JPS627366B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、出力の向上を図るとゝもに潤滑油の
消費量を可及的に軽減し、さらに排ガスの白煙化
や汚れを防止できるようにした、新規な２サイク
ルエンジンに関するものである。

一般に２サイクルエンジンでは、エンジン本体
内に吸入した混合気をクランク室内で一次圧縮す
る所謂クランク室圧縮型が広く実用化されている
が、かゝるエンジンでは、クランク室内に潤滑油
を貯留することができないため、クランク軸やコ
ンロツドの可動部分の潤滑が十分に行われず、ク
ランク軸やコンロツドの円滑な作動およびその耐
久性に課題があり、また燃焼室内に吸入される混
合気中には多少の潤滑油の混入が避けられないた
め、排気ガスに、前記潤滑油の燃焼に起因して白
煙を発生させ、さらに排ガスに汚れが生じるとい
う不利点がある。

そこで本発明は、２サイクルエンジンのもつ前
記不利点を除去し、さらに混合気の過給により出
力の向上をも図ることができるようにした、新規
な２サイクルエンジンを提供することを主な目的
とするものである。そして上記目的を達成するた
めに本発明は、シリンダ孔、吸、排気ポート、お
よび掃気ポートを備えたシリンダブロツクと、前
記シリンダ孔上に燃焼室を形成したシリンダヘツ
ドと、クランクケースとを一体に結合してエンジ
ン本体を構成し、前記掃気ポートの出口および前
記排気ポートの排気口を、前記シリンダ孔内に摺
合したピストンの昇降により開閉できるようにす
るとともに、前記ピストン上の燃焼室に開口させ
得るようにした、２サイクルエンジンにおいて、
前記エンジン本体に、前記シリンダ孔とクランク
ケース内のクランク室とを区画する境界壁を設
け、この境界壁と前記ピストンとの間に、前記吸
気ポートの吸気口および掃気ポートの入口が常時
開口する給気室を形成し、前記クランク室には潤
滑油を貯留すると共にクランク軸を軸架し、前記
ピストンに一端を連結した第１コンロツドの他端
を、前記境界壁に摺合した摺動子に接続し、この
摺動子に第２コンロツドの一端を回動自在に連結
し、この第２コンロツドの他端を前記クランク軸
に回動自在に連結したことを特徴とする。

次に第１，２図により本発明の第１実施例につ
いて説明すると、第１，２図において２サイクル
エンジンのエンジン本体Ｅは、シリンダブロツク
１の上部にシリンダヘツド２を、その下部にクラ
ンクケース３を重合し、それら三者を連結ボルト
等により一体に結着して構成されている。

シリンダブロツク１には、シリンダ孔４が形成
されるとゝもにこのシリンダ孔４の下部には、こ
のシリンダ孔４とクランクケース３内のクランク
室５とを区画する境界壁６が形成され、この境界
壁６には、前記シリンダ孔４とクランク室５とを
連通する通孔７が形成されている。前記シリンダ
孔４内にはピストンリング８′を嵌着したピスト
ン８が摺動自在に嵌合され、このピストン８には
ピストンピン９を介して第１コンロツド１０の上
端が回動自在に連結されている。第１コンロツド
１０は中空筒体により形成されており、その開口
下端には摺動子１１が圧入結合され、この摺動子
１１は前記通孔７に嵌着したシリンダスリーブ１
２内に摺動自在に嵌合されている。したがつてピ
ストン８と摺動子１１とは、第１コンロツド１０
を介して一体的にシリンダ孔４内を往復動し得
る。前記ピストン８はシリンダ孔４内を、上部の
燃焼室ａと、下部の給気室ｂとに区画し、また前
記境界壁６は前記給気室ｂとクランク室５とを区
画している。第１コンロツド１０の下部外周は、
前記境界壁６に設けたオイルシール１３によりシ
ールされ、また摺動子１１の外周には、シールリ
ング１４が嵌着され、それらオイルシール１３お
よびシールリング１４は協働してクランク室５と
シリンダ孔４間をシールする。而してクランク室
５内の微量の潤滑油は前記シールリング１４およ
びオイルシール１３を通過してシリンダ孔４へ漏
洩し、この漏洩潤滑油はシリンダ孔４の内面に附
着してピストン８の摺動面を潤滑する。前記摺動
子１１には、ジヨイントピン１５が支承され、こ
のジヨイントピン１５には第２コンロツド１６の
小端部１７が回動自在に連結され、この第２コン
ロツド１６の大端部１８は、前記クランクケース
３内にのび、そこに回転自在に軸架されるクラン
ク軸１９のクランクピン２０に回動自在に連結さ
れている。

