JPS6230270B2 - - Google Patents

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JPS6230270B2
JPS6230270B2 JP54005713A JP571379A JPS6230270B2 JP S6230270 B2 JPS6230270 B2 JP S6230270B2 JP 54005713 A JP54005713 A JP 54005713A JP 571379 A JP571379 A JP 571379A JP S6230270 B2 JPS6230270 B2 JP S6230270B2
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mol
coating
electrode
oxide
antimony
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Shinei Shimojo
Makoto Furubayashi
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TDK Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
本発明は、改良された電解用電極およびその製
造方法に関するものである。 従来、食塩水電解に代表されるアルカリ金属塩
電解は、そのほとんどがいわゆる水銀法により行
なわれていたが、近年、その廃棄物中に含まれる
水銀よる環境汚染が大きな社会問題として取り上
げられるようになり、水銀法からいわゆる隔膜法
やイオン交換膜法への転換が求められている。 通常、隔膜法やイオン交換膜法では、水銀法よ
りも電解時に高いPHが用いられ、またこれまで知
られている電極は一般に酸素過電圧が低いため、
アスベスト隔膜法やイオン交換膜法によると、発
生する塩素ガス中には1〜3%程度の酸素が混入
するのを免れない。したがつて、これらの方法で
得られた塩素は、直接石油化学プラントなどに送
ることはできず、その前にいつたん酸素を除去し
なければならない。そのため、特別な装置やはん
雑な操作を必要とし、これがコスト上昇の1つの
原因となつている。このような問題を解決するに
は、酸素の発生のできるだけ少ない電極を用いれ
ばよいのであるが、酸素の平衡電位Eo2は、塩素
の平衡電位ECl2よりも低いため、酸素及び塩素
電極反応に対し、選択性を全く有してない電極で
は、塩素の発生する電位において常に多量の酸素
の発生を伴うことになる。 したがつて、酸素の発生をできるだけ抑制する
には、電極被覆材料自体に、速度論的に酸素電極
反応を起しにくい特性を付与させることが必要で
ある。 通常、電極自体のこのような反応に対する選択
性は電極触媒能と称され、それぞれの電極被覆材
料の交換電密度がその目安として用いられてい
る。このような電極触媒能をもつ元素としては、
ルテニウム、パラジウム、ロジウム、白金、イリ
ジウムなどの白金族元素が知られている。 これらの元素を、交換電流密度の大きさの順に
並べると、酸素電極反応に関しては、 Ru>Ir>Rh>Pd>Pt となり、塩素電極反応に関しては Pd>Ru>Ir>Rh>Pt となる。このことから、酸素の発生が少なく、塩
素電極反応の電極触媒能のすぐれているという点
では、パラジウムが最も目的にかなつていること
が分る。 しかしながら、実際に使用する場合、パラジウ
ムを金属状で被覆すると、耐食性が劣り、電解時
に溶解してしまうため、実用化できないという問
題が生じる。 この問題を解決するために、これまで白金―パ
ラジウム合金、この合金を基体に被覆したもの、
又はこの合金表面を酸化したものからなる耐食性
電極が提出されているが、(特公昭45―11014号公
報、特公昭45―11015号公報)これらの電極は、
パラジウムを合金化したゝめに、パラジウム自体
のもつすぐれた電極触媒能が発揮されず、かつ長
期耐食性の点でまだ十分に満足できるものとはい
えない。 また、白金―パラジウム合金の酸化物を電極と
したものも提案されているが(特公昭48―3954号
公報)、実際に、合金の酸化物をチタン基板上に
形成するには、高温及び高圧の酸素雰囲気下で処
理する必要があるが、このようにすればチタン基
