、上記ヘリウム以外に、アルゴン、窒素等が挙げられる。なお、ガス蒸発法では、雰囲気ガス圧を低くする程、得られる微粒子の粒径を小さくすることができる。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより製造できる。なお、上記ガス蒸発法により製造されたシリコンクラスタは、シリコン酸化物に内包されたものとして得られるため、ガス蒸発法により製造されたシリコンクラスタを水に分散するには、シリコンクラスタの周りのシリコン酸化物を取り除く必要がある。シリコン酸化物はフッ化水素酸により容易に溶解するため、シリコン酸化物を水に分散したものにフッ化水素酸を添加することにより、シリコン酸化物を溶解し、内包されているシリコンクラスタを水に分散することができる。
図2に示すように、シリコンクラスタ3a・3bを水2に分散すると、サイズの大きなシリコンクラスタ3bは重力によりプラスチック製容器1の底に沈むこととなるが、サイズの小さなシリコンクラスタ3aは疎水性効果により空気/水界面に移動する。このように、サイズ分布を有するシリコンクラスタ3a・3bを水2に分散することにより、水2中で移動可能な、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみを空気/水界面に凝集させることができる。なお、水2は疎水性のシリコンクラスタが空気/水界面に移動することができるものであれば良く、任意の成分を溶解してなる水溶液であってもよい。
そして、空気/水界面に凝集したシリコンクラスタ3aは、自己組織化してシリコンクラスタ超格子10を形成する。
なお、後述の実施例にて詳細に説明するように、シリコンクラスタ3aが空気/水界面に凝集することによって得られるシリコンクラスタ超格子10の単位格子の構造には、2つの異なる単位格子が存在する。この2つの単位格子とは、体心立方格子および面心立方格子である。
具体的には、上記シリコンクラスタ超格子10として、単位格子が体心立方格子であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.60nmであるものが得られる。
これにより、上記シリコンクラスタ超格子10を、たとえば新規な発光素子の材料として有効に利用することができる。すなわち、単位格子が体心立方格子(BCC;Body Centered Cubic)であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.60nmであるシリコンクラスタ超格子10はフォトルミネッセンスで青色又は青緑色に発光するため、たとえば表示素子の新規材料として利用することができる。
また、上記シリコンクラスタ超格子10として、単位格子が面心立方格子であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.53nmであるものも得られる。
これにより、上記シリコンクラスタ超格子10を、たとえば新規な発光素子の材料として有効に利用することができる。すなわち、単位格子が面心立方格子(FCC;Face Centered Cubic)であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.53nmであるシリコンクラスタ超格子10はフォトルミネッセンスで橙色に発光するため、たとえば、表示素子の新規材料として利用することができる。
以上のように、本実施の形態のシリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタにより超格子構造が形成されたものである。このため、本実施の形態のシリコンクラスタ超格子を、たとえば、量子効果を利用した電子デバイスや超高密度メモリー、光デバイス、量子半導体デバイス、3次元高集積半導体、量子細線、フォトダイオード、半導体レーザ、光集積回路光源、光共振回路光源、記憶素子、半導体デバイス、量子デバイスなどの分野において新機能性材料として用いることができる。
〔実施の形態2〕
本発明のシリコンクラスタ超格子の製造方法の実施の一形態として、0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させてシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物とする蒸発工程と、蒸発工程において得られたシリコン酸化物を水に分散する分散工程と、シリコン酸化物が分散された水にフッ化水素酸を添加し、シリコン酸化物を水に溶解することによりシリコン酸化物中のシリコンクラスタを水に分散し、凝集させるフッ化水素酸添加工程とを含むものについて、以下に説明する。
本実施の形態におけるシリコンクラスタ超格子の製造方法は、0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させるシリコン蒸発工程により、シリコン酸化物(アモルファスシリコン酸化物)の微粒子中に内包されたシリコンクラスタを得ることができる。
そして、シリコン蒸発工程において、シリコン蒸発時における雰囲気ガスの圧力、シリコンの蒸発速度、蒸発源としてのシリコンの温度、雰囲気ガスとしての不活性ガスの種類、雰囲気ガス中の酸素濃度、蒸発したシリコンを蒸着させる基板の設置場所等の条件を制御することにより、得られるシリコンクラスタのサイズ分布を制御することができる。
ここで、シリコンクラスタ超格子を形成するための、シリコン酸化物、およびフッ化水素酸の量は、シリコンクラスタを内包するシリコン酸化物の製造条件、すなわち蒸発工程の条件により異なるため、蒸発工程の条件に応じて設定すればよい。たとえば、シリコン蒸発工程において、0.02体積%の酸素を含むヘリウム雰囲気の下、圧力1.33×102〜1.33×103Pa(1〜10Torr)、室温(25℃)の条件で、シリコンを1500℃〜1600℃に加熱して蒸発させた場合は、水に分散するシリコン酸化物の量を0.2重量%とし、シリコン酸化物の分散されている水のフッ化水素酸濃度が0.4〜0.5重量%となる量のフッ化水素酸を添加する。これにより、同一サイズのシリコンクラスタが立方晶を形成してなるシリコンクラスタ超格子が得られる。
フッ化水素酸を添加した後、シリコンクラスタ超格子を成長させる際、シリコンクラスタ超格子の成長時間(シリコンクラスタが凝集する時間)を長く設定することにより、充分に厚い3次元のシリコンクラスタ超格子が得られる。逆に、成長時間を短く設定すれば、単シリコンクラスタ層や数シリコンクラスタ層のシリコンクラスタ超格子が得られる。また、シリコンクラスタ超格子の成長時間が同じである場合には、シリコンクラスタ濃度(水に分散しているシリコンクラスタの量)を高くすることにより、充分に厚い3次元のシリコンクラスタ超格子が得られ、シリコンクラスタ濃度を低くすることにより、単シリコンクラスタ層や数シリコンクラスタ層のシリコンクラスタ超格子が得られる。なお、シリコンクラスタ超格子の成長時間は、所望のシリコンクラスタ層の厚さや、シリコンクラスタ濃度に応じて適宜設定すればよいが、2時間以上とすることが好ましい。
以上のように、本発明のシリコンクラスタの製造方法は、0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させてシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物とすることを特徴としている。
上記の発明によれば、大量のシリコンクラスタを内包しているシリコン酸化物(アモルファスシリコン酸化物)の粒子を容易に製造することができる。すなわち、シリコン酸化物に内包された状態のシリコンクラスタを大量かつ容易に製造することが可能である。
また、シリコンの蒸発時における雰囲気ガスの圧力、シリコンの蒸発速度、蒸発源としてのシリコンの温度、雰囲気ガスとして用いる不活性ガスの種類、雰囲気ガス中の酸素濃度、蒸発したシリコンを蒸着させる基板の設置場所を制御することにより、シリコンクラスタのサイズ分布を制御することが可能である。このため、上記の条件を調整することにより、シリコン酸化物に内包された所望のサイズのシリコンクラスタを容易かつ大量に製造することが可能である。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子の製造方法は、上記シリコンクラスタの製造方法により製造されたシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物を水に分散する分散工程と、シリコン酸化物が分散された水にフッ化水素酸を添加し、シリコン酸化物を水に溶解することによりシリコン酸化物中のシリコンクラスタを水に分散し、凝集させるフッ化水素酸添加工程とを含むことを特徴としている。
上記の発明によれば、新機能性材料として有用なシリコンクラスタ超格子を容易に製造することができる。すなわち、蒸発工程において得られたシリコン酸化物は親水性であり容易に水に分散する。このため、シリコンクラスタをシリコン酸化物に内包された状態で水に均一に分散させることができる。そして、このシリコン酸化物が分散されている水にフッ化水素酸を加えることにより、シリコンクラスタを包んでいるシリコン酸化物が水に溶解する。これにより、シリコンクラスタを包んでいた親水性のシリコン酸化物が水に溶けるため、シリコン酸化物中のシリコンクラスタが水に分散される。そして、表面が疎水性であるシリコンクラスタは水中で疎水性効果により互いに集合し始める。
すなわち、フッ化水素酸の添加により、表面のシリコン酸化物がフッ化水素酸により溶解されて、その表面が疎水性となったシリコンクラスタは、疎水性効果により他の疎水性物質と接しようとする。これにより、上記説明したように、ある程度サイズの揃ったシリコンクラスタが空気/水界面に移動し、空気/水界面において、同一サイズのシリコンクラスタが凝集し、自己組織化してシリコンクラスタ超格子を形成する。
ここで、水に分散させるシリコン酸化物の量、およびシリコン酸化物を溶解するために添加するフッ化水素酸の量を調整することにより、シリコン酸化物が水に溶けて水中に供給されるシリコンクラスタの量を調整することができる。このため、シリコンクラスタの空気/水界面へ移動、集合を、シリコンクラスタ超格子の形成に適した速さに調整することが可能となる。これにより、シリコンクラスタ超格子をより確実に形成することができる。
〔実施の形態3〕
本発明の実施の一形態として、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上にシリコンクラスタ超格子が形成されているシリコンクラスタ超格子構造物について以下に説明する。
シリコンクラスタ超格子構造物を構成するシリコンクラスタ超格子の構造および、シリコンクラスタは、実施の形態1および2において説明したため、本実施の形態においては説明を省略する。
上記疎水性表面を有する固体基板とは、その表面に疎水性の領域、すなわち疎水性表面を有するものをいい、たとえば、シリコンウェハー、グラファイト、アモルファスカーボン、テフロン(登録商標)、ダイフロン、ポリエチレン、ポリスチレンなどが挙げられる。これら固体基板の中では、シリコンウェハー(シリコン基板)が好ましい。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子構造物は、図3に示すように、シリコンクラスタ3a・3bが分散された水2中に固体基板5の疎水性表面6を浸漬することにより製造することができる。シリコンクラスタ3a・3bを含む水2に疎水性表面6を浸すことによって、実施例1で説明した空気/水界面におけるシリコンクラスタ超格子10と同様に、疎水性表面6上にシリコンクラスタ超格子10を成長させることが可能である。
