JPWO2002035683A1 - 磁束閉じ込め可能なロータを備えた電動機 - Google Patents
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Abstract
本発明の電動機は、環状に等間隔で配設された複数のステータ突極(24)を備えたステータ(20)と、それら突極(24)の内周側に対向して等ピッチで設けられた4組の永久磁石(12a)を有し、それらの永久磁石(12a)が前記突極(24)の内周に沿って回動自在に支持されているロータ(10)とを有する。前記永久磁石(12a)からの磁束は、ロータリング(Mp)を介して流通可能とされる。励磁制御装置(30)は、前記突極(24)の励磁コイル(24b)に、ロータ(10)を同期駆動するための励磁電流を供給する。前記励磁コイル(24b)が非励磁状態では、前記ロータ(10)は磁束の閉じ込めによりステータ突極(24)の内周側に沿ってほぼ無負荷で回動自在で、始動性が良好である。
Description
技術分野
この発明は、永久磁石を利用した電動機に係わり、特に始動性に優れ高効率を達成することができる電動機に関する。
背景技術
従来、電気エネルギーを機械的な出力、例えばトルクとして取り出せるようにした変換システムとして、種々の電動機が開発されてきた。それら従来の電動機にあっては、ステータ、ロータのいずれか又は両方に電磁石が用いられており、それらの電磁石によって回転磁界を生成してロータを追従させるもの(例えば誘導電動機)、あるいは、永久磁石ステータの磁界中に極性反転制御を可能として設けられたロータを回転自在に配設し、ロータとステータとの間の磁束の相互作用によって回転力を得るもの(例えば一般的な直流電動機)などがある。
このような在来の電動機については、永久磁石から発生する磁束を利用してエネルギー変換効率を高めようとする試みが種々なされてきた。発明者らは、特に永久磁石が発生する磁束の分布を適切に制御することによって、出力トルクに抗して作用する磁気力を可及的に低減し、これによる出力トルクの増大、電磁エネルギーから力学的エネルギーへの変換効率向上を達成すべく、さまざまな構成を有するトルク発生装置を試作開発してきた。例えば、本願発明者らによる特開平7−7907号公報は、回転子に永久磁石を付加することによって、エネルギー変換効率を高めることができる動力発生装置を提案している。本願発明者らが開発、提案してきたこれらの動力発生装置では、回転子に付加された永久磁石と固定子電磁石との間に磁性部材が介在するように構成し、励磁された一の固定子電磁石と永久磁石との間に存在する磁束が、磁性部材内で両者を結ぶ線上付近に可及的に収束するように計画されている。これによって、回転子の回転方向後方にある非励磁電磁石から受ける吸引力によって回転子が引き戻される方向に作用する力、いわば従来必然のごとく看過されてきた現象を防ぐことを意図したためである。
しかしながら、種々の試作機を製作してエネルギー変換効率、発生トルク等の性能を検証したところ、回転子の永久磁石に付加する磁性部材の形状寸法や固定子電磁石の構造によっては、磁性部材内で予期したほどの磁束域が形成されず、十分な効率の向上が図れない場合があることが判明した。また、回転子に永久磁石を組み込んであるために、いずれの固定子電磁石にも通電されていない状態では各永久磁石と近接している特定の固定子電磁石との間に吸引力が作用して、いわば回転子が強固にロックされた状態となっており、始動が困難となることがあるという問題点も確認された。
この発明は上記のような開発過程において見出された問題点を解消するためになされたもので、その目的は、永久磁石が持つ磁気エネルギーを有効に利用して高効率高トルクを得られるとともに、始動性にも優れた電動機を提供することである。
発明の開示
上記の目的を達成するために、本願発明に係わる永久磁石電動機は、互いに所定の間隔を隔てて略円環状に配設された複数の励磁手段を備えているステータと、それら略円環状に配設された励磁手段の各々と対向すべく、それら励磁手段の内周側に沿って移動可能に設けられ、相隣接するそれぞれが前記励磁手段に臨む側に互いに異なる磁極を有している少なくとも一対の着磁部を備えたロータと、前記ステータの励磁手段にあらかじめ定められた順序、タイミング及び励磁極性に基づいて励磁電流を供給する励磁電流制御手段とを備えた電動機であって、前記ロータの互いに隣り合う着磁部の間に磁束の流通を許容する磁束通過部材が設けられており、前記励磁手段が励磁されていない状態では、前記着磁部同士の間の磁束は前記磁束通過部材を介して流通し、ロータ内に閉止されているために、そのロータの着磁部と前記ステータの各励磁手段との間にはほとんどなんの相互作用も生じない一方、前記励磁手段を前記励磁電流制御手段によって励磁すると、前記ロータの各着磁部は異なる磁性に磁化された各励磁手段から発生する磁束によって吸引されて励磁手段の磁極の移動方向に追従して同期駆動されることを特徴とする。
前記磁束通過部材は、前記ロータの各着磁部の間を略円弧状に接続する板状磁性体を有して構成することができる。
また、前記ロータの着磁部と前記ステータの励磁手段との間には、磁性部材が介在するように構成してもよい。
さらに、前記ロータの前記隣り合う着磁部と前記磁束通過部材とで囲まれる領域は、非磁性材料で充填するように構成することができる。
上記の構成を備えた本発明に係る電動機は、前記ステータに設けられた励磁手段がいずれも励磁されていない状態では、ロータのいずれかの着磁部に出入りする磁束は磁束通過部材を介して相隣り合う異なる極性の磁極との間で流通するため、その磁束はロータ内に閉じ込められてステータ側の励磁手段との間で格別の相互作用を生じることがないから、ロータはほとんど負荷をかけることなく回動させることができる。
