JPS63125B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は銅または銅合金線の伸線方法に関す
る。特に本発明は銅または銅合金線を連続伸線す
るに当り、乾式潤滑剤と銅及び銅合金線用湿式潤
滑剤を組合せて使用する方法に関する。 従来より銅または銅合金線の伸線に当つては、
連続伸線機を用いて水で稀釈した湿式潤滑剤を伸
線用ダイスおよびキヤプスタンにかけながら行な
われている。また湿式潤滑剤の潤滑力を補うた
め、連続伸線機の第一ダイスに油性潤滑剤（例え
ば動植物油）を使用する場合もある。 そもそも銅または銅合金線の伸線においては最
終製品にその金属材料そのものの光沢及び素地が
求められること、伸線後変色等の経時変化の少な
いこと、伸線時における銅または銅合金線の材料
特性から冷却を必要とすること等の理由から、湿
式潤滑剤による湿式伸線が採用されて来た。 しかしながらこれらの従来法、即ち湿式潤滑剤
による伸線法では、湿式潤滑剤の潤滑性能におい
て未だ充分とはいえず、湿式潤滑剤の使用寿命も
短く、同時に使用ダイスの寿命も短くて満足でき
るものではないのが現状である。 上述した如く湿式潤滑剤の潤滑性能を向上させ
るため、第一ダイスに動植物油を使用することも
行なわれるが、この場合多少潤滑性能の向上が見
られるが、欠点として水不溶性の油が次に使用さ
れる湿式潤滑剤中に混入して来るため、湿式潤滑
剤（特に乳化型の場合）の組成に変動を生ぜしめ
油の分離または湿式潤滑剤の性能を低下させ、更
には湿式潤滑剤の有する副次的効果の一つである
洗浄性も劣化させることになる。 上述した如く現在使用されている湿式潤滑剤に
は種々問題があるばかりでなく、近年はますます
伸線速度を大にすること、即ち高速化が望まれて
おり、また総減面率の拡大も計られていること、
更には種々な新しい銅合金が開発され、更に加工
困難な銅合金線の伸線を必要として来ているた
め、より性能のすぐれた潤滑剤または伸線方法が
要求されている。高速伸線、高減面率の場合、更
には塑性加工し難い銅合金を伸線せんとすると
き、上述した従来の湿式潤滑剤では伸線加工が困
難であつたり、また伸線できたとしても使用ダイ
スの寿命が短いこと、また断線率の増大、伸線さ
れた最終製品の表面の滑らかさの低下等種々の欠
点が生ずることを覚悟しなければならない。 従つて本発明は上述した如き従来の銅または銅
合金線の伸線において遭遇する欠点を克服し、伸
線効率を向上させることを目的とする。即ち本発
明は銅及び銅合金線の伸線を行なうに当り、乾式
潤滑剤及び湿式潤滑剤を組合せて使用する伸線方
法、更に詳しくは本発明は銅または銅合金線を伸
線する方法において、始めに炭素原子数12以上の
脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩単独またはこ
れを主成分とする水溶性を有する粉末状の乾式潤
滑剤を用いて伸線し、次いで通常の銅及び銅合金
線用湿式潤滑剤を用いて連続伸線することからな
る銅または銅合金線の伸線方法を提供する。 本発明方法で伸線しうる銅及び銅合金線材料と
しては、銅それ自体は勿論のこと、例えば黄銅、
燐青銅、洋白、スズ銅合金、カドミウム銅合金、
ベリリウム銅合金の如き銅合金材料がある。 また本発明で使用する乾式潤滑剤は炭素数12以
上の好ましくは炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸
のアルカリ金属塩の粉末であり、例えばステアリ
ン酸、オレイン酸、ラウリン酸等のナトリウム
塩、カリウム塩、リチウム塩等があり、これらは
それぞれ単独で、またはこれらの２種以上の混合
物の形で使用することができる。更に本発明では
上記脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩を主成分
とし、これに固体の潤滑添加剤例えば硼砂、炭酸
ソーダ、水溶性ワツクス等を添加した粉末状のも
