JPWO2002076455A1 - 自律神経調節作用剤及び健康飲食物 - Google Patents
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Abstract
カルノシンを含んで成り、一回当りのカルノシンの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにしたカルノシンを含んでなる組成物、例えば飲食物又は医薬品が提供され、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ドリンク剤、パン、ビスケット、ケーキ、などの形態をとり得る。この組成物は、好ましくは、自律神経調節作用、具体的には自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する作用を有する。
Description
発明の分野
本発明は、カルノシンの少量投与に適する組成物、即ち少量投与剤に関する。
背景技術
生体の恒常性を維持するために、生体には自律神経系、内分泌系、免疫系が備わっている。その中で、自律神経系は、生体における血糖調節、血圧調節、胃液分泌調節、体温調節などを行なっている(岩波講座「現代医学の基礎」第4巻、萩原俊男、垂井清一郎編、生体の調節システム、1999年)。自律神経系には交感神経系と副交感神経系の2系統があり、両者のバランスによりコントロールされている。すなわち、身体が活動している時は交感神経の活動が優位となり、全身が緊張した状態となる。逆に、副交感神経の活動が優位な時は身体の緊張がとれ、くつろいでいる状態となる。
交感神経の活動が全身的に亢進すると、その結果として副腎髄質からのホルモン分泌を促し、心拍数や血圧の上昇、細気管支の拡張、腸管の運動と分泌の抑制、グルコース代謝の上昇、瞳孔散大、立毛、皮膚と内臓血管の収縮、さらに骨格筋の血管拡張が起こる(岩波講座「現代医学の基礎」第4巻、萩原俊男、垂井清一郎編、生体の調節システム、1999年)。従って、交感神経活動が亢進した場合、高血圧、高血糖、皮膚血流低下、免疫機能低下などの健康障害が起こる。また、副交感神経が亢進した場合には、慢性的な下痢が起こる。
これらの健康障害は各症状や疾患ごとに対症的に治療が行なわれているのが実状であって、根本的な原因である自律神経活動そのものをコントロールする方法はとられていない。対症療法は一時的にその病態を改善することができるが、服薬を中止すれば再発し、また、服薬を継続していたとしても、同じアンバランスによる他の疾患が発症する場合も多い。そこで、根本原因である自律神経活動そのものをコントロールする医薬品あるいは飲食物が求められていた。
一方、L−カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン、以下カルノシン)は、1900年代に骨格筋より発見されたジペプチドで、各種脊椎動物の骨格筋に高濃度(1〜20mM)に存在する(日本臨床、47巻、476−480、1989)。カルノシンは、他のヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリンやホモカルノシンと同様に生体における水溶性抗酸化剤であり(Gariballa SE and Sinclair AJ,Age Ageing,29,207−210,2000)、その抗酸化作用は、アンセリン、ホモカルノシンが強く、カルノシンがこれに次ぐ(Kohen R et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,85,3175−3179,1988)。カルノシンは、膜の脂質の過酸化を防いだり、スーパーオキサイドアニオンを消去したりすることにより細胞膜を安定化している(Boldyrev AA et al,Mol Chem Neuropath,19,185−192,1993)。
カルノシンは抗酸化物質として知られているほか、神経伝達物質、酵素活性調節物質、金属イオンのキレート物質として知られており(Gariballa SE and Sinclair AJ,Age Ageing,29,207−210,2000)、また、カルノシンは抗老化作用(Bioscience Report,19,581−587,1999)や創傷治癒作用(Roberts PR et al,Nutrition,14,266−269,1998)、あるいは、摘出血管を用いた血管拡張作用(Ririe DG et al,Nutrition,16,168−172,2000)などの生理作用を有することが示されている。カルノシンのこれらの多彩な生理作用に基づき、臨床において、カルノシンは高血圧症、リュウマチ・その他の多発性関節炎症、十二指腸潰瘍あるいは胃潰瘍、抜歯および歯周病に伴う炎症、手術不能の癌などに適応されてきた(Quinn PJ et al,Mol Aspects Med,13,379−444,1992)。
カルノシンによる糖尿病の合併症及び病因の処理方法(特表平7−500580)には、ウサギにカルノシン2%水溶液を摂取させることによりアテローム性動脈硬化ならびに白内障の治療に有効であることが示されている。この発明の実施例におけるカルノシンのウサギに対する投与量は、800mg/体重kg/日以上(経口摂取)である。
カルノシンあるいはその誘導体および分枝アミノ酸を含む抗酸化活性を有する医薬組成物および/または栄養組成物(特表平11−505540)には、ラットにカルノシン0.75%水溶液を摂取させることにより、臓器中脂質過酸化物生成が抑制できることが示されている。この発明では、カルノシンが、300mg/体重kg/日以上(経口摂取)投与されている。
カルノシン亜鉛塩を有効成分とする膵炎治療剤(特許2777908)には、ラットに100mg/体重kg/日以上経口投与されている。
カルノシンの肝臓機能保護作用ならびにストレス関連物質の代謝促進作用(日本生理誌、52、221−228、1990)には、ラットに250mg/体重kg/日以上(経口摂取)、ラットやマウスに、100mg/体重kg/日以上(非経口投与)投与されている。このように動物実験で確認されているカルノシンの生理作用は、いずれの場合も100mg/kg体重/日以上のカルノシンを摂取させた場合に確認されている。
一方、ヒトに対する作用としては、カルノシンの鉄吸収促進作用(特開平7−97323)には、ヒトに対して50mg〜5g/日の経口投与量が必要であると記されている。
また、カルノシンの赤血球数の減少に起因する医学的症状の予防及び改善剤(特開平8−81372)には、ヒトに対して50mg〜5g/日(経口投与)あるいは5〜500mg/日(非経口投与)が求められている。さらに、カルノシンの学習能力向上作用(特開平9−20661)には、ヒトに対して50mg〜5g/日(経口投与)あるいは5〜500mg/日(非経口投与)が求められている。このように、ヒト試験で確認されているカルノシンが生理作用を示すには、いずれの場合も経口投与で50mg/日以上の摂取が必要である。
このように、カルノシンは多彩な生理活性を持つことが明らかになってきたが、その作用メカニズムはすでに報告されている抗酸化作用(Kohen R et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,85,3175−3179,1988)あるいは金属キレート作用(Chem Lett,88,335−338,1988)に基づいており、その投与量は決して少なくない。すなわち、これまでの報告によると、動物に対してカルノシンが生理作用を示すには、100mg/kg体重/日以上の摂取が必要であり、また、ヒトに対してカルノシンが生理作用を示すには、経口投与で50mg/日以上の摂取が必要である。
上記のように、カルノシンの多彩な作用が報告されているにもかかわらず、これまではカルノシンによる各症状の対症療法としての作用しか検討されてきておらず、また、投与されたカルノシン量も多く、カルノシンを低用量摂取することによる自律神経活動の調節作用にかかわる報告はなされていない。
発明の開示
本発明は、生体の恒常性を維持するため、あるいは崩れた恒常性を回復させるために、自律神経に直接作用し、自律神経活動の調節作用を有する量を正確に摂取できる飲食物とその方法を提供することにある。
本発明者らは、課題を解決するために、約160年以上も前にイギリスのバッキンガム宮殿のコック長であったブランド氏が、王室の健康維持を目的として、特殊な製法でチキンを処理して得たチキンエッセンスに注目した。
近年、チキンエッセンスの効能について科学的な研究が行われ、基礎代謝量を上げる作用(Nutr Reports Int,39,547−556,1989)および精神疲労を和らげる作用(Appl Human Sci,15,281−286,1996)が報告されている。
このチキンエッセンスは、まるごとのチキンを2回茹でしたダブルボイル製法で脂肪を除いてあり、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白質が多く含まれている。アミノ酸、ペプチドおよび蛋白質に富む飲食物としては、コラーゲンペプチドや大豆ペプチドなどが知られているが、このチキンエッセンスに特徴的な成分として、チキンの筋肉由来のカルノシンとアンセリンがある。本発明者らは、カルノシンの自律神経系に与える作用について研究を行った。
カルノシンをラットの静脈内に投与したところ、カルノシンが低用量で交感神経(副腎、肝臓、腎臓を支配する交感神経)の遠心性神経活動を抑制する一方、副交感神経(腹腔を支配する迷走神経)の遠心性神経活動を興奮させる作用があることを見出した。
カルノシンが自律神経活動に直接作用しているのであれば、カルノシンの自律神経に対する直接作用の結果、血糖調節、血圧調節、胃液分泌調節、体温調節などの生体の調節機構に影響を与えることが推察される。つまり、カルノシンの自律神経活動に対する直接作用は、交感神経活動を抑制し、副交感神経活動の促進であることから、血糖調節に対しては血糖を下げ、血圧調節に対しては血圧を下げる方向に働くはずである。
また、カルノシンが肝臓の副交感神経(迷走神経)活動を促進したことから、肝臓ではグルコースの取り込みが促進され、その結果、血糖値が下がるはずである。また、カルノシンが肝臓の交感神経活動を抑制したことから、グルコースの血中への放出が抑制され、血糖値が下がるはずである。さらに、副腎の交感神経活動を抑制したことから、アドレナリンの分泌を抑制する結果、アドレナリンによる血糖上昇が抑えられるはずである。
つまり、低用量のカルノシンを自律神経へ直接作用させた結果、血糖値が下がることが予想される。このことは、交感神経活動の機能亢進により高血糖を示す動物モデルである、2−deoxy−D−glucose(2DG)高血糖ラットに低用量のカルノシンを腹腔内投与してカルノシンの血糖低下作用を調べた結果、予想どおり、低用量のカルノシンが血糖低下作用を示した。また、高用量のカルノシンではその効果が認められないことを見出した。すなわち、ある特定の低用量のカルノシンを摂取することにおいてのみカルノシンの自律神経調節作用が見られたのである。
アンセリンは、カルノシンと同じヒスチジン含有ジペプチドで、カルノシンのイミダゾール環の1位がメチル化したカルノシンのメチル化物である。そこで、カルノシンの血糖低下作用がカルノシンの特異的な作用であるかどうかを確認するために、アンセリンの血糖低下作用について調べた。その結果、アンセリンには血糖低下作用が認められなかった。つまり、低用量のカルノシンによる血糖低下作用は、カルノシンの特異的な作用であることが明らかとなった。
次に、カルノシンの自律神経調節作用による血糖低下作用が、膵臓ベータ細胞の破壊によりプロインシュリン生合成を阻害したstreptozotocin(STZ)糖尿病ラットにおいても効果があるかどうかを調べた。STZ糖尿病ラットに経口グルコース負荷試験をした結果、低用量のカルノシンが血糖低下作用を示すことを確認した。すなわち、インシュリン分泌不全のSTZ糖尿病ラットにおいても、カルノシンが肝臓の副交感神経(迷走神経)活動を促進させることにより肝臓でのグルコースの取り込みが促進された結果、血糖低下したものと考察でき、低用量のカルノシンが抗糖尿病作用を有することが確認できた。