板の酸化が著しく電極として使用不可能なものと
なる。このため、前記方法では、チタン基板上に
白金―パラジウム合金を被覆し、陽極酸化によつ
て合金の酸化物を形成しているが、その特性は、
前記した合金の表面を酸化した電極と同等程度の
ものとなるにすぎない。 他方、本発明者らは、熱分解により酸化パラジ
ウムとなる化合物を塗布し、これを熱分解し、パ
ラジウムを酸化物の形でチタンなどの弁金属基板
に被覆することを試みたが、チタン基板と酸化パ
ラジウムの密着性が低く、成功しなかつた。そこ
で、さらに研究を重ね、熱分解法により大量の酸
化パラジウムに少量の他の金属酸化物を被覆中に
含有せしめたとき、密着性が改善されることが判
明した。しかし熱分解法でチタン基板上に酸化パ
ラジウム被覆を施こす際、チタンと酸化パラジウ
ム又は未反応の原料パラジウム化合物とが直接に
接触していると、このチタンによりこれらのパラ
ジウム化合物が還元され、金属パラジウムが析出
し、酸化パラジウム中に混入してくる。このた
め、密着性はある程度改良されても、前記のよう
にして析出した金属パラジウムが電解時に溶解
し、被覆層が多孔質となり、電極面からのガス発
生に伴つて被覆が脱落し、耐食性が経時的に変化
してしまい実用には耐え得ないものであつた。 本発明者等は、これらの事実に鑑み、先に、こ
の出願の先願として、チタン、タンタル、ジルコ
ニウムなどの弁金属基体上に、完全な酸化物であ
る酸化パラジウムと、金属形態の白金金属とから
なる被覆を施した電極を提案している(特公昭55
―8595号)。 この電極の製造方法の特徴は、まず熱分解可能
なパラジウム化合物を直接基材上に塗布し熱分解
するものでなく、例えば塩化パラジウムをあらか
じめ酸素中で熱分解するか又は前もつてパラジウ
ム黒を酸素中で酸化して完全な酸化パラジウムと
して作成しておく。 この様にして作つた酸化パラジウムを熱分解に
よつて白金金属となる白金化合物例えば塩化白金
酸のブタノール溶液に分散剤を加えて分散せしめ
塗布液を作成する。これを機械的かつ化学的にエ
ツチングした基板に塗布し焼付けるものである。
この方法によるとパラジウム金属の生成は全く認
められず、かつ一回のコーテイングで従来の熱分
解法に比べ数倍の膜厚のものが得られるため電極
の耐食性が向上するものであつた。なおこの場合
パラジウムに同時に含有される白金は被覆された
状態では白金金属であることが必要である。 これは基板に被覆された酸化パラジウムの基板
との密着性を向上させるためとまた酸化パラジウ
ム粒子間の電気的接触を向上させて電気化学的触
媒能をになう酸化パラジウムの電気抵抗を下げる
作用を有せしめるためである。 しかしながら上記電極は、電極触媒能および耐
食性については満足すべきものであるが、電解時
に泡発生に伴う電極被膜の機械的脱落を起しやす
いという重大な欠点を有するものであつた。この
ような欠点を解消するため、先に本発明者らは、
上記電極被覆を形成した後、更にその上に熱分解
によつて白金金属となる化合物の後段白金金属被
覆を施す方法や、上記方法によつて形成される電
極被覆と白金金属被覆とを任意の順序で層状に多
層塗りする方法を提案している(特公昭55―
36713号)。これらの方法によれば、得られる電極
は電極触媒能と耐食性とが高く、しかも電解時の
泡発生に伴う被覆の機械的脱落も格段と減少する
ものである。 しかし、電解用電極は、その被覆形成後の加工
工程、加工後の運搬時、あるいは電解槽への実装
時、更には電解実施時に、工具の支持機構、梱抱
材料、人間の手、隔膜等種々の対象から摩擦ない
し引つかきをしばしば受けることになる。このよ
うなとき、上記のような電極では、泡発生に対す
る被覆の機械的脱落は減少するものの、このよう
な摩擦等に対しては、その機械的強度が不十分で
あることがその後の研究で見出されている。又上
記の電極の寿命も未だ必ずしも満足できるもので
はない。 一方、上記のような多層塗りの方法の提案にお
いて、本発明者らは同時にセリウム、ジルコニウ
ム、チタン、タンタル、タングステンをハロゲン
化物、有機塩等の形で塗布液に添加して、これら
を加熱時に酸化物として、これら酸化物を被覆中
に含有せしめると、その機械的強度が向上する旨
を開示している。確かに、これら酸化物を含有さ
せると、上記の摩擦等に対しても機械的強度は向
