JPS6235980Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はシールリングに係り、特に軸線方向に
沿つて作用する正逆両方向の流体圧を共にシール
するようにしたシールリングに関する。

相対的に摺動する内外両円筒面間に配設される
シールリングとしては、断面がＵ字状をなすＵリ
ングや、Ｘ字状をなすＸリング等が従来より使用
されている。ただし、上記Ｕリングは軸線方向に
沿つた一方向の流体圧をシールするためのもので
あり、逆方向の流体圧をシールすることはできな
い。また、上記Ｘリングは軸線方向に沿つて作用
する正逆両方向の流体圧をシールすることができ
るが、次のような欠点がある。

すなわち、Ｘリングは一般的に肉厚であり、十
分な偏心追従性が得られない。この偏心追従性を
良くするためにはリツプ部の厚さを薄くすること
が考えられるが、このようにすると高圧に対する
シール性能が悪くなる。またリツプ部の厚さはそ
のままにして、その長さを伸ばすことも考えられ
るが、このようにするとスペース的に不利になる
という別の問題を生ずる。また、Ｘリングの側面
には環状の溝部が形成されているが、この溝部の
深さは比較的浅いため、ガータスプリングやエキ
スパンダの挿入が困難である。

本考案はこのような事情に鑑みて考案するに至
つたものであつて、その目的とするところは、軸
線方向に沿つて作用する正逆両方向の流体圧を良
好にシールでき、しかも摺動軸の偏心移動に対し
ても十分に追従することのできるシールリングを
提供することにあり、その要旨とするところは、
相対的に摺動する内外両円筒面間に配設され、軸
線方向に沿つて作用する正逆両方向の流体圧を共
にシールするようにしたシールリングにおいて、
上記シールリングの両側面に、断面が楔状をなす
一対の切込部を互いに入れ違うようにして円周方
向に沿つて形成し、上記シールリングの内周面お
よび外周面の両端部に、上記内外両円筒面と密着
するリツプ部をそれぞれ形成し、かつ上記シール
リングの両側面に、上記一対の切込部から摺動面
側の上記リツプ部へと放射状に延出した複数の連
通溝を形成したことにある。

以下に本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。第１図はブレーキ倍力装置１の縦断面を示
し、同図において２はハウジング、３はパワービ
ストン、４はダイヤフラム、５は負圧導入管、６
は正圧導入管、７は負圧室、８は正負圧室、９は
正圧導入管６とパワーピストン３内の通路１０と
を接続するコイル状の接続管、１１は操作ロツ
ド、１２はプツシユロツドである。本考案に係る
シールリング１６は、第１図および第２図に示す
ようにパワーピストン３とハウジング２との間に
配設され、正負圧室８をシールしている。なお、
このシールリング１６は左右一対をなすプラスチ
ツク製の保持リング１７，１８によつてやや圧縮
された状態で保持され、パワーピストン３の摺動
による位置ずれを起こさないようにされている。
なお第２図で１９は止めリングである。

上記シールリング１６は合成ゴム等にて一体成
形されたものであつて、詳しくは第２図に示すよ
うにその断面がほぼＺ字状をなしている。すなわ
ち、シールリング１６の一方の側面２０に断面が
楔状をなす切込部２２が円周方向に沿つて形成さ
れ、他方の側面２１にも同様の切込部２３が上記
切込部２２と互いに入れ違うようにして形成され
ている。シールリング１６の内周面と外周面の左
右両端部には、それぞれリツプ部２４〜２７が形
成され、これら４つのリツプ部２４〜２７がパワ
ーピストン３の外周面２８およびハウジング２の
内周面２９にそれぞれ密着している。また、シー
ルリング１６の左右両側面２０，２１には、一対
の切込部２２，２３からリツプ部２４，２５へと
放射状に延出した複数の連通溝３０，３１が形成
されている。なお、一方の切込部２２（または２
３）内には必要に応じてエキスパンダ３２を挿入
してよいが、この際、切込部２２，２３はスペー
ス的に十分な余裕があるので、エキスパンダ３２
の挿入が容易である。

シールリング１６は上述の如く構成されてな
り、常時は正負圧室８に負圧が導入されているの
で、シールリング１６に第２図で矢印ａ方向の大
気圧が作用する。このとき、リツプ部２５は上記
圧力によつてパワーピストン３の外周面２８に圧
着するので、良好なシール性能を発揮する。ま
た、操作ロツド１１を第１図で矢印ｃ方向に往動
させた場合は、正負圧室８に正圧が導入され、シ
ールリング１６に第２図で矢印ｂ方向の圧力が作
用する。このとき、リツプ部２４はこの圧力によ
つてパワーピストン３の外周面２８に圧着するの
で、パワーピストン３が第２図で矢印ｄ方向に摺
動しても良好なシール性能を発揮する。またリツ
プシール構造になつているため、このときのパワ
ーピストン３の摺動抵抗が小さく、リツプ部２
４，２５の粘着現象も起こしにくい。なお、リツ
プ部２４〜２７は比較的肉厚であるため、高い空
気圧に対しても十分なシール性を有する。

なお、一対の切込部２２，２３は複数の連通溝
３０，３１によつてリツプ部２４，２５の外側と
連通しているので、切込部２２または２３内に空
気圧を導入することができ、この空気圧によつて
リツプ部２４または２５をパワーピストン３の外
周面２８に確実に圧着させることができる。従つ
てリツプ部２４，２５のいわゆる緊縛力が増大
し、外周面２８における空気の吹抜けを確実に防
止することができる。

