JPWO2002025274A1 - 反応検出方法、免疫反応検出方法及び装置 - Google Patents

反応検出方法、免疫反応検出方法及び装置 Download PDF

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Abstract

本発明によれば、高価で大がかりな設備、測定機器を必要とせず、より簡便且つ迅速に物質の反応を検出することができる。本発明の反応検出方法は、電解質溶液中における物質の反応を、電解質溶液の電気伝導率を測定することに基づいて検出する。又、電解質中における抗原と抗体との免疫反応を、電解質溶液の電気伝導率を測定することに基づいて検出する免疫反応検出方法が提供される。更に、被検液中における抗原と抗体との免疫反応を、被検液の温度を測定することに基づいて検出する免疫反応検出方法が提供される。

Description

技術分野
本発明は、物質の反応、より詳しくは、反応生成物、反応状態を簡便に検出でき、試料中の特定物質の検出、定量に有用な反応検出方法及び装置に関するものである。
背景技術
従来、物質の反応は、反応の種類、反応物質の種類などにより様々な方法によって検出されており、各目的に応じた特定の機器、試薬が提供されてきた。例えば、抗原と抗体による免疫学的反応を検出するためには、従来、免疫学的測定法が発達してきた。
以下、本明細書では、電解質中における物質の反応として、抗原と抗体による免疫学的反応(免疫反応)、或いは酵素と生物学的基質による酵素学的反応(酵素反応)など、生物学的分子の関与する反応に関して説明の力点が置かれるが、後述の説明によって明らかにされるように、本発明はこれに限定されるものではない。
疾病の検査、診断といった臨床的観点などから、免疫学的、或いは酵素学的特異性に基づく反応の検出は非常に重要である。例えば、がん患者の体液中には、各種のがんに特異性の高いがん関連物質が存在することが知られている。つまり、細胞のがん化に伴って、例えば癌胎児性蛋白質に代表される、所謂、腫瘍マーカー(腫瘍関連抗原)が過剰に発現することが知られており、腫瘍マーカーは、がんの進行に伴ってその量が増大すると考えられている。又、がん関連物質には、この他、発がん、がんの進展に深く関与すると考えられる遺伝子(がん関連遺伝子)の産物や、ホルモン依存性癌組織において過剰発現される各種ホルモン及びそのレセプターが含まれる。
このようにがんに特異性の高い微量のがん関連物質、或いはこれらの物質に対する抗体などを検出することは、がんの診断、治療方針の決定、予後の検査など、臨床的な様々段階において重要であり、より簡単且つ迅速にこれらを検出することは、がんの早期発見という観点においても極めて重要である。
更に説明すると、従来、腫瘍マーカーなどのがん関連物質或いはこれらの物質に対する抗体を検出、定量するためには、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、酵素免疫測定法(EIA法)が汎用されている。RIA法、EIA法は共に免疫学的特異性に基づく反応を利用して抗原、抗体又は免疫複合物を検出する免疫学的測定方法である。
当業者には周知の通り、例えば腫瘍マーカーなどの抗原物質をRIA法、EIA法によって検出、定量する場合、所謂、サンドイッチ法や競合法が広く用いられる。即ち、サンドイッチ法によれば、例えば検出すべき抗原物質と特異的に反応する抗体(第1抗体)を担体に固相化し、この固相化抗体(第1抗体)と試料とを接触させた後、固相化抗体(第1抗体)と反応(結合)しなかった試料を分離する。次いで、放射性物質(RIA法)や酵素(EIA法)で標識された、固相化抗体(第1抗体)と同じ抗原を認識する標識抗体(第2抗体)を反応させ、こうして得られた免疫複合体を標識物質の測定により検出、定量する。又、競合法によれば、例えば検出すべき抗原物質と特異的に反応する抗体を担体に固相化し、この固相化抗体と特異的に反応する標識された抗原又は抗体と、試料とを固相化抗体に対して競合反応させる。その後、形成した免疫複合体の標識物質を測定することによって試料中の目的抗原を検出、定量する。いずれにしても、最終的な免疫反応量は、RIA法では標識放射性物質の放射活性により、又EIA法では標識酵素の酵素活性を測定することで決定する。酵素活性は、例えば発色剤とされる酵素基質と酵素との反応による、発光強度などにより測定する。
このように、従来の免疫学的測定法では、ビーズやプレートなどの固相化担体、放射性物質や酵素などの標識物、更にEIA法では発色剤など酵素基質を必要とする。
上述のような従来の免疫学的測定法は、それぞれ特異的な免疫学的反応を検出することによって、特異的且つ高感度に目的物質を検出、定量できることから広く用いられている。
しかしながら、例えば上述のRIA法、EIA法では、抗原又は抗体の担体への固相化、標識物の作製などの手順が必要であり、操作が煩雑且つ時間を要するものである。又、これらの方法では、各測定物質ごとに標識物や発色剤(酵素基質)などの専用の試薬が必要である。そして、標識物ごとの専用の測定機器、例えば、RIA法では放射線検出器、EIA法では標識物によって蛍光検出器や発光検出器などを必要とする。一般にこれらの機器は複雑な構成を有し、比較的高価である。
このように、種々の反応を検出するためには、各測定に関して専用の試薬、測定機器を揃えなければならず、非常にコストがかかる。又、種々の試薬、或いは固相化担体などの器具類の廃棄物を増大させることに繋がり、環境の点でも問題となる。
又、例えばRIA法における放射活性の測定などは、特別の施設及び操作者を必要とするため、簡易に行うことはできない。
更に、上述のRIA法、EIA法は、免疫複合体とされる最終反応生成物を検出するものであり、反応状態を経時的に観察することは容易ではない。反応状態を簡易な方法で経時的に検出できれば、例えば、抗原とより反応し易い抗体を簡便に選択することや、抗原と抗体との感受性の有無などを簡便にとらえることができるなどの様々な利点があるにも拘わらず、従来そのような方法はなかった。
上述では、特に免役学的反応について、従来の反応検出方法とその問題点について説明したが、一般に、大がかりな測定機器や、特別の施設、操作者を必要とせず、又試薬類の廃棄物が少なく、迅速且つ簡便に反応を検出できることは、あらゆる反応に関して共通して求められる。又、簡易な構成の機器を用いて、物質の反応状態を経時的に観察できれば様々な分野で有用である。
従って、本発明の目的は、一般には、より簡便に物質の反応を検出することができる反応検出方法及び装置を提供することである。
本発明の他の目的は、高価で大がかりな設備、測定機器を必要とせず、より簡便且つ迅速に、しかもリアルタイムにて物質の反応の経時的反応状態及び/又は反応生成物を検出することができ、例えば試料中の特定物質の検出、定量などに供することのできる反応検出方法及び装置を提供することである。
本発明の他の目的は、免疫学的或いは酵素学的な反応をより簡便に検出することができ、例えば、特定の疾病状態に関する特定物質のより簡便な検出、定量を可能とする反応検出方法及び装置を提供することである。
本発明の他の目的は、簡単な装置を用いて、簡便且つ迅速に電解質溶液中で起こる様々な物質の反応の経時的反応状態及び/又は反応生成物を検出する新たなアプローチを与える反応検出方法を提供することである。
本発明の更に他の目的は、免疫学的反応を極めて簡便に検出することができ、特定の疾病状態に関する特定物質などの試料中の特定物質を極めて簡便に且つ迅速に、しかもリアルタイムに検出、定量することのできる免疫反応測定方法及び装置を提供することである。
発明の開示
上記諸目的は本発明に係る反応検出方法、免疫反応検出方法及び装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、電解質溶液中における物質の反応を、電解質溶液の電気伝導率を測定することに基づいて検出することを特徴とする反応検出方法である。本発明の一実施態様によると、電解質溶液の電気伝導率を経時的に測定することで、前記反応の反応状態及び/又は反応生成物を検出することができる。前記反応としては、(a)免疫反応、(b)酵素反応、又は(c)結合反応、重合反応、分解反応、触媒反応を含むその他の化学反応を検出することができる。又、前記物質としては、(i)精製蛋白質、合成蛋白質を含む蛋白質、(ii)酵素、(iii)前記(i)及び(ii)を含む抗原、(iv)ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む抗体、又は(v)その他の化学物質の関する反応を検出することができる。又、前記反応として、特定物質と、該特定物質と反応する物質との間の反応を検出することによって、試料中の前記特定物質を検出及び/又は定量することができる。前記特定物質は、特定の疾病症状に関与する物質、特定の疾病症状に関与する遺伝子の産物、又はこれらに対する抗体であってよい。その一実施態様によると、前記特定物質は、がん胎児性蛋白質、ホルモン、ホルモンレセプター、膜抗原、がん関連遺伝子産物を含むがん関連物質又はこれら物質に対する抗体であってよい。又、前記試料は、血液、血清、血漿、尿、腹水を含む体液、組織若しくは組織抽出液、又は細胞若しくは細胞抽出液であってよい。
第1の本発明において、一実施態様によると、更に、電解質溶液の温度を測定し、電気伝導率の測定値の温度補正を行う。又、他の実施態様によると、(1)電解質溶液中で物質の反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、(2)前記反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、(3)前記反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持するか、のいずれかを単独又は組み合わせて採用し、電気伝導率の測定値の温度補正は行わない。更に、他の実施態様によると、上記(1)、(2)、(3)のいずれかを単独又は組み合わせて採用して電気伝導率の測定値の温度補正は行なわず、更に、電解質溶液の温度を経時的に測定して、単位温度あたりの電気伝導率の変化量若しくは変化率を測定することにより、電解質溶液中における物質の反応の反応状態及び/又は反応生成物を検出する。
第2の本発明によると、電解質溶液中における抗原と抗体との免疫反応を、電解質溶液の電気伝導率を測定することに基づいて検出することを特徴とする免疫反応検出方法が提供される。
第3の本発明によると、被検液中の抗原と抗体との免疫反応を、被検液の温度を測定することに基づいて検出することを特徴とする免疫反応検出方法が提供される。
第4の本発明によると、反応物質と電解質溶液とを収容するための反応容器と、前記反応容器中の電解質溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率検出手段と、前記電気伝導率検出手段が電解質溶液中における物質の反応に応じて出力する信号を検出する制御手段と、を有することを特徴とする反応検出装置が提供される。本発明の一実施態様によると、反応検出装置は更に、前記反応容器中の電解質溶液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段を有し、前記電気伝導率検出手段の出力に基づく電気伝導率の測定値を、前記温度検出手段の出力に基づいて補正する。又、本発明の他の実施態様によると、反応検出装置は更に、(1)前記反応容器の外部雰囲気を一定温度に維持する手段、(2)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気とを熱的に遮断する手段、(3)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気を同じ温度に維持する手段、のいずれかを単独又は組み合わせて有している。又、他の実施態様によると、反応検出装置は更に、前記反応容器中の電解質溶液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段を有し、前記制御手段は、前記電気伝導率検出手段が電解質溶液中における物質の反応に応じて出力する信号と、前記温度検出手段が電解質溶液中における物質の反応に応じて出力する信号と、に基づき、単位温度あたりの電気伝導率の変化量若しくは変化率に応じた信号を生成する。
又、第5の本発明によると、抗原と抗体とを含む被検液を収容するための反応容器と、前記反応容器中の被検液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段と、前記温度検出手段が被検液中における抗原と抗体との免疫反応に応じて出力する信号を検出する制御手段と、を有することを特徴とする免疫反応検出装置が提供される。
