JPWO2002040209A1 - ワイヤ放電加工方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
加工液(4a)中にて荒加工を行う第1の工程と、空気、酸素、窒素又は不活性ガス等の気体(7)中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極(1b)により、少なくとも前記第2の工程の加工を行う。ワイヤ放電加工の高精度化及び高品位化並びに生産性の向上を実現することができる。
Description
技術分野
この発明は、ワイヤ電極と被加工物との極間間隙に放電を発生させて被加工物を加工する、ワイヤ放電加工方法及び装置の改良に関するものである。
背景技術
放電加工は金型等の加工技術として確固たる地位を築いており、自動車産業、家電産業、半導体産業等の金型加工の分野において多用されてきた。
第6図は、放電加工のメカニズムの説明図であり、図において、1は電極、2は被加工物、3はアーク柱、4は加工液、5は放電加工により生成された加工屑である。以下の(a)乃至(e)のサイクル(第6図の(a)乃至(e)に対応)を繰返しながら被加工物2の放電による除去加工が進行する。即ち、(a)放電の発生によるアーク柱3の形成、(b)放電の熱エネルギによる局部的溶融及び加工液4の気化、(c)加工液4の気化爆発力の発生、(d)溶融部(加工屑5)の飛散、(e)加工液による冷却、凝固、極間の絶縁回復、である。
この発明は、放電加工の中でも、くり貫き加工、切断加工等に使用されるワイヤ放電加工に関するものである。ワイヤ放電加工は、特に高精度化への要求が強まっており、例えば、半導体業界等で使用される高精度金型の加工では、1〜2μm程度の高い加工精度が要求されるようになってきている。
第7図は、ワイヤ放電加工の加工プロセスの例を示す説明図であり、図において、1aはワイヤ電極、2は被加工物、4aは加工液である水、6はイニシャルホールであり、第7図の(a)は荒加工であるファーストカットを、第7図の(b)は荒加工後の中仕上げ加工であるセカンドカットを、第7図の(c)は最終仕上げ加工であるサードカットを示している。
第7図の(a)のファーストカットの加工例は、イニシャルホール6にワイヤ電極1aを通し、被加工物2をくり貫く加工を示している。このようなファーストカットの場合、後の加工で面粗さ及び精度を仕上げるため、それほど厳しい面粗さ及び精度は要求されず、生産性向上のために特に加工速度を上げることが重要である。ワイヤ放電加工において、加工速度を上げるためには、極間からの加工屑の排出を効率的に行うため、水4aを極間に強く吹きかけることが行われる。また、極間への水4aのかかりのむらを無くし、ワイヤ電極1aの断線を防止するために、図示しない加工槽の中に水4aを溜めて被加工物2を浸漬する方法が用いられる。
以上のような従来のワイヤ放電加工では、ファーストカット(第7図の(a))後のセカンドカット(第7図の(b))及びサードカット(第7図の(c))等の加工も、加工液である水4a中で行われる。
ワイヤ電極1aと被加工物2の極間に電圧が印加されると、プラス極性とマイナス極性は互いに引き合う力が働くため、この静電力により剛性の小さいワイヤ電極1aは被加工物2側に引っ張られることになる。これが、ワイヤ電極1aの振動の原因となり、このような振動により高精度加工が困難になるという問題点があった。
また、放電エネルギにより加工液の気化爆発力が発生した状態(例えば、第6図の(c))では、ワイヤ電極1aには、加工液の気化爆発力により被加工物2と反対方向に大きな力が作用し、振動が発生する。このような振動により、被加工物2の形状に凹凸が生じ、精度の悪化につながるという問題点があった
ワイヤ放電加工の利用分野である半導体業界等において、例えば、ICリードフレームの金型等の加工においては、形状精度が1μm、面粗さが1μmRmax以下というような被加工物に対して極めて高精度かつ非常に滑らかな面粗さが求められると共に生産性の向上が必要な用途が増加しており、特にこのような用途では、前記のようなワイヤ電極の振動等に起因する問題点が顕著であった。
このような加工液中でのワイヤ放電加工の問題点を解決するための方策として、極間に加工液を介在させずに大気中でワイヤ放電加工を行う、気中ワイヤ放電加工に関する技術が開示されている(東京農工大学安達他、「気中放電加工によるセカンドカットの高精度化」、型技術、第14巻、第7号、1999年、154頁、日刊工業新聞社)。この技術では、大気中におけるワイヤ放電加工により被加工物切断面の真直精度を向上することができることが開示されており、高精度化の観点での意義は大きいが、加工液中での加工と比べてワイヤ電極と被加工物との間で短絡が発生しやすい等、加工安定性及び加工速度の面での問題があり、実用化が困難であった。
