JPH1198810A - リニアアクチュエータ装置 - Google Patents

リニアアクチュエータ装置

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JPH1198810A
JPH1198810A JP9253987A JP25398797A JPH1198810A JP H1198810 A JPH1198810 A JP H1198810A JP 9253987 A JP9253987 A JP 9253987A JP 25398797 A JP25398797 A JP 25398797A JP H1198810 A JPH1198810 A JP H1198810A
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JP
Japan
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magnetic field
magnetic
conductive member
mover
coil
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JP9253987A
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English (en)
Inventor
Hajime Sudo
藤 肇 須
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 装置全体の小形化、および充分な駆動力伝達
効率と使用時の調整管理の容易さを、同時に達成するこ
とができるリニアアクチュエータ装置を提供する。 【解決手段】 リニアアクチュエータ装置は、所定方向
に移動自在に設けられた導電性部材30からなる可動子
と、通電状態に対応して変化する磁界を形成し、形成す
る磁界を変化させることにより導電性部材の表面に磁極
を誘導する電磁石20と、導電性部材30に誘導される
磁極を吸引若しくは反発する磁極を形成する永久磁石1
1、12を備えている。永久磁石11、12は、電磁石
20を挟んで両側に配置されており、永久磁石11、1
2の極性は互いに反対方向を向いている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【0001】
【0002】
【発明の属する技術分野】本発明は略直線的な駆動力を
発生し、微小機器等への適用に適したリニアクチュエー
タ装置に関する。
【0003】
【0002】
【0004】
【従来の技術】従来から、小形化された機械の機構部を
動かすためのリニアクチュエータ装置が広く研究されて
おり、以下にその従来例を示す。
【0005】
【0003】図17に示す第1の従来例はボールネジ機
構を利用するものであり、この従来例においては、ベー
ス802上に配置された軸受803,804により超精
密なボールネジ等の送りネジ801の両端が支持され、
送りネジ801の片端には減速機とエンコーダが内蔵さ
れたサーボモータ805が取り付けられている。送りネ
ジ801には送りナット806が係合し、この送りナッ
ト806の上に位置決め対象である移動テーブル807
が取り付けられている。そしてサーボモータ805で送
りネジ801を回転させることにより、移動テーブル8
07が送りネジ801の回転角に比例した量の直線移動
を行うようになっている。
【0006】
【0004】図18に示す第2の従来例は、金属ブロッ
クに発生する進行波を利用してこの金属ブロックに当接
する可動子を移動させるものであり、この従来例におい
ては、上部の2カ所が互いに90度の角度を成す様に切
り欠かれた金属ブロック810の切り欠き面811,8
12には、積層された圧電素子813,814が取付ら
れている。金属ブロック810のU字型に形成された2
つの端面815,816は、上記切り欠き面811,8
12に対して45度の角度を成しており、これら端面8
15、816は可動子817を、図示されない押圧機構
による比較的大きい押圧力818で押し付けている。そ
して2つの圧電素子813,814を互いに90度の位
相差をもって数十kHzから数百kHzで駆動すると、
金属ブロック810の端面815,816には進行波が
形成され、この進行波により可動子817は直線的に移
動する。
【0007】
【0005】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、この
ようなリニアクチュエータ装置においては、寸法をミリ
サイズにまで縮減する大幅な小形化の要求がより高くな
ってきているが、上述した従来のリニアクチュエータ装
置では以下の様な理由により、これらの要求に応えるに
は一定の限界がある。
【0009】
【0006】第1の従来例のように直動機構を用いてモ
ータの回転運動を直線運動に変換してリニア駆動を行う
方式においては、装置全体の小型化を図るためには各構
成要素の小形化を図る必要がある。しかし、一般に、充
分な出力を確保しつつ回転モータを小形化するにはモー
タをより高回転させる必要があるため、実用的な速度お
よびトルクを実現するためには、直動機構と回転モータ
の間に新たな減速機構を追加する必要が生ずる。
【0010】
【0007】この場合、充分な減速比を確保するには減
速機構を構成する歯車列の段数を増やす必要があるが、
歯車列の段数の増大は装置全体のサイズの増大につなが
ることになる。さらに、歯車列の段数を増すことにより
歯車間での摩擦損失が増大する。この摩擦損失は、装置
のサイズが小さくなるほど駆動力伝達効率低下に及ぼす
影響が大きくなる。すなわち、モータの小型化による装
置の小型化には限界がある。
【0011】
【0008】また、小形化に伴う摩擦損失に起因する伝
達効率の低下は、直動機構を小形化する際にも発生する
ため、全体的な伝達効率も低下する。加えて、小形化し
た状態で必要充分な位置決め精度を確保しようとすると
送りネジや送りナットのモジュールを小さくしたりボー
ルネジ等ガタが少ないネジを採用するなどの機構的な高
精度化に加え、サーボモータのエンコーダの高分解能化
やモータ駆動に関する制御の高精度化が必要となるた
め、これらを同時に実現して小形化を図るにはサイズ的
に制約がある。
【0012】
【0009】また、上述した様に、小形化する際に新た
な機構を増設する必要があると、可動部品数が増える事
による信頼性の低下や調整の難しさなどが、新たな問題
として発生するので、リニアクチュェータ装置全体とし
ての性能が低下するという問題が生じる。
【0013】
【0010】また、第2の従来例に示したリニアクチュ
エータ装置においては、駆動力の発生は主に材料自体の
微小変形に起因し、機構的な可動部品がないため、ある
程度のサイズまで小形化する場合には、信頼性の低下は
比較的少なくて済む。
【0014】
【0011】しかし、この従来例においては、駆動力を
発生する部材と、これの伝達により動かされる可動子と
の間に、比較的大きい適正な予圧を定常的に付与してお
く必要があるが、構造的にこれに供する機構の占有体積
を小さくする事が困難である。また、積層圧電素子の小
形化に伴う変位量の低下により、この微小変位を拡大す
る機構の装着も余儀なくされる為、このこともリニアア
クチュエータ全体のサイズ小形化の障害となる。
【0015】
【0012】更に、これらの予圧機構や変位拡大機構
は、圧力管理や位置管理を厳密に行う必要があるので、
サイズの小形化に伴い調整が難しくなり、結果として、
やはり、リニアクチュエータ装置全体としての性能が低
下するという問題が生じる。以上述べた様に、従来の小
形リニアアクチュエータ装置においては、更に小形化を
図ろうとする場合、充分な駆動力伝達効率を有し、同時
に、使用する際の適正な調整管理を達成できる様なもの
は得られていないのが現状である。
【0016】
【0013】本発明は、上記実状に鑑み為されたもので
あり、リニアアクチュエータ装置全体の小形化、および
充分な駆動力伝達効率と使用時の調整管理の容易さを、
同時に達成することができるリニアアクチュエータ装置
を提供することを目的とする。
【0017】
【0014】
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、リニアアクチュエータ装置において、所
定方向に移動自在に設けられた導電性部材と、通電状態
に対応して変化する磁界を形成し、形成する磁界を変化
させることにより前記導電性部材の表面に磁極を誘導す
る第1の磁界形成手段と、前記導電性部材に誘導される
磁極を吸引若しくは反発する磁極を形成する第2の磁界
形成手段と、を備えたことを特徴とする。また、本発明
は、リニアアクチュエータ装置において、所定方向に移
動自在に設けられた導電性部材と、通電状態に対応して
変化する磁界および磁極を形成するとともに形成する磁
界を変化させることにより前記導電性部材の表面に磁極
を誘導する、前記導電性部材の移動方向に沿って複数設
けられた磁界形成手段と、を備え、前記複数の磁界形成
手段のうち一の磁界形成手段により前記導電性部材の表
面に誘導された磁極を、前記一の磁界形成手段に隣接す
る他の磁界形成手段の磁極により吸引することを特徴と
する。
【0019】
【0015】また、本発明は、リニアアクチュエータ装
置において、円筒形状を有し、その軸線方向に沿って移
動可能に設けられた、導電性部材を含み若しくは導電性
部材および高透磁率材料からなる部材の積層構造を含む
可動子と、前記可動子と同軸的かつ前記可動子の軸線方
向に沿って並設され、通電状態に対応して変化する磁界
を形成するとともに、形成する磁界を変化させることに
より前記可動子を構成する導電性部材の表面に磁極を誘
導するコイルと、前記各コイルを保持し、互いに隣接す
るコイルが形成する磁路がともに通過する半径方向の磁
極を有する、高透磁率材料からなる円筒形状部材と、前
記各コイルに、同一の周期で、かつ各々のコイル毎に所
定の位相と振幅に設定された電流を付与する通電制御部
とを備えたことを特徴とする。
【0020】
【0016】また、本発明は、リニアアクチュエータ装
置において、円筒形状を有し、その軸線方向に沿って移
動可能に設けられた、導電性部材を含み若しくは導電性
部材および高透磁率材料からなる部材の積層構造を含む
可動子と、前記可動子と同軸的かつ前記可動子の軸線方
向に沿って並設され、通電状態に対応して変化する磁界
を形成するとともに、形成する磁界を変化させることに
より前記可動子を構成する導電性部材の表面に磁極を誘
導するコイルと、前記各コイルを保持し、互いに隣接す
るコイルが形成する磁路がともに通過する半径方向の磁
極を有する、高透磁率材料からなる円筒形状部材と、前
記各コイルに、同一の周期で、かつ各々のコイル毎に所
定の位相と振幅に設定された電流を付与する通電制御部
とを備えたことを特徴とする。
【0021】
【0017】また、本発明はリニアアクチュエータ装置
において、第1の方向に移動可能に設けられた可動子
と、通電状態に対応して変化する磁界および磁極を形成
する第1および第2の磁界形成手段と、前記第1の磁界
形成手段により形成される磁界の変化に伴い磁極が誘導
され、この誘導された磁極と前記第1の磁界形成手段の
磁極との相互作用により第1の方向に変位する第1の導
電性部材と、前記第2の磁界形成手段により形成される
磁界の変化に伴い磁極が誘導され、この誘導された磁極
と前記第2の磁界形成手段の磁極との相互作用により前
記第1の方向と略直交する第2の方向に変位する第2の
導電性部材と、前記第1の方向および前記第1の方向と
略直交する第2の方向に関して弾性的に支持されるとと
もに、前記可動子と当接した状態で前記第1の導電性部
材の変位に従って変位して前記可動子を前記第1の方向
に駆動する可動子駆動部材とを備えたことを特徴とす
る。
【0022】
【0018】
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。
【0024】
【0019】[第1の実施形態]まず、図1乃至図3に
より第1の実施形態について説明する。図1乃至図3は
本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0025】
【0020】図1に示すように、本実施形態に係るリニ
アアクチュエータ装置は、非磁性体材料製の固定子ホル
ダ2に収容された永久磁石11(第2の磁場形成手段)
および永久磁石12(第2の磁場形成手段)と、電磁石
20(第1の磁場形成手段)と、これら永久磁石11、
12および電磁石20に対向して設けられた導電性材料
からなる導電性部材30とを備えている。
【0026】
【0021】導電性部材30は、リニアアクチュエータ
装置における可動子として作用するものである。導電性
部材30は、その上面31および下面32を軸受け35
等の支持部材により支持されており、これにより導電性
部材30は図1上下方向に拘束されるとともに図1左右
方向(導電性部材30の長手方向)に沿って移動自在と
なっている。なお、軸受け35は、他に適当な支承手段
が設けられている場合には、必ずしも使用する必要はな
い。
【0027】
【0022】図2に示すように、永久磁石11、12
は、電磁石20を挟んで、導電性部材30の長手方向す
なわち移動方向に沿って配置されている。
【0028】
【0023】また、図1に示すように、永久磁石11,
12の作用面11a,12a(可動子30に対向する
面)と電磁石20の作用面21a(電磁石20のコア2
1の可動子30に対向する面)とは概ね同一平面上に位
置している。
【0029】
【0024】図1に示すように、永久磁石の11,12
の極性は互いに逆向きとなっており、図1の場合、永久
磁石11の作用面11a側の極性がS、永久磁石12の
作用面12a側の極性がNとなっている。
【0030】
【0025】また、図1に示すように、電磁石20は、
円柱状のコア(鉄心)21と、コア21の外周に巻かれ
たコイル22とから構成されている。
【0031】
【0026】なお、電磁石20のコア21に電磁軟鉄等
を使用する場合には、磁束が短絡しない様に、電磁石2
0のコア21と永久磁石11,12とが互いに接触しな
い様に配慮される。図1および図2では、コア21の外
周に巻かれたコイル22の(半径方向の)厚み分だけ、
コア21と永久磁石11,12とが離間するようになっ
ている。
【0032】
【0027】電磁石20には、コイル22への通電を制
御する図示しない通電制御装置が接続されている。
【0033】
【0028】次に、上記構成を有する本実施形態の作用
について説明する。
【0034】
【0029】コイル22には、図示されない通電制御装
置(通電制御部)により、図3(a)に示すような立ち
上がり時TNと立ち下がり時Tsとの継続時間が異なる
電流が周期的に付与される。
【0035】
【0030】ここで、図1に示すように、電磁石20の
コイル22に、コア21の作用面21a側がN極となる
ように電流を付与したとする。
【0036】
【0031】この場合、電磁石20により形成される磁
界は、コイル22に付与される電流変化に従って変化す
る。この磁界変化の変化率に応じて、電磁石20に対向
して設けられた導電材料製の導電性部材30の表面は誘
導電流が生じ、これにより、導電性部材30には電磁石
20の極性に対向する磁界が発生する。
【0037】
【0032】ここで、電磁石20により形成される磁界
は値(強さ)が異なるだけで、全周期にわたって方向は
同一であるが、上述した様に電流の継続時間、即ち磁界
の値の変化の割合が立ち上がり時TNと立ち下がり時T
sでは異なるため、導電性部材30に発生する磁界の極
性は、立ち上がり時TNと立ち下がり時Tsとで、方向
および値(強さ)の両方が異なることになる。
【0038】
【0033】即ち、コイル22への付与電流の変化が急
峻な立ち上がり時TNにおいては、電磁石20の極性に
対向する強い磁界nNが導電性部材30に発生し、コイ
ル22への付与電流の変化が緩やかな立ち下がり時Ts
においては、電磁石20による磁界と同方向の弱い磁界
Ssが発生する(図3(b)参照)。
【0039】
【0034】導電性部材30に上記の強い磁界nNが誘
導されると、導電性部材30のうち磁界が誘導された部
分(この部分に磁極が形成される)は、永久磁石11
(の磁極)との間に吸引力が働き、永久磁石12(の磁
