JPS6312632B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 発明の分野 本発明は、密閉系人工心肺回路において、患者
から脱血した静脈血を一時貯留するための静脈リ
ザーバーに関し、特に新生児・乳児用人工心肺回
路用小型静脈リザーバーに関する。 従来技術およびその問題点 従来密閉系静脈リザーバーに要求されている性
能は、 (1) 貯血機能を果す為、一定の容量の血液を貯え
られる容積を有する、 (2) 脱血液に混入した空気を除去するよう貯血空
間または血流の制御を行なう、 (3) 局部的な血液滞留を防止する ように設定されてきた。 そして、脱血液に混入した空気を除去するため
には、ある程度の大きさの貯血空間を必要とし、
血液の停滞部を故意につくり出す必要があり、こ
れは、上述した(3)の要求とは相反するものであつ
た。また、一定容積より小型のものを設定するに
際しては困難が生ずる。 そのため、血流の制御を行つて、脱血液に混入
した空気を除去する方法が考えられ、この技術の
１つとして、血液流入チユーブ先端に多数の穴を
あけ、血液流入口から流入する血液を拡散し、お
だやかな流れとすることによつて、気泡を浮力で
浮上させやすくする試み（特願昭57−176755号）
が提案されている。また、血液流入口と流出口の
間に血液の停滞部を設ける等の方法が実施されて
いる。 しかし、新生児・乳児用人工心肺回路用静脈リ
ザーバーは、従来の成人用のものに比して小型に
しておかないと、血液のプライミング量が非常に
多くなつてしまう。 このような小型の静脈リザーバーでは、脱血液
に混入した空気を除去することが非常に困難であ
り、従来の成人用において用いられてきた技術で
は除泡効果が充分でないという欠点がある。 また、静脈リザーバーをいつぱいにふくらませ
ると、軟質塩化ビニル樹脂等で作製されている静
脈リザーバーは中間部でくびれを生じ、このくび
れ部分に気泡が付着し、除去することが困難であ
り、このくびれを防止する技術の開発が望まれて
いた。 発明の目的 本発明の目的は、小容量でも脱血液に混入した
空気を効率よく除去する事が可能で、しかも、静
脈リザーバーに血液が充満しても中間部でくびれ
を生ずることがなく、くびれに伴う局部的な血流
の滞留を生じる事のない密閉系静脈リザーバーを
提供することにある。 発明の具体的構成 このような目的を達成するため、本発明は、内
部に貯血空間を限定する柔軟な合成樹脂製の容器
体と、この容器体の上部に設けられ前記貯血空間
と連通する脱気口と、前記容器体の貯血空間に連
通する血液流入口および血液流出口とを有し、前
記血液流入口は容器体の下部から貯血空間に突出
するように設けられた先端が封止されたチユーブ
体の前記封止部から下方にかけて設けられた複数
個の側口により形成されており、さらに、前記血
液流出口は前記貯血空間の下部付近に設けられて
いる貯血槽において、 前記容器体の前記血液流入口から遠く、血液流
出口に近い方の側部に、該側部と前記血液流入口
の水平延長線との交点付近を中心として、前記貯
血空間側に突出する突出部を形成させたことを特
徴とする貯血槽を提供するにある。 特に、前記突出部は、前記血液流出口に近い方
の側部と前記血液流入口の水平延長線との交点付
近を頂点として、該側部全体を前記貯血空間側に
突出させることにより形成すればよい。 さらに、前記血液流出口に近い方の側部の前記
頂点から貯血空間上部までの側部および前記頂点
から貯血空間下部までの側部がほぼ直線状であつ
て、該側部全体を前記貯血空間側に突出させるこ
とにより形成することが好ましい。 また、貯血槽の貯血空間下部から貯血空間上部
までの距離Ａと前記頂点から貯血空間下部までの
距離ａとの関係が、0.2≦ａ／Ａ≦0.8であるように、 該側部全体を前記貯血空間側に突出させればよ
い。 さらに、前記貯血槽が、２枚の合成樹脂製シー
トを接着して形成し、接着により形成された１方
の側部に近接して血液流入口を有するチユーブ体
が設けられており、さらに他方の側部には前記突
出部が形成されていることが好ましい。 以下、本発明の貯血槽について詳細に説明す
る。 第１図には本発明の貯血槽１０の好適例を示
す。貯血槽１０は、合成樹脂製の容器体を用いる
