JPWO2002078738A1 - 血液レオロジー改善剤 - Google Patents
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Abstract
ヒト組織因子(ヒトTF)に対する抗体を含んで成る、血液レオロジー改善剤。
Description
発明の分野
本発明は血液レオロジー改善剤に関する。
背景技術
近年増加傾向にある肺血栓症や深部静脈血栓症などの発症には安静時や臥床時の血流低下による血栓形成が最大要因であると考えられている。従って、これらの疾患の予防や治療のために、血流の低下を防止する血液流動性改善剤、すなわち血液レオロジー改善剤が求められている。しかしながら、効果的に血液レオロジーを改善する活性を有する医薬は知られていない。
このため、血液レオロジー(流動性)を改善する医薬の開発が望まれている。
発明の開示
従って本発明は、新規な血液レオロジー改善剤を提供しようとするものである。
上記の課題を解決すべく種々検討した結果、本発明者らは、ヒト組織因子に対する抗体(抗ヒトTF抗体、又は抗TF抗体と称する場合がある)により、血液レオロジーを改善することを見出した。
従って本発明は、抗ヒトTF抗体を含んで成る血液レオロジー改善剤を提供する。
上記の抗ヒトTF抗体はポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体又は改変抗体もしくは抗体修飾物であることができる。モノクローナル抗体は一般にハイブリドーマにより生産されるが遺伝子組換えにより製造することもでき、また改変抗体及び抗体修飾物は、通常、遺伝子組換えにより製造される。改変抗体としては、キメラ抗体、例えばヒト−マウスキメラ抗体が例示され、ヒト型化抗体としては、例えば後で具体的に説明するバージョンb−b,i−b、及びi−b2が挙げられる。抗体修飾物としては、Fab,F(ab′)2,Fvなどの抗体断片、及び抗体の可変領域を連結して1本鎖にしたシングルチェインFv(scFvと称する)が挙げられる。
発明の実施の形態
本発明において、血液レオロジーの改善とは、血液の流れを良くすることを意味する。
本発明において使用する抗体としては、血液のレオロジーを改善することができる抗体であればポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。また、モノクローナル抗体に基くキメラ抗体、ヒト型化抗体、シングルチェインFvなどを使用することもできる。ヒト型化抗体が特に好ましい。
1.抗ヒトTF抗体
本発明で使用される抗ヒトTF抗体は、血液のレオロジーを改善する効果を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。
本発明で使用される抗ヒトTF抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗ヒトTF抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。この抗体はヒトTFと結合することにより、ヒトTFが血液凝固亢進の状態を惹起するのを阻害する抗体である。
2.抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、ヒトTF又はその一部分(断片)を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトTFを、J.H.Morrisseyら、Cell,Vol.50,p.129−135(1987)に開示されたヒトTF遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、ヒトTFをコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトTFタンパク質を公知の方法で精製する。この方法を、本明細書の参考例1に記載する。さらに、抗原として使用するヒトTFは参考例2に記載する方法によりヒト胎盤などのTF含有生物材料から抽出、精製して使用することもできる。
次に、この精製ヒトTFタンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、ヒトTFのC−末端側の膜貫通領域を除去した可溶性TFを例えば遺伝子組換えにより作製することもでき、これを感作抗原として使用することもできる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(Kearney,J.F.et al.,J.Immunol.(1979)123,1548−1550),P3x63Ag8U.1(Yelton,D.E.et al.,Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7),NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519),MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415),SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270),F0(de St.Groth,S.F.and Scheidegger,D.J.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21),S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med,(1978)148,313−323),R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Galfre,G.and Milstein,C.,Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000−6000程度)を通常30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでヒトTFに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞例えばU266と融合させ、ヒトTFへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる。(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てまたは一部のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるヒトTFを投与して抗ヒトTF抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からヒトTFに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO 92/03918号公報、WO 94/02602号公報、WO96/34096号公報、WO96/33735号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
モノクローナル抗体の製造の例を参考例2に具体的に記載する。この例においては、ATR−2,3,4,5,7及び8と称する6種類のモノクローナル抗体を得ており、いずれも本発明において使用することができるが、ATR−5が特に好ましい。
3.組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775参照)。
具体的には、抗ヒトTF抗体を産生するハイブリドーマから、抗ヒトTF抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.and Sacchi,N.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5′−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002,Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗ヒトTF抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗ヒトTF抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
組換え抗体の製造方法の一例を参考例3に具体的に記載する。
4.改変抗体
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO 98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,Cancer Res.(1993)53,851−856)。
キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1,Cγ2,Cγ3,Cγ4を、L鎖ではCκ,Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
キメラ抗体の作製方法は参考例4に具体的に記載する。
また、ヒト型化抗体の作製方法を参考例5に具体的に記載する。この参考例においては、ヒト型化重鎖(H鎖)可変領域(V領域)として、表1及び表2に示すアミノ酸配列を有するバージョンa,b,c,d,e,f,g,h,i,j,b1,d1,b3及びd3を用いた。
また、ヒト型化軽鎖(L鎖)V領域として、表3に示すアミノ酸配列を有するバージョンa,b,c,b1及びb2を用いた。
そして、上記のH鎖V領域の種々のバージョンと、L鎖V領域の種々のバージョンを組合わせて抗原結合能、及びTF中和活性について評価した結果、参考例6及び参考例7に記載する通り、「H鎖V領域バージョン」−「L鎖V領域バージョン」として表示する場合「b−b」、「i−b」、及び「i−b2」が特に高活性を示した。なお、これらのヒト型化抗体の抗原結合能を図1に示し、ヒトTF中和活性(TFのファクターXa産生阻害活性)を図2に示し、ヒトTF中和活性(ファクターX結合阻害活性)を図3に示し、そしてヒトTF中和活性(TFの血漿凝固阻害活性)を図4に示す。
5.抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、ヒトTFに結合し、ヒトTFの活性を阻害するかぎり、抗体の断片又はその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab,F(ab′)2,Fv、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これらの抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976,Better,M.& Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Plueckthun,A.& Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,497−515,Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1986)121,652−663,Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1986)121,663−669,Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12−19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗ヒトTF抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
6.組換え型抗体または改変抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3′側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108−114)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1989)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240,1041−1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379−4383)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの真菌細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO,COS、ミエローマ、BHK,Vero,HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM,MEM,RPMI1640,IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
7.抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
8.血液レオロジー改善効果の確認
血液レオロジーは、細胞マイクロレオロジー測定装置などを利用してインピトロで末梢血の血流を測定することにより観察できる。LPSの処理により血流低下が見られるが、本発明の抗ヒトTF抗体の添加により血流が改善された。従って、本発明の抗ヒトTF抗体は、血液レオロジーの改善に有効であることが確認された。このような改善を必要とする疾患としては、動脈硬化症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、慢性動脈閉塞症等があり、それらの疾患に伴って発生する血流低下を本発明の抗ヒトTF抗体は、改善することができる。
この効果を、実施例に具体的に記載する。
9.投与方法および製剤
本発明の治療剤は、血液レオロジーの改善を目的として使用される。
有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100mg/kg、好ましくは0.1〜10mg/kgの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗ヒトTF抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
投与方法は特に限定されないが、静脈注射、点滴静脈注射等が好ましい。
本発明の抗ヒトTF抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latest edition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗ヒトTF抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80,Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
実施例
次に、実施例により本発明をさらに具体的に記載する。
3.5mLの末梢血を3mLのMono−Poly分離溶液に添加し、1,500rpm(×700G)にて20分間遠心した。こうして回収した単核細胞画分を50mL FALCONチュウブ中でリン酸緩衝液(PBS)により洗浄し、遠心分離により細胞ペレットを集め、これを、種々の濃度でリポポリサッカライド(LPS)を含有するか又は含有しない、10%FBS含有RPMI‐1640培地に分散させた。リポポリサッカライドの濃度は、0μg/mL無添加群(陰性対照)及び4.0μg/mL添加群とした。
こうして調製した細胞懸濁液を、100mmの培養皿中、CO2インキュベーター内で6時間インキュベートした。次に、培養皿に付着した細胞をスクレイパーにより剥離し、リン酸緩衝液(PBS)中に細胞濃度を6×105に調整した後、800rpm(×200G)にて10分間遠心分離して、細胞ペレットを回収し、リン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、遠心分離により細胞ペレットを回収した。
次に、上記のようにしてリポポリサッカライド処理した単核細胞の血液凝固活性を調べるため、6×105個の細胞を1000μLの全血に添加し、この混合物を、室温にて10分間インキュベートした後、500ngの活性型第7因子(FVIIa)および最終濃度5mMのCaCl2を添加し、細胞マイクロレオロジー測定装置(MCFAN−KH;日立原町電子工業株式会社)に適用した。この装置は、毛細血管を模倣したものであり、シリコン単結晶基板上に多数の微小V型溝を形成しその上にガラス基板を圧着して人工毛細管を形成し、ガラス基板を通して血液細胞などの流れを顕微鏡観察できるようにしたものである。結果を、単位時間当たり毛細管を流過した血液の体積(μL/sec.)により表したものを図5に示す。この図から、ポリリポサッカライドの量依存的に血液の流動性が低下することが確認された。
そこで、上記リポポリサッカライド処理(4μg/mL)した単核細胞と全血との混合物のインキュベーションの際に、抗‐ヒト組織因子抗体ATR−5(参考例2において製造したもの)を、1.25μg/mL、2.5μg/mLまたは5μg/mL添加、あるいは無添加(陰性対照)とし、インキュベートした。なお、陽性対照として、リポポリサッカライド処理しない単核細胞を全血に加えた試験も行なった。次に、インキュベートした混合物の流動性を、上記のようにして、細胞マイクロレオロジー測定装置により測定した。結果を図6に示す。抗‐ヒト組織因子抗体が血液の流動性を改善することが確認された。
参考例1. 可溶型ヒトTFの作製法
可溶型ヒトTF(shTF)は以下のように作製した。
ヒトTFの貫通領域(220番目のアミノ酸)以下をFLAGペプチドM2に置換したものをコードする遺伝子を、哺乳動物細胞用の発現ベクター(ネオマイシン耐性遺伝子、DHFR遺伝子を含む)に挿入し、CHO細胞に導入した。ヒトTFのcDNA配列はJames H.Morrisseyらの報告(Cell(1987)50,129−135)を参考にした。この可溶型ヒトTFの遺伝子配列とアミノ酸配列を配列番号101及び102に示した。G418により薬剤セレクションし、発現細胞を選抜し、さらにメトトレキサートで発現増幅をかけ、shTF発現細胞を樹立した。
この細胞を無血清培地CHO−S−SFMII(GIBCO)で培養し、shTFを含む培養上清を得た。同容量の40mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)で2倍に希釈し、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)で平衡化したQ−Sepharose Fast Flowカラム(100mL,Pharmacia Biotech)に添加し、0.1M NaClを含む同緩衝液で洗浄後、NaClの濃度を0.3Mとし、shTFをカラムから溶出した。得られたshTF画分に終濃度2.5Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、遠心操作(10,000rpm、20分)により夾雑蛋白質を沈殿させた。上清をButyl TOYOPEARL(30mL,TOSOH)に添加し、2.5Mの硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)で洗浄した。
50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)中、硫酸アンモニウム濃度を2.5Mから0Mまで直線的に下げ、shTFを溶出させた。shTFを含むピーク画分をCentri−Prep 10(アミコン)で濃縮した。150mM NaClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したTSKgel G3000SWGカラム(21.5×600mm,TOSOH)に濃縮液を添加し、shTFのピーク画分を回収した。これを0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し、可溶型ヒトTF(shTF)とした。試料の吸光度280nmのモル吸光係数をε=40,130、分子量を43,210として、試料の濃度を算出した。
参考例2. 抗TFモノクローナル抗体の作製
1.ヒトTFの精製
ヒト胎盤からのTFの精製は、Itoらの方法(Ito,T.らJ.Biochem.114,691−696,1993)に準じて行った。すなわち、ヒト胎盤を10mM塩化ベンザミジン、1mMフッ化フェニルメチルスルフォニル、1mMジイソプロピルフルオロフォスフェートおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス緩衝生理食塩液(TBS,pH7.5)中でホモジナイズ後、沈殿を冷アセトンで脱脂し、得られた脱脂粉末を2% Triton X−100を含む上記緩衝液に懸濁してTFを可溶化した。
この上清からConcanavalin A−Sepharose 4Bカラム(Pharmacia)および抗TF抗体を結合させたSepharose 4Bカラム(Pharmacia)を用いてアフィニティークロマトグラフィーを行い、精製TFを得た。これを限外濾過膜(PM−10,Amicon)で濃縮し、精製標品として4℃で保存した。
精製標品中のTF含量は、市販の抗TFモノクローナル抗体(American Diagnostica)とポリクローナル抗体(American Diagnostica)を組合せたSandwich ELISAで、組換え型TFを標準にして定量した。
また精製標品の純度は、4−20%濃度勾配ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEしたものを銀染色することで確認した。
2.免疫とハイブリドーマの作製
精製ヒトTF(約70μg/ml)を等容量のFreundの完全アジュバント(Difco)と混合し、乳化した後、5週齢のBalb/c系雄性マウス(日本チャールスリバー)の腹部皮下に、TFとして10μg/マウスとなるように免疫した。初回免疫の12,18及び25日後にはFreundの不完全アジュバントと混合したTFを5μg/マウスとなるように皮下に追加免疫し、最終免疫として32日目にPBSで希釈したTF溶液を5μg/マウスで腹腔内投与した。
最終免疫の3日後に4匹のマウスから脾細胞を調製し、細胞数で約1/5のマウスミエローマ細胞株P3U1とポリエチレングリコール法を用いて融合させた。融合細胞を10%ウシ胎仔血清を含むRPMI−1640培地(以下RPMI−培地とする)(Lifetechoriental)に懸濁し、96穴プレートに1匹のマウスにつき400穴播種した。融合後、1,2,3,5日目に培地の半量をHAT(大日本製薬)およびcondimed H1(Boehringer Mannheim GmbH)を含むRPMI−培地(以下HAT−培地とする)に交換することで、ハイブリドーマのHAT選択を行った。
下記のスクリーニング法で選択したハイブリドーマは2回の限界希釈を行うことでクローン化した。
限界希釈は、96穴プレート2枚に一穴あたり0.8個の細胞を播種した。検鏡により単一コロニーであることが確認できた穴について、下記に示したTF結合活性とTF中和活性の測定を行いクローンを選択した。得られたクローンはHAT−培地からRPMI−培地に馴化し、馴化による抗体産生能の低下が無いことを確認したうえで、再度限界希釈を行い、完全なクローン化を行った。以上の操作により、TF/ファクターVIIa複合体とファクターXとの結合を強く阻害する抗体6種(ATR−2,3,4,5,7及び8)を産生するハイブリドーマが樹立できた。
3.腹水の作製および抗体の精製
樹立したハイブリドーマの腹水の作製は常法に従って行った。すなわち、in vitroで継代したハイブリドーマ106個を、あらかじめ鉱物油を2回腹腔内に投与しておいたBalb/c系雄性マウスの腹腔内に移植した。移植後1〜2週目で腹部が肥大したマウスから腹水を回収した。
腹水からの抗体の精製は、Protein Aカラム(日本ガイシ)を装着したConSepLC100システム(Millipore)を用いて行った。
4.Cell−ELISA
TFを高発現することで知られているヒト膀胱癌由来細胞株J82(Fair D.S.ら、J.Biol.Chem.,262,11692−11698,1987)をATCCより導入し、RPMI−培地中、37℃、5%CO2、100%湿度の条件で継代・維持した。
Cell−ELISA用プレートは、96穴プレートにJ82細胞を105個/穴の濃度で播種し、上記条件で1日培養後、培地を除いてリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液(PFA)を加えて氷冷下で10分静置することで固定化することによって作製した。PFAを除去し、PBSで洗浄後、1%BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むTris緩衝液(Blocking緩衝液)を加えて、使用時まで4℃で保存した。
Cell−ELISAは以下のように行った。すなわち、上記のように作製したプレートからBlocking緩衝液を除去し、抗TF抗体溶液もしくはハイブリドーマ培養上清を加えて室温で1.5時間反応させた。
0.05% Tween20を含むPBSで洗浄後、アルカリフォスファターゼを結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)(Zymed)を1時間反応させ、洗浄後、1mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム(Sigma)を添加して1時間後に405nmにおける吸光度を測定することで、J82細胞に結合した抗TF抗体量を定量した。
5.ファクターXa活性を指標としたTF中和活性測定系
50μlの5mMCaCl2および0.1%ウシ血清アルブミンを含むトリス緩衝生理食塩液(TBS:pH7.6)に10μlのヒト胎盤由来トロンボプラスチン溶液(5mg/ml)(Thromborel S)(Boehring)と10μlのファクターVIIa溶液(82.5ng/ml)(American Diagnostica)を添加し、室温で1時間反応させることでTF/Factor VIIa複合体を形成させた後、10μlの所定濃度に希釈した抗TF抗体溶液もしくはハイブリドーマ培養上清および10μlのFactor X溶液(3.245μg/ml)(Celsus Laboratorise)を添加して45分間反応させ、0.5M EDTAを10μl添加することで反応を止めた。ここに2mM S−2222溶液(第一化学薬品)を50μl添加し、30分間の405nmにおける吸光度変化をもってTFのFactor Xa産生活性とした。この方法では、TF/Factor VIIa複合体とFactor Xとの結合を阻害する抗体の活性は測定できる。
6.血漿凝固阻害活性測定系
市販の正常ヒト血漿(コージンバイオ)を用い、この100μlに適当に希釈した抗TF抗体溶液50μlを混和して37℃で3分間反応させた後、50μlのヒト胎盤由来トロンボプラスチン溶液(1.25mg/ml)を添加し、血漿が凝固するまでの時間を血漿凝固時間測定装置(CR−A:Amelung)で測定した。
7.抗体のアイソタイプの決定
ハイブリドーマの培養上清もしくは精製抗体について、マウスモノクロナール抗体アイソタイピングキット(Amersham社製)を用いて抗体のアイソタイプを確認し、結果を下に示した。
参考例3. ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニング
(1)mRNAの調製
参考例2で得たハイブリドーマATR−5(IgG1κ)からmRNAをQuick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia Biotech)を用いて調製した。キット添付の処方に従い、それぞれのハイブリドーマ細胞を抽出緩衝液で完全にホモジナイズし、オリゴ(dT)−セルローススパンカラムにてmRNAを精製し、エタノール沈殿を行った。mRNA沈殿物を溶出緩衝液に溶解した。
(2)マウス抗体V領域をコードする遺伝子のcDNAの作製及び増幅
(i)H鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領城をコードする遺伝子のクローニングは、5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002,1988;Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acid Res.17,2919−2932,1989)により行った。5′−RACE法にはMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用い、操作はキット添付の処方に従って行った。