極)との間には反発力が働くので、立ち上がり時TNの
間、導電性部材30は図1左方向に移動することにな
る。
【0040】
【0035】立ち上がり時TNに続く立ち下がり時Ts
の間は、導電性部材30と永久磁石11,12との間の
吸引力と反発力の関係が逆転する。立ち下がり時Tsの
間には、図3に示すように導電性部材30には弱い誘導
磁界Ssしか発生しないので、導電性部材30が図1右
方向に移動することはない。
【0041】
【0036】また、仮に導電性部材30が移動したとし
ても、その量は立ち上がり時TNの移動量に比べて小さ
い。
【0042】
【0037】従って、いずれにせよ、導電性部材30
は、1サイクル(立ち上がりおよび立ち下がり)のコイ
ル22への通電により、図1左方向に移動することとな
る。
【0043】
【0038】なお、導電性部材30が立ち下がり時Ts
に静止しているか多少なりとも動くかについては、立ち
下がり時Tsに発生する導電性部材30と永久磁石1
1,12との間の吸引力および反発力による導電性部材
30の駆動力と、導電性部材30および導電性部材30
により駆動される部材からなる系の全体の摩擦力とのバ
ランスに依存する。
【0044】
【0039】また、上記説明とは逆方向(図1右方向)
に導電性部材30を移動させたい場合には、TNとTs
の経過時間の関係を逆にする(TN間における電流変化
を緩やかに、Ts間における電流変化を急峻に)か、或
いは経過時間の関係は元のままでコイル22に付与する
電流の向きを逆にすれば良い。
【0045】
【0040】図1及び図2に示したものは、本発明に係
るリニアアクチュエータ装置の基本的な構成であるが、
永久磁石および電磁石の磁路は開ループとなっている
為、可動子の駆動力(アクチュエータの発生力)が比較
的小さくてもよい場合には、アクチュエータ全体の小型
化および構造の簡素化の観点から好適である。アクチュ
エータの発生力を更に大きくしたい場合には、磁路が閉
ループとなるようにアクチュエータを構成すればよい。
【0046】
【0041】[第2の実施形態]次に、第2の実施形態
について図4により説明する。
【0047】
【0042】図4に示す本実施形態に係るリニアアクチ
ュエータ装置は、永久磁石および電磁石が閉ループの磁
路(閉磁路)を形成するように配置されたいわば第1の
実施形態の変形例に相当するものであり、図4におい
て、図1及び図2により説明した部材と同一の役割を果
たす部材には、同一符号が付されている。
【0048】
【0043】図4に示すように、リニアアクチュエータ
装置には、高透磁率材料製例えば電磁軟鉄製のヨーク4
1、42、43が、導電性部材30の移動方向に沿って
並設されている。これらヨーク41、42、43は固定
子ホルダ3に取り付けられている。
【0049】
【0044】これらヨークのうち、両端のヨーク41、
42には、永久磁石51a、51bおよび永久磁石52
a、52bがそれぞれ取着(取付られている)されてい
る。図4(c)に示すように、ヨーク42はループ状に
形成された高透磁率材料の一部を切り欠くことにより形
成されており、ヨーク42の切り欠き面42a、42b
に永久磁石52a、52bがそれぞれ取り付けられてい
る。
【0050】
【0045】ヨーク42に取り付けられた永久磁石52
a、52bの作用面54a,54b(導電性部材30に
対向する面)側の極性は、互いに異なっている(永久磁
石52aの作用面54a側がN極、永久磁石52bの作
用面54b側がS極)。このような構成を採ることによ
り、これら永久磁石52a、52bおよびヨーク42に
より、空隙45を有する磁気回路(閉ループの磁路、閉
磁路、図4(c)矢印参照)が形成される。
【0051】
【0046】なお、ヨーク41側の構成は、図4(b)
に示すように、永久磁石51a、51bの極性が、永久
磁石52a、52bの極性と反対となっている点のみが
ヨーク42側の構成と異なり、これにより、ヨーク41
側に形成される閉磁路の向きがヨーク42側に形成され
る閉磁路の向きと異なる。
【0052】
【0047】一方、図4(d)に示すように、ヨーク4
1,42に挟まれた位置にある中央のヨーク43は、導
電性部材30に向けて突出する凸部43a、43bを有
する。 これら凸部43a、43bにはそれぞれ、コイ
ル46、46が巻かれており、これによりヨーク43を
コアとする電磁石が形成されている。コイル46、46
には図示しない通電制御装置が接続されている。
【0053】
【0048】ヨーク43は、ヨーク41、42と同一の
形状を有しており、ヨーク43は、凸部43a、43b
間に形成される空隙45aを有する磁気回路を形成す
る。すなわち、通電制御装置によりコイル46に通電す
ることにより形成される磁路も、図4(d)に示すよう
に閉磁路(図4(d)矢印参照)となる。
【0054】
【0049】導電性部材30は、上述した各ヨーク4
1、42、43により形成される各磁気回路の空隙4
5、45aを横切るように配置されている。
【0055】
【0050】以上説明したヨーク43およびコイル46
により第1の磁界形成手段が構成され、ヨーク41およ
び永久磁石51a、51bにより(一側の)第2の磁界
形成手段が、ヨーク42および永久磁石52a、52b
により(他側の)第2の磁界形成手段が構成される。
【0056】
【0051】図4に示すリニアアクチュエータ装置にお
いても、コイル46に付与される電流パターンと導電性
部材30の動作機序は、先に図3を用いて説明した内容
と同一である。 しかしながら本例の場合には、永久磁
石および電磁石(ここでいう電磁石とはコアとして機能
するヨーク43とコイル46とからなるものをいう)に
より形成される磁界が、導電性部材30が位置するヨー
ク41,42,43の空隙部に集中するように形成され
る。このため、図1および図2で説明した開磁路的な構
成例に比べて、強い力で導電性部材30を移動させるこ
とができ、また、コイル46に付与する電流の値を小さ
くしても導電性部材30を駆動することが可能となる。
【0057】
【0052】[第3の実施形態]次に図5および図6に
より第3の実施の形態について説明する。第2の実施の
形態は、第1の実施の形態に対して、第2の磁界形成手
段を構成する永久磁石を電磁石に置換した点が主な相違
点となっている。第2の実施の形態において第1の実施
形態と同一部分については同一符号を付し、重複する説
明は省略する。
【0058】
【0053】図5に示すように、固定子ホルダ3には高
透磁率材料からなる3つのヨーク61、62、63が取
り付けられており、これらヨークのうち中央のヨーク6
3は、図4に示した中央のヨーク43と同一のものであ
り、ヨーク63に取り付けられるコイル76も図4に示
したコイル46と同一のものである。
【0059】
【0054】中央のヨーク63の両側には、互いに同一
形状を有するヨーク61、62が設けられている。ヨー
ク61、62は、それぞれ二重コの字形の形状を有して
いる。
【0060】
【0055】このうちヨーク61は、導電性部材30の
上面31側において導電性部材30に向けて突出する凸
部61a,61bと、導電性部材30の下面32側にお
いて導電性部材30に向けて突出する凸部61c,61
dを有している。
【0061】
【0056】各凸部61a,61b,61c,61dに
は、それぞれコイル71a,71b,71c,71dが
巻き付けられている。
【0062】
【0057】凸部61aと凸部61cとの間、および凸
部61bと凸部61dとの間には、空隙66、67が形
成されており、これによりヨーク61に空隙66を有す
る磁気回路B1と、空隙67を有する磁気回路B2が形
成されるようになっている(図5(c)矢印参照)。
【0063】
【0058】なお、ヨーク62の形状は、ヨーク61の
形状と同一であり、各凸部にそれぞれコイルが取り付け
られる点も同一である。
【0064】
【0059】導電性部材30は、図5(d)に示すよう
に、中央のヨーク63の空隙68の間に位置するように
なっている。また、導電性部材30は、端のヨーク61
の空隙66および67内に位置しないように、かつ空隙
66と空隙67の間において各凸部61a,61b,6
1c,61dから等しい距離に位置している。言い換え
れば、導電性部材30は、空隙66と空隙67に近接し
つつ、空隙66と空隙67の外に位置している。
【0065】
【0060】以上説明した各構成要素のうち、中央のヨ
ーク63およびこのヨーク63の各凸部に巻き付けられ
たコイルにより第1の磁界形成手段が構成される。ま
た、両端のヨーク61、62およびこれらヨーク61、
62の各凸部にそれぞれ巻き付けられたコイルにより一
組の(一側および他側の)第2の磁界形成手段がそれぞ
れ構成される。
【0066】
【0061】次に、上記構成を有する本実施形態の作用
について説明する。
【0067】
【0062】図示しない通電制御部により、各コイルに
通電することにより、各ヨークには各々の空隙を横切る
磁界が形成される。
【0068】
【0063】両端の二重コの字形のヨーク61、62の
磁界は、図5(b)に示すように、互いに逆向きに設定
される。この両側のヨーク61、62に巻かれたコイル
に、対応するヨークの空隙側の端面が図5(b)に示し
た極性となる様な直流電流を付与し、中央のヨーク63
に巻かれたコイル76に図3に示したパターンの電流を
付与すれば、導電性部材30すなわち可動子は図5
(a)左方向に移動する。なお、両側のヨーク61、6
2に巻かれたコイルに直流電流を付与する場合、定常的
な電力消費が発生するが、これを避ける為には中央部ヨ
ークが付勢された時のみ当該電流を付与してやれば良
い。
【0069】
【0064】この時、概ねステップ的に電流が付勢され
るので導電性部材30上には両側のヨーク61、62に
よる誘導磁界が発生するおそれがある。しかし、本実施
形態においては、前述したように、両側ヨーク61、6
2の凸部の端面と可動子(導電性部材30)を対向させ
ない様な配置をとり、上述した危険性を回避している。
【0070】
【0065】勿論、直流電流による電力消費があっても
よけれぱ、可動子(導電性部材)30と両側ヨーク6
1、62の凸部の空隙側端面(作用面)を対向させて構
わず、ヨーク形状も本例の二重コの字形ではなく、図4
の永久磁石部を電磁石に変更した一重のコの字形状とし
てもよい。すなわち両側の2つの磁界形成手段を、中央
の磁界形成手段と同一の構成(本実施形態の中央ヨーク
63およびコイル76の構成と同一)としてもよい。
【0071】
【0066】また図5に示す構成を採れば、上述した図
3の様な三角波の電流付勢ではなく、全てのコイルに位
相の異なる正弦波を付与しても同様の作用を得ることが
できる。
【0072】
【0067】図6に正弦波電流による駆動方式の一例を
示す。中央ヨーク63のコイルに付与される電流を正弦
波とすれば、対向する導電性部材30(可動子)上には
位相が90度進んだ誘導磁界が発生する。
【0073】
【0068】この時、図5(a)左側の二重コの字形ヨ
ーク62の各コイルには中央ヨーク63のコイル76へ
の付与電流に比べ位相が90度遅れた電流を、図5
(a)右側の二重コの字形ヨーク61のコイルには中央
コイル76への付与電流に比べ位相が90度進んだ電流
を付与すれば、これら両側のヨーク61、62には対応
するコイルに供給される電流と同相の磁界(磁極)が発
生するので(図6(c)(d)参照)、中央ヨーク63
に巻かれたコイルによって誘導された磁界(磁極)との
吸引および反発作用で、導電性部材30(可動子)全体
は図5(a)左方向に移動する。
【0074】
【0069】この様な駆動方式を採ることにより、図3
に記した三角波による駆動方式と比べ、より連続的な導
電性部材30の移動が可能であり、また両側のヨーク6
1、62は二重コの字形状であるから導電性部材30上
に誘導磁界が発生する心配もない。
【0075】
【0070】以上説明したように、第1乃至第3の実施
形態によれば、機構的な可動要素は可動子(導電性部材
30)の支承機構(軸受け35)のみに限定でき、この
支承機構も、通常、本リニアアクチュエータ装置が適用
されるシステムの一部に組み込まれることを考えれば、
駆動力を発生するのに必要な機構は全て固定されてお
り、サイズの微小化を図っても信頼性を確保することが
できる。
【0076】
【0071】また、予圧機構に伴う圧力管理や、駆動面
をパターン化する様な微細加工も一切不要であることか
ら、可動部品の排除のみならず、調整要素や部品数も従
来のリニアアクチュエータに比べて大幅に低減できるの
で、小型化を図る際に非常に有利となる。
【0077】
【0072】また、磁界を発生するのに永久磁石を併用
できるため(第1および第2の実施形態参照)、消費電
力の低減にも効果がある。
【0078】
【0073】[第4の実施形態]次に、図7および図8
を参照して第4の実施形態について説明する。本実施形
態を説明する図7においては、機構を支承するホルダー
や軸受など駆動力の発生に直接関係しない要素、および
電流を付与する為の電源や制御要素の記載は省略してあ
る。
【0079】
【0074】本実施形態において、リニアアクチュエー
タ装置は、コの字形状をした少なくとも4つの電磁石
(磁界形成手段)C1,C2,C3,C4と、高透磁率
材料(高透磁率部材)83を導電性材料(導電性部材)
81,82で挟み込んでなる(積層構造を有する)可動
子80とを備えている。
【0080】
【0075】電磁石C1,C2,C3,C4は、すべて
同一の構成を有している。以下、電磁石C1を例にとっ
て電磁石の構成について説明する。
【0081】
【0076】電磁石C1は、コイル91と、このコイル
が巻き付けられる高透磁率材料からなる鉄心(コア)9
2とを備えている。鉄心92は、ループ状に形成された
高透磁率部材の一部を切り欠いて形成されており、鉄心
92は、切り欠き部に対応する空隙95を挟んで互いに
対向する面である対向面(第2の作用面)93、93
と、対向面93、93と直交するとともに可動子80に
対向する面である端面(第1の作用面)94、94とを
有している。
【0082】
【0077】端面94の面積は、対向面93の面積より
大きくなっている。
【0083】
【0078】各電磁石C1,C2,C3,C4の端面9
4は、概ね同一平面上に位置しており、各電磁石C1,
C2,C3,C4の各端面94と可動子80との距離は
互いに等しくなっている。各電磁石C1,C2,C3,
C4は、可動子80の移動方向に沿って等間隔に配置さ
れている。
【0084】
【0079】次に、上記構成を有する本実施形態の作用
について説明する。
【0085】
【0080】各電磁石C1,C2,C3,C4の各コイ
ル91に電流を付与すると、それによる磁界は、上記電
磁石ヨーク(鉄心92)の代表軸に沿う部分(対向面9
3、93との間の空隙95に沿う部分(図7(b)矢印
A参照))と、可動子80の高透磁率部材83を通る部
分(図7(b)矢印B参照)とにより並列的に構成され
る。なお、ここで、対向面93、93の面積より端面9
4、94の面積の方が大きいことにより、形成される磁
界(磁束)の可動子80の高透磁率部材83を通る部分
を増大させることができる。
【0086】
【0081】この磁界Bの磁路の途中には上述した様に
導電材部材81、82が配置されているので、上記磁界
Bに時間変化がある場合、その変化率に応じた誘導電流
が導電材部材81、82に生じ、これに伴い導電材部材
81、82の表面には、対向面93、93に生じる磁極
と対向する(誘導電流による)誘導磁極が発生する。図
8には、各電磁石C1,C2,C3,C4のコイル91
に互いに90度づつ位相がシフトした正弦波電流を付与
する際の各電磁石端面に生じる磁極の強さ(図8におい
て実線で示す)と、各電磁石C1,C2,C3,C4の
端面94に対向する可動子80の導電性部材に誘導され
る磁極の強さ(図8において破線で示す)との関係を記
す。
【0087】
【0082】図8に示すように、各電磁石C1,C2,
C3,C4のコイル91に付与される電流により各鉄心
の端面94に形成される磁極の強さは、当該端面94に
対向する可動子80の導電性部材81に誘導される磁極
の強さより位相が90度進んでいるが、上述したよう
に、電磁石への付与電流も隣同士で90度づつシフトし
ているので、4つの電磁石C1,C2,C3,C4のう