が、特に合成樹脂製シートを接着して形成するこ
とが好ましく、より好ましくは、軟質塩化ビニル
樹脂シートを高周波等によりシールして、内部に
貯血空間を限定するようにしたものがよい。 この貯血空間には、患者からの脱血を導入する
ための血液流入チユーブ１１およびカーデイオト
ミーリザーバからの血液が流入するカーデイオト
ミーラインチユーブ１２が突出して設けられ、ま
た除泡された血液を排出するための血液流出チユ
ーブ１３が設けられている。さらに、この貯血空
間には導入された血液から除泡された空気を排出
するためのベントラインチユーブ１４が設けられ
ている。 この貯血槽１０は固定用孔１５が設けられ、適
当なホルダーに固定して使用される。 血液流入チユーブ１１は上端において封止さ
れ、この封止部の下方に血液を流出させる開口１
６を多数有し、この開口は血液を貯血槽内に水平
方向の緩やかな流れとして流出させる作用をす
る。開口１６は、貯血槽１０の底部付近に設けら
れていると、開口１６より流出したバブルを含ん
だ血液が除泡されることなく血液流出チユーブ１
３に流入してしまうので、チユーブ１６の貯血空
間内への突出長さはあまり短かくてはならず、ま
たチユーブ１１の開口１６の形成位置もあまり低
くてはならない。 貯血空間を限定する傾斜部１７は、この周辺部
分に付着した気泡をベントラインチユーブ１４に
向けて排出させるためのものである。 本発明は、開口１６を有する血液流入チユーブ
１１および血液流出チユーブ１３を有する貯血槽
において、チユーブ１１上の開口１６の形成部の
水平延長線と貯血槽１０の側部との交点１８付近
を中心として、血液流入チユーブ１６から遠く、
血液流出チユーブ１３に近い方の側部に、貯血空
間側に突出する突出部を設けることを特長とす
る。 このように、貯血槽の側部を内部に突出させる
理由は、消極的な意味では明細書の冒頭に述べた
通り、方形の貯血槽では血液が貯血槽に充満した
時、貯血槽の中央部でくびれが生じ、このくびれ
部の下方に気泡が付着して血液流出口より気泡が
流出するとともに、くびれ部より上方の血液は滞
留するためであり、このくびれ部の発生を防止す
るためである。積極的な意味では、側部にあたる
血液流を、気泡を多く含んだ血液流を上方に、気
泡をあまり含まない血液流を下方に分流させるこ
とにある。 したがつて、本発明においては、予め貯血槽に
上述したような気泡の付着および血液の滞留が生
じないような突出部を形成しようとするものであ
る。 さらに、突出部１８の形状について説明をす
る。 突出部１８は上述の通り、血液流を、気泡を多
く含んだ上方流と気泡をあまり多く含まない下方
流とに分流させるものである。よつて、突出部１
８から上方にある側部２０は、血液の流れを阻害
しない形状であることが好ましく、第１図に示す
ようなほぼ直線状であつてもよいが、第７図に示
すような、貯血空間に対し、わずかに凹状となる
ようにすることが好ましい。また、突出部１８か
ら下方にある側部１９は、気泡をあまり含まない
血液流が流れるが、わずかな気泡は有しているの
で、それが付着しないような形状にすることが好
ましく、第１図に示すようなほぼ直線状のもので
あつてもよいが、第７図に示すような、貯血空間
に対し、わずかに凸状となるようにすることが好
ましい。 そして、突出部１８は、第６図に示すように、
側部２０の１部分に形成してもよいが、第１図に
示すように、側部２０の全体を貯血空間側に突出
するように形成して突出部１８とすることが好ま
しい。 以下に１８で示す突出部の諸特性について説明
する。 第１図に示すように、貯血槽１０の貯血空間の
底部から頂部までの高さをＡ、貯血空間の底部か
ら突出点１８までの高さをａ、90゜から貯血空間
の底部と突出点１８から下方の側部１９とのなす
角をひいた角をαとした時、本発明の貯血槽で
は、以下の条件を満足するよう構成するのが好適
である。 0.2≦ａ／Ａ≦0.8、好ましくは0.3≦ａ／Ａ≦0.6……(1
) 10゜≦α≦45゜、好ましくは20゜≦α≦25゜ ……(2) 上記の如く、ａ／Ａ、α、を限定する理由は、以 下の通りである。 ａ／Ａ＜0.2の場合には、流出ポートに内壁面が近 く、シートが血流に引かれてポートを閉塞する可
