JPWO2002088640A1 - 流量計測方法および流量計測装置 - Google Patents
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Abstract
本発明は、微少流量を簡易な構成で計測することができる流量計測方法および流量計測装置を提供するものである。まず、微少流量の流体を流路1aに流す。ついで、加熱器4を、コンデンサを用いて瞬間的に加熱する。この加熱により、加速流を得ることができる。この加速流の流速(加熱流速)を、流速検出手段により検出する。検出された加熱流速を、加熱流速と流体の流量との関係を示す検量線に当てはめる。これにより、流体における流量が微少であっても、この流量を正確に計測することができる。
Description
技術分野
本発明は、流量計測方法および流量計測装置に関し、特に、極微少流量の計測にも利用可能な流量計測方法および流量計測装置に関するものである。
背景技術
流体のうち、特に気体では、極微少流量(例えば1cc/min以下程度)を定量的に計測することができる手段は現在見あたらない。500cc/min以下の微少流量を計測しうると考えられている手段としては、レーザドップラ流速計(LDV)のような、レーザ光を用いたものがある。しかしながら、こうしたレーザ光を用いた計測装置には、高価であり、しかも装置サイズが大きくなりがちであるなどの問題がある。
本発明は、微少流量であっても簡易な構成で計測することができる流量計測方法および流量計測装置を提供することを目的としている。
発明の開示
この発明の流量計測方法は、重力と逆向きに流れる流体の流量を計測する方法である。この方法は、下記のステップを有する。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(b)前記加速流の流速を計測するステップ、
(c)前記加速流の流速と前記流体の流量との検量線を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
この流量計測方法における流体は、気体または液体のいずれかとすることができる。
前記ステップ(a)における、前記流体の加熱位置は、前記流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央とすることができる。
前記ステップ(a)における、前記流体の加熱位置は、前記流体の最大流速点またはその近傍とすることができる。
本発明の流量計測方法における流体は、ポアズイユ流として流れているものであってよい。
本発明の流量計測方法における流体の流量は、500cc/min以下であってよい。
本発明の流量計測方法は、下記のステップを有するものとしても表現できる。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とし、この加速流の流速と、前記流体についての既知の流量とから、検量線を作成するステップ、
(b)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(c)前記加速流の流速を計測するステップ、
(d)前記加速流の流速と前記流体の流量との検量線を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
本発明の流量計測装置は、重力と逆向きに流体を通過させる流路と、前記流路中に配置された加熱器と、前記加熱器によって加熱された流体の流速を検出する流速検出手段とを有する構成となっている。
本発明の流量計測装置においては、前記加熱器による前記流体の加熱位置を、前記流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央とすることができる。
本発明の流量計測装置においては、前記加熱器を、前記流体の最大流速点となる位置の近傍に配置することができる。
本発明における前記流速検出手段は、前記流体の流れ方向において離間して配置された一つまたは複数の温度計測器を含んでいてもよい。
本発明における前記温度計測器は、冷線プローブであってもよいし、サーミスタであってもよい。
本発明の流量計測方法は、下記のステップとしても表現できる。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(b)前記加速流の流速を計測するステップ、
(c)前記加速流の流速と前記流体の流量との対応関係を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
発明を実施するための最良の形態
本発明の第1施形態に係る流量計測方法および装置を、図1〜図8に基づいて説明する。本実施形態では、測定のための検量線作成→加速流の流速測定→流体の流量取得という順序で説明を行う。
まず、検量線の作成のための装置について説明する。この装置は、図1に示されるように、配管1とブロア2と面積流量計3と加熱器4と第1および第2の冷線プローブ5および6とを主な構成として備えている。
配管1は、円管であって、かつ、L字状に構成されている。配管1の内部には、流体(この実施形態では気体)を通過させる流路1aが形成されている。配管1の少なくとも一部(図1の例では下流側)は、鉛直方向に延長されている。これによって、流路1aは、重力と逆向きに気体を通過させるようになっている。なお、ここで、「逆向き」とは、方向が180度異なる(つまりベクトルとしての正負の符号が異なる)場合だけでなく、そのような向きのベクトル成分を有する場合を含むものとする。つまり、「逆向き」とは、重力に直交する方向を除く意味で用いている。冷線プローブ5および6が配置されている部分近傍での、流路1aの直径d1(図2参照)は、この例では、36mmとされている。
ブロア2は、配管1の一端(始端)に接続されており、配管1の内部に、一定流量の気体(例えば2.0m3/min)を送り出せるようになっている。
面積流量計3は、配管1に取り付けられており、配管1を流れる気体の流量を正確に制御できるようになっている。本実施例では、一例として、3〜30L/Hourの範囲で流量を制御できる面積流量計を用いることができる。このような面積流量計は公知なので、これ以上の説明を省略する。
