JPS6158331B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は例えば自動二輪車に好適する車輌の自
動変速装置に関する。

更に詳しくは、遊星歯車機構と、これと並列に
設けた遠心クラツチとの組み合せで遊星歯車式自
動変速機構を構成し、該遊星歯車式自動変速機構
を内燃機関のクランク軸上に配置することによ
り、装置全体をクランク軸にコンパクト化して設
けることができるようにした車輌の自動変速装置
に関する。

車輌用の自動変速装置は種々のものが提案され
ているが、この種自動変速装置に要求される重要
な要素の１つとして装置の小型化を挙げることが
できる。小型化を達成し得た自動変速装置は車輌
を構成する他の所要機器等と併せ合理的な配置を
行うことができるようになり、有用である。特
に、運転操作の容易を企図し、軽量、小型化を図
つた軽便自動二輪車においては、自動変速機構を
組み込むためのスペースは車体の大きさに比例す
る如く小さくなり、制約されたスペースに組み込
むことができるように自動変速装置のコンパクト
化が要請される。

考え得る自動変速装置の１例として、駆動軸上
に一速用クラツチ、二速用クラツチを配置し、該
クラツチのインナー部材、アウター部材と結合さ
れた２個のギヤを駆動軸に設け、該ギヤと噛合す
る２個のギヤを備えたカウンター軸から変速され
た動力を取り出すようしたものが考えられる。か
かる自動変速装置によると、２個のギヤを駆動
軸、カウンター軸に軸方向に離して設けなければ
ならず、軸長寸法が自ずと長くなつてしまう。又
動力を取り出すカウンター軸を駆動軸とは別軸と
して設けなければならず、装置の大型化は避けら
れず、上記と併せ益々装置を組み込むためのスペ
ースとして大なるものが要求される。

このように駆動軸に軸方向に離してギヤを設け
ることは軸長寸法の長大化を招来し、又駆動軸と
は別軸としたカウンター軸から動力を取り出すこ
とは装置の大型化を招来し、軽便自動二輪車或は
これに類似の車輌に搭載可能な自動変速装置を製
作する場合、これらの課題を有効に解決すること
が望まれる。

本発明者は自動変速装置に要望される以上の点
に有効に応えるべく本発明を成したものである。

本発明の目的は、外周部のリングギヤと中間部
のプラネツトギヤと内周部のサンギヤからなる遊
星歯車機構と、該遊星歯車機構と並列に設けられ
た変速用遠心力拡開型クラツチとの組み合せより
なる遊星歯車式自動変速機構を備えた車輌の自動
変速装置において、前記遊星歯車式自動変速機構
を車輌用内燃機関のクランク軸端に配設し、前記
リングギヤの側方には、前記クランク軸と自動変
速機構とを両者の回転数に応じて断続する前記変
速用クラツチと発進用遠心力拡開型クラツチとを
隣接させ、前記プラネツトギヤはリングギヤとサ
ンギヤの間に３ケ以上配設し、前記クランク軸端
部に固着されたドライブプレートの外周部に前記
発進用クラツチを枢着し、該発進用クラツチの内
周側中央の空間部に前記変速用クラツチを配置し
た車輌の自動変速装置を提供する。

従つて本発明の目的は、以上の構成により遊星
歯車機構と遠心クラツチとで構成される遊星歯車
式自動変速装置により遠心クラツチの接続、断続
に伴い動力の変速が成され、自動変速を遊星歯車
機構と遠心クラツチとの組み合せで達成でき、自
動変速のために軸方向に離して２個のギヤを設け
ることは不要であり、且つ遊星歯車機構のうちの
一つのギヤに出力軸を連結して該出力軸をクラン
ク軸の外周に遊嵌すれば、駆動軸であるクランク
軸と動力を取り出すための出力軸とは別軸になら
ず同軸として配置することができ、軸長寸法の減
縮、装置全体の小型化を図ることができ、装置全
体を内燃機関のクランシ軸にコンパクトにまとめ
て配置することが可能となる車輛の自動変速装置
を提供する。