上するものであるが、その向上は必ずしも末だ満
足すべきものではなく、又摩擦に対する機械的強
度が十分であつても、そのときには被膜抵抗が高
くなり、塩素過電圧の増大に基づく槽電圧の上昇
が生起したり、寿命が短くなるという不都合が見
出されている。 本発明は、上記したこの出願の先願として提案
した、酸化パラジウムと、白金金属とを含む被覆
を有する電解用電極の、種々の欠点を全て解消す
ることを目的とするものであり、特に電極触媒
能、耐食性、電解時の泡発生に対する機械的強度
の大きさで十分満足できるという先に本発明者ら
が提案した電極の特性を同等に保持し、その上
で、電極の運搬時、実装時等にしばしば加わる電
極表面への摩擦、引つかき等に対し機械的強度が
十分大きく、又槽電圧も低く、しかもその寿命が
格段と高い電解用電極を提供すること、そしてそ
のような電解用電極の好ましい製造方法を提供す
ることを主たる目的とする。 本発明者らは、このような目的につき種々検討
を行つた結果、特定の組成比で酸化パラジウムと
白金金属とを含有する被覆において、特定の組成
比で酸化錫を含有し、しかもこの酸化錫が特定の
組成比でアンチモンをドーパントとして含むと
き、選択的に上記目的が実現するという予測しが
たい知見を得、本発明をなすに至つたものであ
る。 すなわち、本発明は、導電性基材、特に弁金属
基材上に、酸化パラジウムと白金金属とを含む被
覆を有する電解用電極において、当該被覆中に
は、20〜70モル%の酸化パラジウムと、3〜64モ
ル%の白金金属と、6〜72モル%の酸化錫とが含
まれ、しかも当該酸化錫はアンチモン換算で0.1
〜10モル%の範囲で酸化アンチモンにより置換さ
れていること、そしてこのような電極の製造方法
にある。 以下、本発明の電解用電極について詳述する。 本発明の電極においては、先に提案した諸電極
において、更に酸化アンチモンで置換し、アンチ
モンを酸化アンチモンの形で含有する酸化錫と白
金金属を含有するので、電極被膜中の空隙にはア
ンチモン置換酸化錫と白金とが特定の量比で侵入
し、酸化パラジウム粒子をきわめて効率よく強固
につなぎ止め、電解時の泡発生に伴う電極被覆の
脱落の抑制、被覆内での電流パスの増大による膜
抵抗の減少、これに付随する触媒活性を有する有
効酸化パラジウム量の増大等の効果が実現するだ
けでなく、格段と大きな摩擦に対する機械的強度
を有するものである。 電解用電極の導電性基材としては、当業界で周
知の弁金属(バルブメタル)、例えば、特公昭47
―26948、特開昭52―86979に記載されているチタ
ン、タンタル、ジルコニウム、ニオブあるいはこ
れらの合金等の弁金属、特にチタンを用いること
が好ましく、その形状等は用途に応じ適宜変更可
能である。 導電性基材上に設ける被覆は、上述の特定の成
分および組成からなり、それ以外では本発明所定
の効果は実現しない。この場合、酸化パラジウム
は、被覆中の20〜70モル%であり、残部80〜30モ
ル%は、白金金属と、アンチモン置換酸化錫とで
構成される。そして、この残部80〜30モル%は、
計100モル%の条件で、10〜80モル%の白金金属
と、90〜20モル%のアンチモン置換酸化錫かな
る。すなわち、被覆には、20〜70モル%の酸化パ
ラジウムと、3〜64モル%の白金金属と、6〜72
モル%のアンチモン置換酸化錫とが含まれる。な
お、このような場合、40〜65モル%の酸化パラジ
ウムと、3.5〜48モル%の白金金属と、7〜54モ
ル%のアンチモン置換錫とから被覆が構成される
と、より好ましい結果をうる。これらの場合、通
常酸化パラジウムと白金金属とアンチモン置換酸
化錫とは、3者が均一に混合するのではなく、そ
れぞれ実質的に粒界を有して被覆中に含有される
ものである。 なお、上記の各組成量の限定理由は以下のとお
りである。すなわち、酸化パラジウムが20モル%
未満となると寿命が低下してしまい実用に耐え
ず、また、塩素過電圧も高くなる。一方、酸化パ
ラジウムが70モル%をこえると、被覆強度が極度
に低下してしまい、寿命も低下してしまう。白金
金属が3モル%未満となると、寿命が低下して実
用に耐えず、また64モル%をこえると、塩素過電
圧が上昇し、製造コストも高くなる。 アンチモン置換酸化錫が6モル%未満となる
と、被覆強度が低下して実用に耐えず、72モル%