ちある電磁石(例えばC3)により可動子80に誘導さ
れる磁極は、これに隣接する電磁石(例えばC2、C
4)への付与電流により端面94に形成される磁極の強
さに対して、位相差が0度或いは位相差180度の極性
をとる。
【0088】
【0083】例えば、図8の時刻3tの場合、電磁石C
2により可動子80に誘導される磁磁極はS極方向の最
大値(Se)をとるが、同時刻における隣接する電磁石
の付与電流による磁極は、C1の磁極がS極方向の最大
値(Sp)、C3の磁極がN極方向の最大値(np)と
なっている(図9も合わせて参照)。
【0089】
【0084】このため、電磁石C2により可動子80の
うち電磁石C2に対向する部位に誘導される磁極と、電
磁石C1の端面94に形成される磁極との間には磁気的
な反発力が作用する。一方、電磁石C2により可動子8
0のうち電磁石C2に対向する部位に誘導される磁極
と、電磁石C3の端面94に形成される磁極との間には
磁気的な吸引力が作用する。これにより、可動子80は
図7(a)右方向への力を受ける。
【0090】
【0085】上述した様に各電磁石C1,C2,C3,
C4のコイル91に付与される電流は90度ずつの位相
差が設けられているので、可動子80のうち各電磁石に
対向する面(部位)に誘導される磁界も、図8に示すよ
うに、進行波的な様相を呈する。
【0091】
【0086】即ち、上で述べた可動子80に誘導される
磁極には、付与電流により各電磁石C1,C2,C3,
C4の端面94に形成される磁極により、各時点で図7
(a)右方向への力が作用することになり、結果として
可動子80は紙面右方向に向かって移動する。
【0092】
【0087】なお、可動子80を図7(a)左方向に移
動させたい時には、電流付与時の位相差の順序を逆にす
れば良い。
【0093】
【0088】[第5の実施形態]次に、図10および図
11を参照して第5の実施形態について説明する。
【0094】
【0089】第5の実施形態は、リニアアクチュエータ
装置全体のサイズの微小化を図る為、第4の実施形態に
おける各磁場形成手段を一体化したものに相当し、動作
原理は第4の実施形態と略同一である。
【0095】
【0090】図10に示すように、リニアアクチュエー
タ装置は、高透磁率材料からなる円筒状部材100(ヨ
ークまたは鉄心に相当)を有している。この円筒状部材
100の内周面101側には、円筒状部材100の軸線
方向に沿って等間隔に形成された円周方向に延びる溝1
02が形成され、この溝底部にはそれぞれ円筒状部材1
00と同軸に設けられたリング状(円筒状)コイル10
7a、107b、107c、107dが設けられてい
る。コイルを円筒状部材100と同軸のリング状とする
ことによりコイルを大きくすることができ、これにより
数mmサイズのリニアアクチュエータ装置を製作する際
の、コイルの巻き易さが向上する(第4の実施形態を比
較して参照)。
【0096】
【0091】円筒状部材100の内周面101側には、
溝102の開口部を狭めるように溝102に向けて円筒
状部材100の軸線方向に向かって延びる凸部103が
形成されている。
【0097】
【0092】そして、溝102により仕切られた円筒状
部材100の内周面101の各領域101aが、前述し
た第4の実施形態における端面94と同一の役割を果た
し、互いに対向する凸部103の対向面104が、前述
した第4の実施形態における対向面95と同一の役割を
果たすようになっている。
【0098】
【0093】なお、本実施形態においては、高透磁率材
料からなる円筒状部材101の内周面側の部分のうち、
リング状の各コイル107a、107b、107c、1
07dの内周面より半径方向内側に突出する(位置す
る)部分121,122,123,124,125に、
磁極が形成されるようになっている。
【0099】
【0094】従って、本実施形態においては、各部分1
22、123、124の両側に設けられた一対のコイル
により(両端の凸形状の部分121、125については
1つのコイルにより)一の磁界形成手段が構成されるこ
とになる。従って、互いに隣接する磁界形成手段はコイ
ルを共用することになる。
【0100】
【0095】円筒状部材101の中空部(内部)には、
円筒状部材101と同軸に円筒状の導電性材料からなる
可動子108が設けられている。この可動子108は、
例えば滑り性の良いスペーサ109等を介して、円筒状
部材101の内周面101との間に微小隙間をもって、
円筒状部材101の軸線方向に沿って移動自在に配置さ
れている。
【0101】
【0096】いま各コイルに電流を付与して図10に示
す破線方向の磁路111,112,113,114を形
成すると、高透磁率材料からなる円筒状部材101の内
周面側の部分のうちリング状の各コイル107a、10
7b、107c、107dの内周面より半径方向内側に
ある部分(磁極となる部分)121,122,123,
124,125のうち部分122,123,124には
各々磁路111+112,112+113,113+1
14で規定される磁界(磁極)が形成され、これらの位
相差は付与電流の位相差とは必ずしも一致しない。
【0102】
【0097】先に図8を用いて説明したように、可動子
108の移動は、各コイル107a、107b、107
c、107dが形成する磁界変化に基づき可動子108
の外周面上に誘導される磁極と、各リング状コイル10
7a、107b、107c、107dに付与される電流
により各部分121,122,123,124,125
に生じる磁界(または磁極)との間の、吸引力と反発力
によって生じ、誘導磁界は対向する磁極による磁界と9
0度の位相差がある事から、上記の部分122,12
3,124端面に現れる合成磁界(合成磁極)111+
112,112+113,113+114も互いに90
度の位相差を有することが望ましい。
【0103】
【0098】各コイル107a、107b、107c、
107dに順番に60度の位相差を付けた正弦波電流を
付与した時の、各磁極(各部分)121,122,12
3,124,125に現れる磁極の強さの変化を図11
に示す。
【0104】
【0099】図11に示すように、両端の磁極121,
125の磁界131,135は、本例においては同相で
あり、磁極121,125間の各磁極122,123,
124に現れる磁界は132,133,134は、磁極
121,125間の位相差360度(すなわち同相)を
概ね4等分した位相差すなわち90度の位相差をもって
現れることがわかる(本例は厳密には90度の位相差で
はないが、コイルへの付与電流の位相差および振幅を調
整することで90度の位相差に設定することが可能であ
る)。
【0105】
【0100】これらの磁界によって、上記可動子108
表面(外周面)には90度だけ位相の進んだ誘導磁極が
生じるので、第4の実施形態において述べた原理と同様
の作動原理により、磁気的な吸引・反発力によって可動
子108は軸線方向に駆動される。反対方向に駆動する
には、付与電流の位相差の符号を逆にすれば良い。
【0106】
【0101】以上説明したように、第4および第5の本
実施形態によれば、永久磁石を用いないので、組立時の
取扱や磁気抵抗の決定に関わる煩雑さを回避でき、駆動
性能もコイルヘの付与電流の調整により比較的容易に変
更可能である。また構成要素が減少する分だけサイズの
微小化と信頼性の向上が期待できる。
【0107】
【0102】また本実施形態ではコイル、コイルを保持
する高透磁率部材、可動子が中空円筒状の構成を採って
いるが、この形状に限定されるものではない。
【0108】
【0103】[第6の実施形態]次に、図12乃至図1
5を参照して第6の実施形態について説明する。
【0109】
【0104】本実施形態に係るリニアアクチュエータ装
置においては、可動子200は中空円筒状の可動子ベー
ス201の2つの面上に導電性材料(導電性部材)20
2,203および204、205と高透磁率材料206
および207がそれぞれ積層された構造を採っている。
【0110】
【0105】このうち導電性材料203および205は
省略しても構わず、上記導電性材料202、204ある
いは高透磁率部材206、207が充分な強度を有して
いる場合には、これらを可動子ベース201として兼用
することもできる。
【0111】
【0106】本実施形態においては、可動子200の互
いに対向する2面の外側に電磁軟鉄からなる鉄心(ヨー
ク)331,332,333,334,303a,30
3b,303c,303dと各鉄心それぞれに巻かれた
コイル341,342,343,344,304a,3
04b,304c,304dからそれぞれ構成された電
磁石C1,C2,C3,C4,Ca,Cb,Cc,Cd
が、可動子200の進行方向(図12(a)左右方向)
に沿って配置されている。
【0112】
【0107】各鉄心331,332,333,334,
303a,303b,303c,303dの可動子20
0と対向する端面は、可動子の外面と略平行となってい
る。各鉄心の可動子200と対向する端面、すなわち各
電磁石の磁極端には、永久磁石211,221,23
1,241,2a1,2b1,2c1,2d1(21
2,222,232,242,2a2,2b2,2c
2,2d2)が取着されている。
【0113】
【0108】従って、図12では、上下磁石群の間に可
動子200が浮遊している様に描かれているが、実際は
永久磁石と可動子200中の高透磁率材料206、20
7との間に生ずる磁気吸引力により、可動子200は上
または下の磁石群のいずれかの側(C1〜C4またはC
a〜Cd)に接触している。
【0114】
【0109】一の電磁石に取り付けられる一組の永久磁
石(例えば211と212)は、当該永久磁石により形
成される磁路が、電磁石により形成される磁路と直列と
なるように(重なりあうように)配置されている。従っ
て、永久磁石とこの永久磁石が取り付けられる鉄心とに
より、鉄心に沿った閉磁路が形成される。
【0115】
【0110】上記コイルに電流を付与することにより形
成される磁界は、図12(b)に示すように、鉄心(ヨ
ーク)、永久磁石、可動子内の高透磁率材料を経由する
閉磁路となる。
【0116】
【0111】なお、コイルにより形成される磁界が比較
的弱い場合には、図13に示す様に、磁気抵抗となる永
久磁石を鉄心(ヨーク)側面に、すなわち永久磁石によ
る磁路が電磁石により鉄心に形成される磁路と略並列に
なるように配置してもよい。なお、この場合は、永久磁
石の吸引力は当該磁路が短絡的に形成されるので若干低
減する。
【0117】
【0112】これらの永久磁石による可動子の吸引固定
は、電流が付与されない時、即ちリニアアクチュエータ
装置の非使用時における可動子の位置保持能力を保証す
るものである。
【0118】
【0113】次に、上記構成を有する本実施形態に係る
リニアアクチュエータ装置の動作機序を、図14に記し
た4組の電磁石C1,C2,C3,C4の図12(b)
左側の磁極C1L,C2L,C3L,C4Lに現れる磁
極の強さの変化を用いて説明する。
【0119】
【0114】各コイルには、永久磁石により生じる磁界
と同方向の磁界が発生する様に電流を付与するが、この
時、付与される電流のパターンを、先に図3により説明
したのと同様に、立ち上がりが急峻で立ち下がりが緩や
かなパターンとすると、各電磁石C1,C2,C3,C
4には、ヨークによる誘導を無視すれば、この電流パタ
ーンに概ね比例した磁界(図14の各グラフにおける実
線参照)が発生する。図14には、電磁石C1,C2,
C3,C4の磁極の強さの最大値がSoとなる様に描い
てある。この磁界を横切る可動子200の導電性部材
(図12の202,204)には、図14の各グラフに
おいて破線で示す誘導磁極(磁界)が発生するが、この
磁極の強さの値はコイルへの付与電流の立ち上がり時に
Se、立ち下がり時にNeとなる。
【0120】
【0115】導電性部材に誘導される磁極の強さは導電
性部材を横切る磁界の変化率に比例するから、本例にお
いては、|Se|>>|Ne|となる。また、コイルに
付与する電流は、隣接する電磁石毎に90度ずつの位相
差をつけてあるので、上述した磁界の変化は電磁石毎
に、図13に示す様に時間的に変化する。
【0121】
【0116】図14において、Sbは永久磁石により定
常的に印加されている磁極の強さである。各電磁石によ
る磁界と、可動子上に誘導される磁界の関係を図15に
示す。
【0122】
【0117】図15には、各電磁石の一方の磁極端に現
れる磁極の強さと、それに対向する可動子部分に誘導さ
れる磁極の強さが記されている。説明の簡略化の為に、
磁極端に現れる磁極の強さは値が増すに従い(S),S
+,S++,Siと記してあるが、いずれも永久磁石に
よる磁極の強さが重畳された値である。
【0123】
【0118】また、図15において、可動子上の誘導磁
極(磁界)の強さはSeおよび(Ne)と記した。これ
らの標記のうち()で囲んだものは、値が非常に小さい
ものを表わす。
【0124】
【0119】これら各符号のうち、Siはコイルへの付
与電流の立ち上がり時のS極のレベルを、(Se),S
+,S++は立ち下がり時のS極のレベルをそれぞれ示
している。なお、(Se),S+,S++の間には(S
e)<S+<S++なる関係が成立している。
【0125】
【0120】各電磁石の磁極面と可動子との間に作用す
る力は、主にSiとSeとの間、及びS++とSeとの
間について考慮すれば良い。この考慮すべき関係が成立
している部分は、図15においてハッチングを付して示
している。
【0126】
【0121】ここで、前者(SiおよびSe)は可動子
と直接対向する磁極面に作用する反発力、即ち接触して
いる磁極面と可動子を離間させる力であり、後者(S+
+およびSe)は隣接する磁極面に作用する反発力、即
ち可動子を軸方向に移動させる駆動力を表わす。特に後
者については、両隣接磁極面の内の一方にしか作用しな
い為、可動子は当該方向と反発する向きに移動する。
【0127】
【0122】更に、これらの駆動力の発生は各電磁石に
付与される位相差のある電流変化に応じて進行するの
で、可動子200は電流が操り返し的に付与されている
間、連続的に移動する。各電磁石のもう一方の磁極端面
においては、S極とN極が代わるだけで、同様な関係が
得られている。
【0128】
【0123】本例において、可動子は図12(a)の左
側に向かって移動する。可動子を逆方向に駆動する場合
には、各磁極に対する位相差を逆転すれば良く、電流の
向きを変える必要はない。
【0129】
【0124】また、図12では、可動子200の対向す
る(反対側の)2つの面に対して各々4つの磁石からな
る磁石群が配設されているが、各電磁石に付与する電流
は周期的な同期が取れていれば、位相差を付ける順番に
関しては必ずしも一致させておく必要はない。
【0130】
【0125】接触している可動子と磁極面を離間させる
場合も、磁気力の作用は距離の2乗に反比例するため必
ず接触している側の反発力が大きく作用する。
【0131】
【0126】また可動子が上下2組の磁極群のどの位置
にあっても、どちらかの磁極群の駆動力が必ず作用す
る。
【0132】
【0127】なお、図13に示すように、永久磁石と電
磁石を並列的に配設する場合でも、これらが近接してい
れば同様の効果を得る事ができる。
【0133】
【0128】以上説明したように本実施形態によれば、
構成要素の少なさの点からリニアアクチュエータの微小
化を図る際に有利になるだけでなく、リニアアクチュエ
ータに電流を付与しない状態での可動子の位置保持機能
が、ブレーキ等の新たな可動要素を追加することなしに
実現できる。
【0134】
【0129】[第7の実施形態]次に、第7の実施形態
に係るリニアアクチュエータ装置について、図16およ
び図17用いて説明する。なお、図16において、ハッ
チングは部材間の区別を明確にするために付されてお
り、断面を示すものではない。そして各コイルの図にお
ける上下端部のみ、図面の理解を容易にするため断面図
的に示されている。図16に示すように、適当な任意の
断面形状を有する柱状可動子400の周りには、この可
動子400を軸線方向に可動自在に支承(支持)する高
透磁率部材からなるホルダー420が配設されている。
可動子400は、ホルダー420に形成された円柱状の
空間内に、その軸線方向に移動自在に収容されている。
【0135】
【0130】ホルダー420の外周には、ホルダー42
