JPS6333016Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は芯出し治具を備えたメカニカルシー
ルに関し、回転環と非回転環の芯出しをスプリン
グ締代の調整と共に精度良く簡単に行い得るよう
にしたものである。

メカニカルシールは周知の通り、回転環と非回
転環の密封面を互いに摺動させることにより洩れ
止めを行うものであるが、その重要な要素として
回転環と非回転環との接触圧力を調整するために
スプリング締代を調整することと、回転環と非回
転環をほぼ同芯に調整することがある。

スプリング締代が適切でない場合には、洩れや
焼付きが生じ、また回転環と非回転環の軸芯が同
芯でない場合には、特に太径シールや高速シール
或は高圧シールの場合には軸芯のずれにより密封
摺動面で所謂“みそすり運転”を行い、洩れや異
常摩耗を生ずる。

そのため従来は第１図に示すように、軸４に嵌
挿されたスリーブ５上の所定位置に切欠５２を設
け、この切欠５２にセツトプレート５０を装着し
て該セツトプレート５０によりケーシングカバー
Ｂの端面位置を規制してスプリング締代を調整し
ている。また回転環２と非回転環３との芯合せ
は、ケーシングカバーＢにいんろう５１を形成
し、これをスタフイングボツクスＡに嵌め合せる
ことにより行つている。

しかし、上記いんろう５１を用いた芯合せはス
タフイングボツクスＡを介しての芯合せであるた
め、回転軸４とスタフイングボツクスＡの軸芯の
ずれがそのまま回転環２と固定環３の軸芯のずれ
となる欠点がある。これは大型で回転軸のたわみ
の大きな機械や竪型ポンプ、撹拌機、ブロワ等軸
中心とケーシングの芯合せが精度良く行い難い場
合に大きな欠点となる。また多段ポンプにおいて
は、多筒ケーシングのいんろうの嵌め合せを積み
重ねることになるため、いんろうの誤差、遊び、
或は加工誤差が累積されて芯ずれが大きくなる欠
点がある。

更にいんろう５１は第１図に示すように回転環
２側に張出すため、その分回転環２の径を小さく
する必要があり、そのため剛性が不足して歪みの
原因となりやすいという問題があつた。また、い
んろう５１の形成及びスタツフイングボツクスＡ
側の嵌め合せ部の加工には高精度のものが要求さ
れる上、いんろう５１部分は輸送中や装置時に欠
損しやすい等の欠点があつた。

本考案は上記したいんろうを用いた芯出しの欠
点を改善すべくなされたもので、いんろうを用い
ない新たなメカニカルシールを提供しようとする
ものである。

以下本考案のメカニカルシールの一実施例を図
面に基づいて説明する。

第２図は本考案によるメカニカルシールの一実
施例を示す断面図、第３図はそのＸ−X′線断面
図、第４図及び第５図は挿入片の詳細図である。

このメカニカルシールは芯出し治具１０を有し
ており、これは挿入片１１と固定具１２とから構
成されている。挿入片１１は第４図又は第５図に
示すように側面Ｌ字形状をなしており、挿入部１
１０と垂直部１１１がほぼ直角に結合され、その
挿入部１１０がケーシングカバー１とスリーブ５
又はスリーブを用いない場合は回転軸４との間に
嵌装される。この挿入部１１０の厚さは、ケーシ
ングカバー１の内周半径と回転軸４の半径及びス
リーブ５を用いる場合はスリーブの半径の差ほぼ
相当する値とする。この挿入部１１０の構成は、
第４図に示すようにピン状体とし、これを垂直部
１１１に接着又は溶接するようにしても良い。ま
た第５図に示すように垂直部１１１に連続する板
状体とし、その下端面を回転軸またはスリーブの
ｒに合せて削り出した構成としても良い。

挿入片１１の数量は少なくとも２ケ以上とす
る。この実施例では120゜毎に合計３ケの挿入片１
１を用いている。

この挿入片１１は固定具１２によりケーシング
カバー１に着脱自在に固定される。固定具１２
は、この実施例においては、ケーシングカバー１
側にめねじ孔１２０を設け、同時に挿入片１１の
垂直部１１１に孔１１２を設けてボルト１２１に
よりケーシングカバー１端面に固定する構成をと
つている。

本考案では更に、芯出し治具１０と共にスプリ
ング締代調整のためにセツトプレート５０を用い
ており、セツトプレート５０の下端を切欠き５２
に挿入して、ケーシングカバー１端面に固定具１
２で固定している。また第３図に示すようにこの
セツトプレートを各挿入片１１の間に３個配設す
るようにしている。なお、セツトプレート５０は
２ケ設ければ十分である。

