JPS638002Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、走行ビームとすれ違いビームの切換
えが可能な車両用前照灯に関するものである。

従来の車両用前照灯のフイラメント配置例を第
１図及び第２図に示す。第１図はリフレクタ１の
放物面回転軸上に前方に向けて走行用フイラメン
ト、すれ違い用フイラメント３（走行用フイラメ
ントはすれ違い用フイラメント３の陰となる）を
順次配置し、このすれ違い用フイラメント３の下
側に遮光板４を配置した場合であり、すれ違いビ
ームの光像は第３図ａに示すようにリフレクタ１
の斜線を施した部分を除いた約半分の使用により
略半円形となり、走行ビームの光像は第３図ｂに
示すようにリフレクタ全体の使用により円形とな
る。

第２図はリフレクタ１の中心軸に走行用フイラ
メント２を配置し、その上方にすれ違い用フイラ
メント３を配置した場合であり、走行ビームの光
像は第４図ｂに示すように横長の楕中形となり、
すれ違いビームの光像は第４図ａに示すように楕
円がその短軸の一方向に膨れ上つた形状となる。

ところで、光像からも明らかなように第１図の
フイラメント配置では、すれ違いビームはリフレ
クタ１の約半分の光しか利用できないため、利用
率が悪い。

また、第２図のフイラメント配置では、すれ違
いビームの光像が拡がる傾向にあつて照度不足の
おそれがあるばかりでなく、走行フイラメント２
とすれ違い用フイラメント３の間隙をある一定値
以上確保しなければならないため、リフレクタ１
の中心点よりかなり下方に光像の中心が位置する
と修正が困難になるといつた問題があるほか、横
方向の光や弱く、横長のリフレクタと組合せた場
合には光の利用度が低くなるため、リフレクタ選
定に配慮を要する。

本考案は上記の点を考慮してなされたもので、
リフレクタをその放物面の焦点位置が上面と下面
で異なり、かつ下面側の焦点が上面側の焦点より
すれ違い用フイラメントの長さ以上前方に位置す
るように形成し、両焦点間にすれ違い用フイラメ
ントを位置させることにより、発光を効率よく利
用でき、かつ高光度の配光パターンから得られる
車両用前照灯を提供することを目的とする。

以下、本考案と図示の実施例に基づいて詳細に
説明する。

第５図及び第６図は本考案の一実施例を示すも
ので、１１はリフレクタ、１２は走行用フイラメ
ント、１３はすれ違い用フイラメントである。

前記リフレクタ１１は共通の放物面回転軸とし
た焦点距離f₁の上側の放物面（反射面Ａ，Ｂ）と
焦点距離f₂の下側の放物面（反射面Ｃ，Ｄ）を有
し、かつその焦点f₁，f₂（f₁の前方にf₂が位置す
る）の間に、すれ違い用フイラメント１３の長さ
ｌに０〜1.0mm足した値の距離だけ下側の放物面
の焦点f₂が前方に位置するようにしてある。両放
物面の境界はリフレクタの放物面回転軸Ｚと交差
する水平線としている。

前記すれ違い用フイラメント１３はリフレクタ
１１の放物面回転軸Ｚ上の両焦点f₁、f₂間に該放
物面回転軸Ｚに一致させて配置し、これより寸法
Ｓ（1.0〜3.0mm）だけ下方に走行用フイラメント
１２をすれ違い用フイラメント１３と平行に配置
している。この場合、走行用フイラメント１２は
すれ違い用フイラメント１３よりl″またはl′（0.5
〜1.5mm）長く形成し、後方（リフレクタ１１側）
にl″〜l″＋Ｌ／２または前方（レンズ側）にl′〜l′
＋ Ｌ／２突出する状態となる（但し、Ｌ：走行用フイ ラメント長さ）。なお、両フイラメントは上記位
置関係の電球として製造される。

上記構造とすると、すれ違い用フイラメント１
３からの光は焦点距離F₁と焦点f₁の反射面Ａ、Ｂ
に対してはその焦点f₁より外側の光となり、この
光が反射面Ａ、Ｂに照射されると、第７図ａに示
ように軸Ｚと交差する水平線（中心線）の下側に
光の像が結ばれる。また、焦点距離F₂、焦点f₂の
反射面Ｃ、Ｄに対しては焦点内の光となり、反射
面Ａ、Ｂと同じ位置に光の像が結ばれる。