さらに、低用量のカルノシンが副腎の交感神経活動を抑制したことから、アドレナリンの分泌が抑制され、アドレナリンによる心拍出力増加作用が抑えられ、その結果、血圧が下がるはずである。ここで、食塩負荷により交感神経活動の機能が亢進したdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩高血圧ラットを用いて、低用量のカルノシンの血圧低下作用を調べたところ、低用量のカルノシン含有食を摂取したラットの血圧が低下することを確認した。
これら動物実験の結果から、カルノシンはヒト自律神経活動に対しても同様な効果を示すと考えられた。そこで、ヒト心臓の心電図を測定し、心電図のR波の間隔(R−R間隔)を測定した後、心拍変動のスペクトル解析を行なう方法(Science 213:220−222(1981))で心臓の自律神経活動を調べることにした。その結果、低用量のカルノシンを経口摂取すると、心臓の副交感神経活動が促進すること、また、この時の総自律神経活動が副交感神経活動の促進をいずれも下回ることから、ヒトに対しても低用量のカルノシンが交感神経活動を抑制していることを見出した。
以上の結果から、本発明者らは、動物実験において低用量のカルノシンが交感神経の遠心性神経活動を抑制し、副交感神経の遠心性神経活動を促進させるという自律神経調節作用を見出した。また、低用量のカルノシンが自律神経調節作用を示した結果、高血糖モデルや高血圧モデルの動物において、自律神経調節による血糖調節や血圧調節に作用を及ぼすことを確認した。さらに、低用量のカルノシンは、ヒトの自律神経調節作用があることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを含んで成る、自律神経調節作用を有する組成物を提供することにある。
本組成物は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを含んで成る、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する自律神経調節作用を有し、かつ、本組成物は、自律神経の乱れに起因する症状が交感神経活動の亢進による高血圧症状又は高血糖症状を改善する作用を有する。
本組成物は医薬品であってもよく、また飲食物であってもよい。
また、本発明は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経調節方法を提供する。本方法は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する方法であり、かつ、交感神経の亢進を抑制および副交感神経の活動を促進させる方法である。
さらに、本発明は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経を調節するための組成物を製造するための、カルノシンの使用を提供する。本使用方法は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和するための組成物を製造するための、カルノシンの使用であり、かつ、交感神経の亢進を抑制および副交感神経の活動を促進させるための、カルノシンの使用である。
具体的なこのような組成物の例として、1錠にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有する錠剤、1カプセルにカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有するカプセル剤、1本にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有するドリンク剤やジュース類、1包にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有する散剤又は顆粒剤や、あるいは1片にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有するケーキ、ビスケット又はパンなどの食品が挙げられる。
これら組成物は、自律神経調節作用を示すカルノシンの量、つまり、一回当りの摂取量がヒト体重1kg当り0.1mg以上とならないカルノシンの摂取量となるように、1つ或いは複数個を摂取することができる。また、これらの組成物には1錠、1本、1包あるいは一片あたりに0.04mg以下のカルノシンを含有させても良く、この場合は、自律神経調節作用を示すカルノシンの量、つまり、一回あたりの摂取量がヒト体重1kg当り0.1mg以上とならないカルノシンの摂取量となるように、複数個の組成物を摂取すればよい。
発明実施の形態
以下本発明を具体的に説明する。
低用量のカルノシンの自律神経活動に対する作用を、自律神経活動が直接測定できるラットの実験方法(日本臨床、48巻、150−158、1990)を用いて調べた。本実験方法の特徴は、各臓器を支配する自律神経の神経活動に対するカルノシンの作用を個々に調べることができる点にある。自律神経系は、生体における血糖調節、血圧調節、胃液分泌調節、体温調節などを行なっている(岩波講座「現代医学の基礎」第4巻、萩原俊男、垂井清一郎編、生体の調節システム、1999年)ことから、自律神経活動の調節を直接おこなうことができれば、生体のこれらの調節機構を制御できる。
先ず、低用量のカルノシンが交感神経副腎枝の遠心性神経活動に及ぼす作用について調べたところ、ラットに100ng(0.00033mg/体重kg)のカルノシンを静脈内投与すると、交感神経副腎枝の遠心性神経活動が抑制された(図1)。
次に、低用量のカルノシンが交感神経肝臓枝の遠心性神経活動に及ぼす作用ついて調べたところ、ラットに100ng(0.00033mg/体重kg)のカルノシンを静脈内投与すると、交感神経肝臓枝の遠心性神経活動が抑制された(図2)。
低用量のカルノシンが交感神経腎臓枝の遠心性神経活動に及ぼす作用について調べたところ、ラットに1,000ng(0.0033mg/体重kg)のカルノシンを静脈内投与すると、交感神経腎臓枝の遠心性神経活動が抑制された(図3)。
さらに、代表的な副交感神経である迷走神経の神経活動に対する低用量のカルノシンの作用について調べた。迷走神経腹腔枝は、肝臓、膵臓および消化管の大部分の臓器を支配している。ラットに1,000ng(0.0033mg/体重kg)の低用量のカルノシンを静脈内投与すると、迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動が促進された(図4)。
以上の結果から、低用量のカルノシンが交感神経及び副交感神経に直接作用するという自律神経調節作用を示すことを明らかにした。
この低用量のカルノシンの自律神経調節作用を更に下記の方法で確認した。
低用量のカルノシンが交感神経活動優位な状態の高血糖を改善する作用を調べるために、高血糖の動物モデルとして、2−deoxy−D−glucose(2DG)高血糖ラット(Brain Research,809,165−174,1998)を用いた。2DG高血糖ラットにカルノシンを10−100,000ng(0.000033mg−0.33mg/体重kg)腹腔内投与すると、血糖低下作用を認めた(図5)。しかしながら、高用量のカルノシンを1,000,000ng(3.3mg/体重kg)腹腔内投与しても血糖低下作用はなかった。この結果は、カルノシンは低用量(10ng−100μg/回)摂取した時のみ自律神経に作用し、その結果、血糖の低下が起こり、交感神経活動が優位な状態の高血糖を改善したものと考えられる。
この低用量のカルノシンが示す血糖低下作用が、カルノシンと類似構造を持つアンセリンにも血糖低下作用がみられるかどうかを調べた。その結果、アンセリンを2DG高血糖ラットに10ng(0.000033mg/体重kg)脳室内投与しても、血糖低下作用は認められなかった(図6)。一方、同用量のカルノシンを脳室内に投与すると血糖低下作用を認めた。この結果は、カルノシンによる血糖低下作用は、カルノシンが受容体を介して特異的に作用していることが想定される(Brain Res,158,407−422,1978)ことから、構造類似であるアンセリンでは受容体に結合できないことによると考えられる。
次に、高血糖モデルのラットであるstreptozotocin(STZ)糖尿病ラット(日本臨床、56巻、732−737、1998)に対しても低用量のカルノシンが自律神経に作用し、その結果血糖低下作用を示すかどうかを調べた。本モデルは、2DG高血糖モデルと異なり、STZにより膵臓ベータ細胞が破壊され、プロインシュリン生合成の阻害により高血糖を発症する糖尿病モデルである。STZ糖尿病を発症したラットに経口グルコース負荷することにより血糖を上昇させ、この血糖上昇に対する低用量のカルノシンの作用を調べた。カルノシンをラットに10ng(0.000033mg/体重kg)脳室内投与(図7)あるいは100ng(0.00033mg/体重kg)腹腔内投与すると、経口グルコース負荷による血糖上昇を回復する作用を確認できた(図8)。
STZ糖尿病ラットは、インシュリン分泌不全とともに、横隔膜中のカルノシン濃度が正常ラットにくらべ低下しており(Metabolism,29,605−616,1980)、インシュリン分泌不全による高血糖の病態がカルノシンの濃度低下に関係していることを示唆している。従って、カルノシンの投与は、交感神経活動の亢進以外の要因により生じた高血糖に対しても、カルノシンが肝臓の迷走神経活動を促進させることにより、肝臓でのグルコースの取り込みが促進された結果、血糖低下したものと考察でき、カルノシンが低用量で自律神経を介した抗糖尿病作用を有することが示された。
低用量のカルノシンが自律神経に作用し、交感神経活動優位な状態の高血圧状態を改善する作用を、高血圧の動物モデルであるdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩高血圧ラット(日本臨床、58巻、708−712、2000)を用いて調べた。DOCA食塩高血圧ラットに0.001%および0.0001%カルノシン含有飼料を摂取させた場合、血圧低下作用を認めた(図9)。
血圧は末梢動脈の緊張や心臓の収縮力などが複雑に絡み合って正常の値に保たれている。これは主に交感神経の支配によるところが大きい(平野鉄雄、新島旭著、ブレインサイエンスシリーズ第13巻「脳とストレス」、136−167、1995年、共立出版)ことから、低用量のカルノシンが交感神経活動を抑制することにより、血圧を低下させたものと考えられる。この結果は、また、低用量のカルノシンが交感神経活動優位な状態の高血圧を改善したものと考えられる。
一方、ヒトの自律神経に及ぼす影響を、ヒト心電図を測定することにより調べた。心臓の拍動は自律神経により調節され、呼吸や血圧により変動する(心拍変動)。この心拍変動時系列のスペクトル解析を行い、約0.1Hz(周期約10秒)および約0.3Hz(約3秒)の周波数帯域に特徴的なゆらぎ(スペクトルのピーク)を測定する(Science 213:220−222(1981))ことで、カルノシンの自律神経活動に及ぼす影響を調べた。
その結果、被験者あたり、0.04mgから5mgのカルノシンを摂取させると、心臓の副交感神経活動を、摂取する前の活動(前値)に比べ2倍以上亢進した(図10)。この時、全自律神経活動の亢進は、副交感神経活動の亢進をすべて下回っていたことから、カルノシンは低用量で交感神経活動を抑制していることを示している。この結果は、動物実験でのカルノシンの自律神経調節作用が、ヒトにおいても再現されたことを示している。
以上の結果から、本発明は、カルノシンが低用量で交感神経活動を抑制し、副交感神経活動を促進する自律神経調節作用を有することが示された。