固体基板5は、シリコンクラスタ超格子10を成長させようとする疎水性表面6が水2の液面に対して垂直となるように設置するが、もしくは疎水性表面6を下向きにし(上記水2の液面と平行であって、水2の液面に対向しないようにする)、プラスチック製容器1の底から離して設置すると良い。プラスチック製容器1の底から疎水性表面6までの距離は1cm以上とすることが好ましい。これにより、水2中のシリコンクラスタ3a・3bのうち、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみを疎水性表面6上に集め、シリコンクラスタ超格子10を成長させることができ、シリコンクラスタ超格子構造物20が得られる。
また、リソグラフィー技術等を用いて、パターン化されている疎水性表面6を固体基板5に形成することは容易である。すなわち、リソグラフィー技術を利用すれば、たとえば、親水性表面を有する固体基板5上の任意の場所を疎水性に変化させて疎水性表面6とし、その疎水性表面6の部分のみにシリコンクラスタ超格子10を成長させることができる。これにより、固体基板5上にシリコンクラスタ超格子10により回路パターンが形成されているシリコンクラスタ超格子構造物20を容易に作製することが可能である。
あるいは、上記固体基板5として、シリコン基板を用い、該シリコン基板表面の酸化物を除去して水素を付加してなる水素終端されたシリコン基板を用いれば、リソグラフィー技術を用いることなく、シリコン基板上に疎水性表面をパターン化することができる。すなわち、水素終端させたシリコン基板に、電子ビームやイオンビームを照射すれば、シリコン基板表面の水素が除去されて、親水性表面となる。そのため、このような電子線やイオンビームによる描画によって、容易に、水素終端されたシリコン基板上に疎水性表面を任意の形状にパターン化して形成することができる。
したがって、水素終端されたシリコン基板を用いれば、リソグラフィー技術のように、マスクを用いた多段階に及ぶ複雑な工程を必要とすることなく、疎水性表面のパターン化を行うことができる。それゆえ、この疎水性表面に、上記したシリコンクラスタ超格子を成長させれば、リソグラフィー技術を用いた場合に比べて、非常に簡略化した工程で、容易に回路パターンを形成することが可能になる。
上記のいずれかの手法を用いれば、固体基板5上に、たとえば疎水性表面6により回路パターンを形成し、疎水性表面6上にのみシリコンクラスタ超格子10を容易に形成することができる。したがって、固体基板5上に所望の形状(パターン)を有するシリコンクラスタ超格子10を成長させ、シリコンクラスタ超格子構造物を作成すれば、たとえば固体基板5上にシリコンクラスタ3aにより形成されたシリコン細線などを作製することができる。
それゆえ、シリコンクラスタ超格子構造物20を用いることによって、所望の形状のシリコンクラスタ超格子10が形成されている三次元高集積半導体等の半導体デバイスや量子デバイス等を作製することができる。なお、上記「量子デバイス」とは量子効果を利用したデバイスをいう。
上記シリコンクラスタ超格子構造物20は、従来の湿式の集積回路作成過程より製造することができ、シリコンクラスタ超格子10の形成されているシリコンクラスタ超格子構造物20を集積回路の一部に組み込むことができる。このため、従来の湿式の集積回路作製過程により、シリコンクラスタ超格子構造物20を作製し、新機能性材料として有効に利用することができる。
なお、後述の実施例にて詳細に説明するように、疎水性表面を有する固体基板上にシリコンクラスタを凝集させて得られるシリコンクラスタ超格子の構造は、単位格子が体心立方格子(BCC)である構造であって、格子定数やシリコンクラスタの中心間距離が互いに異なる2種類の構造が存在する。
これに対し、上記実施の形態1にて説明したように、空気/水界面に凝集することによって得られるシリコンクラスタ超格子の構造には、単位格子が体心立方格子(BCC)である構造と、単位格子が面心立方格子(FCC)である構造との2種類が存在している。
つまり、シリコンクラスタを固体基板上に凝集させる場合と、シリコンクラスタを空気/水界面に凝集させる場合とで、得られるシリコンクラスタ超格子の単位格子の構造や、同じ種類の単位格子であっても、その格子定数やシリコンクラスタの中心間距離が異なることになる。このように、得られた単位格子の構造または格子定数やシリコンクラスタの中心間距離が異なれば、シリコンクラスタ超格子の発色も異なる。
したがって、上記シリコンクラスタ超格子やシリコンクラスタ構造物を、発光素子の材料として用いる場合には、所望する発光色が得られるように、固体基板上または空気/水界面に、シリコンクラスタ超格子を形成すればよい。
以上のように、本発明のシリコンクラスタ構造物では、上記固体基板がシリコン基板であることが好ましい。シリコン基板を用いることにより、従来の湿式の集積回路作製過程において、シリコンクラスタ構造物を製造することが非常に容易であり、従来の湿式の集積回路作製に用いられている装置を用いて製造することができる。
また、本発明のシリコンクラスタ構造物は、上記固体基板がパターン化されている疎水性表面を有するものであって、パターン化されている疎水性表面上にのみ上記シリコンクラスタ超格子が形成されているものである。
これにより、シリコンクラスタ超格子構造物により、例えば、所望の形状のシリコンクラスタ超格子が形成されている三次元高集積半導体等のデバイスを作製することができる。
すなわち、リソグラフィー技術や、電子線やイオンビームによる描画等により固体基板にパターン化されている疎水性表面を形成することは容易である。このため、固体基板上に、たとえば回路パターン等の疎水性表面のパターンを形成し、このパターン化されている疎水性表面上にのみシリコンクラスタ超格子を形成することができる。これにより、該疎水性表面と同じパターンをシリコンクラスタ超格子により形成することが可能である。
したがって、シリコンクラスタ超格子構造物を用いて、所望の形状のシリコンクラスタ超格子が形成されている三次元高集積半導体等の半導体デバイスや量子デバイス等を作製することができる。このように、実施の形態1・2において説明したシリコンクラスタ超格子および上記シリコンクラスタ超格子構造物の少なくとも一方を含み、シリコンクラスタが周期的かつ規則的に配列してなるシリコンクラスタ超格子を用いることにより、たとえばシリコン細線の微細な回路などが形成されている新規な半導体デバイスや量子デバイスを提供することができる。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法は、シリコンクラスタが分散されている水に、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面を浸漬し、該疎水性表面上にシリコンクラスタを凝集させる方法である。
上記の方法によれば、固体基板の疎水性表面上にシリコンクラスタを形成することができるため、シリコンクラスタ超格子構造物を容易に作製することができる。また、パターン化されている疎水性表面を有する固体基板を用いることにより、疎水性表面上にのみシリコンクラスタを形成することができる。すなわち、固体基板上にシリコンクラスタのパターンを形成することができる。このため、シリコンクラスタ超格子により所望のパターンが形成されているシリコンクラスタ超格子構造物を容易に作製することができる。
すなわち、シリコンクラスタを分散させた水に、固体基板の疎水性表面を浸漬することによって、上記説明した空気/水界面でのシリコンクラスタ超格子の成長と同様に、固体基板上の疎水性表面上にシリコンクラスタを凝集させ、シリコンクラスタ超格子を成長させることができる。このため、シリコンクラスタ超格子構造物を容易に作製することができる。
ここで、固体基板の疎水性表面上に成長させるシリコンクラスタのサイズを選択するためには、疎水性表面が水面に対して垂直になるように固体基板を設置すること、または、疎水性表面を鉛直下向きにし、かつシリコンクラスタの分散している水の容器の底から離して固体基板を設置することが好ましい。これにより、サイズの大きなクラスタが疎水性表面上に堆積することを防止し、疎水性効果により移動可能な、サイズの小さいシリコンクラスタのみを疎水性表面上に効率よく集めてシリコンクラスタ超格子を形成させることができる。
なお、固体基板としてシリコン基板を用いる場合、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を従来の湿式の集積回路作製過程に組み込むことが容易である。このため、従来の湿式の集積回路作製に用いられている装置を用いて、シリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を実施することができる。
以上、各実施の形態に基づいて説明したように、本発明によれば、シリコンクラスタ超格子を簡便に大量に作製することが可能である。シリコンクラスタ超格子は、空気/水界面などの気/液界面に成長させることも可能であるし、疎水性表面を有する固体基板上の疎水性表面上に成長させることも可能である。さらに、シリコンクラスタの分散された水あるいは水溶液中に、たとえば、パターン化された疎水性表面を有するシリコン基板を浸漬することにより、シリコンクラスタが疎水性表面上に凝集し自己組織化する。このため、疎水性表面を有する固体基板上にシリコンクラスタ超格子を容易に形成することができる。したがって、本発明のシリコンクラスタ超格子を、従来の湿式の集積回路作製過程に組み込むこと、すなわち従来の湿式の集積回路作製過程を用いて製造することは容易であり、今後の電子デバイスの高機能化に大きく寄与することが可能である。
〔実施例1〕
0.02体積%の酸素を含むヘリウム雰囲気の下、圧力1.33×102Pa(1Torr)、室温(25℃)の条件で、シリコンを1500〜1600℃として蒸発させ、酸素を含んだアモルファスシリコン(SiOx、x=1.8)微粒子を作製した。
上記の方法により作製されたアモルファスシリコン微粒子2mgを1mlの蒸留水中に分散させた後に、このアモルファスシリコン微粒子が分散された蒸留水に47重量%のフッ化水素酸10μlを一度に添加した。アモルファスシリコン微粒子が分散された蒸留水中にフッ化水素酸を添加することにより、アモルファスシリコン微粒子のシリコン酸化物が取り除かれるため、アモルファスシリコン中のシリコンクラスタがフッ化水素酸の添加された水中に放出される。
そして、図2に示すように、水2に放出されたシリコンクラスタ3a・3bのうち、サイズの大きいシリコンクラスタ3bは重力によりプラスチック製容器1の底に沈降し、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみが疎水性効果によって空気/水界面へ移動する。このようにして、空気/水界面にサイズの小さいシリコンクラスタ3aよりなるシリコンクラスタ超格子10を形成した。
また、シリコンクラスタ超格子10は、水2中にシリコンクラスタ3aが存在している限り、フッ化水素酸添加後の時間に応じて成長するものであるが、本実施例のシリコンクラスタ超格子10は、フッ化水素酸添加後二週間が経過した時点で水2から取り出した。
