JPS6224761Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、圧縮行程での高圧状態になつた燃焼
室内の吸気の一部を一時的に貯留して、次サイク
ルの圧縮行程初期に燃焼室内に噴出させるように
した貯留室を備えた貯留室付エンジンにおける貯
留室構造の改良に関するものである。

一般に、希薄混合気を着火燃焼するエンジンの
燃焼効率を向上させるには、燃焼室内における混
合気の燃焼速度（火炎伝播速度）を速めることが
重要であり、この目的を達成するために、吸気に
スワール（旋回流）や乱れ等を発生させるように
することは広く行われている。

そして、このように吸気にスワールや乱れを発
生させるエンジンの一例として、従来、例えば特
開昭54−49404号公報に開示されているように、
圧縮行程初期に開き圧縮行程後期に閉じるように
開閉作動するサブバルブを介して燃焼室内の吸気
の一部を一時的に貯留する貯留室を燃焼室に連通
して設け、圧縮行程の初期、前サイクルの圧縮行
程後期に貯留室内に封じ込められた高圧（圧縮圧
と同圧）のガスをを該貯留室から燃焼室内に噴出
させて、爆発行程での吸気の燃焼期間中持続する
強力なスワールまたは乱れを発生させることによ
り、吸気の燃焼速度を効果的に速めるようにした
貯留室付エンジンが提案されている。

ところで、このような貯留室付エンジンにおけ
る貯留室構造は、通常、シリンダヘツドに、エン
ジン外部側から穿設された嵌入孔を形成し、該嵌
入孔に、先端にサブバルブが着座する弁座部を有
しかつ該弁座部の後方にサブバルブで開閉される
貯留室を有する嵌挿部材を、エンジン外部側から
気密状に嵌挿し、該嵌挿部材の貯留室を弁座部を
介して、燃焼室側から穿設された連通路により燃
焼室に連通させるようにした構造が採られてい
る。

しかしながら、このような貯留室構造では、シ
リンダヘツドの嵌入孔に嵌挿部材を嵌挿し、かつ
連通路を燃焼室側から形成する必要があるため、
構造が複雑で信頼性が低く、また加工も困難でか
つ部品点数も増加してコストアツプする嫌いがあ
つた。

本考案はかかる点に鑑みてなされたものであ
り、貯留室を、上記従来の如き嵌挿部材を要さず
に、燃焼室とエンジン外部とを連通するように貫
通して穿設された貫通孔にサブバルブを案内する
バルブガイドを挿入して直接形成するようにする
ことにより、貯留室構造を単純化して信頼性の向
上を図り、しかもその加工を容易に行いかつ部品
点数を減少させてコストダウン化を図ることを目
的とするものである。

この目的のため、本考案の構成は、貯留室付エ
ンジンにおいて、貯留室を、シリンダヘツドに燃
焼室とエンジン外部とを連通するように貫通して
直線状にかつ同一断面状に穿設された貫通孔と、
該貫通孔内周面に当接して挿設され上記サブバル
ブを案内するバルブガイドとで区画形成すること
により、貫通孔自体で貯留室を形成するようにし
たものである。

以下、本考案を図面に示す実施例に基づいて詳
細に説明する。

第１図および第２図において、１はエンジンの
シリンダ２を形成するシリンダブロツク、３はシ
リンダ２内を往復動するピストン、４はシリンダ
ブロツク１上面にガスケツト５を介して接合され
たシリンダヘツドであつて、上記シリンダ２とピ
ストン３のヘツド面とシリンダヘツド４の壁面と
によつて燃焼室６が形成されている。

上記燃焼室６に臨むシリンダヘツド４壁面に
は、吸気（混合気）を燃焼室６に供給する吸気ポ
ート７と燃焼室６からの排気を排出する排気ポー
ト８とが略直径方向に対向して開口している。ま
た、上記両ポート７，８を結ぶ線に対して一側に
は点火プラグ９が配設され、他側には燃焼室６内
に突出する案内壁１０が形成されており、該案内
壁１０によつて吸気ポート７から燃焼室６内に吸
入された吸気を案内して第１図で反時計回り方向
に旋回するスワール（旋回流）を発生させるよう
にしている。