0の円柱状の空間と同軸に3個のリング状コイル43
1,432,433が軸線方向に適当な間隔を置いて巻
かれている。
【0136】
【0131】これらリング状コイル431,432,4
33の磁路の一部となる前記ホルダー420の一部(本
例ではホルダー上部)は、各々の磁路が一部開放された
磁極421,422,423を形成している。
【0137】
【0132】磁極421と磁極422は可動子400の
軸線方向を向いて互いに対向する様に形成され、磁極4
23は半径方向外側に向けて形成される。
【0138】
【0133】従って、本実施形態に係るリニアアクチュ
エータ装置においては、各リング状コイル431,43
2,433および当該コイルに対応するホルダー420
の部分により、各磁界形成手段が構成される。
【0139】
【0134】また断面がコの字形をした振動片(可動子
駆動部材)470には弾性部材451,452,45
3,454が取着され、このうち弾性部材451,45
2,453にはそれぞれ、振動片470と反対側の位置
に、導電性材料からなる導電片(導電性部材)441,
442,443が取着されている。
【0140】
【0135】また、弾性部材454の振動片470と反
対側には予圧部材460が取着されている。予圧部材4
60はホルダ一420に固着されている。
【0141】
【0136】予圧部材460はネジ等の適当な抑圧手段
480が取り付けられており、この抑圧手段480は、
弾性部材454を介して前記振動片470に予圧を印加
する。これにより、振動片470と柱状可動子400は
確実に接触するようになっている。
【0142】
【0137】導電片441,442,443は、各々磁
極421,422,423の位置に弾性部材451,4
52,453,454の弾性力を利用して挟み込まれ
る。
【0143】
【0138】即ち、振動片470は前記各弾性部材45
1,452,453,454によって(少なくとも可動
子の移動方向および当該移動方向に直交する方向に関し
て)弾性的に支持されており、導電片441,442,
443を動かす事により、振動片470は前記弾性部材
が弾性変形する分だけ当該方向に移動するようになって
いる。
【0144】
【0139】図に示した振動片470の状態のうち、実
線で示すものは振動片470の中立位置を、一点鎖線で
示すものは導電片441を磁極421から離間する方向
に変位させた時の状態を、二点鎖線で示すものは導電片
443を磁極423から離間させる方向に変位させた時
の状態をそれぞれ表わしている。
【0145】
【0140】次に、上記構成を有する本実施形態に係る
リニアアクチュエータ装置の動作機序について図16お
よび図17を参照して説明する。
【0146】
【0141】コイル431には対応する磁極421に、
図17(a)において実線で示す様に、立ち上がり(0
→NcD)が急峻で立ち下がり(Nc1→0)が緩やか
な、周期的な磁界が形成されるような電流が付与され
る。このような磁界を形成するには概ねこれに比例した
電流をコイル431に付与すれば良い。
【0147】
【0142】この様な磁界が導電片441を横切ると、
導電片441の表面に磁界の変化率に比例した誘導磁界
(磁極)が形成される。この誘導磁界を、図17(a)
において破線で示す。
【0148】
【0143】即ちコイル431による磁界が直線的に立
ち上がる部分では、導電片441にはコイルと同極の磁
極の強さ(Ne1)が現れ、立ち下がる部分では導電片
441にコイル431とは反対極の磁極の強さ(Se
1)が現れる。
【0149】
【0144】コイル431による磁界の変化率の関係か
ら、|Ne1|>>|Se1|となるから、コイル43
1への付与電流の立ち上がり時には、磁極421と導電
片441の間には反発力が作用する。、従ってこの導電
片441は弾性部材451,452を圧縮し、弾性部材
453,454をせん断方向に変形させながら、可動子
400に当接する振動片470を図16の実線で示す状
態から図16の一点鎖線で示す状態に移動させる。
【0150】
【0145】この時、上記振動片470と柱状可動子4
40は予圧手段480により充分な抑圧力で接している
から、振動片が移動する量だけ柱状可動子も図16右方
向に移動する。
【0151】
【0146】次にコイル431による磁極の強さが頂点
に達するタイミングで、コイル433への通電を調節
し、コイル433による磁界を急峻に立ち上げ(0→N
c3)、その後援やかに立ち下げる(Nc3→0)と
(図17(b)実線参照)、導電片453に誘導される
磁界(図17(b)破線参照)により、上記と同様の過
程を経て振動片470は図16上方向に移動し(可動子
200から離間し)、図16一点鎖線の状態から二点鎖
線の状態に移る。
【0152】
【0147】この遷移過程で、上記振動片470は柱状
可動子440から離れるので、この柱状可動子440を
支持している弾性部材の復元力により、振動片470は
図16実線位置に戻る。
【0153】
【0148】この時、柱状可動子440は先に移動した
位置に残されるので、コイル431および433による
上述した磁界形成を繰り返すことにより、柱状可動子4
40は図16右方向に移動し続ける。
【0154】
【0149】この柱状可動子440を図16左方向に移
動させるには、コイル431に電流を付与する代わりに
コイル432に上記と同じパターンの電流を付与すれば
良い。
【0155】
【0150】また本例では、主にN極の磁極を用いてい
るが(図17参照)、各コイルによる磁界(磁極)形成
のタイミングさえ合っていれば任意の極性で構わない。
【0156】
【0151】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、単純なリング形状のコイルをリニアアクチュエータ
装置の外周近傍に配設できる、また、装置の変形部に素
材としての弾性変形を利用できる弾性部材を用いている
ため、特別な可動要素の導入の必要がない。
【0157】
【0152】このため、リニアアクチュエータ装置全体
を微小化する際の困難さを大幅に排除できる。また弾性
部材の調整も組立後に押しネジ等(抑圧手段)の簡単な
機構で行えるので、組立の容易さも同時に実現できる。
【0158】
【0153】更に、リニアアクチュエータ装置の非動作
時には、可動子が弾性部材の弾性力により固定されるの
で、外部からのエネルギー供給無しに可動子の位置保持
機能を実現することができる。
【0159】
【0154】[第8の実施形態]次に、第8の実施形態
について図18を参照して説明する。
【0160】
【0155】本実施形態に係るリニアアクチュエータ装
置は、同一の電磁石4個ずつからなる2組の電磁石群5
00A、500Bと、各電磁石群の磁極に取着され、内
部が磁性流体で満たされた変形自在の袋部材531,5
32と、この袋部材の下部に配設された可動子540で
構成される。
【0161】
【0156】電磁石群500A、500Bを構成する各
電磁石は、第4の実施形態において説明したた電磁石C
1,C2,C3,C4と全く同一のものである。袋部材
531,532は、各電磁石C1,C2,C3,C4の
鉄心(コア)の端面に取り付けられている。
【0162】
【0157】電磁石群が作動していない状態では、袋部
材531、532は内部の磁性流体が一様に広がった状
態でバランスしており、この時、袋部材531,532
と前記可動子540との間には間隙が形成されるように
設定されている(図18(a)に示す袋部材532参
照)。
【0163】
【0158】次に、可動子540を駆動する代表的な機
序を図18(a)(b)(c)を用いて説明する。
【0164】
【0159】リニアアクチュエータ装置が、図18
(a)に示す状態にある場合、上記2組の電磁石群50
0A、500Bのうち電磁石群500Bの各電磁石C
1,C2,C3,C4は電流が付与されていない状態に
あり、磁性流体を収めた袋部材532と可動子540と
の間には空隙が生じ、可動子540には電磁石および袋
部材532の影響が及ぼされることはない。
【0165】
【0160】一方、電磁石群500Aでは、並設された
各々の電磁石C1,C2,C3,C4のうち、互いに隣
接する2つの電磁石に、並んでいる順に順次電流が付与
される。
【0166】
【0161】図18(a)に示す状態では、電磁石C
1,C2(のコイル)への電流付与により、これら2つ
の電磁石の磁極端を中心に磁界が発生しているので、袋
部材531内部の磁性流体は当該部位周辺に集中し、従
ってこの部分の袋部材531が可動子540に押し付け
られる。
【0167】
【0162】次の図18(b)に示す状態では、電磁石
C1の電流が切られ、電磁石C3に電流が付与される。
この時、電磁石C2への電流は付与されたままなので、
磁性流体はこの電磁石C2の磁界を中心に、電磁石C1
周辺から電磁石C3周辺に移動する。
【0168】
【0163】ここで袋部材531(532)の可動子5
40に接触する部分の内部には、複数個のフィン550
が立設されているので、磁性流体が移動する際このフィ
ン550がある部分では袋部材531は可動子540に
対して並進的な運動を行おうするため、袋部材531と
可動子540の間に適当な摩擦があれば可動子は図17
右方向に移動することになる。
【0169】
【0164】次に同様な電磁石の通電切替を、電磁石C
2と電磁石C4の間で行うと、可動子540は更に図1
8右方向に移動する(本過程の図18への記載は省略し
た)。
【0170】
【0165】更に可動子540を同方向に移動するに
は、電磁石C4の通電を切り電磁石C1への通電を行う
必要があるが、この時には磁性流体がC4部分からC1
部分に大きく移動するので、場合によっては可動子54
0が図18左方向に、即ち所望の移動方向とは逆向きの
力を受ける可能性がある。
【0171】
【0166】従って本例では、図18(c)に示すよう
に、もう一方の電磁石群500Bの適当な電磁石(本側
ではC2,C3)を付勢して袋部材532内の磁性流体
を当該部位(電磁石C2,C3の直下)周辺に集めて可
動子540を押し付ける事により、可動子540の逆行
を防いでいる。可動子540を反対方向に駆動する時に
は、各電磁石を付勢(通電)する順序を逆にすればよ
い。
【0172】
【0167】なお、本図においては、説明の理解を容易
にするため、可動子540の端部が電磁石群500Aか
ら電磁石群500Bに向かって移動する様に描いてある
が、実際には可動子540は初期状態から両電磁石群を
カバーするように、すなわち図18の左右方向全域にわ
たって延在している。
【0173】
【0168】また、本実施形態においては、可動子の逆
行の防止機能を2組の電磁石群の一方を用いて実現した
が、他の適当な可動子固定手段が用意されている場合に
は、袋部材による押し付け固定を行う必要はなく、電磁
石群も1つだけ用意されていればよい。
【0174】
【0169】また、本実施形態においては、電磁石群を
4つの電磁石で構成したが、数はこの値に限定されるも
のではない。
【0175】
【0170】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、可動子が接触的に駆動されるので、滑りを低減した
確実な可動子の移動を実現できる。
【0176】
【0171】更に、磁性流体を収めた袋部材は変形容易
なので可動子の形状を比較的自由に形成できる他、衝撃
緩衝効果もあるので過大な外力が印加されても可動子が
大きく損傷する事はない。
【0177】
【0172】
【0178】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
各構成要素を過小サイズにすることなく部品数の低減が
できるので、組立容易性および高信頼性を確保でき、ま
た同時に充分な駆動力伝達効率と使用時の調整管理の容
易さを達成したリニアアクチュエータを提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるリニアアクチュエータの第1の実
施形態を示す横断面図。
【図2】図1におけるII-II断面を示す図。
【図3】第1の実施形態におけるコイルへの付与電流と
導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図4】本発明によるリニアアクチュエータの第2の実
施形態を示す図であって、図4(a)は平面図、図4
(b)(c)(d)は図4(a)におけるB−B断面、
C−C断面およびD−D断面をそれぞれ示す図。
【図5】本発明によるリニアアクチュエータの第3の実
施形態を示す図であって、図5(a)は平面図、図5
(b)(c)(d)は図5(a)におけるB−B断面、
C−C断面およびD−D断面をそれぞれ示す図。
【図6】第3の実施形態におけるコイルへの付与電流と
導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図7】本発明によるリニアアクチュエータの第4の実
施形態を示す図であって、図7(a)は側面図、図7
(b)は図7(a)におけるB−B断面を示す図。
【図8】第4の実施形態におけるコイルへの付与電流と
導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図9】図8に示す極性の変化を表として示した図。
【図10】本発明によるリニアアクチュエータの第5の
実施形態を示す図であって、図10(a)は図10
(b)におけるA−A断面を示す図、図10(b)は図
10(a)におけるB−B断面を示す図。
【図11】第5の実施形態において、各磁極における磁
極の強さの変化を示す図。
【図12】本発明によるリニアアクチュエータの第6の
実施形態を示す図であって、図12(a)は側面図、図
12(b)は図12(a)におけるB−B断面を示す
図。
【図13】第6の実施形態において、永久磁石の取着位
置を変えた構成例を示す図。
【図14】第6の実施形態におけるコイルへの付与電流
と導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図15】図14に示す極性の変化を表として示した
図。
【図16】本発明によるリニアアクチュエータの第7の
実施形態を示す側面図。
【図17】第7の実施形態におけるコイルへの付与電流
と導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図18】本発明によるリニアアクチュエータの第8の
実施形態を示す横断面図。
【図19】従来のリニアアクチュエータの第1の例を示
す図。
【図20】従来のリニアアクチュエータの第2の例を示
す図。
【符号の説明】
11、12、51a、51b、52a、52b 磁界形
成手段を構成する永久磁石 22、46、71a〜71d、76、91、107a〜
107d、341〜344、304a〜304d、43
1〜433 磁界形成手段を構成するコイル 30、81、108、202、204、441、44
2、443 導電性部材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年9月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 リニアアクチュエータ装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は略直線的な駆動力を
発生し、微小機器等への適用に適したリニアクチュエー
タ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、小形化された機械の機構部を
動かすためのリニアクチュエータ装置が広く研究されて
おり、以下にその従来例を示す。
【0003】図17に示す第1の従来例はボールネジ機
構を利用するものであり、この従来例においては、ベー
ス802上に配置された軸受803,804により超精
密なボールネジ等の送りネジ801の両端が支持され、
送りネジ801の片端には減速機とエンコーダが内蔵さ
れたサーボモータ805が取り付けられている。送りネ
ジ801には送りナット806が係合し、この送りナッ
ト806の上に位置決め対象である移動テーブル807
が取り付けられている。そしてサーボモータ805で送
りネジ801を回転させることにより、移動テーブル8
07が送りネジ801の回転角に比例した量の直線移動
