JPS638341B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、トルク配分効果（torque
proportioning effect）を与えるために車輌の差
動装置に好適に用いられる変動梃率かさ歯車装置
（variable leverage bevel gearing）に関するも
のである。

通常の差動歯車装置は、２つの出力軸に均等に
しかトルクを伝達できないため、一方の出力軸に
連結された車輪がぬかるみにはいつたり凍結面に
乗り上げたりした場合は、その車輪が空回りする
だけで他方の車輪にはトルクが伝達されず、ぬか
るみや凍結面からの脱出ができないことは周知の
とおりである。

上記のような場合に対処するためには、入力軸
から２つの出力軸にトルクを適切に配分
（proportion）できることが必要であり、これは、
この技術分野でセルフロツキングといわれている
作用に等しい。

トルク配分変動梃率歯車装置については既に米
国特許第2436276号明細書、同第2009915号明細
書、同第3703108号明細書（特開昭47−35557号参
照）に記載されてある。これらに記載されている
変動梃率歯車装置において得られるトルク配分効
果は、米国特許第2436276号と第2009915号におい
ては約1.65まで、同第3703108号においては約2.0
までである。本発明においてはトルク配分効果は
2.5が得られる。

このような変動梃率歯車装置の現在の技術水準
に鑑み、本発明は、差動装置においてできる限り
大きいトルク配分効果が得られるようなかさ歯車
装置を得るのを目的とするもので、それは、標準
的なかさ歯車差動装置と交換可能であり、必要と
する特性を得るのに設計が簡単にでき、通常の機
械で簡単に安価に製作でき、他の差動装置よりも
耐久性に優れている。

前記公知の変動梃率歯車装置に比べて次のよう
な利点がある。

ａ 米国特許第2436276号及び同第2009915号に比
較して １ 接触線が長いので表面圧接応力が低い。

２ 歯が長くて浅いので曲げ応力が低い。

３ ピニオンが軸方向に長いのでピニオン軸孔
応力が低く取付安定性が良い。

４ トルク配分効果が高い、即ち、2.5対1.65。

５ 歯は標準的な歯切機構で切ることができ
る。

６ トルク配分効果が使用により減少すること
はない。

７ 歯車装置により滑らかに運動が伝達され
る。

８ 歯接触圧はピニオンの捩れ平衡状態で一定
である。

ｂ 米国特許第3703108号に比較して １ ピニオンは歯にかかる一定の接触圧の下で
捩れ平衡状態にある。

２ トルク配分効果が高い、即ち、2.5対2.0。

３ 必要とする特性がより簡単に得られる。

本発明を良く理解できるようにするために、従
来技術との基本的な差異を以下に述べる。

ａ 米国特許第2436276号及び同第2009915号にお
ける歯車装置の変動梃率効果は、特別に形成し
た歯形を備えた長めの歯を用いたピニオンの軸
直角平面に生ずる。歯接触圧は各歯の噛合サイ
クル中に変化する。

ｂ 米国特許第3703108号における変動梃率効果
は、２つのダブル円錐構造即ち、互いに離れた
頂点を有する部分的円錐構造の歯面を用いたピ
ニオン及びサイドギヤの軸直角平面に生ずる。
歯の接触圧にはいくらか変動が起こる。

ｃ 本発明における変動梃率効果は、変形された
標準かさ歯車のピニオン、歯先、（アデンダ
ム）、歯元（デデンダム）及び歯形（blank
geometry）を用いて、サイドギヤの軸直角平
面に生ずる。

歯接触圧は歯の噛合サイクル中一定である。

サイドギヤの軸直角平面に変動梃率が起こるこ
と及びピニオンの捩れ平衡状態で歯の接触圧が一
定であることにより生ずる大きな進歩と利益は次
のとおりである。即ち、 ａ 歯に過度の応力と摩耗を生ずる部分が除去さ
れ噛合サイクル中歯面にかかる荷重が一定とな
る。

