JPS627100Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は殺虫剤溶液等の液体を蒸散させるのに
好適な蒸散装置に関する。

従来、電子蚊取器として、第１図Ａ，Ｂに示す
ように、円板状の正特性磁器発熱体１を電極板
２，３の間に挟み、これを絶縁容器４内に載置し
たバネ５上に重ね、さらに電極板２の上に絶縁板
６および放熱板７を順次重ね合わせて取付けたも
のが知られている。この電子蚊取器においては、
放熱板７の上に、殺虫剤をしみ込ませたマツト８
を載せ、正特性磁器発熱体１の発熱動作に基づく
放熱板７の加熱作用により、マツト８にしみ込ま
せた殺虫剤を蒸発させ、これによつて殺虫効果を
得るものである。

しかしながら、時間が経過するに従つてマツト
８中に含まれる殺虫剤の量が減少し、それにつれ
て殺虫剤の蒸散量も減少して行くため、時間経過
と共に殺虫効果が次第に低下してしまい、一定時
間経過は殆ど殺虫効果が期待できなくなるという
欠点があつた。

本考案は、液体の流失や浪費を生じることなく
効率よく蒸散させることができ、液体のレベル変
動に対しも安定に動作し、殺虫装置として使用し
た場合には、殺虫液を長時間に亘つて安定に蒸散
させることの可能な、殺虫効果の高い蒸散装置を
提供することを目的とする。

上記目的を達成するため、本考案に係る蒸散装
置は、毛細管現象を生じさせ得る多孔質磁器材料
によつて形成された耐熱部材の上面に、正特性磁
器発熱体を面接触させ、前記耐熱部材を、前記上
面側を貯液槽内の液体外部に露出させ、反対側の
下面側を前記液体中に直接浸して、前記液体中に
浮かべたことを特徴とする。

以下実施例たる添付図面を参照し、本考案に係
る蒸散装置を具体的に詳説する。第２図は本考案
に係る蒸散装置の正面断面図である。図において
１１は殺虫剤溶液１１ａ等を貯える貯液槽、１２
は毛細管現象を生じさせ得る多孔質材料によつて
形成された耐熱部材、１３は正特性磁器発熱体で
ある。

前記耐熱部材１２はたとえばベリリア磁器、ア
ルミナ磁器等の磁器板を素材として毛細管現象を
生じさせ得る多孔質に形成し、その上面側の略中
心部に凹溝１２ａを形成してある。そして、この
耐熱部材１２の凹溝１２ａ内に正特性磁器発熱体
１３を面接触的に取付けたうえで、これを、正特
性磁器発熱体１３のある上面側が貯液槽１１内の
液体１１ａの外部に露出し、反対側の下面側が液
体１１ａに直接浸されるようにして、貯液槽１１
内の液体１１ａ中に浮かべてある。なお、耐熱部
材１２及び正特性磁器発熱体１３を含めた全体は
液体１１ａより比重が大きいのが普通であるが、
凹溝１２ａの大きさを適当に選定することによつ
て、液体１１ａ中に浮かすことが可能である。

前記正特性磁器発熱体１３は、正の抵抗温度係
数を有するチタン酸バリウム系半導体磁器より構
成され、前記耐熱部材１２の凹溝１２ａの底面
に、たとえば耐熱性接着剤などを使用して固着し
てある。該正特性磁器発熱体１３の両面には、オ
ーム性または非オーム性接触の電極１３ａ，１３
ｂを被着形成し、該電極１３ａ，１３ｂにリード
線１４，１５を導通接続してある。

前記正特性磁器発熱体１３を駆動するにあたつ
ては、前記リド線１４，１５に交流商用電源もし
くは交流商用電源から整流して得られた直流電源
を接続して駆動してもよいが、たとえば殺虫用の
蒸散装置として構成する場合のように消費電力が
１〜数ワツト内に収まるような場合には、乾電池
または二次電池で駆動することもできる。

正特性磁器発熱体１３を駆動すると、当該正特
性磁器発熱体１３が発熱動作をし、これによつて
耐熱部材１２が加熱される。すると、貯液槽１１
内の液体１１ａが耐熱部材１２の肉厚部の毛細管
現象によつて吸引され、耐熱部材１２の表面に向
つて拡散され、正特性磁器発熱体１３の加熱作用
を受けて、耐熱部材１２の表面において気化され
蒸発する。

この場合、本考案においては、耐熱部材１２の
上面に、正特性磁器発熱体１３を面接触的に取付
けたものを、上面側を液体１１ａの外部に露出さ
せて、貯液槽１１内の液体１１ａ中に浮かべてあ
るから、液体１１ａのレベル変動に追従して耐熱
部材１２を上下動させることができる。このた
め、液体１１ａのレベルが変動しても、安定し
て、液体の気化蒸発作用を行なわせることができ
る。しかも、耐熱部材１２自体の毛細管現象を利
用して、液体１１ａの搬送及び気化蒸発を行なう
ものであるから、部品点数の減少、小型化及びコ
ストダウン等の効果が得られる。