を行うようになっている。
【0004】図18に示す第2の従来例は、金属ブロッ
クに発生する進行波を利用してこの金属ブロックに当接
する可動子を移動させるものであり、この従来例におい
ては、上部の2カ所が互いに90度の角度を成す様に切
り欠かれた金属ブロック810の切り欠き面811,8
12には、積層された圧電素子813.814が取付ら
れている。金属ブロック810のU字型に形成された2
つの端面815,816は、上記切り欠き面811,8
12に対して45度の角度を成しており、これら端面8
15、816は可動子817を、図示されない押圧機構
による比較的大きい押圧力818で押し付けている。そ
して2つの圧電素子813,814を互いに90度の位
相差をもって数+kHzから数百kHzで駆動すると、
金属ブロック810の端面815,816には進行波が
形成され、この進行波により可動子817は直線的に移
動する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、この
ようなリニアクチュエータ装置においては、寸法をミリ
サイズにまで縮減する大幅な小形化の要求がより高くな
ってきているが、上述した従来のリニアクチュエータ装
置では以下の様な理由により、これらの要求に応えるに
は一定の限界がある。
【0006】第1の従来例のように直動機構を用いてモ
ータの回転運動を直線運動に変換してリニア駆動を行う
方式においては、装置全体の小型化を図るためには各構
成要素の小形化を図る必要がある。しかし、一般に、充
分な出力を確保しつつ回転モータを小形化するにはモー
タをより高回転させる必要があるため、実用的な速度お
よびトルクを実現するためには、直動機構と回転モータ
の間に新たな減速機構を追加する必要が生ずる。
【0007】この場合、充分な減速比を確保するには減
速機構を構成する歯車列の段数を増やす必要があるが、
歯車列の段数の増大は装置全体のサイズの増大につなが
ることになる。さらに、歯車列の段数を増すことにより
歯車間での摩擦損失が増大する。この摩擦損失は、装置
のサイズが小さくなるほど駆動力伝達効率低下に及ぼす
影響が大きくなる。すなわち、モータの小型化による装
置の小型化には限界がある。
【0008】また、小形化に伴う摩擦損失に起因する伝
達効率の低下は、直動機構を小形化する際にも発生する
ため、全体的な伝達効率も低下する。加えて、小形化し
た状態で必要充分な位置決め精度を確保しようとすると
送りネジや送りナットのモジュールを小さくしたりボー
ルネジ等ガタが少ないネジを採用するなどの機構的な高
精度化に加え、サーボモータのエンコーダの高分解能化
やモータ駆動に関する制御の高精度化が必要となるた
め、これらを同時に実現して小形化を図るにはサイズ的
に制約がある。
【0009】また、上述した様に、小形化する際に新た
な機構を増設する必要があると、可動部品数が増える事
による信頼性の低下や調整の難しさなどが、新たな問題
として発生するので、リニアクチュェータ装置全体とし
ての性能が低下するという問題が生じる。
【0010】また、第2の従来例に示したリニアクチュ
エータ装置においては、駆動力の発生は主に材料自体の
微小変形に起因し、機構的な可動部品がないため、ある
程度のサイズまで小形化する場合には、信頼性の低下は
比較的少なくて済む。
【0011】しかし、この従来例においては、駆動力を
発生する部材と、これの伝達により動かされる可動子と
の間に、比較的大きい適正な予圧を定常的に付与してお
く必要があるが、構造的にこれに供する機構の占有体積
を小さくする事が困難である。また、積層圧電素子の小
形化に伴う変位量の低下により、この微小変位を拡大す
る機構の装着も余儀なくされる為、このこともリニアア
クチュエータ全体のサイズ小形化の障害となる。
【0012】更に、これらの予圧機構や変位拡大機構
は、圧力管理や位置管理を厳密に行う必要があるので、
サイズの小形化に伴い調整が難しくなり、結果として、
やはり、リニアクチュエータ装置全体としての性能が低
下するという問題が生じる。以上述べた様に、従来の小
形リニアアクチュエータ装置においては、更に小形化を
図ろうとする場合、充分な駆動力伝達効率を有し、同時
に、使用する際の適正な調整管理を達成できる様なもの
は得られていないのが現状である。
【0013】本発明は、上記実状に鑑み為されたもので
あり、リニアアクチュエータ装置全体の小形化、および
充分な駆動力伝達効率と使用時の調整管理の容易さを、
同時に達成することができるリニアアクチュエータ装置
を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、リニアアクチュエータ装置において、所
定方向に移動自在に設けられた導電性部材と、通電状態
に対応して変化する磁界を形成し、形成する磁界を変化
させることにより前記導電性部材の表面に磁極を誘導す
る第1の磁界形成手段と、前記導電性部材に誘導される
磁極を吸引若しくは反発する磁極を形成する第2の磁界
形成手段と、を備えたことを特徴とする。また、本発明
は、リニアアクチュエータ装置において、所定方向に移
動自在に設けられた導電性部材と、通電状態に対応して
変化する磁界および磁極を形成するとともに形成する磁
界を変化させることにより前記導電性部材の表面に磁極
を誘導する、前記導電性部材の移動方向に沿って複数設
けられた磁界形成手段と、を備え、前記複数の磁界形成
手段のうち一の磁界形成手段により前記導電性部材の表
面に誘導された磁極を、前記一の磁界形成手段に隣接す
る他の磁界形成手段の磁極により吸引することを特徴と
する。
【0015】また、本発明は、リニアアクチュエータ装
置において、円筒形状を有し、その軸線方向に沿って移
動可能に設けられた、導電性部材を含み若しくは導電性
部材および高透磁率材料からなる部材の積層構造を含む
可動子と、前記可動子と同軸的かつ前記可動子の軸線方
向に沿って並設され、通電状態に対応して変化する磁界
を形成するとともに、形成する磁界を変化させることに
より前記可動子を構成する導電性部材の表面に磁極を誘
導するコイルと、前記各コイルを保持し、互いに隣接す
るコイルが形成する磁路がともに通過する半径方向の磁
極を有する、高透磁率材料からなる円筒形状部材と、前
記各コイルに、同一の周期で、かつ各々のコイル毎に所
定の位相と振幅に設定された電流を付与する通電制御部
とを備えたことを特徴とする。
【0016】また、本発明は、リニアアクチュエータ装
置において、円筒形状を有し、その軸線方向に沿って移
動可能に設けられた、導電性部材を含み若しくは導電性
部材および高透磁率材料からなる部材の積層構造を含む
可動子と、前記可動子と同軸的かつ前記可動子の軸線方
向に沿って並設され、通電状態に対応して変化する磁界
を形成するとともに、形成する磁界を変化させることに
より前記可動子を構成する導電性部材の表面に磁極を誘
導するコイルと、前記各コイルを保持し、互いに隣接す
るコイルが形成する磁路がともに通過する半径方向の磁
極を有する、高透磁率材料からなる円筒形状部材と、前
記各コイルに、同一の周期で、かつ各々のコイル毎に所
定の位相と振幅に設定された電流を付与する通電制御部
とを備えたことを特徴とする。
【0017】また、本発明はリニアアクチュエータ装置
において、第1の方向に移動可能に設けられた可動子
と、通電状態に対応して変化する磁界および磁極を形成
する第1および第2の磁界形成手段と、前記第1の磁界
形成手段により形成される磁界の変化に伴い磁極が誘導
され、この誘導された磁極と前記第1の磁界形成手段の
磁極との相互作用により第1の方向に変位する第1の導
電性部材と、前記第2の磁界形成手段により形成される
磁界の変化に伴い磁極が誘導され、この誘導された磁極
と前記第2の磁界形成手段の磁極との相互作用により前
記第1の方向と略直交する第2の方向に変位する第2の
導電性部材と、前記第1の方向および前記第1の方向と
略直交する第2の方向に関して弾性的に支持されるとと
もに、前記可動子と当接した状態で前記第1の導電性部
材の変位に従って変位して前記可動子を前記第1の方向
に駆動する可動子駆動部材とを備えたことを特徴とす
る。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。
【0019】[第1の実施形態]まず、図1乃至図3に
より第1の実施形態について説明する。図1乃至図3は
本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0020】図1に示すように、本実施形態に係るリニ
アアクチュエータ装置は、非磁性体材料製の固定子ホル
ダ2に収容された永久磁石11(第2の磁場形成手段)
および永久磁石12(第2の磁場形成手段)と、電磁石
20(第1の磁場形成手段)と、これら永久磁石11、
12および電磁石20に対向して設けられた導電性材料
からなる導電性部材30とを備えている。
【0021】導電性部材30は、リニアアクチュエータ
装置における可動子として作用するものである。導電性
部材30は、その上面31および下面32を軸受け35
等の支持部材により支持されており、これにより導電性
部材30は図1上下方向に拘束されるとともに図1左右
方向(導電性部材30の長手方向)に沿って移動自在と
なっている。なお、軸受け35は、他に適当な支承手段
が設けられている場合には、必ずしも使用する必要はな
い。
【0022】図2に示すように、永久磁石11、12
は、電磁石20を挟んで、導電性部材30の長手方向す
なわち移動方向に沿って配置されている。
【0023】また、図1に示すように、永久磁石11,
12の作用面11a,12a(可動子30に対向する
面)と電磁石20の作用面21a(電磁石20のコア2
1の可動子30に対向する面)とは概ね同一平面上に位
置している。
【0024】図1に示すように、永久磁石の11,12
の極性は互いに逆向きとなっており、図1の場合、永久
磁石11の作用面11a側の極性がS、永久磁石12の
作用面12a側の極性がNとなっている。
【0025】また、図1に示すように、電磁石20は、
円柱状のコア(鉄心)21と、コア21の外周に巻かれ
たコイル22とから構成されている。
【0026】なお、電磁石20のコア21に電磁軟鉄等
を使用する場合には、磁束が短絡しない様に、電磁石2
0のコア21と永久磁石11,12とが互いに接触しな
い様に配慮される。図1および図2では、コア21の外
周に巻かれたコイル22の(半径方向の)厚み分だけ、
コア21と永久磁石11,12とが離間するようになっ
ている。
【0027】電磁石20には、コイル22への通電を制
御する図示しない通電制御装置が接続されている。
【0028】次に、上記構成を有する本実施形態の作用
について説明する。
【0029】コイル22には、図示されない通電制御装
置(通電制御部)により、図3(a)に示すような立ち
上がり時TNと立ち下がり時Tsとの継続時間が異なる
電流が周期的に付与される。
【0030】ここで、図1に示すように、電磁石20の
コイル22に、コア21の作用面21a側がN極となる
ように電流を付与したとする。
【0031】この場合、電磁石20により形成される磁
界は、コイル22に付与される電流変化に従って変化す
る。この磁界変化の変化率に応じて、電磁石20に対向
して設けられた導電材料製の導電性部材30の表面は誘
導電流が生じ、これにより、導電性部材30には電磁石
20の極性に対向する磁界が発生する。
【0032】ここで、電磁石20により形成される磁界
は値(強さ)が異なるだけで、全周期にわたって方向は
同一であるが、上述した様に電流の継続時間、即ち磁界
の値の変化の割合が立ち上がり時TNと立ち下がり時T
sでは異なるため、導電性部材30に発生する磁界の極
性は、立ち上がり時TNと立ち下がり時Tsとで、方向
および値(強さ)の両方が異なることになる。
【0033】即ち、コイル22への付与電流の変化が急
峻な立ち上がり時TNにおいては、電磁石20の極性に
対向する強い磁界nNが導電性部材30に発生し、コイ
ル22への付与電流の変化が緩やかな立ち下がり時Ts
においては、電磁石20による磁界と同方向の弱い磁界
Ssが発生する(図3(b)参照)。
【0034】導電性部材30に上記の強い磁界nNが誘
導されると、導電性部材30のうち磁界が誘導された部
分(この部分に磁極が形成される)は、永久磁石11
(の磁極)との間に吸引力が働き、永久磁石12(の磁
極)との間には反発力が働くので、立ち上がり時TNの
間、導電性部材30は図1左方向に移動することにな
る。
【0035】立ち上がり時TNに続く立ち下がり時Ts
の間は、導電性部材30と永久磁石11,12との間の
吸引力と反発力の関係が逆転する。立ち下がり時Tsの
間には、図3に示すように導電性部材30には弱い誘導
磁界Ssしか発生しないので、導電性部材30が図1右
方向に移動することはない。
【0036】また、仮に導電性部材30が移動したとし
ても、その量は立ち上がり時TNの移動量に比べて小さ
い。
【0037】従って、いずれにせよ、導電性部材30
は、1サイクル(立ち上がりおよび立ち下がり)のコイ
ル22への通電により、図1左方向に移動することとな
る。
【0038】なお、導電性部材30が立ち下がり時Ts
に静止しているか多少なりとも動くかについては、立ち
下がり時Tsに発生する導電性部材30と永久磁石1
1,12との間の吸引力および反発力による導電性部材
30の駆動力と、導電性部材30および導電性部材30
により駆動される部材からなる系の全体の摩擦力とのバ
ランスに依存する。
【0039】また、上記説明とは逆方向(図1右方向)
に導電性部材30を移動させたい場合には、TNとTs
の経過時間の関係を逆にする(TN間における電流変化
を緩やかに、Ts間における電流変化を急峻に)か、或
いは経過時間の関係は元のままでコイル22に付与する
電流の向きを逆にすれば良い。
【0040】図1及び図2に示したものは、本発明に係
るリニアアクチュエータ装置の基本的な構成であるが、
永久磁石および電磁石の磁路は開ループとなっている
為、可動子の駆動力(アクチュエータの発生力)が比較
的小さくてもよい場合には、アクチュエータ全体の小型
化および構造の簡素化の観点から好適である。アクチュ
エータの発生力を更に大きくしたい場合には、磁路が閉
ループとなるようにアクチュエータを構成すればよい。
【0041】[第2の実施形態]次に、第2の実施形態
について図4により説明する。
【0042】図4に示す本実施形態に係るリニアアクチ
ュエータ装置は、永久磁石および電磁石が閉ループの磁
路(閉磁路)を形成するように配置されたいわば第1の
実施形態の変形例に相当するものであり、図4におい
て、図1及び図2により説明した部材と同一の役割を果
たす部材には、同一符号が付されている。
【0043】図4に示すように、リニアアクチュエータ
装置には、高透磁率材料製例えば電磁軟鉄製のヨーク4
1、42、43が、導電性部材30の移動方向に沿って
並設されている。これらヨーク41、42、43は固定
子ホルダ3に取り付けられている。
【0044】これらヨークのうち、両端のヨーク41、
42には、永久磁石51a、51bおよび永久磁石52
a、52bがそれぞれ取着(取付られている)されてい
る。図4(c)に示すように、ヨーク42はループ状に
形成された高透磁率材料の一部を切り欠くことにより形
成されており、ヨーク42の切り欠き面42a、42b
に永久磁石52a、52bがそれぞれ取り付けられてい
る。
【0045】ヨーク42に取り付けられた永久磁石52
a、52bの作用面54a,54b(導電性部材30に
対向する面)側の極性は、互いに異なっている(永久磁
石52aの作用面54a側がN極、永久磁石52bの作
用面54b側がS極)。このような構成を採ることによ
り、これら永久磁石52a、52bおよびヨーク42に
より、空隙45を有する磁気回路(閉ループの磁路、閉
磁路、図4(c)矢印参照)が形成される。
【0046】なお、ヨーク41側の構成は、図4(b)
に示すように、永久磁石51a、51bの極性が、永久
磁石52a、52bの極性と反対となっている点のみが
ヨーク42側の構成と異なり、これにより、ヨーク41
側に形成される閉磁路の向きがヨーク42側に形成され
る閉磁路の向きと異なる。
【0047】一方、図4(d)に示すように、ヨーク4
1,42に挟まれた位置にある中央のヨーク43は、導