能性があり、また血流分画が片寄る。すなわち、
リザーバーを大きく時計回りに回る流れが強く、
気泡が流出する。 ａ／Ａ＞0.8の場合には、血流分画が片寄る。すな わち、突出部下部に時計回りの流れが強くなり、
除泡能が悪化、上部の滞留が著しくなる。 α＜10゜の場合には、くびれが発生する。α＞
45゜の場合には、下方側部に泡が付着する。 発明の具体的作用 第２図には人工心肺回路を線図的に示す。 患者３０からの血液は脱血ライン３１および血
液流入チユーブ１１を経て、術野からの血液はカ
ーデイオトミーリザーバ３２で濾過消泡されて、
カーデイオトミーライン３３およびチユーブ１２
を経て、貯血槽３４に流入し、ここで除泡された
空気はベントラインチユーブ１４により排出さ
れ、除泡された血液は血液流出チユーブ１３よ
り、ローラポンプ３５によつて熱交換器付人工肺
３６に送られ、ここで酸素加された血液はバブル
トラツプ３７を経て患者３０に戻される。 このような人工心肺回路において、第２図に示
すような方形の貯血槽３４を使用した場合、貯血
槽が膨満した時、第３図に示すようなくびれ部４
０が貯血槽３４の中央部に発生する。 このように貯血槽３４にくびれ部４０が高い位
置に発生すると、第３図に示すように下方流４１
が多くなり、気泡分離が十分になされていない血
液が流出チユーブ１３より多量に流出する。さら
に、上方流４２が少なくなるため、上方貯血部４
３の血流が滞つてしまう。逆に低い位置に発生す
ると、４３の滞留は発生しにくくなるが、４３を
流れる血流が強くなり、気泡を下部に流出してし
まう。これに加えて、下方くびれ部４４の傾斜が
大きくなるため、気泡４５が付着し易くなるとと
もに、付着した気泡４５の排除が困難となり、気
泡４５がローラポンプの脈動にのつて流出するこ
とになる。 このような従来の方形の貯血槽を使用した場合
の欠点を解消するために、本発明においては、第
１図に例示したような構成の貯血槽を使用する。 第１図に示すような本発明の貯血槽において
は、第４図に示すように、血液流入チユーブ１１
の多数の開口１６から流入した血液は、水平方向
に流れる間に混入した気泡は浮上し、血液流は血
液流入口に近い側部２１に対向する側部に設けら
れた突出部１８にあたつて、ほぼ均等な血液流に
分割され、気泡を多く含む部分は上方流５０に、
気泡の少ない部分は下方流５１に分流される。 突出部１８は、 0.2≦ａ／Ａ≦0.8 10゜≦α≦45゜ となるよう構成されているために、上述の如く、
上方流５０は下方流５１とほぼ同じになつて、上
方貯血部４３での血液の滞留がなくなるととも
に、下方側部１９の傾斜度もおだやかな曲面を生
じ、傾斜度も適切であるために、この部分へ気泡
が付着したとしても、上方に壁を伝つて浮上して
いき、血液流出チユーブ１３より流出していくこ
とはない。 ＜発明の効果＞ (1) 本発明の貯血槽においては、貯血槽の血液流
入チユーブから遠く、血液流出チユーブに近い
方の側部を、血液流入チユーブの血液流出開口
の水平延長線との交点を中心として、貯血空間
側に適度に突出させることにより、貯血槽に血
液が充満しても、突出部上方の貯血部において
血液の滞留が生じず、また突出部下方の側部に
おいて気泡の付着が減少する。 (2) 特に、貯血槽の突出部を 0.2≦ａ／Ａ≦0.8 10゜≦α≦45゜ となるように構成すると、本発明の効果は顕著
である。 ＜実施例＞ 軟質塩化ビニル樹脂シート（Ｓ−41、0.4mm厚）
を用い、第１図に示すような構成の容量100c.c.、
最大血液循環量800ml／minの貯血槽を作製した。
血液流入チユーブおよびカーデイオトミーライン
チユーブは軟質塩化ビニル製で、その径は6.5mm、
貯血空間への突出高さは10cmであつた。血液流入
チユーブの先端部の開口は直径が３mmで、チユー
ブのまわりに10個対称的に形成した。 この貯血槽において、突出部１８は表１に示す
ように種々のものを作製し、これらに35％グリセ
リンを25℃、800ml／minで循環させ、下記のよ
うな測定を行つた。測定結果はまとめて表１に示
す。なお、35％グリセリン溶液を使用したのは、
血液粘度（Ht35％、37℃で2.5センチポイズ）と
同じ粘度を有するからである。 (1) 上方貯血部への滞留 第５図に示すように、貯血槽１０の血液流入