また、正特性磁器発熱体１３を取付けた耐熱部
材１２を貯液槽１１内に直接浸す構成であるか
ら、液体１１ａの流失や浪費が殆ど生じず、効率
が高くなる。

更に、耐熱部材１２の上面側に凹溝１２ａを設
け、この凹溝１２ａ内に正特性磁器発熱体１３を
取付ける構造とし、その反対側の下面側を液体１
１ａ中に浸す構成であるから、液体に浸されてい
る部分を除く全面が蒸発面となり、蒸発量及び蒸
発効率が向上する。

耐熱部材１２の表面温度は正特性磁器発熱体１
３の発熱温度に依存することは勿論であるが、正
特性磁器発熱体１３の発熱温度は、チタン酸バリ
ウムBaTiO₃のBaの一部を、ストロンチウムSrま
たは鉛Pbによつて置換し、そのキユリー温度を
選定することによつて任意に設定できる。

また正特性磁器発熱体１３は、発熱温度がキユ
リー温度を超えると、抵抗値が急激に増加して電
流を絞る自己温度制御機能を有し、加熱の危険が
なく安全であること、定常状態では高抵抗領域で
動作するから、消費電力が少なく、省エネルギー
の要請に合うこと、液体等の及ぼす冷却効果の大
小に応じて消費電力が増減し、熱負荷を定温加熱
するように自己制御するので、効率が良いこと
等々の優れた特長を有している。

しかも上述のような定温発熱動作は、正特性磁
器発熱体１３自体の特性に基づくもので、感温ス
イツチや開閉素子等は不要であるから、小形化、
温度の一定化、信頼性の向上が達成される。

さらに、貯液槽１１内に液体が存在する限り、
耐熱部材１２自体の毛細現象によりその表面に定
量の液体が供給されつづけ、液体の蒸散量が時間
的に一定となり、当該蒸散装置を殺虫剤溶液の蒸
散用として使用した場合には、時間経過に拘わら
ず、一定の殺虫効果を得ることができる。

なお、正特性磁器発熱体１３は、乾電池や二次
電池でも駆動し得ることは前述の通りであるが、
この場合、正特性磁器発熱体１３の動作点を正特
性領域に設定すると、電池の放電が進み起電力が
低下するに従つて電流が増大するから、一定の時
間内においては電池の起電力の低下に拘らず、ほ
ぼ一定した定温発熱動作、液体の気化動作が維持
され、誠に都合がよい。

以上詳説した如く、本考案に係る蒸散装置は、
毛細管現象を生じさせ得る多孔質磁器材料によつ
て形成された耐熱部材の上面に、正特性磁器発熱
体を面接触させ、前記耐熱部材を、前記上面側を
貯液槽内の液体外部に露出させ、反対側の下面側
を前記液体中に直接浸して、前記液体中に浮かべ
たことを特徴とするから、次のような効果を得る
ことができる。

(a) 耐熱部材を貯液槽の液体内に直接浮かしてあ
るから、液体のレベル変動に追従して耐熱部材
を上下動させることができる。このため、液体
のレベルが変動しても、安定して、液体の気化
蒸発作用を行なわせることができる。

(b) 耐熱部材自体の毛細管現象を利用して、液体
の搬送及び気化蒸発を行なうものであるから、
部品点数の減少、小型化及びコストダウン等の
効果が得られる。

(c) 正特性磁器発熱体を取付けた耐熱部材を貯液
槽内に直接浸す構成であるから、液体の流失や
浪費が殆ど生じず、効率が高くなる。

(d) 耐熱部材の上面側に凹溝を設け、この凹溝内
に正特性磁器発熱体を取付ける構造とし、その
反対側の下面側を液体中に浸す構成であるか
ら、液体に浸されている部分を除く全面が蒸発
面となり、蒸発量及び蒸発効果が向上する。

(e) 液体の拡散が平均化され、液体がムラなく蒸
散される。

(f) 多孔質耐熱部材を正特性磁器発熱体で加熱す
る構成であるから、小形化、回路構成の簡単
化、低消費電力化、加熱温度の一定化、信頼性
の向上を図りつつ、液体を効率良く蒸散させる
ことができる。

(g) 液体を蒸散させる構成であるから、時間経過
に拘らず、蒸散量が一定となり、たとえば殺虫
用として使用した場合には、時間経過に拘ら
ず、一定の殺虫効果を維持することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａ，Ｂは従来の電子蚊取器の分解斜視図
および断面図、第２図は本考案に係る蒸散装置の
断面図である。 １２……耐熱部材、１３……正特性磁器発熱
体、１２ａ……凹溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 毛細管現象を生じさせ得る多孔質磁器材料によ
   つて形成された耐熱部材の上面に、正特性磁器発
   熱体を面接触させ、前記耐熱部材を、前記上面側
   を貯液槽内の液体外部に露出させ、反対側の下面
   側を前記液体中に直接浸して、前記液体中に浮か
   べたことを特徴とする蒸散装置。