そして、前記ステータの励磁手段が励磁電流制御手段によって励磁されると、ロータに設けられている各着磁部は近接する異極性に励磁されたステータの励磁手段に吸引されるので、励磁される励磁手段を順次所定の順序、タイミング及び励磁極性となるように切り換えていくことにより、ロータに回転力が付与される。
前記磁束通過部材は、例えば前記ロータの各着磁部の間を略円弧状に接続する板状磁性体を有する構成とすることができる。
また、前記ロータの各着磁部と前記ステータの励磁手段との間に磁性部材を介設すれば、着磁部からの磁束がその磁性部材内で前記着磁部と近接する異極性の励磁手段とを結ぶように収束する。
前記ロータの前記隣り合う着磁部と前記磁束通過部材とで囲まれる領域を非磁性材料で充填すれば、ロータの機械的強度を高めることができ、適用可能な電動機容量の範囲が拡張される。
発明を実施するための最良の形態
以下、この発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1と図3ないし図5は、本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の概略構成を示す正面図である。また、図2はその実施形態に用いられているロータを示す概略斜視図である。なお、これらの図においては、本装置の基本的な構成と作用とを明瞭にするため、装置のハウジングやフレームなど、本発明の説明に関して本質的でないと思われる部分については図示を省略した。
図1に示すように、本実施形態の永久磁石電動機は、複数のロータ突極12,12,……を備えたロータ10と、複数のステータ突極24,24,……を備えたステータ20とを有する。
ロータ10は、略円柱状に形成されたロータハブ14の外周に沿って等間隔に径方向外方に向けて突設された複数のロータ突極12を有する。ここでは、ロータ突極12は4極であり、ロータハブ14の周囲に90°ピッチで固設されている。ロータハブ14は、例えば鉄等の磁性材料を用いて一体的に形成すればよい。その際、そのような磁性材料によって形成された同一形状の薄板を積層して用いれば、ロータハブ14内部での渦電流発生を抑制することができるので、本装置が動作中にロータハブ14内に渦電流が生じることによる損失を低減することができる。
ロータ突極12,12,……は、それぞれ着磁部を構成する永久磁石12aとそれから延設された磁性体ヘッド12bとを有する。永久磁石12aは略直方体状の形状とされており、ロータハブ14の外周側面で相隣接しているロータ突極12,12,……のロータ径方向端部が互いに反対極性の磁極となるように配置され固設されている。すなわち、各ロータ突極12に設けられる各永久磁石12aは、隣り合う突極12のロータ径方向外方端部に互いに異なる磁極が現れるように配置され固設されている。
本実施形態では、これらのロータ突極12の先端部を相互に接続する略円環形状を備えた磁束通過部材としてのロータリングMpが設けられている。このロータリングMpは、薄板状に形成した磁性材料を各ロータ突極12の先端部を互いに磁気的に接続するように配設される。そして、相隣り合うロータ突極12の異なる磁極同士を接続してその間の磁束の流通を可能とする作用を果たすものである。磁性材料の材質や厚さ、幅などの形状寸法は、永久磁石12aの磁気強度などに基づき、設計上ロータ突極12同士の間の磁束の流通に十分な特性が得られるように決定することができる。また、ロータリングMpは、円環状に形成された一体部材としてもよいし、あるいは必要に応じていくつかの略円弧状等の部材として形成しておき、ロータ突極12等と組合せるときに一体とするような構成としてもよい。
また、各ロータ突極12の先端部に、後述するステータ突極24の内周側形状に合わせて略弧状に形成された磁性体ヘッド12bが、そのステータ突極24と永久磁石12aとの間に介挿されるように固設されている。図1及び図2に示すように、磁性体ヘッド12bは、前記ロータリングMpのロータ突極12に当たる部分を所定寸法だけ径方向外方へ膨出させた突起部の形状を呈する。なお、この磁性体ヘッド12bの形状及び径方向厚み等の寸法は、本実施形態にある略弧状に限られることなく、試作試験等を通じて適宜の形状寸法としてよい。また、ロータリングMpとは別部材として形成しても一向に構わない。この磁性体ヘッド12b内では永久磁石12aからの磁束が近接した異極性のステータ突極24(後述)との間を結ぶように収束するから、他のステータ突極24との間でロータ10の回転を妨げるような磁気的相互作用が生ずるのを低減する効果が得られる。なお、磁性体ヘッド12bを省略して、各永久磁石12aがロータリングMpのみを介してステータ突極24と対向するように構成してもさしつかえない。
本実施形態のロータ10の場合、図1、図2などに示されているように、相隣り合うロータ突極12とロータリングMp及びロータハブ14で画成される空隙Vが存在する。この空隙Vは、そのまま空間として残しておいてもよいし、ロータ10に要求される機械的強度の観点から適宜の非磁性樹脂等の材料を充填するようにしてもよい。後者については、言い換えれば、着磁部を構成する永久磁石12aを含むロータ10の本体部分を樹脂モールド等で一体的に形成し、その後ロータリングMpを取り付けるようにすることができる。その他、当業者であれば、種々の設計手法を用いて本発明のロータを実現することができるであろう。
ロータハブ14の中心部には、ロータ軸16が挿通固定されている。このロータ軸16の両端部は、図示を省略する軸受によって回動自在に支持されている。これにより、ロータ10は、ロータハブ14の外周縁に沿って等ピッチで配設されたロータ突極12の先端に設けられた磁性体ヘッド12bと各ステータ突極24との間に一定のエアギャップが保持される態様で、ステータ突極24の内周に沿って回動自在に保持されている。
