JPS6330573B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はいわゆる中性キヤリアタイプのイオン
選択性電極を用いたイオン濃度測定装置に係り、
特に再生機構を具備したイオン濃度測定装置に関
する。

従来からイオン選択性電極は液中の特定のイオ
ン濃度を選択的に定量できる特徴がありこれまで
も特定イオンのモニター、水質分析など広い分野
において用いられてきている。

これは、例えば陽イオン選択性電極の場合には
対象とする陽イオンの活量a⁺と陽イオン選択性
電極が示す電位Ｅとの間には、 Ｅ＝E°＋2.303（RT／ZF）log a⁺ ……(1) のような、また陰イオン選択性電極の場合には対
象とする陰イオンの活量a^-と陰イオン選択性電
極の示す電位Ｅとの間には、 Ｅ＝E゜＋2.303（RT／ZF）log a^- ……(2) のような活量の対数と電位が比例する関係が成立
し、電位の測定値から目的とするイオンの活量を
簡単に計算できるからである。

なお、式(1)及び(2)において、Ｒは気体定数、Ｔ
は絶対温度、Ｚはイオン価、Ｆはフアラデー定
数、E゜は系の標準電極電位である。

このように、イオン選択性電極を用いれば電位
を測定するだけで広い濃度範囲でのイオン濃度の
定量が可能となる。また、イオン選択性電極を用
い、電極部を小型にすれば少量のサンプルでの測
定が可能となる。このように、イオン選択性電極
便利なので、最近ではこれを医用、とくに血液中
に存在するイオン，例えばNa⁺，K⁺，Cl^-などの
各種イオンの定量に用いる試みが盛んになつてい
る。

また、実際に前記イオン選択性電極を用いた測
定装置も多種類考案されていて、血液の分析とか
院用関係の分析装置としての用途が広まりつつあ
る。

ところが、従来の中性キヤリアータイプのイオ
ン選択性電極を用いたイオン濃度分析装置の場合
には被測定液を血清とか血液とした場合には血清
や血液の成分により、イオン選択性膜の成分の１
つである可塑剤がイオン選択性膜から他の成分に
比して優先的に抽出されてしまうため用いたイオ
ン選択性電極がたとえば１か月程度とか短時間内
に劣化してしまうという欠点があり、前記イオン
選択性電極が劣化するたびに、そのイオン選択性
電極を交換せねばならないという欠点があつた。

本発明は前記の欠点に対処するために提供され
たもので簡略化された機構で非測定時を活用して
イオン選択膜の劣化を再生する事によりイオン選
択性電極を長期にわたつて使用する事のできるイ
オン濃度測定装置を提供しようとするものであ
る。

本発明はプラスチツク中にイオン選択性を有す
る中性キヤリヤー及び可塑剤を含むイオン選択膜
を備えたイオン選択性電極と基準電極とからなる
電極群と、前記電極群と出力からイオン濃度を求
める測定機構と、前記電極群が設けられたイオン
濃度測定用セルと、前記イオン濃度測定用セルに
被測定液を供給し又排出する被測定液の供排機構
と、前記イオン濃度測定用セルに前記イオン選択
膜中に含まれる可塑剤もしくは同種の可塑剤を供
給し、又排出するイオン選択膜の再生機構と、被
測定液のイオン濃度測定時に前記イオン濃度測定
用セル中に被測定液を供給し、前記測定後に排出
する如く被測定液の供排機構を動作せしめ、かつ
前記イオン濃度の非測定時の少なくとも所定時間
に測定イオン濃度測定用セル中に前記可塑剤を供
給する如く再生機構を動作せしめる制御機構とを
具備したイオン濃度測定装置である。

つまり本発明はいわゆる中性キヤリアタイプの
イオン選択性電極において、イオン選択膜中に含
まれる可塑剤もしくは同種の可塑剤をイオン選択
膜に供給する事により効率よく、かつ再現性に優
れたイオン選択膜の再生が出来るという新たな見
知に基づき、イオン濃度測定装置において、非測
定時間を有効に活用し、上記再生が簡略化された
機構で可能となるイオン濃度測定装置を見い出し
たものである。

ここで、イオン選択膜は電極を被検液中に浸漬
した場合、該被検液中にに存在する分析対象の特
定イオンに対してのみ選択的に作用する可撓性の
高分子膜である。このような膜は例えば対象とす
る特定イオンがNH₄ ⁺；Na⁺；K⁺の場合には、そ
れぞれナクチン類；モネンシン，ニゲリシン，ク
ラウンエーテル類；バリノマイシン，クラウンエ
ーテル類のような疎水性の中性キヤリヤと、ジオ
クチルアジペート，ジオクチルフタレート，セバ
シン酸ジブチル，ジブチルフタレート，リン酸ト
リクレシル，ジアミンフタレート，ジデシルフタ
レートのような可塑剤とをポリ塩化ビニル膜、ポ
リカーボネート膜などのプラスチツク膜材に所定
の配合量で含有せしめた高分子膜から構成されて
いる。ここで、上記イオン選択膜に用いる可塑剤
は用いた膜材に対する相溶性に富み、かつ、前記
中性キヤリヤを溶解させる性質を有するものであ
ればよく、たとえばポリ塩化ビニル中にバリノマ
イシンと可塑剤としてのジオクチルアフタレート
により構成されている膜が劣化した場合にはジオ
クチルアフタレートにより再生できることはもち
ろんであるが、同種の可塑剤であるジオクチルア
ジペートを用いてもよい。

