JPH119871A - ミシンの糸立て装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 中空棒の糸立て皿への取付けを容易に実施で
き、糸駒やミシンヘッド間の上糸経路において上糸に作
用する悪影響を略完全に除去し得ること。 【解決手段】 糸ａを巻回した糸駒１０を支持するミシ
ンの糸立て装置で、ミシンヘッド３の上方部に水平に配
設され、取付孔１１ａを垂直に穿設してなる糸立てプレ
ート１１と、中心から下方へ突出して取付孔に嵌挿され
るシャンク１８を備え、糸駒１０の着脱自在な載置を許
容する糸駒保持部材１４と、前記シャンクの中空部１５
に上方から挿入されて、所要高さに保持される中空棒１
２とからなり、糸立てプレートの取付孔に前記シャンク
を嵌挿することにより、糸駒保持部材を該糸立てプレー
トに保持すると共に、シャンクの中空部に中空棒を上方
から挿入することにより、該中空棒を糸駒保持部材に対
し所要高さに立設保持するよう構成したことを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明はミシンの糸立て装置に
関し、更に詳細には、上糸を巻回した糸駒を直立姿勢で
保持するためのミシンの糸立て装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】上糸を巻回した糸駒をミシンヘッドの上
方位置に水平に配設した糸立て皿に載置し、この上糸を
糸駒から一旦上方へ引出して糸駒上部の糸道に引掛けた
後、該糸道から垂下させることにより、該上糸を該ミシ
ンヘッドへ供給するようにした構成が一般に知られてい
る。しかしこのような構成では、糸駒とミシンヘッドと
の間に位置する上糸がエアコンから吹出される風により
揺られて、その上糸経路途中の障害物に絡み付き、縫製
中に糸切れ等のトラブルを生ずる原因となる難点が指摘
される。

【０００３】このようなトラブルの原因に対処し得る構
成が、実開昭６０−２１２７５号、実開平２−２５９８
２号、特開平４−３３８４８７号等の各公報に開示され
ている。これらの提案は、例えば糸立て皿を貫通して立
設した中空棒に糸駒を外嵌して、該糸駒から繰り出した
上糸を該中空棒の上端開口から中空部に挿入した後、該
中空棒の下端開口から引き出してミシンヘッドへ導く構
成になっている。また中空棒の下端開口部に導管の一端
を接続すると共に、該導管の他端をミシンヘッド側に接
続して、上糸を該導管を介してミシンヘッドへ導くよう
にした構成も開示されている。

【０００４】前述した公報中に開示の構成を採用するこ
とによって、糸駒から繰り出されてミシンヘッドに供給
される上糸の経路は、中空棒や導管により殆どの部分が
外部から遮断された状態になる。従って上糸が周囲の空
気の流れによって揺れたり、糸駒から繰り出される際に
上糸自体に撚りが掛かって近辺の障害物に絡み付くこと
がなく、これ等に起因する糸切れの発生が回避される利
点がある。

【０００５】

【解明が解決しようとする課題】しかし従来の糸立て装
置では、前記中空棒を糸立て皿に取付ける構造に関して
次の問題があった。すなわち中空棒は外径が小さいの
で、糸立て皿に該中空棒を強固に取付けるためには、開
示例にも示される如く、該中空棒の下端部に縮径段部を
形成すると共にその外周にネジを切り、糸立て皿に穿設
した取付孔に該下端部を挿通してからナットで締める必
要があった。このような中空棒の取付構造では、部品の
加工に工程数が掛かるばかりか、取付作業にも手間取る
難点を内在している。このような難点は複数本の針棒を
備える多針ミシンにおいて殊に顕著となり、この種の多
針ミシンを複数基備えた多針多頭ミシンにあっては更に
甚大なものとなる。

【０００６】

【発明の目的】この発明は、前述した従来技術に内在し
ている欠点に鑑み提案されたものであって、中空棒の糸
立て皿への取付けを容易かつ強固に実施でき、しかも糸
駒やミシンヘッド間の上糸経路において上糸に作用する
悪影響を略完全に除去し得るミシンの糸立て装置を提供
することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記課題を克服し、所期
の目的を好適に達成するため本発明は、糸を巻回した糸
駒を支持するミシンの糸立て装置において、ミシンヘッ
ドの上方部に水平に配設され、取付孔を垂直に穿設して
なる糸立てプレートと、中心から下方へ突出して前記取
付孔に嵌挿されるシャンクを備え、前記糸駒の着脱自在
な載置を許容する糸駒保持部材と、前記シャンクの中空
部に上方から挿入されて、所要高さに保持される中空棒
とからなり、前記糸立てプレートの取付孔に前記シャン
クを嵌挿することにより、前記糸駒保持部材を該糸立て
プレートに保持すると共に、前記シャンクの中空部に前
記中空棒を上方から挿入することにより、該中空棒を前
記糸駒保持部材に対し所要高さに立設保持するよう構成
したことを特徴とする。