カルノシンが自律神経調節作用を示す投与量は、高血糖の動物モデルとして用いた2−deoxy−D−glucose(2DG)高血糖ラットへのカルノシンの投与量から決めることができる。すなわち、ラットにカルノシンを10−100,000ng腹腔内投与すると血糖低下作用が認められたこと、カルノシンのマウス経口吸収率が30−70%(Am J Physiol,255,G143−G150,1988)であることから、ラットにカルノシンを33−330,000ng経口投与すれば、カルノシンがラットに自律神経調節作用を示す。また、実施例で用いたラットの体重は約300gであることから、110ng−1.1mg/体重kgを経口投与すれば、カルノシンがラットに自律神経調節作用を示すことになる。従来技術で述べたように、これまでカルノシンを実験動物に経口投与する場合、いずれも100mg/体重kg/日以上必要であることがわかっている。本発明におけるカルノシンの投与量は、従来用いられてきた用量に比べて少ない投与量(90分の1から900000分の1)で有効性を示している。一方、本発明では、ラットに10mg/体重kg/日以上のカルノシンを経口投与するとカルノシンの自律神経調節作用がみられない。
例えば、ラットにカルノシンを10−100,000ng腹腔内投与すると2DG高血糖ラットの血糖の上昇を押さえたが、この10倍から100000倍量である1mgのカルノシンを腹腔内投与しても2DG高血糖モデルラットに対して血糖の上昇を押さえる効果が見られなかった(図5)。カルノシンの血糖低下作用の用量作用曲線は釣り鐘型を示す。グルタミン酸受容体アゴニスト研究において、アゴニストの作用の用量作用曲線が、釣り鐘型を示す場合が多く、またアゴニストが極めて低濃度で有効であることが特徴である(日薬理誌、116、125−131、2000)。
グルタミン酸受容体は神経細胞の興奮性の調節や伝達物質の放出制御をしているが、必ずしもグルタミン酸受容体の情報伝達系が興奮性だけに働くわけでないことが、釣り鐘型の用量作用曲線を示す要因と考えられている。すなわち、グルタミン酸受容体の情報伝達系が一つの経路だけでなく、濃度依存的に(高濃度において)他の情報伝達経路を活性化していることが想定される。カルノシンにも受容体が存在することが報告されている(Brain Res,158,407−422,1978)ことから、グルタミン酸受容体アゴニストと同様に、釣り鐘型の用量作用曲線を示したと考えられる。
一方、動物の有効量からヒトへの投与量を推定する場合、動物種差を考慮した係数10(食品の安全性評価、粟飯原景昭、内山充編著、学会出版センター、1987)を用いると、ヒト投与量はラット投与量の1/10となる。従って、本発明の場合、ヒトでの経口投与量は、11ng−0.11mg/体重kgであると推定できる。
実際、カルノシンがヒトの心臓自律神経活動に及ぼす影響を検討した結果、カルノシンを被験者あたり0.04mgから5mgの低用量を投与すると副交感神経活動の亢進が認められた。被検者の体重あたりに換算すると、その用量は、0.000741mg/kg−0.0926mg/体重kgであった。カルノシンの動物での有効量からヒトの投与量を推定した結果と比較すると、上限値は推定経口投与量と一致した。しかしながら、下限値については約100倍近くの差異を認めた。
これは血中のカルノシン分解酵素活性が、ヒトの場合2−7μmol/hr/mlである((Pediat Res,7,601−606(1973))のに対して、ラットの場合は血中のカルノシン分解酵素活性が検出されない(Biochim Biophys Acta.429(1),214−219(1976))ことによると考えられる。発明者等がラット血漿中のカルノシン分解酵素活性を測定したところ、0.01−0.04μmol/hr/mlとヒトに比べ約100倍低いことがわかった。すなわち、少量のカルノシンでは、ヒト血中で速やかにカルノシンが分解されるため、ヒトの場合ラットに比べ約100倍量のカルノシンが必要であることを示している。従って、カルノシンの動物での有効量からヒトの投与量を推定した結果は、カルノシン分解酵素活性の違いで説明できる。
本発明におけるカルノシンを自律神経調節剤として用いる場合、食事の影響を受けない時間帯において低用量を摂取することが望ましい。例えば、就寝前あるいは食間に摂取することがよい。さらに、肉類の摂取を避け、おもに菜食を中心として食事する菜食主義者(ベジタリン)にとって、自律神経調節剤としてカルノシンを摂取することは望ましい形態である。
カルノシンは、鶏肉や牛肉に多く含まれる。例えば、鶏肉100gあたり280mgのカルノシンを含み、また、牛肉100gあたり150mgのカルノシンが含まれている(Adv Enzyme Regul.30,175−194(1990))。本文献の含量から計算すると、カルノシンがヒト副交感神経活動を促進する量(例えば5mg)は、鶏肉1.78gに相当する。さらに、鶏肉のうちでもむね肉が最もカルノシン含量が高いことが知られており、副交感神経活動を促進するほど少量の鶏肉を摂取することは実用的でない。
さらに、文献(Am J Physio.255,G143−G150(1988))によれば、マウスの空腸にカルノシンを投与し、その吸収率を調べた結果、カルノシン単独での吸収率よりもL−alanineとともに投与した吸収率が2倍以上高い。また、β−alanineとともに投与すると、吸収率が3倍以上になるなど、共存するアミノ酸の種類によりカルノシンの吸収率が異なることが示されている。従って、本発明で示したように、低用量のカルノシンで自律神経活動を調節するには、正確な低用量のカルノシン量を摂取することが必須であるため、自律神経活動を調節できる作用量のカルノシンを食事により摂取することは実用的でない。
本発明におけるカルノシンを自律神経調節剤として用いる場合、カルノシンを含有してなる健康飲食品のみならず、カルノシンを含有してなる食品添加物も含まれる。健康飲食品として用いられる場合、例えば、乾燥食品、サプリメント、清涼飲料水、ミネラルウォター、アルコール飲料等に配合することができるが、これに限定されるものではない。
本発明のカルノシンを飲食品や食品添加物として用いる場合、製剤として加工しても良い。製剤としては固体でも液体でもよく、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤等を挙げることができる。また、本発明の製剤としては、製剤上許容される賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、希釈剤、香料剤、安定化剤、懸濁剤用滑沢剤、結合剤、保存剤、錠剤用崩壊剤等単独で、または、組み合わせて使用することができる。
本発明のカルノシンを治療薬として用いる場合、製剤としては固体でも液体でもよく、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、座剤、顆粒剤、内用液剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤等を挙げることができる。また、本発明の製剤としては、製剤上許容される賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、希釈剤、香料剤、安定化剤、懸濁剤用滑沢剤、結合剤、保存剤、錠剤用崩壊剤等単独で、または、組み合わせて使用することができる。
以下実施例に基づいて説明する。
実施例 1.ラット自律神経系に対するカルノシンの調節作用
Niijimaらの方法(Neurobiology,3,299−307,1995)に準じて、カルノシンの自律神経活動に及ぼす作用を調べた。室温(24℃)環境下、自由摂餌下で飼育したWistar系雄性ラット(体重約300g)を実験開始12時間前に絶食(水は自由摂取)させた。ラットをウレタン麻酔下(1g/体重kg、腹腔内投与)で開腹し、交感神経枝あるいは迷走神経枝の切断中枢側より神経フィラメントを分離し、遠心性神経活動を交流増幅器を介して記録した。神経活動はオッシロスコープで観察し、磁気テープに保存した。同時に、5秒のリセット時間に設定したレートメーターを介し、ペン型記録計により神経活動のタイムコースを記録した。
カルノシンは100ngあるいは1,000ngを0.1mlの生理的食塩水に溶解したものを静脈内投与した。コントロールとして、生理食塩水のみを0.1ml静脈内投与した。
カルノシン投与の効果は、投与前神経活動数(5秒間の活動数10個の平均値)を100とした時のカルノシン投与後の神経活動数を神経活動率(%)として算出した。実験にはそれぞれ5匹のラットを用いた。データはANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
(1)交感神経副腎枝の遠心性神経活動の抑制
カルノシンをラットに100ng静脈内投与すると、交感神経副腎枝の遠心性神経活動が投与後30分(抑制率31.3%)、60分(抑制率46.9%)、90分(抑制率58.1%)で有意に抑制された(図1)。
(2)交感神経肝臓枝の遠心性神経活動の抑制
カルノシンをラットに100ng静脈内投与すると、交感神経肝臓枝の遠心性神経活動が投与後30分(抑制率20.1%)、60分(抑制率25.9%)、90分(抑制率32.0%)で有意に抑制された(図2)。
(3)交感神経腎臓枝の遠心性神経活動の抑制
カルノシンをラットに1,000ng静脈内投与すると、交感神経腎臓枝の神経活動が投与後30分(抑制率29.7%)、60分(抑制率32.8%)、90分(抑制率28.0%)で有意に抑制された(図3)。
(4)迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動の促進
迷走神経活動への効果を調べるために、迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動を記録した。カルノシンをラットに100ng静脈内投与すると、投与後30分(促進率15.4%)、60分(促進率28.6%)、90分(促進率48.7%)で有意に遠心性神経活動が促進された(図4)。
以上の実験結果は、低用量のカルノシンを静脈内投与すると交感神経活動を抑制し、迷走神経活動を促進させていることから、低用量のカルノシンが自律神経調節作用を有していることが示された。
実施例 2.2DG高血糖ラットに対するカルノシンの血糖上昇抑制効果
低用量のカルノシンにより自律神経活動が調節されると、血糖値が下がることが予想されるので、Chunらの方法(Brain Research,809,165−174,1998)に準じて2DG高血糖ラットに対するカルノシンの血糖上昇抑制効果を調べた。室温(24±1℃)、平均80ルクスの蛍光灯で12時間照明した部屋で、自由摂餌のもと、少なくとも10日間以上環境に慣らしたWistar系雄性ラット(初期体重、約250g)を使用した。
ラットは実験の3日前に、ペントバルビタール麻酔下(35mg/体重kg,腹腔内投与)に、右心房にサイラスティックチューブ(Daw Corning,Midland,MI)とポリエチレンチューブ(Clay Adams,Parsippany,NJ)からなる心臓カテーテルを挿入し、右の側脳室(lateral cerebral ventricle,LCV)にポリエチレンチューブを挿入した。実験当日、生理食塩水に溶解したカルノシンをラット脳室内投与(0.01ml)、または、腹腔内投与(0.1ml)すると同時にラット側脳室内に80μmolの2−deoxy−D−glucose(2DG、0.01ml)を投与した。コントロールラットには、カルノシンのかわりに生理食塩水、2DGのかわりに人工脊髄液をそれぞれ同容量投与した。
側脳室内に2DG投与後、60分に心臓カテーテルより300μl採血し、血漿グルコース濃度を測定した。血漿中のグルコース濃度は、Fuji−Dri−chem system(Fuji Film,Tokyo)を用いてグルコースオキシダーゼ法により測定した。血漿グルコース濃度の変化は、2DG投与後90分のコントロールの値を100とした時の割合(%)で表した。実験には4匹あるいは5匹のラットを用いた。データはANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
