JPS6235456B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はカムシヤフト、バルブロツカーアー
ム、タペツト等の如き摺動部材であつて、これを
鋳鉄で形成し、これの摺動面を溶融冷却してチル
組織を形成し、耐摩耗性を向上させるようにした
チル化摺動部材に関するものである。

鋳鉄の特定表面にチル（白銑）組織を形成さ
せ、高い耐摩耗性を付与させることは既知であ
る。

ところで内燃機関のカムシヤフトのカム部、バ
ルブロツカーアーム、タペツト、変速機のシフト
フオーク等の如く反復して摺動が付与される部材
では、摺動面の耐摩耗性を向上させる必要があ
り、耐摩耗性向上の一方策としてこれらを鋳鉄で
形成し、摺動面をチル化することも有効である。

上記耐摩耗性向上のためにカムシヤフトのカム
部、ロツカーアームのチツプ部、タペツト、シフ
トフオーク等をチル化処理する場合、これらはコ
ーナ部を備え、コーナ部を含む全表面を溶融硬化
させてチル化させると、コーナ部は溶融にさいし
て溶融体の表面張力によりそれ自身が球状化する
傾向がある。この結果、溶融硬化処理後コーナ部
は厚さ方向内方へのダレを生じ、即ち角部が丸く
なつてしまい、寸法精度、形状に相違が生じ、実
用に供し難くなる。

そこでコーナ部のみを溶融しないで中間部のみ
を溶融硬化処理するようにしたものも提案される
が、これによると硬化面積が制約されて少なくな
り、耐摩耗性の点で最良が期し難い虞れもある。

本発明は以上を改善すべくなされたもので、そ
の目的とする処は、コーナ部を有するカムシヤフ
トのカム部、バルブロツカーアームのチツプ部、
タペツト、シフトフオーク等の摺動面の表面を溶
融硬化させてチル化層を形成するにさいし、コー
ナ部のダレを防止し、全面均一なチル硬化層を形
成し、耐摩耗性向上を図つたチル化摺動部材を提
供するにある。

次に本発明の好適一実施例を添付図面に従つて
詳述する。

第１図乃至第４図は内燃機関のカムシヤフトの
カムの実施例を示し、カムシヤフト１の適所にカ
ム２が設けられ、カムシヤフト１及びカム２は一
体に鋳造され、所定の寸法精度を維持する如く機
械加工されている。カム２はシヤフト１から半径
方向に起立し、カム面２ａと直交するコーナ部２
ｂを備える。以上のカム２のカム面全面にチル硬
化処理を施す。

チル硬化処理は、TIG、プラズマ、レザー等に
よつて表面を溶融し、急冷却することにより表面
にチル（白鉄）組織を形成せしめる。ところでカ
ム２のチル硬化処理であるが、カム面２ａのコー
ナ部２ｂの外端をなすエツジ部２ｃから内側に所
定幅に亘り先ず溶融し、急冷却し、第１のチル化
部分３を形成し、この第１チル化部分３はカム面
の軸方向両側のコーナ部に形成され、プラズマ等
の溶融軌跡はコーナ部の長さ方向、即ちカムの円
周方向とし、カムを回転させることにより得られ
る。以上のコーナ部の所定幅の溶融は、エツジ部
２ｃを含んでなされるが、溶融の幅が極めて小さ
いこと、部分的でカム面の中間部が未処理である
ことによりコーナ部（エツジ部）の外方への円弧
状の変形、即ちダレを極小に抑えることができ、
寸法精度、形状を維持する。

次に両側のコーナ部を除く中間部２ｄ表面を溶
融し急冷却してチル硬化処理し、第２のチル化部
４を形成し、この場合、溶融軌跡は例えば第３図
の如く軸方向に走査しつつ円周方向に移行させて
蛇行させつつ形成する。かくして第４図に示され
る如くカム面の全表面にチル硬化層が形成される
こととなり、爾後両側のコーナ部の第１のチル化
部を含んで外表面を研削し、エツジ部のダレが極
小であるため、表面を平滑化する程度の加工でエ
ツジ部は正確に形成されることとなる。

第５図乃至第８図はバルブロツカーアームの実
施例で、ロツカーアーム１１の先部にスリツパ１
２が形成され、これのスリツパ面１２ａの四周の
コーナ部１２ｂ表面に既述により所定幅の第１の
チル化部１３を形成し、第１のチル化部１３で囲
まれた中間部１２ｄ表面に既述により第２のチル
化部１４を形成し、爾後表面を機械加工する。

第９図乃至第１２図はタペツトの実施例で、タ
ペツト２２の円形の表面２２ａの周辺コーナ部２
２ｂ表面に既述により所定幅の第１のチル化部２
３を形成し、第１のチル化部２３で囲まれた中間
部２３ａ表面に既述により第２のチル化部２４を
形成し、爾後表面を機械加工する。

以上実施例ではコーナ部を先に処理したが、中
間部を処理し、コーナ部を後で処理しても同様の
効果が得られ、又対象部材は上記に限らず、摺動
が反復するシフトフオークの摺動部等耐摩耗性が
要求される全てに実施することができるものであ
る。尚実施例では全表面をチル化処理したが、部
分的、即ち摺動面のみにチル化層を形成しても良
い。