更に、第6の本発明によると、抗原と抗体とを含む被検液を収容するための反応容器と、前記反応容器中の被検液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段と、前記温度検出手段が被検液中における抗原と抗体との免疫反応に応じて出力する信号を検出する制御手段と、を有することを特徴とする免疫反応検出装置が提供される。
発明を実施するための最良の形態
先ず、図1を参照して、本発明の原理を説明する。図1(a)に示すように、容器3に収容された電解質溶液S中では、電解質が陽イオン4aと陰イオン4bとに解離している。この電解質溶液Sの電気伝導率を検出する場合、電解質溶液Sに、電気伝導率計1の一対の電気伝導率測定電極(電気伝導率測定用セル,以下、「セル」と呼ぶ。)2(2a、2b)を浸漬して、この電極対2a、2bに電気的に接続された電気伝導率計測定用電源(交流電源)6をONとする。これにより、電極対2a、2bの表面は+極と−極に荷電し、電極対2a、2b上の+極には電解質の陰イオン4bが移動し、−極には電解質の陽イオン4aが移動し、その結果電流が流れる。この電流を電極対2a、2bに接続された電流計5によって測定して、電解質溶液Sの電気伝導率を算出する。この状態で、電解質溶液Sの電気伝導率は、溶液中の電解質濃度に依存する。
一方、この電解質溶液Sに、電解質溶液中で反応する物質(反応物質)を添加する場合について考える。図1(b)に示すように、例えば2種類の物質7、8を添加し、この2種類の物質が結合することによって、反応生成物(複合体)9が生成される場合、電解質溶液Sの電気伝導率は反応生成物9が生成されることで変化し、この場合、電気伝導率は低くなる。特定の理論のみに束縛されることを意図するものではないが、本発明者の検討によると、これは2種類の物質7、8が結合して反応生成物(複合体)9が生成されたことによって、イオン(陽イオン、陰イオン)4a、4bの移動が妨げられるためである。その結果、電流が流れ難くなり(抵抗が大きくなる)、電気伝導率は低くなる。
又、電解質溶液中における物質の反応として、例えば2つ以上の物質の反応によっていずれかの物質が分解されたり、或いは1つの物質が分解することによりより小さい物質になるような場合、イオンの移動がより容易となることによって(抵抗が低くなる)、上述とは反対に電気伝導率はより高くなる。
ここで、国際公開番号WO96/30749には、電解質溶液中に存在する非電解質の濃度を、電気伝導率の測定に基づいて求める方法が記載されている。例えば、電解質として塩化ナトリウムを主成分として含む電解質溶液に、非電解質であるグルコースを順次添加すると、それに伴って電解質溶液の電気伝導率が変化する(低くなる)ことが示されており、これにより、予め同一系にて求めた非電解質の濃度と電解質溶液の電気伝導率の相関関係を利用して、電解質溶液に添加する非電解質量、即ち、濃度を求めることが開示されている。
しかし、この公知技術では、濃度測定の対象である非電解質は電解質溶液中に単独で存在し、且つ、電解質中での反応又は相互作用を伴わない。つまり、電解質溶液中における物質の反応を検出するものではない。
このように、本発明者は電解質溶液中における物質の反応の反応状態及び生成された反応生成物に応じて、電解質溶液中のイオンの移動の仕方が変化するという新規な知見に基づき、電解質溶液の電気伝導率を測定することによって電解質溶液中における物質の反応を検出し得ることを見出した。
電解質溶液中での物質の反応に伴う電解質溶液の電気伝導率の変化を検出することにより、例えば、2つの物質間の結合により生成した複合体や、物質の反応により生成した分解生成物など、物質の反応による反応生成物を検出することができる。
電解質溶液の電気伝導率の変化を経時的に測定することによって、電解質溶液中における物質の反応状態を経時的に検出することができる。これによって、結合反応、分解反応の進行状況を簡便に電気的にとらえることができる。これにより、物質の反応における経時的な反応状態を分析するのに有用であるばかりではなく、リアルタイムに反応を観察できることから、例えば、免疫反応において抗原とより反応し易い抗体を簡便に選択したり、抗原と抗体との感受性の有無を簡便に電気的にとらえることができる。
本発明によれば、試料中の特定物質を検出すること、即ち、試料中に特定物質が存在する否かを確認することができる。試料中に存在する特定物質を検出するには、その特定物質に特異的に反応する物質を用い、両物質間の反応(反応状態、反応生成物)を検出すればよい。
又、本発明によれば、試料中の特定物質の定量を行うことができる。予め同一系において、濃度を測定すべき特定物質と、この特定物質に特異的に反応する物質との反応に関し、電解質溶液の電気伝導率の測定結果の特定物質の量(濃度)への依存性を予め求めておく。例えば、濃度を測定すべき特定物質に特異的に反応する物質の濃度を一定とし、濃度測定対象の特定物質の濃度を種々変化させて、特定物質とこれに特異的に反応する物質との反応における、電気伝導率の測定結果の特定物質の濃度への依存性を検量線として求めておく。
検量線は、各反応の特性によって、適宜作成することができるが、例えば、反応開始から所定時間後の電気伝導率変化量と特定物質の濃度との関係、反応速度(反応の初速度など、経時的な電気伝導率の変化率)と特定物質の濃度との関係、電気伝導率変化が飽和した時点での電気伝導率値と特定物質の濃度との関係などの相関関係を検量線として予め求めることができる。当業者は、目的の反応に最適な検量線を選択することが可能である。或いは、電気伝導率の測定値を所定の閾値(カットオフ値)と比較することにより、電解質溶液中の特定物質の量(濃度)を評価することができる。この閾値も上記検量線と同様、各反応の特性によって、例えば、上記反応速度(反応の初速度など、経時的な電気伝導率の変化率)などとして、適宜設定すればよい。ここでは、これら特定物質の量の評価若しくは比較、或いはより詳しい定量を含めて定量という。
本発明において、本質的に検出対照となる物質の反応は特に限定されるものではない。反応物質は、電解質溶液中にて反応する物質であれば、種類及びその数は問わない。例えば、少なくとも2つの物質へと分解する電解質中における物質の分解反応、電解質溶液中で反応する少なくとも2つの物質間の結合反応を検出することができる。当然、反応物質はより多くても良い。上述の原理から明らかなように、所望の精度にて電気伝導率を測定し得る濃度の電解質溶液中で反応が起こる必要がある。
例えば、免疫学的反応、酵素学的反応など、生物学的分子の関与する反応は、本発明の典型的な検出対照である。反応物質としては、例えば、精製蛋白質、合成蛋白質、酵素、抗原、抗体などが挙げられる。なかでも抗原と抗体による免疫反応は最も典型的な本発明の検出対象である。
又、電解質溶液中にて起こり得る反応であれば、重合反応、結合反応、分解反応、触媒反応を含むその他の化学反応を検出することができる。つまり、物質と物質が反応することによって、より大きな物質が生成される可能性のある反応(重合反応、結合反応)、或いは光、紫外線、温度などによる物質の分解や、2つ以上の物質間の反応にていずれかが分解することによってより小さい物質が生成される可能性のある反応(分解反応)、更には、これらの反応に、その反応効果を上げる物質を加えることによって反応速度が上昇するような反応(触媒反応)の検出を行うことができる。又、これらの反応を検出することによる試料中の特定物質の検出、定量を行うことができる。
特に、本発明によれば、特定の疾病状態に関する特定物質と、これと反応する物質との間の反応を検出し、試料中に存在する特定物質を検出、定量することができる。より詳しくは、特定の疾病状態に関する特定物質とは、生体内で特定の疾病状態に特異的に発現或いは過剰発現する物質、特定の疾患に対する特異的な遺伝子の部分ペプタイドなどとされる特定の遺伝子産物、或いはこれらの物質に対して生産される抗体などである。
例えば、特定の疾病状態はがんであり、がんに特異的な特定物質、即ち、がん関連物質としては、α−フェトプロテイン(AFP)、塩基性胎児蛋白(BFP)、癌胎児性抗原(CEA)などの癌胎児性蛋白質に代表される腫瘍マーカー(腫瘍関連抗原)、ホルモン依存性癌組織において過剰発現されることが知られている各種ホルモン及びそのレセプター、がんに深く関与すると考えられるその他の遺伝子の産物が含まれる。
本発明によれば、これらがん関連物質、或いはこれらの物質に対して生体内で生産される抗体を、簡便に検出、定量することができる。
例えば、がん抑制遺伝子p53蛋白の分解酵素として、発がん、がんの進展に重要な役割を演じているがん遺伝子産物MDM2(Murine Double Minute 2)蛋白に対する血中自己抗体、ホルモン依存性癌組織での過剰発現が高頻度に認められるホルモン及びそのレセプター(エストロゲンレセプター(ER)、アンドロゲンレセプター(AR))の血中自己抗体の検出などが挙げられる。
これらのがん関連物質、がん関連遺伝子産物は、細胞核内因子のため、細胞核外へ容易に移行しないが、発がん初期には宿主免疫反応により、がん細胞が攻撃破壊され、その結果、核内因子が細胞外へ移行し、体液性抗体(例えば、MDM2蛋白自己抗体、ER蛋白自己抗体、AR蛋白自己抗体)が担癌宿主血中に生ずることが予測される。しかも早期に自己抗体が出現することが予測されることから、それらの血中自己抗体の検出は、がんの早期診断に有用性が期待できる。
特定物質の検出、定量を行うことのできる試料は特に限定されない。上述のように、特定の疾病状態に関する特定物質の検出、定量を行う場合、試料は、典型的には分析のために哺乳動物から採取された血液、血清、血漿、尿、腹水を含む体液、組織若しくはその抽出液、又は細胞若しくはその抽出液である。より好ましくは、分析のために採取されたヒトの血液、血清、血漿、尿、腹水を含むヒトの体液、ヒトの組織抽出液、ヒトの細胞抽出液などである。これによって、ヒト患者の体液中の特定物質、特に、特定の疾病状態に関する物質を検出、定量することができ、ヒト患者が特定の疾病に罹患しているかどうか、或いはその疾病の状態を診断するのに有用である。又、特定の組織若しくはその抽出液、細胞若しくはその抽出液を試料とすることで、検出する特定反応の臓器特異的反応性などを簡易に測定することができ、非常に有用である。
試料中に存在することが疑われる抗原を検出する場合には、試料と、その抗原に特異的に反応する抗体とを電解質溶液中で反応させ、両者の反応状態、反応生成物(免疫複合体)を電気伝導率の測定に基づいて検出すればよい。一方、試料中の抗体を検出するには、この抗体と特異的に反応する抗原を用い、両者の反応状態、反応生成物(免疫複合体)を電気伝導率の測定に基づいて検出すればよい。反応に用いる抗原は、精製抗原、化学合成抗原、遺伝子組み替え抗原など、抗原となり得る物質であれば良い。又、反応に用いる抗体は、市販の抗体であっても、抗原に特異的に作製した精製抗体であってもよい。更に、その抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。
本発明において、電解質溶液は特に限定されるものではなく、電解質の種類、その数は問わない。但し、電解質溶液は、その中で行われる反応に鑑みて選択されるものである。つまり、電解質溶液の電気伝導率を測定するという観点からは、電解質のイオン解離常数が高いものを用いる方がイオンの移動の変化をより認め易い。又、電解質溶液中において反応物の安定性を保持する必要がある。これらを考慮して電解質、又その濃度を選択することが重要である。
電解質溶液としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンを含む水溶液を好適に用いることができる。
例えば、免疫学的反応を検出する場合、生理食塩水(0.15MのNaCl水溶液)、塩化カリウム溶液(例えば、0.15MのKCl水溶液)を好適に用いることができる。この場合、電解質溶液はpH6.0〜pH8.0であることが好ましく、より好ましくはpHは7.0前後とされる。
酵素反応や上述したようなその他の化学反応(重合反応、結合反応、分解反応、触媒反応)において、酸性領域又はアルカリ性領域に至適pHがある場合は、それぞれ電解質溶液或いはpH調整試薬として、限定されるものではないが塩酸(HCl水溶液)又は水酸化ナトリウム(NaOH水溶液)などを用いることができる。
又、本発明において、電気伝導率を測定するために使用する電気伝導率計は、市販の計器を特に制限なく用いることができる。又、セルについても、市販のものを特に制限なく用いることができる。当然、所望の検出精度を得るために、所定の性能の電気伝導率計を用いるべきである。
以下、本発明の幾つかの実施例を、具体的な測定結果を参照して更に詳しく説明する。
実施例1
本実施例では、精製抗原と、この精製抗原に特異的に反応する抗体とによる免疫反応について、経時的な反応状態及び免疫複合物を電気伝導率の測定に基づいて検出する。