(1)カルノシン腹腔内投与による血糖上昇抑制
2DG高血糖ラットにカルノシンを1ng、10ng、100ng、1,000ng、10,000ng、100,000ngおよび1,000,000ng腹腔内投与し、血漿グルコース濃度の変化を調べた。その結果、カルノシン10ng(抑制率16.0%)、100ng(抑制率31.5%)、1,000ng(抑制率26.8%)、10,000ng(抑制率27.6%)および100,000ng(抑制率21.9%)腹腔内投与により、血糖上昇が有意に抑制された(図5)。
(2)アンセリンとカルノシンの比較
カルノシンと構造が類似しているアンセリンを脳室内投与して、血糖上昇抑制作用を比較した。ラットにカルノシンを10ng脳室内投与すると、高血糖が抑制されたが、同量のアンセリンでは高血糖を抑制しなかった(図6)。この結果は、カルノシンの血糖低下作用が、カルノシンに特異的な反応であることを示している。
実施例 3.STZ糖尿病ラットにおける経口グルコース負荷試験におよぼすカルノシンの血糖上昇抑制効果
室温(24±1℃)、平均80ルクスの蛍光灯で12時間照明した部屋で、自由摂餌のもと、少なくとも10日間以上環境に慣らしたWistar系雄性ラット(初期体重、約250g)を使用した。ラットは実験の3日前に、ペントバルビタール麻酔下(35mg/体重kg,腹腔内投与)に、右心房にサイラスティックチューブ(Daw Corning,Midland,MI)とポリエチレンチューブ(Clay Adams,Parsippany,NJ)からなる心臓カテーテルを挿入し、右の側脳室(lateral cerebral ventricle,LCV)にポリエチレンチューブを挿入した。
次に、STZ(streptozotocin)糖尿病ラットはPorthaらの報告(Diabetes 30,64−69,1981)に準じて作製した。Streptozotocin(STZ、Sigma社製)は、0.05Mクエン酸溶液(pH4.5)に2g/mlの濃度で溶解したものを体重kgあたり60mg腹腔内投与した。作製したSTZ糖尿病ラットに0.5g/mlの濃度で溶解したグルコース水溶液を、ラットあたり1ml(0.5g)経口投与(経口グルコース負荷)した。経口グルコース負荷と同時に、生理食塩水に溶解したカルノシンをラット脳室内投与(0.01ml)または腹腔内投与(0.1ml)した。
経口投与はゾンデを用いて、脳室内投与は側脳室ポリエチレンチューブを通じて、腹腔内投与は注射筒と注射針を用いてそれぞれ行なった。コントロールラットには、カルノシンのかわりに生理食塩水、2DGのかわりに人工脊髄液をそれぞれ同容量投与した。グルコース経口投与前およびグルコース経口投与後、15、30、60及び90分後に心臓カテーテルより300μl採血し、血漿中のグルコース濃度(血糖)を測定した。カルノシン投与時の血漿グルコース濃度は、グルコース投与前の血漿グルコース濃度を100とした時の割合(%)を算出した。実験には4匹あるいは5匹のラットを用いた。データは、ANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
ラットにカルノシンを10ng脳室内投与すると、経口グルコース負荷による血糖上昇が、15分から90分まで有意に抑制された(図7)。その抑制率は、15分で14.5%、30分で17.3%、60分で14.7%、90分で11.4%であった。また、ラットにカルノシンを100ng腹腔内投与すると、経口グルコース負荷による血糖上昇が、60分および90分で有意に抑制された(図8)。その抑制率は、60分で14.3%、90分で12.4%であった。
実施例 4.DOCA食塩高血圧ラットに対するカルノシンの血圧上昇抑制効果
Sprague−Dawley雄性ラット(6週齢)を使用した。ペントバルビタールナトリウムを40mg/体重kg腹腔内投与することにより麻酔し、右脇腹を切開することにより右腎臓を摘出した。外科手術後、1週間の回復期間を経た後、偽手術(シャム)群とdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩群に群分けした。それぞれのグループは、さらに、正常食群、0.001%カルノシン含有食群および0.0001%カルノシン含有食群にグループ分けした。
DOCA食塩群のラットは、コーン油に懸濁したDOCAを1週間に2回、15mg/体重kgを皮下注射するとともに、水道水に1%塩化ナトリウムを添加したものを飲料水として与えた。偽手術群には、DOCAおよび塩化ナトリウムともに与えなかった。収縮期圧をtail cuffとpneumatic pulse transducer(BP−98A,Softron)を用いて、週1回、5週間にわたりモニターした。実験にはDOCA群で9匹、シャム群で6匹のラットそれぞれを用いた。データはANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
DOCA食塩−普通食群のラットの収縮期圧は、1週目から上昇し、5週目には200mmHg近くまで血圧上昇した。一方、DOCA食塩―0.001%カルノシン含有食群ならびにDOCA食塩―0.0001%カルノシン含有食群のラットは、ともにDOCA食塩―普通食群のラットに比べ、1週目から血圧上昇が有意に抑制した(図9)。DOCA食塩―0.0001%カルノシン含有食群で、1週目(抑制率9.6%)、2週目(抑制率10.2%)、3週目(抑制率15.0%)、4週目(抑制率22.1%)、5週目(抑制率17.8%)であった。また、DOCA食塩―0.001%カルノシン含有食群で、1週目(抑制率6.2%)、2週目(抑制率12.4%)、3週目(抑制率19.6%)、4週目(抑制率21.5%)、5週目(抑制率25.5%)であった。以上の結果は、カルノシン含有食が、交感神経活動優位な状態の血圧上昇を有意に抑制することを示している。
実施例 5.ヒト自律神経系に対するカルノシンの調節作用
被検者の安静時心電図を5分間測定し、被検サンプルを飲んだ時から30分後および60分後にそれぞれ5分間心電図を測定した。この時、呼吸変動の影響を避けるため、1分間に15回の呼吸を行なうよう、リズム音に合わせて呼吸した時の心電図を測定した。心電図のR波間の間隔(R−R間隔)を測定し、森谷らの作製したプログラムで、パワースペクトル解析した(J Sport Med.Sci.7,31−39(1993))。周期成分は、欧米の心臓病学会の分類基準(Circulation,93,1043−1065(1996))に準拠して、心拍変動をLow frequency(0.03−0.15Hz)とHigh frequency(0.15−0.4Hz)に分けた。
カルノシンは、1人あたり0.04mg,0.2mg,1mg,5mgおよび25mgを薬包紙に秤量した。ただし、0.2mgについては、カルノシンと上新粉を1:4に混合したもの(1/5希釈)を1mg秤量した。また、0.04mgは、カルノシンと上新粉を1:4に混合したものと上新粉をさらに1:4に混合したもの(1/25希釈)を1mg秤量した。薬包紙に秤量したカルノシンを舌で舐めることにより服用した。
被験者は、21歳から51歳(33.0±11.95歳)で、体重54kgから73.5kg(64.3±7.01kg)の8人で、そのうち0.04mgおよび0.2mgの実験は6名、1mgおよび5mgの実験は8名、25mgの実験は5名で実施した。神経活動の評価は、副交感神経活動が前値の200%以上を示したヒトの割合で示した。
カルノシン0.04mg摂取実験では6名中1名(促進者の割合16.7%、副交感神経活動の促進率249%、総自律神経活動の促進率195%)、0.2mg摂取実験では6名中4名(促進者の割合66.7%、副交感神経活動の平均促進率436%、総自律神経活動の平均促進率329%)、1mg摂取実験では8名中3名(促進者の割合37.5%、副交感神経活動の平均促進率259%、総自律神経活動の平均促進率190%)、5mg摂取実験では8名中2名(促進者の割合25.0%、副交感神経活動の平均促進率472%、総自律神経活動の平均促進率410%)、25mg摂取実験では8名中0名(促進者の割合0%)に自律神経活動への影響が認められた。
以上の結果は、カルノシンがヒトにおいても副交感神経活動を促進することを示している。その用量は、0.04m/回gから5mg/回(0.000741mg/kgから0.0926mg/kg)であった。カルノシンが副交感神経活動を前値の200%以上促進した被験者の割合を図10に示す。一方、総自律神経活動は、すべての濃度において、副交感神経活動の促進率を下回った。これは、カルノシンが交感神経活動を抑制していることを示している。
(製剤例1)錠剤
を均一に混合し、1粒100mgの錠剤とした。
(製剤例2)散剤および顆粒剤
を均一に混合し、散剤あるいは顆粒剤とした。
(製剤例3)カプセル剤
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、製剤例1に示す組成物を常法により充填し、1粒100mgのソフトカプセルを得た。
(製剤例4)ドリンク剤
上記成分を配合し、水を加えて10リットルとした。このドリンク剤は、1回あたり約100mlを飲用する。
産業上の利用可能性
カルノシンを低用量のみ摂取することにより、交感神経の遠心性神経活動を抑制し、副交感神経の遠心性神経活動を促進させることができる。このような自律神経調節作用は、自律神経系のアンバランスを予防・緩和する点において、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
図1はラット交感神経副腎枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの抑制作用を示す図である。
図2はラット交感神経肝臓枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの抑制作用を示す図である。
図3はラット交感神経腎臓枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの抑制作用を示す図である。
図4はラット迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの促進作用を示す図である。
図5は2DG高血糖ラットに対するカルノシン腹腔内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図6は2DG高血糖ラットに対するカルノシンおよびアンセリン脳室内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図7はSTZ糖尿病ラット経口グルコース負荷試験に対するカルノシン脳室内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図8はSTZ糖尿病ラット経口グルコース負荷試験に対するカルノシン腹腔内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図9はDOCA食塩高血圧ラットに対するカルノシン含有飼料摂取の血圧上昇抑制作用を示す図である。
図10は、ヒト副交感神経活動に及ぼすカルノシンの促進作用を示す図である。
本発明は、カルノシンの少量投与に適する組成物、即ち少量投与剤に関する。
背景技術
生体の恒常性を維持するために、生体には自律神経系、内分泌系、免疫系が備わっている。その中で、自律神経系は、生体における血糖調節、血圧調節、胃液分泌調節、体温調節などを行なっている(岩波講座「現代医学の基礎」第4巻、萩原俊男、垂井清一郎編、生体の調節システム、1999年)。自律神経系には交感神経系と副交感神経系の2系統があり、両者のバランスによりコントロールされている。すなわち、身体が活動している時は交感神経の活動が優位となり、全身が緊張した状態となる。逆に、副交感神経の活動が優位な時は身体の緊張がとれ、くつろいでいる状態となる。