上記のようにして得られたシリコンクラスタ超格子10を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図4〜6に示す。図4および図5は、空気/水界面に形成された集積物として得られたシリコンクラスタ超格子10の透過型電子顕微鏡像を示す図である。図4より多数の超格子が形成されていること、図4および図5よりシリコンクラスタ超格子10はマイクロメートルサイズにまで成長していることが分かる。
図6は空気/水界面に形成されたシリコンクラスタ超格子10を、図4および図5よりも高倍率で撮影した透過型電子顕微鏡像を示す図である。同図に示すように、超格子構造が形成されていることを示す格子縞が認められる。そして、この格子縞は広範囲に認められ、均一な大きさのシリコンクラスタにより超格子構造が広範囲に形成されていることが分かる。
また、シリコンクラスタ超格子10の電子線回折測定を行った結果、図7に示すように、シリコンクラスタ超格子10はシリコンクラスタが単結晶状に配列したものであり、その結晶構造は立方晶であり、ほとんどの超格子が[001]に配向していることが分かった。表1にシリコンクラスタの電子線回折パターンの解析結果を示す。
シリコンクラスタ超格子の電子線回折パターンを解析した結果、表1に示すように、隣接するシリコンクラスタ3aの中心間距離(隣接したシリコンクラスタの中心間距離)が異なる2種類の構造が存在することが分かった。この2種類のシリコンクラスタ超格子の構造は、隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nm(5.3Å)の超格子と0.60nm(6.0Å)の超格子であった。また、隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nmのものは単位格子が面心立方格子(FCC)であり、隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.60nmのものは単位格子が体心立方格子(BCC)であった。
上記2種類のシリコンクラスタ超格子のフォトルミネッセンススペクトルを測定した結果を図8に示す。本実施例においては、波長435nmの励起光を用いてフォトルミネッセンスの測定を行った。また、スペクトルの測定時には、波長480nm以下の光をカントする光学フィルターをモノクロメータの前に入れ、ディテクターへ励起光が進入することを防止した。
図8に示すように、シリコンクラスタ超格子は、その超格子構造の違いによりフォトルミネッセンススペクトルが異なることが分かった。すなわち、単位格子が面心立方格子(FCC)であるシリコンクラスタ超格子は、610nmにスペクトルピークを有し、単位格子が体心立方格子(BCC)であるシリコンクラスタ超格子は、520nmにスペクトルピークを有していた。
また、上記2種類のシリコンクラスタ超格子を蛍光顕微鏡にて観察した結果、図9に示す蛍光顕微鏡像が得られ、確かに2色の発光が見られることを確認した。
これらの結果から、単位格子が面心立方格子(FCC)であって隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nmである超格子は橙色に発光し、単位格子が体心立方格子(BCC)であって隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.60nmである超格子は青緑色に発光することが分かった。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして作製した酸素を含んだアモルファスシリコン(SiOx、x=1.8)微粒子を、実施例1と同様にして蒸留水中に分散しフッ化水素酸を添加した後に、図3に示すように、フッ化水素酸を添加した水2に疎水性表面を有する固体基板5を疎水性表面6が鉛直下向きになるように浸漬した。このようにして、水2中のシリコンクラスタ3a・3bのうち、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみを疎水性効果によって疎水性表面6に移動させ、シリコンクラスタ超格子10を形成した。以上のようにして、シリコンクラスタ超格子構造物20を得た。
疎水性表面6上に形成されたシリコンクラスタ超格子10についても、透過型電子顕微鏡による観察および電子線回折の測定を行った結果、実施例1と同様に2種類の超格子構造が形成されていることが確認された。
〔実施例3〕
実施例2と同様に、酸素を含んだアモルファスシリコン(SiOx、x=1.8)微粒子を蒸留水中に分散し、フッ化水素酸を添加した。その後、図10に示すように、フッ化水素酸を添加した水2中にて、シリコン基板(Si(100))35を用いて、該シリコン基板35の疎水性表面36が水面に対して垂直になるように浸漬した。なお、上記シリコン基板35の疎水性表面36は、シリコン基板35表面の酸化物を除去して水素を付加して(水素終端されて)なるものである。
これにより、水2中のシリコンクラスタ33a・33bのうち、サイズの小さいシリコンクラスタ33aのみを疎水性効果によって、シリコン基板35の疎水性表面36に移動させ、シリコンクラスタ超格子31を形成した。以上のようにして、シリコンクラスタ超格子構造物30を得た。
得られたシリコンクラスタ超格子構造物30について、走査型電子顕微鏡による観察を行った。また、シリコン基板35上に成長したシリコンクラスタ超格子31をTEMグリッドにてかき集めて、電子線回折の測定を行った。その結果を図11および図12に示す。
図11に示すように、走査型電子顕微鏡像から、シリコンクラスタ超格子が形成されていることが分かった。シリコンクラスタ超格子はマイクロメートルサイズにまで成長していることが分かる。また、電子線回折の測定から、図12に示すように、得られた超格子は、シリコンクラスタが結晶状に配列したものであることが分かった。
得られた電子線回折パターンの解析結果を表2に示す。なお、表2には、比較のために、実施例1にて、空気/水界面に形成されたシリコンクラスタ超格子(図2)の解析結果も併せて記載している。
表2に示すように、シリコン基板上に成長したシリコンクラスタ超格子は、2種類の異なる構造が存在することが分かった。すなわち、上記シリコンクラスタ超格子の2種類の構造は、ともに体心立方格子(BCC)を単位格子とするものであり、両者は互いに格子定数およびシリコンクラスタの中心間距離が異なっている。具体的には、実施例1にて確認されたものと同じ格子定数a=0.693nmを有する体心立方格子を単位格子として有する構造(以下、BCC(a=0.693nm)構造と記載する)と、格子定数がa=0.611nmである体心立方格子を単位格子として有する構造(以下、BCC(a=0.611nm)構造と記載する)とを確認した。
なお、BCC(a=0.693nm)構造の隣接したシリコンクラスタの中心間距離は0.60nmであり、BCC(a=0.611nm)構造の隣接したシリコンクラスタの中心間距離は0.53nmであった。
上記のシリコンクラスタ超格子の2種類の構造について、実施例1と同様にしてフォトルミネッセンススペクトルを測定した結果、および、蛍光顕微鏡にて観察した結果を図13および図14に示す。
図13に示すフォトルミネッセンススペクトルから、シリコンクラスタ超格子は、その超格子構造の違いによりフォトルミネッセンススペクトルが異なることが分かった。すなわち、BCC(a=0.693nm)構造は、520nmにスペクトルピークを有し、BCC(a=0.611nm)構造は、700nmにスペクトルピークを有することが分かった。また、図14に示す蛍光顕微鏡像から、確かに2色の発光が見られることが分かった。
これらの結果から、BCC(a=0.693nm)構造を有するシリコンクラスタ超格子は、青緑色に発光し、BCC(a=0.611nm)構造を有するシリコンクラスタ超格子は、赤色に発光することが分かった。
このように、シリコン基板上では、面心立方格子(FCC)を単位格子として有するシリコンクラスタ超格子よりもむしろ、体心立方格子(BCC)を単位格子として有するシリコンクラスタ超格子が形成される傾向にあることが分かる。したがって、表2に示すように、空気/水界面では、単位格子が面心立方格子(FCC)のシリコンクラスタ超格子と、単位格子が体心立方格子(BCC)のシリコンクラスタ超格子とが形成されるのに対し、シリコン基板上では、単位格子が体心立方格子(BCC)のシリコンクラスタ超格子のみが形成されることが分かる。
さらに、本実施例3にて得られたシリコンクラスタ超格子構造物30(図10)は、シリコン基板35の表面のうち、水素終端させた疎水性表面36にのみシリコンクラスタ超格子31が形成されたものであった。このことから、シリコンクラスタ超格子31は、疎水性表面36にのみ形成され、シリコン基板35の水素終端していない親水性表面には形成されないことが分かった。
したがって、固体基板上に、親水性表面と疎水性表面とを任意のパターンにて形成することにより、所望の位置にのみシリコンクラスタ超格子を形成してなるシリコンクラスタ超格子構造物を得られることが分かる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施の形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
本発明のシリコンクラスタ超格子は、たとえば、量子効果を利用した電子デバイスや超高密度メモリー、光デバイス、量子半導体デバイス、3次元高集積半導体、量子細線、フォトダイオード、半導体レーザ、光集積回路光源、光共振回路光源、記憶素子、半導体デバイス、量子デバイスなどの分野において新機能性材料として用いることができる。
また、水素終端されたシリコン基板に、電子線やイオンビームの照射することによって、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物を製造すれば、リソグラフィー技術に比べて、非常に簡潔にかつ容易に回路パターンを形成することができるので、生産性や経済性の面から非常に有用である。
さらに、本発明のシリコンクラスタの製造方法によれば、シリコンクラスタを大量かつ容易に製造することができる。したがって、本発明のシリコンクラスタの製造方法は、生産性や経済性の面からも工業的応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のシリコンクラスタ超格子の構造の概略を説明する説明図である。
図2は、実施の形態1のシリコンクラスタ超格子の製造方法を説明する説明図である。
図3は、実施の形態3のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を説明する説明図である。
図4は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図5は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図6は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図7は、実施例1のシリコンクラスタ超格子の電子線回折測定の結果を示す図である。
図8は、実施例1のシリコンクラスタ超格子のフォトルミネッセンス測定の結果を示すスペクトルである。
図9は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を蛍光顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図10は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を説明する説明図である。