抗原には、腫瘍マーカーとして公知であり、斯界にて汎用されている分子量約55,000のBFP(塩基性胎児蛋白質)(以下、「BFP抗原」と呼ぶ。)の精製標品を用いた。BFP抗原の精製標品(以下、「標準BFP抗原」と呼ぶ。)は、ヌードマウス移植ヒト肝癌細胞から自家精製したものを用いた。標準BFP抗原の精製は、当業者には周知の一般的な操作に従い、次のようにして行った。即ち、ヌードマウス移植ヒト肝癌細胞のホモジネートを、ポリクローナルBFP家兎抗体によるアフィニティークロマトグラフィーにかけ、次にSephadexG−150によるゲル濾過カラムクロマトクラフィーを行い、Lowry Folin法にて蛋白濃度を定量した。EIA法とウクタロニー法にて蛋白濃度あたりのBFP抗原活性を確認し、その結果、標準BFP抗原の精製純度は99.99%であった。以下の実施例において、標準BFP抗原としては全て同じものを用いた。
抗体としては、ヒト肝癌細胞から精製した標準BFP抗原を免疫原として細胞融合法により自家作製したマウスモノクローナル抗体(以下、「K1抗体」と呼ぶ。)(分子量約150,000)を用いた。K1抗体の作製は、当業者には周知の一般的な手順に従い、次のようにして行った。ハイブリッドセルを限界希釈法によりクローニングし、クローン化したハイブリッドセルをBALB/cマウス1匹あたり10個腹腔内接種し、約10日後腹水としてBFP抗体を採取した。腹水を硫安塩析後、DEAEセルロースを用いてイオン交換クロマトグラフィーにより精製し抗体を得た。以下の実施例において、K1抗体としては全て同じものを用いた。
電解質溶液としては、生理食塩水(0.15MのNaCl水溶液)を用いた。特記しない限り、電解質溶液はpH7、又反応開始時において液温は室温(約26℃)とした。尚、溶液中の電解質濃度が低すぎると電気伝導率そのものの測定ができないので、電解質濃度は電気伝導率の測定が可能な程度に高いことが必要であるが、本実施例にて用いた生理食塩水(0.15M)は、本発明の方法を実施するに際して何ら問題はない。以下の実施例において、電解質溶液としては全て同じものを用いた。
電気伝導率計としては、東亜電波工業(株)(現東亜ディーケーケー(株))製のCM30Vディジタル電気伝導率計(以下、単に「電気伝導率計」と呼ぶ。)を用いた。斯かる電気伝導率計は、セル(電気伝導率測定電極対)を備えており、このセルに交流電圧(ピーク間電圧)Vp−p=約100mVを印加し、電極間に流れる電流量を測定することで、電気伝導率を算出する。
尚、電気伝導率は溶液の温度により変化する。本実施例にて使用した電気伝導率計は、溶液温度をサーミスタにで検出して溶液温度係数を設定して液温変化による電気伝導率の変化を自動補正する自動温度補償(ATC)機能を有していた。サーミスタはセルに内蔵されており、1/10℃の精度を有していた。以下の実施例において、電気伝導率計としては全て同じものを用いた。
更に、以下の実施例において、特記しない限り、反応容器などその他の測定器具類も本実施例と同じものを共通して用いている。
測定手順
小バイアル瓶(容量12ml)に10mlの生理食塩水を用意し、この小バイアル瓶に、電気伝導率計のセルを浸漬する。次いで、この小バイアル瓶に、生理食塩水にて濃度0.25μg/mlに調製したK1抗体をマイクロシリンジで2μl(絶対量0.5ng)加えて攪拌する。その後、この小バイアル瓶に、生理食塩水にて濃度0.6μg/mlに調製した標準BFP抗原をマイクロシリンジで2μl(絶対量1.2ng)添加する。この反応溶液を攪拌した後、セルを反応溶液に浸漬したまま経時的に電気伝導率を測定した。
同様に、生理食塩水にて濃度0.3μg/ml、0.15μg/mlに調製した標準BFP抗原の2μl(絶対量0.6ng、0.3ng)を、それぞれ上述と同様にしてK1抗体(絶対量0.5ng)を含む生理食塩水にマイクロシリンジで添加して攪拌し、その後電気伝導率を経時的に測定した。
又、標準BFP抗原の代わりに、癌胎児性抗原(CEA)(インターナショナル・エンザイムズ(International Enzymes)社より入手)(絶対量0.5ng)をK1抗体(絶対量0.5ng)を含む生理食塩水に添加して、その後電気伝導率を経時的に測定した。
更に、K1抗体(絶対量0.5ng)、標準BFP抗原(絶対量0.3ng、0.6ng、1.2ng)をそれぞれ単独で生理食塩水(0.15M)に存在させて、電気伝導率を経時的に測定した。
結果
K1抗体(0.5ng)に対して各濃度の標準BFP抗原(1.2ng、0.6ng、0.3ng)をそれぞれ反応させた際の、各経過時間における電気伝導率の測定値を図2に示す。又、K1抗体(0.5ng)と癌胎児性抗原(CEA)(0.5ng)とを含む生理食塩水の各経過時間における電気伝導率を図3に示す。更に、K1抗体(0.5ng)、BFP抗原(0.3ng、0.6ng、1.2ng)がそれぞれ単独で存在する生理食塩水の、各経過時間における電気伝導率を図4に示す。
尚、図2〜図4において、電気伝導率の測定値は、反応開始後1分後の電気伝導率をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率からこのブランク値を差し引いた電気伝導率の変化量として示した。
図2に示すように、K1抗体と標準BFP抗原との反応では、反応時間の経過に伴って電気伝導率がより小さい値へと変化することが分かる。
抗原と抗体の免疫反応で免疫複合体が形成されることによって、電解質溶液中のイオン、即ち、本実施例では生理食塩水のNa、Clの移動が妨げられ、電気伝導率の低下が引き起こされることが分かる。このように、本発明によれば、電解質溶液の電気伝導率の変化を測定することによって、反応生成物による電解質溶液中のイオンの移動の仕方の変化をとらえ、斯かる反応に特異的な反応生成物を検出することができる。
又、本実施例の反応条件においては、標準BFP抗原の濃度が低い方(0.3ng)が、濃度が高い時(1.2ng)よりも電気伝導率はより低い方へ変化した。これは、特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、一定量のK1抗体(0.5ng)に対して、標準BFP抗原の量が0.3ngの時の方が、1.2ngの時よりもよりも反応が起こり易いことを反映し、抗原と抗体とによる免疫反応では、各々の量的な適合性を示す結果と考えられる。
このように、反応溶液の電気伝導率を測定することによって電解質溶液中の標準BFP抗原とK1抗体の両者間に特異的な免疫反応の反応状態を、電気伝導率として経時的にとらえることが可能である。K1抗体と標準BFP抗原の反応の、標準BFP抗原の濃度への依存性など、電解質溶液中で起こる反応の反応特性を簡易に測定することができる。
更に説明すると、図3及び図4に示す結果をも参照すると明らかなように、本実施例の測定成績は、
(1)標準BPF抗原とK1抗体の免疫反応は、K1抗体の濃度が一定である時には標準BFP抗原の濃度に依存するという反応状態(反応特性)が電気伝導率の変化としてとらえられること、
(2)電気伝導率が時間経過と共により低い値を示す傾向が認められること、
(3)標準BFP抗原の代わりに、K1抗体に対して全く反応性を持たないことが分かっているBFP抗原以外の抗原、即ち、本実施例では癌胎児性抗原(CEA)を添加しても電気伝導率が経時的に低下することはなく、又電気伝導率変化の抗原濃度依存性も認められないこと(図3)、
(4)更には、同様の電解質溶液中でK1抗体、標準BFP抗原を各々単独で存在させても、電気伝導率が経時的に低下する傾向を示さないこと(図4)、
などを示している。
実施例2
次に、電解質溶液中における免疫反応を検出する他の実施例を説明する。
測定手順
本実施例では、予め約70mg蛋白質/mlの牛胎児血清(FCS)をマイクロシリンジで2μl(絶対量にて蛋白質量約140μg)、生理食塩水10ml中に加えておき、実施例1の測定手順と同様にして、K1抗体(0.5ng)と濃度の異なる標準BFP抗原(0.6ng、1.2ng、2.4ng)との各反応における電気伝導率変化を経時的に測定した。
牛胎児血清は、後述の実施例において被検血清中のBFP抗原量を評価、定量する際に反応系に加えられる量に相当する蛋白質量とするために用いた。牛胎児血清はK1抗体に対して反応性を持たないことが分かっている。
結果
結果を図5に示す。図5において、電気伝導率の測定値は、反応開始後1分後の電気伝導率をブランク値として、各経過時間における電気伝導率からこのブランク値を差し引いた電気伝導率の変化量として示した。又、各反応時間における標準BFP抗原の量ごとの電気伝導率の変化量を図6に示した。
図5及び図6に示すように、各反応において、反応時間の経過に伴って電気伝導率が低下することが分かる。
又、図5から分かるように、反応系に牛胎児血清を添加した場合、標準BFP抗原量(濃度)が多いほど、電気伝導率の変化量(低下)が大きくなる。これは、反応系に牛胎児血清を添加したことにより、血清蛋白の抵抗の中でのBFP抗原とK1抗体との反応状態を反映しているものと考えられる。このような状態では、BFP抗原が多いほどK1抗体との反応性が良いことを表している。
上述の実施例1、2の説明から明らかなように、本発明によれば、高価で大がかりな機器を必要とせず、極めて簡便に、電解質溶液中における物質の反応を検出することができる。又、本発明によれば、例えば従来の免疫学的測定法(RIA法、EIA法)のように最終的に形成された免疫複合体を検出するだけではなく、電解質溶液中における物質の経時的反応状態、反応生成物を検出することができる。
又、上述から明らかなように、抗原と抗体による免疫反応を経時的に測定することができるので、例えばある抗原とより反応し易い抗体若しくはある抗体とより反応し易い抗原の選択、或いは抗原と抗体との感受性の有無の測定などを極めて簡便且つ迅速に、しかもリアルタイムにて行うことができる。
更に、本発明によれば、従来の免疫学的測定法(RIA法、EIA法など)のように、抗原又は抗体の担体への固相化、標識物の作製などの操作を必要せず、電解質溶液に反応物質を直接加えることによって、迅速且つ簡便に免疫反応を検出できる。これによって、標識物質、発色剤(酵素基質)などの試薬や、固相化担体などの廃棄物を出さずに、極めて簡単な装置を用いて免疫反応を検出することができる。
実施例3
本実施例では、試料中の特定物質として、血清中のBFP抗原の存在を、BFP抗原と特異的に反応して免疫複合体を形成する抗BFPマウスモノクローナル抗体(K1抗体)を用いて検出する。
更に、本実施例では、血清中のBFP抗原量をK1抗体を用いて評価、定量する。血清中に含まれるBFP抗原は、その量に対応してK1抗体と反応する。従って、予め同一系にてBFP抗原(量)濃度に依存するBFP抗原とK1抗体との反応状態(反応特性)を求めておくことで、反応溶液の電気伝導率の経時的な測定により血清中に含まれるBFP抗原を評価、定量することができる。
本実施例では、被検として−20℃で冷凍保存した健常人及びがん患者(肝癌患者)のヒト血清を用いた。本実施例にて用いた健常人及びがん患者の血清は、日本化薬(株)製「ラナザイムBFPプレート」を用いた標準的なEIA法にて測定して、それぞれ24.8ng/ml、540ng/mlのBFP抗原を含んでいた。
尚、「ラナザイムBFPプレート」は、2種類の異なるマウスモノクローナルBFP抗体(K1抗体と5C2抗体)を用い、プレートに固相化したK1抗体とワサビペルオキシダーゼ標識5C2抗体との間にBFP抗原をサンドイッチするEIA法である。この方法では、両抗体でサンドイッチされたBFP抗原を尿素過酸化水素を基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて発色させ、波長405nmの吸光度を測定し、標準BFP抗原の検量線から被検血清中のBFP抗原を定量測定する。ここで、BFP抗原としてはヌードマウス移植肝癌から精製した抗原を用いている。
測定手順
測定手順は、実施例1、2と同様である。即ち、生理食塩水10ml中にK1抗体をマイクロシリンジで2μl(絶対量にて0.5ng)加えて攪拌する。この溶液に、室温に戻した被検血清(約70mg蛋白質/ml)をマイクロシリンジで2μl(絶対量にて蛋白質量約140μg)加えて撹拌する。この反応溶液にセルを浸漬したまま経時的に電気伝導率を測定した。
結果
K1抗体を含む生理食塩水に被検血清(健常人、がん患者)を添加した際の各経過時間における電気伝導率の測定値を図7に示す。図7において、電気伝導率の測定値は、反応開始後1分後の電気伝導率をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率から、このブランク値を差し引いた電気伝導率の変化量として示した。
