JPS641532B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （発明の技術分野） 本発明はカム面に再溶融硬化処理によるチル化
層を形成した鋳鉄製カムシヤフトの製造方法に関
する。

（従来技術とその問題点） カムシヤフトのカム部表面であるカム面は、ロ
ツカアームのチツプ等と摺接するため、他の部分
よりも高い耐摩耗性が要求される。

そこで、従来にあつては、カムシヤフトを鋳造
する際に、予め鋳型のカム面に相当する部分に冷
し金をセツトしておき、鋳造時にカム面を構成す
る溶湯を急冷し、高硬度のチル化層を形成するよ
うにしている。しかしながら冷し金をセツトして
チル化層を形成する場合には、チル化層の厚みコ
ントロールが極めて困難であり且つ冷し金のセツ
トも面倒であるばかりでなく、冷し金のセツト誤
差もあり研削代を多くとる必要があり、微細チル
を取りさり、粗チル部が摺接面に表われ硬度を低
下せしめ、耐摩耗性の低下につながる。

上述した不利を解消する手段として、プラズマ
アーク、エレクトロビーム或いはレーザビーム等
の高エネルギー熱源を利用して、一旦鋳造したカ
ムシヤフトのカム面を再溶融し、この再溶融部を
急冷することで、カム面に微細チル化層を形成す
ることが考えられる。

しかしながら、プラズマアーク等を用いてカム
面を全巾に亘つて再溶融せしめると、カム部端面
とカム面との境界部であるエツジ部にダレが生
じ、後の研削加工等の手間がかかるだけでなく、
カム巾全量にチル層を得ようとし研削するとチル
層が薄くなる。又所定のチル層を得るにはチル化
有効カム巾が狭くなり、ロツカーアーム摺接部の
面圧が高くなるという問題が生じる。

（発明の目的） 本発明は上述した問題点に鑑み成したものであ
り、その目的とする処は、再溶融硬化処理によつ
てカム面にチル化層を形成するにあたり、素材時
点でカム面のエツジ部まで全周に亘つて薄いチル
化層が形成されカム全巾を再溶融することなく且
つエツジ部にダレ発生のない硬化有効チル巾を減
少せずカム全巾にチル化層を形成した耐摩耗性の
高い鋳鉄製カムシヤフトの製造方法を提供するに
ある。

（発明の構成） 以上の問題を解決して目的を達成すべく本発明
は、鋳型内面のチル化促進剤の塗布、冷し金等に
よりカム表面とカム端面との境界ををなすエツジ
部の前記カム端面側に鋳造チル化層を形成した鋳
造カムシヤフトを得、次いで前記エツジ部の前記
カム端面側を除いて前記カム表面の全巾にわたり
再溶融硬化処理することで前記カム表面に前記エ
ツジ部における前記鋳造チル化層の前記カム表面
側にオーバーラツプした再溶融硬化処理によるチ
ル化層を形成し、カム全巾をチル化することを特
徴とする。

そして本発明は、前記エツジ部の前記カム端面
側を除く前記カム表面の全巾にわたる再溶融硬化
処理の際に高硬度金属粉末を添加することによつ
て前記カム表面に前記エツジ部における前記鋳造
チル化層の前記カム表面側にオーバーラツプした
高硬度金属粉末添加の再溶融硬化処理による合金
チル化層を形成することも特徴とする。

（発明の実施例） 以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説
明する。

第１図はカムシヤフトを鋳造するための鋳型の
内部を示す図であり、鋳型１にはカムシヤフトを
鋳造するためのキヤビテイ２が形成され、このキ
ヤビテイ２はカムシヤフトのカム部を鋳造する部
分３、軸部を鋳造する部分４、及びジヤーナル部
を鋳造する部分５からなる。また第２図及び第２
図Ａ―Ａ線断面図である第３図はキヤビテイ２を
拡大して示した図であり、キヤビテイ２のカム部
を鋳造する部分３はカム部の端面を成形する部分
３ａ及びカム部のカム面を成形する部分３ｂから
なり、これらの部分３ａ，３ｂの一部にはエツジ
部３ｃを含んでテルル、等のチル化（白銑化）促
進剤６を塗布している。

第４図は別実施例に係る鋳型１の一部を拡大し
て示した第２図と同様の断面図であり、この鋳型
１にあつてはキヤビテイ２のカム部を鋳造する部
分３のエツジ部３ｃに通常の冷し金よりも薄く形
状も単純な板状とした冷し金７をセツトしてい
る。尚この冷し金部分は第５図に示す如くバツク
メタルプロセスでのバツクメタル７ａを露出させ
ることと同様である。

次に本発明に係るカムシヤフトの製造方法につ
いて述べる。

先ず、第１図乃至第５図に示した鋳型１内に溶
湯を注入し、第６図に示す如きカムシヤフト８を
得る。ここで、鋳型１のキヤビテイ２のうち、カ
ム部の端面を成形する部分３ａとカム面を成形す
る部分３ｂとの境界部であるエツジ部３ｃにはチ
ル化促進剤６が塗布されるか、冷し金７がセツト
されているため、鋳造されたカムシヤフト８のカ
ム部９のカム端面９ａとカム面９ｂとの境界部で
あるエツジ部９ｃにはチル化層１０が形成され
る。またカム面９ｂの中央部９ｄつまりロツカア
ームのチツプ等と摺接する度合が最も大である部
分には未だチル化層は形成されていない。