電性部材30に向けて突出する凸部43a、43bを有
する。 これら凸部43a、43bにはそれぞれ、コイ
ル46、46が巻かれており、これによりヨーク43を
コアとする電磁石が形成されている。コイル46、46
には図示しない通電制御装置が接続されている。
【0048】ヨーク43は、ヨーク41、42と同一の
形状を有しており、ヨーク43は、凸部43a、43b
間に形成される空隙45aを有する磁気回路を形成す
る。すなわち、通電制御装置によりコイル46に通電す
ることにより形成される磁路も、図4(d)に示すよう
に閉磁路(図4(d)矢印参照)となる。
【0049】導電性部材30は、上述した各ヨーク4
1、42、43により形成される各磁気回路の空隙4
5、45aを横切るように配置されている。
【0050】以上説明したヨーク43およびコイル46
により第1の磁界形成手段が構成され、ヨーク41およ
び永久磁石51a、51bにより(一側の)第2の磁界
形成手段が、ヨーク42および永久磁石52a、52b
により(他側の)第2の磁界形成手段が構成される。
【0051】図4に示すリニアアクチュエータ装置にお
いても、コイル46に付与される電流パターンと導電性
部材30の動作機序は、先に図3を用いて説明した内容
と同一である。 しかしながら本例の場合には、永久磁
石および電磁石(ここでいう電磁石とはコアとして機能
するヨーク43とコイル46とからなるものをいう)に
より形成される磁界が、導電性部材30が位置するヨー
ク41,42,43の空隙部に集中するように形成され
る。このため、図1および図2で説明した開磁路的な構
成例に比べて、強い力で導電性部材30を移動させるこ
とができ、また、コイル46に付与する電流の値を小さ
くしても導電性部材30を駆動することが可能となる。
【0052】[第3の実施形態]次に図5および図6に
より第3の実施の形態について説明する。第2の実施の
形態は、第1の実施の形態に対して、第2の磁界形成手
段を構成する永久磁石を電磁石に置換した点が主な相違
点となっている。第2の実施の形態において第1の実施
形態と同一部分については同一符号を付し、重複する説
明は省略する。
【0053】図5に示すように、固定子ホルダ3には高
透磁率材料からなる3つのヨーク61、62、63が取
り付けられており、これらヨークのうち中央のヨーク6
3は、図4に示した中央のヨーク43と同一のものであ
り、ヨーク63に取り付けられるコイル76も図4に示
したコイル46と同一のものである。
【0054】中央のヨーク63の両側には、互いに同一
形状を有するヨーク61、62が設けられている。ヨー
ク61、62は、それぞれ二重コの字形の形状を有して
いる。
【0055】このうちヨーク61は、導電性部材30の
上面31側において導電性部材30に向けて突出する凸
部61a,61bと、導電性部材30の下面32側にお
いて導電性部材30に向けて突出する凸部61c,61
dを有している。
【0056】各凸部61a,61b,61c,61dに
は、それぞれコイル71a,71b,71c,71dが
巻き付けられている。
【0057】凸部61aと凸部61cとの間、および凸
部61bと凸部61dとの間には、空隙66、67が形
成されており、これによりヨーク61に空隙66を有す
る磁気回路B1と、空隙67を有する磁気回路B2が形
成されるようになっている(図5(c)矢印参照)。
【0058】なお、ヨーク62の形状は、ヨーク61の
形状と同一であり、各凸部にそれぞれコイルが取り付け
られる点も同一である。
【0059】導電性部材30は、図5(d)に示すよう
に、中央のヨーク63の空隙68の間に位置するように
なっている。また、導電性部材30は、端のヨーク61
の空隙66および67内に位置しないように、かつ空隙
66と空隙67の間において各凸部61a,61b,6
1c,61dから等しい距離に位置している。言い換え
れば、導電性部材30は、空隙66と空隙67に近接し
つつ、空隙66と空隙67の外に位置している。
【0060】以上説明した各構成要素のうち、中央のヨ
ーク63およびこのヨーク63の各凸部に巻き付けられ
たコイルにより第1の磁界形成手段が構成される。ま
た、両端のヨーク61、62およびこれらヨーク61、
62の各凸部にそれぞれ巻き付けられたコイルにより一
組の(一側および他側の)第2の磁界形成手段がそれぞ
れ構成される。
【0061】次に、上記構成を有する本実施形態の作用
について説明する。
【0062】図示しない通電制御部により、各コイルに
通電することにより、各ヨークには各々の空隙を横切る
磁界が形成される。
【0063】両端の二重コの字形のヨーク61、62の
磁界は、図5(b)に示すように、互いに逆向きに設定
される。この両側のヨーク61、62に巻かれたコイル
に、対応するヨークの空隙側の端面が図5(b)に示し
た極性となる様な直流電流を付与し、中央のヨーク63
に巻かれたコイル76に図3に示したパターンの電流を
付与すれば、導電性部材30すなわち可動子は図5
(a)左方向に移動する。なお、両側のヨーク61、6
2に巻かれたコイルに直流電流を付与する場合、定常的
な電力消費が発生するが、これを避ける為には中央部ヨ
ークが付勢された時のみ当該電流を付与してやれば良
い。
【0064】この時、概ねステップ的に電流が付勢され
るので導電性部材30上には両側のヨーク61、62に
よる誘導磁界が発生するおそれがある。しかし、本実施
形態においては、前述したように、両側ヨーク61、6
2の凸部の端面と可動子(導電性部材30)を対向させ
ない様な配置をとり、上述した危険性を回避している。
【0065】勿論、直流電流による電力消費があっても
よけれぱ、可動子(導電性部材)30と両側ヨーク6
1、62の凸部の空隙側端面(作用面)を対向させて構
わず、ヨーク形状も本例の二重コの字形ではなく、図4
の永久磁石部を電磁石に変更した一重のコの字形状とし
てもよい。すなわち両側の2つの磁界形成手段を、中央
の磁界形成手段と同一の構成(本実施形態の中央ヨーク
63およびコイル76の構成と同一)としてもよい。
【0066】また図5に示す構成を採れば、上述した図
3の様な三角波の電流付勢ではなく、全てのコイルに位
相の異なる正弦波を付与しても同様の作用を得ることが
できる。
【0067】図6に正弦波電流による駆動方式の一例を
示す。中央ヨーク63のコイルに付与される電流を正弦
波とすれば、対向する導電性部材30(可動子)上には
位相が90度進んだ誘導磁界が発生する。
【0068】この時、図5(a)左側の二重コの字形ヨ
ーク62の各コイルには中央ヨーク63のコイル76へ
の付与電流に比べ位相が90度遅れた電流を、図5
(a)右側の二重コの字形ヨーク61のコイルには中央
コイル76への付与電流に比べ位相が90度進んだ電流
を付与すれば、これら両側のヨーク61、62には対応
するコイルに供給される電流と同相の磁界(磁極)が発
生するので(図6(c)(d)参照)、中央ヨーク63
に巻かれたコイルによって誘導された磁界(磁極)との
吸引および反発作用で、導電性部材30(可動子)全体
は図5(a)左方向に移動する。
【0069】この様な駆動方式を採ることにより、図3
に記した三角波による駆動方式と比べ、より連続的な導
電性部材30の移動が可能であり、また両側のヨーク6
1、62は二重コの字形状であるから導電性部材30上
に誘導磁界が発生する心配もない。
【0070】以上説明したように、第1乃至第3の実施
形態によれば、機構的な可動要素は可動子(導電性部材
30)の支承機構(軸受け35)のみに限定でき、この
支承機構も、通常、本リニアアクチュエータ装置が適用
されるシステムの一部に組み込まれることを考えれば、
駆動力を発生するのに必要な機構は全て固定されてお
り、サイズの微小化を図っても信頼性を確保することが
できる。
【0071】また、予圧機構に伴う圧力管理や、駆動面
をパターン化する様な微細加工も一切不要であることか
ら、可動部品の排除のみならず、調整要素や部品数も従
来のリニアアクチュエータに比べて大幅に低減できるの
で、小型化を図る際に非常に有利となる。
【0072】また、磁界を発生するのに永久磁石を併用
できるため(第1および第2の実施形態参照)、消費電
力の低減にも効果がある。
【0073】[第4の実施形態]次に、図7および図8
を参照して第4の実施形態について説明する。本実施形
態を説明する図7においては、機構を支承するホルダー
や軸受など駆動力の発生に直接関係しない要素、および
電流を付与する為の電源や制御要素の記載は省略してあ
る。
【0074】本実施形態において、リニアアクチュエー
タ装置は、コの字形状をした少なくとも4つの電磁石
(磁界形成手段)C1,C2,C3,C4と、高透磁率
材料(高透磁率部材)83を導電性材料(導電性部材)
81,82で挟み込んでなる(積層構造を有する)可動
子80とを備えている。
【0075】電磁石C1,C2,C3,C4は、すべて
同一の構成を有している。以下、電磁石C1を例にとっ
て電磁石の構成について説明する。
【0076】電磁石C1は、コイル91と、このコイル
が巻き付けられる高透磁率材料からなる鉄心(コア)9
2とを備えている。鉄心92は、ループ状に形成された
高透磁率部材の一部を切り欠いて形成されており、鉄心
92は、切り欠き部に対応する空隙95を挟んで互いに
対向する面である対向面(第2の作用面)93、93
と、対向面93、93と直交するとともに可動子80に
対向する面である端面(第1の作用面)94、94とを
有している。
【0077】端面94の面積は、対向面93の面積より
大きくなっている。
【0078】各電磁石C1,C2,C3,C4の端面9
4は、概ね同一平面上に位置しており、各電磁石C1,
C2,C3,C4の各端面94と可動子80との距離は
互いに等しくなっている。各電磁石C1,C2,C3,
C4は、可動子80の移動方向に沿って等間隔に配置さ
れている。
【0079】次に、上記構成を有する本実施形態の作用
について説明する。
【0080】各電磁石C1,C2,C3,C4の各コイ
ル91に電流を付与すると、それによる磁界は、上記電
磁石ヨーク(鉄心92)の代表軸に沿う部分(対向面9
3、93との間の空隙95に沿う部分(図7(b)矢印
A参照))と、可動子80の高透磁率部材83を通る部
分(図7(b)矢印B参照)とにより並列的に構成され
る。なお、ここで、対向面93、93の面積より端面9
4、94の面積の方が大きいことにより、形成される磁
界(磁束)の可動子80の高透磁率部材83を通る部分
を増大させることができる。
【0081】この磁界Bの磁路の途中には上述した様に
導電材部材81、82が配置されているので、上記磁界
Bに時間変化がある場合、その変化率に応じた誘導電流
が導電材部材81、82に生じ、これに伴い導電材部材
81、82の表面には、対向面93、93に生じる磁極
と対向する(誘導電流による)誘導磁極が発生する。図
8には、各電磁石C1,C2,C3,C4のコイル91
に互いに90度づつ位相がシフトした正弦波電流を付与
する際の各電磁石端面に生じる磁極の強さ(図8におい
て実線で示す)と、各電磁石C1,C2,C3,C4の
端面94に対向する可動子80の導電性部材に誘導され
る磁極の強さ(図8において破線で示す)との関係を記
す。
【0082】図8に示すように、各電磁石C1,C2,
C3,C4のコイル91に付与される電流により各鉄心
の端面94に形成される磁極の強さは、当該端面94に
対向する可動子80の導電性部材81に誘導される磁極
の強さより位相が90度進んでいるが、上述したよう
に、電磁石への付与電流も隣同士で90度づつシフトし
ているので、4つの電磁石C1,C2,C3,C4のう
ちある電磁石(例えばC3)により可動子80に誘導さ
れる磁極は、これに隣接する電磁石(例えばC2、C
4)への付与電流により端面94に形成される磁極の強
さに対して、位相差が0度或いは位相差180度の極性
をとる。
【0083】例えば、図8の時刻3tの場合、電磁石C
2により可動子80に誘導される磁磁極はS極方向の最
大値(Se)をとるが、同時刻における隣接する電磁石
の付与電流による磁極は、C1の磁極がS極方向の最大
値(Sp)、C3の磁極がN極方向の最大値(np)と
なっている(図9も合わせて参照)。
【0084】このため、電磁石C2により可動子80の
うち電磁石C2に対向する部位に誘導される磁極と、電
磁石C1の端面94に形成される磁極との間には磁気的
な反発力が作用する。一方、電磁石C2により可動子8
0のうち電磁石C2に対向する部位に誘導される磁極
と、電磁石C3の端面94に形成される磁極との間には
磁気的な吸引力が作用する。これにより、可動子80は
図7(a)右方向への力を受ける。
【0085】上述した様に各電磁石C1,C2,C3,
C4のコイル91に付与される電流は90度ずつの位相
差が設けられているので、可動子80のうち各電磁石に
対向する面(部位)に誘導される磁界も、図8に示すよ
うに、進行波的な様相を呈する。
【0086】即ち、上で述べた可動子80に誘導される
磁極には、付与電流により各電磁石C1,C2,C3,
C4の端面94に形成される磁極により、各時点で図7
(a)右方向への力が作用することになり、結果として
可動子80は紙面右方向に向かって移動する。
【0087】なお、可動子80を図7(a)左方向に移
動させたい時には、電流付与時の位相差の順序を逆にす
れば良い。
【0088】[第5の実施形態]次に、図10および図
11を参照して第5の実施形態について説明する。
【0089】第5の実施形態は、リニアアクチュエータ
装置全体のサイズの微小化を図る為、第4の実施形態に
おける各磁場形成手段を一体化したものに相当し、動作
原理は第4の実施形態と略同一である。
【0090】図10に示すように、リニアアクチュエー
タ装置は、高透磁率材料からなる円筒状部材100(ヨ
ークまたは鉄心に相当)を有している。この円筒状部材
100の内周面101側には、円筒状部材100の軸線
方向に沿って等間隔に形成された円周方向に延びる溝1
02が形成され、この溝底部にはそれぞれ円筒状部材1
00と同軸に設けられたリング状(円筒状)コイル10
7a、107b、107c、107dが設けられてい
る。コイルを円筒状部材100と同軸のリング状とする
ことによりコイルを大きくすることができ、これにより
数mmサイズのリニアアクチュエータ装置を製作する際
の、コイルの巻き易さが向上する(第4の実施形態を比
較して参照)。
【0091】円筒状部材100の内周面101側には、
溝102の開口部を狭めるように溝102に向けて円筒
状部材100の軸線方向に向かって延びる凸部103が
形成されている。
【0092】そして、溝102により仕切られた円筒状
部材100の内周面101の各領域101aが、前述し
た第4の実施形態における端面94と同一の役割を果た
し、互いに対向する凸部103の対向面104が、前述
した第4の実施形態における対向面95と同一の役割を
果たすようになっている。
【0093】なお、本実施形態においては、高透磁率材
料からなる円筒状部材101の内周面側の部分のうち、
リング状の各コイル107a、107b、107c、1
07dの内周面より半径方向内側に突出する(位置す
る)部分121,122,123,124,125に、
磁極が形成されるようになっている。
【0094】従って、本実施形態においては、各部分1
22、123、124の両側に設けられた一対のコイル
により(両端の凸形状の部分121、125については
1つのコイルにより)一の磁界形成手段が構成されるこ
とになる。従って、互いに隣接する磁界形成手段はコイ
ルを共用することになる。
【0095】円筒状部材101の中空部(内部)には、
円筒状部材101と同軸に円筒状の導電性材料からなる
可動子108が設けられている。この可動子108は、
例えば滑り性の良いスペーサ109等を介して、円筒状
部材101の内周面101との間に微小隙間をもって、
円筒状部材101の軸線方向に沿って移動自在に配置さ
れている。
【0096】いま各コイルに電流を付与して図10に示
す破線方向の磁路111,112,113,114を形
成すると、高透磁率材料からなる円筒状部材101の内
周面側の部分のうちリング状の各コイル107a、10
7b、107c、107dの内周面より半径方向内側に
ある部分(磁極となる部分)121,122,123,
124,125のうち部分122,123,124には
各々磁路111+112,112+113,113+1