また、上記排気ポート８には排気ポート８を開
閉する排気バルブ１１が配設され、該排気バルブ
１１には排気バルブ１１を開閉駆動する排気バル
ブ用動弁機構１２が連結されている。該排気バル
ブ用動弁機構１２は、エンジンの出力軸と同期し
て回転するカムシヤフト１３と、該カムシヤフト
１３に取り付けられた排気バルブ用カム１４と、
一端が該カム１４に当接し他端が上記排気バルブ
１１上端部に当接する揺動可能な排気バルブ用ロ
ツカーアーム１５と、排気バルブ１１を常時閉弁
方向に付勢するバルブスプリング１６とを備え、
上記カム１４によりロツカーアーム１５を揺動せ
しめて排気行程時に排気バルブ１１を開くように
作動制御するものである。また、図示していない
が、上記吸気ポート７には、吸気バルブ用動弁機
構により駆動されて吸気ポート７を開閉する吸気
バルブが配設されている。

さらに、上記シリンダヘツド４内には燃焼室６
に連通して吸気の一部を一時的に貯留する貯留室
１７が形成されている。該貯留室１７は上記排気
ポート８と案内壁１０との間の部分にて燃焼室６
内へ開口し、かつその開口方向は上記排気ポート
８側へ向くように設けられている。

また、上記貯留室１７の燃焼室６への開口部に
は該開口部を開閉するポペツト状のサブバルブ１
８が配設され、該サブバルブ１８のバルブステム
１８ａ上端部は後述するバルブガイド２４の挿通
孔２４ａを貫通してシリンダヘツド４上方に突出
し、該上端部にはサブバルブ１８を開閉駆動する
サブバルブ用動弁機構１９が連結されている。該
動弁機構１９は、上記カムシヤフト１３に取り付
けられたサブバルブ用カム２０と、一端が該カム
２０に当接し他端がサブバルブ１８の上端部（バ
ルブステム１８ａ上端部）に当接する揺動可能な
サブバルブ用ロツカーアーム２１と、サブバルブ
１８を常時閉弁方向に付勢するバルブスプリング
２２とを備え、上記カム２０によりロツカーアー
ム２１を揺動せしめて、サブバルブ１８を、第４
図に示すようにエンジンの圧縮行程初期に開き圧
縮行程後期に閉じるバルブタイミングでもつて開
閉するように作動制御するものである。よつて、
圧縮行程初期に開き圧縮行程後期に閉じるサブバ
ルブ１８を介して燃焼室６内の吸気の一部を一時
的に貯留する貯留室１７を備えた貯留室付エンジ
ンが構成されている。

そして、上記貯留室１７は、第３図に拡大詳示
するように、上記シリンダヘツド４に燃焼室６
（エンジン内部）とエンジン外部とを連通するよ
うに貫通する直線状でかつ同一断面状の貫通孔２
３を穿設し、該貫通孔２３内にバルブガイド２４
を貫通孔２３内周面に当接させて気密状に挿設
し、該バルブガイド２４の挿通孔２４ａにサブバ
ルブ１８のバルブステム１８ａを気密状に挿通し
て案内することにより、上記貫通孔２３の燃焼室
側部分とバルブガイド２４とで区画形成されてい
る。尚、２５は上記貯留室１７周りのシリンダヘ
ツド４内に形成された排気ガスを還流するための
排気ガス還流通路、２６は冷却水通路、２７は上
記貯留室１７の周囲壁を構成するようにシリンダ
ヘツド４に埋設された断熱材、２８は貯留室１７
の燃焼室６開口部に装着されたサブバルブ用のバ
ルブシートである。

したがつて、上記実施例においては、吸気行程
で吸気ポート７から燃焼室６内に吸入された吸気
は案内壁１０に案内されて第１図で反時計回り方
向（実線矢印にて示す方向）に旋回するスワール
を形成する。その後、圧縮行程に移ると、その初
期に、サブバルブ用動弁機構１９の作動によつて
サブバルブ１８が開き貯留室１７が燃焼室６と連
通する。該貯留室１７内には後述の如く前サイク
ルの圧縮行程後期に封入された高圧ガスが貯留さ
れており、該貯留室１７内の圧力と燃焼室６内の
圧力との大きな圧力差によつて貯留室１７内のガ
スが燃焼室６内に高速度でもつて噴出する。

その際、上記貯留室１７の開口部が排気ポート
８側へ向いているため、貯留室１７から噴出した
ガスは、上記吸気行程で発生した吸気スワールと
は反対方向（第１図で破線矢印にて示す時計回り
方向）に旋回するスワールを形成する。その結
果、これら両スワールの激しい衝突によつて燃焼
室６内に吸気の強力な乱れが生じることになる。