前記のようにして調製したmRNA約1μgを鋳型として、キット添付のcDNA synthesis primerを加え、逆転写酵素と42℃、60分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。これをDNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、RNaseHで16℃、1.5時間、T4 DNAポリメラーゼで16℃、45分間反応させることにより、2本鎖cDNAを合成した。2本鎖cDNAをフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿により回収した。
T4 DNAリガーゼで16℃で一夜反応することにより、2本鎖cDNAの両端にcDNA アダプターを連結した。反応混合液は10mM Tricine−KOH(pH8.5)、0.1mM EDTA溶液で50倍に希釈した。これを鋳型としてPCRによりH鎖V領域をコードする遺伝子を増幅させた。5′−側プライマーにはキット添付のアダプタープライマー1を、3′−側プライマーにはMHC−G1プライマー(配列番号1)(S.T.Jones,et al.,Biotechnology,9,88−89,1991)を使用した。
ATR−5抗体H鎖V領域に対するPCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、30〜50pmoleのアダプタープライマー1並びにMHC−G1プライマー、及びcDNAアダプターを連結したcDNAの反応混合物1〜5μlを含有する。
PCRはいずれもDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
(ii)L鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子のクローニングは、5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002,1988;Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acid Res.17,2919−2932,1989)により行った。5′−RACE法にはMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用い、操作はキット添付の処方に従って行った。前記のようにして調製したmRNA約1μgを鋳型としてcDNA合成プライマーを加え、逆転写酵素と42℃、60分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。
これをDNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、RNaseHで16℃、1.5時間、T4 DNAポリメラーゼで16℃、45分間反応させることにより、2本鎖cDNAを合成した。2本鎖cDNAをフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿により回収した。T4 DNAリガーゼで16℃で一夜反応することにより、2本鎖cDNAの両端にcDNAアダプターを連結した。反応混合液は10mM Tricine−KOH(pH8.5)、0.1mM EDTA溶液で50倍に希釈した。これを鋳型としてPCRによりL鎖V領域をコードする遺伝子を増幅させた。5′−側プライマーにはアダプタープライマー1を、3′−側プライマーにはMKCプライマー(配列番号2)(S.T.Jones,et al.,Biotechnology,9,88−89,1991)を使用した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、30〜50pmoleのアダプタープライマー1並びにMKCプライマー、及びcDNA アダプターを連結したcDNAの反応混合物1μlを含有する。
PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
(3)PCR生成物の精製及び断片化
前記のPCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素XmaI(New England Biolabs)により37℃で1時間消化した。XmaI消化混合物を2%から3%のNuSieve GTG アガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、H鎖V領域として約500bp長、L鎖V領域として約500bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA溶液(以下、TEと称す)10μlに溶解した。
上記のようにして調製したマウスH鎖V領域及びL鎖V領域をコードする遺伝子を含むXmaI消化DNA断片と、XmaIで消化することにより調製したpUC19プラスミドベクターとをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。
次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook,et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)(以下、LBA寒天培地と称す)上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体を50μg/ml アンピシリンを含有するLB培地(以下、LBA培地と称す)3mlあるいは4mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製し、塩基配列の決定を行った。
(4)マウス抗体V領域をコードする遺伝子の塩基配列決定
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)(配列番号3)及びM13 Primer RV(宝酒造)(配列番号4)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
こうして得られたハイブリドーマATR−5に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをATR−5Hv/pUC19と命名し、そしてL鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをATR−5Lv/pUC19と命名した。プラスミドATR−5Hv/pUC19に含まれる各マウス抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号5及び99に、プラスミドATR−5Lv/pUC19に含まれる各マウス抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号6及び100に示す。
参考例4. キメラ抗体の構築
マウスATR−5抗体V領域をヒト抗体C領域に連結したキメラATR−5抗体を作製した。ATR−5抗体V領域をコードする遺伝子をヒト抗体C領域をコードする発現ベクターに連結することにより、キメラ抗体発現ベクターを構築した。
(1)キメラ抗体H鎖V領域の構築
ヒト抗体H鎖C領域をコードする発現ベクターに連結するために、ATR−5抗体H鎖V領域をPCR法により修飾した。5′−側プライマーch5HS(配列番号7)はV領域をコードするDNAの5′−末端にハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak,M.et al.,J.Mol.Biol.,196,947−950,1987)及び制限酵素SalIの認識配列を有するように設計した。3′−側プライマーch5HA(配列番号8)はJ領域をコードするDNAの3′−末端にハイブリダイズし、且つ制限酵素NheIの認識配列を有するように設計した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、50pmoleのch5HSプライマー並びにch5HAプライマー、及び鋳型DNAとして1μlのプラスミドATR5Hv/pUC19を含有する。PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
PCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
クローニングベクターには制限酵素NheI、SalI及びSplI、BglIIの認識配列を導入した改変pUC19ベクター(以下、CVIDECと称す)を用いた。上記のようにして調製したマウスH鎖V領域をコードする遺伝子断片とNheI及びSalIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このATR−5抗体H鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′−側にSalI認識配列及びKozakコンセンサス配列、3′−側にNheI認識配列を持つプラスミドをchATR5Hv/CVIDECと命名した。
(2)キメラ抗体L鎖V領域の構築
ヒト抗体L鎖C領域をコードする発現ベクターに連結するために、ATR−5抗体L鎖V領域をPCR法により修飾した。5′−側プライマーch5LS(配列番号9)はV領域をコードするDNAの5′−末端にハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak,M.et al.,J.Mol.Biol.,196,947−950,1987)及び制限酵素BglIIの認識配列を有するように設計した。3′−側プライマーch5LA(配列番号10)はJ領域をコードするDNAの3′−末端にハイブリダイズし、且つ制限酵素SplIの認識配列を有するように設計した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、50pmoleのch5LSプライマー並びにch5LAプライマー、及び鋳型DNAとして1μlのプラスミドATR5Lv/pUC19を含有する。PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
PCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素SplI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素BglII(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、20μlのTEに溶解した。
上記のようにして調製したマウスL鎖V領域をコードする遺伝子断片とSplI及びBglIIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3ml37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このATR−5抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′−側にBglII認識配列及びKozakコンセンサス配列、3′−側にSplI認識配列を持つプラスミドをchATR5Lv/CVIDECと命名した。
(3)キメラ抗体発現ベクターの構築
IDEC社より導入した抗体発現ベクターを用いてキメラ抗体発現ベクターを構築した。ベクターにはIgG1型抗体発現ベクターN5KG1(V)及びIgG4型抗体発現ベクターN5KG4Pを用いた。発現ベクターN5KG1(V)あるいはN5KG4Pのヒト抗体H鎖C領域の直前にあるSalI−NheI部位にATR−5のH鎖V領域をコードする遺伝子を、ヒト抗体L鎖C領域の直前にあるBglII−SplI部位にATR−5のL鎖V領域をコードする遺伝子を連結することによって、キメラATR−5抗体発現ベクターを作製した。
(i)H鎖V領域の導入
プラスミドchATR5Hv/CVIDECを制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で3時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で3時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
発現ベクターN5KG1(V)及びN5KG4Pを制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で3時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で3時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約9000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE60μlに溶解した。
上記のようにして調製したH鎖V領域をコードする遺伝子を含むSalI−NheI DNA断片とSalI及びNheIで消化したN5KG1(V)あるいはN5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラATR−5抗体H鎖をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれchATR5Hv/N5KG1(V)、及びchATR5Hv/N5KG4Pと命名した。
(ii)L鎖V領域の導入
プラスミドchATR5Lv/CVIDECを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で1.5時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、20μlのTEに溶解した。
プラスミドchATR5Hv/N5KG1(V)及びchATR5Hv/N5KG4Pを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で1.5時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約9400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
上記のようにして調製したL鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI−BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化したchATR5Hv/N5KG1(V)あるいはchATR5Hv/N5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体を50μg/ml アンピシリンを含有する2×YT培地1lで37℃にて一夜培養し、菌体画分からPlasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラATR−5抗体をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれchATR5/N5KG1(V)、chATR5/N5KG4Pと命名した。
(4)COS−7細胞へのトランスフェクション
キメラ抗体の抗原結合活性及び中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS−7細胞にトランスフェクションし、キメラ抗体を一過性に発現させた。
プラスミドchATR5/N5KG1(V)あるいはchATR5/N5KG4PをGene Pulser装置(Bio Rad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に形質導入した。ダルベッコPBS(−)(以下、PBSと称す)中に1x107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS−7細胞0.78mlに、プラスミド50μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を5%のUltra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿を用いてCO2インキュベーターにて培養した。24時間の培養の後、培養上清を吸引除去し、新たに無血清培地HBCHO(アーバインサイエンティフィック)を加えた。さらに72時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去した。
(5)抗体の精製
COS−7細胞の培養上清からキメラ抗体を、rProtein A Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech)を用いて以下のように精製した。
1mlのrProtein A Sepharose Fast Flowをカラムに充填し、10倍量のTBSを流すことによってカラムを平衡化した。平衡化したカラムにCOS−7細胞の培養上清をアプライした後、10倍量のTBSによってカラムを洗浄した。
次に、13.5mlの2.5mM HCl(pH3.0)を流すことによって吸着した抗体画分をカラムより溶出し、直ちに1.5mlの1M Tris−HCl(pH8.0)を加えることによって溶出液を中和した。
精製された抗体画分について、セントリプレップ100(Amicon)を用いた限外濾過を2回行うことにより、150mM NaClを含む50mM Tris−HCl(pH7.6)(以下、TBSと称す)に溶媒を置換し、最終的に約1.5mlまで濃縮した。
(6)CHO安定産生細胞株の樹立
キメラ抗体の安定産生細胞株を樹立するため、CHO−S−SFMII無血清培地(GIBCO)に馴化したCHO細胞(DG44)に前記発現プラスミドを導入した。
プラスミドchATR5/N5KG1(V)あるいはchATR5/N5KG4Pを制限酵素SspI(宝酒造)で切断して直鎖状DNAにし、フェノール及びクロロホルムで抽出の後、エタノール沈殿でDNAを回収した。直鎖状にしたプラスミドをGene Pulser装置(Bio Rad)を用いてエレクトロポレーションによりDG44細胞に形質導入した。PBS中に1x107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているDG44細胞0.78mlに、プラスミド10μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞をヒポキサンチン・チミジン(GIBCO)を含有するCHO−S−SFMII培地(GIBCO)に懸濁し、2枚の96穴プレート(Falcon)を用いてCO2インキュベーターにて培養した。培養開始翌日に、ヒポキサンチン・チミジン(GIBCO)及び500μg/ml GENETICIN(G418Sulfate、GIBCO)を含有するCHO−S−SFMII培地(GIBCO)の選択培地に交換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。選択培地交換後、2週間前後に顕微鏡下で細胞を観察し、順調な細胞増殖が認められた後に、後述の抗体濃度測定ELISAにて抗体産生量を測定し、抗体産生量の多い細胞を選別した。
参考例5. ヒト型化抗体の構築
(1)ヒト型化抗体H鎖の構築
(i)ヒト型化H鎖バージョン“a”の構築
ヒト型化ATR−5抗体H鎖を、PCR法によるCDR−グラフティングにより作製した。ヒト抗体L39130(DDBJ,Gao L.ら、未発表、1995)由来のFRを有するヒト型化ATR−5抗体H鎖バージョン“a”の作製のために7個のPCRプライマーを使用した。CDR−グラフティングプライマーhR5Hv1S(配列番号11)、hR5Hv2S(配列番号12)及びhR5Hv4S(配列番号13)はセンスDNA配列を有し、そしてCDRグラフティングプライマーhR5Hv3A(配列番号14)及びhR5Hv5A(配列番号15)はアンチセンスDNA配列を有し、そしてそれぞれプライマーの両端に18−35bpの相補的配列を有する。
hR5Hv1SはKozakコンセンサス配列(Kozak,M,ら、J.Mol.Biol.196,947−950,1987)及びSalI認識部位を有するように、またhR5Hv5AはNheI認識部位を有するように設計した。また外部プライマーhR5HvPrS(配列番号16)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv1Sと、hR5HvPrA(配列番号17)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv5Aとホモロジーを有する。
CDR−グラフティングプライマーhR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv3A、hR5Hv4S及びhR5Hv5A、ならびに外部プライマーhR5HvPrS及びhR5HvPrAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。
PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、98μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% TritonX−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、CDR−グラフティングプライマーhR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv3A、hR5Hv4S及びhR5Hv5Aをそれぞれ5pmoleを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーhR5HvPrS及びhR5HvPrAを加え、100μlの系で同じ温度サイクルを25回行った。PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
約430bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水17μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をNheI及びSalIで消化し、NheI及びSalIで消化することにより調製したプラスミドベクターCVIDECに、DNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い添付の処方に従って反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
EcoT22I認識部位の前もしくは後に変異、欠失が認められたため、それぞれ正しい配列を有する断片を連結して再度CVIDECにサブクローニングし、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hva/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hva/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“a”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号18に示す。また、バージョン“a”のアミノ酸配列を配列番号19に示す。
(ii)ヒト型化H鎖バージョン“b”及び“c”の構築
バージョン“b”及び“c”をFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“b”ではFR3をヒト抗体Z34963(DDBJ、Borretzen M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,91,12917−12921,1994)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR−シャッフリングプライマーF3RFFS(配列番号20)及びF3RFBS(配列番号21)はセンスDNA配列を有し、F3RFFA(配列番号22)及びF3RFBA(配列番号23)はアンチセンスDNA配列を有する。
F3RFFSとF3RFFAは互いに相補的な配列を有し、両端にBalI及びXhoIの認識配列を有する。バージョン”c”ではFR3をヒト抗体P01825(SWISS−PROT、Poljak RJ.ら,Biochemistry,16,3412−3420,1977)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR−シャッフリングベクターF3NMFS(配列番号24)及びF3NMBS(配列番号25)はセンスDNA配列を有し、F3NMFA(配列番号26)及びF3NMBA(配列番号27)はアンチセンスDNA配列を有する。F3RFBSとF3RFBAは互いに相補的な配列を有し、両端にXhoI及びNcoIの認識配列を有する。
F3RFFS、F3RFBS、F3RFFA、F3RFBA、F3NMFS、F3NMBS、F3NMFA及びF3NMBAはPharmacia Biotechにより合成された。F3RFFSとF3RFFA、F3RFBSとF3RFBAをアニールさせ、それぞれBalI及びXhoI、NcoI及びXhoIで消化した。これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号28に示す。また、バージョン“b”のアミノ酸配列を配列番号29に示す。
F3NMFSとF3NMFA、F3NMBSとF3NMBAをアニールさせ、それぞれBalI及びXhoI、NcoI及びXhoIで消化した。これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvc/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvc/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“c”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号30に示す。また、バージョン“c”のアミノ酸配列を配列番号31に示す。
(iii)ヒト型化H鎖バージョン“d”及び“e”の構築
バージョン“d”及び“e”をFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン”d”ではFR3をヒト抗体M62723(DDBJ、Pascual V.ら,J.Clin.Invest.,86,1320−1328,1990)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR−シャッフリングプライマーF3EPS(配列番号32)はセンスDNA配列を有し、F3EPA(配列番号33)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
また外部プライマーF3PrS(配列番号34)及びF3PrA(配列番号35)はFR−シャッフリングプライマーF3EPS及びF3EPAとホモロジーを有し、他のFR3のシャッフリングにも用いることができる。バージョン“e”ではFR3をヒト抗体Z80844(DDBJ、Thomsett AR.ら,unpublished)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR−シャッフリングプライマーF3VHS(配列番号36)はセンスDNA配列を有し、F3VHA(配列番号37)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。F3EPS、F3EPA、F3PrS、F3PrA、F3VHS及びF3VHAはPharmacia Biotechにより合成された。
PCRは、KOD DNA Polymerase(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3EPSとF3EPA、又はF3VHSとF3VHAをそれぞれ5μl、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvd/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号38に、バージョン“d”のアミノ酸配列を配列番号39に示す。また、プラスミドhATR5Hve/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“e”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号40に、バージョン“e”のアミノ酸配列を配列番号41に示す。
(iv)ヒト型化H鎖バージョン“f”及び“g”の構築
