JPS6212039B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は平版印刷版に使用する基材に関す
る。 平版印刷（オフセツト印刷）は、画線部、非画
線部を有する印刷版を版胴に取付け、該印刷版に
付着させた印刷インキをブランケツト胴を介し
て、ブランケツト胴とこれに接触する圧胴との間
に供給される被印刷物に印刷インキが転移するよ
うに行なわれている。従来、上記印刷版用基材と
して、アルミニウム、亜鉛、ステンレススチール
などの金属板およびこれら金属板に銅、クロムな
どをメツキしたものが使用され、これら金属板は
耐久性、印刷性が良好で数万枚の多量の紙の印刷
も可能である。ところが、最近数百枚ないし数千
枚程度の軽印刷、さらにオフイスオートメーシヨ
ンに伴うビジネス印刷などの急増により、安価で
かつ取扱いの容易な印刷版用基材の要望が増加し
てきた。上記の軽印刷やビジネス印刷では、特に
即応性が要求され、従つて製版も自動化の傾向を
たどつている。この自動製版システムにおいて
は、上記金属板を基材とする印刷版は、連続ロー
ルの形で供給できないという大きな欠点があり、
また印刷中にインキ汚れや印刷板のずれを生じて
印刷不能になる場合があり、さらに金属板は厚み
0.1〜0.3mm程度の薄板であるために取扱いにく
く、作業時の安全性にも問題がある。 近時、金属板の代わりに安価で取扱いの容易な
基材として、紙の表裏にポリオレフイン系樹脂な
どの疎水性合成樹脂を被覆したいわゆるマスタペ
ーパが知られている。しかしながらマスタペーパ
を基材とした印刷版は、版胴に対するフイツト性
が悪くて印刷中に見当不良を生ずる欠点は避ける
ことができず、また版胴に取付ける際のグリツプ
適性が不良であつて印刷版がグリツプ部分から破
損することがあり、さらに耐印刷強度が小さいな
どの欠点がある。そして耐印刷強度を上げるため
に紙の強度を大きくすると、基材が硬くなり、適
度な可撓性を維持することができず、さらにカー
ル性が不良となり、自動装填の印刷機への適応性
が低下するなどの欠点がある。 この発明は、平版印刷版用の基材として平織物
を使用することによつて、印刷機への自動装填を
容易にし、かつ版胴に対するフイツト性を向上さ
せ、印刷中の見当不良を軽減し、鮮明かつ安定な
印刷を可能としたものである。 すなわちこの発明は、平織物の表裏両面に樹脂
層を設けた印刷版用基材において、版胴との接触
面となる裏面は平織物を構成する糸の一部が露出
され、かつ裏面の表面粗さが20μ以上であること
を特徴とする平版印刷版用基材である。 以下にこの発明の構造を図面によつて説明す
る。 １はたて糸１ａとよこ糸１ｂとを直交して織成
した平織物であり、２は平織物１の織り目内に含
浸または塗布して固化された樹脂層である。この
樹脂層２は、その裏面において、平織物１のたて
糸１ａ、よこ糸１ｂの一部１ｃが露出し、かつ凹
凸面２ａが形成され、また樹脂層２の表面におい
て平織物１のたて糸１ａ、よこ糸１ｂを完全に被
覆し、かつ実質的な平滑面２ｂが形成されてお
り、上記裏面が版胴への接触面となり、平滑面２
ｂ上に画像形成層が形成される。 この発明の一つの特長は、版胴との接触面とな
る基材裏面の表面粗さが20μ以上、好ましくは25
〜100μである。なお、上記表面粗さはJIS―
B0601によつて測定された値である。基材裏面の
表面粗さが20μ未満では版胴へのフイツト性が低
下し、印刷中に基材と版胴との間にズレや歪が発
生し、数千枚以上の印刷を均一に行なうことがで
きない。 この発明の他の特長は平織物を使用することで
ある。平織物以外の組織の織物、たとえば綾織物
を使用したときは、版胴へのフイツト適性および
印刷見当性が悪くなる。 この発明の平織物を構成するたて糸、よこ糸
は、棉花などの天然繊維、レーヨンなどの化学繊
維、ナイロンなどの合成繊維、ガラス繊維、炭素
繊維、スチールなどの金属繊維からなるものであ
り、紡績糸またはフイラメント糸のいずれであつ
てもよい。 たて糸、よこ糸の太さは、紡績糸の場合は30〜
200番手、好ましくは40〜100番手であり、フイラ
メント糸の場合は30〜200デニール、好ましくは
50〜150デニールである。また平織物の密度はた
て糸、よこ糸ともに50〜300本／25.4mm、好まし
くは60〜120本／25.4mmである。平織物のたて糸
およびよこ糸の密度が50本／25.4mm未満の場合は
織物が粗となり、画像形成層を平滑にすることが
困難であり、また織物の密度が300本／25.4mmを
越える場合は織物が密となり、裏面が平滑になつ
て版胴に対するフイツト性が低下する。 この発明に使用する樹脂層は親水性樹脂が好ま
しく、親水性樹脂としてはゼラチン、カゼイン、
ポリビニルアルコールなどからなるものであり、
エマルジヨン、サスペンジン、水溶液などの状態
で使用する。これら樹脂中には粘土、シリカ、タ
ルク、ジークライト、酸化チタン、酸化亜鉛、硫
酸バリウムなどの無機物質の微粒子を混合するこ
とが好ましい。また上記樹脂には顔料、染料など
の着色剤を混合することができる。 なお、上記樹脂層として、ポリアミド、ポリウ
レタン、ポリアクリル酸エステル、ポリ塩化ビニ
ルなどの疎水性樹脂を使用してもよく、また疎水
性樹脂層の上に前記親水性樹脂層を被覆したもの
でもよい。 上記平織物に樹脂層を設けるには、平織物に樹
脂液を塗布、または含浸して付着させたのち、平
織物の裏面または両面をナイフエツジなどによつ
てしごき、特に裏面側は平織物のたて糸、よこ糸
の一部が露出するようにしごいて、余分に付着し
ている樹脂液を除去したのち樹脂を固形化し、必
要に応じて表面側をカレンダー加工する手段が好
ましい。平織物に付着される固形分は10〜1000
g/m²、好ましくは60〜100g/m²である。 上記したこの発明の基材の樹脂層の表面である
画像形成層との接触面には、公知の方法により画
像形成層を設け、しかるのち公知の画像形成法、
たとえば銀塩の拡散転写法、あるいは電子写真複
写法によつて画像を形成することができる。 この発明による平版印刷版用基材は、従来の金
属板やマスタペーパと異なり、平織物と樹脂層と
の複合シートであり、かつ版胴との接触面となる
裏面に適度な凹凸があるため、圧縮弾性が大きく
て版胴に対するフイツト性が良好であり、圧縮弾
性による印圧の作用がはたらいて耐刷性、グリツ
プ適性が、マスタペーパに比べて優れている。ま
た版胴に対するフイツト性が良好なために、高速
印刷においてズレが発生せず、従つて見当性その
他の印刷性能は従来の金属板に比べて劣ることは
ない。更に金属板に比べてコストが安くなり、取
扱いが容易で安全性があり、かつ廃棄に際して簡
単に処理することができる。 以下にこの発明の実施例について説明する。 実施例 80番手綿糸をもつてたて糸、よこ糸の密度180
本／25.4mmに織成した平織物に、ポリビニルアル
コール100重量部、自己架橋型アクリル酸エステ
ルエマルジヨン（固形分50％）150重量部、無機
質充填剤200重量部、メラミン初期縮合物10重量
部および水500重量部からなる親水性樹脂液を含
浸させ、平織物の裏面をたて糸、よこ糸の一部が
露出するようにナイフエツジでしごいて余分の樹
脂液を除去したのち乾燥し、しかるのち多段式カ
レンダーロールによつて表面温度120℃、線圧200
Kg／cmで押圧して基材の表面を平滑にした。平織
物に付着した固形分は100g/m²であつた。この基
材の表面に酸化亜鉛・樹脂分散系の画像形成層を
設け、電子写真法により画像を形成して平版用印
刷版を作成し、この印刷版を平版印刷機（ハマダ
スター700CD型、ハマダスター社製）の版胴に取
付けて5000枚の印刷を行なつて印刷性能を試験し
た。 なお比較のために、上記実施例の平織物の代わ
りに実施例と同じ密度の綾織物を使用した以外
は、実施例と同じく作成した印刷版（比較例
１）、および市販のマスタペーパによる印刷版
（比較例２）、および市販のアルミニウム板による
印刷版（比較例３）について上記と同様の印刷性
能試験を行ない、これらの結果を下記の表に示し
た。

