JP2005330292A - ヒト組織因子(tf)に対するヒト型化抗体およびヒト型化抗体の作製方法 - Google Patents

ヒト組織因子(tf)に対するヒト型化抗体およびヒト型化抗体の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 天然ヒト型化抗体の製造方法の提供。
【解決手段】 非ヒト由来の相補性決定領域(CDR)及び天然ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)を有する免疫原性を低減させた天然ヒト型化抗体の製造方法により得られる抗体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ヒト組織因子(TF)に対するマウスモノクローナル抗体の可変領域(V領域)とヒト抗体の定常領域(C領域)とからなるヒト/マウスキメラ抗体、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の軽鎖(L鎖)V領域及び重鎖(H鎖)V領域の相捕性決定領域(CDR)がヒト抗体に移植されているヒト型化(humanized)抗体、該抗体のL鎖及びH鎖、並びに該抗体のL鎖又はH鎖を構成するV領域の断片に関する。本発明はさらに、ヒトTFに対するヒト型化抗体の作製方法に関する。
本発明はさらに、上記の抗体、特にそのV領域の断片をコードするDNA、及びV領域を含むL鎖又はH鎖をコードするDNAに関する。本発明はさらに、該DNAを含む組換えベクター、及び該ベクターにより形質転換された宿主に関する。
本発明はさらに、ヒトTFに対するキメラ抗体及びヒト型化抗体の製造方法に関する。本発明はさらに、ヒトTFに対するヒト型化抗体を有効成分として含む医薬組成物及び播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬に関する。
組織因子(TF)は、細胞表面に発現される凝固第VII因子受容体であり、凝固第VII因子との複合体形成を通じて、凝固第IX因子およびX因子の活性化に不可欠な役割を担っており、血液凝固反応の実質的な開始因子と位置づけられている。
TFは血管を構成する線維芽細胞や平滑筋細胞などに発現されており、血管損傷の際に凝固系を活性化して止血機能を果たすことが知られている。
DICは、血管内での凝固系の活性化によって全身の主として細小血管内に血栓が多発する疾患である。血小板や凝固因子が消費されて低下することにより、血栓とは逆の現象である出血を生じることも少なくない。また多発した微小血栓により重要臓器の微小循環不全をきたし、一旦発症すると不可逆的な機能障害を残すことも多く、DICの予後が不良となるため、重要な疾患と認識されている。
厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班平成2年度および4年度の研究報告書から推定される基礎疾患の割合は、造血器悪性腫瘍が約30%、固形癌約20%、感染症約15%、産科的疾患約10%、肝疾患6%、ショック5%、心血管系疾患3%である。またDICの発症頻度は白血病が約15%、悪性リンパ種が6〜7%と高く、固形癌では3%程度である。
これら種々の疾患に合併してDICは発症するが、その原因物質は共通であり、それがTFである。すなわち、急性白血病や悪性リンパ腫、固形癌においては腫瘍細胞のTFの生成・発現の異常亢進、感染症(特にグラム陰性菌性敗血症)においては単球・血管内皮細胞におけるTF産生・発現の亢進、劇症肝炎では壊死した肝組織からのTFの血中への流入、大動脈瘤・心臓瘤・巨大血管腫では血管内面でのTF形成、また産科的疾患(羊水栓塞・常位胎盤早期剥離)や手術・外傷・火傷においてもTFの血中への流入がDICの発症機序と考えられている。
原疾患(基礎疾患)の治療が第一であるが、実際にはこれが容易ではない。
現状のDIC治療法としては、抗凝固療法と補充療法が行われている。抗凝固療法の中心となっているのはヘパリン製剤(未分画ヘパリン、低分子ヘパリン)であり、合成蛋白分解酵素阻害剤(メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファモスタット)や濃縮血漿製剤(アンチトロンビンIII、活性化プロテインC製剤)も用いられている。補充療法としては濃縮血小板血漿や新鮮凍結血漿(フィブリンの補給)、洗浄赤血球等がある。
しかし現状の治療薬では、有効性や副作用の面で十分に満足できるものはなく、DICからの完全離脱が出来ない場合がほとんどであることより、治療効果が高く副作用の少ない薬剤の使用が期待されている。
一方、新しいDIC治療の試みとしては、トロンボモジュリン製剤やヒルジン、抗PAF剤がある。TFPI (Tissue Factor PathwayInhibitor)や、FXa選択的阻害剤が経口投与可能な抗凝固・抗血栓剤として注目を集めている。また、TFの活性を中和するものとして、WO88/07543には、マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体が、WO96/40921には、ヒト型化抗ヒトTF抗体として開示されている。
マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体は、DICに於いて主薬効に伴う出血傾向などを示さない安全で有効な治療薬となることが期待できる。しかしながら、マウスのモノクローナル抗体はヒトにおいて高度に免疫原性(「抗原性」という場合もある)を有し、このため、ヒトにおけるマウスモノクローナル抗体の医学療法的価値は制限されている。例えば、マウス抗体をヒトに投与すると異物として代謝されうるので、ヒトにおけるマウス抗体の半減期は比較的短く、期待された効果を充分に発揮できない。さらに、投与したマウス抗体に対して発生するヒト抗マウス抗体(HAMA)は、血清病又は他のアレルギー反応など、患者にとって不都合で危険な免疫応答を惹起する。したがって、マウスモノクローナル抗体をヒトに頻回投与することはできない。
これらの問題を解決するため、非ヒト由来の抗体、例えばマウス由来のモノクローナル抗体の免疫原性を低減させる方法が開発された。その一つが、抗体の可変領域(V領域)はもとのマウスモノクローナル抗体に由来し、定常領域(C領域)は適当なヒト抗体に由来するキメラ抗体を作製する方法である。
得られるキメラ抗体はもとのマウス抗体の可変領域を完全な形で含有するので、もとのマウス抗体と同一の特異性をもって抗原に結合することが期待できる。さらに、キメラ抗体ではヒト以外に由来するアミノ酸配列の比率が実質的に滅少しており、それ故にもとのマウス抗体に比べて免疫原性が低いと予想されるが、それでもなおマウス可変領域に対する免疫応答が生ずる可能性がある(LoBuglio, A., F.らProc.Natl.Acad.Sci. USA, 86, 4220-4224, 1989)。
マウス抗体の免疫原性を低減させるための第二の方法は一層複雑であるが、しかしマウス抗体の潜在的な免疫原性をさらに大幅に低下させることが期待される。この方法においては、マウス抗体の可変領域から相補性決定領域(complementarity determining region; CDR)のみをヒト可変領域に移植して「再構成」(reshaped)ヒト可変領域を作製する。ただし、必要によっては、再構成ヒト可変領域のCDRの構造をより一層もとのマウス抗体の構造に近づけるために、CDRを支持しているフレームワーク領域(FR)の一部のアミノ酸配列をマウス抗体の可変領域からヒト可変領域に移植する場合がある。次に、これらのヒト型化された再構成ヒト可変領域をヒト定常領域に連結する。最終的に再構成されたヒト型化抗体のヒト以外のアミノ酸配列に由来する部分は、CDR及び極く一部のFRのみである。CDRは超可変アミノ酸配列により構成されており、これらは種特異的配列を示さない。
ヒト型化抗体については、さらに、 Riechmann, L.らNature, 332, 323-327, 1988; Verhoeye, M.らScience, 239, 1534-1536, 1998; Kettleborough, C.A.ら Protein Engng., 4, 773-783, 1991; Maeda, H., Human Antibodies and Hybridoma, 2, 124-134, 1991;Gorman, S.D.ら Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 88, 4181-4185, 1991; Tempest, P.R., Bio/Technology, 9, 266-271, 1991; Co, M.S.ら Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 88, 2869-2873, 1991; Cater, P.らProc.Natl.Acad.Sci. USA, 89, 4285-4289, 1992; Co,M.S. らJ.Immunol., 148, 1149-1154, 1992; 及びSato, K., らCancer Res., 53, 851-856, 1993を参照のこと。
従来のヒト型化技術では、フレームワーク領域(FR)の一部にマウス抗体の可変領域からヒト可変領域に移植されたアミノ酸配列を含む。そのため、ヒトにおいて治療薬として投与した場合に、可変領域の一ないし数アミノ酸ではあるが、ヒトに存在しないアミノ酸配列を有する部位に対する抗体ができる危険性が存在する。この危険性を回避するために、第三のヒト型化技術を考案した。すなわち、三個のCDRの立体構造を保持するために必要な四個のFR(FR1〜4)について、一つのFRを単位として、データベース上に存在するマウス抗体のFRと相同性の高いヒト抗体のFRを置換する方法である。この際、データベース上に存在するヒト抗体から数種類のFRを選択し、順次置換(shuffle)することにより活性の高いヒト型化抗体の作製を行う。
こうすることにより、可変領域の中でCDRを除くFRは、全てヒト抗体由来のアミノ酸配列を有するヒト型化抗体を作製することが出来る。このため、マウスCDRを担持するヒト型化抗体は、もはやヒトCDRを含有するヒト抗体より強い免疫原性を有しないはずである。
前記のごとく、ヒト型化抗体は療法目的のために有用であると予想されるが、ヒト型化抗体の製造方法において任意の抗体に普遍的に適用し得る画一的な方法は存在せず、特定の抗原に対して十分な結合活性、中和活性を示すヒト型化抗体を作製するためには種々の工夫が必要である(例えば、Sato, K.ら、Cancer Res., 53, 851-856, 1993を参照のこと)。
本発明は、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域(V領域)とヒト抗体の定常領域(C領域)とからなるヒト/マウスキメラ抗体、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の軽鎖(L鎖)V領域及び重鎖(H鎖)V領域の相捕性決定領域がヒト抗体に移植されているヒト型化(humanized)抗体、該抗体のL鎖及びH鎖、並びに該抗体のL鎖又はH鎖を構成するV領域の断片を提供することを目的とする。本発明はさらに、ヒトTFに対するヒト型化抗体の作製方法を提供することを目的とする。
本発明はさらに、上記の抗体、特にそのV領域の断片をコードするDNA、及びV領域の断片を含むL鎖又はH鎖をコードするDNAを提供することを目的とする。本発明はさらに、該DNAを含む組換えベクター、及ぶ該ベクターにより形質転換された宿主を提供することを目的とする。本発明はさらに、ヒトTFに対するヒト型化抗体を有効成分として含む医薬組成物及び播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のヒトにおける免疫原性が低減されている抗体を得ることに成功し、また、新しいヒト型化抗体の作製方法を開発し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ヒト抗体のH鎖C領域、及びヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域の断片を含むキメラH鎖に関する。H鎖V領域としては、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含むものが挙げられ、C領域としてはCγ4領域のものが挙げられる。
さらに、本発明は、ヒト抗体のL鎖C領域、及びヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域の断片を含むキメラL鎖に関する。L鎖V領域としては、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含むものが挙げられ、L鎖C領域としてはCκ領域のものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記キメラH鎖及びキメラL鎖を含む、ヒトTFに対するヒトマウスキメラモノクローナル抗体に関する。
さらに、本発明は、ヒト抗体のH鎖V領域のフレームワーク領域(FR)1〜4、及びヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域の相補性決定領域(CDR)1〜3を含む、ヒト型化抗体のH鎖V領域の断片に関する。CDR1〜3としては、それぞれ配列番号133〜135で表されるアミノ酸配列を含むものが挙げられる。ヒト抗体のH鎖V領域のFR1としては、マウス抗体のH鎖V領域FR1との相同性が40%以上のヒト抗体FR1が挙げられ、FR2としては、マウス抗体のH鎖V領域FR2との相同性が40%以上のヒト抗体FR2が挙げられ、FR3としては、マウス抗体のH鎖V領域FR3との相同性が40%以上のヒト抗体FR3が挙げられ、FR4としては、マウス抗体のH鎖V領域FR4との相同性が40%以上のヒト抗体FR4が挙げられる。
好ましくは、ヒト抗体のH鎖V領域のFR1としては、マウス抗体のH鎖V領域FR1との相同性が50%以上のヒト抗体FR1が挙げられ、FR2としては、マウス抗体のH鎖V領域FR2との相同性が70%以上のヒト抗体FR2が挙げられ、FR3としては、マウス抗体のH鎖V領域FR3との相同性が65%以上のヒト抗体FR3が挙げられ、FR4としては、マウス抗体のH鎖V領域FR4との相同性が80%以上のヒト抗体FR4が挙げられる。具体的な例としては、ヒト抗体のH鎖V領域のFR1としては、ヒト抗体L39130が挙げられ、FR2としては、ヒト抗体L39130、ヒト抗体P01742およびヒト抗体のZ80844が挙げられ、FR3としては、ヒト抗体L39130、ヒト抗体Z34963、ヒト抗体P01825、ヒト抗体M62723、ヒト抗体Z80844、ヒト抗体L04345、ヒト抗体S78322、ヒト抗体Z26827、ヒト抗体U95239およびヒト抗体L03147が挙げられ、FR4としては、ヒト抗体L39130が挙げられる。
好ましい例としては、ヒト抗体のH鎖V領域のFR1としては、ヒト抗体L39130が挙げられ、FR2としては、ヒト抗体L39130、およびヒト抗体のZ80844が挙げられ、FR3としては、ヒト抗体Z34963、ヒト抗体M62723およびヒト抗体U95239が挙げられ、FR4としてヒト抗体L39130が挙げられる。さらに好ましい例としては、ヒト抗体のH鎖V領域のFR1としては、ヒト抗体L39130が挙げられ、FR2としては、ヒト抗体L39130が挙げられ、FR3としては、ヒト抗体Z34963およびヒト抗体U95239が挙げられ、FR4としてヒト抗体L39130が挙げられる。
さらに、本発明は、フレームワーク領域中の番号としてKabatの規定(Kabat, E.A.ら、US Dept. Health and Human Services,US Government Printing Offices, 1991)による。
さらに、本発明は、配列番号30、40、42、50、52、58、60、64、70、72、76、78、82、84で表されるいずれかのアミノ酸配列を含む、ヒト型化抗体のH鎖V領域の断片に関する。
さらに、本発明は、ヒト抗体のL鎖V領域のFR1〜4、及びヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDR1〜3を含む、ヒト型化抗体のL鎖V領域の断片に関する。CDR1〜3としては、それぞれ配列番号136〜138で表されるアミノ酸配列を含むものが挙げられる。ヒト抗体のL鎖V領域のFR1としては、マウス抗体のL鎖V領域FR1との相同性が40%以上のヒト抗体FR1が挙げられ、FR2としては、マウス抗体のL鎖V領域FR2との相同性が40%以上のヒト抗体FR2が挙げられ、FR3としては、マウス抗体のL鎖V領域FR3との相同性が40%以上のヒト抗体FR3が挙げられ、FR4としては、マウス抗体のL鎖V領域FR4との相同性が40%以上のヒト抗体FR4が挙げられる。
好ましくは、ヒト抗体のL鎖V領域のFR1としては、マウス抗体のL鎖V領域FR1との相同性が75%以上のヒト抗体FR1が挙げられ、FR2としては、マウス抗体のL鎖V領域FR2との相同性が80%以上のヒト抗体FR2が挙げられ、FR3としては、マウス抗体のL鎖V領域FR3との相同性が70%以上のヒト抗体FR3が挙げられ、FR4としては、マウス抗体のL鎖V領域FR4との相同性が80%以上のヒト抗体FR4が挙げられる。具体的な例としては、ヒト抗体のL鎖V領域のFR1としては、ヒト抗体Z37332が挙げられ、FR2としては、ヒト抗体Z37332およびヒト抗体X93625が挙げられ、FR3としては、ヒト抗体Z37332、ヒト抗体S68699およびP01607が挙げられ、FR4としてヒト抗体Z37332が挙げられる。さらに好ましい例としては、ヒト抗体のL鎖V領域のFR1としては、ヒト抗体Z37332が挙げられ、FR2としては、ヒト抗体X93625が挙げられ、FR3としては、ヒト抗体S68699が挙げられ、FR4としてヒト抗体Z37332が挙げられる。
さらに、本発明は、フレームワーク領域中の番号としてKabatの規定(Kabat, E.A.ら、US Dept. Health and Human Services,US Government Printing Offices, 1991)による。
さらに、本発明は、配列番号93、99、101、107又は109で表されるアミノ酸配列を含む、ヒト型化抗体のL鎖V領域の断片に関する。
さらに、本発明は、前記ヒト型化抗体のH鎖V領域の断片及びヒト抗体のH鎖C領域の断片を含む、ヒトTFに対するヒト型化抗体のH鎖に関する。ここで、C領域としてはCγ4領域、ヒト抗体由来のFR1〜4としては、それぞれヒト抗体L39130(FR1)、ヒト抗体L39130(FR2)、ヒト抗体Z34963(FR3)またはヒト抗体U95239(FR3)、ヒト抗体L39130(FR4)由来のもの、そしてCDR1〜3としてはそれぞれ配列番号133〜135で表されるアミノ酸配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記ヒト型化抗体のL鎖V領域の断片及びヒト抗体のL鎖C領域の断片を含む、ヒトTFに対するヒト型化抗体のL鎖に関する。ここで、C領域としてはCκ領域、ヒト抗体由来のFR1〜4としては、それぞれヒト抗体Z37332(FR1)、ヒト抗体X93625(FR2)、ヒト抗体S68699(FR3)、ヒト抗体Z37332(FR4)由来のもの、そしてCDR1〜3としてはそれぞれ配列番号136〜138で表されるアミノ酸配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記ヒト型化抗体のL鎖及びH鎖を含む、ヒトTFに対するヒト型化抗体に関する。
さらに、本発明は、ヒトTFに対するヒト型化抗体の作製方法に関する。ヒト型化の作製方法とは、H鎖またはL鎖の抗原認識部位であるCDR1〜3の構造を支えるFR1〜4の選択方法に関する。すなわち、各FRを一つの単位として、マウス抗体由来のFRと相同性の高いヒト抗体のFRを複数選択し、そのFRを順次置換(shuffle)して所望の活性を有するヒト型化抗体の作製方法に関する。
さらに詳しくは、本発明のヒト型化抗体の製造方法の一例においては、非ヒト由来の相補性決定領域(CDR)及び天然ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)を有する免疫原性を低減させた天然ヒト型化抗体の製造方法において、
(1)目的とする抗原に対して反応性の非ヒトモノクローナル抗体を用意し、
(2)前記(1)のモノクローナル抗体中のFRのアミノ酸配列に対して高い相同性を有するヒト抗体を複数用意し、
(3)前記(2)における1種類のヒト抗体の4個のFRを前記(1)の非ヒトモノクローナル抗体の対応するFRにより置換して第一のヒト型化抗体を作製し、
(4)前記(3)において作製したヒト型化抗体の抗原への結合性又は抗原の生物活性を中和する能力を測定し、
(5)前記(3)において作製したヒト型化抗体中の1〜3個のFRを、(2)で用意したヒト抗体の内、(3)で使用したものとは異なるヒト抗体の対応するFRにより置換して第二のヒト型化抗体を作製し、
(6)前記(5)で作製した第二のヒト型化抗体と前記(3)で得た第一のヒト型化抗体とを、抗原に対する結合性、又は抗原の生物活性を中和する能力について比較し、好都合な活性を示すヒト型化抗体を選択し、
(7)前記(6)で選択されたヒト型化抗体について、前記(3)〜(6)の段階を実施し、そして
(8)前記(1)における非ヒトモノクローナル抗体と同等の活性を有するヒト型化抗体が得られるまで前記(3)〜(6)の段階を反復する、
ことを特徴とする。
ヒトTFに対する中和活性をある程度有するヒト型化抗体が得られれば、そのH鎖及びL鎖のV領域の特定のFRに対してさらに相同性の検索を行い、さらに相同性の高いヒト抗体を選択することが出来る。ここで得られたヒト抗体を上記の工程(2)の複数のヒト抗体群に加えて、さらに工程(3)〜(6)を反復し、所望の活性を有するヒト型化抗体を得ることが出来る。
さらに、本発明は、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域の断片又はL鎖V領域の断片をコードするDNAに関する。H鎖V領域の断片及びL鎖V領域の断片のアミノ酸配列及びDNAとしては、それぞれ配列番号9又は15で表される塩基配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記キメラH鎖又はキメラL鎖をコードするDNAに関する。該H鎖をコードするDNAとしては例えば配列番号9で表される塩基配列を含むものが挙げられ、該L鎖をコードするDNAとしては配列番号15で表される塩基配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記ヒト型化抗体のH鎖V領域の断片又はL鎖V領域の断片をコードするDNAに関する。H鎖V領域の断片をコードするDNAとしては配列番号29、39、41、49、51、57、59、63、69、71、75、77、81又は83で表されるいずれかの塩基配列を含むものが挙げられ、L鎖V領域の断片をコードするDNAとしては配列番号92、98、100、106又は108で表される塩基配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、ヒト型化抗体のH鎖をコードするDNAに関する。
さらに、本発明は、配列番号30、40、42、50、52、58、60、64、70、72、76、78、82又は84で表されるいずれかのアミノ酸配列をコードするDNAを含む、ヒト型化抗体のH鎖DNAに関する。該DNAとしては、配列番号29、39、41、49、51、57、59、63、69、71、75、77、81又は83で表されるいずれかの塩基配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記ヒト型化抗体のL鎖をコードするDNAに関する。
さらに、本発明は、配列番号93、99、101、107又は109で表されるアミノ酸配列をコードする、ヒト型化抗体のL鎖DNAである。該DNAとしては配列番号92、98、100、106又は108で表される塩基配列を含むものが挙げられる。
さらに、本発明は、前記いずれかのDNAを含む組換えベクターに関する。
さらに、本発明は、前記組換えベクターにより形質転換された形質転換体に関する。
さらに、本発明は、前記形質転換体を培養し、得られる培養物からヒトTFに対するキメラ抗体又はヒト型化抗体を採取することを特徴とするヒトTFに対するキメラ抗体又はヒト型化抗体の製造方法に関する。
さらに、本発明は、前記ヒト型化抗体を有効成分として含む医薬組成物又はDIC治療剤に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。1.ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の作製
TFに対するマウスモノクローナル抗体は、抗原で免疫した動物から得られる抗体産生細胞と、ミエローマ細胞との細胞融合によりハイブリドーマを調製し、得られるハイブリドーマからTF活性を特異的に阻害する抗体を産生するクローンを選択することにより調製される。
すなわち、ヒト胎盤より精製したTFを抗原として免疫したマウスの脾細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマのスクリーニングは、抗体のTFとの結合能はTF高発現細胞株J82を用いたCell-ELISAで、TFに対する中和能は凝固第X因子(Factor X:FX)の活性化に対する阻害活性を指標にした測定系で行った。その結果、TF/VIIa複合体のFX活性化を強く阻害する抗体6種を産生するハイブリドーマの樹立に成功した。
(1)抗原の調製
動物の免疫に用いるTFとしては、組換えDNA法又は化学合成により調製したTFのアミノ酸配列の一部のペプチド、又はヒト胎盤由来のTFなどが挙げられる。例えば、Itoらの方法(Ito T.ら J.Biochem. 114, 691-696, 1993)に準じて行い精製したヒト胎盤由来のTFを抗原として用いることができる。
得られたヒトTFは、アジュバントと混合し抗原として用いる。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント等が挙げられ、これらの何れのものを混合してもよい。
(2)免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られた抗原を非ヒト哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウマ、サル、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物に投与する。免疫は、既存の方法であれば何れの方法をも用いることができるが、主として静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射などにより行う。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは4〜21日間間隔で免疫する。
最終の免疫日から2〜3日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞が挙げられるが、一般に脾臓細胞が用いられる。抗原の免疫量は1回にマウス1匹当たり、0.1〜100μgが用いられる。
(3)抗体価の測定
免疫した動物の免疫応答レベルを確認し、また、細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選択するため、免疫した動物の血中抗体価、又は抗体産生細胞の培養上清中の抗体価を測定する。
抗体検出の方法としては、公知技術、例えばEIA(エンザイムイムノアッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素連結イムノソルベントアッセイ)等が挙げられる。
(4)細胞融合