バージョン“f”及び“g”はFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“f”はヒト抗体L04345(DDBJ、Hillson JL.ら,J.Exp.Med.,178,331−336,1993)由来のFR3に、バージョン“g”はS78322(DDBJ、Bejcek BE.ら,Cancer Res.,55,2346−2351,1995)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“f”のFR−シャッフリングプライマーF3SSS(配列番号42)はセンスDNA配列を有し、F3SSA(配列番号43)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
バージョン“g”のFR−シャッフリングプライマーF3CDS(配列番号44)はセンスDNA配列を有し、F3CDA(配列番号45)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。F3SSS、F3SSA、F3CDS及びF3CDAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3SSS及びF3SSAもしくはF3CDS及びF3CDAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvf/CVIDEC及びhATR5Hvg/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvf/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“f”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“f”アミノ酸配列を配列番号46及び47に示す。また、プラスミドhATR5Hvg/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“g”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“g”のアミノ酸配列を配列番号48及び49に示す。
(v)ヒト型化H鎖バージョン“h”の構築
バージョン“h”はFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“h”はヒト抗体Z26827(DDBJ、Van Der Stoep ら,J.Exp.Med.,177,99−107,1993)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“h”のFR−シャッフリングプライマーF3ADS(配列番号50)はセンスDNA配列を有し、F3ADA(配列番号51)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
F3ADS及びF3ADAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3ADS及びF3ADAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvh/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvh/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“h”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号52に示す。また、バージョン“h”のアミノ酸配列を配列番号53に示す。
(vi)ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”の構築
バージョン“i”及び“j”はFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“i”はヒト抗体U95239(DDBJ、Manheimer−Lory AJ.,unpublished)由来のFR3に、バージョン“j”はL03147(DDBJ、Collet TA.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89,10026−10030,1992)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“i”のFR−シャッフリングプライマーF3MMS(配列番号54)はセンスDNA配列を有し、F3MMA(配列番号55)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
バージョン“j”のFR−シャッフリングプライマーF3BMS(配列番号56)はセンスDNA配列を有し、F3BMA(配列番号57)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。F3MMS、F3MMA、F3BMS及びF3BMAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、Ampli Taq Gold(Perkin−Elmer)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3MMSとF3MMA、又はF3BMSとF3BMAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.5mMのMgCl2、2.5UのAmpli Taq Goldを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvi/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“i”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“i”アミノ酸配列を配列番号58及び59に示す。また、プラスミドhATR5Hvj/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“j”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“j”のアミノ酸配列を配列番号60及び61に示す。
(vii)ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”の構築
バージョン“b1”及び“d1”はFR−シャッフリング法によってバージョン“b”及び“d”のFR2を別のヒト抗体由来のFR2に置換し作製した。ヒト抗体P01742(SWISS−PROT、Cunningham BA.ら,Biochemistry,9,3161−3170,1970)由来のものに置換するため、FR2をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR−シャッフリングベクターF2MPS(配列番号62)はセンスDNA配列を有し、F2MPA(配列番号63)はアンチセンスDNA配列を有する。また、互いに相補的な配列を有し、両端にはEcoT22I及びBalIの認識配列を有する。
F2MPS、F2MPAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。F2MPSとF2MPAをアニールさせ、EcoT22I及びBalIで消化した。これをEcoT22I及びBalIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC(EcoT22I/BalI)及びhATR5Hvd/CVIDEC(EcoT22I/BalI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb1/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b1”アミノ酸配列を配列番号64及び65に示す。また、プラスミドhATR5Hvd1/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“d1”のアミノ酸配列を配列番号66及び67に示す。
(viii)ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”の構築
バージョン“b3”及び“d3”はFR−シャッフリング法によってバージョン“b”及び“d”のFR2を別のヒト抗体由来のFR2に置換し作製した。ヒト抗体Z80844(DDBJ、Thomsett AR.ら,unpublished)由来のFR2に置換するため、FR2をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR−シャッフリングベクターF2VHS(配列番号68)はセンスDNA配列を有し、F2VHA(配列番号69)はアンチセンスDNA配列を有する。また、互いに相補的な配列を有し、両端にはEcoT22I及びBalIの認識配列を有する。F2VHS、F2VHAはPharmacia Biotechに合成、精製を委託した。
F2VHSとF2VHAをアニールさせ、EcoT22I及びBalIで消化した。これをEcoT22I及びBalIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC(EcoT22I/BalI)及びhATR5Hvd/CVIDEC(EcoT22I/BalI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb3/CVIDEC及びhATR5Hvd3/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb3/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b3”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b3”アミノ酸配列を配列番号70及び71に示す。また、プラスミドhATR5Hvd3/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d3”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“d3”のアミノ酸配列を配列番号72及び73に示す。
(2)ヒト型化抗体L鎖V領域の構築
(i)バージョン”a”
ヒト型化ATR5抗体L鎖を、PCR法によるCDR−グラフティングにより作製した。ヒト抗体Z37332(DDBJ、Welschof Mら,J.Immunol.Methods,179,203−214,1995)由来のフレームワーク領域を有するヒト型化抗体L鎖(バージョン”a”)の作製のために7本のPCRプライマーを使用した。
CDR−グラフティングプライマーh5Lv1S(配列番号74)及びh5Lv4S(配列番号75)はセンスDNA配列を、CDRグラフティングプライマーh5Lv2A(配列番号76)、h5Lv3A(配列番号77)及びh5Lv5A(配列番号78)はアンチセンスDNA配列を有し、各プライマーの両端に20bpの相補的配列を有する。外部プライマーh5LvS(配列番号79)及びh5LvA(配列番号80)はCDRグラフティングプライマーh5Lv1S及びh5Lv5Aとホモロジーを有する。CDR−グラフティングプライマーh5Lv1S、h5Lv4S、h5Lv2A、h5Lv3A、h5Lv5A、h5LvS及びh5LvAはPharmacia Biotechに合成、精製を委託した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、5pmoleのCDRグラフティングプライマーh5Lv1S、h5Lv2A、h5Lv3A、h5Lv4S、及びh5Lv5Aを含有する。
PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、50℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを5回行うことにより、5本のCDRグラフティングプライマーをアセンブルした。この反応混合液に100pmoleの外部プライマーh5LvS及びh5LvAを加え、94℃にて30秒間、52℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを30回行うことにより、アセンブルしたDNA断片を増幅した。
PCR反応混合液を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノール沈殿により回収した。回収したDNA断片を制限酵素SplI(宝酒造)及びBglII(宝酒造)により37℃で4時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE10μlに溶解した。上記のようにして調製したヒト型化抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI−BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このヒト型化抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′−側にBglII認識配列及びKozak配列、3′−側にSplI認識配列を持つプラスミドをhATR5Lva/CVIDECと命名した。ヒト型化L鎖バージョン”a”の塩基配列(対応するアミノ酸を含む)を配列番号81に示す。また、バージョン“a”のアミノ酸配列を配列番号82に示す。
(ii)バージョン“b”及び“c”
バージョン“b”及び“c”を、バージョン“a”のFR3を置換(FR−シャッフリング)することにより作製した。バージョン“b”にはヒト抗体S68699(DDBJ、Hougs L ら,Exp.Clin.Immunogen et.,10,141−151,1993)由来のFR3を、バージョン“c”にはヒト抗体P01607(SWISS−PROT、Epp O ら,Biochemistry,14,4943−4952,1975)由来のFR3をそれぞれ使用した。
バージョン“b”のFR3をコードするプライマーF3SS(配列番号83)とF3SA(配列番号84)、あるいはバージョン“c”のFR3をコードするプライマーF3RS(配列番号85)とF3RA(配列番号86)は互いに相補的な配列を有し、両端に制限酵素KpnI及びPstIの認識配列を有する。F3SS、F3SA、F3RS、F3RAはPharmacia Biotechに合成、精製を委託した。各100pmoleのF3SSとF3SA、あるいはF3RSとF3RAを96℃にて2分間、50℃にて2分間処理することによりアニーリングさせ、2本鎖DNA断片を作製した。
これら2本鎖DNA断片を制限酵素KpnI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素PstI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
プラスミドhATR5Lva/CVIDECを制限酵素KpnI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素PstI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約3000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
上記のようにして調製したバージョン“b”あるいは“c”のFR3をコードするKpnI−PstI DNA断片とKpnI及びPstIで消化することによりFR3を除去したhATR5Lva/CVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
これらヒト型化抗体L鎖バージョン“a”のFR3を置換したバージョン“b”あるいはバージョン“c”をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれhATR5Lvb/CVIDEC、hATR5Lvc/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Lvb/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b”アミノ酸配列を配列番号87および88に示す。また、プラスミドhATR5Lvc/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“c”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列およびバージョン“c”のアミノ酸配列を配列番号89および90に示す。
(iii)バージョン“b1”及び“b2”
バージョン“b1”及び“b2”を、バージョン“b”のFR2を置換することにより作製した。バージョン“b1”にはヒト抗体S65921(DDBJ、Tonge DWら,Year Immunol.,7,56−62,1993)由来のFR2を、バージョン“b2”にはヒト抗体X93625(DDBJ、Cox JPら,Eur.J.Immunol.,24,827−836,1994)由来のFR2をそれぞれ使用した。
バージョン“b1”のFR2をコードするプライマーF2SS(配列番号91)とF2SA(配列番号92)、あるいはバージョン“b2”のFR2をコードするプライマーF2XS(配列番号93)とF2XA(配列番号94)は互いに相補的な配列を有し、両端に制限酵素AflII及びSpeIの認識配列を有する。F2SS、F2SA、F2XS及びF2XAはPharmacia Biotechにより合成された。各100pmoleのF2SSとF2SA、あるいはF2XSとF2XAを96℃にて2分間、50℃にて2分間処理することによりアニーリングさせ、2本鎖DNA断片を作製した。
これら2本鎖DNA断片を制限酵素AflII(宝酒造)及びSpeI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
プラスミドhATR5Lvb/CVIDECを制限酵素AflII(宝酒造)及びSpeI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約3000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
上記のようにして調製したバージョン“b1”あるいは“b2”のFR2をコードするAflII−SpeI DNA断片とAflII及びSpeIで消化することによりFR2を除去したhATR5Lvb/CVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地4mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
これらヒト型化抗体L鎖バージョン“b”のFR2を置換したバージョン“b1”あるいはバージョン“b2”をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれhATR5Lvb1/CVIDEC及びhATR5Lvb2/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Lvb1/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列及びバージョン“b1”アミノ酸配列を配列番号95及び96に示す。また、プラスミドhATR5Lvb2/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b2”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列及びバージョン“b2”のアミノ酸配列を配列番号97及び98に示す。
(3)ヒト型化抗体の発現ベクターの構築
(i)ヒト型化H鎖とキメラL鎖との組合せ
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hva/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHva−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvc/CVIDEC、hATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvc−chLv/N5KG4P、hHvd−chLv/N5KG4P及びhHve−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvf/CVIDEC及びhATR5Hvh/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvf−chLv/N5KG4P及びhHvh−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi−chLv/N5KG4P及びhHvj−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb1−chLv/N5KG4P及びhHvd1−chLv/N5KG4Pと命名した。
(ii)ヒト型化L鎖とキメラH鎖との組み合わせ
抗体発現ベクターN5KG4Pを用いて、キメラH鎖との組み合わせでヒト型化抗体を発現させることにより、ヒト型化L鎖の評価を行った。
プラスミドhATR5Lva/CVIDEC、hATR5Lvb/CVIDEC、hATR5Lvc/CVIDEC、hATR5Lvb1/CVIDEC、hATR5Lvb2/CVIDECを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で2〜3時間消化した。消化混合物を1.5%または2%
NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
これら各バージョンのヒト型化L鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI−BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化したchATR5Hv/N5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体をLBA培地250mlまたは500mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からPlasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラH鎖とヒト型化L鎖をコードする遺伝子を導入したプラスミドをそれぞれchHv−hLva/N5KG4P、chHv−hLvb/N5KG4P、chHv−hLvc/N5KG4P、chHv−hLvb1/N5KG4P及びchHv−hLvb2/N5KG4Pと命名した。
(iii)ヒト型化H鎖とヒト型化L鎖の組合せ
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hva/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“a”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLva/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLva/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHva−hLva/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC及びhATR5Hvc/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“a”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLva/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLva/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−hLva/N5KG4P及びhHvc−hLva/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC、hATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−hLvb/N5KG4P、hHvd−hLvb/N5KG4P及びhHve−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvf/CVIDEC、hATR5Hvg/CVIDEC及びhATR5Hvh/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvf−hLvb/N5KG4P、hHvg−hLvb/N5KG4P及びhHvh−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi−hLvb/N5KG4P及びhHvj−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb1−hLvb/N5KG4P及びhHvd1−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb3/CVIDEC及びhATR5Hvd3/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb3−hLvb/N5KG4P及びhHvd3−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b1”及び“b2”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb1/N5KG4P及びchHv−hLvb2/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb1/N5KG4P(SalI/NheI)及びhLvb2/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−hLvb1/N5KG4P及びhHvb−hLvb2/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b1”及び“b2”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb1/N5KG4P及びchHv−hLvb2/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb1/N5KG4P(SalI/NheI)及びhLvb2/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi−hLvb1/N5KG4P及びhHvi−hLvb2/N5KG4Pと命名した。
(4)COS−7細胞へのトランスフェクション
ヒト型化抗体の抗原結合活性及び中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS−7細胞で一過性に発現させた。
構築した発現プラスミドベクターをGene Pulser装置(Bio−Rad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に形質導入した。PBS中に1×107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS−7細胞0.78mlに、プラスミド50μgあるいは20μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を5%のUltra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿あるいは15cm培養皿を用いてCO2インキュベーターにて培養した。24時間の培養の後、培養上清を吸引除去し、新たに無血清培地HBCHO(アーバインサイエンティフィック)を加えた。さらに72時間もしくは96時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去した。
(5)抗体の精製
COS−7細胞の培養上清からの抗体の精製をAffiGel Protein A MAPSIIキット(Bio−Rad)、あるいはrProtein A Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech)を用いて行った。AffiGel Protein A MAPSIIキットを用いた精製はキット添付の処方に従って行った。rProtein A Sepharose Fast Flowを用いた精製は以下のように行った。
1mlのrProtein A Sepharose Fast Flowをカラムに充填し、10倍量のTBSを流すことによってカラムを平衡化した。平衡化したカラムにCOS−7細胞の培養上清をアプライした後、10倍量のTBSによってカラムを洗浄した。次に13.5mlの2.5mM HCl(pH3.0)を流すことによって吸着した抗体画分をカラムより溶出した。1.5mlの1M Tris−HCl(pH8.0)を加えることによって溶出液を中和した。