ステータ20は、その外周に沿って等間隔で円環状に配置されるとともに、径方向外方へ延設された励磁手段である複数のステータ突極24を備える。この実施形態では、8組のステータ突極24が45°ピッチで配設されており、前記した4組のロータ突極12のいずれかがステータ突極24と対向すれば、他のロータ突極12もそれぞれ他のステータ突極24と対向するようにしている。このような構成は、各ステータ突極24からの磁気力を各ロータ突極12で有効に利用するのに役立つが、これについては作用の項で詳述する。
各ステータ突極24は、径方向外方に突設されているコア24aとその周囲に巻回されている励磁コイル24bとを有している。それぞれのコイル24bは、後述する励磁制御装置30(励磁電流制御手段)の出力に電気的に接続されている。また、各ステータ突極24のステータ20外方側端部は、ステータ突極24の一方の磁極からの磁束が流入する磁路を構成する環状のヨーク26によって接続されている。なお、本実施形態におけるポールピース22を備えたステータ突極24の形状及び寸法はあくまでも例示であり、所望の電動機特性等に応じて適宜変更し得ることはいうまでもない。
励磁制御装置30は、前記それぞれのステータ突極24のコイル24bに供給される励磁電流の向きとそのオンオフ切換タイミングを制御するための電流スイッチング装置であり、一般に、トランジスタ、サイリスタ等の電流スイッチング素子と、それらのスイッチング素子のオンオフを制御するための制御回路とから構成されている。本発明に係る永久磁石電動機は、基本的にはステータ突極24の励磁制御にロータ10が同期駆動されるため、駆動制御の面からはオープンループ構成としてさしつかえない。ただし、ロータ10の回転角度を検出するために、例えば所定の切欠き形状を備えた遮光板(図示省略)と組合せた光センサやロータリエンコーダのような、既存の種々のセンサを適宜用いてロータ10の速度制御を行うことができる。その場合、回転センサの出力信号は、前記励磁制御装置30の制御回路に入力され、ロータ10の回転角度に応じて前記電流スイッチング素子のオンオフを制御するためのトリガ信号として使用される。
次に、図1、及び図3〜図5を参照して、上記の構成を有する本発明の一実施形態に係わる電動機の作用を説明する。
まず、図1は、ステータ突極24のコイル24bのいずれにも励磁電流が供給されておらず、いずれのステータ突極24も励磁されていない状態、いわば電源オフの状態を示している。この状態では、ロータ10が備えているそれぞれのロータ突極12の永久磁石12aに出入りする磁束は、両隣りに配置されている他のロータ突極12の相異なる極性の磁極との間でロータリングMpを通じて流通し、ロータ10の外部へ出ることがない、いわばロータ10内に閉じ込められた状態が保たれている。したがって、ロータ12の各磁極とそのロータ10を取り囲むように配設されている各ステータ突極24との間では、なんらの磁気的相互作用も生じさせない。このため、この状態では、ロータ10を軸16の回りにほとんど負荷を作用させることなく回動させることができるのである。上記の状態を定性的な磁束分布として同じく図1に「細かいドットの集合」で示している。図示のように、各ロータ突極12に配設されている永久磁石12aに出入りする磁束は、ロータリングMpを介して他のロータ突極12の永久磁石12aとの間に分布しており、ロータ10の外部に流出することはない。
このような本実施形態に係る電動機の性質は、ステータ突極24を励磁したときに、ロータ10がいずれのステータ突極24に拘束されることもなく即座に追従するという始動性の良さに寄与している。いま、比較例として、ロータリングMpを有しない従来のロータ構成を備える電動機の構成及び作用を図7、図8に示す。このような構成においては、各ロータ突極12の永久磁石12aは対向する各ステータ突極24との間に磁気吸引力を及ぼしあう。したがって、前記した本実施形態の場合とは異なり、いずれのステータ突極24も励磁されないオフ状態では、ロータ突極12は対向するステータ突極24と吸引し合った状態を保持しようとする。
次に、図8は、ロータ10を時計方向に回転駆動すべく、回転方向前方に位置するステータ突極24を近接するロータ突極12の磁極と異極性に励磁した状態を示している。この状態においても、各ロータ突極12は回転方向前方の異極性のステータ突極24から磁気吸引力を受けると同時に、対向している非励磁のステータ突極24との間にも依然として磁気吸引力が作用している。高トルクを得ようとする場合には、ロータ突極12に備える永久磁石12aの磁力を大きくするが、そうなると各ロータ突極12と対向するステータ突極24との間に作用する吸引力はますます大きくなり、電源オフ状態ではロータがステータに対して磁気吸引力によってロックされた状態となってしまい、隣接するステータ突極24を励磁しても始動が困難であった。本発明では、このような始動に関する従来の困難性をほぼ解消することができたのである。
次に、図3は、本実施形態に係る電動機を起動すべく、所定のステータ突極24のコイル24bを励磁した起動初期状態を示している。前記のとおり、この実施形態の電動機では、ステータ20の突極24が8組、ロータ10側の突極12が4組、それぞれ等ピッチで設けられているので、図示のとおり、ステータ突極24は1個おきにロータ10の突極12と向かい合うことになる。
いま、それぞれのステータ突極24を識別するために、各ステータ突極24に図示のとおりS1〜S8の符号を付けることにする。起動初期状態においては、S1からS8までのステータ突極24のコイル24bのうち、S1およびS5をS極に、S3およびS7をN極に励磁するように電流を供給している。前記のように、このときの各コイル24bに供給される励磁電流は、励磁制御装置30によって制御される。このようにステータ突極24を励磁すると、突極S1およびS5はロータ10のN極を吸引し、突極S3およびS7はロータ10のS極を吸引する。そして、ロータ10はこの磁気吸引力によって図示のように時計方向に回転し始める。