抗体産生細胞と融合させるミエローマ(骨髄腫)細胞として、マウス、ラット、ヒトなど種々の動物に由来し、当業者が一般に入手可能な株化細胞を使用する。使用する細胞株としては、薬剤抵抗性を有し、未融合の状態では選択培地(例えばHAT培地)で生存できず、融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが用いられる。一般的に8-アザグアニン耐性株が用いられ、この細胞株は、ヒポキサンチン-グアニン-ホスホリボシルトランスフェラーゼを欠損し、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地に生育できないものである。
ミエローマ細胞は、既に公知の種々の細胞株、例えば、P3 (P3x63Ag8.653)(J.Immunol., 123, 1548-1550, 1979), P3x63Ag8.1 (Current Topics in Micro biology and Immunology, 81, 1-7, 1978), NS-1 (Kohler, G. and Milstein, C., Eur.J.Immunol. 6, 511-519, 1976), MPC-11 (Margulies, D.H. Cell, 8, 405-415, 1976), SP2/0 (Shulman, M. らNature, 276, 269-270, 1978), F0 (de St.Groth, S.F.らJ.Immunol.Methods, 35, 1-21, 1980), S194 (Trowbride, I.S., J.Exp.Med., 148, 313-323, 1978), R210 (GGalfre, G. らNature, 277, 131-133, 1979)等が好適に使用される。
抗体産生細胞は、脾臓細胞、リンパ節細胞などから得られる。すなわち、前記各種動物から脾臓、リンパ節等を摘出又は採取し、これら組織を破砕する。得られる破砕物をPBS、DMEM、RPMI1640等の培地又は緩衝液に懸濁し、ステンレスメッシュ等で濾過後、遠心分離を行うことにより目的とする抗体産生細胞を調製する。
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。
細胞融合は、MEM、DMEM、RPMI1640培地などの動物細胞培養用培地中で、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを、混合比1:1〜1:10で融合促進剤の存在下、30〜37℃で1〜15分間接触させることによって行われる。細胞融合を促進させるためには、平均分子量1,000〜6,000のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール又はセンダイウイルスなどの融合促進剤や融合ウイルスを使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
(5)ハイブリドーマの選択及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、選択培地における細胞の選択的増殖を利用する方法等が挙げられる。すなわち、細胞懸濁液を適切な培地で希釈後、マイクロタイタープレート上にまき、各ウェルに選択培地(HAT培地など)を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
ハイブリドーマのスクリーニングは、限界希釈法、蛍光励起セルソーター法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを取得する。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択は、種々の測定系を組み合わせて行うことが出来る。例えば、Cell-ELISAのごとき抗原認識測定系やFactor Xa活性を指標としたTF中和活性測定系、血漿凝固阻害活性測定系のごとき中和活性測定系を組み合わせて所望の活性を有するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを取得する。このようにして、例えば、ATR-2、ATR-3、ATR-4、ATR-5、ATR-7およびATR-8のごときモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを取得することが出来る。
(6)モノクローナル抗体の採取
取得したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法としては、通常の細胞培養法や腹水形成法等が挙げられる。
細胞培養法においては、ハイブリドーマを10〜20%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地、DMEM培地、又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃,5%CO2 濃度)で2〜14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。
腹水形成法においては、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種の動物の腹腔内にハイブリドーマを投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜4週間後に腹水又は血清を採取する。
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製する。
2.ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニング
(i)mRNAの調製
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖およびL鎖V領域をコードするDNAのクローニングを行うため、回収されたハイブリドーマから公知の方法、例えばグアニジン-超遠心法(Chirgwin, J.M.ら、Biochemistry, (1979), 18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, Pら(1987), 162, 156-159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia Biotech)に添付されたオリゴ(dT)-セルロース スパンカラム等によりmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia Biotech)を用いることにより、全RNAの抽出操作を経ずに、mRNAの調製を行うこともできる。
(ii)cDNAの調製及び増幅
上記(i)で得たmRNAから、逆転写酵素を用いてL鎖及びH鎖のV領域におけるcDNAをそれぞれ合成する。cDNAの合成は、Oligo-dTプライマー又はL鎖C領域若しくはH鎖C領域とハイブリダイズする適当なプライマー(例えばキット添付のcDNA合成プライマー)を用いることが出来る。
cDNA合成反応は、前記mRNAとプライマーとを混合し、逆転写酵素の存在下で例えば52℃で30分の反応を行う。
cDNAの増幅は、L鎖及びH鎖ともに5’-Ampli FINDER RACE kit (CLONTECH社)を用いた5’-RACE 法(Frohman, M.A.らProc.Natl.Acad. USA 85, 8998-9002, 1988, Belyavsky, A.らNucleic Acids Res. 17, 2919-2932, 1989)に基づくPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)にて行うことが出来る。すなわち、上記で合成した2本鎖cDNAの両端にcDNA adapterを連結し、H鎖V領域及びL鎖V領域の断片をコードするDNA(以下、L鎖V領域の断片をコードするDNAを「L鎖V領域のDNA」又は「L鎖V領域をコードするDNA」と略記することもある(H鎖V領域等についても同様))についてPCRを行う。
H鎖V領域のDNAを増幅するためのプライマーとして、例えば5′-側プライマーにはキット添付のAdapter primer 1と3′-側プライマーにはマウス抗体のH鎖定常領域MHC-G1プライマー(配列番号1)(ATR-2、ATR-3、ATR-4およびATR-5)(Cγ1領域)あるいはMHC-G2aプライマー(配列番号2)(ATR-7およびATR-8)(Cγ2a領域)(S.T.Jonesら, Biotechnology, 9, 88, 1991)を用いることが出来る。また、L鎖V領域のDNAを増幅するためのプライマーとして、例えば5′-側プライマーにはキット添付のAdapter primer 1と3′-側プライマーにはマウス抗体のL鎖κ鎖定常領域(Cκ領域)プライマー(例えば配列番号3で表される塩基配列を有するMKCプライマー)を用いることが出来る。
(iii)DNAの精製及び塩基配列の決定
PCR産物について、公知手法に従ってアガロースゲル電気泳動を行い、目的とするDNA断片を切り出した後、DNAの回収及び精製を行い、ベクターDNAに連結する。
DNAの精製は、フェノール及びクロロホルムで抽出するか(J.Sambrook, et al. "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、市販のキット(例えばGENECLEAN II; BIO101)を用いて行われる。DNA断片を保持するためのベクターDNAには公知のもの(例えば pUC19、Bluescript等)を用いることができる。
前記DNAと上記ベクターDNAとを、公知のライゲーションキット(宝酒造製)を用いて連結させ、組換えベクターを得る。次に、得られる組換えベクターを大腸菌JM109コンピテントセル(ニッポンジーン)等に導入した後アンピシリン耐性コロニーを選抜し、公知方法に基づいてベクターDNAを調製する(J.Sambrook, et al. "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。目的とするDNAの塩基配列は、上記ベクターDNAを制限酵素で消化した後、公知方法(例えばジデオキシ法)により決定する(J.Sambrook, et al. "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。本発明では、自動塩基配列決定装置(DNA Sequencer 373A, Perkin-Elmer)を用いることができる。
(iv)相補性決定領域(CDR)
H鎖V領域及びL鎖V領域は、抗原結合部位を形成し、その全般の構造は互いに類似性を有している。すなわち、それぞれ4つのフレームワーク領域(FR)部分が、3つの超可変領域、すなわち相補性決定領域(CDR)により連結されている。FRのアミノ酸配列は比較的よく保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat,E.A.ら、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983)。
前記4個のFRの多くの部分は、β-シート構造をとり、その結果3個のCDRはループを形成する。CDRは、ある場合にはβ-シート構造の一部を形成することもある。従って、3個のCDRはFRによって相互に立体的に非常に近い位置に保持され、そしてFRは対をなす領域の3個のCDRと共に抗原結合部位を形成する。
このような事実に基づき、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作成された抗体のアミノ酸配列のデータベース(「Sequence of Proteins ofImmunological Interest」US Dept. Health and Human Services,1983)にあてはめて、相同性を調べることによりCDR領域を見いだすことが出来る。
CDR領域の配列は、ヒト型化抗体を作製した際にヒトTFに対する結合活性及び中和活性が保持される範囲内であれば、挿入、置換又は欠失による改変体も本発明に含まれる。例えば、配列番号133-138の各CDR又は配列番号139-141,143-144,145-147及び149-150のV領域中の各CDR領域との相同性が90〜100%の配列であるものが挙げられる。好ましくは、相同性が95〜100%の配列であるものが挙げられる。さらに好ましくは、相同性が98〜100%の配列であるものが挙げられる。
3.キメラ抗体の発現ベクターの作製
マウスモノクローナル抗体のマウスL鎖(以下、抗体のL鎖又はH鎖を表す場合は、マウスについては「マウスL鎖」、ヒト抗体のH鎖については「ヒトH鎖」のように略記することもある。)及びH鎖V領域をコードするDNA断片がクローニングされれば、これらのマウスV領域をコードするDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結して発現させることによってキメラ抗ヒトTF抗体が得られる。
キメラ抗体を作製するための基本的な方法は、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞の発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体C領域をコードする配列に連結することを含んでなる。あるいは、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列をヒト抗体C領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結することを含んでなる。
ヒト抗体C領域の断片は、任意のヒト抗体のH鎖C領域及びヒト抗体のL鎖C領域のものとすることができ、例えばヒトH鎖のものについてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4、及びL鎖のものについてはCλ又はCκを各々挙げることができる。
キメラ抗体の製造のためには、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含む発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含む単一の発現ベクター(例えば、WO94/11523参照)を作製する。次に、この発現ベクターにより哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そして形質転換された細胞をイン-ビトロ又はイン-ビボで培養してキメラ抗体を製造する(例えば、WO91/16928参照)。単一の発現ベクターには、IgG1κ型抗体発現ベクターN5KG1(V)及びIgG4κ型抗体発現ベクターN5KG4Pを用いることができる。
(i)キメラ抗体H鎖の構築
キメラ抗体のH鎖発現ベクターは、マウスH鎖V領域をコードするcDNAを、ヒト抗体のH鎖C領域をコードするDNAを含む適当な発現ベクターに導入することにより得ることが出来る。H鎖C領域としては、例えばCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4領域が挙げられる。
ここで、マウスH鎖V領域をコードするcDNAを発現ベクターに挿入するにあたり、PCR法により該cDNAに適当な塩基配列を導入することが出来る。例えば、該cDNAの5’-末端に適当な制限酵素の認識配列を有するように、そして転写効率をよくするため該cDNAの開始コドン直前にKozakコンセンサス配列(Kozak, M.et al., J.Mol.Biol., 196, 947-950, 1987)を有するように設計したPCRプライマー、及び、該cDNAの3’-末端に適当な制限酵素の認識配列を有するように設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことで、これら適当な塩基配列を発現ベクターに導入することができる。
こうして構築したマウスH鎖V領域をコードするcDNAを適当な制限酵素で処理した後、上記発現ベクターに挿入して、H鎖C領域(Cγ1あるいはCγ4)をコードするDNAを含むキメラH鎖発現ベクターを構築する。
(ii)キメラ抗体L鎖κ鎖をコードするcDNAを含む発現ベクターの構築
キメラ抗体のL鎖発現ベクターは、マウスL鎖V領域をコードするcDNAを、ヒト抗体のL鎖C領域をコードするDNAを含む適当な発現ベクターに導入することにより得ることが出来る。L鎖C領域としては、例えばCκ、Cλ領域が挙げられる。
マウスL鎖V領域をコードするcDNAを含む発現ベクターを構築するにあたり、PCR法により、該cDNAに適当な塩基配列を導入することが出来る。例えば、該cDNAの5’-末端に適当な制限酵素の認識配列を有するように、そして転写効率をよくするためのKozakコンセンサス配列を有するように設計したPCRプライマー、及び、3’-末端に適当な制限酵素の認識配列を有するように設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことで、これら適当な塩基配列を該cDNAに導入する。
こうして構築したマウスL鎖V領域をコードするcDNAを適当な制限酵素で処理した後、上記発現ベクターに挿入して、L鎖C領域(Cκ領域)をコードするDNAを含むキメラL鎖発現ベクターを構築する。
4.ヒト型化抗体の作製
(1)ヒト抗体との相同性検索
マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体に移植されているヒト型化抗体を作製するためには、マウスモノクローナル抗体のFRとヒト抗体のFRとの間に高い相同性が存在することが望ましい。従って、マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖のV領域を、Data Bankを用いて構造が解明されているすべての既知抗体のV領域と比較する。また、同時にKabatらにより、抗体のFRの長さ、アミノ酸の相同性等によって分類されたヒト抗体のサブグループ(HSG: Human subgroup)(Kabat,E.A.ら、US Dep. Health and Human Services, US Government Printing Offices, 1991)との比較を行う。
ヒトH鎖V領域の場合は、KabatらによるHSG分類により、HSGI〜IIIに分類することが出来、例えば、マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体ATR-5のH鎖V領域は、HSGIのコンセンサス配列と67.8%のホモロジーを有する。一方、ヒトL鎖κ鎖V領域は、KabatらによるHSG分類により、HSGI〜IVに分類することが出来、例えば、マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体ATR-5のL鎖κ鎖V領域は、HSGIのコンセンサス配列と72.3%のホモロジーを有する。
従来の技術によりマウス抗体をヒト型化する場合には、必要によっては、ヒト型化V領域のCDRの構造をより一層もとのマウス抗体の構造に近づけるために、CDRを支持しているマウス抗体のV領域のFRの一部のアミノ酸配列をヒトV領域のFRに移植する場合がある。しかしながら、マウス抗体のV領域FRのどのアミノ酸をヒト抗体V領域のFRに移植すべきかについては、一定の法則がない。従って、CDRの構造を保持するために必須のアミノ酸を特定することは、多くの努力を必要とする。
また、FRの一部にマウス抗体のV領域からヒトV領域に移植されたアミノ酸配列に対するヒト抗体ができる危険性が存在する。本発明では、ヒト型化した抗体に於いてCDRを除く全てのアミノ酸配列をヒト抗体由来のアミノ酸配列とするために、CDRの立体構造を保持するために必要な四個のFR(FR1〜4)について、一つのFRを単位として、データベース上に存在するマウス抗体のFRと相同性の高いヒト抗体のFRを検索した。以下に、モノクローナル抗体ATR-5のH鎖及びL鎖のV領域の各FRについて、データーベースと相同性検索した結果を示す。
(2)ヒト型化抗体V領域をコードするDNAの設計
ヒト型化抗体V領域をコードするDNAの設計における第一段階は、設計の基礎となるヒト抗体V領域の各FRを選択することである。また、FR shuffleにおいては、それぞれのFRにおいて、バラエティーの高いヒト抗体V領域FRを選択する必要がある。
本発明においては、モノクローナル抗体ATR-5に関しては、H鎖については、マウス抗体H鎖V領域全体と各FRとのホモロジー検索の結果から、FR2については3種類、FR3については10種類のヒト抗体V領域FRを選択した。L鎖については、マウス抗体L鎖V領域全体と各FRとのホモロジー検索の結果から、FR2については3種類、FR3については3種類のヒト抗体V領域FRを選択する事が出来る。
ヒト型化H鎖およびL鎖V領域ともに、第一のバージョン(バージョンa:ver.a)として、マウスモノクローナル抗体ATR-5のH鎖およびL鎖V領域とそれぞれホモロジーの高いヒト抗体H鎖およびL鎖V領域L39130とZ37332を選択する事が出来る。これらのヒト型化抗体を作製するに当たり、FR shuffleを容易に行えるように各CDR内部及びFRの適当な部位に、適当な制限酵素認識部位を設計する事が出来る。こうすることにより、いずれかのFRのみを容易に入れ替えることが可能になる。
例えばヒト型化H鎖CDR1の制限酵素EcoT22I認識部位、CDR2の制限酵素BalI認識部位、CDR3の制限酵素NcoI認識部位およびFR3の制限酵素XhoI認識部位、例えばヒト型化L鎖CDR1の制限酵素AflII認識部位、CDR2の制限酵素SpeI認識部位、CDR3の制限酵素PstI認識部位およびFR3の制限酵素AccIII認識部位である。
このように設計したバージョンaを基にして、それぞれのFRについてFR shuffleを行い、所望の活性を有するヒト型化抗体を作製する事が出来る。
(3)ヒト型化抗体V領域の断片の作製
本発明のヒト型化抗体は、該抗体のC領域、及びV領域のFRがヒト抗体由来のものであり、V領域のCDRがマウス抗体由来のものである。本発明のヒト型化抗体のV領域の断片は、鋳型となるヒト抗体のDNA断片が入手可能ならば、PCR法によるCDR-グラフティングと呼ばれる手法により作製することができる。「CDR-グラフティング」とは、マウス由来のCDRをコードするDNA断片を作製し、これを鋳型となるヒト抗体のCDRと入れ換える手法をいう。
また、鋳型となるヒト抗体のDNA断片が入手できない場合は、データベースに登録されている塩基配列をDNA合成機で合成し、PCR法によりヒト型化抗体V領域を作製することができる。さらに、アミノ酸配列のみデータベースに登録されている場合は、そのアミノ酸配列を基に、 Kabat, E.A.らの報告(US Dep. Health andHuman Services, US Government Printing Offices, 1991)している抗体のコドン使用頻度に基づいて、全塩基配列を類推することができる。この塩基配列をDNA合成機で合成し、PCR法によりヒト型化抗体V領域の断片を作製することができる。
(i)ヒト型化H鎖V領域をコードするDNA及び発現ベクターの構築
本発明では、ヒト型化抗体の鋳型とするヒト抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子をデータベースから入手し、ヒト型化H鎖V領域をコードするDNAの全塩基配列をDNA合成機で合成し、PCR法により構築することが出来る。例えば、マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体ATR-5のH鎖V領域と高い相同性(ホモロジー)を有するL39130をヒト型化H鎖V領域バージョン“a”として作製することが出来る。ヒト型化H鎖V領域バージョン“a”を作製するためには、例えば配列番号22〜26に示す5本のプライマー及び配列番号27、28に示す2本の外部プライマーに分けて使用する。
CDR-グラフティングプライマーhR5Hv1S(配列番号22)、hR5Hv2S(配列番号23)及びhR5Hv4S(配列番号24)はセンスDNA配列を有し、そしてCDRグラフティングプライマーhR5Hv3A(配列番号25)及びhR5Hv5A(配列番号26)はアンチセンスDNA配列を有し、そしてそれぞれプライマーの両端に18-35bpの相補的配列を有する。hR5Hv1SはKozakコンセンサス配列(Kozak, M, ら、J.Mol.Biol. 196, 947-950, 1987)およびSalI認識部位を有するように、またhR5Hv5AはNheI認識部位を有するように設計する。また外部プライマーhR5HvPrS(配列番号27)及びhR5HvPrA(配列番号28)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv1S及びhR5Hv5Aとホモロジーを有する。
PCR法を用いて、5本のプライマーをアセンブリさせ完全長のcDNA合成し、さらに外部プライマーを加えDNAの増幅を行う。PCR法によるアセンブリとは、hR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv4S、hR5Hv3A及びhR5Hv5Aとがその相補的配列によりアニーリングし、完全長のヒト型化H鎖V領域のDNAが合成されることを指す。
ヒト抗体H鎖C領域は任意のヒトH鎖C領域であることができ、例えばヒトH鎖Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を挙げることができる。
前記のようにして構築したヒト型化抗体H鎖V領域のDNAは、任意のヒト抗体H鎖C領域、例えばヒトH鎖C領域Cγ1またはCγ4のDNAと連結することができる。キメラ抗体H鎖の構築で述べたように、適当な制限酵素にて処理した後、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでヒトH鎖C領域をコードするDNAと連結し、ヒト型化H鎖V領域及びヒトH鎖C領域のDNAを含む発現ベクターを作製する。
(ii)ヒト型化L鎖V領域をコードするDNA及び発現ベクターの構築
本発明では、H鎖V領域をコードするDNAの場合と同様、鋳型となるヒト抗体のL鎖V領域の遺伝子をデータベースから入手し、ヒト型化L鎖V領域をコードするDNAの全塩基配列をDNA合成機で合成し、PCR法により構築することが出来る。例えば、マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体ATR-5のL鎖V領域と高い相同性(ホモロジー)を有するZ37332をヒト型化L鎖V領域バージョン“a”として作製することが出来る。
ヒト型化L鎖V領域バージョン“a”を作製するためには、CDR-グラフティングプライマーh5Lv1S(配列番号85)及びh5Lv4S(配列番号86)はセンスDNA配列を、CDRグラフティングプライマーh5Lv2A(配列番号87)、h5Lv3A(配列番号88)及びh5Lv5A(配列番号89)はアンチセンスDNA配列を有し、各プライマーの両端に20bpの相補的配列を有する。プライマーh5Lv1Sは、Kozakコンセンサス配列(Kozak, M, ら、J.Mol.Biol. 196, 947-950, 1987)および制限酵素BglII認識部位を有するように、またh5Lv5Aは制限酵素SplI認識部位を有するように設計する。また、外部プライマーh5LvS(配列番号90)及びh5LvA(配列番号91)はCDRグラフティングプライマーh5Lv1S及びh5Lv5Aとホモロジーを有する。
ヒト型化H鎖V領域と同様に、PCR法を用いて、5本のプライマーをアセンブリさせ完全長のcDNA合成し、さらに外部プライマーを加えDNAの増幅を行うことが出来る。
ヒト抗体L鎖C領域は任意のヒトL鎖C領域であることができ、例えばヒトL鎖CλやCκを挙げることができる。