シリンダブロツク１には、相対向して吸気ポー
ト２１と排気ポート２２とが形成されている。吸
気ポート２１はその吸気口２３がピストン８下に
形成される給気室ｂに開口され、またその外部開
口端はリード弁２４を介して気化器２５を設けた
吸気管２６に連通されており、ピストン８の上昇
する圧縮行程において、前記給気室ｂの膨脹によ
り、気化器２５で生成される空気―燃焼混合気を
リード弁２４を介して給気室ｂ内に吸入し得る。
前記排気ポート２２は、その排気口２７がピスト
ン８の上方に形成される燃焼室ａに開口されると
ともに、排気口２７はピストン８の昇降により開
閉されるようになつており、またその外部開口端
は排気管２８に連通される。

前記吸気、および排気ポート２１，２２と略直
交して、シリンダブロツク１には各一対の掃気ポ
ート２９が形成され、それら掃気ポート２９はそ
の入口３０がピストン８下方の給気室ｂに常時開
口され、またその出口３１がピストン８の昇降に
より開閉されるとゝもに燃焼室ａ、あるいは給気
室ｂに開口されるようになつている。

前記シリンダヘツド２には、燃焼室ａ内に電極
を臨ませた点火栓３２が螺着される。また前記ク
ランク室５内には、後述する本発明機関の特性に
より２サイクルエンジンでありながら４サイクル
エンジンのように潤滑油が貯留される。

次に本発明の第１実施例の作用について説明す
ると、いま該エンジンが、第１，２図に示すよう
にピストン８が上死点近傍に達する圧縮行程の終
了近くで点火栓３２の火花点火により燃焼室ａ内
の圧縮混合気が爆発燃焼される。そしてその爆発
エネルギは、ピストン８を下降させるとゝもに第
１コンロツド１０を介して摺動子１１をもシリン
ダスリーブ１２に沿つて下降させ、さらに第２コ
ンロツド１６をクランクピン２０回りに揺動しつ
つ下降させてクランク軸１９を回転駆動すること
ができる。而して前述のようにピストン８に作用
する爆発エネルギをクランク軸１９に伝達する過
程において、ピストン８は、シリンダ孔４の縦軸
線に沿う力をうけるのみで横方向の側圧は受けな
い。そして前述のようにピストン８の下降する掃
気行程では排気ポート２２の排気口２７および掃
気ポート２９の出口３１が順次に開放し、前圧縮
行程で既に給気室ｂ内に流入している新混合気は
圧縮され、掃気ポート２９を通つて燃焼室ａ内に
勢いよく噴入し既燃ガスを排気ポート２２へと掃
気する。エンジンが掃気行程より圧縮行程に移る
過程では、クランク室１９の回転は第２コンロツ
ド１６、摺動子１１および第１コンロツド１０を
介してピストン８を上昇させて燃焼室ａを圧縮さ
せるとゝもにピストン８下の給気室ｂを膨脹さ
せ、リード弁２４を開弁して気化器２５からの新
混合気を該給気室ｂに吸入させる。そして再びピ
ストン８の下降する掃気行程で、給気室ｂ内の混
合気は圧縮され掃気ポート２９を通つて燃焼室ａ
内に勢いよく噴入させることができる。

而して前述の機関の運転において、クランク室
５内には混合気は流入することがなく、該室５内
に潤滑油の貯留を可能にして、クランク軸１９、
第２コンロツド１６の可動部分を十分に潤滑する
ことができ、またピストン８とシリンダ孔４内面
間の潤滑はクランク室５からシリンダスリーブ１
２と摺動子１１との摺動面を通つてシリンダ孔４
内に漏洩した潤滑油によつて賄うことができる。

第３図には本発明の第２実施例が示されてい
る。この第２実施例では、第１実施例のピストン
ピン９を昇略して、ピストン８に第１コンロツド
１０の一端を直接圧入結合し、また前記第１実施
例のオイルシール１３を省略して、シリンダスリ
ーブ１２を、第１コンロツド１０の下端に直接係
合させ、クランク室５内の潤滑油のシリンダ孔４
への漏洩量を多少増量してピストン８とシリンダ
孔４との摺動面への潤滑油の供給量を増量できる
ようにしたものである。