のも使用できる。 なお脂肪族カルボン酸の炭素数が12未満の場合
には乾式潤滑剤の性能が顕著に現われない。なお
一般に炭素数が24より大なる脂肪族カルボン酸は
価格が高いために経済上不利となることがある。
また水に不溶性の金属石鹸を主成分とする乾式潤
滑剤を用いた場合潤滑性の向上は認められるが、
この場合次に使用される銅及び銅合金線用湿式潤
滑液中に混入して洗浄力を弱め老化を早める結果
となつて好ましくない。 また本発明で使用する銅及び銅合金線用湿式潤
滑剤は従来より使用されている湿式潤滑剤でよ
く、例えば水に不溶性の動植物油、鉱物油あるい
は合成油に界面活性剤（主としてアニオンまたは
ノニオン界面活性剤）に油性向上剤、防錆添加
剤、金属イオン封鎖剤、消泡剤等を水に乳化させ
た乳濁液または界面活性剤を主成分としこれに防
錆添加剤、金属イオン封鎖剤、消泡剤等を加え水
に溶解した溶液を使用しうる。 湿式潤滑液の濃度は線材の材質及び線径によつ
て異なるが一般に線径が太い程濃くし、逆に細く
なる程薄く使用し、また同じような線径であつて
も銅合金線の場合は純銅よりも濃い濃度で使用す
る。その範囲は濃い場合で10〜15重量％薄い場合
で0.2〜0.5重量％である。 本発明の伸線方法はこれら線径の大小、線速、
あるいは銅及び銅合金線用湿式潤滑剤の種類を問
わず従来から使用されている銅及び銅合金連続伸
線機の母線導入部にダイスとダイスボツクスを設
けこのボツクス内に上述の乾式潤滑剤を入れると
よい。またすでにボツクスを設けて油性潤滑剤が
使用されるようになつている伸線機においてはこ
の油性潤滑剤のかわりに本発明による乾式潤滑剤
を入れて線引する。なお乾式潤滑剤の線への物理
的付着を良くするためにダイスボツクス内に圧着
ローラーを設置しても良い。 乾式伸線の第一ダイスは湿式伸線の場合に使用
されていた第一ダイスをそのまま使用するか、ま
たは新たにダイス１個を設けてスキンパス程度の
減面率をとるようにしても良い。この場合ダイス
の材質は問わず合金または天然ダイヤモンド、人
造ダイヤモンド等であつても良いが、粉状の乾式
潤滑剤がぬれると乾式本来の潤滑効果を発揮しな
くなるためダイスボツクス、第一ダイスには冷却
水及び湿式潤滑液がかからないようにしなければ
ならない。 上述した本発明方法によれば非常にすぐれた潤
滑効果と伸線時の断線回数の減少、及び本発明の
後段で使用する湿式潤滑剤の寿命、使用ダイスの
寿命の延長等すぐれた効果が得られる。 本発明方法によれば第一ダイスで物理的に銅ま
たは銅合金線に付着した乾式潤滑剤が、続く湿式
潤滑剤を使用するダイス部までもその潤滑効果を
持続するため、全ダイスの寿命を長く保ち、断線
率も小さくするものと考えられる。同時に本発明
で用いる乾式潤滑剤が前述した高級脂肪酸のアル
カリ金属塩で水溶性であるため、続いて来る湿式
潤滑剤の稀釈液中に徐々に溶解し、これが湿式潤
滑剤の一成分となり、湿式潤滑剤の老化による洗
浄力の低下を防止し補うと共に、その液の寿命を
も延伸させる結果をもたらす。しかも最終的に得
られる仕上り線の肌は従来の湿式潤滑剤のみの使
用による場合と全く変らぬきれいな線肌が得られ
る。 また本発明方法によれば使用開始からダイス寿
命の向上が見られると同時に使用経過とともに更
に良くなり銅合金の場合線引量がほぼ3tonに達し
た後に最高のダイス寿命となる。次に２回目の液
の更新時に古い液を新液に対し1/3〜1/2併用する
ことによつて新液から出発した場合の上記3ton線
引後のダイス寿命から出発することが出来る。 以下に実施例を挙げて本発明を説明する。 実施例 １ 下表に示す組成および物性を有する銅合金母線
を下表２に示す伸線条件を用い、表３に示す乾式
潤滑剤を第一ダイスに適用し、第二ダイス以下に
は表３に示す湿式潤滑剤を適用して伸線し、表１
に示す仕上り線を得た。 また比較のため乾式潤滑剤を全く使用せず、第
一ダイスに油性潤滑剤（菜種油）と第二ダイス以
下には表３に示す湿式潤滑剤を用いて同様に伸線
を行なつた。これらの結果を表４に示す。