精製された抗体画分について、セントリプレップ30もしくは100(amicon)を用いた限外濾過を2〜3回行うことにより、TBSに溶媒を置換し、最終的に約1.5mlまで濃縮した。
参考例6. 抗体の定量及び活性評価
(1)ELISAによる抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp,NUNC)の各穴を固相化バッファー(0.1M NaHCO3、0.02% NaN3、pH9.6)(以下、CBと称す)で1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlで固相化し、200μlの希釈バッファー(50mM Tris−HCl、1mM MgCl2、0.1M NaCl、0.05% Tween20、0.02% NaN3、1% ウシ血清アルブミン(BSA)、pH8.1)(以下DBと称す)でブロッキングの後、抗体を発現させたCOS−7細胞の培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して各穴に加えた。
1時間室温にてインキュベートし0.05%Tween20を含むダルベッコPBS(以下RBと称す)で洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄の後、1mg/mlとなるようにSigma104(p−ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を基質バッファー(50mM NaHCO3、10mM MgCl2、pH9.8)に溶解したもの(以下、基質溶液と称す)を加え、405/655nmでの吸光度をmicroplate reader(Bio Rad)で測定した。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いた。
(2)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートは、次のようにして調製した。細胞はヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB−1)を用いた。細胞培養用96穴プレートの60穴に1×106個のJ82細胞を播き込んだ。これをCO2インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させた。培養液を捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄した。4%のパラホルムアルデヒドを含むPBS(以下、PFA/PBSと称す)を各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化した。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングした。培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して100μlを各穴に加えた。室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を加え、次に405/655nmでの吸光度をMicroplate Reader(Bio−Rad)で測定した。
(3)中和活性の測定
マウス抗体、キメラ抗体及びヒト型化抗体の中和活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)によるFactor Xa産生阻害活性を指標に測定した。すなわち、1.25mg/mlのThromborel S10μlと適当な濃度に希釈した抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させた。これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)及び82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で1時間反応させた。
0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で1時間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の1時間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S−2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、精製水で2倍希釈した後、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(4)活性の評価
(i)ヒト型化H鎖バージョン“a”とキメラL鎖との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“a”とキメラL鎖を組み合わせた抗体(a−ch)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度側で抗原に対する結合量が低下していた。FXa産生阻害による抗原中和能についても陽性対照のキメラ抗体(ch−ch)に比べて弱い活性であった。よってヒト型化H鎖はFR−シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(ii)ヒト型化L鎖バージョン“a”とキメラH鎖との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“a”とキメラH鎖を組み合わせた抗体(ch−a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、キメラ抗体と同等以上の抗原結合活性が認められた。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて弱い活性であった。よってヒト型化L鎖もFR−シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(iii)ヒト型化H鎖バージョン“a”とヒト型化L鎖バージョン“a”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“a”とヒト型化L鎖バージョン“a”を組み合わせた抗体(a−a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度側で抗原に対する結合量が低下していた。FXa産生阻害による抗原中和能についても陽性対照のキメラ抗体に比べてかなり弱い活性であった。よってヒト型化H鎖及びL鎖のFR−シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(iv)ヒト型化H鎖バージョン“b”、“c”及び“d”とキメラL鎖との組合せ
FR−シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖とキメラL鎖を組み合わせた抗体(それぞれ“b−ch”、“c−ch”、及び“d−ch”)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、“d−ch”はキメラ抗体と同等の抗原結合活性が認められ、“b−ch”及び“c−ch”はわずかに劣る抗原結合活性を示した。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、“b−ch”はほぼ同等、“d−ch”はわずかに弱い活性であった。またバージョン“c−ch”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。よってヒト型化H鎖バージョン“b”及び“d”がヒト型化H鎖で高い活性を示すと考えられるバージョンであった。
(v)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“a”との組合せ
FR−シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“a”を組み合わせた抗体(b−a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度で抗原に対する結合量が低下していた。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、かなり弱い活性であった。よって“b−a”が“a−a”より高い活性を示すバージョンであった。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(vi)ヒト型化L鎖バージョン“b”、“c”とキメラH鎖との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”をキメラH鎖と組み合わせた抗体(それぞれ、“ch−b”、“ch−c”)を作製したところ、いずれの抗体も抗原結合能、抗原中和能ともにキメラ抗体と同等の活性を示した。よってバージョン“b”及び“c”をヒト型化抗体L鎖の候補とした。マウス抗体由来のアミノ酸残基数が1つ少ないバージョン“b”の方がバージョン“c”より抗原性の点で優れていると考えられる。なお、ここで用いたキメラ抗体はCHO細胞DG44で発現させ精製した抗体を用い評価したもので、これ以降の評価でもこの抗体を陽性対照に用いた。
(vii)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b”をヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”と組み合わせた抗体(それぞれ“b−b”及び“b−c”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。いずれの抗体も抗原結合能、抗原中和能ともにキメラ抗体よりわずかに劣る活性を示した。
(viii)ヒト型化H鎖バージョン“b”及び“d”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
FR−シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖とヒト型化L鎖バージョン“b”を組み合わせた抗体(それぞれ“b−b”及び“d−b”)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、“d−b”はキメラ抗体と同等の抗原結合活性が認められ、“b−b”は高濃度でわずかに劣る抗原結合活性を示した。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、“b−b”はわずかに弱い活性で、“d−b”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。よって“b−b”は抗原活性中和能の高いバージョン、“d−b”は抗原結合能の高いバージョンであることが示された。
(ix)ヒト型化H鎖バージョン“e”とキメラL鎖及びヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“e”をキメラL鎖及びヒト型化バージョン“b”と組み合わせた抗体(それぞれ“e−ch”及び“e−b″)を作製したところ、“e−ch”の抗原結合能はキメラ抗体と同等の活性を示したが、“e−b”は抗体の発現量が非常に低く、且つ抗原結合能も殆ど喪失していた。また“e−ch”の抗原活性中和能はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。よってH鎖バージョン“e”はL鎖バージョン“b”との組合せが悪いと考えられた。
(x)ヒト型化H鎖バージョン“f”、“g”及び“h”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“f”、“g”及び“h”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“f−b”、“g−b″及び″h−b”)作製したところ、“f−b”及び“h−b”の抗体は抗体の発現量が非常に低くかった。なお、バージョン“f”、“h”についてはキメラL鎖と組み合わせた抗体も作製したが、発現されなかった。“g−b”は低い濃度から飽和状態に達し、キメラ抗体より弱い抗原結合能を示した。“g−b”の抗原中和能は、キメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。
(xi)ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“b1−b″及び″d1−b”)作製したところ、ともに抗体は殆ど発現されなかった。なお、これらについてはキメラL鎖と組み合わせた抗体も作製したが、発現されなかった。
(xii)ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“b3−b″及び″d3−b”)作製したところ、“d3−b”の抗原結合能はキメラ抗体よりわずかに劣っており、“b3−b”の抗原結合能はさらに劣っていた。“b3−b″の抗原中和能は″b−b”より上回る活性を示したものの、キメラ抗体の活性には及ばず、“d3−b″は″b−b”と同程度の活性にとどまった。
(xiii)ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”とキメラL鎖及びヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”をキメラL鎖と組み合わせた抗体(それぞれ“i−ch″及び″j−ch”)とヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体(それぞれ“i−b″及び″j−b”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。抗原結合能はいずれの抗体もキメラ抗体とほぼ同等の活性を示した。“j−ch”にはキメラ抗体の活性を上回る抗原中和能が認められ、“j−ch”の抗原中和能はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。“i−b”はキメラ抗体と同等の活性が認められ、“j−b”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。
(xiv)ヒト型化L鎖バージョン“b1″及び″b2”
ヒト型化L鎖バージョン“b1″及び″b2”をキメラH鎖と組み合わせた抗体(それぞれ、“ch−b1″及び″ch−b2”)を作製したところ、いずれの抗体もキメラ抗体と同等の抗原結合能を示した。抗原中和能については、“ch−b1”ではキメラ抗体と同等の活性を示し、“ch−b2”では高濃度側でキメラ抗体を若干上回る活性が認められた。バージョン“b1″及び″b2”ともにヒト型化抗体L鎖の候補になり得るが、より強い活性を有するという点でバージョン“b2”の方が優れている。
(xv)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“b2”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b”をヒト型化L鎖バージョン“b2”と組み合わせた抗体(“b−b2”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。抗原結合能はキメラ抗体よりわずかに劣っていた。抗原中和能は“b−b”の活性を上回ったものの、“i−b”の活性には及ばなかった。
(xvi)ヒト型化H鎖バージョン“i”とヒト型化L鎖バージョン“b1”又は“b2”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“i”をヒト型化L鎖バージョン“b1″又は″b2”と組み合わせた抗体(それぞれ“i−b1″及び″i−b2”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。“i−b2”の抗原結合能はキメラ抗体とほぼ同等で、“i−b1”はわずかに劣る程度であった。また、“i−b1″及び″i−b2”の抗原中和能はキメラ抗体や“i−b”を上回る活性を示し、“i−b2”>“i−b1”の順に強かった。
参考例7. CHO細胞産生ヒト型化抗体の作製及び活性評価
(1)CHO安定産生細胞株の樹立
ヒト型化抗体(b−b、i−b及びi−b2)の安定産生細胞株を樹立するため、無血清培地に馴化したCHO細胞(DG44)に抗体発現遺伝子ベクターを導入した。
プラスミドDNA、hHvb−hLvb/N5KG4P、hHvi−hLvb/N5KG4P及びhHvi−hLvb2/N5KG4Pを制限酵素SspI(宝酒造)で切断して直鎖状にし、フェノール及びクロロフォルム抽出した後、エタノール沈殿により精製した。エレクトロポーレーション装置(Gene Pulser;Bio Rad)により、直鎖状にした発現遺伝子ベクターをDG44細胞に導入した。DG44細胞をPBSに1×107/mlの細胞密度で懸濁し、この懸濁液約0.8mlに前記のDNAを10もしくは50μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、ヒポキサンチン−チミジン(GIBCO)(以下、HT)を含有するCHO−S−SFMII培地に処理された細胞を懸濁し、2枚の96穴平底プレート(Falcon)に100μl/穴となるように播種し、CO2インキュベーターにて培養した。培養開始8〜9時間後にHT及び1mg/mlのGENETICIN(GIBCO)を含有するCHO−S−SFMII培地を100μl/穴加え、500μg/mlのGENETICIN選択培地に変換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。3〜4日に一度1/2量の培地を新鮮な培地と交換し、選択培地への変換から約2週間経過した時点で、その4〜5日後に細胞の順調な増殖が観察された穴の培養上清の一部を回収した。この培養上清中に発現された抗体濃度を前述の抗体濃度測定ELISAにより測定し、抗体産生量の高い細胞を選出した。
(2)ヒト型化抗体の大量精製
前記のように選出したヒト型化抗体(“b−b”、“i−b″及び″i−b2″)発現DG44細胞株を2Lローラーボトル(CONING)を用い、500ml/ボトルのCHO−S−SFMII培地中で数日培養後、培養液を回収して新鮮なCHO−S−SFMII培地を加え、再び培養した。培養液は遠心分離により細胞破片を除去し、0.22μmもしくは0.45μmのフィルターで濾過した。これを繰り返し、それぞれ全量約2Lの培養上清を得た。得られた培養上清をProtein Aアフィニティーカラム(Poros)を接続したConSep LC100システム(ミリポア)にて抗体を精製した。
(3)ELISAによる抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp,NUNC)の各穴をCBで1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlで固相化し、200μlのDBでブロッキングの後、抗体を発現させたCOS細胞の培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して各穴に加えた。
1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄の後、基質溶液を100μl加え、405/655nmでの吸光度をmicroplate reader(Bio Rad)で測定した。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いた。
(4)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートでは、次のようにして調製した。細胞はヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB−1)を用いた。細胞培養用96穴プレートに1×106個のJ82細胞を播き込んだ。これをCO2インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させた。培養液を捨て、PBSで各穴を2回洗浄した。PFA/PBSを各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化した。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングした。精製抗体を上測定結果をもとに、DBにて10μg/mlより公比2で段階希釈して100μlを各穴に加えた。室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を100μl加え、次に405/655nmでの吸光度をMicroplate Reader(Bio−Rad)で測定した。
(5)TF中和活性(ファクターXa産生阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のファクターXa産生阻害活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)によるFactorXa産生阻害活性を指標に測定した。すなわち、5mg/mlのThromborel S 10μlと抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させた。抗体は緩衝液で200μg/mlより公比5で段階希釈した。
これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)及び82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で45分間反応させた。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で30分間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の30分間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S−2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(6)TF中和活性(ファクターX結合阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のファクターX結合阻害活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)を用い、予めTFとFactor VIIaの複合体を形成させ、その複合体のFactor Xa産生阻害活性を指標にファクターX結合阻害活性を測定した。すなわち、5mg/mlのThromborel S 10μlと82.5ng/mlのヒトFactor VIIa(エンザイム・リサーチ)10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で予め1時間反応させた。
これに抗体溶液を10μl加え、室温で5分間反応させた後、3.245μg/mlのヒトFactor X(セルサス・ラボラトリーズ)を10μl加え、さらに室温で45分間反応させた。なお抗体は緩衝液で200μg/mlより公比2で段階希釈した。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で30分間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の30分間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S−2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(7)TF中和活性(血漿凝固阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のTF中和活性(血漿凝固阻害活性)はヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)を用いたプロトロンビン時間を指標に測定した。すなわち、サンプルカップにヒト血漿(コスモ・バイオ)100μlを入れ、これに様々な濃度に希釈した抗体を50μl加え、37℃で3分間加温した。予め37℃に加温しておいた1.25mg/mlのThromborel Sを50μl加え、血漿凝固を開始させた。この凝固時間はAmelung CR−Aを接続したAmelung KC−10A(ともにエム・シー・メディカル)にて測定した。
抗体は80μg/mlより公比2で0.1%のBSAを含有するTBS(以下、BSA−TBS)にて段階希釈した。測定した抗体無添加の凝固時間を100%のTF血漿凝固活性とし、Thromborel Sの濃度と凝固時間をプロットした検量線により抗体を添加した際のそれぞれの凝固時間からTF残存活性を算出した。
検量線は様々なThromborel Sの濃度とその凝固時間を測定することにより作成した。適当に希釈したThromborel S、50μlに50μlのBSA−TBSを加え、37℃で3分間加温し、予め37℃に加温しておいたヒト血漿を100μl加えて凝固を開始させ凝固時間を測定した。Thromborel Sは6.25mg/mlより公比2で25mMのCaCl2を含むハンクス緩衝液(GIBCO)にて段階希釈した。横軸にThromborel S濃度、縦軸に凝固時間を両対数グラフにプロットし、これを検量線とした。
(8)活性の評価
“b−b”、“i−b”及び“i−b2”のヒト型化抗体すべてはキメラ抗体と同等以上の活性を有していた(図1)。Factor Xa産生阻害活性、Factor X結合阻害活性及び血漿凝固阻害活性においても、ヒト型化抗体“b−b”、“i−b”及び“i−b2”はキメラ抗体と同等以上の活性を有しており、“i−b2”>“i−b”>“b−b”の順に活性が強かった(図2、3及び4)。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。
図2は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(TFのファクターXa産生阻害活性)を比較したグラフである。
図3は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(ファクターX結合阻害活性)を比較したグラフである。
図4は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(TFの血漿凝固阻害活性)を比較したグラフである。
図5は、リポポリサッカライド(LPS)処理された単核細胞により血液の流動性が低下する事を示すグラフである。
図6は、リポポリサッカライドにより低下した血液の流動性が、抗‐ヒト組織因子抗体により改善されることを示すグラフである。
本発明は血液レオロジー改善剤に関する。
背景技術
近年増加傾向にある肺血栓症や深部静脈血栓症などの発症には安静時や臥床時の血流低下による血栓形成が最大要因であると考えられている。従って、これらの疾患の予防や治療のために、血流の低下を防止する血液流動性改善剤、すなわち血液レオロジー改善剤が求められている。しかしながら、効果的に血液レオロジーを改善する活性を有する医薬は知られていない。
このため、血液レオロジー(流動性)を改善する医薬の開発が望まれている。
発明の開示
従って本発明は、新規な血液レオロジー改善剤を提供しようとするものである。
上記の課題を解決すべく種々検討した結果、本発明者らは、ヒト組織因子に対する抗体(抗ヒトTF抗体、又は抗TF抗体と称する場合がある)により、血液レオロジーを改善することを見出した。
従って本発明は、抗ヒトTF抗体を含んで成る血液レオロジー改善剤を提供する。
上記の抗ヒトTF抗体はポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体又は改変抗体もしくは抗体修飾物であることができる。モノクローナル抗体は一般にハイブリドーマにより生産されるが遺伝子組換えにより製造することもでき、また改変抗体及び抗体修飾物は、通常、遺伝子組換えにより製造される。改変抗体としては、キメラ抗体、例えばヒト−マウスキメラ抗体が例示され、ヒト型化抗体としては、例えば後で具体的に説明するバージョンb−b,i−b、及びi−b2が挙げられる。抗体修飾物としては、Fab,F(ab′)2,Fvなどの抗体断片、及び抗体の可変領域を連結して1本鎖にしたシングルチェインFv(scFvと称する)が挙げられる。
発明の実施の形態
本発明において、血液レオロジーの改善とは、血液の流れを良くすることを意味する。