14で規定される磁界(磁極)が形成され、これらの位
相差は付与電流の位相差とは必ずしも一致しない。
【0097】先に図8を用いて説明したように、可動子
108の移動は、各コイル107a、107b、107
c、107dが形成する磁界変化に基づき可動子108
の外周面上に誘導される磁極と、各リング状コイル10
7a、107b、107c、107dに付与される電流
により各部分121,122,123,124,125
に生じる磁界(または磁極)との間の、吸引力と反発力
によって生じ、誘導磁界は対向する磁極による磁界と9
0度の位相差がある事から、上記の部分122,12
3,124端面に現れる合成磁界(合成磁極)111+
112,112+113,113+114も互いに90
度の位相差を有することが望ましい。
【0098】各コイル107a、107b、107c、
107dに順番に60度の位相差を付けた正弦波電流を
付与した時の、各磁極(各部分)121,122,12
3,124,125に現れる磁極の強さの変化を図11
に示す。
【0099】図11に示すように、両端の磁極121,
125の磁界131,135は、本例においては同相で
あり、磁極121,125間の各磁極122,123,
124に現れる磁界は132,133,134は、磁極
121,125間の位相差360度(すなわち同相)を
概ね4等分した位相差すなわち90度の位相差をもって
現れることがわかる(本例は厳密には90度の位相差で
はないが、コイルへの付与電流の位相差および振幅を調
整することで90度の位相差に設定することが可能であ
る)。
【0100】これらの磁界によって、上記可動子108
表面(外周面)には90度だけ位相の進んだ誘導磁極が
生じるので、第4の実施形態において述べた原理と同様
の作動原理により、磁気的な吸引・反発力によって可動
子108は軸線方向に駆動される。反対方向に駆動する
には、付与電流の位相差の符号を逆にすれば良い。
【0101】以上説明したように、第4および第5の本
実施形態によれば、永久磁石を用いないので、組立時の
取扱や磁気抵抗の決定に関わる煩雑さを回避でき、駆動
性能もコイルへの付与電流の調整により比較的容易に変
更可能である。また構成要素が減少する分だけサイズの
微小化と信頼性の向上が期待できる。
【0102】また本実施形態ではコイル、コイルを保持
する高透磁率部材、可動子が中空円筒状の構成を採って
いるが、この形状に限定されるものではない。
【0103】[第6の実施形態]次に、図12乃至図1
5を参照して第6の実施形態について説明する。
【0104】本実施形態に係るリニアアクチュエータ装
置においては、可動子200は中空円筒状の可動子ベー
ス201の2つの面上に導電性材料(導電性部材)20
2,203および204、205と高透磁率材料206
および207がそれぞれ積層された構造を採っている。
【0105】このうち導電性材料203および205は
省略しても構わず、上記導電性材料202、204ある
いは高透磁率部材206、207が充分な強度を有して
いる場合には、これらを可動子ベース201として兼用
することもできる。
【0106】本実施形態においては、可動子200の互
いに対向する2面の外側に電磁軟鉄からなる鉄心(ヨー
ク)331,332,333,334,303a,30
3b,303c,303dと各鉄心それぞれに巻かれた
コイル341,342,343,344,304a,3
04b,304c,304dからそれぞれ構成された電
磁石C1,C2,C3,C4,Ca,Cb,Cc,Cd
が、可動子200の進行方向(図12(a)左右方向)
に沿って配置されている。
【0107】各鉄心331,332,333,334,
303a,303b,303c,303dの可動子20
0と対向する端面は、可動子の外面と略平行となってい
る。各鉄心の可動子200と対向する端面、すなわち各
電磁石の磁極端には、永久磁石211,221,23
1,241,2a1,2b1,2c1,2d1(21
2,222,232,242,2a2,2b2,2c
2,2d2)が取着されている。
【0108】従って、図12では、上下磁石群の間に可
動子200が浮遊している様に描かれているが、実際は
永久磁石と可動子200中の高透磁率材料206、20
7との間に生ずる磁気吸引力により、可動子200は上
または下の磁石群のいずれかの側(C1〜C4またはC
a〜Cd)に接触している。
【0109】一の電磁石に取り付けられる−組の永久磁
石(例えば211と212)は、当該永久磁石により形
成される磁路が、電磁石により形成される磁路と直列と
なるように(重なりあうように)配置されている。従っ
て、永久磁石とこの永久磁石が取り付けられる鉄心とに
より、鉄心に沿った閉磁路が形成される。
【0110】上記コイルに電流を付与することにより形
成される磁界は、図12(b)に示すように、鉄心(ヨ
ーク)、永久磁石、可動子内の高透磁率材料を経由する
閉磁路となる。
【0111】なお、コイルにより形成される磁界が比較
的弱い場合には、図13に示す様に、磁気抵抗となる永
久磁石を鉄心(ヨーク)側面に、すなわち永久磁石によ
る磁路が電磁石により鉄心に形成される磁路と略並列に
なるように配置してもよい。なお、この場合は、永久磁
石の吸引力は当該磁路が短絡的に形成されるので若干低
減する。
【0112】これらの永久磁石による可動子の吸引固定
は、電流が付与されない時、即ちリニアアクチュエータ
装置の非使用時における可動子の位置保持能力を保証す
るものである。
【0113】次に、上記構成を有する本実施形態に係る
リニアアクチュエータ装置の動作機序を、図14に記し
た4組の電磁石C1,C2,C3,C4の図12(b)
左側の磁極C1L,C2L,C3L,C4Lに現れる磁
極の強さの変化を用いて説明する。
【0114】各コイルには、永久磁石により生じる磁界
と同方向の磁界が発生する様に電流を付与するが、この
時、付与される電流のパターンを、先に図3により説明
したのと同様に、立ち上がりが急峻で立ち下がりが緩や
かなパターンとすると、各電磁石C1,C2,C3,C
4には、ヨークによる誘導を無視すれば、この電流パタ
ーンに概ね比例した磁界(図14の各グラフにおける実
線参照)が発生する。図14には、電磁石C1,C2,
C3,C4の磁極の強さの最大値がSoとなる様に描い
てある。この磁界を横切る可動子200の導電性部材
(図12の202,204)には、図14の各グラフに
おいて破線で示す誘導磁極(磁界)が発生するが、この
磁極の強さの値はコイルへの付与電流の立ち上がり時に
Se、立ち下がり時にNeとなる。
【0115】導電性部材に誘導される磁極の強さは導電
性部材を横切る磁界の変化率に比例するから、本例にお
いては、|Se|>>|Ne|となる。また、コイルに
付与する電流は、隣接する電磁石毎に90度ずつの位相
差をつけてあるので、上述した磁界の変化は電磁石毎
に、図13に示す様に時間的に変化する。
【0116】図14において、Sbは永久磁石により定
常的に印加されている磁極の強さである。各電磁石によ
る磁界と、可動子上に誘導される磁界の関係を図15に
示す。
【0117】図15には、各電磁石の一方の磁極端に現
れる磁極の強さと、それに対向する可動子部分に誘導さ
れる磁極の強さが記されている。説明の簡略化の為に、
磁極端に現れる磁極の強さは値が増すに従い(S),S
+,S++,Siと記してあるが、いずれも永久磁石に
よる磁極の強さが重畳された値である。
【0118】また、図15において、可動子上の誘導磁
極(磁界)の強さはSeおよび(Ne)と記した。これ
らの標記のうち〇で囲んだものは、値が非常に小さいも
のを表わす。
【0119】これら各符号のうち、Siはコイルへの付
与電流の立ち上がり時のS極のレベルを、(Se),S
+,S++は立ち下がり時のS極のレベルをそれぞれ示
している。なお、(Se),S+,S++の間には(S
e)<S+<S++なる関係が成立している。
【0120】各電磁石の磁極面と可動子との間に作用す
る力は、主にSiとSeとの間、及びS++とSeとの
間について考慮すれば良い。この考慮すべき関係が成立
している部分は、図15においてハッチングを付して示
している。
【0121】ここで、前者(SiおよびSe)は可動子
と直接対向する磁極面に作用する反発力、即ち接触して
いる磁極面と可動子を離間させる力であり、後者(S+
+およびSe)は隣接する磁極面に作用する反発力、即
ち可動子を軸方向に移動させる駆動力を表わす。特に後
者については、両隣接磁極面の内の一方にしか作用しな
い為、可動子は当該方向と反発する向きに移動する。
【0122】更に、これらの駆動力の発生は各電磁石に
付与される位相差のある電流変化に応じて進行するの
で、可動子200は電流が操り返し的に付与されている
間、連続的に移動する。各電磁石のもう一方の磁極端面
においては、S極とN極が代わるだけで、同様な関係が
得られている。
【0123】本例において、可動子は図12(a)の左
側に向かって移動する。可動子を逆方向に駆動する場合
には、各磁極に対する位相差を逆転すれば良く、電流の
向きを変える必要はない。
【0124】また、図12では、可動子200の対向す
る(反対側の)2つの面に対して各々4つの磁石からな
る磁石群が配設されているが、各電磁石に付与する電流
は周期的な同期が取れていれば、位相差を付ける順番に
関しては必ずしも一致させておく必要はない。
【0125】接触している可動子と磁極面を離間させる
場合も、磁気力の作用は距離の2乗に反比例するため必
ず接触している側の反発力が大きく作用する。
【0126】また可動子が上下2組の磁極群のどの位置
にあっても、どちらかの磁極群の駆動力が必ず作用す
る。
【0127】なお、図13に示すように、永久磁石と電
磁石を並列的に配設する場合でも、これらが近接してい
れば同様の効果を得る事ができる。
【0128】以上説明したように本実施形態によれば、
構成要素の少なさの点からリニアアクチュエータの微小
化を図る際に有利になるだけでなく、リニアアクチュエ
ータに電流を付与しない状態での可動子の位置保持機能
が、ブレーキ等の新たな可動要素を追加することなしに
実現できる。
【0129】[第7の実施形態]次に、第7の実施形態
に係るリニアアクチュエータ装置について、図16およ
び図17用いて説明する。なお、図16において、ハッ
チングは部材間の区別を明確にするために付されてお
り、断面を示すものではない。そして各コイルの図にお
ける上下端部のみ、図面の理解を容易にするため断面図
的に示されている。図16に示すように、適当な任意の
断面形状を有する柱状可動子400の周りには、この可
動子400を軸線方向に可動自在に支承(支持)する高
透磁率部材からなるホルダー420が配設されている。
可動子400は、ホルダー420に形成された円柱状の
空間内に、その軸線方向に移動自在に収容されている。
【0130】ホルダー420の外周には、ホルダー42
0の円柱状の空間と同軸に3個のリング状コイル43
1,432,433が軸線方向に適当な間隔を置いて巻
かれている。
【0131】これらリング状コイル431,432,4
33の磁路の一部となる前記ホルダー420の一部(本
例ではホルダー上部)は、各々の磁路が一部開放された
磁極421,422,423を形成している。
【0132】磁極421と磁極422は可動子400の
軸線方向を向いて互いに対向する様に形成され、磁極4
23は半径方向外側に向けて形成される。
【0133】従って、本実施形態に係るリニアアクチュ
エータ装置においては、各リング状コイル431,43
2,433および当該コイルに対応するホルダー420
の部分により、各磁界形成手段が構成される。
【0134】また断面がコの字形をした振動片(可動子
駆動部材)470には弾性部材451,452,45
3,454が取着され、このうち弾性部材451,45
2,453にはそれぞれ、振動片470と反対側の位置
に、導電性材料からなる導電片(導電性部材)441,
442,443が取着されている。
【0135】また、弾性部材454の振動片470と反
対側には予圧部材460が取着されている。予圧部材4
60はホルダー420に固着されている。
【0136】予圧部材460はネジ等の適当な抑圧手段
480が取り付けられており、この抑圧手段480は、
弾性部材454を介して前記振動片470に予圧を印加
する。これにより、振動片470と柱状可動子400は
確実に接触するようになっている。
【0137】導電片441,442,443は、各々磁
極421,422,423の位置に弾性部材451,4
52,453,454の弾性力を利用して挟み込まれ
る。
【0138】即ち、振動片470は前記各弾性部材45
1,452,453,454によって(少なくとも可動
子の移動方向および当該移動方向に直交する方向に関し
て)弾性的に支持されており、導電片441,442,
443を動かす事により、振動片470は前記弾性部材
が弾性変形する分だけ当該方向に移動するようになって
いる。
【0139】図に示した振動片470の状態のうち、実
線で示すものは振動片470の中立位置を、一点鎖線で
示すものは導電片441を磁極421から離間する方向
に変位させた時の状態を、二点鎖線で示すものは導電片
443を磁極423から離間させる方向に変位させた時
の状態をそれぞれ表わしている。
【0140】次に、上記構成を有する本実施形態に係る
リニアアクチュエータ装置の動作機序について図16お
よび図17を参照して説明する。
【0141】コイル431には対応する磁極421に、
図17(a)において実線で示す様に、立ち上がり(0
→NcD)が急峻で立ち下がり(Nc1→0)が緩やか
な、周期的な磁界が形成されるような電流が付与され
る。このような磁界を形成するには概ねこれに比例した
電流をコイル431に付与すれば良い。
【0142】この様な磁界が導電片441を横切ると、
導電片441の表面に磁界の変化率に比例した誘導磁界
(磁極)が形成される。この誘導磁界を、図17(a)
において破線で示す。
【0143】即ちコイル431による磁界が直線的に立
ち上がる部分では、導電片441にはコイルと同極の磁
極の強さ(Ne1)が現れ、立ち下がる部分では導電片
441にコイル431とは反対極の磁極の強さ(Se
1)が現れる。
【0144】コイル431による磁界の変化率の関係か
ら、|Ne1|>>|Se1|となるから、コイル43
1への付与電流の立ち上がり時には、磁極421と導電
片441の間には反発力が作用する。、従ってこの導電
片441は弾性部材451,452を圧縮し、弾性部材
453,454をせん断方向に変形させながら、可動子
400に当接する振動片470を図16の実線で示す状
態から図16の一点鎖線で示す状態に移動させる。
【0145】この時、上記振動片470と柱状可動子4
40は予圧手段480により充分な抑圧力で接している
から、振動片が移動する量だけ柱状可動子も図16右方
向に移動する。
【0146】次にコイル431による磁極の強さが頂点
に達するタイミングで、コイル433への通電を調節
し、コイル433による磁界を急峻に立ち上げ(0→N
c3)、その後援やかに立ち下げる(Nc3−0)と
(図17(b)実線参照)、導電片453に誘導される
磁界(図17(b)破線参照)により、上記と同様の過
程を経て振動片470は図16上方向に移動し(可動子
200から離間し)、図16一点鎖線の状態から二点鎖
線の状態に移る。
【0147】この遷移過程で、上記振動片470は柱状
可動子440から離れるので、この柱状可動子440を
支持している弾性部材の復元力により、振動片470は
図16実線位置に戻る。
【0148】この時、柱状可動子440は先に移動した
位置に残されるので、コイル431および433による
上述した磁界形成を繰り返すことにより、柱状可動子4
40は図16右方向に移動し続ける。
【0149】この柱状可動子440を図16左方向に移
動させるには、コイル431に電流を付与する代わりに
コイル432に上記と同じパターンの電流を付与すれば
良い。
【0150】また本例では、主にN極の磁極を用いてい
るが(図17参照)、各コイルによる磁界(磁極)形成
のタイミングさえ合っていれば任意の極性で構わない。
【0151】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、単純なリング形状のコイルをリニアアクチュエータ
装置の外周近傍に配設できる、また、装置の変形部に素
