JPWO2002029099A1 - 生理活性物質のスクリーニング方法 - Google Patents
生理活性物質のスクリーニング方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2002029099A1 JPWO2002029099A1 JP2002532667A JP2002532667A JPWO2002029099A1 JP WO2002029099 A1 JPWO2002029099 A1 JP WO2002029099A1 JP 2002532667 A JP2002532667 A JP 2002532667A JP 2002532667 A JP2002532667 A JP 2002532667A JP WO2002029099 A1 JPWO2002029099 A1 JP WO2002029099A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gene
- group
- stress
- living body
- expression level
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/5005—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving human or animal cells
- G01N33/5008—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving human or animal cells for testing or evaluating the effect of chemical or biological compounds, e.g. drugs, cosmetics
- G01N33/5082—Supracellular entities, e.g. tissue, organisms
- G01N33/5088—Supracellular entities, e.g. tissue, organisms of vertebrates
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P25/00—Drugs for disorders of the nervous system
- A61P25/18—Antipsychotics, i.e. neuroleptics; Drugs for mania or schizophrenia
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2500/00—Screening for compounds of potential therapeutic value
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Immunology (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Urology & Nephrology (AREA)
- Hematology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Food Science & Technology (AREA)
- Zoology (AREA)
- Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Pathology (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Psychiatry (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Neurosurgery (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Public Health (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Neurology (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
Abstract
本発明は、種々の生理活性を有するDGEと同様な遺伝子制御活性を有する生理活性物質もしくは生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法、生体の恒常性維持に有効な、例えばストレスの緩和又は予防を目的とする遺伝子制御剤、並びに遺伝子の制御方法を提供する。
Description
技術分野
本発明は、生理活性物質のスクリーニング方法、遺伝子制御剤並びに遺伝子の制御方法に関する。
背景技術
生物は、生活環境の変化等の外的要因、ウイルス、細菌感染等の内的要因により、様々なストレスを受ける。ストレスはそれ自身、生物の正常な生活を妨げる要因であるが、これがうまく回避されない場合や逆に過剰反応が起こった場合にはより重篤な障害、例えば疾病を引き起こすこととなる。
ストレスが負荷された状態、あるいはそこから疾病へと移行する状態においては生体内の種々の機能、要素が複合的に関与するが、そこには基本的には遺伝子の発現状態の変化が存在する。したがって、遺伝子レベルでの調節により、スムーズにストレスを回避することは可能なはずである。しかしながら、ストレスを受けている状態、並びにそれが回避される過程での遺伝子発現の調節の詳細は明らかではなく、上記のような遺伝子レベルの調節によるストレス回避手段は未だ確立されていない。
一方、アガロースから得ることのできるL−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(L−glycero−1,5−epoxy−1αβ,6−dihydroxy−cis−hexa−3−en−2−one、以下DGEと称す)は種々の生理活性を有しており、生体の恒常性維持に有用な化合物であることが知られている(国際公開第99/64424号パンフレット)。しかしながら、該化合物の遺伝子レベルでの作用機作は明らかにされていない。
本発明の目的は、DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する生理活性物質もしくは生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法、生体の恒常性維持に有効な、例えばストレスの緩和又は予防を目的とする遺伝子制御剤、並びに遺伝子の制御方法を提供することにある。
発明の開示
本発明の第1の発明は、生理活性物質のスクリーニング方法であって、下記工程;
(1)▲1▼被検物質、及び▲2▼下記(i)に記載の化合物及び/又は下記(ii)に記載の化合物を、それぞれ生体に負荷する工程:
(i)下記式(I)で表される化合物、その誘導体及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(式中、X及びYは、H又はCH2OH、ただし、XがCH2OHの時、YはH、XがHの時、YはCH2OHである)
(ii)下記式(II)で表される3,6−アンヒドロガラクトース、そのアルデヒド体、その抱水体、並びにそれらの2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び/又は該化合物を還元末端に有する可溶性の糖化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を▲1▼を負荷した場合と▲2▼を負荷した場合とで比較する工程、並びに
(3)少なくとも1つの遺伝子が、▲2▼を負荷した場合と実質的に同等の発現量の変化を示した被検物質を選択する工程、を包含する方法に関する。
本発明の第2の発明は、生理活性物質のスクリーニング方法であって、下記工程;
(1)被検物質を生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量と当該負荷を行っていない場合の当該生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を両者で比較する工程、並びに
(3)下記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は下記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる被検物質を選択する工程:
A群:
骨形成タンパク質−6〔BMP−6(ジーンバンク登録番号:NM 001718)〕遺伝子、
ケモカインレセプター−1〔CCR−1(ジーンバンク登録番号:NM 001295)〕遺伝子、
肝細胞増殖因子〔HGF(ジーンバンク登録番号:X16323)〕遺伝子、
Intercellular adhesion molecule−1〔ICAM−1(ジーンバンク登録番号:NM 000201)〕遺伝子、
インターロイキン−1β〔IL−1β(ジーンバンク登録番号:X02532)〕遺伝子、
インターロイキン−16〔IL−16(ジーンバンク登録番号:M90391)〕遺伝子、
白血病阻害因子〔LIF(ジーンバンク登録番号:NM 002309)〕遺伝子、
オステオポンチン〔osteopontin(ジーンバンク登録番号:NM 000582)〕遺伝子、
腫瘍壊死因子−α〔TNF−α(ジーンバンク登録番号:X02910)〕遺伝子、
ニューロピリン−1〔Neuropilin−1(ジーンバンク登録番号:NM 003873)〕遺伝子、
signal transducer and activator of transcription 6〔STAT6(ジーンバンク登録番号:AF067575)〕遺伝子、及び
Homo Sapiens cDNA:FLJ22298 fis,clone HRC04637(ジーンバンク登録番号:AK025951)を含む遺伝子、
B群:
ヘムオキシゲナーゼ−1〔HO−1(ジーンバンク登録番号:NM 002133)〕遺伝子、
チオレドキシンレダクターゼ−1(ジーンバンク登録番号:AF106697)遺伝子、
putative translation initiation factor〔SUI1(ジーンバンク登録番号:AF083441)〕遺伝子、及び
Homo sapiens hypothetical protein〔HSPC014(ジーンバンク登録番号:NM 015932)〕遺伝子、
C群:
N−myc downstream regulated gene 1〔NDRG1(ジーンバンク登録番号;NM 006096)〕遺伝子、
adenosine deaminase,RNA specific〔ADAR(ジーンバンク登録番号:NM 015841)〕遺伝子、
splicing factor 3b,subunit2〔SF3B2(ジーンバンク登録番号:NM 006842)〕遺伝子、
interleukin enhancer binding factor 3〔ILF3(ジーンバンク登録番号:NM 004516)〕遺伝子、
valyl−tRNA synthetase 2〔VARS2(ジーンバンク登録番号:NM 006295)〕遺伝子、及び
配列表の配列番号:12に記載の塩基配列を含む遺伝子、
D群:
eukaryotic translation elongation factor 1 alpha 1〔EEF1A1(ジーンバンク登録番号:NM 001402)〕遺伝子、
ribosomal protein LI7〔RPL17(ジーンバンク登録番号:NM 000985)〕遺伝子、
ribosomal protein L24〔RPL24(ジーンバンク登録番号:NM 000986)〕遺伝子、
splicing factor,arginine/serine−rich 2〔SFRS2(ジーンバンク登録番号:NM 003016)〕遺伝子、
tumor protein,translationally−controlled 1〔TPT1(ジーンバンク登録番号:NM 003295)〕遺伝子、
ubiquinol−cytochrome c reductase binding protein〔UQCRB(ジーンバンク登録番号:NM 006294)〕遺伝子、
ribosomal protein S15a〔RPS15A(ジーンバンク登録番号:NM 001019)〕遺伝子、及び
ribosomal protein L27〔RPL27(ジーンバンク登録番号:NM 000988)〕遺伝子、
E群:
インターロイキン−2レセプターα〔IL2RA(ジーンバンク登録番号:X01057)〕遺伝子、
インターロイキン−6〔IL6(ジーンバンク登録番号:X04430)〕遺伝子、
CD166(ジーンバンク登録番号:Y10183)遺伝子、
インターフェロン調節因子−1〔IRF1(ジーンバンク登録番号:X14454)〕遺伝子、
インターロイキン−15レセプターα〔IL15RA(ジーンバンク登録番号:U31628)〕遺伝子、
Nuclear factor kappa−b p105サブユニット〔NFKB1(ジーンバンク登録番号:M58603)〕遺伝子、
カスパーゼ−1〔CASP1(ジーンバンク登録番号:M87507)〕遺伝子、
インターロイキン−1β〔IL1B(ジーンバンク登録番号:M15330)〕遺伝子、
腫瘍壊死因子−α〔TNF−α(ジーンバンク登録番号:X02910)〕遺伝子、
Gro1オンコジーン〔GR01(ジーンバンク登録番号:X54489)〕遺伝子、
インターロイキン−1α〔IL1A(ジーンバンク登録番号:M28983)〕遺伝子、
インヒビンベータA〔INHBA(ジーンバンク登録番号:J03634)〕遺伝子、
インターロイキン−7レセプター〔IL7R(ジーンバンク登録番号:M29696)〕遺伝子、
前駆B細胞コロニー増強因子〔PBEF(ジーンバンク登録番号:U02020)〕遺伝子、
Liver and activation regulated chemokine〔LARC(ジーンバンク登録番号:U64197)〕遺伝子、及び
インターロイキン−8〔IL8(ジーンバンク登録番号:M26383)〕遺伝子、
F群:
コロニー刺激因子−1レセプター〔CSFIR(ジーンバンク登録番号:X03663)〕遺伝子、
ケモカイン(C−X−Cモチーフ)レセプター−4〔CXCR4(ジーンバンク登録番号:AF147204)〕遺伝子、及び
エンドグリン〔ENG(ジーンバンク登録番号:NM 000118)〕遺伝子、
G群:
ヘムオキシゲナーゼ−1〔HMOX1(ジーンバンク登録番号:Z82244)〕遺伝子、
を包含する方法に関する。
本発明の第3の発明は、生理活性物質のスクリーニング方法であって、下記工程;
(1)ストレスの生体への負荷、並びに被検物質とストレスの生体への負荷をそれぞれ行う工程、
(2)(1)の生体及びいずれの負荷も行っていない正常生体における遺伝子の発現量をそれぞれ測定する工程、並びに
(3)(2)により得られた遺伝子の発現量を(1)の生体と正常生体とで比較し、下記(a)〜(g)記載の遺伝子の発現パターンから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現パターンを示す被検物質を選択する工程:
(a)前記のA群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(b)前記のB群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに増加する、
(c)前記のC群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに減少する、
(d)前記のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、
(e)前記のE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(f)前記のF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(g)前記のG群の遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、を包含する方法に関する。
本発明の第3の発明において、生体に負荷するストレスがホルボールミリステートアセテート処理である場合、遺伝子の発現パターンは上記(a)〜(d)が例示され、生体に負荷するストレスがリポポリサッカライド処理である場合、遺伝子の発現パターンは上記(e)〜(g)が例示される。
本発明の第1〜3の発明において、生体としては生物個体又は培養細胞が例示される。遺伝子の発現量としては、該遺伝子から転写されるmRNA量により測定される遺伝子の発現量が例示され、当該測定は、特にDNAアレイを使用したハイブリダイゼーション法により行うのが好適である。また、本発明は、本発明の第1〜3の発明により得られうる物質も包含する。
本発明の第4の発明は、本発明の第1〜3の発明のスクリーニング方法に使用されるDNAアレイに関し、上記A〜G群記載の遺伝子から選択される少なくとも2つの遺伝子もしくはその断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化されていることを特徴とするDNAアレイに関する。
本発明の第5の発明は、上記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第6の発明は、ストレスの負荷された生体において、上記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第7の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した上記に示すA群及びE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第8の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した上記に示すB群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第9の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した上記に示すC群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第10の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した上記に示すD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第5〜10の発明において、含有される各々の化合物が本発明の第1〜3のいずれかの発明のスクリーニング方法によって得られた物質である遺伝子制御剤が例示される。また、本発明の第5〜10の発明の遺伝子制御剤としては、ストレスの緩和、もしくは予防を目的とする遺伝子制御剤が例示される。
本発明の第11の発明は、上記(i)記載の化合物、上記(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有する組成物を生体に投与することにより、上記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする遺伝子の制御方法に関する。
本発明の第12の発明は、上記(i)記載の化合物、上記(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有する組成物を、ストレスが負荷された生体に投与することにより、上記に示すA群、C群、E群及びF群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする遺伝子の制御方法に関する。
本発明の第11及び12の発明において、上記(i)記載の化合物又は上記(ii)記載の化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物としては、本発明の第1〜3の発明のいずれかのスクリーニング方法によって得られた物質が例示される。
発明を実施するための最良の形態
本発明の生理活性物質のスクリーニング方法の一態様においては、上記式(I)で表される構造を有する化合物を使用する。当該化合物の一例としては、L−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(DGE)が挙げられる。
該化合物は、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオース及び3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を中性からアルカリの条件下で処理(維持)することにより得ることができる。また、当該化合物のpH7未満での酸加水分解および/または酵素分解を行い、ついで得られた酸分解物および/または酵素分解物を中性からアルカリの条件下で処理(維持)することにより得ることができる。
なお、前記酵素分解としては、例えば、3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物、例えばアガロースのα−アガラーゼによる分解を挙げることができる。酵素分解反応を行うための条件は特に限定はなく、使用する酵素についての公知の条件に従えばよい。
還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオース及び3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物のpH7超のアルカリ処理において、当該化合物を溶解または懸濁するアルカリの種類に特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の無機塩基、トリス、エチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用可能である。アルカリの濃度も特に限定はないが、好ましくは0.0001〜5規定、より好ましくは0.001〜1規定の濃度で使用可能である。また、処理温度も特に限定はないが、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜130℃に設定すればよい。また処理時間も特に限定はないが、数秒〜数日に設定すればよい。アルカリの種類と濃度、処理時の温度及び時間は原料となる上記化合物の種類および目的とする式(I)で表される化合物の生成量により適宜選択すればよい。一般に、pH7超であれば良いが、低濃度のアルカリよりも高濃度のアルカリ、低温よりも高温を選択することにより式(I)で表される化合物の生成は速やかに進行する。
例えば、アガロビオース又はκ−カラビオースのpH11.5の水溶液を調製し、37℃で5分間保持することにより、式(I)で表される化合物が生成する。
生成した式(I)で表される化合物を含有するアルカリ液は、目的に応じ中和して用いても良く、またpH7未満の酸性溶液として使用しても良い。
本発明の式(I)で表される化合物の精製手段としては、化学的方法、物理的方法等の公知の精製手段を用いればよく、例えば、ゲルろ過法、分子量分画膜による分画法、溶媒抽出法、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー等の精製方法を組合せて精製すればよい。
例えば、アガロビオースの中性からアルカリの条件下での処理物より式(I)で表される化合物のXがCH2OH、YがHである化合物が精製され、κ−カラビオースの中性からアルカリでの条件下での処理物より、式(I)で表される化合物のXがH、YがCH2OHである化合物が精製される。
また、式(I)で表される化合物の誘導体としては、生体において、当該化合物と実質的に同等の遺伝子発現パターンを示しうる限り特に限定はないが、例えば式(I)で表される化合物とSH基含有化合物(例えば、システイン、グルタチオン又はそれらの公知の誘導体)とを反応して得られる化合物を使用することができる。なお、式(I)で表される化合物とSH基含有化合物とを反応して得られる化合物の製造方法としては国際公開第99/64424号パンフレットに記載の公知の方法を挙げることができる。
式(I)で表される化合物又はその誘導体の塩としては、医薬として許容される塩が好適であり、公知の方法にて変換することができる。
また、式(I)で表される化合物であるDGEはアガロオリゴ糖が生体内に取り込まれた際に生成される化合物であることから、アガロオリゴ糖を生体に投与した場合、DGEと同様の生体反応を起こすことが予想されている〔Jpn.J.Phycol.(Sorui)48:13−19,March 10,2000〕。よって、本発明においては式(I)で表される化合物の代わりに、生体に投与した場合に当該化合物が生成すると考えられる、上記式(II)で表される3,6−アンヒドロガラクトース、そのアルデヒド体、その抱水体、並びにそれらの2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び/又は該化合物を還元末端に有する可溶性の糖化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を使用することもできる(なお、3,6−アンヒドロガラクトースのアルデヒド体、抱水体、2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体については国際公開第00/41579号パンフレット記載の化合物が例示される)。当該化合物の例としては、特に限定はないが、例えば、アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース等のアガロオリゴ糖が例示される。
[1]本発明の生理活性物質のスクリーニング方法