加熱器4は、面積流量計3の下流側に配置されている。加熱器4は、図3に示されるように、環状に形成されたリング部4aと、リング部4aに接続された導線4bとを備えている。リング部4aは、この例では、素線径40μmのタングステン細線によって構成されている。リング部4aの軸心と流体の流れ方向とはほぼ平行とされている。リング部4aは、流体の加熱位置が、流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央となるように配置されている。具体的には、リング部4aは、流路1aのほぼ中央となる位置に配置されている。これによって、加熱器4は、流体の最大流速点となる位置の近傍に配置されることになる(その理由については後述する)。リング部4aの直径D(図3参照)は、本例では、約3mmとされている。なお、この直径Dは、加速流を得られるならば、なるべく小さいことが好ましい。流体に与えられる熱量が大きすぎると、流体全体の流速に影響する可能性があるからである。
導線4bは、この例では、素線径1mmの黄銅線によって構成されている。導線4bの一方はスイッチを介してコンデンサ(図示せず)に、他方はアースに接続されており、コンデンサにチャージされた電荷をリング部4に送ることができるようになっている。
第1の冷線プローブ5は、配管1に取り付けられており、その先端が、流路1aのほぼ中央に配置されている。つまり、その先端は、加速流に接触しうる位置とされている。加熱器4から冷線プローブ5までの距離L1(図2参照)は、この例では、40mmに設定されている。冷線プローブ5としては、素線径5μmのタングステン線を用いたものが使用されている。冷線プローブ5は、タングステン線の温度変化に伴う抵抗値の変化を検出することにより、流体の温度を計測できるものである。すなわち、
R:測定された抵抗値
R0:初期抵抗値
α:比例係数(既知)
ΔT:温度変化量
として、
R=R0(1+αΔT)
となっている。流体温度の初期値をT0とすれば、加速流の温度Tは、T=T0+ΔTとなる。冷線プローブ5には、適宜なインタフェースを介してパーソナルコンピュータ(図示せず)が接続されており、計測された抵抗値をパーソナルコンピュータに入力して温度を得ることができるようになっている。このような冷線プローブ5自体は公知なので、これ以上の詳細については説明を省略する。
第2の冷線プローブ6は、第1の冷線プローブ5の下流側に配置されている。両者の離間距離L2(図2参照)は、加速流の温度が粘性拡散により低下しないように、広すぎないことが望ましい。この例では、距離L2は18mmとされている。冷線プローブ6の構成は、冷線プローブ5と同様なので、これ以上の説明は省略する。
つぎに、流量が500cc/min以下の微少である場合の装置構成例について、図4を用いて説明する。この場合には、正確な流量計は入手できなくなるので、ブロア2に代えて、シリンジ7が用いられる。配管1は、鉛直方向に配置された直線状となっている。配管1の直径d2は、18mmとなっている。シリンジ7と配管1とはチューブ8で接続されている。シリンジ7には、注射針7aが取り付けられている。この装置構成によれば、シリンジ7から注射針7aを介して一定流量で液滴をチューブ8に落とすことで、微少な一定流量の気流を得ることができる。しかも、シリンジの目盛りを読み取ることで、延長管内における気体の流量を知ることもできる。
つぎに、前記した装置を用いた検量線の作成方法について説明する。
前提として、前記構成における、直線流路内での流体の流れについて説明する。良く知られているように、直円管内での流体の流れは、レイノルズ数が約2000以下では、直管入口の流れの状態によらず、図5に示されるようなポアズイユ流れとなる。図5において実線は、ポアズイユ流れの理論値である。この理論値の条件としては、レイノルズ数Re=19、流量500cc/minである。ポアズイユ流れでは、流れ方向にはその流速分布が変わらない、放物形の流速分布をした層流となる。特に、レイノルズ数Reの小さい管内流の場合、非常に短い助走距離Lでポアズイユ流れとなる。助走距離Lは次式で得られる。
L=0.065Re×d
ただし
Re≡Ud/γ:レイノルズ数
d:流路の直径(m)
U:管内平均流速(m/s)
γ:流体の動粘性係数(m2/s)
である。
検量線の作成のためには、まず、一定流量(既知)の気体を流路1aに流す。そのための装置構成は、流量の多少により、図1(500cc/min以上)または図4(500cc/min以下)のものを選ぶことができる。気体が流路1aを流れると、加熱器4の位置においては、図5に示されるポアズイユ流れとなる。つまり、気体は、加熱器4が位置している中央付近において最大流速となる。
ついで、コンデンサに予めチャージした電荷を加熱器4に流す。これにより、加熱器4のリング部4aがジュール発熱で瞬間的に加熱される。加熱された部分の気体(加速流)の密度は、加熱前よりも小さくなる。すると、周囲の非加熱流体との密度差に基づく浮力により、重力と反対方向に、加熱部分の流れが加速される。前記のようにして加速流が得られる。この加速流は、冷線プローブ5および6を順次通過する。冷線プローブ5および6の出力を図6に示す。図6において縦軸は、冷線プローブ5および6への電圧で示されている。この電圧は、電流値を一定とすれば、抵抗と等価である。図6において、符号9は冷線プローブ5の出力曲線を、符号10は冷線プローブ6の出力曲線を示している。加速流が冷線プローブ5を通過すると、その抵抗が増加して電圧値が上昇する。加速流がさらに下流に流れて、冷線プローブ6を通過すると、前記と同様にして電圧値が上昇する。これにより、曲線9と曲線10との、ピーク間における時間間隔Δtを得ることができる。ここで、冷線プローブ5と冷線プローブ6との距離L2は既知である。よって、加速流の流速(加熱流速ということがある)Vは、
V=L2/Δt
として得ることができる。
ここで測定した加熱流速Vは、あくまで、加速流の流速である。したがって、加熱流速Vと実際の流体の流量(または流速)との関係は未知である。そこで、両者の関係をプロットしたところ、図7および図8の実線に示すようになった。これらから判るように、両者の関係は、ほぼ線形(一次関数で表される関係)となっていた(図中破線参照)。したがって、これを検量線とすることによって、加熱流速から、実際の流体の流量を、かなり正確に測定できることが判る。もし、加熱流速と流体流量との関係が複雑な非線形であった場合、検量線を作成しても、精度は悪くなると予測できる。これに対して、加熱流速と流体流量との関係が線形であれば、検量線作成時での測定点の間における値を精度良く補間することができる。
なお、図8には、流量40cc/min付近でのやや不規則な挙動が示されている。しかし、この程度の変動は測定精度に特に悪影響はないと考えられる。また、この変動が生じた原因は、この流量の付近で、微少流量を供給するため、装置構成を、図1のものから図4のものへ変更したからであると考えられる。したがって、そのような装置の切り替えが不要な流量範囲であればより精度が上昇すると考えられる。また、装置の切り替え自体を行わないことで、より線形な検量線を得ることも可能となる。
