JPS6127306B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はエレベータ制御装置に係り、特に高速
平常運転と低速保守運転の切替え時の安全化を図
つたエレベータ制御装置に関する。

エレベータは通常定格速度で運転する平常運転
を高速運転と言い、保守点検の際に低速で運転す
るのを低速運転と言つている。本発明は高速平常
運転から低速保守運転へ、低速保守運転から高速
平常運転へ切替える際の制御に関するものであ
る。この運転切替え指示は、切替スイツチを切替
えることによつて行なわれるが、この切替えスイ
ツチは保守員が保守点検の際に使用するものであ
るから、一般の乗客は操作できない場所に設けて
ある。例えば、乗かご内で保守低速運転を行なう
場合に使用するものは、乗かご内運転盤下部のキ
ー付きスイツチ箱の中に収納してあり、また乗か
ご上で保守低速運転を行なう場合に使用するもの
は乗かごの上に設けてあり、機械室で保守点検を
行なう場合に使用するものは機械室制御盤内に設
けてある。このように、一般の乗客は切替スイツ
チを操作できないようになつているから、従来、
切替スイツチの誤操作による事故はなかつた。

ところが、近年エレベータの需要が増加し、保
守作業者の人員も急増したため、保守点検が全て
経験技術者によつて行なわれるとは限らなくな
り、経験技術者が新人の指導も兼ねて新人と組ん
で保守点検を行なう場合が増加した。この場合、
乗かご走行中に誤つて切替スイツチを操作して、
高速運転中に保守低速側に操作してしまつたり、
保守低速運転中に高速運転側に切替えてしまつた
りすると次のような問題が生じる。まず、かご上
低速運転中に高速運転に切替えた場合は、低速か
ら高速に速度上昇してしまうため、人身事故に至
る可能性がある。また、高速運転中に低速運転に
切替えた場合は、エレベータ駆動用電動機の自励
現象が発生し、近年変動設備を持たない小ビルに
もエレベータが設置される関係上、規格形エレベ
ータのほとんどは進相コンデンサを設置している
ことから、この進相コンデンサによつてLCR回
路が構成され、高電圧が発生し、この高電圧が電
磁ブレーキの整流回路に入り込み、整流回路のダ
イオードを破損させ、電動機に電流が流れている
にもかかわらずブレーキがかかり、電動機はロツ
ク状態になり、過電流継電器が動作し、乗かごが
停止するが前記ダイオードの修理完了まで電動機
再起動は不可能で乗客は乗かご内に閉じ込められ
たままとなるという問題が生じる。

上記の問題点を、第１図および第２図を用い
て、さらに具体的に説明する。第１図はエレベー
タの電動機回路図、第２図は従来の高速平常運転
と低速保守運転の切替スイツチ回路と運転方向指
示回路を示す図である。第１図および第２図にお
いて、１は電磁開閉器、２は誘導電動機、３は電
磁ブレーキ、４は整流器、５は直流制導サイリス
タ、６は速度指令器、７は進相コンデンサ、Ｒ、
Ｓ、Ｔは３相入力電源、Ｕは上昇運転電磁接触
器、U₁〜U₄はその接点、Ｄは下降運転電磁接触
器、D₁〜D₄はその接点、HAは高速運転電磁接触
器、HA₁〜HA₄はその接点、LAは低速運転電磁
接触器、LA₁〜LA₄はその接点、u₁、v₁、w₁は高
速側誘導電動機端子、u₂、v₂、w₂は低速側誘導電
動機端子、M₁、M₂は電磁ブレーキのコイル端
子、Ｐ、Ｎは電源、１１は運転切替スイツチでＨ
は高速側、Ｌは低速側、１２は運転方向指令回
路、UBは低速運転上昇ボタン、DBは低速運転下
降ボタン、DS₁及びDS₂は乗かごのドアが閉じる
とオンする接点である。

以上の構成において、高速平常運転と低速保守
運転の速度の切替えは誘導電動機の極数の切替え
によつて行なつている。いま、高速運転が指令さ
れ高速運転電磁接触器HAがオンすると誘導電動
機２の高速側端子u₁、v₁、w₁に電源Ｒ、Ｓ、Ｔが
供給される状態でエレベータは待機する。この状
態で上昇運転指令が発生すると上昇運転電磁接触
器Ｕがオンして、整流器４を介して電磁ブレーキ
３が開放されると同時に、誘導電動機２の高速側
端子u₁、v₁、w₁に電源が供給される状態でエレベ
ータは待機する。加減速の速度制御は直流制動サ
イリスタ５によつて行ない、その指令は速度指令
器６によつて行なわれる。なお、規格形エレベー
タの普及に伴つて、変電設備を持たない小ビルに
もエレベータを設ける場合が多くなつた関係上、
誘導電動機２に並列に進相コンデンサ７を設ける
場合が多くなつた。