つまり本発明において再生機構に用いる同種の
可塑剤とは上述の如き可塑剤を意味するものもの
である。

以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説
明していく。第１図は本発明の一実施例としての
血清中のNa⁺イオン，K⁺イオンを定量するため
のイオン濃度測定装置の概略図である。図中１は
ポリ塩化ビニル膜中性キヤリヤーであるモネンシ
ンと可塑剤としてのジオクチルアジペートを含む
Na⁺イオン選択膜を有するNa⁺イオン選択性電極
２はポリ塩化ビニル膜に中性キヤリヤーであるバ
リノマイシンと可塑剤としてのジオクチルアジペ
ートを含むK⁺イオン選択膜を有するK⁺イオン選
択性電極、３は基準電極としての銀―塩化銀電極
である、４は被測定液を前記イオン選択性電極
１，２および前記基準電極３からなる電極群が設
けられ、イオン濃度を測定するためのイオン濃度
測定用セル（フローセル）、５はフローセル中の
被測定液の流路である。６は測定に供するサンプ
リングされた被測定物としての血清を導入するパ
イプ、７は前記血清を希釈するための希釈室、８
は前記希釈室へ希釈液および洗浄液を導くための
パイプ９は前記血清と希釈液とを撹拌する撹拌
子、１０は前記撹拌子を回転するためのモータ
ー、１１は測定を終了した廃液を排出するための
パイプ、１２は前記撹拌室から被測定液をフロー
セル４を経由してパイプ１１の方へ導くためのポ
ンプである。１３は希釈・洗浄液（本装置では希
釈液、洗浄液として同一の液を用いている。）を
たくわえておくためのタンク、１４は前記タンク
１３より希釈・洗浄液を前記希釈室７へ導く際に
用いるポンプである。１５は電磁弁であり、希釈
室７とフローセル４との間での被測定液や希釈・
洗浄液の流れを遮断するためのものである。この
様な希釈・洗浄液タンク１３，希釈室７、電磁弁
１５、被測定液の排出用のパイプ１１およびこれ
らの間に設けられたパイプ，ポンプ等により被測
定液の供排機構が構成されている。１６は前記イ
オン選択性電極の電位を測定する測定機構、１７
は前記電位の測定結果から血清中のNa⁺イオン濃
度、K⁺イオン濃度を計算し、表示するための計
算・表示機構である。

また２０は可塑剤溜め、２１は可塑剤受け、２
２，２３はそれぞれ可塑剤を流したり止めたりす
る弁、２４は可塑剤を排出するための排管であ
る。また、２５は可塑剤がパイプ１１の方に流れ
ないようにするための電磁弁であつて、これらの
可塑剤溜め２０、可塑剤受け２１、弁２２，２３
等により再生機構が構成されている。（なお、前
記流路５は分析液や可塑剤、洗浄液がパイプ１
１，２４の方に流れやすくするために傾斜をもた
せてある。）また、１８は前記電磁弁１５，２
５；前記弁２２，２３；前記モーター１０；前記
ポンプ１２，１４；前記測定機構１６；および必
要に応じ前記計算・表示機構１７の動作を制御す
る制御機構であり、被測定液のイオン濃度測定時
に前記イオン濃度測定用セル中に被測定液を供給
し、前記測定後に排出する如く被測定液を排出す
る如く被測定液の供排機構を動作せしめると共に
測定機構によりイオン濃度を測定し、かつ非測定
時の少なくとも所定時間に前記イオン濃度測定用
セル中に可塑剤を供給し、前記イオン選択膜を再
生した後に排出する如く再生機構を動作させる。
またパイプ６より被測定物を導入しない場合には
流路５；パイプ８；希釈室７；撹拌子９；モータ
ー１０；ポンプ１２，１４；タンク１３は全体で
前記イオン選択性電極やイオン濃度測定セルの洗
浄機構となる。