図11は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図12は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物のシリコンクラスタ超格子の電子線回折測定の結果を示す図である。
図13は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物のフォトルミネッセンス測定の結果を示すスペクトルである。
図14は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物を蛍光顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
本発明は、単結晶シリコン等のバルクシリコンとは大きく異なる物理的・化学的性質を有するシリコンクラスタが二次元的もしくは三次元的に周期的に規則正しく配列されてなるシリコンクラスタ超格子、シリコンクラスタ超格子の製造方法、シリコンクラスタの製造方法、シリコンクラスタ超格子が疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上に形成されてなるシリコンクラスタ超格子構造物、シリコンクラスタ超格子構造物の製造方法、半導体デバイス、および量子デバイスに関するものである。
背景技術
ナノメータ(nm)以下のオーダーの粒径を有するシリコンは、バルクシリコンとは大きく異なる物理的・化学的性質を有するため、近年、新機能性材料として大きな関心を集めている。たとえば、ナノメータオーダーの粒径を有するシリコンナノ結晶には、シリコン単結晶とは異なるバンド構造と表面準位効果とに基づいた発光が観測されることが知られている。
ナノメータオーダー以下の粒径を有するシリコンとしては、上記シリコンナノ結晶以外に、その内部構造がダイヤモンド型構造ではないという点で上記シリコンナノ結晶と異なるシリコンクラスタが挙げられる。このシリコンクラスタを新機能性材料として利用するためには、シリコンクラスタを大量に作製する方法、特定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す方法、およびシリコンクラスタを二次元的または三次元的に周期的に配列させる方法が必要である。シリコンクラスタを作製する従来の方法としては、超高真空中でシリコンを蒸発させる方法が挙げられ、特定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す従来の方法としては、質量分析器を用いた方法が挙げられる(例えば、文献:L.A.Bloomfield,R.R.Freeman,W.L.Brown,“Photofragmentation of mass−resolved Si+ 2−12 clusters”,Phys.Rev.Lett.,54,p.2246−2249(1985)など。)。
しかし、上記シリコンクラスタの作製方法は、超高真空装置が必要であること、およびシリコンクラスタの収量が極めて少ないということから、生産性、経済性の面で工業的応用に向かないという問題点がある。また、上記質量分析器を用いて特定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す方法も、上記シリコンクラスタの作製方法と同様、生産性、経済性の面で工業的応用に向かないという問題点がある。
また、シリコンクラスタを新機能性材料として利用するためには、シリコンクラスタを、無秩序に並んだものではなく、二次元的または三次元的に周期的に配列させてなる超格子とすることが有効である。しかし、シリコンクラスタを周期的に配列させる方法は未だ開発されていないため、シリコンクラスタが周期的に配列されてなるシリコンクラスタ超格子は未だに作製されておらず、その化学的性質ならびに物理的性質については未だ調べられていない。
このシリコンクラスタ超格子は、上記したように、バルクシリコンとは大きく異なる物理的・化学的性質を有するため、種々の分野において、新機能性材料として用いることができる可能性がある。具体的な適用分野としては、たとえば、量子効果を利用した電子デバイスや超高密度メモリー、光デバイス、量子半導体デバイス、3次元高集積半導体、量子細線、フォトダイオード、半導体レーザ、光集積回路光源、光共振回路光源、記憶素子などが挙げられる。このように、シリコンクラスタ超格子は新機能性材料として有用であるため、大量のシリコンクラスタを製造する方法、一定のサイズのシリコンクラスタのみを取り出す方法、およびシリコンクラスタを周期的に配列させる方法、すなわちシリコンクラスタ超格子を作製する方法が嘱望されている。
本発明は、たとえば、量子効果を利用した電子デバイス等の新機能性材料として用いられるシリコンクラスタ超格子、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上にシリコンクラスタが形成されてなるシリコンクラスタ超格子構造物、半導体デバイス、および量子デバイスを提供すること、ならびに生産性、経済性の面で工業的応用に適したシリコンクラスタ超格子の製造方法、シリコンクラスタの製造方法、およびシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を提供することを目的としている。
発明の開示
本発明者らは、シリコンクラスタを大量に製造する方法、およびシリコンクラスタにより周期的な構造を形成しシリコンクラスタ超格子を製造する方法について、鋭意検討した結果、酸素を微量含む不活性ガス雰囲気中でシリコンを蒸発させることにより、その内部にシリコンクラスタが存在しているシリコンリッチなシリコン酸化物(アモルファスシリコン酸化物)の微粒子が作製されることを見出した。すなわち、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中でシリコンを蒸発させることにより、シリコン酸化物に内包された状態のシリコンクラスタを大量に製造できることを見出した。
そして、シリコンクラスタを水あるいは水溶液に分散し、凝集させることにより、水中でシリコンクラスタのサイズ分別を行い、同一のシリコンクラスタを水中で自己集合させて超格子を成長させることができること見出した。すなわち、シリコンクラスタを水に分散すると、疎水性効果により、特定のサイズのシリコンクラスタのみが、空気/水界面や固体基板の疎水性表面に集まるため、シリコンクラスタをサイズにより分別することができる。また、このように空気/水界面や固体基板の疎水性表面に集まった同一サイズのシリコンクラスタは、水あるいは水溶液中で凝集して周期的な構造を形成し、超格子を成長させる。すなわち、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより、水中で特定のサイズのシリコンクラスタを自己整合的に整列、自己組織化させて、シリコンクラスタ超格子を製造することができることを確認して本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のシリコンクラスタ超格子は、シリコンを含んでなるシリコンクラスタにより超格子構造が形成されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、シリコン単結晶等のバルクシリコンとは異なる性質を示すシリコンクラスタを、例えば、シリコンを用いてなるデバイスを形成するための新規材料として用いることができる。すなわち、シリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタが周期的かつ規則的に配列したものであるため、新機能性材料として非常に有用である。
なお、本発明において「シリコンクラスタ」とは、複数のシリコン原子が凝集することにより形成されたシリコン原子の集団であって、その内部構造がダイヤモンド型構造ではないものをいう。また、「超格子」とは、基本的な結晶構造に重なった形で形成される秩序構造をいう。上記シリコンクラスタは、主にシリコン原子により構成されてなるものであればよく、その表面あるいは内部にシリコン以外の原子や官能基等を含むものであってもよい。また、その表面に、水素等のシリコン以外の原子が結合している場合には、表面に結合している原子をも含めたものをシリコンクラスタというものとする。
また、シリコンクラスタの内部構造はダイヤモンド型構造ではなく、シリコンクラスタを形成するシリコン原子の数やその大きさにより異なるものである。このため、シリコンクラスタ超格子を形成するシリコンクラスタの種類を選択することにより、特有の性質をシリコンクラスタ超格子に付与することも可能である。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子の製造方法は、シリコンクラスタにより超格子が形成されてなるシリコンクラスタ超格子を製造する方法であって、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることを特徴としている。
上記の発明によれば、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより、疎水性であるシリコンクラスタは、疎水性効果により疎水性物質と接しようとする。たとえば、シリコンクラスタを分散する水の表面が空気と接している場合には、疎水性効果によりシリコンクラスタは空気/水界面に集合しようとする。この際に、サイズの大きなシリコンクラスタは、重力の影響により空気/水界面に移動することができず、サイズの小さなシリコンクラスタのみが空気/水界面に移動する。
したがって、シリコンクラスタを水に分散することにより、疎水性効果により水中を移動できるサイズの小さなシリコンクラスタのみを、空気/水界面に移動させて凝集させることが可能となる。一方、大きなサイズのシリコンクラスタまたは粒子は、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させる際に重力により底に沈む。すなわち、シリコンクラスタを水に分散することは、大きなサイズのシリコンクラスタまたは粒子の振るい落としに相当し、これにより、シリコンクラスタのサイズの大まかな分別を行うことができる。このため、疎水性効果により、空気/水界面に移動したシリコンクラスタのサイズはある程度揃ったものとなる。