上記の式(I)で表される化合物の1つであるDGEは、生体の受けたダメージを緩和し、生体の恒常性維持を促進する作用を有する。DGEは前記のようなストレスを受けた生体において発現量の変化が見られる遺伝子の当該発現量を調節する活性、すなわち、遺伝子発現制御活性(もしくは作用)を有しており、この活性は生体内の各種遺伝子の発現制御を介することが知られている。さらに、DGEは種々の生理活性を有することが知られており、例えばアポトーシス誘発活性、制がん活性、活性酸素産生抑制活性、過酸化脂質ラジカル産生抑制活性、一酸化窒素産生抑制活性等の抗酸化活性、抗病原微生物活性、抗変異原活性、α−グリコシダーゼ阻害活性、免疫調節作用、プロスタグランジン合成抑制作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、サイトカイン産生調節作用、抗リウマチ作用、抗糖尿病作用、滑膜細胞増殖抑制活性、熱ショックタンパク質産生誘導作用等が挙げられる。そして、このような生理活性はDGEの遺伝子制御作用による遺伝子発現量の調節により発現されるものと考えられる。
本発明の生理活性物質のスクリーニング方法は、前記のような種々の生理活性が知られるDGEの遺伝子制御作用に基づく遺伝子の発現量の変化を指標として、同様な遺伝子発現量の変化を少なくとも示しうるDGE以外の物質のスクリーニング方法を提供するものである。すなわち、生体内において、DGEと同様な遺伝子の発現パターンを少なくとも示しうる物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明により得られた物質はDGEと同様な遺伝子発現制御活性を示しうることから、例えばDGEと同様な生理活性を有するものと推定される。したがって、当該化合物を用いて、例えば当該生理活性の発現が有効に寄与する疾患及び/又は症状(例えば、がん、炎症、アレルギー、糖尿病等の上記のDGEの生理活性を要する疾患)の治療又は予防に有効な医薬、食品、飲料等を提供することが可能となる。
また、DGEの生理活性とは異なる未知の生理活性を有する物質等を得ることも可能であり、かかる観点から、本発明の生理活性物質のスクリーニング方法は、生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法と捉えることもできる。
本発明の生理活性物質のスクリーニング方法においては、具体的には、下記工程;
(1)▲1▼被検物質、及び▲2▼前記(i)に記載の化合物及び/又は前記(ii)に記載の化合物を、それぞれ生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を▲1▼を負荷した場合と▲2▼を負荷した場合とで比較する工程、並びに
(3)少なくとも1つの遺伝子が、▲2▼を負荷した場合と実質的に同等の発現量の変化を示した被検物質を選択する工程、により、DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する物質を得ることができる。
なお、「実質的に同等の発現量の変化」とは、必ずしも発現量の程度において同等であることを意図するものではなく、少なくとも発現量の変化のパターンが同等であることを意図する。
すなわち、▲1▼被検物質を負荷、すなわち、投与するかもしくは摂取させた(以下において同様)生体由来の試料における遺伝子発現量を測定する。一方、▲2▼の化合物、例えば前記式(I)で表わされる化合物、例えばDGEを負荷した生体由来の試料における遺伝子発現量を測定する。次いで各々の遺伝子発現量及び/又はその変化を比較し、被検物質とDGEそれぞれの遺伝子発現制御作用が類似しているかどうかを判定する。遺伝子発現制御作用が類似している物質はDGEと同様の生理活性を有している可能性が高く、DGEと同じ目的で使用できることが期待される。
上記のDGEの有する遺伝子発現制御作用は、特に限定するものではないが、例えば、DGEを負荷した生体と当該負荷を行わない場合の当該生体(対照)との間での遺伝子発現状態(発現パターン)を比較することにより確認することができる。その際、両者間で発現量に差異を有する遺伝子はDGEによる制御対象の遺伝子であると考えられる。なお、DGEの有する遺伝子発現制御作用は、後述する実施例1に記載のように、生体へのストレス負荷を介して確認することもできる。
なお、本明細書において、生体としては特に限定するものではないが、好適には生物個体(ヒトを除く)又は培養細胞を挙げることができる。例えば生物個体を使用する場合、該個体より適当な試料、例えば組織の一部や体液等を採取し、遺伝子発現状態を調べることができる。
また、本発明のスクリーニング方法において使用される被検物質には何ら限定はなく、天然由来のもの、人為的に合成されたもの、天然由来の物質を人為的に改変したもの等を使用することができる。これらの物質は単離されたもの、複数の物質を含有するもののいずれも使用することができ、例えば、適切な分離操作と本発明のスクリーニング方法とを組み合わせて有用な物質を精製、もしくは単離することも可能である。
また、本発明のスクリーニング方法を用いることにより、例えば前記(i)記載の化合物又は(ii)記載の化合物と実質的に同等の生理活性を有する組成物、例えば植物、動物、担子菌又は微生物等からの天然由来の組成物から、その活性成分を特定することもできる。例えば、このような組成物を構成する化合物を被検物質として、本発明の生理活性物質のスクリーニング方法を実施することにより、その活性成分を特定することもできる。
また、上記の本発明のスクリーニング方法によって得られる物質、すなわち、前記(i)記載の化合物又は前記(ii)記載の化合物と同様な遺伝子制御活性を有する物質も本発明の範囲に包含される。当該物質は、被検物質を本発明のスクリーニング方法に供し、当該方法において定められた遺伝子制御活性を有するか否かを判定することにより得ることができる。また、当該物質としては、例えば植物、担子菌類由来の物質やそれらの誘導体が例示され、ここで使用される植物としては、様々な生理活性が知られている薬用植物や海藻類等が例示される。
また、それらに由来する物質としては、特に限定はないが、構成成分として糖を含有する物質、例えば、多糖類、その分解物又はそれらの誘導体が挙げられ、中でも分子量100〜2000程度の物質等が好適である。さらに、これらの内から本発明のスクリーニング方法によって対照として使用された物質(例えば、DGE)以外の遺伝子制御活性をも有する物質を選択することができる。前記の、構成成分として糖を含有する物質としては、3,6−アンヒドロガラクトースを分子内に有する物質が特に好適である。なお、分解物、誘導体は、その元となる物質と、生体内において、実質的に同様な遺伝子の発現パターンを示しうるものである限り特に限定されない。
遺伝子発現状態の比較は公知の方法、例えば当該遺伝子産物(ポリペプチド)量の測定や当該遺伝子より転写されるmRNA量の測定により実施することができる。上記の目的からはmRNA量を測定する方法が効率的であり、好適である。
例えば、ポリペプチド量の測定は、当該ポリペプチド又はその断片に特異的に結合しうる抗体を使用して行うのが好適である。当該抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよく、さらに公知技術により修飾された抗体や抗体の誘導体、例えばFabフラグメント、単鎖抗体等であってもよい。これらの抗体及び誘導体等は公知の方法に従って製造することができる(例えば、1992年、John Wiely & Sons,Inc.発行、John E.Coligan編、Current Protocols in Immunology参照)。また、ポリペプチド量の測定方法としては、例えば公知の酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法等を挙げることができる。さらに、前記抗体等を、前記ポリペプチド量の測定方法における検出の容易化のために各種標識を行ってもよい。
mRNA量の測定方法には特に限定はなく、公知の方法、例えばRT−PCR法、ノーザン・ハイブリダイゼーション法、ドットブロット・ハイブリダイゼーション法、DNAアレイを使用するハイブリダイゼーション法、DNAマイクロビーズ法等を使用することができる。微量の試料で多数の遺伝子の発現状態を調べることが可能であることから、上記の目的には、DNAアレイを使用する方法が特に好適である。
本明細書において「DNAアレイ」とは、遺伝子又は遺伝子由来のDNA断片が支持体上のあらかじめ定められた領域(位置)に固定されているものを指し、例えばDNAチップと呼称されているものを包含する。また、遺伝子又は遺伝子由来のDNA断片が支持体上に高密度に固定されているものはDNAマイクロアレイとも呼ばれる。
DNAアレイの支持体は、ハイブリダイゼーションに使用可能なものであれば特に限定はなく、通常スライドガラス、シリコンチップ、ニトロセルロースやナイロンの膜等が使用される。支持体の表面は、共有結合または非共有結合により一本鎖DNAもしくは二本鎖DNAを固定化できるものであればいずれでもよく、支持体の表面に親水性又は疎水性の官能基を有しているものが好適に使用でき、特に限定はないが、例えば、水酸基、アミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、アシル基等を有しているものが好適に使用できる。これらの官能基は、支持体自体の表面特性として存在していてもよいが、表面処理によって導入してもよい。このような表面処理物としては、例えば、ガラスをアミノアルキルシラン等の市販のシランカップリング剤で処理したものや、ポリリジンやポリエチレンイミン等のポリ陽イオンで処理したもの等が挙げられる。また、これらの処理を施したスライドガラスの一部は市販されている。
支持体上に固定化される遺伝子又はそのDNA断片としては、特に限定するものではないが、例えばゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリー、これらを鋳型とした公知の核酸増幅法、例えば、PCR(polymerase chain reaction)法、LCR(ligase chain reaction)法、SDA(strand displacement amplification)法やICAN(isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids)法(国際公開第00/56877号パンフレット記載)等によって増幅されたDNAが挙げられ、かかる核酸増幅における反応条件は特に限定されるものではない。また、RNAを鋳型とした転写増幅システム(TAS;transcription−based amplification system)法、自立複製(3SR;self−sustained sequence replication)法、NASBA(nucleic acid sequence−based amplification)法、TMA(transcription−mediated amplification)法あるいはQβレプリカーゼ法により増幅されたRNAを逆転写することにより得られるDNAを用いることもできる。
支持体への固定化の操作は市販のDNAアレイ作製装置、例えばアフィメトリックス社製のDNAチップ作製装置を使用して行なうことができる。該装置を使用することにより、遺伝子が高密度に整列、固定化されたDNAアレイ(DNAマイクロアレイ)を作製することができる。
本発明で使用されるDNAアレイとしては任意の遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片が固定されたものを使用することができ、好ましくは、生体の恒常性維持に関連した機能を有するタンパク質をコードする遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片が固定されたアレイが使用される。また、各種の遺伝子の断片を固定化したDNAマイクロアレイが市販されており(IntelliGene Human Cytokine CHIP等、宝酒造社製)、これを使用してもよい。また、該DNAアレイに固定化される遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片の選択は、後述の実施例3に記載のDNAマイクロビーズ法や、サブトラクション法、ディファレンシャルディスプレイ法等により、生体へのストレスの負荷、例えば生体の恒常性維持に支障をきたす薬剤、例えばホルボールミリステートアセテートやリポポリサッカライド等を負荷した生体と未負荷の生体とで発現量に変化が見られる遺伝子を選択することにより行うことができる。
このようなDNAアレイを使用することにより、核酸試料中に含まれる多種類の核酸分子の量を同時に測定することができる。また、少量の核酸試料でも測定できるという利点がある。例えば、試料中のmRNAを標識するか、もしくはmRNAを鋳型として標識されたcDNAを調製し、これとDNAアレイの間でハイブリダイゼーションを実施することにより、試料中で転写されている複数のmRNAを同時に検出し、さらにその発現量を測定することができる。
DGEを負荷した場合と負荷していない場合の生体における遺伝子発現量の差は、例えば両場合における遺伝子の発現パターンを以下のようにして比較することにより調べることができる。
すなわち、DGEを負荷した生体由来の試料(DGE負荷試料)中の核酸とDNAアレイとのハイブリダイゼーション及びDGEを負荷していない生体由来の試料(対照試料)中の核酸とDNAアレイとのハイブリダイゼーションのそれぞれの結果を比較することにより、両者で発現量の異なる遺伝子を検出することができる。例えば、前記試料中の核酸を任意の方法で標識し、当該核酸とハイブリダイゼーションを行ったアレイについて、使用された標識に応じて適切なシグナルの検出を行い、アレイ上の各遺伝子のDGE負荷試料及び対照試料中の発現量を比較する。好ましくは、DGE負荷試料と対照試料中の各々の核酸とをあらかじめ異なる方法で標識しておくことで、複数の標識、例えば2種類の蛍光を検出することができる多波長検出蛍光アナライザーを用いて、DGE負荷試料における遺伝子発現量と対照試料における遺伝子発現量との差を同じDNAアレイ上で競合ハイブリダイゼーションにて比較することができる。すなわち、両者を当量混合してDNAアレイとハイブリダイゼーションを行うことで両者の遺伝子発現量の差をシグナルの色及び強度の違いとして検出することができる。その結果、得られたシグナルの強度に両者間で優位な差のある遺伝子はDGEによる発現制御対象の遺伝子であると特定される。
より具体的には以下の工程によりDGE負荷試料と対照試料間での遺伝子発現量の差を調べることができる。
互いに比較しようとする生体由来の試料、例えば異なる処理を施された細胞よりmRNAを調製し、試料中のmRNA、該mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あるいは増幅された核酸を標識する。標識に用いられる標識物質としては、放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、発光団を有する物質等の物質を用いることができる。例えば、蛍光物質としては、Cy2、FluorX、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、テキサスレッド、ローダミン等が挙げられる。また、同時に検出できる点から、2種類以上の蛍光物質を用いて、好適には2種類の蛍光物質を用いて、DGE負荷試料、対照試料をそれぞれ異なった蛍光物質で標識することが望ましい。また、標識は試料中のmRNA、該mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あるいは増幅された核酸を化学的に標識する方法の他、例えばmRNAからのcDNA合成時、もしくはcDNAからの転写、増幅反応時に標識ヌクレオチドを共存させることによっても実施することができる。
次に、上記の標識核酸と、適当な遺伝子に対応する核酸又はその断片を固定化されたDNAアレイとの間でハイブリダイゼーションを実施する。ハイブリダイゼーションは公知の方法で実施すればよく、その条件は使用するDNAアレイや標識cDNAに適したものを適宜選択すればよい。例えばモレキュラー・クローニング ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular cloning,A laboratory manual)、第2版、第9.52−9.55頁(1989)に記載の条件で行なうことができる。
上記のハイブリダイゼーションによって得られた標識由来のシグナルを比較し、試料間でシグナルの強度に有意な差のある遺伝子を検出することができる。具体的には、上記の方法で標識された核酸試料とハイブリダイゼーションを行ったアレイについて放射能、蛍光、発光等のシグナル強度を専用測定器、例えばクロマトスキャナーもしくはイメージアナライザー等を用いて検出することによって、そのシグナル強度の差から、その発現量が有意に変化する遺伝子を検出することができる。標識の検出法は、用いられる標識物質の種類に応じて適切なものを選択すればよい。
各試料由来の核酸(mRNA、該mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あるいは増幅された核酸)を互いに区別しうる標識物質で標識することにより、一度のハイブリダイゼーションで両試料中の遺伝子発現量の差を比較することができる。例えば、前記Cy3及びCy5を標識物質として用いる場合、Cy3は532nm、Cy5は635nmの波長でスキャンすることにより、両試料中の遺伝子発現量を1枚のDNAアレイ上で測定することができる。
こうして、異なる試料の間での多種類の遺伝子発現量を、微量の試料で比較することができる。
なお、DGE負荷試料と対照試料との遺伝子発現の差を測定するためには、両者のmRNA量及び使用した蛍光物質間の強度差を補正する必要があるが、当該補正は比較的発現変動の少ない標準的な遺伝子(好適にはハウスキーピング遺伝子)を用いて公知の方法により行うことができる。
また、本明細書において、遺伝子発現量の差が優位であると判定する場合とは、例えば、対照試料における遺伝子発現量に対するDGE負荷試料における遺伝子発現量の比、すなわち、相対発現比率(DGE負荷試料における遺伝子発現量/対照試料における遺伝子発現量)が1.7以上もしくは0.6以下の場合である。ここで、相対発現比率が1.7以上の場合が発現量が増加した遺伝子であり、0.6以下の場合が発現量が減少した遺伝子であると判定する。
さらに、DGE負荷試料と対照試料間における遺伝子発現量の差は、公知のDNAマイクロビーズアレイ法により行うこともできる。当該方法によれば、発現量や、既知・未知であるに関わらず発現しうる遺伝子を全て解析可能である。
上記の方法によりDGEを投与、もしくは摂取させた生体とDGEを与えない対照との間の遺伝子発現状態を比較し、DGEによってその発現が制御されうる遺伝子を確認することができる。以上のようにして確認された、DGEがその遺伝子発現制御作用を及ぼしうる遺伝子としては、例えば、後述の表1〜3に示すA〜G群に記載の遺伝子が挙げられる。
生物は、生活環境の変化等の外的要因、ウイルス、細菌感染等の内的要因により、様々なストレスを受ける。ストレスとしては、例えば高温、低温環境、飢餓状態、化学物質への暴露等が例示される。ここで化学物質としては、例えばホルボールミリステートアセテート(TPA)、リポポリサッカライド(LPS)、フィトヘムアグルチニン(PHA)、オカダ酸等が挙げられる。中でもTPAやLPSは、生体に投与することで炎症を惹起させ、かかる作用を利用して人工的に炎症モデルを作製する目的で使用されている。
このようなストレスを受けた結果、生体内では、様々な遺伝子の発現が変化する。その中には、ストレスの結果、発現が誘導もしくは増強され、生体に悪影響を及ぼす遺伝子群(例えば、A群及びE群の遺伝子)もあれば、ストレスの悪影響を取り除くために発現が誘導もしくは増強されるか、或いはストレスを受けていない場合と発現が同等である遺伝子群(例えば、B群及びG群の遺伝子)もある。ストレスを受け、A群及びE群の遺伝子の発現が高い状態が生じ、その発現が低下しない状態が続くと、様々な疾患の発病につながると考えられる。従って、ストレスを受けた際にA群及びE群の遺伝子の発現が増加し難くなる状態にすることは様々な疾患の予防につながる。また、ストレスを受けた際に、増加したA群及びE群の遺伝子の発現をいち早く低下させることも、様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながる。一方、B群及びG群の遺伝子は、ストレス状態を回避するために発現が増加する遺伝子群であり、ストレスを受けた際に、このような遺伝子群をより高発現にすることで、いち早くストレス状態を回避することが可能となり、ストレスが引き金となる様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながると考えられる。
また、ストレスの結果、ストレスの悪影響を取り除くために、発現が減少されるか、或いはストレスを受けていない場合と発現が同等である遺伝子群(例えば、C群及びF群の遺伝子)もあれば、ストレスの結果、発現が減少され、生体に悪影響を及ぼす遺伝子群(例えば、D群の遺伝子)もある。C群の遺伝子は、ストレス状態を回避するために発現が減少する遺伝子群であり、ストレスを受けた際に、このような遺伝子群の発現量をさらに抑えることで、いち早くストレス状態を回避することが可能となり、ストレスが引き金となる様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながると考えられる。一方、ストレスを受け、D群の遺伝子の発現が低い状態が生じ、その発現が増加しない状態が続くと、様々な疾患の発病につながると考えられる。従って、ストレスを受けた際にD群の遺伝子の発現が増加することは様々な疾患の予防につながる。また、ストレスを受けた際に、減少したD群の遺伝子の発現をいち早く増加させることも、様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながる。
本発明により明らかとなった、DGEがその発現を抑制する(減少させる)A群、C群、E群及びF群の遺伝子、及びDGEがその発現を促進する(増加させる)B群、D群及びG群の遺伝子を表1〜3に示す。
被検物質について、上記のDGEと同様にして遺伝子発現制御作用を調べ、これをDGEのものと比較することによってDGEと同様な遺伝子制御活性を有する物質を選択することができる。なお、被検物質を負荷した場合とDGEを負荷した場合での、遺伝子発現量の変化の比較、すなわち、発現パターンの比較においては少なくとも1つの遺伝子について比較すればよいが、より有用な物質を見出す観点からは、複数の遺伝子の発現パターンを比較することが好ましい。本発明を特に限定するものではないが、例えば、好ましくは2種以上の遺伝子、より好ましくは4種以上の遺伝子、さらに好ましくは7種以上の遺伝子の発現パターンを比較して所望の遺伝子制御活性を有する物質が選択される。
好適な態様としては、前述の表1〜3に示すA群〜G群から選択される少なくとも1つの遺伝子について比較を行えばよい。より好ましくは、A群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子とB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子(計2つ以上の遺伝子)、さらに好ましくはA群〜G群の各群より選択される少なくとも1つの遺伝子(計7つ以上の遺伝子)について発現パターンが比較される。
また、以上の知見をもとに、本発明により、以下のような本発明の生理活性物質のスクリーニング方法の別の態様が提供される。すなわち、本発明により、下記工程;
(1)被検物質を生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量と当該負荷を行っていない場合の当該生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を両者で比較する工程、並びに
(3)表1〜3中のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる被検物質を選択する工程、を包含する生理活性物質のスクリーニング方法が提供される。当該方法により、DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する物質を簡便に得ることができる。
また、より詳細には以下のような本発明の生理活性物質のスクリーニング方法の別の態様が提供される。すなわち、本発明により、下記工程;
(1)ストレスの生体への負荷、並びに被検物質とストレスの生体への負荷をそれぞれ行う工程、
(2)(1)の生体及びいずれの負荷も行っていない正常生体における遺伝子の発現量をそれぞれ測定する工程、並びに
(3)(2)により得られた遺伝子の発現量を(1)の生体と正常生体とで比較し、下記(a)〜(g)記載の遺伝子の発現パターンから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現パターンを示す被検物質を選択する工程:
(a)上記のA群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(b)上記のB群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに増加する、
(c)上記のC群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに減少する、
(d)上記のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、
(e)上記のE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(f)上記のF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(g)上記のG群の遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、を包含する生理活性物質のスクリーニング方法が提供される。当該方法により、DGEと同様な遺伝子制御活性を有する物質を簡便に得ることができる。
なお、上記の2つの別の態様において、被検物質の遺伝子発現制御作用は、上記のDGEと同様の方法により調べることができる。また、ストレスの生体への負荷は、前記するような各種のストレスを生体に対して負荷することにより行われるが、好ましくは化学物質を用いて行うのが好適であり、中でも、TPA(ホルボールミリステートアセテート)処理又はLPS(リポポリサッカライド)処理がより好適である。ここで、処理とは、投与又は摂取させることをいう。
