JPS63752B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は原子炉の制御棒に関する。

原子炉の制御棒はボロンカーバイト（B₄C）粉
末を理論密度の約70％（比重約1.76ｇ／cm²）の密
度で金属中空棒に振動充てんして製作された中性
子吸収棒を用いて構成される。この制御棒を原子
炉炉心に装荷して使用すると、B₄C中のボロン―
10（Ｂ―10）が中性子の照射をうけ、いわゆる
（ｎ，α）反応によりヘリウム（He）ガスを発生
し、金属管内の圧力を上昇させるので、制御棒の
機械的寿命は比較的短かい。また中性子を吸収し
てＢ―10が減損すると、B₄Cの中性子吸収断面積
が中性子の照射量に対して直線的に減少し、その
結果中性子束レベルが上昇するので、Ｂ―10の減
損割合はＢ―10の残存量が低下するにつれて加速
度的に増大し、制御棒の反応度価値も加速度的に
低下し核的寿命も短かくなる。制御棒の寿命はこ
の機械的と核的寿命のうち短い方で決定される
が、何れにしても比較的短いので、交換に際して
処理を必要とする放射性廃棄物を大量に発生する
欠点がある。

本発明者等は前述した従来の制御棒の問題点に
鑑み、ヘリウムガスを発生せず、また中性子を吸
収して生成された核種が中性子吸収断面積の大き
くなる核的寿命の長い核種により中性子吸収棒を
形成した制御棒を開発した。

前記の吸収棒は、酸化ユーロピウム粉末と酸化
ハフニウム粉末との混合粉末を金属管の一部また
は全長にわたつて充填して成るものである。

ところがユーロピウムは希土類であり高価な材
料であるため、コスト上難点があつた。また、酸
化ハフニウム粉末のみでは反応度価値が低く、制
御棒用の中性子吸収材としては不充分である。

これに対し、ハフニウムのソリツドメタルによ
り中性子吸収棒を形成すれば、価格上の問題もな
く反応度的にも充分なものとなるが、ハフニウム
は硬く、密度が大きいので前記の中性子吸収棒を
使用した制御棒には次のような問題を生じる。

すなわち、複数本の吸収棒をブレード内に収容
した制御棒の剛性がかなり高くなり、燃料集合体
間の十字状空隙に挿入するに際し、制御棒と燃料
集合体とが接触すると、燃料集合体を突上げるお
それがある。そのため原子炉のスクラム時の制御
棒挿入速度を下げることが必要となり、原子炉の
緊急停止がし難くなる。

さらに、ハフニウムは密度が大であるため、制
御棒が重くなり制御棒駆動機構を強化する必要が
ある。

本発明は上記の事情に基きなされたもので、例
えばハフニウムの如き中性子吸収能力のあるソリ
ツドメタルから成る中性子吸収棒を使用したもの
であつて、軸に直角方向の剛性が小さくしかも軽
量な原子炉用制御棒を得ることを目的としてい
る。

本発明においては、ハフニウム等による中性子
吸収が共嗚吸収であることに着目して前記目的を
達成している。

以下、図面につき本発明の詳細を説明する。第
１図、第２図において、細長いＵ字状断面のシー
ス１内にはハフニウムソリツドメタル線材を螺旋
状に巻回して構成した中性子吸収棒２が収納さ
れ、シース１は、断面十字状のタイロツド３に連
結されてブレードを形成している。第３図は中性
子吸収棒２を拡大して示している。

上記の如く螺旋状とした中性子吸収棒は、軸に
直角方向の剛性が小さいため、それを多数装填し
て成る本発明の制御棒も軸に直角方向の剛性が小
である。従つて、制御棒挿入時に制御棒が燃料集
合体にふれたとしても、制御棒は変形して逃げる
ことができるので、燃料集合体を突上げることは
なく、原子炉停止時の制御棒緊急挿入速度を低下
させる必要はない。

また、上記の如く螺旋状とした中性子吸収棒を
使用しているので、密度の大きなハフニウムを材
料としていながら、制御棒を軽量化することがで
き、従つて制御棒駆動機構を特に強化する必要は
ない。さらに、ハフニウムによる中性子吸収は共
嗚吸収であり、その吸収能力は表面積により定ま
るので、上記の如くして軽量化しても表面積は同
径の中実の丸棒より大であり、吸収能力は中実の
丸棒よりすぐれている。

第４図は本発明の他の実施例要部を示す。第４
図に示した中性子吸収棒２は、細い丸棒から成る
芯材４にハフニウムソリツドメタルの線材５を螺
旋状に巻回して形成されている。なお、芯材４は
ハフニウムにより構成してもよいが、別核種の中
性子吸収材料により構成すれば、共嗚の重りによ
る芯材の共嗚効果の滅殺を防止することができ
る。

この中性子吸収棒により制御棒を構成しても前
記説明した制御棒と同様の作用効果が得られるこ
とは明らかである。

なお、本発明は上記実施例のみに限定されな
い。例えば第３図、第４図に示す螺旋状に巻回し
た線材は複数条の単位線材より成るものとしても
よい。この場合においてそれぞれの単位線材を異
る核種のものとすれば、共嗚の重りを避けること
ができるので、より効果的に中性子を吸収させる
ことができる。また、芯材４を細線を束ねたもの
により構成してもよい。さらに、相隣る中性子吸
収棒の螺旋のより方向を逆方向のものとしておけ
ば、それらがからみ合うことがないのでシース内
への挿入が容易となる。また、本発明は例えば
Ag―In―Cd合金の如き中性子吸収材料による制
御棒についても適用し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明一実施例の斜視図、第２図は第
１図―線における断面図、第３図はその中性
子吸収棒の拡大正面図、第４図は中性子吸収棒変
形例の拡大正面図である。 １…シース、２…中性子吸収棒、３…タイロツ
ド。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 中性子吸収能力のあるソリツドメタルから成
   る線材を螺旋状に巻回して成る中性子吸収棒を装
   填したことを特徴とする原子炉用制御棒。 ２ 前記線材を核種の異る複数の単位線により構
   成したことを特徴とする特許請求の範囲第１項記
   載の原子炉用制御棒。