発明の開示
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、ワイヤ放電加工の高精度化及び高品位化並びに生産性の向上を実現することができるワイヤ放電加工方法及び装置を得ることを目的とする。
この発明に係るワイヤ放電加工方法は、ワイヤ電極と被加工物との極間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、加工液中にて荒加工を行う第1の工程と、気中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極により、少なくとも前記第2の工程の加工を行うものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、ワイヤ電極と被加工物との極間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、加工液中にて荒加工を行う第1の工程と、気中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極により、少なくとも前記第2の工程の加工を行うものである。
この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極と、前記極間に圧力気体を供給する気体供給手段を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極と、前記極間に圧力気体を供給する気体供給手段を備えたものである。
この発明に係わるワイヤ放電加工方法及び装置は以上のように構成されているため、気中ワイヤ放電加工の安定性及び加工速度を向上するこができ、ワイヤ放電加工の高精度化及び高品位化並びに生産性の向上を実現することができるという効果を奏する。
発明を実施するための最良の形態
第1図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工方法の一例を示す説明図であり、図において、1bは亜鉛コーティングされたワイヤ電極、2は被加工物、4aは加工液である水、6はイニシャルホール、7は空気等の気体であり、第1図の(a)は荒加工であるファーストカットを、第1図の(b)は荒加工後の仕上げ加工であるセカンドカットを示している。ファーストカット及びセカンドカットという名称は便宜上のものであり、必ずしもワイヤ放電加工が2回の加工で終了するものではない。被加工物への要求精度が高い加工では、7回、8回と加工を行う場合もある。
次に、加工方法の概略について説明する。第1図の(a)のファーストカットは、イニシャルホール6にワイヤ電極1bを通し、被加工物2をくり貫く加工である。ファーストカットでは、後の加工で面粗さ及び精度を仕上げるため、それほど厳しい面粗さ及び精度は要求されず、生産性向上のために特に加工速度を上げることが重要であり、背景技術の第7図と同様に加工液である水4aを極間に介在させて加工を行う。
通常のワイヤ放電加工では、ファーストカット後も、加工液中で加工が進められるが、背景技術に示したようにワイヤ電極の振動等の問題があるため、高精度加工には適さない。この発明は、仕上げ加工において、極間に加工液を介在させずに加工を行い、被加工物の形状精度及び面粗さを改善するものである。
第1図の(b)の仕上げ加工であるセカンドカットでは、ワイヤ電極1bの振動を抑えて加工精度を改善するために、加工液4a中での加工ではなく、気体7中での加工を行うものである。このような気中ワイヤ放電加工により、以下に示すようにワイヤ電極1bの振動等を抑えることができる。
即ち、極間に電圧が印加されたときにワイヤ電極1bと被加工物2に作用する静電力は極間の誘電率に比例するため、同じ極間距離として計算すると、極間の介在物が水4aである場合に比べて、極間の介在物が気体7である場合は、前記静電力が数十分の一となる(例えば、誘電率は真空中が最も小さく、水中では真空中の約80倍である)。また、放電による気化爆発力は極間に介在する液体により生ずるため、極間に気体7しか存在しない場合には、ワイヤ電極1bは気化爆発力の影響をほとんど受けない。従って、ワイヤ電極1bの振動等を抑えることができる。