本発明において使用する抗体としては、血液のレオロジーを改善することができる抗体であればポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。また、モノクローナル抗体に基くキメラ抗体、ヒト型化抗体、シングルチェインFvなどを使用することもできる。ヒト型化抗体が特に好ましい。
1.抗ヒトTF抗体
本発明で使用される抗ヒトTF抗体は、血液のレオロジーを改善する効果を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。
本発明で使用される抗ヒトTF抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗ヒトTF抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。この抗体はヒトTFと結合することにより、ヒトTFが血液凝固亢進の状態を惹起するのを阻害する抗体である。
2.抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、ヒトTF又はその一部分(断片)を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトTFを、J.H.Morrisseyら、Cell,Vol.50,p.129−135(1987)に開示されたヒトTF遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、ヒトTFをコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトTFタンパク質を公知の方法で精製する。この方法を、本明細書の参考例1に記載する。さらに、抗原として使用するヒトTFは参考例2に記載する方法によりヒト胎盤などのTF含有生物材料から抽出、精製して使用することもできる。
次に、この精製ヒトTFタンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、ヒトTFのC−末端側の膜貫通領域を除去した可溶性TFを例えば遺伝子組換えにより作製することもでき、これを感作抗原として使用することもできる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(Kearney,J.F.et al.,J.Immunol.(1979)123,1548−1550),P3x63Ag8U.1(Yelton,D.E.et al.,Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7),NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519),MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415),SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270),F0(de St.Groth,S.F.and Scheidegger,D.J.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21),S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med,(1978)148,313−323),R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Galfre,G.and Milstein,C.,Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000−6000程度)を通常30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでヒトTFに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞例えばU266と融合させ、ヒトTFへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる。(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てまたは一部のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるヒトTFを投与して抗ヒトTF抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からヒトTFに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO 92/03918号公報、WO 94/02602号公報、WO96/34096号公報、WO96/33735号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
モノクローナル抗体の製造の例を参考例2に具体的に記載する。この例においては、ATR−2,3,4,5,7及び8と称する6種類のモノクローナル抗体を得ており、いずれも本発明において使用することができるが、ATR−5が特に好ましい。
3.組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775参照)。
具体的には、抗ヒトTF抗体を産生するハイブリドーマから、抗ヒトTF抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.and Sacchi,N.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5′−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002,Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗ヒトTF抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗ヒトTF抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
組換え抗体の製造方法の一例を参考例3に具体的に記載する。
4.改変抗体
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO 98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,Cancer Res.(1993)53,851−856)。
キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1,Cγ2,Cγ3,Cγ4を、L鎖ではCκ,Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
キメラ抗体の作製方法は参考例4に具体的に記載する。
また、ヒト型化抗体の作製方法を参考例5に具体的に記載する。この参考例においては、ヒト型化重鎖(H鎖)可変領域(V領域)として、表1及び表2に示すアミノ酸配列を有するバージョンa,b,c,d,e,f,g,h,i,j,b1,d1,b3及びd3を用いた。
また、ヒト型化軽鎖(L鎖)V領域として、表3に示すアミノ酸配列を有するバージョンa,b,c,b1及びb2を用いた。
そして、上記のH鎖V領域の種々のバージョンと、L鎖V領域の種々のバージョンを組合わせて抗原結合能、及びTF中和活性について評価した結果、参考例6及び参考例7に記載する通り、「H鎖V領域バージョン」−「L鎖V領域バージョン」として表示する場合「b−b」、「i−b」、及び「i−b2」が特に高活性を示した。なお、これらのヒト型化抗体の抗原結合能を図1に示し、ヒトTF中和活性(TFのファクターXa産生阻害活性)を図2に示し、ヒトTF中和活性(ファクターX結合阻害活性)を図3に示し、そしてヒトTF中和活性(TFの血漿凝固阻害活性)を図4に示す。
5.抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、ヒトTFに結合し、ヒトTFの活性を阻害するかぎり、抗体の断片又はその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab,F(ab′)2,Fv、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これらの抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976,Better,M.& Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Plueckthun,A.& Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,497−515,Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1986)121,652−663,Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1986)121,663−669,Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12−19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗ヒトTF抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
6.組換え型抗体または改変抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3′側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108−114)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1989)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240,1041−1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379−4383)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの真菌細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO,COS、ミエローマ、BHK,Vero,HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM,MEM,RPMI1640,IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
7.抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
8.血液レオロジー改善効果の確認
血液レオロジーは、細胞マイクロレオロジー測定装置などを利用してインピトロで末梢血の血流を測定することにより観察できる。LPSの処理により血流低下が見られるが、本発明の抗ヒトTF抗体の添加により血流が改善された。従って、本発明の抗ヒトTF抗体は、血液レオロジーの改善に有効であることが確認された。このような改善を必要とする疾患としては、動脈硬化症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、慢性動脈閉塞症等があり、それらの疾患に伴って発生する血流低下を本発明の抗ヒトTF抗体は、改善することができる。
この効果を、実施例に具体的に記載する。
9.投与方法および製剤
本発明の治療剤は、血液レオロジーの改善を目的として使用される。
有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100mg/kg、好ましくは0.1〜10mg/kgの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗ヒトTF抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
投与方法は特に限定されないが、静脈注射、点滴静脈注射等が好ましい。
本発明の抗ヒトTF抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latest edition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗ヒトTF抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80,Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
実施例
次に、実施例により本発明をさらに具体的に記載する。
3.5mLの末梢血を3mLのMono−Poly分離溶液に添加し、1,500rpm(×700G)にて20分間遠心した。こうして回収した単核細胞画分を50mL FALCONチュウブ中でリン酸緩衝液(PBS)により洗浄し、遠心分離により細胞ペレットを集め、これを、種々の濃度でリポポリサッカライド(LPS)を含有するか又は含有しない、10%FBS含有RPMI‐1640培地に分散させた。リポポリサッカライドの濃度は、0μg/mL無添加群(陰性対照)及び4.0μg/mL添加群とした。
こうして調製した細胞懸濁液を、100mmの培養皿中、CO2インキュベーター内で6時間インキュベートした。次に、培養皿に付着した細胞をスクレイパーにより剥離し、リン酸緩衝液(PBS)中に細胞濃度を6×105に調整した後、800rpm(×200G)にて10分間遠心分離して、細胞ペレットを回収し、リン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、遠心分離により細胞ペレットを回収した。
次に、上記のようにしてリポポリサッカライド処理した単核細胞の血液凝固活性を調べるため、6×105個の細胞を1000μLの全血に添加し、この混合物を、室温にて10分間インキュベートした後、500ngの活性型第7因子(FVIIa)および最終濃度5mMのCaCl2を添加し、細胞マイクロレオロジー測定装置(MCFAN−KH;日立原町電子工業株式会社)に適用した。この装置は、毛細血管を模倣したものであり、シリコン単結晶基板上に多数の微小V型溝を形成しその上にガラス基板を圧着して人工毛細管を形成し、ガラス基板を通して血液細胞などの流れを顕微鏡観察できるようにしたものである。結果を、単位時間当たり毛細管を流過した血液の体積(μL/sec.)により表したものを図5に示す。この図から、ポリリポサッカライドの量依存的に血液の流動性が低下することが確認された。
そこで、上記リポポリサッカライド処理(4μg/mL)した単核細胞と全血との混合物のインキュベーションの際に、抗‐ヒト組織因子抗体ATR−5(参考例2において製造したもの)を、1.25μg/mL、2.5μg/mLまたは5μg/mL添加、あるいは無添加(陰性対照)とし、インキュベートした。なお、陽性対照として、リポポリサッカライド処理しない単核細胞を全血に加えた試験も行なった。次に、インキュベートした混合物の流動性を、上記のようにして、細胞マイクロレオロジー測定装置により測定した。結果を図6に示す。抗‐ヒト組織因子抗体が血液の流動性を改善することが確認された。
参考例1. 可溶型ヒトTFの作製法
可溶型ヒトTF(shTF)は以下のように作製した。
ヒトTFの貫通領域(220番目のアミノ酸)以下をFLAGペプチドM2に置換したものをコードする遺伝子を、哺乳動物細胞用の発現ベクター(ネオマイシン耐性遺伝子、DHFR遺伝子を含む)に挿入し、CHO細胞に導入した。ヒトTFのcDNA配列はJames H.Morrisseyらの報告(Cell(1987)50,129−135)を参考にした。この可溶型ヒトTFの遺伝子配列とアミノ酸配列を配列番号101及び102に示した。G418により薬剤セレクションし、発現細胞を選抜し、さらにメトトレキサートで発現増幅をかけ、shTF発現細胞を樹立した。
この細胞を無血清培地CHO−S−SFMII(GIBCO)で培養し、shTFを含む培養上清を得た。同容量の40mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)で2倍に希釈し、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)で平衡化したQ−Sepharose Fast Flowカラム(100mL,Pharmacia Biotech)に添加し、0.1M NaClを含む同緩衝液で洗浄後、NaClの濃度を0.3Mとし、shTFをカラムから溶出した。得られたshTF画分に終濃度2.5Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、遠心操作(10,000rpm、20分)により夾雑蛋白質を沈殿させた。上清をButyl TOYOPEARL(30mL,TOSOH)に添加し、2.5Mの硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)で洗浄した。
50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)中、硫酸アンモニウム濃度を2.5Mから0Mまで直線的に下げ、shTFを溶出させた。shTFを含むピーク画分をCentri−Prep 10(アミコン)で濃縮した。150mM NaClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したTSKgel G3000SWGカラム(21.5×600mm,TOSOH)に濃縮液を添加し、shTFのピーク画分を回収した。これを0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し、可溶型ヒトTF(shTF)とした。試料の吸光度280nmのモル吸光係数をε=40,130、分子量を43,210として、試料の濃度を算出した。
参考例2. 抗TFモノクローナル抗体の作製
1.ヒトTFの精製
ヒト胎盤からのTFの精製は、Itoらの方法(Ito,T.らJ.Biochem.114,691−696,1993)に準じて行った。すなわち、ヒト胎盤を10mM塩化ベンザミジン、1mMフッ化フェニルメチルスルフォニル、1mMジイソプロピルフルオロフォスフェートおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス緩衝生理食塩液(TBS,pH7.5)中でホモジナイズ後、沈殿を冷アセトンで脱脂し、得られた脱脂粉末を2% Triton X−100を含む上記緩衝液に懸濁してTFを可溶化した。
この上清からConcanavalin A−Sepharose 4Bカラム(Pharmacia)および抗TF抗体を結合させたSepharose 4Bカラム(Pharmacia)を用いてアフィニティークロマトグラフィーを行い、精製TFを得た。これを限外濾過膜(PM−10,Amicon)で濃縮し、精製標品として4℃で保存した。
精製標品中のTF含量は、市販の抗TFモノクローナル抗体(American Diagnostica)とポリクローナル抗体(American Diagnostica)を組合せたSandwich ELISAで、組換え型TFを標準にして定量した。
また精製標品の純度は、4−20%濃度勾配ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEしたものを銀染色することで確認した。
2.免疫とハイブリドーマの作製
精製ヒトTF(約70μg/ml)を等容量のFreundの完全アジュバント(Difco)と混合し、乳化した後、5週齢のBalb/c系雄性マウス(日本チャールスリバー)の腹部皮下に、TFとして10μg/マウスとなるように免疫した。初回免疫の12,18及び25日後にはFreundの不完全アジュバントと混合したTFを5μg/マウスとなるように皮下に追加免疫し、最終免疫として32日目にPBSで希釈したTF溶液を5μg/マウスで腹腔内投与した。
最終免疫の3日後に4匹のマウスから脾細胞を調製し、細胞数で約1/5のマウスミエローマ細胞株P3U1とポリエチレングリコール法を用いて融合させた。融合細胞を10%ウシ胎仔血清を含むRPMI−1640培地(以下RPMI−培地とする)(Lifetechoriental)に懸濁し、96穴プレートに1匹のマウスにつき400穴播種した。融合後、1,2,3,5日目に培地の半量をHAT(大日本製薬)およびcondimed H1(Boehringer Mannheim GmbH)を含むRPMI−培地(以下HAT−培地とする)に交換することで、ハイブリドーマのHAT選択を行った。
下記のスクリーニング法で選択したハイブリドーマは2回の限界希釈を行うことでクローン化した。
限界希釈は、96穴プレート2枚に一穴あたり0.8個の細胞を播種した。検鏡により単一コロニーであることが確認できた穴について、下記に示したTF結合活性とTF中和活性の測定を行いクローンを選択した。得られたクローンはHAT−培地からRPMI−培地に馴化し、馴化による抗体産生能の低下が無いことを確認したうえで、再度限界希釈を行い、完全なクローン化を行った。以上の操作により、TF/ファクターVIIa複合体とファクターXとの結合を強く阻害する抗体6種(ATR−2,3,4,5,7及び8)を産生するハイブリドーマが樹立できた。
3.腹水の作製および抗体の精製
樹立したハイブリドーマの腹水の作製は常法に従って行った。すなわち、in vitroで継代したハイブリドーマ106個を、あらかじめ鉱物油を2回腹腔内に投与しておいたBalb/c系雄性マウスの腹腔内に移植した。移植後1〜2週目で腹部が肥大したマウスから腹水を回収した。
腹水からの抗体の精製は、Protein Aカラム(日本ガイシ)を装着したConSepLC100システム(Millipore)を用いて行った。
4.Cell−ELISA
TFを高発現することで知られているヒト膀胱癌由来細胞株J82(Fair D.S.ら、J.Biol.Chem.,262,11692−11698,1987)をATCCより導入し、RPMI−培地中、37℃、5%CO2、100%湿度の条件で継代・維持した。
Cell−ELISA用プレートは、96穴プレートにJ82細胞を105個/穴の濃度で播種し、上記条件で1日培養後、培地を除いてリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液(PFA)を加えて氷冷下で10分静置することで固定化することによって作製した。PFAを除去し、PBSで洗浄後、1%BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むTris緩衝液(Blocking緩衝液)を加えて、使用時まで4℃で保存した。
Cell−ELISAは以下のように行った。すなわち、上記のように作製したプレートからBlocking緩衝液を除去し、抗TF抗体溶液もしくはハイブリドーマ培養上清を加えて室温で1.5時間反応させた。
0.05% Tween20を含むPBSで洗浄後、アルカリフォスファターゼを結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)(Zymed)を1時間反応させ、洗浄後、1mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム(Sigma)を添加して1時間後に405nmにおける吸光度を測定することで、J82細胞に結合した抗TF抗体量を定量した。
5.ファクターXa活性を指標としたTF中和活性測定系
50μlの5mMCaCl2および0.1%ウシ血清アルブミンを含むトリス緩衝生理食塩液(TBS:pH7.6)に10μlのヒト胎盤由来トロンボプラスチン溶液(5mg/ml)(Thromborel S)(Boehring)と10μlのファクターVIIa溶液(82.5ng/ml)(American Diagnostica)を添加し、室温で1時間反応させることでTF/Factor VIIa複合体を形成させた後、10μlの所定濃度に希釈した抗TF抗体溶液もしくはハイブリドーマ培養上清および10μlのFactor X溶液(3.245μg/ml)(Celsus Laboratorise)を添加して45分間反応させ、0.5M EDTAを10μl添加することで反応を止めた。ここに2mM S−2222溶液(第一化学薬品)を50μl添加し、30分間の405nmにおける吸光度変化をもってTFのFactor Xa産生活性とした。この方法では、TF/Factor VIIa複合体とFactor Xとの結合を阻害する抗体の活性は測定できる。
6.血漿凝固阻害活性測定系
市販の正常ヒト血漿(コージンバイオ)を用い、この100μlに適当に希釈した抗TF抗体溶液50μlを混和して37℃で3分間反応させた後、50μlのヒト胎盤由来トロンボプラスチン溶液(1.25mg/ml)を添加し、血漿が凝固するまでの時間を血漿凝固時間測定装置(CR−A:Amelung)で測定した。
7.抗体のアイソタイプの決定
ハイブリドーマの培養上清もしくは精製抗体について、マウスモノクロナール抗体アイソタイピングキット(Amersham社製)を用いて抗体のアイソタイプを確認し、結果を下に示した。
参考例3. ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニング
(1)mRNAの調製
参考例2で得たハイブリドーマATR−5(IgG1κ)からmRNAをQuick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia Biotech)を用いて調製した。キット添付の処方に従い、それぞれのハイブリドーマ細胞を抽出緩衝液で完全にホモジナイズし、オリゴ(dT)−セルローススパンカラムにてmRNAを精製し、エタノール沈殿を行った。mRNA沈殿物を溶出緩衝液に溶解した。
(2)マウス抗体V領域をコードする遺伝子のcDNAの作製及び増幅
(i)H鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領城をコードする遺伝子のクローニングは、5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002,1988;Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acid Res.17,2919−2932,1989)により行った。5′−RACE法にはMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用い、操作はキット添付の処方に従って行った。
前記のようにして調製したmRNA約1μgを鋳型として、キット添付のcDNA synthesis primerを加え、逆転写酵素と42℃、60分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。これをDNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、RNaseHで16℃、1.5時間、T4 DNAポリメラーゼで16℃、45分間反応させることにより、2本鎖cDNAを合成した。2本鎖cDNAをフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿により回収した。
T4 DNAリガーゼで16℃で一夜反応することにより、2本鎖cDNAの両端にcDNA アダプターを連結した。反応混合液は10mM Tricine−KOH(pH8.5)、0.1mM EDTA溶液で50倍に希釈した。これを鋳型としてPCRによりH鎖V領域をコードする遺伝子を増幅させた。5′−側プライマーにはキット添付のアダプタープライマー1を、3′−側プライマーにはMHC−G1プライマー(配列番号1)(S.T.Jones,et al.,Biotechnology,9,88−89,1991)を使用した。
ATR−5抗体H鎖V領域に対するPCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、30〜50pmoleのアダプタープライマー1並びにMHC−G1プライマー、及びcDNAアダプターを連結したcDNAの反応混合物1〜5μlを含有する。
PCRはいずれもDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
(ii)L鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子のクローニングは、5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002,1988;Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acid Res.17,2919−2932,1989)により行った。5′−RACE法にはMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用い、操作はキット添付の処方に従って行った。前記のようにして調製したmRNA約1μgを鋳型としてcDNA合成プライマーを加え、逆転写酵素と42℃、60分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。
これをDNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、RNaseHで16℃、1.5時間、T4 DNAポリメラーゼで16℃、45分間反応させることにより、2本鎖cDNAを合成した。2本鎖cDNAをフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿により回収した。T4 DNAリガーゼで16℃で一夜反応することにより、2本鎖cDNAの両端にcDNAアダプターを連結した。反応混合液は10mM Tricine−KOH(pH8.5)、0.1mM EDTA溶液で50倍に希釈した。これを鋳型としてPCRによりL鎖V領域をコードする遺伝子を増幅させた。5′−側プライマーにはアダプタープライマー1を、3′−側プライマーにはMKCプライマー(配列番号2)(S.T.Jones,et al.,Biotechnology,9,88−89,1991)を使用した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、30〜50pmoleのアダプタープライマー1並びにMKCプライマー、及びcDNA アダプターを連結したcDNAの反応混合物1μlを含有する。
PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
(3)PCR生成物の精製及び断片化
前記のPCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素XmaI(New England Biolabs)により37℃で1時間消化した。XmaI消化混合物を2%から3%のNuSieve GTG アガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、H鎖V領域として約500bp長、L鎖V領域として約500bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA溶液(以下、TEと称す)10μlに溶解した。
上記のようにして調製したマウスH鎖V領域及びL鎖V領域をコードする遺伝子を含むXmaI消化DNA断片と、XmaIで消化することにより調製したpUC19プラスミドベクターとをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。
次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook,et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)(以下、LBA寒天培地と称す)上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体を50μg/ml アンピシリンを含有するLB培地(以下、LBA培地と称す)3mlあるいは4mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製し、塩基配列の決定を行った。
(4)マウス抗体V領域をコードする遺伝子の塩基配列決定
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)(配列番号3)及びM13 Primer RV(宝酒造)(配列番号4)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
こうして得られたハイブリドーマATR−5に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをATR−5Hv/pUC19と命名し、そしてL鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをATR−5Lv/pUC19と命名した。プラスミドATR−5Hv/pUC19に含まれる各マウス抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号5及び99に、プラスミドATR−5Lv/pUC19に含まれる各マウス抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号6及び100に示す。
参考例4. キメラ抗体の構築
マウスATR−5抗体V領域をヒト抗体C領域に連結したキメラATR−5抗体を作製した。ATR−5抗体V領域をコードする遺伝子をヒト抗体C領域をコードする発現ベクターに連結することにより、キメラ抗体発現ベクターを構築した。
(1)キメラ抗体H鎖V領域の構築
ヒト抗体H鎖C領域をコードする発現ベクターに連結するために、ATR−5抗体H鎖V領域をPCR法により修飾した。5′−側プライマーch5HS(配列番号7)はV領域をコードするDNAの5′−末端にハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak,M.et al.,J.Mol.Biol.,196,947−950,1987)及び制限酵素SalIの認識配列を有するように設計した。3′−側プライマーch5HA(配列番号8)はJ領域をコードするDNAの3′−末端にハイブリダイズし、且つ制限酵素NheIの認識配列を有するように設計した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、50pmoleのch5HSプライマー並びにch5HAプライマー、及び鋳型DNAとして1μlのプラスミドATR5Hv/pUC19を含有する。PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
PCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
クローニングベクターには制限酵素NheI、SalI及びSplI、BglIIの認識配列を導入した改変pUC19ベクター(以下、CVIDECと称す)を用いた。上記のようにして調製したマウスH鎖V領域をコードする遺伝子断片とNheI及びSalIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このATR−5抗体H鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′−側にSalI認識配列及びKozakコンセンサス配列、3′−側にNheI認識配列を持つプラスミドをchATR5Hv/CVIDECと命名した。
(2)キメラ抗体L鎖V領域の構築
ヒト抗体L鎖C領域をコードする発現ベクターに連結するために、ATR−5抗体L鎖V領域をPCR法により修飾した。5′−側プライマーch5LS(配列番号9)はV領域をコードするDNAの5′−末端にハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak,M.et al.,J.Mol.Biol.,196,947−950,1987)及び制限酵素BglIIの認識配列を有するように設計した。3′−側プライマーch5LA(配列番号10)はJ領域をコードするDNAの3′−末端にハイブリダイズし、且つ制限酵素SplIの認識配列を有するように設計した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、50pmoleのch5LSプライマー並びにch5LAプライマー、及び鋳型DNAとして1μlのプラスミドATR5Lv/pUC19を含有する。PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
PCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素SplI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素BglII(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、20μlのTEに溶解した。
上記のようにして調製したマウスL鎖V領域をコードする遺伝子断片とSplI及びBglIIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3ml37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このATR−5抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′−側にBglII認識配列及びKozakコンセンサス配列、3′−側にSplI認識配列を持つプラスミドをchATR5Lv/CVIDECと命名した。
(3)キメラ抗体発現ベクターの構築
IDEC社より導入した抗体発現ベクターを用いてキメラ抗体発現ベクターを構築した。ベクターにはIgG1型抗体発現ベクターN5KG1(V)及びIgG4型抗体発現ベクターN5KG4Pを用いた。発現ベクターN5KG1(V)あるいはN5KG4Pのヒト抗体H鎖C領域の直前にあるSalI−NheI部位にATR−5のH鎖V領域をコードする遺伝子を、ヒト抗体L鎖C領域の直前にあるBglII−SplI部位にATR−5のL鎖V領域をコードする遺伝子を連結することによって、キメラATR−5抗体発現ベクターを作製した。
(i)H鎖V領域の導入
プラスミドchATR5Hv/CVIDECを制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で3時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で3時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
発現ベクターN5KG1(V)及びN5KG4Pを制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で3時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で3時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約9000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE60μlに溶解した。
上記のようにして調製したH鎖V領域をコードする遺伝子を含むSalI−NheI DNA断片とSalI及びNheIで消化したN5KG1(V)あるいはN5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラATR−5抗体H鎖をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれchATR5Hv/N5KG1(V)、及びchATR5Hv/N5KG4Pと命名した。
(ii)L鎖V領域の導入
プラスミドchATR5Lv/CVIDECを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で1.5時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、20μlのTEに溶解した。
プラスミドchATR5Hv/N5KG1(V)及びchATR5Hv/N5KG4Pを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で1.5時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約9400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
上記のようにして調製したL鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI−BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化したchATR5Hv/N5KG1(V)あるいはchATR5Hv/N5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体を50μg/ml アンピシリンを含有する2×YT培地1lで37℃にて一夜培養し、菌体画分からPlasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラATR−5抗体をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれchATR5/N5KG1(V)、chATR5/N5KG4Pと命名した。
(4)COS−7細胞へのトランスフェクション
キメラ抗体の抗原結合活性及び中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS−7細胞にトランスフェクションし、キメラ抗体を一過性に発現させた。
プラスミドchATR5/N5KG1(V)あるいはchATR5/N5KG4PをGene Pulser装置(Bio Rad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に形質導入した。ダルベッコPBS(−)(以下、PBSと称す)中に1x107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS−7細胞0.78mlに、プラスミド50μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を5%のUltra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿を用いてCO2インキュベーターにて培養した。24時間の培養の後、培養上清を吸引除去し、新たに無血清培地HBCHO(アーバインサイエンティフィック)を加えた。さらに72時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去した。
(5)抗体の精製
COS−7細胞の培養上清からキメラ抗体を、rProtein A Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech)を用いて以下のように精製した。
1mlのrProtein A Sepharose Fast Flowをカラムに充填し、10倍量のTBSを流すことによってカラムを平衡化した。平衡化したカラムにCOS−7細胞の培養上清をアプライした後、10倍量のTBSによってカラムを洗浄した。
次に、13.5mlの2.5mM HCl(pH3.0)を流すことによって吸着した抗体画分をカラムより溶出し、直ちに1.5mlの1M Tris−HCl(pH8.0)を加えることによって溶出液を中和した。
精製された抗体画分について、セントリプレップ100(Amicon)を用いた限外濾過を2回行うことにより、150mM NaClを含む50mM Tris−HCl(pH7.6)(以下、TBSと称す)に溶媒を置換し、最終的に約1.5mlまで濃縮した。
(6)CHO安定産生細胞株の樹立
キメラ抗体の安定産生細胞株を樹立するため、CHO−S−SFMII無血清培地(GIBCO)に馴化したCHO細胞(DG44)に前記発現プラスミドを導入した。
プラスミドchATR5/N5KG1(V)あるいはchATR5/N5KG4Pを制限酵素SspI(宝酒造)で切断して直鎖状DNAにし、フェノール及びクロロホルムで抽出の後、エタノール沈殿でDNAを回収した。直鎖状にしたプラスミドをGene Pulser装置(Bio Rad)を用いてエレクトロポレーションによりDG44細胞に形質導入した。PBS中に1x107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているDG44細胞0.78mlに、プラスミド10μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞をヒポキサンチン・チミジン(GIBCO)を含有するCHO−S−SFMII培地(GIBCO)に懸濁し、2枚の96穴プレート(Falcon)を用いてCO2インキュベーターにて培養した。培養開始翌日に、ヒポキサンチン・チミジン(GIBCO)及び500μg/ml GENETICIN(G418Sulfate、GIBCO)を含有するCHO−S−SFMII培地(GIBCO)の選択培地に交換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。選択培地交換後、2週間前後に顕微鏡下で細胞を観察し、順調な細胞増殖が認められた後に、後述の抗体濃度測定ELISAにて抗体産生量を測定し、抗体産生量の多い細胞を選別した。
参考例5. ヒト型化抗体の構築
(1)ヒト型化抗体H鎖の構築
(i)ヒト型化H鎖バージョン“a”の構築
ヒト型化ATR−5抗体H鎖を、PCR法によるCDR−グラフティングにより作製した。ヒト抗体L39130(DDBJ,Gao L.ら、未発表、1995)由来のFRを有するヒト型化ATR−5抗体H鎖バージョン“a”の作製のために7個のPCRプライマーを使用した。CDR−グラフティングプライマーhR5Hv1S(配列番号11)、hR5Hv2S(配列番号12)及びhR5Hv4S(配列番号13)はセンスDNA配列を有し、そしてCDRグラフティングプライマーhR5Hv3A(配列番号14)及びhR5Hv5A(配列番号15)はアンチセンスDNA配列を有し、そしてそれぞれプライマーの両端に18−35bpの相補的配列を有する。
hR5Hv1SはKozakコンセンサス配列(Kozak,M,ら、J.Mol.Biol.196,947−950,1987)及びSalI認識部位を有するように、またhR5Hv5AはNheI認識部位を有するように設計した。また外部プライマーhR5HvPrS(配列番号16)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv1Sと、hR5HvPrA(配列番号17)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv5Aとホモロジーを有する。
CDR−グラフティングプライマーhR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv3A、hR5Hv4S及びhR5Hv5A、ならびに外部プライマーhR5HvPrS及びhR5HvPrAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。
PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、98μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% TritonX−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、CDR−グラフティングプライマーhR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv3A、hR5Hv4S及びhR5Hv5Aをそれぞれ5pmoleを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーhR5HvPrS及びhR5HvPrAを加え、100μlの系で同じ温度サイクルを25回行った。PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
約430bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水17μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をNheI及びSalIで消化し、NheI及びSalIで消化することにより調製したプラスミドベクターCVIDECに、DNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い添付の処方に従って反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
EcoT22I認識部位の前もしくは後に変異、欠失が認められたため、それぞれ正しい配列を有する断片を連結して再度CVIDECにサブクローニングし、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hva/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hva/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“a”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号18に示す。また、バージョン“a”のアミノ酸配列を配列番号19に示す。
(ii)ヒト型化H鎖バージョン“b”及び“c”の構築
バージョン“b”及び“c”をFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“b”ではFR3をヒト抗体Z34963(DDBJ、Borretzen M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,91,12917−12921,1994)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR−シャッフリングプライマーF3RFFS(配列番号20)及びF3RFBS(配列番号21)はセンスDNA配列を有し、F3RFFA(配列番号22)及びF3RFBA(配列番号23)はアンチセンスDNA配列を有する。
F3RFFSとF3RFFAは互いに相補的な配列を有し、両端にBalI及びXhoIの認識配列を有する。バージョン”c”ではFR3をヒト抗体P01825(SWISS−PROT、Poljak RJ.ら,Biochemistry,16,3412−3420,1977)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR−シャッフリングベクターF3NMFS(配列番号24)及びF3NMBS(配列番号25)はセンスDNA配列を有し、F3NMFA(配列番号26)及びF3NMBA(配列番号27)はアンチセンスDNA配列を有する。F3RFBSとF3RFBAは互いに相補的な配列を有し、両端にXhoI及びNcoIの認識配列を有する。
F3RFFS、F3RFBS、F3RFFA、F3RFBA、F3NMFS、F3NMBS、F3NMFA及びF3NMBAはPharmacia Biotechにより合成された。F3RFFSとF3RFFA、F3RFBSとF3RFBAをアニールさせ、それぞれBalI及びXhoI、NcoI及びXhoIで消化した。これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号28に示す。また、バージョン“b”のアミノ酸配列を配列番号29に示す。
F3NMFSとF3NMFA、F3NMBSとF3NMBAをアニールさせ、それぞれBalI及びXhoI、NcoI及びXhoIで消化した。これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvc/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvc/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“c”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号30に示す。また、バージョン“c”のアミノ酸配列を配列番号31に示す。
(iii)ヒト型化H鎖バージョン“d”及び“e”の構築
バージョン“d”及び“e”をFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン”d”ではFR3をヒト抗体M62723(DDBJ、Pascual V.ら,J.Clin.Invest.,86,1320−1328,1990)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR−シャッフリングプライマーF3EPS(配列番号32)はセンスDNA配列を有し、F3EPA(配列番号33)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
また外部プライマーF3PrS(配列番号34)及びF3PrA(配列番号35)はFR−シャッフリングプライマーF3EPS及びF3EPAとホモロジーを有し、他のFR3のシャッフリングにも用いることができる。バージョン“e”ではFR3をヒト抗体Z80844(DDBJ、Thomsett AR.ら,unpublished)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR−シャッフリングプライマーF3VHS(配列番号36)はセンスDNA配列を有し、F3VHA(配列番号37)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。F3EPS、F3EPA、F3PrS、F3PrA、F3VHS及びF3VHAはPharmacia Biotechにより合成された。
PCRは、KOD DNA Polymerase(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3EPSとF3EPA、又はF3VHSとF3VHAをそれぞれ5μl、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvd/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号38に、バージョン“d”のアミノ酸配列を配列番号39に示す。また、プラスミドhATR5Hve/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“e”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号40に、バージョン“e”のアミノ酸配列を配列番号41に示す。
(iv)ヒト型化H鎖バージョン“f”及び“g”の構築
バージョン“f”及び“g”はFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“f”はヒト抗体L04345(DDBJ、Hillson JL.ら,J.Exp.Med.,178,331−336,1993)由来のFR3に、バージョン“g”はS78322(DDBJ、Bejcek BE.ら,Cancer Res.,55,2346−2351,1995)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“f”のFR−シャッフリングプライマーF3SSS(配列番号42)はセンスDNA配列を有し、F3SSA(配列番号43)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
バージョン“g”のFR−シャッフリングプライマーF3CDS(配列番号44)はセンスDNA配列を有し、F3CDA(配列番号45)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。F3SSS、F3SSA、F3CDS及びF3CDAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3SSS及びF3SSAもしくはF3CDS及びF3CDAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvf/CVIDEC及びhATR5Hvg/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvf/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“f”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“f”アミノ酸配列を配列番号46及び47に示す。また、プラスミドhATR5Hvg/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“g”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“g”のアミノ酸配列を配列番号48及び49に示す。
(v)ヒト型化H鎖バージョン“h”の構築