次に、ロータ軸16に固設されているロータ10が時計回りにステータ突極24の配設ピッチの1/2程度回転すると、図4に示す状態になる。ロータ10の突極12は、それぞれ回転方向前方に位置するステータの励磁突極S1,S5およびS3,S7と、それぞれの回転方向後方に位置する非励磁突極S8,S4およびS2,S6との中間付近に達しており、引き続き時計回り前方に位置する異なる磁極に磁化された励磁突極S1,S5およびS3,S7に吸引されて回転し続ける。
ロータ10が、図4の状態からさらに1/2ピッチ程度時計方向に回転すると、図5の状態となる。このとき、ロータ10のそれぞれの突極12は、励磁されたステータ突極S1,S5,S3,S7にほぼ対向する位置に達している。この状態では、図示のとおり、各ロータ突極10と励磁されたステータ突極S1,S5,S3,S7との間に働く磁気吸引力はロータ10の半径方向に作用しており、もはやロータ10を回転させるための駆動力として有効に機能しない。そこで、ここまで励磁されていたステータ突極S1,S5,S3,S7の各コイル24bへの通電を遮断し、それらのロータ回転方向前方にそれぞれ位置している非励磁状態のステータ突極S2,S6,S4,S8のコイル24bに励磁電流を供給してこれらを励磁する。これにより、ロータ10まわりの磁束分布は図6に示されるように、前記図2に図示されているロータ10を時計方向に45°ずらした状態に相当することとなる。そのために、ロータ10の各突極12には、それぞれの時計方向前方に位置する新たに異極性に励磁されたステータ突極S2,S6,S4,S8との間に作用する磁気吸引力によって再び回転駆動力が付与され、ロータ10は時計方向の回転を持続することができる。
なお、ロータ10の回転速度制御を行う場合には、各ステータ突極24のコイル24bへの励磁電流を切換えるタイミングは、ステータ20の極数(ステータ20に設けられているステータ突極24の数)nによって定まり、(360/n)°毎に切り替える必要がある。したがって、この実施形態にあってはステータ20の極数n=8であるから、下記の表1に示すように、(360/8)=45°毎に励磁されるステータ突極24を時計方向に切り換えていくことになる。ただし、この励磁するステータ突極24を切り換えていく方向は、所望のロータ回転方向にしたがって定めればよい。
また、上記説明の中では、ロータ10のそれぞれの突極12が異極に励磁されたステータ突極24とほぼ対向したときに励磁を切り換えるものとしたが、より厳密には、異極性に励磁されているステータ突極24に各ロータ突極12が接近していく際の磁束分布の変化を有限要素法を用いて逐次解析するなどの手法を採用したり、ステータ突極24の励磁切換タイミングをパラメータとして出力特性を測定比較したりすることによって、出力トルクの増大やエネルギー変換効率の向上だけでなく、トルク変動抑制等の他の要素を加味して最適な励磁電流切換タイミングを見出すことが可能である。そして、ロータ10の回転角を検出する前記回転センサの出力信号がその最適化条件を満たすように、センサの設定条件を調整すればよいのである。
産業上の利用可能性
以上詳細に説明したように、上記の構成を備えた本発明に係る電動機によれば、ステータに設けられた励磁手段がいずれも励磁されていない状態では、ロータのいずれかの永久磁石からの磁束は磁性通過部材を介して他の永久磁石の異なる磁極との間で流通してロータの内部に閉じ込められるから、ロータはほとんど負荷をかけることなく回動させることができ、始動性が良好である。
そして、前記ステータの励磁手段が励磁電流制御手段によって励磁されると、ロータに設けられている各永久磁石は近接する異極性に励磁されたステータの励磁手段に吸引される。これにより、励磁される励磁手段を順次所定の順序、タイミング及び励磁極性となるように切り換えていくことにより、ロータに回転力が付与され、高トルクを高効率で取出すことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の構成を示す図、
図2は本発明の一実施形態に用いられるロータの斜視図、
図3は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その1、
図4は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その2、
図5は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その3、
図6は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その4、
図7は従来例に係わる永久磁石電動機の構成及び作用を示す図その1、
図8は従来例に係わる永久磁石電動機の構成及び作用を示す図その2である。
この発明は、永久磁石を利用した電動機に係わり、特に始動性に優れ高効率を達成することができる電動機に関する。
背景技術
従来、電気エネルギーを機械的な出力、例えばトルクとして取り出せるようにした変換システムとして、種々の電動機が開発されてきた。それら従来の電動機にあっては、ステータ、ロータのいずれか又は両方に電磁石が用いられており、それらの電磁石によって回転磁界を生成してロータを追従させるもの(例えば誘導電動機)、あるいは、永久磁石ステータの磁界中に極性反転制御を可能として設けられたロータを回転自在に配設し、ロータとステータとの間の磁束の相互作用によって回転力を得るもの(例えば一般的な直流電動機)などがある。