【０００８】

【作用】中空棒に取付け用のネジ切り等の加工を施さな
くても、糸立てプレートに嵌装した糸駒保持部材に、前
記中空棒を上方から挿入するだけで糸立てプレートへの
固定を行なうことができる。

【０００９】

【実施例の形態】次に本発明に係るミシンの糸立て装置
について、該装置を多針多頭刺繍ミシンに適用した好適
な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明す
る。図１は、好適な実施例に係る多針多頭刺繍ミシンの
全体正面図であって、水平なミシンテーブル１の上方に
支持フレーム２が水平に配設され、該支持フレーム２の
前面に複数基(本実施例では８基)のミシンヘッド３が所
定間隔で配設されている。各ミシンヘッド３は、支持フ
レーム２の前面に固定したミシンアーム(図示せず)の前
面に横方向へのスライド自在に支持した支持ケース５を
備えている。そして夫々の支持ケース５は、図で右側の
駆動ボクッス６から水平に延出する駆動ロッド７により
互いに連結され、該駆動ボックス６により駆動される駆
動ロッド７のスライド作用下に、各支持ケース５が一斉
に横方向へスライド操作されるようになっている。

【００１０】前記夫々の支持ケース５には、下端に縫い
針を取付けた複数本(実施例では６本)の針棒４と、各針
棒４に対応する天秤(図示外)とが支持されている。そし
て前述した駆動ロッド７のスライド作用下に、各支持ケ
ース５を一斉に横スライドさせることによって、各支持
ケース５で各対をなす針棒４と天秤を選択して、これら
をミシンアーム内の駆動機構により駆動させ得るように
なっている。各ミシンヘッド３を支持した支持フレーム
２の上方位置には、各ミシンヘッド３に上糸を供給する
糸駒１０を支承する糸立てプレート１１が設けられてい
る。この糸立てプレート１１には複数本の中空棒１２が
立設され、夫々の糸駒１０が各対応の中空棒１２に嵌装
されて糸立てプレート１１上に支承される。そこで、夫
々の中空棒を糸立てプレートに取付ける構造の詳細につ
き更に説明する。

【００１１】図６に示すように、糸立てプレート１１に
は中空棒１２の外径より若干大径の取付孔１１ａが垂直
に穿設され、この取付孔１１ａにシャンク１８を介して
嵌装した糸駒保持部材１４に、中空棒１２が後述の如く
立設固定されるようになっている。すなわち糸駒保持部
材１４は、糸駒１０を載置し得る直径に設定した円形の
平板部１６と、該平板部１６の中心から下方へ突出して
前記取付孔１１ａに余裕をもって嵌挿されるシャンク１
８とを、好ましくは合成樹脂で一体的に成形してある。
また円形平板部１６の上面外縁には、所定高さの側壁１
７が一体的に周設されて全体的に皿状をなしている。前
記シャンク１８は軸方向に穿設した中空部１５を備え、
該中空部１５の略中間部に縮径段部１８ａが形成されて
いる。そして該中空部１５の内径は、上端側開口部は中
空棒１２が略緊密に挿入される寸法になっており、その
開口端より少し下方の位置から前記縮径段部１８ａの付
け根付近にかけては内径が徐々に縮径するように設定さ
れている。

【００１２】従って後述の如く、前記シャンク１８の中
空部１５に前記中空棒１２を上方から挿入すると、該中
空棒１２はその下端部において前記縮径段部１８ａに当
接して、更なる挿入を阻止されるようになっている。な
お前記シャンク１８には、図４および図５に示す如く、
下端から平板部１６の付け根付近にかけて第１スリット
１８ｂが形成され、また下端から縮径段部１８ａの下部
付近にかけて該第１スリット１８ｂに直交(底面視)する
第２スリット１８ｃが形成されている。この糸駒保持部
材１４は、糸立てプレート１１に中空棒１２を取り付け
ると同時に固定されるものであるので、その取付け方法
を次に説明する。