TPAは発がんプロモーターとして知られており、その作用としては直接的な変異作用の他、生体の炎症誘導による発がん作用が知られている。すなわちTPAはマクロファージ等の炎症細胞からNO、プロスタグランジンE2等、炎症性メディエーターの遊離を惹起する。
LPSはサイトカイン誘導因子であり、生体に対し、発熱、致死効果、血圧低下等の様々な影響を及ぼすが、この作用はLPSそれ自体の直接作用ではなく、LPSによりマクロファージを中心とする宿主細胞が産生する炎症性サイトカインなどの作用によるものである。
上記A〜D群はストレスとしてTPAを用いた際に遺伝子の変動が確認された遺伝子群であり、また上記E〜G群はLPSを用いた際に遺伝子の変動が確認された遺伝子群である。DGEはTPAやLPSにより誘発される炎症を抑制することから、すなわち、上記工程においてのストレスとしてTPA処理を用いた場合に上記遺伝子の発現パターン(a)〜(d)を示す化合物を選択すれば、TPAにより誘発される炎症と同様のメカニズムで誘発される炎症を治療又は予防する効果を有する化合物を得られることが期待でき、また、ストレスとしてLPS処理を用いた場合に上記遺伝子の発現パターン(e)〜(g)を示す化合物を選択することにより、LPSにより誘発される炎症と同様のメカニズムで誘発される炎症を治療又は予防する効果を有する化合物を得られることが期待できる。
なお、遺伝子発現制御作用が多少異なる物質であっても、当該物質はDGEの有する生理活性のうちのいくつかを有している可能性がある。このような物質もDGEの代替物質として目的に応じて使用することは可能である。
また、別の一態様として、本発明の生理活性物質のスクリーニング方法に好適に使用されるキットも提供しうる。当該キットは、例えば表1〜3に示すA群〜G群から選択される少なくとも1つの遺伝子から発現されるmRNA又はその断片を検出するためのプライマー及び/又はプローブ、或いは当該遺伝子にコードされるポリペプチド又はその断片に対する抗体又はその断片を少なくとも含んでおればよい。
[2]本発明のDNAアレイ
また本発明は、前記生理活性物質のスクリーニング方法に使用されるDNAアレイであって、前記のA〜G群の遺伝子から選択される少なくとも2つの遺伝子もしくはその断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化DNAアレイを提供する。本発明のDNAアレイは、上記のDGEによって発現制御を受ける遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化されたアレイである。すなわち、各々の遺伝子に対応するDNA又はその断片の位置が支持体上においてあらかじめ決定されており、このようなアレイを使用した場合、検出されたシグナルの位置からこのシグナルがどの遺伝子のDNA又はその断片に由来するのかを直ちに知ることができる。該アレイは上記[1]の生理活性物質のスクリーニング、ならびにDGEの投与もしくは摂取が有効な疾病における遺伝子的な病態解析に有用である。
上記DNAアレイに固定される遺伝子又はそのDNA断片としては、生体へのストレスやDGEによって発現制御を受ける遺伝子又はそのDNA断片であるか、或いはそれらを含有するものであれば特に限定はなく、例えば後述の実施例3に記載のDNAマイクロビース法を用いて、固定化される遺伝子又はそのDNA断片を選択することができる。また、生体へのストレスやDGEによって発現制御を受ける遺伝子以外の遺伝子、例えば陰性対照として使用される遺伝子等を含有してもよい。また、その製造は公知の方法にしたがって行えばよく、例えば、上記[1]に記載されたDNAアレイ作製装置を使用することができる。
本発明のDNAアレイにおいては、遺伝子又はそのDNA断片は一本鎖、二本鎖のどちらが固定されていてもよい。また、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドのいずれであってもよい。また、その製法にも特に限定はなく、化学的に合成したもの、天然由来のもの、酵素的に合成したもの、それらの組み合わせであってもよい。なお、遺伝子又はそのDNA断片の鎖長としては、特に限定されるものではないが、例えば、約20塩基長〜約1キロ塩基長であることが望ましく、また、該鎖長より短い或いは長いものであっても、任意の被検試料中の核酸とハイブリダイゼーションにおいて特異的にハイブリダイズするものであればよい。
アレイの支持体、DNA固定化密度にも特に限定はなく、目的や固定化する遺伝子数に応じて適切なものを選択すればよい。例えば、DNAアレイの支持体としては前記するようなものを挙げることができ、ハイブリダイゼーションに使用可能なものであれば特に限定はなく、通常、スライドガラス、シリコンチップ、ニトロセルロースやナイロンの膜等が使用される。また、多数の遺伝子を固定化する場合や微量の試料に適したアレイを作製したい場合には、支持体に高密度で遺伝子を固定したマイクロアレイが好適に使用できる。当該マイクロアレイとしては、100ドット/cm2以上の密度で核酸、特にDNAが固定化されたものが好適である。また、その形状にも特に限定はなく、平板状、円盤状、テープ状等、適宜選択することができる。
[3]本発明の遺伝子制御剤、遺伝子制御方法
また本発明は、生体における遺伝子発現の制御方法に関し、特に限定するものではないが、ストレスを受けた生体において発現量が変化した遺伝子について、当該遺伝子の発現を制御(調節)し、生体の恒常性を保つ方法、ならびに該方法のための遺伝子制御剤を提供する。
例えば前記のようなストレスを受けた生体における影響は、該生体中の遺伝子の発現を適切に制御することによって解消することが可能であると考えられる。そのためには、当該遺伝子、例えば表1〜3に挙げられた遺伝子を制御しうる化合物もしくは当該化合物を有効成分として含有する組成物、すなわち、本発明により提供される遺伝子制御剤の使用が有効である。従って、当該遺伝子制御剤は、特にストレスの緩和又は予防用として好適である。
上記の遺伝子制御剤に有効成分として含有させることのできる化合物としては、例えば、DGE、DGEの誘導体及び/又はそれらの塩を使用することができ、さらにDGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する化合物、その誘導体及び/又はそれらの塩を使用することもできる。なお、当該化合物の誘導体等は、前記式(I)で表される化合物の誘導体等と同様にして製造することができる。DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する化合物としては、上記[1]に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を好適に使用することができる。
当該遺伝子制御剤は公知の医薬の製造方法に従って調製することができる。例えば、前記有効成分を薬学的に許容されうる公知の液状又は固体状の担体と混合し、さらに所望により、公知の溶剤、分散剤、乳化剤、安定化剤、滑沢剤等を加えて、液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、又は錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤等の固形剤とすることができる。
前記担体は、本発明の遺伝子制御剤の投与形態及び剤型に応じて選択することができる。経口剤とする場合は、例えばデンプン、乳糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース等の利用が好適である。一方、非経口剤とする場合は、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、ダイズ油、プロピレングリコール等の利用が好適である。
本発明の遺伝子制御剤における前記有効成分の含有量は、遺伝子制御剤の投与形態、投与方法などにより変化し一概には決定できないが、本発明の所望の効果が得られうる量で前記有効成分を投与しうるような量であれば特に限定されるものではない。
本発明の遺伝子制御剤は、剤型に応じた適当な投与経路により、経口的にも非経口的にも投与できる。非経口的に投与する場合、例えば注射剤として、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与することができる。その投与量も特に限定されるものではなく、例えば剤型、投与方法、使用目的、投与対象である患者の年齢、体重、症状に応じて、本発明の所望の効果が得られうる範囲で適宜決定すればよい。
本発明の遺伝子制御剤としては具体的には以下のようなものが例示される。
(1)表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(2)ストレスの負荷された生体において、表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(3)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した、表1〜3に記載のA群及びE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(4)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した、表1〜3に記載のB群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(5)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した、表1〜3に記載のC群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、並びに
(6)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した、表1〜3に記載のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤。
さらに、本発明により、
前記(i)記載の化合物、(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有してなる組成物を生体に投与することにより、表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる遺伝子の制御方法、並びに
前記記載の(i)記載の化合物、(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有してなる組成物を、ストレスの負荷された生体に投与することにより、表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる遺伝子の制御方法、が提供される。
ここで、生体とは、哺乳動物、中でもヒトである。また、少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物としては、上記[1]に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を好適に使用することができる。
かかる遺伝子の制御方法によれば、表1〜3に示した遺伝子の発現を好適に制御することができ、生体の受けたストレスの緩和および/または回避が可能となる。
なお、有効成分として投与する化合物もしくは当該化合物を含む組成物の投与方法、投与量等は、例えば前記遺伝子制御剤と同様でよい。
本発明の遺伝子の制御方法により、ストレスに起因する生体に悪影響を及ぼす遺伝子群の発現を抑制するとともに、ストレス状態の回避に関与する遺伝子群の発現を増強し、様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)RNAの調製
HL−60細胞(ATCC CCL−240)を10%ウシ胎児血清(JRHバイオサイエンシズ社製)、1.3%ジメチルスルホキシド含有RPMI1640培地(バイオウイタカー社製、12−702F)に懸濁し、5%炭酸ガス存在下、37℃で1週間培養し、好中球様に分化誘導した。
上記により得られた細胞を遠心により回収し、106cells/mLとなるように10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁し10cmシャーレに10mLずつ加えた。各シャーレに100μLの4mM DGE水溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分、10μLの100μg/mLホルボールミリステートアセテート(TPA、ギブコ社製、13139−019)ジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分、100μLの4mM DGE水溶液を添加して6時間培養後さらに10μLの100μg/mL TPAジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。また、陰性対照として100μLの水を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。なお、RNAはRNeasy Mini Kit(キアゲン社製、74104)を用いてキットの説明書に従い調製した。
(2)cDNAの合成
上記により得られた各total RNA 25μgと100pgのλ poly A+ RNA−A(宝酒造社製、TX802)を、RNA Fluorescence Labeling Core Kit(宝酒造社製、TX807)と、1mM FluoroLink Cy3−dUTPあるいはCy5−dUTP(アマシャム・ファルマシア製、PA53022(Cy3)、PA55022(Cy5))を用い、キットの説明書に従って蛍光標識されたcDNAの合成反応と精製を行った。蛍光標識したDNA溶液を表4の組み合わせで混合し,クロロホルム・イソアミルアルコール(24:1)抽出を行い、2μLの5×Competitor I(Human)(宝酒造社製、TX808)を添加してエタノール沈殿によりDNAを回収した。得られたDNAは10μLのハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、0.2% SDS、5×デンハルト溶液、0.1mg/mL変性サケ精子DNA溶液を0.22μmのフィルターに通したもの)に溶解し、ハイブリダイゼーションに供した。
(3)ハイブリダイゼーション
カバーガラス(22×22mm)の上に10μLのプレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、0.2% SDS、5×デンハルト溶液、1mg/mL変性サケ精子DNA溶液を0.22μmのフィルターに通したもの)を滴下し、Human Cytokine CHIP(ver.1.0)(宝酒造社製、X104)のアレイDNA面が下になるようにしてカバーガラスの上に、気泡が入らないようにかぶせた。チップのアレイDNA面が上になるようにひっくり返し、ペーパーボンド(コクヨ社製、タ−100)をカバーガラスの周辺に滴下して溶液を密閉し室温で2時間放置することでプレハイブリダイゼーションを行った。チップを2×SSC中に移しペーパーボンドおよびカバーガラスを外し、2×SSC続いて0.2×SSC中で洗浄後、遠心により水分を飛ばして乾燥した。
上記のハイブリダイゼーション溶液に溶解した蛍光標識DNA溶液を95℃で2分間加熱して変性させた後、遠心して上清をカバーガラス(22×22mm)の上に滴下し、上記のように処理をしたチップのアレイDNA面が下になるようにしてカバーガラスの上に、気泡が入らないようにかぶせた。チップのアレイDNA面が上になるようにひっくり返し、ペーパーボンドをカバーガラスの周辺に滴下して溶液を密閉した。このチップを湿箱に入れた後、65℃の恒温槽で16時間保温した。チップを2×SSC中に移しペーパーボンドおよびカバーガラスを外し、55℃の2×SSC、0.2% SDS中で30分間で2回洗浄、続いて65℃の2×SSC、0.2% SDSで5分間洗浄し、室温の0.05×SSCで5分間洗浄後、遠心により水分を飛ばして乾燥した。
(4)解析
Affymetrix418 Array Scanner(宝酒造社製、GM205)により上記チップの各スポットの蛍光シグナルを読み取った。この画像データをもとにImaGene(宝酒造社製、BD001)により各スポットの蛍光シグナルを定量した。この結果、TPA添加区分でいくつかの遺伝子発現の変動が確認でき、これに対してDGE+TPA添加区分で、この変動をさらに上下させていることが確認できた。すなわち、DGEはいくつかの遺伝子についてTPAによる遺伝子の変動を修飾する作用を有することが確認できた。その結果をまとめたものを表5に示す。表5はTPAによって変動のあった遺伝子のうち、DGEによってその変動が修飾されたものをまとめたものであり、A−1群はDGEによってその発現が抑制された遺伝子、B−1群はDGEによってその発現が促進された遺伝子である。
実施例2
(1)PBMCの分離および保存
ヒト健常人ドナーより400mL採血を実施した。採血液をPBS(−)で2倍希釈し、Ficoll−paque(ファルマシア社製)上に重層後500×gで20分間遠心した。中間層の末梢血単核球(PBMC)をピペットで回収し、RPMI1640培地(バイオウイタカー社製)を用いて洗浄した。採取したPBMCは90%FCS(JRHバイオサイエンシズ社製)/10%ジメチルスルホキシドからなる保存液に懸濁し、液体窒素中にて保存した。実験時にはこれら保存PBMCを37℃水浴中にて急速融解し、10μg/ml DNase(カルビオケム社製)を含むRPMI1640培地で洗浄後、トリパンブルー染色法にて生細胞数を算出し各実験に供した。
(2)プラスチック接着性単球の分離
5%ヒトAB型血清、0.1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、2mML−グルタミン(以上バイオウイタカー社製)、10mM HEPES(ナカライテスク社製)、1%ストレプトマイシン−ペニシリン(ギブコBRL社製)を含むRPMI1640培地(以下5HRPMI培地と略す)に1×107cells/mLとなるようにPBMCを懸濁後、100mmシャーレ(旭テクノグラス社製)に15mLずつまき、37℃で、5%のCO2湿式インキュベーター内にて1.5時間インキュベートした。その後、非接着性の細胞を吸引除去し、各ウエルをRPMI1640培地を用いて洗浄し、10mLの5HRPMI培地を加えてプラスチック接着性の単球を得た。
(3)RNAの調製
実施例2−(2)により得られた各シャーレに10μLの1μg/mLリポポリサッカイライド(LPS、シグマ社製、L−2012)水溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分、10μLの20mM DGE水溶液を添加して4時間培養後さらに10μLの1μg/mLLPS水溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。また、陰性対照として10μLの水を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。なお、RNAはRNeasy Mini Kit(キアゲン社製、74104)を用いてキットの取扱説明書に従い調製した。
(4)cDNAの合成
cDNAの合成は実施例1−(2)記載の方法に準じて行った。ただし、蛍光標識したDNA溶液の組み合わせは表6にしたがって行った。
(5)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションは実施例1−(3)記載の方法に準じて行った。ただし、チップはHuman Cytokine CHIP(ver.2.0)(宝酒造社製、X104)を用いた。
(6)解析
Affymetrix428 Array Scanner(宝酒造社製)により上記チップの各スポットの蛍光シグナルを読み取った。この画像データをもとにImaGene(宝酒造社製、BD001)により各スポットの蛍光シグナルを定量した。この結果、いくつかの遺伝子についてLPS添加区分で発現の増加が確認でき、これに対してDGEを添加することでこの増加を抑制していることが確認できた。また、いくつかの遺伝子についてLPS添加区分で発現の変動が認められないものの、DGE+LPS添加区分で発現の増加および下降が確認できた。その結果をまとめたものを表7に示す。表7はLPSによって発現が増加した遺伝子のうちDGEによってその増加が抑制されたもの(E群)、LPSによって発現が変動しないもののDGE+LPSで発現が下降したもの(F群)および増加したもの(G群)をまとめたものである。
実施例3 DNAマイクロビーズの作製と遺伝子の選択
プロシーディングズ オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズオブ USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第97巻、第1665〜1670頁、(2000年)(以下、文献1と呼ぶ。)記載の方法に準じて、以下に示すようにDNAマイクロビーズの作製を行った。
(1)cDNAの合成
ヒト前骨髄性白血病細胞HL−60細胞(ATCC CCL−240)を10%ウシ胎児血清(JRHバイオサイエンシズ社製)、1.3%ジメチルスルホキシドをそれぞれ含有するRPMI1640培地(バイオウイタカー社製)に懸濁し、5%炭酸ガス存在下、37℃で1週間培養し、上記細胞を好中球様に分化誘導した。得られた細胞を遠心により回収し、10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に1×106cells/mlとなるように懸濁したうえ、この懸濁液を10cmシャーレ2枚に10mlずつ加えた。一方のシャーレに100μlの水(A)、もう一方のシャーレに10μlの100μg/mlホルボールミリステートアセテート(TPA、ギブコ社製)ジメチルスルホキシド溶液(B)を添加してそれぞれ4時間培養した。それぞれのシャーレより回収した(A)、(B)の細胞のそれぞれよりトリゾール試薬(ギブコ社製)を用いて全RNAを調製し、次いでオリゴテックスTM−dT30(宝酒造社製)を用いて全RNAからmRNAを精製した。このmRNA 2.5μgを鋳型とし、cDNA合成キット(ストラタジーン社製)を用いてcDNAの合成を行った。その際、逆転写に用いるプライマーとして、配列表の配列番号:1に示される塩基配列の5’ビオチン標識プライマーを使用した。
こうして得られたcDNAをフェノール・クロロホルム処理し、セファロースCL4B(アマシャム・ファルマシア社製)を用いてゲルろ過精製した後、エタノール沈殿を行った。沈殿として回収されたcDNAを200μlのDpnII緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)に溶解し、制限酵素DpnII(ニュー イングランド バイオラブズ社製)による消化を行った。この消化物よりストレプトアビジンマグネットビーズ(ダイナール社製)を用いてcDNAの3’側部分を回収した後、20μlの10×NEB#2緩衝液(ニューイングランド バイオラブズ社製)を加えて全量を200μlに調整し、制限酵素BsmBI(ニュー イングランド バイオラブズ社製)による消化を行った。反応液についてフェノール・クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行った後、沈殿を滅菌水10.5μlに溶解し、これを3’側cDNA溶液として以下の実験に用いた。
(2)3’側cDNAとアンチタグ付きマイクロビーズのハイブリダイゼーション
実施例3−(1)で合成した(A)および(B)由来の3’側cDNA溶液1μlを文献1記載のタグベクターpLCV2 200ngにそれぞれ挿入して14万〜18万クローンからなるプラスミドプール6個を調製した。配列表の配列番号:2に記載の塩基配列の5’ビオチン標識プライマー、および配列表の配列番号:3に記載の塩基配列の5’FAM標識プライマーを100μlの反応液1本あたりそれぞれ100pmol使用し、反応液1本あたり上記の各プラスミドプール125ngを鋳型としたPCRを、各プラスミドプールあたり48本行った。PCRは以下の条件で行った。
94℃−3分保持
94℃−30秒、67℃−3分を1サイクルとした8サイクル
94℃−30秒、64℃−3分を1サイクルとした22サイクル
67℃−3分保持
反応終了後、PCR反応液を各プールごとに1本に集め、フェノール・クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行った後、得られた沈殿を滅菌水1200μlに溶解した。ここに10×NEB#4緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)180μlを加え、全量を1800μlにした後、制限酵素PacI(ニュー イングランド バイオラブズ社製)による消化を行った。反応液よりウルトラリンクSAレジン(ピアス社製)に吸着する画分を除いて得られるcDNA溶液についてフェノール・クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行った後、沈殿を滅菌水1200μlに溶解した。ここに10×NEB#2緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)180μlを加え、全量を1800μlに調整してT4 DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)処理を行った。この際基質としてdGTPのみを加えることによりタグ部分の1本鎖化を行った。
この1本鎖タグを持つcDNAの各プールごと300μgを文献1記載の1億4400万個のアンチタグ付きマイクロビーズと混合し、400μlのハイブリダイゼーション緩衝液(10mM リン酸緩衝液(pH7.2)、0.5M NaCl、0.01% Tween 20、1.2% デキストラン硫酸)中、72℃で振盪しながら3日間ハイブリダイゼーションを行った。遠心分離によってマイクロビーズを集め、500μlの10mM Tris−HCl(pH7.9)、10mM MgCl2、50mM NaCl、1mM ジチオスレイトール、0.01% Tween 20に懸濁して振盪しながら64〜70℃で30分間洗浄を行った。この洗浄操作を数回繰り返した後に6プール分の洗浄済みcDNA付きマイクロビーズを集め、MoFloサイトメーター(サイトメーション社製)を用いてマイクロビーズのFAMの蛍光強度(励起波長:488nm、検出波長:530nm)を測定し、蛍光強度の大きい方から1%のマイクロビーズを分取した。以上の操作によって、cDNAがハイブリダイゼーションによって結合した約600万個のマイクロビーズを得た。