前記のようにして構築したヒト型化抗体L鎖V領域のDNAは、任意のヒト抗体L鎖C領域、例えばヒトL鎖CκやCλ領域のものと連結することができる。適当な制限酵素で処理した後、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでヒトL鎖κ鎖C領域をコードするDNAと連結し、ヒト型化L鎖V領域及びヒトL鎖κ鎖C領域をコードするDNAを含む発現ベクターを作製する。
前記のようにして、ヒト型化抗体のV領域断片が作製されても、該V領域断片が抗体としての活性(抗原に対する結合活性、中和活性等)を有するか否かは必ずしも明らかではない。そのため、ヒト型化H鎖との組み合わせによりCOS-7のごとき動物細胞で発現させ、活性の有無を検討する必要がある。
(iii)ヒト型化抗体のH鎖及びL鎖V領域のFR shuffle
本発明者は、作製したヒト型化H鎖及びL鎖V領域を含むヒト型化抗体をCOS-7のごとき動物細胞で一過性に発現させ、抗原結合活性及び中和活性について検討した結果、抗原結合活性及び中和活性を有するものの、キメラ抗体と比較して十分でないことがことが判明した。
本発明者は、ヒト型化H鎖及びL鎖V領域の各FRを順次 shuffleすることにより、この問題を解決する事が出来る。FRの shuffleに用いるヒト抗体は、既存のデータベースより選択する事が出来る。選択したヒト抗体のFRは、データベースで明らかになっている塩基配列を基に、DNA合成機により合成することが出来る。この際、前記のように、CDRもしくはFRに設計した制限酵素認識配列を付加することにより、上記で作製したヒト型化抗体のH鎖及びL鎖V領域のFRと、容易に shuffleすることが出来る。このようにして作製したヒト型化抗体の活性を調べることにより、所望する抗原結合活性並びに中和活性を有するヒト型化抗体を得ることが出来る。
例えば、ヒト型化抗体V領域H鎖FR3をヒト抗体Z34963(GenBank, Borretzen M.ら, Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A., 91, 12917-12921, 1994)由来のFR3に shuffleする事が出来る。
FR-シャッフリングプライマーF3RFFS(配列番号35)およびF3RFBS(配列番号36)はセンスDNA配列を有し、F3RFFA(配列番号37)およびF3RFBA(配列番号38)はアンチセンスDNA配列を有する。FR-シャッフリングプライマーF3RFFS、F3RFBS、F3RFFA、F3RFBAはDNA合成機で合成することが出来る。
F3RFFSとF3RFFA、F3RFBSとF3RFBAをアニールさせ、それぞれBalIおよびXhoI、NcoIおよびXhoIで消化した。これらをBalIおよびNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を確認することにより正しい配列を有するプラスミドを得ることが出来る。このようにして得られたヒト型化抗体H鎖を含むプラスミドをhATR5Hvb/CVIDECと命名し、プラスミドhATR5Hvb/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖をバージョン“b”とする。その塩基配列および対応するアミノ酸配列を配列番号39に示し、バージョン“b”のアミノ酸配列を配列番号40に示す。
同様にして、データベースから選択した他のヒト抗体V領域H鎖およびL鎖由来のFRについても、ヒト型化抗体V領域H鎖及びL鎖のFRと shuffleすることが出来る。
ヒト型化抗体のH鎖V領域及びL鎖V領域のFRを shuffleするためのさらに好ましいヒト抗体を選択するためには、以下のようにして行うことが出来る。すなわち、ヒト型化抗体H鎖バージョン“b”とキメラ抗体L鎖の組み合わせでは、キメラ抗体あるいはマウス抗体と同等の中和活性を有する。しかしながら、ヒト型化抗体H鎖バージョン“b”とヒト型化抗体L鎖バージョン“a”との組み合わせでは、キメラ抗体あるいはマウス抗体より中和活性が低下している。
このような場合に、FRをshuffleするため候補とするヒト抗体を選択するためには、例えば、ヒト型化抗体H鎖バージョン“b”のFR3(アクセッションNo.Z34963:配列番号115)に対する相同性検索を行い、この配列と相同性の高いヒト抗体を選択することが出来る。例えば、このようにして選択したヒト抗体H鎖V領域FR3では、U95239(配列番号122)やL03147(配列番号123)が挙げられる。
このようにして作製したヒト型化抗体V領域H鎖のアミノ酸配列を表3及び表4に示し、そしてヒト型化抗体V領域L鎖のアミノ酸配列を表5に示す。
前記のようにして構築したヒト型化抗体H鎖及びL鎖V領域各バージョンは、任意のヒト抗体H鎖C領域およびL鎖C領域、例えばそれぞれヒトH鎖Cγ4およびヒトL鎖Cκ領域のDNAと連結することができる。適当な制限酵素で処理した後、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでヒトH鎖Cγ4およびヒトL鎖Cκ領域をコードするDNAと連結し、ヒト型化H鎖及びL鎖V領域各バージョンをコードするDNAと、それぞれヒトH鎖Cγ4及びヒトL鎖Cκ領域をコードするDNAとを含む発現ベクターを作製する。
また、前記のようにして構築したヒト型化抗体H鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAと、ヒト型化L鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAとを、単一の発現ベクター(例えば、WO94/11523参照)に導入し、そして該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、次にこの形質転換された宿主をイン-ビボ又はイン-ビトロで培養して目的とするヒト型化抗体を生産させることができる。
5.キメラ抗体及びヒト型化抗体の製造
キメラ抗体又はヒト型化抗体を製造するためには、H鎖V領域及びH鎖C領域をコードするDNA、並びにL鎖V領域及びL鎖C領域をコードするDNAを単一ベクターに連結し、適当な宿主細胞を形質転換し、抗体を産生させることができる。すなわち、キメラ抗体の発現には、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとで、クローニングされたcDNAに存在するマウスリーダー配列並びにマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAと、マウスリーダー配列並びにマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAとを単一の発現ベクター(例えば、WO94/11523参照)に導入する。
ヒト型化抗体の発現には、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとで、ヒト型化H鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAと、ヒト型化L鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAとを単一の発現ベクター(例えば、WO94/11523参照)に導入する。そして、これらのベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、次にこの形質転換された宿主をイン-ビボ又はイン-ビトロで培養して目的とするキメラ抗体又はヒト型化抗体を生産させる。
また、H鎖V領域およびL鎖V領域を含むそれぞれ2種類の発現ベクターを作製することが出来る。すなわち、キメラ抗体については、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含む発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含む発現ベクターを作製し、ヒト型化抗体については、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでヒト型化H鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含む発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでヒト型化L鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含む発現ベクターを作製する。
あるいはまた、キメラ抗体については、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとで、マウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNA、並びにマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクターを作製し、ヒト型化抗体については、エンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとで、ヒト型化H鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNA、並びにヒト型化L鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクターを作製する。
次に、これらの発現ベクターにより哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そして形質転換された細胞をイン-ビトロ又はイン-ビボで培養してキメラ抗体又はヒト型化抗体を製造する(例えば、WO91/16928参照)。
以上のようにして目的とするキメラ抗体又はヒト型化抗体をコードする遺伝子で形質転換した形質転換体を培養し、産生したキメラ抗体又はヒト型化抗体は、細胞内又は細胞外から分離し均一にまで精製することができる。
本発明の目的蛋白質であるキメラ抗体又はヒト型化抗体の分離・精製を、プロテインAアガロースカラムを用いて行うことができる。また、その他に、通常の蛋白質で用いられる分離・精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば各種クロマトグラフィー、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組合せれば、キメラ抗体又はヒト型化抗体は分離・精製することができる。
ヒトTFに対する本発明のキメラ抗体又はヒト型化抗体を製造するために、任意の発現系を使用することができる。例えば、真核細胞を用いる場合は動物細胞(例えば樹立された哺乳類細胞系)、真糸状菌細胞又は酵母細胞などが挙げられ、原核細胞を用いる場合は細菌細胞(例えば大腸菌細胞等)などを使用することができる。好ましくは、本発明のキメラ抗体又はヒト型化抗体は哺乳類細胞、例えばCOS細胞又はCHO細胞中で発現される。
これらの場合、哺乳類細胞での発現のために有用な常用のプロモーターを用いることができる。例えば、ヒト・サイトメガロウィルス前期(human cytomegalovirus immediate early; HCMV)プロモーターを使用するのが好ましい。HCMVプロモーターを含有する発現ベクターの例には、HCMV-VH-HCγ1,HCMV-VL-HCK等であって、pSV2neoに由来するもの(WO92-19759)が含まれる。
また、その他に、本発明のために用いることのできる哺乳動物細胞における遺伝子発現のプロモーターとしては、レトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスプロモーターやヒト・ポリペプチド・チェーン・エロンゲーション・ファクター1α(HEF-1α)などの哺乳動物細胞由来のプロモーターを用いればよい。例えばSV40のプロモーターを使用する場合は、Mulliganらの方法(Nature, 277, 108, 1979)、また、HEF-1αプロモーターを使用する場合は、 Mizushima, S.らの方法(Nucleic Acids Research, 18, 5322, 1990)に従えば容易に実施することができる。
複製起原としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、牛パピローマウイルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに宿主細胞系中での遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、ホスホトランスフェラーゼAPH(3′)II又はI(neo)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子等を含むことができる。
6.キメラ抗体及びヒト型化抗体の抗原結合活性及び中和活性の評価
(1)ELISAによる抗体の濃度測定
得られた精製抗体の濃度の測定は、ELISAにより行うことができる。
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製する。ELISA用96穴プレート(例えばMaxisorp, NUNC)の各穴を例えば1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを固相化する。
200μlの希釈バッファー(以下、DBと称する。例えば50mM Tris-HCl、1mM MgCl2 、0.1M NaCl、0.05% Tween20、0.02% NaN3 、1%牛血清アルブミン(BSA)、pH7.2)でブロッキングの後、キメラ抗体、若しくはヒト型化抗体を発現させたCOS-7細胞若しくはCHO細胞の培養上清、又は精製キメラ抗体、若しくはヒト型化抗体を段階希釈して各穴に加える。次にアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体100μlを加え、1mg/mlの基質溶液(Sigma104、p-ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を加え、次に405/655nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Bio Rad)で測定する。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いることができる。
(2)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートでは、次のようにして調製する。ヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB-1)を、細胞培養用96穴プレートの60穴に1×106 個の細胞数で播き込む。これをCO2 インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させる。培養液を捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄する。4%のパラホルムアルデヒドを含むPBS(以下、PFA/PBSと称す)を各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化する。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングする。キメラ抗体またはヒト型化抗体を含む培養上清、あるいは精製したキメラ抗体またはヒト型化抗体をDBにて段階希釈して100μlを各穴に加え、室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加える。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を加え、次に405/655nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Bio-Rad)で測定する。
(3)中和活性の測定
マウス抗体、キメラ抗体およびヒト型化抗体の中和活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)によるファクターXa産生阻害活性を指標に測定する事が出来る。すなわち、1.25mg/mlのThromborel S 10μlと適当な濃度に希釈した抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2 、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させる。
これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)および82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で1時間反応させる。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させ、発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader (Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定する。室温で1時間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定する。抗体無添加の1時間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出することにより、中和活性を測定する。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S-2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、精製水で2倍希釈した後、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製する。
7.ヒト型化抗体と可溶性TFとの相互作用による反応速度論的解析
BIACOREによって本発明の抗TF抗体のkinetics parameter、すなわち解離定数(KD)、解離速度定数(kdiss)及び結合速度定数(kass)を測定することができる。
組換型ProteinGをセンサーチップに固相化し、これに抗体を結合させ、抗原として精製した組換型TF(1-219にFLAGペプチドタグを付した可溶型TF)(以下、可溶型TFと称す)を用い、種々の濃度に調製した可溶型TFをアナライトとする。得られたセンサーグラムから、カイネティクスパラメーター(解離速度定数kdiss及び結合速度定数kass)を算出することによって解離定数を求めることができる。速度論的解析に関しては、「Kinetic analysis of monoclonal antibody-antigen interactions witha new biosensor based analytical system 」(karlsson, R. et al.(1991)J. Immunol. Methods 145, 229-240.)などを参考にすることができる。
本発明の抗TF抗体は、解離定数(KD)が小さい値であるほど中和活性を有する点で好ましい。本発明の抗TF抗体において、KD値は2.30×10-8[1/M]以下であることが好ましく、2.30×10-9[1/M]以下であることがより好ましく、1.17×10-9[1/M]以下のものが最も好ましい。
また、KD値は解離速度定数(kdiss)及び結合速度定数(kass)の2つのパラメーターから決定される(KD=kdiss/kass)。したがって、kdissの値が小さく、kassの値が大きければ、KD値が小さくなることは明らかである。
具体的には、本発明の抗TF抗体の場合、kdissの値が9.52×10-3[1/sec]以下であればよい。好ましくは、kdissの値が9.52×10-4[1/sec]以下であり、最も好ましくは6.35×10-4[1/sec]以下である。
一方、kassの値は4.15×104 [1/M・sec]以上であればよい。好ましくは、kassの値が4.15×105 [1/M・sec]以上であり、最も好ましくは4.65×105 [1/M・sec]以上である。
さらに、kdissの値が9.52×10-3[1/sec]以下であり、かつ、kassの値が4.15×104 [1/M・sec]以上の抗TF抗体も好ましい。
さらに具体的には、本発明の抗TF抗体は、KD値が1.09×10-10 〜2.30×10-8[1/M]の範囲であり、1.09×10-9〜2.30×10-9[1/M]のものが好ましく、1.09×10-9〜1.39×10-9[1/M]のものが最も好ましい。
また、kdiss値が5.06×10-4〜9.52×10-3[1/sec]の範囲であり、5.06×10-4〜9.52×10-4[1/sec]のものが好ましく、5.06×10-4〜6.49×10-4[1/sec]のものが最も好ましい。
そしてkass値は、4.15×104 〜5.44×105 [1/M・sec]の範囲であり、4.15×105 〜5.44×105 [1/M・sec]のものが好ましく、4.65×105 〜5.44×105 [1/M・sec]のものが最も好ましい。
これらのKD値、kdiss値及びkass値は、BIACORE以外にもスキャッチャード解析、あるいはBIACOREなどの表面プラズモン共鳴センサー等により得ることができるが、BIACOREを用いて得ることが好ましい。
8.ヒト型化抗体のヒトTFへの反応性の測定
ドットブロットハイブリダイゼーション法によって、本発明のヒト型化抗体の非変性TF、非還元下変性TF、還元下変性TFへの反応性を検討することができる。
TFはヒト組織より精製したもの、もしくはCHO細胞の哺乳動物細胞で発現させ精製したもの等を用い、検討できる。また、変性剤には尿素の代わりにグアニジン塩酸塩やSDS等を用いることができ、還元剤にはDTTの代わりに2-メルカプトエタノールなどのSH還元試薬を用いることもできる。ヒト型化抗体の検出には様々な物質で標識された抗ヒトIgG抗体を用いることができる。ここでいう標識物質は例えば、放射性物質、ビオチン、FITC等の蛍光物質、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素などである。本発明の抗TF抗体は、非変性TF、非還元下変性TFならびに還元下変性TFのいずれにも反応する。
9.ヒト型化抗体を有効成分として含む医薬組成物及びDIC治療剤
ヒトTFに対するヒト型化抗体の治療効果を確認するには、ヒト型化抗ヒトTF抗体を高DIC症状を呈した動物に投与し、DICの指標を測定することによりその治療効果を確認することができる。
本発明で使用される抗体は、ヒトTFに対するヒト型化された抗体である。この抗体は、ヒトTFに結合することにより、ヒトTFの活性を中和する抗体であり、特に、好ましくはヒト型化されたATR5抗体が挙げられる。ヒト型化ATR5抗体の作製方法は、実施例に記載されている。
本発明で使用される抗体は、塩析法、HPLC等を用いたゲル濾過法、プロテインAカラム等を用いたアフィニティークロマトグラフィー法等の通常の精製手段を組み合わせて高純度に精製することができる。このように精製された抗体は、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA、ELISA)、あるいは蛍光抗体法(Immunofluorescence Analysis)等の通常の免疫学的手段により、高精度にヒトTFを認識することを確認できる。
本発明のTFに対するヒト型化抗体を有効成分として含む医薬組成物及びDIC治療剤は、非経口的に全身又は局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.01mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり10mg/body、好ましくは1〜1000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。
本発明のTFに対するヒト型化抗体を有効成分として含む医薬組成物及びDIC治療剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択されるが、これらに限定されるものではない。
本発明により、ヒトTFに対するキメラ抗体およびヒト型化抗体ならびにヒト型化抗体の作製方法が提供される。これらの抗体は、ヒトにおける抗原性が低いことから、治療薬として有用である。
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1. ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニ
ング
(1)mRNAの調製
ハイブリドーマATR-2、ATR-3、ATR-4、ATR-5(IgG1κ)、ATR-7、及びATR-8(IgG2aκ)からmRNAをQuick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia Biotech)を用いて調製した。キット添付の処方に従い、それぞれのハイブリドーマ細胞を抽出緩衝液で完全にホモジナイズし、オリゴ(dT)-セルローススパンカラムにてmRNAを精製し、エタノール沈殿を行った。mRNA沈殿物を溶出緩衝液に溶解した。
(2)マウス抗体V領域をコードする遺伝子のcDNAの作製及び増幅
(i)H鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子のクローニングは、5′-RACE 法(Frohman, M.A.et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 85, 8998-9002, 1988; Belyavsky, A. et al.,Nucleic Acid Res. 17, 2919-2932, 1989)により行った。5′-RACE法にはMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用い、操作はキット添付の処方に従って行った。
前記のようにして調製したmRNA約1μgを鋳型として、キット添付の cDNA synthesis primerを加え、逆転写酵素と42℃、60分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。これをDNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、RNaseHで16℃、1.5時間、T4 DNAポリメラーゼで16℃、45分間反応させることにより、2本鎖cDNAを合成した。2本鎖cDNAをフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿により回収した。
T4 DNAリガーゼで16℃で一夜反応することにより、2本鎖cDNAの両端にcDNA アダプターを連結した。反応混合液は10mM Tricine-KOH(pH8.5)、0.1mM EDTA溶液で50倍に希釈した。これを鋳型としてPCRによりH鎖V領域をコードする遺伝子を増幅させた。5′-側プライマーにはキット添付のアダプタープライマー1を、3′-側プライマーにはMHC-G1プライマー(配列番号1)(ATR-2、ATR-3、ATR-4及びATR-5)あるいはMHC-G2aプライマー(配列番号2)(ATR-7及びATR-8)(S.T.Jones, et al., Biotechnology, 9, 88-89, 1991)を使用した。
ATR-2、3、4及び5抗体H鎖V領域に対するPCR溶液は、100μl中に120mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM (NH42 SO4 、0.1% Triton X-100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2 、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、30〜50pmoleのアダプタープライマー1並びにMHC-G1プライマー、及びcDNAアダプターを連結したcDNAの反応混合物1〜5μlを含有する。