次に具体的実施例を示す。

実施例 １ 自動車エンジンの第１図乃至第４図に示される
如きFC30製カムシヤフトのカム面をプラズマア
ークを用いて軌跡状に溶融してチル化する方法を
用いた。

予じめ400℃にカムシヤフトの全体を予熱した
ものをコーナからアーク中心を約１mm内側にセツ
トし、そのままコーナに沿つて平行に全周溶融軌
跡を描いた。この場合、カムの両コーナ部を処理
するが、コーナ部の処理は片側づつ行つても、同
時に両側を行つても良い。実施例ではプラズマガ
ンのノズル孔径は1.8φ、アーク長は４mm、電流
は50A、アークの相対速度は1m／minで行つた。

次いでカムを軸を中心にして回動し、アークを
カムの表面上で予じめチル化したコーナ部の未溶
融部迄左右に揺動させながら、且つ制御装置を介
してカムの表面とガンの間隔、即ちアーク長を一
定に保持し、ガイドして蛇行軌跡を描いて全周を
溶融チル化した。この結果得られたカムの表面を
0.5mm研削して平滑にしたところ、カム全幅、全
周に亘つて略々均一なチル硬化層が1.0mm形成さ
れた。

研削前の状態としては、予じめコーナ部をチル
化してダレ落ちを防止しているので、表面の平滑
仕上げで充分に実用に供するものが得られた。

尚比較のために同一のカムシヤフトを用いて予
じめカムコーナ部のチル化をせず、カム全幅、全
周に亘つて前記の要領でカムを回動させ、プラズ
マアークを蛇行線径を描いて溶融し、チル硬化処
理を行つた。これによるとカムのコーナ部は弧状
となり、研削しても製品形状を得ようとするとチ
ル化層が不均一、或は部分的に無くなつたりして
実用に供するものが得られなかつた。

実施例 ２ 第５図乃至第８図に示される如きFC55D製ロ
ツカーアームのスリツパ部の摺動面のコーナから
1.0mm内側にプラズマアークの中心をセツトし、
コーナに沿つて平行に溶融チル化した。次いで内
側の未溶融部を蛇行線径を描いて溶融チル化し、
スリツパ部摺動面全面をチル硬化した。

この時のプラズマアークの条件は、アークの相
対速度は0.8m／min、ガンのノズル径は1.5φ、
電流は40Aで行つた。得られた硬化層の表面から
0.4mm研削したところ、コーナのダレのない製品
が得られるとともに、約0.8mm〜1.0mmの略々均一
なチル層が摺動面全面に形成された。

実施例 ３ 第９図乃至第１２図に示す如きFC30製カムタ
ペツトのカム摺動面の円形状の外周表面コーナ部
をコーナ部から内側に0.5mmの位置にレーザー中
心を円周コーナに沿つて平行に軌跡を描いた。次
いで内側の未溶融部を蛇行線径を描いて全面を溶
融チル硬化した。

レーザーの条件は、CO₂ガスレーザーを用いて
出力2KW、デフオーカス距離＋８mm、ビーム走
査速度は0.5m／minで行つた。これを0.2mm研摩
し、得られたチル層は0.4mmのものが得られ、コ
ーナ部にダレのない均一なチル硬化層が形成され
た。

以上で明らかな如く本発明によれば、カムシヤ
フトのカム等の摺動面全面に均一な厚さのチル化
層がコーナ部のエツジ部迄形成することができ、
摺動面の耐摩耗性向上の点で優れた効果が得られ
るとともに、コーナ部のエツジ部を正確に保持し
つつ上記が図れ、寸法精度の優れたものが得ら
れ、更には摺動面に部分的ではなく全面的に均一
なチル化層を形成し得ることにより耐久性向上の
点でも優れる等多大の利点を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示すもので、第１図
はカムシヤフトの側面図でコーナ部をチル化した
状態の図、第２図は同要部の断面図、第３図は未
処理部のチル化処理を行つている第１図と同様の
図、第４図はこれの第２図と同様の断面図、第５
図はロツカーアームの底面図でコーナ部をチル化
した図、第６図は同要部の断面図、第７図は全面
チル化状態の第５図と同様の図、第８図はこれの
第６図と同様の断面図、第９図はコーナ部をチル
化したタペツトの斜視図、第１０図は同要部の断
面図、第１１図は全面チル化状態の斜視図、第１
２図はこれの第１０図と同様の断面図である。 尚図面中１，１１は部材、２，１２，２２は摺
動面、３，４，１４，２３，２４はチル化層であ
る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ コーナ部を有する鋳鉄部材の表面を溶融し、
   急冷却して表面をチル化する部材において、コー
   ナ部の所要幅の部分と、コーナ部の内側の部分と
   を別個に溶融硬化処理したことを特徴とするチル
   化摺動部材。 ２ 前記鋳鉄部材の表面のコーナ部の所要幅の部
   分を溶融硬化処理し、次に内側の部分を溶融硬化
   処理した前記特許請求の範囲第１項のチル化摺動
   部材。 ３ 前記鋳鉄部材の表面の内側の部分を溶融硬化
   処理し、次にこれの外側のコーナ部分を溶融硬化
   処理した前記特許請求の範囲第１項のチル化摺動
   部材。