このような在来の電動機については、永久磁石から発生する磁束を利用してエネルギー変換効率を高めようとする試みが種々なされてきた。発明者らは、特に永久磁石が発生する磁束の分布を適切に制御することによって、出力トルクに抗して作用する磁気力を可及的に低減し、これによる出力トルクの増大、電磁エネルギーから力学的エネルギーへの変換効率向上を達成すべく、さまざまな構成を有するトルク発生装置を試作開発してきた。例えば、本願発明者らによる特開平7−7907号公報は、回転子に永久磁石を付加することによって、エネルギー変換効率を高めることができる動力発生装置を提案している。本願発明者らが開発、提案してきたこれらの動力発生装置では、回転子に付加された永久磁石と固定子電磁石との間に磁性部材が介在するように構成し、励磁された一の固定子電磁石と永久磁石との間に存在する磁束が、磁性部材内で両者を結ぶ線上付近に可及的に収束するように計画されている。これによって、回転子の回転方向後方にある非励磁電磁石から受ける吸引力によって回転子が引き戻される方向に作用する力、いわば従来必然のごとく看過されてきた現象を防ぐことを意図したためである。
しかしながら、種々の試作機を製作してエネルギー変換効率、発生トルク等の性能を検証したところ、回転子の永久磁石に付加する磁性部材の形状寸法や固定子電磁石の構造によっては、磁性部材内で予期したほどの磁束域が形成されず、十分な効率の向上が図れない場合があることが判明した。また、回転子に永久磁石を組み込んであるために、いずれの固定子電磁石にも通電されていない状態では各永久磁石と近接している特定の固定子電磁石との間に吸引力が作用して、いわば回転子が強固にロックされた状態となっており、始動が困難となることがあるという問題点も確認された。
この発明は上記のような開発過程において見出された問題点を解消するためになされたもので、その目的は、永久磁石が持つ磁気エネルギーを有効に利用して高効率高トルクを得られるとともに、始動性にも優れた電動機を提供することである。
発明の開示
上記の目的を達成するために、本願発明に係わる永久磁石電動機は、互いに所定の間隔を隔てて略円環状に配設された複数の励磁手段を備えているステータと、それら略円環状に配設された励磁手段の各々と対向すべく、それら励磁手段の内周側に沿って移動可能に設けられ、相隣接するそれぞれが前記励磁手段に臨む側に互いに異なる磁極を有している少なくとも一対の着磁部を備えたロータと、前記ステータの励磁手段にあらかじめ定められた順序、タイミング及び励磁極性に基づいて励磁電流を供給する励磁電流制御手段とを備えた電動機であって、前記ロータの互いに隣り合う着磁部の間に磁束の流通を許容する磁束通過部材が設けられており、前記励磁手段が励磁されていない状態では、前記着磁部同士の間の磁束は前記磁束通過部材を介して流通し、ロータ内に閉止されているために、そのロータの着磁部と前記ステータの各励磁手段との間にはほとんどなんの相互作用も生じない一方、前記励磁手段を前記励磁電流制御手段によって励磁すると、前記ロータの各着磁部は異なる磁性に磁化された各励磁手段から発生する磁束によって吸引されて励磁手段の磁極の移動方向に追従して同期駆動されることを特徴とする。
前記磁束通過部材は、前記ロータの各着磁部の間を略円弧状に接続する板状磁性体を有して構成することができる。
また、前記ロータの着磁部と前記ステータの励磁手段との間には、磁性部材が介在するように構成してもよい。
さらに、前記ロータの前記隣り合う着磁部と前記磁束通過部材とで囲まれる領域は、非磁性材料で充填するように構成することができる。
上記の構成を備えた本発明に係る電動機は、前記ステータに設けられた励磁手段がいずれも励磁されていない状態では、ロータのいずれかの着磁部に出入りする磁束は磁束通過部材を介して相隣り合う異なる極性の磁極との間で流通するため、その磁束はロータ内に閉じ込められてステータ側の励磁手段との間で格別の相互作用を生じることがないから、ロータはほとんど負荷をかけることなく回動させることができる。
そして、前記ステータの励磁手段が励磁電流制御手段によって励磁されると、ロータに設けられている各着磁部は近接する異極性に励磁されたステータの励磁手段に吸引されるので、励磁される励磁手段を順次所定の順序、タイミング及び励磁極性となるように切り換えていくことにより、ロータに回転力が付与される。
前記磁束通過部材は、例えば前記ロータの各着磁部の間を略円弧状に接続する板状磁性体を有する構成とすることができる。
また、前記ロータの各着磁部と前記ステータの励磁手段との間に磁性部材を介設すれば、着磁部からの磁束がその磁性部材内で前記着磁部と近接する異極性の励磁手段とを結ぶように収束する。
前記ロータの前記隣り合う着磁部と前記磁束通過部材とで囲まれる領域を非磁性材料で充填すれば、ロータの機械的強度を高めることができ、適用可能な電動機容量の範囲が拡張される。
発明を実施するための最良の形態
以下、この発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1と図3ないし図5は、本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の概略構成を示す正面図である。また、図2はその実施形態に用いられているロータを示す概略斜視図である。なお、これらの図においては、本装置の基本的な構成と作用とを明瞭にするため、装置のハウジングやフレームなど、本発明の説明に関して本質的でないと思われる部分については図示を省略した。
図1に示すように、本実施形態の永久磁石電動機は、複数のロータ突極12,12,……を備えたロータ10と、複数のステータ突極24,24,……を備えたステータ20とを有する。