(3)DNAマイクロビーズ懸濁液の調製
実施例3−(2)で得られた、cDNAがハイブリダイゼーションによって結合したマイクロビーズのうち約200万個を100μlの10mM Tris−HCl(pH7.9)、10mM MgCl2、50mM NaCl、1.4mM ジチオスレイトール、0.01% Tween 20、各0.1mMのdATP、dGTP、dTTP、5−メチルdCTP、1mM ATPに懸濁し、20UのT4 DNAポリメラーゼと400UのT4 DNAリガーゼを添加して12℃で2時間反応させた。反応はプロナーゼ処理によって停止し、次いで反応液よりマイクロビーズを遠心分離によって集め、100μlのDpnII緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)に懸濁してDpnII(ニューイングランド バイオラブズ社製)で消化した。遠心分離によってマイクロビーズを集め、100μlの10mM Tris−HCl(pH7.5)、5mMMgCl2、0.033mM dGTP、7.5mM ジチオスレイトール、0.01% Tween 20に懸濁し、10UのDNAポリメラーゼI ラージフラグメント(宝酒造社製)を加えて25℃で15分間反応させた。遠心分離によってマイクロビーズを集めて100μlのライゲーション緩衝液(宝酒造社製)に懸濁後、予め配列表の配列番号:4、配列番号:5に示される塩基配列のDNAをアニールさせて作製したアダプター0.1nmolを加え、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)を用いてライゲーション反応を行った。マイクロビーズを遠心分離によって集め、ビーズストリッピング溶液(150mM NaOH、0.01% Tween 20)に懸濁して室温で10分間反応させた。反応液より遠心分離により上清を除いた後、マイクロビーズを10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.01% Tween 20で洗浄し、1mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.01% Tween 20に懸濁して、サンプル1およびサンプル2由来のDNAマイクロビーズ懸濁液を得た。
(4)プローブの作製
実施例3−(1)で調製した(A)および(B)由来の3’側cDNA 1μlを文献1記載のプローブベクターpLCV 200ngにそれぞれ挿入して800万〜1000万クローンからなるプラスミドを調製した。このプラスミドのそれぞれ10μgにユニバーサル緩衝液H(宝酒造社製)20μlを加えて全量を200μlにした後、制限酵素Sau3AI(宝酒造社製)にて消化した。(A)由来のSau3AI消化済プラスミド1.2μgを鋳型に配列表の配列番号:6に示される塩基配列の5’FAM標識プライマー2nmolを用いて、また、(B)由来のSau3AI消化済プラスミド2.4μgを鋳型に配列表の配列番号:7に示される塩基配列の5’Cy5標識プライマー4nmolを用いて、それぞれリニアPCRを行った。リニアPCRは、以下の条件で行った。
95℃−5分保持
95℃−30秒、64℃−30秒、72℃−30秒を1サイクルとした25サイクル
72℃−10分保持
リニアPCR後の反応液のそれぞれより、キアクイックPCRピュリフィケーションキット(キアゲン社製)を用いて増幅DNAを精製し、エタノール沈殿を行った後、滅菌水21μlに溶解し、サンプル1由来FAM蛍光標識プローブおよびサンプル2由来Cy5蛍光標識プローブを得た。
(5)DNAマイクロビーズとのハイブリダイゼーション
実施例3−(3)で調製したサンプル1由来のDNAマイクロビーズとサンプル2由来のDNAマイクロビーズを、それぞれ約36万個ずつ混合し、このビーズに(4)で作製したサンプル1由来FAM蛍光標識プローブおよびサンプル2由来Cy5蛍光標識プローブを各5μgを加え、50μlの緩衝液(4×SSC、25%ホルムアミド、0.1%SDS)中で振盪しながら65℃で終夜ハイブリダイゼーションを行った。遠心分離によって集めたマイクロビーズを1×SSC、0.1%SDS溶液で65℃で30分間洗浄後、0.1×SSC,0.1%SDSで65℃で30分間洗浄し、遠心分離にてDNAマイクロビーズを集め、これを10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.01% Tween 20に懸濁し、ハイブリダイゼーション済DNAマイクロビーズを得た。
(6)ソーティング
実施例3−(5)で得たハイブリダイゼーション済DNAマイクロビーズを、MoFloサイトメーター(サイトメーション社製)を用いたソーティングに供した。DNAマイクロビーズについてFAMの蛍光強度(励起波長:488nm、検出波長:530nm)およびCy5の蛍光強度(励起波長:647nm、検出波長:670nm)を測定し、FAMの蛍光強度の強いDNAマイクロビーズを3692個(ビーズ懸濁液A)、Cy5の蛍光強度の強いDNAマイクロビーズを3349個(ビーズ懸濁液B)分取した。
(7)PCRおよびDNA塩基配列決定
実施例3−(6)で分取したビーズ懸濁液AおよびBを鋳型に、配列表の配列番号:8および配列番号:9にそれぞれ塩基配列を示したプライマーを用いてPCRを行った。100μlの反応液中に、鋳型ビーズを200個とプライマーを40pmolずつ加え、ビーズ懸濁液A,Bそれぞれについて5本ずつの反応を行った。PCRは以下の条件で行った。
95℃−5分保持
95℃−30秒、64℃−30秒、72℃−30秒を1サイクルとした25サイクル
72℃−10分保持
PCR反応液を懸濁液A,Bごとに1本にまとめ、それぞれの1μlをクローニングベクターpT7Blue(ノバジェン社製)と混合してライゲーションを行い、クローニングした。ビーズ懸濁液A由来のコロニー960個と、ビーズ懸濁液B由来のコロニー960個の合計1920個のコロニーからプラスミドを精製し、挿入DNA断片の塩基配列解析を行った。得られた塩基配列の中で、以下に示すどちらかの条件を満たすものを選択した。
条件1:インサート配列の長さが、40ベース以上のもの。
条件2:インサート配列の長さが、30ベース以上、40ベース以下で、polyA配列を持たないもの。
複数のプラスミドにおいて同じインサート配列が出現した場合は、どれか1個のプラスミドを選択し、DNAマイクロアレイ用の鋳型プラスミドとして740個のプラスミドを得た。
実施例4 DNAマイクロアレイを用いた発現解析
(1)DNAマイクロアレイの作製
実施例3において取得した740個のクローンのプラスミドを鋳型として、配列表の配列番号:10と11に記載の配列を有するプライマー対を用いてPCR反応を行った。ついで、当該増幅産物をエタノール沈殿により精製後、0.3μg/μlになるように1×SolutionT(宝酒造社製)に溶解し、これをスポッティング溶液とした。当該スポッティング溶液をAffymetrix417アレイヤー(アフィメトリックス社製)を用いて、アミノ化スライドガラスであるMASコートスライドガラス(松浪硝子社製)にスポットした。スポット後のスライドを37℃、湿度90%にて1時間保持した後、60mJ/cm2のエネルギーでUVクロスリンクした。さらに、0.2% SDSで1回、次いで蒸留水で2回洗浄した後、2.75gの無水コハク酸と162.5mlのN−メチル−2−ピロリドン、15mlの1Mほう酸緩衝液(pH8.0)からなるブロッキング溶液に20分間浸し、遊離のアミノ基をブロックした。次いで、蒸留水で2回洗浄した後、沸騰水中にて2分間熱変性し、氷温の100%エタノールで急冷した。その後、1,000rpm程度の低速遠心分離によりスライドガラスを乾燥させ、以下の実験に用いた。
(2)細胞の調製
HL−60細胞(ATCC CCL−240)を10%ウシ胎児血清(JRH バイオサイエンシズ社製)、1.3%ジメチルスルホキシド含有RPMI1640培地(バイオウイタカー社製、12−702F)に懸濁し、5%炭酸ガス存在下、37℃で1週間培養し、好中球様に分化誘導した。得られた細胞を遠心により回収し、106cells/mLとなるように10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁し10cmシャーレに10mLずつ加えた。各シャーレに100μlの4mM DGE水溶液を添加して4時間後にRNAを回収した区分、10μLの100μg/mLホルボールミリステートアセテート(TPA、ギブコ社製、13139−019)ジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にRNAを回収した区分、100μLの4mM DGE水溶液を添加して6時間培養後さらに10μLの100μg/mL TPAジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にRNAを回収した区分を設定した。また、陰性対照として100μLの水を添加して4時間後にRNAを回収した区分を設定した。
(3)検出用標識cDNAの調製とハイブリダイゼーション
実施例4−(2)で調製したHL−60細胞から、Trizol Reagent(GIBCO BRL社製)とOligotex−dT30<Super>(宝酒造社製)を用い、それぞれのキットのプロトコールに従いPolyA(+)RNAを調製した。次いで、RNA Fluorescence Labeling Core Kit(M−MLV Version)(宝酒造社製)を用いてキットのプロトコールに従い、それぞれPolyA(+)RNA1.0μgを鋳型として、表8に示したサンプルRNAの組み合わせでCy3とCy5で標識されたcDNAを調製し、混合した。
次に、IntelliGene(宝酒造社製)の取扱説明書に従い、実施例4−(1)で作製したDNAマイクロアレイと,上記のCy3標識cDNAとCy5標識cDNAの混合物(4種類)とのハイブリダイゼーションを行い、洗浄・乾燥の操作を行った。次いで、Affymetrix 428 Array Scanner(アフィメトリックス社製)を用いて、Cy3(励起波長:532nm、検出波長:570nm)とCy5(励起波長:635nm、検出波長:660nm)の蛍光画像を取得した。その後、各スポットのスポット領域のシグナル強度の平均値と、スポットの周辺領域(以下、バックグラウンド領域と称す。)のシグナル強度の平均値と標準偏差を、画像定量解析ソフトImaGene4.1(Biodiscovery社製)を用いて定量・算出した。
(4)各クローンのグループ化
発現比率から統計解析により各クローンのグループ化を行うには、信頼性の低いデータと有意な変動を示さないクローンのデータを除去する必要がある。よって、以下の手順によりグループ化に供するクローンの絞り込みを行った。すなわち、実施例4−(3)で得られたバックグラウンド領域のシグナル強度の平均値と標準偏差から、以下の数式によりシグナル強度の閾値を求めた。
シグナル強度の閾値=バックグラウンド領域のシグナル強度の平均値+2×(バ
ックグラウンド領域のシグナル強度の標準偏差)
各スポット領域のシグナル強度の平均値が上記の閾値より大きいか否かで、当該スポットシグナルの各チャンネルにおける有意性を判断した。次いで、4つのサンプル全てで、Cy3とCy5の両方のチャンネルで有効シグナルを持たないスポットのクローンを除外した。さらに、Cy3のシグナルに対するCy5のシグナル強度の比率(以下、発現比率と称す。)を算出し、すべてのサンプルにおいて当該比率が2分の1より大きくかつ2より小さいクローンについて、変動を示さなかったクローンとして以後の解析から除外した。以上の絞り込みの結果、740個のクローンの中から227個のクローンが選択された。
次に、上記で選択された227クローンについて、TPAおよびDGEの処理により発現が変動した、すなわちサンプル番号3あるいは4の発現比率が0.55以下もしくは1.8以上の値を有するクローンについて、DGE処理による変動の関係から以下の4つのグループに分けることができた。
A−3群 TPA処理により発現が増加し、さらにDGE処理によりその発現が低下するクローン。
B−3群 TPA処理により発現が増加し、さらにDGE処理によりその発現が増加するクローン。
C−3群 TPA処理により発現が低下し、さらにDGE処理によりその発現が低下するクローン。
D−3群 TPA処理により発現が低下し、さらにDGE処理によりその発現が増加するクローン。
これらのクローンについて相同性検索を行った。これらの結果から、4つのグループに分けられたクローンに対して相同性の得られた塩基配列名とそのGenBank Accession No.を表9及び10に示す。なお、表9及び10において相同性が認められたクローンについてはGenBankに登録されている塩基配列名を、相同性が認められなかったクローンについては、配列表の配列番号を示した。
これらの結果から、それぞれA−3群、B−3群、C−3群、D−3群に分類されたクローンは表11に示す遺伝子の部分配列であることが推定された。なお、表11中のGenBank Accession No.において、遺伝子の全塩基配列が明らかにされていないものについては、表9及び10記載の塩基配列のGenBank Accession No.を示した。
配列表フリーテキスト
配列番号:1の配列は、全mRNAについての逆転写用プライマーの配列である。
配列番号:2の配列は、タグベクターpLCV2の一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:3の配列は、タグベクターpLCV2の一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:4の配列は、オリゴヌクレオチドアダプターの配列である。
配列番号:5の配列は、オリゴヌクレオチドアダプターの配列である。
配列番号:6の配列は、プローブベクターpLCVの一部を増幅するためのリニアPCR用プライマーの配列である。
配列番号:7の配列は、プローブベクターpLCVの一部を増幅するためのリニアPCR用プライマーの配列である。
配列番号:8の配列は、DNAマイクロビーズ上のcDNAについてのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:9の配列は、DNAマイクロビーズ上のcDNAについてのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:10の配列は、pT7Blueベクターの一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:11の配列は、pT7Blueベクターの一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
産業上の利用可能性
本発明は、種々の生理活性を有するDGEと同様な遺伝子制御活性を有する生理活性物質もしくは生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法、生体の恒常性維持に有効な、例えばストレスの緩和又は予防を目的とする遺伝子制御剤、並びに遺伝子の制御方法を提供する。本発明により、例えば、DGEの有する各種生理活性の発現が有効に働く疾患又は症状の治療又は予防効果が期待できる。
【配列表】
本発明は、生理活性物質のスクリーニング方法、遺伝子制御剤並びに遺伝子の制御方法に関する。
背景技術
生物は、生活環境の変化等の外的要因、ウイルス、細菌感染等の内的要因により、様々なストレスを受ける。ストレスはそれ自身、生物の正常な生活を妨げる要因であるが、これがうまく回避されない場合や逆に過剰反応が起こった場合にはより重篤な障害、例えば疾病を引き起こすこととなる。
ストレスが負荷された状態、あるいはそこから疾病へと移行する状態においては生体内の種々の機能、要素が複合的に関与するが、そこには基本的には遺伝子の発現状態の変化が存在する。したがって、遺伝子レベルでの調節により、スムーズにストレスを回避することは可能なはずである。しかしながら、ストレスを受けている状態、並びにそれが回避される過程での遺伝子発現の調節の詳細は明らかではなく、上記のような遺伝子レベルの調節によるストレス回避手段は未だ確立されていない。
一方、アガロースから得ることのできるL−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(L−glycero−1,5−epoxy−1αβ,6−dihydroxy−cis−hexa−3−en−2−one、以下DGEと称す)は種々の生理活性を有しており、生体の恒常性維持に有用な化合物であることが知られている(国際公開第99/64424号パンフレット)。しかしながら、該化合物の遺伝子レベルでの作用機作は明らかにされていない。
本発明の目的は、DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する生理活性物質もしくは生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法、生体の恒常性維持に有効な、例えばストレスの緩和又は予防を目的とする遺伝子制御剤、並びに遺伝子の制御方法を提供することにある。
発明の開示
本発明の第1の発明は、生理活性物質のスクリーニング方法であって、下記工程;
(1)▲1▼被検物質、及び▲2▼下記(i)に記載の化合物及び/又は下記(ii)に記載の化合物を、それぞれ生体に負荷する工程:
(i)下記式(I)で表される化合物、その誘導体及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(式中、X及びYは、H又はCH2OH、ただし、XがCH2OHの時、YはH、XがHの時、YはCH2OHである)
(ii)下記式(II)で表される3,6−アンヒドロガラクトース、そのアルデヒド体、その抱水体、並びにそれらの2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び/又は該化合物を還元末端に有する可溶性の糖化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を▲1▼を負荷した場合と▲2▼を負荷した場合とで比較する工程、並びに
(3)少なくとも1つの遺伝子が、▲2▼を負荷した場合と実質的に同等の発現量の変化を示した被検物質を選択する工程、を包含する方法に関する。
本発明の第2の発明は、生理活性物質のスクリーニング方法であって、下記工程;
(1)被検物質を生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量と当該負荷を行っていない場合の当該生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を両者で比較する工程、並びに
(3)下記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は下記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる被検物質を選択する工程:
A群:
骨形成タンパク質−6〔BMP−6(ジーンバンク登録番号:NM 001718)〕遺伝子、
ケモカインレセプター−1〔CCR−1(ジーンバンク登録番号:NM 001295)〕遺伝子、
肝細胞増殖因子〔HGF(ジーンバンク登録番号:X16323)〕遺伝子、
Intercellular adhesion molecule−1〔ICAM−1(ジーンバンク登録番号:NM 000201)〕遺伝子、
インターロイキン−1β〔IL−1β(ジーンバンク登録番号:X02532)〕遺伝子、
インターロイキン−16〔IL−16(ジーンバンク登録番号:M90391)〕遺伝子、
白血病阻害因子〔LIF(ジーンバンク登録番号:NM 002309)〕遺伝子、
オステオポンチン〔osteopontin(ジーンバンク登録番号:NM 000582)〕遺伝子、
腫瘍壊死因子−α〔TNF−α(ジーンバンク登録番号:X02910)〕遺伝子、
ニューロピリン−1〔Neuropilin−1(ジーンバンク登録番号:NM 003873)〕遺伝子、
signal transducer and activator of transcription 6〔STAT6(ジーンバンク登録番号:AF067575)〕遺伝子、及び
Homo Sapiens cDNA:FLJ22298 fis,clone HRC04637(ジーンバンク登録番号:AK025951)を含む遺伝子、
B群:
ヘムオキシゲナーゼ−1〔HO−1(ジーンバンク登録番号:NM 002133)〕遺伝子、
チオレドキシンレダクターゼ−1(ジーンバンク登録番号:AF106697)遺伝子、
putative translation initiation factor〔SUI1(ジーンバンク登録番号:AF083441)〕遺伝子、及び
Homo sapiens hypothetical protein〔HSPC014(ジーンバンク登録番号:NM 015932)〕遺伝子、
C群:
N−myc downstream regulated gene 1〔NDRG1(ジーンバンク登録番号;NM 006096)〕遺伝子、
adenosine deaminase,RNA specific〔ADAR(ジーンバンク登録番号:NM 015841)〕遺伝子、
splicing factor 3b,subunit2〔SF3B2(ジーンバンク登録番号:NM 006842)〕遺伝子、
interleukin enhancer binding factor 3〔ILF3(ジーンバンク登録番号:NM 004516)〕遺伝子、
valyl−tRNA synthetase 2〔VARS2(ジーンバンク登録番号:NM 006295)〕遺伝子、及び
配列表の配列番号:12に記載の塩基配列を含む遺伝子、
D群:
eukaryotic translation elongation factor 1 alpha 1〔EEF1A1(ジーンバンク登録番号:NM 001402)〕遺伝子、
ribosomal protein LI7〔RPL17(ジーンバンク登録番号:NM 000985)〕遺伝子、
ribosomal protein L24〔RPL24(ジーンバンク登録番号:NM 000986)〕遺伝子、
splicing factor,arginine/serine−rich 2〔SFRS2(ジーンバンク登録番号:NM 003016)〕遺伝子、
tumor protein,translationally−controlled 1〔TPT1(ジーンバンク登録番号:NM 003295)〕遺伝子、
ubiquinol−cytochrome c reductase binding protein〔UQCRB(ジーンバンク登録番号:NM 006294)〕遺伝子、
ribosomal protein S15a〔RPS15A(ジーンバンク登録番号:NM 001019)〕遺伝子、及び
ribosomal protein L27〔RPL27(ジーンバンク登録番号:NM 000988)〕遺伝子、
E群:
インターロイキン−2レセプターα〔IL2RA(ジーンバンク登録番号:X01057)〕遺伝子、
インターロイキン−6〔IL6(ジーンバンク登録番号:X04430)〕遺伝子、
CD166(ジーンバンク登録番号:Y10183)遺伝子、
インターフェロン調節因子−1〔IRF1(ジーンバンク登録番号:X14454)〕遺伝子、
インターロイキン−15レセプターα〔IL15RA(ジーンバンク登録番号:U31628)〕遺伝子、
Nuclear factor kappa−b p105サブユニット〔NFKB1(ジーンバンク登録番号:M58603)〕遺伝子、
カスパーゼ−1〔CASP1(ジーンバンク登録番号:M87507)〕遺伝子、
インターロイキン−1β〔IL1B(ジーンバンク登録番号:M15330)〕遺伝子、
腫瘍壊死因子−α〔TNF−α(ジーンバンク登録番号:X02910)〕遺伝子、
Gro1オンコジーン〔GR01(ジーンバンク登録番号:X54489)〕遺伝子、
インターロイキン−1α〔IL1A(ジーンバンク登録番号:M28983)〕遺伝子、
インヒビンベータA〔INHBA(ジーンバンク登録番号:J03634)〕遺伝子、
インターロイキン−7レセプター〔IL7R(ジーンバンク登録番号:M29696)〕遺伝子、
前駆B細胞コロニー増強因子〔PBEF(ジーンバンク登録番号:U02020)〕遺伝子、
Liver and activation regulated chemokine〔LARC(ジーンバンク登録番号:U64197)〕遺伝子、及び
インターロイキン−8〔IL8(ジーンバンク登録番号:M26383)〕遺伝子、
F群:
コロニー刺激因子−1レセプター〔CSFIR(ジーンバンク登録番号:X03663)〕遺伝子、
ケモカイン(C−X−Cモチーフ)レセプター−4〔CXCR4(ジーンバンク登録番号:AF147204)〕遺伝子、及び
エンドグリン〔ENG(ジーンバンク登録番号:NM 000118)〕遺伝子、
G群:
ヘムオキシゲナーゼ−1〔HMOX1(ジーンバンク登録番号:Z82244)〕遺伝子、
を包含する方法に関する。
本発明の第3の発明は、生理活性物質のスクリーニング方法であって、下記工程;
(1)ストレスの生体への負荷、並びに被検物質とストレスの生体への負荷をそれぞれ行う工程、
(2)(1)の生体及びいずれの負荷も行っていない正常生体における遺伝子の発現量をそれぞれ測定する工程、並びに
(3)(2)により得られた遺伝子の発現量を(1)の生体と正常生体とで比較し、下記(a)〜(g)記載の遺伝子の発現パターンから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現パターンを示す被検物質を選択する工程:
(a)前記のA群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(b)前記のB群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに増加する、