【００１３】糸駒保持部材１４の下方に延出するシャン
ク１８を、糸立てプレート１１の取付孔１１ａに挿入し
て、その平板部１６の下面を該プレート１１の上面に当
接させる。糸立てプレート１１の下面から突出したシャ
ンク１８の下端側から、該シャンク１８の外周に合成樹
脂製の固定リング２０を強制的に圧嵌めして、該リング
２０を糸立てプレート１１の下面に当接させる。これに
より糸駒保持部材１４は、糸立てプレート１１に対し確
実に固定される。この状態において前記中空棒１２をシ
ャンク１８の上端開口から挿入し、該中空棒１２の下端
がシャンク１８の縮径段部１８ａに当接するまで押し込
む。先に述べた如く、前記シャンク１８には第１スリッ
ト１８ｂおよび第２スリット１８ｃが形成されているの
で、図３に示すように、該シャンク１８は前記固定リン
グ２０により弾性変形を生じ、中空棒１２を糸駒保持部
材１４と共に糸立てプレート１１に対し強固に固定し得
ることになる。

【００１４】次に、糸立てプレート１１から下方へ突出
する各糸駒保持部材１４のシャンク１８は、図２および
図３に示すように、導管２１によってミシンヘッド３に
おける支持ケース５の上端部に連結されている。すなわ
ち支持ケース５の上端部に支持プレート２２が取り付け
られ、該プレート２２の上端垂直部に取付孔２２ａが横
方向に所定間隔で６個(１つの支持ケース５に針棒４が
６本支持されているため)穿設されている。そして各支
持孔２２ａに前側から挿入した保持筒２３の内部に、前
記導管２１の一端を挿入すると共に、該導管２１に予め
外挿しておいた固定筒２４を該保持筒２３に弾力的に外
嵌させることによって、前記支持プレート２２に対する
導管２１の確実な固定がなされる。この導管２１は合成
樹脂を材質とする長尺の管体であって、図２に示すよう
に、支持プレート２２に固定した側の略水平に延出する
直線部をその中途で円弧状に前方側へ折り返した後、そ
の前端部を上方へ滑らかに屈曲させてある。該導管２１
の上方に屈曲した端末は、図３に示すように、前記シャ
ンク１８の下端に下方から挿入された後、前記縮径段部
１８ａに当接して更なる挿入を阻止されるようになって
いる。そして予め導管２１に外挿しておいた固定筒２５
を、前記シャンク１８の外周へ弾力的に外嵌すること
で、該シャンク１８への該導管２１の確実な固定がなさ
れている。

【００１５】糸駒保持部材１４における平板部１６の上
面には、フエルト等からなるドーナツ状のクッション材
３０が前記側壁１７に沿って載置されている。また上糸
ａを巻回した糸駒１０における中芯をなすコーン３２
は、その下端部を前記クッション材３０のドーナツ孔に
位置させて直立している。前記糸駒１０から繰り出され
る糸ａは、その端末を前記中空棒１２の上端開口から該
中空棒１２に挿入させ、前記支持プレート２２の保持筒
２３からエアを吸い込むことにより該保持筒２３から引
き出され、該支持プレート２２に設けた糸案内３１、糸
調子３２および下流側の糸調子等を介した後に各対応の
針棒４に供給される。

【００１６】本実施例は前述した構成に係るものである
ので、中空棒１２を糸立てプレート１１に取り付けるに
際して、該糸立てプレート１１の取付孔１１ａに嵌合さ
せた糸駒保持部材１４に該中空棒１２を挿入するだけで
強固に取り付けることができる。しかも中空棒１２に取
付け用のネジ切り加工を施す必要がないため、部品製作
の工程数が少なくて済み、取付けに手間取ることがな
い。また前記糸駒保持部材１４の上端部に平板部１６が
一体成形されていて、支持プレート１１の上面に対する
接触面積が大きい(糸駒保持部材１４の軸線に直交する
方向の長さが大である)ために、中空棒１２を固定した
際の支持プレート１１に対する中空棒１２の垂直精度が
良好であり、特に本実施例のように複数本の中空棒１２
を立設した場合には各中空棒１２が見栄えよく固定され
る利点がある。