ロータ10は、略円柱状に形成されたロータハブ14の外周に沿って等間隔に径方向外方に向けて突設された複数のロータ突極12を有する。ここでは、ロータ突極12は4極であり、ロータハブ14の周囲に90°ピッチで固設されている。ロータハブ14は、例えば鉄等の磁性材料を用いて一体的に形成すればよい。その際、そのような磁性材料によって形成された同一形状の薄板を積層して用いれば、ロータハブ14内部での渦電流発生を抑制することができるので、本装置が動作中にロータハブ14内に渦電流が生じることによる損失を低減することができる。
ロータ突極12,12,……は、それぞれ着磁部を構成する永久磁石12aとそれから延設された磁性体ヘッド12bとを有する。永久磁石12aは略直方体状の形状とされており、ロータハブ14の外周側面で相隣接しているロータ突極12,12,……のロータ径方向端部が互いに反対極性の磁極となるように配置され固設されている。すなわち、各ロータ突極12に設けられる各永久磁石12aは、隣り合う突極12のロータ径方向外方端部に互いに異なる磁極が現れるように配置され固設されている。
本実施形態では、これらのロータ突極12の先端部を相互に接続する略円環形状を備えた磁束通過部材としてのロータリングMpが設けられている。このロータリングMpは、薄板状に形成した磁性材料を各ロータ突極12の先端部を互いに磁気的に接続するように配設される。そして、相隣り合うロータ突極12の異なる磁極同士を接続してその間の磁束の流通を可能とする作用を果たすものである。磁性材料の材質や厚さ、幅などの形状寸法は、永久磁石12aの磁気強度などに基づき、設計上ロータ突極12同士の間の磁束の流通に十分な特性が得られるように決定することができる。また、ロータリングMpは、円環状に形成された一体部材としてもよいし、あるいは必要に応じていくつかの略円弧状等の部材として形成しておき、ロータ突極12等と組合せるときに一体とするような構成としてもよい。
また、各ロータ突極12の先端部に、後述するステータ突極24の内周側形状に合わせて略弧状に形成された磁性体ヘッド12bが、そのステータ突極24と永久磁石12aとの間に介挿されるように固設されている。図1及び図2に示すように、磁性体ヘッド12bは、前記ロータリングMpのロータ突極12に当たる部分を所定寸法だけ径方向外方へ膨出させた突起部の形状を呈する。なお、この磁性体ヘッド12bの形状及び径方向厚み等の寸法は、本実施形態にある略弧状に限られることなく、試作試験等を通じて適宜の形状寸法としてよい。また、ロータリングMpとは別部材として形成しても一向に構わない。この磁性体ヘッド12b内では永久磁石12aからの磁束が近接した異極性のステータ突極24(後述)との間を結ぶように収束するから、他のステータ突極24との間でロータ10の回転を妨げるような磁気的相互作用が生ずるのを低減する効果が得られる。なお、磁性体ヘッド12bを省略して、各永久磁石12aがロータリングMpのみを介してステータ突極24と対向するように構成してもさしつかえない。
本実施形態のロータ10の場合、図1、図2などに示されているように、相隣り合うロータ突極12とロータリングMp及びロータハブ14で画成される空隙Vが存在する。この空隙Vは、そのまま空間として残しておいてもよいし、ロータ10に要求される機械的強度の観点から適宜の非磁性樹脂等の材料を充填するようにしてもよい。後者については、言い換えれば、着磁部を構成する永久磁石12aを含むロータ10の本体部分を樹脂モールド等で一体的に形成し、その後ロータリングMpを取り付けるようにすることができる。その他、当業者であれば、種々の設計手法を用いて本発明のロータを実現することができるであろう。
ロータハブ14の中心部には、ロータ軸16が挿通固定されている。このロータ軸16の両端部は、図示を省略する軸受によって回動自在に支持されている。これにより、ロータ10は、ロータハブ14の外周縁に沿って等ピッチで配設されたロータ突極12の先端に設けられた磁性体ヘッド12bと各ステータ突極24との間に一定のエアギャップが保持される態様で、ステータ突極24の内周に沿って回動自在に保持されている。
ステータ20は、その外周に沿って等間隔で円環状に配置されるとともに、径方向外方へ延設された励磁手段である複数のステータ突極24を備える。この実施形態では、8組のステータ突極24が45°ピッチで配設されており、前記した4組のロータ突極12のいずれかがステータ突極24と対向すれば、他のロータ突極12もそれぞれ他のステータ突極24と対向するようにしている。このような構成は、各ステータ突極24からの磁気力を各ロータ突極12で有効に利用するのに役立つが、これについては作用の項で詳述する。
各ステータ突極24は、径方向外方に突設されているコア24aとその周囲に巻回されている励磁コイル24bとを有している。それぞれのコイル24bは、後述する励磁制御装置30(励磁電流制御手段)の出力に電気的に接続されている。また、各ステータ突極24のステータ20外方側端部は、ステータ突極24の一方の磁極からの磁束が流入する磁路を構成する環状のヨーク26によって接続されている。なお、本実施形態におけるポールピース22を備えたステータ突極24の形状及び寸法はあくまでも例示であり、所望の電動機特性等に応じて適宜変更し得ることはいうまでもない。
励磁制御装置30は、前記それぞれのステータ突極24のコイル24bに供給される励磁電流の向きとそのオンオフ切換タイミングを制御するための電流スイッチング装置であり、一般に、トランジスタ、サイリスタ等の電流スイッチング素子と、それらのスイッチング素子のオンオフを制御するための制御回路とから構成されている。本発明に係る永久磁石電動機は、基本的にはステータ突極24の励磁制御にロータ10が同期駆動されるため、駆動制御の面からはオープンループ構成としてさしつかえない。ただし、ロータ10の回転角度を検出するために、例えば所定の切欠き形状を備えた遮光板(図示省略)と組合せた光センサやロータリエンコーダのような、既存の種々のセンサを適宜用いてロータ10の速度制御を行うことができる。その場合、回転センサの出力信号は、前記励磁制御装置30の制御回路に入力され、ロータ10の回転角度に応じて前記電流スイッチング素子のオンオフを制御するためのトリガ信号として使用される。