パワーピストン３の外周面２８と保持リング１
７，１８との間には、第２図に示すように所定の
クリアランスが形成されている。このためパワー
ピストン３が往復動する際に、パワーピストン３
が上記クリアランスの分だけ偏心移動することが
ある。しかしシールリング１６の中間部は比較的
肉薄でやや傾斜した連結部３３をなしているの
で、パワーピストン３の偏心移動量をこの連結部
３３の弾性的な変形によつて吸収することが可能
である。すなわち、従来使用されていたＸリング
はリングの中間部が必然的に肉厚となる関係上、
リングの半径方向の柔軟性が小さく、パワーピス
トン３の偏心移動に対するリツプ部の十分な追従
性が期待できなかつた。しかし本考案に係るシー
ルリング１６では、連結部３３によつて半径方向
の柔軟性を大きくすることができるので、シール
リング１６を半径方向にやや圧縮した状態でセツ
トすることにより、リツプ部２４，２５の追従性
を向上させることができる。従つてリツプ部２
４，２５の摩擦増加が防止されるとともに、良好
なシール性能が維持される。

なお、上記一対の切込部２２，２３はスペース
的に十分な余裕があるので、ここにリツプ部２
４，２５を潤滑シールするためのグリース（図示
せず）を十分貯えておくことができる。従つてシ
ールリング１６の寿命を向上させることができ
る。

以上、本考案の一実施例につき述べたが、本考
案は上記実施例に示したシールリングに限定され
ることなく種々の変形が可能である。例えば第３
図〜第９図は本考案に係るシールリング１６の他
の実施例を示したものであつて、第３図はガータ
スプリング３４を切込部２３に設けたものであ
る。また第４図〜第６図はそれぞれリツプ部２４
〜２７の形状を変更したシールリング１６を示
す。また第７図は一対の切込部２２，２３にエキ
スパンダ３２とガータスプリング３４をそれぞれ
設けたものである。さらに上記実施例では内周側
が摺接するシールリング１６について説明した
が、外周側が摺接するシールリングにも本考案を
同様に適用可能である。この場合、連通溝３０，
３１は第８図および第９図に示す如く一対の切込
部２２，２３から外側のリツプ部２６，２７にか
けて形成する。なお流体圧が特に低圧の場合に
は、第８図に示すようにリツプ部２４〜２７の先
端にエツジ部３５を形成することにより良好なシ
ール性能が発揮される。

本考案は上述の如く、シールリングの両側面
に、断面が楔状をなす一対の切込部を互いに入れ
違うようにして円周方向に沿つて形成したので、
軸線方向に沿つて作用する正逆両方向の流体圧を
共にシールすることができる。またシールリング
の中間部にやや肉薄の連結部が形成されることに
なるので、シールリングの半径方向の柔軟性を向
上させることができる。このため、摺動面に対す
るリツプ部の偏心追従性を向上させることがで
き、リツプ部の摩擦増加が防止されるとともに良
好なシール性能が維持される。

また、上記一対の切込部は互いに入れ違うよう
にして形成しているので、スペース的に余裕のあ
る切込部を形成できる。従つて一対の切込部に対
するガータスプリングやエキスパンダの挿入が容
易になる。また、一対の切込部内に十分な量のグ
リースを充填することができ、シールリングの寿
命を向上させることができる。

さらに、シールリングの側面に上記一対の切込
部から摺動面側のリツプ部へと放射状に延出した
複数の連通溝を形成したので、一方の切込部内に
流体圧を導入して、この圧力によつて摺動面側の
リツプ部を摺動面に圧着させることができるの
で、リツプ部のいわゆる緊縛力が増大し、摺動面
における吹抜けを確実に防止することができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案をブレーキ倍力装置のシールリン
グに適用した実施例を示したものであつて、第第
１図はブレーキ倍力装置の縦断面図、第２図は第
１図の要部の拡大断面図、第３図〜第９図はそれ
ぞれ本考案の他の実施例を示すシールリングの断
面図であり、第８図および第９図はそれぞれ外周
側が摺接するシールリングの断面図である。 １……ブレーキ倍力装置、２……ハウジング、
３……パワーピストン、７……負圧室、８……正
負圧室、１６……シールリング、１７，１８……
保持リング、２０，２１……シールリングの側
面、２２，２３……切込部、２４〜２７……リツ
プ部、３０，３１……連通溝、３２……エキスパ
ンダ、３３……連結部、３４……ガータスプリン
グ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 相対的に摺動する内外両円筒面間に配設され、
   軸線方向に沿つて作用する正逆両方向の流体圧を
   共にシールするようにしたシールリングにおい
   て、上記シールリングの両側面に、断面が楔状を
   なす一対の切込部を互いに入れ違うようにして円
   周方向に沿つて形成し、上記シールリングの内周
   面および外周面の両端部に、上記内外両円筒面と
   密着するリツプ部をそれぞれ形成し、かつ上記シ
   ールリングの両側面に、上記一対の切込部から摺
   動面側の上記リツプ部へと放射状に延出した複数
   の連通溝を形成したことを特徴とするシールリン
   グ。