一方、走行用フイラメント１２はすれ違い用フ
イラメント１３に対し寸法Ｓ（1.0〜3.0mm）の間
隙をもつてすれ違い用フイラメント１３の下方に
平行に配置されており、そのすれ違い用フイラメ
ント１３と同じ長さの部分についてはすれ違いビ
ームと同じ原理で光の像（第７図ｂの輪郭m₁）
が結ばれるが、寸法l″の部分から生じる光は焦点
距離F₁の反射面Ａ、Ｂに対しては焦点内の光と
なつて照射され、中心線の上側に光の像（第７図
ｂの輪郭m₂）が結ばれる。また、焦点距離F₂の
反射面Ｃ、Ｄに対しては寸法l″の部分の光は焦点
内の光となり、寸法ｌの部分と同じ指向性を持つ
ため、第７図ｂの輪郭m₃の光像となる。

なお、この走行ビームの場合は、前方にl′だけ
突出する状態で配置しても、反射面Ａ、ＢとＣ、
Ｄにおいて光の指向性か変わるだけで合成された
光の像は前述の寸法l″の場合と同じとなる。ま
た、反射面Ａ、Ｂ、Ｃ、Ｄのいずれかの反射鏡軸
を変えることにより、第８図に示すように光の像
を階段状に変えることが可能であり、この段階状
光像は車両に照明灯を取付ける場合、照明灯の中
心軸を見出すのに便利な光像となる。更に、第６
図の寸法Ｓ（フイラメント間隙）を変えたり、す
れ違い用フイラメント１３の右あるいは左側への
移動量Ｔを変えることにより、第９図に示すよう
に対向車にまぶしさを与えないようにしたり、右
側または左側を重点的に明るくすることが可能で
ある。

以上のように本考案によれば、リフレクタの反
射面構造の改良とフイラメントの配置関係の光学
的な考慮によつてすれ違いビームを形成するよう
にしたので、光か有効に利用され、十分な光度の
パターンが得られる。しかも、走行ビームは必要
最小限の光が上空照射に使用され、残りが路面照
射に使用されるため、路面を明るく照射すること
ができ、安全運転に寄与できる。特に、走行ビー
ムパターンの大半がすれ違いビームパターンと同
一位置になるようにしたので、ビーム切換時の違
和感がない。また、両フイラメントを上下に平行
に配置する第２図のタイプでは、フイラメントの
配置構成上走行ビームとすれ違いビームの切換え
幅の短縮に限度があり、そのすれ違いビームは縦
配列の第１図のタイプのすれ違いビームに比べて
近距離を照射し過ぎる嫌いがあるが、同じように
上下に平行に配置しても適切な範囲を高光度で照
射できる。更に、反射鏡軸の調整によつて種々の
光像が実現し得、対向車にまぶしさを与えること
なくすれ違いビームをより遠方に照射することが
可能であつたり、発光の有効利用によつて、フイ
ラメント縦配列のタイプにおける上下方向寸法の
縮小要求に応えることが可能であるといつた利点
がある。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は従来の車両用前照灯のフイ
ラメント配置例を示す正面図、第３図ａ、ｂ及び
第４図ａ、ｂは第１図、第２図のフイラメント配
置のすれ違いビームと走行ビームのパターンを示
す図、第５図及び第６図は本考案の一実施例を示
す縦断面図及び正面図、第７図ａ、ｂは同実施例
のすれ違いビームと走行ビームのパターンを示す
図、第８図及び第９図はそれぞれ本考案によつて
実現可能なパターンを示す図である。 １１……リフレクタ、１２……走行用フイラメ
ント、１３……すれ違い用フイラメント、Ａ，
Ｂ，Ｃ，Ｄ……反射面、F₁，F₂……焦点距離、
f₁，f₂……焦点、ｌ……すれ違い用フイラメント
の長さ、l′，l″……走行用フイラメントとすれ違
い用フイラメントの長さの差寸法、Ｓ……両フイ
ラメントの間隙寸法。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 走行用フイラメントとすれ違い用フイラメント
   をリフレクタの放物面回転軸と平行に、かつすれ
   違い用フイラメントが走行用フイラメントの上方
   に位置する如く配置した車両用前照灯において、
   前記リフレクタは共通の放物面回転軸とした焦点
   位置の異なる二つの放物面であつて、かつ下側の
   放物面の焦点が上側の放物面の焦点より前記すれ
   違い用フイラメントの長さ以上前方に位置するよ
   うに形成し、前記両焦点間でかつ前記放物面回転
   軸に一致させてすれ違い用フイラメントを配置
   し、その下方に前記すれ違い用フイラメントと平
   行に走行用フイラメントを配置したことを特徴と
   する車両用前照灯。