【表】 上記表中、耐刷性とは2000枚印刷したのちに印
刷板に損傷、破断などが発生するか否かを判定
し、異常のないものを良好とする。グリツプ適性
とは版胴に固着させた印刷板が、印刷後にグリツ
プ部分で損傷している否かを判定した。フイツト
性とは、印刷版が版胴面に対してズレや歪を生じ
ないで固着している否かを印刷枚数の段階によつ
て判定した。見当性とは、1000枚印刷したのち
に、印刷版自体の歪、伸縮によつて生ずる印刷見
当のズレをもつて判定した。 上記表によつて分るように、この発明の実施例
は比較例３のアルミニウム板を使用したものと同
様の印刷性能を有している。そして綾織物を基材
とした比較例１、およびマスタペーパを基材とし
た比較例２に比べて印刷性能が優れている。

【図面の簡単な説明】

図面はこの発明の基材の断面図である。 １：平織物、２：樹脂層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 平織物の表裏両面に樹脂層を設けた印刷版用
   基材において、版胴との接触面となる裏面は平織
   物を構成する糸の一部が露出され、かつ裏面の表
   面粗さが20μ以上であることを特徴とする平版印
   刷版用基材。 ２ 平織物の密度がたて糸、よこ糸ともに50〜
   300本／25.4mmである特許請求の範囲第１項記載
   の平版印刷版用基材。