さらに、図8には示されていないが、14cc/min以下の流量についての検量線を得るためには、円管直径dを小さくすれば良い。その場合も、加速流と流量とはほぼ線形な関係になると推測できる。なぜなら、流速が小さくなるに比例してレイノルズ数も小さくなり、したがって、ポアズイユ流れが形成されるという状況は変わらないからである。
ついで、前記した検量線を用いた流量測定方法について説明する。まず、そのための装置構成について説明する。装置としては、例えば、図2に示される構成とすることができる。ここで、説明の重複を避けるため、図2を用い、さらに、同じ符号を用いて装置を説明する。測定装置は、重力と逆向きに流体を通過させる流路1aと、流路1a中に配置された加熱器4と、加熱器4によって加熱された流体の流速を検出する流速検出手段とを有している。流速検出手段は、具体的には、第1と第2の冷線プローブ5および6によって構成されている。各要素の構成は、前記したものと基本的に同じである。
前記した第1および第2の冷線プローブ5・6は、本発明における温度計測器に相当する。また、両者は、本発明における流速計測手段を構成する。
ついで、流量測定方法について説明する。まず、微少流量の気体を流路1aに流す。ついで、加熱器4を、コンデンサを用いて瞬間的に加熱する。これにより、気体の一部を加速して加速流とすることができる。ついで、冷線プローブ5および6によって測定された抵抗値のピーク間の時間差Δtを得る。このΔtから加速流の流速(加熱流速)を得る。加熱流速を検量線に当てはめることにより、気体の流量を得ることができる。本実施形態では、気体のごく一部を加熱しているので、この加熱は、気体全体の流量または流速には、実質的にほとんど影響しない。
本実施形態では、このように加熱流速を用いているので、流体が極低流速の場合であっても、冷線プローブにより、加速流が到達する時間差Δtを容易に得ることができる。
また、本実施形態では、加熱により加速した流体の流速を計測するので、管内の流体の流速が非常に小さい場合には、特に、この加熱の効果によって高い精度の計測が可能となる。もし、計測される流速が過度に遅い場合には、プローブを通過する前に熱が拡散し、計測が不正確になるおそれがある。本実施形態では、流速が比較的に早い加熱流速を計測するので、熱拡散の影響を受けにくく、計測を正確に行うことができる。
また、本実施形態においては、微少流量を計測対象としたときには、流体の流速Uは小さくなる。すると、レイノルズ数Reが小さくなり、その結果、流体の助走距離が短くとも、ポアズイユ流れを形成でき、流体に対して、本実施形態の方法による正確な流量計測ができる。したがって、本実施形態によれば、助走距離を短くできるので、流量計測装置を小型化することができるという利点がある。
さらに、本実施形態によれば、微少流量を計測できるため、例えば、極微少量が漏れ続けるようなガス漏れを正確に検知することも可能となる。
また、本実施形態では、前記のような計測方法となっているため、非定常な微少流量の流速を実質的に連続的に(つまり短い時間間隔で)測定することも容易である。
さらに、本実施形態では、流体の横断面におけるほぼ中央において流体を加熱しているので、加速流と管壁との間における熱の交換を低く抑えることができる。もし、加速流の温度が外部条件によって影響されると、測定精度が劣化するおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、加速流の温度が外部条件によって影響されにくいため、外部条件の変動による測定精度の劣化を低く抑えることができる。
なお、前記実施形態では、加速流が到達する時間差Δtとして、抵抗値(電圧値)のピークの差とした。しかしながら、ピーク値を自動的に検出することが難しい場合もある。そこで、抵抗値の立ち上がり時間の差をΔtとして扱うこともできる。もちろん、この場合には、検量線自体を、そのような前提で作成しておくことが望ましい。このようにすれば、流量測定の自動化が容易となる。また、このようにしても、測定精度はほとんど低下しないと考えられる。
また、本実施形態では、流体として気体を例示したが、これに限らず、液体とすることも可能である。
さらに、本実施形態では、加熱器4を流路1aの中央近傍に配置したが、これに限らず、周縁方向にずらして配置することも可能である。ただし、この場合は、必ずしも加速流が先に冷線プローブに到達するとは限らず、測定精度が落ちるおそれがある。そのため、このようにしたときは、加速流が到達する位置に正確に冷線プローブを配置することが必要となる。
(実験例)
図5に示される理論値を得た条件と同じ条件で、実際に、加熱流速を計測した。得られた加熱流速を図7の検量線に当てはめ、得られた流量から平均流速Uを算出した。この平均流速Uから最大流速Umax算出した。このとき、Umax=2Uの関係を用いた。このようにして求めたUmaxの値を、図5中丸印で示した。この値は、理論値における最大流速(図中実線)と良く一致した。したがって、本実施形態における流量計測の測定精度は高いことが判る。
つぎに、本発明の第2実施形態に係る流量計測方法および装置を、図9〜図11に基づいて説明する。前記第1実施形態では、検量線の作成および加熱流速の測定のための装置において、プローブを2本とした。しかしながら、この第2実施形態においては、プローブを1本としている。以下に詳しく説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態と基本的に同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を簡略化する。
まず、検量線の作成のための装置について説明する。この装置においては、図9に示されるように、プローブとして、第1冷線プローブ5のみが用いられており、第2冷線プローブは用いられていない。流路1aの直径は、この例では、20mmとされている。他の構成は、図1に示される第1実施形態の装置と同様なので説明を省略する。
つぎに、前記した装置を用いた検量線の作成方法について説明する。まず、第1実施形態と同様に、一定流量の気体を流路1aに流す。気体が流路1aを流れると、加熱器4の位置においては、図9で矢印により示したようなポアズイユ流れとなる。
ついで、コンデンサに予めチャージした電荷を加熱器4に流す。これにより、加熱器4のリング部4aがジュール発熱で瞬間的に加熱される。これにより、加速流を得ることができる。この加速流は、冷線プローブ5を通過する。コンデンサの電圧と冷線プローブ5の出力と図10に示す。図10において、符号9は冷線プローブ5の出力曲線を、符号11はコンデンサの電圧曲線を示している。コンデンサの電圧降下時点Aが放電開始時である。電圧降下の終了時点Bが、放電の終了時である。加熱部4からの加熱により得られた加速流が冷線プローブ5を通過すると、その抵抗が増加して電圧値が上昇する。電圧上昇の終了時点(極大点)Cを加速流の到着時点と見なすことができる。これにより、時点Aから時点Cまでの時間間隔Δtを得ることができる。ここで、加熱器4から冷線プローブ5までの距離L3(図9)は既知である。この例では、距離L3=15mmとされている。よって、加速流の流速(加熱流速ということがある)Vは、