高速平常運転は、運転切替スイツチ１１を高速
Ｈ側にすると、高速運転電磁接触器HAがオン
し、その接点HA₄が通電状態となり、乗客が図示
しない呼ボタンを押すことにより、運転方向指令
回路１２が運転方向を選択し、上昇運転電磁接触
器Ｕまたは下降運転電磁接触器Ｄをオンして、指
令が出た方向に乗かごを運転することで行なわれ
る。低速保守運転は、運転切替スイツチ１１を低
速Ｌ側に投入することにより、高速運転電磁接触
器HAがオフすると同時に低速運転電磁接触器LA
がオンすることにより行なわれる。

上昇する場合は、低速運転上昇ボタンUBを押
すとドアが閉じて（開閉指令回路は図示省略）接
点DS₂がオンすると回路Ｐ―LA₄―DS₂―UB―D₄
―Ｕ―Ｎにより上昇運転電磁接触器Ｕがオンして
乗かごは上昇運転を始める。また、下降する場合
は、低速運転下降ボタンDBを押すと、上記同様
ドアが閉じて接点DS₂がオンすると回路Ｐ―LA₄
―DS₂―DB―U₄―Ｄ―Ｎにより下降運転電磁接
触器Ｄがオンして乗かごは下降運転を始める。

いま、運転切替スイツチ１１を低速Ｌ側に入れ
て低速運転中に、切替スイツチ１１を高速Ｈ側に
切替えた場合を考えると、保守員が乗かごの上で
作業中、回路Ｐ―Ｈ―HA―Ｎの完成により高速
運転電磁接触器HAがオンし、高速運転に切替わ
り、このときちようど、かご呼またはホール呼が
発生し運転方向指令回路１２が作動し乗かごが高
速で動き出すと、人命にかかわる事故となる危険
がある。

一方、運転切替スイツチ１１を高速Ｈ側に入れ
て高速運転中に、切替スイツチ１１を誤つて低速
Ｌ側に切替えた場合を考えると、高速運転電磁接
触器HAがオフして低速運転電磁接触器LAがオン
することによつて、第１図の誘導電動機２の低速
側端子u₂、w₂と進相コンデンサ７により、破線
で示すように、RCL閉回路が構成され、ｕ―ｗ
相間に高電圧が発生し、この高電圧はピーク値が
1200V、周波数が150Hzにも達し、この電圧が電
磁ブレーキ３の整流器４に印加され、整流器４が
破損する。この破損がクローズパンクの場合は電
源短絡となり、整流器回路の電源は焼損して火災
事故にまで発展する危険があり、また上記破損が
オープンパンクの場合は、電磁ブレーキ３がかか
り、乗かごは急停止するが、整流器４を交換する
まで乗かごの運転は不可能となり、乗客は乗かご
内に閉じ込められたままになるという問題が生じ
る。

本発明の目的は、従来技術での上記した問題点
を解決し、保守点検時の誤操作による事故を防止
することのできるエレベータ制御装置を提供する
にある。

本発明の特徴は、上記目的を達成するために、
運転切替スイツチを切替えても乗かご走行中は高
速平常運転と低速保守運転の運転切替えを阻止
し、乗かごが停止したことを条件に当該運転の切
替えを行なうようにしたところにある。

以下図面により本発明を説明する。

第３図は本発明の一実施例を示す回路図で、こ
れは、運転切替スイツチが切替えられても、乗か
ご走行中信号がある間は現状運転を継続し、乗か
ご停止信号の検出により高速平常運転と低速保守
運転の切替えを行なう場合であり、上昇運転及び
下降運転については第２図従来回路と同じである
ので省略し、運転切替え回路だけを示してある。
第３図において、HA₅、HA₆は高速運転電磁接触
器HAの接点、LA₅、LA₆は低速運転電磁接触器
LAの接点、U₅、U₆は上昇運転電磁接触器Ｕの接
点、D₅、D₆は下降運転電磁接触器Ｄの接点であ
る。乗かごが、例えば高速で上昇運転中であれ
ば、高速運転電磁接触器HAは、回路Ｐ―U₅―
HA₅―LA₆―HA―Ｎにより、上昇運転電磁接触
器Ｕがオンしている間は自己保持されていて、運
転切替スイツチ１１を低速Ｌ側に切替えても、高
速運転電磁接触器HAはオンしたままとなり、乗
かごが停止するまで高速運転は継続し、乗かご停
止信号検出により上記自己保持が解かれ、と同時
に回路Ｐ―Ｌ―HA₆―LA―Ｎにより低速運転電
磁接触器LAがオンとなる。

また、低速で上昇運転中であれば、回路Ｐ―
U₆―LA₅―HA₆―LA―Ｎにより、低速運転電磁
接触器LAが自己保持する回路にしてあるため、
低速運転電磁接触器LAは、乗かごが停止して上
昇運転電磁接触Ｕがオフしない限りはオンしたま
まであり、低速運転は継続する。このようにし
て、乗かごが一たん高速運転または低速運転に入
ると、乗かごが停止するまで現状運転を継続する
ことになり、これにより、運転切替スイツチ１１
を誤操作しても、前述した事故を未然に防止する
ことができる。