上記の本装置により血清中のイオン濃度の分析
を行なう場合にはの動作を説明する。

まず、弁２２，２３を閉じたまま保ち、また電
磁弁２５は開いたままの状態を保つ。

次に電磁弁１５を閉じた状態でパイプ６より濃
度を測定したいイオンを含む所定量の血清を希釈
室７に導き、続いて、ポンプ１４の働きによつて
希釈室に血清の９倍量の希釈・洗浄液が導入され
る。ここで、モーター１０によつて前記撹拌子９
が回転し、血清は10倍に希釈される。10倍に希釈
された血清は続いて電磁弁１５が開くことと、ポ
ンプ１２によつて徐々にフローセル４の方へ導か
れる。フローセルの被測定液の流路が10倍希釈の
血清でみたされたとき、前記イオン選択性電極
１，２と基準電極３と電位の測定機構１６により
前記イオン選択性電極１，２と基準電極３と電位
の測定機構１６により前記イオン選択性電極の電
位が測定される。電位の測定結果は計算・表示機
構１７に送られ、解析して得られたNa⁺，N⁺イ
オン濃度が表示される。この間ポンプ１２は動作
しているが、前記希釈室７の被測定液がなくなつ
た時点で動作を停止し、同時に電磁弁１５を閉じ
る。続いて希釈室中には前記希釈・洗浄液がみた
され、続いて再び電磁弁１５が開き、ポンプ１２
が作動するとともに前記のフローセル４、イオン
選択性電極１，２と基準電極３の洗浄が行なわれ
る。洗浄液が流路５やパイプ１１からなるまでポ
ンプ１２は作動する。続いて電磁弁１５が閉じら
れ、再びもとの測定操作がくり返される。なお、
第１図のイオン濃度測定装置において予め既知濃
度のNa⁺，N⁺イオン溶液を血清の代わりに用い
ることにより随時、イオン選択性電極の較正がで
きるようになつている。

次に、可塑剤溜め２０、可塑剤受け２１、弁２
２，２３、排管２４、電磁弁２５および流路５に
より構成される前記再生装置を非測定時の少なく
とも所定時間に限り動作させ、前記イオン選択性
電極を前記イオン選択性膜に用いてあるのと同一
のまたはの可塑剤に浸漬させイオン選択膜を再生
するためには電磁弁１５，２５をともに閉じた状
態で弁２２を開き弁２３を開きつつもその開き方
を調節しておき、可塑剤だめ２０に所定量の可塑
剤を入れる。すると、可塑剤はフローセル４中の
流路５を通つて排管２４から可塑剤受け２１に重
力の影響により自然に滴下していく。

なお、弁２３の開き方を調節し、可塑剤溜め２
０に入れる可塑剤の量を適当に定めることによ
り、本装置を分析に使用せず休止させている間に
所定時間だけ中性キヤリヤータイプのイオン選択
性電極を可塑剤に浸すことができ、前記イオン選
択性電極の劣化を防止できる。

本装置を用いることにより、従来の血清分析装
置では１か月程度しか寿命を有せず、その都度、
新しいものと交換する必要のあつた中性キヤリヤ
ータイプのNa⁺イオン選択性電極やK⁺イオン選
択性電極に時々可塑剤に接触させることにより、
それらイオン選択性電極を６か月以上にわたり使
用することができた。

本装置により血清分析などにおいても中性キヤ
リヤータイプのイオン選択性電極を長期間にわた
り使用可能となつたが、本発明の利点は同一期間
で使用する電極の本数が単に節約されるのみなら
ず、必要以上の電極交換のため装置を休止させる
時間も少なくてすむなどの利点がある。また、本
装置においては所定時間に限り可塑剤にイオン選
択性電極を浸せるため、可塑剤への侵しすぎによ
る中性キヤリヤータイプのイオン選択性膜がふや
けるなどの心配もない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の血清中のNa⁺，
K⁺イオン濃度測定装置の概略図；１…Na⁺イオ
ン選択性電極；２…K⁺イオン選択性電極；４…
イオン濃度測定用セル（フローセル）；７…希釈
室；１３…タンク、２０…可塑剤だめ、２１…可
塑剤受け。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ プラスチツク中にイオン選択性を有する中性
   キヤリヤー及び可塑剤を含むイオン選択膜を備え
   たイオン選択性電極と基準電極とからなる電極群
   と、 前記電極群の出力からイオン濃度を求める測定
   機構と、 前記電極群が設けられたイオン濃度測定用セル
   と、 前記イオン濃度測定用セルに被測定液を供給
   し、又排出する被測定液の供排機構と、 前記イオン濃度測定用セルに前記イオン選択膜
   中に含まれる可塑剤もしくは同種の可塑剤を供給
   し、又排出するイオン選択膜の再生機構と、 被測定液のイオン濃度測定時に前記イオン濃度
   測定用セル中に被測定液を供給し、前記測定後に
   排出する如く被測定液の供排機構を動作せしめ、
   かつ前記イオン濃度の非測定時の少なくとも所定
   時間に前記イオン濃度測定用セル中に可塑剤を供
   給する如く再生機構を動作せしめる制御機構とを
   具備した事を特徴とするイオン濃度測定装置。