【表】

【表】

【表】

【表】

【表】

【表】 同一の湿式潤滑剤を使用しても第一ダイスに乾
式潤滑剤を使用するかしないかで表４に示す如
く、天然ダイヤモンドダイスの寿命は平均６〜８
倍、断線率は2/5、天然ダイヤモンドダイスの割
れ率（ダイヤモンドが割れて修理不能だつた率）
は1/10、湿式潤滑剤の寿命は最低でも３倍と非常
に大きく性能が向上した。また潤滑液の老化によ
る洗浄力不足が最後まで起つてこないため液の循
環パイプのつまる現象はなく、機械、ロール、キ
ヤプスタン、ダイス等は何時もきれいで作業性が
良い。 なお液の老化時ひどくなる仕上り線への汚染油
及び金属粉の付着がみられず最後まできれいな仕
上り線が得られた。 またダイヤモンドダイスの寿命は乾式と湿式を
組み合すことによつて湿式潤滑のみの場合より当
初から良くなるが、更に使用開始後徐々に向上し
て3tonの線引後に800〜1000Kg／ダイスのダイス
寿命となり、その後はこの数値で推移する。この
結果を第１図に示す。 また第２回目の液の更新時に今まで使用した液
を新液に対し約1/3〜1/2併用すると新液のみから
出発した場合の約線引量3ton後からのダイヤモン
ドダイス寿命で出発することができた。 実施例 ２ 下表５に示す組成および物性を有する銅線を、
下表６に示す伸線条件を用い、表７に示す乾式潤
滑剤を第一ダイスに適用し、第二ダイス以後には
表７に示す湿式潤滑剤を適用して伸線し、表５に
示す仕上り線を得た。 また比較のため乾式潤滑剤を全く使用せずに表
７に示す湿式潤滑剤のみを用いて同様に伸線を行
なつた。これらの結果を表８に示す。

【表】

【表】

【表】

【表】

【表】

【表】 実施例１と同様純銅線の高速伸線においても表
８に示された如く各ダイスの寿命向上、断線率の
低下、潤滑液寿命の向上、老化による洗浄力低下
の防止並びに仕上り線の光沢性低下の防止等の性
能が認められる。 実施例 ３ 実施例２と同組成の純銅線を大型伸線機を用い
て線径8.0mmから2.0mmまでを伸線加工する場合下
表９に示す伸線条件を用い、表10に示す乾式潤滑
剤を第一ダイスに適用し、第二ダイス以後には表
10に示す湿式潤滑剤を適用して表11のような結果
を得た。 また比較のために従来法による第一ダイスに油
性潤滑剤（菜種油）、第二ダイス以後に湿式潤滑
剤を使用した場合の結果も表11に示す。

【表】

【表】

【表】

【表】 純銅の太番線においても表11の如く、特にダイ
ス寿命、潤滑剤の寿命、洗浄性、老化性において
本発明による性能が認められた。 実施例 ４ 実施例２と同組成の純銅線を小型伸線機を用い
て線径0.8mmから0.18mmまでを伸線加工する場合、
下表12に示す伸線条件を用い、表13に示す乾式潤
滑剤を第１ダイスに適用し、第２ダイス以後には
実施例１に示した湿式潤滑剤を用いて表14のよう
な結果を得た。 また比較のため乾式潤滑剤を全く使用せずに実
施例１に示した湿式潤滑剤のみを用いて同様に伸
線を行なつた。

【表】

【表】

【表】

【表】 表14の如く銅細線においても本発明の性能が認
められる。特に細線の場合老化物質や銅粉による
断線が多発するため、当初から洗浄性が強く要求
され、また老化による洗浄力の低下はいちじるし
く作業性を低下さすが本発明ではこの現象を大幅
に押えることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明方法を実施した場合の銅合金線
引量とダイス寿命の変化を従来法と対比して示す
グラフである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 銅または銅合金線を伸線する方法において、
   始めに炭素数12以上の脂肪族カルボン酸のアルカ
   リ金属塩単独またはこれを主成分とする水溶性を
   有する粉末状の乾式潤滑剤を用いて伸線し、次い
   で銅及び銅合金線用湿式潤滑剤を用いて連続伸線
   することを特徴とする銅または銅合金線の伸線方
   法。