以下に本発明の好適一実施例を添付図面に従つ
て詳述する。

第１図は本発明に係る自動変速装置の全体断面
図を示し、この自動変速装置は軽便自動二輪車に
搭載される。

ピストン１０ａ等からなる内燃機関１０のクラ
ンク軸１１はその基部で軸受１２で回転自在に支
承され、先部側はケース１３内に突出している。
ケース１３内にはクランク軸１１と対向してスタ
ータ軸１４が軸承部１３ａで支持され、渦巻バネ
１５の一端がスタータ軸１４に、他端がケース１
３内面に夫々係止されている。スタータ軸１４に
はチエーン１６を架設したスプロケツト部１４ａ
が形成され、チエーン１６は車体外部に設けた足
踏みペダルに連らなる。スタータ軸１４の軸端大
径部外周にはラチエツト１４ｂが形成され、この
ラチエツト１４ｂにドライブプレート１７にピン
１８で枢着した爪体１９が噛合している。ドライ
ブプレート１７は後述の通りクランク軸１１と一
体化されている。

足踏みペダルを踏み込み操作すると、チエーン
１６、スプロケツト部１４ａを介してスタータ軸
１４が回転し、渦巻バネ１５の巻き上げが成され
て内燃機関始動用の弾発力が蓄えられる。この弾
発力を解放するとスタータ軸１４が回転し、この
回転力は噛合しているラチエツト１４ｂ、爪体１
９を介してドライブプレート１７、更にはクラン
ク軸１１に伝達され、内燃機関１０が始動する。
内燃機関の始動後はクランク軸１１が独力で高速
回転するため爪体１９が遠心力でピン１８を中心
として外方へ回動し、ラチエツト１４ｂとの噛合
を解除し、この結果、クランク軸１１の回転が保
障される。

以上のように本実施例では内燃機関の始動機構
として渦巻バネ１５等による人為蓄力解放型とし
たが、始動手段は通常の自動二輪車が採用してい
るキツクスタータ方式、始動モータ方式でもよ
い。

前記ドライブプレート１７はナツト１７ａでク
ランク軸１１の端部にこれ１１と直交する如く固
定され、ドライブプレート１７の外周部側面に発
進用遠心力拡開型クラツチ２０のインナー部材２
１がピン２３で枢着されている。このクラツチ２
０のアウター部材２２はドライブプレート１７側
が開口し、反対側端部が閉塞端となつたドラム状
を成し、ドラム状アウター部材２２の閉塞端内面
に遊星歯車機構３０が密着する如く配置されてい
る。この遊星歯車機構３０は第３図の通り外周部
のリングギヤ３１と中間部のプラネツトギヤ３２
と内周部のサンギヤ３３とからなり、プラネツト
ギヤ３２は円周方向に等角度間隔で３個あり、サ
ンギヤ３３の中心部には貫通孔３３ａが形成さ
れ、この孔３３ａにクランク軸１１が挿通してい
る。又リングギヤ３１は発進用クラツチ２０のア
ウター部材２２に固着されており、クラツチ２０
を介してクランク軸１１と自動二輪車の発進時に
連結される。

ドライブプレート１７には発進用クラツチ２０
のインナー部材２１よりも内周側で変速用遠心力
拡開型クラツチ４０のアウター部材４２がリング
状に固着一体化され、発進用クラツチ２０の内周
側中央の空間に変速用クラツチ４０が組み込まれ
ている。変速用クラツチ４０のインナー部材４１
はキヤリアプレート５０にピン４３で枢着されて
おり、このキヤリアプレート５０は変速用クラツ
チ４０とは反対側の内燃機関１０側の側面で前記
３個のプラネツトギヤ３２をピン５１によつて回
転自在に支持している。変速用遠心クラツチ４０
と遊星歯車機構３０とで後述の作動で明らかにな
る通り遊星歯車式自動変速機構が構成され、変速
用遠心クラツチ４０はクランク軸１１の外周に配
置され、遊星歯車機構３０のサンギヤ３３にクラ
ンク軸１１が挿通されているため、この遊星歯車
式自動変速機構はクランク軸１１の軸端外周上に
配置されている。