以上のように本発明によれば、シリンダ孔、
吸、排気ポート２１，２２、および掃気ポート２
９を備えたシリンダブロツク１と、前記シリンダ
孔４上に燃焼室ａを形成したシリンダヘツド２
と、クランクケース３とを一体に結合してエンジ
ン本体Ｅを構成し、前記掃気ポート２９の出口３
１および前記排気ポート２２の排気口２７を、前
記シリンダ孔４内に摺合したピストン８の昇降に
より開閉できるようにするとともに、前記ピスト
ン８上の燃焼室ａに開口させ得るようにした、２
サイクルエンジンにおいて、前記エンジン本体Ｅ
に、前記シリンダ孔４とクランクケース３内のク
ランク室５とを区画する境界壁６を設け、この境
界壁６と前記ピストン８との間に、前記吸気ポー
ト２１の吸気口２３および掃気ポート２９の入口
３０が常時開口する給気室ｂを形成し、前記クラ
ンク室５には潤滑油を貯留すると共にクランク軸
１９を軸架し、前記ピストン８に一端を連結した
第１コンロツド１０の他端を、前記記境界壁６に
摺合した摺動子１１に接続し、この摺動子１１に
第２コンロツド１６の一端を回動自在に連結し、
この第２コンロツド１６の他端を前記クランク軸
１９に回動自在に連結したので、エンジン本体Ｅ
のピストン８下の内部空間を前記境界壁６によつ
て、混合気の圧送に専ら利用される給気室ｂと、
多量の潤滑油を貯留し得るクランク室５とに上下
に二分割することができ、その結果、クランク
室５内の多量の貯留潤滑油によつて、クランク軸
１９やコンロツド１０，１６等へ十分に潤滑でき
てそれらの耐久性を向上させることができ、しか
も、従来の２サイクルエンジンのように燃焼室ａ
内に吸入される混合気中に潤滑油を特別に混入さ
せる必要はないから、その混合潤滑油の燃焼に起
因した、排ガスの白煙化や汚れを未然に防止する
ことができ、また比較的小容積の給気室ｂが混
合気の一次圧縮室となるから、その一次圧縮比を
高めて混合気の過給が可能となり、エンジン出力
の向上に寄与し得る、等の効果が得られる。

また特にコンロツドが、ピストン８側の第１コ
ンロツド１０とクランク軸１９側の第２コンロツ
ド１６とに分割され、そのうち第１コンロツド１
０が前記境界壁６に摺動子１１を介して摺動案内
されるから、ピストン８と第１コンロツド１０と
の摺動方向を一致させることができてピストン８
に作用する側圧を軽減でき、ピストン８の首振り
運動を効果的に抑えることができる。しかも上記
境界壁６と摺動子１１との摺動部にもクランク室
５内の貯留潤滑油を十分に供給することができる
から、摺動子１１を常に円滑に摺動させることが
できる。また前記境界壁６は、上記の如く第１コ
ンロツド１０に対するガイド部材と、給気室ｂと
クランク室５間を仕切る隔壁部材とに兼用される
から、構造の簡素化に寄与し得る。

【図面の簡単な説明】

第１，２図は本発明２サイクルエンジンの第１
実施例を示し、第１図はその縦断面図、第２図は
第１図―線断面図、第３図は本発明２サイク
ルエンジンの第２実施例を示す一部の断面図であ
る。 ａ……燃焼室、ｂ……給気室、Ｅ……エンジン
本体、１……シリンダブロツク、２……シリンダ
ヘツド、３……クランクケース、４……シリンダ
孔、５……クランク室、６……境界壁、８……ピ
ストン、１０……第１コンロツド、１１……摺動
子、１６……第２コンロツド、１９……クランク
軸、２１……吸気ポート、２２……排気ポート、
２３……吸気口、２７……排気口、２９……掃気
ポート、３０……入口、３１……出口。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリンダ孔４、吸、排気ポート２１，２２、
   および掃気ポート２９を備えたシリンダブロツク
   １と、前記シリンダ孔４上に燃焼室ａを形成した
   シリンダヘツド２と、クランクケース３とを一体
   に結合してエンジン本体Ｅを構成し、前記掃気ポ
   ート２９の出口３１および前記排気ポート２２の
   排気口２７を、前記シリンダ孔４内に摺合したピ
   ストン８の昇降により開閉できるようにするとと
   もに、前記ピストン８上の燃焼室ａに開口させ得
   るようにした、２サイクルエンジンにおいて、前
   記エンジン本体Ｅに、前記シリンダ孔４とクラン
   クケース３内のクランク室５とを区画する境界壁
   ６を設け、この境界壁６と前記ピストン８との間
   に、前記吸気ポート２１の吸気口２３および掃気
   ポート２９の入口３０が常時開口する給気室ｂを
   形成し、前記クランク室５には潤滑油を貯留する
   と共にクランク軸１９を軸架し、前記ピストン８
   に一端を連結した第１コンロツド１０の他端を、
   前記境界壁６に摺合した摺動子１１に接続し、こ
   の摺動子１１に第２コンロツド１６の一端を回動
   自在に連結し、この第２コンロツド１６の他端を
   前記クランク軸１９に回動自在に連結したことを
   特徴とする、２サイクルエンジン。