第2図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、第1図の(b)に示したような気中ワイヤ放電加工を実現できる構成例を示したものである。第2図において、1bは亜鉛コーティングされたワイヤ電極、2は被加工物、7は例えば空気、酸素、窒素又は不活性ガス等の気体、8はワイヤボビン、9a及び9bはワイヤ電極1bと被加工物2との極間に気体7を供給する気体供給手段、10はキャプスタンローラ、11はピンチローラ、12は被加工物2の水平方向(X方向)の駆動を行うためのXテーブル、13は被加工物2の水平方向(Y方向)の駆動を行うためのYテーブル、14はXテーブル12を駆動する図示しない駆動モータを制御するX軸サーボアンプ、15はYテーブル13を駆動する図示しない駆動モータを制御するY軸サーボアンプ、16は加工電力供給手段、17は制御手段である。
次に動作について説明する。キャプスタンローラ10及びピンチローラ11によりワイヤ電極1bを挟持して牽引しワイヤ電極1bを走行させ、ワイヤ電極1bと被加工物2を対向させ、気体供給手段9a及び9bによりワイヤ電極1bと被加工物2との極間に気体7を供給しながら、前記極間に加工電力供給手段16により放電エネルギである加工電力を供給し、位置決め手段であるXテーブル12及びYテーブル13等によりワイヤ電極1bと被加工物2とを相対移動させて被加工物2の仕上げ加工を行う。前記位置決め手段によるワイヤ電極1bと被加工物2との相対位置決め制御及び電気加工条件の制御等は制御手段17により統括される。気体供給手段9a及び9bは、例えば、ワイヤ電極1bの周囲にノズルを形成して圧力気体を供給すること等により実現できる。このような圧力気体の極間への供給により、放電により除去された加工屑のワイヤ電極及び被加工物表面への付着を防止することができる。また、気中ワイヤ放電加工は、このような気体供給手段9a及び9bを用いずに、大気中で行うこともできる。
第1図の(b)の説明で示したとおり、気中ワイヤ放電加工ではワイヤ電極の振動等を抑えることができるため、被加工物の形状精度及び面粗さが向上するが、気中放電に特有の問題も存在する。最も大きな問題は、極間距離が狭いことである。通常の加工液中でのワイヤ放電加工では、極間に介在する加工屑などの影響により放電が発生する際の極間距離が広くなるが、気中ワイヤ放電加工の場合には、加工屑が極間に滞留するということがほとんど無いため、極間距離が狭くなる。極間距離が狭いということは、加工精度を良くできるという利点でもあるが、一方では、背景技術において示したように加工中にワイヤ電極と被加工物が短絡しやすいという問題点を有しており、短絡の発生は加工面への筋の発生及び加工速度の低下等の原因となっていた。
このような課題を解決するために行われた、この発明の発明者による研究により、気中ワイヤ放電加工において、ワイヤ電極の材質を調整することにより安定した放電を発生させることができることが見出された。
即ち、気中放電に適したワイヤ電極の材質を探すべく様々の材料からなるワイヤ電極を用いた加工試験を行い調べたところ、ワイヤ電極表面の亜鉛含有量が増えると気中での放電が安定することが見出された。このようなワイヤ電極表面の亜鉛含有量の増加を実現する場合、ワイヤ電極として、第1図及び第2図のように亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを用いてもよいし、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量を増やしてもよい。ただし、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量を増やすと、ワイヤ放電加工の際の熱エネルギによりワイヤ電極の断線が発生しやすくなるため、ワイヤ電極の張力を低くせざるをえず、加工精度に問題が生じる場合がある。従って、例えば亜鉛コーティングされたワイヤ電極のような、ワイヤ電極の表面部分のみの亜鉛含有量を増やしたワイヤ電極を使用する方が、より望ましいといえる。また、このようにワイヤ電極表面に形成する亜鉛は、金属亜鉛でもよいし、例えば亜鉛酸化物等の化合物でもよい。さらに、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量を増やす場合には、ワイヤ電極の材質全体に酸化物を混入することもできる。
ワイヤ電極表面の亜鉛含有量の増加により放電が安定する理由については現状では詳細は解明されていないが、可能性が高い理由として亜鉛の沸点が低いことが考えられる。即ち、亜鉛は沸点が低いために気中での放電でも容易に気化し、一度放電が発生すると、気化した亜鉛のワイヤ電極と被加工物との極間における比率が高くなる。従って、極間に金属気体である気化した亜鉛が増加して、放電を誘発しているものと推測できる。