(c)前記のC群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに減少する、
(d)前記のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、
(e)前記のE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(f)前記のF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(g)前記のG群の遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、を包含する方法に関する。
本発明の第3の発明において、生体に負荷するストレスがホルボールミリステートアセテート処理である場合、遺伝子の発現パターンは上記(a)〜(d)が例示され、生体に負荷するストレスがリポポリサッカライド処理である場合、遺伝子の発現パターンは上記(e)〜(g)が例示される。
本発明の第1〜3の発明において、生体としては生物個体又は培養細胞が例示される。遺伝子の発現量としては、該遺伝子から転写されるmRNA量により測定される遺伝子の発現量が例示され、当該測定は、特にDNAアレイを使用したハイブリダイゼーション法により行うのが好適である。また、本発明は、本発明の第1〜3の発明により得られうる物質も包含する。
本発明の第4の発明は、本発明の第1〜3の発明のスクリーニング方法に使用されるDNAアレイに関し、上記A〜G群記載の遺伝子から選択される少なくとも2つの遺伝子もしくはその断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化されていることを特徴とするDNAアレイに関する。
本発明の第5の発明は、上記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第6の発明は、ストレスの負荷された生体において、上記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第7の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した上記に示すA群及びE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第8の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した上記に示すB群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第9の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した上記に示すC群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第10の発明は、ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した上記に示すD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有することを特徴とする遺伝子制御剤に関する。
本発明の第5〜10の発明において、含有される各々の化合物が本発明の第1〜3のいずれかの発明のスクリーニング方法によって得られた物質である遺伝子制御剤が例示される。また、本発明の第5〜10の発明の遺伝子制御剤としては、ストレスの緩和、もしくは予防を目的とする遺伝子制御剤が例示される。
本発明の第11の発明は、上記(i)記載の化合物、上記(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有する組成物を生体に投与することにより、上記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする遺伝子の制御方法に関する。
本発明の第12の発明は、上記(i)記載の化合物、上記(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有する組成物を、ストレスが負荷された生体に投与することにより、上記に示すA群、C群、E群及びF群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は上記に示すB群、D群及びG群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする遺伝子の制御方法に関する。
本発明の第11及び12の発明において、上記(i)記載の化合物又は上記(ii)記載の化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物としては、本発明の第1〜3の発明のいずれかのスクリーニング方法によって得られた物質が例示される。
発明を実施するための最良の形態
本発明の生理活性物質のスクリーニング方法の一態様においては、上記式(I)で表される構造を有する化合物を使用する。当該化合物の一例としては、L−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(DGE)が挙げられる。
該化合物は、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオース及び3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を中性からアルカリの条件下で処理(維持)することにより得ることができる。また、当該化合物のpH7未満での酸加水分解および/または酵素分解を行い、ついで得られた酸分解物および/または酵素分解物を中性からアルカリの条件下で処理(維持)することにより得ることができる。
なお、前記酵素分解としては、例えば、3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物、例えばアガロースのα−アガラーゼによる分解を挙げることができる。酵素分解反応を行うための条件は特に限定はなく、使用する酵素についての公知の条件に従えばよい。
還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオース及び3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物のpH7超のアルカリ処理において、当該化合物を溶解または懸濁するアルカリの種類に特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の無機塩基、トリス、エチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用可能である。アルカリの濃度も特に限定はないが、好ましくは0.0001〜5規定、より好ましくは0.001〜1規定の濃度で使用可能である。また、処理温度も特に限定はないが、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜130℃に設定すればよい。また処理時間も特に限定はないが、数秒〜数日に設定すればよい。アルカリの種類と濃度、処理時の温度及び時間は原料となる上記化合物の種類および目的とする式(I)で表される化合物の生成量により適宜選択すればよい。一般に、pH7超であれば良いが、低濃度のアルカリよりも高濃度のアルカリ、低温よりも高温を選択することにより式(I)で表される化合物の生成は速やかに進行する。
例えば、アガロビオース又はκ−カラビオースのpH11.5の水溶液を調製し、37℃で5分間保持することにより、式(I)で表される化合物が生成する。
生成した式(I)で表される化合物を含有するアルカリ液は、目的に応じ中和して用いても良く、またpH7未満の酸性溶液として使用しても良い。
本発明の式(I)で表される化合物の精製手段としては、化学的方法、物理的方法等の公知の精製手段を用いればよく、例えば、ゲルろ過法、分子量分画膜による分画法、溶媒抽出法、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー等の精製方法を組合せて精製すればよい。
例えば、アガロビオースの中性からアルカリの条件下での処理物より式(I)で表される化合物のXがCH2OH、YがHである化合物が精製され、κ−カラビオースの中性からアルカリでの条件下での処理物より、式(I)で表される化合物のXがH、YがCH2OHである化合物が精製される。
また、式(I)で表される化合物の誘導体としては、生体において、当該化合物と実質的に同等の遺伝子発現パターンを示しうる限り特に限定はないが、例えば式(I)で表される化合物とSH基含有化合物(例えば、システイン、グルタチオン又はそれらの公知の誘導体)とを反応して得られる化合物を使用することができる。なお、式(I)で表される化合物とSH基含有化合物とを反応して得られる化合物の製造方法としては国際公開第99/64424号パンフレットに記載の公知の方法を挙げることができる。
式(I)で表される化合物又はその誘導体の塩としては、医薬として許容される塩が好適であり、公知の方法にて変換することができる。
また、式(I)で表される化合物であるDGEはアガロオリゴ糖が生体内に取り込まれた際に生成される化合物であることから、アガロオリゴ糖を生体に投与した場合、DGEと同様の生体反応を起こすことが予想されている〔Jpn.J.Phycol.(Sorui)48:13−19,March 10,2000〕。よって、本発明においては式(I)で表される化合物の代わりに、生体に投与した場合に当該化合物が生成すると考えられる、上記式(II)で表される3,6−アンヒドロガラクトース、そのアルデヒド体、その抱水体、並びにそれらの2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び/又は該化合物を還元末端に有する可溶性の糖化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を使用することもできる(なお、3,6−アンヒドロガラクトースのアルデヒド体、抱水体、2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体については国際公開第00/41579号パンフレット記載の化合物が例示される)。当該化合物の例としては、特に限定はないが、例えば、アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース等のアガロオリゴ糖が例示される。
[1]本発明の生理活性物質のスクリーニング方法
上記の式(I)で表される化合物の1つであるDGEは、生体の受けたダメージを緩和し、生体の恒常性維持を促進する作用を有する。DGEは前記のようなストレスを受けた生体において発現量の変化が見られる遺伝子の当該発現量を調節する活性、すなわち、遺伝子発現制御活性(もしくは作用)を有しており、この活性は生体内の各種遺伝子の発現制御を介することが知られている。さらに、DGEは種々の生理活性を有することが知られており、例えばアポトーシス誘発活性、制がん活性、活性酸素産生抑制活性、過酸化脂質ラジカル産生抑制活性、一酸化窒素産生抑制活性等の抗酸化活性、抗病原微生物活性、抗変異原活性、α−グリコシダーゼ阻害活性、免疫調節作用、プロスタグランジン合成抑制作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、サイトカイン産生調節作用、抗リウマチ作用、抗糖尿病作用、滑膜細胞増殖抑制活性、熱ショックタンパク質産生誘導作用等が挙げられる。そして、このような生理活性はDGEの遺伝子制御作用による遺伝子発現量の調節により発現されるものと考えられる。
本発明の生理活性物質のスクリーニング方法は、前記のような種々の生理活性が知られるDGEの遺伝子制御作用に基づく遺伝子の発現量の変化を指標として、同様な遺伝子発現量の変化を少なくとも示しうるDGE以外の物質のスクリーニング方法を提供するものである。すなわち、生体内において、DGEと同様な遺伝子の発現パターンを少なくとも示しうる物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明により得られた物質はDGEと同様な遺伝子発現制御活性を示しうることから、例えばDGEと同様な生理活性を有するものと推定される。したがって、当該化合物を用いて、例えば当該生理活性の発現が有効に寄与する疾患及び/又は症状(例えば、がん、炎症、アレルギー、糖尿病等の上記のDGEの生理活性を要する疾患)の治療又は予防に有効な医薬、食品、飲料等を提供することが可能となる。
また、DGEの生理活性とは異なる未知の生理活性を有する物質等を得ることも可能であり、かかる観点から、本発明の生理活性物質のスクリーニング方法は、生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法と捉えることもできる。
本発明の生理活性物質のスクリーニング方法においては、具体的には、下記工程;
(1)▲1▼被検物質、及び▲2▼前記(i)に記載の化合物及び/又は前記(ii)に記載の化合物を、それぞれ生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を▲1▼を負荷した場合と▲2▼を負荷した場合とで比較する工程、並びに
(3)少なくとも1つの遺伝子が、▲2▼を負荷した場合と実質的に同等の発現量の変化を示した被検物質を選択する工程、により、DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する物質を得ることができる。
なお、「実質的に同等の発現量の変化」とは、必ずしも発現量の程度において同等であることを意図するものではなく、少なくとも発現量の変化のパターンが同等であることを意図する。
すなわち、▲1▼被検物質を負荷、すなわち、投与するかもしくは摂取させた(以下において同様)生体由来の試料における遺伝子発現量を測定する。一方、▲2▼の化合物、例えば前記式(I)で表わされる化合物、例えばDGEを負荷した生体由来の試料における遺伝子発現量を測定する。次いで各々の遺伝子発現量及び/又はその変化を比較し、被検物質とDGEそれぞれの遺伝子発現制御作用が類似しているかどうかを判定する。遺伝子発現制御作用が類似している物質はDGEと同様の生理活性を有している可能性が高く、DGEと同じ目的で使用できることが期待される。
上記のDGEの有する遺伝子発現制御作用は、特に限定するものではないが、例えば、DGEを負荷した生体と当該負荷を行わない場合の当該生体(対照)との間での遺伝子発現状態(発現パターン)を比較することにより確認することができる。その際、両者間で発現量に差異を有する遺伝子はDGEによる制御対象の遺伝子であると考えられる。なお、DGEの有する遺伝子発現制御作用は、後述する実施例1に記載のように、生体へのストレス負荷を介して確認することもできる。
なお、本明細書において、生体としては特に限定するものではないが、好適には生物個体(ヒトを除く)又は培養細胞を挙げることができる。例えば生物個体を使用する場合、該個体より適当な試料、例えば組織の一部や体液等を採取し、遺伝子発現状態を調べることができる。
また、本発明のスクリーニング方法において使用される被検物質には何ら限定はなく、天然由来のもの、人為的に合成されたもの、天然由来の物質を人為的に改変したもの等を使用することができる。これらの物質は単離されたもの、複数の物質を含有するもののいずれも使用することができ、例えば、適切な分離操作と本発明のスクリーニング方法とを組み合わせて有用な物質を精製、もしくは単離することも可能である。
また、本発明のスクリーニング方法を用いることにより、例えば前記(i)記載の化合物又は(ii)記載の化合物と実質的に同等の生理活性を有する組成物、例えば植物、動物、担子菌又は微生物等からの天然由来の組成物から、その活性成分を特定することもできる。例えば、このような組成物を構成する化合物を被検物質として、本発明の生理活性物質のスクリーニング方法を実施することにより、その活性成分を特定することもできる。
また、上記の本発明のスクリーニング方法によって得られる物質、すなわち、前記(i)記載の化合物又は前記(ii)記載の化合物と同様な遺伝子制御活性を有する物質も本発明の範囲に包含される。当該物質は、被検物質を本発明のスクリーニング方法に供し、当該方法において定められた遺伝子制御活性を有するか否かを判定することにより得ることができる。また、当該物質としては、例えば植物、担子菌類由来の物質やそれらの誘導体が例示され、ここで使用される植物としては、様々な生理活性が知られている薬用植物や海藻類等が例示される。
また、それらに由来する物質としては、特に限定はないが、構成成分として糖を含有する物質、例えば、多糖類、その分解物又はそれらの誘導体が挙げられ、中でも分子量100〜2000程度の物質等が好適である。さらに、これらの内から本発明のスクリーニング方法によって対照として使用された物質(例えば、DGE)以外の遺伝子制御活性をも有する物質を選択することができる。前記の、構成成分として糖を含有する物質としては、3,6−アンヒドロガラクトースを分子内に有する物質が特に好適である。なお、分解物、誘導体は、その元となる物質と、生体内において、実質的に同様な遺伝子の発現パターンを示しうるものである限り特に限定されない。
遺伝子発現状態の比較は公知の方法、例えば当該遺伝子産物(ポリペプチド)量の測定や当該遺伝子より転写されるmRNA量の測定により実施することができる。上記の目的からはmRNA量を測定する方法が効率的であり、好適である。
例えば、ポリペプチド量の測定は、当該ポリペプチド又はその断片に特異的に結合しうる抗体を使用して行うのが好適である。当該抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよく、さらに公知技術により修飾された抗体や抗体の誘導体、例えばFabフラグメント、単鎖抗体等であってもよい。これらの抗体及び誘導体等は公知の方法に従って製造することができる(例えば、1992年、John Wiely & Sons,Inc.発行、John E.Coligan編、Current Protocols in Immunology参照)。また、ポリペプチド量の測定方法としては、例えば公知の酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法等を挙げることができる。さらに、前記抗体等を、前記ポリペプチド量の測定方法における検出の容易化のために各種標識を行ってもよい。
mRNA量の測定方法には特に限定はなく、公知の方法、例えばRT−PCR法、ノーザン・ハイブリダイゼーション法、ドットブロット・ハイブリダイゼーション法、DNAアレイを使用するハイブリダイゼーション法、DNAマイクロビーズ法等を使用することができる。微量の試料で多数の遺伝子の発現状態を調べることが可能であることから、上記の目的には、DNAアレイを使用する方法が特に好適である。
本明細書において「DNAアレイ」とは、遺伝子又は遺伝子由来のDNA断片が支持体上のあらかじめ定められた領域(位置)に固定されているものを指し、例えばDNAチップと呼称されているものを包含する。また、遺伝子又は遺伝子由来のDNA断片が支持体上に高密度に固定されているものはDNAマイクロアレイとも呼ばれる。
DNAアレイの支持体は、ハイブリダイゼーションに使用可能なものであれば特に限定はなく、通常スライドガラス、シリコンチップ、ニトロセルロースやナイロンの膜等が使用される。支持体の表面は、共有結合または非共有結合により一本鎖DNAもしくは二本鎖DNAを固定化できるものであればいずれでもよく、支持体の表面に親水性又は疎水性の官能基を有しているものが好適に使用でき、特に限定はないが、例えば、水酸基、アミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、アシル基等を有しているものが好適に使用できる。これらの官能基は、支持体自体の表面特性として存在していてもよいが、表面処理によって導入してもよい。このような表面処理物としては、例えば、ガラスをアミノアルキルシラン等の市販のシランカップリング剤で処理したものや、ポリリジンやポリエチレンイミン等のポリ陽イオンで処理したもの等が挙げられる。また、これらの処理を施したスライドガラスの一部は市販されている。
支持体上に固定化される遺伝子又はそのDNA断片としては、特に限定するものではないが、例えばゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリー、これらを鋳型とした公知の核酸増幅法、例えば、PCR(polymerase chain reaction)法、LCR(ligase chain reaction)法、SDA(strand displacement amplification)法やICAN(isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids)法(国際公開第00/56877号パンフレット記載)等によって増幅されたDNAが挙げられ、かかる核酸増幅における反応条件は特に限定されるものではない。また、RNAを鋳型とした転写増幅システム(TAS;transcription−based amplification system)法、自立複製(3SR;self−sustained sequence replication)法、NASBA(nucleic acid sequence−based amplification)法、TMA(transcription−mediated amplification)法あるいはQβレプリカーゼ法により増幅されたRNAを逆転写することにより得られるDNAを用いることもできる。
支持体への固定化の操作は市販のDNAアレイ作製装置、例えばアフィメトリックス社製のDNAチップ作製装置を使用して行なうことができる。該装置を使用することにより、遺伝子が高密度に整列、固定化されたDNAアレイ(DNAマイクロアレイ)を作製することができる。
本発明で使用されるDNAアレイとしては任意の遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片が固定されたものを使用することができ、好ましくは、生体の恒常性維持に関連した機能を有するタンパク質をコードする遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片が固定されたアレイが使用される。また、各種の遺伝子の断片を固定化したDNAマイクロアレイが市販されており(IntelliGene Human Cytokine CHIP等、宝酒造社製)、これを使用してもよい。また、該DNAアレイに固定化される遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片の選択は、後述の実施例3に記載のDNAマイクロビーズ法や、サブトラクション法、ディファレンシャルディスプレイ法等により、生体へのストレスの負荷、例えば生体の恒常性維持に支障をきたす薬剤、例えばホルボールミリステートアセテートやリポポリサッカライド等を負荷した生体と未負荷の生体とで発現量に変化が見られる遺伝子を選択することにより行うことができる。
このようなDNAアレイを使用することにより、核酸試料中に含まれる多種類の核酸分子の量を同時に測定することができる。また、少量の核酸試料でも測定できるという利点がある。例えば、試料中のmRNAを標識するか、もしくはmRNAを鋳型として標識されたcDNAを調製し、これとDNAアレイの間でハイブリダイゼーションを実施することにより、試料中で転写されている複数のmRNAを同時に検出し、さらにその発現量を測定することができる。
DGEを負荷した場合と負荷していない場合の生体における遺伝子発現量の差は、例えば両場合における遺伝子の発現パターンを以下のようにして比較することにより調べることができる。
すなわち、DGEを負荷した生体由来の試料(DGE負荷試料)中の核酸とDNAアレイとのハイブリダイゼーション及びDGEを負荷していない生体由来の試料(対照試料)中の核酸とDNAアレイとのハイブリダイゼーションのそれぞれの結果を比較することにより、両者で発現量の異なる遺伝子を検出することができる。例えば、前記試料中の核酸を任意の方法で標識し、当該核酸とハイブリダイゼーションを行ったアレイについて、使用された標識に応じて適切なシグナルの検出を行い、アレイ上の各遺伝子のDGE負荷試料及び対照試料中の発現量を比較する。好ましくは、DGE負荷試料と対照試料中の各々の核酸とをあらかじめ異なる方法で標識しておくことで、複数の標識、例えば2種類の蛍光を検出することができる多波長検出蛍光アナライザーを用いて、DGE負荷試料における遺伝子発現量と対照試料における遺伝子発現量との差を同じDNAアレイ上で競合ハイブリダイゼーションにて比較することができる。すなわち、両者を当量混合してDNAアレイとハイブリダイゼーションを行うことで両者の遺伝子発現量の差をシグナルの色及び強度の違いとして検出することができる。その結果、得られたシグナルの強度に両者間で優位な差のある遺伝子はDGEによる発現制御対象の遺伝子であると特定される。
より具体的には以下の工程によりDGE負荷試料と対照試料間での遺伝子発現量の差を調べることができる。
互いに比較しようとする生体由来の試料、例えば異なる処理を施された細胞よりmRNAを調製し、試料中のmRNA、該mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あるいは増幅された核酸を標識する。標識に用いられる標識物質としては、放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、発光団を有する物質等の物質を用いることができる。例えば、蛍光物質としては、Cy2、FluorX、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、テキサスレッド、ローダミン等が挙げられる。また、同時に検出できる点から、2種類以上の蛍光物質を用いて、好適には2種類の蛍光物質を用いて、DGE負荷試料、対照試料をそれぞれ異なった蛍光物質で標識することが望ましい。また、標識は試料中のmRNA、該mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あるいは増幅された核酸を化学的に標識する方法の他、例えばmRNAからのcDNA合成時、もしくはcDNAからの転写、増幅反応時に標識ヌクレオチドを共存させることによっても実施することができる。