をこえると、塩素過電圧が上昇してしまう。 又、酸化錫は上述の量比のアンチモンで置換さ
れる必要があり、この量比範囲外では本発明所定
の効果は実現しない。すなわち、アンチモンの置
換比が0.1モル%未満となると、塩素過電圧が高
く、槽電圧が高くなつてしまう。また、アンチモ
ンの置換比が10モル%をこえると、寿命が低下す
る。このような場合、アンチモン置換比が0.1〜
5モル%となると、より一層好ましい結果をう
る。なお、酸化錫中で錫は実質的に4価であり、
又アンチモンは通常酸化錫粒子中で実質的に錫の
サイトを置換するドーパントとして存在するもの
である。 なお、被覆の厚さとしては、概ね0.5〜10μ程
度であればよい。又、被覆中には、他の成分はあ
えて含有せしめる必要はないが、目的によつて
は、10モル%程度以下の範囲でセリウム、ジルコ
ニウム、チタン、タンタル、タングステン、シリ
コン、鉛等の酸化物が含有されていても本発明所
定の効果は減じられない。 このような本発明の電解用電極は、以下のよう
な製造方法に従い製造される。 酸化パラジウムを被覆中に含有せしめるには、
あらかじめ種々の方法で得た、あるいは市販の酸
化パラジウム粉末を、適当な溶媒中に必要に応じ
各種界面活性剤を用い分散させ、この液を塗布、
乾燥すればよい。白金金属を被覆中に含有せしめ
るには、熱分解によつて白金金属となる塩、例え
ばハロゲン化白金酸、特に塩化白金酸を適当な溶
媒中に溶解してなる液を調製し、これを塗布、加
熱すればよい。アンチモン置換酸化錫を被覆中に
含有せしめるには、熱分解によつて酸化錫となる
塩、例えば塩化第1錫等のハロゲン化第1錫や、
オクテン酸等のカルボン酸、ホスホン酸、ホスホ
カルボン酸等の第1錫錯塩と、熱分解によつて酸
化アンチモンとなる塩、例えば塩化アンチモン等
のハロゲン化アンチモン等とを、所定量比で適当
な溶媒中に溶解してなる液を調整し、これを塗
布、加熱すればよい。従つて、前述の成分および
組成からなる被覆を基材上に設けるには、上記3
種の液を組合せてなる単一の塗布液を調製し、こ
れを塗布したり、あるいはこれらのうち2種また
は1種からなる塗布液を2種以上用意し、これら
を多層塗布したりする等種々の態様が可能である
が、以下の2つの態様いずれかに従うことが好ま
しい。 第1の態様は、酸化パラジウムと、上記熱分解
によつて酸化錫と、上記熱分解によつて酸化アン
チモンになる塩と、熱分解によつて白金金属にな
る塩とをあらかじめ溶媒中に溶解または分散せし
めて塗布液を調製し、これを基材上に塗布、加熱
する工程を含む場合である。このような場合とし
ては、通常は、基材表面上に、前述の組成の被覆
を形成するごとく計算された成分比とされた上記
塗布液を塗布、加熱して、上記塗布液から形成さ
れる被覆を単一層として設ければ十分であるが、
場合によつては、上記塗布液に対し更に別の下塗
用塗布液や上塗用塗布液を調製し、これらと上記
塗布液とを多層塗布してもよい。多層塗布をする
場合、被覆全体が前述の組成となれば、下塗用塗
布液により形成される下層被覆の組成には特に制
限はないが、上塗用塗布液には酸化パラジウムを
含有させないことが好ましい。 第2の態様は、酸化パラジウムと、必要に応じ
上記熱分解によつて白金金属になる塩とをあらか
じめ溶媒中に含有せしめてなる塗布液を調製し、
これを基材上に塗布、加熱して前段被覆を施した
後、次いで熱分解によつて酸化錫になる塩と、熱
分解によつて酸アンチモンになる塩と、熱分解に
よつて白金金属になる塩とを溶解してなる塗布液
を調製し、これを前段被覆表面上に塗布、加熱し
て後段被覆を設ける工程を含む場合である。この
ような場合としては、基材表面にこの前段および
後段被覆を施す他、この前段および後段被覆を複
数回繰返す場合や、この前段および後段被覆の下
層被覆として、酸化パラジウムと必要に応じ熱分
解によつて白金金属になる塩を含有する塗布液
と、熱分解によつて白金金属になる塩を含有する
塗布液とを用い、これらを任意の順序で1回以上
塗布、加熱してなる被覆を設ける場合等がある。
又、この前段および後段被覆に対する上層被覆と
して白金金属のみからなる上層被覆を設けること
もできる。 このような両態様において、上記各種塗布液の
溶媒としては、水、エタノール、プロパノール、
ブタノール、これらの混合液等を用いることがで