PCRはいずれもDNA Thermal Cycler 480 (Perkin-Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
(ii)L鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子のクローニングは、5′-RACE 法(Frohman, M.A.etal., Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 85, 8998-9002, 1988; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acid Res. 17, 2919-2932, 1989)により行った。5′-RACE法にはMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用い、操作はキット添付の処方に従って行った。前記のようにして調製したmRNA約1μgを鋳型としてcDNA合成プライマーを加え、逆転写酵素と42℃、60分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。
これをDNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、RNaseHで16℃、1.5時間、T4 DNAポリメラーゼで16℃、45分間反応させることにより、2本鎖cDNAを合成した。2本鎖cDNAをフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿により回収した。T4 DNAリガーゼで16℃で一夜反応することにより、2本鎖cDNAの両端にcDNA アダプターを連結した。反応混合液は10mM Tricine-KOH(pH8.5)、0.1mMEDTA溶液で50倍に希釈した。これを鋳型としてPCRによりL鎖V領域をコードする遺伝子を増幅させた。5′-側プライマーにはアダプタープライマー1を、3′-側プライマーにはMKCプライマー(配列番号3)(S.T.Jones, et al., Biotechnology, 9, 88-89, 1991)を使用した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM (NH42 SO4 、0.1% Triton X-100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2 、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、30〜50pmoleのアダプタープライマー1並びにMKCプライマー、及びcDNA アダプターを連結したcDNAの反応混合物1μlを含有する。
PCRはDNA Thermal Cycler 480 (Perkin-Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
(3)PCR生成物の精製及び断片化
前記のPCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素XmaI(New England Biolabs)により37℃で1時間消化した。XmaI消化混合物を2%から3%のNuSieve GTG アガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、H鎖V領域として約500bp長、L鎖V領域として約500bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA溶液(以下、TEと称す)10μlに溶解した。
上記のようにして調製したマウスH鎖V領域及びL鎖V領域をコードする遺伝子を含むXmaI消化DNA断片と、XmaIで消化することにより調製したpUC19プラスミドベクターとをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。
次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook, et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)(以下、LBA寒天培地と称す)上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体を50μg/ml アンピシリンを含有するLB培地(以下、LBA培地と称す)3mlあるいは4mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製し、塩基配列の決定を行った。
(4)マウス抗体V領域をコードする遺伝子の塩基配列決定
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)(配列番号4)及びM13 Primer RV(宝酒造)(配列番号5)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
こうして得られたハイブリドーマATR-2、ATR-3、ATR-4、ATR-5、ATR-7及びATR-8に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれATR-xHv/pUC19(x=2、3、4、5、7又は8)と命名し、そしてL鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれATR-xLv/pUC19(x=2、3、4、5、7又は8)と命名した。プラスミドATR-xHv/pUC19(x=2、3、4、5、7又は8)に含まれる各マウス抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号6から11に、プラスミドATR-xLv/pUC19(x=2、3、4、5、7又は8)に含まれる各マウス抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号12から17に示す。
実施例2. キメラ抗体の構築
マウスATR-5抗体V領域をヒト抗体C領域に連結したキメラATR-5抗体を作製した。ATR-5抗体V領域をコードする遺伝子をヒト抗体C領域をコードする発現ベクターに連結することにより、キメラ抗体発現ベクターを構築した。
(1)キメラ抗体H鎖V領域の構築
ヒト抗体H鎖C領域をコードする発現ベクターに連結するために、ATR-5抗体H鎖V領域をPCR法により修飾した。5′-側プライマーch5HS(配列番号18)はV領域をコードするDNAの5′-末端にハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak, M.et al., J.Mol.Biol., 196, 947-950, 1987)及び制限酵素SalIの認識配列を有するように設計した。3′-側プライマーch5HA(配列番号19)はJ領域をコードするDNAの3′-末端にハイブリダイズし、且つ制限酵素NheIの認識配列を有するように設計した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM (NH42 SO4 、0.1% Triton X-100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2 、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、50pmoleのch5HSプライマー並びにch5HAプライマー、及び鋳型DNAとして1μlのプラスミドATR5Hv/pUC19を含有する。PCRはDNA Thermal Cycler 480 (Perkin-Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
PCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
クローニングベクターには制限酵素NheI、SalI及びSplI、BglIIの認識配列を導入した改変pUC19ベクター(以下、CVIDECと称す)を用いた。上記のようにして調製したマウスH鎖V領域をコードする遺伝子断片とNheI及びSalIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このATR-5抗体H鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′-側にSalI認識配列及びKozakコンセンサス配列、3′-側にNheI認識配列を持つプラスミドをchATR5Hv/CVIDECと命名した。
(2)キメラ抗体L鎖V領域の構築
ヒト抗体L鎖C領域をコードする発現ベクターに連結するために、ATR-5抗体L鎖V領域をPCR法により修飾した。5′-側プライマーch5LS(配列番号20)はV領域をコードするDNAの5′-末端にハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak, M.et al., J.Mol.Biol., 196, 947-950, 1987)及び制限酵素BglIIの認識配列を有するように設計した。3′-側プライマーch5LA(配列番号21)はJ領域をコードするDNAの3′-末端にハイブリダイズし、且つ制限酵素SplIの認識配列を有するように設計した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM (NH42 SO4 、0.1% Triton X-100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2 、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、50pmoleのch5LSプライマー並びにch5LAプライマー、及び鋳型DNAとして1μlのプラスミドATR5Lv/pUC19を含有する。PCRはDNA Thermal Cycler 480 (Perkin-Elmer)を用い、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
PCR反応混合液をフェノール及びクロロホルムで抽出し、増幅したDNA断片をエタノール沈殿により回収した。DNA断片を制限酵素SplI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素BglII(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、20μlのTEに溶解した。
上記のようにして調製したマウスL鎖V領域をコードする遺伝子断片とSplI及びBglIIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このATR-5抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′-側にBglII認識配列及びKozakコンセンサス配列、3′-側にSplI認識配列を持つプラスミドをchATR5Lv/CVIDECと命名した。
(3)キメラ抗体発現ベクターの構築
IDEC社より導入した抗体発現ベクターを用いてキメラ抗体発現ベクターを構築した。ベクターにはIgG1型抗体発現ベクターN5KG1(V)及びIgG4型抗体発現ベクターN5KG4Pを用いた。発現ベクターN5KG1(V)あるいはN5KG4Pのヒト抗体H鎖C領域の直前にあるSalI-NheI部位にATR-5のH鎖V領域をコードする遺伝子を、ヒト抗体L鎖C領域の直前にあるBglII-SplI部位にATR-5のL鎖V領域をコードする遺伝子を連結することによって、キメラATR-5抗体発現ベクターを作製した。
(i)H鎖V領域の導入
プラスミドchATR5Hv/CVIDECを制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で3時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で3時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
発現ベクターN5KG1(V)及びN5KG4Pを制限酵素NheI(宝酒造)により37℃で3時間消化し、次いで制限酵素SalI(宝酒造)により37℃で3時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約9000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE60μlに溶解した。
上記のようにして調製したH鎖V領域をコードする遺伝子を含むSalI-NheI DNA断片とSalI及びNheIで消化したN5KG1(V)あるいはN5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラATR-5抗体H鎖をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれchATR5Hv/N5KG1(V)、及びchATR5Hv/N5KG4Pと命名した。
(ii)L鎖V領域の導入
プラスミドchATR5Lv/CVIDECを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で1.5時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、20μlのTEに溶解した。
プラスミドchATR5Hv/N5KG1(V)及びchATR5Hv/N5KG4Pを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で1.5時間消化した。この消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約9400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE20μlに溶解した。
上記のようにして調製したL鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI-BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化したchATR5Hv/N5KG1(V)あるいはchATR5Hv/N5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体を50μg/ml アンピシリンを含有する2×YT培地1lで37℃にて一夜培養し、菌体画分からPlasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラATR-5抗体をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれchATR5/N5KG1(V)、chATR5/N5KG4Pと命名した。
(4)COS-7細胞へのトランスフェクション
キメラ抗体の抗原結合活性及び中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS-7細胞にトランスフェクションし、キメラ抗体を一過性に発現させた。
プラスミドchATR5/N5KG1(V)あるいはchATR5/N5KG4PをGene Pulser装置(Bio Rad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS-7細胞に形質導入した。ダルベッコPBS(-)(以下、PBSと称す)中に1x107 細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS-7細胞0.78mlに、プラスミド50μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を5%の Ultra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿を用いてCO2 インキュベーターにて培養した。24時間の培養の後、培養上清を吸引除去し、新たに無血清培地HBCHO(アーバインサイエンティフィック)を加えた。さらに72時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去した。
(5)抗体の精製
COS-7細胞の培養上清からキメラ抗体を、rProtein A Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech)を用いて以下のように精製した。
1mlのrProtein A Sepharose Fast Flowをカラムに充填し、10倍量のTBSを流すことによってカラムを平衡化した。平衡化したカラムにCOS-7細胞の培養上清をアプライした後、10倍量のTBSによってカラムを洗浄した。
次に、13.5mlの2.5mM HCl(pH3.0)を流すことによって吸着した抗体画分をカラムより溶出し、直ちに1.5mlの1M Tris-HCl(pH8.0)を加えることによって溶出液を中和した。
精製された抗体画分について、セントリプレップ100(Amicon)を用いた限外濾過を2回行うことにより、150mM NaClを含む50mM Tris-HCl(pH7.6)(以下、TBSと称す)に溶媒を置換し、最終的に約1.5mlまで濃縮した。
(6)CHO安定産生細胞株の樹立
キメラ抗体の安定産生細胞株を樹立するため、CHO-S-SFMII無血清培地(GIBCO) に馴化したCHO細胞(DG44)に前記発現プラスミドを導入した。
プラスミドchATR5/N5KG1(V)あるいはchATR5/N5KG4Pを制限酵素SspI(宝酒造)で切断して直鎖状DNAにし、フェノール及びクロロホルムで抽出の後、エタノール沈殿でDNAを回収した。直鎖状にしたプラスミドをGene Pulser装置(Bio Rad)を用いてエレクトロポレーションによりDG44細胞に形質導入した。PBS中に1x107 細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているDG44細胞0.78mlに、プラスミド10μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞をヒポキサンチン・チミジン(GIBCO)を含有するCHO-S-SFMII培地(GIBCO)に懸濁し、2枚の96穴プレート(Falcon)を用いてCO2 インキュベーターにて培養した。培養開始翌日に、ヒポキサンチン・チミジン(GIBCO)及び500μg/ml GENETICIN (G418Sulfate、GIBCO)を含有するCHO-S-SFMII培地(GIBCO)の選択培地に交換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。選択培地交換後、2週間前後に顕微鏡下で細胞を観察し、順調な細胞増殖が認められた後に、後述の抗体濃度測定ELISAにて抗体産生量を測定し、抗体産生量の多い細胞を選別した。
実施例3. ヒト型化抗体の構築
(1)ヒト型化抗体H鎖の構築
(i)ヒト型化H鎖バージョン“a”の構築
ヒト型化ATR-5抗体H鎖を、PCR法によるCDR-グラフティングにより作製した。ヒト抗体L39130(DDBJ, Gao L.ら、未発表、1995)由来のFRを有するヒト型化ATR-5抗体H鎖バージョン“a”の作製のために7個のPCRプライマーを使用した。CDR-グラフティングプライマーhR5Hv1S(配列番号22)、hR5Hv2S(配列番号23)及びhR5Hv4S(配列番号24)はセンスDNA配列を有し、そしてCDRグラフティングプライマーhR5Hv3A(配列番号25)及びhR5Hv5A(配列番号26)はアンチセンスDNA配列を有し、そしてそれぞれプライマーの両端に18-35bpの相補的配列を有する。
hR5Hv1SはKozakコンセンサス配列(Kozak,M,ら、J.Mol.Biol.196,947-950,1987)及びSalI認識部位を有するように、またhR5Hv5AはNheI認識部位を有するように設計した。また外部プライマーhR5HvPrS(配列番号27)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv1Sと、hR5HvPrA(配列番号28)はCDRグラフティングプライマーhR5Hv5Aとホモロジーを有する。
CDR-グラフティングプライマーhR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv3A、hR5Hv4S及びhR5Hv5A、ならびに外部プライマーhR5HvPrS及びhR5HvPrAはPharmacia Biotechにより合成及び精製された。
PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、98μl中に120mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM (NH42 SO4 、0.1% Triton X-100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2 、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、CDR-グラフティングプライマーhR5Hv1S、hR5Hv2S、hR5Hv3A、hR5Hv4S及びhR5Hv5Aをそれぞれ5pmoleを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーhR5HvPrS及びhR5HvPrAを加え、100μlの系で同じ温度サイクルを25回行った。PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
約430bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水17μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をNheI及びSalIで消化し、NheI及びSalIで消化することにより調製したプラスミドベクターCVIDECに、DNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い添付の処方に従って反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
EcoT22I認識部位の前もしくは後に変異、欠失が認められたため、それぞれ正しい配列を有する断片を連結して再度CVIDECにサブクローニングし、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hva/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hva/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“a”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号29に示す。また、バージョン“a”のアミノ酸配列を配列番号30に示す。
(ii)ヒト型化H鎖バージョン“b”及び“c”の構築
バージョン“b”及び“c”をFR-シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“b”ではFR3をヒト抗体Z34963 (DDBJ、Borretzen M.ら, Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A., 91, 12917-12921, 1994)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR-シャッフリングプライマーF3RFFS(配列番号31)及びF3RFBS(配列番号32)はセンスDNA配列を有し、F3RFFA(配列番号33)及びF3RFBA(配列番号34)はアンチセンスDNA配列を有する。
F3RFFSとF3RFFAは互いに相補的な配列を有し、両端にBalI及びXhoIの認識配列を有する。バージョン”c”ではFR3をヒト抗体P01825(SWISS-PROT、Poljak RJ.ら, Biochemistry, 16, 3412-3420, 1977)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR-シャッフリングベクターF3NMFS(配列番号35)及びF3NMBS(配列番号36)はセンスDNA配列を有し、F3NMFA(配列番号37)及びF3NMBA(配列番号38)はアンチセンスDNA配列を有する。F3RFBSとF3RFBAは互いに相補的な配列を有し、両端にXhoI及びNcoIの認識配列を有する。
F3RFFS、F3RFBS、F3RFFA、F3RFBA、F3NMFS、F3NMBS、F3NMFA及びF3NMBAはPharmacia Biotechにより合成された。F3RFFSとF3RFFA、F3RFBSとF3RFBAをアニールさせ、それぞれBalI及びXhoI、NcoI及びXhoIで消化した。これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号39に示す。また、バージョン“b”のアミノ酸配列を配列番号40に示す。
F3NMFSとF3NMFA、F3NMBSとF3NMBAをアニールさせ、それぞれBalI及びXhoI、NcoI及びXhoIで消化した。これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvc/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvc/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“c”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号41に示す。また、バージョン“c”のアミノ酸配列を配列番号42に示す。
(iii)ヒト型化H鎖バージョン“d”及び“e”の構築
バージョン“d”及び“e”をFR-シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン”d”ではFR3をヒト抗体M62723 (DDBJ、Pascual V.ら, J.Clin.Invest., 86, 1320-1328, 1990)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを4個作製した。FR-シャッフリングプライマーF3EPS(配列番号43)はセンスDNA配列を有し、F3EPA(配列番号44)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。
また外部プライマーF3PrS(配列番号45)及びF3PrA(配列番号46)はFR-シャッフリングプライマーF3EPS及びF3EPAとホモロジーを有し、他のFR3のシャッフリングにも用いることができる。バージョン“e”ではFR3をヒト抗体Z80844(DDBJ、Thomsett AR.ら,unpublished)由来のものに置換するため、FR3をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR-シャッフリングプライマーF3VHS(配列番号47)はセンスDNA配列を有し、F3VHA(配列番号48)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。F3EPS、F3EPA、F3PrS、F3PrA、F3VHS及びF3VHAは Pharmacia Biotechにより合成された。