第3図は、亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを使用して行った気中ワイヤ放電加工の様子を示す図であり、第3図の(a)は構成説明用、第3図の(b)は放電状態確認用の図である。被加工物2は板厚100mmの鋼材であり、通常の黄銅ワイヤ電極では、安定した放電加工は不可能であった。第3図の(b)において矢印先端付近の白い部分が放電であり、亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを使用した場合には、被加工物2の全面に放電が安定して発生していることが確認できる。
この気中ワイヤ放電加工の実験において、通常の加工液中でのワイヤ放電加工に使用される黄銅ワイヤ電極を用いた場合と亜鉛コーティングされたワイヤ電極を用いた場合とで、単位時間当たりの正常放電パルス数を比較したところ、亜鉛コーティングされたワイヤ電極を用いた加工の方が正常放電パルス数が約2〜3倍多く、従って加工生産性が高かった。
また、亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを使用して気中ワイヤ放電加工を行う場合に生じやすい問題として、被加工物2への亜鉛の付着がある。加工条件により、亜鉛が被加工物2の表面に付着する場合があり、特に、第4図のように被加工物2の上端部及び下端部に亜鉛18a及び18bが付着することが多い。一旦被加工物に亜鉛が付着すると、その位置に放電が集中しやすくなるため、加工面を高品位に仕上げることができなくなる。発明者の研究によると、この亜鉛の付着現象はワイヤ電極の加工送り速度と大きな関係があり、加工送り速度が遅い場合に発生する確率が高くなることがわかっている。従って、亜鉛コーティングされたワイヤ電極等を使用した気中ワイヤ放電加工においては、加工送り速度を速くして加工を繰り返し行う方法をとることが望ましい。
また、亜鉛コーティングされたワイヤ電極の使用以外にも、前記のように亜鉛含有量を増加させたワイヤ電極を使用することによっても、放電安定化の効果がある。通常のワイヤ放電加工では、重量比で、銅70%亜鉛30%程度の黄銅ワイヤ電極を用いることが多いが、気中放電では、亜鉛の比率をさらに上げることで放電の安定性を向上することができる。
第5図は、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量(重量%)と放電安定性との関係を示す図であり、放電安定性は例えは単位時間当たりの正常放電パルス数を計測することにより求めることができる。第5図により、ワイヤ電極の亜鉛含有量が略40%を超えると急激に放電安定性が向上することがわかる。また、亜鉛含有量を50%程度にすると亜鉛コーティングされたワイヤ電極に近い放電安定性を実現できる。
産業上の利用可能性
以上のように、この発明に係るワイヤ放電加工方法及び装置は、特に高精度ワイヤ放電加工作業に用いられるのに適している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工方法の一例を示す説明図である。
第2図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
第3図は、亜鉛コーティングされたワイヤ電極を使用して行った気中ワイヤ放電加工の様子を示す図である。
第4図は、亜鉛コーティングされたワイヤ電極を使用して行った気中ワイヤ放電加工における被加工物への亜鉛の付着の例を示す説明図である。
第5図は、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量(重量%)と放電安定性との関係を示す図である。
第6図は、放電加工のメカニズムの説明図である。
第7図は、ワイヤ放電加工の加工プロセスの例を示す説明図である。
この発明は、ワイヤ電極と被加工物との極間間隙に放電を発生させて被加工物を加工する、ワイヤ放電加工方法及び装置の改良に関するものである。
背景技術
放電加工は金型等の加工技術として確固たる地位を築いており、自動車産業、家電産業、半導体産業等の金型加工の分野において多用されてきた。
第6図は、放電加工のメカニズムの説明図であり、図において、1は電極、2は被加工物、3はアーク柱、4は加工液、5は放電加工により生成された加工屑である。以下の(a)乃至(e)のサイクル(第6図の(a)乃至(e)に対応)を繰返しながら被加工物2の放電による除去加工が進行する。即ち、(a)放電の発生によるアーク柱3の形成、(b)放電の熱エネルギによる局部的溶融及び加工液4の気化、(c)加工液4の気化爆発力の発生、(d)溶融部(加工屑5)の飛散、(e)加工液による冷却、凝固、極間の絶縁回復、である。