きる。又各種塗布液の濃度としては、粘度、塗布
のしやすさ等から、金属換算で計0.01〜10g/
ml、特に0.2〜2g/mlとすることが好ましい。
なお、他の成分に対しては問題はないが、熱分解
によつて酸化錫ないし酸化アンチモンになる化合
物としては塩化物を用いるときには、加熱により
ある程度揮発するので、その揮発量を予め実験か
ら求めておき、これらを所定過剰量塗布液中に含
有させる必要がある。 このような各態様に応じ、一種または2種以上
の塗布液を塗布、加熱して被覆が形成される。塗
布は常法に従い、刷毛塗りやスプレー等にて行
い、各塗布毎に加熱処理を行い塗布液を焼付け
る。焼付条件としては、酸素分圧を0.002〜0.5気
圧の範囲に制御し、1回の塗布毎に400〜800℃の
最適温度で5〜10分間加熱し、必要に応じこの操
作を数回繰返す。そして好ましくは、最終回の焼
付は400〜800℃で10分〜1時間加熱するのが最適
である。 このようにして得られる本発明の電解用電極
は、ソーダ工業用食塩水電解等のハロゲン化アル
カリの電解や、減菌用等の海水や塩水の電解等に
用いてきわめて有用である。 本発明の電解用電極は、電解触媒能が高く、耐
食性にすぐれ、しかも電解時の泡発生に対する強
度が高く、さらに、電極表面に対する摩擦、引つ
かき等に対しきわめて高い被覆強度を示す。又同
時に、塩素過電圧と槽電圧が十分低い。しかも電
極の寿命は格段と長い。 又、本発明における製造方法によれば、このよ
うな電解用電極を、きわめて効率よく製造するこ
とができる。 次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。 実施例 1 塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)0.263g、酸化
パラジウム(PdO)0.414g、市販のオクテン酸
錫(金属含有量28%)1.914g、三塩化アンチモ
ン(SbCl3)0.03gをn―ブタノールに溶解分散
し塗布液を作成した。なお酸化錫のドーパントと
しての三塩化アンチモンは以下に説明する基材へ
の焼きつけ時にその多量が揮発損失するために、
塗布液中には最終的にドープしたい量よりも数倍
多目に加えておく必要がある。従つて上記塗布液
よりアンチモンを除た場合大体PdO:Pt:Sn=
40:6:54の液組成となつている。別に基材とし
てトリクレンにて脱脂した後、沸騰した10%シユ
ウ酸溶液にて5時間エツチングし表面を清浄にし
たTi基板(厚さ1mm、13mmφ)を用意した。 この基板に上記塗布液を刷毛にて塗布し、乾燥
後500℃の空気雰囲気の電気炉中で加熱処理し
た。加熱時間は5分とし、この塗布、加熱を合計
6回繰返し、6回目のみ加熱時間を30分とした。
このようにして得られた電極―1を化学分析お
よび蛍光X線分析により分析した結果、被覆組成
はPd41モル%、Pt6.2モル%、Sn52.3モル%、
Sb0.5モル%であつた。なおこの分析にあたつて
は試料が少ないため大面積の上記基材に上記同様
塗布、加熱を行ないこの分析用サンプルを用いて
決定した。(なお以後の電極における組成決定に
ついても同様である。)さらにX線回析によつて
分析した結果、被覆は基本的にPdO、Pt、SnO2
からなりアンチモンはSnO2にドープされたもの
と考えられその濃度はSnに対し約1モル%と推
定された。なお膜厚は約1μであつた。以下同様
にして仕込量比を変えてほぼ同膜厚の被覆を有す
る各種組成の本発明の電極I−1、I−2、I−
3、I−5、I−6および比較用の電極I−4、
I−7、I−8、I−9、I−10を作成し、その
組成分析および各種の評価を行いその結果を表―
1に示した。この場合、電極―1〜―6、
―8および―9のSnとSbを含むサンプルはす
べて焼き付け後の酸化錫へSbのドーピング量が
ほぼ1モル%となつていることが確認されたもの
であり、表―1中には被膜中のSn+Sbの合計モ
ル比を示してある。又電極―10はオクテン酸錫
とSbCl3のかわりに市販の塩化第一セリウム
(CeCl3・7H2O)を用い、また溶媒としてはエチ
ルアルコールを用い被覆中にSbドープ酸化錫の
かわりに8.7モル%のCeO2を含有せしめたもので
ある。 次にこれらの被膜強度を調べるためにセロテー
プによる剥離試験を行つた。この方法はセロテー