ここで、一般に、ある程度サイズの揃った粒子が溶液内で自己集合し、格子状に配列する場合は同一サイズの粒子同士が集まる傾向にあるが、本発明者らは、シリコンクラスタも同様の傾向を示すことを見出した。すなわち、シリコンクラスタを水に分散させることにより、ある程度サイズの揃ったシリコンクラスタが空気/水界面に移動し、空気/水界面において同一サイズのシリコンクラスタが凝集し、自己組織化して超格子を形成することを見出した。したがって、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより、新機能性材料として有用なシリコンクラスタ超格子を容易に製造することができる。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物は、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上に、上記シリコンクラスタ超格子が形成されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、シリコンクラスタ超格子構造物により、例えば、シリコンを用いてなるデバイスを作製することができる。すなわち、シリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタが周期的かつ規則的に配列したものであるため、例えば、シリコンクラスタ超格子構造物により、シリコンクラスタを用いた三次元高集積半導体等を作製することが可能である。なお、疎水性表面を有する固体基板としては、シリコン基板(シリコンウェハー)やグラファイト基板等が挙げられる。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物は、上記固体基板としてシリコン基板を用い、該シリコン基板の上記疎水性表面は、シリコン基板表面の酸化物を除去して水素を付加してなるものであることを特徴としている。
上記の発明によれば、水素が付加されたシリコン基板に、電子ビームやイオンビームを照射して描画を行うことにより、上記シリコン基板上に簡単に、任意の形状に疎水性表面を形成して、パターン化することができる。したがって、この疎水性表面に、シリコンクラスタ超格子を成長させれば、非常に簡略化した工程にて、容易に回路パターンを形成することが可能になる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施の形態および実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
本発明のシリコンクラスタ超格子の実施の一形態として、シリコンを含んでなるシリコンクラスタにより超格子が形成されてなるものについて以下に説明する。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子の構造の概略について、図1を用いて説明する。同図に示すように、本実施の形態のシリコンクラスタ超格子10は、同じサイズのシリコンクラスタ3aにより立方晶が形成されたものである。同図には、シリコンクラスタ3aが立方晶を形成したものを示しているが、超格子の構造としては、立方晶の他に、六方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶、三方晶等が挙げられる。また、シリコンクラスタ超格子の単位格子の構造としては、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子、底心格子等が挙げられる。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子を形成するシリコンクラスタは、複数のシリコン原子が凝集することにより形成されたシリコン原子の集団であって、その内部構造がダイヤモンド型構造ではないものをいう。シリコンクラスタの形状としては、たとえば、球形、多面体、紡錘形、平板形、およびそれらの歪んだ形状が挙げられる。上記例示したシリコンクラスタの形状の中では、球形もしくは多面体のものが水に分散した場合に、シリコンクラスタ超格子10を形成しやすいため好ましい。
また、シリコンクラスタ超格子10は、形状および大きさが同じシリコンクラスタ3aにより形成されたものであることが好ましい。シリコンクラスタ3aの大きさは特に限定されないが、粒径が0.5〜2nmの範囲内であることが好ましく、0.5〜1nmの範囲内であることがより好ましい。シリコンクラスタ3aの粒径を上記範囲内とすることにより、疎水性効果により水中を移動することが容易となるため、空気/水界面に集合してシリコンクラスタ超格子10を形成し易い。シリコンクラスタ3aを構成するシリコン原子の数は特に限定されないが、10〜200個の範囲内のものが好ましく、10〜20個の範囲内のものがより好ましい。
シリコンクラスタ3aは主にシリコンにより構成されてなるものであるが、シリコン以外の原子や官能基等を含んでいてもよい。シリコン以外の原子等はシリコンクラスタ3aの内部に含まれていてもよく、あるいはシリコンクラスタ3aの表面に結合したものであってもよい。シリコンクラスタ3aに含まれるシリコン以外の原子等としては、その表面に結合するものとして、水素や水酸基等が挙げられ、内包されるものとしては、鉄やルテニウム等の金属原子や、アルゴンやキセノン等の不活性ガス原子等が挙げられる。
シリコンクラスタを製造する方法は特に限定されないが、たとえば、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中でシリコンを蒸発させるガス蒸発法により製造することができる。ガス蒸発法を用いることにより、内部に大量のシリコンクラスタを含むシリコンリッチなシリコン酸化物を得ることができる。なお、シリコンクラスタを製造する方法としては、上記ガス蒸発法以外に、スパッター法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
また、ガス蒸発法は、シリコン蒸発時における雰囲気ガスの圧力、シリコンの蒸発速度、蒸発源としてのシリコンの温度、雰囲気ガスとして用いる不活性ガスの種類、雰囲気ガス中の酸素濃度、蒸発したシリコンを蒸着させる基板の設置位置等の条件を制御することにより、シリコン酸化物の大きさ、およびこのシリコン酸化物に含まれるシリコンクラスタのサイズ分布を制御することができる。
上記ガス蒸発法の条件は、製造されるシリコンクラスタのサイズ等に応じて適宜設定されればよいが、たとえば、雰囲気ガスの圧力を1.33×102〜1.33×103Pa(1〜10Torr)の範囲内とし、雰囲気ガスとして0.02体積%以下の酸素を含むヘリウムを用い、蒸発源としてのシリコンの温度を1500〜1600℃の範囲内としてシリコンを蒸発させることにより、大量のシリコンクラスタを内包したシリコン酸化物が得られる。
上記ガス蒸発法おいて、雰囲気ガスとして用いられる不活性ガスとしては、上記ヘリウム以外に、アルゴン、窒素等が挙げられる。なお、ガス蒸発法では、雰囲気ガス圧を低くする程、得られる微粒子の粒径を小さくすることができる。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることにより製造できる。なお、上記ガス蒸発法により製造されたシリコンクラスタは、シリコン酸化物に内包されたものとして得られるため、ガス蒸発法により製造されたシリコンクラスタを水に分散するには、シリコンクラスタの周りのシリコン酸化物を取り除く必要がある。シリコン酸化物はフッ化水素酸により容易に溶解するため、シリコン酸化物を水に分散したものにフッ化水素酸を添加することにより、シリコン酸化物を溶解し、内包されているシリコンクラスタを水に分散することができる。
図2に示すように、シリコンクラスタ3a・3bを水2に分散すると、サイズの大きなシリコンクラスタ3bは重力によりプラスチック製容器1の底に沈むこととなるが、サイズの小さなシリコンクラスタ3aは疎水性効果により空気/水界面に移動する。このように、サイズ分布を有するシリコンクラスタ3a・3bを水2に分散することにより、水2中で移動可能な、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみを空気/水界面に凝集させることができる。なお、水2は疎水性のシリコンクラスタが空気/水界面に移動することができるものであれば良く、任意の成分を溶解してなる水溶液であってもよい。
そして、空気/水界面に凝集したシリコンクラスタ3aは、自己組織化してシリコンクラスタ超格子10を形成する。
なお、後述の実施例にて詳細に説明するように、シリコンクラスタ3aが空気/水界面に凝集することによって得られるシリコンクラスタ超格子10の単位格子の構造には、2つの異なる単位格子が存在する。この2つの単位格子とは、体心立方格子および面心立方格子である。
具体的には、上記シリコンクラスタ超格子10として、単位格子が体心立方格子であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.60nmであるものが得られる。
これにより、上記シリコンクラスタ超格子10を、たとえば新規な発光素子の材料として有効に利用することができる。すなわち、単位格子が体心立方格子(BCC;Body Centered Cubic)であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.60nmであるシリコンクラスタ超格子10はフォトルミネッセンスで青色又は青緑色に発光するため、たとえば表示素子の新規材料として利用することができる。
また、上記シリコンクラスタ超格子10として、単位格子が面心立方格子であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.53nmであるものも得られる。
これにより、上記シリコンクラスタ超格子10を、たとえば新規な発光素子の材料として有効に利用することができる。すなわち、単位格子が面心立方格子(FCC;Face Centered Cubic)であって、かつ隣接したシリコンクラスタ3aの中心間距離が0.53nmであるシリコンクラスタ超格子10はフォトルミネッセンスで橙色に発光するため、たとえば、表示素子の新規材料として利用することができる。
以上のように、本実施の形態のシリコンクラスタ超格子は、シリコンクラスタにより超格子構造が形成されたものである。このため、本実施の形態のシリコンクラスタ超格子を、たとえば、量子効果を利用した電子デバイスや超高密度メモリー、光デバイス、量子半導体デバイス、3次元高集積半導体、量子細線、フォトダイオード、半導体レーザ、光集積回路光源、光共振回路光源、記憶素子、半導体デバイス、量子デバイスなどの分野において新機能性材料として用いることができる。
〔実施の形態2〕
本発明のシリコンクラスタ超格子の製造方法の実施の一形態として、0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させてシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物とする蒸発工程と、蒸発工程において得られたシリコン酸化物を水に分散する分散工程と、シリコン酸化物が分散された水にフッ化水素酸を添加し、シリコン酸化物を水に溶解することによりシリコン酸化物中のシリコンクラスタを水に分散し、凝集させるフッ化水素酸添加工程とを含むものについて、以下に説明する。
本実施の形態におけるシリコンクラスタ超格子の製造方法は、0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させるシリコン蒸発工程により、シリコン酸化物(アモルファスシリコン酸化物)の微粒子中に内包されたシリコンクラスタを得ることができる。
そして、シリコン蒸発工程において、シリコン蒸発時における雰囲気ガスの圧力、シリコンの蒸発速度、蒸発源としてのシリコンの温度、雰囲気ガスとしての不活性ガスの種類、雰囲気ガス中の酸素濃度、蒸発したシリコンを蒸着させる基板の設置場所等の条件を制御することにより、得られるシリコンクラスタのサイズ分布を制御することができる。
