JPS632632Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は圧縮機の軸受装置に関する。

〔考案の技術的背景〕

一般に空気調和装置や冷凍食品陳列ケース等に
は冷媒圧縮用の圧縮機が用いられている。

第１図はこの種の圧縮機の一種を示している。

図中、符号１は圧縮機の密閉ケースであり、こ
の密閉ケース１内の下部には回転軸２によつて偏
心回転駆動されるロータ３等からなる圧縮部４が
設けられてあり、上部には回転軸２の上端部に固
着された回転子５と密閉ケース１に固着された固
定子６からなるモータ７が設けられている。

圧縮部４について更に説明すると、ロータ３の
外側には円形のポンプ室８を形成するシリンダ部
９が密閉ケース１に固着して設けられており、こ
のシリンダ部９の上下にはそれぞれポンプ室８の
上下面を形成するとともに回転軸２を一定厚さの
潤滑油膜を介して回転自在に支承する軸受装置１
０，１０が固着されている。そして、回転軸２の
下部中心には密閉ケース１の底部に溜つた潤滑油
１１を吸上げる油ポンプ１２が設けられており、
更にその油ポンプ１２の上部から上の軸受装置１
０と回転軸２との間の軸受間隙１８（第２図）へ
潤滑油１１を供給する横孔１３が穿設されてお
り、更に回転軸２の外周面には回転軸２の回転に
より潤滑油１１と軸受間隙１８に沿つて上昇供給
せしめる螺旋溝１４が刻設されている。

この圧縮機においては、モータ７により回転軸
２を回転させると、外部より冷媒１５がアキユム
レータ１６を通してポンプ室８内に吸引され、こ
のポンプ室８で圧縮されて密閉ケース１内に吐出
され、吐出管１７から外部へ送給される。この冷
媒圧縮と同時に底部の潤滑油１１は油ポンプ１２
により吸上げられ、軸受間隙１８に入つて潤滑油
膜（第２図横細線部）として軸受に供され、軸受
間隙１８の上端の潤滑油出口１９（第２図）より
密閉ケース１内に流出し、その後密閉ケース１の
底部に還流する。

〔背景技術の問題点〕

第２図に示すように、回転軸２の外周面２ａに
刻設された螺旋溝１４内を上昇する潤滑油１１の
上昇速度Ｖは回転軸２の回転速度V₀の螺旋溝１
４の傾斜方向への分速、即ちＶ＝V₀cosθとなり、
回転速度V₀より常に小さい。ここで、θは螺旋
溝１４の回転平面に対する傾斜角である。

従つて、潤滑油出口１９の近傍の潤滑油１１は
回転軸２の回転による遠心力で飛散されてしま
う。これにより潤滑油出口１９より少し内側の軸
受間隙１８内の潤滑油膜の油膜圧力が最大となる
部分は、常に潤滑油不足が生じ、軸摺動損失が増
大し、回転軸２の外周面２ａと軸受装置１０の軸
受面１０ａとに摩耗カジリ現象が生じるという不
都合があつた。また、潤滑油出口１９の部分で飛
散された潤滑油１１が冷媒１５と混合され、分離
が良好に行なわれず、冷媒１５と一緒に外部に吐
出されるというおそれがあつた。

〔考案の目的〕

本考案はこれらの点に鑑みてなされたものであ
り、潤滑油出口まで十分かつ確実に潤滑油を供給
することができ、軸受の耐久性が高く、軸受機能
の信頼性が高く、しかも潤滑油と冷媒との完全分
離を行なうことのできる圧縮機の軸受装置を提供
することを目的とする。

〔考案の概要〕

本考案の圧縮機の軸受装置は、軸受間隙の環状
の潤滑油出口側の端部に潤滑油を回転軸の全周に
亘つて所定量貯留する環状凹部を設け、この環状
凹部に連設された前記潤滑油出口の開口幅を前記
軸受間隙の幅より広く形成して、潤滑油を潤滑油
出口まで十分かつ確実に供給するようにしたこと
を特徴とする。

〔考案の実施例〕

以下、本考案を第３図から第５図に示す実施例
について説明する。

第３図は本考案の一実施例を示す。本実施例は
軸受装置１０の軸受面１０ａの上端より少しく内
方部分に環状溝２０を設けて環状凹部を形成し、
この環状溝２０の上縁から潤滑油出口１９に到る
までの軸受装置の内径D₂を軸受面１０ａの内径
D₁より大きく形成して、軸受間隙１８の幅より
潤滑油出口１９の開口の幅を広く形成したもので
ある。