ｂ ピニオンは取付部とスラスト面に一様な応力
を及ぼすので、ピニオン軸孔及びスラスト面に
過度の摩耗を生じさせない。

ｃ トルク配分効率が高い。

ｄ トルク配分効果は使用により弱まらない。

本発明の実施例が第１図、第２図に示されてあ
る。第１図は最大の変動梃率効果を得るために必
要なピニオン歯車とサイドギヤの歯の係合関係を
示す概略図で、第２図は、サイドギヤの軸直角平
面（plane of rotation）に変動梃率を生ぜしめ、
ピニオンの捩れ平衡状態のための一定の接触圧が
得られるように、ピニオンとサイドギヤの歯形を
修整した点を示すものである。

第１図は、９歯で25゜の圧力角のピニオンが、
接触比1.0となる歯末歯元比の12歯の歯車と係合
している状態を示している。それぞれの歯車の作
用線（line of action）は符号１，２で示されて
いる。ピニオン歯の歯末は、第１図に示す角位置
において、接触はピニオンと一つの歯車との間で
は３と４でしており、また、ピニオンと他の歯車
との間では５と６でしている。ピニオンは明らか
に捩れ平衡状態にある。もしピニオンが第１図に
おいて時計の回転方向に少し回つたとすれば、４
と５で接触しなくなる。もしピニオンが反時計方
向に回転したとすると、３と６で接触しなくな
る。対称的な接触状態から時計方向又は反時計方
向に回転すると、ピニオンの一つの歯の先端と別
の接触する歯の底部とで同時に接触することにな
る。接触圧が一定だと、第１図の紙面上において
はピニオンはもはや捩れ平衡状態ではなくなる。
しかし、第２図に示すようにピニオンと歯車の形
を変形すればあらゆる接触状態において一定接触
圧でピニオンの捩れ平衡状態が得られる。

第１図に平面的断面図として示されているピニ
オンと２つの歯車が第２図ではかさ歯車の断面図
で示されている。点線７は標準的ピニオン歯車か
ら削り取られた部分を示しており、点線８はかさ
歯サイドギヤから削り取られた部分を示してい
る。ピニオンとサイドギヤはそれぞれ７と８の部
分が削り取られてあつて、一方のサイドギヤとの
接触線９の中点（の集まり）と他方のサイドギヤ
との接触線１０の中点（の集まり）とはそれぞれ
線１１，１２と合致するようになつている。線１
１，１２はそれぞれサイドギヤの軸直角平面とな
つており、ピニオンの中心線より等距離にある。
一方のサイドギヤにおける接触線９は、他方のサ
イドギヤにおける接触線１０によつて生ずる回転
モーメントと同じ逆方向の回転モーメントを生
じ、そのためピニオンは接触線９，１０が同じ圧
力下にある限りすべての接触状態で捩れ平衡状態
になることは明白である。

第１図において、一方の歯車と３，４、他方の
歯車と５，６で示されている最初の接触状態は、
第２図においては一方のサイドギヤ１３，１４
で、他方のサイドギヤと１５，１６でそれぞれ示
されている。一方向にピニオンが少し回転すると
１４，１５での接触が終り、接点１３で一方のサ
イドギヤに生ずるトルクはR₁に比例し、接点１
６で他方のサイドギヤに生ずるトルクはR₂に比
例する。反対方向にピニオンが少し回転すると１
３，１６での接触が終り、接点１４で一方のサイ
ドギヤに生ずるトルクはR₁′に比例し、接点１５
で他方のサイドギヤに生ずるトルクはR₂′に比例
する。サイドギヤの軸直角平面における変動梃率
状態は、一方のサイドギヤに対してはR₁，R₁′に
より、また、他方のサイドギヤに対してはR₂，
R₂′により表わされる。

このR₁とR₂（又はR₁′とR₂′）の比で表わされる
値は歯車の回転中に変動し、これが、いわゆる変
動梃率である。本発明においては、この変動梃率
の値が1.3から1.4の値をとりうることにより、入
力軸から２つそれぞれの出力軸に対するトルク
T₁とT₂の比（トルク配分比）が2.5の値をとるこ
とができるのである。もちろん、この場合、入力
トルクはT₁＋T₂である。