図7に示すように、健常人及びがん患者の被検血清の添加によって、それぞれK1抗体を含む生理食塩水の電気伝導率は時間経過と共に低下した。
このように、BFP抗原に特異的に反応するK1抗体を用い、免疫複合体が生成されることにより変化する電解質溶液(生理食塩水)の電気伝導率を経時的に測定することによって、極めて簡単に試料(健常人及びがん患者の被検血清)中のBFP抗原を検出、即ち、そのの存在を確認することができる。
又、図7の結果から明らかなように、健常人の被検血清とがん患者の被検血清とでは、明らかに反応性に大きな違いがあった。即ち、がん患者の被検血清とK1抗体との反応における経過時間あたりの反応性は、健常人の被検血清とK1抗体との反応におけるものよりも大きい。
一般に、BFP抗原は健常人の体液中にも存在し、各種がん患者の体液中では健常人よりも高い値を示すことが知られている。BFP抗原量の所定のカットオフ値における健常人及びがん患者の陽性率が分かっており、カットオフ値75ng/ml(EIA法)の時の陽性率は、健常人で5%、がん患者では60〜80%である。
従って、例えば、血清中の所定濃度、例えば上述のカットオフ値75ng/mlに相当する量の標準BFP抗原とK1抗体との反応(基準反応)に伴う反応溶液の電気伝導率の経時変化を予め同一系において求めておく。そして、被検血清についてK1抗体との反応に伴う反応溶液の電気伝導率の経時変化を測定して、経過時間あたりの反応性を、予め求めた基準反応の反応性に対して比較することで、試料中に所定値以上BFP抗原が存在するか否かを簡易に、しかもリアルタイムにて評価することができる。
上述のように、本実施例では、健常人、がん患者の血清中には、それぞれEIA法にて24.8ng/ml、540ng/mlのBFP抗原が含まれている。つまり、反応系に加えられた被検血清2μl中には、健常人血清では約50pg、がん患者では約1ngのBFP抗原が存在する。
従って、上述のように健常人血清とがん患者血清とで、K1抗体に対する反応性に明らかな差が観察されていることから、反応溶液の電気伝導率を経時的に測定することによって約50pg〜1ngの微量のBPF抗原を極めて簡便に検出し得ることが分かる。又、少なくとも50pg〜1ngのBFP抗原が存在すれば、BFP抗原とK1抗体との免疫反応の挙動を極めて簡便に経時的にとらえることができ、BFP抗原を含む試料とK1抗体との反応性の違いを極めて簡便且つ迅速に、しかもリアルタイムにて測定して、試料中のBPF抗原量を評価することができる。
更に、被検血清中のBFP抗原をより詳しく定量した。本実施例では、実施例2の結果、即ち、反応系に添加する被検血清分相当の蛋白質として牛胎児血清(FCS)を予め生理食塩水中に加えて(絶対量にて蛋白質量約140μg)、K1抗体とBFP抗原とを反応させた実施例2の結果から、被検血清中のBFP抗原の定量に用いる検量線(標準曲線)を得た。
検量線の作成には、抗原と抗体との反応性、反応条件及び測定範囲の選択などにより、既知濃度の抗原と抗体との反応を利用して、最も適した検量線を選択すればよい。
図5の結果について、横軸に標準BFP抗原濃度、縦軸に電気伝導率の変化(マイナス値)をとると、図6に示すように、標準BFP抗原の量と電気伝導率の変化量との関係が得られる。本実施例では、この関係は、反応時間の経過に伴って直線性を示す傾向にあり、反応経過時間が30分以上になると、高濃度の抗原の反応性がより大きくなる傾向を示した。
例えば、上述の図6に示す関係中、直線性を有する反応経過時間40分における標準BFP抗原濃度と電気伝導率との関係を検量線として用いることにより、本測定法によるがん患者血清中のBFP抗原量は約700ng/mlと算出され、EIA法による540ng/mlに近い値を得ることができた。一方、健常人血清については、がん患者血清のほぼ1/20の量のBFP抗原しか存在しないことから、健常人血清中のBFP抗原量に対しK1抗体が過剰になっている状態を反映した結果となり、EIA法による値との一致性は、がん患者血清の場合と比べて低かった。より低濃度の血清BFP測定のためには、抗原と抗体の比率を下げ、より適した検量線を選択すればよい。
上述のように健常人血清とがん患者血清とで、K1抗体との反応性に明らかな差があり、経過時間あたりの反応性に明らかな差が生じている。従って、濃度既知の標準BFP抗原とK1抗体との反応と、被検血清とK1抗体との反応とで経過時間あたりの反応性を比較する、所謂、Rate−Assayにより試料中のBFP抗原量を定量することが可能であると考えられる。
実施例4
次に、試料中の特定物質を検出する他の実施例として、がん関連遺伝子産物として知られているMDM2蛋白に対する血中自己抗体を検出した。
先ず、生理食塩水中でのMDM2抗原と異なる量(濃度)の精製MDM2抗体との各反応に伴う電気伝導率変化を経時的に測定した。MDM2抗原としては、N末端側20merの合成MDM2ペプタイド抗原(旭テクノグラス(株)より入手)(分子量約1,991)を用いた。又、精製MDM2抗体としては、この合成ペプタイド抗原に対するポリクローナル家兎抗体(サンタクルズ・パイオテクノロジー・インコーポレイテッド(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)より入手,以下、「標準MDM2抗体」と呼ぶ。)(分子量約150,000)を用いた。
次に、−20℃で冷凍保存した健常人、胃癌患者及び大腸癌患者の血清中のMDM2自己抗体の検出を行った。MDM2抗原は上述と同じものを用いた。
測定手順
測定手順は、実施例1〜3と同様である。即ち、先ず、生理食塩水10ml中にMDM2抗原(絶対量200ng)を加えて攪拌する。その後、この溶液に標準MDM2抗体(絶対量6.25ng、12.5ng、25、0ng)を添加して攪拌した後、セルを反応溶液に浸漬したまま経時的に電気伝導率を測定した。
ここで、実施例2と同様、被検血清中のMDM2自己抗体を検出する際の反応条件、即ち、反応系の蛋白量と適合させるために、MDM2抗原と標準MDM2抗体との反応系には、牛胎児血清(FCS)(約70mg蛋白/ml)を2μl(絶対量約140μg)添加した。
一方、MDM2抗原(絶対量200ng)を含む生理食塩水10ml中に、それぞれ室温に戻した健常人、胃癌患者、大腸癌患者の被検血清(約70mg蛋白質/ml)をマイクロシリンジで2μl(絶対量にて蛋白質量約140μg)加えて攪拌した後、セルを反応溶液に浸漬したまま、経時的に電気伝導率を測定した。
結果
MDM2抗原と標準MDM2抗体との反応における生理食塩水の各経過時間における電気伝導率の測定値を図8に示す。図8において、電気伝導率の測定値は、生理食塩水の電気伝導率からの電気伝導率の変化量として示した。又、MDM2抗体濃度ごとの電気伝導率の変化量を図9に示した。
図8及び図9から分かるように、MDM2抗原と、これに特異的に反応する標準MDM2抗体の抗原抗体反応により免疫複合体が生成し、時間経過と共に電気伝導率が低下する結果が得られた。又、時間経過に伴う電気伝導率の変化量は、MDM2抗体の量が多い程大きく、一定量のMDM2抗原に対して、MDM2抗体の濃度依存性が検出された。
又、MDM2抗原を含む生理食塩水に健常人の被検血清、がん患者(胃癌患者、大腸癌患者)の被検血清を添加した際の各経過時間における電気伝導率の測定値を図10に示す。図10において、電気伝導率の測定値は、生理食塩水の電気伝導率からの変化量として示した。
図10から分かるように、健常人の被検血清、がん患者(胃癌患者、大腸癌患者)の被検血清では、それぞれMDM2抗原との反応における電気伝導率の経時的変化には明らかな違いが認められる。
このように、反応溶液の電気伝導率を経時的に測定することで、ヒトの血中に存在するMDM2自己抗体の存在を確認することができる。又、被検血清とMDM2抗原の経過時間あたりの反応性を比較することにより、健常人とがん患者との明確な差を簡易に検出することができる。これにより、例えば所定の閾値(カットオフ値)と比較することにより、試料中のMDM2自己抗体の量を簡易に、しかもリアルタイムに評価することができる。当然、実施例3と同様、所定の検量線を利用することにより、被検血清中のMDM2自己抗体をより詳しく定量することも可能である。
例えば、図8の結果について、横軸にMDM2抗体の濃度、縦軸に電気伝導率の変化(マイナス値)を示した、図9から、MDM2抗体の量と電気伝導率の変化量との関係が得られる。実施例3と同様に、MDM2抗原と標準MDM2の反応の、標準MDM2抗体の濃度への依存性として、例えばこの関係を試料中のMDM2自己抗体の定量のための検量線として利用することができる。反応60分における検量線から、胃癌患者血清中のMDM抗体量は約6.25μg/ml、大腸癌患者血清中のMDM抗体量は約12.5μg/mlであることが分かる。一方、健常人では、がん患者と比較してMDM抗体量は少量であり、約3μg/ml以下の結果を示した。
以上、実施例3、4の説明から明らかなように、本発明によれば、電解質溶液の電気伝導率を測定することによって、極めて簡便に試料中の特定物質を検出、定量することができる。従って、極めて簡便且つ迅速に、試料中に存在する特定の疾病状態に関する物質、例えばがん関連物質、癌関連遺伝子産物、又、これらに対して生産された抗体を、極めて簡便且つ迅速に検出、定量することができる。
従って、特定の疾病状態に関係する物質として、例えばヒト血清などの試料中に存在する上記がん関連物質、がん関連遺伝子産物、又、これらに対する抗体を簡便且つ迅速に検出、定量することによって、がんの診断、検査、治療方針の決定など臨床的な様々な段階において極めて有用である。
又、本発明によれば、電解質溶液に反応物質を直接加えることによって特定物質の検出、定量を行うことができるので、廃棄物を低減し、極めて簡単な装置を用いて試料中の特定物質の検出、定量を行うことができる。
実施例5
次に、電解質溶液中における物質の反応の他の実施例として、2つの物質の反応で一方の物質が分解してより小さい反応生成物を生成する反応を検出する。
本実施例では、K1抗体と酵素ペプシンによるK1抗体の酵素消化反応を検出する。本実施例では検出対象反応は、酵素学的反応である。
ペプシンは、豚胃粘膜(Hog Stomach mucosa)由来のもの(3,520Unit/mg蛋白質,シグマ(SIGMA)社から入手)(分子量約34,700)を用いた。
測定手順
小バイアル瓶(容量12ml)に10mlの生理食塩水を用意し、この小バイアル瓶にセルを浸漬する。次いで、この小バイアル瓶に、生理食塩水にて濃度2.5μg/mlに調製したK1抗体をマイクロシリンジで20μl(絶対量50ng)加えて攪拌する。その後溶液に生理食塩水にて濃度1mg/mlに調製したペプシン(3,520Unit/mg蛋白質)をマイクロシリンジで5μl(即ち、17.6Unit/5μg蛋白質)添加する。この反応溶液を攪拌した後、セルを反応溶液に浸漬したまま、経時的に電気伝導率を測定した。
結果
K1抗体とペプシンとによる酵素消化反応の各反応経過時間における電気伝導率の測定値を図11に示す。図11において、電気伝導率の測定値は、ペプシン添加直後の電気伝導率をブランク値とし、各経過時間ごとの電気伝導率から、このブランク値を差し引いた電気伝導率の変化量として示した。
図11に示すように、反応経過時間に伴って電気伝導率はより大きい値を示した。
ここで、ペプシンはイムノグロブリンIgGのH鎖の234番目と333番目のアミノ酸残基を切断して、F(ab’)2とpFc’(それぞれ分子量約100,000、約50,000)フラグメントを生成することが知られている。又、更にペプシンを作用させることでより低分子のペプチドになることが知られている。
従って、本実施例において、反応時間の結果と共に電気伝導率が上昇したことは、K1抗体がペプシンにより酵素消化されて、元のK1抗体がより小さいペプチドに分解されたことにより、反応時間の経過に伴って電解質溶液中のイオン移動がし易くなったことを表している。
このように、本発明の方法によれば、分解反応によってより小さい反応生成物が生成するような場合にも、電解質溶液の電気伝導率を測定することによって、経時的な反応状態、反応生成物を検出することができる。
又、上述の実施例2と概略同様に、ある特定物質を特異的に分解して分解生成物を生じる物質を用いることによって、特定の物質の検出、即ち、その存在を確認したり、或いはその量を評価、定量することができる。当然その逆も可能であり、或る特定物質によって特異的に分解されて分解生成物を生じるような特定の物質を用いることによって、分解反応を引き起こす特定の物質の検出、或いはその量の評価、定量を行うことができる。
以上、本実施例から分かるように、電解質溶液の電気伝導率を測定することによって酵素反応の経時的反応状態、反応生成物を検出することができる。このように、本発明によれば、反応或いは反応物の種類を問わず、電解質溶液中における物質の反応(経時的反応状態及び/又は反応生成物)を極めて簡便且つ迅速に検出することができ、又試料中の特定物質の検出、定量を行うことができる。