次いで、第７図に示す如く、カム面９ｂの中央
部９ｄに対し、所定間隔離してプラズマトーチ１
１を臨ませ、カムシヤフト８を回転しつつ左右方
向に往復動せしめるか、或いはプラズマトーチ１
１を移動せしめ、プラズマトーチ１１から噴出す
るプラズマアーク１２によつてカム面の中央部９
ｄを再溶融せしめ、この再溶融部を急冷すること
で、カム面の中央部９ｄに再溶融硬化処理による
チル化層１３を形成する。ここでプラズマアーク
１２によつてカム面９ｂを再溶融するにあたり、
カム面９ｂのエツジ９ｃには鋳造の際に予めチル
化層１０が形成されている。したがつてプラズマ
アーク１２で再溶融する際にエツジ部９ｃのカム
端面９ａ側まで再溶融を必要としないので当然エ
ツジ部はダレが発生することがない。

第８図は別実施例を示す第７図と同様の断面図
であり、この実施例にあつては再溶融硬化処理に
よつて形成されるチル化層を合金チル化層１４と
している。

斯る合金チル化層１４を形成するにはシールド
キヤツプ１５に導入管１６を貫通したプラズマト
ーチ１１を用いる。即ち、プラズマトーチ１１か
ら噴出されるプラズマアーク１２中に、導入管１
６を介して高硬度金属、例えばCr，Mo，Ｓ等の
粉末１７を供給する。すると高硬度金属粉末１７
はプラズマアーク１２中に封じ込められ、プラズ
マアーク１２によつて溶融部内に強制的に侵入せ
しめられる。そして溶融部内に侵入した高硬度金
属粉末１７はカムシヤフト母材中に溶融するか或
いは均一に分散する。この後、再溶融部を急冷す
ることでカム部９のカム面９ｂの中央部９ｄに合
金（固溶を含む）チル化層１４が形成される。こ
の場合においても、再溶融に先立ち、カム面９ｂ
の両端エツジ部９ｃには予め鋳造の際にチル化層
１０を形成しているため、ダレが生じることがな
い。特に合金チル化層は従来の冷し金を利用した
方法によつては形成することはできず、本実施例
の如くエツジ部９ｃに予めチル化層１０を形成し
ておくことはダレ防止の点において極めて有効で
ある。

尚、以上の実施例にあつては、高エネルギー熱
源としてプラズマアークを利用した例を述べた
が、レーザービーム、エレクトロビーム等を利用
してもよい。

（発明の効果） 以上に説明した如く本発明によれば、再溶融硬
化処理によつてカム面にチル化層を形成するにあ
たり、カム面のエツジ部にダレを生じることな
く、寸法誤差或いは形状誤差が少なく且つ後の研
削加工も簡単に行えるカムシヤフトを得ることが
でき、特に高い耐摩耗性が要求されるカム面中央
部に合金チル化層を容易に形成することができる
等多くの効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る鋳鉄製カムシヤフトを鋳
造する鋳型の内部構造を示す図、第２図は同鋳型
の要部拡大図、第３図は第２図Ａ―Ａ線断面図、
第４図及び第５図は鋳型の別実施例を示す第２図
と同様の図、第６図は鋳造されたカムシヤフトの
一部を示す断面図、第７図は鋳造されたカムシヤ
フトに再溶融硬化処理を施している状態を示す断
面図、第８図は別実施例を示す第７図と同様の断
面図である。 尚、図面中１は鋳造、２はキヤビテイ、３はキ
ヤビテイのうちカム部を成形する部分、６はチル
化促進剤、７は冷し金、８はカムシヤフト、９は
カム部、９ａはカム部端面、９ｂはカム面、９ｃ
はエツジ部、１０，１３はチル化層、１４は合金
チル化層である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 鋳型内面のチル化促進剤の塗布、冷し金等に
   よりカム表面とカム端面との境界をなすエツジ部
   の前記カム端面側に鋳造チル化層を形成した鋳造
   カムシヤフトを得、 次いで前記エツジ部の前記カム端面側を除いて
   前記カム表面の全巾にわたり再溶融硬化処理する
   ことで前記カム表面に前記エツジ部における前記
   鋳造チル化層の前記カム表面側にオーバーラツプ
   した再溶融硬化処理によるチル化層を形成し、 カム全巾をチル化することを特徴とする鋳鉄製
   カムシヤフトの製造方法。 ２ 鋳型内面のチル化促進剤の塗布、冷し金等に
   よりカム表面とカム端面との境界をなすエツジ部
   の前記カム端面側に鋳造チル化層を形成した鋳造
   カムシヤフトを得、 次いで前記エツジ部の前記カム端面側を除いて
   前記カム表面の全巾にわたり高硬度金属粉末を添
   加しつつ再溶融硬化処理することで前記カム表面
   に前記エツジ部における前記鋳造チル化層の前記
   カム表面側にオーバーラツプした高硬度金属粉末
   添加の再溶融硬化処理による合金チル化層を形成
   し、 カム全巾をチル化することを特徴とする鋳鉄製
   カムシヤフトの製造方法。