この発明は、放電加工の中でも、くり貫き加工、切断加工等に使用されるワイヤ放電加工に関するものである。ワイヤ放電加工は、特に高精度化への要求が強まっており、例えば、半導体業界等で使用される高精度金型の加工では、1〜2μm程度の高い加工精度が要求されるようになってきている。
第7図は、ワイヤ放電加工の加工プロセスの例を示す説明図であり、図において、1aはワイヤ電極、2は被加工物、4aは加工液である水、6はイニシャルホールであり、第7図の(a)は荒加工であるファーストカットを、第7図の(b)は荒加工後の中仕上げ加工であるセカンドカットを、第7図の(c)は最終仕上げ加工であるサードカットを示している。
第7図の(a)のファーストカットの加工例は、イニシャルホール6にワイヤ電極1aを通し、被加工物2をくり貫く加工を示している。このようなファーストカットの場合、後の加工で面粗さ及び精度を仕上げるため、それほど厳しい面粗さ及び精度は要求されず、生産性向上のために特に加工速度を上げることが重要である。ワイヤ放電加工において、加工速度を上げるためには、極間からの加工屑の排出を効率的に行うため、水4aを極間に強く吹きかけることが行われる。また、極間への水4aのかかりのむらを無くし、ワイヤ電極1aの断線を防止するために、図示しない加工槽の中に水4aを溜めて被加工物2を浸漬する方法が用いられる。
以上のような従来のワイヤ放電加工では、ファーストカット(第7図の(a))後のセカンドカット(第7図の(b))及びサードカット(第7図の(c))等の加工も、加工液である水4a中で行われる。
ワイヤ電極1aと被加工物2の極間に電圧が印加されると、プラス極性とマイナス極性は互いに引き合う力が働くため、この静電力により剛性の小さいワイヤ電極1aは被加工物2側に引っ張られることになる。これが、ワイヤ電極1aの振動の原因となり、このような振動により高精度加工が困難になるという問題点があった。
また、放電エネルギにより加工液の気化爆発力が発生した状態(例えば、第6図の(c))では、ワイヤ電極1aには、加工液の気化爆発力により被加工物2と反対方向に大きな力が作用し、振動が発生する。このような振動により、被加工物2の形状に凹凸が生じ、精度の悪化につながるという問題点があった
ワイヤ放電加工の利用分野である半導体業界等において、例えば、ICリードフレームの金型等の加工においては、形状精度が1μm、面粗さが1μmRmax以下というような被加工物に対して極めて高精度かつ非常に滑らかな面粗さが求められると共に生産性の向上が必要な用途が増加しており、特にこのような用途では、前記のようなワイヤ電極の振動等に起因する問題点が顕著であった。
このような加工液中でのワイヤ放電加工の問題点を解決するための方策として、極間に加工液を介在させずに大気中でワイヤ放電加工を行う、気中ワイヤ放電加工に関する技術が開示されている(東京農工大学安達他、「気中放電加工によるセカンドカットの高精度化」、型技術、第14巻、第7号、1999年、154頁、日刊工業新聞社)。この技術では、大気中におけるワイヤ放電加工により被加工物切断面の真直精度を向上することができることが開示されており、高精度化の観点での意義は大きいが、加工液中での加工と比べてワイヤ電極と被加工物との間で短絡が発生しやすい等、加工安定性及び加工速度の面での問題があり、実用化が困難であった。
発明の開示
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、ワイヤ放電加工の高精度化及び高品位化並びに生産性の向上を実現することができるワイヤ放電加工方法及び装置を得ることを目的とする。
この発明に係るワイヤ放電加工方法は、ワイヤ電極と被加工物との極間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、加工液中にて荒加工を行う第1の工程と、気中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極により、少なくとも前記第2の工程の加工を行うものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、ワイヤ電極と被加工物との極間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、加工液中にて荒加工を行う第1の工程と、気中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極により、少なくとも前記第2の工程の加工を行うものである。