次に、上記の標識核酸と、適当な遺伝子に対応する核酸又はその断片を固定化されたDNAアレイとの間でハイブリダイゼーションを実施する。ハイブリダイゼーションは公知の方法で実施すればよく、その条件は使用するDNAアレイや標識cDNAに適したものを適宜選択すればよい。例えばモレキュラー・クローニング ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular cloning,A laboratory manual)、第2版、第9.52−9.55頁(1989)に記載の条件で行なうことができる。
上記のハイブリダイゼーションによって得られた標識由来のシグナルを比較し、試料間でシグナルの強度に有意な差のある遺伝子を検出することができる。具体的には、上記の方法で標識された核酸試料とハイブリダイゼーションを行ったアレイについて放射能、蛍光、発光等のシグナル強度を専用測定器、例えばクロマトスキャナーもしくはイメージアナライザー等を用いて検出することによって、そのシグナル強度の差から、その発現量が有意に変化する遺伝子を検出することができる。標識の検出法は、用いられる標識物質の種類に応じて適切なものを選択すればよい。
各試料由来の核酸(mRNA、該mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あるいは増幅された核酸)を互いに区別しうる標識物質で標識することにより、一度のハイブリダイゼーションで両試料中の遺伝子発現量の差を比較することができる。例えば、前記Cy3及びCy5を標識物質として用いる場合、Cy3は532nm、Cy5は635nmの波長でスキャンすることにより、両試料中の遺伝子発現量を1枚のDNAアレイ上で測定することができる。
こうして、異なる試料の間での多種類の遺伝子発現量を、微量の試料で比較することができる。
なお、DGE負荷試料と対照試料との遺伝子発現の差を測定するためには、両者のmRNA量及び使用した蛍光物質間の強度差を補正する必要があるが、当該補正は比較的発現変動の少ない標準的な遺伝子(好適にはハウスキーピング遺伝子)を用いて公知の方法により行うことができる。
また、本明細書において、遺伝子発現量の差が優位であると判定する場合とは、例えば、対照試料における遺伝子発現量に対するDGE負荷試料における遺伝子発現量の比、すなわち、相対発現比率(DGE負荷試料における遺伝子発現量/対照試料における遺伝子発現量)が1.7以上もしくは0.6以下の場合である。ここで、相対発現比率が1.7以上の場合が発現量が増加した遺伝子であり、0.6以下の場合が発現量が減少した遺伝子であると判定する。
さらに、DGE負荷試料と対照試料間における遺伝子発現量の差は、公知のDNAマイクロビーズアレイ法により行うこともできる。当該方法によれば、発現量や、既知・未知であるに関わらず発現しうる遺伝子を全て解析可能である。
上記の方法によりDGEを投与、もしくは摂取させた生体とDGEを与えない対照との間の遺伝子発現状態を比較し、DGEによってその発現が制御されうる遺伝子を確認することができる。以上のようにして確認された、DGEがその遺伝子発現制御作用を及ぼしうる遺伝子としては、例えば、後述の表1〜3に示すA〜G群に記載の遺伝子が挙げられる。
生物は、生活環境の変化等の外的要因、ウイルス、細菌感染等の内的要因により、様々なストレスを受ける。ストレスとしては、例えば高温、低温環境、飢餓状態、化学物質への暴露等が例示される。ここで化学物質としては、例えばホルボールミリステートアセテート(TPA)、リポポリサッカライド(LPS)、フィトヘムアグルチニン(PHA)、オカダ酸等が挙げられる。中でもTPAやLPSは、生体に投与することで炎症を惹起させ、かかる作用を利用して人工的に炎症モデルを作製する目的で使用されている。
このようなストレスを受けた結果、生体内では、様々な遺伝子の発現が変化する。その中には、ストレスの結果、発現が誘導もしくは増強され、生体に悪影響を及ぼす遺伝子群(例えば、A群及びE群の遺伝子)もあれば、ストレスの悪影響を取り除くために発現が誘導もしくは増強されるか、或いはストレスを受けていない場合と発現が同等である遺伝子群(例えば、B群及びG群の遺伝子)もある。ストレスを受け、A群及びE群の遺伝子の発現が高い状態が生じ、その発現が低下しない状態が続くと、様々な疾患の発病につながると考えられる。従って、ストレスを受けた際にA群及びE群の遺伝子の発現が増加し難くなる状態にすることは様々な疾患の予防につながる。また、ストレスを受けた際に、増加したA群及びE群の遺伝子の発現をいち早く低下させることも、様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながる。一方、B群及びG群の遺伝子は、ストレス状態を回避するために発現が増加する遺伝子群であり、ストレスを受けた際に、このような遺伝子群をより高発現にすることで、いち早くストレス状態を回避することが可能となり、ストレスが引き金となる様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながると考えられる。
また、ストレスの結果、ストレスの悪影響を取り除くために、発現が減少されるか、或いはストレスを受けていない場合と発現が同等である遺伝子群(例えば、C群及びF群の遺伝子)もあれば、ストレスの結果、発現が減少され、生体に悪影響を及ぼす遺伝子群(例えば、D群の遺伝子)もある。C群の遺伝子は、ストレス状態を回避するために発現が減少する遺伝子群であり、ストレスを受けた際に、このような遺伝子群の発現量をさらに抑えることで、いち早くストレス状態を回避することが可能となり、ストレスが引き金となる様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながると考えられる。一方、ストレスを受け、D群の遺伝子の発現が低い状態が生じ、その発現が増加しない状態が続くと、様々な疾患の発病につながると考えられる。従って、ストレスを受けた際にD群の遺伝子の発現が増加することは様々な疾患の予防につながる。また、ストレスを受けた際に、減少したD群の遺伝子の発現をいち早く増加させることも、様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止につながる。
本発明により明らかとなった、DGEがその発現を抑制する(減少させる)A群、C群、E群及びF群の遺伝子、及びDGEがその発現を促進する(増加させる)B群、D群及びG群の遺伝子を表1〜3に示す。
被検物質について、上記のDGEと同様にして遺伝子発現制御作用を調べ、これをDGEのものと比較することによってDGEと同様な遺伝子制御活性を有する物質を選択することができる。なお、被検物質を負荷した場合とDGEを負荷した場合での、遺伝子発現量の変化の比較、すなわち、発現パターンの比較においては少なくとも1つの遺伝子について比較すればよいが、より有用な物質を見出す観点からは、複数の遺伝子の発現パターンを比較することが好ましい。本発明を特に限定するものではないが、例えば、好ましくは2種以上の遺伝子、より好ましくは4種以上の遺伝子、さらに好ましくは7種以上の遺伝子の発現パターンを比較して所望の遺伝子制御活性を有する物質が選択される。
好適な態様としては、前述の表1〜3に示すA群〜G群から選択される少なくとも1つの遺伝子について比較を行えばよい。より好ましくは、A群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子とB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子(計2つ以上の遺伝子)、さらに好ましくはA群〜G群の各群より選択される少なくとも1つの遺伝子(計7つ以上の遺伝子)について発現パターンが比較される。
また、以上の知見をもとに、本発明により、以下のような本発明の生理活性物質のスクリーニング方法の別の態様が提供される。すなわち、本発明により、下記工程;
(1)被検物質を生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量と当該負荷を行っていない場合の当該生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を両者で比較する工程、並びに
(3)表1〜3中のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる被検物質を選択する工程、を包含する生理活性物質のスクリーニング方法が提供される。当該方法により、DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する物質を簡便に得ることができる。
また、より詳細には以下のような本発明の生理活性物質のスクリーニング方法の別の態様が提供される。すなわち、本発明により、下記工程;
(1)ストレスの生体への負荷、並びに被検物質とストレスの生体への負荷をそれぞれ行う工程、
(2)(1)の生体及びいずれの負荷も行っていない正常生体における遺伝子の発現量をそれぞれ測定する工程、並びに
(3)(2)により得られた遺伝子の発現量を(1)の生体と正常生体とで比較し、下記(a)〜(g)記載の遺伝子の発現パターンから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現パターンを示す被検物質を選択する工程:
(a)上記のA群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(b)上記のB群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに増加する、
(c)上記のC群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに減少する、
(d)上記のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、
(e)上記のE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(f)上記のF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(g)上記のG群の遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、を包含する生理活性物質のスクリーニング方法が提供される。当該方法により、DGEと同様な遺伝子制御活性を有する物質を簡便に得ることができる。
なお、上記の2つの別の態様において、被検物質の遺伝子発現制御作用は、上記のDGEと同様の方法により調べることができる。また、ストレスの生体への負荷は、前記するような各種のストレスを生体に対して負荷することにより行われるが、好ましくは化学物質を用いて行うのが好適であり、中でも、TPA(ホルボールミリステートアセテート)処理又はLPS(リポポリサッカライド)処理がより好適である。ここで、処理とは、投与又は摂取させることをいう。
TPAは発がんプロモーターとして知られており、その作用としては直接的な変異作用の他、生体の炎症誘導による発がん作用が知られている。すなわちTPAはマクロファージ等の炎症細胞からNO、プロスタグランジンE2等、炎症性メディエーターの遊離を惹起する。
LPSはサイトカイン誘導因子であり、生体に対し、発熱、致死効果、血圧低下等の様々な影響を及ぼすが、この作用はLPSそれ自体の直接作用ではなく、LPSによりマクロファージを中心とする宿主細胞が産生する炎症性サイトカインなどの作用によるものである。
上記A〜D群はストレスとしてTPAを用いた際に遺伝子の変動が確認された遺伝子群であり、また上記E〜G群はLPSを用いた際に遺伝子の変動が確認された遺伝子群である。DGEはTPAやLPSにより誘発される炎症を抑制することから、すなわち、上記工程においてのストレスとしてTPA処理を用いた場合に上記遺伝子の発現パターン(a)〜(d)を示す化合物を選択すれば、TPAにより誘発される炎症と同様のメカニズムで誘発される炎症を治療又は予防する効果を有する化合物を得られることが期待でき、また、ストレスとしてLPS処理を用いた場合に上記遺伝子の発現パターン(e)〜(g)を示す化合物を選択することにより、LPSにより誘発される炎症と同様のメカニズムで誘発される炎症を治療又は予防する効果を有する化合物を得られることが期待できる。
なお、遺伝子発現制御作用が多少異なる物質であっても、当該物質はDGEの有する生理活性のうちのいくつかを有している可能性がある。このような物質もDGEの代替物質として目的に応じて使用することは可能である。
また、別の一態様として、本発明の生理活性物質のスクリーニング方法に好適に使用されるキットも提供しうる。当該キットは、例えば表1〜3に示すA群〜G群から選択される少なくとも1つの遺伝子から発現されるmRNA又はその断片を検出するためのプライマー及び/又はプローブ、或いは当該遺伝子にコードされるポリペプチド又はその断片に対する抗体又はその断片を少なくとも含んでおればよい。
[2]本発明のDNAアレイ
また本発明は、前記生理活性物質のスクリーニング方法に使用されるDNAアレイであって、前記のA〜G群の遺伝子から選択される少なくとも2つの遺伝子もしくはその断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化DNAアレイを提供する。本発明のDNAアレイは、上記のDGEによって発現制御を受ける遺伝子または該遺伝子由来のDNA断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化されたアレイである。すなわち、各々の遺伝子に対応するDNA又はその断片の位置が支持体上においてあらかじめ決定されており、このようなアレイを使用した場合、検出されたシグナルの位置からこのシグナルがどの遺伝子のDNA又はその断片に由来するのかを直ちに知ることができる。該アレイは上記[1]の生理活性物質のスクリーニング、ならびにDGEの投与もしくは摂取が有効な疾病における遺伝子的な病態解析に有用である。
上記DNAアレイに固定される遺伝子又はそのDNA断片としては、生体へのストレスやDGEによって発現制御を受ける遺伝子又はそのDNA断片であるか、或いはそれらを含有するものであれば特に限定はなく、例えば後述の実施例3に記載のDNAマイクロビース法を用いて、固定化される遺伝子又はそのDNA断片を選択することができる。また、生体へのストレスやDGEによって発現制御を受ける遺伝子以外の遺伝子、例えば陰性対照として使用される遺伝子等を含有してもよい。また、その製造は公知の方法にしたがって行えばよく、例えば、上記[1]に記載されたDNAアレイ作製装置を使用することができる。
本発明のDNAアレイにおいては、遺伝子又はそのDNA断片は一本鎖、二本鎖のどちらが固定されていてもよい。また、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドのいずれであってもよい。また、その製法にも特に限定はなく、化学的に合成したもの、天然由来のもの、酵素的に合成したもの、それらの組み合わせであってもよい。なお、遺伝子又はそのDNA断片の鎖長としては、特に限定されるものではないが、例えば、約20塩基長〜約1キロ塩基長であることが望ましく、また、該鎖長より短い或いは長いものであっても、任意の被検試料中の核酸とハイブリダイゼーションにおいて特異的にハイブリダイズするものであればよい。
アレイの支持体、DNA固定化密度にも特に限定はなく、目的や固定化する遺伝子数に応じて適切なものを選択すればよい。例えば、DNAアレイの支持体としては前記するようなものを挙げることができ、ハイブリダイゼーションに使用可能なものであれば特に限定はなく、通常、スライドガラス、シリコンチップ、ニトロセルロースやナイロンの膜等が使用される。また、多数の遺伝子を固定化する場合や微量の試料に適したアレイを作製したい場合には、支持体に高密度で遺伝子を固定したマイクロアレイが好適に使用できる。当該マイクロアレイとしては、100ドット/cm2以上の密度で核酸、特にDNAが固定化されたものが好適である。また、その形状にも特に限定はなく、平板状、円盤状、テープ状等、適宜選択することができる。
[3]本発明の遺伝子制御剤、遺伝子制御方法
また本発明は、生体における遺伝子発現の制御方法に関し、特に限定するものではないが、ストレスを受けた生体において発現量が変化した遺伝子について、当該遺伝子の発現を制御(調節)し、生体の恒常性を保つ方法、ならびに該方法のための遺伝子制御剤を提供する。
例えば前記のようなストレスを受けた生体における影響は、該生体中の遺伝子の発現を適切に制御することによって解消することが可能であると考えられる。そのためには、当該遺伝子、例えば表1〜3に挙げられた遺伝子を制御しうる化合物もしくは当該化合物を有効成分として含有する組成物、すなわち、本発明により提供される遺伝子制御剤の使用が有効である。従って、当該遺伝子制御剤は、特にストレスの緩和又は予防用として好適である。
上記の遺伝子制御剤に有効成分として含有させることのできる化合物としては、例えば、DGE、DGEの誘導体及び/又はそれらの塩を使用することができ、さらにDGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する化合物、その誘導体及び/又はそれらの塩を使用することもできる。なお、当該化合物の誘導体等は、前記式(I)で表される化合物の誘導体等と同様にして製造することができる。DGEと同様な遺伝子発現制御活性を有する化合物としては、上記[1]に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を好適に使用することができる。
当該遺伝子制御剤は公知の医薬の製造方法に従って調製することができる。例えば、前記有効成分を薬学的に許容されうる公知の液状又は固体状の担体と混合し、さらに所望により、公知の溶剤、分散剤、乳化剤、安定化剤、滑沢剤等を加えて、液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、又は錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤等の固形剤とすることができる。
前記担体は、本発明の遺伝子制御剤の投与形態及び剤型に応じて選択することができる。経口剤とする場合は、例えばデンプン、乳糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース等の利用が好適である。一方、非経口剤とする場合は、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、ダイズ油、プロピレングリコール等の利用が好適である。
本発明の遺伝子制御剤における前記有効成分の含有量は、遺伝子制御剤の投与形態、投与方法などにより変化し一概には決定できないが、本発明の所望の効果が得られうる量で前記有効成分を投与しうるような量であれば特に限定されるものではない。
本発明の遺伝子制御剤は、剤型に応じた適当な投与経路により、経口的にも非経口的にも投与できる。非経口的に投与する場合、例えば注射剤として、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与することができる。その投与量も特に限定されるものではなく、例えば剤型、投与方法、使用目的、投与対象である患者の年齢、体重、症状に応じて、本発明の所望の効果が得られうる範囲で適宜決定すればよい。
本発明の遺伝子制御剤としては具体的には以下のようなものが例示される。
(1)表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(2)ストレスの負荷された生体において、表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(3)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した、表1〜3に記載のA群及びE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(4)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した、表1〜3に記載のB群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、
(5)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した、表1〜3に記載のC群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤、並びに
(6)ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した、表1〜3に記載のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなる遺伝子制御剤。
さらに、本発明により、
前記(i)記載の化合物、(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有してなる組成物を生体に投与することにより、表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる遺伝子の制御方法、並びに
前記記載の(i)記載の化合物、(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有してなる組成物を、ストレスの負荷された生体に投与することにより、表1〜3に記載のA群、C群、E群及びF群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる遺伝子の制御方法、が提供される。
ここで、生体とは、哺乳動物、中でもヒトである。また、少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物としては、上記[1]に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を好適に使用することができる。
かかる遺伝子の制御方法によれば、表1〜3に示した遺伝子の発現を好適に制御することができ、生体の受けたストレスの緩和および/または回避が可能となる。
なお、有効成分として投与する化合物もしくは当該化合物を含む組成物の投与方法、投与量等は、例えば前記遺伝子制御剤と同様でよい。
本発明の遺伝子の制御方法により、ストレスに起因する生体に悪影響を及ぼす遺伝子群の発現を抑制するとともに、ストレス状態の回避に関与する遺伝子群の発現を増強し、様々な疾患の予防、治療、増悪の阻止を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)RNAの調製
HL−60細胞(ATCC CCL−240)を10%ウシ胎児血清(JRHバイオサイエンシズ社製)、1.3%ジメチルスルホキシド含有RPMI1640培地(バイオウイタカー社製、12−702F)に懸濁し、5%炭酸ガス存在下、37℃で1週間培養し、好中球様に分化誘導した。
上記により得られた細胞を遠心により回収し、106cells/mLとなるように10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁し10cmシャーレに10mLずつ加えた。各シャーレに100μLの4mM DGE水溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分、10μLの100μg/mLホルボールミリステートアセテート(TPA、ギブコ社製、13139−019)ジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分、100μLの4mM DGE水溶液を添加して6時間培養後さらに10μLの100μg/mL TPAジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。また、陰性対照として100μLの水を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。なお、RNAはRNeasy Mini Kit(キアゲン社製、74104)を用いてキットの説明書に従い調製した。
(2)cDNAの合成
上記により得られた各total RNA 25μgと100pgのλ poly A+ RNA−A(宝酒造社製、TX802)を、RNA Fluorescence Labeling Core Kit(宝酒造社製、TX807)と、1mM FluoroLink Cy3−dUTPあるいはCy5−dUTP(アマシャム・ファルマシア製、PA53022(Cy3)、PA55022(Cy5))を用い、キットの説明書に従って蛍光標識されたcDNAの合成反応と精製を行った。蛍光標識したDNA溶液を表4の組み合わせで混合し,クロロホルム・イソアミルアルコール(24:1)抽出を行い、2μLの5×Competitor I(Human)(宝酒造社製、TX808)を添加してエタノール沈殿によりDNAを回収した。得られたDNAは10μLのハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、0.2% SDS、5×デンハルト溶液、0.1mg/mL変性サケ精子DNA溶液を0.22μmのフィルターに通したもの)に溶解し、ハイブリダイゼーションに供した。
(3)ハイブリダイゼーション
カバーガラス(22×22mm)の上に10μLのプレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、0.2% SDS、5×デンハルト溶液、1mg/mL変性サケ精子DNA溶液を0.22μmのフィルターに通したもの)を滴下し、Human Cytokine CHIP(ver.1.0)(宝酒造社製、X104)のアレイDNA面が下になるようにしてカバーガラスの上に、気泡が入らないようにかぶせた。チップのアレイDNA面が上になるようにひっくり返し、ペーパーボンド(コクヨ社製、タ−100)をカバーガラスの周辺に滴下して溶液を密閉し室温で2時間放置することでプレハイブリダイゼーションを行った。チップを2×SSC中に移しペーパーボンドおよびカバーガラスを外し、2×SSC続いて0.2×SSC中で洗浄後、遠心により水分を飛ばして乾燥した。