V=L3/Δt
として得ることができる。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、加熱流速Vと実際の流体の流量(または流速)との関係を計測した。ここでは、コンデンサの容量(加熱量に対応)が440μF、220μF、100μF、47μFのそれぞれの場合について計測した。その結果を、図11に示す。これらから判るように、それぞれの場合において、加熱流速と流体の流量との関係は、ほぼ線形となっていた。したがって、これを検量線とすることによって、加熱流速から、実際の流体の流量を、かなり正確に測定できることが判る。また、この結果からは、加熱量が少ない(コンデンサ容量が小さい)ほうが、計測精度を向上しうることも判る。
ついで、前記した検量線を用いた流量測定方法について説明する。この測定のための装置としては、例えば、図9に示される構成とすることができる。この例では、流速検出手段は、冷線プローブ5によって構成されている。また、冷線プローブ5は、本発明における温度計測器に相当し、かつ、本発明における流速計測手段を構成する。
本実施形態の流量測定方法においては、まず、微少流量の気体を流路1aに流す。ついで、加熱器4を、コンデンサを用いて瞬間的に加熱する。ついで、加速流が加熱器4から冷線プローブ5に到達するまでの時間差Δtを得る。このΔtから加熱流速を得る。加熱流速を検量線に当てはめることにより、求める流量を得ることができる。
本実施形態では、冷線プローブを一本としているので、第1実施形態のものに比べて、小型化が可能である。また、部品点数が少ないため、故障の可能性も減らすことができる。本実施形態における他の構成および利点は、第1実施形態と同様なので、これ以上の説明は省略する。
つぎに、本発明の第3実施形態について説明する。この実施形態では、測定対象の流体として液体を選択している。この実施形態で用いられる装置は、基本的には、第2実施形態における図9に示される構成のものである。ただし、流路1aに微少な一定流量の液体を流すために、注射器(図示せず)を配管1に接続している。この注射器のピストンを低速で押し出すことによって、一定流量の液体を流路1aに送り込んでいる。
この実施形態の装置を用いて、水流における加熱流速と流量との関係を測定した。結果を図12に示す。この結果から、液体においても、加熱流速と流量との間に線形な関係があることが判る。よって、液体に対しても、第1実施形態または第2実施形態と同様な方法によって、微少流量を計測することができる。他の構成および利点は、前記した各実施形態と基本的に同様なので、説明を省略する。ただし、液体の流速を計測する場合は、気体の場合に比べて、加速流を得るための加熱量が大きくなる傾向がある。
なお、前記各実施形態および実験例の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。例えば、測定される流体の流量としては、500cc/min以上でも可能である。
また、前記各実施形態では、検量線を実験的に求めたが、数値解析により求めることも可能である。さらに、この明細書において、検量線とは、加熱流速と流量またはそれと同等なパラメータとの間の対応関係を意味しており、実際に線が記載される必要はない。例えば、コンピュータ処理においては、検量線は、数式によって通常は表現される。
さらに、前記各実施形態では、温度計測器として冷線プローブを用いたが、例えば、高感度のサーミスタを用いることもできる。温度計測器としては、要するに、必要な精度で温度を測定できるものであればよい。
産業上の利用可能性
本発明によれば、微少流量を簡易な構成で計測することができる流量計測方法および流量計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態において用いる検量線作成のための装置を示す概略的な要部断面図である。
図2は、図1のA部分を拡大して示す概略的な説明図である。
図3は、図2におけるB方向拡大矢視図である。
図4(a)は、本発明の一実施形態に係る検量線作成のための、他の装置を示す概略的な要部断面図である。図4(b)は、図4(a)におけるC部分を拡大した概略的な説明図である。
図5は、管内の流体の流速分布を示すグラフであって、縦軸は流速、横軸は軸心からの距離(半径)を示している。
図6は、冷線プローブからの出力を示すグラフである。
図7は、検量線の一例を示すグラフである。
図8は、検量線の一例を示すグラフであって、小さい流量の部分を拡大したものである。
図9は、本発明の第2実施形態において用いる検量線作成のための装置を示す概略的な要部断面図である。
図10は、冷線プローブからの出力とコンデンサの電圧とを示すグラフである。
図11は、本発明の第2実施形態における検量線の一例を示すグラフであって、上から、コンデンサ容量が440μF、220μF、100μFおよび47μFの場合を示している。
図12は、本発明の第3実施形態における検量線の一例を示すグラフである。
本発明は、流量計測方法および流量計測装置に関し、特に、極微少流量の計測にも利用可能な流量計測方法および流量計測装置に関するものである。
背景技術
流体のうち、特に気体では、極微少流量(例えば1cc/min以下程度)を定量的に計測することができる手段は現在見あたらない。500cc/min以下の微少流量を計測しうると考えられている手段としては、レーザドップラ流速計(LDV)のような、レーザ光を用いたものがある。しかしながら、こうしたレーザ光を用いた計測装置には、高価であり、しかも装置サイズが大きくなりがちであるなどの問題がある。
本発明は、微少流量であっても簡易な構成で計測することができる流量計測方法および流量計測装置を提供することを目的としている。
発明の開示
この発明の流量計測方法は、重力と逆向きに流れる流体の流量を計測する方法である。この方法は、下記のステップを有する。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(b)前記加速流の流速を計測するステップ、
(c)前記加速流の流速と前記流体の流量との検量線を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
この流量計測方法における流体は、気体または液体のいずれかとすることができる。