続いて、圧縮行程後期に達すると、ピストン３
の圧縮動作により、今度は逆に燃焼室６内の圧力
が貯留室１７内の圧力よりも大きくなり、この圧
力差によつて燃焼室６内の吸気の一部が貯留室１
７内に流入し、点火時期直前には貯留室１７内の
圧力は吸気圧縮圧と同圧の高圧になつている。そ
の時点でサブバルブ１８が閉じることにより貯留
室１７内には高圧のガス（吸気）が封じ込められ
ることになる。この貯留室１７内のガスは、前述
の如く、次サイクルの圧縮行程初期に燃焼室６に
噴出される。

しかる後、点火プラグ９による点火により燃焼
室６内の吸気が燃焼して爆発、膨張および排気行
程を経て一サイクルが完了し、以後は上記と同様
な動作を繰り返す。

ここにおいて、上記圧縮行程で生じた燃焼室６
内の吸気の乱れは強力であるので吸気の燃焼期間
中持続しており、その結果吸気の燃焼速度が速め
られて、希薄混合気に対してもエンジンの燃焼効
率を良好に維持することができる。

また、排気ガスを還流する排気ガス還流通路２
５が貯留室１７の周りに形成され、しかも該貯留
室１７の周囲には断熱材２７が配設されているた
め、この還流排気ガスのガス熱および断熱材２７
の断熱作用により貯留室１７周りが保温されて、
貯留室１７内の貯留ガスの持つガス熱がシリンダ
ヘツド４を伝つて逃げるのを防止し、そのガス温
度を高温度に保つことができ、よつて貯留ガスが
燃焼室６内に噴射された際の燃焼室６内吸気の温
度降下を防止して燃焼性能の向上を図ることがで
きる。

この場合、上記貯留室１７は、シリンダヘツド
４に直線状にかつ同一断面状に穿設された貫通孔
２３と、該貫通孔２３内周面に当接して挿設され
たバルブガイド２４とで区画形成されたものであ
るので、該貯留室１７の構造が極めて単純にな
り、信頼性の向上を図ることができる。また、シ
リンダヘツド４の貫通孔２３に対してバルブガイ
ド２４を挿入することによつて貯留室１７が形成
されるので、貯留室１７の形成加工が容易であ
り、しかも従来の如き嵌挿部材が不要で部品点数
が少なくて済み、よつて安価に製作することがで
きる。

尚、上記実施例では、貯留室１７からのガス噴
出により燃焼室６内に生じるスワールの旋回方向
と吸気行程で生じる吸気スワールの旋回方向とを
逆方向にして、両スワールの衝突により吸気の乱
れを発生させるようにした貯留室付エンジンの場
合を述べたが、本考案は、上記両スワールの旋回
方向を同じにしてより強力なスワールを発生させ
るようにした貯留室付エンジンに対しても適用す
ることができるのは言うまでもない。

以上述べたように、本考案によれば、貯留室付
エンジンにおける貯留室を、燃焼室とエンジン外
部とを連通するようにシリンダヘツドを貫通して
直線状にかつ同一断面状に穿設された貫通孔と、
該貫通孔内周面に当接して挿設され貯留室開閉用
のサブバルブを案内するバルブガイドとで区画形
成したことにより、貯留室構造を単純化して信頼
性の向上を図ることができるとともに、貯留室加
工を容易化しかつ部品点数を減少させてコストダ
ウン化を図ることができるという実用上優れた効
果を有するものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図はシリン
ダヘツド壁面を燃焼室側から見た平面図、第２図
は第１図の−線断面図、第３図は要部の拡大
縦断面図、第４図は各バルブのバルブタイミング
を示すグラフである。 ４……シリンダヘツド、６……燃焼室、１０…
…案内壁、１７……貯留室、１８……サブバル
ブ、２３……貫通孔、２４……バルブガイド、２
５……排気ガス還流通路、２７……断熱材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 圧縮行程初期に開き圧縮行程後期に閉じるよう
   に開閉作動するサブバルブを介して燃焼室内の吸
   気の一部を一時的に貯留する貯留室を燃焼室に連
   通してなるエンジンにおいて、上記貯留室を、シ
   リンダヘツドに燃焼室とエンジン外部とを連通す
   るように貫通して直線状にかつ同一断面状に穿設
   された貫通孔と、該貫通孔内周面に当接して挿設
   され上記サブバルブを案内するバルブガイドとで
   区画形成したことを特徴とするエンジンの貯留室
   構造。