上記実施例1〜5では、電気伝導率計(東亜電波工業(現東亜ディーケーケー)(株)製のCM30Vディジタル電気伝導率計)による電気伝導率の測定は、被検液の温度を測定して液温の変化による電気伝導率の変化を自動補正する自動温度補償(ATC)機能を用いて行った。
つまり、溶液の電気伝導率は温度により変化し、温度が高くなると電気伝導率は高くなり、温度が低くなると電気伝導率は低くなる。従って、通常、被検液の実際の温度に関係なく電気伝導率を比較するために、ある一定の温度(基準温度)における電気伝導率に換算する。換算式を次に示す。
κREF=κ/[1+(α/100)(t−tREF)]
κREF:基準温度tREFに換算した電気伝導率(S/m)
κ:t℃での電気伝導率(S/m)
α:温度係数(%/℃)
REF:基準温度(℃)
基準温度が25℃のとき、ほとんどの水溶液の温度係数は2%程度である。従って、通常、温度係数をデフォルト値である2%/℃に設定し、例えばセルに内蔵された温度センサ(サーミスタ)にて被検液の温度を測定することで、電気伝導率の測定値を基準温度(25℃)における電気伝導率値に自動的に換算する(自動温度補償(ATC))。温度係数を被測定液に応じて手動で設定することも行われる。勿論、別途被検液の温度を測定し、所定の基準温度における所定の温度係数により手動で温度補正することもできる。上記各実施例では、この自動温度補償(ATC)により、基準温度25℃、温度係数2%の条件で温度補正を行った。
本来、電気伝導率の測定では、温度補正のない状態で測定することは行われていない。
しかしながら、詳しくは後述するように、反応溶液の温度が反応系外の外部雰囲気の温度の影響を受けない状態として(外部雰囲気を恒温化するか、反応系と反応系外との熱の授受を遮断するか、或いは反応系と反応系外の外部雰囲気とを同じ温度に維持する)、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)をOFFとし、温度補正を行わずに反応溶液の電気伝導率を測定することで、物質間の反応、特に、抗原と抗体による免疫反応をより正確に検出し得ることが分かった。以下、この点について、幾つかの実施例により更に詳しく説明する。
実施例6
各実施例にて共通して用いている電解質溶液(生理食塩水:0.15MのNaCl水溶液)の温度係数を求めた。
小バイアル瓶(容量12ml)中の生理食塩水10mlにセルを浸漬する。この小バイアル瓶ごと水浴中に浸し、27℃から徐々に温度を下げた。電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに、より詳しくは、温度係数を0.00%/℃に設定することで実質的に温度補正を行わない状態として、セルに内蔵されたサーミスタによる温度測定値と電気伝導率の測定値とを経時的に記録し、液温の変化に対する電気伝導率の変化を測定した。
結果を図12に示す。図12において、電気伝導率及び液温の測定値は、それぞれ測定開始時(経過時間0分)の電気伝導率及び液温をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率、液温からこれらブランク値を差し引いた電気伝導率の変化量、液温変化量で示した。又、図12に示す測定結果から、各経過時間における、液温1℃あたりの電気伝導率の変化(mS/cm/1℃,×10−1S/m/1℃)及び液温1℃あたりの電気伝導率の変化率(以下、「温度係数」と呼ぶ。)(%/1℃)を求め、図13に示した。
図12の結果から、電解質溶液の温度変化に伴い電気伝導率は平行して変化することが分かる。又、図13に示す結果より、各経過時間における温度係数(%/1℃)の平均は1.56%であり、温度係数は経過時間によらずほぼ一定の値を示した。
次に、実施例1と同様の反応、即ち、標準BFP抗原とK1抗体との抗原抗体反応について、経時的な反応状態及び反応生成物(免疫複合体)を電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに検出した。
測定手順
自動温度補償(ATC)を用いないことを除いて、測定手順は実施例1と同様である。即ち、生理食塩水中にK1抗体をマイクロシリンジで2μl(絶対量0.5ng)加える。この溶液に標準BFP抗原をマイクロシリンジで2μl(絶対量0.6ng、1.2ng、2.4ng)ずつ加える。この反応溶液を攪拌した後、セルを反応溶液に浸漬したまま経時的に電気伝導率及び液温を測定した。
又、標準BFP抗原(絶対量4.8ng)、K1抗体(絶対量1ng)をそれぞれ単独で含む生理食塩水についても、経時的に電気伝導率及び液温を測定した。
但し、反応溶液の液温に対して外気温の影響が及ばないようにするために、室温を一定に保つことができる恒温室(26℃)内で反応を行った。
結果
標準BFP抗原とK1抗体との反応の各経過時間における電気伝導率及び液温の測定値を図14に示す。図14において、電気伝導率及び液温の測定値は、それぞれ反応開始時の電気伝導率及び液温をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率、液温からこれらブランク値を差し引いた電気伝導率、液温の変化量として示した。
又、図14に示す結果から、各反応における液温1℃あたりの電気伝導率の変化(mS/cm/1℃)、液温1℃あたりの電気伝導率の変化率(温度係数(%/1℃))を求め、それぞれ図15(a)、(b)に示した。
図14から、各濃度の標準BFP抗原とK1抗体との反応において、電気伝導率の変化と液温の変化とには良好な相関があることが分かる。又、K1抗体(0.5ng)に対して標準BFP抗原量が増えるほど電気伝導率及び液温の変化(低下)はより大きかった。
又、図15(a)から分かるように、液温1℃あたりの電気伝導率の変化(mS/cm/1℃)は、標準BFP抗原の量が0.6ngの場合、生理食塩水とほぼ同等の変化を示した。これに対して標準BFP抗原の量が1.2ngの場合、経過時間40分以上で生理食塩水を上回る大きな変化(増加)が観察された。更に、標準BFP抗原の量が2.4ngの場合、経過時間15分以降で電気伝導率に大きな変化(増加)が認められた。
このように、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)は、標準BFP抗原の量が異なる各反応ごとで大きく異なり、電解質溶液のみのように一定ではないことが判明した。温度係数(%/1℃)は、反応前の反応溶液の電気伝導率に対する各経過時間における液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)の割合を計算した値であり、その結果は電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)と同じ傾向を示す。即ち、免疫反応では、抗原と抗体の量により温度係数(%/1℃)は経時的に変化することが分かった。
一方、K1抗体、標準BFP抗原をそれぞれ単独で含む生理食塩水の各経過時間における電気伝導率及び液温の測定値を、それぞれ図16(a)、(b)に示す。図16において、電気伝導率及び液温の測定値は、測定開始時の電気伝導率をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率からこのブランク値を差し引いた電気伝導率の変化量として示した。
図16(a)、(b)から分かるように、標準BFP抗原及びK1抗体の両方について、電気伝導率及び液温の有意な変化は認められなかった。この結果から、BFP抗原とK1抗体が反応することにより、電気伝導率及び液温に変化が生じることが明らかである。
実施例7
次に、実施例2と同様に、BFP抗原とK1抗体との反応系に蛋白質(牛胎児血清(FCS))を加えた場合の反応を、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに検出する。
測定手順
自動温度補償(ATC)を用いないことを除いて、測定手順は実施例2と同様である。即ち、予め牛胎児血清(FCS)(約70mg蛋白質/ml)を2μl(絶対量にて蛋白質量約140μg)生理食塩水中に加えておく。そして、K1抗体(0.5ng)と濃度の異なる標準BFP抗原(0.075ng、0.15ng)との各反応について、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに、電気伝導率と液温とを経時的に測定した。牛胎児血清は、実施例2と同様、後述の実施例において被検血清中のBFP抗原量を評価、定量する際の反応系中に加える量に相当する蛋白質量とするために添加した。実施例6と同様、反応は、恒温室(26℃)内で行った。
結果
BFP抗原とK1抗体との反応の各経過時間における電気伝導率及び液温の測定値を図17に示す。図17において、電気伝導率及び液温の測定値は、それぞれ反応開始時の電気伝導率及び液温をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率、液温からこれらブランク値を差し引いた電気伝導率、液温の変化量として示した。
又、図17に示す結果から、各反応における液温1℃あたりの電気伝導率の変化(mS/cm/1℃)、液温1℃あたりの電気伝導率の変化率(温度係数(%/1℃)を求め、それぞれ図18(a)、(b)に示した。
図17の結果から、各濃度の標準BFP抗原とK1抗体との反応において、電気伝導率の変化と液温の変化とには良好な相関があることが分かる。又、K1抗体(0.5ng)に対して標準BFP抗原量が増えるほど電気伝導率及び液温にはより大きな変化が認められた。
図18(a)から分かるように、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)及び温度係数(%/1℃)は共に、両抗原量で経時的変化に大差はなかった。しかし、これらは反応10分以降に大きく変化し、例えば温度係数(%/1℃)では、生理食塩水の1.56%を大きく上回り、約3%ほどであった。
本実施例では、0.075ng、0.15ngといった非常に少量の抗原と標準BFP抗原K1抗体(0.5ng)との反応をとらえることが可能であった。これは、特定の理論にのみ束縛されることを意図するものではないが、反応系に牛胎児血清(FCS)を添加したことにより電解質溶液中における少量の抗原の安定性が保持され、抗原抗体反応の検出感度が高められたためであると考えられる。
又、図18(a)、(b)の結果から分かるように、K1抗体(0.5ng)に対する標準BFP抗原の反応は、標準BFP抗原の量が0.075ng、0.15ngの両方の場合で同程度の反応であり、このように少量の標準BFP抗原とK1抗体との反応と、図14、図15(a)、(b)に示したような標準BFP抗原の量が0.6ng〜2.4ngである場合の反応とで、反応性に違いがあることが観察された。
実施例8
次に、実施例3と同様に、試料中の特定物質として血清中のBFP抗原を、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに検出する。
被検血清としては、−20℃で冷凍保存した健常人及びがん患者(肝癌患者)のヒト血清を用いた。本実施例にて用いた健常人、がん患者の血清中のBFP抗原量は、日本化薬(株)製「ラナザイムBFPプレート」を用いて測定して、それぞれ35ng/ml、100ng/mlであった。
測定手順
自動温度補償(ATC)を用いないことを除いて、測定手順は実施例3と同様である。即ち、生理食塩水10ml中にK1抗体をマイクロシリンジで2μl(絶対量0.5ng)加えて攪拌する。この溶液に、室温に戻した被検血清(約70mg蛋白質/ml)をマイクロシリンジで2μl(絶対量にて蛋白質量約140μg)加えて攪拌する。この反応溶液にセルを浸漬したまま、自動温度補償(ATC)を用いずに、電気伝導率と液温とを経時的に測定した。実施例6、7と同様、反応は、恒温室(26℃)内で行った。
更に、同条件のがん患者血清に対して、K1抗体濃度を変えて(絶対量0.0625ng、0.25ng、0.5ng)反応を行い、同様に電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに電気伝導率と液温とを経時的に測定した。
結果
健常人血清、がん患者血清とK1抗体との各反応について、各経過時間における電気伝導率及び液温の測定値をそれぞれ図19(a)、(b)に示す。又、図19(a)、(b)に示す結果から、各反応における液温1℃あたりの電気伝導率の変化(mS/cm/1℃)、液温1℃あたりの電気伝導率の変化率(温度係数(%/1℃))を求め、それぞれ図20(a)、(b)に示した。
更に、3種類の濃度のK1抗体とがん患者血清との各反応について、各経過時間における電気伝導率及び液温の測定値を図21に示した。