ここで、シリコンクラスタ超格子を形成するための、シリコン酸化物、およびフッ化水素酸の量は、シリコンクラスタを内包するシリコン酸化物の製造条件、すなわち蒸発工程の条件により異なるため、蒸発工程の条件に応じて設定すればよい。たとえば、シリコン蒸発工程において、0.02体積%の酸素を含むヘリウム雰囲気の下、圧力1.33×102〜1.33×103Pa(1〜10Torr)、室温(25℃)の条件で、シリコンを1500℃〜1600℃に加熱して蒸発させた場合は、水に分散するシリコン酸化物の量を0.2重量%とし、シリコン酸化物の分散されている水のフッ化水素酸濃度が0.4〜0.5重量%となる量のフッ化水素酸を添加する。これにより、同一サイズのシリコンクラスタが立方晶を形成してなるシリコンクラスタ超格子が得られる。
フッ化水素酸を添加した後、シリコンクラスタ超格子を成長させる際、シリコンクラスタ超格子の成長時間(シリコンクラスタが凝集する時間)を長く設定することにより、充分に厚い3次元のシリコンクラスタ超格子が得られる。逆に、成長時間を短く設定すれば、単シリコンクラスタ層や数シリコンクラスタ層のシリコンクラスタ超格子が得られる。また、シリコンクラスタ超格子の成長時間が同じである場合には、シリコンクラスタ濃度(水に分散しているシリコンクラスタの量)を高くすることにより、充分に厚い3次元のシリコンクラスタ超格子が得られ、シリコンクラスタ濃度を低くすることにより、単シリコンクラスタ層や数シリコンクラスタ層のシリコンクラスタ超格子が得られる。なお、シリコンクラスタ超格子の成長時間は、所望のシリコンクラスタ層の厚さや、シリコンクラスタ濃度に応じて適宜設定すればよいが、2時間以上とすることが好ましい。
以上のように、本発明のシリコンクラスタの製造方法は、0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させてシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物とすることを特徴としている。
上記の発明によれば、大量のシリコンクラスタを内包しているシリコン酸化物(アモルファスシリコン酸化物)の粒子を容易に製造することができる。すなわち、シリコン酸化物に内包された状態のシリコンクラスタを大量かつ容易に製造することが可能である。
また、シリコンの蒸発時における雰囲気ガスの圧力、シリコンの蒸発速度、蒸発源としてのシリコンの温度、雰囲気ガスとして用いる不活性ガスの種類、雰囲気ガス中の酸素濃度、蒸発したシリコンを蒸着させる基板の設置場所を制御することにより、シリコンクラスタのサイズ分布を制御することが可能である。このため、上記の条件を調整することにより、シリコン酸化物に内包された所望のサイズのシリコンクラスタを容易かつ大量に製造することが可能である。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子の製造方法は、上記シリコンクラスタの製造方法により製造されたシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物を水に分散する分散工程と、シリコン酸化物が分散された水にフッ化水素酸を添加し、シリコン酸化物を水に溶解することによりシリコン酸化物中のシリコンクラスタを水に分散し、凝集させるフッ化水素酸添加工程とを含むことを特徴としている。
上記の発明によれば、新機能性材料として有用なシリコンクラスタ超格子を容易に製造することができる。すなわち、蒸発工程において得られたシリコン酸化物は親水性であり容易に水に分散する。このため、シリコンクラスタをシリコン酸化物に内包された状態で水に均一に分散させることができる。そして、このシリコン酸化物が分散されている水にフッ化水素酸を加えることにより、シリコンクラスタを包んでいるシリコン酸化物が水に溶解する。これにより、シリコンクラスタを包んでいた親水性のシリコン酸化物が水に溶けるため、シリコン酸化物中のシリコンクラスタが水に分散される。そして、表面が疎水性であるシリコンクラスタは水中で疎水性効果により互いに集合し始める。
すなわち、フッ化水素酸の添加により、表面のシリコン酸化物がフッ化水素酸により溶解されて、その表面が疎水性となったシリコンクラスタは、疎水性効果により他の疎水性物質と接しようとする。これにより、上記説明したように、ある程度サイズの揃ったシリコンクラスタが空気/水界面に移動し、空気/水界面において、同一サイズのシリコンクラスタが凝集し、自己組織化してシリコンクラスタ超格子を形成する。
ここで、水に分散させるシリコン酸化物の量、およびシリコン酸化物を溶解するために添加するフッ化水素酸の量を調整することにより、シリコン酸化物が水に溶けて水中に供給されるシリコンクラスタの量を調整することができる。このため、シリコンクラスタの空気/水界面へ移動、集合を、シリコンクラスタ超格子の形成に適した速さに調整することが可能となる。これにより、シリコンクラスタ超格子をより確実に形成することができる。
〔実施の形態3〕
本発明の実施の一形態として、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上にシリコンクラスタ超格子が形成されているシリコンクラスタ超格子構造物について以下に説明する。
シリコンクラスタ超格子構造物を構成するシリコンクラスタ超格子の構造および、シリコンクラスタは、実施の形態1および2において説明したため、本実施の形態においては説明を省略する。
上記疎水性表面を有する固体基板とは、その表面に疎水性の領域、すなわち疎水性表面を有するものをいい、たとえば、シリコンウェハー、グラファイト、アモルファスカーボン、テフロン(登録商標)、ダイフロン、ポリエチレン、ポリスチレンなどが挙げられる。これら固体基板の中では、シリコンウェハー(シリコン基板)が好ましい。
本実施の形態のシリコンクラスタ超格子構造物は、図3に示すように、シリコンクラスタ3a・3bが分散された水2中に固体基板5の疎水性表面6を浸漬することにより製造することができる。シリコンクラスタ3a・3bを含む水2に疎水性表面6を浸すことによって、実施例1で説明した空気/水界面におけるシリコンクラスタ超格子10と同様に、疎水性表面6上にシリコンクラスタ超格子10を成長させることが可能である。
固体基板5は、シリコンクラスタ超格子10を成長させようとする疎水性表面6が水2の液面に対して垂直となるように設置するが、もしくは疎水性表面6を下向きにし(上記水2の液面と平行であって、水2の液面に対向しないようにする)、プラスチック製容器1の底から離して設置すると良い。プラスチック製容器1の底から疎水性表面6までの距離は1cm以上とすることが好ましい。これにより、水2中のシリコンクラスタ3a・3bのうち、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみを疎水性表面6上に集め、シリコンクラスタ超格子10を成長させることができ、シリコンクラスタ超格子構造物20が得られる。
また、リソグラフィー技術等を用いて、パターン化されている疎水性表面6を固体基板5に形成することは容易である。すなわち、リソグラフィー技術を利用すれば、たとえば、親水性表面を有する固体基板5上の任意の場所を疎水性に変化させて疎水性表面6とし、その疎水性表面6の部分のみにシリコンクラスタ超格子10を成長させることができる。これにより、固体基板5上にシリコンクラスタ超格子10により回路パターンが形成されているシリコンクラスタ超格子構造物20を容易に作製することが可能である。
あるいは、上記固体基板5として、シリコン基板を用い、該シリコン基板表面の酸化物を除去して水素を付加してなる水素終端されたシリコン基板を用いれば、リソグラフィー技術を用いることなく、シリコン基板上に疎水性表面をパターン化することができる。すなわち、水素終端させたシリコン基板に、電子ビームやイオンビームを照射すれば、シリコン基板表面の水素が除去されて、親水性表面となる。そのため、このような電子線やイオンビームによる描画によって、容易に、水素終端されたシリコン基板上に疎水性表面を任意の形状にパターン化して形成することができる。
したがって、水素終端されたシリコン基板を用いれば、リソグラフィー技術のように、マスクを用いた多段階に及ぶ複雑な工程を必要とすることなく、疎水性表面のパターン化を行うことができる。それゆえ、この疎水性表面に、上記したシリコンクラスタ超格子を成長させれば、リソグラフィー技術を用いた場合に比べて、非常に簡略化した工程で、容易に回路パターンを形成することが可能になる。
上記のいずれかの手法を用いれば、固体基板5上に、たとえば疎水性表面6により回路パターンを形成し、疎水性表面6上にのみシリコンクラスタ超格子10を容易に形成することができる。したがって、固体基板5上に所望の形状(パターン)を有するシリコンクラスタ超格子10を成長させ、シリコンクラスタ超格子構造物を作成すれば、たとえば固体基板5上にシリコンクラスタ3aにより形成されたシリコン細線などを作製することができる。
それゆえ、シリコンクラスタ超格子構造物20を用いることによって、所望の形状のシリコンクラスタ超格子10が形成されている三次元高集積半導体等の半導体デバイスや量子デバイス等を作製することができる。なお、上記「量子デバイス」とは量子効果を利用したデバイスをいう。
上記シリコンクラスタ超格子構造物20は、従来の湿式の集積回路作成過程より製造することができ、シリコンクラスタ超格子10の形成されているシリコンクラスタ超格子構造物20を集積回路の一部に組み込むことができる。このため、従来の湿式の集積回路作製過程により、シリコンクラスタ超格子構造物20を作製し、新機能性材料として有効に利用することができる。
なお、後述の実施例にて詳細に説明するように、疎水性表面を有する固体基板上にシリコンクラスタを凝集させて得られるシリコンクラスタ超格子の構造は、単位格子が体心立方格子(BCC)である構造であって、格子定数やシリコンクラスタの中心間距離が互いに異なる2種類の構造が存在する。
これに対し、上記実施の形態1にて説明したように、空気/水界面に凝集することによって得られるシリコンクラスタ超格子の構造には、単位格子が体心立方格子(BCC)である構造と、単位格子が面心立方格子(FCC)である構造との2種類が存在している。
つまり、シリコンクラスタを固体基板上に凝集させる場合と、シリコンクラスタを空気/水界面に凝集させる場合とで、得られるシリコンクラスタ超格子の単位格子の構造や、同じ種類の単位格子であっても、その格子定数やシリコンクラスタの中心間距離が異なることになる。このように、得られた単位格子の構造または格子定数やシリコンクラスタの中心間距離が異なれば、シリコンクラスタ超格子の発色も異なる。
したがって、上記シリコンクラスタ超格子やシリコンクラスタ構造物を、発光素子の材料として用いる場合には、所望する発光色が得られるように、固体基板上または空気/水界面に、シリコンクラスタ超格子を形成すればよい。
以上のように、本発明のシリコンクラスタ構造物では、上記固体基板がシリコン基板であることが好ましい。シリコン基板を用いることにより、従来の湿式の集積回路作製過程において、シリコンクラスタ構造物を製造することが非常に容易であり、従来の湿式の集積回路作製に用いられている装置を用いて製造することができる。
また、本発明のシリコンクラスタ構造物は、上記固体基板がパターン化されている疎水性表面を有するものであって、パターン化されている疎水性表面上にのみ上記シリコンクラスタ超格子が形成されているものである。
これにより、シリコンクラスタ超格子構造物により、例えば、所望の形状のシリコンクラスタ超格子が形成されている三次元高集積半導体等のデバイスを作製することができる。