交感神経の活動が全身的に亢進すると、その結果として副腎髄質からのホルモン分泌を促し、心拍数や血圧の上昇、細気管支の拡張、腸管の運動と分泌の抑制、グルコース代謝の上昇、瞳孔散大、立毛、皮膚と内臓血管の収縮、さらに骨格筋の血管拡張が起こる(岩波講座「現代医学の基礎」第4巻、萩原俊男、垂井清一郎編、生体の調節システム、1999年)。従って、交感神経活動が亢進した場合、高血圧、高血糖、皮膚血流低下、免疫機能低下などの健康障害が起こる。また、副交感神経が亢進した場合には、慢性的な下痢が起こる。
これらの健康障害は各症状や疾患ごとに対症的に治療が行なわれているのが実状であって、根本的な原因である自律神経活動そのものをコントロールする方法はとられていない。対症療法は一時的にその病態を改善することができるが、服薬を中止すれば再発し、また、服薬を継続していたとしても、同じアンバランスによる他の疾患が発症する場合も多い。そこで、根本原因である自律神経活動そのものをコントロールする医薬品あるいは飲食物が求められていた。
一方、L−カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン、以下カルノシン)は、1900年代に骨格筋より発見されたジペプチドで、各種脊椎動物の骨格筋に高濃度(1〜20mM)に存在する(日本臨床、47巻、476−480、1989)。カルノシンは、他のヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリンやホモカルノシンと同様に生体における水溶性抗酸化剤であり(Gariballa SE and Sinclair AJ,Age Ageing,29,207−210,2000)、その抗酸化作用は、アンセリン、ホモカルノシンが強く、カルノシンがこれに次ぐ(Kohen R et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,85,3175−3179,1988)。カルノシンは、膜の脂質の過酸化を防いだり、スーパーオキサイドアニオンを消去したりすることにより細胞膜を安定化している(Boldyrev AA et al,Mol Chem Neuropath,19,185−192,1993)。
カルノシンは抗酸化物質として知られているほか、神経伝達物質、酵素活性調節物質、金属イオンのキレート物質として知られており(Gariballa SE and Sinclair AJ,Age Ageing,29,207−210,2000)、また、カルノシンは抗老化作用(Bioscience Report,19,581−587,1999)や創傷治癒作用(Roberts PR et al,Nutrition,14,266−269,1998)、あるいは、摘出血管を用いた血管拡張作用(Ririe DG et al,Nutrition,16,168−172,2000)などの生理作用を有することが示されている。カルノシンのこれらの多彩な生理作用に基づき、臨床において、カルノシンは高血圧症、リュウマチ・その他の多発性関節炎症、十二指腸潰瘍あるいは胃潰瘍、抜歯および歯周病に伴う炎症、手術不能の癌などに適応されてきた(Quinn PJ et al,Mol Aspects Med,13,379−444,1992)。
カルノシンによる糖尿病の合併症及び病因の処理方法(特表平7−500580)には、ウサギにカルノシン2%水溶液を摂取させることによりアテローム性動脈硬化ならびに白内障の治療に有効であることが示されている。この発明の実施例におけるカルノシンのウサギに対する投与量は、800mg/体重kg/日以上(経口摂取)である。
カルノシンあるいはその誘導体および分枝アミノ酸を含む抗酸化活性を有する医薬組成物および/または栄養組成物(特表平11−505540)には、ラットにカルノシン0.75%水溶液を摂取させることにより、臓器中脂質過酸化物生成が抑制できることが示されている。この発明では、カルノシンが、300mg/体重kg/日以上(経口摂取)投与されている。
カルノシン亜鉛塩を有効成分とする膵炎治療剤(特許2777908)には、ラットに100mg/体重kg/日以上経口投与されている。
カルノシンの肝臓機能保護作用ならびにストレス関連物質の代謝促進作用(日本生理誌、52、221−228、1990)には、ラットに250mg/体重kg/日以上(経口摂取)、ラットやマウスに、100mg/体重kg/日以上(非経口投与)投与されている。このように動物実験で確認されているカルノシンの生理作用は、いずれの場合も100mg/kg体重/日以上のカルノシンを摂取させた場合に確認されている。
一方、ヒトに対する作用としては、カルノシンの鉄吸収促進作用(特開平7−97323)には、ヒトに対して50mg〜5g/日の経口投与量が必要であると記されている。
また、カルノシンの赤血球数の減少に起因する医学的症状の予防及び改善剤(特開平8−81372)には、ヒトに対して50mg〜5g/日(経口投与)あるいは5〜500mg/日(非経口投与)が求められている。さらに、カルノシンの学習能力向上作用(特開平9−20661)には、ヒトに対して50mg〜5g/日(経口投与)あるいは5〜500mg/日(非経口投与)が求められている。このように、ヒト試験で確認されているカルノシンが生理作用を示すには、いずれの場合も経口投与で50mg/日以上の摂取が必要である。
このように、カルノシンは多彩な生理活性を持つことが明らかになってきたが、その作用メカニズムはすでに報告されている抗酸化作用(Kohen R et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,85,3175−3179,1988)あるいは金属キレート作用(Chem Lett,88,335−338,1988)に基づいており、その投与量は決して少なくない。すなわち、これまでの報告によると、動物に対してカルノシンが生理作用を示すには、100mg/kg体重/日以上の摂取が必要であり、また、ヒトに対してカルノシンが生理作用を示すには、経口投与で50mg/日以上の摂取が必要である。
上記のように、カルノシンの多彩な作用が報告されているにもかかわらず、これまではカルノシンによる各症状の対症療法としての作用しか検討されてきておらず、また、投与されたカルノシン量も多く、カルノシンを低用量摂取することによる自律神経活動の調節作用にかかわる報告はなされていない。
発明の開示
本発明は、生体の恒常性を維持するため、あるいは崩れた恒常性を回復させるために、自律神経に直接作用し、自律神経活動の調節作用を有する量を正確に摂取できる飲食物とその方法を提供することにある。
本発明者らは、課題を解決するために、約160年以上も前にイギリスのバッキンガム宮殿のコック長であったブランド氏が、王室の健康維持を目的として、特殊な製法でチキンを処理して得たチキンエッセンスに注目した。
近年、チキンエッセンスの効能について科学的な研究が行われ、基礎代謝量を上げる作用(Nutr Reports Int,39,547−556,1989)および精神疲労を和らげる作用(Appl Human Sci,15,281−286,1996)が報告されている。
このチキンエッセンスは、まるごとのチキンを2回茹でしたダブルボイル製法で脂肪を除いてあり、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白質が多く含まれている。アミノ酸、ペプチドおよび蛋白質に富む飲食物としては、コラーゲンペプチドや大豆ペプチドなどが知られているが、このチキンエッセンスに特徴的な成分として、チキンの筋肉由来のカルノシンとアンセリンがある。本発明者らは、カルノシンの自律神経系に与える作用について研究を行った。
カルノシンをラットの静脈内に投与したところ、カルノシンが低用量で交感神経(副腎、肝臓、腎臓を支配する交感神経)の遠心性神経活動を抑制する一方、副交感神経(腹腔を支配する迷走神経)の遠心性神経活動を興奮させる作用があることを見出した。
カルノシンが自律神経活動に直接作用しているのであれば、カルノシンの自律神経に対する直接作用の結果、血糖調節、血圧調節、胃液分泌調節、体温調節などの生体の調節機構に影響を与えることが推察される。つまり、カルノシンの自律神経活動に対する直接作用は、交感神経活動を抑制し、副交感神経活動の促進であることから、血糖調節に対しては血糖を下げ、血圧調節に対しては血圧を下げる方向に働くはずである。
また、カルノシンが肝臓の副交感神経(迷走神経)活動を促進したことから、肝臓ではグルコースの取り込みが促進され、その結果、血糖値が下がるはずである。また、カルノシンが肝臓の交感神経活動を抑制したことから、グルコースの血中への放出が抑制され、血糖値が下がるはずである。さらに、副腎の交感神経活動を抑制したことから、アドレナリンの分泌を抑制する結果、アドレナリンによる血糖上昇が抑えられるはずである。
つまり、低用量のカルノシンを自律神経へ直接作用させた結果、血糖値が下がることが予想される。このことは、交感神経活動の機能亢進により高血糖を示す動物モデルである、2−deoxy−D−glucose(2DG)高血糖ラットに低用量のカルノシンを腹腔内投与してカルノシンの血糖低下作用を調べた結果、予想どおり、低用量のカルノシンが血糖低下作用を示した。また、高用量のカルノシンではその効果が認められないことを見出した。すなわち、ある特定の低用量のカルノシンを摂取することにおいてのみカルノシンの自律神経調節作用が見られたのである。
アンセリンは、カルノシンと同じヒスチジン含有ジペプチドで、カルノシンのイミダゾール環の1位がメチル化したカルノシンのメチル化物である。そこで、カルノシンの血糖低下作用がカルノシンの特異的な作用であるかどうかを確認するために、アンセリンの血糖低下作用について調べた。その結果、アンセリンには血糖低下作用が認められなかった。つまり、低用量のカルノシンによる血糖低下作用は、カルノシンの特異的な作用であることが明らかとなった。
次に、カルノシンの自律神経調節作用による血糖低下作用が、膵臓ベータ細胞の破壊によりプロインシュリン生合成を阻害したstreptozotocin(STZ)糖尿病ラットにおいても効果があるかどうかを調べた。STZ糖尿病ラットに経口グルコース負荷試験をした結果、低用量のカルノシンが血糖低下作用を示すことを確認した。すなわち、インシュリン分泌不全のSTZ糖尿病ラットにおいても、カルノシンが肝臓の副交感神経(迷走神経)活動を促進させることにより肝臓でのグルコースの取り込みが促進された結果、血糖低下したものと考察でき、低用量のカルノシンが抗糖尿病作用を有することが確認できた。
さらに、低用量のカルノシンが副腎の交感神経活動を抑制したことから、アドレナリンの分泌が抑制され、アドレナリンによる心拍出力増加作用が抑えられ、その結果、血圧が下がるはずである。ここで、食塩負荷により交感神経活動の機能が亢進したdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩高血圧ラットを用いて、低用量のカルノシンの血圧低下作用を調べたところ、低用量のカルノシン含有食を摂取したラットの血圧が低下することを確認した。
これら動物実験の結果から、カルノシンはヒト自律神経活動に対しても同様な効果を示すと考えられた。そこで、ヒト心臓の心電図を測定し、心電図のR波の間隔(R−R間隔)を測定した後、心拍変動のスペクトル解析を行なう方法(Science 213:220−222(1981))で心臓の自律神経活動を調べることにした。その結果、低用量のカルノシンを経口摂取すると、心臓の副交感神経活動が促進すること、また、この時の総自律神経活動が副交感神経活動の促進をいずれも下回ることから、ヒトに対しても低用量のカルノシンが交感神経活動を抑制していることを見出した。