尚、図19、図21において、電気伝導率及び液温の測定値は、それぞれ反応開始時の電気伝導率及び液温をブランク値とし、各経過時間における電気伝導率、液温から、これらブランク値を差し引いた電気伝導率、液温の変化量として示した。
図19(a)、(b)の結果から、実施例7におけるBFP抗原とK1抗体との反応と同様に、健常人及びがん患者血清の双方について、液温の低下に伴った電気伝導率の低下が認められた。健常人に比較してがん患者血清でより大きい電気伝導率の変化が観察された。
更に、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)及び温度係数(%/1℃)は、健常人とがん患者で異なり、健常人においてがん患者より小さいことが分かった。又、がん患者血清について、電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)及び温度係数(%/1℃)は、反応開始後10分過ぎから変化が大きくなり、60分までほぼ一律であった。その値は、電解質溶液の温度係数1.56(%/1℃)を上回る2.3〜4(%/1℃)の推移を示した。
このように、健常人及びがん患者の血清と、K1抗体との免疫反応を電気伝導率を測定することにより検出し、反応性を経時的に比較することができる。同抗体に対する挙動は明らかに健常人血清とがん患者血清とでは異なっている。
ここで、実施例7に示した反応系に牛胎児血清(FCS)を存在させた際の標準BFP抗原(0.075ng、0.15ng)とK1抗体(0.5ng)との反応において、反応溶液中のBFP抗原量0.075ngは、血清中のBFP抗原量に換算すると37.5ng/mlに相当し、又反応溶液中のBFP抗原量0.15ngは、血清中のBFP抗原量に換算すると75ng/mlに相当する。
従って、本実施例における健常人血清、がん患者血清とK1抗体との反応性を、実施例7における各反応と照らし合わせてみると、健常人の血清中には、37.5ng/ml以下に相当するBFP抗原の存在が考えられる。一方、がん患者血清中には、ほぼ75ng/mlに相当するBFP抗原の存在が考えられる。
上述のように、EIA法により、本実施例にて用いた健常人血清、がん患者血清中には、それぞれ35ng/ml、100ng/mlのBFP抗原が存在することが分かっている。血清中に含まれるBFP抗原量に関して、本実施例による推定値とEIA法による測定値とはほぼ同程度の値を示していることが分かる。当然、実施例3と同様、所定の検量線を利用することにより、被検血清中のBFPをより詳細に定量することも可能である。例えば、図14、図17の結果について、横軸に標準BFP抗原濃度、縦軸に電気伝導率の変化(マイナス値)をとると、それぞれ図22(a)、(b)に示すように標準BFP抗原の量と電気伝導率の変化量との関係が得られる。このような関係を検量線として利用することもできる。
又、図21に示すように、がん患者血清では、K1抗体濃度に依存、した電気伝導率の変化が認められた。この結果から、K1抗体に見合う量の血清BFP抗原が反応しているという反応特性が電気伝導率の測定により観察されたものと考えられる。
以上、実施例6〜8に示した実験成績から分かるように、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに、温度補正しない状態で電気伝導率及び液温を測定すると、免疫反応では抗原抗体反応が進むにつれて液温が低下する傾向があることが顕著に観察される。そして、この温度低下に伴い電気伝導率が低くなることが分かった。
ここで、上述のように、溶液の電気伝導率は、温度により変化し、温度が高くなると電気伝導率は高くなり、温度が低くなると電気伝導率は低くなる。しかし、図15(a)、(b)から分かるように、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)及び温度係数(%/1℃)が、標準BFP抗原の量が異なる各反応で経時的に異なることから、免疫反応における電気伝導率の変化は、液温の低下による変化のみによるものではなく、免疫反応の進行、つまり免疫複合体の形成に伴う電気抵抗の増大との相乗による結果を反映していると考えられる。
更に説明すると、特定に理論にのみ束縛されることを意図するものではないが、物質と物質との反応、特に、免疫反応では、抗原と抗体が反応する際に結合エネルギーを必要とし、そのため反応溶液の液温が低下するものと考えられる。そして、この液温の低下に伴って電解質溶液の電気伝導率が変化する。しかし、この反応状態に応じた液温変化による電気伝導率の変化は、電解質溶液の液温変化による電気伝導率の変化の域を超えた変化である。つまり、上述のように、更に、抗原と抗体とが結合することによってより大きな分子(免疫複合体)となることにより、電気が流れ難くなり、電気伝導率が低下するものと考えられる。これにより、物質と物質との反応をより正確に反映していると考えられる。
又、本発明者の検討によると、より抗原或いは抗体が低濃度である場合、電気伝導率の変化は、免疫反応による反応溶液の温度低下に依存し、高濃度である場合には大きい分子が形成されることによる電気抵抗の増加の寄与度が増すものと考える。
つまり、図15(a)、(b)、図18(a)、(b)更には図20(a)、(b)の結果から分かるように、標準BFP抗原とK1抗体との免疫反応において、一定量のK1抗体に対して標準BFP抗原量が少ない場合、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)及び温度係数(%/℃)は生理食塩水と同等であり、BFP抗原量が多くなり反応性が高くなるとこれらの値は生理食塩水よりも大きくなる。
ここで、実施例1〜5で説明した方法によれば、上述のように極めて顕著な作用効果を奏することができるが、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を使用した測定では反応溶液の温度変化に対して一律の温度補正を行うため、本来の反応を十分反映した結果が得られていない可能性がある。従って、本来の反応をより正確にとらえるためには、自動温度補償(ATC)を用いずに温度補正を行わない状態で、反応物質による液温の変化及び電気伝導率の変化を正確にとらえられることが好ましいと考えられる。そのためには、反応の液温が周りの温度などに影響されないことが必須である。
従って、反応溶液の電気伝導率を測定することによって物質と物質との反応をより正確に検出するためには、反応溶液の液温が外気温などの影響を受けず、本来の反応による液温変化を正確に測定し得る状態として、この状態で電気伝導率の自動温度補償(ATC)をはずし、つまり温度補正をせずに電気伝導率、更には液温を測定することが好ましいと考えられる。
反応溶液の液温が外気温など反応系外の温度の影響を受けない状態は、電気電解質溶液中で物質の反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持する、つまり、反応溶液の温度変化に追従して反応溶液の外部雰囲気温度を変化させて実質的に反応溶液とその外部とで熱の出入りをなくす手段を単独又は組み合わせて採用することで達成することができる。
上記実施例6〜8では、反応溶液の液温に対して外気温の温度の影響が加わらないように室温を一定に保つ恒温室内に反応容器(バイアル瓶)及び電気伝導率計を入れ反応を行い、電気伝導率と液温を測定した。
図5(実施例2)と図17(実施例7)に示した結果、或いは図7(実施例3)と図19(a)(実施例8)に示した結果を比較すると、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに電気伝導率を測定すると、より鋭敏に反応生成物、反応状態を検出し得ることが分かる。
又、実施例6〜8の結果から分かるように、電気伝導率計の自動温度補償(ATC)を用いずに電気伝導率と液温とを経時的に測定することで、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)或いは温度係数(%/1℃)から、物質間の反応による反応生成物(免疫複合物)、反応性の抗原或いは抗体への濃度への依存性などの物質間の反応状態(反応特性)を極めて簡単に検出することができる。更に、これら電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)或いは温度係数(%/1℃)を比較することなどにより、試料中の特定物質の検出、或いはその量の評価、定量することができる。
勿論、反応溶液の温度が反応系外の外部雰囲気温度の影響を受けないようにする特別の手段を設けず、反応溶液の電気伝導率の測定に基づいて極めて簡便に物質の反応を測定し得る点で、上述して説明した自動温度補償(ATC)などの一般的な温度補正技術を用いて電気伝導率を測定することの利点が顕著であることに変わりはない。
実施例9
次に、本発明の更に他の態様について説明する。上述したように、本発明者は、抗原と抗体とによる免疫反応のような、反応溶液中で結合エネルギーを必要としていると考えられる反応において、反応溶液の温度が反応系外の外部雰囲気温度の影響を受けない状態にすると、反応が進行するにつれて反応溶液の液温が低下するという新規な知見を得た。
又、本発明者の検討によると、低濃度反応においては、反応生成物による反応溶液の電気抵抗の変化よりも、温度変化が電気伝導率の変化に対して支配的であることが示唆された。つまり、抗原と抗体の濃度が低いと、電解質溶液中での両者の電気抵抗はもともと小さく、抗原抗体反応による電気伝導率の変化に対しては、反応生成物の電気抵抗の変化に比べて、反応溶液の液温の変化が支配的であることが示唆された。
斯かる新規な知見に基づいて、反応溶液の温度が反応系外の外部雰囲気温度の影響を受けない状態において、特に、低濃度反応においては、反応溶液の温度を測定することのみによって、免疫反応などの反応溶液中で結合エネルギーを必要とすると思われる反応の反応生成物、反応状態を検出することができる。
反応溶液の液温が外気温など反応系外の温度の影響を受けない状態は、上述と同様、被検液中で物質の反応、特に、抗原と抗体との免疫反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持する、つまり、反応溶液の温度変化に追従して反応溶液の外部雰囲気温度を変化させて実質的に反応溶液とその外部とで熱の出入りをなくす手段を単独又は組み合わせて採用することで達成することができる。
上述のように、図14及び図17に示す結果から標準BFP抗原とK1抗体との反応において、標準BFP抗原の量によって液温の変化には明らかな差がある。又、図19(a)、(b)から、健常人血清とがん患者血清とでは、液温の変化に明らかな差があることが分かる。
又、反応溶液の温度が反応系外の外部雰囲気温度の影響を受けない状態において、免疫反応に伴う電気伝導率の変化と液温の変化とには良好な相関がある。従って、本実施例によれば、上記各実施例を参照して詳しく説明した、電気伝導率の測定に基づく反応検出と同様の種々の作用効果を奏し得る。
つまり、本実施例によれば、経時的に反応溶液の液温を測定することにより、高価で大がかりな機器を必要とせず、極めて簡便に、免疫反応を検出することができる。又、本発明によれば、例えば従来の免疫学的測定法(RIA法、EIA法)のように最終的に形成された免疫複合体を検出するだけではなく、経時的に免疫反応の経時的反応状態、抗原、抗体及び/又は免疫複合体を検出することができる。
又、抗原と抗体による免疫反応を経時的に測定することができるので、例えばある抗原とより反応し易い抗体若しくはある抗体とより反応し易い抗原の選択、或いは抗原と抗体との感受性の有無の測定などを極めて簡便且つ迅速に、しかもリアルタイムにて行うことができる。
更に、従来の免疫学的測定法(RIA法、EIA法など)のように、抗原又は抗体の担体への固相化、標識物の作製などの操作を必要せず、反応溶液に反応物質を直接加えることによって、迅速且つ簡便に免疫反応を検出できる。これによって、標識物質、発色剤(酵素基質)などの試薬や、固相化担体などの廃棄物を出さずに、極めて簡単な装置を用いて免疫反応を検出することができる。
そして、反応溶液の温度を測定することによって、極めて簡便に試料中の特定物質(抗原或いは抗体)を検出することができ、又、予め同一系にて求めた液温変化に関して所定の検量線を用いたり、或いは液温に関して所定の閾値との比較によりその量を定量することができる。検量線或いは閾値は、電気伝導率の場合と同様、各反応に応じて適宜設定すればよく、例えば反応速度(反応の初速度など、経時的な液温の変化率)などを指標とすることができる。