この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極と、前記極間に圧力気体を供給する気体供給手段を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極と、前記極間に圧力気体を供給する気体供給手段を備えたものである。
この発明に係わるワイヤ放電加工方法及び装置は以上のように構成されているため、気中ワイヤ放電加工の安定性及び加工速度を向上するこができ、ワイヤ放電加工の高精度化及び高品位化並びに生産性の向上を実現することができるという効果を奏する。
発明を実施するための最良の形態
第1図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工方法の一例を示す説明図であり、図において、1bは亜鉛コーティングされたワイヤ電極、2は被加工物、4aは加工液である水、6はイニシャルホール、7は空気等の気体であり、第1図の(a)は荒加工であるファーストカットを、第1図の(b)は荒加工後の仕上げ加工であるセカンドカットを示している。ファーストカット及びセカンドカットという名称は便宜上のものであり、必ずしもワイヤ放電加工が2回の加工で終了するものではない。被加工物への要求精度が高い加工では、7回、8回と加工を行う場合もある。
次に、加工方法の概略について説明する。第1図の(a)のファーストカットは、イニシャルホール6にワイヤ電極1bを通し、被加工物2をくり貫く加工である。ファーストカットでは、後の加工で面粗さ及び精度を仕上げるため、それほど厳しい面粗さ及び精度は要求されず、生産性向上のために特に加工速度を上げることが重要であり、背景技術の第7図と同様に加工液である水4aを極間に介在させて加工を行う。
通常のワイヤ放電加工では、ファーストカット後も、加工液中で加工が進められるが、背景技術に示したようにワイヤ電極の振動等の問題があるため、高精度加工には適さない。この発明は、仕上げ加工において、極間に加工液を介在させずに加工を行い、被加工物の形状精度及び面粗さを改善するものである。
第1図の(b)の仕上げ加工であるセカンドカットでは、ワイヤ電極1bの振動を抑えて加工精度を改善するために、加工液4a中での加工ではなく、気体7中での加工を行うものである。このような気中ワイヤ放電加工により、以下に示すようにワイヤ電極1bの振動等を抑えることができる。
即ち、極間に電圧が印加されたときにワイヤ電極1bと被加工物2に作用する静電力は極間の誘電率に比例するため、同じ極間距離として計算すると、極間の介在物が水4aである場合に比べて、極間の介在物が気体7である場合は、前記静電力が数十分の一となる(例えば、誘電率は真空中が最も小さく、水中では真空中の約80倍である)。また、放電による気化爆発力は極間に介在する液体により生ずるため、極間に気体7しか存在しない場合には、ワイヤ電極1bは気化爆発力の影響をほとんど受けない。従って、ワイヤ電極1bの振動等を抑えることができる。
第2図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、第1図の(b)に示したような気中ワイヤ放電加工を実現できる構成例を示したものである。第2図において、1bは亜鉛コーティングされたワイヤ電極、2は被加工物、7は例えば空気、酸素、窒素又は不活性ガス等の気体、8はワイヤボビン、9a及び9bはワイヤ電極1bと被加工物2との極間に気体7を供給する気体供給手段、10はキャプスタンローラ、11はピンチローラ、12は被加工物2の水平方向(X方向)の駆動を行うためのXテーブル、13は被加工物2の水平方向(Y方向)の駆動を行うためのYテーブル、14はXテーブル12を駆動する図示しない駆動モータを制御するX軸サーボアンプ、15はYテーブル13を駆動する図示しない駆動モータを制御するY軸サーボアンプ、16は加工電力供給手段、17は制御手段である。
次に動作について説明する。キャプスタンローラ10及びピンチローラ11によりワイヤ電極1bを挟持して牽引しワイヤ電極1bを走行させ、ワイヤ電極1bと被加工物2を対向させ、気体供給手段9a及び9bによりワイヤ電極1bと被加工物2との極間に気体7を供給しながら、前記極間に加工電力供給手段16により放電エネルギである加工電力を供給し、位置決め手段であるXテーブル12及びYテーブル13等によりワイヤ電極1bと被加工物2とを相対移動させて被加工物2の仕上げ加工を行う。前記位置決め手段によるワイヤ電極1bと被加工物2との相対位置決め制御及び電気加工条件の制御等は制御手段17により統括される。気体供給手段9a及び9bは、例えば、ワイヤ電極1bの周囲にノズルを形成して圧力気体を供給すること等により実現できる。このような圧力気体の極間への供給により、放電により除去された加工屑のワイヤ電極及び被加工物表面への付着を防止することができる。また、気中ワイヤ放電加工は、このような気体供給手段9a及び9bを用いずに、大気中で行うこともできる。