材としての弾性変形を利用できる弾性部材を用いている
ため、特別な可動要素の導入の必要がない。
【0152】このため、リニアアクチュエータ装置全体
を微小化する際の困難さを大幅に排除できる。また弾性
部材の調整も組立後に押しネジ等(抑圧手段)の簡単な
機構で行えるので、組立の容易さも同時に実現できる。
【0153】更に、リニアアクチュエータ装置の非動作
時には、可動子が弾性部材の弾性力により固定されるの
で、外部からのエネルギー供給無しに可動子の位置保持
機能を実現することができる。
【0154】[第8の実施形態]次に、第8の実施形態
について図18を参照して説明する。
【0155】本実施形態に係るリニアアクチュエータ装
置は、同一の電磁石4個ずつからなる2組の電磁石群5
00A、500Bと、各電磁石群の磁極に取着され、内
部が磁性流体で満たされた変形自在の袋部材531,5
32と、この袋部材の下部に配設された可動子540で
構成される。
【0156】電磁石群500A、500Bを構成する各
電磁石は、第4の実施形態において説明したた電磁石C
1,C2,C3,C4と全く同一のものである。袋部材
531,532は、各電磁石C1,C2,C3,C4の
鉄心(コア)の端面に取り付けられている。
【0157】電磁石群が作動していない状態では、袋部
材531、532は内部の磁性流体が一様に広がった状
態でバランスしており、この時、袋部材531,532
と前記可動子540との間には間隙が形成されるように
設定されている(図18(a)に示す袋部材532参
照)。
【0158】次に、可動子540を駆動する代表的な機
序を図18(a)(b)(c)を用いて説明する。
【0159】リニアアクチュエータ装置が、図18
(a)に示す状態にある場合、上記2組の電磁石群50
0A、500Bのうち電磁石群500Bの各電磁石C
1,C2,C3,C4は電流が付与されていない状態に
あり、磁性流体を収めた袋部材532と可動子540と
の間には空隙が生じ、可動子540には電磁石および袋
部材532の影響が及ぼされることはない。
【0160】一方、電磁石群500Aでは、並設された
各々の電磁石C1,C2,C3,C4のうち、互いに隣
接する2つの電磁石に、並んでいる順に順次電流が付与
される。
【0161】図18(a)に示す状態では、電磁石C
1,C2(のコイル)への電流付与により、これら2つ
の電磁石の磁極端を中心に磁界が発生しているので、袋
部材531内部の磁性流体は当該部位周辺に集中し、従
ってこの部分の袋部材531が可動子540に押し付け
られる。
【0162】次の図18(b)に示す状態では、電磁石
C1の電流が切られ、電磁石C3に電流が付与される。
この時、電磁石C2への電流は付与されたままなので、
磁性流体はこの電磁石C2の磁界を中心に、電磁石C1
周辺から電磁石C3周辺に移動する。
【0163】ここで袋部材531(532)の可動子5
40に接触する部分の内部には、複数個のフィン550
が立設されているので、磁性流体が移動する際このフィ
ン550がある部分では袋部材531は可動子540に
対して並進的な運動を行おうするため、袋部材531と
可動子540の間に適当な摩擦があれば可動子は図17
右方向に移動することになる。
【0164】次に同様な電磁石の通電切替を、電磁石C
2と電磁石C4の間で行うと、可動子540は更に図1
8右方向に移動する(本過程の図18への記載は省略し
た)。
【0165】更に可動子540を同方向に移動するに
は、電磁石C4の通電を切り電磁石C1への通電を行う
必要があるが、この時には磁性流体がC4部分からC1
部分に大きく移動するので、場合によっては可動子54
0が図18左方向に、即ち所望の移動方向とは逆向きの
力を受ける可能性がある。
【0166】従って本例では、図18(c)に示すよう
に、もう一方の電磁石群500Bの適当な電磁石(本側
ではC2,C3)を付勢して袋部材532内の磁性流体
を当該部位(電磁石C2,C3の直下)周辺に集めて可
動子540を押し付ける事により、可動子540の逆行
を防いでいる。可動子540を反対方向に駆動する時に
は、各電磁石を付勢(通電)する順序を逆にすればよ
い。
【0167】なお、本図においては、説明の理解を容易
にするため、可動子540の端部が電磁石群500Aか
ら電磁石群500Bに向かって移動する様に描いてある
が、実際には可動子540は初期状態から両電磁石群を
カバーするように、すなわち図18の左右方向全域にわ
たって延在している。
【0168】また、本実施形態においては、可動子の逆
行の防止機能を2組の電磁石群の一方を用いて実現した
が、他の適当な可動子固定手段が用意されている場合に
は、袋部材による押し付け固定を行う必要はなく、電磁
石群も1つだけ用意されていればよい。
【0169】また、本実施形態においては、電磁石群を
4つの電磁石で構成したが、数はこの値に限定されるも
のではない。
【0170】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、可動子が接触的に駆動されるので、滑りを低減した
確実な可動子の移動を実現できる。
【0171】更に、磁性流体を収めた袋部材は変形容易
なので可動子の形状を比較的自由に形成できる他、衝撃
緩衝効果もあるので過大な外力が印加されても可動子が
大きく損傷する事はない。
【0172】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
各構成要素を過小サイズにすることなく部品数の低減が
できるので、組立容易性および高信頼性を確保でき、ま
た同時に充分な駆動力伝達効率と使用時の調整管理の容
易さを達成したリニアアクチュエータを提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるリニアアクチュエータの第1の実
施形態を示す横断面図。
【図2】図1におけるII−II断面を示す図。
【図3】第1の実施形態におけるコイルへの付与電流と
導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図4】本発明によるリニアアクチュエータの第2の実
施形態を示す図であって、図4(a)は平面図、図4
(b)(c)(d)は図4(a)におけるB−B断面、
C−C断面およびD−D断面をそれぞれ示す図。
【図5】本発明によるリニアアクチュエータの第3の実
施形態を示す図であって、図5(a)は平面図、図5
(b)(c)(d)は図5(a)におけるB−B断面、
C−C断面およびD−D断面をそれぞれ示す図。
【図6】第3の実施形態におけるコイルへの付与電流と
導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図7】本発明によるリニアアクチュエータの第4の実
施形態を示す図であって、図7(a)は側面図、図7
(b)は図7(a)におけるB−B断面を示す図。
【図8】第4の実施形態におけるコイルへの付与電流と
導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図9】図8に示す極性の変化を表として示した図。
【図10】本発明によるリニアアクチュエータの第5の
実施形態を示す図であって、図10(a)は図10
(b)におけるA−A断面を示す図、図10(b)は図
10(a)におけるB−B断面を示す図。
【図11】第5の実施形態において、各磁極における磁
極の強さの変化を示す図。
【図12】本発明によるリニアアクチュエータの第6の
実施形態を示す図であって、図12(a)は側面図、図
12(b)は図12(a)におけるB−B断面を示す
図。
【図13】第6の実施形態において、永久磁石の取着位
置を変えた構成例を示す図。
【図14】第6の実施形態におけるコイルへの付与電流
と導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図15】図14に示す極性の変化を表として示した
図。
【図16】本発明によるリニアアクチュエータの第7の
実施形態を示す側面図。
【図17】第7の実施形態におけるコイルへの付与電流
と導電性部材に誘導される磁界の関係を示す図。
【図18】本発明によるリニアアクチュエータの第8の
実施形態を示す横断面図。
【図19】従来のリニアアクチュエータの第1の例を示
す図。
【図20】従来のリニアアクチュエータの第2の例を示
す図。
【符号の説明】 11、12、51a、51b、52a、52b 磁界形
成手段を構成する永久磁石 22、46、71a〜71d、76、91、107a〜
107d、341〜344、304a〜304d、43
1〜433 磁界形成手段を構成するコイル 30、81、108、202、204、441、44
2、443 導電性部材

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定方向に移動自在に設けられた導電性部
    材と、 通電状態に対応して変化する磁界を形成し、形成する磁
    界を変化させることにより前記導電性部材の表面に磁極
    を誘導する第1の磁界形成手段と、 前記導電性部材に誘導される磁極を吸引若しくは反発す
    る磁極を形成する第2の磁界形成手段と、を備えたこと
    を特徴とするリニアアクチュエータ装置。
  2. 【請求項2】前記第2の磁界形成手段は、前記導電性部
    材の移動方向に関して前記第1の磁界形成手段を挟んで
    一対設けられ、 一対設けられた第2の磁界形成手段は、一方の第2の磁
    界形成手段の磁極が前記導電性部材に誘導される磁極を
    吸引する場合、他方の第2の磁界形成手段の磁極が前記
    導電性部材に誘導される磁極を反発することを特徴とす
    る請求項1に記載のリニアアクチュエータ装置。
  3. 【請求項3】前記第1の磁界形成手段の通電状態を制御
    する通電制御部を更に備え、 前記通電制御部により前記第1の磁界形成手段に通電さ
    れる電流は、急激に変化する部分と、これに続いて緩や
    かに変化する部分とから構成されることを特徴とする請
    求項1に記載のリニアアクチュエータ装置。
  4. 【請求項4】前記第2の磁界形成手段は永久磁石を有
    し、この永久磁石により磁界を形成することを特徴とす
    る請求項1に記載のリニアアクチュエータ装置。
  5. 【請求項5】前記第1の磁界形成手段は、コイルと、前
    記コイルが巻き付けられるとともに空隙を有する磁気回
    路を形成する磁性体部材とを有し、 前記第2の磁界形成手段は、永久磁石と、前記永久磁石
    に接続され前記永久磁石とともに空隙を有する磁気回路
    を形成する高透磁率材料からなる部材とを有し、 前記導電性部材は、前記第1および第2の磁界形成手段
    の空隙内に配置されていることを特徴とする請求項1に
    記載のリニアアクチュエータ装置。
  6. 【請求項6】前記第1および第2の磁界形成手段は、コ
    イルと、前記コイルが巻き付けられるとともに空隙を有
    する磁気回路を形成する高透磁率材料からなる部材とを
    有し、 前記導電性部材は少なくともその一部が、前記第1およ
    び第2の磁界形成手段の空隙内に位置することを特徴と
    する請求項1に記載のリニアアクチュエータ装置。
  7. 【請求項7】前記第1および第2の磁界形成手段は、コ
    イルと、前記コイルが巻き付けられるとともに空隙を有
    する磁気回路を形成する高透磁率材料からなる部材とを
    有し、 前記導電性部材は、少なくともその一部が前記第1の磁
    界形成手段の空隙内に位置するとともに、前記一部とは
    異なる他の一部が前記第2の磁界形成手段の空隙に近接
    して空隙外に位置することを特徴とする請求項1に記載
    のリニアアクチュエータ装置。
  8. 【請求項8】前記第1および第2の磁界形成手段の通電
    状態を制御する通電制御部を更に備え、 前記通電制御部により前記第1の磁界形成手段に通電さ
    れる電流は、周期的に変化し、 前記通電制御部により前記第2の磁界形成手段に通電さ
    れる電流は、前記第1の磁界形成手段に通電される電流
    に対して位相が90度ずれていることを特徴とする請求
    項6に記載のリニアアクチュエータ装置。
  9. 【請求項9】所定方向に移動自在に設けられた導電性部
    材と、 通電状態に対応して変化する磁界および磁極を形成する
    とともに形成する磁界を変化させることにより前記導電
    性部材の表面に磁極を誘導する、前記導電性部材の移動
    方向に沿って複数設けられた磁界形成手段と、を備え、 前記複数の磁界形成手段のうち一の磁界形成手段により
    前記導電性部材の表面に誘導された磁極を、前記一の磁
    界形成手段に隣接する他の磁界形成手段の磁極により吸
    引することを特徴とするリニアアクチュエータ装置。
  10. 【請求項10】前記磁界形成手段は少なくとも4つ設け
    られ、 前記各磁界形成手段の通電状態を制御する通電制御部を
    更に備え、 前記通電制御部は、各磁界形成手段に、同じ周期で変化
    し、かつ、位相が順次90度ずつずれた電流を付与する
    ことを特徴とする請求項9に記載のリニアアクチュエー
    タ装置。
  11. 【請求項11】前記導電性部材に高透磁率材料が積層さ
    れていることを特徴とする請求項9に記載のリニアアク
    チュエータ装置。
  12. 【請求項12】前記磁界形成手段は、コイルと、前記コ
    イルが巻き付けられた高透磁率材料からなる部材とから
    なり、 前記コイルが巻き付けられる部材のうち前記導電性部材
    側の部位には、永久磁石が取り付けられていることを特
    徴とする請求項11に記載のリニアアクチュエータ装
    置。
  13. 【請求項13】円筒形状を有し、その軸線方向に沿って
    移動可能に設けられた、導電性部材を含み若しくは導電
    性部材および高透磁率材料からなる部材の積層構造を含
    む可動子と、 前記可動子と同軸的かつ前記可動子の軸線方向に沿って
    並設され、通電状態に対応して変化する磁界を形成する
    とともに、形成する磁界を変化させることにより前記可
    動子を構成する導電性部材の表面に磁極を誘導するコイ
    ルと、 前記各コイルを保持し、互いに隣接するコイルが形成す
    る磁路がともに通過する半径方向の磁極を有する、高透
    磁率材料からなる円筒形状部材と、 前記各コイルに、同一の周期で、かつ各々のコイル毎に
    所定の位相と振幅に設定された電流を付与する通電制御
    部と、を備えたことを特徴とするリニアクチュエータ装
    置。
  14. 【請求項14】第1の方向に移動可能に設けられた可動
    子と、 通電状態に対応して変化する磁界および磁極を形成する
    第1および第2の磁界形成手段と 前記第1の磁界形成手段により形成される磁界の変化に
    伴い磁極が誘導され、この誘導された磁極と前記第1の
    磁界形成手段の磁極との相互作用により第1の方向に変
    位する第1の導電性部材と、 前記第2の磁界形成手段により形成される磁界の変化に
    伴い磁極が誘導され、この誘導された磁極と前記第2の
    磁界形成手段の磁極との相互作用により前記第1の方向
    と略直交する第2の方向に変位する第2の導電性部材
    と、 前記第1の方向および前記第1の方向と略直交する第2
    の方向に関して弾性的に支持されるとともに、前記可動
    子と当接した状態で前記第1の導電性部材の変位に従っ
    て変位して前記可動子を前記第1の方向に駆動する可動
    子駆動部材と、を備えたことを特徴とするリニアアクチ
    ュエータ装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003049263A1 (en) * 2001-12-03 2003-06-12 Shinko Electric Co., Ltd. Linear actuator
KR100719799B1 (ko) 2004-10-09 2007-05-18 김경욱 솔레노이드형 리니어 모터 및 그 구동회로

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