プの圧着の程度により結果が相当にばらつくため
通常は定量性に欠けるが簡便でありまた本発明者
等が先行する出願において示した超音波による振
動剥離試験よりもさらに苛酷な試験であるため本
発明ではこれを機械的摩擦に対する機械的強度の
判断の方法として採用した。剥離試験方法として
は、具体的には、セロテープを電極に貼り100Kg
の荷重を垂直方向にかけた後、セロテープを電極
から剥した。 そして強度の判定は目視によつても明らかであ
るが、各組成のサンプルを3個以上試験し試験前
後の基板上のPdの量を蛍光X線分析によつて測
定し決定した。表―1中◎はPdの剥離量が0〜
2%、〇は2〜10%、△は10〜20%、×は20%以
上である。 次に電解用電極としての特性を見るために塩素
過電圧(ηCl2)の測定と耐食性の加速試験を行つ
た。塩素過電圧は5M NaCl、PH1、温度30℃の
食塩水中で溶液を強制撹拌し、電流密度204A/
dm2での値を測定した。また耐食性の加速試験は
Vaa1eの方法〔J.Electrochem.Soc.117 219
(1970)〕に準じ、塩素飽和の0.5M NaCl、2M
NaClO4の溶液を65℃、PH3に保ちながらゆるい
撹拌のもとで100A/dm2の電流密度で電解して
行つた。槽電圧が4Voltとなつた時点で電解を止
めそれまでに要した電解時間を電極の寿命と見な
して結果を表―1に示した。表中◎は2500時間以
上、〇は1500〜2500時間、×は500〜1500時間、×
×は500時間以下を示している。本発明者等が
種々検討した結果、本加速法は実際に電解槽に組
み込んだ場合の約15〜20倍の加速となつているも
のと考えられる。この場合、実際の実装試験で
は、×および××では、3年以下の寿命しか示さ
ず、実用に耐えなかつたや、◎および〇は、3年
以上の寿命をもち、実用上充分であることが確認
されている。さらに表―1は電解開始時の槽電圧
も併せ示した。 表―1より本発明よりなる電極I−1、I−
2、I−3、I−5、I−6は剥離試験、加速試
験のいずれにも満足できる特性を示していること
がわかる。これに対しSbドープ酸化錫SnO2
(Sb)を含まない電極―7は加速試験は満足で
きるものの強度が低い。 またSnO2(Sb)を含んでいても電解触媒能を
有するPdOが少ない電極―8は強度は満足でき
ても加速試験が悪く、逆にPdが多量でPt、SnO2
の少ない電極―9はやはり強度が低い。さらに
本発明電極―6とPdおよびPt組成比が対応す
る電極―10はSnO2(Sb)の代わりに導電性の
ないCeO2を加えたものであるが、強度は充分に
満足されるものの加速試験では全く問題とならず
導電性のSnO2(Sb)の電解時の寿命に対する効
果は明らかである。 なお、白金金属が3モル%以下の電極―4で
は、寿命が短く、実用に耐えないことがわかる。
【表】 実施例 2 実施例1の電極―6と―10の比較より明ら
かになつたごとく、膜強度を向上させる為に添加
する物質については、その導電性の程度が大きな
原因になる。 SnO2の導電性はSbをドープすることによつて
飛躍的に改善されることが知られており、透明電
極を始めとする用途に用いられている。 本発明においては導電性と共に、電解中の耐食
性および機械的高強度をも満足させるものであ
る。そこで実施例1の電極―2と同様の組成に
おいて、焼きつけ後のSnO2へのドーピング量を
それぞれ0・0・5・1・5・15モル%となるよ
うに約1μの被覆を有するサンプル電極―1〜
―5を作成し、実施例1と同様の試験を行い、
Sbドーピング量の範囲の判定を行つた。結果を
表2に示した。 表2の結果より、Sbドーピング量0の電極
―1では初期過電圧も0.05Vと高く、さらに加速
試験の槽電圧も3.4Vと非常に高くなり実用に供
することはできない。
【表】 さらにSbドーピング量15モル%の電極―4
は、過電圧、槽電圧共に満足できる値であるが、
加速試験の電解時間が減じてくる。この点は理由
は未だ明らかではないが、SnO2に対してSb量が
増すと、遊離した酸化アンチモンが生成し、この
酸化アンチモンの耐食性が悪く被覆中より溶出す
ることが原因となつているものと考えられる。こ
れに対し、Sbドーピング量0.1〜5モル%の場合
には所特性が格段と良好であることがわかる。 実施例 3 塩化白金酸をn―ブタノールに溶解した溶液に