すなわち、リソグラフィー技術や、電子線やイオンビームによる描画等により固体基板にパターン化されている疎水性表面を形成することは容易である。このため、固体基板上に、たとえば回路パターン等の疎水性表面のパターンを形成し、このパターン化されている疎水性表面上にのみシリコンクラスタ超格子を形成することができる。これにより、該疎水性表面と同じパターンをシリコンクラスタ超格子により形成することが可能である。
したがって、シリコンクラスタ超格子構造物を用いて、所望の形状のシリコンクラスタ超格子が形成されている三次元高集積半導体等の半導体デバイスや量子デバイス等を作製することができる。このように、実施の形態1・2において説明したシリコンクラスタ超格子および上記シリコンクラスタ超格子構造物の少なくとも一方を含み、シリコンクラスタが周期的かつ規則的に配列してなるシリコンクラスタ超格子を用いることにより、たとえばシリコン細線の微細な回路などが形成されている新規な半導体デバイスや量子デバイスを提供することができる。
また、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法は、シリコンクラスタが分散されている水に、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面を浸漬し、該疎水性表面上にシリコンクラスタを凝集させる方法である。
上記の方法によれば、固体基板の疎水性表面上にシリコンクラスタを形成することができるため、シリコンクラスタ超格子構造物を容易に作製することができる。また、パターン化されている疎水性表面を有する固体基板を用いることにより、疎水性表面上にのみシリコンクラスタを形成することができる。すなわち、固体基板上にシリコンクラスタのパターンを形成することができる。このため、シリコンクラスタ超格子により所望のパターンが形成されているシリコンクラスタ超格子構造物を容易に作製することができる。
すなわち、シリコンクラスタを分散させた水に、固体基板の疎水性表面を浸漬することによって、上記説明した空気/水界面でのシリコンクラスタ超格子の成長と同様に、固体基板上の疎水性表面上にシリコンクラスタを凝集させ、シリコンクラスタ超格子を成長させることができる。このため、シリコンクラスタ超格子構造物を容易に作製することができる。
ここで、固体基板の疎水性表面上に成長させるシリコンクラスタのサイズを選択するためには、疎水性表面が水面に対して垂直になるように固体基板を設置すること、または、疎水性表面を鉛直下向きにし、かつシリコンクラスタの分散している水の容器の底から離して固体基板を設置することが好ましい。これにより、サイズの大きなクラスタが疎水性表面上に堆積することを防止し、疎水性効果により移動可能な、サイズの小さいシリコンクラスタのみを疎水性表面上に効率よく集めてシリコンクラスタ超格子を形成させることができる。
なお、固体基板としてシリコン基板を用いる場合、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を従来の湿式の集積回路作製過程に組み込むことが容易である。このため、従来の湿式の集積回路作製に用いられている装置を用いて、シリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を実施することができる。
以上、各実施の形態に基づいて説明したように、本発明によれば、シリコンクラスタ超格子を簡便に大量に作製することが可能である。シリコンクラスタ超格子は、空気/水界面などの気/液界面に成長させることも可能であるし、疎水性表面を有する固体基板上の疎水性表面上に成長させることも可能である。さらに、シリコンクラスタの分散された水あるいは水溶液中に、たとえば、パターン化された疎水性表面を有するシリコン基板を浸漬することにより、シリコンクラスタが疎水性表面上に凝集し自己組織化する。このため、疎水性表面を有する固体基板上にシリコンクラスタ超格子を容易に形成することができる。したがって、本発明のシリコンクラスタ超格子を、従来の湿式の集積回路作製過程に組み込むこと、すなわち従来の湿式の集積回路作製過程を用いて製造することは容易であり、今後の電子デバイスの高機能化に大きく寄与することが可能である。
〔実施例1〕
0.02体積%の酸素を含むヘリウム雰囲気の下、圧力1.33×102Pa(1Torr)、室温(25℃)の条件で、シリコンを1500〜1600℃として蒸発させ、酸素を含んだアモルファスシリコン(SiOx、x=1.8)微粒子を作製した。
上記の方法により作製されたアモルファスシリコン微粒子2mgを1mlの蒸留水中に分散させた後に、このアモルファスシリコン微粒子が分散された蒸留水に47重量%のフッ化水素酸10μlを一度に添加した。アモルファスシリコン微粒子が分散された蒸留水中にフッ化水素酸を添加することにより、アモルファスシリコン微粒子のシリコン酸化物が取り除かれるため、アモルファスシリコン中のシリコンクラスタがフッ化水素酸の添加された水中に放出される。
そして、図2に示すように、水2に放出されたシリコンクラスタ3a・3bのうち、サイズの大きいシリコンクラスタ3bは重力によりプラスチック製容器1の底に沈降し、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみが疎水性効果によって空気/水界面へ移動する。このようにして、空気/水界面にサイズの小さいシリコンクラスタ3aよりなるシリコンクラスタ超格子10を形成した。
また、シリコンクラスタ超格子10は、水2中にシリコンクラスタ3aが存在している限り、フッ化水素酸添加後の時間に応じて成長するものであるが、本実施例のシリコンクラスタ超格子10は、フッ化水素酸添加後二週間が経過した時点で水2から取り出した。
上記のようにして得られたシリコンクラスタ超格子10を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図4〜6に示す。図4および図5は、空気/水界面に形成された集積物として得られたシリコンクラスタ超格子10の透過型電子顕微鏡像を示す図である。図4より多数の超格子が形成されていること、図4および図5よりシリコンクラスタ超格子10はマイクロメートルサイズにまで成長していることが分かる。
図6は空気/水界面に形成されたシリコンクラスタ超格子10を、図4および図5よりも高倍率で撮影した透過型電子顕微鏡像を示す図である。同図に示すように、超格子構造が形成されていることを示す格子縞が認められる。そして、この格子縞は広範囲に認められ、均一な大きさのシリコンクラスタにより超格子構造が広範囲に形成されていることが分かる。
また、シリコンクラスタ超格子10の電子線回折測定を行った結果、図7に示すように、シリコンクラスタ超格子10はシリコンクラスタが単結晶状に配列したものであり、その結晶構造は立方晶であり、ほとんどの超格子が[001]に配向していることが分かった。表1にシリコンクラスタの電子線回折パターンの解析結果を示す。
シリコンクラスタ超格子の電子線回折パターンを解析した結果、表1に示すように、隣接するシリコンクラスタ3aの中心間距離(隣接したシリコンクラスタの中心間距離)が異なる2種類の構造が存在することが分かった。この2種類のシリコンクラスタ超格子の構造は、隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nm(5.3Å)の超格子と0.60nm(6.0Å)の超格子であった。また、隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nmのものは単位格子が面心立方格子(FCC)であり、隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.60nmのものは単位格子が体心立方格子(BCC)であった。
上記2種類のシリコンクラスタ超格子のフォトルミネッセンススペクトルを測定した結果を図8に示す。本実施例においては、波長435nmの励起光を用いてフォトルミネッセンスの測定を行った。また、スペクトルの測定時には、波長480nm以下の光をカントする光学フィルターをモノクロメータの前に入れ、ディテクターへ励起光が進入することを防止した。
図8に示すように、シリコンクラスタ超格子は、その超格子構造の違いによりフォトルミネッセンススペクトルが異なることが分かった。すなわち、単位格子が面心立方格子(FCC)であるシリコンクラスタ超格子は、610nmにスペクトルピークを有し、単位格子が体心立方格子(BCC)であるシリコンクラスタ超格子は、520nmにスペクトルピークを有していた。
また、上記2種類のシリコンクラスタ超格子を蛍光顕微鏡にて観察した結果、図9に示す蛍光顕微鏡像が得られ、確かに2色の発光が見られることを確認した。
これらの結果から、単位格子が面心立方格子(FCC)であって隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nmである超格子は橙色に発光し、単位格子が体心立方格子(BCC)であって隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.60nmである超格子は青緑色に発光することが分かった。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして作製した酸素を含んだアモルファスシリコン(SiOx、x=1.8)微粒子を、実施例1と同様にして蒸留水中に分散しフッ化水素酸を添加した後に、図3に示すように、フッ化水素酸を添加した水2に疎水性表面を有する固体基板5を疎水性表面6が鉛直下向きになるように浸漬した。このようにして、水2中のシリコンクラスタ3a・3bのうち、サイズの小さいシリコンクラスタ3aのみを疎水性効果によって疎水性表面6に移動させ、シリコンクラスタ超格子10を形成した。以上のようにして、シリコンクラスタ超格子構造物20を得た。
疎水性表面6上に形成されたシリコンクラスタ超格子10についても、透過型電子顕微鏡による観察および電子線回折の測定を行った結果、実施例1と同様に2種類の超格子構造が形成されていることが確認された。
〔実施例3〕
実施例2と同様に、酸素を含んだアモルファスシリコン(SiOx、x=1.8)微粒子を蒸留水中に分散し、フッ化水素酸を添加した。その後、図10に示すように、フッ化水素酸を添加した水2中にて、シリコン基板(Si(100))35を用いて、該シリコン基板35の疎水性表面36が水面に対して垂直になるように浸漬した。なお、上記シリコン基板35の疎水性表面36は、シリコン基板35表面の酸化物を除去して水素を付加して(水素終端されて)なるものである。
これにより、水2中のシリコンクラスタ33a・33bのうち、サイズの小さいシリコンクラスタ33aのみを疎水性効果によって、シリコン基板35の疎水性表面36に移動させ、シリコンクラスタ超格子31を形成した。以上のようにして、シリコンクラスタ超格子構造物30を得た。
得られたシリコンクラスタ超格子構造物30について、走査型電子顕微鏡による観察を行った。また、シリコン基板35上に成長したシリコンクラスタ超格子31をTEMグリッドにてかき集めて、電子線回折の測定を行った。その結果を図11および図12に示す。
図11に示すように、走査型電子顕微鏡像から、シリコンクラスタ超格子が形成されていることが分かった。シリコンクラスタ超格子はマイクロメートルサイズにまで成長していることが分かる。また、電子線回折の測定から、図12に示すように、得られた超格子は、シリコンクラスタが結晶状に配列したものであることが分かった。