以上の結果から、本発明者らは、動物実験において低用量のカルノシンが交感神経の遠心性神経活動を抑制し、副交感神経の遠心性神経活動を促進させるという自律神経調節作用を見出した。また、低用量のカルノシンが自律神経調節作用を示した結果、高血糖モデルや高血圧モデルの動物において、自律神経調節による血糖調節や血圧調節に作用を及ぼすことを確認した。さらに、低用量のカルノシンは、ヒトの自律神経調節作用があることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを含んで成る、自律神経調節作用を有する組成物を提供することにある。
本組成物は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを含んで成る、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する自律神経調節作用を有し、かつ、本組成物は、自律神経の乱れに起因する症状が交感神経活動の亢進による高血圧症状又は高血糖症状を改善する作用を有する。
本組成物は医薬品であってもよく、また飲食物であってもよい。
また、本発明は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経調節方法を提供する。本方法は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する方法であり、かつ、交感神経の亢進を抑制および副交感神経の活動を促進させる方法である。
さらに、本発明は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経を調節するための組成物を製造するための、カルノシンの使用を提供する。本使用方法は、一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んでなる、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和するための組成物を製造するための、カルノシンの使用であり、かつ、交感神経の亢進を抑制および副交感神経の活動を促進させるための、カルノシンの使用である。
具体的なこのような組成物の例として、1錠にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有する錠剤、1カプセルにカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有するカプセル剤、1本にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有するドリンク剤やジュース類、1包にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有する散剤又は顆粒剤や、あるいは1片にカルノシンを、例えば0.04〜5mg含有するケーキ、ビスケット又はパンなどの食品が挙げられる。
これら組成物は、自律神経調節作用を示すカルノシンの量、つまり、一回当りの摂取量がヒト体重1kg当り0.1mg以上とならないカルノシンの摂取量となるように、1つ或いは複数個を摂取することができる。また、これらの組成物には1錠、1本、1包あるいは一片あたりに0.04mg以下のカルノシンを含有させても良く、この場合は、自律神経調節作用を示すカルノシンの量、つまり、一回あたりの摂取量がヒト体重1kg当り0.1mg以上とならないカルノシンの摂取量となるように、複数個の組成物を摂取すればよい。
発明実施の形態
以下本発明を具体的に説明する。
低用量のカルノシンの自律神経活動に対する作用を、自律神経活動が直接測定できるラットの実験方法(日本臨床、48巻、150−158、1990)を用いて調べた。本実験方法の特徴は、各臓器を支配する自律神経の神経活動に対するカルノシンの作用を個々に調べることができる点にある。自律神経系は、生体における血糖調節、血圧調節、胃液分泌調節、体温調節などを行なっている(岩波講座「現代医学の基礎」第4巻、萩原俊男、垂井清一郎編、生体の調節システム、1999年)ことから、自律神経活動の調節を直接おこなうことができれば、生体のこれらの調節機構を制御できる。
先ず、低用量のカルノシンが交感神経副腎枝の遠心性神経活動に及ぼす作用について調べたところ、ラットに100ng(0.00033mg/体重kg)のカルノシンを静脈内投与すると、交感神経副腎枝の遠心性神経活動が抑制された(図1)。
次に、低用量のカルノシンが交感神経肝臓枝の遠心性神経活動に及ぼす作用ついて調べたところ、ラットに100ng(0.00033mg/体重kg)のカルノシンを静脈内投与すると、交感神経肝臓枝の遠心性神経活動が抑制された(図2)。
低用量のカルノシンが交感神経腎臓枝の遠心性神経活動に及ぼす作用について調べたところ、ラットに1,000ng(0.0033mg/体重kg)のカルノシンを静脈内投与すると、交感神経腎臓枝の遠心性神経活動が抑制された(図3)。
さらに、代表的な副交感神経である迷走神経の神経活動に対する低用量のカルノシンの作用について調べた。迷走神経腹腔枝は、肝臓、膵臓および消化管の大部分の臓器を支配している。ラットに1,000ng(0.0033mg/体重kg)の低用量のカルノシンを静脈内投与すると、迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動が促進された(図4)。
以上の結果から、低用量のカルノシンが交感神経及び副交感神経に直接作用するという自律神経調節作用を示すことを明らかにした。
この低用量のカルノシンの自律神経調節作用を更に下記の方法で確認した。
低用量のカルノシンが交感神経活動優位な状態の高血糖を改善する作用を調べるために、高血糖の動物モデルとして、2−deoxy−D−glucose(2DG)高血糖ラット(Brain Research,809,165−174,1998)を用いた。2DG高血糖ラットにカルノシンを10−100,000ng(0.000033mg−0.33mg/体重kg)腹腔内投与すると、血糖低下作用を認めた(図5)。しかしながら、高用量のカルノシンを1,000,000ng(3.3mg/体重kg)腹腔内投与しても血糖低下作用はなかった。この結果は、カルノシンは低用量(10ng−100μg/回)摂取した時のみ自律神経に作用し、その結果、血糖の低下が起こり、交感神経活動が優位な状態の高血糖を改善したものと考えられる。
この低用量のカルノシンが示す血糖低下作用が、カルノシンと類似構造を持つアンセリンにも血糖低下作用がみられるかどうかを調べた。その結果、アンセリンを2DG高血糖ラットに10ng(0.000033mg/体重kg)脳室内投与しても、血糖低下作用は認められなかった(図6)。一方、同用量のカルノシンを脳室内に投与すると血糖低下作用を認めた。この結果は、カルノシンによる血糖低下作用は、カルノシンが受容体を介して特異的に作用していることが想定される(Brain Res,158,407−422,1978)ことから、構造類似であるアンセリンでは受容体に結合できないことによると考えられる。
次に、高血糖モデルのラットであるstreptozotocin(STZ)糖尿病ラット(日本臨床、56巻、732−737、1998)に対しても低用量のカルノシンが自律神経に作用し、その結果血糖低下作用を示すかどうかを調べた。本モデルは、2DG高血糖モデルと異なり、STZにより膵臓ベータ細胞が破壊され、プロインシュリン生合成の阻害により高血糖を発症する糖尿病モデルである。STZ糖尿病を発症したラットに経口グルコース負荷することにより血糖を上昇させ、この血糖上昇に対する低用量のカルノシンの作用を調べた。カルノシンをラットに10ng(0.000033mg/体重kg)脳室内投与(図7)あるいは100ng(0.00033mg/体重kg)腹腔内投与すると、経口グルコース負荷による血糖上昇を回復する作用を確認できた(図8)。
STZ糖尿病ラットは、インシュリン分泌不全とともに、横隔膜中のカルノシン濃度が正常ラットにくらべ低下しており(Metabolism,29,605−616,1980)、インシュリン分泌不全による高血糖の病態がカルノシンの濃度低下に関係していることを示唆している。従って、カルノシンの投与は、交感神経活動の亢進以外の要因により生じた高血糖に対しても、カルノシンが肝臓の迷走神経活動を促進させることにより、肝臓でのグルコースの取り込みが促進された結果、血糖低下したものと考察でき、カルノシンが低用量で自律神経を介した抗糖尿病作用を有することが示された。
低用量のカルノシンが自律神経に作用し、交感神経活動優位な状態の高血圧状態を改善する作用を、高血圧の動物モデルであるdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩高血圧ラット(日本臨床、58巻、708−712、2000)を用いて調べた。DOCA食塩高血圧ラットに0.001%および0.0001%カルノシン含有飼料を摂取させた場合、血圧低下作用を認めた(図9)。
血圧は末梢動脈の緊張や心臓の収縮力などが複雑に絡み合って正常の値に保たれている。これは主に交感神経の支配によるところが大きい(平野鉄雄、新島旭著、ブレインサイエンスシリーズ第13巻「脳とストレス」、136−167、1995年、共立出版)ことから、低用量のカルノシンが交感神経活動を抑制することにより、血圧を低下させたものと考えられる。この結果は、また、低用量のカルノシンが交感神経活動優位な状態の高血圧を改善したものと考えられる。
一方、ヒトの自律神経に及ぼす影響を、ヒト心電図を測定することにより調べた。心臓の拍動は自律神経により調節され、呼吸や血圧により変動する(心拍変動)。この心拍変動時系列のスペクトル解析を行い、約0.1Hz(周期約10秒)および約0.3Hz(約3秒)の周波数帯域に特徴的なゆらぎ(スペクトルのピーク)を測定する(Science 213:220−222(1981))ことで、カルノシンの自律神経活動に及ぼす影響を調べた。
その結果、被験者あたり、0.04mgから5mgのカルノシンを摂取させると、心臓の副交感神経活動を、摂取する前の活動(前値)に比べ2倍以上亢進した(図10)。この時、全自律神経活動の亢進は、副交感神経活動の亢進をすべて下回っていたことから、カルノシンは低用量で交感神経活動を抑制していることを示している。この結果は、動物実験でのカルノシンの自律神経調節作用が、ヒトにおいても再現されたことを示している。
以上の結果から、本発明は、カルノシンが低用量で交感神経活動を抑制し、副交感神経活動を促進する自律神経調節作用を有することが示された。
カルノシンが自律神経調節作用を示す投与量は、高血糖の動物モデルとして用いた2−deoxy−D−glucose(2DG)高血糖ラットへのカルノシンの投与量から決めることができる。すなわち、ラットにカルノシンを10−100,000ng腹腔内投与すると血糖低下作用が認められたこと、カルノシンのマウス経口吸収率が30−70%(Am J Physiol,255,G143−G150,1988)であることから、ラットにカルノシンを33−330,000ng経口投与すれば、カルノシンがラットに自律神経調節作用を示す。また、実施例で用いたラットの体重は約300gであることから、110ng−1.1mg/体重kgを経口投与すれば、カルノシンがラットに自律神経調節作用を示すことになる。従来技術で述べたように、これまでカルノシンを実験動物に経口投与する場合、いずれも100mg/体重kg/日以上必要であることがわかっている。本発明におけるカルノシンの投与量は、従来用いられてきた用量に比べて少ない投与量(90分の1から900000分の1)で有効性を示している。一方、本発明では、ラットに10mg/体重kg/日以上のカルノシンを経口投与するとカルノシンの自律神経調節作用がみられない。
例えば、ラットにカルノシンを10−100,000ng腹腔内投与すると2DG高血糖ラットの血糖の上昇を押さえたが、この10倍から100000倍量である1mgのカルノシンを腹腔内投与しても2DG高血糖モデルラットに対して血糖の上昇を押さえる効果が見られなかった(図5)。カルノシンの血糖低下作用の用量作用曲線は釣り鐘型を示す。グルタミン酸受容体アゴニスト研究において、アゴニストの作用の用量作用曲線が、釣り鐘型を示す場合が多く、またアゴニストが極めて低濃度で有効であることが特徴である(日薬理誌、116、125−131、2000)。