酸化パラジウムを均一に分散させて、対応仕込組
成でPdO80モル%、Pt20モル%の金属含有量0.1
g/mlの塗布液を作り、実施例1と同様な方法に
て電極被覆を行つた。次にこの電極被覆上に塩化
白金酸とオクテン酸錫と三塩化アンチモンをn―
ブタノールに溶解させて、モル比でPt:Sn=
35:65で、Snに対して3モル%のSbを含み、全
金属含有量0.1g/mlの塗布液を塗布、含浸させ
た後、前段の被覆と同様に焼き付けることによ
り、最終的に約1μの被覆を有する電極を得た。
得られた電極は対応組成PdO52.3モル%、Pt24.4
モル%、SnO223.3モル%から成り、しかもSnO2
はその約1モル%がSbにより置換されているこ
とが確認された。(電極―1) 次に同一の方法にて、対応仕込組成PdO80モル
%、Pt20モル%の前段の塗布液を行い、次にPt60
モル%、Sn40モル%(但し、Snに対して3モル
%のSbを含む)の同様な後段の塗布液を作り、
同一の方法にて焼き付けることにより、対応組成
PdO40.6モル%、Pt38.9モル%、SnO220.5モル%
から成り、しかもSnO2はその約1モル%がSbに
より置換されている約1μの被覆を有する電極を
得た。(電極―2) 次に比較のため、対応仕込組成PdO90モル%、
Pt10モル%の前段塗布液と、全金属含有量0.01
g/mlのPt5モル%、Sn95モル%(但しSnに対し
3モル%のSbを含む)の後段塗布液を作り、同
一の方法にて焼き付けることにより対応組成
PdO81.2モル%、Pt10.3モル%、SnO28.5モル%
から成り、しかもSnO2はその約1モル%がSbに
より置換されている全体で約1μの被覆を有する
電極を得た。(電極―3) 更に比較のため、同一の方法にて、対応仕込組
成PdO80モル%、Pt20モル%の塗布液で前段の電
極被覆を行つた後、塩化白金酸とオキシ塩化ジル
コニウムを少量の塩酸を加えたエタノールに溶解
し、対応仕込組成Pt35モル%、Zr65モル%の後段
塗布液を作り、同一方法にて焼き付けた。得られ
た電極は対応組成PdO49.2モル%、Pt26.3モル
%、ZrO224.5モル%から成り、全体で約1μの被
覆を有する電極であることが確認された。(電極
―4) 更に比較のため、電極―4と同様な前段被覆
を行つた後、塩化白金酸をn―ブタノールに溶解
した溶液を作り、後段の被覆を行い、対応仕込組
成PdO52.3モル%、Pt47.7モル%、全体で約1μ
の被覆を有する電極を得た。(電極―5) 次にこれらの電極について実施例1と同一の条
件でセロテープによる剥離試験、塩素過電圧の測
定、耐食性の加速試験を行い、これらの結果をま
とめて表3に示した。なお表3には比較のため実
施例1における電極―7の結果についても併せ
て掲げた。また表3中の記号は表1におけると同
一である。
【表】
【表】 表3の結果より、本発明の電極―1、―2
は剥離試験、加速試験のいずれにも満足できる特
性を示していることがわかる。これに対し、本発
明の組成比の範囲外である―3は剥離試験で劣
り、電解加速試験でも充分に満足できるものでは
ない。本発明電極―1と比較できる電極―4
は、剥離試験にはほぼ満足するものの、電解加速
試験では著しく劣り、かつ槽電圧も高く、ZrO2
に比較してのSnO2(Sb)の効果が明らかであ
る。また同様に本発明電極―1に比較できる電
極―5は、電解加速試験及び槽電圧においては
ほぼ満足できるものの、剥離試験では満足するこ
とができない。電極―5と同組成である電極
―7では剥離試験及び電解加速試験共に劣る。 実施例 4 実施例3と同様に塩化白金酸をブタノールに溶
解した溶液に酸化パラジウム微粉末を均一に分散
させて全金属含有量が0.1g/mlでPdO80モル
%、Pt20モル%の仕込み組成の塗布液を作成し
た。又別途に塩化白金酸とオクテン酸スズと塩化
アンチモンをブタノールに溶解して、金属含有量
が0.1g/mlでPt35モル%、SnO265モル%(但し
Snに対して3モル%のSbを含む)の対応仕込み
組成をもつ塗布液をも同時に作成した。 次にこれらの塗布液をチタン円板基材に刷毛に
て次に示す様な順序で塗布、焼成を繰り返した。 2〓〓2〓〓2〓 こゝで数字はPt―Sn(+Sb)溶液を、〇なし