第1図の(b)の説明で示したとおり、気中ワイヤ放電加工ではワイヤ電極の振動等を抑えることができるため、被加工物の形状精度及び面粗さが向上するが、気中放電に特有の問題も存在する。最も大きな問題は、極間距離が狭いことである。通常の加工液中でのワイヤ放電加工では、極間に介在する加工屑などの影響により放電が発生する際の極間距離が広くなるが、気中ワイヤ放電加工の場合には、加工屑が極間に滞留するということがほとんど無いため、極間距離が狭くなる。極間距離が狭いということは、加工精度を良くできるという利点でもあるが、一方では、背景技術において示したように加工中にワイヤ電極と被加工物が短絡しやすいという問題点を有しており、短絡の発生は加工面への筋の発生及び加工速度の低下等の原因となっていた。
このような課題を解決するために行われた、この発明の発明者による研究により、気中ワイヤ放電加工において、ワイヤ電極の材質を調整することにより安定した放電を発生させることができることが見出された。
即ち、気中放電に適したワイヤ電極の材質を探すべく様々の材料からなるワイヤ電極を用いた加工試験を行い調べたところ、ワイヤ電極表面の亜鉛含有量が増えると気中での放電が安定することが見出された。このようなワイヤ電極表面の亜鉛含有量の増加を実現する場合、ワイヤ電極として、第1図及び第2図のように亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを用いてもよいし、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量を増やしてもよい。ただし、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量を増やすと、ワイヤ放電加工の際の熱エネルギによりワイヤ電極の断線が発生しやすくなるため、ワイヤ電極の張力を低くせざるをえず、加工精度に問題が生じる場合がある。従って、例えば亜鉛コーティングされたワイヤ電極のような、ワイヤ電極の表面部分のみの亜鉛含有量を増やしたワイヤ電極を使用する方が、より望ましいといえる。また、このようにワイヤ電極表面に形成する亜鉛は、金属亜鉛でもよいし、例えば亜鉛酸化物等の化合物でもよい。さらに、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量を増やす場合には、ワイヤ電極の材質全体に酸化物を混入することもできる。
ワイヤ電極表面の亜鉛含有量の増加により放電が安定する理由については現状では詳細は解明されていないが、可能性が高い理由として亜鉛の沸点が低いことが考えられる。即ち、亜鉛は沸点が低いために気中での放電でも容易に気化し、一度放電が発生すると、気化した亜鉛のワイヤ電極と被加工物との極間における比率が高くなる。従って、極間に金属気体である気化した亜鉛が増加して、放電を誘発しているものと推測できる。
第3図は、亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを使用して行った気中ワイヤ放電加工の様子を示す図であり、第3図の(a)は構成説明用、第3図の(b)は放電状態確認用の図である。被加工物2は板厚100mmの鋼材であり、通常の黄銅ワイヤ電極では、安定した放電加工は不可能であった。第3図の(b)において矢印先端付近の白い部分が放電であり、亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを使用した場合には、被加工物2の全面に放電が安定して発生していることが確認できる。
この気中ワイヤ放電加工の実験において、通常の加工液中でのワイヤ放電加工に使用される黄銅ワイヤ電極を用いた場合と亜鉛コーティングされたワイヤ電極を用いた場合とで、単位時間当たりの正常放電パルス数を比較したところ、亜鉛コーティングされたワイヤ電極を用いた加工の方が正常放電パルス数が約2〜3倍多く、従って加工生産性が高かった。