上記のハイブリダイゼーション溶液に溶解した蛍光標識DNA溶液を95℃で2分間加熱して変性させた後、遠心して上清をカバーガラス(22×22mm)の上に滴下し、上記のように処理をしたチップのアレイDNA面が下になるようにしてカバーガラスの上に、気泡が入らないようにかぶせた。チップのアレイDNA面が上になるようにひっくり返し、ペーパーボンドをカバーガラスの周辺に滴下して溶液を密閉した。このチップを湿箱に入れた後、65℃の恒温槽で16時間保温した。チップを2×SSC中に移しペーパーボンドおよびカバーガラスを外し、55℃の2×SSC、0.2% SDS中で30分間で2回洗浄、続いて65℃の2×SSC、0.2% SDSで5分間洗浄し、室温の0.05×SSCで5分間洗浄後、遠心により水分を飛ばして乾燥した。
(4)解析
Affymetrix418 Array Scanner(宝酒造社製、GM205)により上記チップの各スポットの蛍光シグナルを読み取った。この画像データをもとにImaGene(宝酒造社製、BD001)により各スポットの蛍光シグナルを定量した。この結果、TPA添加区分でいくつかの遺伝子発現の変動が確認でき、これに対してDGE+TPA添加区分で、この変動をさらに上下させていることが確認できた。すなわち、DGEはいくつかの遺伝子についてTPAによる遺伝子の変動を修飾する作用を有することが確認できた。その結果をまとめたものを表5に示す。表5はTPAによって変動のあった遺伝子のうち、DGEによってその変動が修飾されたものをまとめたものであり、A−1群はDGEによってその発現が抑制された遺伝子、B−1群はDGEによってその発現が促進された遺伝子である。
実施例2
(1)PBMCの分離および保存
ヒト健常人ドナーより400mL採血を実施した。採血液をPBS(−)で2倍希釈し、Ficoll−paque(ファルマシア社製)上に重層後500×gで20分間遠心した。中間層の末梢血単核球(PBMC)をピペットで回収し、RPMI1640培地(バイオウイタカー社製)を用いて洗浄した。採取したPBMCは90%FCS(JRHバイオサイエンシズ社製)/10%ジメチルスルホキシドからなる保存液に懸濁し、液体窒素中にて保存した。実験時にはこれら保存PBMCを37℃水浴中にて急速融解し、10μg/ml DNase(カルビオケム社製)を含むRPMI1640培地で洗浄後、トリパンブルー染色法にて生細胞数を算出し各実験に供した。
(2)プラスチック接着性単球の分離
5%ヒトAB型血清、0.1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、2mML−グルタミン(以上バイオウイタカー社製)、10mM HEPES(ナカライテスク社製)、1%ストレプトマイシン−ペニシリン(ギブコBRL社製)を含むRPMI1640培地(以下5HRPMI培地と略す)に1×107cells/mLとなるようにPBMCを懸濁後、100mmシャーレ(旭テクノグラス社製)に15mLずつまき、37℃で、5%のCO2湿式インキュベーター内にて1.5時間インキュベートした。その後、非接着性の細胞を吸引除去し、各ウエルをRPMI1640培地を用いて洗浄し、10mLの5HRPMI培地を加えてプラスチック接着性の単球を得た。
(3)RNAの調製
実施例2−(2)により得られた各シャーレに10μLの1μg/mLリポポリサッカイライド(LPS、シグマ社製、L−2012)水溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分、10μLの20mM DGE水溶液を添加して4時間培養後さらに10μLの1μg/mLLPS水溶液を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。また、陰性対照として10μLの水を添加して4時間後にtotal RNAを回収した区分を設定した。なお、RNAはRNeasy Mini Kit(キアゲン社製、74104)を用いてキットの取扱説明書に従い調製した。
(4)cDNAの合成
cDNAの合成は実施例1−(2)記載の方法に準じて行った。ただし、蛍光標識したDNA溶液の組み合わせは表6にしたがって行った。
(5)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションは実施例1−(3)記載の方法に準じて行った。ただし、チップはHuman Cytokine CHIP(ver.2.0)(宝酒造社製、X104)を用いた。
(6)解析
Affymetrix428 Array Scanner(宝酒造社製)により上記チップの各スポットの蛍光シグナルを読み取った。この画像データをもとにImaGene(宝酒造社製、BD001)により各スポットの蛍光シグナルを定量した。この結果、いくつかの遺伝子についてLPS添加区分で発現の増加が確認でき、これに対してDGEを添加することでこの増加を抑制していることが確認できた。また、いくつかの遺伝子についてLPS添加区分で発現の変動が認められないものの、DGE+LPS添加区分で発現の増加および下降が確認できた。その結果をまとめたものを表7に示す。表7はLPSによって発現が増加した遺伝子のうちDGEによってその増加が抑制されたもの(E群)、LPSによって発現が変動しないもののDGE+LPSで発現が下降したもの(F群)および増加したもの(G群)をまとめたものである。
実施例3 DNAマイクロビーズの作製と遺伝子の選択
プロシーディングズ オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズオブ USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第97巻、第1665〜1670頁、(2000年)(以下、文献1と呼ぶ。)記載の方法に準じて、以下に示すようにDNAマイクロビーズの作製を行った。
(1)cDNAの合成
ヒト前骨髄性白血病細胞HL−60細胞(ATCC CCL−240)を10%ウシ胎児血清(JRHバイオサイエンシズ社製)、1.3%ジメチルスルホキシドをそれぞれ含有するRPMI1640培地(バイオウイタカー社製)に懸濁し、5%炭酸ガス存在下、37℃で1週間培養し、上記細胞を好中球様に分化誘導した。得られた細胞を遠心により回収し、10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に1×106cells/mlとなるように懸濁したうえ、この懸濁液を10cmシャーレ2枚に10mlずつ加えた。一方のシャーレに100μlの水(A)、もう一方のシャーレに10μlの100μg/mlホルボールミリステートアセテート(TPA、ギブコ社製)ジメチルスルホキシド溶液(B)を添加してそれぞれ4時間培養した。それぞれのシャーレより回収した(A)、(B)の細胞のそれぞれよりトリゾール試薬(ギブコ社製)を用いて全RNAを調製し、次いでオリゴテックスTM−dT30(宝酒造社製)を用いて全RNAからmRNAを精製した。このmRNA 2.5μgを鋳型とし、cDNA合成キット(ストラタジーン社製)を用いてcDNAの合成を行った。その際、逆転写に用いるプライマーとして、配列表の配列番号:1に示される塩基配列の5’ビオチン標識プライマーを使用した。
こうして得られたcDNAをフェノール・クロロホルム処理し、セファロースCL4B(アマシャム・ファルマシア社製)を用いてゲルろ過精製した後、エタノール沈殿を行った。沈殿として回収されたcDNAを200μlのDpnII緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)に溶解し、制限酵素DpnII(ニュー イングランド バイオラブズ社製)による消化を行った。この消化物よりストレプトアビジンマグネットビーズ(ダイナール社製)を用いてcDNAの3’側部分を回収した後、20μlの10×NEB#2緩衝液(ニューイングランド バイオラブズ社製)を加えて全量を200μlに調整し、制限酵素BsmBI(ニュー イングランド バイオラブズ社製)による消化を行った。反応液についてフェノール・クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行った後、沈殿を滅菌水10.5μlに溶解し、これを3’側cDNA溶液として以下の実験に用いた。
(2)3’側cDNAとアンチタグ付きマイクロビーズのハイブリダイゼーション
実施例3−(1)で合成した(A)および(B)由来の3’側cDNA溶液1μlを文献1記載のタグベクターpLCV2 200ngにそれぞれ挿入して14万〜18万クローンからなるプラスミドプール6個を調製した。配列表の配列番号:2に記載の塩基配列の5’ビオチン標識プライマー、および配列表の配列番号:3に記載の塩基配列の5’FAM標識プライマーを100μlの反応液1本あたりそれぞれ100pmol使用し、反応液1本あたり上記の各プラスミドプール125ngを鋳型としたPCRを、各プラスミドプールあたり48本行った。PCRは以下の条件で行った。
94℃−3分保持
94℃−30秒、67℃−3分を1サイクルとした8サイクル
94℃−30秒、64℃−3分を1サイクルとした22サイクル
67℃−3分保持
反応終了後、PCR反応液を各プールごとに1本に集め、フェノール・クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行った後、得られた沈殿を滅菌水1200μlに溶解した。ここに10×NEB#4緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)180μlを加え、全量を1800μlにした後、制限酵素PacI(ニュー イングランド バイオラブズ社製)による消化を行った。反応液よりウルトラリンクSAレジン(ピアス社製)に吸着する画分を除いて得られるcDNA溶液についてフェノール・クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行った後、沈殿を滅菌水1200μlに溶解した。ここに10×NEB#2緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)180μlを加え、全量を1800μlに調整してT4 DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)処理を行った。この際基質としてdGTPのみを加えることによりタグ部分の1本鎖化を行った。
この1本鎖タグを持つcDNAの各プールごと300μgを文献1記載の1億4400万個のアンチタグ付きマイクロビーズと混合し、400μlのハイブリダイゼーション緩衝液(10mM リン酸緩衝液(pH7.2)、0.5M NaCl、0.01% Tween 20、1.2% デキストラン硫酸)中、72℃で振盪しながら3日間ハイブリダイゼーションを行った。遠心分離によってマイクロビーズを集め、500μlの10mM Tris−HCl(pH7.9)、10mM MgCl2、50mM NaCl、1mM ジチオスレイトール、0.01% Tween 20に懸濁して振盪しながら64〜70℃で30分間洗浄を行った。この洗浄操作を数回繰り返した後に6プール分の洗浄済みcDNA付きマイクロビーズを集め、MoFloサイトメーター(サイトメーション社製)を用いてマイクロビーズのFAMの蛍光強度(励起波長:488nm、検出波長:530nm)を測定し、蛍光強度の大きい方から1%のマイクロビーズを分取した。以上の操作によって、cDNAがハイブリダイゼーションによって結合した約600万個のマイクロビーズを得た。
(3)DNAマイクロビーズ懸濁液の調製
実施例3−(2)で得られた、cDNAがハイブリダイゼーションによって結合したマイクロビーズのうち約200万個を100μlの10mM Tris−HCl(pH7.9)、10mM MgCl2、50mM NaCl、1.4mM ジチオスレイトール、0.01% Tween 20、各0.1mMのdATP、dGTP、dTTP、5−メチルdCTP、1mM ATPに懸濁し、20UのT4 DNAポリメラーゼと400UのT4 DNAリガーゼを添加して12℃で2時間反応させた。反応はプロナーゼ処理によって停止し、次いで反応液よりマイクロビーズを遠心分離によって集め、100μlのDpnII緩衝液(ニュー イングランド バイオラブズ社製)に懸濁してDpnII(ニューイングランド バイオラブズ社製)で消化した。遠心分離によってマイクロビーズを集め、100μlの10mM Tris−HCl(pH7.5)、5mMMgCl2、0.033mM dGTP、7.5mM ジチオスレイトール、0.01% Tween 20に懸濁し、10UのDNAポリメラーゼI ラージフラグメント(宝酒造社製)を加えて25℃で15分間反応させた。遠心分離によってマイクロビーズを集めて100μlのライゲーション緩衝液(宝酒造社製)に懸濁後、予め配列表の配列番号:4、配列番号:5に示される塩基配列のDNAをアニールさせて作製したアダプター0.1nmolを加え、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)を用いてライゲーション反応を行った。マイクロビーズを遠心分離によって集め、ビーズストリッピング溶液(150mM NaOH、0.01% Tween 20)に懸濁して室温で10分間反応させた。反応液より遠心分離により上清を除いた後、マイクロビーズを10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.01% Tween 20で洗浄し、1mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.01% Tween 20に懸濁して、サンプル1およびサンプル2由来のDNAマイクロビーズ懸濁液を得た。
(4)プローブの作製
実施例3−(1)で調製した(A)および(B)由来の3’側cDNA 1μlを文献1記載のプローブベクターpLCV 200ngにそれぞれ挿入して800万〜1000万クローンからなるプラスミドを調製した。このプラスミドのそれぞれ10μgにユニバーサル緩衝液H(宝酒造社製)20μlを加えて全量を200μlにした後、制限酵素Sau3AI(宝酒造社製)にて消化した。(A)由来のSau3AI消化済プラスミド1.2μgを鋳型に配列表の配列番号:6に示される塩基配列の5’FAM標識プライマー2nmolを用いて、また、(B)由来のSau3AI消化済プラスミド2.4μgを鋳型に配列表の配列番号:7に示される塩基配列の5’Cy5標識プライマー4nmolを用いて、それぞれリニアPCRを行った。リニアPCRは、以下の条件で行った。
95℃−5分保持
95℃−30秒、64℃−30秒、72℃−30秒を1サイクルとした25サイクル
72℃−10分保持
リニアPCR後の反応液のそれぞれより、キアクイックPCRピュリフィケーションキット(キアゲン社製)を用いて増幅DNAを精製し、エタノール沈殿を行った後、滅菌水21μlに溶解し、サンプル1由来FAM蛍光標識プローブおよびサンプル2由来Cy5蛍光標識プローブを得た。
(5)DNAマイクロビーズとのハイブリダイゼーション
実施例3−(3)で調製したサンプル1由来のDNAマイクロビーズとサンプル2由来のDNAマイクロビーズを、それぞれ約36万個ずつ混合し、このビーズに(4)で作製したサンプル1由来FAM蛍光標識プローブおよびサンプル2由来Cy5蛍光標識プローブを各5μgを加え、50μlの緩衝液(4×SSC、25%ホルムアミド、0.1%SDS)中で振盪しながら65℃で終夜ハイブリダイゼーションを行った。遠心分離によって集めたマイクロビーズを1×SSC、0.1%SDS溶液で65℃で30分間洗浄後、0.1×SSC,0.1%SDSで65℃で30分間洗浄し、遠心分離にてDNAマイクロビーズを集め、これを10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.01% Tween 20に懸濁し、ハイブリダイゼーション済DNAマイクロビーズを得た。
(6)ソーティング
実施例3−(5)で得たハイブリダイゼーション済DNAマイクロビーズを、MoFloサイトメーター(サイトメーション社製)を用いたソーティングに供した。DNAマイクロビーズについてFAMの蛍光強度(励起波長:488nm、検出波長:530nm)およびCy5の蛍光強度(励起波長:647nm、検出波長:670nm)を測定し、FAMの蛍光強度の強いDNAマイクロビーズを3692個(ビーズ懸濁液A)、Cy5の蛍光強度の強いDNAマイクロビーズを3349個(ビーズ懸濁液B)分取した。
(7)PCRおよびDNA塩基配列決定
実施例3−(6)で分取したビーズ懸濁液AおよびBを鋳型に、配列表の配列番号:8および配列番号:9にそれぞれ塩基配列を示したプライマーを用いてPCRを行った。100μlの反応液中に、鋳型ビーズを200個とプライマーを40pmolずつ加え、ビーズ懸濁液A,Bそれぞれについて5本ずつの反応を行った。PCRは以下の条件で行った。
95℃−5分保持
95℃−30秒、64℃−30秒、72℃−30秒を1サイクルとした25サイクル
72℃−10分保持
PCR反応液を懸濁液A,Bごとに1本にまとめ、それぞれの1μlをクローニングベクターpT7Blue(ノバジェン社製)と混合してライゲーションを行い、クローニングした。ビーズ懸濁液A由来のコロニー960個と、ビーズ懸濁液B由来のコロニー960個の合計1920個のコロニーからプラスミドを精製し、挿入DNA断片の塩基配列解析を行った。得られた塩基配列の中で、以下に示すどちらかの条件を満たすものを選択した。
条件1:インサート配列の長さが、40ベース以上のもの。
条件2:インサート配列の長さが、30ベース以上、40ベース以下で、polyA配列を持たないもの。
複数のプラスミドにおいて同じインサート配列が出現した場合は、どれか1個のプラスミドを選択し、DNAマイクロアレイ用の鋳型プラスミドとして740個のプラスミドを得た。
実施例4 DNAマイクロアレイを用いた発現解析
(1)DNAマイクロアレイの作製
実施例3において取得した740個のクローンのプラスミドを鋳型として、配列表の配列番号:10と11に記載の配列を有するプライマー対を用いてPCR反応を行った。ついで、当該増幅産物をエタノール沈殿により精製後、0.3μg/μlになるように1×SolutionT(宝酒造社製)に溶解し、これをスポッティング溶液とした。当該スポッティング溶液をAffymetrix417アレイヤー(アフィメトリックス社製)を用いて、アミノ化スライドガラスであるMASコートスライドガラス(松浪硝子社製)にスポットした。スポット後のスライドを37℃、湿度90%にて1時間保持した後、60mJ/cm2のエネルギーでUVクロスリンクした。さらに、0.2% SDSで1回、次いで蒸留水で2回洗浄した後、2.75gの無水コハク酸と162.5mlのN−メチル−2−ピロリドン、15mlの1Mほう酸緩衝液(pH8.0)からなるブロッキング溶液に20分間浸し、遊離のアミノ基をブロックした。次いで、蒸留水で2回洗浄した後、沸騰水中にて2分間熱変性し、氷温の100%エタノールで急冷した。その後、1,000rpm程度の低速遠心分離によりスライドガラスを乾燥させ、以下の実験に用いた。
(2)細胞の調製
HL−60細胞(ATCC CCL−240)を10%ウシ胎児血清(JRH バイオサイエンシズ社製)、1.3%ジメチルスルホキシド含有RPMI1640培地(バイオウイタカー社製、12−702F)に懸濁し、5%炭酸ガス存在下、37℃で1週間培養し、好中球様に分化誘導した。得られた細胞を遠心により回収し、106cells/mLとなるように10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁し10cmシャーレに10mLずつ加えた。各シャーレに100μlの4mM DGE水溶液を添加して4時間後にRNAを回収した区分、10μLの100μg/mLホルボールミリステートアセテート(TPA、ギブコ社製、13139−019)ジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にRNAを回収した区分、100μLの4mM DGE水溶液を添加して6時間培養後さらに10μLの100μg/mL TPAジメチルスルホキシド溶液を添加して4時間後にRNAを回収した区分を設定した。また、陰性対照として100μLの水を添加して4時間後にRNAを回収した区分を設定した。
(3)検出用標識cDNAの調製とハイブリダイゼーション
実施例4−(2)で調製したHL−60細胞から、Trizol Reagent(GIBCO BRL社製)とOligotex−dT30<Super>(宝酒造社製)を用い、それぞれのキットのプロトコールに従いPolyA(+)RNAを調製した。次いで、RNA Fluorescence Labeling Core Kit(M−MLV Version)(宝酒造社製)を用いてキットのプロトコールに従い、それぞれPolyA(+)RNA1.0μgを鋳型として、表8に示したサンプルRNAの組み合わせでCy3とCy5で標識されたcDNAを調製し、混合した。
次に、IntelliGene(宝酒造社製)の取扱説明書に従い、実施例4−(1)で作製したDNAマイクロアレイと,上記のCy3標識cDNAとCy5標識cDNAの混合物(4種類)とのハイブリダイゼーションを行い、洗浄・乾燥の操作を行った。次いで、Affymetrix 428 Array Scanner(アフィメトリックス社製)を用いて、Cy3(励起波長:532nm、検出波長:570nm)とCy5(励起波長:635nm、検出波長:660nm)の蛍光画像を取得した。その後、各スポットのスポット領域のシグナル強度の平均値と、スポットの周辺領域(以下、バックグラウンド領域と称す。)のシグナル強度の平均値と標準偏差を、画像定量解析ソフトImaGene4.1(Biodiscovery社製)を用いて定量・算出した。
(4)各クローンのグループ化
発現比率から統計解析により各クローンのグループ化を行うには、信頼性の低いデータと有意な変動を示さないクローンのデータを除去する必要がある。よって、以下の手順によりグループ化に供するクローンの絞り込みを行った。すなわち、実施例4−(3)で得られたバックグラウンド領域のシグナル強度の平均値と標準偏差から、以下の数式によりシグナル強度の閾値を求めた。
シグナル強度の閾値=バックグラウンド領域のシグナル強度の平均値+2×(バ
ックグラウンド領域のシグナル強度の標準偏差)
各スポット領域のシグナル強度の平均値が上記の閾値より大きいか否かで、当該スポットシグナルの各チャンネルにおける有意性を判断した。次いで、4つのサンプル全てで、Cy3とCy5の両方のチャンネルで有効シグナルを持たないスポットのクローンを除外した。さらに、Cy3のシグナルに対するCy5のシグナル強度の比率(以下、発現比率と称す。)を算出し、すべてのサンプルにおいて当該比率が2分の1より大きくかつ2より小さいクローンについて、変動を示さなかったクローンとして以後の解析から除外した。以上の絞り込みの結果、740個のクローンの中から227個のクローンが選択された。
次に、上記で選択された227クローンについて、TPAおよびDGEの処理により発現が変動した、すなわちサンプル番号3あるいは4の発現比率が0.55以下もしくは1.8以上の値を有するクローンについて、DGE処理による変動の関係から以下の4つのグループに分けることができた。
A−3群 TPA処理により発現が増加し、さらにDGE処理によりその発現が低下するクローン。
B−3群 TPA処理により発現が増加し、さらにDGE処理によりその発現が増加するクローン。
C−3群 TPA処理により発現が低下し、さらにDGE処理によりその発現が低下するクローン。
D−3群 TPA処理により発現が低下し、さらにDGE処理によりその発現が増加するクローン。
これらのクローンについて相同性検索を行った。これらの結果から、4つのグループに分けられたクローンに対して相同性の得られた塩基配列名とそのGenBank Accession No.を表9及び10に示す。なお、表9及び10において相同性が認められたクローンについてはGenBankに登録されている塩基配列名を、相同性が認められなかったクローンについては、配列表の配列番号を示した。
これらの結果から、それぞれA−3群、B−3群、C−3群、D−3群に分類されたクローンは表11に示す遺伝子の部分配列であることが推定された。なお、表11中のGenBank Accession No.において、遺伝子の全塩基配列が明らかにされていないものについては、表9及び10記載の塩基配列のGenBank Accession No.を示した。
配列表フリーテキスト
配列番号:1の配列は、全mRNAについての逆転写用プライマーの配列である。
配列番号:2の配列は、タグベクターpLCV2の一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:3の配列は、タグベクターpLCV2の一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:4の配列は、オリゴヌクレオチドアダプターの配列である。
配列番号:5の配列は、オリゴヌクレオチドアダプターの配列である。
配列番号:6の配列は、プローブベクターpLCVの一部を増幅するためのリニアPCR用プライマーの配列である。
配列番号:7の配列は、プローブベクターpLCVの一部を増幅するためのリニアPCR用プライマーの配列である。
配列番号:8の配列は、DNAマイクロビーズ上のcDNAについてのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:9の配列は、DNAマイクロビーズ上のcDNAについてのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:10の配列は、pT7Blueベクターの一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
配列番号:11の配列は、pT7Blueベクターの一部を増幅するためのPCR用プライマーの配列である。
産業上の利用可能性