の数字はPdO:Pt=80:20の塗布液を、数字は
各々の塗布回数を示す。 加熱処理はこれまでの例と同様に塗布毎に各5
分間、500℃、空気中にて行い、最終回のみ30分
間行なつた。 得られた電極は対応組成PdO49.6モル%、
Pt26.3モル%、SnO224モル%からなる電極であ
ることが確認された。(電極―1) 次に上記2溶液の他に金属含有量0.1g/mlの
Pt単味ブタノール溶液を作成し、これら3種の塗
布液を次に示す様な順序で塗布、焼成を繰返し
た。 2〓□22〓□22〓 こゝで数字はPt―Sn(+Sb)溶液を、〇なし
の数字はPdO/Pt塗布液を、数字はPt単味のブタ
ノール溶液を又数字は各々の塗布回数を示す。 上記電極と同様に焼付し、得られた電極は対応
組成PdO41.6モル%、Pt37.6モル%、SnO220.8モ
ル%からなる電極であることが確認された。(電
極―2) これとは別に、金属含有量0.1g/mlのオクテ
ン酸スズのブタノール溶液(但しSnに対し3モ
ル%のSbを含む)を作成し、次に示すような順
序で塗布、焼成を繰返した。 2〓△2〓2〓△2〓2 こゝで数字はPt―Sn(+Sb)溶液を、〇なし
の数字はPdO/Pt溶液を、数字はSn(+Sb)溶
液を、又数字の各々の塗布回数を示す。 上記電極と同様に焼付し、得られた電極は
PdO39.6モル%、Pt15.8モル%、SnO244.6モル%
からなる電極であることが確認された。(電極
―3) 次にこれらの電極の耐食試験と剥離試験を実施
例1と同様に行い、それらの結果をまとめて、表
4に示す。
【表】 表4より、これら3種の電極はいずれも本発明
電極であるが、剥離試験、加速試験共に充分満足
できる結果が得られている。これら3種の電極の
他に種々の焼付方法が考えられるが、本発明者等
が行つた実験結果において本発明の組成範囲であ
れば、いずれも良い結果を示した。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 導電性基材、特に弁金属基材上に、酸化パラ
    ジウムを含む被覆を有する電解用電極において、
    当該被覆中には20〜70モル%の酸化パラジウム
    と、3〜64モル%の白金金属と、6〜72モル%の
    酸化錫とが含まれ、しかも当該酸化錫はアンチモ
    ン換算で0.1〜10モル%の範囲で酸化アンチモン
    により置換されていることを特徴とする電解用電
    極。 2 アンチモン置換酸化錫が酸化パラジウム粒子
    間に存在する特許請求の範囲第1項記載の電解用
    電極。 3 酸化パラジウムと、熱分解によつて酸化錫に
    なる塩と、熱分解によつて酸化アンチモンになる
    塩と、熱分解によつて白金金属になる塩とをあら
    かじめ溶媒中に溶解または分散せしめ、これを導
    電性基材、特に弁金属基材上に塗布、加熱する工
    程を含むことを特徴とする:導電性基材上に被覆
    を有し、当該被覆中には20〜70モル%の酸化パラ
    ジウムと、3〜64モル%の白金金属と、6〜72モ
    ル%の酸化錫とから実質的に構成され、しかも当
    該酸化錫はアンチモン換算で0.1〜10モル%の範
    囲で酸化アンチモンにより置換されている電解用
    電極の製造方法。 4 酸化パラジウムと、更に必要に応じ熱分解に
    よつて白金金属になる塩とをあらかじめ溶媒中に
    溶解または分散せしめ、これを導電性基材、特に
    弁金属基材上に塗布、加熱して前段被覆を行つた
    後、次いで熱分解によつて酸化錫になる塩と、熱
    分解によつて酸化アンチモンになる塩と、熱分解
    によつて白金金属になる塩とを溶媒中に溶解せし
    め、これを上記前段被覆上に塗布、加熱せしめる
    工程を含むことを特徴とする:導電性基材上に被
    覆を有し、当該被覆中には全体で20〜70モル%の
    酸化パラジウムと、3〜64モル%の白金金属と、
    6〜72モル%の酸化錫とから実質的に構成され、
    しかも当該酸化錫は、アンチモン換算で0.1〜10
    モル%の範囲で酸化アンチモンにより置換されて
    いる電解用電極の製造方法。
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