前記ステップ(a)における、前記流体の加熱位置は、前記流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央とすることができる。
前記ステップ(a)における、前記流体の加熱位置は、前記流体の最大流速点またはその近傍とすることができる。
本発明の流量計測方法における流体は、ポアズイユ流として流れているものであってよい。
本発明の流量計測方法における流体の流量は、500cc/min以下であってよい。
本発明の流量計測方法は、下記のステップを有するものとしても表現できる。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とし、この加速流の流速と、前記流体についての既知の流量とから、検量線を作成するステップ、
(b)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(c)前記加速流の流速を計測するステップ、
(d)前記加速流の流速と前記流体の流量との検量線を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
本発明の流量計測装置は、重力と逆向きに流体を通過させる流路と、前記流路中に配置された加熱器と、前記加熱器によって加熱された流体の流速を検出する流速検出手段とを有する構成となっている。
本発明の流量計測装置においては、前記加熱器による前記流体の加熱位置を、前記流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央とすることができる。
本発明の流量計測装置においては、前記加熱器を、前記流体の最大流速点となる位置の近傍に配置することができる。
本発明における前記流速検出手段は、前記流体の流れ方向において離間して配置された一つまたは複数の温度計測器を含んでいてもよい。
本発明における前記温度計測器は、冷線プローブであってもよいし、サーミスタであってもよい。
本発明の流量計測方法は、下記のステップとしても表現できる。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(b)前記加速流の流速を計測するステップ、
(c)前記加速流の流速と前記流体の流量との対応関係を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
発明を実施するための最良の形態
本発明の第1施形態に係る流量計測方法および装置を、図1〜図8に基づいて説明する。本実施形態では、測定のための検量線作成→加速流の流速測定→流体の流量取得という順序で説明を行う。
まず、検量線の作成のための装置について説明する。この装置は、図1に示されるように、配管1とブロア2と面積流量計3と加熱器4と第1および第2の冷線プローブ5および6とを主な構成として備えている。
配管1は、円管であって、かつ、L字状に構成されている。配管1の内部には、流体(この実施形態では気体)を通過させる流路1aが形成されている。配管1の少なくとも一部(図1の例では下流側)は、鉛直方向に延長されている。これによって、流路1aは、重力と逆向きに気体を通過させるようになっている。なお、ここで、「逆向き」とは、方向が180度異なる(つまりベクトルとしての正負の符号が異なる)場合だけでなく、そのような向きのベクトル成分を有する場合を含むものとする。つまり、「逆向き」とは、重力に直交する方向を除く意味で用いている。冷線プローブ5および6が配置されている部分近傍での、流路1aの直径d1(図2参照)は、この例では、36mmとされている。
ブロア2は、配管1の一端(始端)に接続されており、配管1の内部に、一定流量の気体(例えば2.0m3/min)を送り出せるようになっている。
面積流量計3は、配管1に取り付けられており、配管1を流れる気体の流量を正確に制御できるようになっている。本実施例では、一例として、3〜30L/Hourの範囲で流量を制御できる面積流量計を用いることができる。このような面積流量計は公知なので、これ以上の説明を省略する。
加熱器4は、面積流量計3の下流側に配置されている。加熱器4は、図3に示されるように、環状に形成されたリング部4aと、リング部4aに接続された導線4bとを備えている。リング部4aは、この例では、素線径40μmのタングステン細線によって構成されている。リング部4aの軸心と流体の流れ方向とはほぼ平行とされている。リング部4aは、流体の加熱位置が、流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央となるように配置されている。具体的には、リング部4aは、流路1aのほぼ中央となる位置に配置されている。これによって、加熱器4は、流体の最大流速点となる位置の近傍に配置されることになる(その理由については後述する)。リング部4aの直径D(図3参照)は、本例では、約3mmとされている。なお、この直径Dは、加速流を得られるならば、なるべく小さいことが好ましい。流体に与えられる熱量が大きすぎると、流体全体の流速に影響する可能性があるからである。
導線4bは、この例では、素線径1mmの黄銅線によって構成されている。導線4bの一方はスイッチを介してコンデンサ(図示せず)に、他方はアースに接続されており、コンデンサにチャージされた電荷をリング部4に送ることができるようになっている。
第1の冷線プローブ5は、配管1に取り付けられており、その先端が、流路1aのほぼ中央に配置されている。つまり、その先端は、加速流に接触しうる位置とされている。加熱器4から冷線プローブ5までの距離L1(図2参照)は、この例では、40mmに設定されている。冷線プローブ5としては、素線径5μmのタングステン線を用いたものが使用されている。冷線プローブ5は、タングステン線の温度変化に伴う抵抗値の変化を検出することにより、流体の温度を計測できるものである。すなわち、
R:測定された抵抗値
R0:初期抵抗値
α:比例係数(既知)
ΔT:温度変化量
として、
R=R0(1+αΔT)
となっている。流体温度の初期値をT0とすれば、加速流の温度Tは、T=T0+ΔTとなる。冷線プローブ5には、適宜なインタフェースを介してパーソナルコンピュータ(図示せず)が接続されており、計測された抵抗値をパーソナルコンピュータに入力して温度を得ることができるようになっている。このような冷線プローブ5自体は公知なので、これ以上の詳細については説明を省略する。
第2の冷線プローブ6は、第1の冷線プローブ5の下流側に配置されている。両者の離間距離L2(図2参照)は、加速流の温度が粘性拡散により低下しないように、広すぎないことが望ましい。この例では、距離L2は18mmとされている。冷線プローブ6の構成は、冷線プローブ5と同様なので、これ以上の説明は省略する。