次に、図1、及び図3〜図5を参照して、上記の構成を有する本発明の一実施形態に係わる電動機の作用を説明する。
まず、図1は、ステータ突極24のコイル24bのいずれにも励磁電流が供給されておらず、いずれのステータ突極24も励磁されていない状態、いわば電源オフの状態を示している。この状態では、ロータ10が備えているそれぞれのロータ突極12の永久磁石12aに出入りする磁束は、両隣りに配置されている他のロータ突極12の相異なる極性の磁極との間でロータリングMpを通じて流通し、ロータ10の外部へ出ることがない、いわばロータ10内に閉じ込められた状態が保たれている。したがって、ロータ12の各磁極とそのロータ10を取り囲むように配設されている各ステータ突極24との間では、なんらの磁気的相互作用も生じさせない。このため、この状態では、ロータ10を軸16の回りにほとんど負荷を作用させることなく回動させることができるのである。上記の状態を定性的な磁束分布として同じく図1に「細かいドットの集合」で示している。図示のように、各ロータ突極12に配設されている永久磁石12aに出入りする磁束は、ロータリングMpを介して他のロータ突極12の永久磁石12aとの間に分布しており、ロータ10の外部に流出することはない。
このような本実施形態に係る電動機の性質は、ステータ突極24を励磁したときに、ロータ10がいずれのステータ突極24に拘束されることもなく即座に追従するという始動性の良さに寄与している。いま、比較例として、ロータリングMpを有しない従来のロータ構成を備える電動機の構成及び作用を図7、図8に示す。このような構成においては、各ロータ突極12の永久磁石12aは対向する各ステータ突極24との間に磁気吸引力を及ぼしあう。したがって、前記した本実施形態の場合とは異なり、いずれのステータ突極24も励磁されないオフ状態では、ロータ突極12は対向するステータ突極24と吸引し合った状態を保持しようとする。
次に、図8は、ロータ10を時計方向に回転駆動すべく、回転方向前方に位置するステータ突極24を近接するロータ突極12の磁極と異極性に励磁した状態を示している。この状態においても、各ロータ突極12は回転方向前方の異極性のステータ突極24から磁気吸引力を受けると同時に、対向している非励磁のステータ突極24との間にも依然として磁気吸引力が作用している。高トルクを得ようとする場合には、ロータ突極12に備える永久磁石12aの磁力を大きくするが、そうなると各ロータ突極12と対向するステータ突極24との間に作用する吸引力はますます大きくなり、電源オフ状態ではロータがステータに対して磁気吸引力によってロックされた状態となってしまい、隣接するステータ突極24を励磁しても始動が困難であった。本発明では、このような始動に関する従来の困難性をほぼ解消することができたのである。
次に、図3は、本実施形態に係る電動機を起動すべく、所定のステータ突極24のコイル24bを励磁した起動初期状態を示している。前記のとおり、この実施形態の電動機では、ステータ20の突極24が8組、ロータ10側の突極12が4組、それぞれ等ピッチで設けられているので、図示のとおり、ステータ突極24は1個おきにロータ10の突極12と向かい合うことになる。
いま、それぞれのステータ突極24を識別するために、各ステータ突極24に図示のとおりS1〜S8の符号を付けることにする。起動初期状態においては、S1からS8までのステータ突極24のコイル24bのうち、S1およびS5をS極に、S3およびS7をN極に励磁するように電流を供給している。前記のように、このときの各コイル24bに供給される励磁電流は、励磁制御装置30によって制御される。このようにステータ突極24を励磁すると、突極S1およびS5はロータ10のN極を吸引し、突極S3およびS7はロータ10のS極を吸引する。そして、ロータ10はこの磁気吸引力によって図示のように時計方向に回転し始める。
次に、ロータ軸16に固設されているロータ10が時計回りにステータ突極24の配設ピッチの1/2程度回転すると、図4に示す状態になる。ロータ10の突極12は、それぞれ回転方向前方に位置するステータの励磁突極S1,S5およびS3,S7と、それぞれの回転方向後方に位置する非励磁突極S8,S4およびS2,S6との中間付近に達しており、引き続き時計回り前方に位置する異なる磁極に磁化された励磁突極S1,S5およびS3,S7に吸引されて回転し続ける。
ロータ10が、図4の状態からさらに1/2ピッチ程度時計方向に回転すると、図5の状態となる。このとき、ロータ10のそれぞれの突極12は、励磁されたステータ突極S1,S5,S3,S7にほぼ対向する位置に達している。この状態では、図示のとおり、各ロータ突極10と励磁されたステータ突極S1,S5,S3,S7との間に働く磁気吸引力はロータ10の半径方向に作用しており、もはやロータ10を回転させるための駆動力として有効に機能しない。そこで、ここまで励磁されていたステータ突極S1,S5,S3,S7の各コイル24bへの通電を遮断し、それらのロータ回転方向前方にそれぞれ位置している非励磁状態のステータ突極S2,S6,S4,S8のコイル24bに励磁電流を供給してこれらを励磁する。これにより、ロータ10まわりの磁束分布は図6に示されるように、前記図2に図示されているロータ10を時計方向に45°ずらした状態に相当することとなる。そのために、ロータ10の各突極12には、それぞれの時計方向前方に位置する新たに異極性に励磁されたステータ突極S2,S6,S4,S8との間に作用する磁気吸引力によって再び回転駆動力が付与され、ロータ10は時計方向の回転を持続することができる。