PCRは、KOD DNA Polymerase(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR-シャッフリングプライマーF3EPSとF3EPA、又はF3VHSとF3VHAをそれぞれ5μl、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2 、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio. Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvd/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号49に、バージョン“d”のアミノ酸配列を配列番号50に示す。また、プラスミドhATR5Hve/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“e”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号51に、バージョン“e”のアミノ酸配列を配列番号52に示す。
(iv)ヒト型化H鎖バージョン“f”及び“g”の構築
バージョン“f”及び“g”はFR-シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“f”はヒト抗体L04345 (DDBJ、Hillson JL. ら, J.Exp.Med., 178, 331-336, 1993)由来のFR3に、バージョン“g”はS78322 (DDBJ、Bejcek BE.ら, Cancer Res., 55, 2346-2351, 1995)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“f”のFR-シャッフリングプライマーF3SSS(配列番号53)はセンスDNA配列を有し、F3SSA(配列番号54)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。
バージョン“g”のFR-シャッフリングプライマーF3CDS(配列番号55)はセンスDNA配列を有し、F3CDA(配列番号56)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。F3SSS、F3SSA、F3CDS及びF3CDAは Pharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR-シャッフリングプライマーF3SSS及びF3SSAもしくはF3CDS及びF3CDAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio. Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvf/CVIDEC及びhATR5Hvg/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvf/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“f”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“f”アミノ酸配列を配列番号57及び58に示す。また、プラスミドhATR5Hvg/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“g”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“g”のアミノ酸配列を配列番号59、60に示す。
(v)ヒト型化H鎖バージョン“h”の構築
バージョン“h”はFR-シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“h”はヒト抗体Z26827 (DDBJ、Van Der Stoep ら, J.Exp.Med., 177, 99-107, 1993)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“h”のFR-シャッフリングプライマーF3ADS(配列番号61)はセンスDNA配列を有し、F3ADA(配列番号62)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。
F3ADS及びF3ADAは Pharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR-シャッフリングプライマーF3ADS及びF3ADAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.0mMのMgCl2 、2.5UのKOD DNAポリメラーゼを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvh/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvh/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“h”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号63に示す。また、バージョン“h”のアミノ酸配列を配列番号64に示す。
(vi)ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”の構築
バージョン“i”及び“j”はFR-シャッフリング法によってバージョン“a”のFR3を別のヒト抗体由来のFR3に置換し作製した。バージョン“i”はヒト抗体U95239(DDBJ、Manheimer-Lory AJ., unpublished)由来のFR3に、バージョン“j”はL03147(DDBJ、Collet TA.ら, Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A., 89, 10026-10030, 1992)由来のFR3に置換するためFR3をコードするプライマーを2個ずつ合成した。バージョン“i”のFR-シャッフリングプライマーF3MMS(配列番号65)はセンスDNA配列を有し、F3MMA(配列番号66)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。
バージョン“j”のFR-シャッフリングプライマーF3BMS(配列番号67)はセンスDNA配列を有し、F3BMA(配列番号68)はアンチセンスDNA配列を有し、プライマーの3′-末端は18bpの相補的配列を有する。F3MMS、F3MMA、F3BMS及びF3BMAは Pharmacia Biotechにより合成及び精製された。PCRは、Ampli Taq Gold (Perkin-Elmer)を用い、100μlの反応混合液に1μMのFR-シャッフリングプライマーF3MMSとF3MMA、又はF3BMSとF3BMAをそれぞれ5μlずつ、0.2mMのdNTPs、1.5mMのMgCl2 、2.5UのAmpli Taq Goldを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて30秒間、50℃にて1分間、74℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに100pmoleの外部プライマーF3PrS及びF3PrAを加え、同じ温度サイクルを25回行った。
PCR法により増幅したDNA断片を2%のNu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。424bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、3倍量(ml/g)のTEを添加し、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出によりDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、その3分の1量を水14μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBalI及びNcoIで消化し、これらをBalI及びNcoIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hva/CVIDEC(BalI/NcoI)に導入し、塩基配列を決定した。
正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvi/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“i”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“i”アミノ酸配列を配列番号69及び70に示す。また、プラスミドhATR5Hvj/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“j”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“j”のアミノ酸配列を配列番号71及び72に示す。
(vii)ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”の構築
バージョン“b1”及び“d1”はFR-シャッフリング法によってバージョン“b”及び“d”のFR2を別のヒト抗体由来のFR2に置換し作製した。ヒト抗体P01742 (SWISS-PROT、Cunningham BA.ら, Biochemistry, 9, 3161-3170, 1970)由来のものに置換するため、FR2をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR-シャッフリングベクターF2MPS(配列番号73)はセンスDNA配列を有し、F2MPA(配列番号74)はアンチセンスDNA配列を有する。また、互いに相補的な配列を有し、両端にはEcoT22I及びBalIの認識配列を有する。
F2MPS、F2MPAは Pharmacia Biotechにより合成及び精製された。F2MPSとF2MPAをアニールさせ、EcoT22I及びBalIで消化した。これをEcoT22I及びBalIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC(EcoT22I/BalI)及びhATR5Hvd/CVIDEC(EcoT22I/BalI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb1/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b1”アミノ酸配列を配列番号75及び76に示す。また、プラスミドhATR5Hvd1/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“d1”のアミノ酸配列を配列番号77及び78に示す。
(viii)ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”の構築
バージョン“b3”及び“d3”はFR-シャッフリング法によってバージョン“b”及び“d”のFR2を別のヒト抗体由来のFR2に置換し作製した。ヒト抗体Z80844 (DDBJ、Thomsett AR.ら,unpublished)由来のFR2に置換するため、FR2をコードするDNAプライマーを2個作製した。FR-シャッフリングベクターF2VHS(配列番号79)はセンスDNA配列を有し、F2VHA(配列番号80)はアンチセンスDNA配列を有する。また、互いに相補的な配列を有し、両端にはEcoT22I及びBalIの認識配列を有する。F2VHS、F2VHAは Pharmacia Biotechに合成、精製を委託した。
F2VHSとF2VHAをアニールさせ、EcoT22I及びBalIで消化した。これをEcoT22I及びBalIで消化することにより調製したプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC(EcoT22I/BalI)及びhATR5Hvd/CVIDEC(EcoT22I/BalI)に導入し、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhATR5Hvb3/CVIDEC及びhATR5Hvd3/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Hvb3/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“b3”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b3”アミノ酸配列を配列番号81及び82に示す。また、プラスミドhATR5Hvd3/CVIDECに含まれるヒト型化H鎖バージョン“d3”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“d3”のアミノ酸配列を配列番号83及び84に示す。
(2)ヒト型化抗体L鎖V領域の構築
(i)バージョン”a”
ヒト型化ATR5抗体L鎖を、PCR法によるCDR-グラフティングにより作製した。ヒト抗体Z37332 (DDBJ、Welschof Mら, J.Immunol.Methods, 179, 203-214, 1995)由来のフレームワーク領域を有するヒト型化抗体L鎖(バージョン”a”)の作製のために7本のPCRプライマーを使用した。
CDR-グラフティングプライマーh5Lv1S(配列番号85)及びh5Lv4S(配列番号86)はセンスDNA配列を、CDRグラフティングプライマーh5Lv2A(配列番号87)、h5Lv3A(配列番号88)及びh5Lv5A(配列番号89)はアンチセンスDNA配列を有し、各プライマーの両端に20bpの相補的配列を有する。外部プライマーh5LvS(配列番号90)及びh5LvA(配列番号91)はCDRグラフティングプライマーh5Lv1S及びh5Lv5Aとホモロジーを有する。CDR-グラフティングプライマーh5Lv1S、h5Lv4S、h5Lv2A、h5Lv3A、h5Lv5A、h5LvS及びh5LvAは Pharmacia Biotechに合成、精製を委託した。
PCR溶液は、100μl中に120mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM KCl、6mM (NH42 SO4 、0.1% Triton X-100、0.001% BSA、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1mM MgCl2 、2.5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、5pmoleのCDRグラフティングプライマーh5Lv1S、h5Lv2A、h5Lv3A、h5Lv4S、及びh5Lv5Aを含有する。
PCRはDNA Thermal Cycler 480 (Perkin-Elmer) を用い、94℃にて30秒間、50℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを5回行うことにより、5本のCDRグラフティングプライマーをアセンブルした。この反応混合液に100pmoleの外部プライマーh5LvS及びh5LvAを加え、94℃にて30秒間、52℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを30回行うことにより、アセンブルしたDNA断片を増幅した。
PCR反応混合液を3% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts) を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノール沈殿により回収した。回収したDNA断片を制限酵素SplI(宝酒造)及びBglII(宝酒造)により37℃で4時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TE10μlに溶解した。上記のようにして調製したヒト型化抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI-BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化することにより調製したCVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。このヒト型化抗体L鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5′-側にBglII認識配列及びKozak配列、3′-側にSplI認識配列を持つプラスミドをhATR5Lva/CVIDECと命名した。ヒト型化L鎖バージョン”a”の塩基配列(対応するアミノ酸を含む)を配列番号92に示す。また、バージョン“a”のアミノ酸配列を配列番号93に示す。
(ii)バージョン“b”及び“c”
バージョン“b”及び“c”を、バージョン“a”のFR3を置換(FR-シャッフリング)することにより作製した。バージョン“b”にはヒト抗体S68699 (DDBJ、Hougs L ら,Exp.Clin.Immunogen et., 10, 141-151, 1993)由来のFR3を、バージョン“c”にはヒト抗体P01607 (SWISS-PROT、Epp O ら,Biochemistry, 14, 4943-4952, 1975)由来のFR3をそれぞれ使用した。
バージョン“b”のFR3をコードするプライマーF3SS(配列番号94)とF3SA(配列番号95)、あるいはバージョン“c”のFR3をコードするプライマーF3RS(配列番号96)とF3RA(配列番号97)は互いに相補的な配列を有し、両端に制限酵素KpnI及びPstIの認識配列を有する。F3SS、F3SA、F3RS、F3RAは Pharmacia Biotechに合成、精製を委託した。各100pmoleのF3SSとF3SA、あるいはF3RSとF3RAを96℃にて2分間、50℃にて2分間処理することによりアニーリングさせ、2本鎖DNA断片を作製した。
これら2本鎖DNA断片を制限酵素KpnI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素PstI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
プラスミドhATR5Lva/CVIDECを制限酵素KpnI(宝酒造)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素PstI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約3000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
上記のようにして調製したバージョン“b”あるいは“c”のFR3をコードするKpnI-PstI DNA断片とKpnI及びPstIで消化することによりFR3を除去したhATR5Lva/CVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地3mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
これらヒト型化抗体L鎖バージョン“a”のFR3を置換したバージョン“b”あるいはバージョン“c”をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれhATR5Lvb/CVIDEC、hATR5Lvc/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Lvb/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列ならびにバージョン“b”アミノ酸配列を配列番号98、99に示す。また、プラスミドhATR5Lvc/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“c”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列およびバージョン“c”のアミノ酸配列を配列番号100および101に示す。
(iii)バージョン“b1”及び“b2”
バージョン“b1”及び“b2”を、バージョン“b”のFR2を置換することにより作製した。バージョン“b1”にはヒト抗体S65921 (DDBJ、Tonge DWら,Year Immunol., 7, 56-62, 1993)由来のFR2を、バージョン“b2”にはヒト抗体X93625 (DDBJ、CoxJPら,Eur.J.Immunol., 24, 827-836, 1994)由来のFR2をそれぞれ使用した。
バージョン“b1”のFR2をコードするプライマーF2SS(配列番号102)とF2SA(配列番号103)、あるいはバージョン“b2”のFR2をコードするプライマーF2XS(配列番号104)とF2XA(配列番号105)は互いに相補的な配列を有し、両端に制限酵素AflII及びSpeIの認識配列を有する。F2SS、F2SA、F2XS及びF2XAは Pharmacia Biotechにより合成された。各100pmoleのF2SSとF2SA、あるいはF2XSとF2XAを96℃にて2分間、50℃にて2分間処理することによりアニーリングさせ、2本鎖DNA断片を作製した。
これら2本鎖DNA断片を制限酵素AflII(宝酒造)及びSpeI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
プラスミドhATR5Lvb/CVIDECを制限酵素AflII(宝酒造)及びSpeI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。消化混合物を1.5% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約3000bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
上記のようにして調製したバージョン“b1”あるいは“b2”のFR2をコードするAflII-SpeI DNA断片とAflII及びSpeIで消化することによりFR2を除去したhATR5Lvb/CVIDECベクターをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
この連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/ml LBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体をLBA培地4mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。
プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer)を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4(宝酒造)及びM13 Primer RV(宝酒造)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
これらヒト型化抗体L鎖バージョン“b”のFR2を置換したバージョン“b1”あるいはバージョン“b2”をコードする遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれhATR5Lvb1/CVIDEC及びhATR5Lvb2/CVIDECと命名した。プラスミドhATR5Lvb1/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b1”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列及びバージョン“b1”アミノ酸配列を配列番号106及び107に示す。また、プラスミドhATR5Lvb2/CVIDECに含まれるヒト型化L鎖バージョン“b2”の塩基配列及び対応するアミノ酸配列及びバージョン“b2”のアミノ酸配列を配列番号108及び109に示す。
(3)ヒト型化抗体の発現ベクターの構築
(i)ヒト型化H鎖とキメラL鎖との組合せ
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hva/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR-5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHva-chLv/N5KG4Pと命名した。 H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR-5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb-chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvc/CVIDEC、hATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR-5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvc-chLv/N5KG4P、hHvd-chLv/N5KG4P及びhHve-chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvf/CVIDEC及びhATR5Hvh/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR-5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvf-chLv/N5KG4P及びhHvh-chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR-5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi-chLv/N5KG4P及びhHvj-chLv/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、chATR-5抗体発現プラスミドベクター、chATR5/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したchATR5/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb1-chLv/N5KG4P及びhHvd1-chLv/N5KG4Pと命名した。
(ii)ヒト型化L鎖とキメラH鎖との組み合わせ
抗体発現ベクターN5KG4Pを用いて、キメラH鎖との組み合わせでヒト型化抗体を発現させることにより、ヒト型化L鎖の評価を行った。
プラスミドhATR5Lva/CVIDEC、hATR5Lvb/CVIDEC、hATR5Lvc/CVIDEC、hATR5Lvb1/CVIDEC、hATR5Lvb2/CVIDECを制限酵素BglII(宝酒造)及びSplI(宝酒造)により37℃で2〜3時間消化した。消化混合物を1.5%または2% NuSieve GTGアガロース(FMC BioProducts)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離し、約400bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り出した。アガロース片をフェノール及びクロロホルムで抽出し、DNA断片をエタノールで沈殿させた後、TEに溶解した。