つぎに、流量が500cc/min以下の微少である場合の装置構成例について、図4を用いて説明する。この場合には、正確な流量計は入手できなくなるので、ブロア2に代えて、シリンジ7が用いられる。配管1は、鉛直方向に配置された直線状となっている。配管1の直径d2は、18mmとなっている。シリンジ7と配管1とはチューブ8で接続されている。シリンジ7には、注射針7aが取り付けられている。この装置構成によれば、シリンジ7から注射針7aを介して一定流量で液滴をチューブ8に落とすことで、微少な一定流量の気流を得ることができる。しかも、シリンジの目盛りを読み取ることで、延長管内における気体の流量を知ることもできる。
つぎに、前記した装置を用いた検量線の作成方法について説明する。
前提として、前記構成における、直線流路内での流体の流れについて説明する。良く知られているように、直円管内での流体の流れは、レイノルズ数が約2000以下では、直管入口の流れの状態によらず、図5に示されるようなポアズイユ流れとなる。図5において実線は、ポアズイユ流れの理論値である。この理論値の条件としては、レイノルズ数Re=19、流量500cc/minである。ポアズイユ流れでは、流れ方向にはその流速分布が変わらない、放物形の流速分布をした層流となる。特に、レイノルズ数Reの小さい管内流の場合、非常に短い助走距離Lでポアズイユ流れとなる。助走距離Lは次式で得られる。
L=0.065Re×d
ただし
Re≡Ud/γ:レイノルズ数
d:流路の直径(m)
U:管内平均流速(m/s)
γ:流体の動粘性係数(m2/s)
である。
検量線の作成のためには、まず、一定流量(既知)の気体を流路1aに流す。そのための装置構成は、流量の多少により、図1(500cc/min以上)または図4(500cc/min以下)のものを選ぶことができる。気体が流路1aを流れると、加熱器4の位置においては、図5に示されるポアズイユ流れとなる。つまり、気体は、加熱器4が位置している中央付近において最大流速となる。
ついで、コンデンサに予めチャージした電荷を加熱器4に流す。これにより、加熱器4のリング部4aがジュール発熱で瞬間的に加熱される。加熱された部分の気体(加速流)の密度は、加熱前よりも小さくなる。すると、周囲の非加熱流体との密度差に基づく浮力により、重力と反対方向に、加熱部分の流れが加速される。前記のようにして加速流が得られる。この加速流は、冷線プローブ5および6を順次通過する。冷線プローブ5および6の出力を図6に示す。図6において縦軸は、冷線プローブ5および6への電圧で示されている。この電圧は、電流値を一定とすれば、抵抗と等価である。図6において、符号9は冷線プローブ5の出力曲線を、符号10は冷線プローブ6の出力曲線を示している。加速流が冷線プローブ5を通過すると、その抵抗が増加して電圧値が上昇する。加速流がさらに下流に流れて、冷線プローブ6を通過すると、前記と同様にして電圧値が上昇する。これにより、曲線9と曲線10との、ピーク間における時間間隔Δtを得ることができる。ここで、冷線プローブ5と冷線プローブ6との距離L2は既知である。よって、加速流の流速(加熱流速ということがある)Vは、
V=L2/Δt
として得ることができる。
ここで測定した加熱流速Vは、あくまで、加速流の流速である。したがって、加熱流速Vと実際の流体の流量(または流速)との関係は未知である。そこで、両者の関係をプロットしたところ、図7および図8の実線に示すようになった。これらから判るように、両者の関係は、ほぼ線形(一次関数で表される関係)となっていた(図中破線参照)。したがって、これを検量線とすることによって、加熱流速から、実際の流体の流量を、かなり正確に測定できることが判る。もし、加熱流速と流体流量との関係が複雑な非線形であった場合、検量線を作成しても、精度は悪くなると予測できる。これに対して、加熱流速と流体流量との関係が線形であれば、検量線作成時での測定点の間における値を精度良く補間することができる。
なお、図8には、流量40cc/min付近でのやや不規則な挙動が示されている。しかし、この程度の変動は測定精度に特に悪影響はないと考えられる。また、この変動が生じた原因は、この流量の付近で、微少流量を供給するため、装置構成を、図1のものから図4のものへ変更したからであると考えられる。したがって、そのような装置の切り替えが不要な流量範囲であればより精度が上昇すると考えられる。また、装置の切り替え自体を行わないことで、より線形な検量線を得ることも可能となる。
さらに、図8には示されていないが、14cc/min以下の流量についての検量線を得るためには、円管直径dを小さくすれば良い。その場合も、加速流と流量とはほぼ線形な関係になると推測できる。なぜなら、流速が小さくなるに比例してレイノルズ数も小さくなり、したがって、ポアズイユ流れが形成されるという状況は変わらないからである。
ついで、前記した検量線を用いた流量測定方法について説明する。まず、そのための装置構成について説明する。装置としては、例えば、図2に示される構成とすることができる。ここで、説明の重複を避けるため、図2を用い、さらに、同じ符号を用いて装置を説明する。測定装置は、重力と逆向きに流体を通過させる流路1aと、流路1a中に配置された加熱器4と、加熱器4によって加熱された流体の流速を検出する流速検出手段とを有している。流速検出手段は、具体的には、第1と第2の冷線プローブ5および6によって構成されている。各要素の構成は、前記したものと基本的に同じである。
前記した第1および第2の冷線プローブ5・6は、本発明における温度計測器に相当する。また、両者は、本発明における流速計測手段を構成する。
ついで、流量測定方法について説明する。まず、微少流量の気体を流路1aに流す。ついで、加熱器4を、コンデンサを用いて瞬間的に加熱する。これにより、気体の一部を加速して加速流とすることができる。ついで、冷線プローブ5および6によって測定された抵抗値のピーク間の時間差Δtを得る。このΔtから加速流の流速(加熱流速)を得る。加熱流速を検量線に当てはめることにより、気体の流量を得ることができる。本実施形態では、気体のごく一部を加熱しているので、この加熱は、気体全体の流量または流速には、実質的にほとんど影響しない。
本実施形態では、このように加熱流速を用いているので、流体が極低流速の場合であっても、冷線プローブにより、加速流が到達する時間差Δtを容易に得ることができる。
また、本実施形態では、加熱により加速した流体の流速を計測するので、管内の流体の流速が非常に小さい場合には、特に、この加熱の効果によって高い精度の計測が可能となる。もし、計測される流速が過度に遅い場合には、プローブを通過する前に熱が拡散し、計測が不正確になるおそれがある。本実施形態では、流速が比較的に早い加熱流速を計測するので、熱拡散の影響を受けにくく、計測を正確に行うことができる。