バージョン“h”はFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“h”はヒト抗体Z26827(DDBJ、Van Der Stoep ら,J.Exp.Med.,177,99−107,1993)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“h”のFR−シャッフリングプライマーF3ADS(配列番号50)はセンスDNA配列を有し、F3ADA(配列番号51)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
F3ADS及びF3ADAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3ADS及びF3ADAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvh/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvh/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“h”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号52に示す。また、バージョン“h”のアミノ酸配列を配列番号53に示す。
(vi)ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”の構築
バージョン“i”及び“j”はFR−シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“i”はヒト抗体U95239(DDBJ、Manheimer−Lory AJ.,unpublished)由来のFR3に、バージョン“j”はL03147(DDBJ、Collet TA.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89,10026−10030,1992)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“i”のFR−シャッフリングプライマーF3MMS(配列番号54)はセンスDNA配列を有し、F3MMA(配列番号55)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。
バージョン“j”のFR−シャッフリングプライマーF3BMS(配列番号56)はセンスDNA配列を有し、F3BMA(配列番号57)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′−末端は18bpの相補的配列を有する。F3MMS、F3MMA、F3BMS及びF3BMAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、Ampli Taq Gold(Perkin−Elmer)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR−シャッフリングプライマーF3MMSとF3MMA、又はF3BMSとF3BMAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.5mMのMgCl2、2.5UのAmpli Taq Goldを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvi/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“i”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“i”アミノ酸配列を配列番号58及び59に示す。また、プラスミドhATR5Hvj/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“j”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“j”のアミノ酸配列を配列番号60及び61に示す。
(vii)ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”の構築
バージョン“b1”及び“d1”はFR−シャッフリング法によってバージョン“b”及び“d”のFR2を別のヒト抗体由来のFR2に置換し作製した。ヒト抗体P01742(SWISS−PROT、Cunningham BA.ら,Biochemistry,9,3161−3170,1970)由来のものに置換するため、FR2をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR−シャッフリングベクターF2MPS(配列番号62)はセンスDNA配列を有し、F2MPA(配列番号63)はアンチセンスDNA配列を有する。また、互いに相補的な配列を有し、両端にはEcoT22I及びBalIの認識配列を有する。
F2MPS、F2MPAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。F2MPSとF2MPAをアニールさせ、EcoT22I及びBalIで消化した。これをEcoT22I及びBalIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC(EcoT22I/BalI)及びhATR5Hvd/CVIDEC(EcoT22I/BalI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb1/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b1”アミノ酸配列を配列番号64及び65に示す。また、プラスミドhATR5Hvd1/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“d1”のアミノ酸配列を配列番号66及び67に示す。
(viii)ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”の構築
バージョン“b3”及び“d3”はFR−シャッフリング法によってバージョン“b”及び“d”のFR2を別のヒト抗体由来のFR2に置換し作製した。ヒト抗体Z80844(DDBJ、Thomsett AR.ら,unpublished)由来のFR2に置換するため、FR2をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR−シャッフリングベクターF2VHS(配列番号68)はセンスDNA配列を有し、F2VHA(配列番号69)はアンチセンスDNA配列を有する。また、互いに相補的な配列を有し、両端にはEcoT22I及びBalIの認識配列を有する。F2VHS、F2VHAはPharmacia Biotechに合成、精製を委託した。
F2VHSとF2VHAをアニールさせ、EcoT22I及びBalIで消化した。これをEcoT22I及びBalIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC(EcoT22I/BalI)及びhATR5Hvd/CVIDEC(EcoT22I/BalI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb3/CVIDEC及びhATR5Hvd3/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb3/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b3”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b3”アミノ酸配列を配列番号70及び71に示す。また、プラスミドhATR5Hvd3/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d3”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“d3”のアミノ酸配列を配列番号72及び73に示す。
(2)ヒト型化抗体L鎖V領域の構築
(i)バージョン”a”
ヒト型化ATR5抗体L鎖を、PCR法によるCDR−グラフティングにより作製した。ヒト抗体Z37332(DDBJ、Welschof Mら,J.Immunol.Methods,179,203−214,1995)由来のフレームワーク領域を有するヒト型化抗体L鎖(バージョン”a”)の作製のために7本のPCRプライマーを使用した。
CDR−グラフティングプライマーh5Lv1S(配列番号74)及びh5Lv4S(配列番号75)はセンスDNA配列を、CDRグラフティングプライマーh5Lv2A(配列番号76)、h5Lv3A(配列番号77)及びh5Lv5A(配列番号78)はアンチセンスDNA配列を有し、各プライマーの両端に20bpの相補的配列を有する。外部プライマーh5LvS(配列番号79)及びh5LvA(配列番号80)はCDRグラフティングプライマーh5Lv1S及びh5Lv5Aとホモロジーを有する。CDR−グラフティングプライマーh5Lv1S、h5Lv4S、h5Lv2A、h5Lv3A、h5Lv5A、h5LvS及びh5LvAはPharmacia Biotechに合成、精製を委託した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、5pmoleのCDRグラフティングプライマーh5Lv1S、h5Lv2A、h5Lv3A、h5Lv4S、及びh5Lv5Aを含有する。
PCRはDNA Thermal Cycler 480(Perkin−Elmer)を用い、94℃にて30秒間、50℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを5回行うことにより、5本のCDRグラフティングプライマーをアセンブルした。この反応混合液に100pmoleの外部プライマーh5LvS及びh5LvAを加え、94℃にて30秒間、52℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを30回行うことにより、アセンブルしたDNA断片を増幅した。
PCR反応混合液を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノール沈殿により回収した。回収したDNA断片を制限酵素SplI(宝酒造)及びBglII(宝酒造)により37℃で4時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE10μlに溶解した。上記のようにして調製したヒト型化抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI−BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このヒト型化抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′−側にBglII認識配列及びKozak配列、3′−側にSplI認識配列を持つプラスミドをhATR5Lva/CVIDECと命名した。ヒト型化L鎖バージョン”a”の塩基配列(対応するアミノ酸を含む)を配列番号81に示す。また、バージョン“a”のアミノ酸配列を配列番号82に示す。
(ii)バージョン“b”及び“c”
バージョン“b”及び“c”を、バージョン“a”のFR3を置換(FR−シャッフリング)することにより作製した。バージョン“b”にはヒト抗体S68699(DDBJ、Hougs L ら,Exp.Clin.Immunogen et.,10,141−151,1993)由来のFR3を、バージョン“c”にはヒト抗体P01607(SWISS−PROT、Epp O ら,Biochemistry,14,4943−4952,1975)由来のFR3をそれぞれ使用した。
バージョン“b”のFR3をコードするプライマーF3SS(配列番号83)とF3SA(配列番号84)、あるいはバージョン“c”のFR3をコードするプライマーF3RS(配列番号85)とF3RA(配列番号86)は互いに相補的な配列を有し、両端に制限酵素KpnI及びPstIの認識配列を有する。F3SS、F3SA、F3RS、F3RAはPharmacia Biotechに合成、精製を委託した。各100pmoleのF3SSとF3SA、あるいはF3RSとF3RAを96℃にて2分間、50℃にて2分間処理することによりアニーリングさせ、2本鎖DNA断片を作製した。
これら2本鎖DNA断片を制限酵素KpnI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素PstI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
プラスミドhATR5Lva/CVIDECを制限酵素KpnI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素PstI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約3000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
上記のようにして調製したバージョン“b”あるいは“c”のFR3をコードするKpnI−PstI DNA断片とKpnI及びPstIで消化することによりFR3を除去したhATR5Lva/CVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
これらヒト型化抗体L鎖バージョン“a”のFR3を置換したバージョン“b”あるいはバージョン“c”をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれhATR5Lvb/CVIDEC、hATR5Lvc/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Lvb/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b”アミノ酸配列を配列番号87および88に示す。また、プラスミドhATR5Lvc/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“c”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列およびバージョン“c”のアミノ酸配列を配列番号89および90に示す。
(iii)バージョン“b1”及び“b2”
バージョン“b1”及び“b2”を、バージョン“b”のFR2を置換することにより作製した。バージョン“b1”にはヒト抗体S65921(DDBJ、Tonge DWら,Year Immunol.,7,56−62,1993)由来のFR2を、バージョン“b2”にはヒト抗体X93625(DDBJ、Cox JPら,Eur.J.Immunol.,24,827−836,1994)由来のFR2をそれぞれ使用した。
バージョン“b1”のFR2をコードするプライマーF2SS(配列番号91)とF2SA(配列番号92)、あるいはバージョン“b2”のFR2をコードするプライマーF2XS(配列番号93)とF2XA(配列番号94)は互いに相補的な配列を有し、両端に制限酵素AflII及びSpeIの認識配列を有する。F2SS、F2SA、F2XS及びF2XAはPharmacia Biotechにより合成された。各100pmoleのF2SSとF2SA、あるいはF2XSとF2XAを96℃にて2分間、50℃にて2分間処理することによりアニーリングさせ、2本鎖DNA断片を作製した。
これら2本鎖DNA断片を制限酵素AflII(宝酒造)及びSpeI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
プラスミドhATR5Lvb/CVIDECを制限酵素AflII(宝酒造)及びSpeI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約3000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
上記のようにして調製したバージョン“b1”あるいは“b2”のFR2をコードするAflII−SpeI DNA断片とAflII及びSpeIで消化することによりFR2を除去したhATR5Lvb/CVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地4mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin−Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
これらヒト型化抗体L鎖バージョン“b”のFR2を置換したバージョン“b1”あるいはバージョン“b2”をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれhATR5Lvb1/CVIDEC及びhATR5Lvb2/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Lvb1/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列及びバージョン“b1”アミノ酸配列を配列番号95及び96に示す。また、プラスミドhATR5Lvb2/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b2”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列及びバージョン“b2”のアミノ酸配列を配列番号97及び98に示す。
(3)ヒト型化抗体の発現ベクターの構築
(i)ヒト型化H鎖とキメラL鎖との組合せ
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hva/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHva−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvc/CVIDEC、hATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvc−chLv/N5KG4P、hHvd−chLv/N5KG4P及びhHve−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvf/CVIDEC及びhATR5Hvh/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvf−chLv/N5KG4P及びhHvh−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi−chLv/N5KG4P及びhHvj−chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR−5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb1−chLv/N5KG4P及びhHvd1−chLv/N5KG4Pと命名した。
(ii)ヒト型化L鎖とキメラH鎖との組み合わせ
抗体発現ベクターN5KG4Pを用いて、キメラH鎖との組み合わせでヒト型化抗体を発現させることにより、ヒト型化L鎖の評価を行った。
プラスミドhATR5Lva/CVIDEC、hATR5Lvb/CVIDEC、hATR5Lvc/CVIDEC、hATR5Lvb1/CVIDEC、hATR5Lvb2/CVIDECを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で2〜3時間消化した。消化混合物を1.5%または2%
NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
これら各バージョンのヒト型化L鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI−BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化したchATR5Hv/N5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi−Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体をLBA培地250mlまたは500mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からPlasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラH鎖とヒト型化L鎖をコードする遺伝子を導入したプラスミドをそれぞれchHv−hLva/N5KG4P、chHv−hLvb/N5KG4P、chHv−hLvc/N5KG4P、chHv−hLvb1/N5KG4P及びchHv−hLvb2/N5KG4Pと命名した。
(iii)ヒト型化H鎖とヒト型化L鎖の組合せ
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hva/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“a”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLva/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLva/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHva−hLva/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC及びhATR5Hvc/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“a”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLva/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLva/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−hLva/N5KG4P及びhHvc−hLva/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC、hATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−hLvb/N5KG4P、hHvd−hLvb/N5KG4P及びhHve−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvf/CVIDEC、hATR5Hvg/CVIDEC及びhATR5Hvh/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvf−hLvb/N5KG4P、hHvg−hLvb/N5KG4P及びhHvh−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi−hLvb/N5KG4P及びhHvj−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb1−hLvb/N5KG4P及びhHvd1−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb3/CVIDEC及びhATR5Hvd3/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb3−hLvb/N5KG4P及びhHvd3−hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b1”及び“b2”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb1/N5KG4P及びchHv−hLvb2/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb1/N5KG4P(SalI/NheI)及びhLvb2/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb−hLvb1/N5KG4P及びhHvb−hLvb2/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR−5抗体L鎖バージョン“b1”及び“b2”cDNAの配列を含むプラスミドchHv−hLvb1/N5KG4P及びchHv−hLvb2/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb1/N5KG4P(SalI/NheI)及びhLvb2/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi−hLvb1/N5KG4P及びhHvi−hLvb2/N5KG4Pと命名した。
(4)COS−7細胞へのトランスフェクション
ヒト型化抗体の抗原結合活性及び中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS−7細胞で一過性に発現させた。
構築した発現プラスミドベクターをGene Pulser装置(Bio−Rad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に形質導入した。PBS中に1×107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS−7細胞0.78mlに、プラスミド50μgあるいは20μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を5%のUltra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿あるいは15cm培養皿を用いてCO2インキュベーターにて培養した。24時間の培養の後、培養上清を吸引除去し、新たに無血清培地HBCHO(アーバインサイエンティフィック)を加えた。さらに72時間もしくは96時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去した。
(5)抗体の精製
COS−7細胞の培養上清からの抗体の精製をAffiGel Protein A MAPSIIキット(Bio−Rad)、あるいはrProtein A Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech)を用いて行った。AffiGel Protein A MAPSIIキットを用いた精製はキット添付の処方に従って行った。rProtein A Sepharose Fast Flowを用いた精製は以下のように行った。
1mlのrProtein A Sepharose Fast Flowをカラムに充填し、10倍量のTBSを流すことによってカラムを平衡化した。平衡化したカラムにCOS−7細胞の培養上清をアプライした後、10倍量のTBSによってカラムを洗浄した。次に13.5mlの2.5mM HCl(pH3.0)を流すことによって吸着した抗体画分をカラムより溶出した。1.5mlの1M Tris−HCl(pH8.0)を加えることによって溶出液を中和した。
精製された抗体画分について、セントリプレップ30もしくは100(amicon)を用いた限外濾過を2〜3回行うことにより、TBSに溶媒を置換し、最終的に約1.5mlまで濃縮した。
参考例6. 抗体の定量及び活性評価
(1)ELISAによる抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp,NUNC)の各穴を固相化バッファー(0.1M NaHCO3、0.02% NaN3、pH9.6)(以下、CBと称す)で1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlで固相化し、200μlの希釈バッファー(50mM Tris−HCl、1mM MgCl2、0.1M NaCl、0.05% Tween20、0.02% NaN3、1% ウシ血清アルブミン(BSA)、pH8.1)(以下DBと称す)でブロッキングの後、抗体を発現させたCOS−7細胞の培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して各穴に加えた。
1時間室温にてインキュベートし0.05%Tween20を含むダルベッコPBS(以下RBと称す)で洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄の後、1mg/mlとなるようにSigma104(p−ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を基質バッファー(50mM NaHCO3、10mM MgCl2、pH9.8)に溶解したもの(以下、基質溶液と称す)を加え、405/655nmでの吸光度をmicroplate reader(Bio Rad)で測定した。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いた。