これら各バージョンのヒト型化L鎖V領域をコードする遺伝子を含むSplI-BglII DNA断片とSplI及びBglIIで消化したchATR5Hv/N5KG4PをDNAライゲーションキットver.2(宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。
連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、氷上で30分間、42℃にて1分間静置した。次いで300μlのHi-Competence Broth(ニッポンジーン)を加え37℃にて1時間インキュベートした後、100μg/mlLBA寒天培地上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体をLBA培地250mlまたは500mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からPlasmid Maxi Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。これらキメラH鎖とヒト型化L鎖をコードする遺伝子を導入したプラスミドをそれぞれchHv-hLva/N5KG4P、chHv-hLvb/N5KG4P、chHv-hLvc/N5KG4P、chHv-hLvb1/N5KG4P及びchHv-hLvb2/N5KG4Pと命名した。
(iii)ヒト型化H鎖とヒト型化L鎖の組合せ
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hva/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“a”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLva/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLva/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHva-hLva/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC及びhATR5Hvc/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“a”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLva/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLva/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb-hLva/N5KG4P及びhHvc-hLva/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDEC、hATR5Hvd/CVIDEC及びhATR5Hve/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb-hLvb/N5KG4P、hHvd-hLvb/N5KG4P及びhHve-hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvf/CVIDEC、hATR5Hvg/CVIDEC及びhATR5Hvh/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvf-hLvb/N5KG4P、hHvg-hLvb/N5KG4P及びhHvh-hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDEC及びhATR5Hvj/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi-hLvb/N5KG4P及びhHvj-hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb1/CVIDEC及びhATR5Hvd1/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb1-hLvb/N5KG4P及びhHvd1-hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb3/CVIDEC及びhATR5Hvd3/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb3-hLvb/N5KG4P及びhHvd3-hLvb/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvb/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b1”及び“b2”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb1/N5KG4P及びchHv-hLvb2/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb1/N5KG4P(SalI/NheI)及びhLvb2/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvb-hLvb1/N5KG4P及びhHvb-hLvb2/N5KG4Pと命名した。
H鎖V領域を含むプラスミドhATR5Hvi/CVIDECをNheI及びSalIで消化し、ヒト型化H鎖V領域のcDNA断片を回収し、ヒト型化ATR-5抗体L鎖バージョン“b1”及び“b2”cDNAの配列を含むプラスミドchHv-hLvb1/N5KG4P及びchHv-hLvb2/N5KG4PをNheI及びSalIにて消化することにより調製したhLvb1/N5KG4P(SalI/NheI)及びhLvb2/N5KG4P(SalI/NheI)に導入した。こうして作製したプラスミドをhHvi-hLvb1/N5KG4P及びhHvi-hLvb2/N5KG4Pと命名した。
(4)COS-7細胞へのトランスフェクション
ヒト型化抗体の抗原結合活性及び中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS-7細胞で一過性に発現させた。
構築した発現プラスミドベクターをGene Pulser装置(Bio-Rad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS-7細胞に形質導入した。PBS中に1×107 細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS-7細胞0.78mlに、プラスミド50μgあるいは20μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を5%の Ultra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO) を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿あるいは15cm培養皿を用いてCO2 インキュベーターにて培養した。24時間の培養の後、培養上清を吸引除去し、新たに無血清培地HBCHO(アーバインサイエンティフィック)を加えた。さらに72時間もしくは96時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去した。
(5)抗体の精製
COS-7細胞の培養上清からの抗体の精製をAffiGel ProteinA MAPSIIキット(Bio-Rad)、あるいはrProtein A Sepharose FastFlow(Pharmacia Biotech)を用いて行った。AffiGel Protein A MAPSIIキットを用いた精製はキット添付の処方に従って行った。rProtein A Sepharose Fast Flowを用いた精製は以下のように行った。
1mlのrProtein A Sepharose Fast Flowをカラムに充填し、10倍量のTBSを流すことによってカラムを平衡化した。平衡化したカラムにCOS-7細胞の培養上清をアプライした後、10倍量のTBSによってカラムを洗浄した。次に13.5mlの2.5mM HCl(pH3.0)を流すことによって吸着した抗体画分をカラムより溶出した。1.5mlの1M Tris-HCl(pH8.0)を加えることによって溶出液を中和した。
精製された抗体画分について、セントリプレップ30もしくは100(amicon)を用いた限外濾過を2〜3回行うことにより、TBSに溶媒を置換し、最終的に約1.5mlまで濃縮した。
実施例4. 抗体の定量及び活性評価
(1)ELISAによる抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp, NUNC)の各穴を固相化バッファー(0.1M NaHCO3 、0.02% NaN3 、pH9.6)(以下、CBと称す)で1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlで固相化し、200μlの希釈バッファー(50mM Tris-HCl、1mM MgCl2 、0.1M NaCl、0.05% Tween20、0.02% NaN3 、1% ウシ血清アルブミン(BSA)、pH8.1)(以下DBと称す)でブロッキングの後、抗体を発現させたCOS-7細胞の培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して各穴に加えた。
1時間室温にてインキュベートし0.05%Tween20を含むダルベッコPBS(以下RBと称す)で洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄の後、1mg/mlとなるようにSigma104(p-ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を基質バッファー(50mM NaHCO3 、10mM MgCl2 、pH9.8)に溶解したもの(以下、基質溶液と称す)を加え、405/655nmでの吸光度をmicroplate reader (Bio Rad)で測定した。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いた。
(2)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートは、次のようにして調製した。細胞はヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB-1)を用いた。細胞培養用96穴プレートの60穴に1×106 個のJ82細胞を播き込んだ。これをCO2 インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させた。培養液を捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄した。4%のパラホルムアルデヒドを含むPBS(以下、PFA/PBSと称す)を各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化した。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングした。培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して100μlを各穴に加えた。室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を加え、次に405/655nmでの吸光度をMicroplate Reader (Bio-Rad)で測定した。
(3)中和活性の測定
マウス抗体、キメラ抗体及びヒト型化抗体の中和活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG) による Factor Xa産生阻害活性を指標に測定した。すなわち、1.25mg/mlのThromborel S 10μlと適当な濃度に希釈した抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2 、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させた。これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)及び82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で1時間反応させた。
0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で1時間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の1時間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S-2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、精製水で2倍希釈した後、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(4)活性の評価
(i)ヒト型化H鎖バージョン“a”とキメラL鎖との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“a”とキメラL鎖を組み合わせた抗体(a-ch)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度側で抗原に対する結合量が低下していた(図1)。FXa産生阻害による抗原中和能についても陽性対照のキメラ抗体(ch-ch)に比べて弱い活性であった(図2)。よってヒト型化H鎖はFR-シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS-7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(ii)ヒト型化L鎖バージョン“a”とキメラH鎖との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“a”とキメラH鎖を組み合わせた抗体(ch-a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、キメラ抗体と同等以上の抗原結合活性が認められた(図1)。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて弱い活性であった(図2)。よってヒト型化L鎖もFR-シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS-7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(iii)ヒト型化H鎖バージョン“a”とヒト型化L鎖バージョン“a”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“a”とヒト型化L鎖バージョン“a”を組み合わせた抗体(a-a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度側で抗原に対する結合量が低下していた(図3)。FXa産生阻害による抗原中和能についても陽性対照のキメラ抗体に比べてかなり弱い活性であった(図4)。よってヒト型化H鎖及びL鎖のFR-シャッフリングによるバージョンアップを行うことにした。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS-7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(iv)ヒト型化H鎖バージョン“b”、“c”及び“d”とキメラL鎖との組合せ
FR-シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖とキメラL鎖を組み合わせた抗体(それぞれ“b-ch”、“c-ch”、及び“d-ch”)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、“d-ch”はキメラ抗体と同等の抗原結合活性が認められ、“b-ch”及び“c-ch”はわずかに劣る抗原結合活性を示した(図5,6)。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、“b-ch”はほぼ同等、“d-ch”はわずかに弱い活性であった。またバージョン“c-ch”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった(図7)。よってヒト型化H鎖バージョン“b”及び“d”がヒト型化H鎖で高い活性を示すと考えられるバージョンであった。
(v)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“a”との組合せ
FR-シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“a”を組み合わせた抗体(b-a)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、高濃度で抗原に対する結合量が低下していた(図5)。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、かなり弱い活性であった(図8)。よって“b-a”が“a-a”より高い活性を示すバージョンであった。なお、ここで用いたキメラ抗体はCOS-7細胞で発現させ精製した抗体を用い評価したものである。
(vi)ヒト型化L鎖バージョン“b”、“c”とキメラH鎖との組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”をキメラH鎖と組み合わせた抗体(それぞれ、“ch-b”、“ch-c”)を作製したところ、いずれの抗体も抗原結合能、抗原中和能ともにキメラ抗体と同等の活性を示した(図9及び10)。よってバージョン“b”及び“c”をヒト型化抗体L鎖の候補とした。マウス抗体由来のアミノ酸残基数が1つ少ないバージョン“b”の方がバージョン“c”より抗原性の点で優れていると考えられる。なお、ここで用いたキメラ抗体はCHO細胞DG44で発現させ精製した抗体を用い評価したもので、これ以降の評価でもこの抗体を陽性対照に用いた。
(vii)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b”をヒト型化L鎖バージョン“b”及び“c”と組み合わせた抗体(それぞれ“b-b”及び“b-c”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。いずれの抗体も抗原結合能、抗原中和能ともにキメラ抗体よりわずかに劣る活性を示した(図11及び12)。
(viii)ヒト型化H鎖バージョン“b”及び“d”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合

FR-シャッフリングによってバージョンアップしたヒト型化H鎖とヒト型化L鎖バージョン“b”を組み合わせた抗体(それぞれ“b-b”及び“d-b”)を作製し、cell ELISAにて抗原結合能を調べたところ、“d-b”はキメラ抗体と同等の抗原結合活性が認められ、“b-b”は高濃度でわずかに劣る抗原結合活性を示した(図13)。一方、抗原中和能は陽性対照のキメラ抗体に比べて、“b-b”はわずかに弱い活性で、“d-b”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった(図14)。よって“b-b”は抗原活性中和能の高いバージョン、“d-b”は抗原結合能の高いバージョンであることが示された。
(ix)ヒト型化H鎖バージョン“e”とキメラL鎖及びヒト型化L鎖バージョン“b”との
組合せ
ヒト型化L鎖バージョン“e”をキメラL鎖及びヒト型化バージョン“b”と組み合わせた抗体(それぞれ“e-ch”及び“e-b”)を作製したところ、“e-ch”の抗原結合能はキメラ抗体と同等の活性を示したが、“e-b”は抗体の発現量が非常に低く、且つ抗原結合能も殆ど喪失していた(図15)。また“e-ch”の抗原活性中和能はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった(図16)。よってH鎖バージョン“e”はL鎖バージョン“b”との組合せが悪いと考えられた。
(x)ヒト型化H鎖バージョン“f”、“g”及び“h”とヒト型化L鎖バージョン“b”との
組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“f”、“g”及び“h”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“f-b”、“g-b”及び“h-b”)作製したところ、“f-b”及び“h-b”の抗体は抗体の発現量が非常に低くかった。なお、バージョン“f”、“h”についてはキメラL鎖と組み合わせた抗体も作製したが、発現されなかった。“g-b”は低い濃度から飽和状態に達し、キメラ抗体より弱い抗原結合能を示した(図17)。“g-b”の抗原中和能は、キメラ抗体に比べかなり弱い活性であった(図18)。
(xi)ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合

ヒト型化H鎖バージョン“b1”及び“d1”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“b1-b”及び“d1-b”)作製したところ、ともに抗体は殆ど発現されなかった。なお、これらについてはキメラL鎖と組み合わせた抗体も作製したが、発現されなかった。
(xii)ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”とヒト型化L鎖バージョン“b”との組合

ヒト型化H鎖バージョン“b3”及び“d3”をヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体を(それぞれ“b3-b”及び“d3-b”)作製したところ、“d3-b”の抗原結合能はキメラ抗体よりわずかに劣っており、“b3-b”の抗原結合能はさらに劣っていた(図19)。“b3-b”の抗原中和能は“b-b”より上回る活性を示したものの、キメラ抗体の活性には及ばず、“d3-b”は“b-b”と同程度の活性にとどまった(図20)。
(xiii)ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”とキメラL鎖及びヒト型化L鎖バージョン
“b”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“i”及び“j”をキメラL鎖と組み合わせた抗体(それぞれ“i-ch”及び“j-ch”)とヒト型化L鎖バージョン“b”と組み合わせた抗体(それぞれ“i-b”及び“j-b”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。抗原結合能はいずれの抗体もキメラ抗体とほぼ同等の活性を示した(図21、22)。“i-ch”にはキメラ抗体の活性を上回る抗原中和能が認められ、“j-ch”の抗原中和能はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった(図23)。“i-b”はキメラ抗体と同等の活性が認められ、“j-b”はキメラ抗体に比べかなり弱い活性であった(図24)。
(xiv)ヒト型化L鎖バージョン“b1”及び“b2”
ヒト型化L鎖バージョン“b1”及び“b2”をキメラH鎖と組み合わせた抗体(それぞれ、“ch-b1”及び“ch-b2”)を作製したところ、いずれの抗体もキメラ抗体と同等の抗原結合能を示した(図25)。抗原中和能については、“ch-b1”ではキメラ抗体と同等の活性を示し、“ch-b2”では高濃度側でキメラ抗体を若干上回る活性が認められた(図26)。バージョン“b1”及び“b2”ともにヒト型化抗体L鎖の候補になり得るが、より強い活性を有するという点でバージョン“b2”の方が優れている。
(xv)ヒト型化H鎖バージョン“b”とヒト型化L鎖バージョン“b2”との組合せ
ヒト型化H鎖バージョン“b”をヒト型化L鎖バージョン“b2”と組み合わせた抗体(“b-b2”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。抗原結合能はキメラ抗体よりわずかに劣っていた(図27)。抗原中和能は“b-b”の活性を上回ったものの、“i-b”の活性には及ばなかった(図28)。
(xvi)ヒト型化H鎖バージョン“i”とヒト型化L鎖バージョン“b1”又は“b2”との組合

ヒト型化H鎖バージョン“i”をヒト型化L鎖バージョン“b1”又は“b2”と組み合わせた抗体(それぞれ“i-b1”及び“i-b2”)を作製し、抗原結合能及び抗原中和能を測定した。“i-b2”の抗原結合能はキメラ抗体とほぼ同等で、“i-b1”はわずかに劣る程度であった(図29)。また、“i-b1”及び“i-b2”の抗原中和能はキメラ抗体や“i-b”を上回る活性を示し、“i-b2”>“i-b1”の順に強かった(図30)。
実施例5. CHO細胞産生ヒト型化抗体の作製及び活性評価
(1)CHO安定産生細胞株の樹立
ヒト型化抗体(b-b、i-b及びi-b2)の安定産生細胞株を樹立するため、無血清培地に馴化したCHO細胞(DG44)に抗体発現遺伝子ベクターを導入した。
プラスミドDNA、hHvb-hLvb/N5KG4P、hHvi-hLvb/N5KG4P及びhHvi-hLvb2/N5KG4Pを制限酵素SspI(宝酒造)で切断して直鎖状にし、フェノール及びクロロフォルム抽出した後、エタノール沈殿により精製した。エレクトロポーレーション装置(Gene Pulser;Bio Rad)により、直鎖状にした発現遺伝子ベクターをDG44細胞に導入した。DG44細胞をPBSに1×107 /mlの細胞密度で懸濁し、この懸濁液約0.8mlに前記のDNAを10もしくは50μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、ヒポキサンチン-チミジン(GIBCO)(以下、HT)を含有するCHO-S-SFMII培地に処理された細胞を懸濁し、2枚の96穴平底プレート(Falcon)に100μl/穴となるように播種し、CO2 インキュベーターにて培養した。培養開始8〜9時間後にHT及び1mg/mlのGENETICIN (GIBCO)を含有するCHO-S-SFMII培地を100μl/穴加え、500μg/mlのGENETICIN選択培地に変換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。3〜4日に一度1/2量の培地を新鮮な培地と交換し、選択培地への変換から約2週間経過した時点で、その4〜5日後に細胞の順調な増殖が観察された穴の培養上清の一部を回収した。この培養上清中に発現された抗体濃度を前述の抗体濃度測定ELISAにより測定し、抗体産生量の高い細胞を選出した。
(2)ヒト型化抗体の大量精製
前記のように選出したヒト型化抗体(“b-b”、“i-b”及び“i-b2”)発現DG44細胞株を2Lローラーボトル(CONING)を用い、500ml/ボトルのCHO-S-SFMII培地中で数日培養後、培養液を回収して新鮮なCHO-S-SFMII培地を加え、再び培養した。培養液は遠心分離により細胞破片を除去し、0.22μmもしくは0.45μmのフィルターで濾過した。これを繰り返し、それぞれ全量約2Lの培養上清を得た。得られた培養上清を Protein Aアフィニティーカラム(Poros)を接続したConSep LC100システム(ミリポア)にて抗体を精製した。