次に、本実施例による潤滑油の供給を説明す
る。

回転軸２の回転に伴つて螺旋溝１４および軸受
間隙１８を上昇した潤滑油１１は潤滑油出口１９
の近傍の環状溝２０内にも充填される。これによ
り潤滑油出口１９の近傍において、回転軸２は全
周に亘つて十分な潤滑油１１により囲まれること
となり、潤滑油出口１９からの潤滑油１１の飛散
が極めて小量に抑えられ、また飛散した潤滑油１
１の分は直ちに環状溝２０内の潤滑油によつて補
給される。

そして、潤滑油出口１９の開口幅を軸受間隙１
８の幅より広く形成したので、油膜圧力の最大箇
所は環状溝２０より内側に入るので（第３図）、
最大油膜圧力部には確実に十分な潤滑油１１が供
給されることとなる。

これらのことにより、軸受端部への給油が全周
に亘つて均一にかつ十分に行なわれ、軸受端部の
冷却効果が増大し、軸受機能が高くなり、耐久性
も向上する。

第４図は本考案の他の実施例を示し、回転軸２
の外周面２ａに環状溝２１を形成して潤滑油１１
を全周に亘つて貯留する環状凹部とし、その環状
溝２１より上方の回転軸２の外径d₂を下方の外径
d₁より小さく形成して、軸受間隙１８の幅より潤
滑油出口１９の開口幅を広く形成したものであ
る。

潤滑油１１の供給作用は第３図の実施例と同様
である。

第５図は本考案の更に他の実施例を示し、軸受
装置１０の上端に断面Ｌ字形の環状帽体２２を外
嵌固着して、軸受装置１０の上端面との間に潤滑
油１１を貯留する環状凹部２３を形成し、その上
蓋部２２ａの開口内径D₃を軸受面１０ａの内径
D₁より大きく形成したものである。

潤滑油１１の供給作用は第３図の実施例と同様
である。

なお、前記した環状凹部を形成する構成と、潤
滑油出口１９の開口幅を軸受間隙１８の幅より広
くする構成とは、設計条件等に応じて適宜変更し
て組合わせるとよい。

〔考案の効果〕 このように本考案の圧縮機の軸受装置は構成さ
れ作用するものであるから、潤滑油出口端部にお
いても十分かつ確実に潤滑油供給を行なうことが
でき、軸受の耐久性が向上し、軸受機能の信頼性
が高くなり、軸受負荷能力向上により軸受の小形
化を図ることができ、軸受の摺動損失が低下する
ので効率の高い圧縮機を提供することができ、潤
滑油と冷媒との分離効果が大きくなり、冷媒と共
に外部に吐出される潤滑油量が減少し、密閉ケー
ス底部の潤滑油面が安定し、潤滑の信頼性が増大
する等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は圧縮機の縦断側面図、第２図は従来の
軸受装置の潤滑油出口部を示す断面図および潤滑
油膜圧力の分布を示す線図、第３図から第５図は
本考案の実施例を示し、第３図は第２図同様の
図、第４図および第５図はそれぞれ他の実施例を
示す断面図である。 ２……回転軸、２ａ……外周面、１０……軸受
装置、１０ａ……軸受面、１１……潤滑油、１４
……螺旋溝、１８……軸受間隙、１９……潤滑油
出口、２０，２１……環状溝、２３……環状凹
部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 圧縮機の回転軸の外周面もしくはこの回転軸
   を回転自在に支承する軸受面のいずれか一方
   に、回転軸の回転により潤滑油を両面間の軸受
   間隙内に供給する螺旋溝を有する圧縮機の軸受
   装置において、前記軸受間隙の環状の潤滑油出
   口側の端部に潤滑油を回転軸の全周に亘つて所
   定量貯留する環状凹部を設け、この環状凹部に
   連設された前記潤滑油出口の開口幅を前記軸受
   間隙の幅より広く形成したことを特徴とする圧
   縮機の軸受装置。 ２ 環状凹部は回転軸の外周面もしくは軸受面の
   いずれか一方に環状溝を設けることにより形成
   したことを特徴とする実用新案登録請求の範囲
   第１項記載の圧縮機の軸受装置。