尚、２４，４４は発進用、変速用クラツチ２
０，４０のインナー部材２１，４１を平常時内側
に付勢させるためのバネである。

キヤリアプレート５０には動力が取り出される
出力軸６０の端部が結合され、この出力軸６０は
筒状に形成されてクランク軸１１の外周に自由回
転可能に遊嵌されている。内燃機関１０側へ延
び、クランク軸１１の基部付近まで達した出力軸
６０の他方の端部に動力取出用スプロケツト６１
を取り付け、スプロケツト６１に自動二輪車の駆
動輪に連らなるチエーン６２を架け渡す。

遊星歯車機構３０の内周部に位置する前記サン
ギヤ３３には筒部材５９の端部を結合し、この筒
部材５９を出力軸６０の外周に自由回転可能に遊
嵌するとともに、発進用クラツチ２０のアウター
部材２２に対しても自由回転可能とし、他の端部
に動力取出用スプロケツト６１よりも内燃機関１
０から離れた位置に配置したワンウエイクラツチ
７０を連結する。ワンウエイクラツチ７０の具体
的な構造を第４図で示し、クラツチプレート７１
に筒部材５９の上記他方の端部を結合する。クラ
ツチプレート７１には２個の爪体７２，７２が枢
支部７２ａ，７２ａで回動自在に枢着され、クラ
ツチプレート７１の外側に内周面に斜歯７３ａを
備えたラチエツトプレート７３が設けられ、この
ラチエツトプレート７３は第１図に示す通りボル
ト７４で不動部材となつている前記ケース１３に
取り付けられている。クラツチプレート７１にＡ
方向への回転力が作用した場合には、バネ７５の
弾性力が付与された爪体７２がラチエツトプレー
ト７３の斜歯７３ａと係合してこのＡ方向へのク
ラツチプレート７１の回転を許容せず、これとは
逆向きのＢ方向への回転のみを許容する。

次に作動について述べる。

既述の通り渦巻バネ１５の蓄力解放で内燃機関
１０が始動し、内燃機関１０がアイドル回転数か
ら所定回転数まで向上すると、ドライブプレート
１７に取り付けられた発進用クラツチ２０のイン
ナー部材２１が遠心力で外方へ拡開し、アウター
部材２２に圧接してクラツチ２０の接続が成され
る。これによりアウター部材２２と一体化されて
いる遊星歯車機構３０のリングギヤ３１はクラン
ク軸１１と同一速度で同一方向へ回転する。この
回転方向を第３図中Ｃ方向とする。Ｃ方向へのリ
ングギヤ３１の回転でプラネツトギヤ３２はサン
ギヤ３３上をＤ方向へ公転しつつＥ方向へ自転し
ようとし、この結果、サンギヤ３３にはＦ方向へ
の回転力が生じる。サンギヤ３３と筒部材５９を
介して結合されたワンウエイクラツチ７０のクラ
ツチプレート７１にとつてはこの回転方向はＡ方
向（第３図と第４図では表裏が逆）であるため、
クラツチプレート７１の回転は既述の如く許容さ
れず、即ちサンギヤ３３はＦ方向へ回転できな
い。従つてプラネツトギヤ３２はＤ方向へ公転し
つつＥ方向へ自転する。プラネツトギヤ３２の公
転速度はリングギヤ３１の回転速度よりも遅く、
内燃機関１０の回転速度は遊星歯車機構３０にお
いてリングギヤ３１とプラネツトギヤ３２との回
転差だけ減速され、減速されたプラネツトギヤ３
２の公転運動はこれ３２を支持しているキヤリア
プレート５０に取り出され、出力軸６０を一速状
態で回転させ、スプロケツト６１が自動二輪車の
駆動輪を駆動せしめる。