(3)ELISAによる抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp, NUNC)の各穴をCBで1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlで固相化し、200μlのDBでブロッキングの後、抗体を発現させたCOS細胞の培養上清あるいは精製抗体をDBにて段階希釈して各穴に加えた。
1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしRBで洗浄の後、基質溶液を100μl加え、405/655nmでの吸光度をmicroplate reader(Bio Rad)で測定した。濃度測定のスタンダードとしてIgG4κ(The Binding Site)を用いた。
(4)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのCell ELISAプレートでは、次のようにして調製した。細胞はヒト膀胱癌細胞J82(ATCC HTB-1)を用いた。細胞培養用96穴プレートに1×106 個のJ82細胞を播き込んだ。これをCO2インキュベーターで1日培養し(10%の牛胎児血清(GIBCO)を含むRPMI1640培地)、細胞を接着させた。培養液を捨て、PBSで各穴を2回洗浄した。PFA/PBSを各穴に100μl加え、氷上で10分間静置し、細胞を固相化した。
PFA/PBSを捨て、300μlのPBSで各穴を2回洗浄後、250μlのDBでブロッキングした。精製抗体を上測定結果をもとに、DBにて10μg/mlより公比2で段階希釈して100μlを各穴に加えた。室温にて2時間インキュベートしRBで洗浄後、DBで1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGγ抗体(BioSource)100μlを加えた。室温にて1時間インキュベートしRBで洗浄ののち、基質溶液を100μl加え、次に405/655nmでの吸光度をMicroplate Reader (Bio-Rad)で測定した。
(5)TF中和活性(ファクターXa産生阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のファクターXa産生阻害活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)による Factor Xa産生阻害活性を指標に測定した。すなわち、5mg/mlのThromborel S 10μlと抗体10μlに緩衝液(5mMのCaCl2 、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で1時間反応させた。抗体は緩衝液で200μg/mlより公比5で段階希釈した。
これに3.245μg/mlのヒトファクターX(セルサス・ラボラトリーズ)及び82.5ng/mlのヒトファクターVIIa(エンザイム・リサーチ)をそれぞれ10μl加え、さらに室温で45分間反応させた。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader (Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で30分間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の30分間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S-2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(6)TF中和活性(ファクターX結合阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のファクターX結合阻害活性は、ヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)を用い、予めTFとFactor VIIaの複合体を形成させ、その複合体の Factor Xa産生阻害活性を指標にファクターX結合阻害活性を測定した。すなわち、5mg/mlのThromborel S 10μlと82.5ng/mlのヒトFactor VIIa(エンザイム・リサーチ)10μlに緩衝液(5mMのCaCl2、0.1%のBSAを含むTBS)60μlを加え、96穴プレート中で室温で予め1時間反応させた。
これに抗体溶液を10μl加え、室温で5分間反応させた後、3.245μg/mlのヒトFactor X(セルサス・ラボラトリーズ)を10μl加え、さらに室温で45分間反応させた。なお抗体は緩衝液で200μg/mlより公比2で段階希釈した。0.5MのEDTAを10μl加え、反応を停止させた。これに発色基質溶液を50μl加え、Microplate Reader(Bio Rad)で405/655nmの吸光度を測定した。室温で30分間反応させ、再度405/655nmの吸光度を測定した。抗体無添加の30分間の吸光度変化を100%の活性とし、それぞれの吸光度変化から残存活性(%)を算出した。
発色基質溶液はテストチーム発色基質S-2222(Chromogenix)を添付文書に従い溶解し、ポリブレン液(0.6mg/ml ヘキサジメチリンブロマイド、SIGMA)と1:1で混和し調製した。
(7)TF中和活性(血漿凝固阻害活性)の測定
ヒト型化抗体のTF中和活性(血漿凝固阻害活性)はヒト胎盤由来トロンボプラスチン、Thromborel S(Behringwerke AG)を用いたプロトロンビン時間を指標に測定した。すなわち、サンプルカップにヒト血漿(コスモ・バイオ)100μlを入れ、これに様々な濃度に希釈した抗体を50μl加え、37℃で3分間加温した。予め37℃に加温しておいた1.25mg/mlのThromborel Sを50μl加え、血漿凝固を開始させた。この凝固時間はAmelung CR-Aを接続したAmelung KC-10A(ともにエム・シー・メディカル)にて測定した。
抗体は80μg/mlより公比2で0.1%のBSAを含有するTBS(以下、BSA-TBS)にて段階希釈した。測定した抗体無添加の凝固時間を100%のTF血漿凝固活性とし、Thromborel Sの濃度と凝固時間をプロットした検量線により抗体を添加した際のそれぞれの凝固時間からTF残存活性を算出した。
検量線は様々なThromborel Sの濃度とその凝固時間を測定することにより作成した。適当に希釈したThromborel S、50μlに50μlのBSA-TBSを加え、37℃で3分間加温し、予め37℃に加温しておいたヒト血漿を100μl加えて凝固を開始させ凝固時間を測定した。Thromborel Sは6.25mg/mlより公比2で25mMのCaCl2を含むハンクス緩衝液(GIBCO)にて段階希釈した。横軸にThromborel S濃度、縦軸に凝固時間を両対数グラフにプロットし、これを検量線とした。
(8)活性の評価
“b-b”、“i-b”及び“i-b2”のヒト型化抗体すべてはキメラ抗体と同等以上の活性を有していた(図31)。Factor Xa産生阻害活性、Factor X結合阻害活性及び血漿凝固阻害活性においても、ヒト型化抗体“b-b”、“i-b”及び“i-b2”はキメラ抗体と同等以上の活性を有しており、“i-b2”>“i-b”>“b-b”の順に活性が強かった(図32、33及び34)。
実施例6. BIACOREを用いたTFと抗TF抗体の相互作用における反応速度論的解析
BIACOREを用いて、抗原抗体反応の速度論的解析を行った。組換型ProteinGをセンサーチップに固相化し、これに抗体を結合させた。抗原として精製した組換型TF(1-219にFLAGペプチドタグを付した可溶型TF)(以下、可溶型TFと称す)を用い、種々の濃度に調製した可溶型TFをアナライトとした。得られたセンサーグラムから、カイネティクスパラメーター(解離速度定数kdiss及び結合速度定数kass)を算出した。速度論的解析に関して、「Kinetic analysis of monoclonal antibody-antigen interactions with a new biosensor based analytical system 」(karlsson, R. et al. (1991) J. Immunol. Methods 145, 229-240.)を参考にした。
(1)センサーチップへの Protein Gの固相化
センサーチップCM5(BIACORE)へProtein G(ZYMED)を固相化する。
ランニングバッファーとしてHBS-EP 緩衝液(0.01M HEPES pH7.4, 0.15M NaCl, 3mMEDTA, 0.005% ポリソルベート 20(v/v))(BIACORE) を用い、流速は5μL/分とした。センサーチップCM5上のカルボキシメチルデキストランのカルボキシル基を100μLの0.05M N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)/0.2M 塩酸N-エチル-N' -(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)のインジェクトにより活性化した。
引き続き、10μLの50μg/mL Protein Gをインジェクトし、これを3回行って固相化した。Protein Gは10mg/mlになるように10mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)にて50μg/mLに希釈し調製した。さらに100μLの1.0Mエタノールアミン-塩酸(pH8.5)をインジェクトし、過剰の活性基をブロックした。これに10μLの0.1Mグリシン-塩酸緩衝液(pH2.5)および10μLの10mM塩酸をインジェクトし、非共有結合している物質を洗浄した。これを各フローセルについて行い、72nMのヒト型化抗TF抗体バージョン“ib2”を10μLインジェクトし、約1000RU結合することを確認した。
(2)固相化抗TF抗体とヒトTFとの相互作用
ヒトTFは、アミノ酸配列1-219のC末端にFLAGペプチドを連結させたものをCHO細胞にて発現させて精製した。これを可溶型ヒトTFとして用いた。
ランニングバッファーとしてHBS-EP 緩衝液を用い、流速20μL/分で72nMの抗体溶液を10μLインジェクトし、抗体を固相化した。抗体の希釈はHBS-EP 緩衝液を用いて行った。これに各種濃度の可溶型ヒトTF溶液40μLを流速30μL/分でインジェクトし、分析はインジェクトする80秒を結合相とし、その後HBS-EP 緩衝液に切り替え、120秒の解離相とした。解離相終了後、10μLの20mM塩酸をインジェクトすることにより、センサーチップを再生した。この結合・解離・再生を分析の1サイクルとし、各種抗体についてセンサーグラムを得た。なお、可溶型ヒトTF溶液はHBS-EP 緩衝液を用い、250nM、125nM、62.5nM、31.3nM、15.6nM、7.81nM、3.91nMの濃度に調製した。また、ブランクには希釈に用いたHBS-EP 緩衝液をインジェクトして得られたセンサーグラムを用いた。
以上のことをフローセルの1〜3それぞれで行った。
(3)相互作用の速度論的解析
目的のデータファイルを読み込み、目的の反応領域について、HBS-EP 緩衝液のセンサーグラムをベースラインとして、重ね書きによる反応パターンの比較を行った。さらにカーブフィッティングによるカイネティクスパラメーター(結合速度定数kass及び解離速度定数kdiss)の算定を行う BIACORE専用の解析アプリケーションソフトウェアである「BIAevaluation 2.1 」(Pharmacia) を用いて、相互作用の速度論的解 析を行った。なお、結合速度定数kassを求める際には、解析モデルタイプ4を用いた(BIAevaluation 2.1 Software Hand book, A1〜A5) 。それぞれのフローセルから算出した値から、各種抗体のカイネティクスパラメーターを得た。結果(各フローセルから算出した値の平均値±標準偏差)を表6に示す。
実施例7. ヒト型化抗TF抗体のヒトTFへの反応性の測定
ドットブロットハイブリダイゼーション法(「改訂版分子生物学研究のためのタンパク実験法」(羊土社)竹縄忠臣/編 p.101 )によって、非変性TF、非還元下変性TF、還元下変性TFへの反応性を検討した。TFは細胞外領域にFLAGタグを付したものをCHO細胞にて発現させ、精製したもの(shTF)を用いた。shTFをそれぞれ次の3種の緩衝液(緩衝液A:10mM Tris-HCl, pH8.0; 緩衝液B:10mM Tris-HCl, pH8.0, 8M 尿素; 緩衝液C:10mM Tris-HCl, pH8.0, 8M 尿素, 5mM DTT)にて希釈した。緩衝液Aで処理したものは非変性TFであり、一方、非還元下変性TFは緩衝液Bで処理し、還元下変性TFは緩衝液Cで処理して調製した。それぞれのサンプルは室温で24時間処理した。処理後、ニトロセルロース膜(Bio-Rad)にサンプルをブロッティングした。
サンプルを0.5μl、1μl及び2μl(3μg/ml)膜にブロットし、膜を風乾した。DB(50mMTris-HCl, pH8.1, 0.15M NaCl, 1mM MgCl2 , 0.05%(v/v) Tween 20, 0.02%(w/v) NaN3 , 1%(w/v) BSA)でブロッキングした。膜をヒト型化抗TF抗体を含むDBもしくはDB(コントロール)で反応させた。0.05%(v/v) Tween 20を含むPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(DAKO)を含むDBで反応させた。0.05%(v/v) Tween 20を含むPBSで洗浄した後、ECL Western Blotting reagent (Amersham) で処理し、X線フィルムに30秒間暴露させた。
図35に示したようにキメラ型抗TF抗体及びヒト型化抗TF抗体(バージョン“bb”“ib”及び“ib2”)は非変性TF、非還元下変性TF、還元下変性TF全てに反応した。
実施例8. ラット急性DICモデルにおける抗血栓作用の確認
抗TF抗体の抗血栓作用について、ラットを用いたトロンボプラスチン誘発DIC モデルで確認した。すなわち、SD系雄性ラットにヒトトロンボプラスチン溶液を40mg/kg の用量で3時間かけて静脈内に持続注入することでDIC モデルを作製した。抗TF抗体(キメラおよびヒト型化抗TF抗体i-b2)は各々0.2mg/kgの用量でトロンボプラスチン溶液の注入開始5分前に静脈内投与した。トロンボプラスチン溶液の持続注入終了15分後に腹部大動脈からクエン酸加血液を採取し、血小板数、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、フィブリノーゲン濃度(Fib) 、可溶性フィブリンモノマー複合体(sFMC)濃度、トロンビン/ アンチトロンビンIII 複合体(TAT) 濃度を測定した。
その結果、表7に示すように、トロンボプラスチンの持続注入により血小板数の減少、aPTTの延長、フィブリノーゲン濃度の減少、sFMCおよびTAT 濃度の上昇が認められ、明らかな凝固亢進状態を呈した。これに対し、キメラおよびヒト型化抗TF抗体はともにこれらの変化をほぼ同様に強く抑制した。
この結果から、ヒト型化抗TF抗体は抗血栓薬として有用なことが示された。
参考例1. 抗TFモノクローナル抗体の作製1.ヒトTFの精製
ヒト胎盤からのTFの精製は、Itoらの方法(Ito,T.ら J.Biochem. 114, 691-696, 1993)に準じて行った。すなわち、ヒト胎盤を10mM塩化ベンザミジン、1mMフッ化フェニルメチルスルフォニル、1mMジイソプロピルフルオロフォスフェートおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス緩衝生理食塩液(TBS,pH7.5)中でホモジナイズ後、沈殿を冷アセトンで脱脂し、得られた脱脂粉末を2% Triton X-100を含む上記緩衝液に懸濁してTFを可溶化した。
この上清から Concanavalin A-Sepharose 4Bカラム(Pharmacia)および抗TF抗体を結合させたSepharose 4Bカラム(Pharmacia)を用いてアフィニティークロマトグラフィーを行い、精製TFを得た。これを限外濾過膜(PM-10, Amicon)で濃縮し、精製標品として4℃で保存した。
精製標品中のTF含量は、市販の抗TFモノクローナル抗体(American Diagnostica)とポリクローナル抗体(American Diagnostica)を組合せたSandwich ELISAで、組換え型TFを標準にして定量した。
また精製標品の純度は、4-20%濃度勾配ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEしたものを銀染色することで確認した。
2.免疫とハイブリドーマの作製
精製ヒトTF(約70μg/ml)を等容量のFreundの完全アジュバント(Difco)と混合後、5週齢のBalb/c系雄性マウス(日本チャールスリバー)の腹部皮下に、TFとして10μg/マウスとなるように免疫した。12,18及び25日にはFreundの不完全アジュバントと混合したTFを5μg/マウスとなるように皮下に追加免疫し、最終免疫として32日にPBSで希釈したTF溶液を5μg/マウスで腹腔内投与した。
最終免疫の3日後に4匹のマウスから脾細胞を調製し、細胞数で1/5のマウスミエローマ細胞株P3U1とポリエチレングリコール法を用いて融合させた。融合細胞を10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地(以下RPMI-培地とする)(Lifetech oriental)に懸濁し、96穴プレートに1匹のマウスにつき400穴(約400個/穴)播種した。融合後、1,2,3,5日目に培地の半量をHAT(大日本製薬)およびcondimed H1(Boehringer Mannheim GmbH)を含むRPMI-培地(以下HAT-培地とする)に交換することで、ハイブリドーマのHAT選択を行った。
下記のスクリーニング法で選択したハイブリドーマは2回の限界希釈を行うことでクローン化した。
限界希釈は、96穴プレート2枚に一穴あたり0.8個の細胞を播種した。検鏡により単一コロニーであることが確認できた穴について、下記に示したTF結合活性とTF中和活性の測定を行いクローンを選択した。得られたクローンはHAT-培地からRPMI-培地に馴化し、馴化による抗体産生能の低下が無いことを確認したうえで、再度限界希釈を行い、完全なクローン化を行った。以上の操作により、TF/ファクターVIIa複合体とファクターXとの結合を強く阻害する抗体6種(ATR-2,3,4,5,7及び8)を産生するハイブリドーマが樹立できた。
3.腹水の作製および抗体の精製
樹立したハイブリドーマの腹水の作製は常法に従って行った。すなわち、in vitroで継代したハイブリドーマ106 個を、あらかじめ鉱物油を2回腹腔内に投与しておいたBalb/c系雄性マウスの腹腔内に移植した。移植後1〜2週目で腹部が肥大したマウスから腹水を回収した。
腹水からの抗体の精製は、 Protein Aカラム(日本ガイシ)を装着した ConSepLC100システム(Millipore)を用いて行った。
4.Cell-ELISA
TFを高発現することで知られているヒト膀胱癌由来細胞株J82(Fair D.S.ら、J.Biol.Chem., 262, 11692-11698, 1987)をATCCより導入し、RPMI-培地中、37℃、5%CO2 、100%湿度の条件で継代・維持した。
Cell-ELISA用プレートは、96穴プレートにJ82細胞を105 個/穴の濃度で播種し、上記条件で1日培養後、培地を除いてリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液(PFA)を加えて氷冷下で10分静置することで固定化することによって作製した。PFAを除去し、PBSで洗浄後、1%BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むTris緩衝液(Blocking緩衝液)を加えて、使用時まで4℃で保存した。
Cell-ELISAは以下のように行った。すなわち、上記のように作製したプレートからBlocking緩衝液を除去し、抗TF抗体溶液もしくはハイブリドーマ培養上清を加えて室温で1.5時間反応させた。0.05% Tween20を含むPBSで洗浄後、アルカリフォスファターゼを結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)(Zymed)を1時間反応させ、洗浄後、1mg/mlのp-ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム(Sigma)を添加して1時間後に405nmにおける吸光度を測定することで、J82細胞に結合した抗TF抗体量を定量した。
5.ファクターXa活性を指標としたTF中和活性測定系
50μlの5mMCaCl2 および0.1%ウシ血清アルブミンを含むトリス緩衝生理食塩液(TBS:pH7.6)に10μlのヒト胎盤由来トロンボプラスチン溶液(5mg/ml)(Thromborel S)(Boehring)と10μlのファクターVIIa溶液(82.5ng/ml)(American Diagnostica)を添加し、室温で1時間反応させることでTF/Factor VIIa 複合体を形成させた後、10μlの所定濃度に希釈した抗TF抗体溶液もしくはハイブリドーマ培養上清および10μlのFactor X溶液(3.245μg/ml)(Celsus Laboratorise)を添加して45分間反応させ、0.5M EDTAを10μl添加することで反応を止めた。ここに2mM S-2222溶液(第一化学薬品)を50μl添加し、30分間の405nmにおける吸光度変化をもってTFの Factor Xa産生活性とした。この方法では、TF/Factor VIIa 複合体とFactor Xとの結合を阻害する抗体の活性は測定できる。
6.血漿凝固阻害活性測定系
市販の正常ヒト血漿(コージンバイオ)を用い、この100μlに適当に希釈した抗TF抗体溶液50μlを混和して37℃で3分間反応させた後、50μlのヒト胎盤由来トロンボプラスチン溶液(1.25mg/ml)を添加し、血漿が凝固するまでの時間を血漿凝固時間測定装置(CR-A:Amelung)で測定した。7.抗体のアイソタイプの決定
ハイブリドーマの培養上清もしくは精製抗体について、マウスモノクロナール抗体アイソタイピングキット(Amersham社製)を用いて抗体のアイソタイプを確認し、結果を下に示した。
参考例2. 可溶型ヒトTFの作製法
可溶型ヒトTF(shTF)は以下のように作製した。
ヒトTFの貫通領域(220番目のアミノ酸)以下をFLAGペプチドM2に置換したものをコードする遺伝子を、哺乳動物細胞用の発現ベクター(ネオマイシン耐性遺伝子、DHFR遺伝子を含む)に挿入し、CHO細胞に導入した。ヒトTFのcDNA配列はJames H. Morrisseyらの報告(Cell(1987) 50, 129-135)を参考にした。この可溶型ヒトTFの遺伝子配列とアミノ酸配列を配列番号151に示した。G418により薬剤セレクションし、発現細胞を選抜し、さらにメトトレキサートで発現増幅をかけ、shTF発現細胞を樹立した。
この細胞を無血清培地CHO-S-SFMII(GIBCO)で培養し、shTFを含む培養上清を得た。同容量の40mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)で2倍に希釈し、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)で平衡化した Q-Sepharose Fast Flowカラム(100mL,Pharmacia Biotech)に添加し、0.1M NaClを含む同緩衝液で洗浄後、NaClの濃度を0.3Mとし、shTFをカラムから溶出した。得られたshTF画分に終濃度2.5Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、遠心操作(10,000rpm、20分)により夾雑蛋白質を沈殿させた。上清をButyl TOYOPEARL (30mL,TOSOH)に添加し、2.5Mの硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)で洗浄した。
50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)中、硫酸アンモニウム濃度を2.5Mから0Mまで直線的に下げ、shTFを溶出させた。shTFを含むピーク画分をCentri-Prep 10(アミコン)で濃縮した。150mM NaClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したTSKgel G3000SWGカラム(21.5×600mm,TOSOH)に濃縮液を添加し、shTFのピーク画分を回収した。これを0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し、可溶型ヒトTF(shTF)とした。試料の吸光度280nmのモル吸光係数をε=40,130、分子量を43,210として、試料の濃度を算出した。
配列表フリーテキスト
配列表の<223>に記載した内容は次の通りである。
配列番号:1:プライマーMHC-G1
配列番号:2:プライマーMHC-G2a
配列番号:3:プライマーMKC
配列番号:4:M13プライマーM4
配列番号:5:M13プライマーRV
配列番号:6:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-2のH鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:7:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-3のH鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:8:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-4のH鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:9:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-5のH鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:10:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-7のH鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:11:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-8のH鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:12:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-2のL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:13:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-3のL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:14:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-4のL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:15:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-5のL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:16:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-7のL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:17:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-8のL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれ
をコードする塩基配列
配列番号:18:プライマーch5HS
配列番号:19:プライマーch5HA
配列番号:20:プライマーch5LS
配列番号:21:プライマーch5LA
配列番号:22:CDRグラフィティングプライマーhR5Hv1S
配列番号:23:CDRグラフィティングプライマーhR5Hv28
配列番号:24:CDRグラフィティングプライマーhR5Hv4S
配列番号:25:CDRグラフィティングプライマーhR5Hv3A
配列番号:26:CDRグラフィティングプライマーhR5Hv5A
配列番号:27:プライマーhR5HvPrS
配列番号:28:プライマーhR5HvPrA
配列番号:29:ヒト型化H鎖V領域バージョン“a”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:30:ヒト型化H鎖V領域バージョン“a”のアミノ酸配列
配列番号:31:FRシャッフリングプライマーF3RFFS
配列番号:32:FRシャッフリングプライマーF3RFBS
配列番号:33:FRシャッフリングプライマーF3RFFA
配列番号:34:FRシャッフリングプライマーF3RFBA
配列番号:35:FRシャッフリングプライマーF3NMFS
配列番号:36:FRシャッフリングプライマーF3NMBS
配列番号:37:FRシャッフリングプライマーF3NMFA
配列番号:38:FRシャッフリングプライマーF3NMBA
配列番号:39:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:40:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b”のアミノ酸配列
配列番号:41:ヒト型化H鎖V領域バージョン“c”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:42:ヒト型化H鎖V領域バージョン“c”のアミノ酸配列
配列番号:43:FRシャッフリングプライマーF3EPS
配列番号:44:FRシャッフリングプライマーF3EPA
配列番号:45:プライマーF3PrS
配列番号:46:プライマーF3PrA
配列番号:47:FRシャッフリングプライマーF3vHS
配列番号:48:FRシャッフリングプライマーF3vHA
配列番号:49:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:50:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d”のアミノ酸配列
配列番号:51:ヒト型化H鎖V領域バージョン“e”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:52:ヒト型化H鎖V領域バージョン“e”のアミノ酸配列
配列番号:53:FRシャッフリングプライマーF3SSS
配列番号:54:FRシャッフリングプライマーF3SSA
配列番号:55:FRシャッフリングプライマーF3CDS
配列番号:56:FRシャッフリングプライマーF3CDA
配列番号:57:ヒト型化H鎖V領域バージョン“f”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:58:ヒト型化H鎖V領域バージョン“f”のアミノ酸配列
配列番号:59:ヒト型化H鎖V領域バージョン“g”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:60:ヒト型化H鎖V領域バージョン“g”のアミノ酸配列
配列番号:61:FRシャッフリングプライマーF3ADS
配列番号:62:FRシャッフリングプライマーF3ADA
配列番号:63:ヒト型化H鎖V領域バージョン“h”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:64:ヒト型化H鎖V領域バージョン“h”のアミノ酸配列
配列番号:65:FRシャッフリングプライマーF3MMS
配列番号:66:FRシャッフリングプライマーF3MMA
配列番号:67:FRシャッフリングプライマーF3BMS
配列番号:68:FRシャッフリングプライマーF3BMA
配列番号:69:ヒト型化H鎖V領域バージョン“i”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:70:ヒト型化H鎖V領域バージョン“i”のアミノ酸配列
配列番号:71:ヒト型化H鎖V領域バージョン“j”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:72:ヒト型化H鎖V領域バージョン“j”のアミノ酸配列
配列番号:73:FRシャッフリングプライマーF2MPS
配列番号:74:FRシャッフリングプライマーF2MPA
配列番号:75:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b1”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:76:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b1”のアミノ酸配列
配列番号:77:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d1”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:78:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d1”のアミノ酸配列
配列番号:79:FRシャッフリングプライマーF2VHS
配列番号:80:FRシャッフリングプライマーF2VHA
配列番号:81:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b3”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:82:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b3”のアミノ酸配列
配列番号:83:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d3”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:84:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d3”のアミノ酸配列
配列番号:85:FRシャッフリングベクターLv1S
配列番号:86:FRシャッフリングベクターh5Lv4S
配列番号:87:FRシャッフリングベクターh5Lv2A
配列番号:88:FRシャッフリングベクターh5Lv3A
配列番号:89:FRシャッフリングプライマーh5Lv5A
配列番号:90:プライマーh5LvS配列番号:91:プライマーh5LvA
配列番号:92:ヒト型化L鎖V領域バージョン“a”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:93:ヒト型化L鎖V領域バージョン“a”のアミノ酸配列
配列番号:94:FRシャッフリングプライマーF3SS
配列番号:95:FRシャッフリングプライマーF3SA
配列番号:96:FRシャッフリングプライマーF3RS
配列番号:97:FRシャッフリングプライマーF3RA
配列番号:98:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:99:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b”のアミノ酸配列
配列番号:100:ヒト型化L鎖V領域バージョン“c”のアミノ酸配列及びそれをコードする
塩基配列
配列番号:101:ヒト型化L鎖V領域バージョン“c”のアミノ酸配列
配列番号:102:FRシャッフリングプライマーF2SS
配列番号:103:FRシャッフリングプライマーF2SA
配列番号:104:FRシャッフリングプライマーF2XS
配列番号:105:FRシャッフリングプライマーF2XA
配列番号:106:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b1”のアミノ酸配列及びそれをコードす
る塩基配列
配列番号:107:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b1”のアミノ酸配列
配列番号:108:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b2”のアミノ酸配列及びそれをコードす
る塩基配列
配列番号:109:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b2”のアミノ酸配列
配列番号:110:ヒト型化H鎖V領域全バージョンのFR1のアミノ酸配列
配列番号:111:ヒト型化H鎖V領域バージョン“a”〜“j”のFR2のアミノ酸配列
配列番号:112:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b1”及び“d1”のRF2のアミノ酸配列
配列番号:113:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b3”及び“d3”のRF2のアミノ酸配列
配列番号:114:ヒト型化H鎖V領域バージョン“a”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:115:ヒト型化H鎖V領域バージョン“b”,“b1”及び“b3”のFR3のアミノ酸配

配列番号:116:ヒト型化H鎖V領域バージョン“c”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:117:ヒト型化H鎖V領域バージョン“d”,“d1”及び“d3”のFR3のアミノ酸配

配列番号:118:ヒト型化H鎖V領域バージョン“e”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:119:ヒト型化H鎖V領域バージョン“f”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:120:ヒト型化H鎖V領域バージョン“g”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:121:ヒト型化H鎖V領域バージョン“h”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:122:ヒト型化H鎖V領域バージョン“i”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:123:ヒト型化H鎖V領域バージョン“j”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:124:ヒト型化H鎖V領域全バージョンのFR4のアミノ酸配列
配列番号:125:ヒト型化L鎖V領域全バージョンのFR1のアミノ酸配列
配列番号:126:ヒト型化L鎖V領域バージョン“a”,“b”及び“c”のFR2のアミノ酸配列
配列番号:127:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b1”のFR2のアミノ酸配列
配列番号:128:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b2”のFR2のアミノ酸配列
配列番号:129:ヒト型化L鎖V領域バージョン“a”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:130:ヒト型化L鎖V領域バージョン“b”,“b1”、及び“b2”のFR3のアミノ酸
配列
配列番号:131:ヒト型化L鎖V領域バージョン“c”のFR3のアミノ酸配列
配列番号:132:ヒト型化L鎖V領域全バージョンFR4のアミノ酸配列
配列番号:133:ヒト型化H鎖V領域全バージョンCDR1のアミノ酸配列
配列番号:134:ヒト型化H鎖V領域全バージョンのCDR2のアミノ酸配列
配列番号:135:ヒト型化H鎖V領域全バージョンのCDR3のアミノ酸配列
配列番号:136:ヒト型化L鎖V領域全バージョンのCDR1のアミノ酸配列
配列番号:137:ヒト型化L鎖V領域全バージョンのCDR2のアミノ酸配列
配列番号:138:ヒト型化L鎖V領域全バージョンのCDR3のアミノ酸配列
配列番号:139:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-2のH鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:140:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-3のH鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:141:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-4のH鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:142:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-5のH鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:143:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-7のH鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:144:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-8のH鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:145:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-2のL鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:146:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-3のL鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:147:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-4のL鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:148:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-5のL鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:149:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-7のL鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:150:抗-TFマウスモノクローナル抗体ATR-8のL鎖V領域のアミノ酸配列
配列番号:151:可溶型ヒトTFのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列
配列番号:152:可溶型ヒトTFのアミノ酸配列
図1は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化aバージョン/L鎖キメラ抗体、及びH鎖キメラ/L鎖ヒト型化aバージョン抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図2は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化aバージョン/L鎖キメラ抗体、及びH鎖キメラ/L鎖ヒト型化aバージョン抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図3は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化aバージョン/L鎖ヒト型化aバージョン抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図4は、抗-TF-マウスモノクローナル抗体ATR-5、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンa/L鎖ヒト型化バージョンa抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図5は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンa抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図6は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンc/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンd/L鎖キメラ抗体の抗原結合活性を測定したグラフである。 図7は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンc/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンd/L鎖キメラ抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図8は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンa抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図9は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンc抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図10は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンc抗体の、ヒトTFに対する中和活性の比較を示すグラフである。 図11は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンc抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図12は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンc抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図13は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンd/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図14は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンd/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図15は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンe/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンe/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図16は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンe/L鎖キメラ抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図17は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンg/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図18は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンg/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図19は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb3/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンd3/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図20は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb3/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンd3/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図21は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンj/L鎖キメラ抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図22は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンj/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図23は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖キメラ抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンj/L鎖キメラ抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図24は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンj/L鎖ヒト型化バージョンb抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図25は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンb1抗体、及びH鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図26は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンb1抗体、及びH鎖キメラ/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図27は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図28は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図29は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb1抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図30は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb1抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性を比較したグラフである。 図31は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の抗原結合活性を比較したグラフである。 図32は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(TFのファクターXa産生阻害活性)を比較したグラフである。 図33は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(ファクターX結合阻害活性)を比較したグラフである。 図34は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、及びH鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の、ヒトTFに対する中和活性(TFの血漿凝固阻害活性)を比較したグラフである。 図35は、H鎖キメラ/L鎖キメラ抗体、H鎖ヒト型化バージョンb/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb抗体、H鎖ヒト型化バージョンi/L鎖ヒト型化バージョンb2抗体の各種条件で処理したヒトTFへの反応性を比較した図である。

Claims (4)

  1. 非ヒト由来の相補性決定領域(CDR)及び天然ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)を有する免疫原性を低減させた天然ヒト型化抗体の製造方法において、
    (1)目的とする抗原に対して反応性の非ヒトモノクローナル抗体を用意し、
    (2)前記(1)のモノクローナル抗体中のFRのアミノ酸配列に対して高い相同性を有するヒト抗体を複数用意し、
    (3)前記(2)における1種類のヒト抗体の4個のFRを前記(1)の非ヒトモノクローナル抗体の対応するFRにより置換して第一のヒト型化抗体を作製し、
    (4)前記(3)において作製したヒト型化抗体の抗原への結合性又は抗原の生物活性を中和する能力を測定し、
    (5)前記(3)において作製したヒト型化抗体中の1〜3個のFRを、(2)で用意したヒト抗体の内、(3)で使用したものとは異なるヒト抗体の対応するFRにより置換して第二のヒト型化抗体を作製し、
    (6)前記(5)で作製した第二のヒト型化抗体と前記(3)で得た第一のヒト型化抗体とを、抗原に対する結合性、又は抗原の生物活性を中和する能力について比較し、好都合な活性を示すヒト型化抗体を選択し、
    (7)前記(6)で選択されたヒト型化抗体について、前記(3)〜(6)の段階を実施し、
    そして
    (8)前記(1)における非ヒトモノクローナル抗体と同等の活性を有するヒト型化抗体が得られるまで前記(3)〜(6)の段階を反復する、
    ことを特徴とする方法により得られるヒト型化抗体。
  2. 前記目的とする抗原がヒト組織因子(TF)である、請求項1に記載のヒト型化抗体。
  3. 抗体の可変領域に含まれる4個のFRが、2種類以上のヒト抗体に由来するヒト型化抗体。
  4. 前記ヒト由来のFRの配列に異変が導入されてない請求項3に記載のヒト型化抗体。
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