従って、極めて簡便且つ迅速に、試料中に存在する特定の疾病状態に関する物質、例えばがん関連物質、癌関連遺伝子産物、又、これらに対して生産された抗体を、極めて簡便且つ迅速に検出、定量することができる。従って、特定の疾病状態に関係する物質として、例えばヒト血清などとされる試料中に存在する上記がん関連物質、がん関連遺伝子産物、又、これらに対する抗体を簡便且つ迅速に検出、定量することによって、がんの診断、検査、治療方針の決定など臨床的な様々な段階において極めて有用である。加えて、反応系に反応物質を直接加えることによって特定物質の検出、定量を行うことができるので、廃棄物を低減し、極めて簡単な装置を用いて試料中の特定物質の検出、定量を行うことができる。
尚、例えば1/100℃の精度といった高精度にて液温を測定ことができるような温度検出手段(サーミスタなど)が入手可能である。
実施例10
次に、本発明を実施するために構成された装置の一実施例について説明する。
図23に示すように、反応検出装置は、実質的に電気伝導率計1と、反応容器3とを備えてなる。
電気伝導率計は、反応容器3内の被検液Sに浸漬してその電気伝導率に応じた信号を発する電気伝導率検出手段たるセル(電気伝導率測定電極対)2と、セル2が被検液S中での反応に応じて出力する信号を検出してデータ処理する、マイクロコンピュータなどとされる制御手段11と、を有する。
制御手段11には記憶手段12が接続されていてよく、記憶手段12に格納されたプログラムに従って装置動作を統括的に制御すると共に、セル2の出力を記憶手段12に格納された情報に基づいて演算処理して、被検液Sの電気伝導率に応じた所望形態の信号を生成することができる。又、制御手段11には入力手段13が接続されていてよく、装置の緒設定、測定の開始及び停止、所望のデータの入力などを行う入力手段13から行う。更に、制御手段11には表示手段14が接続されていてよく、制御手段11がセル2の出力に基づき生成した被検液Sの電気伝導率に応じた信号を表示手段14に送信し、所望形態の測定結果として表示することができる。尚、制御手段11として、パーソナルコンピュータなどとされる汎用の演算制御機器を用いうることは言うまでもなく、記憶手段12、入力手段13、表示手段14としては、斯かるコンピュータに接続されたものを用いることができる。
又、装置1には、被検液Sの温度を検出する、サーミスタなどとされる温度検出手段10を設けることができる。温度検出手段10はセル2に内蔵されていてもよい。温度検出手段10が被検液の温度に応じて出力する信号は、制御手段11に入力される。制御手段11は、被検液の温度に応じた温度検出手段10の出力に基づき、被検液の液温に関する情報を表示手段14に表示することができる。
上記実施例1〜6を参照して説明したように、制御手段11は、温度検出手段10の出力に基づいて、斯界にて一般に行われているように、セル2の出力に基づく電気伝導率の測定値を、自動温度補償(ATC)などにより温度補正することができる。
一方、実施例6〜8を参照して説明したように、反応溶液の液温が外気温など反応系外の温度の影響を受けない状態とするために、反応容器3の外部雰囲気を一定温度に維持する手段、反応容器3の内部と反応容器3の外部雰囲気とを熱的に遮断する手段、反応容器3の内部と反応容器の外部雰囲気を同じ温度に維持する手段を単独又は組み合わせて設けることができる。
つまり、反応容器3、更にはセル2、温度検出手段10の少なくとも検出部若しくは電気伝導率計1自体を恒温室内に配置することができる。反応容器3の外部雰囲気を恒温化するための媒体は、液体、固体、気体のいずれであってもよい。又、反応容器3、更にはセル2の検出部、温度検出手段10の少なくとも検出部を囲包する断熱手段を設けることができる。断熱手段としては、適当な断熱材、真空容器などを用いることができる。更に、反応容器3内の被検液の温度変化に追従して被検液の外部雰囲気温度を変化させて、実質的に反応容器3内の被検液とその外部とで熱の出入りをなくしてもよい。図24には、一例として、反応容器3、セル2、温度検出手段10を断熱手段20にて囲包した状態を示す。
これにより、反応溶液の液温に対して外気温などの環境の影響を排除し、自動温度補償(ATC)などの温度補正のない状態で電気伝導率を測定することができる。
又、図24に示す構成においては、制御手段11は、温度検出手段10が被検液中での反応に応じて出力する信号を検出する。そして、この信号とセル2の出力信号とから、液温1℃あたりの電気伝導率の変化量或いは温度係数に応じた信号を生成することができる。
このような構成において、制御手段11は、被検液Sの電気伝導率、更には液温を経時的に検出して表示することのみならず、例えば記憶手段12に予め設定されているか、或いは入力手段を介して設定される所定の閾値情報、検量線情報を用いて、セル2の出力、或いはセル2及び温度検出手段10の出力から被検液中の特定物質を検出したり、或いはその量を評価、定量することができる。つまり、被検液の電気伝導率を経時的に測定することで反応状態の進行により検出された電気伝導率の経時変化、又は、反応に応じた被検液の液温を経時的に測定する場合には、更に反応状態の進行により検出された液温1℃あたりの電気伝導率の変化量(mS/cm/1℃)若しくは温度係数(%/1℃)などを指標として、被検液中の特定物質について予め求められた閾値情報、検量線情報に基づくデータ処理を行うことができる。これら、被検液中の特定物質の検出、或いはその量の評価、定量の方法自体の説明は、実施例1〜8の説明を援用する。
実施例11
次に、実施例9を参照して説明した免疫反応の検出方法を実施するための免疫反応検出装置の一実施例について説明する。
図25に示すように、実施例9にて説明した免疫反応の検出方法を実施する装置は、実質的に反応容器3内の被検液Sの温度を検出する、サーミスタなどとされる温度検出手段10を有する温度検出器100を備えてなる。
又、反応溶液の液温が外気温など反応系外の温度の影響を受けない状態とするために、反応容器3の外部雰囲気を一定温度に維持する手段、反応容器3の内部と反応容器3の外部雰囲気とを熱的に遮断する手段、反応容器3の内部と反応容器3の外部雰囲気を同じ温度に維持する手段を単独又は組み合わせて設ける。
つまり、実施例10と同様、反応容器3、更には温度検出手段10の少なくとも検出部若しくは温度検出器100自体を恒温室に配置することができる。反応容器3の外部雰囲気を恒温化するための媒体は、液体、固体、気体のいずれであってもよい。又、反応容器3、更には温度検出手段10の少なくとも検出部を囲包する断熱手段を設けることができる。断熱手段としては、適当な断熱材、真空容器などを用いることができる。更に、反応容器3内の被検液の温度変化に追従して被検液の外部雰囲気温度を変化させて、実質的に反応容器3内の被検液とその外部とで熱の出入りをなくしてもよい。図25には、一例として、反応容器3、温度検出手段10を断熱手段20にて囲包した状態を示す。
図25において、制御手段11、記憶手段12、入力手段13、表示手段14などその他の構成は、制御手段11に電気伝導率測定用セル2が接続されておらず、温度検出手段10が、被検液中の反応に応じて出力する信号のみを検出して、被検液Sの温度に応じた情報を表示手段14に表示させることを除いて、実施例10と同様とし得る。従って、ここでは詳しい説明は省略する。
斯かる構成において、制御手段11は、被検液Sの液温を経時的に検出して表示することのみならず、例えば記憶手段12に予め設定されているか、或いは入力手段を介して設定される所定の閾値情報、検量線情報を用いて、温度検出手段10の出力から被検液中の特定物質を検出したり、或いはその量を評価、定量することができる。つまり、被検液の液温を経時的に測定することで反応状態の進行により検出された液温変化を指標として、被検液中の特定物質いついて予め求められた閾値情報、検量線情報に基づくデータ処理を行うことができる。これら、被検液中の特定物質の検出、或いはその量の評価、定量の方法自体の説明は、実施例9の説明を援用する。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明によれば、より簡便に物質の反応を検出することができる。又、高価で大がかりな設備、測定機器を必要とせず、より簡便且つ迅速に、しかもリアルタイムにて物質の反応の経時的な反応状態及び/又は反応生成物を検出することができ、例えば試料中の特定物質の検出、定量などにおいて極めて有用である。
従って、本発明によれば、免疫学的或いは酵素学的な反応をより簡便に検出することができ、例えば、特定の疾病状態に関する特定物質のより簡便な検出、定量を可能とする。又、本発明によれば、簡単な装置を用いて、簡便且つ迅速に電解質溶液中で起こる様々な物質の反応の経時的反応状態及び/又は反応生成物を検出する、新たなアプローチを提供することができる。
更に、本発明によれば、免疫学的反応を極めて簡便に検出することができ、特定の疾病状態に関する特定物質などの試料中の特定物質を極めて簡便に且つ迅速に、しかもリアルタイムに検出、定量することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る反応検出方法の原理を説明するための模式図であり、(a)電解質溶液中でイオンが移動する様子、(b)電解質溶液中で反応する物質を添加した場合のイオンの移動する様子を示す図である。
図2は、生理食塩水中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図3は、生理食塩水中でのK1抗体と癌胎児性抗原(CEA)との反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図4は、K1抗体及び3種類の濃度の異なる標準BFP抗原を各々単独で含む生理食塩水の電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図5は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図6は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、反応経過時間ごとの標準BFP抗原量と電気伝導率の変化量との関係を示すグラフ図である。
図7は、生理食塩水中でのK1抗体と被検血清との反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図8は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中でのMDM2抗原とMDM2抗体との反応における、電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図9は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中でのMDM2抗原とMDM2抗体との反応における、反応経過時間ごとの、MDM2抗体量と電気伝導率の変化量との関係を示すグラフ図である。
図10は、生理食塩水中でのMDM2抗原と被検血清との反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図11は、生理食塩水中でのK1抗体とペプシンとの反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図12は、生理食塩水の液温変化と電気伝導率変化との関係との関係を示すグラフ図である。
図13は、生理食塩水の液温1℃あたりの電気伝導率変化量及び温度係数を示すグラフ図である。
図14は、生理食塩水中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、温度補正を行わない場合の電気伝導率及び液の経時変化を示すグラフ図である。
図15は、生理食塩水中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、(a)1℃あたりの電気伝導率変化量の経時変化、(b)温度係数の経時変化を示すグラフ図である。
図16は、K1抗体を単独で含む生理食塩水の、温度補正を行わない場合の電気伝導率及び液温の経時変化を示すグラフ図である。
図17は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、温度補正を行わない場合の電気伝導率及び液温の経時変化を示すグラフ図である。
図18は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、(a)1℃あたりの電気伝導率変化量の経時変化、(b)温度係数の経時変化を示すグラフ図である。
図19は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中での、温度補正を行わない場合のK1抗体と被検血清((a)健常人血清、(b)がん患者血清)との反応における電気伝導率及び液温の経時変化を示すグラフ図である。
