JPS6211861B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、血管補綴材に関し、詳しくは有機重
合体物質を静電気的に紡糸して製造した血管補綴
材に関し、さらに詳しくは静電気的に紡糸したポ
リウレタン繊維からなる血管補綴材に関する。

特公昭60―43981号（特許第1327858号に対応）
明細書には、直径が10ミクロン以下の静電紡糸さ
れた重合体繊維よりなる、生体内で体液と接触し
た状態で導管補綴材として用いるための管状のフ
イブリル製品、及びその製法が記載されている。

静電気的紡糸法は、液体を電場内に導入し、そ
れによつてその液体から電極に向かつて吸引され
る性向をもつ繊維を形成させることからなる。液
体から引き出されている間に繊維は普通固化され
るが、かかる固化は、単なる冷却（例えば、液体
が室温で通常固体のものであるとき）、化学的硬
化（例えば硬化用蒸気での処理により）、または
溶媒の蒸発（例えば脱水により）等によつてなさ
れうる。生成した繊維は適宜に配置した受容体上
に捕集され、次いで受容体から引き剥がされる。

前記特許公報明細書に記載された方法で得られ
るポリウレタン管状製品は、例えば哺乳動物の損
傷血管を交換するのに使用しうる人造血管（導管
補綴材）として特に有用であることが見出され
た。

かくして本発明は、有機重合体物質を静電気的
に紡糸し、そして紡糸繊維を適当な受容体上に収
集して５〜25ミクロンの平均気孔寸法及び55〜95
％の気孔率を有する製品とすることによつて製造
した直径0.1〜10ミクロンの繊維からなる血管補
綴材であつて、繊維がポリウレタンからなること
及び補綴材が内径0.3〜３cmの内腔を有する管状
部を含むことを特徴とする上記血管補綴材を提供
する。

血管の緊張力あるいは堅さを保持する弾性を補
綴材に付与する点で、上記諸寸法のポリウレタン
繊維補綴材は有用である。

管状部の内径は、好ましくは0.5〜２cmのオー
ダー、さらに好ましくは0.8〜1.5cmのオーダーで
ある。

本発明の補綴材は、円形の断面で、その長さ方
向に沿つて実質上一定の直径の孔を有する単純な
管状であるのが普通である。しかし、孔の直径は
規則的または不規則的に変化していてもよく（例
えば、孔はテーパー付きであつてよく、またはく
びれ付きであつてよい）、および／または、孔の
断面形状は、円から離れて、例えば楕円もしくは
矩形またはその他の適宜な形状であつてよい。孔
の断面形状が円から離れているものである場合に
は、前述の孔寸法は最大寸法を指すものとする。
補綴材の外側は孔の輪郭に従うものであつてよ
く、あるいは孔と別異の形態であつてもよい。補
綴材の外側は補強成分を有していてよく、その成
分は例えば円形、ラセン状で長さ方向に付いてい
るものであつてよく、そして硬質もしくは可撓性
もしくは部分的に可撓性（例えば所定の方向にお
いて）であつてよい。補綴材の形態は、その機能
の物理的要件を充足する形態とすべきであり、例
えば隣接導管への装着を容易にするような形態と
することができ、または導管の屈曲が、ある方向
において助長または制限されるような形態とする
ことができる。

本発明の補綴材は、ポリウレタン重合体もしく
はその前駆体の溶液または分散液から紡糸するこ
とができる。

本発明では、補綴材を作られたままの状態で使
用する可能性は排除されないが、好ましくは、水
性媒質におけるある程度の不溶解性を、例えば適
当な試薬での交叉結合により、補綴剤に与える。

補綴剤が分散液から紡糸される場合には、紡糸
原材料には分散液の粘度を増強し、かつその繊維
形成特性を改善するように作用する追加成分の溶
液をも含ませるのが好ましい。この目的にとつて
最も適当なものは、繊維形成後に続く焼結の間
に、所望により、分解されうる有機重合体材料か
らなる追加成分である。そのような追加材料を粘
度および／または繊維形成性の改変のために、溶
液からの紡糸に際しても使用すると、有利なこと
がある。