(2)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートは、次のようにして調製した。細胞はヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB−1)を用いた。細胞培養用96穴プレートの60穴に1×106個のJ82細胞を播き込んだ。これをCO2インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させた。培養液を捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄した。4%のパラホルムアルデヒドを含むPBS(以下、PFA/PBSと称す)を各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化した。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングした。培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して100μlを各穴に加えた。室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を加え、次に405/655nmでの吸光度をMicroplate Reader(Bio−Rad)で測定した。
(3)中和活性の測定
マウス抗体、キメラ抗体及びヒト型化抗体の中和活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)によるFactor Xa産生阻害活性を指標に測定した。すなわち、1.25mg/mlのThromborel S10μlと適当な濃度に希釈した抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させた。これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)及び82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で1時間反応させた。
0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で1時間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の1時間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S−2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、精製水で2倍希釈した後、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(4)活性の評価
(i)ヒト型化H鎖バージョン“a”とキメラL鎖との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“a”とキメラL鎖を組み合わせた抗体(a−ch)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度側で抗原に対する結合量が低下していた。FXa産生阻害による抗原中和能についても陽性対照のキメラ抗体(ch−ch)に比べて弱い活性であった。よってヒト型化H鎖はFR−シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(ii)ヒト型化L鎖バージョン“a”とキメラH鎖との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“a”とキメラH鎖を組み合わせた抗体(ch−a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、キメラ抗体と同等以上の抗原結合活性が認められた。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて弱い活性であった。よってヒト型化L鎖もFR−シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(iii)ヒト型化H鎖バージョン“a”とヒト型化L鎖バージョン“a”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“a”とヒト型化L鎖バージョン“a”を組み合わせた抗体(a−a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度側で抗原に対する結合量が低下していた。FXa産生阻害による抗原中和能についても陽性対照のキメラ抗体に比べてかなり弱い活性であった。よってヒト型化H鎖及びL鎖のFR−シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(iv)ヒト型化H鎖バージョン“b”、“c”及び“d”とキメラL鎖との組合せ
FR−シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖とキメラL鎖を組み合わせた抗体(それぞれ“b−ch”、“c−ch”、及び“d−ch”)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、“d−ch”はキメラ抗体と同等の抗原結合活性が認められ、“b−ch”及び“c−ch”はわずかに劣る抗原結合活性を示した。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、“b−ch”はほぼ同等、“d−ch”はわずかに弱い活性であった。またバージョン“c−ch”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。よってヒト型化H鎖バージョン“b”及び“d”がヒト型化H鎖で高い活性を示すと考えられるバージョンであった。
(v)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“a”との組合せ
FR−シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“a”を組み合わせた抗体(b−a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度で抗原に対する結合量が低下していた。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、かなり弱い活性であった。よって“b−a”が“a−a”より高い活性を示すバージョンであった。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS−7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(vi)ヒト型化L鎖バージョン“b”、“c”とキメラH鎖との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”をキメラH鎖と組み合わせた抗体(それぞれ、“ch−b”、“ch−c”)を作製したところ、いずれの抗体も抗原結合能、抗原中和能ともにキメラ抗体と同等の活性を示した。よってバージョン“b”及び“c”をヒト型化抗体L鎖の候補とした。マウス抗体由来のアミノ酸残基数が1つ少ないバージョン“b”の方がバージョン“c”より抗原性の点で優れていると考えられる。なお、ここで用いたキメラ抗体はCHO細胞DG44で発現させ精製した抗体を用い評価したもので、これ以降の評価でもこの抗体を陽性対照に用いた。
(vii)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b”をヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”と組み合わせた抗体(それぞれ“b−b”及び“b−c”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。いずれの抗体も抗原結合能、抗原中和能ともにキメラ抗体よりわずかに劣る活性を示した。
(viii)ヒト型化H鎖バージョン“b”及び“d”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
FR−シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖とヒト型化L鎖バージョン“b”を組み合わせた抗体(それぞれ“b−b”及び“d−b”)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、“d−b”はキメラ抗体と同等の抗原結合活性が認められ、“b−b”は高濃度でわずかに劣る抗原結合活性を示した。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、“b−b”はわずかに弱い活性で、“d−b”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。よって“b−b”は抗原活性中和能の高いバージョン、“d−b”は抗原結合能の高いバージョンであることが示された。
(ix)ヒト型化H鎖バージョン“e”とキメラL鎖及びヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“e”をキメラL鎖及びヒト型化バージョン“b”と組み合わせた抗体(それぞれ“e−ch”及び“e−b″)を作製したところ、“e−ch”の抗原結合能はキメラ抗体と同等の活性を示したが、“e−b”は抗体の発現量が非常に低く、且つ抗原結合能も殆ど喪失していた。また“e−ch”の抗原活性中和能はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。よってH鎖バージョン“e”はL鎖バージョン“b”との組合せが悪いと考えられた。
(x)ヒト型化H鎖バージョン“f”、“g”及び“h”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“f”、“g”及び“h”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“f−b”、“g−b″及び″h−b”)作製したところ、“f−b”及び“h−b”の抗体は抗体の発現量が非常に低くかった。なお、バージョン“f”、“h”についてはキメラL鎖と組み合わせた抗体も作製したが、発現されなかった。“g−b”は低い濃度から飽和状態に達し、キメラ抗体より弱い抗原結合能を示した。“g−b”の抗原中和能は、キメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。
(xi)ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“b1−b″及び″d1−b”)作製したところ、ともに抗体は殆ど発現されなかった。なお、これらについてはキメラL鎖と組み合わせた抗体も作製したが、発現されなかった。
(xii)ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“b3−b″及び″d3−b”)作製したところ、“d3−b”の抗原結合能はキメラ抗体よりわずかに劣っており、“b3−b”の抗原結合能はさらに劣っていた。“b3−b″の抗原中和能は″b−b”より上回る活性を示したものの、キメラ抗体の活性には及ばず、“d3−b″は″b−b”と同程度の活性にとどまった。
(xiii)ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”とキメラL鎖及びヒト型化L鎖バージョン“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”をキメラL鎖と組み合わせた抗体(それぞれ“i−ch″及び″j−ch”)とヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体(それぞれ“i−b″及び″j−b”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。抗原結合能はいずれの抗体もキメラ抗体とほぼ同等の活性を示した。“j−ch”にはキメラ抗体の活性を上回る抗原中和能が認められ、“j−ch”の抗原中和能はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。“i−b”はキメラ抗体と同等の活性が認められ、“j−b”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった。
(xiv)ヒト型化L鎖バージョン“b1″及び″b2”
ヒト型化L鎖バージョン“b1″及び″b2”をキメラH鎖と組み合わせた抗体(それぞれ、“ch−b1″及び″ch−b2”)を作製したところ、いずれの抗体もキメラ抗体と同等の抗原結合能を示した。抗原中和能については、“ch−b1”ではキメラ抗体と同等の活性を示し、“ch−b2”では高濃度側でキメラ抗体を若干上回る活性が認められた。バージョン“b1″及び″b2”ともにヒト型化抗体L鎖の候補になり得るが、より強い活性を有するという点でバージョン“b2”の方が優れている。
(xv)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“b2”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b”をヒト型化L鎖バージョン“b2”と組み合わせた抗体(“b−b2”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。抗原結合能はキメラ抗体よりわずかに劣っていた。抗原中和能は“b−b”の活性を上回ったものの、“i−b”の活性には及ばなかった。
(xvi)ヒト型化H鎖バージョン“i”とヒト型化L鎖バージョン“b1”又は“b2”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“i”をヒト型化L鎖バージョン“b1″又は″b2”と組み合わせた抗体(それぞれ“i−b1″及び″i−b2”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。“i−b2”の抗原結合能はキメラ抗体とほぼ同等で、“i−b1”はわずかに劣る程度であった。また、“i−b1″及び″i−b2”の抗原中和能はキメラ抗体や“i−b”を上回る活性を示し、“i−b2”>“i−b1”の順に強かった。
参考例7. CHO細胞産生ヒト型化抗体の作製及び活性評価
(1)CHO安定産生細胞株の樹立
ヒト型化抗体(b−b、i−b及びi−b2)の安定産生細胞株を樹立するため、無血清培地に馴化したCHO細胞(DG44)に抗体発現遺伝子ベクターを導入した。
プラスミドDNA、hHvb−hLvb/N5KG4P、hHvi−hLvb/N5KG4P及びhHvi−hLvb2/N5KG4Pを制限酵素SspI(宝酒造)で切断して直鎖状にし、フェノール及びクロロフォルム抽出した後、エタノール沈殿により精製した。エレクトロポーレーション装置(Gene Pulser;Bio Rad)により、直鎖状にした発現遺伝子ベクターをDG44細胞に導入した。DG44細胞をPBSに1×107/mlの細胞密度で懸濁し、この懸濁液約0.8mlに前記のDNAを10もしくは50μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、ヒポキサンチン−チミジン(GIBCO)(以下、HT)を含有するCHO−S−SFMII培地に処理された細胞を懸濁し、2枚の96穴平底プレート(Falcon)に100μl/穴となるように播種し、CO2インキュベーターにて培養した。培養開始8〜9時間後にHT及び1mg/mlのGENETICIN(GIBCO)を含有するCHO−S−SFMII培地を100μl/穴加え、500μg/mlのGENETICIN選択培地に変換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。3〜4日に一度1/2量の培地を新鮮な培地と交換し、選択培地への変換から約2週間経過した時点で、その4〜5日後に細胞の順調な増殖が観察された穴の培養上清の一部を回収した。この培養上清中に発現された抗体濃度を前述の抗体濃度測定ELISAにより測定し、抗体産生量の高い細胞を選出した。
(2)ヒト型化抗体の大量精製
前記のように選出したヒト型化抗体(“b−b”、“i−b″及び″i−b2″)発現DG44細胞株を2Lローラーボトル(CONING)を用い、500ml/ボトルのCHO−S−SFMII培地中で数日培養後、培養液を回収して新鮮なCHO−S−SFMII培地を加え、再び培養した。培養液は遠心分離により細胞破片を除去し、0.22μmもしくは0.45μmのフィルターで濾過した。これを繰り返し、それぞれ全量約2Lの培養上清を得た。得られた培養上清をProtein Aアフィニティーカラム(Poros)を接続したConSep LC100システム(ミリポア)にて抗体を精製した。
(3)ELISAによる抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp,NUNC)の各穴をCBで1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlで固相化し、200μlのDBでブロッキングの後、抗体を発現させたCOS細胞の培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して各穴に加えた。
1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄の後、基質溶液を100μl加え、405/655nmでの吸光度をmicroplate reader(Bio Rad)で測定した。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いた。
(4)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートでは、次のようにして調製した。細胞はヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB−1)を用いた。細胞培養用96穴プレートに1×106個のJ82細胞を播き込んだ。これをCO2インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させた。培養液を捨て、PBSで各穴を2回洗浄した。PFA/PBSを各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化した。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングした。精製抗体を上測定結果をもとに、DBにて10μg/mlより公比2で段階希釈して100μlを各穴に加えた。室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を100μl加え、次に405/655nmでの吸光度をMicroplate Reader(Bio−Rad)で測定した。
(5)TF中和活性(ファクターXa産生阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のファクターXa産生阻害活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)によるFactorXa産生阻害活性を指標に測定した。すなわち、5mg/mlのThromborel S 10μlと抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させた。抗体は緩衝液で200μg/mlより公比5で段階希釈した。
これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)及び82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で45分間反応させた。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で30分間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の30分間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S−2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(6)TF中和活性(ファクターX結合阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のファクターX結合阻害活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)を用い、予めTFとFactor VIIaの複合体を形成させ、その複合体のFactor Xa産生阻害活性を指標にファクターX結合阻害活性を測定した。すなわち、5mg/mlのThromborel S 10μlと82.5ng/mlのヒトFactor VIIa(エンザイム・リサーチ)10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で予め1時間反応させた。
これに抗体溶液を10μl加え、室温で5分間反応させた後、3.245μg/mlのヒトFactor X(セルサス・ラボラトリーズ)を10μl加え、さらに室温で45分間反応させた。なお抗体は緩衝液で200μg/mlより公比2で段階希釈した。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で30分間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の30分間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S−2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(7)TF中和活性(血漿凝固阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のTF中和活性(血漿凝固阻害活性)はヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)を用いたプロトロンビン時間を指標に測定した。すなわち、サンプルカップにヒト血漿(コスモ・バイオ)100μlを入れ、これに様々な濃度に希釈した抗体を50μl加え、37℃で3分間加温した。予め37℃に加温しておいた1.25mg/mlのThromborel Sを50μl加え、血漿凝固を開始させた。この凝固時間はAmelung CR−Aを接続したAmelung KC−10A(ともにエム・シー・メディカル)にて測定した。
抗体は80μg/mlより公比2で0.1%のBSAを含有するTBS(以下、BSA−TBS)にて段階希釈した。測定した抗体無添加の凝固時間を100%のTF血漿凝固活性とし、Thromborel Sの濃度と凝固時間をプロットした検量線により抗体を添加した際のそれぞれの凝固時間からTF残存活性を算出した。
検量線は様々なThromborel Sの濃度とその凝固時間を測定することにより作成した。適当に希釈したThromborel S、50μlに50μlのBSA−TBSを加え、37℃で3分間加温し、予め37℃に加温しておいたヒト血漿を100μl加えて凝固を開始させ凝固時間を測定した。Thromborel Sは6.25mg/mlより公比2で25mMのCaCl2を含むハンクス緩衝液(GIBCO)にて段階希釈した。横軸にThromborel S濃度、縦軸に凝固時間を両対数グラフにプロットし、これを検量線とした。
(8)活性の評価
“b−b”、“i−b”及び“i−b2”のヒト型化抗体すべてはキメラ抗体と同等以上の活性を有していた(図1)。Factor Xa産生阻害活性、Factor X結合阻害活性及び血漿凝固阻害活性においても、ヒト型化抗体“b−b”、“i−b”及び“i−b2”はキメラ抗体と同等以上の活性を有しており、“i−b2”>“i−b”>“b−b”の順に活性が強かった(図2、3及び4)。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。
図2は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(TFのファクターXa産生阻害活性)を比較したグラフである。
図3は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(ファクターX結合阻害活性)を比較したグラフである。
図4は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(TFの血漿凝固阻害活性)を比較したグラフである。
図5は、リポポリサッカライド(LPS)処理された単核細胞により血液の流動性が低下する事を示すグラフである。
図6は、リポポリサッカライドにより低下した血液の流動性が、抗‐ヒト組織因子抗体により改善されることを示すグラフである。
Claims (27)
- ヒト組織因子(ヒトTF)に対する抗体を含んで成る血液レオロジー改善剤。
- 前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項1に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記抗体が組換え型抗体である、請求項1又は3に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記抗体が改変抗体である、請求項1又は4に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記改変抗体がキメラ抗体又はヒト型化抗体である、請求項1,4又は5に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記ヒト型化抗体が、バージョンb−b,i−b、又はi−b2のヒト型化抗体である、請求項6に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記抗体が抗体修飾物である、請求項1又は4〜7のいずれか1項に記載の血液レオロジー改善剤。
- 前記抗体修飾物が、抗体断片Fab,F(ab′)2もしくはFv、又はシングルチェインFv(scFv)である、請求項8に記載の血液レオロジー改善剤。
- 血液レオロジー改善剤の製造のためのヒト組織因子(ヒトTF)に対する抗体使用。
- 前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項10に記載の使用。
- 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項10に記載の使用。
- 前記抗体が組換え型抗体である、請求項10又は12に記載の使用。
- 前記抗体が改変抗体である、請求項10又は13に記載の使用。
- 前記改変抗体がキメラ抗体又はヒト型化抗体である、請求項10,13又は14に記載の使用。
- 前記ヒト型化抗体が、バージョンb−b,i−b、又はi−b2のヒト型化抗体である、請求項15に記載の使用。
- 前記抗体が抗体修飾物である、請求項10又は13〜16のいずれか1項に記載の使用。
- 前記抗体修飾物が、抗体断片Fab,F(ab′)2もしくはFv、又はシングルチェインFv(scFv)である、請求項17に記載の使用。
- ヒト組織因子(ヒトTF)に対する抗体を投与することを含んで成る血液レオロジー改善方法。
- 前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項19に記載の方法。
- 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項19に記載の方法。
- 前記抗体が組換え型抗体である、請求項19又は21に記載の方法。
- 前記抗体が改変抗体である、請求項19又は22に記載の方法。
- 前記改変抗体がキメラ抗体又はヒト型化抗体である、請求項19,22又は23に記載の方法。
- 前記ヒト型化抗体が、バージョンb−b,i−b、又はi−b2のヒト型化抗体である、請求項24に記載の方法。
- 前記抗体が抗体修飾物である、請求項19又は22〜25のいずれか1項に記載の方法。
- 前記抗体修飾物が、抗体断片Fab,F(ab′)2もしくはFv、又はシングルチェインFv(scFv)である、請求項26に記載の方法。
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