図20は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中での、K1抗体と被検血清((a)健常人血清、(b)がん患者血清)との反応における、1℃あたりの電気伝導率変化量及び温度係数の経時変化を示すグラフ図である。
図21は、牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩水中での、温度補正を行わない場合の濃度の異なるK1抗体と被検血清((a)健常人血清、(b)がん患者血清)との反応における電気伝導率の経時変化を示すグラフ図である。
図22は、(a)生理食塩中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、温度補正を行わない場合の、反応経過時間ごとの標準BFP抗原量と電気伝導率の変化量との関係、(b)牛胎児血清(FCS)を添加した生理食塩中でのK1抗体と標準BFP抗原との反応における、温度補正を行わない場合の、反応経過時間ごとの標準BFP抗原量と電気伝導率の変化量との関係を示すグラフ図である。
図23は、本発明に係る反応検出装置の一実施例の概略構成を示す模式図である。
図24は、本発明に係る反応検出装置の他の実施例の概略構成を示す模式図である。
図25は、本発明に係る免疫反応検出装置の一実施例の概略構成を示す模式図である。

Claims (31)

  1. 電解質溶液中における物質の反応を、電解質溶液の電気伝導率を測定することに基づいて検出することを特徴とする反応検出方法。
  2. 電解質溶液の電気伝導率を経時的に測定することで、前記反応の反応状態及び/又は反応生成物を検出することを特徴とする請求項1の反応検出方法。
  3. 前記反応は、(a)免疫反応、(b)酵素反応、又は(c)結合反応、重合反応、分解反応、触媒反応を含むその他の化学反応であることを特徴とする請求項1又は2の反応検出方法。
  4. 前記物質は、(i)精製蛋白質、合成蛋白質を含む蛋白質、(ii)酵素、(iii)前記(i)及び(ii)を含む抗原、(iv)ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む抗体、又は(v)その他の化学物質であることを特徴とする請求項1、2又は3の反応検出方法。
  5. 前記反応として、特定物質と、該特定物質と反応する物質との間の反応を検出することによって、試料中の前記特定物質を検出及び/又は定量することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の反応検出方法。
  6. 前記特定物質は、特定の疾病症状に関与する物質、特定の疾病症状に関与する遺伝子の産物、又はこれらに対する抗体であることを特徴とする請求項5の反応検出方法。
  7. 前記特定物質は、がん胎児性蛋白質、ホルモン、ホルモンレセプター、膜抗原、がん関連遺伝子産物を含むがん関連物質又はこれらの物質に対する抗体であることを特徴とする請求項6の反応検出方法。
  8. 前記試料は、血液、血清、血漿、尿、腹水を含む体液、組織若しくは組織抽出液、又は細胞若しくは細胞抽出液であることを特徴とする請求項5、6又は7の反応検出方法。
  9. 更に、電解質溶液の温度を測定し、電気伝導率の測定値の温度補正を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の反応検出方法。
  10. (1)電解質溶液中で物質の反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、(2)前記反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、(3)前記反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持するか、のいずれかを単独又は組み合わせて採用し、電気伝導率の測定値の温度補正は行わないことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の反応検出方法。
  11. (1)電解質溶液中で物質の反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、(2)前記反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、(3)前記反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持するか、のいずれかを単独又は組み合わせて採用して電気伝導率の測定値の温度補正は行なわず、更に、電解質溶液の温度を経時的に測定して、単位温度あたりの電気伝導率の変化量若しくは変化率を測定することにより、電解質溶液中における物質の反応の反応状態、抗原及び/又は反応生成物を検出することを特徴とする請求項2〜8のいずれかの項に記載の反応検出方法。
  12. 電解質溶液中における抗原と抗体との免疫反応を、電解質溶液の電気伝導率を測定することに基づいて検出することを特徴とする免疫反応検出方法。
  13. 電解質溶液の電気伝導率を経時的に測定することで、免疫反応の反応状態、抗原、抗体及び/又は免疫複合体を検出することを特徴とする請求項12の免疫反応検出方法。
  14. 更に、電解質溶液の温度を測定し、電気伝導率の測定値の温度補正を行うことを特徴とする請求項12又は13の免疫反応検出方法。
  15. (1)電解質溶液中で抗原と抗体との免疫反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、(2)前記反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、(3)前記反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持するか、のいずれかを単独又は組み合わせて採用し、電気伝導率の測定値の温度補正は行わないことを特徴とする請求項12又は13の免疫反応検出方法。
  16. (1)電解質溶液中で物質の反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、(2)前記反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、(3)前記反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持するか、のいずれかを単独又は組み合わせて採用して電気伝導率の測定値の温度補正は行わず、更に、電解質溶液の温度を経時的に測定して、単位温度あたりの電気伝導率の変化量若しくは変化率を測定することにより、電解質溶液中における物質の反応の反応状態及び/又は反応生成物を検出することを特徴とする請求項13の免疫反応検出方法。
  17. 被検液中の抗原と抗体との免疫反応を、被検液の温度を測定することに基づいて検出することを特徴とする免疫反応検出方法。
  18. 被検液の温度を経時的に測定することで、免疫反応の反応状態、抗原、抗体及び/又は免疫複合体を検出することを特徴とする請求項17の免疫反応検出方法。
  19. (1)被検液中で抗原と抗体との免疫反応を行う反応系の外部雰囲気を一定温度に維持するか、(2)前記反応系とその外部雰囲気とを熱的に遮断するか、(3)前記反応系とその外部雰囲気を同じ温度に維持するか、のいずれかを単独又は組み合わせて採用し、被検液の温度を測定することを特徴とする請求項17の免疫反応検出方法。
  20. 前記抗原が特定の疾病症状に関与する物質若しくは特定の疾病状態に関与する遺伝子産物であるか、又は前記抗体が特定の疾病症状に関与する物質若しくは特定の疾病状態に関与する遺伝子産物に対する抗体であり、免疫反応を検出することで前記抗原若しくは抗体を検出及び/又は定量することを特徴とする請求項12〜19のいずれかの項に記載の免疫反応検出方法。
  21. 前記抗原ががん胎児性蛋白質、ホルモン、ホルモンレセプター、膜抗原、がん関連遺伝子産物を含むがん関連物質であるか、又は前記抗体ががん胎児性蛋白質、ホルモン、ホルモンレセプター、膜抗原、がん関連遺伝子産物を含むがん関連物質に対する抗体であり、免疫反応を検出することで前記抗原若しくは抗体を検出及び/又は定量することを特徴とする請求項12〜19のいずれかの項に記載の免疫反応検出方法。
  22. 反応物質と電解質溶液とを収容するための反応容器と、前記反応容器中の電解質溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率検出手段と、前記電気伝導率検出手段が電解質溶液中における物質の反応に応じて出力する信号を検出する制御手段と、を有することを特徴とする反応検出装置。
  23. 更に、前記反応容器中の電解質溶液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段を有し、前記電気伝導率検出手段の出力に基づく電気伝導率の測定値を、前記温度検出手段の出力に基づいて補正することを特徴とする請求項22の反応検出装置。
  24. 更に、(1)前記反応容器の外部雰囲気を一定温度に維持する手段、(2)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気とを熱的に遮断する手段、(3)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気を同じ温度に維持する手段、のいずれかを単独又は組み合わせて設けたことを特徴とする請求項22の反応検出装置。
  25. 更に、前記反応容器中の電解質溶液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段を有し、前記制御手段は、前記電気伝導率検出手段が電解質溶液中における物質の反応に応じて出力する信号と、前記温度検出手段が電解質溶液中における物質の反応に応じて出力する信号と、に基づき、単位温度あたりの電気伝導率の変化量若しくは変化率に応じた信号を生成することを特徴とする請求項24の反応検出装置。
  26. 抗原と抗体とを含む被検液を収容するための反応容器と、前記反応容器中の電解質溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率検出手段と、前記電気伝導率検出手段が電解質溶液中における抗原と抗体との免疫反応に応じて出力する信号を検出する制御手段と、を有することを特徴とする免疫反応検出装置。
  27. 更に、前記反応容器中の電解質溶液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段を有し、前記電気伝導率検出手段の出力に基づく電気伝導率の測定値を、前記温度検出手段の出力に基づいて補正することを特徴とする請求項26の免疫反応検出装置。
  28. 更に、(1)前記反応容器の外部雰囲気を一定温度に維持する手段、(2)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気とを熱的に遮断する手段、(3)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気を同じ温度に維持する手段、のいずれかを単独又は組み合わせて設けたことを特徴とする請求項26の免疫反応検出装置。
  29. 更に、前記反応容器中の電解質溶液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段を有し、前記制御手段は、前記電気伝導率検出手段が電解質溶液中における抗原と抗体との免疫反応に応じて出力する信号と、前記温度検出が電解質溶液中における抗原と抗体との免疫反応に応じて出力する信号と、に基づき、単位温度あたりの電気伝導率の変化量若しくは変化率に応じた信号を生成することを特徴とする請求項28の免疫反応検出装置。
  30. 抗原と抗体とを含む被検液を収容するための反応容器と、前記反応容器中の被検液の温度に応じた信号を出力する温度検出手段と、前記温度検出手段が被検液中における抗原と抗体との免疫反応に応じて出力する信号を検出する制御手段と、を有することを特徴とする免疫反応検出装置。
  31. 更に、(1)前記反応容器の外部雰囲気を一定温度に維持する手段、(2)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気とを熱的に遮断する手段、(3)前記反応容器の内部と前記反応容器の外部雰囲気を同じ温度に維持する手段、のいずれかを単独又は組み合わせて設けたことを特徴とする請求項30の免疫反応検出装置。
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