内燃機関１０の回転数が更に増すと、プラネツ
トギヤ３２の公転速度が速くなり、キヤリアプレ
ート５０の回転数が増大するため、キヤリアプレ
ート５０に取り付けられた変速用クラツチ４０の
インナー部材４１が遠心力で外方へ拡開すること
となり、インナー部材４１がアウター部材４２に
圧接してこのクラツチ４０の接続が成される。ア
ウター部材４２はクランク軸１１と一体化された
ドライブプレート１７に固定されているため、変
速用クラツチ４０の接続でクランク軸１１の動力
はクラツチ４０、キヤリアプレート５０を介して
出力軸６０に直接伝達されるようになり、クラン
ク軸１１と出力軸６０とは直結し、出力軸６０は
内燃機関１０と同一速度で回転し、二速の回転数
になる。

変速用クラツチ４０が接続した時点からキヤリ
アプレート５０の回転数は内燃機関１０と同じに
なるため、プラネツトギヤ３２はリングギヤ３１
と同じ速度でＤ方向へ公転するようになり、この
結果、サンギヤ３３には前記とは逆のＧ方向への
回転力が作用するようになる。Ｇ方向と同じＢ方
向へはワンウエイクラツチ７０のクラツチプレー
ト７１は回転できるため、サンギヤ３３はＧ方向
へ支障なく回転し、プラネツトギヤ３２は自転を
やめて公転のみし、従つて遊星歯車機構３０を構
成する三種のギヤ３１，３２，３３は一体となつ
て同じ方向へ回転し、遊星歯車機構３０は一つの
回転部材になつたと同じになる。

この場合、内燃機関１０の動力は変速用クラツ
チ４０を介した直結経路と、遊星歯車機構３０を
介した迂回経路の双方から出力軸６０に伝達さ
れ、動力伝達系において変速用遠心クラツチ４０
と遊星歯車機構３０とは並列する。

以上の説明で明らかな如く本発明によれば、遊
星歯車機構と遠心クラツチとの組み合せで遊星歯
車式自動変速機構が構成され、内燃機関の動力を
変速するにさいしてクランク軸に軸方向に離して
２個のギヤを配置することは不要となり、このた
め軸長寸法の減縮を達成でき、又動力を取り出す
出力軸をクランク軸の外周に同軸として配置する
ことも可能となり、これらが別軸とはならないた
め装置全体を小型化することができ、必要部品を
クランク軸上に配置することにより、クランク軸
上に装置をコンパクトにまとめることができ、更
に、プラネツトギヤを３ケ以上配設するようにし
たので、各ギヤの噛み合い反力を互いに打ち消し
合うことができ、ギヤ自体の厚みを薄くできると
ともに、クランク軸自体を太くする必要がないの
で装置全体の重量軽減を計ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示すもので、第１図
は装置全体を示す断面図、第２図は軸方向に数箇
所破断し、合成した図、第３図は第１図３方向か
ら見た遊星歯車機構の図、第４図は第１図４方向
から見たワンウエイクラツチの図、第５図は装置
の動力伝達系を線図で示した模式図である。 尚図面中、１０は内燃機関、１１はクランク
軸、３０は遊星歯車機構、３１はリングギヤ、３
２はプラネツトギヤ、３３はサンギヤ、４０は遠
心クラツチである変速用クラツチである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 外周部のリングギヤと中間部のプラネツトギ
   ヤと内周部のサンギヤからなる遊星歯車機構と、
   該遊星歯車機構と並列に設けられた変速用遠心力
   拡開型クラツチとの組み合せよりなる遊星歯車式
   自動変速機構を備えた車輌の自動変速装置におい
   て、前記遊星歯車式自動変速機構を車輌用内燃機
   関のクランク軸端に配置し、前記リングギヤの側
   方には、前記クランク軸と自動変速機構とを両者
   の回転数に応じて断続する前記変速用クラツチと
   発進用遠心力拡開型クラツチとを隣接させ、前記
   プラネツトギヤはリングギヤとサンギヤの間に３
   ケ以上配設し、前記クランク軸端部に固着された
   ドライブプレートの外周部に前記発進用クラツチ
   を枢着し、該発進用クラツチの内周側中央の空間
   部に前記変速用クラツチを配置したことを特徴と
   する車輌の自動変速装置。