JPS6236096B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、工場、格納庫、体育館、ホールなど
の大空間建造物の内部音響特性、ことに吸音力、
を改善する方法に関する。

このような大空間建造物では内部吸音処理が省
かれていることが多く、そのため残響過多で内部
での会話に支障を来たしたり騒音レベルが上昇し
たりすることがある。このような場合の吸音材料
付加工事は内部空間が大きい程建築構造への負担
や工事足場の問題等から費用がかさむ。

また体育館などをコンサートの会場にする場合
その内部空間の音響特性が特に問題となる。

本発明はこのような不都合または臨時的な要求
に応ずる簡便な吸音力付加ないし音響特性改善法
を提供することを目的とする。

すなわち本発明は、不燃性ガスを封入した風船
と軽量の吸音材料とを組合せて成る浮遊吸音体を
大空間建造物の内部空間の上部に浮遊または定着
させることにより、前記内部空間の音響特性を改
善することを特徴とする、大空間の音響空間の造
成法にある。

以下本発明を添付図面を参照しつつさらに詳述
する。

図示の例は浮遊吸音体Ａを、葉巻形の風船１の
表面に吸音材料層４を取付けたものとしたもので
ある。風船１の内部にはガス封入口２より不燃性
の軽量ガスたとえばヘリウムガスを封入する。吸
音材料層４は無機質または有機質物質による繊維
状、多孔性、綿状または海綿状のマツト（たとえ
ばグラスウール）または布で形成する。このよう
な吸音材料層４の上から外被３をかぶせてある。
参照番号５は回収用リングで、風船１または外被
３からひも等で下げられている。

この浮遊吸音体Ａは浮力を有するのでこれを建
造物の天井に対し浮上定着せしめる。これにより
この内部空間の音響特性を改善するのである。

コンサートのため等の臨時的な吸音体Ａの設置
の場合、その回収に当つては、回収装置Ｂを使用
する。すなわち回収装置Ｂは浮力を持つた気球６
をネツト９で保持し、引綱１０をつけたもので、
その頂部に回収用フツク７を取付けた固定座８を
有する。

この回収装置Ｂを床上から引綱１０を介して操
作し、天井に浮上している吸音体Ａの回収用リン
グ５に回収用フツク７を引掛け、この吸音体Ａを
床上に引き下すのである。

このような浮遊吸音体を実用する場合の条件を
以下に検討する。

アルキメデスの原理によれば、浮遊吸音体Ａが
浮上するための条件は、 W₁＋W₂＋ρＶ＜ρ₀V …(1) ρ_０：空気の密度（Kg／m³） ρ：ヘリウムの密度（Kg／m³） Ｖ：風船の容積（m³） W₁：風船のヘリウムガスを除いた重量
（Kg） W₂：吸音体ＡのW₁とヘリウムガスを除いた
重量（Kg） 今、一例としてＶ＝１m³で、長さｌ（ｍ）、半
径ｒ（ｍ）の円柱状をした吸音体Ａの場合を考え
る。

ρ_０＝1.293，ρ＝0.179とすれば(1)式より W₁＋W₂＜（ρ_０−ρ）Ｖ＝1.114（Kg）
…(2) ｌを２ｍとすれば、Ｖ＝πr²lからｒ≒0.4
（ｍ）となり、このとき風船１の表面積Ｓ（m²）
は、 Ｓ＝２πｒ（ｒ＋ｌ）≒６（m²）となる。従つ
て比重１、厚み0.06mmの膜状物質で風船１を作れ
ば、W₁＝0.36（Kg）となるので、(2)式よりW₂＜
1.114−0.36＝0.754（Kg）となる。

ここで、外被３の直径を風船１より20mm大きく
作れば、外被３の表面積は約6.2m²となるので、
外被３を比重１、厚み0.03mmの膜状物質とすれ
ば、その重量は0.186Kgとなる。

また、吸音材料層４に厚み20mm、長さ２ｍ、幅
１ｍ、密度８Kg／m³のグラスウールマツトを用い
るとすれば、その重量は0.32Kgとなり、さらに、
封入口２とリング３とを含めた重量を0.05Kgとす
れば、W₂＝0.186＋0.32＋0.05＝0.556＜0.754
（Kg）で約0.2Kgの余裕があり吸音体Ａは充分浮上
する。

この吸音体Ａが浮上し、天井等に定着した場合
は、気球１の底面をおおう吸音材料層４の主に抵
抗性とその背後インピーダンスの作用により、
1.5（ｍセービンまたはm²）程度の吸音力を見込
むことができ、これはおよそ人間３人分の吸音力
に匹敵する。

吸音材料層４は風船１と外被３との間に入れら
れるが、なるべく風船１の底面に入れるのが有利
である（吸音材料層４の上部は吸音上背後インピ
ーダンスの作用をなし有用である。外被３として
吸音性のある布地を選べば吸音材料層４を省くこ
ともできる。またこの外被４に膜状物質を用いれ
ばヘリウムガスを２重にシールすることとなる。
さらに場合によつては外被３で風船１の全体を覆
う必要はない。また外被３はネツト状のものでも
よい。

吸音材料層４を風船１に封入しても、同様の効
果が得られ、この場合外被３はなくてもよい。ま
たこの場合風船１の形状はたとえば平板状のよう
な偏平な形状とするのがよい。一般に、吸音は層
４によつてなされるものでなるべく層４の面積を
大きくした方が有利（吸音力＝吸音材料の面積×
吸音率）なので、風船１の形状は球よりも葉巻状
や偏平形状がよい。また外被３の中に風船１を複
数個収容することも可能である。

吸音体Ａは必要に応じ、建造物空間内部の任意
点にひも等で係留することもでき、また複数個の
吸音体をひも等で連結させることもできる。

ひも等で係留する場合は、前述の回収装置は不
要となる。またリング５およびフツク７は磁石に
換えることもできる。

吸音材料は場合により風船１から懸垂せしめて
もよい。

いずれにしても本発明方法によれば以下の効果
が得られる。

(イ) 建築構造にほとんど負担かけないで施工がで
きる。

(ロ) 工事用足場が不用である。

(ハ) 施工中、建造物内の作業をほとんど妨害しな
い。

(ニ) 施工は簡単で短期間に行える。

(ホ) メンテナンス上の回収、不用になつたときの
除去が簡単である。

(ヘ) 総合的にみて、必要吸音力を付加するための
費用を少くすることができる。

(ト) ホール等の残響時間の調整（可変）に使用す
ることもできる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明方法の一実施装置である浮遊吸音
体Ａと回収装置Ｂの、一部を切り欠いて示す斜視
図である。 Ａ……浮遊吸音体、Ｂ……回収装置、１……風
船、２……ガス封入口、３……外被、４……吸音
材料層、５……回収用リング、６……気球、７…
…回収用フツク、８……固定座、９……ネツト、
１０……引綱。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 不燃性ガスを封入した風船と軽量の吸音材料
   とを組合せて成る浮遊吸音体を大空間建造物の内
   部空間の上部に浮遊または定着させることによ
   り、前記内部空間の音響特性を改善することを特
   徴とする、大空間の音響空間の造成法。