なお、ロータ10の回転速度制御を行う場合には、各ステータ突極24のコイル24bへの励磁電流を切換えるタイミングは、ステータ20の極数(ステータ20に設けられているステータ突極24の数)nによって定まり、(360/n)°毎に切り替える必要がある。したがって、この実施形態にあってはステータ20の極数n=8であるから、下記の表1に示すように、(360/8)=45°毎に励磁されるステータ突極24を時計方向に切り換えていくことになる。ただし、この励磁するステータ突極24を切り換えていく方向は、所望のロータ回転方向にしたがって定めればよい。
また、上記説明の中では、ロータ10のそれぞれの突極12が異極に励磁されたステータ突極24とほぼ対向したときに励磁を切り換えるものとしたが、より厳密には、異極性に励磁されているステータ突極24に各ロータ突極12が接近していく際の磁束分布の変化を有限要素法を用いて逐次解析するなどの手法を採用したり、ステータ突極24の励磁切換タイミングをパラメータとして出力特性を測定比較したりすることによって、出力トルクの増大やエネルギー変換効率の向上だけでなく、トルク変動抑制等の他の要素を加味して最適な励磁電流切換タイミングを見出すことが可能である。そして、ロータ10の回転角を検出する前記回転センサの出力信号がその最適化条件を満たすように、センサの設定条件を調整すればよいのである。
産業上の利用可能性
以上詳細に説明したように、上記の構成を備えた本発明に係る電動機によれば、ステータに設けられた励磁手段がいずれも励磁されていない状態では、ロータのいずれかの永久磁石からの磁束は磁性通過部材を介して他の永久磁石の異なる磁極との間で流通してロータの内部に閉じ込められるから、ロータはほとんど負荷をかけることなく回動させることができ、始動性が良好である。
そして、前記ステータの励磁手段が励磁電流制御手段によって励磁されると、ロータに設けられている各永久磁石は近接する異極性に励磁されたステータの励磁手段に吸引される。これにより、励磁される励磁手段を順次所定の順序、タイミング及び励磁極性となるように切り換えていくことにより、ロータに回転力が付与され、高トルクを高効率で取出すことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の構成を示す図、
図2は本発明の一実施形態に用いられるロータの斜視図、
図3は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その1、
図4は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その2、
図5は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その3、
図6は本発明の一実施形態に係わる永久磁石電動機の作用を示す図その4、
図7は従来例に係わる永久磁石電動機の構成及び作用を示す図その1、
図8は従来例に係わる永久磁石電動機の構成及び作用を示す図その2である。
Claims (7)
- 互いに所定の間隔を隔てて略円環状に配設された複数の励磁手段を備えているステータと、
それら略円環状に配設された励磁手段の各々と対向すべく、それら励磁手段の内周側に沿って移動可能に設けられ、相隣接するそれぞれが前記励磁手段に臨む側に互いに異なる磁極を有している少なくとも一対の着磁部を備えたロータと、
前記ステータの励磁手段にあらかじめ定められた順序、タイミング及び励磁極性に基づいて励磁電流を供給する励磁電流制御手段とを備えた電動機であって、
前記ロータの互いに隣り合う着磁部の間に磁束の流通を許容する磁束通過部材が設けられており、前記励磁手段が励磁されていない状態では、前記着磁部同士の間の磁束は前記磁束通過部材を介して流通し、ロータ内に閉止されているために、そのロータの着磁部と前記ステータの各励磁手段との間にはほとんどなんの相互作用も生じない一方、
前記励磁手段を前記励磁電流制御手段によって励磁すると、前記ロータの各着磁部は異なる磁性に磁化された各励磁手段から発生する磁束によって吸引されて励磁手段の磁極の移動方向に追従して同期駆動される
ことを特徴とする電動機。 - 前記磁束通過部材は前記ロータの各着磁部の間を略円弧状に接続する板状磁性体を有していることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の電動機。
- 前記磁束通過部材は前記ロータの各着磁部の間を相互に接続する円環状に形成された部材を備えて構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の電動機。
- 前記着磁部は相隣接するそれぞれが前記励磁手段に臨む側に互いに異なる磁極を有する永久磁石を備えて構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項までのいずれかに記載の電動機。
- 前記ロータの着磁部と前記ステータの励磁手段との間に、磁性部材が介在するように構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項までのいずれかに記載の電動機。
- 前記ロータの着磁部と前記ステータの励磁手段との間に、磁性部材が介在するように構成されていることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の電動機。
- 前記ロータの前記隣り合う着磁部と前記磁束通過部材とで囲まれる領域が、非磁性材料で充填されていることを特徴とする請求の範囲第1項から第6項までのいずれかに記載の電動機。
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