得られた電子線回折パターンの解析結果を表2に示す。なお、表2には、比較のために、実施例1にて、空気/水界面に形成されたシリコンクラスタ超格子(図2)の解析結果も併せて記載している。
表2に示すように、シリコン基板上に成長したシリコンクラスタ超格子は、2種類の異なる構造が存在することが分かった。すなわち、上記シリコンクラスタ超格子の2種類の構造は、ともに体心立方格子(BCC)を単位格子とするものであり、両者は互いに格子定数およびシリコンクラスタの中心間距離が異なっている。具体的には、実施例1にて確認されたものと同じ格子定数a=0.693nmを有する体心立方格子を単位格子として有する構造(以下、BCC(a=0.693nm)構造と記載する)と、格子定数がa=0.611nmである体心立方格子を単位格子として有する構造(以下、BCC(a=0.611nm)構造と記載する)とを確認した。
なお、BCC(a=0.693nm)構造の隣接したシリコンクラスタの中心間距離は0.60nmであり、BCC(a=0.611nm)構造の隣接したシリコンクラスタの中心間距離は0.53nmであった。
上記のシリコンクラスタ超格子の2種類の構造について、実施例1と同様にしてフォトルミネッセンススペクトルを測定した結果、および、蛍光顕微鏡にて観察した結果を図13および図14に示す。
図13に示すフォトルミネッセンススペクトルから、シリコンクラスタ超格子は、その超格子構造の違いによりフォトルミネッセンススペクトルが異なることが分かった。すなわち、BCC(a=0.693nm)構造は、520nmにスペクトルピークを有し、BCC(a=0.611nm)構造は、700nmにスペクトルピークを有することが分かった。また、図14に示す蛍光顕微鏡像から、確かに2色の発光が見られることが分かった。
これらの結果から、BCC(a=0.693nm)構造を有するシリコンクラスタ超格子は、青緑色に発光し、BCC(a=0.611nm)構造を有するシリコンクラスタ超格子は、赤色に発光することが分かった。
このように、シリコン基板上では、面心立方格子(FCC)を単位格子として有するシリコンクラスタ超格子よりもむしろ、体心立方格子(BCC)を単位格子として有するシリコンクラスタ超格子が形成される傾向にあることが分かる。したがって、表2に示すように、空気/水界面では、単位格子が面心立方格子(FCC)のシリコンクラスタ超格子と、単位格子が体心立方格子(BCC)のシリコンクラスタ超格子とが形成されるのに対し、シリコン基板上では、単位格子が体心立方格子(BCC)のシリコンクラスタ超格子のみが形成されることが分かる。
さらに、本実施例3にて得られたシリコンクラスタ超格子構造物30(図10)は、シリコン基板35の表面のうち、水素終端させた疎水性表面36にのみシリコンクラスタ超格子31が形成されたものであった。このことから、シリコンクラスタ超格子31は、疎水性表面36にのみ形成され、シリコン基板35の水素終端していない親水性表面には形成されないことが分かった。
したがって、固体基板上に、親水性表面と疎水性表面とを任意のパターンにて形成することにより、所望の位置にのみシリコンクラスタ超格子を形成してなるシリコンクラスタ超格子構造物を得られることが分かる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施の形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
本発明のシリコンクラスタ超格子は、たとえば、量子効果を利用した電子デバイスや超高密度メモリー、光デバイス、量子半導体デバイス、3次元高集積半導体、量子細線、フォトダイオード、半導体レーザ、光集積回路光源、光共振回路光源、記憶素子、半導体デバイス、量子デバイスなどの分野において新機能性材料として用いることができる。
また、水素終端されたシリコン基板に、電子線やイオンビームの照射することによって、本発明のシリコンクラスタ超格子構造物を製造すれば、リソグラフィー技術に比べて、非常に簡潔にかつ容易に回路パターンを形成することができるので、生産性や経済性の面から非常に有用である。
さらに、本発明のシリコンクラスタの製造方法によれば、シリコンクラスタを大量かつ容易に製造することができる。したがって、本発明のシリコンクラスタの製造方法は、生産性や経済性の面からも工業的応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のシリコンクラスタ超格子の構造の概略を説明する説明図である。
図2は、実施の形態1のシリコンクラスタ超格子の製造方法を説明する説明図である。
図3は、実施の形態3のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を説明する説明図である。
図4は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図5は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図6は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図7は、実施例1のシリコンクラスタ超格子の電子線回折測定の結果を示す図である。
図8は、実施例1のシリコンクラスタ超格子のフォトルミネッセンス測定の結果を示すスペクトルである。
図9は、実施例1のシリコンクラスタ超格子を蛍光顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図10は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法を説明する説明図である。
図11は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
図12は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物のシリコンクラスタ超格子の電子線回折測定の結果を示す図である。
図13は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物のフォトルミネッセンス測定の結果を示すスペクトルである。
図14は、実施例3のシリコンクラスタ超格子構造物を蛍光顕微鏡にて観察した結果を示す図である。
Claims (17)
- シリコンを含んでなるシリコンクラスタにより超格子が形成されていることを特徴とするシリコンクラスタ超格子。
- 単位格子が体心立方格子であって、かつ隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nmまたは0.60nmであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のシリコンクラスタ超格子。
- 単位格子が面心立方格子であって、かつ隣接したシリコンクラスタの中心間距離が0.53nmであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のシリコンクラスタ超格子。
- シリコンクラスタにより超格子が形成されてなるシリコンクラスタ超格子を製造する方法であって、
シリコンクラスタを水に分散し、凝集させることを特徴とするシリコンクラスタ超格子の製造方法。 - 0.1体積%以下の酸素を含んでいる不活性ガス雰囲気中においてシリコンを蒸発させてシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物とすることを特徴とするシリコンクラスタの製造方法。
- 上記シリコンクラスタのサイズ分布は、上記不活性ガス雰囲気の圧力、上記シリコンの蒸発速度、上記シリコンの温度、上記不活性ガスの種類、上記不活性ガス雰囲気中の酸素濃度、上記シリコンが蒸着する基板の設置場所からなる群のうちの少なくとも1つの条件によって制御されることを特徴とする請求の範囲第5項に記載のシリコンクラスタの製造方法。
- 請求の範囲第1項に記載のシリコンクラスタを内包するシリコン酸化物を水に分散する分散工程と、
シリコン酸化物が分散された水にフッ化水素酸を添加し、シリコン酸化物を水に溶解することによりシリコン酸化物中のシリコンクラスタを水に分散し、凝集させるフッ化水素酸添加工程とを含むことを特徴とするシリコンクラスタ超格子の製造方法。 - 上記フッ化水素酸添加工程にて水に分散されるシリコンクラスタの量、および、上記フッ化水素酸添加工程の後にてシリコンクラスタが凝集する時間のうちの少なくとも一方を制御することを特徴とする請求の範囲第7項に記載のシリコンクラスタ超格子の製造方法。
- 上記シリコンクラスタの量は、水に分散させる上記シリコン酸化物の量、および、添加する上記フッ化水素酸の量のうちの少なくとも一方を制御することによって調整されることを特徴とする請求の範囲第7項または第8項に記載のシリコンクラスタ超格子の製造方法。
- 請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載のシリコンクラスタ超格子が、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面上に形成されていることを特徴とするシリコンクラスタ超格子構造物。
- 上記固体基板がシリコン基板であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載のシリコンクラスタ超格子構造物。
- 上記シリコン基板の上記疎水性表面は、上記シリコン基板表面の酸化物を除去して水素を付加してなるものであることを特徴とする請求の範囲第11項に記載のシリコンクラスタ超格子構造物。
- 上記固体基板がパターン化されている疎水性表面を有するものであって、
パターン化されている疎水性表面上にのみ上記シリコンクラスタ超格子が形成されていることを特徴とする請求の範囲第10項〜第12項のいずれか1項に記載のシリコンクラスタ超格子構造物。 - シリコンクラスタが分散されている水に、疎水性表面を有する固体基板の疎水性表面を浸漬し、該疎水性表面上にシリコンクラスタを凝集させることを特徴とするシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法。
- 上記固体基板は、該固体基板のうちの上記疎水性表面が上記水中に浸漬される場合には、上記疎水性表面が上記水の液面と平行になるように浸漬され、該固体基板全体が上記水中に浸漬される場合には、上記疎水性表面が上記水の液面に対して垂直となるように浸漬される、または、上記疎水性表面が上記水の液面と平行に、かつ該水の液面に対向しないように浸漬されることを特徴とする請求の範囲第14項に記載のシリコンクラスタ超格子構造物の製造方法。
- 請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載のシリコンクラスタ超格子、および、請求の範囲第10項〜第13項のいずれか1項に記載のシリコンクラスタ超格子構造物の少なくとも一方を含んでいることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載のシリコンクラスタ超格子、および、請求の範囲第10項〜第13項のいずれか1項に記載のシリコンクラスタ超格子構造物の少なくとも一方を含んでいることを特徴とする量子デバイス。
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