また、本実施形態においては、微少流量を計測対象としたときには、流体の流速Uは小さくなる。すると、レイノルズ数Reが小さくなり、その結果、流体の助走距離が短くとも、ポアズイユ流れを形成でき、流体に対して、本実施形態の方法による正確な流量計測ができる。したがって、本実施形態によれば、助走距離を短くできるので、流量計測装置を小型化することができるという利点がある。
さらに、本実施形態によれば、微少流量を計測できるため、例えば、極微少量が漏れ続けるようなガス漏れを正確に検知することも可能となる。
また、本実施形態では、前記のような計測方法となっているため、非定常な微少流量の流速を実質的に連続的に(つまり短い時間間隔で)測定することも容易である。
さらに、本実施形態では、流体の横断面におけるほぼ中央において流体を加熱しているので、加速流と管壁との間における熱の交換を低く抑えることができる。もし、加速流の温度が外部条件によって影響されると、測定精度が劣化するおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、加速流の温度が外部条件によって影響されにくいため、外部条件の変動による測定精度の劣化を低く抑えることができる。
なお、前記実施形態では、加速流が到達する時間差Δtとして、抵抗値(電圧値)のピークの差とした。しかしながら、ピーク値を自動的に検出することが難しい場合もある。そこで、抵抗値の立ち上がり時間の差をΔtとして扱うこともできる。もちろん、この場合には、検量線自体を、そのような前提で作成しておくことが望ましい。このようにすれば、流量測定の自動化が容易となる。また、このようにしても、測定精度はほとんど低下しないと考えられる。
また、本実施形態では、流体として気体を例示したが、これに限らず、液体とすることも可能である。
さらに、本実施形態では、加熱器4を流路1aの中央近傍に配置したが、これに限らず、周縁方向にずらして配置することも可能である。ただし、この場合は、必ずしも加速流が先に冷線プローブに到達するとは限らず、測定精度が落ちるおそれがある。そのため、このようにしたときは、加速流が到達する位置に正確に冷線プローブを配置することが必要となる。
(実験例)
図5に示される理論値を得た条件と同じ条件で、実際に、加熱流速を計測した。得られた加熱流速を図7の検量線に当てはめ、得られた流量から平均流速Uを算出した。この平均流速Uから最大流速Umax算出した。このとき、Umax=2Uの関係を用いた。このようにして求めたUmaxの値を、図5中丸印で示した。この値は、理論値における最大流速(図中実線)と良く一致した。したがって、本実施形態における流量計測の測定精度は高いことが判る。
つぎに、本発明の第2実施形態に係る流量計測方法および装置を、図9〜図11に基づいて説明する。前記第1実施形態では、検量線の作成および加熱流速の測定のための装置において、プローブを2本とした。しかしながら、この第2実施形態においては、プローブを1本としている。以下に詳しく説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態と基本的に同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を簡略化する。
まず、検量線の作成のための装置について説明する。この装置においては、図9に示されるように、プローブとして、第1冷線プローブ5のみが用いられており、第2冷線プローブは用いられていない。流路1aの直径は、この例では、20mmとされている。他の構成は、図1に示される第1実施形態の装置と同様なので説明を省略する。
つぎに、前記した装置を用いた検量線の作成方法について説明する。まず、第1実施形態と同様に、一定流量の気体を流路1aに流す。気体が流路1aを流れると、加熱器4の位置においては、図9で矢印により示したようなポアズイユ流れとなる。
ついで、コンデンサに予めチャージした電荷を加熱器4に流す。これにより、加熱器4のリング部4aがジュール発熱で瞬間的に加熱される。これにより、加速流を得ることができる。この加速流は、冷線プローブ5を通過する。コンデンサの電圧と冷線プローブ5の出力と図10に示す。図10において、符号9は冷線プローブ5の出力曲線を、符号11はコンデンサの電圧曲線を示している。コンデンサの電圧降下時点Aが放電開始時である。電圧降下の終了時点Bが、放電の終了時である。加熱部4からの加熱により得られた加速流が冷線プローブ5を通過すると、その抵抗が増加して電圧値が上昇する。電圧上昇の終了時点(極大点)Cを加速流の到着時点と見なすことができる。これにより、時点Aから時点Cまでの時間間隔Δtを得ることができる。ここで、加熱器4から冷線プローブ5までの距離L3(図9)は既知である。この例では、距離L3=15mmとされている。よって、加速流の流速(加熱流速ということがある)Vは、
V=L3/Δt
として得ることができる。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、加熱流速Vと実際の流体の流量(または流速)との関係を計測した。ここでは、コンデンサの容量(加熱量に対応)が440μF、220μF、100μF、47μFのそれぞれの場合について計測した。その結果を、図11に示す。これらから判るように、それぞれの場合において、加熱流速と流体の流量との関係は、ほぼ線形となっていた。したがって、これを検量線とすることによって、加熱流速から、実際の流体の流量を、かなり正確に測定できることが判る。また、この結果からは、加熱量が少ない(コンデンサ容量が小さい)ほうが、計測精度を向上しうることも判る。
ついで、前記した検量線を用いた流量測定方法について説明する。この測定のための装置としては、例えば、図9に示される構成とすることができる。この例では、流速検出手段は、冷線プローブ5によって構成されている。また、冷線プローブ5は、本発明における温度計測器に相当し、かつ、本発明における流速計測手段を構成する。
本実施形態の流量測定方法においては、まず、微少流量の気体を流路1aに流す。ついで、加熱器4を、コンデンサを用いて瞬間的に加熱する。ついで、加速流が加熱器4から冷線プローブ5に到達するまでの時間差Δtを得る。このΔtから加熱流速を得る。加熱流速を検量線に当てはめることにより、求める流量を得ることができる。
本実施形態では、冷線プローブを一本としているので、第1実施形態のものに比べて、小型化が可能である。また、部品点数が少ないため、故障の可能性も減らすことができる。本実施形態における他の構成および利点は、第1実施形態と同様なので、これ以上の説明は省略する。