チユーブ１１に接続したルアーポート付コネク
ター６２のポート部６２ａに黒インクを充填し
たシリンジ６３を接続し、このシリンジから黒
インク0.5mlを注入し、貯血空間の頂部サンプ
ル口６０開角γの二等分線上10mm（この位置
は、滞留度評価を行うため、実験により設定し
た測定点である。）の観測点６１にインクが到
達するまでの時間を測定し、10回の測定の平均
値を示す。 (2) 除泡能 血液流出口の先端にバブルトラツプを取付
け、流出する気泡を観察した。 〇：目視可能な泡は観察されなかつた。 △：非常に細かい気泡（100μｍ以下）が認め
られた。 ×：１mm以上の気泡が認められた。 (3) 下方側部への気泡の付着 プライミング後、貯血槽全体をたたいて通常
必要十分とされる泡ぬきをした後、30秒後に貯
血槽の下方側部１９への気泡の付着を確察し
た。 〇：気泡の付着は認められない △：１mm以下の細かい気泡が付着 ×：１mm以上の気泡が付着 【表】

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の貯血槽の好適例の正面図であ
る。第２図は人工心肺回路図である。第３図は従
来の貯血槽における血液流を説明するための正面
図である。第４図は第１図に示す本発明の貯血槽
における血液流を説明するための正面図である。
第５図は貯血槽内での血液滞留の測定用線図であ
る。第６図および第７図は本発明の貯血槽の他の
構成例を示す正面図である。 符号の説明、１０……本発明の貯血槽、１１…
…血液流入チユーブ、１２……カーデイオトミー
ラインチユーブ、１３……血液流出チユーブ、１
４……ベントラインチユーブ、１５……固定用
孔、１６……開口、１７……傾斜部、１８……突
出部、１９……下方側部、２０……上方側部、２
１……血液流入口に近い側部、３０……患者、３
１……脱血ライン、３２……カーデイオトミーリ
ザーバ、３３……カーデイオトミーライン、３４
……貯血槽、３５……ローラポンプ、３６……人
工肺、３７……バブルトラツプ、４０……くびれ
部、４１……下方流、４２……上方流、４３……
上方貯血部、４４……下方くびれ部、４５……気
泡、５０……上方流、５１……下方流、６０……
サンプル口、６１……観測点。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 内部に貯血空間を限定する柔軟な合成樹脂製
   の容器体と、この容器体の上部に設けられ前記貯
   血空間と連通する脱気口と、前記容器体の貯血空
   間に連通する血液流入口および血液流出口とを有
   し、前記血液流入口は容器体の下部から貯血空間
   に突出するように設けられた先端が封止されたチ
   ユーブ体の前記封止部から下方にかけて設けられ
   た複数個の側口により形成されており、さらに、
   前記血液流出口は前記貯血空間の下部付近に設け
   られている貯血槽において、 前記容器体の前記血液流入口から遠く、血液流
   出口に近い方の側部に、該側部と前記血液流入口
   の水平延長線との交点付近を中心として、前記貯
   血空間側に突出する突出部を形成させたことを特
   徴とする貯血槽。 ２ 前記突出部は、前記血液流出口に近い方の側
   部と前記血液流入口の水平延長線との交点付近を
   頂点として該側部全体を前記貯血空間側に突出さ
   せることにより形成されている特許請求の範囲第
   １項に記載の貯血槽。 ３ 前記血液流出口に近い方の側部の前記頂点か
   ら貯血空間上部までの側部および前記頂点から貯
   血空間下部までの側部は、ほぼ直線状である特許
   請求の範囲第２項に記載の貯血槽。 ４ 貯血槽の貯血空間下部から貯血空間上部まで
   の距離Ａと前記頂点から貯血空間下部までの距離
   ａとの関係が、0.2≦ａ／Ａ≦0.8である特許請求の 範囲第２項に記載の貯血槽。 ５ 前記貯血槽は、２枚の合成樹脂製シートを接
   着して形成されており、接着により形成された一
   方の側部に近接して血液流入口を有するチユーブ
   体が設けられており、さらに他方の側部には前記
   突出部が形成されている特許請求の範囲第１項記
   載の貯血槽。