本発明は、種々の生理活性を有するDGEと同様な遺伝子制御活性を有する生理活性物質もしくは生理活性物質の候補物質のスクリーニング方法、生体の恒常性維持に有効な、例えばストレスの緩和又は予防を目的とする遺伝子制御剤、並びに遺伝子の制御方法を提供する。本発明により、例えば、DGEの有する各種生理活性の発現が有効に働く疾患又は症状の治療又は予防効果が期待できる。
【配列表】
Claims (23)
- 下記工程を包含することを特徴とする生理活性物質のスクリーニング方法;
(1)▲1▼被検物質、及び▲2▼下記(i)に記載の化合物及び/又は下記(ii)に記載の化合物を、それぞれ生体に負荷する工程:
(i)下記式(I)で表される化合物、その誘導体及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(式中、X及びYは、H又はCH2OH、ただし、XがCH2OHの時、YはH、XがHの時、YはCH2OHである)
(ii)下記式(II)で表される3,6−アンヒドロガラクトース、そのアルデヒド体、その抱水体、並びにそれらの2−O−メチル化体及び2−O−硫酸化体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び/又は該化合物を還元末端に有する可溶性の糖化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を▲1▼を負荷した場合と▲2▼を負荷した場合とで比較する工程、並びに
(3)少なくとも1つの遺伝子が、▲2▼を負荷した場合と実質的に同等の発現量の変化を示した被検物質を選択する工程。 - 下記工程を包含することを特徴とする生理活性物質のスクリーニング方法;
(1)被検物質を生体に負荷する工程、
(2)(1)の生体における遺伝子の発現量と当該負荷を行っていない場合の当該生体における遺伝子の発現量を測定し、その値を両者で比較する工程、並びに
(3)下記に示すA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又は下記に示すB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる被検物質を選択する工程:
A群:
骨形成タンパク質−6〔BMP−6(ジーンバンク登録番号:NM 001718)〕遺伝子、
ケモカインレセプター−1〔CCR−1(ジーンバンク登録番号:NM 001295)〕遺伝子、
肝細胞増殖因子〔HGF(ジーンバンク登録番号:X16323)〕遺伝子、
Intercellular adhesion molecule−1〔ICAM−1(ジーンバンク登録番号:NM 000201)〕遺伝子、
インターロイキン−1β〔IL−1β(ジーンバンク登録番号:X02532)〕遺伝子、
インターロイキン−16〔IL−16(ジーンバンク登録番号:M90391)〕遺伝子、
白血病阻害因子〔LIF(ジーンバンク登録番号:NM 002309)〕遺伝子、
オステオポンチン〔osteopontin(ジーンバンク登録番号:NM 000582)〕遺伝子、
腫瘍壊死因子−α〔TNF−α(ジーンバンク登録番号:X02910)〕遺伝子、
ニューロピリン−1〔Neuropilin−1(ジーンバンク登録番号:NM 003873)〕遺伝子、
signal transducer and activator of transcription 6〔STAT6(ジーンバンク登録番号:AF067575)〕遺伝子、及び
Homo Sapiens cDNA:FLJ22298 fis,clone HRC04637(ジーンバンク登録番号:AK025951)を含む遺伝子、
B群:
ヘムオキシゲナーゼ−1〔H0−1(ジーンバンク登録番号:NM 002133)〕遺伝子、
チオレドキシンレダクターゼ−1(ジーンバンク登録番号:AF106697)遺伝子、
putative translation initiation factor〔SUI1(ジーンバンク登録番号:AF083441)〕遺伝子、及び
Homo sapiens hypothetical protein〔HSPC014(ジーンバンク登録番号:NM 015932)〕遺伝子、
C群:
N−myc downstream regulated gene 1〔NDRG1(ジーンバンク登録番号:NM 006096)〕遺伝子、
adenosine deaminase,RNA specific〔ADAR(ジーンバンク登録番号:NM 015841)〕遺伝子、
splicing factor 3b,subunit2〔SF3B2(ジーンバンク登録番号:NM 006842)〕遺伝子、
interleukin enhancer binding factor 3〔ILF3(ジーンバンク登録番号:NM 004516)〕遺伝子、
valyl−tRNA synthetase 2〔VARS2(ジーンバンク登録番号:NM 006295)〕遺伝子、及び
配列表の配列番号:12に記載の塩基配列を含む遺伝子、
D群:
eukaryotic translation elongation factor 1 alpha 1〔EEFIA1(ジーンバンク登録番号:NM 001402)〕遺伝子、
ribosomal protein L17〔RPL17(ジーンバンク登録番号:NM 000985)〕遺伝子、
ribosomal protein L24〔RPL24(ジーンバンク登録番号:NM 000986)〕遺伝子、
splicing factor,arginine/serine−rich 2〔SFRS2(ジーンバンク登録番号:NM 003016)〕遺伝子、
tumor protein,translationally−controlled 1〔TPT1(ジーンバンク登録番号:NM 003295)〕遺伝子、
ubiquinol−cytochrome c reductase binding protein〔UQCRB(ジーンバンク登録番号:NM 006294)〕遺伝子、
ribosomal protein S15a〔RPS15A(ジーンバンク登録番号:NM 001019)〕遺伝子、及び
ribosomal protein L27〔RPL27(ジーンバンク登録番号:NM 000988)〕遺伝子、
E群:
インターロイキン−2レセプターα〔IL2RA(ジーンバンク登録番号:X01057)〕遺伝子、
インターロイキン−6〔IL6(ジーンバンク登録番号:X04430)〕遺伝子、
CD166(ジーンバンク登録番号:Y10183)遺伝子、
インターフェロン調節因子−1〔IRF1(ジーンバンク登録番号:X14454)〕遺伝子、
インターロイキン−15レセプターα〔IL15RA(ジーンバンク登録番号:U31628)〕遺伝子、
Nuclear factor kappa−b p105サブユニット〔NFKB1(ジーンバンク登録番号:M58603)〕遺伝子、
カスパーゼ−1〔CASP1(ジーンバンク登録番号:M87507)〕遺伝子、
インターロイキン−1β〔IL1B(ジーンバンク登録番号:M15330)〕遺伝子、
腫瘍壊死因子−α〔TNF−α(ジーンバンク登録番号:X02910)〕遺伝子、
Gro1オンコジーン〔GR01(ジーンバンク登録番号:X54489)〕遺伝子、
インターロイキン−1α〔IL1A(ジーンバンク登録番号:M28983)〕遺伝子、
インヒビンベータA〔INHBA(ジーンバンク登録番号:J03634)〕遺伝子、
インターロイキン−7レセプター〔IL7R(ジーンバンク登録番号:M29696)〕遺伝子、
前駆B細胞コロニー増強因子〔PBEF(ジーンバンク登録番号:U02020)〕遺伝子、
Liver and activation regulated chemokine〔LARC(ジーンバンク登録番号:U64197)〕遺伝子、及び
インターロイキン−8〔IL8(ジーンバンク登録番号:M26383)〕遺伝子、
F群:
コロニー刺激因子−1レセプター〔CSF1R(ジーンバンク登録番号:X03663)〕遺伝子、
ケモカイン(C−X−Cモチーフ)レセプター−4〔CXCR4(ジーンバンク登録番号:AF147204)〕遺伝子、及び
エンドグリン〔ENG(ジーンバンク登録番号:NM 000118)〕遺伝子、
G群:
ヘムオキシゲナーゼ−1〔HMOX1(ジーンバンク登録番号:Z82244)〕遺伝子。 - 下記工程を包含することを特徴とする生理活性物質のスクリーニング方法;
(1)ストレスの生体への負荷、並びに被検物質とストレスの生体への負荷をそれぞれ行う工程、
(2)(1)の生体及びいずれの負荷も行っていない正常生体における遺伝子の発現量をそれぞれ測定する工程、並びに
(3)(2)により得られた遺伝子の発現量を(1)の生体と正常生体とで比較し、下記(a)〜(g)記載の遺伝子の発現パターンから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現パターンを示す被検物質を選択する工程:
(a)請求項2において記載のA群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(b)請求項2において記載のB群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに増加する、
(c)請求項2において記載のC群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時にさらに減少する、
(d)請求項2において記載のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より減少し、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する、
(e)請求項2において記載のE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時に正常生体より増加し、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(f)請求項2において記載のF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に減少する、
(g)請求項2において記載のG群の遺伝子の発現量が、ストレスの生体への負荷時は正常生体と同等であり、被検物質とストレスの生体への負荷時に増加する。 - ストレスがホルボールミリステートアセテート処理であり、遺伝子の発現パターンが(a)〜(d)記載の遺伝子の発現パターンから選択される請求項3記載の生理活性物質のスクリーニング方法。
- ストレスがリポポリサッカライド処理であり、遺伝子の発現パターンが(e)〜(g)記載の遺伝子の発現パターンから選択される請求項3記載の生理活性物質のスクリーニング方法。
- 生体が生物個体又は培養細胞である請求項1〜5いずれか1項に記載の生理活性物質のスクリーニング方法。
- 遺伝子の発現量を該遺伝子から転写されるmRNA量により測定する請求項1〜6いずれか1項に記載の生理活性物質のスクリーニング方法。
- 遺伝子の発現量をDNAアレイを使用したハイブリダイゼーション法により測定する請求項7記載の生理活性物質のスクリーニング方法。
- 請求項8記載の生理活性物質のスクリーニング方法に使用されるDNAアレイであって、請求項2において記載のA〜G群の遺伝子から選択される少なくとも2つの遺伝子もしくはその断片が支持体上のあらかじめ定められた位置に固定化されていることを特徴とするDNAアレイ。
- 請求項2において記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなることを特徴とする遺伝子制御剤。
- ストレスの負荷された生体において、請求項2において記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなることを特徴とする遺伝子制御剤。
- ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した、請求項2において記載のA群及びE群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有してなることを特徴とする遺伝子制御剤。
- ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の増加した、請求項2において記載のB群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなることを特徴とする遺伝子制御剤。
- ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した、請求項2において記載のC群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させる作用を有する化合物を含有してなることを特徴とする遺伝子制御剤。
- ストレスが負荷された生体において、ストレスにより発現量の減少した、請求項2において記載のD群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させる作用を有する化合物を含有してなることを特徴とする遺伝子制御剤。
- 化合物が請求項1〜8いずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られた物質である請求項10〜15いずれか1項に記載の遺伝子制御剤。
- ストレスの緩和もしくは予防を目的とする請求項10〜16いずれか1項に記載の遺伝子制御剤。
- 請求項1において記載の(i)記載の化合物、(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有してなる組成物を生体に投与することにより、請求項2において記載のA群、C群、E群及びF群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする遺伝子の制御方法。
- 請求項1において記載の(i)記載の化合物、(ii)記載の化合物及びそれらの化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、もしくは該化合物を含有してなる組成物を、ストレスの負荷された生体に投与することにより、請求項2において記載のA群、C群、E群及びF群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を減少させ、及び/又はB群、D群及びG群の少なくとも1つの遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする遺伝子の制御方法。
- 請求項1において記載の(i)記載の化合物又は(ii)記載の化合物と少なくとも1つの遺伝子に対し実質的に同等の遺伝子発現制御活性を有する化合物が、請求項1〜8いずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られた物質である請求項18又は19記載の遺伝子の制御方法。
- 請求項1〜8いずれかにおいて記載のスクリーニング方法により得られうる物質。
- 植物由来の物質、担子菌由来の物質又はそれらの誘導体である請求項21記載の物質。
- 多糖類、その分解物又はそれらの誘導体である請求項21又は22記載の物質。
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000303644 | 2000-10-03 | ||
JP2000303644 | 2000-10-03 | ||
JP2001283393 | 2001-09-18 | ||
JP2001283393 | 2001-09-18 | ||
PCT/JP2001/008698 WO2002029099A1 (fr) | 2000-10-03 | 2001-10-03 | Technique de criblage de substance physiologiquement active |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2002029099A1 true JPWO2002029099A1 (ja) | 2004-02-12 |
Family
ID=26601455
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002532667A Pending JPWO2002029099A1 (ja) | 2000-10-03 | 2001-10-03 | 生理活性物質のスクリーニング方法 |
Country Status (7)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20040081618A1 (ja) |
EP (1) | EP1329516A4 (ja) |
JP (1) | JPWO2002029099A1 (ja) |
KR (1) | KR20030040518A (ja) |
CN (1) | CN1478149A (ja) |
AU (1) | AU2001294173A1 (ja) |
WO (1) | WO2002029099A1 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2421269A1 (en) * | 2002-08-09 | 2004-02-09 | President And Fellows Of Harvard College | Methods and compositions for extending the life span and increasing the stress resistance of cells and organisms |
JP5553525B2 (ja) * | 2009-04-17 | 2014-07-16 | 敦生 関山 | 生体負荷の指標剤および生体負荷の測定方法 |
JP5499223B2 (ja) * | 2010-09-28 | 2014-05-21 | サン−ゴバン グラス フランス | 光起電層システムの分析方法 |
JP5710666B2 (ja) * | 2013-02-25 | 2015-04-30 | 敦生 関山 | 生体負荷の指標剤および生体負荷の測定方法 |
WO2020067498A1 (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-02 | 株式会社ダイセル | 前立腺癌の診断のためのデータ取得方法 |
JPWO2020067499A1 (ja) * | 2018-09-28 | 2021-09-02 | 株式会社ダイセル | 前立腺癌の治療薬のスクリーニング又は評価方法 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3193480B2 (ja) * | 1992-09-03 | 2001-07-30 | 石原産業株式会社 | 免疫機能抑制剤 |
WO1999024447A1 (fr) * | 1997-11-11 | 1999-05-20 | Takara Shuzo Co., Ltd. | Medicaments, aliments ou boissons renfermant des substances physiologiquement activees derivees d'algues |
TWI244484B (en) * | 1998-06-09 | 2005-12-01 | Takara Bio Inc | Pharmaceutical composition containing oxy-containing hexacyclic compound |
AU2005400A (en) * | 1999-01-20 | 2000-08-07 | Takara Shuzo Co., Ltd. | Remedies |
US6608032B1 (en) * | 1999-01-20 | 2003-08-19 | Takara Shuzo Co., Ltd. | Medicinal compositions |
WO2001051480A1 (fr) * | 2000-01-13 | 2001-07-19 | Takara Bio Inc. | Agents corrigeant l'erreur de regulation d'expression genique |
-
2001
- 2001-10-03 US US10/398,224 patent/US20040081618A1/en not_active Abandoned
- 2001-10-03 WO PCT/JP2001/008698 patent/WO2002029099A1/ja not_active Application Discontinuation
- 2001-10-03 AU AU2001294173A patent/AU2001294173A1/en not_active Abandoned
- 2001-10-03 CN CNA018199445A patent/CN1478149A/zh active Pending
- 2001-10-03 EP EP01974664A patent/EP1329516A4/en not_active Withdrawn
- 2001-10-03 KR KR10-2003-7004796A patent/KR20030040518A/ko not_active Application Discontinuation
- 2001-10-03 JP JP2002532667A patent/JPWO2002029099A1/ja active Pending
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2002029099A1 (fr) | 2002-04-11 |
KR20030040518A (ko) | 2003-05-22 |
CN1478149A (zh) | 2004-02-25 |
EP1329516A1 (en) | 2003-07-23 |
EP1329516A4 (en) | 2004-11-17 |
US20040081618A1 (en) | 2004-04-29 |
AU2001294173A1 (en) | 2002-04-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1064404B1 (en) | P53-regulated genes | |
US20070092519A1 (en) | Method for diagnosing chronic myeloid leukemia | |
US10385397B2 (en) | Biomarkers for determining an allograft tolerant phenotype | |
TW201619609A (zh) | Fgfr突變基因組於鑑定對於fgfr抑制劑治療有反應之癌症患者的用途 | |
JP2006500948A (ja) | 膵臓癌を診断する方法 | |
JP2009521904A (ja) | 狭窄に関連する一塩基多型、その検出方法および使用 | |
JP6636247B2 (ja) | WT1mRNAの発現量定量方法 | |
EP1358347A2 (en) | Genes expressed in foam cell differentiation | |
TW200418988A (en) | Method for diagnosing prostate cancer | |
JP4879756B2 (ja) | イヌの骨関節炎と関連する遺伝子並びに関連する方法及び組成物 | |
Gras et al. | Changes in gene expression pattern of human primary macrophages induced by carbosilane dendrimer 2G-NN16 | |
WO2016042114A1 (en) | Cxcl14 as a biomarker of hedgehog pathway activity for the diagnosis, prognosis and treatment of idiopathic pulmonary fibrosis | |
JPWO2002029099A1 (ja) | 生理活性物質のスクリーニング方法 | |
US20030166903A1 (en) | Genes associated with vascular disease | |
Kim et al. | Comparison of global transcriptional responses to primary and secondary Eimeria acervulina infections in chickens | |
JP2008512094A (ja) | アテローム性動脈硬化症を評価する方法 | |
KR101914183B1 (ko) | Tmem182 유전자 다형성을 이용한 복부비만의 예후 또는 위험도를 평가하는 방법 및 키트 | |
JP2011211970A (ja) | インターフェロンに対する感受性又は応答性を予測する方法、キット及びマーカー遺伝子 | |
CN114703274A (zh) | Phpt1在预警和/或治疗高原病中的应用 | |
KR101416504B1 (ko) | 인간의 장암 진단용 키트 | |
KR101416502B1 (ko) | 인간의 장암 진단용 키트 | |
KR101416503B1 (ko) | 인간의 장암 진단용 키트 | |
AU2018200024A1 (en) | A method of diagnosing neoplasms | |
JP2006115748A (ja) | Nr2a遺伝子の発現レベルに基づき化学物質が有する発達神経毒性を検出する方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040712 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040712 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080313 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080630 |