つぎに、本発明の第3実施形態について説明する。この実施形態では、測定対象の流体として液体を選択している。この実施形態で用いられる装置は、基本的には、第2実施形態における図9に示される構成のものである。ただし、流路1aに微少な一定流量の液体を流すために、注射器(図示せず)を配管1に接続している。この注射器のピストンを低速で押し出すことによって、一定流量の液体を流路1aに送り込んでいる。
この実施形態の装置を用いて、水流における加熱流速と流量との関係を測定した。結果を図12に示す。この結果から、液体においても、加熱流速と流量との間に線形な関係があることが判る。よって、液体に対しても、第1実施形態または第2実施形態と同様な方法によって、微少流量を計測することができる。他の構成および利点は、前記した各実施形態と基本的に同様なので、説明を省略する。ただし、液体の流速を計測する場合は、気体の場合に比べて、加速流を得るための加熱量が大きくなる傾向がある。
なお、前記各実施形態および実験例の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。例えば、測定される流体の流量としては、500cc/min以上でも可能である。
また、前記各実施形態では、検量線を実験的に求めたが、数値解析により求めることも可能である。さらに、この明細書において、検量線とは、加熱流速と流量またはそれと同等なパラメータとの間の対応関係を意味しており、実際に線が記載される必要はない。例えば、コンピュータ処理においては、検量線は、数式によって通常は表現される。
さらに、前記各実施形態では、温度計測器として冷線プローブを用いたが、例えば、高感度のサーミスタを用いることもできる。温度計測器としては、要するに、必要な精度で温度を測定できるものであればよい。
産業上の利用可能性
本発明によれば、微少流量を簡易な構成で計測することができる流量計測方法および流量計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態において用いる検量線作成のための装置を示す概略的な要部断面図である。
図2は、図1のA部分を拡大して示す概略的な説明図である。
図3は、図2におけるB方向拡大矢視図である。
図4(a)は、本発明の一実施形態に係る検量線作成のための、他の装置を示す概略的な要部断面図である。図4(b)は、図4(a)におけるC部分を拡大した概略的な説明図である。
図5は、管内の流体の流速分布を示すグラフであって、縦軸は流速、横軸は軸心からの距離(半径)を示している。
図6は、冷線プローブからの出力を示すグラフである。
図7は、検量線の一例を示すグラフである。
図8は、検量線の一例を示すグラフであって、小さい流量の部分を拡大したものである。
図9は、本発明の第2実施形態において用いる検量線作成のための装置を示す概略的な要部断面図である。
図10は、冷線プローブからの出力とコンデンサの電圧とを示すグラフである。
図11は、本発明の第2実施形態における検量線の一例を示すグラフであって、上から、コンデンサ容量が440μF、220μF、100μFおよび47μFの場合を示している。
図12は、本発明の第3実施形態における検量線の一例を示すグラフである。
Claims (14)
- 重力と逆向きに流れる流体の流量を計測する方法であって、下記のステップを有することを特徴とする流量計測方法。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(b)前記加速流の流速を計測するステップ、
(c)前記加速流の流速と前記流体の流量との検量線を用いて、前記流体の流量を得るステップ。 - 前記流体は気体または液体であることを特徴とする請求項1記載の流量計測方法。
- 前記ステップ(a)において、前記流体の加熱位置は、前記流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央であることを特徴とする請求項1または2に記載の流量計測方法。
- 前記ステップ(a)において、前記流体の加熱位置は、前記流体の最大流速点またはその近傍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流量計測方法。
- 前記流体はポアズイユ流として流れていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量計測方法。
- 前記流体の流量は500cc/min以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流量計測方法。
- 重力と逆向きに流れる流体の流量を計測する方法であって、下記のステップを有することを特徴とする流量計測方法。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とし、この加速流の流速と、前記流体についての既知の流量とから、検量線を作成するステップ、
(b)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(c)前記加速流の流速を計測するステップ、
(d)前記加速流の流速と前記流体の流量との検量線を用いて、前記流体の流量を得るステップ。 - 重力と逆向きに流体を通過させる流路と、前記流路中に配置された加熱器と、前記加熱器によって加熱された流体の流速を検出する流速検出手段とを有する流量計測装置。
- 前記加熱器による前記流体の加熱位置は、前記流体の流れ方向に直交する仮想面においてほぼ中央であることを特徴とする請求項8記載の流量計測装置。
- 前記加熱器は、前記流体の最大流速点となる位置の近傍に配置されていることを特徴とする請求項8記載の流量計測装置。
- 前記流速検出手段は、前記流体の流れ方向において離間して配置された一つまたは複数の温度計測器を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の流量計測装置。
- 前記温度計測器は、冷線プローブであることを特徴とする請求項11記載の流量計測装置。
- 前記温度計測器は、サーミスタであることを特徴とする請求項11記載の流量計測装置。
- 重力と逆向きに流れる流体の流量を計測する方法であって、下記のステップを有することを特徴とする流量計測方法。
(a)前記流体の一部を加熱して加速流とするステップ、
(b)前記加速流の流速を計測するステップ、
(c)前記加速流の流速と前記流体の流量との対応関係を用いて、前記流体の流量を得るステップ。
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