第１図、第２図に記載した状態は、９歯のピニ
オンが25゜の圧力角で接触比1.0の12歯のサイドギ
ヤと係合して得られるものであるけれども、その
作用はこれらの条件に限定されるものではない。
むしろ、ピニオンは７又はそれ以上の歯を有して
もよいがサイドギヤはピニオンの歯数で割り切れ
る歯数としなければならない。実用上接触比は製
造組立誤差を考慮して1.0より少し大きくすべき
である。圧力角は22.5゜と30゜の間でよい。ピニオ
ンとサイドギヤの圧力角を小さくすると歯にアン
ダーカツトを生じ、歯の強度が低下し、また、圧
力角を大きくすると歯がとがつてしまう。トルク
配分効果は、圧力角22.5゜での約2.25から圧力角
30゜での約2.5までの範囲となる。

第３図は第２図のピニオンの詳細を示すもので
ある。歯車機構のレイアウトは以下のようにして
行われる。即ち、周知のかさ歯車機構のレイアウ
ト手順に従い、ピニオンのフエースライン２１―
２２及びサイドギヤのフエースライン２３―２４
を第１図に示した接触条件を得るようにピニオン
とサイドギヤの歯先（アデンダム）値を用いて定
める。ピニオンの削り取られる部分７は、第１図
の４及び６に示される接触点が点１７となるよう
に定められる。線１７，１８によつて示されるピ
ニオンの外径はピニオン軸に対して円筒状とな
る。ピニオンのフエースラインにおいて点１８及
び１９から等距離にある点１３はピニオン軸に平
行に描かれた線１１上にある点である。点１４も
同じく線１１上にある。サイドギヤの削り取られ
る部分である８は点２４と同じように点２０が点
１４から等距離にあるように点２０と２５の間で
定められ、点２５は線１９―２３に沿う第１図に
３及び５で示される接触点である。

上記のようにサイドギヤ及びピニオンの面を削
り取ることにより、所要の接触条件が得られ、サ
イドギヤの軸直角平面において変動梃率効果が得
られるものである。

第４図はハウジング（枠体）２６の中に組立て
られた第１，２及び３図の歯車機構を示すもので
ある。第２図のサイドギヤは第２図のピニオンと
噛合うようにハウジング２６に回転可能に設けら
れておりピニオンはトラニオン２７に回転可能に
設けられている。そしてトラニオン２７はハウジ
ング２６に固定されている。

本発明の差動歯車装置は構造が比較的簡単で耐
久性に優れているので、農耕用、産業用車輌の差
動装置として特に好適である。

以上本発明について実施例に従つて説明した
が、実施例は単なる一例にすぎず、これに限定し
て解釈されるべきものではない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明についての説明図、第２図は本
発明の実施例を示す断面図、第３図は第２図のピ
ニオンを詳細に示す断面図、第４図は本発明に係
る歯車機構の組立図である。 １，２…作用線、３，４，５，６…接触点、
７，８…ピニオン、サイドギヤより削り取つて修
整された部分、９，１０…接触線、１１，１２…
接触線９，１０の中点を結んだ線でサイドギヤの
軸直角平面。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 枠体、該枠体内に回転自在に取付けられそれ
   ぞれかさ歯をそなえた第１、第２のサイドギヤ、
   前記枠体内に回転自在に取付けられかさ歯をそな
   えた少くとも１つのピニオンよりなり、前記ピニ
   オンのかさ歯は前記第１、第２のサイドギヤのか
   さ歯と噛み合つており、前記サイドギヤのかさ歯
   とピニオンのかさ歯とは接触線を有し、前記接触
   線の中点は前記各サイドギヤの軸直角平面上にあ
   る、変動梃率差動歯車装置。 ２ 前記接触線の中点は前記少くとも一つのピニ
   オンの軸から等距離にある、特許請求の範囲第１
   項記載の変動梃率差動歯車装置。