グルタミン酸受容体は神経細胞の興奮性の調節や伝達物質の放出制御をしているが、必ずしもグルタミン酸受容体の情報伝達系が興奮性だけに働くわけでないことが、釣り鐘型の用量作用曲線を示す要因と考えられている。すなわち、グルタミン酸受容体の情報伝達系が一つの経路だけでなく、濃度依存的に(高濃度において)他の情報伝達経路を活性化していることが想定される。カルノシンにも受容体が存在することが報告されている(Brain Res,158,407−422,1978)ことから、グルタミン酸受容体アゴニストと同様に、釣り鐘型の用量作用曲線を示したと考えられる。
一方、動物の有効量からヒトへの投与量を推定する場合、動物種差を考慮した係数10(食品の安全性評価、粟飯原景昭、内山充編著、学会出版センター、1987)を用いると、ヒト投与量はラット投与量の1/10となる。従って、本発明の場合、ヒトでの経口投与量は、11ng−0.11mg/体重kgであると推定できる。
実際、カルノシンがヒトの心臓自律神経活動に及ぼす影響を検討した結果、カルノシンを被験者あたり0.04mgから5mgの低用量を投与すると副交感神経活動の亢進が認められた。被検者の体重あたりに換算すると、その用量は、0.000741mg/kg−0.0926mg/体重kgであった。カルノシンの動物での有効量からヒトの投与量を推定した結果と比較すると、上限値は推定経口投与量と一致した。しかしながら、下限値については約100倍近くの差異を認めた。
これは血中のカルノシン分解酵素活性が、ヒトの場合2−7μmol/hr/mlである((Pediat Res,7,601−606(1973))のに対して、ラットの場合は血中のカルノシン分解酵素活性が検出されない(Biochim Biophys Acta.429(1),214−219(1976))ことによると考えられる。発明者等がラット血漿中のカルノシン分解酵素活性を測定したところ、0.01−0.04μmol/hr/mlとヒトに比べ約100倍低いことがわかった。すなわち、少量のカルノシンでは、ヒト血中で速やかにカルノシンが分解されるため、ヒトの場合ラットに比べ約100倍量のカルノシンが必要であることを示している。従って、カルノシンの動物での有効量からヒトの投与量を推定した結果は、カルノシン分解酵素活性の違いで説明できる。
本発明におけるカルノシンを自律神経調節剤として用いる場合、食事の影響を受けない時間帯において低用量を摂取することが望ましい。例えば、就寝前あるいは食間に摂取することがよい。さらに、肉類の摂取を避け、おもに菜食を中心として食事する菜食主義者(ベジタリン)にとって、自律神経調節剤としてカルノシンを摂取することは望ましい形態である。
カルノシンは、鶏肉や牛肉に多く含まれる。例えば、鶏肉100gあたり280mgのカルノシンを含み、また、牛肉100gあたり150mgのカルノシンが含まれている(Adv Enzyme Regul.30,175−194(1990))。本文献の含量から計算すると、カルノシンがヒト副交感神経活動を促進する量(例えば5mg)は、鶏肉1.78gに相当する。さらに、鶏肉のうちでもむね肉が最もカルノシン含量が高いことが知られており、副交感神経活動を促進するほど少量の鶏肉を摂取することは実用的でない。
さらに、文献(Am J Physio.255,G143−G150(1988))によれば、マウスの空腸にカルノシンを投与し、その吸収率を調べた結果、カルノシン単独での吸収率よりもL−alanineとともに投与した吸収率が2倍以上高い。また、β−alanineとともに投与すると、吸収率が3倍以上になるなど、共存するアミノ酸の種類によりカルノシンの吸収率が異なることが示されている。従って、本発明で示したように、低用量のカルノシンで自律神経活動を調節するには、正確な低用量のカルノシン量を摂取することが必須であるため、自律神経活動を調節できる作用量のカルノシンを食事により摂取することは実用的でない。
本発明におけるカルノシンを自律神経調節剤として用いる場合、カルノシンを含有してなる健康飲食品のみならず、カルノシンを含有してなる食品添加物も含まれる。健康飲食品として用いられる場合、例えば、乾燥食品、サプリメント、清涼飲料水、ミネラルウォター、アルコール飲料等に配合することができるが、これに限定されるものではない。
本発明のカルノシンを飲食品や食品添加物として用いる場合、製剤として加工しても良い。製剤としては固体でも液体でもよく、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤等を挙げることができる。また、本発明の製剤としては、製剤上許容される賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、希釈剤、香料剤、安定化剤、懸濁剤用滑沢剤、結合剤、保存剤、錠剤用崩壊剤等単独で、または、組み合わせて使用することができる。
本発明のカルノシンを治療薬として用いる場合、製剤としては固体でも液体でもよく、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、座剤、顆粒剤、内用液剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤等を挙げることができる。また、本発明の製剤としては、製剤上許容される賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、希釈剤、香料剤、安定化剤、懸濁剤用滑沢剤、結合剤、保存剤、錠剤用崩壊剤等単独で、または、組み合わせて使用することができる。
以下実施例に基づいて説明する。
実施例 1.ラット自律神経系に対するカルノシンの調節作用
Niijimaらの方法(Neurobiology,3,299−307,1995)に準じて、カルノシンの自律神経活動に及ぼす作用を調べた。室温(24℃)環境下、自由摂餌下で飼育したWistar系雄性ラット(体重約300g)を実験開始12時間前に絶食(水は自由摂取)させた。ラットをウレタン麻酔下(1g/体重kg、腹腔内投与)で開腹し、交感神経枝あるいは迷走神経枝の切断中枢側より神経フィラメントを分離し、遠心性神経活動を交流増幅器を介して記録した。神経活動はオッシロスコープで観察し、磁気テープに保存した。同時に、5秒のリセット時間に設定したレートメーターを介し、ペン型記録計により神経活動のタイムコースを記録した。
カルノシンは100ngあるいは1,000ngを0.1mlの生理的食塩水に溶解したものを静脈内投与した。コントロールとして、生理食塩水のみを0.1ml静脈内投与した。
カルノシン投与の効果は、投与前神経活動数(5秒間の活動数10個の平均値)を100とした時のカルノシン投与後の神経活動数を神経活動率(%)として算出した。実験にはそれぞれ5匹のラットを用いた。データはANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
(1)交感神経副腎枝の遠心性神経活動の抑制
カルノシンをラットに100ng静脈内投与すると、交感神経副腎枝の遠心性神経活動が投与後30分(抑制率31.3%)、60分(抑制率46.9%)、90分(抑制率58.1%)で有意に抑制された(図1)。
(2)交感神経肝臓枝の遠心性神経活動の抑制
カルノシンをラットに100ng静脈内投与すると、交感神経肝臓枝の遠心性神経活動が投与後30分(抑制率20.1%)、60分(抑制率25.9%)、90分(抑制率32.0%)で有意に抑制された(図2)。
(3)交感神経腎臓枝の遠心性神経活動の抑制
カルノシンをラットに1,000ng静脈内投与すると、交感神経腎臓枝の神経活動が投与後30分(抑制率29.7%)、60分(抑制率32.8%)、90分(抑制率28.0%)で有意に抑制された(図3)。
(4)迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動の促進
迷走神経活動への効果を調べるために、迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動を記録した。カルノシンをラットに100ng静脈内投与すると、投与後30分(促進率15.4%)、60分(促進率28.6%)、90分(促進率48.7%)で有意に遠心性神経活動が促進された(図4)。
以上の実験結果は、低用量のカルノシンを静脈内投与すると交感神経活動を抑制し、迷走神経活動を促進させていることから、低用量のカルノシンが自律神経調節作用を有していることが示された。
実施例 2.2DG高血糖ラットに対するカルノシンの血糖上昇抑制効果
低用量のカルノシンにより自律神経活動が調節されると、血糖値が下がることが予想されるので、Chunらの方法(Brain Research,809,165−174,1998)に準じて2DG高血糖ラットに対するカルノシンの血糖上昇抑制効果を調べた。室温(24±1℃)、平均80ルクスの蛍光灯で12時間照明した部屋で、自由摂餌のもと、少なくとも10日間以上環境に慣らしたWistar系雄性ラット(初期体重、約250g)を使用した。
ラットは実験の3日前に、ペントバルビタール麻酔下(35mg/体重kg,腹腔内投与)に、右心房にサイラスティックチューブ(Daw Corning,Midland,MI)とポリエチレンチューブ(Clay Adams,Parsippany,NJ)からなる心臓カテーテルを挿入し、右の側脳室(lateral cerebral ventricle,LCV)にポリエチレンチューブを挿入した。実験当日、生理食塩水に溶解したカルノシンをラット脳室内投与(0.01ml)、または、腹腔内投与(0.1ml)すると同時にラット側脳室内に80μmolの2−deoxy−D−glucose(2DG、0.01ml)を投与した。コントロールラットには、カルノシンのかわりに生理食塩水、2DGのかわりに人工脊髄液をそれぞれ同容量投与した。
側脳室内に2DG投与後、60分に心臓カテーテルより300μl採血し、血漿グルコース濃度を測定した。血漿中のグルコース濃度は、Fuji−Dri−chem system(Fuji Film,Tokyo)を用いてグルコースオキシダーゼ法により測定した。血漿グルコース濃度の変化は、2DG投与後90分のコントロールの値を100とした時の割合(%)で表した。実験には4匹あるいは5匹のラットを用いた。データはANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
(1)カルノシン腹腔内投与による血糖上昇抑制
2DG高血糖ラットにカルノシンを1ng、10ng、100ng、1,000ng、10,000ng、100,000ngおよび1,000,000ng腹腔内投与し、血漿グルコース濃度の変化を調べた。その結果、カルノシン10ng(抑制率16.0%)、100ng(抑制率31.5%)、1,000ng(抑制率26.8%)、10,000ng(抑制率27.6%)および100,000ng(抑制率21.9%)腹腔内投与により、血糖上昇が有意に抑制された(図5)。
(2)アンセリンとカルノシンの比較
カルノシンと構造が類似しているアンセリンを脳室内投与して、血糖上昇抑制作用を比較した。ラットにカルノシンを10ng脳室内投与すると、高血糖が抑制されたが、同量のアンセリンでは高血糖を抑制しなかった(図6)。この結果は、カルノシンの血糖低下作用が、カルノシンに特異的な反応であることを示している。
実施例 3.STZ糖尿病ラットにおける経口グルコース負荷試験におよぼすカルノシンの血糖上昇抑制効果
室温(24±1℃)、平均80ルクスの蛍光灯で12時間照明した部屋で、自由摂餌のもと、少なくとも10日間以上環境に慣らしたWistar系雄性ラット(初期体重、約250g)を使用した。ラットは実験の3日前に、ペントバルビタール麻酔下(35mg/体重kg,腹腔内投与)に、右心房にサイラスティックチューブ(Daw Corning,Midland,MI)とポリエチレンチューブ(Clay Adams,Parsippany,NJ)からなる心臓カテーテルを挿入し、右の側脳室(lateral cerebral ventricle,LCV)にポリエチレンチューブを挿入した。