そして、好ましい紡糸原材料は、繊維を形成し
うる量でポリウレタン重合体を含み、かつ適当な
場合には、担体からの脱着に際してその繊維形状
を失わないように充分に繊維が固化されるまで繊
維化後の固化工程中に繊維形態が保持されうるよ
うな接着特性を有する溶液または分散液である。

追加の有機成分は、分散液の重量に対して比較
的小割合（通常0.001〜12wt％、好ましくは0.01
〜3wt％）で用いられる必要があるけれども、特
定な応用に対する正確な濃度は実験により容易に
決定しうる。

追加の有機成分の重合度は、線状で約2000単位
を越えるものが好ましく、かかる重合体の広範囲
のものが利用できる。重要な要件は、選択された
溶媒または懸濁媒（好ましくは水）におけるその
追加重合体成分の溶解度である。水溶性重合体化
合物の例としては、ポリエチレンオキサイド、ポ
リアクリルアミド、ポリビニルピロリドンおよび
ポリビニルアルコールを挙げることができる。紡
糸原材料を調製するのに、単一液体溶媒としてま
たは溶媒の成分として有機媒質を用いる場合に
は、さらに広範囲の有機重合体化合物（例えばポ
リスチレンおよびポリメタクリル酸メチル）を追
加成分として利用できる。

かかる重合体の重合度は、繊維化液体に対して
所望の接着および粘度特性を与える重合体の能
力、ならびに所要の溶解度に照して選定されるこ
とになる。

紡糸用材料を静電場内へ導入するには適宜な方
法を用いることができ、例えば紡糸液をノズルに
供給しそのノズルから電場によつて引き出される
（曳糸する）ようにし、そのときに繊維化を生じ
させることにより、紡糸液を静電場内の適当な位
置に供給する。この目的のためには適当な任意の
装置を用いることができる。例えば、紡糸液を注
射器の液溜から、接地した１本または多数本の注
射針の先端に供給する。注射針の先端は、静電気
負荷表面から適切な距離に配置される。紡糸液が
針を出ると、針先端と静電気負荷表面との間で繊
維を形成する。

静電気負荷表面からのノズルの最適距離は、試
行錯誤法により全く簡単に決定しうる。例えば
20KVのオーダーの電位差を用いる場合には、５
〜35cmの距離が適当であることが判つたが、電位
差、ノズル寸法、液体流量、荷電表面積等が変化
するにつれて、最適距離は変動しうるものである
ので、上述のようにして決定するのが好適であ
る。

静電負荷表面は回転管体の側面であつてよく、
この場合、管体をノズルと共軸に配置し、ノズル
から適切な距離に配置する。別法として、繊維の
沈積および管の形成を円筒形成形具上で行なうこ
ともできる。成形具は種々の材料から作ることが
できる。金属製成形具が好ましく、特にアルミニ
ウムが好ましい。ポリウレタン管（補綴剤）はア
ルミニウム製成形具から剥し取るのが好ましい。
アルミニウム製成形具からのポリウレタン管の剥
離を促進するには、アルミニウム製成形具を軟質
ポリウレタンフオームの層で被覆しておくのが好
適であろう。

使用する静電々位差は普通5KV〜1000KVの範
囲であり、好適には10〜100KV、好ましくは10〜
50KVである。

補綴材はその目的機能に適合した任意の種々な
形状であつてよい。従つて、補綴材は例えば前述
の如き、単純な直管であつてよく、あるいは屈曲
または湾曲していてもよく、あるいはループ状も
しくは吻合状であつてもよく、あるいは分岐して
いてもよい。これら全ての場合に、しかしなが
ら、補綴具の少なくとも一部は前記の如き寸法を
有する管の形態となる。

補綴材の壁厚は広範囲にわたつて変りうるが、
それは殊に製品において所望される強度および／
または弾性によつて左右されよう。壁厚も、補綴
材の異なる部分において異なる値であつてよい。
しかし、壁の殆ど大部分が0.5〜５mmの厚である
のが好ましく、さらに好ましくは１〜３mmであ
る。