本考案においてケーシングカバー１にはいんろ
うを形成する必要はない。また、この実施例にお
いては内側に突出する突出部１ａを形成している
が、これを設けずに屈曲部１１０の肉厚をその分
だけ厚くしても良い。

なお、図中２は回転環、３は非回転環、６はセ
ツトカラー、７はスプリング、８はスプリング受
け、９はナツトである。

次にこのメカニカルシールの組立て法を説明す
る。

まず、スリーブ５に、スプリング受け８、スプ
リング７、回転環２を取付け、ケーシングカバー
１に非回転環３をセツトし、この状態で該ケーシ
ングカバー１と固定環３をスリーブ５に挿入し、
セツトプレート５０でまず軸方向の位置を固定す
る。これによりスプリング受け８の非回転環３
（及びケーシングカバー１）に対する軸線方向位
置が規制され、スプリング７の締代が所定のもの
に設定される。次に挿入片１の挿入部１１０をケ
ーシングカバー１とスリーブ５との間に挿入し、
垂直部１１１をケーシングカバー１端面に当接し
ボルト１２１により固定する。これにより非回転
環３と軸又はスリーブとの中心合せが行なわれ、
その結果回転環２と非回転環３の芯出しが行なわ
れる。この状態で該スリーブ５を軸４に挿入し、
スタツフイングボツクスＡにナツト９で固定する
ことにより自動的に軸芯と同一になる。この芯出
しは、スタツフイングボツクスＡを介しての芯出
しではなく回転軸４からの直接の芯出しであるた
め極めて精度の高いものが得られる。その後、挿
入片１１及びセツトプレート５０を取外し作業を
完了する。

以上説明したように本考案のメカニカルシール
によれば、回転軸を直接に基準とした芯出しが出
来るから精度の極めて高いものとなる。更にこの
芯出しはスプリング締代の調整と同時に行なえ、
ケーシングカバーの端面において固定具で挿入片
とセツトプレートを固定するという同一個所の同
一作業で行なうことが出来るから作業性も非常に
高い。また、いんろうを必要としないから、いん
ろう製作のための工程の簡略化が図れ、輸送途中
での破損が生ずることなく、また回転環の外径を
大きくすることが出来るから剛性が増し歪の防止
を図ることが出来る等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の芯出し法を示すメカニカルシー
ルの半断面図、第２図は本考案の一実施例を示す
断面図、第３図は第２図におけるＸ−X′線断面
図、第４図は挿入片の一実施例の詳細図、第５図
は他の実施例の詳細図である。 図中、１０は芯出し治具、１１は挿入片、１１
０は挿入部、１１１は垂直部、１１２は孔、１２
は固定具、１２０はめねじ孔、１２１はボルトを
各示す。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ケーシングカバーに装着された非回転環と回転
   軸またはスリーブに装着された回転環の芯出しを
   行なうに際して使用され、ケーシングカバーの内
   周と回転軸またはスリーブとの隙間に挿入される
   ２以上の挿入片と、該挿入片を前記ケーシングカ
   バーに着脱可能に固定する固定具と、 回転環と非回転環とを押圧するスプリングの締
   代を調整するためのセツトプレートと、該セツト
   プレートの下端を嵌挿する回転軸又はスリーブに
   形成された切欠きと、該セツトプレートをケーシ
   ングカバー端面に固定する固定具とを有し、 前記挿入片が回転軸またはスリーブの外周の半
   径とケーシングカバーの内周の半径との差にほぼ
   等しい厚みを有する挿入部と該挿入部とほぼ直角
   に結合しケーシングカバーの端面に当接する垂直
   部とから成るＬ字状片であり、 前記少なくとも２以上の挿入片の挿入部を非回
   転環を装着したケーシングカバー内周と回転軸ま
   たはスリーブとの隙間に挿入し、垂直部をケーシ
   ングカバー端面に当接して前記固定具により固定
   することにより非回転環と回転軸またはスリーブ
   との中心合せを行ない、 更に、前記セツトプレートをケーシングカバー
   の端面に当接すると共にその下端を前記切欠に嵌
   挿して、前記固定具により固定することによりス
   プリング締代を調整し、 組み立後には前記挿入片及びセツトプレートを
   取り外すように構成したことを特徴とする芯出し
   治具を備えたメカニカルシール。