また、亜鉛コーティングされたワイヤ電極1bを使用して気中ワイヤ放電加工を行う場合に生じやすい問題として、被加工物2への亜鉛の付着がある。加工条件により、亜鉛が被加工物2の表面に付着する場合があり、特に、第4図のように被加工物2の上端部及び下端部に亜鉛18a及び18bが付着することが多い。一旦被加工物に亜鉛が付着すると、その位置に放電が集中しやすくなるため、加工面を高品位に仕上げることができなくなる。発明者の研究によると、この亜鉛の付着現象はワイヤ電極の加工送り速度と大きな関係があり、加工送り速度が遅い場合に発生する確率が高くなることがわかっている。従って、亜鉛コーティングされたワイヤ電極等を使用した気中ワイヤ放電加工においては、加工送り速度を速くして加工を繰り返し行う方法をとることが望ましい。
また、亜鉛コーティングされたワイヤ電極の使用以外にも、前記のように亜鉛含有量を増加させたワイヤ電極を使用することによっても、放電安定化の効果がある。通常のワイヤ放電加工では、重量比で、銅70%亜鉛30%程度の黄銅ワイヤ電極を用いることが多いが、気中放電では、亜鉛の比率をさらに上げることで放電の安定性を向上することができる。
第5図は、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量(重量%)と放電安定性との関係を示す図であり、放電安定性は例えは単位時間当たりの正常放電パルス数を計測することにより求めることができる。第5図により、ワイヤ電極の亜鉛含有量が略40%を超えると急激に放電安定性が向上することがわかる。また、亜鉛含有量を50%程度にすると亜鉛コーティングされたワイヤ電極に近い放電安定性を実現できる。
産業上の利用可能性
以上のように、この発明に係るワイヤ放電加工方法及び装置は、特に高精度ワイヤ放電加工作業に用いられるのに適している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工方法の一例を示す説明図である。
第2図は、この発明の実施の形態に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
第3図は、亜鉛コーティングされたワイヤ電極を使用して行った気中ワイヤ放電加工の様子を示す図である。
第4図は、亜鉛コーティングされたワイヤ電極を使用して行った気中ワイヤ放電加工における被加工物への亜鉛の付着の例を示す説明図である。
第5図は、ワイヤ電極の材質全体の亜鉛含有量(重量%)と放電安定性との関係を示す図である。
第6図は、放電加工のメカニズムの説明図である。
第7図は、ワイヤ放電加工の加工プロセスの例を示す説明図である。
Claims (6)
- ワイヤ電極と被加工物との極間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、
加工液中にて荒加工を行う第1の工程と、
気中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、
亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極により、少なくとも前記第2の工程の加工を行うことを特徴とするワイヤ放電加工方法。 - ワイヤ電極と被加工物との極間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、
加工液中にて荒加工を行う第1の工程と、
気中にて仕上げ加工を行う第2の工程とを備え、
亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極により、少なくとも前記第2の工程の加工を行うことを特徴とするワイヤ放電加工方法。 - 加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、
亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、
亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛酸化物の中の少なくとも1つにより表面を被覆されたワイヤ電極と、
前記極間に圧力気体を供給する気体供給手段を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、
亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて気中にて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、
亜鉛含有量(重量比)が略40%以上のワイヤ電極と、
前記極間に圧力気体を供給する気体供給手段を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
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