【００１７】更に糸駒１０から繰り出されて各ミシンヘ
ッド３に至るまでの上糸ａは、その殆どの部分が中空棒
１２および導管２１で覆われているために、周囲の空気
の流れによって、或いは糸駒１０からの繰り出し時に上
糸ａ自体に生ずる撚りによって、該上糸ａが周囲の障害
物に絡み付くことがなく、従って絡み付きに起因する糸
切れ等の問題が確実に回避される。なお本実施例におい
て、各導管２１を前記の如く屈曲させて長尺としたの
は、これによって該導管２１に可撓性を持たせると共
に、支持ケース５のスライド操作を許容するためであ
る。また糸駒保持部材１４のシャンク１８に嵌合される
固定リング２０は、該中空棒１２を取り外す際に該固定
リング２０を取り外せば済むという点で有利であり、か
つ糸立てプレート１１の取付孔１１ａに孔径誤差が多少
あっても確実に固定できる点でも有利となるが、該固定
リング２０の存在は必須のものではない。

【００１８】図７には、他の形態に係る糸駒１００が示
されている。この型式の糸駒１００では、そのコーン１
０１の下端をクッション材３０の上面に載置すればよ
い。

【００１９】

【発明の効果】本発明に係るミシンの糸立て装置によれ
ば、中空棒に取付け用のネジ切り加工を施す必要がない
ために工程数が少なくて済み、取付け作業を容易かつ迅
速に行うことができる。そして中空棒とミシンヘッドと
の間を導管で接続することで、糸駒から繰り出されミシ
ンヘッドに至る糸が、その糸経路において周囲の障害物
に絡み付くことがなく、従って糸切れ等の問題の発生が
確実に防止される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の好適な実施例に係る多針多頭刺繍ミシ
ンを、全体的に示す正面図である。

【図２】図１の一部の拡大側面図である。

【図３】図２の一部破断拡大図である。

【図４】糸駒保持部材の縦断面図である。

【図５】糸駒保持部材の中空軸部の底面図である。

【図６】中空棒の取付け方を説明するための分解斜視図
である。

【図７】他の形態に係る糸駒およびそのセット状態を示
す縦断面図である。

【符号の説明】

３ ミシンヘッド １０,１００ 糸駒 １１ 糸立てプレート １１ａ 取付孔 １２ 中空棒 １４ 糸駒保持部材 １５ 中空部 １８ シャンク ａ 糸

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 糸(a)を巻回した糸駒(10)を支持するミ
   シンの糸立て装置において、 ミシンヘッド(3)の上方部に水平に配設され、取付孔(11
   a)を垂直に穿設してなる糸立てプレート(11)と、 中心から下方へ突出して前記取付孔(11a)に嵌挿される
   シャンク(18)を備え、前記糸駒(10)の着脱自在な載置を
   許容する糸駒保持部材(14)と、 前記シャンク(18)の中空部(15)に上方から挿入されて、
   所要高さに保持される中空棒(12)とからなり、 前記糸立てプレート(11)の取付孔(11a)に前記シャンク
   (18)を嵌挿することにより、前記糸駒保持部材(14)を該
   糸立てプレート(11)に保持すると共に、 前記シャンク(18)の中空部(15)に前記中空棒(12)を上方
   から挿入することにより、該中空棒(12)を前記糸駒保持
   部材(14)に対し所要高さに立設保持するよう構成したこ
   とを特徴とするミシンの糸立て装置。
2. 【請求項２】 前記糸駒保持部材(14)は、その基部に半
   径方向外方へ延出する平板部(16)が一体的に形成され、
   該糸駒保持部材(14)を糸立てプレート(11)へ嵌挿した際
   に、前記平板部(16)は該糸立てプレート(11)の受け面に
   面接触して安定保持され、かつ該平板部(16)は前記糸駒
   (10)を載置させる支承面となっている請求項１記載のミ
   シンの糸立て装置。
3. 【請求項３】 前記平板部(16)の周縁部に側壁(17)を周
   設することにより、その内側に前記糸駒(10)が載置され
   るクッション材(30)を収容し得るようになっている請求
   項２記載のミシンの糸立て装置。
4. 【請求項４】 前記糸駒保持部材(14)に立設した中空棒
   (12)の下端は、ミシンヘッド(3)の側に一端を開口させ
   た導管(21)の他端に連通し、前記糸駒(10)から繰出され
   る糸(a)が該導管(21)の中空部(21a)を介して該ミシンヘ
   ッド(3)へ供給するようになっている請求項２記載のミ
   シンの糸立て装置。