補綴材の実際の寸法は、もちろん、その目的と
する機能および部位に照して選択され、そして、
もちろん、対応する形状および寸法のマンドレル
を用いて製造される。

補綴材は適当な形状寸法のマンドレル上に紡糸
することによつて得られる。適当な場合にはマン
ドレルを例えば押し漬すことによつて（例：膨張
性マンドレルの使用）、溶解によつて（例：マン
ドレルが適切な可溶性材料からなるとき）または
溶融によつて、紡糸補綴材の内側から取り除ける
ようにすることができる。

小直径例えば0.1〜10ミクロン特に0.4〜10ミク
ロンの繊維を用いるのが好ましく、そして少なく
とも補綴材の内孔に近接した部分が多孔性である
のが好ましく、５〜25ミクロン、好ましくは７〜
15ミクロンのオーダーの直径の細孔が大部分であ
るような多孔性であるのが好ましい。

本発明の補綴材は、加工容易性、非毒性、可溶
性、機械的強度、生分解性の度合等に基いて、利
用しうる広範囲の材料から選択された適当なポリ
ウレタンの繊維からなる。適当な溶媒中に（所要
によりその他の添加物と共に）溶解した重合完結
ポリウレタンを紡糸液として用いるのが好ましい
のであるが、本発明方法においては、重合未完ポ
リウレタンを紡糸して、その重合を紡糸中または
紡糸後に完結させることの可能性は排除されな
い。従つて、例えば、ある形態にある膨張しうる
マンドレル上に重合未完結のポリウレタン重合体
を紡糸し、マンドレルを膨張させて成形物を引き
伸ばし（例えば気孔率を所望の度合にまで増大さ
せるため）、次いで製品をその膨張した状態で硬
化させることができる。

下記の実施例により本発明を説明する。

実施例 １ 直径1.5cmのアルミニウム管を軸回転させ、こ
れに50KVの電圧を負荷した。ジメチルホルムア
ミド中のポリウレタン（商標Daltermold338E）
の12％溶液を、一列に並べた24本の注射針から、
１ｇ／針／時の速度で上記回転アルミニウム管に
向けて紡糸した。得られた管はその壁厚が２mmで
あり、0.5ミクロンの直径の繊維が相互に接した
部分で接合したものから主としてなつていた。

この管をブタの下行大動脈中へ縫合することに
より移植した。六ケ月後、接合を検査したとこ
ろ、良好に付着した薄い内膜、壁内毛細管生育お
よび固着した後天性層が認められ、血栓症は認め
られなかつた。

追加の関係 原発明原特許第1327858号（特公昭60―43981
号）は、直径が10ミクロン以下の静電紡糸された
重合体繊維よりなる、生体内で体液と接触した状
態で導管補綴材として用いるための管状のフイブ
リル製品に関する。

これに対し本発明は、原発明の製品における平
均気孔寸法、気孔率、管状部の内径をそれぞれ特
定範囲に限定すると共に重合体繊維材料をポリウ
レタンに限定することにより特に血管補綴材とし
て適したものとした製品である。

従つて本発明は、原発明との関係において特許
法第31条第２号に規定の要件を満たす発明であ
る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 有機重合体物質を静電気的に紡糸し、そして
   紡糸繊維を適当な受容体上に収集して５〜25ミク
   ロンの平均気孔寸法及び55〜95％の気孔率を有す
   る製品とすることによつて製造した直径0.1〜10
   ミクロンの繊維からなる血管補綴材であつて、繊
   維がポリウレタンからなること及び補綴材が内径
   0.3〜３cmの内腔を有する管状部を含むことを特
   徴とする上記血管補綴材。 ２ 0.5〜５mmの壁厚を有する特許請求の範囲第
   １項に記載の補綴材。 ３ ループ、吻合または分岐の形状である特許請
   求の範囲第１または２項に記載の補綴材。 ４ 静電紡糸によつて形成されたものでない補強
   成分を含む特許請求の範囲第１，２または３項に
   記載の補綴材。