次に、STZ(streptozotocin)糖尿病ラットはPorthaらの報告(Diabetes 30,64−69,1981)に準じて作製した。Streptozotocin(STZ、Sigma社製)は、0.05Mクエン酸溶液(pH4.5)に2g/mlの濃度で溶解したものを体重kgあたり60mg腹腔内投与した。作製したSTZ糖尿病ラットに0.5g/mlの濃度で溶解したグルコース水溶液を、ラットあたり1ml(0.5g)経口投与(経口グルコース負荷)した。経口グルコース負荷と同時に、生理食塩水に溶解したカルノシンをラット脳室内投与(0.01ml)または腹腔内投与(0.1ml)した。
経口投与はゾンデを用いて、脳室内投与は側脳室ポリエチレンチューブを通じて、腹腔内投与は注射筒と注射針を用いてそれぞれ行なった。コントロールラットには、カルノシンのかわりに生理食塩水、2DGのかわりに人工脊髄液をそれぞれ同容量投与した。グルコース経口投与前およびグルコース経口投与後、15、30、60及び90分後に心臓カテーテルより300μl採血し、血漿中のグルコース濃度(血糖)を測定した。カルノシン投与時の血漿グルコース濃度は、グルコース投与前の血漿グルコース濃度を100とした時の割合(%)を算出した。実験には4匹あるいは5匹のラットを用いた。データは、ANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
ラットにカルノシンを10ng脳室内投与すると、経口グルコース負荷による血糖上昇が、15分から90分まで有意に抑制された(図7)。その抑制率は、15分で14.5%、30分で17.3%、60分で14.7%、90分で11.4%であった。また、ラットにカルノシンを100ng腹腔内投与すると、経口グルコース負荷による血糖上昇が、60分および90分で有意に抑制された(図8)。その抑制率は、60分で14.3%、90分で12.4%であった。
実施例 4.DOCA食塩高血圧ラットに対するカルノシンの血圧上昇抑制効果
Sprague−Dawley雄性ラット(6週齢)を使用した。ペントバルビタールナトリウムを40mg/体重kg腹腔内投与することにより麻酔し、右脇腹を切開することにより右腎臓を摘出した。外科手術後、1週間の回復期間を経た後、偽手術(シャム)群とdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩群に群分けした。それぞれのグループは、さらに、正常食群、0.001%カルノシン含有食群および0.0001%カルノシン含有食群にグループ分けした。
DOCA食塩群のラットは、コーン油に懸濁したDOCAを1週間に2回、15mg/体重kgを皮下注射するとともに、水道水に1%塩化ナトリウムを添加したものを飲料水として与えた。偽手術群には、DOCAおよび塩化ナトリウムともに与えなかった。収縮期圧をtail cuffとpneumatic pulse transducer(BP−98A,Softron)を用いて、週1回、5週間にわたりモニターした。実験にはDOCA群で9匹、シャム群で6匹のラットそれぞれを用いた。データはANOVA(P<0.05)で検定し、平均値±標準誤差で表した。
DOCA食塩−普通食群のラットの収縮期圧は、1週目から上昇し、5週目には200mmHg近くまで血圧上昇した。一方、DOCA食塩―0.001%カルノシン含有食群ならびにDOCA食塩―0.0001%カルノシン含有食群のラットは、ともにDOCA食塩―普通食群のラットに比べ、1週目から血圧上昇が有意に抑制した(図9)。DOCA食塩―0.0001%カルノシン含有食群で、1週目(抑制率9.6%)、2週目(抑制率10.2%)、3週目(抑制率15.0%)、4週目(抑制率22.1%)、5週目(抑制率17.8%)であった。また、DOCA食塩―0.001%カルノシン含有食群で、1週目(抑制率6.2%)、2週目(抑制率12.4%)、3週目(抑制率19.6%)、4週目(抑制率21.5%)、5週目(抑制率25.5%)であった。以上の結果は、カルノシン含有食が、交感神経活動優位な状態の血圧上昇を有意に抑制することを示している。
実施例 5.ヒト自律神経系に対するカルノシンの調節作用
被検者の安静時心電図を5分間測定し、被検サンプルを飲んだ時から30分後および60分後にそれぞれ5分間心電図を測定した。この時、呼吸変動の影響を避けるため、1分間に15回の呼吸を行なうよう、リズム音に合わせて呼吸した時の心電図を測定した。心電図のR波間の間隔(R−R間隔)を測定し、森谷らの作製したプログラムで、パワースペクトル解析した(J Sport Med.Sci.7,31−39(1993))。周期成分は、欧米の心臓病学会の分類基準(Circulation,93,1043−1065(1996))に準拠して、心拍変動をLow frequency(0.03−0.15Hz)とHigh frequency(0.15−0.4Hz)に分けた。
カルノシンは、1人あたり0.04mg,0.2mg,1mg,5mgおよび25mgを薬包紙に秤量した。ただし、0.2mgについては、カルノシンと上新粉を1:4に混合したもの(1/5希釈)を1mg秤量した。また、0.04mgは、カルノシンと上新粉を1:4に混合したものと上新粉をさらに1:4に混合したもの(1/25希釈)を1mg秤量した。薬包紙に秤量したカルノシンを舌で舐めることにより服用した。
被験者は、21歳から51歳(33.0±11.95歳)で、体重54kgから73.5kg(64.3±7.01kg)の8人で、そのうち0.04mgおよび0.2mgの実験は6名、1mgおよび5mgの実験は8名、25mgの実験は5名で実施した。神経活動の評価は、副交感神経活動が前値の200%以上を示したヒトの割合で示した。
カルノシン0.04mg摂取実験では6名中1名(促進者の割合16.7%、副交感神経活動の促進率249%、総自律神経活動の促進率195%)、0.2mg摂取実験では6名中4名(促進者の割合66.7%、副交感神経活動の平均促進率436%、総自律神経活動の平均促進率329%)、1mg摂取実験では8名中3名(促進者の割合37.5%、副交感神経活動の平均促進率259%、総自律神経活動の平均促進率190%)、5mg摂取実験では8名中2名(促進者の割合25.0%、副交感神経活動の平均促進率472%、総自律神経活動の平均促進率410%)、25mg摂取実験では8名中0名(促進者の割合0%)に自律神経活動への影響が認められた。
以上の結果は、カルノシンがヒトにおいても副交感神経活動を促進することを示している。その用量は、0.04m/回gから5mg/回(0.000741mg/kgから0.0926mg/kg)であった。カルノシンが副交感神経活動を前値の200%以上促進した被験者の割合を図10に示す。一方、総自律神経活動は、すべての濃度において、副交感神経活動の促進率を下回った。これは、カルノシンが交感神経活動を抑制していることを示している。
(製剤例1)錠剤
を均一に混合し、1粒100mgの錠剤とした。
(製剤例2)散剤および顆粒剤
を均一に混合し、散剤あるいは顆粒剤とした。
(製剤例3)カプセル剤
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、製剤例1に示す組成物を常法により充填し、1粒100mgのソフトカプセルを得た。
(製剤例4)ドリンク剤
上記成分を配合し、水を加えて10リットルとした。このドリンク剤は、1回あたり約100mlを飲用する。
産業上の利用可能性
カルノシンを低用量のみ摂取することにより、交感神経の遠心性神経活動を抑制し、副交感神経の遠心性神経活動を促進させることができる。このような自律神経調節作用は、自律神経系のアンバランスを予防・緩和する点において、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
図1はラット交感神経副腎枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの抑制作用を示す図である。
図2はラット交感神経肝臓枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの抑制作用を示す図である。
図3はラット交感神経腎臓枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの抑制作用を示す図である。
図4はラット迷走神経腹腔枝の遠心性神経活動に及ぼすカルノシンの促進作用を示す図である。
図5は2DG高血糖ラットに対するカルノシン腹腔内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図6は2DG高血糖ラットに対するカルノシンおよびアンセリン脳室内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図7はSTZ糖尿病ラット経口グルコース負荷試験に対するカルノシン脳室内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図8はSTZ糖尿病ラット経口グルコース負荷試験に対するカルノシン腹腔内投与の血糖上昇抑制作用を示す図である。
図9はDOCA食塩高血圧ラットに対するカルノシン含有飼料摂取の血圧上昇抑制作用を示す図である。
図10は、ヒト副交感神経活動に及ぼすカルノシンの促進作用を示す図である。
Claims (13)
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを含んで成る、自律神経調節作用を有する組成物。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを含んで成る、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する自律神経調節作用を有する組成物。
- 前記自律神経の乱れに起因する症状が、交感神経活動の亢進による高血圧症状又は高血糖症状である、請求項2に記載の組成物。
- 前記組成物が医薬品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物が飲食品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んで成る、自律神経調節方法。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んで成る、自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和する方法。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んで成る、交感神経の亢進を抑制する方法。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることを含んで成る、副交感神経の活動を促進させる方法。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることにより自律神経を調節するための組成物を製造するための、カルノシンの使用。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることにより自律神経の乱れ及びそれに起因する症状を予防、改善又は緩和するための組成物を製造するための、カルノシンの使用。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることにより交感神経の亢進を抑制するための組成物を製造するための、カルノシンの使用。
- 一回当りの摂取量が0.7μg/kg〜0.09mg/kgとなるようにカルノシンを摂取させることにより副交感神経の活動を促進させるための組成物を製造するための、カルノシンの使用。
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