第４図は本発明の他の実施例を示す回路図で、
これは、乗かご走行中に運転切替スイツチが誤つ
て切替えられると、乗かごをその場所に停止さ
せ、乗かご停止信号を検出した時点に運転切替え
を行なう合である。例えば、乗かごが高速平常運
転中に運転切替スイツチ１１が高速Ｈ側から低速
Ｌ側に切替えられると、高速運転電磁接触器HA
がオフとなり、運転方向指示回路１２（第２図）
が接点HA₄の開放によりオフとなり、乗かごはそ
の場所に停止する。乗かごの停止によつて回路Ｐ
―Ｌ―U₈―LA―Ｎが完成し、低速運転電磁接触
器LAがオンして低速運転に切替わる。即ち、運
転切替スイツチ１１を切替えることにより、一た
ん乗かごを停止させた上で運転切替えを行なうよ
うにしたものである。

第５図はさらに本発明の他の実施例を示す回路
図で、これは、乗かご走行中に運転切替スイツチ
が誤つて切替えられると、乗かごをその場所に停
止させ、乗かご停止信号を検出した時点から一定
時限後に運転切替えを行なう場合である。乗かご
走行中の運転切替スイツチ１１の切替えによつて
乗かごがその場所に非常停止することは第４図実
施例の場合と同様であるが、停止指令が発生して
も電磁ブレーキには作動遅れがあり、電磁ブレー
キが作動しても乗かごが完全に停止するまでには
一定の時間遅れがあるため、これらの時間遅れを
考慮して、乗かご停止信号を検出してから一定時
限後に運転切替えを行なうようにしたものであ
る。即ち、停止指令により回路Ｐ―U₉―D₉―Ｔ
―Ｎが構成され、切替え遅延タイマＴが作動し、
高速から低速へ切替えた場合を考えると、回路Ｐ
―Ｌ―T₂―LA―Ｎが構成され、低速運転電磁接
触器LAがオンして低速運転に切替わる。

第６図及び第７図はそれぞれ、本発明のさらに
他の実施例を説明するための回路図で、これら
は、乗かごが完全に停止したことの検出を、より
確実な信号として捕捉するために、エレベータを
駆動している原動機（実施列では誘導電動機）が
完全に速度零になつたことを検出した信号PA₁〜
PA₃によつて行ない、運転切替えを行なうように
したもので、第６図は第４図実施例に対応するも
の、第７図は第５図実施例に対応するものであ
る。即ち、従来の一般的な乗かご速度零信号で
は、乗かご急停止時のシヨツクによてロープの伸
縮が生じ乗かごが振動を起こしている状態まで充
分には検出できない不便があつたのを、エレベー
タを駆動している誘動電動機や原動機等の速度が
完全に零になつたことを検出した信号PA（PA₁
〜PA₃はこの信号PAによつて作動するリレーの
接点である）を用いることによつて、上記不便を
解消可能としたものである。

以上説明したように、本発明によれば、乗かご
に備えた保守点検用の切替スイツチを、誤つて切
替えることがあつても乗かご走行中は高速平常運
転と低速保守運転の運転切替えは行なわれず、こ
れにより、人身事故や乗客のかご内閉じ込め等の
発生を防止することができるようになる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のエレベータ運転電動機回路図、
第２図は従来の保守点検用切替スイツチ回路図、
第３図は本発明の一実施例回路図、第４図〜第７
図はそれぞれ本発明の他の実施例回路図である。 Ｕ……上昇運転電磁接触器、Ｄ……下降運転電
磁接触器、HA……高速運転電磁接触器、LA……
低速運転電磁接触器、Ｔ……切替遅延タイマ、１
１……運転切替スイツチ、１２……運転方向指令
回路、u₁，v₁，w₁……高速側誘導電動機端子、
u₂，v₂，w₂……低速側誘導電動機端子。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 保守点検用の切替スイツチを乗かごに備え、
   この切替スイツチの切替えによつて高速平常運転
   と低速保守運転の切替えを行なうエレベータにお
   いて、乗かご走行中は高速平常運転と低速保守運
   転の運転切替えを阻止する手段と、当該乗かごが
   停止したことを条件に、上記切替スイツチに応動
   して当該運転の切替えを行なう手段とを設けたこ
   とを特徴とするエレベータ制御装置。 ２ 特許請求の範囲第１項において、前記運転切
   替手段は、前記切替スイツチに応動して乗かごを
   停止する手段を有し、該手段で停止したことを条
   件に、前記切替えを行なうように構成したエレベ
   ータ制御装置。 ３ 特許請求の範囲第１項において、前記運転切
   替手段は、前記乗かごが停止して一定時限経過し
   たことを検出する手段を有し、該手段の検出に応
   動して前記切替えを行なうように構成したエレベ
   ータ制御装置。 ４ 特許請求の範囲第１項において、前記乗かご
   が停止したことを、当該エレベータの零速度検出
   手段の出力を用いて検出して成るエレベータ制御
   装置。